(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ローリング制御部を備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ
(51)【国際特許分類】
B62K 5/08 20060101AFI20220809BHJP
B62K 5/10 20130101ALI20220809BHJP
B62K 5/05 20130101ALI20220809BHJP
B60G 21/05 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B62K5/08
B62K5/10
B62K5/05
B60G21/05
(21)【出願番号】P 2019533050
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2017058224
(87)【国際公開番号】W WO2018116215
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102016000129510
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ラッファエッリ
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/065381(JP,A1)
【文献】国際公開第2014/046280(WO,A1)
【文献】特開2010-184508(JP,A)
【文献】特開2009-203651(JP,A)
【文献】米国特許第6805362(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/00- 5/10,
B60G 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つ又は四つのホイールを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ(8)であって、
前記前部キャリッジ(8)は、
前部キャリッジフレーム(16)と、
前記前部キャリッジフレーム(16)に連結されたローリング機構(20)と、
前記前部キャリッジフレーム(16)の第1アンカー部(60)と第2アンカー部(60)を介して前記ローリング機構(20)にそれぞれ接続された第1フロントホイール(10’)と第2フロントホイール(10”)と、
第1ヒンジ手段(101’、101”)と第2ヒンジ手段(102’、102”)を介して前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)にそれぞれ接続された第1端部(111)と第2端部(112)を有するロッド(110)を備えており、前記ロッド(110)が前記第1端部(111)と前記第2端部(112)でそれぞれ前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)に対して回転可能であり、前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)の少なくとも一方は前記第1フロントホイール(10’)及び前記第2フロントホイール(10”)のローリング動作の影響を受ける、ローリング制御システム(100)とを備えており、
前記ロール制御システム(100)は、前記ロッドの角度ローリング範囲に対応した予め決められた角度範囲で、前記ロッド(110)の回転運動を減衰する第1減衰装置を備えており、
前記第1減衰装置は、前記ロッド(110)と前記第1アンカー部(60)にそれぞれ連結された連結ロッド(210)とクランク(220)を含み、関節接合された四辺形を形成する連結ロッドとクランクの機構(210,220)を備えており、
前記連結ロッドとクランクの機構(210,220)は減衰器(222)を有し、
前記第1減衰装置はさらに、減衰ローリング状態と自由ローリング状態との間で、前記連結ロッドとクランクの機構(210,220)の状態を変えるように前記連結ロッドとクランクの機構を動作させるアクチュエータ(230)を有し、
前記減衰ローリング状態において、前記クランク(220)は前記減衰器(222)の減衰軸(Z)に整列され且つ前記関節接合された四辺形は前記予め決められた角度範囲内で前記ロッド(110)の回転に抵抗する伸縮ストラットを形成する三角形となり、
前記自由ローリング状態において、前記クランク(220)は前記減衰軸(Z)に整列せず、前記関節接合された四辺形は自由に前記ローリング動作を行うことができる形を有する、前部キャリッジ(8)。
【請求項2】
前記第1減衰装置は、前記減衰ローリング状態に対応する位置で前記クランク(220)の回転を停止する停止手段を有する、請求項1の前部キャリッジ(8)。
【請求項3】
前記停止手段は、機械的な端部ストローク部材(240)を有する、請求項2の前部キャリッジ(8)。
【請求項4】
前記第1ヒンジ手段(101’、101”)と前記第2ヒンジ手段(102’、102”)はそれぞれ、前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)の動きに追従するように構成されており、
前記ロッド(110)の前記第1端部(111)における前記第1ヒンジ手段(101’,101”)は、前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)のローリング面に垂直なヒンジ軸を有し且つ前記第1アンカー部(60)に連結された第1ロールヒンジ(101’)を有する、請求項3の前部キャリッジ(8)。
【請求項5】
前記連結ロッドとクランクの機構(210,220)は、第1円筒ヒンジ(201)によって前記連結ロッド(210)の位置で前記ロッド(110)に連結されると共に第2円筒ヒンジ(202)によって前記クランク(220)の位置で前記第1アンカー部(60)に連結されており、
前記連結ロッド(210)は、円筒関節ヒンジ(203)によって前記クランク(220)に連結されており、
前記第1円筒ヒンジ(201)、前記第2円筒ヒンジ(202)及び前記円筒関節ヒンジ(203)はそれぞれ、前記第1ロールヒンジ(101’)のヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有する、請求項4の前部キャリッジ(8)。
【請求項6】
前記連結ロッド(210)は、第1端部(210a)と第2端部(210b)を有し、
前記連結ロッド(210)の前記第1端部(210a)は、前記円筒関節ヒンジ(203)の前記ヒンジ軸からオフセットした位置で、支持ブラケット(231)によって前記円筒関節ヒンジ(203)又は前記第1円筒ヒンジ(201)に係合し、
前記連結ロッド(210)の前記第2端部(210b)は、軸方向に移動可能な連結でもって、前記第1円筒ヒンジ(201)又は前記円筒関節ヒンジ(203)に係合する、請求項5の前部キャリッジ(8)。
【請求項7】
前記減衰器(222)の前記減衰軸(Z)は、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)の間を通過する請求項
6の前部キャリッジ(8)。
【請求項8】
前記機械的な端部ストローク部材(240)はフェアバーン機構(240)からなり、
前記フェアバーン機構(240)は、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)を斜めに連結し、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)との間で前記減衰軸(Z)に沿ってスライドするように、長手方向のスロット連結部(241)を介して前記第1円筒ヒンジ(201)に対して前記減衰軸(Z)の方向にスライド可能であり、
前記フェアバーン機構(240)は、前記クランク(220)の当接付属部(221)に対する係合シート(242)を形成し、
前記係合シート(242)は、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)との間で軸方向に整列される、請求項7の前部キャリッジ(8)。
【請求項9】
前記連結ロッド(210)は、前記第1円筒ヒンジ(201)又は前記円筒関節ヒンジ(203)の支持体(201a)に回転可能にかみ合うウォームねじを有し、
前記アクチュエータ(230)は、前記第1円筒ヒンジ(201)又は前記円筒関節ヒンジ(203)に対して前記連結ロッド(210)を前記連結ロッド(210)の軸方向の移動させるための回転運動を前記ウォームねじ(210)に与える、請求項
6から8のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項10】
前記アクチュエータ(230)は、前記支持ブラケット(231)に支持されており、前記ウォーム
ねじの前記第1端部(210a)に回転自在に係合している、請求項9の前部キャリッジ(8)。
【請求項11】
前記ロッド(110)の前記第2端部(112)における第2ヒンジ手段(102’、102”)は第2ロールヒンジ(102”)を有し、
前記第2ロールヒンジ(102”)は、前記第1フロントホイール(10’)及び前記第2フロントホイール(10”)のローリング面に垂直なヒンジ軸を有し、前記第2アンカー部(60)に連結されており、
前記ローリング制御システムは、予め決められた角度範囲内で、前記第2端部(112)において前記第2ロールヒンジ(102’)に対する前記ロッド(110)の回転を減衰する第2減衰器を有する、請求項1から10のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項12】
前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)はそれぞれ、第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)を介して前記ローリング機構(20)に連結されており、
前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)はそれぞれ、前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)の回転ピン(68)に回転可能に連結され、これにより前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)は前記回転ピン(68)の周りを回転可能に支持されており、
前記前部キャリッジ(8)は、前記ローリング機構(20)に対する前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)のスプリングサスペンション動作を得るためのサスペンション手段を有する、請求項1から11のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項13】
後部に駆動ホイールを有し、請求項1から12のいずれかに係る前部キャリッジ(8)を有する、モータビークル(4)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに係る前部キャリッジ(8)を有するモータビークルのローリング動作をブロックする方法であって、
前記クランク(220)を回転して、少なくとも前記第1減衰装置の前記アクチュエータ(230)を作動し、前記関節接合された四辺形を三角形にして、前記減衰器(222)のストロークに対応する軸方向の可動域を有する伸縮ストラットであって前記予め決められた角度範囲内で前記ロッド(110)の回転に抵抗する伸縮ストラットを形成するローリング制御工程と、
前記クランク(220)が、前記減衰ローリング状態から少なくとも前記減衰装置の前記アクチュエータ(230)を作動する自由ローリング状態まで回転されて、前記クランク(220)を前記減衰軸(Z)に不整列させて、前記関節接合された四辺形を四辺形に回復し、前記二つのフロントホイール(10’、10”)が自由にローリング動作する状態にする、前記ローリング制御工程とを含む、方法。
【請求項15】
三つ又は四つのホイールを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ(8)のアンチローリングシステム(100)において、前記前部キャリッジ(8)は、
前部キャリッジフレーム(16)と、
互いに連結され且つローリング機構(20)によって前記前部キャリッジフレーム(16)に連結された少なくとも一対のフロントホイール(10’,10”)とを備えており、
前記アンチローリングシステム(100)はロッド(110)を備えており、
前記ロッド(110)は、第1端部(111)と第2端部(112)を有し、前記前部キャリッジ(8)に搭載された状態でヒンジ手段(101’、101”;102’、102”)によって前記前部キャリッジ(8)の第1アンカー部(60)と第2アンカー部(60)を連結しており、
前記アンチローリングシステム(100)は、前記ロッドの角度ローリング範囲に対応する予め決められた角度範囲内で、前記ロッド(110)の回転運動を
減衰する第1減衰装置を備えており、
前記第1減衰装置は、関節接合された四辺形を形成するために、前記ロッド(110)と前記第1アンカー部(60)にそれぞれ連結された連結ロッド(210)とクランク(220)を有する連結ロッドとクランクの機構(210,220)を備えており、
前記
連結ロッドとクランクの機構(210,220)は減衰器(222)を有し、
前記第1減衰装置はさらに、
減衰ローリング状態と自由ローリング状態との間で、前記連結ロッドとクランクの機構(210,220)の状態を変えるように、前記連結ロッドとクランクの機構(210,220)を軸方向に
移動させるアクチュエータ(230)を備えており、
前記減衰ローリング状態において、前記クランク(220)は前記減衰器(222)の減衰軸(Z)に整列し、前記関節接合された四辺形は三角形になり、前記予め決められた角度範囲内で前記ロッド(110)の回転に抵抗する伸長可能なストラットを形成し、
前記自由ローリング状態において、前記クランク(220)は前記減衰軸(Z)に整列せず、前記関節接合された四辺形は自由に
ローリング動作を行うことができる四辺形を有するアンチローリングシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、ローリング制御部を備えたローリング式モータビークル(ローリング式原動機付き車両)の前部キャリッジに関する。
【0002】
また、本発明は、ローリング式モータビークルの前部キャリッジに適用可能なローリング制御装置に関する。
【0003】
特に、本発明に係るビークル(車両)は、前部に二つのステアリング及びローリングホイールを有し、後部に固定車軸を有するモータビークルである。
【背景技術】
【0004】
モータビークルの分野では、操作性に関してモータサイクルの特性に四輪ビークルの安定性を組み合わせた「ハイブリッド」ビークルの供給が伸びている。
【0005】
これらのハイブリッドビークルは、例えば、二つのステアリングホイールを備えた三輪モータビークルや四輪バイク(QUAD)として知られている四輪モータビークルによって代表される。
【0006】
さらに具体的に説明すると、上述の三輪モータビークルは、前部に二つのステアリング及びローリング(すなわち、傾斜)ホイールが設けられ、後部に固定車軸を有する後部ドライブホイールが設けられている。リアホイール(後輪)は駆動トルクを提供して牽引力を生み出すためのものである。一方、フロントホイール(前輪)は、対になって、ビークルの方向性を制御する。前部キャリッジの対のホイールは、ステアリングに加えて、前後左右の傾きを制御する。そのために、後部に二つのホイールを有する三輪モータビークルに比べて、前部キャリッジに二つのホイールを備えたモータビークルは、モータサイクルと同様にカーブで傾斜するため、実際のモータサイクルに近いものである。しかし、二輪モータサイクルに比べて、前部キャリッジに二つの対をなすホイールを備えたビークルは、二つの前輪によって地面を二か所で支えるために、車両と同等の高い安定性が得られる。
【0007】
前輪は、運動系機構によって(例えば関節接合された四辺形構造の中間介在物を介して)互いに運動学的に連結されている。これにより、前輪は同期して鏡面反射式に回転する。これらのビークルはさらに、二つの前輪のそれぞれに対して一つの、2つの独立した減衰器(ダンパ)付きサスペンションを備えている。
【0008】
したがって、三輪のローリング式モータビークルは、二輪モータサイクルの操作性と、四輪モータビークルの安定性と安全性を同時に兼ね備えるように設計されている。
【0009】
この種の三輪ローリング式モータビークルは、本件出願人の例えばイタリア特許出願IT2003MIA001108に記載されている。
【0010】
この種のビークルの構造的特徴により、ある条件(例えば、非常に低速度、又は停止中)で、モータビークルは、不測の動作をするか、制御不能なローリング動作を生じる可能性がある。
【0011】
この問題は、ユーザがマニュアル操作する制御システム及び/又は自動制御システムによって動作されるローリング防止システムを上述のビークルに設けることにより解消されてきた。
【0012】
ローリングの防止は、種々の方法によって行うことができる。しかし、それらの方法は、一方又は両方のローリングホイールのローリング動作に追随するように構成されたコンポーネントを可逆的にブロッキング(阻止)することを必要とするものである。そのようなコンポーネントによるローリング動作のブロッキングは、運動学的に、直接または間接的に、モータビークルの二つの前輪のローリングをブロッキングすることである。
【0013】
可逆的にブロッキングされるコンポーネントは、モータビークルのローリング構造にすでに存在している要素であってもよい。例えば、きわめて一般的な方法では、ブロッキングされるコンポーネントは、ローリング運動系機構を形成する関節接合された四辺形機構の一つの構成要素であってもよい。ただし、二つの直立要素のうちの一つであることが好ましい。四辺形機構の一つの直立要素の動きをブロッキングすれば、四辺形機構の変形が防止され、これにより、二つの車輪のローリングが直接的に防止される。仮に連結された四辺形機構が二つのローリングホイールの軸受ジャーナルにサスペンションを介して連結されていれば、減衰装置の非対称なばねの動きによるローリング動作はブロッキングされず、個別に管理されなければならない。
【0014】
そのようなシステムが、例えば、本件特許出願人のイタリア特許出願IT2004A000171に記載されている。このアンチローリングシステムは、連結された四辺形構造と二つの独立したフロントサスペンションを備えたステアリングシステムが設けられたローリング式モータビークルに関連して説明されている。アンチローリングシステムは、前記四辺形機構における上部垂直部材の、前記フレームの直立部材を接続するヒンジ周りの回転をブロッキングするように構成された機械クランプと、二つのホイールの非対称なばね運動に起因するローリングを防止するために、減衰装置に平行に配置されたロッドに作用する電気モータによって同時に動作される二つの油圧クランプを有する。
【0015】
代わりに、ローリングを防止するために可逆的にブロッキングされるコンポーネントは、その目的のために特に設計された、モータビークルのローリング構造に付加された要素で構成してもよい。
【0016】
特に、この追加要素は、四辺形機構における可逆的ブロッキングとして、関節接合された四辺形機構に関連している。この解決手法は、例えば、欧州特許出願EP2810861A1、フランス特許FR2953184、および欧州特許EP2345576B1に記載されている。
【0017】
代わりに、この追加要素は、モータビークルのフレームから機械的に分離された、二つのローリングホイールの軸受ジャーナル間の直接連結要素で構成してもよい。
【0018】
これらの解決技術において、ホイールの「軸受ジャーナル」は、ホイールの回転軸を支持するモータビークルの機械部部分であって、サスペンション、ステアリング装置、及び特別な場合ではローリング機構に運動学的に連結されている。これらの解決策において、軸受ジャーナルは運動学的にホイールピンに一体化し得る。ホイールピンは軸受を介してホイールを支持する。その場合、軸受ジャーナルは、ホイールピン又に一体的に構成してもよいし、ホイールピンに機械的に拘束して一つの部品を形成してもよい。軸受ジャーナルは、運動学的にホイールピンに一体化し得る。ホイールピンは、軸受を介して、ホイールを支持する。
【0019】
このようなローリングをブロッキングする技術的解決方法は、運動学的にはサスペンションによって生じる影響が無いので、そのような追加要素だけの作用ですべてのローリング動作(二つのローリングホイールの非対称なばね動作によって生じるローリング動作を含む)を防止できる。このような技術的解決策を提供することが、本件特許出願人のイタリア特許出願第102015000088087の目的である。その出願に記載された特定のアンチローリングシステムは、伸長可能なロッドを有する。このロッドは、その両端で、ボールジョイントと同等のヒンジ手段によって、前輪の2つの軸受ジャーナルを直接的に互いに連結している。 ローリングは、専用アクチュエータ(例えば、バンドブレーキ又はドラムブレーキ)によってローリング面上にあるロッドの少なくとも一端において、該ロッドの回転角度をブロッキングすることによって防止される。このようにして回転がブロッキングされたロッドは、二つの車輪のローリング動作を防止する。「ローリング面」は、モータビークルの長軸方向又は走行方向を横断する平面を意味し、モータビークルの中心線を通る面と交差する。
【0020】
代わりに、上述した追加の要素は、二つのローリングホイールの一方の軸受ジャーナルとモータビークルのフレームとの間を直接連結する要素からなる。このような技術的解決手法は、本件出願人のイタリア特許出願第102015000088091に記載されている。特に、アンチローリングシステムは、そのロッドの両端で、ボールジョイントと同等のヒンジ手段によって、一方のホイールの軸受ジャーナルをフレームに直接連結する伸長可能なロッドを有する。ローリングは、専用アクチュエータ(例えば、バンドブレーキ又はドラムブレーキ)によってローリング面上にあるロッドの少なくとも一端において、該ロッドの回転角度を阻止することによって防止される。このようにして回転がブロッキングされたロッドにより、二つのホイールのローリング動作が防止される。この場合、ロッドによってフレームに連結されていないホイールのばね性は、ロッドがブロッキングされたことによって影響を受けることがないので、非対称な両ホイールのばねサスペンションに起因するローリング動作が阻止される。
【0021】
一般に、連結ロッドが、ボールジョイントと同等のヒンジ手段によって両端がヒンジされるとともに、ローリング面上での回転角度が専用アクチュエータによって少なくとも一端でブロッキングされることにより、アンチローリングシステムは、その他の解決手段に比べて、簡単にモータビークルに搭載され、専有面積が小さい、という利点を有する。
【0022】
また、そのようなロッドは、モータビークルの動作中(特に、ローリング、ステアリング、又は非対称なばねサスペンション)ではなく、距離が変化する箇所を連結しているか否かに応じて、伸長可能である(ただし、それ自体の長さが伸びるわけではない。)したがって、そのシステムはまた、運転中に実質的に意識されることがないように構成できる。
【0023】
ベルトブレーキ又はドラムブレーキを採用すれば、ロッドのヒンジ手段に直接的にアクチュエータを一体化できる。この場合、取り付けが容易である、という利点がある。
【0024】
しかし、この種の技術的解決方法は、パワーアクチュエータの使用に制約が加わる。パワーアクチュエータは、ローリング動作を阻止することによってモータビークルにおけるバランスを維持するだけでなく、モータビークルの重量が片側に偏ることによってバランスが変わるのを防止するために、十分なトルクを提供するために十分な大きさを有するものでなければならない。単一のアクチュエータは、30kgmの範囲のトルクを提供し得るものでなければならない。これは、大型のベルトブレーキ又はドラムブレーキを必要とし、そのためにロッドによって得られる省スペースの利点を実質的に損なうことになる。ディスクブレーキを採用した場合もで、同様の問題が発生する。
【0025】
二つのローリングホイールにおいてローリングを対称に防止するためにロッド両端における該ロッドの回転を防止する場合、その制約が一層強まる。この場合、一つのアクチュエータでは不十分で、二つのアクチュエータを設ける必要があり、これにより全体の大きさと製造コストが倍増する。二つのホイールは運動学的ローリング機構によって互いに連結されているので、ローリングを左右で対称に防止することはそれ自体が重要なことではないが、コンポーネントの一連の許容誤差と弾性を抑えるためには適当であり得る。
【0026】
ベルトブレーキとドラムブレーキの代替手段は、ヒンジ領域の近傍で、ロッドとそれにヒンジされる部材に斜めに連結する伸長可能なストラット(筋交い)を有し、すでに引用したイタリア特許出願第102015000088087に記載されている。この伸長可能なストラットには、これが長手方向に伸びるのを防止する手段が設けられている。そのように長手方向の伸びが防止されることにより、ストラットはロッドの回転を防止する。しかし、この技術は、取り付けが複雑で、全体の寸法が大きくなるという問題を大幅に解消するものでない。
【0027】
一般に、三つのホイールを有するローリング式モータビークルの静的安定性は、ビークル自身のホイールトラック(輪間)、すなわち、2つのホイールの間の距離に関連している。この静的安定性により、ローリングをブロックする際の安定性が増す。ホイールトラックが増すと、ビークルの安定性が増す。これはまた、偶発的な動きや制御不能なローリング動作にも当てはまる。これらの動作は、ホイールトラックが増すほど、危険性が減少する。
【0028】
動作上、ローリングを防止することはモータビークルの安全性を増し、特に、低速走行状態又はモータビークルの停止中、制御不能動きや偶発的ローリング動作によって転倒することが無くなる。
【0029】
しかし、ローリングを防止することは、ドライバの介入を制限するためにモータビークルの自由度を制限することになり、また、ビークルの操作性に影響を与えために安全性の点で問題がある。これらの理由から、一般には、ローリングを防止するのは、低速又は車両が静止したビークルでのみ許される。
【0030】
ホイールトラックが小さいモータビークルでは、モータビークルが完全に安定して水平状態にない状況では、低速又は静止したビークルであっても適当ではない。そのような状況では、ローリングをブロックすると、モータビークルがバランスを失う。この状況は、ドライバにとって好意的に受け入れられるものでなく、モータビークルの転倒につながる。
【0031】
ホイールトラックの大きなモータビークルの場合、それ自体が安定した平衡状態を保ち得るので、そのような問題はない。したがって、ローリングブロックは、これが動作しても、ドライバの安全性に悪い影響を与えることがない。
【0032】
構造に関連した以上の説明は以下の通りである。三つのホイールを有するモータビークルは、いわゆる「支持三角形」を形成する、一対のフロントホイールと一つのリアホイールを備えたものである。言い換えると、三つのホイールを有するモータビークルは、一対のフロントホイールとリアホイールを互いに連結する3つの直線の幾何学的連結として形成される三角形の支持面を形成する。
【0033】
したがって、前部キャリッジのホイールトラック、すなわち、同じピッチであっても一対のフロントホイールの距離、が大きくなるほど、支持面によって形成される面積が大きくなる。支持面を分割する中間の平面が母線(基準線)となる。
【0034】
三つのホイールを有するビークルでは、支持面は、モータビークルのバランスを評価する指標となる。特に、ローリングブロックを備えたビークルが傾斜した場合、ドライバを含むビークルの重心を通り地面に垂直な線が支持面内にある限り、ビークルはバランスを保つ。逆に、母線から逸れて支持面の外側に移動すると、モータビークルはバランスを失う。
【0035】
そのためにホイールトラックが小さくなると、母線に対する偏心量が非常に小さい又は実質的にゼロである。結果的に、ホイールトラックの小さなモータビークルでローリングをブロックしても、ドライバにとって邪魔なだけでバランスを維持する意義が無く、傾き難く、安全性が失われる。
【0036】
以上より、上述のように、狭いホイールトラックを有するローリング式モータビークルにとって、従来のローリングブロックシステムと同様に、モータビークルの静止状態又は低速状態における不安定性(これは、制御不能なローリング動作や偶発的なローリング動作によって生じる。)を解消し、動作したときにはモータビークルがバランスを失うことがない、ローリング制御を実施する必要がある。
【0037】
ローリングをブロックするシステムに設けられているものと同様に、ローリングを制御するシステムを提供する必要がある。このシステムは、要素としてロッドを設け、全体的にシステムに制約がかからない、簡単なものである。
【発明の概要】
【0038】
したがって、本発明の目的は、制御不能なローリング動作や偶発的なローリング動作に起因して、モータビークルが静止状態又は低速状態で安定を失う危険を減らす、ローリング制御システムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することによって、従来の問題を解消又はその問題を減らすことである。
【0039】
本発明の別の目的は、ローリング制御要素としてのロッドを簡単に取り付けることができるとともに、システム全体の占有面積が小さな、ローリング制御システムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【0040】
本発明の別の目的は、従来のアクチュエータよりも小さくて価格面で効率の良いアクチュエータを使用できるローリング制御システムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【0041】
本発明の別の目的は、システム全体の大きさと関連するコストを著しく増加させることなく、ローリングホイールを対称に制御できるローリング制御システムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【0042】
本発明の別の目的は、構造が簡単で、安価にビークルに搭載できるローリング制御システムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の技術的特徴は以下に記載する請求の範囲の内容から明らかである。また、本発明の利点は、本発明の実施形態を示す添付図面を参照した以下の詳細な説明から容易に明らかになる。なお、図示する実施形態は、単なる例示であって、限定的なものではない。
【
図1】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る、ローリング制御システムを備えた前部キャリッジ付きのモータビークルの一部を除いた斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示すモータビークルの前部キャリッジの拡大図を示す。
【
図3】
図3は、
図1のモータビークルの前部キャリッジの拡大詳細斜視図で、ローリング制御システムに関連しており、前部キャリッジから分離され、自由ローリング状態の減衰装置の拡大図を示す。
【
図5】
図5は、減衰ローリング状態の減衰装置と
図3のローリング制御システムの斜視図を示す。
【
図7】
図7は、減衰装置におけるローリング角αの変化の効果を強調した、
図5の詳細図を示す。
【
図8】
図8は、減衰装置におけるローリング角αの変化の効果を強調した、
図6の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図面を参照すると、符号4は概略本発明に係るモータビークル(原動機付き乗物)の全体を示す。
【0045】
発明の目的上、「モータビークル」の用語は、広義には、少なくとも三つのホイール(すなわち、以下に説明する二つのフロントホイールと少なくとも一つのリアホイール)を有するあらゆるモータビークルを含む。したがって、モータビークルの定義は、前部キャリッジに二つのホイールを有し、後部キャリッジに二つのホイールを有する、いわゆる四輪バイクも含む。
【0046】
モータビークル4は、少なくとも二つのフロントホイール10を支持する前部キャリッジ8から、一つ又は複数のリアホイール14を支持する後部キャリッジ12に伸びる、フレーム6を有する。左側のフロントホイール10’と右側のフロントホイール10”は区別することができ、左側と右側のフロントホイール10’、10”の定義は単に形式的なものであって、ビークルのドライバとの関係を意味している。これらのホイールは、ビークルを運転するドライバの視点から見て、モータビークルの中心線M-Mの左側と右側に配置されている。
【0047】
本発明の目的から、モータビークルのフレーム6は、任意の形状と大きさを有し、例えば格子型、箱型、シングルクレードル型、又はデュアルクレードル型等のいずれであってよい。モータビークルフレーム6は、一つの部品であってもよいし、複数の部品で構成してもよい。例えば、モータビークルのフレーム6は、リアフレーム13と連結されている。リアフレーム13は、一つ又は複数のリアドライブホイール14を支持する後部の振動揺動アーム(図示せず)を有する。後部の揺動アームは、ヒンジによって直接、又はクランク機構及び又は中間フレームを介して、フレーム6に連結される。
【0048】
本発明の実施形態によれば、モータビークルの前部キャリッジ8は、前部キャリッジフレーム16と、互いに運動学的に連結されるとともに運動学的ローリング機構20によって前部キャリッジフレーム16に運動学的に連結された一対のフロントホイール10’、10”を有する。ローリング機構20は、一対のフロントホイールを同期して鏡面反射式にローリングさせる。
【0049】
モータビークル前部キャリッジ8は、アンチローリングシステム100を有する。アンチローリングシステムはロッド110を有する。ロッド110は、両側に第1端部111と第2端部112を有する。第1端部と第2端部は、ヒンジ手段101’、101”;102’、102”によって、前部キャリッジ8の第1アンカー部(固定部)60と第2アンカー部(固定部)60に直接連結する。
【0050】
好ましくは、第1アンカー部60と第2アンカー部60の少なくとも一方は、二つのフロントホール10’、10”のローリング動作の影響を受ける。
【0051】
特に、以下に詳細に説明するように、
第1アンカー部60と第2アンカー部60は共に、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受ける、または
第1アンカー部と第2アンカー部の一方だけが、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受け、他方のアンカー部は前部キャリッジフレーム16の一部である。
【0052】
好ましくは、ヒンジ手段101’、101”及び102’、102”は、第1アンカー部60と第2アンカー部60の動きに受動的に追従するように構成されている。
【0053】
好ましくは、ロッドの第1端部111に対するヒンジ手段1011’、101”は、少なくとも第1ローリングヒンジ101’を有する。第1ローリングヒンジは、二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し、第1アンカー部60に連結されている。
【0054】
アンチローリングシステム100は、好ましくは、第1端部111において第1ローリングヒンジ101’に対して、所定角度範囲で、ロッド110の回転運動を減衰させるために適当な第1減衰装置を有する。この角度範囲は、ロッドのローリング角範囲に対応している。
【0055】
「ローリング面」は、モータビークルの長手方向又は移動方向Yを横断する面を意味し、モータビークルの中心面M-Mと交差する。
【0056】
ロッド110の少なくとも一端において、ローリング面に対するロッド110の回転を減衰することは、ロッド110に連結された前部キャリッジのローリング動作を減衰し、結果的に、二つのフロントホイール10’、10”のローリング運動を減衰することを意味する。
【0057】
添付図に示す好適な実施形態によれば、各フロントホイール10’、10”は運動学的ローリング機構20に軸受ジャーナル60によって連結されている。軸受ジャーナルは、回転ピンが回転軸の周りを回転可能に支持するように、ホイールの回転ピン68に機械的に連結されている。前部キャリッジはさらに、各軸受ジャーナル60がローリング機構20に対する少なくとも一方のばねサスペンション動作を保証するために、サスペンション手段を有する。
【0058】
ホイールの「軸受ジャーナル」は、モータビークルにおける機械部分で、ホイールの回転軸を支持し、該回転軸をサスペンションとステアリング装置と運動学的ローリング機構20に運動学的に連結するものである。軸受ジャーナルは、軸受ジャーナルを介してホイールを支持するホイールの回転軸に運動学的に一体的にしてもよい。その場合、軸受ジャーナルは、ホイール回転軸に一体的に構成するか、又は一つの部品を形成するために機械的に拘束してもよい。軸受ジャーナルは、軸受ジャーナルを介してホイールを支持するホイールの回転軸に運動学的に一体的にしてもよい。
【0059】
添付図に示す好適な実施形態によれば、第1アンカー部と第2アンカー部60は、二つのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナル60からなり、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受ける。この場合、ローリング面に対するロッド110の回転が減衰されると、二つのフロントホイールの軸受ジャーナルと二つのホイールのローリング動作が減衰される。
【0060】
代わりに、添付図に図示されていない実施形態によれば、ロッド110は二つのフロントホイールの一方の軸受ジャーナルを前部キャリッジフレーム16に直接連結する。この場合、第1アンカー部と第2アンカー部の一方だけが、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受ける。この場合、ローリング面に対するロッドの回転は、フロントホイールだけで行われる。しかし、動作上、上述した運動学的ローリング機構の連結機構によって与えられた運動学的に連結により、一方のフロントホイールのローリングを減衰すれば、他方のフロントホイールのローリングが自動的に減衰される。
【0061】
好ましくは、ロッド110が軸受ジャーナルの一方又は両方に連結される実施形態では、ロッドの第1端部のヒンジ手段101’、101”は、第1円筒状ステアリングヒンジ101’を有する。ステアリングヒンジは、軸受ジャーナルに対するステアリング動作を許可する、ローリング面に平行なヒンジ軸を有する。第1ローリングヒンジ101’は、円筒状のステアリングヒンジ101”に連結されている。
【0062】
上述の運動学的ローリング機構20は、フロントホイールが同期して鏡面反射式にローリングすることが保証される限り、任意の構造を取り得る。
【0063】
添付図に示す実施形態によれば、運動学的ローリング機構20は、連結された四辺形システム(四辺形機構)である。
【0064】
さらに詳細に説明すると、このような連結された四辺形システムは、中央ヒンジ28で前部キャリッジフレーム16にヒンジされた一対の横部材24’、24”を有する。横部材24’、24”は、サイドヒンジ52の横方向端部で回転可能に連結された垂直部材48によって、横方向両端部で、互いに連結されている。横部材24’、24”と垂直部材48は、上述した連結された四辺形20を形成する。
【0065】
好ましくは、この場合、垂直部材48は、フロントホイール10’、10”の一方の軸受ジャーナルを案内し支持する。
【0066】
添付図面に示されていない実施形態では、垂直部材はフロントホイールの軸受ジャーナルを、その延長軸に同軸的に案内し支持する。この場合、各フロントホイールのサスペンション手段は、垂直部材に一体化され、垂直軸の延長軸に沿って軸受ジャーナルの直線ばね運動を保証する。
【0067】
代わりに、添付図に示されているように、連結された四辺形の運動学的ローリング機構20は、垂直部材48がそれぞれ、並進運動型の運動学的連結機構を介して、それぞれのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナル60を外側に案内し支持する。
【0068】
有利には、前部キャリッジ8は、フロントホイール10’、10”のそれぞれのステアリング軸を中心とする軸受ジャーナルの回転を制御するように構成されたステアリング装置が設けられている。
【0069】
本発明の第1形態によれば、添付図面に示されるように、第1減衰装置は、好ましくは第1円筒ヒンジ201によってロッド210においてロッド110に連結され、好ましくは第2円筒ヒンジ202によってクランク220においてロッド110に連結されて、関節接合された四辺形を形成する、連結ロッドとクランクの運動機構210,220を有する。
【0070】
好ましくは、連結ロッド210は、円筒関節ヒンジ203によって、クランク220に連結されている。
【0071】
好ましくは、連結ロッド210は、第1端部210aで、円筒関節ヒンジ203又は第1円筒ヒンジ201に、支持ブラケット231によってヒンジ軸に対してオフセットした状態で係合し、第2端部210bで、軸方向に移動可能な連結でもって、第1円筒ヒンジ201又は円筒関節ヒンジ203に係合する。
【0072】
好ましくは、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202と円筒関節ヒンジ203はすべて、第1ローリングヒンジ101’のヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有し、関節接合された四辺形を構成しており、
一方の二つの対向するサイドは、クランク220と、第1ローリングヒンジ101’と第1円筒ヒンジ201との間をつなぐロッド110の第1端部111とによって形成され、
別の二つの対向するサイドは、第1アンカー部(又は、添付図面に示されているように、第1アンカー部60に連結された円筒ステアリングヒンジ101”)と、サポートブラケット231と連結ロッド210によって形成されるアセンブリによって形成されている。
【0073】
機能的に、関節接合された四辺形は、ロッド110の第1端部111のローリング角度αが二つのフロントホイールのローリング運動によって変化すると、それに応じてその形状を変える。
【0074】
本発明の別の形態によれば、連結ロッドとクランクの運動機構210,220は減衰器(ダンパ)222を有する。
【0075】
特に、添付図面に示されるように、クランク220は、軸方向減衰器222からなる、又は軸方向減衰器222を有する。この減衰器は、クランクと同軸に配置され、予め決められたストロークを有する。
【0076】
本発明の他の形態によれば、第1減衰装置は、連結ロッドとクランクの運動機構210,220をシフト動作させ、連結ロッドとクランクの運動機構210,220の形状を非ローリング状態と少なくとも一つの自由ローリング状態との間で変化させるために適当なアクチュエータ230を有する。
【0077】
好ましくは、アクチュエータ230は、第1円筒ヒンジ201又は円筒関節ヒンジ203に対して連結ロッド210を軸方向にシフト移動して、第1円筒関節ヒンジ203と第1円筒ヒンジ201との間の距離Hを変化させるために適している。
【0078】
動作上、アクチュエータ230は、第2円筒ヒンジ202を中心にクランク220を回転するとともに円筒関節ヒンジ203と第2円筒ヒンジ202との間の軸に対して連結ロッドを不整列に維持することによって距離Hを変化させて、連結クランク210とロッド220の運動学的機構の状態を減衰ローリング状態と少なくとも一つの自由ローリング状態との間で変化させるように動作可能である。
図5,6,7,8に示すように、前記減衰ローリング状態において、前記クランク220は、前記第1円筒ヒンジ201と前記第2円筒ヒンジ202との間を通る減衰軸Zに整列し、前記関節接合された四辺形は実質的三角形になり、前記予め決められた角度範囲内で前記ロッド110の回転に抵抗する伸長可能なストラットを形成し、前記伸長可能なストラットは前記軸方向のストロークに対応し且つ前記ロッドの前記予め決められた角度ローリング範囲を定義する軸方向の可動域を有する。
図2,3,4に示すように、前記少なくとも一つの自由ローリング状態において、前記クランク220は前記減衰軸Zに整列せず、前記関節接合された四辺形は自由に前記ローリング動作を行うことができる四辺形を有する。
【0079】
動作時、本発明によれば、減衰装置は、ローリング動作をブロッキングすることはなく、予め決められた角度範囲内でブロッキングを減衰させるだけである。減衰装置が起動すると(すなわち、運動学的な連結ロッドとクランクの機構が減衰されたローリング状態にあるとき)、二つのフロントホイールとモータビークルは、依然としてローリング動作に晒されている。したがって、停止状態又は低速走行状態で、ドライバはビークルのバランスを制御する必要がある。しかし、操作時、上述の軸方向減衰装置によってローリング動作が減衰される又は遅くなるので、ドライバはローリング制御システムによってアシストされる。したがって、モータビークルのバランスを制御するためにドライバに要求される反応時間は長い。これにより、静止時又は低速時、制御不能なローリング動作や偶発的なローリング動作によってモータビークルが不安定になる危険性が減少する。
【0080】
逆に、減衰装置が不能になると(運動学的な連結ロッドとクランクの機構が自由にローリングできる状態にあると)、自由にローリングし、減衰されることがない。実際、減衰器222(好ましくは軸方向の減衰器)は、その長さを変えることなく、関節接合された四辺形の内側でクランクの動作に追従し、第2円筒ヒンジを中心に回転する。この場合、軸方向の減衰装置の軸方向ストレスはゼロ又は無視できる程度である。
【0081】
言い換えると、自由なローリング状態では、軸方向の減衰器222は、実質的にローリング動作に対して機能しない。減衰したローリング状態においてのみ、軸方向の減衰装置は機能する。
【0082】
本発明によれば、ローリング制御システムはまた、ロッド制御要素としてロッドを容易に取り付けることができるとともにシステム全体の占有面積を小さくできる。
【0083】
さらに詳細に説明すると、ロッド110の第1端部111のローリング動作を減衰させることは、アクチュエータ230に委ねるのではなく、運動学的に連結されたロッドとクラック210,220の機構に依存する。言い換えると、本発明に係るローリング制御システムでは、アクチュエータ230は第1ローリングヒンジ101’を中心とするローリング角αの変化を打ち消すようなトルクを発揮する必要がない。
【0084】
アクチュエータ230の機能は、運動学的な連結ロッドとクランクの機構210,220をシフト動作して距離Hを変えるだけで、これにより、関節接合された四辺形が三角形になるように第2ヒンジ202を中心にクランク220を回転させ、その結果、ロッド110の回転に対抗する伸長可能なブロッキングストラットを形成する、ことである。
【0085】
アクチュエータ230は、ヒンジの摩擦に打ち勝つために十分な力を提供すると共に減衰装置よりも大きな軸方向の力を提供できるだけなく、実際のローリングの収縮・減衰作用を実行するものである。
【0086】
代わりに、ローリングの収縮・減衰作用は、軸方向減衰装置を運動学的に活性化させる動的な機械的制約によって達成することもできる。ローリングの収縮・減衰作用と動的な機械的制約の活性化を効果的に行うためには、運動学的に連結されたロッドとクランクの機構210,220の大きさを、作用する負荷に耐えることができるようにするだけで十分である。
【0087】
しかし、アクチュエータ230は、連結ロッドとクランクのシステムの外側にあるそのような荷重によって影響を受けることがない。
【0088】
これにより、従来のシステムに比べて低パワーのアクチュエータを採用でき、その結果、アクチュエータの大きさと寸法が小さくなる。
【0089】
ヒンジ部における摩擦を最小限に減じるために、ヒンジにローラベアリングを使用することができる。
【0090】
以上より、本発明に係るローリング制御システムによれば、同時に、
予め決められたローリング角範囲内で、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作を減衰することができることから、制御不能なローリング動作や偶発的なローリング動作によって、モータビークルの静止時又は低速時に生じるモータビークルの不安定性を軽減し、
ローリングが禁止されるのではなく減衰されることから、急激にローリングを禁止することによって生じるモータビークルの制御不能な不安定性を防止し、
ローリング制御要素のロッドを簡単に取り付けることができるともにシステム全体の占有面積が小さくできる。
【0091】
最後の点に関して、本発明によれば、従来のローリングブロックシステムに必要なアクチュエータよりも小さなアクチュエータを使用できる。そのため、アクチュエータの大きさが小さくなることにより、結果、全体の大きさが小さくなるだけでなく、費用も低下する。
【0092】
動作上、上述のように、ロッドとクランクの運動機構210,220をブロック状態にするために、距離H(すなわち、円筒関節ヒンジ203と第1円筒ヒンジ201との間にあるロッド210の部分の長さ)を漸次減少するように、円筒関節ヒンジ203又は第1円筒ヒンジ201に対して、連結ロッド201に対して軸方向シフト動作を与えるようにアクチュエータ230が動作される。好ましくは、この軸方向の移動の間、支持ブラケット231の存在により、円筒関節ヒンジ203と第2円筒ヒンジ202の間の軸に対してロッド210は整列していない。
【0093】
その結果、第2円筒ヒンジ202の周りをクランク220が回転し、関節接合された四辺形が次第に変形する。関節接合された四辺形は、ロッド110に誘導されたローリング運動に追随する能力を保持し、各位置におけるローリングによる振動の幅が次第に減少する。クランクが減衰軸Z(好ましくは、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202を通る軸)に整列すると、システムは弾性的な機械的制約を受け、好ましくは軸方向減衰装置がロッド及びモータビークルのローリング運動を減衰するように動作する。
【0094】
動作上、連結ロッドとクランクの運動機構210,220を自由にローリングする状態にするためには、円筒関節ヒンジ203又は第1円筒ヒンジ201に対して連結ロッドを軸方向に関して逆方向に移動させて、距離Hを次第に増加してクランク220を逆方向に回転するように、アクチュエータ230を動作すればよい。
【0095】
これは、サポートブラケット231を介して、円筒関節ヒンジ203と第2円筒ヒンジ202の間の軸に対して連結ロッド210が常に整列しないように保たれていることで可能となる。その結果、円筒関節ヒンジ203(又は第2円筒ヒンジ202)と連結ロッド210の長軸との間に、アームAが常に形成されており、そのため、アクチュエータ230が連結ロッド210の軸に沿って軸方向の力を加えると、第2円筒ヒンジ202を中心としてクランク220が回転する。
【0096】
このような動作は、関節接合された四辺形の形状によって生じる。これにより、アクチュエータ230は、常に距離Hを変化させて、クランクを回転できる。したがって、このような状態の可逆性が常に保証される。
【0097】
以上の説明より、減衰ローリング状態になったことを、アクチュエータ230は認識しない。運動学的に、作動した場合、アクチュエータ230は、連結ロッドとクランクの運動学的機構の機械的変形限界に適合して、ブロックされた状態に対応する位置を超えてクランク220を付勢することができる。
【0098】
好ましくは、減衰ロッキング状態に対応する位置に連結ロッドとクランクのシステムを確実に位置づけるために、第1減衰装置は、円筒ヒンジ202に対して、自由ローリング状態と減衰ローリング状態との間の移行領域において、減衰ローリング状態に対応する位置でクランク220の回転を停止するために適した停止手段240を有する。
【0099】
好ましくは、停止手段は、機械的な終端ストローク部材240からなる。
【0100】
特に、添付図面に示すように、上述の機械的終端ストロークは、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202を斜めに連結するフェアバーン機構240からなる。特に、フェアバーン機構は、長手方向のスロット241を有し、そこには第1円筒ヒンジ201が連結されている。スロット241により、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202との間で、軸に沿って、第1円筒ヒンジ201に対してスライド移動ができる。
【0101】
フェアバーン機構240は、クランク220の当接付属部221の係合シート(着座部)242を形成する。この係合シート242は、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202との間で軸方向に(すなわち、減衰軸Zに沿って)整列しており、連結ロッドとクランクの運動学的機構の減衰ローリング状態に対応する位置にクランクを正しく位置付けることができる。フェアバーン機構240により、機械的に簡単でかつ信頼できる状態で、高価でかつ複雑なアクチュエータ制御システムを設けることなく、クランク220を正しく位置付けることができる。
【0102】
添付図面に示す実施形態によれば、クランク220の当接付属部221は軸方向減衰器222に形成されている。
【0103】
添付図面に示す実施形態では、ロッド210はウォームねじからなる。ウォームねじは、第1円筒ヒンジ201又は円筒関節ヒンジ203の支持本体201aと回転可能にかみ合っている。アクチュエータ230は、ウォームねじ210に対して、その軸を中心とする回転運動を与えて、第1円筒ヒンジ210又は円筒関節ヒンジ203に対して連結ロッド210を軸方向に移動する。
【0104】
好ましくは、添付図面に示すように、ウォームねじ210は、第1円筒ヒンジ201の支持本体201a上で第2端部210bとかみ合い、第1端部210aで支持ブラケット231によって円筒関節ヒンジ203に連結されており、円筒関節ヒンジ203に対してオフセットした状態でウォームねじ210を保持するように構成されている。一つの実施形態では、ウォームねじは、スライド摩擦を減らす循環式ボールねじである。
【0105】
添付図面に示す実施形態では、アクチュエータ230は、関節接合された四辺形の外側で支持ブラケット231に支持されており、ウォームねじ210の第1端部210aに回転可能に係合している。
【0106】
添付図面に示さない実施形態では、ローリング制御システム100は、予め決められた角度範囲で、第2端部112におけるロッド110の回転運動を減衰するように構成された、ロッド110の第1端部111に配置された第1減衰装置と同じ第2減衰装置を有する。この場合、ロッド110の第2端部112に対するヒンジ手段102’、102”は第2ローリングヒンジ102’を有する。第2ローリングヒンジ102’は、二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直な軸を有し、第2アンカー部に連結されている。
【0107】
ロッドの第1端部111と第2端部112にそれぞれ第1減衰装置と第2減衰装置を設けることにより、二つのフロントホイール10’、10”のローリングブロックを対称にすることができる。この形態は、二つのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナル60を互いに直接連結する場合に特に適用される。
【0108】
添付図面に示すように、ロッドの第1端部111に一つの減衰装置だけを設ける場合、ロッド110の第2端部112におけるヒンジ手段102’、102”は、二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し且つ第2アンカー部に連結された第2ローリングヒンジ102’を有する。
【0109】
好ましくは、ロッド110は、第1端部と第2端部の間で長手方向に伸長可能である。これにより、ロッド110は、その長手方向軸Xに沿って、長手方向に伸長可能である。特に、ロッド110は、入り子式構造とすることにより、伸長可能とすることができる。
【0110】
機能的には、ロッド110がその長手方向に伸長可能であることは、ホイールが例えばローリング動作又はステアリング動作によって前部キャリッジにおける二つの部分の距離が変化するような場所をロッド110が連結する場合、必要である。この実施形態では、長手方向の伸張性は、ロッド110がモータビークルの操作性に干渉するのを防止するために必要である。
【0111】
この干渉は、特に、ロッド110が二つのフロントホイールの軸受ジャーナルを連結するために設けられ、それぞれのステアリング軸外でそれに連結される場合に発生する。
【0112】
好ましくは、上述のように、ロッド110が軸受ジャーナルの一方又は両方に連結されている場合、ロッドの第1端部に対するヒンジ手段101’、101”は、軸受ジャーナルに対してステアリング動作を許可するために、ローリング面に平行なヒンジ軸を有する円筒ステアリングヒンジ101”を有する。
【0113】
さらに詳細に説明すると、添付図面に示すように、第1ローリングヒンジ101’は、円筒ステアリングヒンジ101”に連結されている。第1アンカー部(この場合、軸受ジャーナル60からなる。)に対する連結は、ステアリングヒンジ101’によって行われる。添付図面では、ステアリングヒンジ101’は、二つ又はそれ以上の支持アームを介して、軸受ジャーナル60に固定されている。この場合、添付図面に示すように、第2円筒ヒンジ202は、ステアリングヒンジ101”に連結されており、これにより、連結ロッドとクランクの運動学的機構210,220はステアリング動作に追従する。
【0114】
本発明の目的は、本発明に係る前部キャリッジ8を備えた三つ又は四つのホイールを有するモータビークルのローリング動作を可逆的に制御する方法に関する。
【0115】
上述の方法は、順序を問わず、ローリング制御工程と非ローリング制御工程を有し、
前記ローリング制御工程において、第1減衰装置のアクチュエータ240を駆動することによってクランク220が回転され、関節接合された四辺形がほぼ三角形になって、予め決められた角度範囲でロッド110の回転に抵抗する伸長可能なストラットを形成し、前記伸長可能なストラットは、前記ストラットは前記軸方向のストロークに対応して前記ロッドの前記予め決められた角度ローリング範囲を定義する軸方向の可動域を有し、
前記非ローリング制御工程において、クランク220は減衰ローリング状態から少なくとも一つの自由ローリング状態に回転し、クランク220と軸方向減衰器222を減衰軸Zに対して再び整列し、関節接合された四辺形を変形前の状態に回復して、二つのフロントホイール10’、10”が自由にローリング動作する状態にする。
【0116】
好ましい実施形態によれば、上述の前部キャリッジ8を備えた、三つ又は四つのホイールを備えたローリング式モータビークルを可逆的に制御する方法は、ローリング制御工程と非ローリング制御工程を有する。
ローリング制御工程において、クランク220は、停止手段240が介入する減衰ローリング状態まで、第2円筒ヒンジ202を中心にクランク220が回転し、第1円筒ヒンジ201と円筒関節ヒンジ203との間の距離Hが小さくなるように少なくとも第1減衰装置のアクチュエータ240が作動し、第2円筒ヒンジ202と第1円筒ヒンジ201の間の減衰軸Z上にクランク220を整列し、間接接合された四辺形をほぼ三角形まで変形し、予め決められた角度範囲内でロッド110の回転に抵抗する伸長可能なストラットを形成し、前記伸長可能なストラットは、減衰器222の軸方向ストロークに対応する軸方向可動域を有し、予め決められた角度ローリング範囲を定義し、
非ローリング制御工程において、減衰ローリング状態から停止手段240からクランク220を切り離す少なくとも自由ローリング状態までクランク220を回転し、第1円筒ヒンジ201と円筒関節ヒンジ203の間の距離Hが増加するように少なくとも第1減衰装置のアクチュエータ230を作動して減衰軸Zに対してクランク220が整列しないようにし、関節接合された四辺形を三角形から四辺形に戻して二つのフロントホイール10’、10”が自由にローリング動作を行うことができる状態にする。
【0117】
本発明の対象は、特に、上述した後部駆動輪と前部キャリッジ8を有するモータビークルである。
【0118】
更なる機能的側面として、本発明に係るローリング減衰機構は、下記する従来のシステムと異なる。
【0119】
ローリング減衰工程と自由ローリング工程は、機械ブレーキ、油圧ブレーキ、バンドブレーキ当の摩擦ブレーキの作用をする従来のローリングブロックシステムで発生するような、「移行」工程を含まない。
【0120】
詳細に説明すると、ブレーキのパッドがディスクに接触するようになると、摩擦力が発生し、それは次第に増加して、予め決められた値に達すると、ブロッキングを生じる。換言すると、パッドにかかる負荷が予め決められた値に達すると、ブロッキングが発生する。このような理由から、ブロッキング作用と実際の起こる機械的なブロッキングとの間の時間差を特定する移行について説明する。
【0121】
したがって、この移行工程において、ビークルは依然として静的バランス状態を保つことができない。そのため、運転は極めて不安定である。
【0122】
三つのホイールを有するビークルについて説明すると、ローリングブロッキングを始動する電気モータの作動時間は、約2秒と推定される。わずか1秒後にビークルはブロックし始める。これは、軌道要求によりビークルが傾斜すると、ドライバは運転入力に対して大きなコントラストを感じる。ビークルの片側が障害物に当った場合、サスペンションは機能しない、又はビークルは平坦な道でローリングする。
【0123】
上述の実施形態では、移行状態は存在しない。したがって、システムにはいかなる摩擦も発生しないので、ヒンジが整列するまでアクチュエータは機能し、四辺形は完全に自由な状態になる。
【0124】
本発明によれば、複数の利点(すでに一部は説明済。)が得られる。
【0125】
本発明に係るローリング制御システムによればまた、
予め決められた角度ローリング範囲で二つのフロントホイール10’、10”に対するローリング動作を減衰できるので、制御不能なローリング動作や偶発的なローリング動作によって生じる、静止状態又は低速状態のモータビークルの不安定性の危険が減少する、
ローリングが防止されるのではなくて、ローリングが減衰されるので、急激なローリングブロックに関連してモータビークルに制御不能な不安定性の発生が防止され、
ローリング制御要素として単にロッドを取り付けるだけであることに加えて、システム全体の占有面積が小さくなる。
【0126】
最後の点に関して、実際、本発明によれば、従来のシステムで必要なアクチュエータよりも相当小さなアクチュエータを使用できる。アクチュエータのサイズが小さくなると、全体の寸法が小さくなるだけでなく、コストが減少する。
【0127】
二つのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナルを連結するためにロッド110が設けられた実施形態では、本発明に係るローリング制御システムは、ロッドの両端に減衰装置を設けることによって、両フロントホイール10’、10”に容易に対称に配置できる。これは、小さなアクチュエータが使用できることから、システム全体の大きさとコストを大幅に増加することがない。
【0128】
本発明に係るローリング制御システムは、構造的に簡単で、製造コストが低く、モータビークルに安価に取り付けられる。
【0129】
好ましい実施形態によれば、三つ又は四つのホイールを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ8は、
前部キャリッジフレーム16と、
少なくとも一対のフロントホイール10’、10”であって、運動学的に互いに連結されるとともに、該フロントホイールを同期して鏡面反射式にローリングさせる運動学的ローリング機構20によって前記前部キャリッジフレーム16に連結された少なくとも一対のフロントホイール10’、10”と、
ヒンジ手段101’、101”;102’、102”によって前記前部キャリッジ8の第1アンカー部60と第2アンカー部60を互いに直接連結する第1端部111と第2端部112を有するロッド110を備え、前記第1アンカー部60と前記第2アンカー部60の少なくとも一方は前記二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受ける、ローリング制御システム100とを有し、
前記ヒンジ手段101’、101”;102’、102”は、前記第1アンカー部60と前記第2アンカー部60の動きを受動的に追従するように構成され、
前記ロッドの前記第1端部111の前記ヒンジ手段101’、101”は、前記二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し且つ前記第1アンカー部60に連結された、少なくとも第1ローリングヒンジ101’を備えており、
前記ローリング制御システム100は、前記ロッドの前記角度ローリング範囲に対応した予め決められた角度範囲で、前記第1端部111において前記第1ローリングヒンジ101’に対する前記ロッド110の回転運動を減衰するために適した第1減衰装置を備えており、
前記第1減衰装置は、運動学的に連結ロッドとクランク210,220を備えており、
前記運動学的に連結ロッドとクランク210,220は、関節接合された四辺形を形成するように、第1円筒ヒンジ201によって前記連結ロッド210において前記ロッド110に連結され、第2円筒ヒンジ202によって前記クランク220において前記第1アンカー部60に連結され、
前記連結ロッド210は、前記第1ローリングヒンジ101’の前記ヒンジ軸に平行な軸を有する、円筒関節ヒンジ203、第1円筒ヒンジ201、第2円筒ヒンジ202、および前記円筒関節ヒンジ203によって前記クランク220に連結されており、
前記連結ロッド210は、第1端部210aにおいて、支持ブラケット231のヒンジ軸に対してオフセットした場所で、前記円筒関節ヒンジ203又は前記円筒ヒンジ210に係合し、
第2端部210bにおいて、軸方向に移動可能な連結をもって、前記第1円筒ヒンジ201又は前記円筒関節ヒンジ203に係合し、
前記クランク220は、前記クランクと同軸に配置されて予め決められた軸方向のストロークを有する軸方向減衰器(ダンパ)222からなるか又は軸方向減衰器(ダンパ)222を備え、
前記第1減衰装置はさらに、前記円筒関節ヒンジ203又は前記第1円筒ヒンジ201に対して前記連結ロッド210を軸方向にシフト移動させて、前記円筒関節ヒンジ203と前記第1円筒ヒンジ201との間の距離を変化させるために適したアクチュエータ230を有し、
前記アクチュエータ230は、前記第2円筒ヒンジ202を中心に前記クランク220を回転することによって前記距離Hを変化させ、これによって、前記連結ロッド210を、前記円筒関節ヒンジ203と前記第2円筒ヒンジ202との間で前記軸に整列しない状態に保持して、減衰ローリング状態と前記運動学的な連結ロッド210と220の状態を変化させるように動作可能で、
前記減衰ローリング状態において、前記クランク220は、前記第1円筒ヒンジ201と前記第2円筒ヒンジ202との間を通る減衰軸Zに整列し、前記関節接合された四辺形は実質的三角形になり、前記予め決められた角度範囲内で前記ロッド110の回転に抵抗する伸長可能なストラットを形成し、前記伸長可能なストラットは前記軸方向のストロークに対応し且つ前記ロッドの前記予め決められた角度ローリング範囲を定義する軸方向の可動域を有し、
前記少なくとも一つの自由ローリング状態において、前記クランク220は前記減衰軸Zに整列せず、前記関節接合された四辺形は自由に前記ローリング動作を行うことができる四辺形を有し、
前記前部キャリッジはまた停止手段240を有し、
前記停止手段は、前記自由ローリング状態と前記減衰ローリング状態との間の経路上において、前記減衰ローリング状態に対応する位置で、前記第2円筒ヒンジ202に対して前記クランク220の回転を停止するのに適している。
【0130】
好適な実施形態では、三つ又は四つのホイールを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ8のアンチ・ローリングシステムが提供されており、前記前部キャリッジ8は、前部キャリッジフレーム16と、運動学的に互いに連結され且つ前記一対のフロントホイールを同期して鏡面反射式にローリングさせる運動学的機構20によって前記前部キャリッジフレーム16に連結されており、
前記アンチローリングシステム100は、前記前部キャリッジ8に取り付けた状態で、ヒンジ手段101’、101”;102’、102”によって、前記前部キャリッジ8の第1アンカー部と第2アンカー部60を直接互いに連結する第1端部111と第2端部を有し、
前記第1アンカー部60と前記第2アンカー部60の少なくとも一方は、前記二つのフロントホイール10’、10”のローリング運動の影響を受け、
前記ヒンジ手段101’、101”;102’、102”は、前記第1アンカー部と前記第2アンカー部の動きを受動的に追従するように構成されており、
前記ロッドの前記第1端部111における前記ヒンジ手段101’、101”は、前記二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し且つ前記第1アンカー部60に接続された少なくとも第1ローリングヒンジ101’を有し、
前記ローリング制御システム100は、前記ロッドの前記角度ローリング範囲に対応した予め決められた角度範囲で、前記第1端部111において前記第1ローリングヒンジ101’に対する前記ロッド110の回転運動を減衰するために適した第1減衰装置を備えており、
前記第1減衰装置は、運動学的な連結ロッドとクランク210,220を備えており、
前記運動学的な連結ロッドとクランク210,220は、関節接合された四辺形を形成するように、第1円筒ヒンジ201によって前記連結ロッド210において前記ロッド110に連結され、第2円筒ヒンジ202によって前記クランク220において前記第1アンカー部60に連結され、
前記連結ロッド210は、前記第1ローリングヒンジ101’の前記ヒンジ軸に平行な軸を有する、円筒関節ヒンジ203、第1円筒ヒンジ201、第2円筒ヒンジ202、および前記円筒関節ヒンジ203によって前記クランク220に連結されており、
前記連結ロッド210は、第1端部210aで、前記円筒関節ヒンジ203又は前記第1円筒ヒンジ201に、支持ブラケット231によって、それぞれのヒンジ軸に対してオフセットした位置に係合し、第2端部210bで、前記第1円筒ヒンジ201又は円筒関節ヒンジ203に軸方向に移動可能な連結でもって係合し、
前記クランク220は、予め決められたストロークを有し、前記クランクと同軸に配置された軸方向減衰器222からなる又は軸方向減衰器222を備えており、
前記第1減衰装置はさらにアクチュエータ230を有し、
前記アクチュエータ230は、前記円筒関節ヒンジ203と前記第1円筒ヒンジ201との間の距離Hを変化させるために、前記第1円筒ヒンジ201又は前記円筒関節ヒンジ203に対して前記連結ロッド210を軸方向に移動させるために適しており、
前記前記アクチュエータ230は、前記第2円筒ヒンジ202を中心に前記クランク220を回転するとともに前記円筒関節ヒンジ203と前記第2円筒ヒンジ202との間の前記軸に対して前記連結ロッド210を不整列に保つことによって前記距離Hを変化させて、減衰ローリング状態と少なくとも一つの自由ローリング状態との間で前記運動学的連結ロッドとクランク210,220の状態を変化させ、
前記減衰ローリング状態において、前記第1円筒ヒンジ201と前記第2円筒ヒンジ202の間を通過する減衰軸Zに前記クランク220が整列され、前記関節接合された四辺形は実質的に三角形となり、前記三角形は前記予め決められた角度範囲内で前記ロッド110の回転に抵抗する伸長可能なストラットを定義し、前記伸長可能なストラットは前記軸方向ストロークに対応し且つ前記ロッドの前記予め決められた角度ローリング範囲を定義する軸方向可動域を有し、
前記少なくとも一つのローリング状態において、前記クランク220は前記減衰軸Zに整列せず、前記関節接合された四辺形は自由に前記ローリング動作を行うことができる四辺形を有し、
前記第1減衰装置はさらに停止手段240を有し、
前記停止手段240は、前記制限されたローリング状態と前記少なくとも一つの自由ローリング状態との経路上で、前記減衰ローリング状態に対応する位置に、前記第2円筒ヒンジ202に対する前記クランク220の回転を停止する。
【0131】
このように着想された本発明は所期の目的を達成するものである。
【0132】
当然、実際の装置では、本発明の保護範囲から逸脱することなく、上述した形状や構造以外の形状や構造を採用することができる。
【0133】
さらに、細部については、必要に応じて、技術的に等価な要素、寸法、形状、及び材料に置換してもよい。