(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物およびこれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20220809BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20220809BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20220809BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220809BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L77/06
C08K5/51
C08K7/14
C08K5/17
(21)【出願番号】P 2019533530
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2017014816
(87)【国際公開番号】W WO2018124565
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2016-0184167
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,イク モ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン レ
(72)【発明者】
【氏名】シン,チャン キュン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,サン ヒョン
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177093(US,A1)
【文献】国際公開第2016/132829(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0196962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08L 77/06
C08K 5/49
C08K 7/14
C08K 5/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ポリアミド樹脂30重量%~50重量%;
(B)脂肪族ポリアミド樹脂1重量%~10重量%;
(C)ポリフェニレンスルフィド樹脂1重量%~15重量%;
(D)リン系難燃剤10重量%~20重量%;
(E)キレート剤0.1重量%~5重量%;および
(F)ガラス繊維30重量%~50重量%;を含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記芳香族ポリアミド樹脂(A)および前記脂肪族ポリアミド樹脂(B)は、3:1~23:1の重量比で含まれ、
前記熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品は、UL-94規定に基づいて測定した3.2mm厚の試験片の難燃性がV-0以上であ
り、
前記成形品は、引張強度が下記式1を満足し、
【数1】
前記式1において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した成形品の引張強度(kgf/cm
2
)であり、
前記成形品は、200℃で500時間の間エージングした後、下記式2で表される引張強度維持率が70%以上を満足し、
【数2】
前記式2において、TS1は、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定された試験片の初期引張強度(kgf/cm
2
)であり、TS2は、試験片を200℃で500時間の間エージングした後、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した引張強度(kgf/cm
2
)であり、
前記成形品は、UL-94規定に基づいて測定した3.2mm厚の試験片の難燃性がV-0以上であり、IEC 60112規格に基づいて測定した3mm厚の試験片の比較トラッキング指数(CTI)が250V以上であり、
前記成形品は、ASTM D149規格に基づいて測定した1mm厚の試験片の絶縁破壊強度が30KV/mm~45KV/mmである、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、芳香族ジカルボン酸単位を10モル%~100モル%含むジカルボン酸単位;ならびに脂肪族ジアミン単位および脂環族ジアミン単位のうち1種以上を含むジアミン単位;を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ヘキサメチレンテレフタルアミドとヘキサメチレンアジポアミドとからなるポリアミド(PA6T/66);およびヘキサメチレンテレフタルアミドと2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドとからなるポリアミド(PA6T/DT);のうち1種以上を含む、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ポリアミド(B)は、ポリアミド6およびポリアミド66のうち1種以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族ポリアミド樹脂(A)および前記脂肪族ポリアミド樹脂(B)と、ポリフェニレンスルフィド樹脂(C)とは、3:1~50:1の重量比で含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン系難燃剤(D)は、赤リン、ホスフェート化合物、ホスホネート化合物、ホスフィネート化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスファゼン化合物、およびこれらの金属塩のうち1種以上を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記キレート剤(E)は、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アンチモン(Sb)、マグネシウム(Mg)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、およびジルコニウム(Zr)イオンのうち1種以上の金属イオンを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記キレート剤(E)は、EDTA(ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、EGTA(ethylene glycol bis(2-aminoethylether)-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、CyDTA(trans-1,2-diaminocyclohexane-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、DTPA(diethylenetriamine pentaacetic acid)、TETHA(triethylenetetraamine-N,N,N',N”,N'”,N'”-hexaacetic acid)、HEDTA(N-(2-hydroxyethyl)ethylenediaminetriacetic acid)、およびこれらの金属塩のうち1種以上を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ガラス繊維(F)は、断面のアスペクト比が1~1.5である、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびこれから製造された成形品に関する。より具体的には、本発明は、長期耐熱安定性、難燃性および電気的特性などに優れたポリアミド樹脂組成物およびこれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂(ナイロン)としては、PA66、PA6などの脂肪族ポリアミド樹脂、およびPA6T、PA6Iなどの芳香族ポリアミド樹脂がよく知られている。このようなポリアミド樹脂は、自動車部品、電気製品、電子製品、機械部品などに広く使用されている。
【0003】
自動車分野では、軽量化の傾向に伴い、各金属部品のプラスチック化が進行中にあり、特に、自動車のボンネット(under the hood)領域であるエンジンルーム周辺部品は、高温環境に長期間曝されるため、一般的に、耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物が使用される。
【0004】
近年、自動車業界では、高燃費によるエンジンのダウンサイジング(downsizing)化が進行中であり、これと共に、ターボチャージャー(turbo charger)が採用された車種が増加している。高出力ターボチャージャーが採用された自動車の場合、ボンネット内部の温度が従来に比べて大幅に上昇するので、長時間の高温環境に耐えるためにボンネット内部の各部品に、より高いレベルの耐熱性を有する素材を適用する必要性が台頭してきた。
【0005】
一般的に、ポリアミド樹脂組成物の長期耐熱安定性を確保するために、フェノール系またはホスファイト系などの有機酸化防止剤が広く使用されているが、これによると、高温で長期的に優れた物性を維持する特性を満足するレベルに向上させるのに限界が出てきている。
【0006】
また、有機酸化防止剤に比べて高い温度での長期耐熱安定性に優れると知られているCuI/KI混合物などの銅ハライド系熱安定剤が使用されることもあるが、銅は時間の経過と共に変色したり析出したりするおそれがあり、電気、電子、自動車部品に使用するときに問題が発生し得る。
【0007】
別の方法として、脂肪酸系熱安定剤を適用する方法が開発されたが、これによると、黄色化される傾向があるので着色性に不利であり、ブラック色相系列の製品にのみ適用されるという限界がある。
【0008】
したがって、高温に長期間曝されても、高い耐熱安定性を維持することができるポリアミド樹脂組成物の研究が必要である。
【0009】
関連先行技術文献としては、韓国公開特許第10-2010-0018542号公報がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高温で長期間にわたって機械的強度を維持することができる長期耐熱安定性、難燃性、および電気的特性に優れた熱可塑性樹脂組成物ならびにこれから製造された成形品を提供することにある。
【0011】
本発明の上記およびその他の目的は、下記で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一具現例は、(A)芳香族ポリアミド樹脂約30重量%~約50重量%;(B)脂肪族ポリアミド樹脂約1重量%~約10重量%;(C)ポリフェニレンスルフィド樹脂約1重量%~約15重量%;(D)リン系難燃剤約10重量%~約20重量%;(E)キレート剤約0.1重量%~約5重量%;および(F)ガラス繊維約30重量%~約50重量%;を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0013】
上記芳香族ポリアミド樹脂(A)および上記脂肪族ポリアミド樹脂(B)は、約3:1~約23:1の重量比で含まれてもよい。
【0014】
上記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、芳香族ジカルボン酸単位を約10モル%~約100モル%含むジカルボン酸単位;ならびに脂肪族ジアミン単位および脂環族ジアミン単位のうち1種以上を含むジアミン単位;を含んでもよい。
【0015】
上記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ヘキサメチレンテレフタルアミドとヘキサメチレンアジポアミドとからなるポリアミド(PA6T/66);およびヘキサメチレンテレフタルアミドと2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドとからなるポリアミド(PA6T/DT);のうち1種以上を含んでもよい。
【0016】
上記脂肪族ポリアミド(B)は、ポリアミド6およびポリアミド66のうち1種以上を含んでもよい。
【0017】
上記芳香族ポリアミド樹脂(A)および上記脂肪族ポリアミド樹脂(B)と、ポリフェニレンスルフィド樹脂(C)とは、約3:1~約50:1の重量比で含まれてもよい。
【0018】
上記リン系難燃剤(D)は、赤リン、ホスフェート(phosphate)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスフィネート(phosphinate)化合物、ホスフィンオキシド(phosphine oxide)化合物、ホスファゼン(phosphazene)化合物、およびこれらの金属塩のうち1種以上を含んでもよい。
【0019】
上記キレート剤(E)は、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アンチモン(Sb)、マグネシウム(Mg)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、およびジルコニウム(Zr)イオンのうち1種以上の金属イオンを含んでもよい。
【0020】
前記キレート剤(E)は、EDTA(ethylenediamine-N,NN',N'-tetraacetic acid)、EGTA(ethylene glycol bis(2-aminoethylether)-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、CyDTA(trans-1,2-diaminocyclohexane-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、DTPA(diethylenetriamine pentaacetic acid)、TETHA(triethylenetetraamine-N,N,N',N”,N'”,N'”-hexaacetic acid)、HEDTA(N-(2-hydroxyethyl)ethylenediaminetriacetic acid)、およびこれらの金属塩のうち1種以上を含んでもよい。
【0021】
前記(C)ガラス繊維は、断面のアスペクト比が約1~約1.5であってもよい。
【0022】
本発明の他の実施例は、上述した熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品に関する。
【0023】
上記成形品は、引張強度が下記式1を満足することができる。
【0024】
【0025】
上記式1において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した成形品の引張強度(kgf/cm2)である。
【0026】
上記成形品は、200℃で500時間の間エージングした後、下記式2で表される引張強度維持率が約70%以上であってもよい。
【0027】
【0028】
上記式2において、TS1は、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定された試験片の初期引張強度(kgf/cm2)であり、TS2は、試験片を200℃で500時間の間エージングした後、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した引張強度(kgf/cm2)である。
【0029】
上記成形品は、UL-94の規定に基づいて測定した3.2mm厚の試験片の難燃性がV-0以上であってもよい。
【0030】
上記成形品は、IEC 60112規格に基づいて測定した3mm厚の試験片の比較トラッキング指数(CTI)が約250V以上であってもよい。
【0031】
上記成形品は、ASTM D149規格に基づいて測定した厚さ1mmでの絶縁破壊強度が約30KV/mm~約45KV/mmであってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、高温で長期間、機械的強度を維持できる長期耐熱安定性、難燃性および電気的特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一具現例は、(A)芳香族ポリアミド樹脂約30重量%~約50重量%;(B)脂肪族ポリアミド樹脂約1重量%~約10重量%;(C)ポリフェニレンスルフィド樹脂約1重量%~約15重量%;(D)リン系難燃剤約10重量%~約20重量%;(E)キレート剤約0.1重量%~約5重量%;および(F)ガラス繊維約30重量%~約50重量%;を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。これにより、本発明は、高温で長期間、機械的強度を維持できる長期耐熱安定性、難燃性、および電気的特性に優れた上記熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0034】
(A)芳香族ポリアミド樹脂
本発明の一具体例に係る芳香族ポリアミド樹脂(A)は、芳香族基を含む単量体から形成されるホモポリマー、共重合体、三元共重合体、またはそれ以上の重合体であってもよく、ここで、共重合体という用語は、複数のアミドおよび/またはジアミド分子の繰り返し単位を有するポリアミドをいう。
【0035】
上記芳香族ポリアミド樹脂は、主鎖に芳香族化合物を含む構造であって、芳香族ジカルボン酸(aromatic dicarboxylic acid)約10モル%~約100モル%を含むジカルボン酸モノマーと、脂肪族ジアミン(aliphatic diamine)および/または脂環族ジアミン(alicyclic diamine)を含むジアミンモノマーとの縮重合によって製造され得る。例えば、上記脂肪族および/または脂環族ジアミンは、炭素数が4~20である脂肪族および/または脂環族ジアミンであってもよく、上記芳香族ジカルボン酸は、分子内に芳香族ベンゼン環が含有されているテレフタル酸(terephthalic acid)、イソフタル酸(isophthalic acid)、これらの組み合わせなどであってもよい。
【0036】
つまり、上記芳香族ポリアミド樹脂は、繰り返し単位としては、芳香族ジカルボン酸単位を約10モル%~約100モル%含むジカルボン酸単位;ならびに脂肪族ジアミン単位および脂環族ジアミン単位のうち1種以上を含むジアミン単位;を含んでもよい。
【0037】
具体例において、上記芳香族ジカルボン酸単位は、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシ二酢酸、1,3-フェニレンジオキシ二酢酸、ジフェン酸、4,4'-オキシ二安息香酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4'-ジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、これらの組み合わせなどから由来し得る。
【0038】
具体例において、上記ジカルボン酸単位は、上記芳香族ジカルボン酸単位以外に非芳香族ジカルボン酸から由来した単位をさらに含んでもよい。上記非芳香族ジカルボン酸は、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸であってもよい。例えば、上記非芳香族ジカルボン酸単位は、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;およびこれらの組み合わせなどから誘導される単位などであってもよい。
【0039】
具体例において、上記非芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、全体のジカルボン酸単位約100モル%の中、約90モル%以下、例えば約80モル%以下、具体的には約70モル%以下、さらに具体的には約60モル%以下であってもよい。
【0040】
具体例において、上記ジアミン単位は、脂肪族および/または脂環族ジアミンから由来し得る。上記脂肪族および/または脂環族ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロへキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロへキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロへキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン、ビス(p-アミノシクロへキシル)メタン、2-メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、これらの組み合わせなどを例示することができる。
【0041】
具体例において、上記芳香族ポリアミド樹脂は、ヘキサメチレンテレフタルアミドとヘキサメチレンアジピン酸アミドとからなるポリアミド(PA6T/66)、ヘキサメチレンテレフタルアミドと2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドとからなるポリアミド(PA6T/DT)、またはこれらの組み合わせなどを含んでもよい。例えば、PA6T/66を含んでもよい。
【0042】
具体例において、上記芳香族ポリアミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、約80℃~約150℃、具体的には約85℃~約140℃、例えば、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、125℃、130℃、135℃、140℃であってもよい。上記範囲で、芳香族ポリアミド樹脂が高耐熱特性を実現することができる。
【0043】
具体例において、上記芳香族ポリアミド樹脂の分子量は、特に制限されず、25℃の硫酸溶液でウベローデ(Ubbelodhde)粘度計で測定した固有粘度(intrinsic viscosity:IV)が約0.75dL/g以上、具体的には約0.75dL/g~約1.15dL/g、例えば0.75dL/g、0.8dL/g、0.85dL/g、0.9dL/g、0.95dL/g、1dL/g、1.05dL/g、1.1dL/g、1.15dL/gであってもよい。
【0044】
具体例において、上記芳香族ポリアミド樹脂は、全体の熱可塑性樹脂組成物の約30重量%~約50重量%、具体的には約30重量%~約45重量%、例えば、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%で含まれる。芳香族ポリアミド樹脂が約50重量%を外れる場合は、難燃性低下の問題があり、約30重量%未満である場合は、成形性および耐熱性の低下の欠点がある。
【0045】
(B)脂肪族ポリアミド樹脂
本発明の一具体例に係る脂肪族ポリアミド樹脂(B)は、分子鎖内に芳香族環を含有しないポリアミドであって、炭素数10~20の脂肪族基を含有してもよい。
【0046】
具体例において、上記脂肪族ポリアミド樹脂は、アミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン、およびジカルボン酸から形成されるホモポリマー、共重合体、三元共重合体、またはそれ以上の重合体であってもよく、ここで、共重合体は、二つ以上のアミドおよび/またはジアミド分子の繰り返し単位を有するポリアミドを意味する。
【0047】
具体例において、上記アミノカルボン酸は、炭素数6~12のアミノカルボン酸であってもよく、例えば、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、これらの組み合わせなどを含んでもよい。
【0048】
具体例において、上記ラクタムは、炭素数4~12のラクタムであってもよく、例えば、α-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム、ε-エナントラクタム、これらの組み合わせなどを含んでもよい。
【0049】
具体例において、上記ジアミンは、脂肪族または脂環族ジアミンであってもよく、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロへキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロへキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロへキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン、ビス(p-アミノシクロへキシル)メタン、2-メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、これらの組み合わせなどを含んでもよい。
【0050】
具体例において、上記ジカルボン酸は、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸であってもよく、例えば、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジエチルコハク酸、これらの組み合わせなどを含んでもよい。
【0051】
具体例において、上記脂肪族ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド910、ポリアミド912、ポリアミド913、ポリアミド914、ポリアミド915、ポリアミド616、ポリアミド936、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1013、ポリアミド1014、ポリアミド1210、ポリアミド1212、ポリアミド1213、ポリアミド1214、ポリアミド614、ポリアミド613、ポリアミド615、ポリアミド616などであってもよい。これらは、場合に応じて、単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。例えば、前記脂肪族ポリアミド樹脂として、ポリアミド6またはポリアミド66を使用してもよく、場合に応じて、ポリアミド6およびポリアミド66を混合して使用してもよい。
【0052】
具体例において、上記脂肪族ポリアミド樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が約30℃~約100℃、具体的には約30℃~約80℃、例えば、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃であってもよく、融点(Tm)が約160℃~約280℃、例えば、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃であってもよい。上記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および加工性などが優れる。
【0053】
具体例において、上記脂肪族ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、約10,000g/mol~約200,000g/mol、具体的には約20,000g/mol~150,000g/mol、例えば20,000g/mol、25,000g/mol、30,000g/mol、35,000g/mol、40,000g/mol、45,000g/mol、50,000g/mol、55,000g/mol、60,000g/mol、65,000g/mol、70,000g/mol、75,000g/mol、80,000g/mol、85,000g/mol、90,000g/mol、95,000g/mol、100,000g/mol、105,000g/mol、110,000g/mol、115,000g/mol、120,000g/mol、125,000g/mol、130,000g/mol、135,000g/mol、140,000g/mol、145,000g/mol、150,000g/molであってもよい。
【0054】
具体例において、上記脂肪族ポリアミド樹脂は、全体の熱可塑性樹脂組成物の約1重量%~約10重量%、具体的には約2重量%~約8重量%、例えば、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%で含まれてもよい。脂肪族ポリアミド樹脂が約10重量%を超える場合は、耐熱性低下の問題があり、約1重量%未満である場合は、長期耐熱性低下の問題がある。
【0055】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記芳香族ポリアミド樹脂および上記脂肪族ポリアミド樹脂を約3:1~約23:1の重量比(芳香族ポリアミド樹脂:脂肪族ポリアミド樹脂)、具体的には約3:1~約6:1、例えば、3:1、4:1、5:1、6:1で含んでもよい。上記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の長期耐熱安定性がさらに優秀になり、押出工程などの加工を容易に行うことができる。
【0056】
(C)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明の一具体例に係るポリフェニレンスルフィド樹脂(C)は、熱可塑性樹脂であって、p-ジクロロベンゼン(p-dichlorobenzene)と硫化ナトリウム(Sodium sulfide)との重合物質を含有する重合体であってもよい。このようなポリフェニレンスルフィド樹脂は、高温耐熱性と同時に、-50℃の低温でも常温時とほとんど変わらない特性を維持し、広い温度範囲にわたって優れた機械的物性を具現することができる。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、毒性がなく安全であり、熱可塑性樹脂の難燃性をさらに向上させることができる。
【0057】
具体例において、上記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0058】
【0059】
具体例において、上記ポリフェニレンスルフィド樹脂のうち化学式1で表される繰り返し単位は、50モル%以上、具体的には70モル%以上含まれてもよい。記範囲内で、ポリフェニレンスルフィド樹脂の結晶化度が高く、耐熱性および剛性がさらに向上し得る。上記*は、結合部位を意味する。
【0060】
具体例において、上記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、前記化学式1で表される繰り返し単位以外に、p-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジブロモベンゼン、o-ジブロモベンゼン、m-ジブロモベンゼン、1-ブロモ-4-クロロベンゼン、1-ブロモ-3-クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン、1-メチル-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジメチル-2,5-ジクロロベンゼン、1,3-ジメチル-2,5-ジクロロベンゼン、3,5-ジクロロ安息香酸などに由来する単位をさらに含んでもよい。
【0061】
上記ポリフェニレンスルフィド樹脂は、全体の熱可塑性樹脂組成物の約1重量%~約15重量%、具体的には約1重量%~約12重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%で含まれてもよい。上記ポリフェニレンスルフィド樹脂の含有量が約1重量%未満である場合は、難燃性低下の問題があり、約15重量%を超える場合は、電気的特性低下の問題がある。
【0062】
(D)リン系難燃剤
本発明に使用されるリン系難燃剤は、難燃性熱可塑性樹脂組成物に使用される通常のリン系難燃剤であってもよい。例えば、赤リン、ホスフェート化合物、ホスホネート化合物、ホスフィネート化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスファゼン化合物、これらの金属塩などのリン系難燃剤が使用されてもよい。上記リン系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
具体例において、上記リン系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、アンモニウムポリホスフェート(phase II)、メラミンホスフェート、レゾシノール-ジ(ビス-2,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAジフェニルホスフェート、シクロホスファゼン、アルミニウムジエチルホスフィネート、ジエチルホスフィネートアンモニウム塩、およびこれらの組み合わせのうち1種以上を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
上記リン系難燃剤は、上記全体の熱可塑性樹脂組成物の約10重量%~約20重量%、具体的には約10重量%~約15重量%、例えば、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%で含まれてもよい。前記リン系難燃剤の含有量が約10重量%未満である場合は、難燃性低下の問題があり、約20重量%を超える場合は、加工性および電気的特性の低下の問題がある。
【0065】
(E)キレート剤
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、キレート剤を使用し、高温でエージングする際、表面を酸化させて表面へのチャー(char)の形成を促進させることによって、熱可塑性樹脂内部への酸化層の浸透を防止し、熱可塑性樹脂の分解を防止することができ、これによって、長期的な耐熱安定性向上の効果を得ることができる。
【0066】
上記キレート剤は、カルボン酸またはその塩のうちの少なくとも一つと、アミノ基とを含むことができる。上記キレート剤は、分子構造中に金属イオンとの結合を形成することができる官能基を有する化合物であって、陽イオンと陰イオンとに解離された金属塩の陽イオンと結合して、安定化したキレート錯化合物を形成することができる。
【0067】
具体例において、上記キレート剤は、多価カルボキシル基を有する化合物を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。例えば、ポリカルボン酸またはカルボキシレート基を有する化合物として、下記化学式2a、2b、または2cで表される官能基を含む化合物などを使用してもよい。
【0068】
【0069】
上記化学式2a~2cで表される官能基を含む化合物の具体的な例としては、EDTA(ethylenediamine-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、EGTA(ethylene glycol bis(2-aminoethylether)-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、CyDTA(trans-1,2-diaminocyclohexane-N,N,N',N'-tetraacetic acid)、DTPA(diethylene triamine pentaacetic acid)、TETHA(triethylenetetraamine-N,N,N',N”,N'”,N'”-hexaacetic acid)、HEDTA(N-(2-hydroxyethyl)ethylenediamine triacetic acid)、これらの金属塩などを例示することができ、これらは、単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
具体例において、上記キレート剤で結合を形成する金属イオンは、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アンチモン(Sb)、マグネシウム(Mg)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)イオンのうち少なくとも一つであってもよい。本発明のキレート剤で使用される金属イオンは、上記イオンに限定されず、同様の作用効果を示す金属イオンであれば全て使用可能であることは当然である。例えば、上記キレート剤としては、EDTA-2Na(ethylenediamine tetraacetic acid-disodium salt)を使用してもよい。
【0071】
具体例において、上記キレート剤は、全体の熱可塑性樹脂組成物の約0.1重量%~約5重量%、例えば、0.1重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%で含まれてもよい。上記キレート剤の含有量が約0.1重量%未満である場合は、長期耐熱性低下の問題があり、約5重量%を超える場合は、加工性低下の問題がある。
【0072】
(F)ガラス繊維
本発明のガラス繊維は、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度を向上させることができる。
【0073】
具体例において、上記ガラス繊維は、直径が約8μm~20μm、例えば、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μmで、長さが約1.5mm~約8mm、例えば、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mm、8.5mmであってもよい。ガラス繊維の直径が上記範囲である場合は、優れた強度補強の効果を得ることができ、ガラス繊維の長さが上記範囲である場合は、押出機などの加工機に投入することが容易になり、強度補強の効果も大きく改善され得る。
【0074】
具体例において、上記ガラス繊維は、断面が円形、楕円形、長方形、または二つの円が接続されたダンベル形状のものを使用することができる。
【0075】
具体例において、上記ガラス繊維は、断面のアスペクト比が約1~約1.5、例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5であってもよい。例えば、断面のアスペクト比が約1である円形断面のガラス繊維を使用してもよい。ここで、上記アスペクト比は、ガラス繊維の断面で最も小さい直径に対する最も長い直径の比率と定義される。上記断面のアスペクト比の範囲を有するガラス繊維を使用する場合、価格的な面で製品の単価を下げることができ、寸法安定性および外観を良好にすることができる。
【0076】
具体例において、上記ガラス繊維は、樹脂との反応を防止し、含浸度を向上させるために、所定のサイジング(sizing)物質で表面処理したものであってもよい。上記ガラス繊維の表面処理は、ガラス繊維の製造時または後工程で行われ得る。
【0077】
例えば、ガラス繊維の製造時、髪の毛のような各フィラメントは、サイジング物質によって表面がコーティングされる表面処理工程を経るようになり、これは、ガラス繊維が経る全ての工程の接触面で発生する摩擦からフィラメントを保護したり、ガラス繊維と樹脂との結合を容易にする機能を付与するためである。
【0078】
具体例において、上記ガラス繊維は、全体の熱可塑性樹脂組成物中、約30重量%~約50重量%、例えば、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%で含まれてもよい。上記ガラス繊維の含有量が約30重量%未満である場合は、初期物性低下の問題があり、約50重量%を超える場合は、加工性低下の問題がある。
【0079】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、それぞれの用途に応じて添加剤をさらに含んでもよい。
【0080】
具体例において、上記添加剤としては、滑剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、抗菌剤、離型剤、帯電防止剤などを例示することができ、これらは、最終的な成形品の特性に応じて、単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
【0081】
上記滑剤は、加工、成形、または押出中に熱可塑性樹脂組成物と接触する金属表面を潤滑させて、樹脂組成物の流れまたは移動を促進する物質であって、通常的に使用される物質を使用することができる。
【0082】
上記可塑剤は、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性、加工作業性、または膨張性を増加させる物質であって、通常的に使用される物質を使用することができる。
【0083】
上記熱安定剤は、高温で混練または成形する場合、熱可塑性樹脂の熱分解を抑制する物質であって、通常的に使用される物質を使用することができる。
【0084】
上記酸化防止剤は、熱可塑性樹脂と酸素との化学的反応を抑制または遮断させることによって、樹脂が分解され、固有の物性が失われることを防止する物質であって、フェノール型、ホスファイト型、チオエーテル型、およびアミン型酸化防止剤のうち1種以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0085】
上記光安定剤は、紫外線から熱可塑性樹脂が分解され、色が変化したり、機械的性質が失われることを抑制または遮断させる物質であって、好ましくは酸化チタンを使用することができる。
【0086】
前記着色剤は、通常の顔料または染料を使用することができる。
【0087】
具体例において、上記添加剤は、全体の熱可塑性樹脂組成物100重量部を基準として、約0.1重量部~約15重量部、例えば、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部で含まれてもよい。
【0088】
具体例において、上記熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法によって製造され得る。例えば、本発明の構成成分と、必要に応じてその他の添加剤とを混合した後、押出機内で溶融押出する方法によってペレットの形態で製造することができる。
【0089】
本発明に係る成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物から公知の成形方法によって製造されるものであって、長期耐熱安定性、難燃性、電気的特性などに優れる。
【0090】
上記成形品は、引張強度が下記式1を満足し得る。
【0091】
【0092】
上記式1において、TSは、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した成形品の引張強度(kgf/cm2)である。
【0093】
上記成形品は、200℃で500時間の間エージングした後、下記式2で表される引張強度維持率が約70%以上であってもよい。
【0094】
【0095】
上記式2において、TS1は、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定された成形品試験片の初期引張強度(kgf/cm2)であり、TS2は、試験片を200℃で500時間の間エージングした後、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した引張強度(kgf/cm2)である。
【0096】
上記成形品は、UL-94規定に基づいて測定した3.2mm厚の試験片の難燃性がV-0以上であってもよい。
【0097】
上記成形品は、IEC 60112規格に基づいて測定した3mm厚の試験片の比較トラッキング指数(CTI)が約250V以上、例えば、250V、300V、350V、400V、450V、500V、550V、600Vであってもよい。
【0098】
上記成形品は、ASTM D149規格に基づいて測定した1mm厚の試験片の絶縁破壊強度が約30KV/mm~約45KV/mm、例えば、30KV/mm、31KV/mm、32KV/mm、33KV/mm、34KV/mm、35KV/mm、36KV/mm、37KV/mm、38KV/mm、39KV/mm、40KV/mm、41KV/mm、42KV/mm、43KV/mm、44KV/mm、45KV/mmであってもよい。
【0099】
上記成形品は、長期耐熱安定性などが要求される分野に有用であり、例えば、自動車のボンネット内部の部品のうち少なくとも一つとして使用可能である。また、上記成形品は、自動車のバッテリーヒューズ、ターボレゾネーター(turbo resonator)、またはインタークーラータンクなどであってもよい。
【0100】
以下、実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は、単に説明のためのものに過ぎず、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0101】
実施例
下記の実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物に使用された成分は、下記の通りである。
【0102】
(A)芳香族ポリアミド樹脂
Solvay Advanced Polymers L.L.C.のPA6T/66製品であるA-6000を使用した。
【0103】
(B)脂肪族ポリアミド樹脂
KP Chemtech Co.,Ltd.のポリアミド6製品であるEN300を使用した。
【0104】
(C)ポリフェニレンスルフィド樹脂
東ソー株式会社のポリフェニレンスルフィド製品であるB-042を使用した。
【0105】
(D)リン系難燃剤
Clariant Co.,Ltd.のアルミニウムジエチルホスフィネート製品であるOP-1240を使用した。
【0106】
(E)キレート剤
Dow chemical社のEDTA-2Na製品であるNA2クリスタル(Crystals)を使用した。
【0107】
(F)ガラス繊維
NEG社のガラス繊維製品であるECS03T-717Hを使用した。
【0108】
実施例1~6および比較例1~7
下記の表1に記載の成分を混合機に投入し、乾式混合を行った。次に、この混合物を、L/Dが45であり、Φが45mmである二軸押出機に投入し、バレル(barrel)温度250℃~350℃で押出機を介してペレット形態の熱可塑性樹脂組成物を製造した。製造されたペレットを100℃で4時間以上乾燥した後、設定された10oz射出成形機を用いて物性評価のための試験片を製造した。
【0109】
物性評価方法
(1)引張強度(TS、kgf/cm2):ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した。
【0110】
(2)引張強度維持率(%):ASTM D638に基づいて引張強度を測定した後、下記式2で算出した。
【0111】
【0112】
上記式2において、TS1は、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定された試験片の初期引張強度(kgf/cm2)であり、TS2は、試験片を200℃で500時間の間エージングした後、ASTM D638に基づいて5mm/minの引張速度の条件で測定した引張強度(kgf/cm2)である。
【0113】
(4)難燃性:UL-94規定に基づいて3.2mm厚の試験片の難燃性を測定した。
【0114】
(5)電圧特性(V):IEC 60112規格に基づいて3mm厚の試験片の比較トラッキング指数(CTI)を測定した。
【0115】
(6)絶縁破壊強度(KV/mm):ASTM D149規格に基づいて1mm厚の試験片の絶縁破壊強度を測定した。
【0116】
【0117】
【0118】
上記表1の結果から分かるように、本発明の実施例1~6の熱可塑性樹脂組成物によって製造された成形品は、引張強度および引張強度維持率に優れると同時に、難燃性、電圧特性、および絶縁破壊強度にも優れ、これらのバランスが優れていた。
【0119】
一方、脂肪族ポリアミド樹脂およびキレート剤を含まない比較例1、脂肪族ポリアミド樹脂を含まない比較例2、ならびにポリフェニレンスルフィド樹脂およびキレート剤を含まない比較例3の場合は、高温で長時間エージングした後、引張強度が激しく低下し、引張強度維持率が低いので、長期耐熱性の確保が困難であることを確認した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を含まない比較例4、およびリン系難燃剤を含まない比較例5の場合は、難燃特性がV-0等級に及ばないことを確認した。ポリアミド樹脂、リン系難燃剤およびキレート剤を全く含まず、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびガラス繊維のみを含む比較例6の場合は、電圧特性および絶縁破壊強度が低いことを確認した。
【0120】
また、芳香族ポリアミド樹脂の含有量が本発明の範囲を超え、ガラス繊維の含有量が本発明の範囲未満である比較例7の場合は、引張強度、引張強度維持率、および難燃性が本発明の実施例に及ばないことを確認した。
【0121】
本発明の単純な変形および変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。