(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】静的マルチビューディスプレイ及び方法
(51)【国際特許分類】
G02B 30/00 20200101AFI20220809BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20220809BHJP
G03B 35/24 20210101ALI20220809BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220809BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20220809BHJP
H04N 13/32 20180101ALI20220809BHJP
【FI】
G02B30/00
G02B5/18
G03B35/24
G09F9/00 361
H04N13/302
H04N13/32
(21)【出願番号】P 2019536016
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 US2017053817
(87)【国際公開番号】W WO2018128657
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-07-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-28
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514274546
【氏名又は名称】レイア、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEIA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ファタル,デイヴィッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】リ,シュエジアン
(72)【発明者】
【氏名】アイエータ,フランセスコ
【合議体】
【審判長】瀬川 勝久
【審判官】野村 伸雄
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114929(JP,A)
【文献】特表2015-531075(JP,A)
【文献】特開2012-118378(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171705(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/106987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 30/00
G02B 30/56
G03B 35/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的マルチビューディスプレイであって、
光ビームを導波するように構成されたライトガイドと、
前記ライトガイド上の入力位置にある光源であって、前記ライトガイド内に互いに異なる半径方向を有する複数の導波光ビームを生成するように構成されている、光源と、
静的マルチビュー画像を表す指向性光ビームを放射するように構成された複数の回折格子であって、各回折格子が、前記複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビームの一部から、前記静的マルチビュー画像の
単一のビューピクセルの強度及びビュー方向に対応する
単一の強度及び
単一の主角度方向を有する1つの指向性光ビームを生成するように構成されている、回折格子と
を備え
、
前記複数の回折格子のうちの1つの回折格子の格子ピッチおよび格子方向の一方または両方が、前記回折格子によって提供される指向性光ビームの主角度方向を決定するように構成され、前記格子ピッチおよび前記格子方向が、前記回折格子に対応する導波光ビームの半径方向に沿った前記回折格子の位置および前記光源の入力位置の両方の関数である、静的マルチビューディスプレイ。
【請求項2】
前記光源の前記入力位置が、前記ライトガイドの側面上の前記側面の中間点あたりにある、請求項1に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項3】
前記回折格子の格子の特徴が、前記強度及び前記主角度方向を決定するように構成されており、前記格子の特徴が、前記ライトガイドの表面上の前記回折格子の位置及び前記ライトガイドの側面上の前記光源の前記入力位置の両方の関数である、請求項1
または2に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項4】
前記格子の特徴が、前記回折格子により生成される前記指向性光ビームの前記強度を決定するように構成された格子深さを含む、請求項3に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項5】
前記複数の指向性光ビームのうちの1つの指向性光ビームの放射パターンが、前記複数の導波光ビームの伝搬方向に対して平行な方向において、前記複数の導波光ビームの前記伝搬方向に対して垂直な方向よりも広い、請求項1
から4のいずれか一項に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項6】
前記複数の回折格子が、前記ライトガイドの光ビーム放射表面とは反対側の前記ライトガイドの表面上に位置する、請求項1
から5のいずれか一項に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項7】
前記光源と前記ライトガイドとの間にコリメータをさらに備える、請求項1
から6のいずれか一項に記載の静的マルチビューディスプレイであって、前記コリメータが、前記光源により放射された光をコリメートするように構成されており、前記複数の導波光ビームが、コリメートされた光ビームを含む、静的マルチビューディスプレイ。
【請求項8】
前記ライトガイド上の横方向にオフセットした別の入力位置にある別の光源をさらに備える、請求項1
から7のいずれか一項に記載の静的マルチビューディスプレイであって、他方の光源が、別の複数の導波光ビームを生成するように構成されており、前記複数の導波光ビーム及び他方の複数の導波光ビームが、互いに異なる半径方向を有し、前記光源と前記他方の光源との間の切替えが、前記静的マルチビュー画像を動画化するように構成されており、準静的マルチビューディスプレイである、静的マルチビューディスプレイ。
【請求項9】
前記ライトガイドが、前記ライトガイド内の前記複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビームの伝搬方向と直交する方向に伝搬する光に対して透明である、請求項1
から8のいずれか一項に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項10】
静的マルチビューディスプレイであって、
平板ライトガイドと、
前記平板ライトガイド内に互いに異なる半径方向を有する複数の導波光ビームを生成するように構成された光源と、
静的マルチビュー画像の複数の異なるビューを生成するように構成されたマルチビューピクセルのアレイであって、1つのマルチビューピクセルが、前記マルチビューピクセルのビューピクセルを表す指向性光ビームを生成するために前記複数の導波光ビームからの光を回折結合して外に出すように構成された複数の回折格子を備える、マルチビューピクセルのアレイと
を備え、
各回折格子は、静的マルチビュー画像の単一のビューピクセルの強度およびビュー方向に対応する単一の強度および単一の主角度方向を有する指向性光ビームを、前記複数の導波光ビームの1つの導波光ビームの一部から提供するように構成され、
前記複数の回折格子のうちの1つの回折格子により
対応するビューピクセルのビュー方向に生成される1つの指向性光ビームの主角度方向が、格子
ピッチおよび格子方向の一方または両方によって決定され、前記格子
ピッチおよび格子方向が、前記回折格子と前記光源との相対位置の関数である、静的マルチビューディスプレイ。
【請求項11】
対応するビューピクセルの強度に対応する、前記回折格子により生成される前記指向性光ビームの強度が、前記回折格子の回折結合効率により決定される、請求項
10に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項12】
前記光源が、前記ライトガイドの側面に沿って第2の光エミッタから横方向にオフセットした第1の光エミッタを含み、前記第1の光エミッタが、第1の複数の導波光ビームを生成するように構成されており、前記第2の光エミッタが、第2の複数の導波光ビームを生成するように構成されている、請求項
10または11に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項13】
前記ライトガイドが、前記ライトガイド内の前記複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビームの伝搬方向と直交する方向に透明である、請求項
10から12のいずれか一項に記載の静的マルチビューディスプレイ。
【請求項14】
静的マルチビューディスプレイの動作の方法であって、
共通の原点と、互いに異なる半径方向とを有する複数の導波光ビームをライトガイド内で導波するステップと、
複数の回折格子を使用して静的マルチビュー画像を表す複数の指向性光ビームを放射するステップであって、前記複数の回折格子のうちの1つの回折格子が、前記複数の導波光ビームからの光を回折結合して、前記静的マルチビュー画像の対応する
単一のビューピクセルの
単一の強度及び
単一の主角度方向を有する
、前記複数の指向性光ビームのうちの1つの指向性光ビームとして外に出す、ステップと
を含み、
前記放射された指向性光ビームの前記強度及び主角度方向が、前記共通の原点に対する前記回折格子の位置に基づいている前記回折格子の格子の特徴により制御され
、
前記格子の特徴が前記回折格子の格子ピッチおよび格子方向のうちの一方または両方を含む、方法。
【請求項15】
前記強度を制御する前記格子の特徴が、前記回折格子の格子深さを含む、請求項
14に記載の静的マルチビューディスプレイの動作の方法。
【請求項16】
前記複数の導波光ビームとして導波される光を光源を使用して生成するステップであって、前記光源が、前記ライトガイドの側面に位置しており、前記光源の位置が、前記複数の導波光ビームの前記共通の原点である、ステップをさらに含む、請求項
14または15に記載の静的マルチビューディスプレイの動作の方法。
【請求項17】
第1の複数の光導波光ビームを第1の時間の間導波し、且つ第2の複数の導波光ビームを第2の期間の間の第2の時間の間導波することにより前記静的マルチビュー画像を動画化するステップであって、前記第1の複数の導波光ビームが、前記第2の複数の導波光ビームの共通の原点とは異なる共通の原点を有し、動画化が、前記第1及び第2の時間の間の前記静的マルチビュー画像の見かけの位置のシフトを含む、ステップをさらに含む、請求項
14から16のいずれか一項に記載の静的マルチビューディスプレイの動作の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月6日に出願された米国仮特許出願第62/442,982号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
なし
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ、とりわけ「電子」ディスプレイは、多種多様なデバイス及び製品のユーザに情報を通信するためのほぼユビキタスな媒体である。例えば、電子ディスプレイは、これらに限定されないが、携帯電話(例えば、スマートフォン)、腕時計、タブレットコンピュータ、モバイルコンピュータ(例えば、ラップトップコンピュータ)、パーソナルコンピュータ及びコンピュータモニタ、自動車用ディスプレイコンソール、カメラディスプレイ、及びその他の様々なモバイル並びに実質的に非モバイルのディスプレイ用途及びデバイスを含む様々なデバイス並びに用途に見出すことができる。電子ディスプレイは一般に、通信されている画像又は同様の情報を表し、又は表示するために、ピクセル(画素)強度の個別的なパターンを使用する。個別的なピクセル強度パターンは、パッシブ電子ディスプレイの場合のように、ディスプレイに入射する光を反射することにより実現することができる。あるいは、電子ディスプレイは、個別的なピクセル強度パターンを実現するために、光を生成又は放射することができる。光を放射する電子ディスプレイは、しばしば、アクティブディスプレイと呼ばれる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は以下の[1]から[20]を含む。
[1]静的マルチビューディスプレイであって、
光ビームを導波するように構成されたライトガイドと、
上記ライトガイド上の入力位置にある光源であって、上記ライトガイド内に互いに異なる半径方向を有する複数の導波光ビームを生成するように構成されている、光源と、
静的マルチビュー画像を表す指向性光ビームを放射するように構成された複数の回折格子であって、各回折格子が、上記複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビームの一部から、上記静的マルチビュー画像のビューピクセルの強度及びビュー方向に対応する強度及び主角度方向を有する1つの指向性光ビームを生成するように構成されている、回折格子と
を備える、静的マルチビューディスプレイ。
[2]上記光源の上記入力位置が、上記ライトガイドの側面上の上記側面の中間点あたりにある、上記[1]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[3]上記回折格子の格子の特徴が、上記強度及び上記主角度方向を決定するように構成されており、上記格子の特徴が、上記ライトガイドの表面上の上記回折格子の位置及び上記ライトガイドの側面上の上記光源の上記入力位置の両方の関数である、上記[1]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[4]上記格子の特徴が、上記回折格子の格子ピッチ及び上記回折格子の格子方向のうちの1つ又は両方を含み、上記格子の特徴が、上記回折格子により生成される上記指向性光ビームの上記主角度方向を決定するように構成されている、上記[3]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[5]上記格子の特徴が、上記回折格子により生成される上記指向性光ビームの上記強度を決定するように構成された格子深さを含む、上記[3]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[6]上記複数の指向性光ビームのうちの1つの指向性光ビームの放射パターンが、上記複数の導波光ビームの伝搬方向に対して平行な方向において、上記複数の導波光ビームの上記伝搬方向に対して垂直な方向よりも広い、上記[1]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[7]上記複数の回折格子が、上記ライトガイドの光ビーム放射表面とは反対側の上記ライトガイドの表面上に位置する、上記[1]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[8]上記光源と上記ライトガイドとの間にコリメータをさらに備える、上記[1]に記載の静的マルチビューディスプレイであって、上記コリメータが、上記光源により放射された光をコリメートするように構成されており、上記複数の導波光ビームが、コリメートされた光ビームを含む、静的マルチビューディスプレイ。
[9]上記ライトガイド上の横方向にオフセットした別の入力位置にある別の光源をさらに備える、上記[1]に記載の静的マルチビューディスプレイであって、他方の光源が、別の複数の導波光ビームを生成するように構成されており、上記複数の導波光ビーム及び他方の複数の導波光ビームが、互いに異なる半径方向を有し、上記光源と上記他方の光源との間の切替えが、上記静的マルチビュー画像を動画化するように構成されており、準静的マルチビューディスプレイである、静的マルチビューディスプレイ。
[10]上記ライトガイドが、上記ライトガイド内の上記複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビームの伝搬方向と直交する方向に伝搬する光に対して透明である、上記[1]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[11]静的マルチビューディスプレイであって、
平板ライトガイドと、
上記平板ライトガイド内に互いに異なる半径方向を有する複数の導波光ビームを生成するように構成された光源と、
静的マルチビュー画像の複数の異なるビューを生成するように構成されたマルチビューピクセルのアレイであって、マルチビューピクセルが、上記マルチビューピクセルのビューピクセルを表す指向性光ビームを生成するために上記複数の導波光ビームからの光を回折結合して外に出すように構成された複数の回折格子を備える、マルチビューピクセルのアレイと
を備え、
上記複数の回折格子のうちの1つの回折格子により生成される1つの指向性光ビームの主角度方向が、格子の特徴の関数であり、上記格子の特徴が、上記回折格子と上記光源との相対位置の関数である、静的マルチビューディスプレイ。
[12]上記格子の特徴が、上記回折格子の格子ピッチ及び格子方向のうちの1つ又は両方を含む、上記[11]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[13]対応するビューピクセルの強度に対応する、上記回折格子により生成される上記指向性光ビームの強度が、上記回折格子の回折結合効率により決定される、上記[11]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[14]上記光源が、上記ライトガイドの側面に沿って第2の光エミッタから横方向にオフセットした第1の光エミッタを含み、上記第1の光エミッタが、第1の複数の導波光ビームを生成するように構成されており、上記第2の光エミッタが、第2の複数の導波光ビームを生成するように構成されている、上記[11]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[15]上記ライトガイドが、上記ライトガイド内の上記複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビームの伝搬方向と直交する方向に透明である、上記[11]に記載の静的マルチビューディスプレイ。
[16]静的マルチビューディスプレイの動作の方法であって、
共通の原点と、互いに異なる半径方向とを有する複数の導波光ビームをライトガイド内で導波するステップと、
複数の回折格子を使用して静的マルチビュー画像を表す複数の指向性光ビームを放射するステップであって、上記複数の回折格子のうちの1つの回折格子が、上記複数の導波光ビームからの光を回折結合して、上記静的マルチビュー画像の対応するビューピクセルの強度及び主角度方向を有する上記複数の指向性光ビームのうちの1つの指向性光ビームとして外に出す、ステップと
を含み、
上記放射された指向性光ビームの上記強度及び主角度方向が、上記共通の原点に対する上記回折格子の位置に基づいている上記回折格子の格子の特徴により制御される、方法。
[17]上記主角度方向を制御する格子の特徴が、上記回折格子の格子ピッチ及び格子方向のうちの1つ又は両方を含む、上記[16]に記載の静的マルチビューディスプレイの動作の方法。
[18]上記強度を制御する上記格子の特徴が、上記回折格子の格子深さを含む、上記[16]に記載の静的マルチビューディスプレイの動作の方法。
[19]上記複数の導波光ビームとして導波される光を光源を使用して生成するステップであって、上記光源が、上記ライトガイドの側面に位置しており、上記光源の位置が、上記複数の導波光ビームの上記共通の原点である、ステップをさらに含む、上記[16]に記載の静的マルチビューディスプレイの動作の方法。
[20]第1の複数の光導波光ビームを第1の時間の間導波し、且つ第2の複数の導波光ビームを第2の期間の間の第2の時間の間導波することにより上記静的マルチビュー画像を動画化するステップであって、上記第1の複数の導波光ビームが、上記第2の複数の導波光ビームの共通の原点とは異なる共通の原点を有し、動画化が、上記第1及び第2の時間の間の上記静的マルチビュー画像の見かけの位置のシフトを含む、ステップをさらに含む、上記[16]に記載の静的マルチビューディスプレイの動作の方法。
本明細書に記載の原理による例及び実施形態の様々な特徴は、同様の参照番号が同様の構成要素を指す添付図面と併せて以下の発明を実施するための形態を参照して、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイの斜視図を示す。
【
図1B】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイのビュー方向に対応する特定の主角度方向を有する光ビームの角度成分の図的表現を示す。
【
図2】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における回折格子の断面図を示す。
【
図3A】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイの平面図を示す。
【
図3B】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイの一部の断面図を示す。
【
図3C】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイの斜視図を示す。
【
図4】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイの平面図を示す。
【
図5A】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるスプリアス反射緩和(spurious reflection mitigation)を含む静的マルチビューディスプレイの平面図を示す。
【
図5B】本明細書に記載の原理と一致する別の実施形態による、一例におけるスプリアス反射緩和を含む静的マルチビューディスプレイの平面図を示す。
【
図6A】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイの平面図を示す。
【
図6B】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、別の例における
図6Aの静的マルチビューディスプレイの平面図を示す。
【
図7A】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイの回折格子の平面図を示す。
【
図7B】本明細書に記載の原理と一致する別の実施形態による、一例におけるマルチビューピクセルとして組織化された一組の回折格子の平面図を示す。
【
図8】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイのブロック図を示す。
【
図9】本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイの動作の方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特定の例及び実施形態は、上述の図に示した特徴の追加又は代替のうちの1つである他の特徴を有する。これら及び他の特徴は、上述の図を参照して以下で詳述される。
【0007】
本明細書に記載の原理による例及び実施形態は、静的若しくは準静的三次元(3D)又はマルチビュー画像の表示を実現する。特に、記載の原理と一致する実施形態は、複数の指向性光ビームを使用して、静的又は準静的マルチビュー画像を表示する。複数の指向性光ビームのうちの指向性光ビームの個々の強度及び方向は、表示されているマルチビュー画像のビュー内の様々なビューピクセルに対応する。様々な実施形態によれば、指向性光ビームの個々の強度、及び、いくつかの実施形態において、指向性光ビームの個々の方向は、予め定められ、又は「固定され」る。 したがって、表示されたマルチビュー画像は、静的又は準静的マルチビュー画像と呼ばれることもある。
【0008】
様々な実施形態によれば、静的又は準静的マルチビュー画像を表示するように構成された静的マルチビューディスプレイは、個々の指向性光ビームの強度及び方向を有する指向性光ビームを生成するために、ライトガイドに光学的に接続された回折格子を備える。回折格子は、導波された光を回折結合して、又は回折散乱させてライトガイド内から外に出すことにより指向性光ビームを放射又は生成するように構成されており、光は、複数の導波光ビームとして導波される。さらに、複数の導波光ビームのうちの導波光ビームは、ライトガイド内で互いに異なる半径方向に導波される。したがって、複数の回折格子のうちの1つの回折格子は、回折格子に入射する導波光ビームの特定の半径方向の関数を説明する、又はその関数である格子の特徴(grating characteristic)を含む。特に、格子の特徴は、回折格子と、導波光ビームを生成するように構成された光源との相対位置の関数であってもよい。様々な実施形態によれば、格子の特徴は、回折格子により生成される放射された指向性光ビームと、表示されている静的又は準静的マルチビュー画像の様々なビュー内の関連するビューピクセルとの対応を確実にする導波光ビームの半径方向を説明するように構成されている。
【0009】
本明細書において、「マルチビューディスプレイ」は、マルチビュー画像の異なるビューを異なるビュー方向に生成するように構成された電子ディスプレイ又はディスプレイシステムと定義される。「静的マルチビューディスプレイ」は、複数の異なるビューとしてではあるが、予め定められた、又は固定された(すなわち、静的)マルチビュー画像を表示するように構成されたマルチビューディスプレイと定義される。「準静的マルチビューディスプレイ」は、本明細書において、異なる固定されたマルチビュー画像間又は複数のマルチビュー画像状態間で、典型的には時間に応じて切り替えることができる静的マルチビューディスプレイと定義される。異なる固定されたマルチビュー画像間又はマルチビュー画像状態間の切替えは、例えば、動画化の基本的な形態を実現することができる。さらに、本明細書において定義される通り、準静的マルチビューディスプレイは、静的マルチビューディスプレイの一種である。したがって、純粋に静的なマルチビューディスプレイ又は画像と、準静的マルチビューディスプレイ又は画像との間の区別が、適切な理解のために必要でない限り、そのような区別はない。
【0010】
図1Aは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイ10の斜視図を示す。
図1Aに示す通り、マルチビューディスプレイ10は、マルチビュー画像16内又はマルチビュー画像16のビュー14(又は等価的には、マルチビューディスプレイ10のビュー14)内にビューピクセルを表示するように構成されたスクリーン12上に回折格子を備える。スクリーン12は、例えば、自動車、電話(例えば、携帯電話、スマートフォンなど)、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータのコンピュータモニタ、カメラディスプレイ、又は実質的に任意のその他のデバイスの電子ディスプレイのディスプレイスクリーンであってもよい。
【0011】
マルチビューディスプレイ10は、マルチビュー画像16の異なるビュー14を、スクリーン12に対して異なるビュー方向18に(すなわち、異なる主角度方向に)生成する。ビュー方向18は、スクリーン12から様々な異なる主角度方向に延びる矢印として示されている。異なるビュー14は、(すなわち、ビュー方向18を示す)矢印の終端にある塗りつぶした多角形の枠として示されている。したがって、(例えば、
図1Aに示す)マルチビューディスプレイ10をy軸を中心に回転させたとき、見る人には異なるビュー14が見える。一方、(示した通り)
図1A中のマルチビューディスプレイ10をx軸を中心に回転させたとき、見られる画像は、(示した通り)見る人の眼に光が届かなくなるまで変化しない。
【0012】
異なるビュー14は、スクリーン12の上方にあるように示されているが、ビュー14は、実際には、マルチビュー画像16がマルチビューディスプレイ10上に表示されて見る人によって見られるとき、スクリーン12上又はスクリーン12の近くに現れることに留意されたい。
図1Aにあるようにスクリーン12の上方にマルチビュー画像16のビュー14を示しているのは、単に図を簡単にするためであり、特定のビュー14に対応するビュー方向18のうちのそれぞれ1つからマルチビューディスプレイ10を見ることを表すためである。さらに、
図1Aにおいて、わずか3つのビュー14及び3つのビュー方向18がすべて限定ではなく例として示されている。
【0013】
ビュー方向、又は等価的にはマルチビューディスプレイのビュー方向に対応する方向を有する光ビームは一般に、本明細書における定義上、角度成分{θ,φ}で記述される主角度方向を有する。角度成分θは、本明細書において、光ビームの「仰角成分」又は「仰角」と呼ばれる。角度成分φは、光ビームの「方位角成分」又は「方位角」と呼ばれる。定義上、仰角θは、垂直面(例えば、マルチビューディスプレイスクリーンの平面に対して垂直)内の角度であり、方位角φは、水平面(例えば、マルチビューディスプレイスクリーン平面に対して平行)内の角度である。
【0014】
図1Bは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイのビュー方向(例えば、
図1A中のビュー方向18)に対応する特定の主角度方向を有する光ビーム20の角度成分{θ,φ}の図的表現を示す。さらに、光ビーム20は、本明細書における定義上、特定の点から放射され、又は出る。すなわち、定義上、光ビーム20は、マルチビューディスプレイ内の特定の原点に関連する中心光線を有する。
図1Bはまた、光ビーム(又はビュー方向)の原点Oを示す。
【0015】
さらに本明細書において、「マルチビュー画像」及び「マルチビューディスプレイ」という用語において使用される「マルチビュー」という用語は、異なる視座(perspectives)を表す、又は複数のビューのうちのビュー間の角度の相違を含む複数のビューと定義される。さらに、本明細書において、「マルチビュー」という用語は明示的に、本明細書における定義上、2つを超える異なるビュー(すなわち、最低3つのビュー、一般に3つを超えるビュー)を含む。したがって、本明細書において使用される「マルチビューディスプレイ」は、シーン又は画像を表すために2つのみの異なるビューを含む立体表示とは明確に区別される。しかし、マルチビュー画像及びマルチビューディスプレイは、本明細書における定義上、2つを超えるビューを含んでもよいが、マルチビュー画像は、一度に見る(例えば、片眼で1つのビュー)ためにマルチビューのうちの2つのみを選択することにより、(例えば、マルチビューディスプレイ上で)立体対画像(stereoscopic pair of images)として見ることができることに留意されたい。
【0016】
マルチビューディスプレイ内で、「マルチビューピクセル」は、本明細書において、マルチビューディスプレイの同様の複数の異なるビューのそれぞれにおいてピクセル(画素)を表す一組又は複数のビューピクセルと定義される。同じように、マルチビューピクセルは、マルチビューディスプレイにより表示されるマルチビュー画像の異なるビューのそれぞれにおいてピクセルに対応する、又はピクセルを表す個々のビューピクセルを有してもよい。さらに、マルチビューピクセルのビューピクセルは、ビューピクセルのそれぞれが、本明細書における定義上、異なるビューのうちの対応する1つの予め定められたビュー方向に関連するので、いわゆる「指向性ピクセル」である。さらに、様々な例及び実施形態によれば、マルチビューピクセルのビューピクセルにより表される異なるビューピクセルは、異なるビューのそれぞれにおいて同等の位置若しくは少なくとも実質的にほぼ同じ位置又は座標を有してもよい。例えば、第1のマルチビューピクセルは、マルチビュー画像の異なるビューのそれぞれにおいて{x1,y1}に位置するビューピクセルに対応する個々のビューピクセルを有してもよく、第2のマルチビューピクセルは、異なるビューのそれぞれにおいて{x2,y2}に位置するビューピクセルに対応する個々のビューピクセルを有してもよく、以下同様である。
【0017】
いくつかの実施形態において、マルチビューピクセル内のいくつかのビューピクセルが、マルチビューディスプレイのいくつかのビューに等しくてもよい。例えば、マルチビューピクセルは、8個の異なるビューを有するマルチビューディスプレイに関連する8個のビューピクセルを形成することができる。あるいは、マルチビューピクセルは、64個の異なるビューを有するマルチビューディスプレイに関連する64個のビューピクセルを形成することができる。別の例において、マルチビューディスプレイは、8×4アレイのビュー(すなわち、32個のビュー)を生成することができて、マルチビューピクセルは、32個のビューピクセル(すなわち、各ビューに対して1個)を含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態によれば、マルチビューディスプレイのいくつかのマルチビューピクセルが、マルチビューディスプレイの選択されたビューを構成するいくつかのピクセルに実質的に等しくてもよい。
【0018】
本明細書において、「ライトガイド」は、内部全反射を利用して構造体内で光を導波する構造体と定義される。特に、ライトガイドは、ライトガイドの動作波長において実質的に透明であるコアを含んでもよい。様々な例において、「ライトガイド」という用語は一般に、ライトガイドの誘電体材料と、そのライトガイドを取り囲む材料又は媒体との間の境界面において光を導波するために内部全反射を利用する誘電体光導波路を指す。定義上、内部全反射の条件は、ライトガイドの屈折率が、ライトガイド材料の表面に隣接する周囲の媒体の屈折率より大きいことである。いくつかの実施形態において、ライトガイドは、内部全反射をさらに容易にするために、上述の屈折率差に加えて、又はその代わりにコーティングを含んでもよい。コーティングは、例えば、反射コーティングであってもよい。ライトガイドは、これらに限定されないが、平板ガイド又はスラブガイド及びストリップガイドのうちの1つ又は両方を含むいくつかのライトガイドのいずれかであってもよい。
【0019】
さらに本明細書において、「平板」という用語は、「平板ライトガイド」にあるようにライトガイドに適用されたとき、区分的に(piece-wise)又は個別的に(differentially)平面状の層又はシートと定義され、これは、「スラブ」ガイドと呼ばれることもある。特に、平板ライトガイドは、ライトガイドの上面と下面と(すなわち、対向する表面)により境界を画された2つの実質的に直交する方向に光を導波するように構成されたライトガイドと定義される。さらに、本明細書における定義上、上面及び下面は、いずれも互いに分離され、少なくとも個別的な意味で互いに実質的に平行であってもよい。すなわち、平板ライトガイドの任意の個別的に(differentially)小さな区画内で、上面及び下面は、実質的に平行であるか、又は同一平面にある。
【0020】
いくつかの実施形態において、平板ライトガイドは、実質的に平坦であってもよく(すなわち、平面に限定されてもよく)、したがって、平板ライトガイドは平面状のライトガイドである。他の実施形態において、平板ライトガイドは、1つ又は2つの直交する次元において曲線状であってもよい。例えば、平板ライトガイドは、円筒形の平板ライトガイドを形成するために、1つの次元において曲線状であってもよい。しかし、光を導波するために内部全反射が平板ライトガイド内に保たれるように、いかなる湾曲も十分に大きい曲率半径を有する。
【0021】
本明細書において、「回折格子」は一般に、回折格子に入射する光の回折を実現するように配置された複数のフィーチャ(すなわち、回折フィーチャ)と定義される。いくつかの例では、複数のフィーチャが、フィーチャの対間の1つ又はそれ以上の格子間隔を有して周期的又は準周期的に配置されてもよい。例えば、回折格子は、一次元(1D)アレイ内に配置された複数のフィーチャ(例えば、材料表面内の複数の溝又は隆起部)を含んでもよい。他の例では、回折格子は、フィーチャの二次元(2D)アレイであってもよい。回折格子は、例えば、材料表面上の突起又は材料表面内の穴の2Dアレイであってもよい。様々な実施形態及び例によれば、回折格子は、回折格子により回折される光のおよその波長より短い格子間隔又は隣接する回折フィーチャ間の距離を有するサブ波長格子であってもよい。
【0022】
したがって、且つ本明細書における定義上、「回折格子」は、回折格子に入射する光の回折を実現する構造体である。光がライトガイドから回折格子に入射すると、回折格子は、回折により光を結合してライトガイドの外に出すことができるので、実現される回折又は回折散乱は、「回折結合」を起こすことができ、したがって、そのように呼ばれる。回折格子はまた、回折により(すなわち、回折角で)光の角度をリダイレクトし、又は変化させる。特に、回折の結果、回折格子を出る光は一般に、回折格子に入射する光(すなわち、入射光)の伝搬方向とは異なる伝搬方向を有する。回折による光の伝搬方向の変化は、本明細書において「回折リダイレクション(diffractive redirection)」と呼ばれる。
したがって、回折格子は、回折格子に入射する光を回折によりリダイレクトする回折フィーチャを含む構造体であると理解することができて、光がライトガイドから入射すると、回折格子はまた、光を回折結合してライトガイドから外に出すことができる。
【0023】
さらに、本明細書における定義上、回折格子のフィーチャは、「回折フィーチャ」と呼ばれ、材料表面(すなわち、2つの材料間の境界)、材料表面内及び材料表面上のうちの1つ又はそれ以上に存在してもよい。この表面は、例えば、ライトガイドの表面であってもよい。回折フィーチャは、これらに限定されないが、表面、表面内又は表面上の溝、隆起部、穴及び突起のうちの1つ又はそれ以上を含む、光を回折する様々な構造体のいずれかを含んでもよい。例えば、回折格子は、材料表面内に複数の実質的に平行な溝を含んでもよい。別の例において、回折格子は、材料表面から立ち上がっている複数の平行な隆起部を含んでもよい。回折フィーチャ(例えば、溝、隆起部、穴、突起など)は、これらに限定されないが、正弦曲線の輪郭、長方形の輪郭(例えば、バイナリ回折格子)、三角形の輪郭及び鋸歯状の輪郭(例えば、ブレーズド格子)のうちの1つ又はそれ以上を含む、回折を実現する様々な断面形状又は輪郭のいずれかを有してもよい。
【0024】
以下でさらに説明するように、本明細書における回折格子は、フィーチャ間隔又はピッチ、方向及びサイズ(例えば、回折格子の幅又は長さ)のうちの1つ又はそれ以上を含む格子の特徴を有してもよい。さらに、格子の特徴は、回折格子に対する光ビームの入射角、光源からの回折格子の距離、若しくはその両方の関数が選択されても、又は選ばれてもよい。特に、回折格子の格子の特徴は、いくつかの実施形態によれば、光源と、回折格子の位置との相対位置に依存するよう選ぶことができる。回折格子の格子の特徴を適切に変化させることにより、回折格子により回折された(例えば、回折結合されてライトガイドの外に出た)光ビーム(すなわち、「指向性光ビーム」)の強度及び主角度方向の両方は、マルチビュー画像のビューピクセルの強度及びビュー方向に対応する。
【0025】
本明細書に記載の様々な例によれば、回折格子(例えば、以下で説明するマルチビューピクセルの回折格子)が、光を回折散乱させ、又は回折結合して光ビームとしてライトガイド(例えば、平板ライトガイド)の外に出すために使用されてもよい。特に、局所的に周期的な回折格子の回折角θ
m又は局所的に周期的な回折格子により得られる回折角θ
mは、以下の式(1)で記述することができる:
【数1】
(1)
(式中、λは光の波長であり、mは回折次数であり、nはライトガイドの屈折率であり、dは、回折格子のフィーチャ間の距離又は間隔であり、θ
iは、回折格子に対する光の入射角である。)簡単のため、式(1)では、回折格子がライトガイドの表面に隣接していること、及びライトガイドの外側の材料の屈折率が1に等しい(すなわち、n
out=1)ことを仮定する。一般に、回折次数mは整数で与えられる。回折格子により生成された光ビームの回折角θ
mは、回折次数が正(例えば、m>0)である式(1)で記述することができる。例えば、一次回折は、回折次数mが1に等しい(すなわち、m=1)ときに得られる。
【0026】
図2は、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における回折格子30の断面図を示す。例えば、回折格子30は、ライトガイド40の表面上に位置していてもよい。さらに、
図2は、回折格子30に入射角θ
iで入射する光ビーム(又は光ビームの集合)50を示す。光ビーム50は、ライトガイド40内の導波光ビームである。同じく
図2に示したのは、入射光ビーム
50の回折の結果、回折格子30により回折により生成され、結合されて外に出た、結合されて外に出た光ビーム(又は光ビームの集合)60である。結合されて外に出た光ビーム60は、式(1)で記述される回折角θ
m(又は本明細書における「主角度方向」)を有する。結合されて外に出た光ビーム60は、例えば、回折格子30の回折次数「m」に対応してもよい。
【0027】
様々な実施形態によれば、様々な光ビームの主角度方向は、これらに限定されないが、回折格子のサイズ(例えば、長さ、幅、面積など)、方向及びフィーチャ間隔のうちの1つ又はそれ以上を含む格子の特徴により決まる。さらに、回折格子により生成された光ビームは、本明細書における定義上、角度成分{θ,φ}で記述される
図1Bに関して上述の主角度方向を有する。
【0028】
本明細書において、「コリメート光」又は「コリメート光ビーム」は一般に、光ビームの光線が光ビーム内で互いに実質的に平行である光のビーム(例えば、ライトガイド内の導波光ビーム)と定義される。さらに、コリメート光ビームから発散又は散乱する光線は、本明細書における定義上、コリメート光ビームの一部と見なされない。さらに、本明細書において、「コリメータ」は、光をコリメートするように構成されている実質的に任意の光デバイス又は装置と定義される。
【0029】
本明細書において、「コリメーション係数(collimation factor)」は、光がコリメートされる程度と定義される。特に、コリメーション係数は、本明細書における定義上、光のコリメートビーム内の光線の角度広がり(angular spread)を定義する。例えば、コリメーション係数σにより、コリメート光のビーム中の光線の大部分が、特定の角度広がり内(例えば、コリメート光ビームの中心又は主角度方向を中心に±σ度)であることが規定される。いくつかの例によれば、コリメート光ビームの光線は、角度に関してガウス分布を有することができて、角度広がりは、コリメート光ビームのピーク強度の半分で決定される角度であり得る。
【0030】
本明細書において、「光源」は、光の源(例えば、光を生成及び放射するように構成された光エミッタ)と定義される。例えば、光源は、作動させると、又は電源を入れると光を放射する光エミッタ、例えば、発光ダイオード(LED)を含んでもよい。特に、本明細書において、光源は、これらに限定されないが、発光ダイオード(LED)、レーザ、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード、プラズマベースの光エミッタ、蛍光ランプ、白熱ランプ、及び実質的に任意のその他の光源のうちの1つ又はそれ以上を含む実質的に任意の光源であってもよく、又はそれらを含む実質的に任意の光エミッタを含んでもよい。光源により生成された光は、ある色を有してもよく(すなわち、光の特定の波長を含んでもよく)、又は、ある範囲の波長(例えば、白色光)であってもよい。いくつかの実施形態において、光源は、複数の光エミッタを含んでもよい。例えば、光源は、光エミッタのある組又は群を含んでもよく、光エミッタのうちの少なくとも1つは、この組又は群の少なくとも1つの他の光エミッタにより生成された光の色又は波長とは異なる色又は波長を有する光を生成する。異なる色は、例えば、原色(例えば、赤色、緑色、青色)を含んでもよい。
【0031】
さらに、本明細書において使用されるとき、冠詞「a」は、特許技術におけるその通常の意味、すなわち、「1つ又はそれ以上」の意味を有することが意図される。例えば、本明細書において、「回折格子(a diffraction grating)」は、1つ又はそれ以上の回折格子を意味し、したがって、「回折格子(the diffraction grating)」は、「(1つ又はそれ以上の)回折格子(the diffraction grating(s))」を意味する。また、「上(top)」、「下(bottom)」、「上側(upper)」、「下側(lower)」、「上向き(up)」、「下向き(down)」、「前(front)」、「後(back)」、「第1の」、「第2の」、「左」又は「右」への本明細書におけるどのような言及も、本明細書では限定を意図するものではない。本明細書において、「約」という用語は、値に適用されたとき、一般に、値を生成するために使用された機器の許容範囲内を意味し、又は、特に明示的に指定されていない限り、±10%若しくは±5%若しくは±1%を意味し得る。さらに、本明細書において使用される「実質的に」という用語は、大部分、又はほぼすべて、又はすべて、又は約51%~約100%の範囲内の量を意味する。さらに、本明細書における例は、単なる例示であることが意図され、限定するためではなく議論のために提示されている。
【0032】
本明細書に記載の原理のいくつかの実施形態によれば、マルチビュー画像、とりわけ静的マルチビュー画像(すなわち、静的マルチビューディスプレイ)を生成するように構成されたマルチビューディスプレイが提供される。
図3Aは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイ100の平面図を示す。
図3Bは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイ100の一部の断面図を示す。特に、
図3Bは、
図3Aの静的マルチビューディスプレイ100の一部を通る断面を示し、断面はx-z平面内にある。
図3Cは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイ100の斜視図を示す。いくつかの実施形態によれば、示した静的マルチビューディスプレイ100は、純粋に静的なマルチビュー画像を生成するように構成されている一方、静的マルチビューディスプレイ100は、複数のマルチビュー画像を生成するように構成されてもよく、したがって、準静的マルチビューディスプレイ100として機能する(又は準静的マルチビューディスプレイ100である)。例えば、静的マルチビューディスプレイ100は、以下で説明するように、異なる固定されたマルチビュー画像間で、又は等価的には複数のマルチビュー画像状態間で切り替え可能であってもよい。
【0033】
図3A~
図3Cに示した静的マルチビューディスプレイ100は、複数の指向性光ビーム102を生成するように構成されており、複数の指向性光ビーム102の各指向性光ビーム102は、強度及び主角度方向を有する。同時に、複数の指向性光ビーム102は、静的マルチビューディスプレイ100が生成又は表示するように構成されているマルチビュー画像のビューの一組の様々なビューピクセルを表す。いくつかの実施形態において、ビューピクセルは、マルチビュー画像の様々な異なるビューを表すために、マルチビューピクセルに組織化されていてもよい。
【0034】
示した通り、静的マルチビューディスプレイ100はライトガイド110を備える。ライトガイドは、例えば、(示した)平板ライトガイドであってもよい。ライトガイド110は、導波光として、又はとりわけ導波光ビーム112としてライトガイド110の長さに沿って光を導波するように構成されている。例えば、ライトガイド110は、光導波路として構成された誘電体材料を含んでもよい。誘電体材料は、誘電体光導波路を取り囲む媒体の第2の屈折率より大きい第1の屈折率を有してもよい。例えば、屈折率の差は、ライトガイド110の1つ又はそれ以上の導波モードによる導波光ビーム112の内部全反射を容易にするように構成されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、ライトガイド110は、光学的に透明な誘電体材料の長い実質的に平面状のシートを含むスラブ又は平板光導波路であってもよい。誘電体材料の実質的に平面状のシートは、内部全反射を利用して導波光ビーム112を導波するように構成されている。様々な例によれば、ライトガイド110の光学的に透明な材料は、これらに限定されないが、様々なタイプのガラス(例えば、シリカガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスなど)及び実質的に透明なプラスチック若しくはポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)又は「アクリルガラス」、ポリカーボネートなど)のうちの1つ若しくはそれ以上を含む様々な誘電体材料のいずれかを含んでもよく、又はそれらで構成されてもよい。いくつかの例では、ライトガイド110は、ライトガイド110の表面(例えば、上面及び下面のうちの1つ又は両方)の少なくとも一部の上にクラッド層(図示せず)をさらに含んでもよい。いくつかの例によれば、クラッド層が、内部全反射をさらに容易にするために使用されてもよい。
【0036】
様々な実施形態によれば、ライトガイド110は、ライトガイド110の第1の表面110’(例えば、「前」面)と第2の表面110’’(例えば、「後」又は「下」面)との間の非ゼロ伝搬角の内部全反射により導波光ビーム112を導波するように構成されている。特に、導波光ビーム112は、ライトガイド110の第1の表面110’と第2の表面110’’との間で非ゼロ伝搬角で反射する、又は「跳ね返る」ことにより伝搬する。非ゼロ伝搬角は、図を簡単にするため、
図3Bに明示的に示していないことに留意されたい。しかし、
図3Bには、ライトガイドの長さに沿った導波光ビーム112の一般的な伝搬方向103を示す、図の平面内を指す矢印を示している。
【0037】
本明細書において定義される通り、「非ゼロ伝搬角」は、ライトガイド110の表面(例えば、第1の表面110’又は第2の表面110’’)に対する角度である。さらに、非ゼロ伝搬角は、様々な実施形態によれば、ゼロより大きく、且つライトガイド110内の内部全反射の臨界角より小さい。例えば、導波光ビーム112の非ゼロ伝搬角は、約10度~約50度の間、又は、いくつかの例では、約20度~約40度の間若しくは約25度~約35度の間であってもよい。例えば、非ゼロ伝搬角は約30度であってもよい。他の例では、非ゼロ伝搬角は、約20度又は約25度又は約35度であってもよい。さらに、ある特定の非ゼロ伝搬角は、その特定の非ゼロ伝搬角がライトガイド110内の内部全反射の臨界角より小さくなるよう選ばれる限り、特定の実施に対して(例えば、任意に)選ぶことができる。
【0038】
図3A及び
図3Cに示す通り、静的マルチビューディスプレイ100は、光源120をさらに備える。光源120は、ライトガイド110上の入力位置116に位置している。例えば、光源120は、示す通り、ライトガイド110の縁部又は側面114に隣接して位置していてもよい。光源120は、ライトガイド110内に複数の導波光ビーム112として光を生成するように構成されている。さらに、光源120は、複数の導波光ビームの個々の導波光ビーム112が互いに異なる半径方向118を有するように光を生成する。
【0039】
特に、光源120により放射された光は、ライトガイド110に入り、ライトガイド110の長さにわたって、又は沿って入力位置116から離れた放射状のパターンで複数の導波光ビーム112として伝搬するように構成されている。さらに、複数の導波光ビームの個々の導波光ビーム112は、入力位置116から離れた伝搬の放射状のパターンにより、互いに異なる半径方向を有する。例えば、光源120は、側面114に突合せ結合されていてもよい。突合せ結合されている光源120は、例えば、個々の導波光ビーム112の異なる半径方向を実現する扇形のパターンでの光の導入を容易にすることができる。いくつかの実施形態によれば、光源120は、導波光ビーム112が異なる半径方向118に沿って(すなわち、複数の導波光ビーム112として)伝搬するように、入力位置116にある「点」光源であってもよく、又は少なくともおおよそ「点」光源であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、光源120の入力位置116は、側面114の中央若しくは中間に近い、又はそのあたりの、ライトガイド110の側面114上にある。特に、
図3A及び
図3Cにおいて、光源120は、ライトガイド110の側面114(すなわち、「入力側面」)上のおおよそ中央(例えば、側面114の中間)にある入力位置116に示されている。あるいは(図示せず)、入力位置116は、ライトガイド110の側面114の中間から離れていてもよい。例えば、入力位置116は、ライトガイド110の角にあってもよい。例えば、ライトガイド110は、(例えば、示した)長方形を有してもよく、光源120の入力位置116は、長方形のライトガイド110の角(例えば、入力側面114の角)にあってもよい。
【0041】
様々な実施形態において、光源120は、これらに限定されないが、1つ又はそれ以上の発光ダイオード(LED)又はレーザ(例えば、レーザダイオード)を含む実質的に任意の光源(例えば、光エミッタ)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、光源120は、特定の色で示される狭帯域スペクトルを有する実質的に単色の光を生成するように構成された光エミッタを含んでもよい。特に、単色光の色は、特定の色空間又は色モデル(例えば、RGB色モデル)の原色であってもよい。他の例では、光源120は、実質的に広帯域又は多色の光を生成するように構成された実質的に広帯域の光源であってもよい。例えば、光源120は、白色光を生成することができる。いくつかの実施形態において、光源120は、光の異なる色を生成するように構成された複数の異なる光エミッタを含んでもよい。異なる光エミッタは、光の異なる色のそれぞれに対応する導波光の色固有の異なる非ゼロ伝搬角を有する光を生成するように構成されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、光源120からの光をライトガイド110内に結合することにより生成された導波光ビーム112は、コリメートされていなくても、又は少なくとも実質的にコリメートされていなくてもよい。他の実施形態において、導波光ビーム112がコリメートされてもよい(すなわち、導波光ビーム112が、コリメートされた光ビームであってもよい)。したがって、いくつかの実施形態において、静的マルチビューディスプレイ100は、光源120とライトガイド110との間にコリメータ(図示せず)を備えてもよい。あるいは、光源120は、コリメータをさらに備えてもよい。コリメータは、コリメートされている導波光ビーム112をライトガイド110内に生成するように構成されている。特に、コリメータは、光源120の光エミッタのうちの1つ又はそれ以上から実質的にコリメートされていない光を受け、実質的にコリメートされていない光をコリメート光に変換するように構成されている。いくつかの例では、コリメータが、導波光ビーム112の伝搬方向に対して実質的に垂直である平面(例えば、「垂直」面)内でコリメーションを実現するように構成されてもよい。すなわち、コリメーションは、例えば、ライトガイド110の表面(例えば、第1又は第2の表面110’、110’’)に対して垂直な平面内に比較的狭い角度広がりを有するコリメートされた導波光ビーム112を生成することができる。様々な実施形態によれば、コリメータは、これらに限定されないが、例えば、光源120からの光をコリメートするように構成されたレンズ、反射体若しくはミラー(例えば、チルトコリメーティング反射体)又は回折格子(例えば、回折格子ベースのバレルコリメータ(barrel collimator))を含む様々なコリメータのいずれかを含んでもよい。
【0043】
さらに、いくつかの実施形態において、コリメータは、非ゼロ伝搬角を有するか、若しくは予め定められたコリメーション係数にしたがってコリメートされているか、又はその両方のコリメート光を生成することができる。さらに、異なる色の光エミッタが使用されるとき、コリメータは、色固有の異なる非ゼロ伝搬角のうちの1つ又は両方を有し、且つ色固有の異なるコリメーション係数を有するコリメート光を生成するように構成されてもよい。コリメータはさらに、いくつかの実施形態において、導波光ビーム112として伝搬するために、コリメート光をライトガイド110に通信するように構成されている。
【0044】
コリメートされた光又はコリメートされていない光の使用は、いくつかの実施形態において、静的マルチビューディスプレイ100により生成することができるマルチビュー画像に影響を与える可能性がある。例えば、導波光ビーム112がライトガイド110内でコリメートされると、放射された指向性光ビーム102は、少なくとも2つの直交する方向に、比較的狭い、又は限定された角度広がりを有することができる。したがって、静的マルチビューディスプレイ100は、2つの異なる方向(例えば、x方向及びy方向)を有するアレイ内に複数の異なるビューを有するマルチビュー画像を生成することができる。しかし、導波光ビーム112が実質的にコリメートされていない場合、マルチビュー画像は、ビューの視差を実現することができるが、異なるビューの完全な二次元アレイを実現することはできない。特に、導波光ビーム112が(例えば、z軸に沿って)コリメートされていない場合、マルチビュー画像は、(例えば、
図1Aに示す)y軸を中心に回転させたとき、「視差3D」を示す異なるマルチビュー画像を生成することができる。一方、例えば、静的マルチビューディスプレイ100をx軸中心に回転させた場合、マルチビュー画像及びそのビューは、実質的に変化しなくても、又は同じでもよく、その理由は、複数の指向性光ビームのうちの指向性光ビーム102がy-z平面内に広い角度範囲を有するからである。したがって、生成されたマルチビュー画像は、2つの方向ではなく、ただ1つの方向にビューのアレイを実現する「視差のみ」であってもよい。
【0045】
図3A~
図3Cに示した静的マルチビューディスプレイ100は、複数の指向性光ビームのうちの指向性光ビーム102を放射するように構成された複数の回折格子130をさらに備える。前述の通り、様々な実施形態によれば、複数の回折格子130により放射された指向性光ビーム102は、マルチビュー画像を表してもよい。特に、複数の回折格子130により放射された指向性光ビーム102は、情報、例えば、3Dコンテンツを有する情報を表示するために、マルチビュー画像を生成するように構成されてもよい。さらに、回折格子130は、以下でさらに説明する通り、ライトガイド110が光源120により側面114から照らされたとき、指向性光ビーム102を放射することができる。
【0046】
様々な実施形態によれば、複数の回折格子の回折格子130は、複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビーム112の一部から、複数の指向性光ビームのうちの1つの指向性光ビーム102を生成するように構成されている。さらに、回折格子130は、マルチビュー画像のビューピクセルの強度及びビュー方向に対応する強度及び主角度方向の両方を有する指向性光ビーム102を生成するように構成されている。いくつかの実施形態において、複数の回折格子の回折格子130は一般に、いくつかの実施形態によれば、互いに交差したり、重なったり、あるいは接触したりしない。すなわち、複数の回折格子の各回折格子130は一般に、様々な実施形態によれば、他の回折格子130とは別個であり、分離されている。
【0047】
図3Bに示す通り、指向性光ビーム102は、少なくとも部分的に、ライトガイド110内の導波光ビーム112の平均的又は一般的な伝搬方向103とは異なり、いくつかの実施形態においてはそれと直交する方向に伝搬することができる。例えば、
図3Bに示す通り、回折格子130からの指向性光ビーム102は、いくつかの実施形態によれば、x-z平面に実質的に限定されてもよい。
【0048】
様々な実施形態によれば、複数の回折格子のうちの回折格子130のそれぞれは、関連する格子の特徴を有する。各回折格子の関連する格子の特徴は、光源120から回折格子に入射する導波光ビーム112の半径方向118の関数に依存し、その関数により定義され、又はその関数である。さらに、いくつかの実施形態において、関連する格子の特徴はさらに、回折格子130と、光源120の入力位置116との間の距離により決定又は定義される。例えば、関連する特徴は、
図3Aに示す通り、回折格子130aと入力位置116との間の距離Dと、回折格子130aに入射する導波光ビーム112の半径方向118aとの関数であってもよい。別様に述べると、複数の回折格子130中の回折格子130の関連する格子の特徴は、光源の入力位置116と、入力位置116に対するライトガイド110の表面上の回折格子130の特定の位置とに依存する。
【0049】
図3Aは、異なる空間座標(x
1,y
1)及び(x
2,y
2)を有する2つの異なる回折格子130a及び130bを示し、これらはさらに、回折格子130に入射する光源120からの複数の導波光ビーム112の異なる半径方向118a及び118bを補償又は説明するために、異なる格子の特徴を有する。同様に、2つの異なる回折格子130a及び130bの異なる格子の特徴は、異なる空間座標(x
1,y
1)及び(x
2,y
2)により決定される光源の入力位置116からのそれぞれの回折格子130a、130bの異なる距離を説明する。
【0050】
図3Cは、静的マルチビューディスプレイ100により生成することができる複数の指向性光ビーム102の一例を示す。特に、示した通り、互いに異なる主角度方向を有する指向性光ビーム102を放射する複数の回折格子のうちの回折格子130の異なる組が示されている。異なる主角度方向は、様々な実施形態によれば、静的マルチビューディスプレイ100の異なるビュー方向に対応してもよい。例えば、回折格子130の第1の組は、静的マルチビューディスプレイ100の第1のビュー方向(又は第1のビュー)に対応する第1の主角度方向を有する指向性光ビーム102’の第1の組を生成するために、(破線として示した)入射導波光ビーム112の一部を回折結合して外に出すことができる。同様に、静的マルチビューディスプレイ100の第2のビュー方向(又は第2のビュー)及び第3のビュー方向(又は第3のビュー)それぞれに対応する主角度方向を有する指向性光ビーム102’’の第2の組及び指向性光ビーム102’’’の第3の組は、示す通り、回折格子130のそれぞれの第2、第3の組により入射導波光ビーム112の一部を回折結合して外に出すことにより生成することができて、以下同様である。同じく
図3Cに示したのは、マルチビューディスプレイ100により生成することができるマルチビュー画像16の第1のビュー14’、第2のビュー14’’及び第3のビュー14’’’である。示した第1、第2及び第3のビュー14’、14’’、14’’’は、物体の異なる斜視図を表し、集合的に、(例えば、
図1Aに示したマルチビュー画像16と同等の)表示されたマルチビュー画像16である。
【0051】
一般に、回折格子130の格子の特徴は、回折フィーチャ間隔又はピッチ、回折格子の格子方向及び格子サイズ(又は程度)のうちの1つ又はそれ以上を含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態において、回折格子の結合効率(例えば、回折格子の面積、溝深さ又は隆起部高さなど)は、入力位置116から回折格子までの距離の関数であってもよい。例えば、回折格子の結合効率は、部分的に、放射状拡散及び他の損失要因に関連する導波光ビーム112の強度の一般的な低下を補正又は補償するために、距離に応じて増加するように構成されてもよい。したがって、対応するビューピクセルの強度に対応する、回折格子130により生成された指向性光ビーム102の強度は、いくつかの実施形態によれば、部分的に、回折格子130の回折結合効率により決定されてもよい。
【0052】
図4は、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイ100の平面図を示す。
図4において、ライトガイド110の側面114にある光源120の入力位置116からの距離Dである角度空間内の照射ボリューム(illumination volume)134が示されている。照射ボリュームは、y軸からx軸に向かって離れて複数の
導波光ビーム112の伝搬の半径方向の角度が変化するにつれて、より広い角度サイズを有することに留意されたい。例えば、照射ボリューム134bは、示す通り、照射ボリューム134aよりも広い。
【0053】
図3Bを再び参照すると、複数の回折格子130は、示す通り、ライトガイド110の光ビーム放射表面であるライトガイド110の第1の表面110’に位置していても、又は隣接していてもよい。例えば、回折格子130は、導波光部分を回折結合して指向性光ビーム102として第1の表面110’を通じて外に出すように構成された透過型回折格子であってもよい。あるいは、複数の回折格子130は、ライトガイド110の光ビーム放射表面(すなわち、第1の表面110’)の反対側の第2の表面110’’に位置していても、又は隣接していてもよい。特に、回折格子130は、反射型回折格子であってもよい。反射型回折格子として、回折散乱された、又は結合されて外に出た指向性光ビーム102として第1の表面110’を通じて出るために、回折格子130は、第1の表面110’に向かって導波光部分を回折し、且つ回折された導波光部分を反射するように構成されている。他の実施形態(図示せず)において、回折格子130は、例えば、透過型回折格子及び反射型回折格子のうちの1つ又は両方としてライトガイドの表面110の間に位置していてもよい。
【0054】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において、指向性光ビーム102の主角度方向は、ライトガイド表面でライトガイド110を出る指向性光ビーム102に起因する屈折効果を含んでもよい。例えば、回折格子130が第2の表面110’’に位置するか、又は隣接するとき、指向性光ビーム102は、限定ではなく例として、指向性光ビーム102が第1の表面110’を横切るときの屈折率の変化のために屈折する(すなわち、曲がる)ことができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、特にそれらのスプリアス反射源によって意図しない方向に光ビームが放射され、静的マルチビューディスプレイ100により意図しない画像が生成される可能性があるとき、静的マルチビューディスプレイ100内の導波光ビーム112のスプリアス反射の様々な源を緩和し、場合によってはさらに実質的に排除できるようになっている。様々な潜在的なスプリアス反射源の例には、これに限定されないが、導波光ビーム112の二次反射を引き起こす可能性のあるライトガイド110の側壁が含まれる。静的マルチビューディスプレイ100内の様々なスプリアス反射源からの反射は、これらに限定されないが、スプリアス反射の吸収及び制御されたリダイレクションを含むいくつかの方法のいずれかにより緩和することができる。
【0056】
図5Aは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるスプリアス反射緩和を含む静的マルチビューディスプレイ100の平面図を示す。
図5Bは、本明細書に記載の原理と一致する別の実施形態による、一例におけるスプリアス反射緩和を含む静的マルチビューディスプレイ100の平面図を示す。特に、
図5A及び
図5Bは、ライトガイド110、光源120及び複数の回折格子130を含む静的マルチビューディスプレイ100を示す。同じく示したのは、複数の導波光ビーム112のうちの少なくとも1つの導波光ビーム112がライトガイド110の側壁114a、114bに入射する複数の導波光ビーム112である。側壁114a、114bによる導波光ビーム112の潜在的なスプリアス反射は、反射された導波光ビーム112’を表す破線の矢印で示されている。
【0057】
図5Aにおいて、静的マルチビューディスプレイ100は、ライトガイド110の側壁114a、114bに吸収層119をさらに備える。吸収層119は、導波光ビーム112からの入射光を吸収するように構成されている。吸収層は、これに限定されないが、例えば、側壁114a、114bに塗布された黒色塗料を含む実質的に任意の光吸収体を含んでもよい。
図5Aに示す通り、限定ではなく例として、吸収層119は側壁114b
に塗布されているが、側壁114aには吸収層119がない。吸収層119は、入射導波光ビーム112を遮断及び吸収して、側壁114bからの潜在的なスプリアス反射の発生を効果的に防止又は緩和する。一方、側壁114aに入射する導波光ビーム112は反射して、限定ではなく例として示した反射された導波光ビーム112’を発生させる。
【0058】
図5Bは、制御された反射角を使用するスプリアス反射緩和を示す。特に、
図5Bに示した静的マルチビューディスプレイ
100のライトガイド110は、傾斜した側壁114a、114bを備える。傾斜した側壁は、回折格子130から実質的に離れた、反射された導波光ビーム112’を優先的に導くように構成された傾斜角を有する。したがって、反射された導波光ビーム112’は、回折結合されて意図しない指向性光ビームとしてライトガイド110の外に出ることはない。側壁114a、114bの傾斜角は、示す通り、x-y平面内にあってもよい。他の例(図示せず)において、側壁114a、114bの傾斜角は、反射された導波光ビーム112’をライトガイド110の上面又は下面の外に導くために、別の平面内、例えば、x-z平面内にあってもよい。
図5Bは、限定ではなく例として、その一部のみに沿った傾斜を含む側壁114a、114bを示すことに留意されたい。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、静的マルチビューディスプレイ100は、互いに横方向にオフセットしている複数の光源120を含んでもよい。複数の光源のうちの光源120の横方向のオフセットは、個々の回折格子130又はその間において様々な導波光ビーム102の半径方向の差を与えることができる。この差は、いくつかの実施形態によれば、表示されたマルチビュー画像の動画化の実現を容易にすることができる。したがって、静的マルチビューディスプレイ100は、いくつかの実施形態において、準静的マルチビューディスプレイ100であってもよい。
【0060】
図6Aは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイ100の平面図を示す。
図6Bは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、別の例における
図6Aの静的マルチビューディスプレイ100の平面図を示す。
図6A及び
図6Bに示した静的マルチビューディスプレイ100は、複数の回折格子130を備えるライトガイド110を備える。さらに、静的マルチビューディスプレイ100は、示す通り、互いに横方向にオフセットしており、且つ互いに異なる半径方向118を有する導波光ビーム112を別々に生成するように構成された複数の光源120をさらに備える。
【0061】
特に、
図6A及び
図6Bは、ライトガイド110の側面114上の第1の入力位置116aにある第1の光源120a及び第2の入力位置116bにある第2の光源120bを示す。第1及び第2の入力位置116a、116bは、それぞれの第1及び第2の光源120a、120bの横方向のオフセットを実現するために、側面114に沿って(すなわち、x方向に)互いに横方向にオフセット又はシフトしている。
さらに、複数の光源120のうちの第1及び第2の光源120a、120bのそれぞれは、それぞれの互いに異なる半径方向を有する異なる複数の導波光ビーム112を生成する。例えば、それぞれ
図6A及び
図6Bに示す通り、第1の光源120aは、異なる半径方向118aの第1の組を有する第1の複数の導波光ビーム112aを生成することができて、第2の光源120bは、異なる半径方向118bの第2の組を有する第2の複数の導波光ビーム112bを生成することができる。さらに、第1及び第2の複数の導波光ビーム112a、112bは一般に、示す通り、第1及び第2の光源120a、120bの横方向のオフセットにより、組としてさらに互いに異なる異なる半径方向118a、118bの組を有する。
【0062】
したがって、複数の回折格子130は、ビュー空間内で互いにシフトした(例えば、ビュー空間内で角度シフトした)異なるマルチビュー画像を表す指向性光ビームを放射する。したがって、第1及び第2の光源120a、120bの間の切替えにより、静的マルチビューディスプレイ100は、マルチビュー画像の「動画化」、例えば、時系列の動画化を実現することができる。特に、第1及び第2の光源120a、120bを異なる順次の時間間隔又は期間の間順次点灯することにより、静的マルチビューディスプレイ100が、例えば、異なる時間の間マルチビュー画像の見かけの位置をシフトさせるように構成されてもよい。動画化により実現されるこの見かけの位置のシフトは、いくつかの実施形態によれば、複数のマルチビュー画像状態を生成するために、静的マルチビューディスプレイ100を準静的マルチビューディスプレイ100として動作させる例を表してもよい。
【0063】
様々な実施形態によれば、
図3A~
図3Cに関して上述の通り、静的マルチビューディスプレイ100の指向性光ビーム102は、回折を利用して(例えば、回折散乱又は回折結合により)放射される。いくつかの実施形態において、複数の回折格子130は、マルチビューピクセルとして組織化されていてもよく、各マルチビューピクセルは、複数の回折格子からの1つ又はそれ以上の回折格子130を含む一組の回折格子130を含む。さらに、前述の通り、(1つ又はそれ以上の)回折格子130は、ライトガイド110上の半径方向の位置の関数であり、並びに(1つ又はそれ以上の)回折格子130により放射された指向性光ビーム102の強度及び方向の関数である回折の特徴を有する。
【0064】
図7Aは、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイの回折格子130の平面図を示す。
図7Bは、本明細書に記載の原理と一致する別の実施形態による、一例におけるマルチビューピクセル140として組織化された一組の回折格子130の平面図を示す。
図7A及び
図7Bに示す通り、回折格子130のそれぞれは、回折フィーチャ間隔(これは、「格子間隔」と呼ばれることもある。)又は格子ピッチにしたがって互いに離れて配置された複数の回折フィーチャを備える。回折フィーチャ間隔又は格子ピッチは、ライトガイド内から導波光部分を回折結合して外に出す、又は散乱させるように構成されている。
図7A~
図7Bにおいて、回折格子130は、マルチビューディスプレイ(例えば、
図3A~
図3Cに示した静的マルチビューディスプレイ100)のライトガイド110の表面上にある。
【0065】
様々な実施形態によれば、回折格子130内の回折フィーチャの間隔又は格子ピッチはサブ波長(すなわち、導波光ビーム112の波長未満)であってもよい。
図7A及び
図7Bは、図を簡単にするため、単一の、又は均一な格子間隔(すなわち、一定の格子ピッチ)を有する回折格子130を示すことに留意されたい。様々な実施形態において、以下で説明する通り、回折格子130は、例えば、
図3A~
図6Bに様々に示している通り、指向性光ビーム102を生成するために、複数の異なる格子間隔(例えば、2つ又はそれ以上の格子間隔)又は可変の回折フィーチャ間隔若しくは格子ピッチを含んでもよい。したがって、
図7A及び
図7Bは、単一の格子ピッチが、回折格子130の排他的な実施形態であることを意味するものではない。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、回折格子130の回折フィーチャは、互いに離れて配置されている溝及び隆起部のうちの1つ又は両方を含んでもよい。溝又は隆起部は、ライトガイド110の材料を含んでもよく、例えば、溝又は隆起部は、ライトガイド110の表面内に形成されてもよい。別の例において、溝又は隆起部は、ライトガイド材料以外の材料、例えば、ライトガイド110の表面上の別の材料のフィルム又は層から形成されてもよい。
【0067】
先述し、
図7Aに示した通り、回折フィーチャの構成は、回折格子130の格子の特徴を含む。例えば、回折格子の格子深さは、回折格子130により生成される指向性光ビーム102の強度を決定するように構成されてもよい。代替的又は追加的に、先述したように、
図7A~
図7Bに示した、格子の特徴は、回折格子130の格子ピッチ及び格子方向(例えば、
図7Aに示した格子方向γ)のうちの1つ又は両方を含む。導波光ビームの入射角と共に、これらの格子の特徴は、回折格子130により生成される指向性光ビーム102の主角度方向を決定する。
【0068】
いくつかの実施形態(図示せず)において、指向性光ビームを生成するように構成された回折格子130は、可変又はチャープ回折格子を格子の特徴として含む。定義上、「チャープ」回折格子は、チャープ回折格子の範囲又は長さにわたって変化する回折フィーチャの回折間隔(すなわち、格子ピッチ)を示す、又は有する回折格子である。いくつかの実施形態において、チャープ回折格子は、距離に伴って直線的に変化する回折フィーチャ間隔のチャープを有してもよく、又は示してもよい。したがって、チャープ回折格子は、定義上、「線形チャープ」回折格子である。他の実施形態において、マルチビューピクセルのチャープ回折格子は、回折フィーチャ間隔の非線形チャープを示してもよい。これらに限定されないが、指数チャープ、対数チャープ、又は別の実質的に不均一又はランダムであるが、それでも単調に変化するチャープを含む様々な非線形チャープが使用されてもよい。非単調なチャープ、例えば、これらに限定されないが、正弦波チャープ又は三角形若しくは鋸歯状チャープも使用されてもよい。これらのタイプのチャープのいずれかの組合せも使用されてもよい。
【0069】
他の実施形態において、指向性光ビーム102を生成するように構成された回折格子130は、複数の回折格子(例えば、サブ格子)であるか、又はそれを含む。例えば、回折格子130の複数の回折格子は、指向性光ビーム102の赤色部分を生成するように構成された第1の回折格子を含んでもよい。さらに、回折格子130の複数の回折格子は、指向性光ビーム102の緑色部分を生成するように構成された第2の回折格子を含んでもよい。さらに、回折格子130の複数の回折格子は、指向性光ビーム102の青色部分を生成するように構成された第3の回折格子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、複数の回折格子の個々の回折格子が互いに重ね合わせられてもよい。他の実施形態において、回折格子は、例えば、アレイとして、互いに隣に配置された別々の回折格子であってもよい。
【0070】
より一般的には、静的マルチビューディスプレイ100は、マルチビューピクセル140の1つ又はそれ以上の例を含んでもよく、そのそれぞれは、複数の回折格子130からの回折格子130の組を備える。
図7Bに示す通り、マルチビューピクセル140を構成する組の回折格子130は、異なる格子の特徴を有してもよい。マルチビューピクセルの回折格子130は、例えば、異なる格子方向を有してもよい。特に、マルチビューピクセル140の回折格子130は、マルチビュー画像のビューの対応する組によって決まる、又は定まる異なる格子の特徴を有してもよい。例えば、マルチビューピクセル140は、静的マルチビューディスプレイ100の8個の異なるビューに対応する8個の回折格子130の組を備えてもよい。さらに、静的マルチビューディスプレイ100は、複数のマルチビューピクセル140を備えてもよい。例えば、回折格子130の組を備える複数のマルチビューピクセル140が存在してもよく、各マルチビューピクセル140は、8個の異なるビューのそれぞれにおける2048×1024ピクセルの異なるビューに対応する。
【0071】
いくつかの実施形態において、静的マルチビューディスプレイ100は、透明又は実質的に透明であってもよい。特に、ライトガイド110及び離れて配置された複数の回折格子130は、いくつかの実施形態において、第1の表面110’及び第2の表面110’’の両方と直交する方向に光がライトガイド110を通過するのを可能にし得る。したがって、ライトガイド110、より一般的には静的マルチビューディスプレイ100は、複数の導波光ビームのうちの導波光ビーム112の一般的な伝搬方向103と直交する方向に伝搬する光に対して透明であってもよい。さらに、透明性を、回折格子130の実質的な透明性により少なくとも部分的に促進することができる。
【0072】
本明細書に記載の原理のいくつかの実施形態によれば、マルチビューディスプレイが提供される。マルチビューディスプレイは、マルチビューディスプレイにより生成された複数の指向性光ビームを放射するように構成されている。さらに、放射された指向性光ビームを、マルチビューディスプレイ内の1つ又はそれ以上のマルチビューピクセル内に含まれる複数の回折格子の格子の特徴に基づいて、マルチビューディスプレイの複数のビューゾーンに向かって優先的に導くことができる。
さらに、回折格子は、指向性光ビームにおいて異なる主角度方向を生じさせることができ、これは、マルチビューディスプレイのマルチビュー画像のビューの一組における異なるビューの異なる見る方向(viewing direction)に対応する。いくつかの例では、マルチビューディスプレイは、3D又はマルチビュー画像を生成又は「表示」するように構成されている。指向性光ビームのうちの異なる指向性光ビームは、様々な例によれば、マルチビュー画像に関連する異なる「ビュー」の個々のビューピクセルに対応してもよい。異なるビューは、例えば、マルチビューディスプレイにより表示されているマルチビュー画像内に、情報の「眼鏡なしの」(例えば、オートステレオスコピックな)表現を実現することができる。
【0073】
図8は、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイ200のブロック図を示す。様々な実施形態によれば、静的マルチビューディスプレイ200は、異なるビュー方向の異なるビューによりマルチビュー画像を表示するように構成されている。特に、静的マルチビューディスプレイ200により放射された複数の指向性光ビーム202は、マルチビュー画像を表示するために使用され、異なるビューのピクセル(すなわち、ビューピクセル)に対応してもよい。指向性光ビーム202は、
図8において、1つ又はそれ以上のマルチビューピクセル210から出る矢印として示されている。同じく
図8に示したのは、静的マルチビューディスプレイ200により生成することができるマルチビュー画像16の第1のビュー14’、第2のビュー14’’及び第3のビュー14’’’である。
【0074】
マルチビューピクセル210のうちの1つに関連する指向性光ビーム202は、静的又は準静的のいずれかである(すなわち、能動的に変調されない)ことに留意されたい。その代わり、マルチビューピクセル210は、照らされているときに指向性光ビーム202を生成するか、又は照らされていないときに指向性光ビーム202を生成しないかのいずれかである。さらに、それらの指向性光ビーム202の方向に沿って生成された指向性光ビーム202の強度は、様々な実施形態によれば、静的マルチビューディスプレイ200により表示されているマルチビュー画像16のピクセルを定義する。さらに、マルチビュー画像16内に表示されたビュー14’、14’’、14’’’は、様々な実施形態によれば、静的又は準静的である。
【0075】
図8に示した静的マルチビューディスプレイ200は、マルチビューピクセル210のアレイを含む。アレイのマルチビューピクセル210は、静的マルチビューディスプレイ200の複数の異なるビューを生成するように構成されている。様々な実施形態によれば、アレイのマルチビューピクセル210は、複数の指向性光ビーム202を回折結合して外に出す、又は放射するように構成された複数の回折格子212を備える。複数の指向性光ビーム202は、主角度方向を有することができ、これは、静的マルチビューディスプレイ200のビューの一組における異なるビューの異なるビュー方向に対応する。さらに、回折格子212の格子の特徴は、回折格子212に対する入射光ビームの半径方向、入射光ビームを生成する光源までの距離、又はその両方に基づいて変化させたり、又は選択したりすることができる。いくつかの実施形態において、回折格子212及びマルチビューピクセル210は、上述の静的マルチビューディスプレイ100の回折格子130及びマルチビューピクセル140それぞれと実質的にほぼ同じであってもよい。
【0076】
図8に示す通り、静的マルチビューディスプレイ200は、光を導波するように構成されたライトガイド220をさらに備える。いくつかの実施形態において、ライトガイド220は、静的マルチビューディスプレイ100に関して上述のライトガイド110と実質的にほぼ同じであってもよい。様々な実施形態によれば、マルチビューピクセル210、又はとりわけ様々なマルチビューピクセル210の回折格子212は、ライトガイド220からの導波光の一部(又は等価的には、図示される「導波光ビーム204」)を複数の指向性光ビーム202として散乱させ、又は結合して外に出すように構成されている(すなわち、導波光は前述の入射光ビームであってもよい)。特に、マルチビューピクセル210は、回折散乱又は回折結合により導波光の一部(すなわち、導波光ビーム204)を散乱させ、又は結合して外に出すために、ライトガイド220に光学的に接続されている。
【0077】
様々な実施形態において、回折格子212の格子の特徴は、回折格子212における入射導波光ビーム204の半径方向、導波光ビーム204を生成する光源間の距離、若しくはその両方に基づいて、又はそれらの関数として変化する。このようにして、マルチビューピクセル内の異なる回折格子212からの指向性光ビーム202は、静的マルチビューディスプレイ200により生成されたマルチビュー画像のビューのピクセルに対応してもよい。
【0078】
図8に示した静的マルチビューディスプレイ200は、光源230をさらに備える。光源230は、光をライトガイド
220に供給するように構成されてもよい。特に、生成された光(例えば、
図8において光源230から出る矢印で示した光)は、ライトガイド
220により複数の導波光ビーム204として導波される。複数の導波光ビームのうちの導波光ビーム204は、様々な実施形態によれば、ライトガイド220内で互いに異なる半径方向を有する。例えば、いくつかの実施形態において、導波光ビーム204は、非ゼロ伝搬角で生成され、いくつかの実施形態において、ライトガイド220内で導波光ビーム204の予め定められた角度広がりを実現するコリメーション係数を有する。いくつかの実施形態によれば、光源230は、上述の静的マルチビューディスプレイ100の(1つ又はそれ以上の)光源120のうちの1つと実質的にほぼ同じであってもよい。例えば、光源230は、ライトガイド220の入力縁部に突合せ結合されていてもよい。光源230は、異なる半径方向を有する複数の導波光ビーム204を生成するために、扇形又は放射状のパターンで光を放射してもよい。
【0079】
本明細書に記載の原理の他の実施形態によれば、静的マルチビューディスプレイの動作の方法が提供される。
図9は、本明細書に記載の原理と一致する1つの実施形態による、一例における静的マルチビューディスプレイの動作の方法300のフローチャートを示す。様々な実施形態によれば、静的マルチビュー画像の表示及び準静的マルチビュー画像の表示の片方又は両方を実現するために、静的マルチビューディスプレイの動作の方法300が使用されてもよい。
【0080】
図9に示す通り、静的マルチビューディスプレイの動作の方法300は、共通の原点と、互いに異なる半径方向とを有する複数の導波光ビームとしてライトガイドに沿って光を導波するステップ310を含む。特に、複数の導波光ビームのうちの1つの導波光ビームは、定義上、複数の導波光ビームのうちの別の導波光ビームとは異なる伝搬の半径方向を有する。さらに、複数の導波光ビームのうちの導波光ビームのそれぞれは、定義上、共通の原点を有する。原点は、いくつかの実施形態において、仮想原点(例えば、導波光ビームの実際の原点を越える点)であってもよい。例えば、原点は、ライトガイドの外側、したがって、仮想原点であってもよい。いくつかの実施形態によれば、それに沿って光が導波される310ライトガイド並びにその内部で導波される導波光ビームは、静的マルチビューディスプレイ100を参照して上述したライトガイド110及び導波光ビーム112それぞれと実質的にほぼ同じであってもよい。
【0081】
図9に示した静的マルチビューディスプレイの動作の方法300は、複数の回折格子を使用してマルチビュー画像を表す複数の指向性光ビームを放射するステップ320をさらに含む。様々な実施形態によれば、複数の回折格子のうちの1つの回折格子は、複数の導波光ビームからの光を回折結合して、又は回折散乱させて、複数の指向性光ビームのうちの1つの指向性光ビームとして外に出す。さらに、結合されて、又は散乱して外に出る指向性光ビームは、マルチビュー画像の対応するビューピクセルの強度及び主角度方向の両方を有する。特に、放射するステップ320により生成された複数の指向性光ビームは、マルチビュー画像のビューの一組における異なるビューピクセルに対応する主角度方向を有してもよい。さらに、複数の指向性光ビームのうちの指向性光ビームの強度は、マルチビュー画像の様々なビューピクセルの強度に対応してもよい。いくつかの実施形態において、回折格子のそれぞれは、マルチビュー画像の1つのビュー内の特定のビューピクセルに対応する単一の強度を有する単一の主角度方向の単一の指向性光ビームを生成する。いくつかの実施形態において、回折格子は、複数の回折格子(例えば、サブ格子)を含む。
さらに、いくつかの実施形態において、一組の回折格子が、静的マルチビューディスプレイのマルチビューピクセルとして配置されてもよい。
【0082】
様々な実施形態において、放射320された指向性光ビームの強度及び主角度方向は、共通の原点に対する回折格子の位置に基づいている(すなわち、その関数である)回折格子の格子の特徴により制御される。特に、複数の回折格子の格子の特徴は、回折格子における入射導波光ビームの半径方向、回折格子から、導波光ビームを生成する光源までの距離、又はその両方に基づいて変化し得る(又は等価的には、それらの関数であり得る)。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、複数の回折格子は、上述の静的マルチビューディスプレイ100の複数の回折格子130と実質的にほぼ同じであってもよい。さらに、いくつかの実施形態において、放射320された複数の指向性光ビームは、同じく上述の複数の指向性光ビーム102と実質的にほぼ同じであってもよい。例えば、主角度方向を制御する格子の特徴は、回折格子の格子ピッチ及び格子方向のうちの1つ又は両方を含んでもよい。さらに、対応するビューピクセルの強度に対応する、回折格子により生成される指向性光ビームの強度は、回折格子の回折結合効率により決定されてもよい。すなわち、強度を制御する格子の特徴は、いくつかの例では、回折格子の格子深さ、格子のサイズなどを含んでもよい。
【0084】
示した通り、静的マルチビューディスプレイの動作の方法300は、複数の導波光ビームとして導波される光を光源を使用して生成するステップ330をさらに含む。特に、光は、複数の異なる伝搬の半径方向を有する導波光ビームとして、光源を使用してライトガイドに供給される。様々な実施形態によれば、光を生成するステップ330において使用される光源は、ライトガイドの側面に位置しており、光源の位置は、複数の導波光ビームの共通の原点である。いくつかの実施形態において、光源は、上述の静的マルチビューディスプレイ100の(1つ又はそれ以上の)光源120と実質的にほぼ同じであってもよい。特に、光源は、ライトガイドの縁部又は側面に突合せ結合されていてもよい。
さらに、光源は、いくつかの実施形態において、共通の原点となる点源に近くてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態(図示せず)において、静的マルチビューディスプレイの動作の方法は、第1の複数の光導波光ビームを第1の時間の間導波し、且つ第2の複数の導波光ビームを第2の期間の間の第2の時間の間導波することによりマルチビュー画像を動画化するステップをさらに含む。第1の複数の導波光ビームは、第2の複数の導波光ビームの共通の原点とは異なる共通の原点を有してもよい。例えば、光源は、例えば、上述の通り動画化を実現するように構成された、複数の横方向にオフセットした光源を含んでもよい。動画化は、いくつかの実施形態によれば、第1及び第2の時間の間のマルチビュー画像の見かけの位置のシフトを含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、生成330された光は、実質的にコリメートされていない。他の実施形態において、生成330された光は、コリメートされてもよい(例えば、光源は、コリメータを備えてもよい)。様々な実施形態において、生成330された光は、ライトガイドの表面の間のライトガイド内で非ゼロ伝搬角で異なる半径方向を有して導波されてもよい。ライトガイド内でコリメートされるとき、生成330された光は、ライトガイド内で導波光の予め定められた角度広がりを確立するコリメーション係数にしたがってコリメートされてもよい。
【0087】
このように、互いに異なる半径方向を有する導波光ビームから静的又は準静的マルチビュー画像を表す複数の指向性光ビームを生成するように構成された回折格子を有する静的マルチビューディスプレイ及び静的マルチビューディスプレイの動作の方法の例及び実施形態を説明してきた。上述の例は、本明細書に記載の原理を表す多くの具体例のいくつかの単なる例示であると理解されるべきである。明らかに、当業者は、以下の特許請求の範囲により定義される範囲から逸脱することなく多くの他の配置を容易に考案することができる。