(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】捕捉カテーテル並びに捕捉カテーテルを準備するためのキット及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20220809BHJP
A61M 25/04 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61M25/01
A61M25/04
(21)【出願番号】P 2019536808
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(86)【国際出願番号】 NL2017050620
(87)【国際公開番号】W WO2018056807
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-08-05
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519098305
【氏名又は名称】イーエムデーエス エル エン デー ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デン ヘイエル, ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】スフルティング, エドウィン アレクサンデル
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6299628(US,B1)
【文献】特開2012-135379(JP,A)
【文献】特表2016-522069(JP,A)
【文献】特開2014-79351(JP,A)
【文献】特開2014-147800(JP,A)
【文献】特表2015-534855(JP,A)
【文献】特開2005-329062(JP,A)
【文献】特開2013-116329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
A61M 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド・カテーテルと前記ガイド・カテーテルの近位端に装着された弁継手とを備えるガイド・カテーテル組立体に挿入される、捕捉カテーテルであって、
前記捕捉カテーテルは、
バルーンと、
前記捕捉カテーテル内に長手方向に延在する膨張ルーメンを画定する捕捉カテーテル本体であって、前記膨張ルーメンが前記バルーンによって画定される内部空間内へと開いている遠位端を有する、捕捉カテーテル本体と、
前記ガイド・カテーテル組立体の近位端にある当接部に当接して前記ガイド・カテーテル組立体への前記捕捉カテーテルの最大挿入深さを決定するストッパと、
を備え、
前記ストッパは、前記捕捉カテーテル本体の半径方向の一方側にのみ突出しており、
前記ストッパは、前記捕捉カテーテル本体の湾曲した区域を含み、
前記捕捉カテーテル本体の前記湾曲した区域は、前記捕捉カテーテル本体の曲げられた区域であり、
前記捕捉カテーテル本体の前記湾曲した且つ曲げられた区域は、前記膨張ルーメンの対応して湾曲した且つ曲げられた区域を画定している、捕捉カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載の捕捉カテーテルにおいて、
前記捕捉カテーテル本体の前記湾曲した且つ曲げられた区域は5mm未満の半径を有する、捕捉カテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載の捕捉カテーテルにおいて、
前記捕捉カテーテル本体の前記湾曲した且つ曲げられた区域は、少なくとも45°の偏向角度で湾曲される、捕捉カテーテル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の捕捉カテーテルにおいて、
前記ストッパは、前記ガイド・カテーテル組立体の前記近位端にある前記当接部の一部の背後に掛止されるフックを備える、捕捉カテーテル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の捕捉カテーテルにおいて、
前記ストッパは、前記捕捉カテーテルの最大挿入深さを、最大で98~103cmに、又は最大で108~113cmに制限するように位置決めされる、捕捉カテーテル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の捕捉カテーテルにおいて、
前記バルーンは、拡張した状態にあるときに2~3mmの直径を有する、捕捉カテーテル。
【請求項7】
請求項
6に記載の捕捉カテーテルにおいて、
前記拡張した状態における前記バルーンは
、前記捕捉カテーテル内で長手方向から見た場合15~30mmの
全長を有する、捕捉カテーテル。
【請求項8】
キットであって、
ガイド・カテーテル組立体に挿入されるように構成された最初の捕捉カテーテルであって、前記ガイド・カテーテル組立体がガイド・カテーテルと前記ガイド・カテーテルの近位端に装着された弁継手とを備え、前記最初の捕捉カテーテルが、バルーンと、前記最初の捕捉カテーテル内に長手方向に延在する膨張ルーメンを画定する捕捉カテーテル本体と、を備え、前記膨張ルーメンが前記バルーンによって画定される内部空間内へと開いている遠位端を有する、最初の捕捉カテーテルと、
前記捕捉カテーテル本体に取り外し可能に装着されるシースであって、前記シースが、前記捕捉カテーテル本体のある区域を、前記シースの端部に隣接する位置で又は前記シースの強度を低くした区域若しくは中断部における位置で曲げることによって、前記最初の捕捉カテーテルの湾曲した且つ曲げられた部分を形成するように位置決めされている、シースと、
を備え、
前記捕捉カテーテル本体のある区域を曲げることによって、前記最初の捕捉カテーテルを最終的な捕捉カテーテルに変形させ、
前記最終的な捕捉カテーテルは、前記ガイド・カテーテル組立体の近位端にある当接部に当接して前記ガイド・カテーテル組立体への前記最終的な捕捉カテーテルの最大挿入深さを決定するストッパを備え、
前記ストッパは、前記捕捉カテーテル本体の半径方向の一方側にのみ突出しており、
前記ストッパは、前記捕捉カテーテル本体の前記湾曲した且つ曲げられた区域を含み、
前記捕捉カテーテル本体の前記湾曲した且つ曲げられた区域は、前記膨張ルーメンの対応して湾曲した且つ曲げられた区域を画定している、キット。
【請求項9】
請求項8に記載のキットにおいて、
前記シースを少なくとも2つ備え、各々のシースは、前記捕捉カテーテル本体のある区域を、前記捕捉カテーテルの遠位端から異なる所定の距離のところでそれぞれ曲げるように位置決めされる、キット。
【請求項10】
ガイド・カテーテル及び前記ガイド・カテーテルの近位端に装着された弁継手を備えるガイド・カテーテル組立体と、請求項1から7のいずれか一項に記載の捕捉カテーテルと、を備えるシステムであって、
前記ストッパは、最大限に挿入された状態で、前記捕捉カテーテルの遠位端が前記ガイド・カテーテル内の前記ガイド・カテーテルの遠位端から50mm未満のところに配置されるように、前記捕捉カテーテルの前記最大挿入深さを制限するように位置決めされる、システム。
【請求項11】
ガイド・カテーテルと前記ガイド・カテーテルの近位端に装着された弁継手とを備えるガイド・カテーテル組立体への挿入前に、捕捉カテーテルを準備するための方法であって、
前記ガイド・カテーテル組立体は、前記ガイド・カテーテルの中心線に沿って測定される長さを有し、前記捕捉カテーテルは、バルーンと、前記捕捉カテーテル内に長手方向に延在する膨張ルーメンを画定する捕捉カテーテル本体と、を備え、
前記膨張ルーメンは、前記バルーンによって画定される内部空間内へと開いている遠位端を有し、
前記方法は、前記捕捉カテーテル本体に、前記ガイド・カテーテル組立体の近位端にある当接部に当接して、最大限に挿入された状態で前記捕捉カテーテルの遠位端が前記ガイド・カテーテル内の前記ガイド・カテーテルの遠位端から50mm未満のところに配置されるように前記捕捉カテーテルの最大挿入深さを決定する、ストッパを設けることを含み、
前記捕捉カテーテル本体に前記ストッパを設けることは、前記ストッパが前記捕捉カテーテル本体の半径方向の一方側にのみ突出しており、前記ストッパが前記捕捉カテーテル本体の湾曲した且つ曲げられた区域を含み、且つ前記捕捉カテーテル本体の前記湾曲した且つ曲げられた区域が、前記膨張ルーメンの対応して湾曲した且つ曲げられた区域を画定しているような方法で、前記捕捉カテーテル本体のある区域を曲げることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤなどの細長いデバイスをガイド・カテーテル内のある位置に維持するための捕捉カテーテルに、かかる捕捉カテーテルを準備するためのキットに、及びガイド・カテーテルへの挿入前に捕捉カテーテルを準備するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管形成術で使用されるほとんどの拡張カテーテルは、その遠位端に膨張可能なバルーンを有する。カテーテルの進行に追随するためにX線透視撮影法を使用しながら、処置すべき狭窄部を横断してバルーンが位置決めされるまで、カテーテルを血管系の中で前進させる。次いでバルーンをバルーンと連通する膨張ルーメンを介して膨張させる。バルーンの膨張により動脈が伸展し、病変部が動脈壁に押し込まれて、動脈を通る血流が容認できる程度まで回復する。処置される病変部を支持するために、同時にステントを拡張させてもよい。
【0003】
拡張カテーテルは通常、処置されるべき病変部まで又はこれを通って延在する位置まで前もって案内されている、ガイドワイヤに沿って前進される。ガイドワイヤの遠位端を狭窄部まで案内して狭窄部を横断させるのを容易にするために、ガイドワイヤの所定の領域に剛性を付与するためのガイドワイヤ支持カテーテルをガイドワイヤ上に前進させてもよい。使用される拡張カテーテルは、その全長にわたるガイドワイヤ・ルーメンを有する「オーバー・ザ・ワイヤ」カテーテル、又は遠位端の近くにのみガイドワイヤ・ルーメンを有する「迅速交換」カテーテルである。かかる機器の使用には、カテーテルを異なる目的のために異なるカテーテルと交換すること、例えば、ガイドワイヤ支持カテーテルを拡張カテーテルと交換すること、又は、拡張カテーテルを、例えばサイズの異なるバルーンを有する、別の拡張カテーテルと交換することが含まれる。
【0004】
したがって、多くの場合、カテーテルを異なるカテーテルに交換している間、ガイドワイヤを、閉塞部に対して固定されているワイヤ位置にガイドワイヤの遠位端が留まるように位置決めされた状態に維持することが望ましい。
【0005】
欧州特許出願第0 415 332号には、操作者が(ガイド)ワイヤ上で機器を安全かつ迅速に取り外す又は交換することを可能にする捕捉バルーンの使用について記載されている。これにより、カテーテルの交換中、ガイドワイヤが遠位で意図せず移動することが防止される。狭窄部を横断するように設計されたガイドワイヤは通常、比較的剛性が高く、したがって、患者の血管を容易に穿孔するか又は損傷する可能性がある。遠位端の位置を維持することにより、遠位端が誤って引き戻されて、再度閉塞部へと案内する及び/又はこれを通過させる必要が生じることがないこともまた、保証される。
【0006】
捕捉は、最初にガイドワイヤ上のオーバー・ザ・ワイヤ・デバイスを数センチメートル引き込んでガイド・カテーテル内へと戻すことによって実現される。遠位端にバルーンを有する捕捉カテーテルが、そのバルーンがガイド・カテーテルの遠位端に又はその近くに、かつ途中まで引き込まれた機器を越えて遠位にあるような状態で、ガイド・カテーテル内に配置される。
【0007】
バルーンはガイド・カテーテルの端部から外に前進させないのが好ましいが、その理由は、このことには近位の冠動脈に外傷を与える深刻なリスクが伴うからである。しかしながら、バルーン・カテーテルを可視化することは困難である可能性があり、これには更なる画像化と注意とが必要とされる。バルーンは、ガイド・カテーテルの遠位端に直接隣接しているか又はその近くであって、かつ途中まで引き戻された機器から遠位の、要求された位置に入ると、膨張される。バルーンを膨張させることにより、ガイドワイヤがガイド・カテーテルの内側表面に対して押さえ付けられ、ガイド・カテーテルの長手方向におけるその位置が固定されて、操作者は、軸方向において固定された位置にガイドワイヤの遠位端を維持することに特別な注意を払う必要なく、途中まで引き戻された機器を更に取り外すことが可能になる。ガイドワイヤ上で次に使用されることになる機器を挿入する及び前進させるときにも、捕捉バルーンは膨張させたままとされ、この結果、新たに挿入されるデバイスを、これがバルーンに当接するまで、ガイド・カテーテルを通るその前進を監視するためにX線透視撮影法に戻ることなく、迅速に前進させることができる。次いで捕捉バルーンが収縮され、新たに挿入されるデバイスを、ガイド・カテーテルの遠位端の近くの既知の位置を起点として、冠動脈内の所望の位置まで更に前進させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ガイド・カテーテルの内側にある捕捉カテーテルのバルーンの、より迅速かつ容易な、正確な位置決めを可能にする解決法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の捕捉カテーテルを提供することによって達成される。本発明はまた、請求項1に記載のキットにおいて、請求項13に記載のシステムにおいて、及び請求項14に記載の方法において、具現化され得る。
【0010】
捕捉カテーテル本体には、ガイド・カテーテル組立体の近位端にある当接部、例えばガイド・カテーテル組立体の近位端の固定された位置にあるYコネクタ又は他の継手の近位端に対して当接してガイド・カテーテルへの捕捉カテーテルの最大挿入深さを決定する、ストッパが設けられるので、操作者は、ストッパが当接部に対して当接するまで、ガイド・カテーテルに捕捉カテーテルを迅速に挿入することができ、このとき、捕捉カテーテルの遠位端がガイド・カテーテルの内側にあり、かつガイド・カテーテルの遠位端に直接隣接しているか又はこれの少なくとも近くにあることが、保証されている。
【0011】
従属請求項には、本発明の特定の詳細及び実施形態が記載されている。
【0012】
詳細な説明及び図面から、本発明の更なる特徴、効果、及び詳細が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る捕捉カテーテル及びカテーテル・システムの第1の例の概略断面図である。
【
図2】
図1に示す捕捉カテーテル及びカテーテル・システムの近位部分の、拡大概略断面図である。
【
図3】本発明に係る捕捉カテーテル及びカテーテル・システムの第2の例の、
図2に応じた図である。
【
図4】本発明の第3の例に係る捕捉カテーテルのある区域の概略断面図である。
【
図5】
図4の平面V-Vに沿った概略断面図である。
【
図6】ストッパを形成する湾曲した区域を含む、
図4及び
図5に係る捕捉カテーテルのある区域の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明についてまず、
図1及び
図2に示す第1の例を参照して説明する。
図1には、血管系1及び本発明に係るカテーテル・システム2の第1の例が示されている。ガイド・カテーテル・システム2は、ガイド・カテーテル9と、ガイド・カテーテル9の近位端に装着された弁継手15と、捕捉カテーテル10と、を備える、ガイド・カテーテル組立体3を含む。ガイド・カテーテル9は、例えば大腿動脈(図示せず)を介して、血管系1に挿入されている。
図1に示す血管系1の遠位部分は、下行大動脈4と、大動脈弓5と、上行大動脈6と、を含む。上行大動脈6から冠動脈7が延びている。冠動脈7に狭窄部8が形成されている。
【0015】
更に、ガイド・カテーテル9の内側には、ガイドワイヤ11及びガイドワイヤ支持カテーテル12が延在する。図面において区別し易いように、捕捉カテーテル10には点模様でマーキングしてある。ガイドワイヤ支持カテーテル12は、ガイドワイヤ11上を通されている。この例では、弁継手15は、止血弁を有するYコネクタである。
【0016】
使用時、ガイド・カテーテル9は、大腿動脈(図示せず)において血管系1に挿入され、ガイド・カテーテル9の遠位端17が冠動脈7の口部18内へと突出する位置に到達するまで前進される。次いで、ガイドワイヤ11及びガイドワイヤ11上に配置されたガイドワイヤ支持カテーテル12が、ガイド・カテーテル9に挿入される。別法として、ガイドワイヤ11を最初に挿入し、その後、ガイドワイヤ支持カテーテル12をガイドワイヤ11上に通してもよい。次いで、ガイドワイヤ11とガイドワイヤ支持カテーテル12を組み合わせて、両方がガイド・カテーテル2の遠位端17から外に延びるまで前進させる。次いでガイドワイヤ11の先端部は狭窄部8へと案内され、狭窄部8を横切る。ガイドワイヤ11の及びガイドワイヤ支持カテーテル12の前進は、可撓性又は剛性が要求されるとき必要に応じて交互に行ってもよい。
【0017】
捕捉カテーテル10は、捕捉カテーテル本体23と、その遠位端21に隣接するバルーン22と、捕捉カテーテル本体23によって画定される膨張ルーメン24と、を有する。膨張ルーメン24は、バルーン22によって画定される内部空間内へと開いている遠位端25を有する。
図1では、捕捉カテーテル10が、大腿動脈(図示せず)にあるガイド・カテーテル9に挿入された位置に示されており、遠位端21が、最大限でガイド・カテーテル9の遠位端17と面一になるまで、前進されている。公差を許容するために、捕捉カテーテル10の遠位端21は好ましくは、ガイド・カテーテル9の遠位端21よりも僅かに近位の位置を越えては前進されない。ガイドワイヤ11は、ガイド・カテーテル9から外に突出しているガイドワイヤ11の近位部分を係合することによって、長手方向に関して位置決めされた状態に保持され、この結果、狭窄部8に対するガイドワイヤ11の遠位端20の位置が維持される。交換されることになるガイドワイヤ支持カテーテル12が、その遠位端19が捕捉カテーテル10のバルーン22の近位に来るまで引き戻された位置に示されている。
【0018】
カテーテル9、10、12、及びガイドワイヤ11が互いに長手方向においてこのような位置にある状態で、捕捉カテーテル10の捕捉カテーテル本体23を通って延在するルーメン24を介して捕捉カテーテル10のバルーン22を膨張させて、これによりバルーン22がガイドワイヤ11をガイド・カテーテル9の内壁表面に対して押さえ付けるようにし、このことにより、ガイドワイヤ11を、ガイド・カテーテル9に対して及び狭窄部8に対して固定する。
【0019】
捕捉カテーテル10のバルーン22の膨張によってガイドワイヤ11がガイド・カテーテル9に対して固定されてしまえば、ガイドワイヤ11の近位端を解放することができ、拡張カテーテル12をガイド・カテーテル9から引き抜き、ガイドワイヤ11の近位端から引き離すことができる。ガイドワイヤ11はガイド・カテーテル9に対して固定されているので、ガイドワイヤ11から離れるように拡張カテーテル12を操作する際に、ガイドワイヤ11の遠位端20が移動するリスクはほとんどない。
【0020】
次に、拡張カテーテルなどの別の機器をガイドワイヤ11の近位端上に設置し、ガイドワイヤ11上を通して、その遠位端19が捕捉カテーテル10のバルーン22に対して当接するまで、ガイド・カテーテル9内を通過させてもよい。次いで、ガイドワイヤ11の近位端は、その近位端を介してその位置を制御するために再び係合され、捕捉カテーテル10のバルーン22が収縮され、このことにより、捕捉カテーテル10のバルーン22とガイド・カテーテル9の内側表面との間に挟持されていた場所において、ガイドワイヤ11が解放される。次いで、新たに挿入された拡張カテーテル12は、捕捉カテーテル10のバルーン22の近位端の位置によって決定される正確に定められた位置を起点として、ガイドワイヤ11に沿って短い距離を、狭窄部8に向かって遠位に移動される。新たに挿入されたカテーテルの遠位端が、ガイド・カテーテル9の遠位端17の近くの、したがって狭窄部8の近くの、正確に定められた位置から前進するので、狭窄部8内での拡張カテーテル12のバルーンの位置決めを、非常に迅速に行うことができる。拡張カテーテルのバルーンが狭窄部8を横断する方向に位置決めされた後で、拡張カテーテルのバルーンを膨張させることによって、狭窄部8を拡張させることができる。
【0021】
カテーテル交換中、ガイド・カテーテル9に対して及び狭窄部8に対して、ガイドワイヤ11のその長手方向における位置が、特に注意を払ってガイドワイヤを手で保持する必要なく、確実に維持される。新しいカテーテルを、ガイド・カテーテル9の遠位端の近くの所定の場所に、非常に迅速に挿入することができる。したがってまた、ガイドワイヤ11が捕捉カテーテルの膨張したバルーン22によって不動に保持され、このためその位置を絶えず監視する必要がないので、X線透視撮影法への暴露も限定される。
【0022】
捕捉カテーテル10の捕捉カテーテル本体23には、ガイド・カテーテル組立体3の近位端27にある当接部27に対して当接してガイド・カテーテル9への捕捉カテーテル10の最大挿入深さを決定する、ストッパ26が設けられる。この例では、当接部は、ガイド・カテーテル9の近位端において、止血弁を有するYコネクタ15の近位端27によって形成されている。こうして、ガイド・カテーテル9内の捕捉カテーテル10の遠位端21の位置が事前に非常に正確に決定され、この位置は、ストッパ26が当接部27に当たるまで、捕捉カテーテル10を、可能な限り遠くまでガイド・カテーテル組立体3に挿入することによって、捕捉カテーテル10の前進中に特に注意を払う必要なく到達される。この例では、ストッパ26は、ガイド・カテーテル組立体3のYコネクタ15へと押さえ付けられている。
【0023】
好ましくは、ある長さのガイド・カテーテル9において使用される捕捉カテーテル10の最大挿入深さは、最大限に挿入された状態で、捕捉カテーテル10の遠位端21が、ガイド・カテーテル9内の、ガイド・カテーテル9の遠位端17から50mm未満、又は(より好ましくなる順番で)40、30、20、若しくは10mm未満のところに位置付けられるような深さである。
【0024】
こうして、捕捉カテーテル本体23に、ガイド・カテーテル組立体3の近位端にある当接部27に対して当接して捕捉カテーテル10の最大挿入深さを決定する、ストッパ26が設けられることによって、捕捉カテーテル10の遠位端21の正確かつ迅速な位置決めが実現され、この結果、最大限に挿入された状態で、捕捉カテーテル10の遠位端は、ガイド・カテーテル9内の、ガイド・カテーテル9の遠位端17から50mm未満(又は40、30、20、若しくは10mm未満)のところに位置付けられる。
【0025】
ストッパ26は、ガイド・カテーテル組立体3の弁継手15の一部29の背後に掛止されるフック28を有し、このことにより、捕捉カテーテル10が、例えばそのバルーン22が膨張する直前に、意図せず引き戻されるリスクも低減される。
【0026】
実際には、ガイド・カテーテルは主として、バルーン先端部からガイド・カテーテルの近位端まで90及び100cmの長さで提供される。ガイド・カテーテル9の近位端では、Yコネクタ、止血弁、又は他の弁継手15により、ガイド・カテーテル組立体3を通る通路の全長が長くなる。そのような標準的な長さのガイド・カテーテル9内で捕捉バルーンが遠位端の近くに位置決めされたときに前進を止めるために、ストッパ26は好ましくは、捕捉カテーテル10の(遠位端からストッパまで測定される)挿入深さを、最大98~103cmに又は最大108~113cmに、より好ましくは最大101~103cm又は最大111~113cmに制限するように、位置決めされる。
【0027】
ガイド・カテーテル9のルーメンの断面積をほとんど占有することなく効果的かつ確実な押さえ付け効果をもたらすために、捕捉カテーテル10のバルーン22は好ましくは、拡張した状態にあるときに2~3mm以下の直径を有する。
【0028】
ガイド・カテーテルのルーメンの小さい区域のみしか占有せずに拡張した状態にあるときに効果的かつ確実な押さえ付け効果をもたらすために、捕捉カテーテル10のバルーン22は好ましくは、15~35mmの長さを有する。
【0029】
この例では、ストッパ26は、捕捉カテーテル本体23の半径方向の一方側への方が、捕捉カテーテル本体23の反対側へよりも大きく突出している。この結果、弁継手15の近位入口領域の妨害が、小さい領域に限定される。
【0030】
この特徴は、
図3に示す例におけるように、ストッパ76が、捕捉カテーテル60の捕捉カテーテル本体73の半径方向の一方側にのみ突出している場合に、特に効果的である。
【0031】
この例では、ストッパ76が捕捉カテーテル60の捕捉カテーテル本体73の湾曲した区域77を含むように提供することによって、捕捉カテーテル10の捕捉カテーテル本体73の半径方向の一方側に突出しているストッパ76のみを、特に単純な様式で得られる。
【0032】
正確に決定された位置で確実に当接するように、湾曲した部分77は、好ましくは5mm未満の、より好ましくは3若しくは4mm未満の半径を有し、かつ/又は、湾曲した部分77は、少なくとも30°、より好ましくは少なくとも45°の偏向角度で湾曲される。湾曲した部分がストッパを形成した後で、捕捉カテーテル本体は、他の方向に曲げられてもよく、例えば、湾曲した部分の他方側にある部分とほぼ平行な方向に曲げ戻されてもよい。
【0033】
ストッパの位置をガイド・カテーテルの長さに従って設定できる場合、長さの異なるガイド・カテーテルと組み合わせて使用するのに、単一の型の捕捉カテーテルで十分である。
【0034】
このことは、ガイド・カテーテル59に挿入される捕捉カテーテル60を含む、捕捉カテーテルを準備するためのキットであって、捕捉カテーテル60はバルーンと捕捉カテーテル本体73とを有し、捕捉カテーテル本体73にはシース80が取り外し可能に装着されている、キット、を提供することによって実現され得る。シース73は、捕捉カテーテル本体73のある区域を、シース80の強度を低くした区域又は中断部において曲げることによって、湾曲した部分77を形成するように位置決めされる。シースはまた、シース80の端部に隣接して湾曲した部分77が形成されるように位置決めされてもよい。こうして、湾曲した部分を、正しい位置に特に迅速かつ確実に作成することができる。シース80は、湾曲されることになる区域に隣接する捕捉カテーテル本体73の部分を包囲し、この結果、曲げられることになる部分に隣接する捕捉カテーテル本体73の部分が、曲げが行われた後で大きく湾曲しないことが保証され、曲げられることになる部分は、更なる器具を必要とすることなく手で容易に曲げることができる。
【0035】
この例では、管状部材80がシースを形成しており、この管状部材80には、管状部材80と同軸の円形断面のチャネル82の幅よりも僅かに小さい幅の、スロット81が形成されている。スロット81の幅は、捕捉カテーテル60の捕捉カテーテル本体73がチャネル82内に保持されるが、捕捉カテーテル本体73に対して及び管状部材80に対して横断方向に、捕捉カテーテル本体73から管状部材を取り外すことができるような幅である。
【0036】
管状部材80は、互いに反対側にある凹部83、84として形成された強度の低い部分を有する。これらの凹部のうちの第1の凹部83は、向かい合う側壁の交点が捕捉カテーテル本体73の中心線とほぼ一直線上にあるV字形状のものであり、凹部のうちの第2の凹部84は、シース材料の伸展を容易にするために、V字形状の凹部のほぼ最大幅にわたって壁厚さが薄くなった形態となっている。
【0037】
図6に示すように、シース80のうちの1つを曲げ、V字形状の凹部の向かい合う壁を互いに対して曲げることによって、捕捉カテーテル60の捕捉カテーテル本体73にシース80が事前に装着されている位置によって決定される所定の位置に、器具を必要とすることなく及び何らかの測定を行うか又は捕捉カテーテル60の捕捉カテーテル本体73の上に存在する小さいマークを参照する必要なく、湾曲した部分77を手で容易に作成することができる。シース80はまた、捕捉カテーテル本体73を均等に支持し、この結果、捕捉カテーテル本体73の内部のルーメン74が潰れるリスクが低減される。ガイド・カテーテル9及び弁継手15の内部断面積の小さい部分しか占有しないようにしながら、バルーンの確実かつ迅速な膨張及び収縮を可能にするために、捕捉カテーテル本体の内部のルーメン74は、好ましくは0.4~0.9mmの、より好ましくは0.5~0.8mmの直径を有し、捕捉カテーテル本体73は、好ましくは1.2mm未満、より好ましくは1.0mm未満の直径を有する。曲げ終わると、
図6に示すような湾曲部77が得られ、続いて、シース80を捕捉カテーテル本体73から脇へと取り外すと、
図3に示すような、捕捉カテーテル本体73の単なる急な湾曲部77の形態のストッパが得られ、この結果、捕捉カテーテル60が止血弁の入口の手前で占有する空間は、非常に小さくなる。
【0038】
これらのシース80のうちの2つは各々、捕捉カテーテル本体73のある区域を、捕捉カテーテル60の遠位端から異なる所定の距離のところで曲げるように位置決めされるので、ストッパ76の位置は、シース80のうちの、要求される最大挿入深さに従って選択される1つにわたって曲げを行うことによって、使用の直前に決定することができる。他方のシース80は、曲げられることなくそのシース位置で捕捉カテーテル本体73から単に取り外される。挿入深さはまた、捕捉カテーテルから取り外し可能であってもなくてもよい所定のマーキングのところで曲げることによって、適合されてもよい。このことによりまた、捕捉カテーテルの最大挿入深さを、弁継手によって追加される有効長さに適合させることも可能になる。
【0039】
同じ又は別個の実施形態の一部として、いくつかの特徴について説明した。しかしながら、本発明の範囲が、実施例において具現化される特徴の特定の組み合わせ以外の、これらの特徴の全てまたは一部の組み合わせを有する実施形態もまた含むことが、了解されるであろう。