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特許7121020熱可塑性コポリマーブロックポリアミドシリコーンエラストマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】熱可塑性コポリマーブロックポリアミドシリコーンエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220809BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220809BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20220809BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220809BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220809BHJP
   B29C 48/00 20190101ALI20220809BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220809BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L83/05
C08L83/07
C08K3/013
C08K3/36
B29C48/00
C08J3/20 B
C08J3/24 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019540598
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018052282
(87)【国際公開番号】W WO2018141747
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】17305113.7
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516265285
【氏名又は名称】マルチベース・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オーレリー・アリゴーニ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァイン・ブカール
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-504468(JP,A)
【文献】特開2001-316509(JP,A)
【文献】特開2003-286341(JP,A)
【文献】特表2003-509522(JP,A)
【文献】国際公開第2007/145324(WO,A1)
【文献】特開昭60-155230(JP,A)
【文献】特表2012-513490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0014888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー組成物であって、
(A)熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー;
(B)
(B1)
(B1a)25℃で少なくとも1000000mPa・sの粘度及び1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンポリマーと、
(B1b)(B1a)の重量を基準として1~50重量%の量の強化フィラーと、
を含有するシリコーンベース、
(B2)ケイ素に結合している水素基を1分子当たり平均少なくとも2個含むオルガノヒドリドシリコーン化合物、
を含有するシリコーン組成物;
(C)ヒドロシリル化触媒;並びに、任意選択的に
(D)1種以上の添加剤成分;
のブレンドを含有し、熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー(A)対前記シリコーン組成物(B)の重量比が50:50~95:5の範囲内であり、成分(B2)及び(C)が前記シリコーン組成物B1を硬化させるのに十分な量で存在し、相溶化剤を含まず、硬化後に90未満のショアA硬度値を示す、熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)がジオルガノポリシロキサンガムである、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記強化フィラー(B1b)がシリカである、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記シリカ強化フィラー(B1b)が、前記ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)を基準として2~10重量%で存在する、請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記シリカ強化フィラー(B1b)が、前記ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)を基準として6~20重量%で存在する、請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性コポリマー(A)対前記シリコーン組成物(B)の重量比が50:50~95:5の範囲内である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
硬化後に90未満のショアA硬度値を示す熱可塑性エラストマーの形成方法であって、(A)熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー;(B1)(B1a)25℃で少なくとも1000000mPa・sの粘度及び1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、(B1b)前記ジオルガノポリシロキサン(B1a)を基準として1~50重量%の強化フィラーと、を含有するシリコーンベース;(B2)ケイ素に結合している水素基を1分子当たり平均少なくとも2個含むオルガノヒドリドシリコーン化合物;並びに(C)ヒドロシリル化触媒;を相溶化剤の不存在下で接触させることを含み、前記熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー対前記シリコーンベース(B1)と前記有機ヒドリドシリコーン化合物(B2)との合計重量の重量比が50:50~95:5の範囲内である、方法。
【請求項8】
前記熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー(A)、前記シリコーンベース(B1)、前記オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)、及び前記ヒドロシリル化触媒(C)が、100℃~250℃の範囲の温度で接触させられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱可塑性有機コポリマー(A)、前記シリコーンベース(B1)、前記オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)、及び前記ヒドロシリル化触媒(C)が押出機の中でブレンドされる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマーが、形成の後、熱可塑性フィルム又は熱可塑性シートを形成するために、押し出し、共押し出し、ラミネート加工、カレンダー加工、及び/又は押し出し-カレンダー加工される、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクス、自動車、又はスポーツなどの様々な分野で使用される熱可塑性エラストマー(TPE)、特に高付加価値のエンジニアリングポリマー、並びにそれらを製造するための熱可塑性エラストマー組成物及び加硫された熱可塑性エラストマー組成物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、プラスチック特性とゴム特性の両方を有するポリマー材料である。TPEは従来の熱硬化性ゴムとは異なりエラストマー的な機械的特性を有する一方で、これらは高温で再加工することができる。
【0003】
この再加工能力は、加工部品のリサイクルを可能にし、スクラップの大幅な低減をもたらすため、化学的に架橋されたゴムに対するTPEの大きな利点である。
【0004】
一般的には、2つの主な種類の熱可塑性エラストマーであるブロックコポリマーTPEと単純ブレンドTPE(物理的ブレンド)が知られている。
ブロックコポリマーTPEは以下のものを含む:
(i)ハード又は剛質と呼ばれる(すなわち熱可塑性挙動を有する)ブロック又はセグメント、典型的にはこれらは周囲温度より高い融点又はガラス転移温度を有する;及び
(ii)曲げやすい又はフレキシブルであるソフトと呼ばれる(すなわちエラストマー挙動を有する)ブロック又はセグメント、これらは典型的には低いガラス転移温度(Tg)又は室温よりかなり低い融点を有する。
【0005】
「低いガラス転移温度」という表現は、15℃未満、好ましくは0℃未満、有利には-15℃未満、より有利には-30℃未満、場合によっては-50℃未満のガラス転移温度Tgを意味すると理解される。
【0006】
ブロックコポリマー熱可塑性エラストマーでは、ハードセグメントが凝集して明確なミクロ相を形成し、ソフト相のための物理的架橋として機能し、それによって室温でゴム状の性質を付与する。高温では、ハードセグメントは溶融又は軟化し、コポリマーの流動及び加工を可能にする。ハードブロックは、一般的にはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、又はそれらの混合物を主体とする。ソフトブロックは一般的にはポリエーテル(PE)、ポリエステル、及びそれらのコポリマー又はブレンドを主体とする。ハードブロックとソフトブロックとを有するそのようなコポリマーの1つの例は、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー(ポリエーテル-ブロック-アミド、しばしばPEBAと略される)である。
【0007】
PEBAは一般的には、エンジニアリングポリマーとみなされる、可塑剤を含まない熱可塑性エラストマーである。これらは、単一のポリマーにおいて、匹敵するもののない機械的特性、及び熱又は紫外線老化に対する非常に優れた耐性、並びに低い密度を組み合わせることを可能にする。そのため、これらは軽量の部品を製造することを可能にする。特に、同等の硬度で、これらは他の材料よりも少ないエネルギーを消散させ、このことはこれらに曲げ又は引張りにおける動的応力に対する非常に優れた耐性を与え、これらは弾性スプリングバックの非常に優れた性質を有する。しかしながら、上述した利点の多くを失うことなしに、低いショアA硬度、すなわち<100を有する軟質PEBA型材料を製造することは非常に困難である。典型的には、PEBAはハードブロックとソフトブロックの約1:1の組み合わせであり、ソフトブロックの割合が大幅に増加すると製造上の問題が生じる場合がある。
【0008】
単純ブレンド又は物理的ブレンドと呼ばれるTPEは、エラストマー成分を熱可塑性樹脂と均一に混合することによって得ることができる。エラストマー成分も混合中に架橋される場合には、熱可塑性加硫物(TPV)として当該技術分野で公知の熱可塑性エラストマーが得られる。TPVの架橋したエラストマー相は高温で不溶性かつ非流動性であるため、TPVは一般的に、単純なブレンドと比較して改善された耐油性及び耐溶剤性並びに低減された圧縮永久歪みを示す。
【0009】
典型的には、TPVは動的加硫として知られている方法により形成され、この中でエラストマーと熱可塑性マトリックスは混合され、エラストマーは混合プロセス中に架橋剤及び/又は触媒によって硬化される。架橋したエラストマー成分がシリコーンポリマーであってもよい一方で、熱可塑性成分が有機の非シリコーンポリマー(すなわち熱可塑性シリコーンは加硫処理される又はTPSiV)であるものを含む、数多くのこのようなTPVが当該技術分野で公知である。
【0010】
米国特許第6,281,286号明細書には、ポリアミドホモポリマーとシリコーンガムとから製造された高衝撃強度組成物が記載されている。
【0011】
米国特許第6,362,288号明細書には、相溶化ポリアミド樹脂、シリコーンガム、フィラー、及び相溶化剤(カップリング剤、有機官能性ジオルガノポリシラン、又はシロキサンコポリマー)から熱可塑性シリコーンエラストマーを得るための方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、低い硬度、すなわち90未満のショアA硬度値、あるいは85未満のショアA硬度値、及び更なる代替として80未満のショアA硬度値を有する熱可塑性相中にPEBAが含まれる熱可塑性樹脂を得ることを目的とする。上述したそれぞれにおいて、前記硬度値は可塑剤及び/又は相溶化剤が存在しない状態で得られる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、
(A)熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー;
(B)
(B1)
(B1a)25℃で少なくとも1000000mPa.sの粘度及び1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンポリマーと、
(B1b)(B1a)の重量を基準として1~50重量%の量の強化フィラーと、
を含有するシリコーンベース、
(B2)ケイ素に結合している水素基を1分子当たり平均少なくとも2個含むオルガノヒドリドシリコーン化合物、
を含有するシリコーン組成物;
(C)ヒドロシリル化触媒;並びに、任意選択的に
(D)1種以上の添加剤成分;
のブレンドを含有する熱可塑性エラストマー組成物が提供され、熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー(A)対シリコーン組成物(B)の重量比は50:50~95:5の範囲内であり、成分(B2)及び(C)は、前記シリコーン組成物B1を硬化させるのに十分な量で存在する。
【0014】
上の硬化により得られる硬化生成物は、低い硬度、すなわち90未満のショアA硬度値、あるいは85未満のショアA硬度値、及び更なる代替として80未満のショアA硬度値を有する材料を与えることが確認された。更に、上の組成物から分かるように、これらの値は可塑剤及び/又は相溶化剤の不存在下で得ることができる。
【0015】
本発明による上述した組成物の生成物は、驚くべきことに、成分(B)の不存在下で見込まれるであろう成分(A)の耐衝撃性又は耐衝突性を実質的に維持することが観察された。
【0016】
有利には、可塑剤及び/又は相溶化剤の使用は、本発明の熱可塑性樹脂を主体とするシリコーンブロックコポリマーアミドエラストマーを得るために必要とされない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
疑義を避けるために記載すると、シラン及びシロキサンはケイ素を含む化合物である。
・シランは、SiHから誘導される化合物である。シランはしばしば少なくとも1つのSi-C結合を含む。シランは通常は1つのみのSi原子を含む。
・シロキサンは、少なくとも1個のSi-O結合を含む化合物である。
・ポリシロキサンは、ポリマー鎖を形成する複数のSi-O-Si-結合を含み、繰り返し単位は-(Si-O)-である。オルガノポリシロキサンはシリコーンと呼ばれる場合もある。オルガノポリシロキサンは、少なくとも1個のSi原子が少なくとも1個の有機基を有する-(Si-O)-繰り返し単位を含む。「有機」は、少なくとも1個の炭素原子を含むことを意味する。有機基は、少なくとも1個の炭素原子を含む化学基である。
・ポリシロキサンは末端基及びペンダント基を含む。末端基は、ポリマー鎖の末端にあるSi原子上に位置する化学基である。ペンダント基は、Si原子がポリマー鎖の末端にないSi原子上に位置する基である。
・ポリマーは繰り返し単位を含む化合物であり、その単位は典型的には少なくとも1つのポリマー鎖を形成する。ポリマーはホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。ホモポリマーは、1種のモノマーのみから形成されるポリマーである。コポリマーは、少なくとも2種の異なるモノマーから形成されたポリマーである。繰り返し単位が炭素原子を含む場合、ポリマーは有機ポリマーと呼ばれる。
【0018】
いくつかのポリマーは熱硬化性である:一旦冷却されて硬化すると、これらのポリマーはその形状を保持し、元の形態に戻ることができない。他のポリマーは熱可塑性である:これらは加熱されると軟らかくなり、元の形態に戻ることができる。
【0019】
架橋反応は、2つ以上の分子(それらのうちの少なくとも1つはポリマーである)が一体に結合してポリマーを硬くする又は硬化させる反応である。架橋剤は、ポリマーの架橋反応を生じさせることができる化合物である。
【0020】
(B1a)において必要とされる高粘度ジオルガノポリシロキサンポリマー(例えば≧1000000MPa.s)の粘度値は、New Castle,DE,USAのTA InstrumentsからのAR2000レオメーター又は測定する粘度に最も適したスピンドルを備えた適切なブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。 しかしながら、(B1a)は、非常に高い粘度を有する高分子量のポリマーであるシリコーンガムであってもよい。ガムは典型的には25℃で少なくとも2000000mPa.sの粘度を有するが、通常かなり大きい粘度を有する。そのため、ガムは、粘度の測定が非常に困難になることを考慮して、ASTMD-926-08に従ったWilliams可塑性値によってしばしば特徴付けられる。
【0021】
本明細書では、熱可塑性材料(A)をシリコーン組成物(B)と接触させることを含む、加硫された熱可塑性エラストマーを上述した組成物から形成するための方法も提供される。(A)対(B)の重量比は50:50~95:5の範囲内である。
【0022】
追加の成分(D)は、最終用途の要件に応じて必要な特性を生み出すために、必要に応じて及び必要な場合に組成物中に添加することができる。
【0023】
熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー(A)
熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー(以降PEBAと呼ぶ場合がある)(A)は、ハードブロック及びソフトブロックを含む。ハードブロックはポリアミド(PAと略される)ブロックを主体とし、ホモポリアミド又はコポリアミドを含み得る。
【0024】
PEBAにおいて、前記少なくとも1種の硬質ポリアミドブロックの重量割合は、コポリマーの総重量に対して5%~95%、好ましくは15%~95%を占め、前記少なくとも1種のフレキシブルブロックの重量割合は5%~95%、好ましくは5%~85%を占める。
【0025】
好ましくは、ポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは、ASTM D6474-12に記載されている方法を用いたポリスチレン換算に基づいて、400~20000g/mol、好ましくは500~10000g/mol、より好ましくは500~3000g/mol、更に好ましくは500~2000g/molの範囲に含まれる。
【0026】
ブロックコポリマーにおいて、PAブロックはカルボン酸末端基を含んでいてもよく、その場合二酸PAという用語が使用され、あるいはこれらはアミン末端基を含んでいてもよく、ジアミンPAという用語が使用される。したがって、PAブロックとソフトブロック(SB)との間の結合はエステル結合あるいはアミド結合の場合がある。ジカルボン酸鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば、鎖制限ジカルボン酸の存在下でのポリアミド前駆体の縮合により生じる。
【0027】
3種類のポリアミドがこれらのPAブロックの組成の一部である場合がある。
i)例えば4~36個の炭素原子、あるいは6~18個の炭素原子を有するものなどの少なくとも1種の(脂肪族、脂環式、又は芳香族)ジカルボン酸と、特に2~36個の炭素原子を有するもの、好ましくは6~12個の炭素原子を有するものから選択される1種以上の脂肪族、脂環式、又は芳香族ジアミンとの縮合生成物。
ii)4~36個の炭素原子を有するジカルボン酸又はジアミンの存在下での1種以上のα,ω-アミノカルボン酸及び/又は6~12個の炭素原子を有する1種以上のラクタムの縮合生成物。有利には、第2の種類のポリアミドブロックは、ポリアミド11、ポリアミド12、又はポリアミド6である。
iii)少なくとも1種のα,ω-アミノカルボン酸(又は1種のラクタム)と少なくとも1種のジアミン及び1種のジカルボン酸との重縮合。この場合、PAブロックは、ジカルボン酸若しくはジアミン又は構造単位として使用される過剰の二酸若しくはジアミンから選択される鎖制限剤の存在下での;X個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、又は芳香族のジアミンと;Y個の炭素原子を有するジカルボン酸と;
Z個の炭素原子を有するラクタム及びα,ω-アミノカルボン酸から選択されるコモノマー{Z}と;の重縮合によって調製される。有利には、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸が鎖制限剤として使用され、前記ジカルボン酸はジアミンの化学量論量に対して過剰に導入される。
iv)任意選択的には鎖制限剤の存在下での、少なくとも2種の異なるα,ω-アミノカルボン酸、又は6~12個の炭素原子を有する少なくとも2つの異なるラクタム、又は同じ数の炭素原子を有さないラクタム及びアミノカルボン酸の縮合生成物。
【0028】
脂肪族二酸の例としては、例えば、ブタン二酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、及び二量化脂肪酸が挙げられる。脂環式二酸の例は、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸である。芳香族二酸の例としては、テレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)、及び5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩、カリウム塩、又はリチウム塩を挙げることができる。
【0029】
脂肪族ジアミンの例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。脂環式ジアミンの例としては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM又はPACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)の異性体、及び2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノ-メチル)ノルボルナン(BAMN)、並びにピペラジン(Pip)が挙げられる。
【0030】
α,ω-アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0031】
ラクタムの例としては、カプロラクタム、エナントラクタム、及びラウリルラクタムが挙げられる。
【0032】
上の(i)の生成物は、PA4.4、PA4.6、PA4.9、PA4.10、PA4.12、PA4.13、PA4.14、PA4.16、PA4.18、PA4.36、PA6.4、PA6.6、PA6.9、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6.14、PA6.16、PA6.18、PA6.36、PA9.4、PA9.6、PA9.10、PA9.12、PA9.13、PA9.14、PA9.16、PA9.18、PA9.36、PA10.4、PA10.6、PA10.9、PA10.10、PA10.12、PA10.13、PA10.14、PA10.16、PA10.18、PA10.36、PA10.T、PA10.1、PA BMACM.4、PA BMACM.6、PA BMACM.9、PA BMACM.10、PA BMACM.12、PA BMACM.13、PA BMACM.14、PA BMACM.16、PA BMACM.18、PA BMACM.36、PA PACM.4、PA PACM.6、PA PACM.9、PA PACM.10、PA PACM.12、PA PACM.13、PA PACM.14、PA PACM.16、PA PACM.18、PA PACM.36、PA Pip.4、PA Pip6、PA Pip.9、PA Pip.10、PA Pip.12、PA Pip.13、PA Pip.14、PA Pip.16、PA Pip.18、及び/又はPA Pip.36、及びこれらのコポリマーを主体とする少なくとも1種のPAブロックを含んでいてもよい。
【0033】
あるいは、ポリアミドブロックは、以下のポリアミド(コポリアミド)から製造されてもよい:PA6/12(6はカプロラクタムを意味し、12はラウリルラクタムを意味する);PA11/12(11は11-アミノウンデカン酸を意味し、12はラウリルラクタムを意味する);PA6/11(6はカプロラクタムを意味し、11は11-アミノウンデカン酸を意味する);PA6/6.6(6はカプロラクタムを意味し、6.6はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との縮合により生じるモノマーを意味する)。例として、PA10.10/11、PA6.10/11、PA10.12/11、PA10.10/11/12、PA6.10/10.10/11、PA6.10/6.12/11、PA6.10/6.12/10.10、PA11/6.36、PA11/10.36、及びPA10.10/10.36が挙げられる。
【0034】
ポリアミドブロックの例として、以下の分子のうちの少なくとも1つを含むものを挙げることができる:PA-12、PA-11、PA-10,10、PA-6,10、PA-6、PA-6/12、以下のモノマーのうちの少なくとも1種を含むコポリアミド:11、5,4、5,9、5,10、5,12、5,13、5,14、5,16、5,18、5,36、6,4、6,9、6,10、6,12、6,13、6,14、6,16、6,18、6,36、10,4、10,9、10,10、10,12、10,13、10,14、10,16、10,18、10,36、10,T、12,4、12,9、12,10、12,12、12,13、12,14、12,16、12,18、12,36、12,T、及びこれらのブレンド又はコポリマー。
【0035】
ポリアミドブロックコポリマー(A)は、本発明によるコポリマーにおいて想定され得る軟質又はフレキシブルブロックも含み、これらは特にポリエーテルブロックから選択されるものであると理解される。例として、ポリエーテルブロックは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(1,2-プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3-プロピレングリコール)(PO3G)、ポリ(テトラメチレングリコール)(PTMG)、及びこれらのコポリマー又はブレンドから選択される。好ましくは、本発明によるソフトブロックの数平均分子量Mnは、ASTM D6474-12に記載されている方法を用いたポリスチレン換算に基づいて、250~5000g/mol、あるいは250~3000g/mol、あるいは500~2000g/molにわたる範囲内である。
【0036】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明において使用されるコポリマーのPAブロックは、少なくとも1種の脂環式ジアミンと、12~18個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、好ましくは直鎖のジカルボン酸との等モルの組み合わせを、70モル%超、好ましくは80モル%超、好ましくは90モル%超、好ましくは100モル%含む。
【0037】
任意の適切なPEBAをPEBA(A)として本発明で利用することができ、PEBA(A)の例としては、PA-12/PEG、PA-6/PEG、PA-6/12/PEG、PA-11/PEG、PA-12/PTMG、PA-6/PTMG、PA-6/12/PTMG、PA-11/PTMG、PA-12/PEG/PPG、PA-6/PEG/PPG、PA-6/12/PEG/PPG、PA-11/PEG/PPG、PA-11/PO3G、PA-6,10/PO3G、及び/又はPA-10,10/PO3Gが含まれ得る。
【0038】
PEBAコポリマーは、ArkemaからPEBAX(登録商標)の商標で販売されているもの、又はEvonikからVestamid(登録商標)の商標で販売されているものなどのように市販されている。
【0039】
シリコーン組成物B
シリコーンベース(B1)
ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)
ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)は、主に直鎖の分子構造を有していてもよい。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)は、例えば、α,ω-ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン単位とジメチルシロキサン単位とのα,ω-ビニルジメチルシロキシコポリマー、及び/又はメチルビニルシロキサン単位とジメチルシロキサン単位とのα,ω-トリメチルシロキシコポリマーを含んでいてもよい。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)は、25℃で、New Castle,DE,USAのTA InstrumentsからのAR2000レオメーター、又は測定する粘度に最も適したスピンドルを備えた適切なブルックフィールド粘度計を用いて測定される少なくとも1000000mPa.sの粘度を有する。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)は、必要に応じて、粘度値が非常に高くこれらを正確に決定することが非常に困難になることを考慮して、Williams平行板プラストメーターを用いてASTM D-926-08によって測定されるWilliams可塑性値によって特徴付けられるガムであってもよい。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)は、必要に応じて、トリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンなどの少量の非反応性シリコーンで変性することができる。1つの代替形態では、ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)はガムである。
【0040】
ジオルガノポリシロキサン(B1a)のアルケニル基としては、ビニル基、ヘキセニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘプテニル基を例示することができる。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)中のアルケニル基以外のケイ素に結合している有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、若しくは同様のアルキル基;又はフェニル、トリル、キシリル、又は同様のアリール基を例示することができる。
【0041】
強化フィラー(B1b)
強化フィラー(B1b)は、例えばシリカであってもよい。シリカは、例えば、Cabotから商標Cab-O-Sil MS-75Dとして販売されているものなどのヒュームド(熱分解)シリカであってもよく、あるいは沈降シリカであってもよい。シリカの粒径は、例えば0.5μm~20μm、あるいは1μm~10μmの範囲である。シリカは、例えばシリカをシラン又はポリシロキサンで処理することによって製造された処理済シリカであってもよい。シリカを処理するために使用されるシラン又はポリシロキサンは、通常、シリカ表面に結合する親水性基、並びに脂肪族不飽和炭化水素若しくは炭化水素オキシ基及び/又はSiに結合している水素原子を含む。
【0042】
シリカは、例えばSiに結合している少なくとも1つのアルコキシ基とSiに結合している少なくとも1つのアルケニル基又はSiに結合している少なくとも1つの水素原子とを含むシランなどの例えばアルコキシシランを用いて処理することができる。アルコキシシランは、少なくとも1つの脂肪族不飽和炭化水素基を含むモノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、又はトリアルコキシシラン(例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、又はビニルメチルジメトキシシランなどのビニルアルコキシシラン等)であってもよい。Siに結合しているアルコキシ基は、シリカ表面に結合するシラノール基へ容易に加水分解することができる。
【0043】
あるいは、シリカは、Siに結合しているアルケニル基及びシラノール末端基を含むポリシロキサン、例えばオリゴマー状オルガノポリシロキサンを用いて処理することができる。
【0044】
シリカは、例えば、シリカに対して2重量%~60重量%の、アルケニル基を含むアルコキシシラン又はアルケニル基を含むオリゴマー状オルガノポリシロキサンを用いて処理することができる。
【0045】
オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)
Siに結合している水素原子を1分子当たり少なくとも2個有するオルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)は、例えば低分子量有機ケイ素樹脂又は短鎖若しくは長鎖のオルガノシロキサンポリマーであってもよく、これらは直鎖であっても環状であってもよい。オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)は、好ましくはジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)のアルケニル又は他の脂肪族不飽和基と反応可能な、ケイ素に結合している水素を1分子当たり少なくとも3個有する。オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)は、例えば一般式
SiO(R SiO)(RHSiO)SiR 又は
【0046】
【化1】
【0047】
(式中、Rは、最大10個の炭素原子を有するアルキル又はアリール基を意味し、Rは基R又は水素原子を意味し、pは0~20の値を有し、qは1~70の値を有し、ケイ素に結合している水素原子が1分子当たり少なくとも2個又は3個存在する)を有していてもよい。R4は、例えばメチル基などの1~3個の炭素原子を有する低級アルキル基であってもよい。オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)は、例えば25℃で1~150mPa.s、あるいは25℃で2~100mPa.s又は5~60mPa.sの粘度を有していてもよい。オルガノポリシロキサン(B2)の平均重合度は、例えば1分子当たり30~400個のシロキサン単位の範囲内であってもよい。好適なオルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)の例としては、トリメチルシロキサン末端ブロックポリメチルヒドロシロキサン、ジメチルヒドロシロキサン末端ブロックメチルヒドロシロキサン、ジメチルシロキサンメチルヒドロシロキサンコポリマー、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)は、これらの材料のうちの2種以上の混合物を含んでいてもよい。
【0048】
オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)中のSi-H基とジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)中の脂肪族不飽和基とのモル比は、好ましくは少なくとも1:1であり、最大8:1又は10:1であってもよい。例えば、Si-H基対脂肪族不飽和基のモル比は1.5:1~5:1の範囲である。
【0049】
ヒドロシリル化触媒(C)
ヒドロシリル化触媒(C)は、好ましくは白金族金属(周期表のVIII族)又はその化合物である。白金及び/又は白金化合物、例えば微粉末白金;塩化白金酸又は塩化白金酸のアルコール溶液;塩化白金酸のオレフィン錯体;塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体;白金-ジケトン錯体;シリカ、アルミナ、炭素、又は類似の担体上の金属白金;又は白金化合物を含む熱可塑性樹脂粉末が好ましい。他の白金族金属に基づく触媒は、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、又はパラジウム化合物によって例示することができる。例えば、これらの触媒は、以下の式で表すことができる:RhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、Ru(CO)12、IrCl(CO)(PPh、及びPd(PPh(これらの中のPhはフェニル基を表す)。
【0050】
触媒(C)は、好ましくはポリオルガノシロキサン組成物(B)を基準として0.5~100ppmwの白金族金属、より好ましくは1~50ppmの量で使用される。ヒドロシリル化触媒(C)は、ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)のアルケニル基とオルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)のSi-H基との反応を触媒する。
【0051】
添加剤-成分D
成分(D)は、熱可塑性エラストマーのための望まれる加工特性又は性能特性を得るために本発明の熱可塑性エラストマー組成物中に存在する。
【0052】
そのような追加の成分としては、例えば、軟化鉱油、可塑剤、他の無機フィラー(すなわち(B1b)強化フィラーを除く)、粘度調整剤、安定化剤、潤滑剤、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、熱可塑性エラストマー、及び耐火添加剤;顔料及び/又は染料などの着色剤;回折顔料などのエフェクト顔料;真珠光沢剤などの干渉顔料;反射顔料、及びこれらの混合物並びに上述した顔料のいずれかの混合物;UV安定化剤、老化防止剤、酸化防止剤、流動化剤、摩耗防止剤、離型剤、安定化剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、界面活性剤、光沢剤、フィラー、繊維、ワックス、及びこれらの混合物、及び/又はポリマーの分野で周知の任意の他の添加剤が挙げられる。
【0053】
そのような成分は、単独で又は組み合わせて使用されるべきである。成分(D)の添加量は、最大で組成物全体の30重量%とすべきである。好ましくは、1種以上の成分(D)が存在する場合、前記添加剤の総累計量は、典型的には、組成物の総重量の0.01~20重量%、好ましくは0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%を占める。
【0054】
鉱油は、通常、C15~C40の範囲の石油留分、例えば白油、流動パラフィン、又はナフテン油である。使用される場合、鉱油は、例えば熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマーと予め混合されていてもよい。鉱油は、例えば、熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマーを基準として0.5~20重量%で存在することができる。
【0055】
可塑剤は鉱油と組み合わせて、又は鉱油の代わりに存在していてもよい。好適な可塑剤の例としては、イソプロピル化トリアリールリホスフェート、レゾルシナルビス-(ジフェニルホスフェート)、又はGreat Lakes Chemical Corporationから商標Reofos(登録商標)RDPとして販売されているホスフェートエステルなどのホスフェートエステル可塑剤が挙げられる。そのような可塑剤は、例えば0.5%~15%までの範囲で使用することができる。
【0056】
他の無機フィラーの例としては、タルク又は炭酸カルシウムが挙げられる。フィラーはこれらの表面を疎水性にするために処理されていてもよい。そのようなフィラーは、存在する場合、好ましくはシリカなどの強化フィラー(B1b)よりも低い量で存在する。前記フィラーは、熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー又はシリコーンベース(B1)のいずれかと予め混合されていてもよい。
【0057】
顔料の例としては、カーボンブラック及び二酸化チタンが挙げられる。顔料は、例えば熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマーと予め混合されていてもよい。安定化剤は、例えば酸化防止剤であってもよく、例えば、商標「Irganox1010」としてBASFから販売されているテトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート)メタンなどのヒンダードフェノール酸化防止剤であってもよい。そのような酸化防止剤は、例えば、熱可塑性エラストマー組成物の0.05~0.5重量%で使用することができる。
【0058】
潤滑剤は、例えば、成形作業における熱可塑性エラストマーの加工性を改善するための表面潤滑添加剤であってもよい。表面潤滑添加剤の例は、商標「Crodamide-EBS」としてCRODAから販売されているエチルブチルステアラミドである。潤滑剤は、例えば熱可塑性エラストマー組成物の0.1~2重量%で使用することができる。
【0059】
本発明の組成物に難燃性を付与するための難燃性添加剤の使用も本発明の範囲内であると考えられる。本明細書では従来の難燃剤を使用することができ、これは、ポリジブロモスチレン、ジブロモスチレンのコポリマー、ポリブロモスチレン、臭素化ポリスチレン、テトラブロモフタレートエステル、テトラブロモフタレートジオール、テトラブロモフタレート無水物、テトラブロモベンゾエートエステル、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAのフェノキシ末端カーボネートオリゴマー、デカブロモジフェニルエタン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス-(トリブロモフェノキシ)エタン、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭化アンモニウム、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化エポキシポリマー、臭素化エポキシオリゴマー、及び臭素化エポキシ類などのハロゲン化種からなる群から選択することができる。他の非ハロゲン種は、イソプロピル化トリアリールホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ブチル化トリアリールホスフェート、レゾルシノールビス-(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリフスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミン、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、赤リン、ホウ酸亜鉛、及びスズ酸亜鉛などの材料から選択することができる。必要な効果を得るためにどのくらいの量の難燃剤を添加し得るかについては当業者に知られている。それらの量も本明細書においては有用である。
【0060】
前述したように、本明細書では、上述した熱可塑性エラストマー組成物から加硫された熱可塑性エラストマーを形成するための方法も提供される。熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー(A)をシリコーン組成物(B)と接触させることによる。(A)対(B)の重量比は、50:50~95:5の範囲内である。
【0061】
最終用途の具体的な必要性に応じて発明の特性を更に操作するために組成物に追加的な成分(D)を添加してもよい。
【0062】
熱可塑性エラストマーは、添加剤(D)(存在する場合)と予め混合されていてもよい熱可塑性有機ポリマー(A)(すなわち(D)が存在する場合、=(A)+(D))を、
(B1)
(B1a)1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンポリマー(好ましくはガム)、
(B1b)ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)を基準として1~50重量%の強化フィラー、
を含むシリコーンベース、及び
(B2)ケイ素に結合している水素基を1分子当たり平均少なくとも2個含むオルガノヒドリドシリコーン化合物、
を含有するシリコーン組成物B;
(C)ヒドロシリル化触媒;
と接触させることにより製造される。
【0063】
上述した成分は、通常は高温、例えば100℃~250℃の範囲の温度で接触させられる。160℃~240℃、あるいは180℃~220℃の範囲の温度を都合よく使用することができる。ジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)のアルケニル基とオルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)のSi-H基との反応は、シリコーン組成物(B)と、(A)、又は(D)が存在する場合(A)+(D)の予備混合物との混合と同時に進行し、加硫された熱可塑性エラストマー組成物が生成する。
【0064】
成分は、熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー中にシリコーン成分を均一に分散させることができる任意の装置の中で混合される。(A)、又は(D)が存在する場合(A)+(D)の予備混合物、及びシリコーン組成物(B)は、例えば押出機の中でブレンドすることができる。押出機は、一軸押出機、二軸押出機、又は多軸押出機であってもよい。二軸押出機、特に40を超える長さ/直径(L/D)比を有するものが通常適している。スクリュー速度は例えば150~300rpmであってもよい。押出機中の(A)、または(D)が存在する場合(A)+(D)の予備混合物及びシリコーンベース(B1)の滞留時間は、例えば30~240秒であってもよい。
【0065】
シリコーンベース(B1)を押出機又は他の混合装置に供給する前に、ジオルガノポリシロキサンポリマー(好ましくはガム)(B1a)と強化フィラー(B1b)とを予め混合することによって、シリコーンベースを調製することができ、あるいはジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)及び強化フィラー(B1b)を別々に混合装置に供給することができる。シリコーンベース(B1)は、押出機の初期加工セクションにおいて(A)、又は(D)が存在する場合(A)+(D)の予備混合物と混合することができる。(A)、又は(D)が存在する場合(A)+(D)の予備混合物は、例えば、熱可塑性有機ポリマーを溶融するのに十分に高い温度で運転される共回転二軸押出機の主供給物の中に導入することができる。シリコーンベース(B1)は、例えばギアポンプを使用して、既に溶融しているオレフィンポリマー相に添加することができる。作業環境の質を維持し、副反応を避けるために、不活性ガスのフラッシング又は単段通気若しくは多段通気を使用する脱気を使用することができる。
【0066】
オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)及びヒドロシリル化触媒(C)は、押出機の次のセクションに添加することができる。オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)及びヒドロシリル化触媒(C)の両方が組成物に添加される場合、ジオルガノポリシロキサンの動的硬化又は加硫は、混合段階中に、典型的には押出機内で行われる。オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)及びヒドロシリル化触媒(C)の添加順序は重要ではない。しかしながら、動的加硫を開始するために他の成分を添加する前に、これらの成分のうちのどちらを最初に添加するとしても混合物中に十分に分散させるべきである。例えば、オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)は、(A)、又は(D)が存在する場合(A)+(D)の予備混合物とシリコーンベース(B1)を混合した後に組成物に添加してもよく、混合を続けながら動的加硫を開始するためにヒドロシリル化触媒(C)がその後添加される。あるいは、オルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)を、シリコーンベース(B1)と共に組成物に添加することもできる。更なる代替形態では、ヒドロシリル化触媒(C)は、(A)、又は(D)が存在する場合(A)+(D)の予備混合物及びシリコーンベース(B1)とオルガノヒドリドシリコーン化合物とを混合した後に組成物に添加してもよく、混合を続けながら動的加硫を開始するためにオルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)がその後添加される。
【0067】
別のプラスチック混合装置、例えば、Zブレードミキサー又はバンバリーミキサーなどのバッチ式インターナルミキサーを使用してもよい。成分は上述した順序で混合することができ、これは、ヒドロシリル化触媒を添加して動的加硫を開始する前に、シリコーンベース(B1)とオルガノヒドリドシリコーン化合物(B2)が熱可塑性ポリウレタンポリマー中によく分散されるのに十分な混合時間を可能にする。
【0068】
2つの成分の重量比(A):(B)は、常に(A)+(B)の合計量を100とした(A)と(B)のそれぞれの量である。
【0069】
(D)が存在する場合の(A)+(D)の予備混合物対シリコーン組成物(B)の重量比は、通常50:50~95:5の範囲内である。この範囲内では、シリコーン組成物(B)中のシリカの量、(D)が存在する場合の(A)+(D)の予備混合物とシリコーン組成物(B)の重量比、及びシリコーンの架橋密度は、柔らかい手触り、機械的性能、耐湿性、化粧品に対する耐薬品性、及び耐引っ掻き性の望まれるバランスを与えるように変えることができる。シリコーンの架橋密度は、特にアルケニル基間のシロキサン鎖長に関して、使用されるジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)を変えることによって変更することができる。2個の末端アルケニル基のみを有する長鎖ジオルガノポリシロキサンポリマーガム(B1a)は、より軟らかい熱可塑性エラストマーを形成し、より多くのアルケニル基又はより短い鎖長を有するガムの場合があるジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)は、より硬い熱可塑性エラストマーを形成するであろう。
【0070】
使用
上述した熱可塑性エラストマー組成物の硬化により得られるエラストマーでは、高い機械的性能、耐引っ掻き性、及び改善された耐久性が、望ましい柔らかな感触と組み合わされ、例えば以下のような広範囲の用途において使用することができる:
【0071】
熱可塑性エラストマーは、例えば、ギアノブ、シートベルトコネクタ、内装マット、エアバッグの保護カバー、ダッシュボード及びアームレスト用のオーバーモールドスキンなどの自動車用途のための部品又は構成要素;ダクト(エアダクト等)、ケーブル絶縁、オイルホース及びタンク、エアバッグカバースキン、ステアリングホイールスキン、ギアノブ、グリップハンドル、アームレスト、内装スキン、カーマット(カップホルダー、ビン、グローブボックスマット等)、小さなノブ、スイッチなどの機能性自動車部品;並びにグローブボックスパネル、ダッシュボード、及びドアパネルなどの大きい自動車部品(大きいは20cmより大きい表面の意味)を製造するために使用することができる。
【0072】
熱可塑性エラストマーは、ベルト、ブレスレット、柔らかいテンプルチップ、保護カバー、及びウェアラブル電子機器などの電子機器及び電化製品用途のための部品又は構成要素;ホース、ブーツ、ベロー、ガスケット、柔らかい感触のカバー、キーボードのパームレスト、ラップトップ及びタブレットコンピューティング機器の部品及び保護カバーを製造するためにも使用することができる。
【0073】
熱可塑性エラストマーは、短距離走、フットボール、ラグビー、テニス、バスケットボール、ランニング、アルペンスキー又はノルディックスキー用の履物の靴底のスポーツ用品用途の要素、並びにゴルフボール及び多くの他のスポーツ用品における部品又は構成要素の製造のためにも使用することができる;
【0074】
熱可塑性エラストマーは、携帯用電子機器、電気、通信、電化製品の電子デバイス部品用の部品又は構成要素を製造するためにも使用することができる;
【0075】
熱可塑性エラストマーは、特にカテーテル、血管形成術用バルーン、蠕動式バンドのような医療器具用途における部品又は構成要素の製造のためにも使用することができる;
【0076】
熱可塑性エラストマーは、腕時計用バンド、GPS用ブレスレット、サングラスや老眼鏡用のテンプルチップ及び鼻パッドなどのウェアラブルアイテム又はその部品若しくは構成要素の製造のためにも使用することができる。そのようなウェアラブルアイテムは、香水、保湿剤、及びクリームなどの皮膚上の様々な化粧薬品、並びに汗などの皮膚滲出液と、ヒトの皮膚との長時間の接触の間、それらの特性を保持する。
【0077】
熱可塑性エラストマーは、最も一般的に使用される化学薬品に曝された場合の安定性及び低汚染性と共に耐久性のある審美的、触覚的、及び人間工学的な特性、並びに高い機械的性能、耐摩耗性、及び耐引っ掻き性を必要とする一般的なゴム用途においても使用することができる。通気性雨具としてのコンベアベルト。その本質的なエラストマー特性のため、これはミラーシール、内装及び外装のシールなどの気候の遮断のためにも使用することができる。耐引っ掻き性、耐久性、及びエラストマー特性の組み合わせのため、これは靴用途のためにも使用することができる。
【0078】
熱可塑性エラストマーは、保護カバー;液体ライン部品及びエアダクト(非自動車用);建築用シール;瓶の栓;家具の構成要素;携帯機器用の耐久性のある柔らかい感触のグリップ;シール、瓶、缶、カップなどの包装部材;医療及び衛生用器具;調理器具の部品及び付属品;などの他の用途の製造のためにも使用することができる。
【0079】
熱可塑性エラストマーは、熱可塑性フィルム、熱可塑性シート、及びしぼあり又はなしの表面を有する合成皮革を形成するために、押し出し、共押し出し、押し出し-ラミネート、カレンダー加工、押し出し-カレンダー加工、又はラミネート加工をすることができる。例えば、これは合成皮革製品を形成するラミネートを作製する繊維製品に適用することができる。複雑な積層体を形成するために、相溶性材料、熱可塑性材料、合成織布又は不織布を用いた共押出し又は後処理を行ってもよい。複雑なラミネートを形成するために、適切なプライマー又は界面材料を使用して、非相溶性熱可塑性材料、合成又は天然の織布又は不織布を用いた共押出し又は後処理を行ってもよい。そのような用途の例は以下の通りである:
- シート、ドアパネルカバー、ギアノブ、アームレスト、ステアリングホイール、ホイールカバーなどの自動車用途の合成皮革
- 柔らかい感触を与える、ラップトップ又はタブレットのような電子機器などのエレクトロニクス用途の電化製品のための合成皮革
- スポーツ用品及び履物用途のための合成皮革
- 時計のバンド又はフィットネス追跡デバイスのためのストラップ
- 本発明の熱可塑性エラストマー組成物及び相溶性材料を用いた、オーバーモールド、共押出、又はバックシート成形部品に基づいた2K又はツーショット射出成形部品
- 本発明の熱可塑性エラストマー組成物及び非相溶性材料を用い、それに加えてこれらを接着するための適切な接着促進剤又は技術を使用した、オーバーモールド、共押出、又はバックシート成形された部品に基づいた2K又はツーショット射出成形部品。
【0080】
2つの成分の重量比(A):(B)は、常に(A)+(B)の合計量を100とした(A)と(B)のそれぞれの量である。
【0081】
熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー対シリコーン組成物(B)の重量比は、通常50:50~95:5の範囲内である。この範囲内では、シリコーン組成物(B)中のシリカの量、熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー対シリコーン組成物(B)の重量比、及びシリコーンの架橋密度は、柔らかい手触り、機械的性能、耐湿性、化粧品に対する耐薬品性、及び耐引っ掻き性の望まれるバランスを与えるように変えることができる。シリコーンの架橋密度は、特にアルケニル基間のシロキサン鎖長に関して、使用されるジオルガノポリシロキサンポリマー(B1a)(例えばガム)を変えることによって変更することができる。2個の末端アルケニル基のみを有する長鎖ジオルガノポリシロキサンポリマーガム(B1a)は、より軟らかい熱可塑性エラストマーを形成し、より多くのアルケニル基又はより短い鎖長を有するジオルガノポリシロキサンガム(B1a)は、より硬い熱可塑性エラストマーを形成するであろう。
【実施例
【0082】
本発明を以下の実施例によって説明するが、この中で部及びパーセンテージは別段の記載がない限り重量基準である。実施例で使用した材料は次の通りである:
・Si-ゴム1:ビニル末端ジオルガノポリシロキサンガム及びシリカを含む、無触媒シリコーンゴムベース。このベースは、ASTM D-926-08に従ってWilliams平行板プラストメーターを使用して測定される360mm/100の可塑性値を有する。Si-ゴム1は、硬化後に70のショアA硬度を有することが意図されている。
・Si-ゴム2:ビニル末端ジオルガノポリシロキサンガム及びシリカを含む、無触媒シリコーンゴムベース。このベースは、ASTM D-926-08に従ってWilliams平行板プラストメーターを使用して測定される169mm/100の可塑性値を有する。Si-ゴム2は、硬化後に40のショアA硬度を有することが意図されている。
・上のSiゴムベースを硬化させることができる適切な触媒濃度を有するシリコーン系触媒溶液。
・上に列挙したSiゴムを硬化させることができる適切な触媒濃度を有するシリコーン系架橋溶液。異なる物理特性の4つの代替のPEBA試料を利用した。これらは以下の通りに呼ばれる:
・PEBA1:ショアDが41である熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー。
・PEBA2:ショアDが35である熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー。
・PEBA3:ショアDが25である熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー。
・PEBA4:ショアDが22である熱可塑性有機ポリエーテルブロックアミドコポリマー。
【0083】
本発明の方法によって、熱可塑性エラストマーが調製された。成分の混合及び加硫を二軸押出機を使用して行った。処理セクションを160℃~240℃までの範囲で加熱した。スクリュー速度は150~400rpmであった。Si-ゴム1又は2を押出機の最初のセクション内の有機熱可塑性プレブレンドに添加し、次いで、架橋剤と、熱可塑性マトリックス内のシリコーン組成物の加硫を開始する触媒溶液とを添加した。使用した材料の割合は以下の表に示されている。
【0084】
機械的試験及び耐引っ掻き性試験のための試験片は、射出成形によって作製した。射出成形のための加熱温度は180℃~220℃に設定し、モールド温度は40℃に設定した。機械的特性は、下の表1、2、3及び4に示されている通りに国際規格に従って試験した。
【0085】
光沢測定
光沢は、固定した強度及び角度(この場合は60°)で光線を表面上に投射し、等しいが反対の角度での反射光の量を測定することによって決定する。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
表1、2、及び3の結果を評価すると、PEBAの選択が本発明の材料の最終硬度に大きく影響を与えることが分かるであろう:PEBA3などのPEBAは、大きい硬度変化(マイナス16のショアA)を許容する一方で、例えばPEBA1などより硬いPEBAの生成物は、上述したようなシリコーン材料と混合した場合、高いシリコーン比であっても柔らかさに対する影響がより小さい(マイナス8のショアA)。表3では、シリコーンを含まないエラストマーが74のショアAに抑えられた硬度を示す(PEBA4)一方で、本発明のシリコーンベースのエラストマーは65未満のショアA硬度を示すことが分かるであろう。
【0091】
更に、表4の結果から、本発明の様々な実施例では、異なる硬度値であっても、室温で測定されたPEBA4と同様の曲げ弾性率を得られることが分かるであろう。
【0092】
本発明の別の利点は、特に高シリコーン含有率の材料について得られる表面光沢の重要な低下である。
【0093】
いくつかの実施例の組成物の粘弾性挙動を示すために、動的せん断弾性係数の値を決定し、これをPEBAと比較した。Haak Mars III装置を1Hzの周波数、0.01%の歪みで使用し、温度を毎分2℃変化させた。
【0094】
【表5】
【0095】
本発明の利点は、硬質PEBAの結果を使用し、ソフトブロック含有率を抑えることにより、低硬度の材料を得ることである。それによって、これは、比較的低い硬度にもかかわらず、上の表5に示されているように、熱抵抗などの高いハードブロック含有率の利点を維持する。実施例は、純粋なPEBAと同様の30℃での動的せん断弾性係数を有することが分かる。しかしながら、温度の上昇に伴う動的せん断弾性係数の損失は、本明細書に記載の材料については、特に比較のPEBAについての結果と比較した場合に、110℃を超える温度であまり大きくない。