(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】設定値を自動で調節する超音波処理装置
(51)【国際特許分類】
A61C 1/07 20060101AFI20220809BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
A61C1/07 A
A61B17/32 510
(21)【出願番号】P 2019541177
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 FR2018050198
(87)【国際公開番号】W WO2018138453
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-10-30
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506417577
【氏名又は名称】ソシエテ プール ラ コンセプシオン デ アプリカシオン デ テクニク エレクトロニク-サテレク
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】カペー,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ルシュ,シャルル
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/076869(WO,A1)
【文献】特開2004-361251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0222535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/07
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、外科用ハンドピース(200)、超音波用の挿入具(130)、及び超音波発生器(110)を備えた超音波処理装置(100)であって、
前記外科用ハンドピースは、前記超音波用の挿入具が固定された遠位部(232)と、前記超音波発生器(110)に接続され、前記遠位部(232)と機械的に接続された圧電モータ(222)とによって構成された圧電トランスデューサ(220)を含み、前記圧電モータは前記挿入具に超音波を伝え、前記超音波は、前記超音波発生器(110)によって前記圧電モータ(222)に送られる、電流及び電圧の設定信号(S
CIU)に応じて定められており、
前記設定信号の大きさを調節するためのモジュール(320)であって、
前記圧電トランスデューサにおけ
る超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)及びインピーダンスの変化量(Δ
Z)を計算し、
前記超音波信号の前記インピーダンスの変化量をインピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)と比較し、
前記超音波信号の前記周波数の変化量を周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)と比較し、
計算された前記超音波信号の前記インピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の前記周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より大きいときには、前記超音波発生器(110)によって送られる前記電流及び電圧の設定信号(S
CIU)の大きさを増加させ、
計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より小さいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号(S
CIU)の大きさを減少させるように構成された、モジュールをさらに備える、
装置。
【請求項2】
前記圧電トランスデューサ(220)における前記超音波信号の前記周波数及び前記インピーダンスの平均値が100ミリ秒間に1度の頻度で測定される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)は、12Hzに等しい、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)は、26Ωに等しい、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
計算された前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より大きく、かつ、計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きいときには、前記超音波発生器(110)によって送られる前記電流及び電圧の設定信号(S
CIU)の大きさは20%増やされ、測定された前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より小さく、かつ、測定された前記超音波信号のインピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号(S
CIU)の大きさは20%減らされる、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも、外科用ハンドピース(200)、超音波用の挿入具(130)、及び超音波発生器(110)を備えた超音波処理装置において設定信号を調節する方法であって、前記ハンドピースは、前記超音波用の挿入具(130)が固定された遠位部と、前記超音波発生器(110)に接続され、前記遠位部(232)と機械的に接続された圧電モータ(222)とによって構成された圧電トランスデューサ(220)を含み、前記圧電モータ(222)は前記挿入具に超音波を伝え、前記超音波は、前記超音波発生器(110)によって前記圧電モータ(222)に送られる、電流及び電圧の設定信号(S
CIU)に応じて定められており、
前記超音波処理装置(100)によって実行される、
前記圧電トランスデューサにおけ
る超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)及びインピーダンスの変化量(Δ
Z)を計算するステップ、
前記超音波信号のインピーダンスの変化量をインピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)と比較するステップ、
前記超音波信号の周波数の変化量を周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)と比較するステップ、
計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より大きいときには、前記超音波発生器(110)によって送られる前記電流及び電圧の設定信号(S
CIU)の大きさを増加させるステップ、及び
計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より小さいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号(S
CIU)の大きさを減少させるステップを備えた、
方法。
【請求項7】
計算された前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より大きく、かつ、計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさは20%増やされ、測定された前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)が前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)より小さく、かつ、測定された前記超音波信号のインピーダンスの変化量(Δ
Z)が前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号(S
CIU)の大きさは20%減らされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧電トランスデューサ(220)における前記超音波信号の周波数の変化量(Δ
F)及びインピーダンスの変化量(Δ
Z)を計算する前記ステップは、所定期間にわたって前記圧電トランスデューサにおける前記超音波信号の前記周波数及び前記インピーダンスの少なくとも2つの平均値の測定を含み、前記超音波信号の周波数の変化量は、前記超音波信号の2つの測定された周波数の平均値の間で計算され、前記超音波信号のインピーダンスの変化量は、前記超音波信号の2つの測定されたインピーダンスの平均値の間で計算される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記圧電トランスデューサ(220)における超音波信号の前記周波数及び前記インピーダンスの平均値は、100ミリ秒間に1度の頻度で
前記超音波処理装置(100)によって測定される、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記周波数の変化量の所定値(Δ
Fdet)は、12Hzに等しい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インピーダンスの変化量の所定値(Δ
Zdet)は、26Ωに等しい、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、スケーリング、バイオフィルムの除去、若しくは穿孔(空洞、すなわち、義歯の準備)等の歯科の分野で使用される超音波処理装置に関し、又は、外科(例えば、顎顔面の手術及び口腔病学、又は整形手術)の分野で使用される超音波処理装置に関する。このような超音波処理装置は、超音波の周波数で振動する器具を備える。
【0002】
超音波処理装置は、概して、外科用のハンドピース、挿入具又は超音波工具、及び超音波発生器を備える。ハンドピースは、超音波用の挿入具が固定された遠位部と、超音波発生器に接続され、その遠位部に機械的に接続された圧電モータとによって構成された、圧電トランスデューサを有する。圧電モータは、挿入具に超音波を伝える。その超音波は、超音波発生器によって圧電モータに送られた、電流及び電圧の設定信号に応じて定められている。設定信号は処理の開始時に設定され、その設定信号の値は、なされるべき処理の種類に応じて決定される。例えば、歯科の分野では、歯周のデブリードマンのためには、電流及び電圧の設定値は、スケーリングに必要な値よりもずっと低い。従って、歯科処理の種類に応じて、超音波を調節するための適切な設定値が存在する。
【0003】
しかしながら、処理の期間中に、超音波用の挿入具は、異なる硬さを有する媒体又は材料に出くわしうる。例えば、挿入具は、歯肉及び筋肉等の柔らかい組織及び骨等の硬い組織の双方に出くわしうる。1つの種類の処理に対して設定値は同一であり、このことは、処理の期間中に挿入具が出くわした媒体又は材料に関わらずあてはまる。
【0004】
このため、所定の処理の期間中に、超音波発生器によって送られるべき電流及び電圧の設定信号の大きさを決定する設定値が、適切でなく、挿入具が出くわす媒体又は材料にとって最適でないということが起こり得る。このことは、例えば、挿入具に接触した脆弱な部分が損傷する、又は、挿入具がとても頑丈な材料に接触して効果的な処理を行えないといった事態を招きうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の欠点を解消し、トランスデューサに送られる設定信号を超音波用の挿入具に接触した材料の硬さに適合させることを可能とする解決手段を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、少なくとも、外科用ハンドピース、超音波用の挿入具、及び超音波発生器を備えた超音波処理装置によって達成され、前記ハンドピースは、前記超音波用の挿入具が固定された遠位部と、前記超音波発生器に接続され、前記遠位部と機械的に接続された圧電モータとによって構成された圧電トランスデューサを含み、前記圧電モータは前記挿入具に超音波を伝え、前記超音波は、前記超音波発生器によって前記圧電モータに送られる、電流及び電圧の設定信号に応じて定められている。この装置は、設定信号の大きさを調節するためのモジュールであって、
前記圧電トランスデューサにおける超音波信号の周波数の変化量及びインピーダンスの変化量を計算し、
前記超音波信号のインピーダンスの変化量をインピーダンスの変化量の所定値と比較し、
前記超音波信号の周波数の変化量を周波数の変化量の所定値と比較し、
計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさを増加させ、
計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より小さいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさを減少させるように構成されたモジュールをさらに備える。
【0007】
これにより、本発明の上記の歯科処理装置は、前記超音波用の挿入具に接触した材料の硬さの変化を検出でき、その材料の硬さに応じてトランスデューサに送られる設定信号の大きさを自動的に変更できる。このため、本発明の装置によれば、施術者の動作の自動援助を提供でき、施術者は安全性の改良及び多大な効率性の観点から利益を得る。
【0008】
本発明は、ハンドピースに追加のセンサを設けなくても硬さの変化が検出されるという点でも注目に値する。特に、硬さの変化はトランスデューサにおけるインピーダンスの変化量及び周波数の変化量に応じて検出され、これらの変化量は超音波用の挿入具に接触した材料に依存する。この挿入具がセンサとして振る舞うことにより、測定精度が最適化される。
【0009】
前記圧電トランスデューサにおける前記超音波信号の周波数の変化量及びインピーダンスの変化量は、所定期間における前記圧電トランスデューサの前記超音波信号の周波数及びインピーダンスの少なくとも2つの平均値の測定を含み、前記超音波信号の周波数の変化量は、前記超音波信号の2つの測定された周波数の平均値の間で計算され、前記超音波信号のインピーダンスの変化量は、前記超音波信号の2つの測定されたインピーダンスの平均値の間で計算される。前記超音波信号の周波数の平均値及びインピーダンスの平均値は、100ミリ秒間(ms)毎に1度の頻度で測定されうる。このような事情の下、本発明の1つの側面では、前記周波数の変化量の所定値は12ヘルツ(Hz)に等しくてもよく、前記インピーダンスの変化量の所定値は26オーム(Ω)に等しくてもよい。
【0010】
本発明の装置のさらに別の側面によれば、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より大きく、かつ、計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさは20%増やされる。加えて、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より小さく、かつ、計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさは20%減らされる。
【0011】
また、本発明は、少なくとも、外科用ハンドピース、超音波用の挿入具、及び超音波発生器を備えた超音波処理装置において設定信号を調節する方法を提供し、前記ハンドピースは、前記超音波用の挿入具が固定された遠位部と、前記超音波発生器に接続され、前記遠位部と機械的に接続された圧電モータとによって構成された圧電トランスデューサを含み、前記圧電モータは前記挿入具に超音波を伝え、前記超音波は、前記超音波発生器によって前記圧電モータに送られる、電流及び電圧の設定信号に応じて定められている。この方法は、以下のステップを含む。
前記圧電トランスデューサにおける前記超音波信号の周波数の変化量及びインピーダンスの変化量を計算するステップ、
前記超音波信号のインピーダンスの変化量をインピーダンスの変化量の所定値と比較するステップ、
前記超音波信号の周波数の変化量を周波数の変化量の所定値と比較するステップ、
計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさを増加させるステップ、及び
計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きく、かつ、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より小さいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさを減少させるステップ。
【0012】
本発明の方法の別の側面において、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より大きく、かつ、計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさは20%増やされる。加えて、計算された前記超音波信号の周波数の変化量が前記周波数の変化量の所定値より小さく、かつ、計算された前記超音波信号のインピーダンスの変化量が前記インピーダンスの変化量の所定値より大きいときには、前記超音波発生器によって送られる前記電流及び電圧の設定信号の大きさは20%減らされる。
【0013】
本発明の方法のさらに別の側面において、前記圧電トランスデューサにおける前記超音波信号の周波数の変化量及びインピーダンスの変化量を計算するステップは、所定期間における前記圧電トランスデューサの超音波信号の周波数及びインピーダンスの少なくとも2つの平均値の測定を含み、前記超音波信号の周波数の変化量は、前記超音波信号の2つの測定された周波数の平均値の間で計算され、前記超音波信号のインピーダンスの変化量は、前記超音波信号の2つの測定されたインピーダンスの平均値の間で計算される。前記超音波信号の周波数及びインピーダンスの平均値は、100ms毎に1度の頻度で測定されうる。このような事情の下、本発明の方法の1つの側面では、前記周波数の変化量の所定値は12ヘルツ(Hz)に等しくてもよく、前記インピーダンスの変化量の所定値は26オーム(Ω)に等しくてもよい。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しつつ非限定的な例として示された、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、超音波歯科処理装置装置の図である。
【
図3】
図3は、本発明の実装に基づく、
図1の装置の超音波発生器を制御するための電子回路のブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実装に基づく、超音波処理装置の設定信号を調節する方法のステップを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明に基づく、設定信号の大きさを調節するための条件を示すグラフである。
【
図6】
図6は、設定信号の大きさを調節するための本発明の方法の実行例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の超音波処理装置は、一般的な外科の分野、より具体的には、歯科外科又は歯科処理の分野及び骨手術(例えば、顎顔面の手術又は整形手術)の分野において用いられる。
図1は、コード111によってハンドピース200に接続された超音波発生器110を備えた、超音波処理装置100を示す。ソノトロード、すなわち、超音波用の挿入具130は、ハンドピース200の先端部、すなわち、遠位部に取り付けられている。よく知られた態様では、ハンドピース200は、圧電材料でできており、挿入具130に機械的に接続されたトランスデューサ(
図1では図示されていない)を有することにより、超音波発生器によって送られた電流及び電圧の設定信号に応じて定められた超音波を送る。
【0017】
図2は、ハンドピース200に配置された圧電トランスデューサ220の内部構造を示す長手方向の断面図である。圧電トランスデューサは、特に、近位部230、遠位部232、及び近位部と遠位部との間に配置された圧電モータ222を備える。目下、着目している例において、近位部230及び遠位部232は、それぞれ、つり合い重り及び増幅器に相当する。つり合い重り230及び増幅器232は、圧電モータ222が機械的に圧力を受けるように圧電モータ222に対して押し付けられている。
【0018】
本例では、圧電モータ222は、つり合い重り230及び増幅器232との間で互いに圧力を受けた状態の6つの環状の圧電セラミックス224によって構成されている。セラミックス224のそれぞれは、導電性のコーティングによって覆われており、7つの導電性の環状板226の間にセラミックス224が配置されていることにより、電源ケーブル228が圧電セラミックス224に電気的に接続されている。圧電モータ222のセラミックス224は、超音波発生器に接続されたケーブル228によって送られる電気信号を受けると、超音波域の機械的な振動を生成する。この超音波は、その後、圧電トランスデューサ220の遠位部232を介して、遠位部232の自由端232aに取り付けられた超音波用の挿入具130(
図2には示されていない)に伝わる。
【0019】
また、本例において、電気的に絶縁されたカバー240が特にケーブル228を保護し絶縁するために圧電モータ222の周りに配置されている。さらに、剛体のプレストレスロッド233が圧電トランスデューサ220の中心に配置されている。また、電気絶縁体235がプレストレスロッド233と圧電モータ222との間に配置されている。また、ハンドピースにおいて液体の流れを生じさせることができ、かつ、その流れが挿入具130から排出されるように、注水用ダクト234がプレストレスロッド233の中心に形成されている。
【0020】
また、本発明によれば、超音波処理装置は、圧電トランスデューサにおける超音波信号のインピーダンス及び振幅の変化量を測定するのに適しているとともに、超音波信号のインピーダンスの変化量がインピーダンスの変化量に関する所定値を超え、かつ、超音波信号の周波数の変化量がインピーダンスの変化量に関する所定値より小さく、又は、その所定値を超えるときに、超音波発生器によって送られる設定信号を調整するのに適している。このため、この処理装置は、上記の作業をなすように構成された設定信号の大きさを処理するためのモジュールを備える。
図3は、本発明の実装に基づく設定信号の大きさを処理するためのモジュールに取り付けられた、超音波発生器を制御するための電子制御回路300のブロック図である。電子回路300は、ケーブル228を介してハンドピースのトランスデューサ220に電流及び電圧の設定信号S
CIUを送るように構成されており、この信号は、トランスデューサの圧電モータによって生成される超音波の周波数及び振幅を定める。圧電モータの振動速度は、それを流れる電流と直接的な相関を有し、その振動のために必要な力は電源電圧と直接的な相関を有する。設定信号S
CIUは、なされるべき処理の種類に応じて最初に決定される。電流及び電圧の設定信号S
CIUは、変圧器(
図3には示されていない)を備えたマグネチックモジュール330によってトランスデューサに送られる。超音波ドライバモジュール310によって送られる設定信号S
COMは、マグネチックモジュールによって電流及び電圧の設定信号S
CIUに変換される。また、本発明によれば、電子制御回路300は、設定信号の大きさを調節するためのモジュール320を備え、このモジュールは圧電トランスデューサにおける超音波信号の周波数の変化量及びインピーダンスの変化量を測定する。このため、モジュール320は、トランスデューサ220における電流及び電圧にそれぞれ対応している信号I
mes及びU
mesを受け取る。トランスデューサ220における電流及び電圧のイメージは、トランスデューサにかかる電流の平均値I
injec及び電圧の平均値U
injecを測定することによって得られる。トランスデューサにかかる信号I
injec及びU
injecは、マグネチックモジュール330の一次コイルから取得される。モジュール331及びモジュール332によってでこれらの信号はそれぞれスケール処理及びフィルタ処理された後、トランスデューサにおける電流I
mes及び電圧U
mesのための測定信号が得られる。このように、トランスデューサにおける電流及び電圧の測定は、トランスデューサの末端に何も接続させることなく、つまり、超音波装置で追加のケーブルを用いることなく、行うことができる。超音波信号の周波数及びインピーダンスは、超音波用の挿入具に接触する材料の硬さに応じて変動する。トランスデューサ220における周波数のイメージは、超音波ドライバモジュール310によって送られる設定信号S
COMから取得される。モジュール333によるスケール処理の後、トランスデューサの周波数の測定信号である、信号F
mesが取得される。
【0021】
モジュール320は、信号Imes及びUmesからトランスデューサにおけるインピーダンスを計算する。また、モジュール320は、トランスデューサにおける周波数に対応する信号Fmesを受け取る。モジュール320は、このようにして、トランスデューサにおける信号のインピーダンス及び周波数を連続的に測定でき、所定期間、例えば100ms毎に1度の頻度で、それらから平均値を求める。モジュール320は、2つの連続した測定値に基づきインピーダンスの変化量及び周波数の変化量を計算する。
【0022】
図4を参照すると、設定信号の大きさを調節するためのモジュール320によってなされる設定値の調整のステップが記載されている。上記の通り、モジュール320は、所定期間において、トランスデューサにおける信号のインピーダンスの平均測定値及び周波数の平均測定値を決定し、2つの連続した平均値の間でそれらの変化量を計算する(ステップS1)。モジュール320は、計算されたインピーダンスの変化量Δ
Zを、インピーダンスの変化量の所定値Δ
Zdetと比較する(ステップS2)。計算されたインピーダンスの変化量Δ
Zがインピーダンスの変化量の所定値Δ
Zdetより小さい場合、モジュール320は、設定信号を変更しない。計算されたインピーダンスの変化量Δ
Zがインピーダンスの変化量の所定値Δ
Zdetより大きい場合、モジュール320は、計算された周波数の変化量Δ
Fを、周波数の変化量の所定値Δ
Fdetと比較する(ステップS3及びS4)。より詳細には、モジュール320は、計算された周波数の変化量Δ
Fが周波数の変化量の所定値Δ
Fdetより大きいか否かを決定する(ステップS3)。この決定が肯定的である場合、モジュール320は、トランスデューサ220に送られる電流及び電圧の設定信号S
CIUの大きさを増やすように(ステップS5)、制御信号CI及びCUを設定信号ドライバモジュール310に送る。そうでなければ、モジュール320は、計算された周波数の変化量Δ
Fが周波数の変化量の所定値Δ
Fdetより小さいか否かを決定する(ステップS4)。この決定が肯定的な場合、トランスデューサ220に送られる電流及び電圧の設定信号S
CIUの大きさを減らすように(ステップS6)、制御信号CI及びCUを設定信号ドライバモジュール310に送る。そうでなければ、モジュール320は設定信号を変更しない。ステップS3及びS4は、どのような順番で行われてもよい。
【0023】
設定信号の大きさの増加又は減少は、所定の制御期間、例えば415msにおいて、行われる。制御期間が経過すると、この方法はステップS1に戻る。
【0024】
図5は、上記の通り、トランスデューサにおける超音波信号インピーダンスの変化量Δ
Z及び周波数の変化量Δ
Fに応じて電流及び電圧の大きさを調節するための条件を示すグラフである。
【0025】
設定信号の大きさの調整は、一定の大きさの超音波信号及び調整されるべき超音波信号に適用される。それらが調整されると、調整された周波数は、インピーダンスの平均測定値及び信号の周波数がトランスデューサにおいて決定された通りになるように、好ましくは所定値より大きく又は等しくなる。例えば、モジュール320が100msの期間において平均測定値を決定するときに、調整された超音波信号の周波数は、25Hz以上となる。
【0026】
非限定的なよれば、試験の結果、トランスデューサにおける信号のインピーダンス及び周波数の平均測定値を100msに1度の頻度で決定できるように、インピーダンスの変化量の所定値ΔZdetは26Ωに設定されうるとともに、周波数の変化量の所定値ΔFdetは12Hzに設定されうる。さらに、非限定的な例によれば、設定信号の大きさの増加及び減少の量は、初期設定値、すなわち、超音波装置において選択された処理の種類に応じて設定された値の、20%に設定されてもよい。上記の値は、歯科処理をなすための超音波処理装置に対して定められている。これらの値は、当然ながら、顎顔面の手術又は整形手術などの他の種類の外科処理において異なっていてもよい。
【0027】
図6は、超音波歯科処理装置、具体的にプレインプラント処理のためのサプライヤーSatelec(登録商標)によって販売されている装置「Piezotome Solo」における本発明に従った設定信号の大きさの調整の例を示している。
図6において、曲線Aは、トランスデューサにおいて測定されたインピーダンスの変化量Δ
Zを示し、曲線Bは、トランスデューサにおいて測定された周波数の変化量Δ
Fを示し、曲線Cは、トランスデューサに送られる電流及び電圧の設定信号の大きさに適用される調整を示す。設定信号の大きさの増加は、横軸より上にある曲線Cの部分に対応している。設定信号の大きさの減少は、横軸より下にある曲線Cの部分に対応している。曲線Cの横軸に一致する部分は、設定信号の大きさが変更されない瞬間に対応している。
【0028】
設定信号の大きさを調整するためのモジュール320は、超音波処理装置の設定をおこなうときには無効化してもよい。