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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】電子素子搭載用基板および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20220809BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220809BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01L23/12 J
H01L23/36 C
H05K3/46 U
H05K3/46 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019545561
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035663
(87)【国際公開番号】W WO2019065725
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017188493
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】北住 登
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-103684(JP,A)
【文献】国際公開第2008/053586(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/080393(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/128868(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/067794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12 - 23/14
H01L 23/36
H01L 25/00 - 25/18
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有し、該第1主面に位置した電子素子の搭載部を有した矩形状であり、セラミックスからなる第1基板と、
前記第1主面と相対する第2主面に位置し、炭素材料からなり、矩形状であって、前記第2主面と対向する第3主面および該第3主面と相対する第4主面を有し、
前記第4主面に凹部を含む第2基板とを備え、
該第2基板は、面における長手方向の熱伝導率をλy、面における前記長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導率をλx、厚み方向の熱伝導率をλzとしたとき、λy≒λz>λx
を満たしていることを特徴とする電子素子搭載用基板。
【請求項2】
平面透視において、前記凹部は前記搭載部と重なっていることを特徴とする請求項1に記載の電子素子搭載用基板。
【請求項3】
前記第4主面に位置し、矩形状であって、前記第4主面と対向する第5主面および該第5主面と相対する第6主面を有しており、
前記凹部と相対する、厚み方向に貫通する貫通孔を有した、セラミックスからなる第3基板を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子素子搭載用基板。
【請求項4】
平面透視において、前記貫通孔は前記搭載部と重なっていることを特徴とする請求項3に記載の電子素子搭載用基板。
【請求項5】
前記第2基板は、六員環が共有結合でつながったグラフェンが積層した構造体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子素子搭載用基板。
【請求項6】
前記第1基板と前記第3基板は、同じ材料により形成され、
前記第1基板の基板厚みT1と前記第3基板の基板厚みT3が、下記式(1)の関係にあることを特徴とする請求項3または4に記載の電子素子搭載用基板。
数式1
0.9T1≦T3≦1.1T1 (1)
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電子素子搭載用基板と、
該電子素子搭載用基板の前記搭載部に搭載された電子素子と、
前記凹部に位置した伝熱体とを有していることを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子搭載用基板および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子素子搭載用基板は、第1主面と第2主面と側面とを有する絶縁基板と、絶縁基板の第1主面に設けられた電子素子の搭載部および配線層とを有している。電子素子搭載用基板において、電子素子の搭載部に電子素子を搭載した後、電子素子搭載用パッケージに搭載されて電子装置となる。例えば、電子素子としてLD(Laser Diode)、LED(Light Emitting Diode)等の光素子を搭載した場合、温度が上昇すると発光量が低下するという特性があるので、放熱対策を施して温度上昇を抑える必要がある。これに対し、ヒートシンク(「放熱部材」とも称する。)上にLED素子を搭載する基板を固定し、LED素子で発生した熱をヒートシンクに逃がすという対策が講じられている(特開2014-120502号公報参照。)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の電子素子搭載用基板は、第1主面を有し、該第1主面に位置した電子素子の搭載部を有した矩形状であり、セラミックスからなる第1基板と、前記第1主面と相対する第2主面に位置し、炭素材料からなり、矩形状であって、前記第2主面と対向する第3主面および該第3主面と相対する第4主面を有し、前記第4主面に凹部を含む第2基板とを備え、該第2基板は、面における長手方向の熱伝導率をλy、面における前記長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導率をλx、厚み方向の熱伝導率をλzとしたとき、λy≒λz>λxを満たしている。
【0004】
本開示の電子装置は、上記構成の電子素子搭載用基板と、該電子素子搭載用基板の前記搭載部に搭載された電子素子と、前記凹部に位置した伝熱体とを有している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】(a)は、第1の実施形態における電子素子搭載用基板を示す上面図であり、(b)は(a)の下面図である。
図2図1に示された電子素子搭載用基板を第1基板と第2基板とに分解した斜視図である。
図3】(a)は、図1(a)に示された電子素子搭載用基板のA-A線における縦断面図であり、(b)は、B-B線における縦断面図である。
図4】(a)は、図1(a)に示された電子素子搭載用基板に電子素子を搭載し、ヒートシンクを除いた電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)のB-B線におけるヒートシンクを含む縦断面図である。
図5】(a)は、第2の実施形態における電子素子搭載用基板を示す上面図であり、(b)は(a)の下面図である。
図6】(a)は、図5(a)に示された電子素子搭載用基板のA-A線における縦断面図であり、(b)は、B-B線における縦断面図である。
図7】(a)は、第2の実施形態における電子素子搭載用基板およびヒートシンクを除いた電子装置の他の例を示す上面図であり、(b)は、(a)のB-B線におけるヒートシンクを含む縦断面図である。
図8】(a)は、第3の実施形態における電子素子搭載用基板を示す上面図であり、(b)は(a)の下面図である。
図9】(a)は、図8(a)に示された電子素子搭載用基板のA-A線における縦断面図であり、(b)は、B-B線における縦断面図である。
図10】(a)は、図8(a)に示された電子素子搭載用基板に電子素子を搭載し、ヒートシンクを除いた電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)のB-B線におけるヒートシンクを含む縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示のいくつかの例示的な実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。
【0007】
(第1の実施形態)
第1の実施形態における電子素子搭載用基板1は、図1図4に示された例のように、第1基板11と凹部12aを含む第2基板12とを含んでいる。電子装置は、電子素子等用基板1と、電子素子搭載用基板の搭載部11aに搭載された電子素子2とを含んでいる。
【0008】
第1の実施形態における電子素子搭載用基板1は、第1主面111を有し、第1主面111に位置した電子素子2の搭載部11aを有した矩形状である第1基板11と、第1主面111と相対する第2主面112に位置し、炭素材料からなり、矩形状であって、第2主面112と対向する第3主面121および第3主面121と相対する第4主面122を有し、平面透視において、第3主面121または第4主面122が、長手方向の熱伝導が長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導より大きく、第4主面に凹部12aを含む第2基板12とを備えている。第1基板11は、表面に金属層13を有している。図4において、電子素子2は仮想のxyz空間におけるxy平面に実装されている。図1図4において、上方向とは、仮想のz軸の正方向のことをいう。なお、以下の説明における上下の区別は便宜的なものであり、実際に電子素子搭載用基板1等が使用される際の上下を限定するものではない。
【0009】
金属層13は、図1図4に示す例において、網掛けにて示している。第1基板11は、図2(a)に示す例において、斜視にて不可視となる第1基板11の外面を破線にて示している。第2基板12は、図2(b)に示す例において、斜視にて不可視となる第1基板11の外面および凹部12aの内側面とを破線にて示している。
【0010】
第1基板11は、単層または複数層の絶縁層からなり、第1主面111(図1図4では上面)および第2主面112(図1図4では下面)を有している。第1基板11は、図1図4に示す例において、単層の絶縁層からなる。第1基板11は、平面視において、第1主面111および第2主面112のそれぞれに対して二組の対向する辺(4辺)を有した矩形の板状の形状を有している。第1基板11は、第1主面111に電子素子2を搭載する搭載部11aを有しており、図1図4に示す例において、平面視において、一方方向に長い長方形状である。第1基板11は、電子素子2を支持するための支持体として機能し、第1基板11の第1主面111に位置した搭載部11a上に電子素子2が接合部材を介してそれぞれ接着され固定される。
【0011】
第1基板11は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス),窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体またはガラスセラミックス焼結体等のセラミックスを用いることができる。第1基板11は、例えば窒化アルミニウム質焼結体である場合であれば、窒化アルミニウム(AlN),酸化エルビニウム(Er23)、酸化イットリウム(Y23)等の原料粉末に適当な有機バインダーおよび溶剤等を添加混合して泥漿物を作製する。この泥漿物を、従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法等を採用してシート状に成形することによってセラミックグリーンシートを作製する。必要に応じて、複数枚のセラミックグリーンシートを積層し、セラミックグリーンシートを高温(約1800℃)で焼成することによって単層または複数の絶縁層からなる第1基板11が製作される。
【0012】
第2基板12は、第3主面121(図1図4では上面)および第4主面122(図1図4では下面)を有している。第2基板12は、平面視において、第3主面121および第4主面122のそれぞれに対して二組の対向する辺(4辺)を有した矩形の板状の形状を有している。
【0013】
第2基板12は、例えば、炭素材料からなり、六員環が共有結合でつながったグラフェンが積層した構造体として形成される。各面がファンデルワールス力で結合された材料である。
【0014】
第2基板12は、第4主面122側に開口された凹部12aを有している。第1の実施形態の電子素子搭載用基板1において、凹部12aは、第2基板12の第4主面122側から第2基板12の厚み方向の途中まで開口している。凹部12aは、平面透視にて、第1基板11の第1主面111に位置した搭載部11aと重なっており、放熱性に優れたものとすることができる。第2基板12の凹部12aは、例えば、第2基板12の第4主面122側にレーザー加工、ねじ穴加工等によって形成しておくことができる。凹部12aは、放熱性に優れた伝熱体4を位置させるための領域である。
【0015】
第1基板11は、熱伝導率に優れた窒化アルミニウム質焼結体が好適に用いられる。第1基板11と第2基板12とは、第1基板11の第2主面112と第2基板12の第3主面121とが対向するように、TiCuAg合金、TiSnAgCu合金等の活性ろう材からなる接合材により接着される。接合材は、第1基板11と第2基板12との間に、数10μm程度の厚みに配置される。
【0016】
第1基板11の基板厚みT1は、例えば、50μm~500μm程度であり、第2基板12の基板厚みT2は、例えば、100μm~2000μm程度である。第1基板11と第2基板12とは、T2>T1であると、第1基板11の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0017】
第1基板11の熱伝導率κは、図2に示す例のように、平面方向におけるX方向とY方向とで略一定であり、第1基板11の平面方向と厚み方向とにおいても略一定である(κx≒κy≒κz)。例えば、第1基板11として、窒化アルミニウム質焼結体が用いられる場合、第1基板11は、100~200W/m・K程度の熱伝導率κである第1基板11が用いられる。
【0018】
第2基板12の熱伝導率λは、平面方向におけるX方向とY方向とで大きさが異なっている。例えば、第2基板12のそれぞれの方向における熱伝導率λx、λy、λzの関係は、図2に示すように、「熱伝導率λy≒熱伝導率λz>>熱伝導率λx」である。例えば、第2基板12の熱伝導率λyおよび熱伝導率λzは、1000W/m・K程度であり、第2基板12の熱伝導率λxは、4W/m・K程度である。なお、本開示の実施形態における図および後述する実施形態の図において、便宜上、熱伝導率κx、κy、κz、λx、λy、λz、のいずれかを省略したものを含んでいる。
【0019】
本開示の実施形態の電子素子搭載用基板1の熱伝導率は、例えば、レーザーフラッシュ法等の分析方法により測定することができる。また、第2基板12の熱伝導率を測定する場合には、第1基板基体11と第2基板12とを接合する接合材を除去し、第2基板12に対して、レーザーフラッシュ法等の分析方法により測定することができる。
【0020】
第2基板12は、第1基板11の長手方向に対する熱伝導率λyおよび第2基板12の厚み方向の熱伝導率λzは、第1基板11の長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導率λxより大きくなるように配置されている。
【0021】
金属層13は、第1基板11の第1主面111に、平面視(平面透視)において第1基板11の長手方向で第2基板12を挟むように位置している。また、平面視(平面透視)において第1基板11の長手方向で金属層13と第2基板12とが交互に位置している。金属層13は、例えば、電子素子2の電極とのボンディングワイヤ等の接続部材3との接続部として用いられる。
【0022】
金属層13は、薄膜層およびめっき層とを含んでいる。薄膜層は、例えば、密着金属層とバリア層とを有している。薄膜層を構成する密着金属層は、第1基板11の第1主面111に位置する。密着金属層は、例えば、窒化タンタル、ニッケル-クロム、ニッケル-クロムーシリコン、タングステン-シリコン、モリブデン-シリコン、タングステン、モリブデン、チタン、クロム等から成り、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の薄膜形成技術を採用することにより、第1基板11の第1主面111に被着される。例えば真空蒸着法を用いて形成する場合には、第1基板11を真空蒸着装置の成膜室内に設置して、成膜室内の蒸着源に密着金属層と成る金属片を配置し、その後、成膜室内を真空状態(10-2Pa以下の圧力)にするとともに、蒸着源に配置された金属片を加熱して蒸着させ、この蒸着した金属片の分子を第1基板11に被着させることにより、密着金属層と成る薄膜金属の層を形成する。そして、薄膜金属層が形成された第1基板11にフォトリソグラフィ法を用いてレジストパターンを形成した後、エッチングによって余分な薄膜金属層を除去することにより、密着金属層が形成される。密着金属層の上面にはバリア層が被着され、バリア層は密着金属層とめっき層と接合性、濡れ性が良く、密着金属層とめっき層とを強固に接合させるとともに密着金属層とめっき層との相互拡散を防止する作用をなす。バリア層は、例えば、ニッケルークロム、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト等から成り、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の薄膜形成技術により密着金属層の表面に被着される。
【0023】
密着金属層の厚さは0.01~0.5μm程度が良い。0.01μm未満では、第1基板11上に密着金属層を強固に密着させることが困難となる傾向がある。0.5μmを超える場合は密着金属層の成膜時の内部応力によって密着金属層の剥離が生じ易くなる。また、バリア層の厚さは0.05~1μm程度が良い。0.05μm未満では、ピンホール等の欠陥が発生してバリア層としての機能を果たしにくくなる傾向がある。1μmを超える場合は、成膜時の内部応力によりバリア層の剥離が生じ易くなる。
【0024】
めっき層は、電解めっき法または無電解めっき法によって、薄膜層の表面に被着される。めっき層は、ニッケル,銅,金または銀等の耐食性、接続部材との接続性に優れる金属から成るものであり、例えば、厚さ0.5~5μm程度のニッケルめっき層と0.1~3μm程度の金めっき層とが順次被着される。これによって、金属層13が腐食することを効果的に抑制できるとともに、電子素子2と金属層13との接合、または金属層13と接続部材3との接合を強固にできる。
【0025】
また、バリア層上に、銅(Cu)、金(Au)等の金属層を配置し、めっき層が良好に形成されるようにしても構わない。このような金属層は、薄膜層と同様な方法により形成される。
【0026】
第1基板11の第1主面111への金属層13の形成、および金属層13上への金属めっき層の形成の際に、予め第2基板12の露出する側面および第4主面122に、樹脂、セラミックス、金属等からなる保護膜を位置させておくと、電子素子搭載用基板1の製作時に炭素材料からなる第2基板12が剥き出しにならないため、薬品等による変質を低減することができる。
【0027】
電子素子搭載用基板1の第1主面111側に位置した搭載部11a上に、電子素子2を搭載し、この電子素子搭載用基板1の凹部12aに伝熱体4を位置させることによって電子装置を作製できる。電子素子搭載用基板1に搭載される電子素子2は、例えばLD(Laser Diode)、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、PD(Photo Diode)等の受光素子である。例えば、電子素子2は、例えば、搭載部11a上に搭載し、はんだバンプ、金バンプまたは導電性樹脂(異方性導電樹脂等)等の接続部材3を介して電子素子2の電極と金属層13とが電気的に接続されることによって電子素子搭載用基板1に搭載される。あるいは、Au-Sn等の接合材によって、搭載部11a上に固定された後、ボンディングワイヤ等の接続部材3を介して電子素子2の電極と金属層13とが電気的に接続されることによって電子素子搭載用基板1に搭載される。
【0028】
伝熱体4またはヒートシンク5は、例えば、銅(Cu)、銅-タングステン(CuW)、銅-モリブデン(CuMo)等の熱伝導率に優れた材料から成る。伝熱体4またはヒートシンク5の熱伝導率κ2は、平面方向におけるX方向とY方向とで略一定であり、伝熱体4またはヒートシンク5の平面方向と厚み方向とにおいても略一定である(κ2x≒κ2y≒κ2z)。伝熱体4またはヒートシンク5の熱伝導率κ2は、第1基板11の熱伝導率κ以上である(κ2x>κx、κ2y>κy、κ2z>κz)。
【0029】
本開示の実施形態における電子素子搭載用基板1によれば、第1主面111を有し、第1主面111に位置した電子素子2の搭載部を有した矩形状である第1基板11と、第1主面111と相対する第2主面112に位置し、炭素材料からなり、矩形状であって、第2主面112と対向する第3主面121および第3主面121と相対する第4主面122を有し、平面透視において、第3主面121または第4主面122が、長手方向の熱伝導が長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導より大きく、第4主面に凹部12aを含む第2基板12とを備えていることによって、例えば電子装置の作動時に、電子素子2から発生する熱が、第1基板11および厚みが小さくなっている第2基板12の第3主面121と凹部12aの底面との間を介して、凹部12aに位置する伝熱体4に伝わりやすく、また第2基板12の長手方向に伝熱しやすいものとなり、電子素子2の搭載部11aから周囲に放熱しやすく、電子素子2から発生する熱による電子素子2の誤動作を抑制することで電子装置が良好に作動するものとすることができる。
【0030】
特に電子素子2としてLD、LED等の光素子を搭載する場合には、伝熱体4を介してヒートシンク5に確実に伝熱させることができるので、電子素子搭載用基板1の歪みを抑制することで、光を精度よく放出することができる光学装置用の電子素子搭載用基板1とすることができる。
【0031】
本開示の実施形態における電子素子搭載用基板1は、薄型で高出力の電子装置において好適に使用することができ、電子素子搭載用基板1における信頼性を向上することができる。例えば、電子素子2として、LD、LED等の光素子を搭載する場合、薄型で指向性にすぐれた光学装置用の電子素子搭載用基板1として好適に用いることができる。
【0032】
第2基板12は、図1図4に示す例のように、平面透視において、搭載部11aよりも大きい(電子素子2よりも大きい)と、第2基板12に伝熱した電子素子2の熱が、第2基板12を第1基板11の長手方向に良好に伝熱されやすく、伝熱体4を介して外部に確実に伝熱させることができる。
【0033】
本開示の実施形態の電子装置によれば、上記構成の電子素子搭載用基板1と、電子素子搭載用基板1の搭載部11aに搭載された電子素子2とを有していることによって、長期信頼性に優れた電子装置とすることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態による電子素子搭載用基板について、図5図7を参照しつつ説明する。
【0035】
第2の実施形態における電子装置において、上述した実施形態の電子装置と異なる点は、凹部12aの内壁面が螺子形状である点である。第2の実施形態において、金属層13は、図5図7に示す例において、網掛けにて示している。凹部12aは、第2基板12の第4主面122側に開口し、凹部12aは、内壁面が螺子形状をしている。なお、本開示の実施形態における図および後述する実施形態の図において、便宜上、熱伝導率κx、κy、κz、λx、λy、λz、のいずれかを省略したものを含んでいる。
【0036】
第2の実施形態における電子素子搭載用基板1によれば、上述した実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、例えば電子装置の作動時に、電子素子2から発生する熱が、第1基板11および厚みが小さくなっている第2基板12の第3主面121と凹部12aの底面との間を介して、凹部12aに位置する伝熱体4に伝わりやすく、また第2基板12の長手方向に伝熱しやすいものとなり、電子素子2の搭載部11aから周囲に放熱しやすく、電子素子2から発生する熱による電子素子2の誤動作を抑制することで電子装置が良好に作動するものとすることができる。
【0037】
また、内壁面が螺子形状の凹部12a内に伝熱体4を位置させることで、第2基板12の凹部12の内壁面と伝熱体4とを好適に接触させ、伝熱体4を介して外部のヒートシンク5に確実に伝熱させることが可能な電子素子搭載用基板を提供することができる。
【0038】
第1基板11と第2基板12とは、第1基板11の第2主面112と第2基板12の第3主面121とが対向するように、TiCuAg合金、TiSnAgCu合金等の活性ろう材からなる接合材により接着される。接合材は、第1基板11と第2基板12との間に、数10μm程度の厚みに配置される。
【0039】
第2基板12の凹部12aは、例えば、第2基板12にねじ穴加工等によって形成しておくことができる。
【0040】
第2の実施形態の電子素子搭載用基板1において、第1基板11の基板厚みT1は、例えば、50μm~500μm程度であり、第2基板12の基板厚みT2は、例えば、100μm~2000μm程度である。第1基板11の基板厚みT1と第2基板12の基板厚みT2とは、T2>T1であると、第1基板11の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0041】
第1基板11は、図5図7に示す例において、第1主面111に複数の電子素子2のそれぞれを搭載する複数の搭載部11aを有している。平面透視において、第1基板11および第2基板12は、複数の電子素子2の並び(搭載部11aの並び)の方向に長い長方形状である。第2基板12に位置した凹部12aは、平面透視において、複数の搭載部11aの一部と重なっている。
【0042】
また、図5図7に示す例のように、第1基板11の第1主面111上に複数の電子素子2を搭載する場合、第2基板12に伝熱した熱は、第2基板12の長手方向に垂直に交わる方向よりも第2基板12の長手方向に伝熱されやすく、凹部12a側に伝熱され、凹部12aに位置した伝熱体4を介して、外部に良好に熱が伝熱しやすくなる。
【0043】
第2の実施形態の電子素子搭載用基板1は、上述の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様の製造方法を用いて製作することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態による電子装置について、図8図10を参照しつつ説明する。
【0045】
第3の実施形態における電子素子搭載用基板1において、上述した実施形態の電子素子搭載用基板1と異なる点は、第2基板12の第4主面122に、第4主面と対向する第5主面141および第5主面141と相対する第6主面142を有する第3基板14が位置している点である。第3の実施形態において、金属層13は、図8および図9に示す例において、網掛けにて示している。第1基板11は、図8および図9に示す例において、平面透視にて凹部12aと重なる領域を破線にて示している。なお、本開示の実施形態における図および後述する実施形態の図において、便宜上、熱伝導率κx、κy、κz、λx、λy、λz、のいずれかを省略したものを含んでいる。
【0046】
第3基板14は、平面視において、第5主面141および第6主面142のそれぞれに対して二組の対向する辺(4辺)を有した矩形の板状の形状を有している。また、第3基板14は、第2基板12の凹部12aと相対する、厚み方向に貫通する貫通孔14aを有している。
【0047】
第3の実施形態における電子素子搭載用基板1によれば、上述した実施形態の電子素子搭載用基板1と同様に、例えば電子装置の作動時に、電子素子2から発生する熱が、第1基板11および厚みが小さくなっている第2基板12の第3主面121と凹部12aの底面との間を介して、凹部12aに位置する伝熱体4に伝わりやすく、また第2基板12の長手方向に伝熱しやすいものとなり、電子素子2の搭載部11aから周囲に放熱しやすく、電子素子2から発生する熱による電子素子2の誤動作を抑制することで電子装置が良好に作動するものとすることができる。
【0048】
第1基板11は、図8図10に示す例において、第1主面111に複数の電子素子2のそれぞれを搭載する複数の搭載部11aを有している。平面透視において、第1基板11、第2基板12、第3基板14は、複数の電子素子2の並び(搭載部11aの並び)の方向に長い長方形状である。第2基板12に位置した凹部12aおよび第3基板14に位置した貫通孔14aは、平面透視において、複数の搭載部11aの一部と重なっており、放熱性に優れたものとすることができる。
【0049】
第3基板14は、第1基板11と同様に、熱伝導率に優れた窒化アルミニウム質焼結体が好適に用いられる。第3基板14の熱伝導率κは、第1基板11と同様に、平面方向におけるX方向とY方向とで略一定であり、第1基板11の平面方向と厚み方向とにおいても略一定である。第1基板11と第2基板12とは、第1基板11の第2主面112と第2基板12の第3主面121とが、TiCuAg合金、TiSnAgCu合金等の活性ろう材からなる接合材により接着される。また、第2基板の第4主面122と第3基板14の第5主面141とが、TiCuAg合金、TiSnAgCu合金等の活性ろう材からなる接合材により接着される。接合材は、第1基板11と第2基板12との間および第2基板12と第3基板14との間に、数10μm程度の厚みに配置される。
【0050】
第3の実施形態の電子素子搭載用基板1において、第1基板11の基板厚みT1は、例えば、50μm~500μm程度であり、第2基板12の基板厚みT2は、例えば、100μm~2000μm程度であり、第3基板14の基板厚みT3は、例えば、50μm~500μm程度である。第1基板11の基板厚みT1と第2基板12の基板厚みT2とは、T2>T1であると、第1基板11の熱を第2基板12に良好に放熱することができるとなる。
【0051】
また、第1基板11と第3基板14とは、それぞれの材料を同様の材料により形成、例えば、第1基板11が、熱伝導率κが200W/m・Kの窒化アルミニウム質焼結体からなる場合、第3基板14は、熱伝導率κ3が200W/m・Kの窒化アルミニウム質焼結体からなる基板(κx≒κ3x、κy≒κ3y、κz≒κ3z)とし、第1基板11の基板厚みT1と第3基板14の基板厚みT3とを同等の厚み(0.9T1≦T3≦1.1T1)としておくと、長手方向の熱伝導が長手方向に垂直に交わる方向の熱伝導より大きい第2基板12を挟んで第1基板11と第3基板14が位置されるので、電子装置の作動時に電子素子搭載用基板1の歪みを低減し、凹部12a内に位置した伝熱体4を介して、外部に良好に放熱することができる電子素子搭載用基板1とすることができる。
【0052】
第3基板14の貫通孔14aの内壁面は、図8図10に示す例のように、螺子形状であっても構わない。この場合、第3基板14の貫通孔14aの内壁面と伝熱体4とを好適に接触させることができ、外部のヒートシンク5に確実に伝熱させることが可能な電子素子搭載用基板を提供することができる。
【0053】
また、第2基板12の第4主面122に、第3基板14の第5主面141が位置しているので、電子素子搭載用基板1は、第2基板12の第4主面122が剥き出した状態とならず、第1基板11の第1主面111への金属層13の形成、および金属層13上への金属めっき層の形成の際に、薬品等による変質を低減することができる。また、同様に、第1基板11の第1主面111への金属層13の形成、および金属層13上への金属めっき層の形成の際に、予め第2基板12の露出する側面に、樹脂、セラミックス、金属等からなる保護膜を位置させても構わない。
【0054】
第3の実施形態の電子素子搭載用基板1は、上述の実施形態の電子素子搭載用基板1と同様の製造方法を用いて製作することができる。
【0055】
本開示は、上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、種々の変更は可能である。例えば、第1基板11の第1主面111に位置した金属層13は、上述の例では、薄膜法により形成しているが、従来周知のコファイア法またはポストファイア法等を用いた金属層であっても構わない。このような金属層13を用いる場合は、金属層13は、第1基板11と第2基板12との接合前にあらかじめ第1基板11の第1主面111に設けられる。なお、第1基板11の平面度を良好なものとするために、上述の方法であってもよい。
【0056】
第1の実施形態の電子素子搭載用基板1乃至第3の実施形態の電子素子搭載用基板1は、単層の絶縁層により形成しているが、絶縁層の層数は異なるものであっても構わない。例えば、第1の実施形態~第3の実施形態の電子素子搭載用基板1において、2層以上の絶縁層により形成しても構わない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10