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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】CSF1Rベースのキメラタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220809BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220809BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220809BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20220809BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220809BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220809BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C07K19/00
C07K14/715
C07K14/52
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P29/00
A61P43/00 107
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2019545954
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018020039
(87)【国際公開番号】W WO2018157164
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】62/463,997
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519302132
【氏名又は名称】シャタック ラボ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】シュレイバー,テイラー
(72)【発明者】
【氏名】フロム,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】デ シルヴァ,スレシュ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0136006(US,A1)
【文献】国際公開第2016/127015(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0113370(US,A1)
【文献】PLOS ONE,2015年,Vol.10, No.6,e0125203, pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)リガンドを結合できるCSF1Rの細胞外ドメインを含む第1のドメイン、
(b)CD40リガンド(CD40L)受容体を結合できるCD40Lの細胞外ドメインを含む第2のドメイン、及び
(c)前記第1のドメインと前記第2のドメインを連結するリンカー
を含む異種キメラタンパク質。
【請求項2】
前記異種キメラタンパク質が、免疫抑制シグナルを阻害できる、請求項1に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項3】
前記異種キメラタンパク質が、
(i)前記CSF1Rの細胞外ドメインがそのリガンドに結合したときに免疫阻害シグナルを低減若しくは排除できる;
(ii)前記CD40Lの細胞外ドメインがその受容体に結合したときに免疫刺激シグナルを増加若しくは活性化できる;
(iii)前記CSF1Rリガンド及び前記CD40L受容体を同時に結合できる;及び/又は
(iv)インビトロで組換えヒトCD40及びヒトCSF1を同時に結合できる、
請求項1又は2の異種キメラタンパク質。
【請求項4】
前記(i)における前記CSF1Rリガンドが、CSF1又はIL-34であり、
前記(ii)における前記CD40L受容体が、CD40であり、
前記(iii)におけるCSF1RリガンドがCSF1又はIL-34であり、かつ前記CD40L受容体がCD40である、
請求項3に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項5】
前記キメラタンパク質が、
血清中又は血清外で、CSF1及び/又はIL-34を枯渇させる;
CD40アゴニスト抗体及び/又はCSF1R拮抗抗体と比較して高められた安全性プロファイル及び/又は低減された毒性プロファイルを示す;
CD40アゴニスト抗体及び/又はCSF1R拮抗抗体と比較して増強された抗腫瘍効果を示す;
CD4+及び/又はCD8+T細胞のサブ集団を増加させること又はその低下を防止することができる;
T細胞による腫瘍殺傷活性を増強できる;
持続的な免疫調節効果を提供できる;
抗原提示細胞の活性化を引き起こすことができる;及び/又は
抗原を提示する抗原提示細胞の能力を増強できる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項6】
前記キメラタンパク質が、腫瘍を保護する細胞(例えば、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)、腫瘍関連好中球(TAN)、M2マクロファージ、及び腫瘍関連マクロファージ(TAM)から選択される細胞)とは反対に、腫瘍を死滅させることができる細胞(例えば、T細胞、細胞傷害性Tリンパ球、Tヘルパー細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、抗腫瘍マクロファージ(例えば、M1マクロファージ)、B細胞、及び樹状細胞から選択される細胞)に有利に免疫細胞の比をシフトさせる、請求項1~5のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項7】
前記キメラタンパク質が、抗腫瘍マクロファージ及び抗原提示細胞を刺激し、一方でCSF1及び/又はIL-34の阻害を通してMDSCの誘導を回避する、請求項6に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項8】
前記キメラタンパク質が、
制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増加させる;
免疫阻害シグナルの持続的なマスキング効果を提供する;
前記キメラタンパク質の血清半減期(t1/2)と比較してより長いオンターゲット(例えば、腫瘍内)の半減期(t1/2)を提供する;及び/又は
CSF1R及びCD40に対する抗体での治療と比較して毒性を低減する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項9】
前記リンカーが、柔軟なアミノ酸配列、IgGヒンジ領域、又は抗体配列から選択されるポリペプチドである、請求項1~8のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項10】
前記リンカーが、IgG4(例えば、ヒトIgG4)由来のヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを含む、請求項9に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項11】
前記キメラタンパク質が、分泌可能で機能的な単一ポリペプチド鎖として哺乳動物宿主細胞により発現される、請求項1~10のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項12】
前記CSF1Rの細胞外ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する
前記CD40Lの細胞外ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する;及び/又は
前記リンカーが、配列番号25、配列番号26、又は配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項13】
前記リンカーが、配列番号28~74から独立して選択される、1以上の結合リンカーを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項14】
前記リンカーが、配列番号28~74からそれぞれ独立して選択される2以上の結合リンカーを含み、1つの結合リンカーがヒンジ-CH2-CH3-Fc ドメインに対しN末端であり、かつ別の結合リンカーがヒンジ-CH2-CH3-Fc ドメインに対しC末端である、請求項13に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項15】
前記キメラタンパク質が、細胞間で安定なシナプスを形成できる、請求項1~14のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項16】
前記細胞間で安定なシナプスが、腫瘍縮小に有利である空間的配向を提供する、請求項15に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項17】
前記空間的配向が、
腫瘍細胞を攻撃するようT細胞を位置づけ、かつ/又は
前記腫瘍細胞が負のシグナル(例えば、前記キメラタンパク質によってマスクされるものを超える負のシグナル)を送達することを立体的に防ぐ、
請求項16に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項18】
前記CSF1Rの細胞外ドメイン及び前記CD40Lの細胞外ドメインのいずれか又は両方の、それぞれの結合パートナーへの結合のオフ速度(Koff)に起因して、受容体とそのリガンドの長い相互作用が提供される、請求項1~17のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項19】
前記長い相互作用が、
より長い正のシグナル効果を送達する;
T細胞増殖を提供しかつ抗腫瘍攻撃を可能にする;及び/又は
刺激シグナルの放出を提供するのに十分なシグナル伝達を可能にする;
請求項18に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項20】
前記長い相互作用が、より長い正のシグナル効果を送達するものであり、前記より長い正のシグナル効果が、抗腫瘍効果のためにエフェクター細胞が十分に刺激されることを可能にする、請求項18に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項21】
前記長い相互作用が、刺激シグナルの放出を提供するのに十分なシグナル伝達を可能にするものであり、前記刺激シグナルが、サイトカインである、請求項18に記載の異種キメラタンパク質。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質をコードする核酸。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質を治療有効量含む、医薬組成物。
【請求項24】
対象の癌若しくは炎症性疾患の治療のため、又は対象の免疫応答の調節のための、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記医薬組成物により対象のT細胞が活性化される、請求項23又は24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
対象が腫瘍を有し、かつ1以上の腫瘍細胞が、免疫抑制シグナルを伝達することを防止される、請求項23又は24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
対象のT細胞が前記異種キメラタンパク質の第2のドメインにより結合されると、前記T細胞が活性化され、かつ、
(a)1以上の腫瘍細胞が、前記異種キメラタンパク質の前記第1のドメインにより結合されると免疫抑制シグナルを伝達することを防止される;
(b)前記対象の末梢血中の定量化可能なサイトカイン応答が達成される;及び/又は
(c)前記対象において、CD40ブロッキング抗体、及び/又はCSF1ブロッキング抗体若しくはIL-34ブロッキング抗体で治療された対象と比較して、腫瘍成長が低下する、
治療を必要とする対象の癌若しくは炎症性疾患の治療のための、請求項23~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記医薬組成物が、
CSF1Rシグナル伝達を阻害しかつ抑制性骨髄細胞集団を阻害する;
CD40シグナル伝達を刺激しかつ抗原提示細胞を活性化する;
未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする治療を受けた対象と比較して、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の量又は活性を低下させる;
未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする治療を受けた対象と比較して、腫瘍微小環境(TME)において腫瘍関連マクロファージ(TAM)の量又は活性を低下させる;
未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする治療を受けた対象と比較して、制御性T細胞(Treg)の量又は活性を低下させる;
未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする治療を受けた対象と比較して、IL-10及び/又はIL-4の量又は活性を低下させる;
未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする治療を受けた対象と比較して、炎症促進性マクロファージ及び樹状細胞の成熟及び分化を増加させる;
未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする治療を受けた対象と比較して、対象の流入領域リンパ節においてエフェクターT細胞のプライミングを増加させる;及び/又は
未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする治療を受けた対象と比較して、免疫抑制細胞の全体的な減少及びより炎症性の腫瘍環境へのシフトを引き起こす、
請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
N末端-(a)-(b)-(c)-C末端の一般構造を含み、式中、
(a)が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一でありかつCSF1Rリガンドを結合できるCSF1Rの細胞外ドメインを含む第1のドメインであり、
(b)が、前記第1のドメイン及び第2のドメインを連結しかつヒトIgG4に由来するヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを含むリンカーであり、並びに
(c)が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%同一でありかつCD40L受容体を結合できるCD40リガンド(CD40L)の細胞外ドメインを含む前記第2のドメインである、
組換え融合タンパク質。
【請求項30】
前記リンカーが、さらに配列番号28~74から選択されるアミノ酸配列を有する結合リンカーを含む、請求項29に記載の組換え融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2017年2月27日出願の米国仮出願第62/463,997号の利益及び優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に送信された資料の参照による組み込み
本出願は配列リストを含有する。配列リストは、「SHK-002PC_SequenceListing_ST25」というタイトルのASCIIテキストファイルとしてEFS-Webを介して電子的に送信された。配列リストは92,976バイトのサイズであり、2018年2月27日頃に作成された。配列リストは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本発明は、部分的には、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の細胞外ドメインを含むキメラタンパク質、並びに癌及び/又は炎症性疾患のための免疫療法などの、疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
最近の臨床データは、例えば、ヤーボイYERVOY、キイトルーダ(KEYTRUDA)、及びオプジーボ(OPDIVO)の承認につながった臨床試験を含む、免疫共阻害分子を標的とする薬剤への印象的な患者の応答を実証した。これらの免疫療法は、チェックポイント阻害剤として集合的に特徴付けられ、不運にも、これらの治療法は、癌患者の約15~30%に臨床的利益を提供するのみである。より広い癌患者の集団の臨床応答率を改善するための1つの有力なアプローチは、別の治療法とチェックポイント阻害剤療法を組み合わせることを含む。そのような組み合わせは、複数の個々の治療薬を使用して適用される場合に、臨床上の利益の向上につながり得るが、開発が厄介である。さらに、多くの免疫療法は、治療のための患者の治療ウィンドウを大幅に狭める重篤な副作用を併発する。
【0005】
単一薬物中に複数の治療メカニズムを統合することを含む、効果的な免疫療法を提供する新規な方法及び組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
したがって、本発明は、部分的には、例えば、腫瘍微小環境において、複数の抑制メカニズムを克服すること、及び免疫抗腫瘍メカニズムを刺激することによる癌治療において使用される、組成物及び方法を提供する。同様に、組成物及び方法は、炎症性疾患の治療において使用される。例えば、本発明は、部分的には、CSF1/CSF1Rシグナル伝達を阻害することによる抑制性骨髄集団の二重標的化及びCD40/CD40Lシグナル伝達を刺激することによる抗原提示細胞の活性化を可能にする組成物及び方法を提供する。そのような同時におこるCSF1R遮断及びCD40アゴニズムは、とりわけ、免疫抑制細胞の全体的な減少及びより炎症性環境へのシフト及び増加された抗腫瘍効果を引き起こす。
【0007】
態様において、本発明は、(a)CSF1Rリガンドに結合できるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の一部を含む第1ドメイン、(b)CD40L受容体に結合できるCD40リガンド(CD40L)の一部を含む第2ドメイン、及び(c)第1ドメインと第2ドメインを連結するリンカーを含む異種キメラタンパク質を提供する。態様において、本発明は、この異種キメラタンパク質で癌を治療する方法を提供する。態様において、本発明は、この異種キメラタンパク質で炎症性疾患を治療する方法を提供する。
【0008】
実施形態において、本発明は、N末端-(a)-(b)-(c)-C末端の一般構造を含み、式中、(a)は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一でありCSF1Rリガンドに結合できるCSF1Rの細胞外ドメインを含む第1のドメインであり、(b)は、第1のドメイン及び第2のドメインを連結しヒトIgG4に由来するヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを含むリンカーであり(例えば、配列番号25、配列番号26、又は配列番号27のアミノ酸配列と95%同一である)、並びに(c)は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%同一でありCD40L受容体に結合できるCD40リガンド(CD40L)の細胞外ドメインを含む第2のドメインである、組換え融合タンパク質を提供する。実施形態において、本発明は、この異種キメラタンパク質で癌を治療する方法を提供する。実施形態において、本発明は、この異種キメラタンパク質で炎症性疾患を治療する方法を提供する。
【0009】
本明細書に記載の任意の態様又は実施形態は、本明細書に開示される任意の他の態様又は実施形態と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】理論に縛られることなく、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の作用機序の概略図を示す。
図1B】腫瘍細胞とT細胞の間にキメラタンパク質によって形成されるシナプスを示す。
図1C】3つのドメインが、それらの天然状態でどのように形成すると予測されるかを示す、ヒトCSF1R-Fc-CD40Lの予測される二次構造を示す。CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の予測分子量は、約105.4kDaである。
図2】非還元/煮沸条件下、還元/煮沸条件下、及び還元/脱グリコシル化/煮沸(PNGアーゼ)条件下でのヒトCSF1R-Fc-CD40Lの3つのドメインのウェスタンブロット分析による特徴付けを示す。バンドサイズは、約105.4kDaの予測される単量体分子量を確認し、天然状態がグリコシル化二量体として存在することを示唆する。図に示すように、各ブロットで左から始まるレーン1は、タンパク質の分子量マーカーである。
図3】ヒトCSF1R-Fc-CD40Lの3つのドメインの標的への個別の結合(Fc-左上に示す、CSF1R-右上に示す、及びCD40L-左下に示す)並びに組換えCSF1とCD40の両方への同時結合-右下に示す、を実証する機能的酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を示す。左上パネルにおいて、上の曲線はIgG標準物質であり、下の曲線はhCSFR1-Fc-CD40Lである。左下パネルにおいて、上の曲線はCD40L-Fcであり、下の曲線はhCSFR1-Fc-CD40Lである。
図4】Jurkat細胞(ヒトT細胞株)により発現されるCD40受容体に結合するヒトCSF1R(CD115)-Fc-CD40Lキメラタンパク質の能力を実証するインビトロ細胞結合アッセイを示す。結合EC50は77nMであると測定された。「ARC」は、hCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質を指す。
図5A-5F】ヒトCSF1R-Fc-CD40LのOctet結合親和性を示す。オン速度、オフ速度、及び親和性(KD)を、CD40-Hisに対するヒトCSF1R-Fc-CD40L(図5A)、CD40-Hisに対する市販の片側CD40L-Fc(図5B)、CD40-Hisに対する市販のCD40抗体(図5C)、CSF1-Hisに対するhCSF1R-Fc-CD40L(図5D)、及びCSF1-Hisに対する市販のCSF1R-Fc(図5E)について決定した。ヒトCSF1R-Fc-CD40Lは、4.83nMでCD40に、646pMでCSF1に結合した(図5F)。用語「CSF1R-Fc-CD40L ARC」は、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質を指す。図5A図5Eの全てにおいて、曲線の順序は、上から下へ:100mMの試験剤、33mMの試験剤、11mMの試験剤、及び空である。
図6】組換えヒトCD40、CSF1、及びIL-34へのヒトCSF1R-Fc-CD40Lの相対結合親和性のバイオレイヤー干渉法(Octet)による特徴付けを示す。同一の結合が2つのCFF1Rリガンド:CSF1及びIL-34について観察された。そのため、曲線は互いに重なる。したがって、曲線の順序は、上にCD40-His、下で重なってCSF1-his及びIL-34-hisである。
図7A-7B】マウスCSF1R-Fc-CD40Lのウェスタンブロット及び機能的ELISA結合による特徴付けを示す。図7Aは、非還元処理(レーン2)、還元処理(レーン3)、及び還元+PNGアーゼ処理(レーン4)の下での、mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の全3つのドメインのウェスタンブロット検出を示す。タンパク質の還元脱グリコシル化形態は、約105kDaの予想分子量で移動する。図7Bは、上の各グラフの概略図で概説された検出方法を用いて、組換えCSF1へのCSF1R(左パネル)、IgGへのFc(中央パネル)、及びrCD40へのCD40L(右パネル)の結合を検出するために行ったELISAアッセイを示す。CD115はCSF1Rと同義である。図7Bの左パネルにおいて、mCD115-Fc-CD40Lは上の曲線であり、中央及び右パネルにおいて、mCD115-Fc-CD40Lは下の曲線である。
図8】mCD40を発現しない親のCHO-K1細胞株(下の曲線)と比較した、マウスCD40を過剰発現するCHO-K1細胞(上の曲線)へのマウスCSF1R-Fc-CD40Lのインビトロ細胞結合を示す。結合EC50を91.1nMで測定した。
図9】ヒトCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質を用いるインビトロNF-κΒ/NIKシグナル伝達アッセイからのデータを示す。DiscoverX NIKシグナル伝達アッセイからのU2OS細胞を、市販の片側CD40L-Fc、片側CSF1R-Fc、又は抗CD40、又はヒトCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のいずれかの滴定と培養した。相対ルシフェラーゼ単位(RLU)は、示されるレジメンでの処理後に活性化されたNF-κΒ/NIKシグナル伝達の相対強度を示す。曲線は、以下のように、X軸上で0.01μg/mLで、上から下に、CD40L-Fc、hCSF1R-Fc-CD40L、CSF1R-Fc、及び抗CD40と特定される。
図10A-10B】マウスCSF1R-Fc-CD40L活性のインビボ機能読み出しを示す。図10Aは、CSF1トラップ/シンクアッセイを示す。腫瘍を担持しないマウスに、0日目に、抗CD115(CSF1R)の単回用量を注射した。2日目に、マウスを未処置のままにするか、又はマウスにCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の単回用量を注射した。血清を、キメラタンパク質の注射の2日前及びキメラタンパク質処置後3日目に採取した。マウスCSF1 ELISAを血清で行い、それはマウスCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質が血清CSF1を結合し排除することを示した。(図10Bは、インビボIL15Rα誘導を示す。腫瘍担持マウスを、最初の腫瘍接種後5日目及び7日目に、150μgのmCSF1R-Fc-CD40L ARCの2回の用量で処置した。13日目に、IL15Rαのフローサイトメトリー分析のために、マウスのコホートを屠殺し、その脾臓及びリンパ節を摘出及び解離した。CD40L機能の既知のメカニズムと一致して、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質で処置したマウスは、両方の組織のコンパートメントにおいてIL15Rαの増加を示した。CD115はCSF1Rと同義である。図10Aのグラフについて、上の曲線は+αCD115であり、真ん中の曲線は+αCD115次いで2日目にCD115-Fc-CD40Lであり、下の曲線は未処置である。図10B(上及び下のパネル)について、左の点は対照であり、右はCSF1R-Fc-CD40Lである。
図11A-11C】大腸CT26腫瘍におけるマウスCSF1R-Fc-CD40Lの抗腫瘍有効性を示す。Balb/cマウスに、0日目にCT26腫瘍を接種した。腫瘍成長の4日後に、腫瘍が直径4~5mmに達すると、マウスを対照抗体又はmCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のいずれかで処置した。その後、7日目に再び処置を繰り返した。上の図は、(図11A)各処置群の個々の腫瘍成長曲線、(図11A)実験の60日目までの全生存率及び(図11A)各グループの治療結果をまとめた表を含む。CD115は、CSF1Rと同義である。図11Bについては、35日目を参照して、曲線は(上から下へ):CD115-Fc-CD40L(150μg×2)、αCD115、αCD115/CD40、αCD40(未処置マウスはこの時点までに生き残っていなかった)である。
図12A-12E】腫瘍担持マウスにおけるインビボ免疫表現型検査を示す。腫瘍接種後13日目に各群からのマウスの脾細胞、リンパ節細胞及び腫瘍浸潤リンパ球を分析することによる腫瘍担持免疫表現型検査も各治療群について行った。図12Aは、マウスCSF1R-Fc-CD40Lで処置したマウスが、対照と比較してリンパ節又は腫瘍ではなく、脾臓においてCD4+T細胞とCD8+T細胞の両方の頻度を増加させたことを実証する結果を示す。図12Bは、脾臓及び腫瘍におけるCD4+CD25+細胞の割合の減少を示し、これは免疫制御性T細胞の減少を示し得る。興味深いことに、腫瘍内の全CD8+細胞の割合の顕著な増加はなかったにもかかわらず(図12C参照)、AH1腫瘍抗原に特異的なCD8+T細胞の割合の顕著な増加(四量体染色による)が検出された。CD40受容体活性化の潜在的な証拠を決定するために、CD19+細胞(図12D)及びIL-15Rα陽性細胞(図12E)の誘導を分析した。図12A図12Eの全てについて、左の点は対照であり、右はCSF1R-Fc-CD40Lである。
図13A-13B】マウスCSF1R-Fc-CD40L対CD40アゴニスト抗体の安全性を示す。CD40アゴニスト抗体(クローンFGK4.5)での単剤療法又はCD40アゴニスト抗体と抗CD115(CSF1R)抗体(クローンAFS98)の併用療法は、実験の過程でマウスに著しい下痢及び体重減少を生じさせた。これらのデータは、CD40アゴニスト抗体が下痢及び体重減少をもたらす腸内炎症反応を開始し、それが次いでCD115遮断との組み合わせによって著しく悪化したことを示す。抗体組み合わせグループのマウスは、体重の25%超を失い(図13B参照)、瀕死の外観を有し(図13A)、場合によっては、この炎症応答は致死的であった。重要なことに、マウスCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質(mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の別名)で処置したマウスは、健康的に見え、下痢又は体重減少の兆候を現さず、正常に行動した(左パネルの写真を参照)。これらのデータは、CD40アゴニスト抗体で治療したヒトにおける臨床データと一致しており、mCD115-Fc-CD40Lの有益な安全性プロファイルを示唆する。CD115は、CSF1Rと同義である。図13Bにおいて、バーの順序は、未処置、αCD115、αCD40、αCD115+αCD40、CD115-Fc-CD40L-FPである。
図14】例示的キメラタンパク質(PD1-Fc-OX40L)の4つの可能性のある構成を示す。
図15】非還元条件下、還元条件下、並びに還元条件かつその後のペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGアーゼF)による処理下でSDS-PAGEにて泳動したPD1-Fc-OX40Lキメラタンパク質のウェスタンブロットを示す。
図16】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にて泳動したPD1-Fc-OX40Lキメラタンパク質のクロマトグラフを示す。
図17】非還元条件下(「-」)又は還元条件下(「+」)で泳動したPD1-Fc-OX40Lキメラタンパク質のSDS-PAGE及びネイティブ(非SDS)PAGEゲルを示す。
図18】リンカー中のFcドメインを欠くPD1-NoFc-OX40Lキメラタンパク質のネイティブ(非SDS)PAGEゲルを示す。
図19】理論に縛られることなく、本発明のキメラタンパク質から六量体及びコンカテマーが形成する方法についてのモデルを示す。
図20】例示的なモジュラーリンカーに組み合わせることができるリンカー及びFcリンカーの結合を示す表である。示される例示的なモジュラーリンカーは、本明細書に記載のいずれかのI型及びII型タンパク質並びに/又は本明細書に記載のI型及びII型タンパク質の細胞外ドメインと組み合わせて、本発明のキメラタンパク質を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、部分的には、CSF1Rリガンドに結合できるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の一部を含む第1ドメインを含む工学処理したキメラタンパク質の発見に基づいている。実施形態において、キメラタンパク質は、CD40L受容体に結合できるCD40リガンド(CD40L)の一部を含む第2ドメインをさらに含む。実施形態において、第1のドメイン及び第2のドメインはリンカーで連結される。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、例えば、マクロファージ及び抗原提示細胞を活性化できる免疫刺激シグナルを提供し一方で、それ以外の場合はバランスを免疫抑制に向けてシフトさせることができる阻害シグナル(例えば、CSF1又はIL-34)に対する局所的なトラップを提供する。本発明の実施形態はそれにより、癌及び/又は炎症性疾患の効果的な治療を提供する。
【0012】
キメラタンパク質
実施形態において、本発明はドメイン、例えば、マクロファージコロニー刺激因子受容体(M-CSFR)及び分化のクラスター115(CD115)としても知られる免疫阻害受容体コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の細胞外ドメインを含むように工学処理されたキメラタンパク質に関する。そのため、この開示を通して、CSF1R及びCD115は、単独で参照される場合及び/又はキメラタンパク質の文脈で参照される場合に同義であり、そのため、例えば、CSF1R-Fc-CD40Lは、CD115-Fc-CD40Lと同じキメラタンパク質である。CSF1Rは、コロニー刺激因子1(CSF1)の受容体として機能する1回膜貫通I型膜タンパク質である。CSF1Rはまた、IL-34の受容体であることが示されている。CSF1又はIL-34のいずれかへのCSF1Rの結合は、造血前駆細胞、特に、マクロファージ及び単球などの単核性食細胞の生存、増殖、及び分化において重要な役割を果たす。さらに、CSF1Rは、腫瘍微小環境内でCSF1又はIL-34のいずれかに結合することが示されている。これらのリガンドへの受容体の結合は、とりわけ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び骨髄由来抑制細胞(MDSC)の誘導を通じて免疫抑制を誘導する。
【0013】
実施形態において、本キメラタンパク質はドメイン、例えば、ヒトCSF1Rの細胞外ドメインを含む。ヒトCSF1Rは、配列番号1のアミノ酸配列(アミノ酸20~517を含む細胞外ドメインのアミノ酸配列を有する)を含む。
【0014】
実施形態において、本キメラタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を有する、ヒトCSF1Rの細胞外ドメインを含む。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、本明細書に記載のCSF1R、又はその変異体若しくは機能断片の細胞外ドメインを含み得る。例えば、キメラタンパク質は、本明細書に記載のCSF1Rの細胞外ドメインのアミノ酸配列と少なくとも約60%、又は少なくとも約61%、又は少なくとも約62%、又は少なくとも約63%、又は少なくとも約64%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約66%、又は少なくとも約67%、又は少なくとも約68%、又は少なくとも約69%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約71%、又は少なくとも約72%、又は少なくとも約73%、又は少なくとも約74%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約76%、又は少なくとも約77%、又は少なくとも約78%、又は少なくとも約79%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約81%、又は少なくとも約82%、又は少なくとも約83%、又は少なくとも約84%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約86%、又は少なくとも約87%、又は少なくとも約88%、又は少なくとも約89%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約91%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する上記のCSF1R、又はその変異体若しくは機能断片の細胞外ドメインの配列を含み得る。
【0015】
CSF1Rの構造は、例えば、W.D.Tap,ら,「腱滑膜巨細胞腫瘍におけるCSF1Rキナーゼの構造誘導遮断(Structure-Guided Blockade of CSF1R Kinase in Tenosynovial Giant-Cell Tumor)」,N.Engl.J.Med.2015 Jul 30;373(5):428-37に記載されている。CSF1Rの誘導体は、利用可能なCSF1R構造に基づいて調製できる。
【0016】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、シグナルペプチド(例えば、配列番号1に記載)が代替シグナルペプチドに置換されるCSF1Rの変異体細胞外ドメインを含み得る。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)又はヒト胚性腎臓(HEK)細胞などのタンパク質産生細胞での発現のためにコドン最適化されたcDNAから発現されるCSF1Rの変異体細胞外ドメインを含み得る。
【0017】
実施形態において、CSF1Rの細胞外ドメインは、細胞外環境と相互作用できるタンパク質の一部を指す。実施形態において、CSF1Rの細胞外ドメインは、細胞の外部又は細胞膜にあるタンパク質の全アミノ酸配列である。実施形態において、CSF1Rの細胞外ドメインは、細胞の外部又は細胞膜にあり、当技術分野で公知の方法(例えば、インビトロリガンド結合及び/又は細胞活性化アッセイ)を用いてアッセイされ得るように、シグナル伝達及び/又はリガンド結合に必要とされるタンパク質のアミノ酸配列の一部である。
【0018】
実施形態において、CSF1Rの細胞外ドメインは、コロニー刺激因子1(CSF1)に結合できるタンパク質の一部を指す。実施形態において、キメラタンパク質は、約1μΜ、約900nM、約800nM、約700nM、約600nM、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約150nM、約130nM、約100nM、約90nM、約80nM、約70nM、約60nM、約55nM、約50nM、約45nM、約40nM、約35nM、約30nM、約25nM、約20nM、約15nM、約10nM、又は約5nM、又は約1nM未満のKでヒトCSF1に結合する(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合に)。実施形態において、キメラタンパク質は、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約55pM、約50pM、約45pM、約40pM、約35pM、約30pM、約25pM、約20pM、約15pM、又は約10pM、又は約1pM未満のKでヒトCSF1に結合する(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合に)。
【0019】
実施形態において、CSF1Rの細胞外ドメインは、IL-34に結合できるタンパク質の一部を指す。実施形態において、キメラタンパク質は、約1μΜ、約900nM、約800nM、約700nM、約600nM、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約100nM、約90nM、約80nM、約70nM、約60nM、約55nM、約50nM、約45nM、約40nM、約35nM、約30nM、約25nM、約20nM、約15nM、約10nM、又は約5nM、又は約1nM未満のKでヒトIL-34に結合する(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合に)。実施形態において、キメラタンパク質は、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約55pM、約50pM、約45pM、約40pM、約35pM、約30pM、約25pM、約20pM、約15pM、又は約10pM、又は約1pM未満のKでIL-34に結合する(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合に)。実施形態において、キメラタンパク質は、約100pM~約600pMのKでヒトCSF1に結合する。
【0020】
本発明のキメラタンパク質はドメイン、例えば、免疫刺激分子CD40リガンド(CD40L、CD154とも呼ばれる)の細胞外ドメインをさらに含む。CD40Lは、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属するII型膜貫通タンパク質である。CD40Lは、抗原提示B細胞を含むマクロファージ及び抗原提示細胞(APC)上のCD40受容体に結合し、それは標的細胞型に応じて多くの効果をもたらす。CD40Lは、インテグリンα5β1及びαIIbβ3を結合することも示されている。CD40Lは、共刺激分子として作用し、T濾胞ヘルパー細胞(TFH細胞)と呼ばれるT細胞のサブセット上で特に重要である。TFH細胞上では、CD40Lは、B細胞表面上でCD40を係合すること、したがって細胞間コミュニケーションを促進することにより、B細胞の成熟及び機能を促進する。
【0021】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質はドメイン、例えばヒトCD40Lの細胞外ドメインを含む。ヒトCD40Lは、配列番号3のアミノ酸配列(アミノ酸47~261を含む細胞外ドメインのアミノ酸配列を有する)を含む。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を有するヒトCD40Lの細胞外ドメインを含む。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、本明細書に記載のCD40L、又はその変異体若しくは機能断片の細胞外ドメインを含み得る。例えば、キメラタンパク質は、本明細書に記載のCD40Lの細胞外ドメインのアミノ酸配列と少なくとも約60%、又は少なくとも約61%、又は少なくとも約62%、又は少なくとも約63%、又は少なくとも約64%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約66%、又は少なくとも約67%、又は少なくとも約68%、又は少なくとも約69%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約71%、又は少なくとも約72%、又は少なくとも約73%、又は少なくとも約74%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約76%、又は少なくとも約77%、又は少なくとも約78%、又は少なくとも約79%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約81%、又は少なくとも約82%、又は少なくとも約83%、又は少なくとも約84%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約86%、又は少なくとも約87%、又は少なくとも約88%、又は少なくとも約89%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約91%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する上記のCD40Lの細胞外ドメイン、又はその変異体若しくは機能断片の配列を含み得る。
【0022】
CD40L誘導体は、Oganesyan V.,ら,「CD40Lを結合するように工学処理されたフィブロネクチンタイプIIIドメイン:2つの複合体のクローニング、発現、精製、結晶化及び予備X線回折分析(Fibronectin type III domains engineered to bind CD40L:cloning,expression,purification,crystallization and preliminary X-ray diffraction analysis of two complexes)」,Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun.2013 Sep;69(Pt 9):1045-8によって記載されたものを含む、利用可能な構造データから構築できる。
【0023】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、シグナルペプチド(例えば、配列番号3に記載の)が代替シグナルペプチドに置換されるCD40Lの変異体細胞ドメインを含み得る。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)又はHEKなどのタンパク質産生細胞での発現のためにコドン最適化されたcDNAから発現されるCD40Lの変異体細胞ドメインを含み得る。
【0024】
実施形態において、CD40Lの細胞外ドメインは、細胞外環境と相互作用できるタンパク質の一部を指す。実施形態において、CD40Lの細胞外ドメインは、細胞の外部又は細胞膜にあるタンパク質の全アミノ酸配列である。実施形態において、CD40Lの細胞外ドメインは、細胞の外部又は細胞膜にあり当技術分野で公知の方法を用いてアッセイされ得るようにシグナル伝達及び/又はリガンド結合に必要とされる、タンパク質のアミノ酸配列の一部である。
【0025】
実施形態において、CD40Lの細胞外ドメインは、CD40受容体に結合できるタンパク質の一部を指す。他のTNFスーパーファミリーメンバーと同様に、膜結合CD40Lはホモ三量体として存在する。CD40LはCD40に結合し、CD40は樹状細胞(DC)、B細胞及びマクロファージを含む抗原提示細胞上で主に発現されるTNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。CD40L/CD40相互作用は、造血コンパートメント及び非造血コンパートメントの多くの細胞の中で、樹状細胞、B細胞、及び内皮細胞に対して大きな影響を及ぼす。例えば、CD40シグナル伝達は、成熟し効果的にT細胞の活性化及び分化を誘発するようにDCを誘導する。B細胞のCD40シグナル伝達は、胚中心(GC)形成、免疫グロブリン(Ig)アイソタイプスイッチング、抗原に対する親和性を高めるIgの体細胞高頻度変異(SHM)、及び長期生存形質細胞及び記憶B細胞の形成を促進する。CD40シグナル伝達は、免疫細胞の生存にも重要である。
【0026】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、約1μΜ、約900nM、約800nM、約700nM、約600nM、約550nM、約530nM、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約100nM、約90nM、約80nM、約70nM、約60nM、約55nM、約50nM、約45nM、約40nM、約35nM、約30nM、約25nM、約20nM、約15nM、約10nM、又は約5nM、又は約1nM未満のKでヒトCD40に結合する(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合に)。実施形態において、キメラタンパク質は、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約55pM、約50pM、約45pM、約40pM、約35pM、約30pM、約25pM、約20pM、約15pM、又は約10pM、又は約1pM未満のKでヒトCD40に結合する(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合に)。実施形態において、キメラタンパク質は、約300pM~約700pMのKでヒトCD40に結合する。
【0027】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CSF1Rの細胞外ドメイン(配列番号2)を含む。
【0028】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CD40Lの細胞外ドメイン(配列番号4)を含む。
【0029】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、OX40Lの細胞外ドメイン(配列番号7)を含む。
【0030】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CSF1Rの細胞外ドメイン(配列番号2)及びCD40Lの細胞外ドメイン(配列番号4)を含む。
【0031】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CSF1Rの細胞外ドメイン(配列番号2)及びOX40Lの細胞外ドメイン(配列番号7)を含む。
【0032】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、ヒトIgG4抗体配列からのヒンジ-CH2-CH3ドメインを含む(配列番号25、配列番号26、又は配列番号27)。
【0033】
実施形態において、キメラタンパク質は、図20に示すようにモジュラーリンカーを含む。
【0034】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、リンカーとしてヒトIgG4抗体配列からのヒンジ-CH2-CH3ドメインを用いて、CSF1Rの細胞外ドメイン及びCD40Lの細胞外ドメインを含む(このCSF1R-Fc-CD40Lキメラは配列番号5)である。
【0035】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、リンカーとしてヒトIgG4抗体配列からのヒンジ-CH2-CH3ドメインを用いて、CSF1Rの細胞外ドメイン及びOX40Lの細胞外ドメインを含む(このCSF1R-Fc-CD40Lキメラは配列番号8)である。
【0036】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、配列番号5、すなわち、単量体CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質(SL-115154)、又はその変異体若しくは機能断片を含む。
【0037】
実施形態において、キメラタンパク質は、配列番号5又は8のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約60%、又は少なくとも約61%、又は少なくとも約62%、又は少なくとも約63%、又は少なくとも約64%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約66%、又は少なくとも約67%、又は少なくとも約68%、又は少なくとも約69%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約71%、又は少なくとも約72%、又は少なくとも約73%、又は少なくとも約74%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約76%、又は少なくとも約77%、又は少なくとも約78%、又は少なくとも約79%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約81%、又は少なくとも約82%、又は少なくとも約83%、又は少なくとも約84%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約86%、又は少なくとも約87%、又は少なくとも約88%、又は少なくとも約89%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約91%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有し得る。
【0038】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、本明細書に開示される配列のいずれか1つに対して1以上のアミノ酸変異を有する配列を含み得る。実施形態において、キメラタンパク質は、本明細書に開示されるキメラタンパク質のアミノ酸配列のいずれか1つに対して約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100又はそれより多いアミノ酸変異を有する配列を含む。
【0039】
実施形態において、1以上のアミノ酸変異は、置換、挿入、欠損、及び切り詰めから独立して選択され得る。
【0040】
実施形態において、アミノ酸変異は、アミノ酸置換であり、かつ保存的及び/又は非保存的置換を含み得る。
【0041】
「保存的置換」は、例えば、極性、電荷、大きさ、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は関与するアミノ酸残基の両親媒性の性質の類似性に基づいて行われ得る。20個の天然アミノ酸は、以下の6つの標準的なアミノ酸のグループ:(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro;及び(6)芳香族性:Trp、Tyr、Pheにグループ化できる。
【0042】
本明細書で使用する「保存的置換」は、上に示す6つの標準的なアミノ酸のグループの同じグループ内にリストされた別のアミノ酸とのアミノ酸の交換として定義される。例えば、GluによるAspの交換は、そのように修飾されたポリペプチド中に1つの負電荷を保持する。加えて、グリシン及びプロリンは、α-ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づいて互いに置換され得る。
【0043】
本明細書で使用する「非保存的置換」は、上に示す6つの標準的なアミノ酸のグループ(1)~(6)の異なるグループにリストされた別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。
【0044】
実施形態において、置換はまた、非古典的アミノ酸(例えば、一般的に、セレノシステイン、ピロリシン、N-ホルミルメチオニンβ-アラニン、GABA及びδ-アミノレブリン酸、4-アミノベンゾイン酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノブチル酸、α-アミノイソブチル酸、4-アミノブチル酸、Abu、2-アミノブチル酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソブチル酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、βメチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸、及びアミノ酸類似体)を含み得る。
【0045】
変異はまた、コドン縮重を考慮することを含む、遺伝コードを参照することによってキメラタンパク質のヌクレオチド配列に行われ得る。
【0046】
実施形態において、キメラタンパク質はリンカーを含む。実施形態において、リンカーは、ジスルフィド結合を形成できる少なくとも1つのシステイン残基を含む。本明細書の他の場所で説明するように、ジスルフィド結合を形成できるそのような少なくとも1つのシステイン残基は、理論に縛られることなく、キメラタンパク質の適切な多量体状態を維持し効率的な生成を可能にすることに関与する。
【0047】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、(a)コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の一部、例えば、CSF1Rリガンドに結合できるCSF1Rの細胞外ドメイン、を含む第1のドメイン、(b)CD40リガンド(CD40L)の一部、例えば、CD40L受容体に結合できるCD40Lの細胞外ドメイン、を含む第2のドメイン、及び(c)第1のドメイン及び第2のドメインを連結するリンカーを含む。
【0048】
実施形態において、キメラタンパク質は、組換え融合タンパク質、例えば、本明細書に記載の細胞外ドメイン(及び、必要に応じてリンカー)を有する単一のポリペプチドである。例えば、実施形態において、キメラタンパク質は、細胞中で単一単位として翻訳される。実施形態において、キメラタンパク質は、複数のポリペプチド、例えばインビトロで(例えば、本明細書に記載の1以上の合成リンカーを用いて)連結されて単一単位をもたらす、例えば本明細書に記載の複数の細胞外ドメインの組換えタンパク質を指す。実施形態において、キメラタンパク質は1つのポリペプチドとして化学合成されるか、又は各ドメインが別々に化学合成され、次いで組み合わされ得る。実施形態において、キメラタンパク質の一部は翻訳され、一部は化学合成される。
【0049】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、本明細書に記載の変異体であり得、例えば、本発明のキメラタンパク質は、本発明のキメラタンパク質のアミノ酸配列、例えば、配列番号5及び8の1以上と少なくとも約60%、又は少なくとも約61%、又は少なくとも約62%、又は少なくとも約63%、又は少なくとも約64%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約66%、又は少なくとも約67%、又は少なくとも約68%、又は少なくとも約69%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約71%、又は少なくとも約72%、又は少なくとも約73%、又は少なくとも約74%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約76%、又は少なくとも約77%、又は少なくとも約78%、又は少なくとも約79%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約81%、又は少なくとも約82%、又は少なくとも約83%、又は少なくとも約84%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約86%、又は少なくとも約87%、又は少なくとも約88%、又は少なくとも約89%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約91%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有し得る。
【0050】
実施形態において、キメラタンパク質はリンカーを含む。実施形態において、リンカーは、天然に存在するマルチドメインタンパク質に由来し得るか、又は例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるChichiliら、(2013),Protein Sci.22(2):153-167,Chenら,(2013),Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369に記載の実験的リンカーである。実施形態において、リンカーは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるChenら,(2013),Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369及びCrastoら,(2000),Protein Eng.13(5):309-312に記載のものなどのデータベース及びコンピュータプログラムを設計するリンカーを用いて設計され得る。
【0051】
実施形態において、リンカーはPEGなどの合成リンカーである。
【0052】
実施形態において、リンカーはポリペプチドを含む。実施形態において、ポリペプチドは、約500アミノ酸長、約450アミノ酸長、約400アミノ酸長、約350アミノ酸長、約300アミノ酸長、約250アミノ酸長、約200アミノ酸長、約150アミノ酸長、又は約100アミノ酸長未満である。例えば、リンカーは、約100、約95、約90、約85、約80、約75、約70、約65、約60、約55、約50、約45、約40、約35、約30、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、又は約2アミノ酸長未満であり得る。実施形態において、リンカーは柔軟である。実施形態において、リンカーは硬い。
【0053】
実施形態において、リンカーは、実質的にグリシン及びセリン残基(例えば、約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%、又は約97%、又は約98%、又は約99%、又は約100%のグリシン及びセリン)で構成される。
【0054】
実施形態において、リンカーは、抗体(例えば、サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、及びIgA1及びIgA2)を含むIgG、IgA、IgD、及びIgE)のヒンジ領域を含む。IgG、IgA、IgD、及びIgEクラスの抗体に見られるヒンジ領域は、柔軟なスペーサーとして機能し、Fab部分が空間内で自由に移動することを可能にする。定常領域とは対照的に、ヒンジドメインは構造的に多様であり、免疫グロブリンクラス及びサブクラス間で配列と長さの両方が変化する。例えば、ヒンジ領域の長さ及び柔軟性は、IgGサブクラス間で変化する。IgG1のヒンジ領域はアミノ酸216~231を包含し、それが自由に柔軟であるため、Fab断片は、それらの対称の軸を中心に回転し2つの重鎖間のジスルフィド架橋の第1を中心とする球内を移動できる。IgG2はIgG1よりも短いヒンジを有し、12のアミノ酸残基及び4つのジスルフィド架橋を有する。IgG2のヒンジ領域は、グリシン残基を欠き、比較的短く、追加の重鎖間ジスルフィド架橋によって安定化された硬いポリプロリン二重らせんを含有する。これらの特性は、IgG2分子の柔軟性を制限する。IgG3は、その特有の拡張ヒンジ領域(IgG1ヒンジの約4倍の長さ)によって他のサブクラスと異なり、62個のアミノ酸(21個のプロリン及び11個のシステインを含む)を含有し、柔軟性のないポリプロリン二重らせんを形成する。IgG3では、Fab断片はFc断片から比較的離れており、分子により高い柔軟性を与える。IgG3中の伸長したヒンジはまた、他のサブクラスと比較してより高いその分子量に関与する。IgG4のヒンジ領域はIgG1のヒンジ領域よりも短く、その柔軟性はIgG1及びIgG2の柔軟性の中間である。ヒンジ領域の柔軟性は、IgG3>IgG1>IgG4>IgG2の順序で減少すると報告されている。実施形態において、リンカーは、ヒトIgG4に由来し、二量体化(S228Pを含む)又はFcRn結合を増強するための1以上の変異を含有し得る。
【0055】
結晶学的研究によると、免疫グロブリンヒンジ領域は、さらに3つの領域:上部ヒンジ領域、コア領域、及び下部ヒンジ領域に機能的に細分化できる。Shinら,1992 Immunological Reviews 130:87を参照されたい。上部ヒンジ領域は、CH1のカルボキシル末端~動きを制限するヒンジ中の第1の残基のアミノ酸、一般に2つの重鎖間に鎖間ジスルフィド結合を形成する第1のシステイン残基、を含む。上部ヒンジ領域の長さは、抗体のセグメントの柔軟性と相関する。コアヒンジ領域は重鎖間ジスルフィド架橋を含有し、下部ヒンジ領域は、CH2ドメインのアミノ末端に結合し、CH2中の残基を含む。野生型ヒトIgG1のコアヒンジ領域は、ジスルフィド結合形成によって二量体化すると、ピボットとして作用すると考えられる環状オクタペプチドを生じ、そのため柔軟性を与える、配列CPPC(配列番号48)を含有する。実施形態において、本リンカーは、任意の抗体(例えば、サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、及びIgA1及びIgA2)を含むIgG、IgA、IgD、及びIgE)の上部ヒンジ領域、コア領域、及び下部ヒンジ領域の1つ、又は2つ、又は3つを含む。ヒンジ領域はまた、炭水化物結合のための部位のいくつかの構造的に別個の種類を含む、1以上のグリコシル化部位を含有し得る。例えば、IgA1は、ヒンジ領域の17個のアミノ酸セグメント内に5つのグリコシル化部位を含有し、分泌性免疫グロブリンに有利な性質と考えられる、腸プロテアーゼに対するヒンジ領域ポリペプチドの耐性を付与する。実施形態において、本発明のリンカーは、1以上のグリコシル化部位を含む。
【0056】
実施形態において、リンカーは、抗体(例えば、サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、及びIgA1及びIgA2)を含むIgG、IgA、IgD、及びIgE)のFcドメインを含む。実施形態において、リンカーは、ヒトIgG4抗体に由来するヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを含む。実施形態において、リンカーは、ヒトIgG1抗体に由来するヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを含む。実施形態において、Fcドメインは、新生児Fc受容体(FcRn)に対する親和性の増加及び結合の増強を示す。実施形態において、Fcドメインは、FcRnに対する親和性を増加させ、FcRnへの結合を増強する1以上の変異を含む。理論に縛られることなく、FcRnに対する親和性の増加及び結合の増強は、本発明のキメラタンパク質のインビボ半減期を増加させると考えられる。
【0057】
実施形態において、リンカー中のFcドメインは、アミノ酸残基250、252、254、256、308、309、311、416、428、433又は434(参照により明示的に本明細書に組み込まれるKabatら、免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))のKabat番号付けに従う)での1以上のアミノ酸置換、又はそれらの等価物を含有する。実施形態において、アミノ酸残基250におけるアミノ酸置換はグルタミンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基252におけるアミノ酸置換は、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン又はスレオニンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基254におけるアミノ酸置換は、スレオニンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基256におけるアミノ酸置換は、セリン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、又はスレオニンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基308におけるアミノ酸置換は、スレオニンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基309におけるアミノ酸置換は、プロリンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基311におけるアミノ酸置換は、セリンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基385におけるアミノ酸置換は、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、スレオニン、ヒスチジン、リジン、アラニン又はグリシンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基386におけるアミノ酸置換は、スレオニン、プロリン、アスパラギン酸、セリン、リジン、アルギニン、イソロイシン、又はメチオニンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基387におけるアミノ酸置換は、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、又はアラニンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基389におけるアミノ酸置換は、プロリン、セリン又はアスパラギンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基416におけるアミノ酸置換は、セリンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基428におけるアミノ酸置換は、ロイシンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基433におけるアミノ酸置換は、アルギニン、セリン、イソロイシン、プロリン、又はグルタミンとの置換である。実施形態において、アミノ酸残基434におけるアミノ酸置換は、ヒスチジン、フェニルアラニン、又はチロシンとの置換である。
【0058】
実施形態において、リンカー中のFcドメイン(例えば、IgG定常領域を含む)は、アミノ酸残基252、254、256、433、434、又は436(参照により明示的に本明細書に組み込まれるKabatら、免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))のKabat番号付けに従う)での置換などの1以上の変異を含む。実施形態において、IgG定常領域は、トリプルM252Y/S254T/T256E変異又はYTE変異を含む。一実施形態において、IgG定常領域は、トリプルH433K/N434F/Y436H変異又はKFH変異を含む。実施形態において、IgG定常領域は、組み合わせでYTE変異とKFH変異を含む。
【0059】
実施形態において、本発明の改変されたヒト化抗体は、アミノ酸残基250、253、307、310、380、428、433、434、及び435(参照により明示的に本明細書に組み込まれるKabatら、免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))のKabat番号付けに従う)における1以上の変異を含有するIgG定常領域を含む。例示的変異は、T250Q、M428L、T307A、E380A、I253A、H310A、M428L、H433K、N434A、N434F、N434S、及びH435Aを含む。実施形態において、IgG定常領域は、M428L/N434S変異又はLS変異を含む。一実施形態において、IgG定常領域は、T250Q/M428L変異又はQL変異を含む。一実施形態において、IgG定常領域は、N434A変異を含む。一実施形態において、IgG定常領域は、T307A/E380A/N434A変異又はAAA変異を含む。一実施形態において、IgG定常領域は、I253A/H310A/H435A変異又はIHH変異を含む。一実施形態において、IgG定常領域は、H433K/N434F変異を含む。一実施形態において、IgG定常領域は、組み合わせでM252Y/S254T/T256E変異とH433K/N434F変異を含む。
【0060】
IgG定常領域における追加の例示的変異は、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるRobbieら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy(2013),57(12):6147-6153,Dall’Acquaら,JBC(2006),281(33):23514-24,Dall’Acquaら,Journal of Immunology(2002),169:5171-80,Koら,Nature(2014) 514:642-645,Grevysら,Journal of Immunology.(2015),194(11):5497-508,及び米国特許第7,083,784号に記載される。
【0061】
実施形態において、リンカー中のFcドメインは、配列番号25(以下の表参照)、又は配列番号25と少なくとも90%、又は93%、又は95%、又は97%、又は98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。実施形態において、安定性及び/又は半減期を増加させるために、変異が配列番号25に行われる。例えば、実施形態において、リンカー中のFcドメインは、配列番号26、又は配列番号26と少なくとも90%、又は93%、又は95%、又は97%、又は98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。例示的なFc安定化変異体はS228Pである。例示的なFc半減期延長変異体は、T250Q、M428L、V308T、L309P、及びQ311Sであり、本リンカーは、これらの変異体の1、又は2、又は3、又は4、又は5個を含み得る。例えば、実施形態において、リンカー中のFcドメインは、配列番号27(以下の表参照)、又は配列番号27と少なくとも90%、又は93%、又は95%、又は97%、又は98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0062】
さらに、1以上の結合リンカーは、リンカー中のFcドメイン(例えば、配列番号25、配列番号26、又は配列番号27、又はそれらと少なくとも90%、又は93%、又は95%、又は97%、又は98%、又は99%の同一性を有するものの1つ)と細胞外ドメインを連結するために使用され得る。例えば、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、又はそれらの変異体の任意の1つが、本明細書に記載の細胞外ドメイン(ECD)と本明細書に記載のリンカー内のFcドメインを連結し得る。必要に応じて、配列番号28~74、又はそれらの変異体の任意の1つが、本明細書に記載の細胞外ドメインと本明細書に記載のFcドメインの間に位置する。実施形態において、キメラタンパク質は、Fcドメインの前に1つの結合リンカー及びFcドメインの後ろに第2の結合リンカーを含み、そのため、キメラタンパク質は、以下の構造:ECD 1(例えば、CSF1R)-結合リンカー1-Fcドメイン-結合リンカー2-ECD 2(例えば、CD40L)を含み得る。
【0063】
実施形態において、第1及び第2の結合リンカーは異なっていてよく、又は同じであってよい。
【0064】
実施形態において、第1及び第2の結合リンカーは、配列番号25~74のアミノ酸配列から選択され得、以下の表1に提供される。
【0065】
【表1】
【0066】
実施形態において、結合リンカーは、実質的にグリシン及びセリン残基(例えば、約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%、又は約97%、約98%、又は約99%、又は約100%のグリシン及びセリン)を含む。例えば、実施形態において、結合リンカーは(GlySer)であり、式中、nは、約1~約8、例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8(それぞれ配列番号49~配列番号56)である。実施形態において、結合リンカー配列はGGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号57)である。追加の例示的な結合リンカーは、配列LE、(Gly)(配列番号58)、(Gly)(配列番号59)、(EAAAK)(n=1~3)(配列番号60~62)、A(EAAAK)A(n=2~5)(配列番号63~配列番号66)、A(EAAAK)ALEA(EAAAK)A(配列番号67)、PAPAP(配列番号68)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号69)、GSAGSAAGSGEF(配列番号70)、及び(XP)(式中、Xは、任意のアミノ酸、例えば、Ala、Lys又はGluである)を有するリンカーを含むが、これらに限定されない。実施形態において、結合リンカーはGGSである。
【0067】
実施形態において、結合リンカーは、GGGSE(配列番号71)、GSESG(配列番号72)、GSEGS(配列番号73)、GEGGSGEGSSGEGSSSEGGGSEGGGSEGGGSEGGS(配列番号74)、及び4アミノ酸ごとの間隔でG、S、及びEがランダムに配置される結合リンカーの1以上である。
【0068】
実施形態において、キメラタンパク質は、図20に示すモジュラーリンカーを含む。
【0069】
実施形態において、リンカーは機能的であり得る。例えば、限定されないが、リンカーは、本発明のキメラタンパク質の折りたたみ及び/又は安定性を改善し、発現を改善し、薬物動態を改善し、かつ/又は生理活性を改善するように機能し得る。別の例では、リンカーは、特定の細胞型又は位置にキメラタンパク質を標的化するように機能し得る。
【0070】
実施形態において、キメラタンパク質は、増強した安定性及びタンパク質半減期を示す。実施形態において、キメラタンパク質は、高い親和性でFcRnに結合する。実施形態において、キメラタンパク質は、約1nM~約80nMのKでFcRnに結合し得る。例えば、キメラタンパク質は、約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nM、約10nM、約15nM、約20nM、約25nM、約30nM、約35nM、約40nM、約45nM、約50nM、約55nM、約60nM、約65nM、約70nM、約71nM、約72nM、約73nM、約74nM、約75nM、約76nM、約77nM、約78nM、約79nM、又は約80nMのKでFcRnに結合し得る。実施形態において、キメラタンパク質は、約9nMのKでFcRnに結合し得る。実施形態において、キメラタンパク質は、エフェクター機能を有する他のFc受容体(すなわち、FcRn以外)に実質的に結合しない。
【0071】
実施形態において、式ECD 1-結合リンカー1-Fcドメイン-結合リンカー2-ECD 2(式中、ECD 1はCSF1Rであり、ECD 2はCD40Lである)を有するキメラタンパク質は、CSF1R-Fc-CD40Lとして本開示で言及され得る。実施形態において、キメラタンパク質は、一方又は両方の結合リンカーを欠き、そのようなキメラタンパク質もまた、CSF1R-Fc-CD40Lとして本開示で言及され得る。
【0072】
実施形態において、キメラタンパク質は、式N末端-(a)-(b)-(c)-C末端(式中、(a)はCSF1Rであり、(b)はFcドメインの少なくとも一部を含むリンカーであり、かつ(c)はCD40Lである)を有する融合タンパク質であり、本開示でCSF1R-Fc-CD40Lと呼ばれ得る。
【0073】
実施形態において、キメラタンパク質は、マウスのリガンド/受容体用に最適化され/指向される。そのようなキメラタンパク質の例は、本明細書でmCSF1R-Fc-CD40Lとも呼ばれる、マウスCSF1R-Fc-CD40Lである。
【0074】
実施形態において、キメラタンパク質は、ヒトのリガンド/受容体用に最適化され/指向される。そのようなキメラタンパク質の例は、本明細書でhCSF1R-Fc-CD40Lとも呼ばれる、ヒトCSF1R-Fc-CD40Lである。
【0075】
これらのキメラタンパク質は、結合リンカーの一方又は両方を欠く場合がある。例示的な結合リンカー1、Fcドメイン、及び結合リンカー2は、上の表1に記載される。キメラタンパク質を形成するのに有用であり、かつ特異的結合リンカー1、Fcドメイン、及び結合リンカー2を含むモジュラーリンカーを、図20に示す。実施形態において、本発明のキメラタンパク質を、CSF1R/CSF1免疫阻害シグナル伝達経路を標的とするように工学処理する。実施形態において、キメラタンパク質を、CSF1RへのCSF1の結合によって媒介される免疫阻害シグナルの伝達を破壊、阻止、低減、及び/又は阻害するように工学処理する。実施形態において、免疫阻害シグナルは、免疫応答を減少又は排除するシグナルを指す。例えば、腫瘍学の状況では、そのようなシグナルは、抗腫瘍免疫を減少又は排除し得る。通常の生理的条件下で、阻害シグナルは、自己耐性の維持(例えば、自己免疫の予防)において、及び免疫系が病原性感染に応答しているときに組織を損傷から保護するためにも有用である。例えば、限定されないが、免疫阻害シグナルは、そのような阻害シグナルが遮断される場合に、細胞増殖、サイトカイン産生、細胞死滅活性又は食作用活性の増加を検出することによって特定され得る。
【0076】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CSF1RへのCSF1又はIL-34の結合によって媒介される免疫阻害シグナルの伝達を破壊、遮断、低減、及び/又は阻害する。実施形態において、キメラタンパク質はCSF1又はIL-34に結合し、それらを補足し、それにより免疫細胞(例えば、腫瘍関連マクロファージ、抗原提示細胞、骨髄細胞、又はT細胞)への阻害性シグナル伝達を破壊、遮断、低減、及び/又は阻害する。
【0077】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、免疫阻害受容体/リガンド対であるCSF1R/CSF1又はCSF1R/IL-34の結合を阻害又は低減できるか、又はそれを阻害又は低減することを含む方法で使用される。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、例えば、CSF1又はIL-34を用いて免疫細胞上のCSF1Rの結合を低減することによって、CSF1R活性化を阻止、低減及び/又は阻害する。
【0078】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CD40へのCD40Lの結合によって媒介される免疫刺激シグナルを標的とする。実施形態において、キメラタンパク質は、CD40へのCD40Lの結合によって媒介される免疫刺激シグナルの伝達を増強、増加、及び/又は刺激する。実施形態において、免疫刺激シグナルは、免疫応答を増強するシグナルを指す。例えば、腫瘍学の状況では、そのようなシグナルは抗腫瘍免疫を増強し得る。例えば、限定されないが、免疫刺激シグナルは、T細胞のサブセットを含む白血球の増殖、サイトカイン産生、死滅活性又は食作用活性を直接刺激することによって特定され得る。
【0079】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CD40へのCD40Lの結合によって媒介される免疫刺激シグナルの伝達を増強、増加、及び/又は刺激する。実施形態において、CD40Lの細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質は、CD40を発現する免疫細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、マクロファージ、抗原提示細胞、又はT細胞)に作用し、免疫細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、マクロファージ、及びT細胞)への刺激シグナル伝達を増強、増加、及び/又は刺激する。
【0080】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、免疫刺激受容体/リガンド対であるCD40:CD40Lの結合を刺激又は増強できるか、又はそれを刺激又は増強することを含む方法で使用される。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CD40及び/若しくはCD40Lの1以上とCD40の結合を増加並びに/又は刺激する。
【0081】
実施形態において、キメラタンパク質は、CD40L以外のII型タンパク質の細胞外ドメインを含む。例示的なII型タンパク質は、4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILを含む。本発明は、キメラタンパク質、並びに以下のキメラタンパク質:CSF1R/4-1BBL、CSF1R/CD30L、CSF1R/FasL、CSF1R/GITRL、CSF1R/LIGHT、CSF1R/OX40L、CSF1R/TL1A、及びCSF1R/TRAILを使用する方法をさらに含む 。実施形態において、キメラタンパク質は、CSF1R-Fc-4-1BBL、CSF1R-Fc-CD30L、CSF1R-Fc-FasL、CSF1R-Fc-GITRL、CSF1R-Fc-LIGHT、CSF1R-Fc-OX40L、CSF1R-Fc-TL1A、及びCSF1R-Fc-TRAILのうちの1つの一般構造を有する。
【0082】
4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号9、11、13、15、17、6、21、及び23を含む。
【0083】
実施形態において、キメラタンパク質は、それぞれ、配列番号10、12、14、16、18、7、22、及び24を含む、4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILのうちの1つの細胞外ドメインを含む。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、本明細書に記載の4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、若しくはTRAILの細胞外ドメイン、又はその変異体若しくは機能断片を含み得る。例えば、キメラタンパク質は、本明細書に記載の4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、又はTRAILの細胞外ドメインのアミノ酸配列と少なくとも約60%、又は少なくとも約61%、又は少なくとも約62%、又は少なくとも約63%、又は少なくとも約64%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約66%、又は少なくとも約67%、又は少なくとも約68%、又は少なくとも約69%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約71%、又は少なくとも約72%、又は少なくとも約73%、又は少なくとも約74%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約76%、又は少なくとも約77%、又は少なくとも約78%、又は少なくとも約79%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約81%、又は少なくとも約82%、又は少なくとも約83%、又は少なくとも約84%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約86%、又は少なくとも約87%、又は少なくとも約88%、又は少なくとも約89%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約91%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約96%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する上記に提供する4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、若しくはTRAILの細胞外ドメイン、又はその変異体若しくは機能断片の配列を含み得る。
【0084】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、免疫細胞(例えば、抗原提示細胞)へ免疫刺激を送達し、一方で免疫阻害シグナルの局所的なトラップ又は隔離を提供する。実施形態において、キメラタンパク質は、免疫活性化の最終結果を有するシグナルを送達する。
【0085】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、免疫活性化(例えば、腫瘍に対して)を促進でき、かつそれを促進することを含む方法で使用できる。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、免疫阻害を抑制でき(例えば、腫瘍が生き残ることを可能にする)、かつそれを抑制することを含む方法で使用できる。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、構築物のキメラ性質によって提供されるシグナル伝達の近接性に起因する免疫活性化の改善及び/又は免疫阻害の抑制の改善を提供する。
【0086】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、免疫応答の増幅を調節すること、例えば、エフェクター出力のレベルを調節できるか、又はそれを調節することを含む方法で使用できる。実施形態において、例えば、癌及び/又は炎症性疾患の治療に使用される場合、本発明のキメラタンパク質は、サイトカインの生成、増殖又は標的殺傷能力のレベルの増加を刺激することを含むが、これらに限定されない、T細胞応答の増幅を増加させる免疫阻害と比較して、免疫刺激の程度を変える。
【0087】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、腫瘍細胞の表面上の阻害リガンドをマスクしその免疫阻害リガンドを免疫刺激リガンドに置き換えることができるか、又はそれをマスクし置き換えることを含む方法で使用される。例えば、本発明のキメラタンパク質は、(a)CSF1Rの細胞外ドメイン及び(b)CD40Lの細胞外ドメインを含み、阻害性CSF1/CSF1Rシグナルの破壊を可能にし、それを刺激CD40L/CD40シグナルと置き換えることを可能にする。したがって、本発明のキメラタンパク質は、実施形態において、阻害性免疫シグナルを低下させること若しくは除去すること、かつ/又は免疫刺激シグナルを増加すること若しくは活性化することができるか、又は阻害性免疫シグナルを低下させ若しくは除去するかつ/又は免疫刺激シグナルを増加することを含む方法で使用される。例えば、阻害シグナルを含む(ひいては、免疫応答を回避する)腫瘍は、次いで腫瘍細胞を攻撃できるマクロファージ又はT細胞上で結合する正のシグナルと置換され得る。したがって、実施形態において、阻害性免疫シグナルは、本発明の構築物によってマスクされ、刺激性免疫シグナルが活性化される。そのような有益な特性は、本発明のキメラタンパク質の単一構築アプローチによって増強される。例えば、シグナル置換をほぼ同時に、例えば、同時に行うことができ、シグナル置換は臨床的に重要な部位(例えば、腫瘍微小環境)で局所的であるよう調整される。
【0088】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、免疫調節を増強し、回復し、促進し、かつ/又は刺激できるか、又はそれを増強し、回復し、促進し、かつ/又は刺激することを含む方法で使用される。実施形態において、本明細書に記載の本発明のキメラタンパク質は、T細胞、細胞傷害性Tリンパ球、Tヘルパー細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、抗腫瘍マクロファージ(例えば、M1マクロファージ)、B細胞、及び樹状細胞を含むが、これらに限定されない腫瘍細胞に対する1以上の免疫細胞の活性又は活性化を回復し、促進し及び/又は刺激する。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、非限定的な例として、生存促進シグナル;オートクリン又はパラクリン成長シグナル;p38 MAPK、ERK、STAT、JAK、AKT若しくはPI3K媒介性シグナル;抗アポトーシスシグナル;並びに/又は炎症性サイトカイン生成若しくはT細胞移動若しくはT細胞腫瘍浸潤の1以上を促進しかつ/又はそれに必要なシグナルを含む、1以上のT細胞固有シグナルを活性化し及び/又は刺激することを含み、T細胞の活性及び/若しくは活性化を増強し、回復し、促進し並びに/又は刺激する。
【0089】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、腫瘍若しくは腫瘍微小環境中へのT細胞(限定されないが、細胞傷害性Tリンパ球、Tヘルパー細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、樹状細胞、単球、及びマクロファージ(例えば、M1及びM2のうちの1以上)の1以上の増加を引き起こすことができるか、又はそれを引き起こすことを含む方法で使用される。実施形態において、キメラタンパク質は、CD8+T細胞、特に、腫瘍微小環境中に浸潤したそれらのT細胞による腫瘍抗原の認識を強化する。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CD19発現を誘導し、かつ/又はCD19陽性細胞(例えば、CD19陽性B細胞)の数を増加させる。一実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、IL-15Rα発現を誘導し、かつ/又はIL-15Rα陽性細胞(例えば、IL-15Rα陽性樹状細胞)の数を増加させる。
【0090】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、特に、腫瘍及び/若しくは腫瘍微小環境(TME)内で、免疫抑制細胞(例えば、骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)、腫瘍関連好中球(TAN)、M2マクロファージ、及び腫瘍関連マクロファージ(TAM)の減少を阻害し、かつ/又は引き起こすことができるか、又はそれらの減少を阻害すること、かつ/又は引き起こすことを含む方法で使用される。実施形態において、本療法は、M1マクロファージを優先するように腫瘍部位及び/又はTMEでM1対M2マクロファージの比率を変更し得る。
【0091】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、本明細書に記載の有効量のキメラタンパク質を対象に投与することを含む、T細胞の不活性化及び/若しくは腫瘍に対する免疫耐性を阻害する並びに/又は低下させることができ、かつそれを阻害する並びに/又は低下させることを含む方法で使用できる。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、IFNγ、TNFα、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17A、IL-17F、及びIL-22の1以上を含むが、これらに限定されない様々なサイトカインの血清レベルを増加させることができる。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、治療対象の血清中のIL-2、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IL-17A、IL-22、TNFα又はIFNγを増強できる。そのようなサイトカイン応答の検出は、示されたキメラタンパク質について最適な投与レジメンを決定するための方法を提供し得る。
【0092】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、抗腫瘍CD8+及び/又はCD4+T細胞の細胞死を阻害し、阻止し及び/若しくは低下させるか;又は腫瘍促進性T細胞の細胞死を刺激し、誘導し、及び/若しくは増加させる。T細胞枯渇は、増殖機能及びエフェクター機能の進行性喪失を特徴とするT細胞機能障害の状態であり、クローン欠失に至る。したがって、腫瘍促進性T細胞は、多くの慢性感染症、炎症性疾患、及び癌の間に生じるT細胞機能障害の状態を指す。この機能不全は、不十分な増殖機能及び/又はエフェクター機能、阻害性受容体の持続的発現及び機能性エフェクター又は記憶T細胞の転写状態とは異なる転写状態によって定義される。枯渇は、感染症及び腫瘍の最適な制御を妨げる。例示的な腫瘍促進性T細胞は、Treg、1以上のチェックポイント阻害受容体を発現するCD4+及び/又はCD8+T細胞、Th2細胞及びTh17細胞を含むが、これらに限定されない。チェックポイント阻害受容体は、制御されない免疫応答を防止又は阻害する免疫細胞上で発現する受容体を指す。対照的に、抗腫瘍CD8+及び/又はCD4+T細胞は、腫瘍に対する免疫応答を刺激できるT細胞を指す。
【0093】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増加させることができ、それを含む方法で使用できる。例示的なエフェクターT細胞は、ICOSエフェクターT細胞;細胞傷害性T細胞(例えば、αβ TCR、CD3、CD8、CD45RO);CD4エフェクターT細胞(例えば、αβ TCR、CD3、CD4、CCR7、CD62Lhi、IL-7R/CD127);CD8エフェクターT細胞(例えば、αβ TCR、CD3、CD8、CCR7、CD62Lhi、IL-7R/CD127);エフェクター記憶T細胞(例えば、CD62L低、CD44、TCR、CD3、IL-7R/CD127、IL-15R、CCR7低);中央記憶T細胞(例えば、CCR7、CD62L、CD27;又はCCR7hi、CD44、CD62Lhi、TCR、CD3、IL-7R/CD127、IL-15R);CD62LエフェクターT細胞;初期エフェクター記憶T細胞(CD27CD62L)及び後期エフェクター記憶T細胞(CD27CD62L)(それぞれTemE及びTemL)を含むCD8エフェクター記憶T細胞(TEM);CD127()CD25(低/-)エフェクターT細胞;CD127()CD25()エフェクターT細胞;CD8幹細胞記憶エフェクター細胞(TSCM)(例えば、CD44(低)CD62L(高)CD122(高)sca());TH1エフェクターT細胞(例えば、CXCR3、CXCR6及びCCR5;又はαβ TCR、CD3、CD4、IL-12R、IFNγR、CXCR3)、TH2エフェクターT細胞(例えば、CCR3、CCR4及びCCR8;又はαβ TCR、CD3、CD4、IL-4R、IL-33R、CCR4、IL-17RB、CRTH2);TH9 エフェクターT細胞(例えば、αβ TCR、CD3、CD4);TH17エフェクターT細胞(例えば、αβ TCR、CD3、CD4、IL-23R、CCR6、IL-1R);CD4CD45ROCCR7エフェクターT細胞、CD4CD45ROCCR7()エフェクターT細胞;並びにIL-2、IL-4及び/又はIFN-γを分泌するエフェクターT細胞を含む。例示的な制御性T細胞は、ICOS制御性T細胞、CD4CD25FOXP3制御性T細胞、CD4CD25制御性T細胞、CD4CD25制御性T細胞、CD4CD25高制御性T細胞、TIM3PD-1制御性T細胞、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)制御性T細胞、CTLA-4/CD152制御性T細胞、ニューロピリン-1(Nrp-1)制御性T細胞、CCR4CCR8制御性T細胞、CD62L(Lセレクチン)制御性T細胞、CD45RB低制御性T細胞、CD127低制御性T細胞、LRRC32/GARP制御性T細胞、CD39制御性T細胞、GITR制御性T細胞、LAP制御性T細胞、1B11制御性T細胞、BTLA制御性T細胞、1型制御性T細胞(Tr1細胞)、Tヘルパータイプ3(Th3)細胞、ナチュラルキラーT細胞表現型の調節細胞(NKTreg)、CD8制御性T細胞、CD8CD28制御性T細胞及び/又はIL-10、IL-35、TGF-β、TNF-α、ガレクチン-1、IFN-γ及び/又はMCP1を分泌する制御性T細胞を含む。
【0094】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、エフェクターT細胞(例えば、CD4+CD25-T細胞)の増加を引き起こす。
【0095】
実施形態において、キメラタンパク質は、制御性T細胞(例えば、CD4+CD25+T細胞)の減少を引き起こす。
【0096】
実施形態において、キメラタンパク質は、例えば、再発を防止するか、又は再負荷から動物を保護できる可能性がある記憶応答をもたらす。そのため、キメラタンパク質で処置された動物は後に、キメラタンパク質での初期の治療後に再負荷された場合に、腫瘍細胞を攻撃し、かつ/又は腫瘍の発症を防ぐことができる。したがって、本発明のキメラタンパク質は、活性腫瘍破壊と、再発を防止できる記憶応答をプログラミングするのに不可欠である腫瘍抗原の免疫認識の両方を刺激する。
【0097】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間又は約96時間又は約1週間又は約2週間以下の間、一過的にエフェクター免疫細胞を刺激でき、かつそれを刺激することを含む方法で使用できる。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間又は約96時間又は約1週間又は約2週間以下の間、一過的に制御性又は免疫抑制性細胞を枯渇させること又は阻害することができ、かつそれを枯渇させること又は阻害することを含む方法で使用できる。実施形態において、エフェクターT細胞の一過性刺激及び/又は免疫阻害細胞の一過性枯渇若しくは阻害は実質的に、患者の血流において、又は、例えば、骨髄、リンパ節、脾臓、胸腺、粘膜関連リンパ組織(MALT)、非リンパ組織などのリンパ組織を含む特定の組織/位置において、又は腫瘍微小環境において生じる。
【0098】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、限定されないが、使用の容易さ及び生成の容易さを含む利点を提供する。これは、2つの異なる免疫療法剤が、2つの独立した製造プロセスの代わりに単一の製造プロセスを可能にする1つの生成物に組み合わされるためである。加えて、2つの別々の薬剤の代わりの単一薬剤の投与は、より容易な投与及びより多くの患者のコンプライアンスを可能にする。
【0099】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、分泌可能で完全に機能する単一ポリペプチド鎖として哺乳動物宿主細胞中で生成可能である。
【0100】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、予期せず、遅いオフ速度(Kd又はKoff)でそれらのそれぞれの結合パートナーへの細胞外ドメイン成分の結合を提供する。実施形態において、これは、受容体のリガンドへの予想外に長い相互作用を提供し、その逆も同様である。そのような効果は、持続的な負のシグナルマスキング効果を可能にする。また、実施形態において、これは、より長い正のシグナル効果を提供し、例えば、エフェクター細胞が抗腫瘍効果のために十分に刺激されることを可能にする。例えば、本発明のキメラタンパク質は、例えば、長いオフ速度結合を介して、免疫細胞増殖を提供し、抗腫瘍攻撃を可能にするのに十分なシグナル伝達を可能にする。さらなる例として、本発明のキメラタンパク質は、例えば、長いオフ速度結合を介して、例えば、サイトカインなどの刺激シグナルの放出を提供するのに十分なシグナル伝達を可能にする。
【0101】
本発明の薬剤によって促進される細胞(例えば、負のシグナルを有する腫瘍細胞及び腫瘍を攻撃する可能性のあるT細胞)の安定なシナプスは、腫瘍細胞を攻撃するようにT細胞を位置付け、かつ/又は本発明のキメラタンパク質によってマスクされたものを超える負のシグナルを含めて、腫瘍細胞が負のシグナルを送達するのを立体的に防ぐなどの、腫瘍の縮小を支持する空間的な向きを提供する。
【0102】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、ヒトCSF1又はIL-34に対し約2×10、約2.5×10、約3×10、約3.5×10、約4×10、約4.5×10、約5×10、約5.5×10、約6×10、約6.5×10、約7×10、約7.5×10、約8×10、約8.5×10、約9×10、又は約9.5×10超のkd(1/s)を示す(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合)。実施形態において、キメラタンパク質は、約100pM~約600pMのKでヒトCSF1に結合する。実施形態において、キメラタンパク質は、約5.7×10のKオン速度(1/Ms)でヒトCSF1に結合し、約7.3×10-6のKオン速度(1/s)でヒトCSF1から離れる。
【0103】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、ヒトCD40に対し約2×10、約2.5×10、約3×10、約3.5×10、約4×10、約4.5×10、約5×10、約5.5×10、約6×10、約6.5×10、約7×10、約7.5×10、約8×10、約8.5×10、約9×10、又は約9.5×10超のkd(1/s)を示す(例えば、表面プラズモン共鳴又はバイオレイヤー干渉法によって測定した場合)。実施形態において、キメラタンパク質は、約1.3×10のKオン速度(1/Ms)でヒトCD40に結合し、約6.7×10-6のKオフ速度(1/s)でヒトCD40から離れる。
【0104】
実施形態において、これは、キメラタンパク質の血清t1/2と比較して、より長いオンターゲット(例えば、腫瘍内)半減期(t1/2)を提供する。そのような性質は、キメラタンパク質の全身分布に関連するオフターゲット毒性を低下させる利点の組み合わせを有し得る。
【0105】
実際に、CSF1ブロッキング抗体及びCD40アゴニスト抗体を用いた逐次治療が、例えば、肝毒性を誘導すると報告されている。例えば、Byrneら、J.Immunology,2016を参照されたい。本明細書に開示されるデータ(例えば、図13参照)は同様に、2つの抗体は、マウスに同時投与されると非常に毒性が高く、致死性の腸炎症及び下痢を引き起こすことを示す。対照的にかつ驚くべきことに、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質による治療は、抗体の同時治療に起因する毒性なしに、CSF1R(これは免疫阻害シグナルの伝達を阻害する)を遮断し、CD40(これは免疫刺激シグナルの伝達を増強、増加、及び/又は刺激する)を活性化する。さらに、実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、それが2つの免疫療法剤の部位特異的相互作用の改善を可能にするので、相乗的な治療効果(例えば、抗腫瘍効果)を提供する。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、CD40アゴニスト抗体及び/又はCSF1R拮抗抗体と比較した場合、相乗的な治療効果を提供する。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、オフサイト及び/又は全身毒性を低減する可能性を提供する。
【0106】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、増強された安全性プロファイルを示す。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、低下された毒性プロファイルを示す。例えば、本発明のキメラタンパク質の投与は、CD40アゴニスト抗体及び/又はCD115拮抗抗体の投与で観察される下痢、炎症(例えば、腸の)、又は体重減少のうちの1以上などの副作用を低減し得る。実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、有効性を犠牲にすることなく、CD40アゴニスト抗体及び/又はCD115拮抗抗体と比較して、向上された安全性を提供する。
【0107】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、現在の免疫療法、例えば、本明細書に記載のチェックポイント分子に対する抗体と比べ、低減された副作用、例えば、GI合併症、を提供する。例示的なGI合併症は、腹痛、食欲不振、自己免疫効果、便秘、けいれん、脱水、下痢、摂食問題、疲労、鼓腸、腹水(fluid in the abdomen)又は腹水(ascites)、消化管(GI)腸内毒素症、GI粘膜炎、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群(IBS-D及びIBS-C)、吐き気、痛み、便又は尿の変化、潰瘍性大腸炎、嘔吐、保持液からの体重増加、及び/又は衰弱を含む。
【0108】
疾患、治療方法、及び患者選択
実施形態において、本発明は、癌及び/又は腫瘍、例えば、癌及び/若しくは腫瘍の治療又は予防に関する。本明細書の他の場所に記載するように、癌の治療は、実施形態において、免疫阻害よりも免疫刺激を優先するように本発明のキメラタンパク質で免疫系を調節することを伴い得る。
【0109】
癌又は腫瘍は、身体の器官及びシステムの正常な機能を妨げる細胞の制御不能な増殖並びに/又は異常に増加した細胞生存率並びに/又はアポトーシスの阻害を指す。良性及び悪性の癌、ポリープ、過形成、並びに休眠腫瘍又は微小転移が含まれる。免疫系によって妨げられない異常増殖を有する細胞(例えば、ウイルス感染細胞)も含まれる。癌は、原発性癌又は転移性癌であり得る。原発性癌は、臨床的に検出可能になる原発部位の癌細胞の領域であり、原発性腫瘍であり得る。対照的に、転移性癌は、ある器官又は部分から別の非隣接器官又は部分への疾患の広がりであり得る。転移性癌は、局所的な領域の中の周囲の正常組織に浸透及び浸潤する能力を獲得する癌細胞によって引き起こされ得、新しい腫瘍を形成し、それは局所的な転移であり得る。癌はまた、リンパ及び/又は血管の壁を貫通する能力を獲得する癌細胞によって引き起こされる可能性があり、その後、癌細胞は、体内の他の部位及び組織に血流を介して循環できる(それによって循環腫瘍細胞である)。癌は、リンパ性の又は血行性の広がりなどのプロセスに起因し得る。癌はまた、別の部位で停止し、血管又は壁を通って再浸透し、増殖し続け、最終的に別の臨床的に検出可能な腫瘍を形成する腫瘍細胞によって引き起こされ得る。癌は、この新しい腫瘍であり得、それは転移性(又は続発性)腫瘍であり得る。
【0110】
癌は、転移した腫瘍細胞によって引き起こされ得、それは続発性又は転移性腫瘍であり得る。腫瘍の細胞は、元の腫瘍中のものと同様であり得る。一例として、乳癌又は結腸癌が肝臓に転移した場合、続発性腫瘍は、肝臓に存在する間、異常な肝細胞からではなく、異常な乳房又は結腸細胞から構成される。肝臓中の腫瘍はそのため、肝臓癌ではなく、転移性乳癌又は転移性結腸癌であり得る。
【0111】
癌は、任意の組織からの起源を有し得る。癌は、黒色腫、結腸、乳房、又は前立腺に由来し、そのため、それぞれ、元は皮膚、結腸、乳房、又は前立腺であった細胞から構成され得る。癌はまた、血液学的悪性腫瘍であり得、それは白血病又はリンパ腫であり得る。癌は、肝臓、肺、膀胱、又は腸などの組織に侵入し得る。
【0112】
本発明の代表的な癌及び/又は腫瘍は、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳及び中枢神経系の癌;乳癌;腸骨の癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌及び直腸癌;結合組織癌;消化器系の癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌(消化管癌を含む);神経膠芽腫;肝癌;肝腫;上皮内新生物;腎臓癌又は腎癌;喉頭癌;白血病;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺の扁平上皮癌);黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(唇、舌、口、及び咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞種;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;唾液腺癌;肉腫;皮膚癌;扁平上皮癌;胃癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮又は子宮内膜癌;尿系の癌;外陰癌;ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、並びにB細胞リンパ腫(低グレード/濾胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む;小リンパ球(SL)NHL、中間グレード/濾胞性NHL;中間グレードの拡散性NHL;高グレードの免疫芽細胞NHL;高グレードのリンパ芽球性NHL;高グレードの小さい非正円形細胞NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びウォルデンストロームのマクログロブリン血症;慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;並びに他の癌腫及び肉腫;及び移植後リンパ増殖障害(PTLD)、並びに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、及びメイグス症候群を含むが、これらに限定されない。
【0113】
実施形態において、キメラタンパク質は、治療-難治性癌を有する対象を治療するために使用される。実施形態において、キメラタンパク質は、1以上の免疫調節剤に難治性である対象を治療するために使用される。例えば、実施形態において、キメラタンパク質は、治療の12週間程度後に、治療に対する応答、或いはさらに進行を示さない対象を治療するために使用される。例えば、実施形態において、対象は、PD-1及び/又はPD-L1及び/又はPD-L2剤に難治性であり、例えば、ニボルマブ(ONO-4538/BMS-936558、MDX1106、OPDIVO、BRISTOL MYERS SQUIBB)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA、MERCK)、ピディリズマブ(CT-011、CURE TECH)、MK-3475(MERCK)、BMS 936559(BRISTOL MYERS SQUIBB)、イブルチニブ(PHARMACYCLICS/ABBVIE)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ、GENENTECH)、及び/又はMPDL328OA(ROCHE)難治性患者を含む。例えば、実施形態において、対象は、抗CTLA-4剤に対して難治性であり、例えば、イピリムマブ(YERVOY)難治性患者(例えば、黒色腫患者)である。したがって、実施形態において、本発明は、1以上の免疫調節剤の単剤療法を含む、様々な治療に応答しない患者を救済する癌治療の方法を提供する。
【0114】
実施形態において、本方法は、追加の薬剤に難治性である患者にキメラタンパク質での治療を提供し、そのような「追加の薬剤」は本明細書の他の場所に記載されており、本明細書に記載の様々な化学療法剤を含むが、これらに限定されない。
【0115】
実施形態において、キメラタンパク質は、1以上の炎症性の疾患又は状態を治療する、調節する又は予防するために使用される。炎症性疾患の非限定的な例は、にきび、急性炎症、アレルギー性鼻炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、常染色体劣性痙性失調症、気管支拡張症、セリアック病、慢性胆嚢炎、慢性炎症、慢性前立腺炎、大腸炎、憩室炎、家族性好酸球増加症(fe)、糸球体腎炎、グリセロールキナーゼ欠乏症、化膿性汗腺炎、過敏症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性骨盤疾患、間質性膀胱炎、喉頭炎症性疾患、リー症候群、扁平苔癬、マスト細胞活性化症候群、マスト細胞症、眼炎症性疾患、耳炎、疼痛、骨盤炎症性疾患、再灌流傷害、呼吸器疾患、再狭窄、リウマチ熱、関節リウマチ、鼻炎、サルコイドーシス、敗血症性ショック、珪肺症及び他の肺炎、移植拒絶反応、結核、及び血管炎を含む。
【0116】
実施形態において、炎症性疾患は、多発性硬化症、糖尿病、ループス、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、ギランバレー症候群、強皮症、グッドパスチャー症候群、ウェーゲナー肉芽腫症、自己免疫性てんかん、ラスムッセン脳炎、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、アジソン病、橋本甲状腺炎、線維筋痛、メニエール症候群;移植拒絶反応(例えば、同種移植片拒絶の予防)悪性貧血、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、グレーブス病、及び他の自己免疫疾患などの自己免疫の疾患又は状態である。
【0117】
態様において、本発明のキメラ薬剤は、例えば、CD40Lの細胞外ドメインを介して、抗原提示細胞を活性化する方法において使用される。
【0118】
態様において、本発明のキメラ薬剤は、CSF1Rの細胞外ドメインを介して、免疫抑制シグナルの細胞伝達を防止する方法において使用される。
【0119】
併用療法及びコンジュゲーション
実施形態において、本発明は、対象に追加の薬剤を投与することをさらに含むキメラタンパク質及び方法を提供する。実施形態において、本発明は、共投与及び/又は共製剤化に関する。本明細書に記載の組成物はいずれも、共製剤化及び/又は共投与され得る。
【0120】
実施形態において、本明細書に記載の任意のキメラタンパク質は、別の薬剤と共投与された場合に相乗的に作用し、そのような薬剤が単剤療法として使用される場合に、一般的に使用される用量よりも低い用量で投与される。実施形態において、本明細書で参照される任意の薬剤は、本明細書に記載のキメラタンパク質のいずれかと組み合わせて使用され得る。
【0121】
実施形態において、本明細書に記載のCSF1Rの細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質は、別のキメラタンパク質と共投与される。実施形態において、本明細書に記載のCSF1Rの細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質は、別のキメラタンパク質、例えば、適応免疫応答を調節するものと共投与される。実施形態において、本明細書に記載のCSF1Rの細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質は、OX40L、PD-1、GITRL、4-1BBL、SIRPα、TIM3、TIGIT、LIGHT及びVSIG8の1以上を含むキメラタンパク質と共投与される。理論に縛られることなく、自然免疫応答を誘導する本発明のキメラタンパク質及び適応免疫応答を誘導する1以上のキメラタンパク質の投与を伴う併用レジメンは、相乗効果(例えば、相乗的な抗腫瘍効果)を提供し得ると考えられる。
【0122】
適応免疫応答を誘導する任意のキメラタンパク質が、本発明において利用され得る。例えば、キメラタンパク質は、適応免疫応答を誘導する、米国特許第62/464,002号に開示されたキメラタンパク質のいずれかであり得る。そのような実施形態において、キメラタンパク質は、N末端で又はその近くでI型膜貫通タンパク質の第1の細胞外ドメイン及びC末端で又はその近くでII型膜タンパク質の第2の細胞外ドメインを含み、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第62/464,002号に開示されるように第1及び第2の細胞外ドメインの一方が免疫阻害シグナルを提供し、第1及び第2の細胞外ドメインの一方が免疫刺激シグナルを提供する。例示的な実施形態において、適応免疫応答を誘導するキメラタンパク質は、N末端にPD-1の細胞外ドメイン及びC末端にOX40L、GITRL、又は4-1BBLの細胞外ドメインを含むキメラタンパク質である。実施形態において、適応免疫応答を誘導するキメラタンパク質は、N末端にVSIG8の細胞外ドメイン及びC末端にOX40L、GITRL、又は4-1BBLの細胞外ドメインを含むキメラタンパク質である。
【0123】
実施形態において、本明細書に記載のCSF1Rの細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質は、自然免疫応答を刺激するために患者に投与され、その後(例えば、1日後、又は2日後、又は3日後、又は4日後、又は5日後、又は6日後、又は1週間後、又は2週間後、又は3週間後、又は4週間後)に、適応免疫応答を誘導するキメラタンパク質が投与される。
【0124】
実施形態において、限定されないが、癌適用を含み、本発明は、追加の薬剤としての化学療法剤に関する。化学療法剤の例は、チオテパ及びCYTOXANシクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ、カルボコーン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(例えば、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリースタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(例えば、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB 1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン系抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマII及びカリケアマイシンオメガII(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994))を参照されたい;ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロン酸塩などのビスホスホネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質(chromoprotein)エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシンドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝産物;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド(minoglutethimide)、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デメコルシン;ジアジクオン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2、2’、2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(例えば、T-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、タキソール パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、アブラクサン クレモフォールを含まない、パクリタキセルのアルブミン処理ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,111.)、及びタキソテール ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;ジェムザール ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(カンプトサル、CPT-11)(5-FU及びロイコボリンとのイリノテカンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤 RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;ラパチニブ(TYKERB);PKC-α、Raf、H-Ras、EGFRの阻害剤(例えば、細胞増殖を低下させるエルロチニブ(Tarceva)及びVEGF-A)並びに上記のいずれかの医薬として許容される塩、酸又は誘導体を含むが、これらに限定されない。加えて、本治療方法は、放射線の使用をさらに含んでよい。加えて、本治療方法は、光力学療法の使用をさらに含んでよい。
【0125】
実施形態において、限定されないが、癌適用を含み、本発明の追加の薬剤は、PD-1及びPD-L1又はPD-L2及び/又はPD-1とPD-L1若しくはPD-L2の結合を阻止、低減及び/又は阻害する薬剤(非限定的な例として、ニボルマブ(ONO-4538/BMS-936558、MDX1106、OPDIVO、BRISTOL MYERS SQUIBB)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA、Merck)、ピディリズマブ(CT-011,CURE TECH)、MK-3475(MERCK)、BMS 936559(BRISTOL MYERS SQUIBB)、アテゾリズマブ(テセントリク、GENENTECH)、MPDL328OA(ROCHE))、CD137(4-1BB)及び/又はCD137(4-1BB)と4-1BBリガンドの1以上の結合を増加及び/又は刺激する薬剤(非限定的な例として、ウレルマブ(BMS-663513及び抗4-1BB抗体)、並びにCTLA-4の活性及び/又はCTLA-4と、AP2M1、CD80、CD86、SHP-2、及びPPP2R5Aの1以上の結合及び/又はOX40とOX40Lの結合を阻止、低減及び/又は阻害する薬剤(非限定的な例として、GBR830(GLENMARK)、MEDI6469(MEDIMMUNE)から選択される1以上の免疫調節剤である。
【0126】
実施形態において、限定されないが、感染性疾患適用を含み、本発明は、追加の薬剤としての抗感染剤に関する。実施形態において、抗感染剤は、アバカビル、アシクロビル、アデフォビル、アンプレナビル、アタザナビル、シドフォビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エトラビリン、ファムシクロビル、及びホスカルネットを含むがこれらに限定されない抗ウイルス剤である。実施形態において、抗感染剤は、セファロスポリン系抗生物質(セファレキシン、セフロキシム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、及びセフトビプロール);フルオロキノロン抗生物質(シプロ、レバキン、フロキシン、テキン、アベロックス、及びノルフロックス);テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、及びドキシサイクリン);ペニシリン系抗生物質(アモキシシリン、アンピシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、カルベニシリン、バンコマイシン、及びメチシリン);モノバクタム系抗生物質(アズトレオナム);及びカルバペネム系抗生物質(エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、及びメロペネム)を含むがこれらに限定されない抗菌剤である。実施形態において、抗感染剤は、抗マラリア剤(例えば、クロロキン、キニン、メフロキン、プリマキン、ドキシサイクリン、アルテメーター(artemether)/ルメファントリン、アトバコン(atovaquone)/プログアニル及びスルファドキシン/ピリメタミン)、メトロニダゾール、チニダゾール、イベルメクチン、ピランテルパモ酸塩、及びアルベンダゾールを含む。
【0127】
実施形態において、限定されないが、自己免疫適用を含み、追加の薬剤は、免疫抑制剤である。実施形態において、免疫抑制剤は、ステロイド系抗炎症剤又は非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)などの抗炎症剤である。ステロイド、特に、副腎コルチコステロイド及びその合成類似体は、当技術分野で周知である。本発明に有用なコルチコステロイドの例は、ヒドロキシルトリアムシノロン、アルファ-メチルデキサメタゾン、ベータ-メチルベタメタゾン、ベクロメタゾンジプロピオン酸、ベタメタゾンベンゾエート、ベタメタゾンジプロピオン酸、ベタメタゾンバレレート、クロベタゾールバレレート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾンジアセテート、ジフルコルトロンバレレート、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルメタゾンピバレート、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、フルプレドニデン(フルプレドニリデン)アセテート、フルランドレノロン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾンアセテート、ヒドロコルチゾンブチレート、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセテート、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステル類のバランス、クロロプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ベクロメタゾンジプロピオン酸塩を含むが、これらに限定されない。本発明で使用され得る(NSAID)は、サリチル酸、アセチルサリチル酸、メチルサリチル酸、グリコールサリチル酸、サリチルアミド(salicylmide)、ベンジル-2,5-ジアセトキシベンゾイン酸、イブプロフェン、スリンダク(fulindac)、ナプロキセン、ケトプロフェン、エトフェナメート、フェニルブタゾン、及びインドメタシンを含むが、これらに限定されない。実施形態において、免疫抑制剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート)、細胞傷害性抗生物質、抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ、及びムロモナブ)、抗イムノフィリン(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)、インターフェロン(Inteferon)、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノレート、及び小さな生物学的薬剤(例えば、フィンゴリモド、ミリオシン)などの細胞分裂阻害剤であり得る。
【0128】
実施形態において、本明細書に記載のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、修飾される誘導体、すなわち、共有結合が組成物の活性を防止しないような、組成物への任意の種類の分子の共有結合によって修飾される誘導体を含む。例えば、限定されないが、誘導体は、特に、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質溶解切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などによって修飾された組成物を含む。多数の化学修飾のいずれも、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツリカマイシンの代謝合成などを含むが、これらに限定されない、既知の技術によって行うことができる。さらに、誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。さらなる実施形態において、本明細書に記載のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、例示的な実施形態において、毒素、化学療法剤、放射性同位体、及びアポトーシス若しくは細胞死を引き起こす薬剤を含む、細胞傷害性薬剤をさらに含む。そのような薬剤は、本明細書に記載の組成物にコンジュゲートされ得る。
【0129】
本明細書に記載のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)はしたがって、化学リンカーなどのエフェクター部分、例えば、蛍光色素、酵素、基質、生物発光物質、放射性物質などの検出可能な部分、及び化学発光部分、又は、例えば、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、サイトトキシン、細胞傷害性薬剤、及び放射性物質などの機能的部分を付加するために翻訳後に修飾され得る。
【0130】
製剤
本明細書に記載のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、医薬として許容される塩を形成するために、無機酸若しくは有機酸と反応できる十分に基本的な官能基、又は無機塩基若しくは有機塩基と反応できるカルボキシシル基を保有できる。医薬として許容される酸添加塩は、当技術分野で周知の医薬として許容される酸から形成される。そのような塩は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるJournal of Pharmaceutical Science,66,2-19(1977)並びに医薬塩のハンドブック;性質、選択、及び使用(The Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection,and Use)、P.H.Stahl及びC.G.Wermuth(編集),Verlag,Zurich(Switzerland)2002に列挙される医薬として許容される塩を含む。
【0131】
実施形態において、本明細書に記載の組成物は、医薬として許容される塩の形態である。
【0132】
また、本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、医薬として許容される担体又はビヒクルを含む組成物の成分として対象に投与できる。そのような組成物は、必要に応じて、適切な投与のための形態を提供するように、適量の医薬として許容される賦形剤を含んでよい。医薬用賦形剤は、水並びにピーナッツ油、大豆油、鉱物油、及びゴマ油などの、石油、動物、野菜、又は合成起源のものを含む油類などの、液体であり得る。医薬賦形剤は、例えば、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、及び尿素などであり得る。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤を使用できる。一実施形態において、医薬として許容される賦形剤は、対象に投与される場合に無菌である。水は、本明細書に記載の任意の薬剤が静脈内投与される場合に有用な賦形剤である。生理食塩水溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液もまた、特に注射可能な溶液のために、液体賦形剤として使用できる。適切な医薬賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、及びエタノールなども含む。本明細書に記載の任意の薬剤は、必要に応じて、微量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤も含んでよい。
【0133】
実施形態において、本明細書に記載の組成物は、生理食塩水緩衝液(TBS、及びPBSなどを含むが、これらに限定されない)に懸濁される。
【0134】
実施形態において、キメラタンパク質は、半減期を延長するか、又はそうでなければ、薬物力学的及び薬物動態学的性質を改善するために別の薬剤とコンジュゲート並びに/又は融合され得る。実施形態において、キメラタンパク質は、PEG、XTEN(例えば、rPEGとして)、ポリシアル酸(POLYXEN)、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン又はHAS)、エラスチン様タンパク質(ELP)、PAS、HAP、GLK、CTP、及びトランスフェリンなどの1以上と融合又はコンジュゲートされ得る。実施形態において、個々のキメラタンパク質のそれぞれは、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるBioDrugs(2015)29:215~239に記載の薬剤の1以上に融合される。
【0135】
投与、投薬、及び治療レジメン
本発明は、記載のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)を様々な製剤中に含む。本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、溶液、懸濁液、エマルション、液滴、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル、液体含有カプセル、粉末、徐放性製剤、坐剤、エマルション、エアロゾル、スプレー、懸濁液の形態、又は使用に適する任意の他の形態をとり得る。タンパク質配列をコードするDNA又はRNA構築物も使用され得る。一実施形態において、組成物は、カプセルの形態にある(例えば、米国特許第5、698、155号を参照されたい)。適切な医薬賦形剤の他の例は、参照により本明細書に組み込まれるレミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)1447-1676(Alfonso R.Gennaro編集,第19版、1995)に記載されている。
【0136】
適宜、キメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)を含む製剤は、可溶化剤も含んでよい。また、薬剤は、当技術分野で公知の適切なビヒクル又は送達装置により送達できる。本明細書に概説される併用療法は、単一の送達ビヒクル又は送達装置で共送できる。投与のための組成物は、必要に応じて、注射部位での痛みを軽減するために、例えば、リグノカインなどの局所麻酔薬を含んでよい。
【0137】
本発明のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)を含む製剤は、単位剤形で都合よく提示され、薬学の当技術分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。そのような方法は、一般に、1以上の付属成分を構成する担体と治療薬を結合させる工程を含む。典型的には、製剤は、液体担体、細かく分割された固体担体、又はその両方と治療薬を均一かつ密接に結合させ、必要に応じて、所望の製剤の剤形に生成物を形成する(例えば、湿式又は乾燥造粒、粉末ブレンドなど、その後、当技術分野で公知の従来の方法を用いて打錠する)ことによって調製される。
【0138】
一実施形態において、本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、本明細書に記載の投与様式に適合した組成物として日常的な手順に従って製剤化される。
【0139】
投与経路は、例えば、腫瘍内、皮内、筋肉内、経皮内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入による投与、又は局所的に、特に、耳、鼻、目、若しくは皮膚への投与を含む。実施形態において、投与は、経口又は非経口注射によってなされる。場合によって、投与は、血流への本明細書に記載の任意の薬剤の放出をもたらすか、或いは、薬剤は活性疾患の部位に直接投与される。
【0140】
本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、経口投与できる。そのようなキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)はまた、任意の他の便利な経路によって、例えば、静脈内注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介した吸収によって投与でき、かつ別の生物学的活性剤と共に投与できる。投与は、全身的又は局所的であり得る。様々な送達システム、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルなどへの封入が知られており、投与のために使用できる。
【0141】
特定の実施形態において、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。一実施形態において、例えば、癌の治療において、キメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、腫瘍微小環境(例えば、腫瘍血管系;腫瘍浸潤リンパ球;線維芽細胞網状細胞;内皮前駆細胞(EPC);癌関連線維芽細胞;周皮細胞;他の間質細胞;細胞外マトリックス(ECM)の構成成分;樹状細胞;抗原提示細胞;T細胞;制御性T細胞;マクロファージ;好中球;及び腫瘍に近位に位置する他の免疫細胞を含む腫瘍細胞を取り囲み、かつ/若しくは腫瘍細胞に栄養を与える、例えば、細胞、分子、細胞外マトリックス並びに/又は血管)又はリンパ節に投与され、かつ/又は腫瘍微小環境若しくはリンパ節を標的とする。実施形態において、例えば、癌の治療において、キメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、腫瘍内に投与される。
【0142】
実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、従来の免疫療法(例えば、オプジーボ(OPDIVO)、キイトルーダ(KEYTRUDA)、ヤーボイ(YERVOY)及びテセントリク(TECENTRIQ)の1以上での治療)に見られる副作用よりも少ない副作用をもたらす二重効果を可能にする。例えば、本発明のキメラタンパク質は、低血圧、大腸炎、肝炎、肺炎、発疹、及びリウマチ性疾患などの、皮膚、消化管、腎臓、末梢神経系及び中枢神経系、肝臓、リンパ節、目、膵臓、及び内分泌系を含む様々な組織並びに器官に影響を与える一般的に観察される免疫関連有害事象を低減又は予防する。また、本発明の局所投与、例えば腫瘍内投与は、標準的な全身投与、例えば、従来の免疫療法(例えば、オプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイ、及びテセントリクの1以上での治療)で使用されるようなIV注入で見られる有害事象を未然に防ぐ。
【0143】
非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、及び関節内への注射並びに注入)に適する剤形は、例えば、溶液、懸濁液、分散剤、及びエマルションなどを含む。それらはまた、使用直前に無菌注射培地に溶解又は懸濁できる無菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造され得る。それらは、例えば、当技術分野で公知の懸濁剤又は分散剤を含有し得る。
【0144】
本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)の投薬量並びに投薬スケジュールは、治療される疾患、対象の全体的な健康、及び投与する医師の裁量を含むが、これらに限定されない様々なパラメータに依存し得る。本明細書に記載の任意のキメラタンパク質は、それを必要とする対象への追加の薬剤の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)か、追加の薬剤の投与と同時に、又はその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与できる。実施形態において、本明細書に記載の任意のキメラタンパク質及び追加の薬剤は、1分間間隔、10分間隔、30分間隔、1時間未満の間隔、1時間間隔、1時間~2時間間隔、2時間~3時間間隔、3時間~4時間間隔、4時間~5時間間隔、5時間~6時間間隔、6時間~7時間間隔、7時間~8時間間隔、8時間~9時間間隔、9時間~10時間間隔、10時間~11時間間隔、11時間~12時間間隔、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、1週間間隔、2週間間隔、3週間間隔、又は4週間間隔で投与される。
【0145】
実施形態において、本発明は、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質及び適応免疫応答を誘導する別のキメラタンパク質の共投与に関する。そのような実施形態において、本発明のキメラタンパク質は、適応免疫応答を誘導するキメラタンパク質の投与前、投与と同時に、又は投与後に投与され得る。例えば、キメラタンパク質は、1分間隔、10分間隔、30分間隔、1時間未満の間隔、1時間間隔、1時間~2時間間隔、2時間~3時間間隔、3時間~4時間間隔、4時間~5時間間隔、5時間~6時間間隔、6時間~7時間間隔、7時間~8時間間隔、8時間~9時間間隔、9時間~10時間間隔、10時間~11時間間隔、11時間~12時間間隔、1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、1週間間隔、2週間間隔、3週間間隔、又は4週間間隔で投与され得る。例示的な実施形態において、CSF1Rの細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質及び適応免疫応答を誘導するキメラタンパク質は、1週間間隔で投与されるか、又は隔週で投与される(すなわち、CSF1Rの細胞外ドメインを含む本発明のキメラタンパク質の投与は、その1週間後に、適応免疫応答などを誘発するキメラタンパク質などの投与を伴う)。
【0146】
本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)の投薬量は、病態の重症度、病態が治療又は予防されるか否か、並びに治療される対象の年齢、体重、及び健康を含むいくつかの要因に依存し得る。さらに、特定の対象についての薬物ゲノムの(薬物動態、薬理力学的又は治療の有効性プロファイルに対する遺伝子型の影響の)情報が、使用される投薬量に影響を与える可能性がある。また、正確な個々の投薬量は、投与される薬剤の特定の組み合わせ、投与時間、投与経路、製剤の性質、排出速度、治療される特定の疾患、障害の重症度、及び障害の解剖学的位置を含む様々な要因に依存して、幾分か調節できる。投薬量のいくつかのバリエーションが予想される。本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)の非経口注射による投与について、投薬量は、1日あたり約0.1mg~約250mg、1日あたり約1mg~約20mg、又は1日あたり約3mg~約5mgであり得る。一般に、経口又は非経口投与の場合、本明細書に記載の任意の薬剤の投薬量は、1日あたり約0.1mg~約1500mg、又は1日あたり約0.5mg~約10mg、又は1日あたり約0.5mg~約5mg、又は1日あたり約200~約1、200mg(例えば、1日あたり約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1,000mg、約1,100mg、約1,200mg)であり得る。
【0147】
実施形態において、本明細書に記載のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)の投与は、治療あたり約0.1mg~約1500mg、又は治療あたり約0.5mg~約10mg、又は治療あたり約0.5mg~約5mg、又は治療あたり約200~約1、200mg(例えば、治療あたり約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1,000mg、約1,100mg、約1,200mg)の投薬量での非経口注射によるものである。
【0148】
実施形態において、キメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)の適切な投薬量は、対象の体重の約0.01mg/kg~約100mg/kg、又は約0.01mg/kg~約10mg/kgの範囲であり、例えば、その間の全ての値と範囲を含む約0.01mg/kg体重、約0.02mg/kg体重、約0.03mg/kg体重、約0.04mg/kg体重、約0.05mg/kg体重、約0.06mg/kg体重、約0.07mg/kg体重、約0.08mg/kg体重、約0.09mg/kg体重、約0.1mg/kg体重、約0.2mg/kg体重、約0.3mg/kg体重、約0.4mg/kg体重、約0.5mg/kg体重、約0.6mg/kg体重、約0.7mg/kg体重、約0.8mg/kg体重、約0.9mg/kg体重、約1mg/kg体重、約1.1mg/kg体重、約1.2mg/kg体重、約1.3mg/kg体重、約1.4mg/kg体重、約1.5mg/kg体重、約1.6mg/kg体重、約1.7mg/kg体重、約1.8mg/kg体重、約1.9mg/kg体重、約2mg/kg体重、約3mg/kg体重、約4mg/kg体重、約5mg/kg体重、約6mg/kg体重、約7mg/kg体重、約8mg/kg体重、約9mg/kg体重、約10mg/kg体重である。一実施形態において、送達は、小胞中で、特にリポソーム中であり得る(Langer,1990,Science 249:1527-1533;Treatら,感染性疾患及び癌の治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and cancer),Lopez-Berestein及びFidler(編),Liss,New York,pp.353-365(1989)を参照されたい)。
【0149】
本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、制御放出手段若しくは持続放出手段によるか、又は当業者に周知の送達装置によって投与できる。例は、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第3、845、770号、同第3、916、899号、同第3、536、809号、同第3、598、123号、同第4、008、719号、同第5、674、533号、同第5、059、595号、同第5、591、767号、同第5、120、548号、同第5、073、543号、同第5、639、476号、同第5、354、556号、及び同第5、733、556号に記載のものを含むが、これらに限定されない。そのような剤形は、様々な割合で所望の放出プロファイルを提供するために、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、微小球、又はそれらの組み合わせを用いる1以上の活性成分の制御放出又は持続放出を提供するのに有用であり得る。活性成分の制御放出又は持続放出は、pHの変化、温度の変化、光の適切な波長による刺激、酵素の濃度又は利用可能性、水の濃度又は利用可能性、又は他の生理学的条件若しくは化合物を含むがこれらに限定されない、様々な条件によって刺激できる。
【0150】
一実施形態において、ポリマー材料を使用できる(制御放出の医学的用途(Medical Applications of Controlled Release),Langer及びWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);制御される薬物バイオアベイラビリティ、医薬品の設計と性能(Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance),Smolen and Ball(編),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照されたい;Levyら,1985,Science 228:190;Duringら,1989,Ann.Neurol.25:351;Howardら,1989,J.Neurosurg.71:105も参照されたい)。
【0151】
一実施形態において、制御放出システムは、治療される標的領域の近くに配置でき、したがって、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson、上記のMedical Applications of Controlled Release,2巻,pp.115-138(1984)を参照されたい)。Langer,1990,Science 249:1527-1533による概説で説明されている他の制御放出システムが使用され得る。
【0152】
本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)の投与は、独立して、1日に1~4回、又は月に1~4回、又は年に1~6回、又は2年、3年、4年若しくは5年に1回であり得る。投与は、1日又は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年の期間であり得、さらには対象の寿命の間であり得る。
【0153】
本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)を利用する投薬量レジメンは、対象の種類、種、年齢、体重、性別及び病状;治療される病態の重症度;投与経路;対象の腎機能又は肝機能;個人の薬理ゲノミクス構造;及び使用される本発明の特定の化合物を含む様々な要因に従って選択できる。本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、毎日の単回用量で投与でき、又は総1日投薬量は、1日2回、3回又は4回の分割用量で投与できる。また、本明細書に記載の任意のキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)は、投薬量レジメン全体を通して断続的ではなく、連続的に投与できる。
【0154】
細胞及び核酸
実施形態において、本発明は、本明細書に記載のキメラタンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを提供する。実施形態において、発現ベクターは、DNA又はRNAを含む。実施形態において、発現ベクターは、哺乳動物発現ベクターである。
【0155】
原核生物ベクターと真核生物ベクターの両方が、キメラタンパク質の発現に使用できる。原核生物ベクターは、大腸菌配列に基づく構築物を含む(例えば、Makrides,Microbiol Rev 1996,60:512-538を参照されたい)。大腸菌での発現に使用できる調節領域の非限定的な例は、lac、trp、lpp、phoA、recA、tac、T3、T7及びλPを含む。原核生物発現ベクターの非限定的な例は、λgt11などのλgtベクターシリーズ(Huynhら,「DNAクローニング技術(DNA Cloning Techniques),I巻:実用的なアプローチ(A Practical Approach)」、1984,(D.Glover,編),pp.49-78,IRL Press,Oxford)、及びpETベクターシリーズ(Studierら,Methods Enzymol 1990,185:60-89)を含み得る。しかしながら、原核生物宿主ベクター系は、哺乳動物細胞の翻訳後処理の多くを行うことができない。そのため、真核生物宿主ベクター系が、特に有用であり得る。様々な調節領域を、哺乳動物宿主細胞におけるキメラタンパク質の発現に使用できる。例えば、SV40初期及び後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、及びラウス肉腫ウイルスの長末端反復(RSV-LTR)プロモーターを使用できる。哺乳動物細胞に有用であり得る誘導性プロモーターは、限定されないが、メタロチオネインII遺伝子に関連するプロモーター、マウス乳癌ウイルスグルココルチコイド応答性長末端反復(MMTV-LTR)、β-インターフェロン遺伝子、及びhsp70遺伝子を含む(Williamsら,Cancer Res 1989,49:2735-42;及びTaylorら,Mol Cell Biol 1990,10:165-75を参照されたい)。ヒートショックプロモーター又はストレスプロモーターもまた、組換え宿主細胞における融合タンパク質の発現を促進するのに有利であり得る。
【0156】
実施形態において、本発明の発現ベクターは、哺乳動物細胞において機能的である、発現制御領域、若しくはその補体に作動可能に連結されたキメラタンパク質(及び/若しくは追加の薬剤)又はその補体をコードする核酸を含む。発現制御領域は、発現ベクターで形質転換されたヒト細胞でブロッキング剤及び/又は刺激剤が生成されるように、作動可能に連結されたブロッキング剤及び/又は刺激剤をコードする核酸の発現を促進できる。
【0157】
発現制御領域は、作動可能に連結された核酸の発現に影響を与える、プロモーター及びエンハンサーなどの調節ポリヌクレオチド(本明細書でエレメントと呼ばれることもある)である。本発明の発現ベクターの発現制御領域は、ヒト細胞中で作動可能に連結されたコード核酸を発現できる。実施形態において、細胞は腫瘍細胞である。一実施形態において、細胞は非腫瘍細胞である。実施形態において、発現制御領域は、作動可能に連結された核酸に調節可能な発現を与える。シグナル(刺激と呼ばれることもある)は、そのような発現制御領域に作動可能に連結された核酸の発現を増減させることができる。シグナルに応答して発現を増加させるそのような発現制御領域は、多くの場合、誘導性と呼ばれる。シグナルに応答して発現を減少させるそのような発現制御領域は、多くの場合、抑制可能と呼ばれる。典型的には、そのようなエレメントによって与えられる増減の量は、存在するシグナルの量に比例し、シグナルの量が多いほど、発現の増減が大きくなる。
【0158】
実施形態において、本発明は、合図に応答して一過的に高レベルの発現をもたらすことができる誘導性プロモーターの使用を企図する。例えば、腫瘍細胞の近くにある場合、そのような発現制御配列を含むキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)用の発現ベクターで形質転換された細胞は、形質転換細胞を適切な合図に暴露することによって高レベルの薬剤を一過的に生成するように誘導される。例示的な誘導性発現制御領域は、低分子化学化合物などの合図で刺激される誘導性プロモーターを含むものを含む。特定の例は、例えば、それらの各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5、989、910号、同第5、935、934号、同第6、015、709号、及び同第6、004、941号の中で見つけることができる。
【0159】
発現制御領域及び遺伝子座制御領域は、天然のプロモーター及びエンハンサーエレメントなどの全長プロモーター配列、並びに全長若しくは非バリアンド機能の全て又は一部を保持するサブ配列又はポリヌクレオチドバリアントを含む。本明細書で使用する用語「機能的」及びその文法的異形は、核酸配列、サブ配列又は断片を参照して使用される場合に、配列が天然核酸配列(例えば、非バリアント又は非改変配列)の1以上の機能を有することを意味する。
【0160】
本明細書で使用する「作動可能な連結」は、それらが意図される様式で機能することを可能にすると説明される構成成分の物理的な並置を指す。核酸との作動可能な連結における発現制御エレメントの例では、関係は、制御エレメントが核酸の発現を調節するようなものである。典型的には、転写を調節する発現制御領域は、転写される核酸の5’末端(すなわち「上流」)付近に並置される。発現制御領域はまた、転写される配列の3’末端(すなわち、「下流」)又は転写物内(例えば、イントロン)に配置できる。発現制御エレメントは、転写される配列から離れた距離(例えば、核酸から100~500、500~1000、2000~5000、又はそれより多くのヌクレオチド)に配置できる。発現制御エレメントの具体的な例はプロモーターであり、それは転写される配列の5’側に通常は位置する。発現制御エレメントの別の例はエンハンサーであり、それは転写される配列の5’側若しくは3’側又は転写される配列内に配置できる。
【0161】
ヒト細胞で機能する発現系は、当技術分野で周知であり、かつウイルス系を含む。一般的に、ヒト細胞中で機能的なプロモーターは、哺乳動物RNAポリメラーゼに結合しmRNAへのコード配列の下流(3’)転写を開始できる任意のDNA配列である。プロモーターは、コード配列の5’末端に通常位置する、転写開始領域及び典型的には、転写開始部位の25~30塩基対上流に位置するTATAボックスを有する。TATAボックスは、正しい部位でRNA合成を開始するようにRNAポリメラーゼIIに指示すると考えられている。プロモーターはまた、TATAボックスの100~200塩基対上流に典型的に位置する、上流プロモーターエレメント(エンハンサーエレメント)を含有する。上流プロモーターエレメントは、転写が開始される速度を決定し、いずれかの方向に作用できる。ウイルス遺伝子は高度に発現される場合が多く広い宿主範囲を有するので、プロモーターとして特に使用されるのは、哺乳動物ウイルスゲノム由来のプロモーターである。例は、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、及びCMVプロモーターを含む。
【0162】
典型的には、哺乳動物細胞によって認識される転写終結配列及びポリアデニル化配列は、翻訳停止コドンの3’側に位置する調節領域であり、そのため、プロモーターエレメントと共に、コード配列に隣接する。成熟mRNAの3’末端は、部位特異的な翻訳後切断及びポリアデニル化によって形成される。転写ターミネータ及びポリアデニル化シグナルの例は、SV40由来のものを含む。イントロンも、発現構築物中に含まれ得る。
【0163】
生存細胞に核酸を導入するために利用可能な様々な技術がある。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の導入に適する技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、ポリマーベースのシステム、DEAE-デキストラン、ウイルス形質導入、リン酸カルシウム沈殿法などの使用を含む。インビボ遺伝子導入に関しては、リポソーム;キトサン及びゼラチンなどの天然ポリマー系送達ビヒクルを含むいくつかの技術及び試薬を用いてもよい。ウイルスベクターも、インビボ形質導入に適する。場合によっては、腫瘍細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体又はリガンドなどの、標的剤を提供することが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、例えば、特定の細胞型を指向するカプシドタンパク質又はその断片、循環中に内部移行を受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在を標的とし、細胞内半減期を増強するタンパク質を標的化し、かつ/又はその取り込みを促進するために使用され得る。受容体媒介性エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wuら,J.Biol.Chem.262,4429-4432(1987);及びWagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,3410-3414(1990)によって記載されている。
【0164】
適宜、例えば、組み込み配列などの遺伝子送達作用因子を用いることもできる。多数の組み込み配列が当技術分野で公知である(例えば、Nunes-Dubyら,Nucleic Acids Res.26:391-406,1998;Sadwoski,J.Bacteriol.,165:341-357,1986;Bestor,Cell,122(3):322-325,2005;Plasterkら,TIG 15:326-332,1999;Kootstraら,Ann.Rev.Pharm.Toxicol.,43:413-439,2003を参照されたい)。これらは、リコンビナーゼ及びトランスポサーゼを含む。例は、Cre(Sternberg及びHamilton,J.Mol.Biol.,150:467-486,1981)、lambda(Nash,Nature,247,543-545,1974),Flp(Broach,ら,Cell,29:227-234,1982),R(Matsuzaki,ら,J.Bacteriology,172:610-618,1990),cpC31(例えば、Grothら,J.Mol.Biol.335:667-678,2004を参照されたい)、スリーピングビューティー(sleeping beauty)、マリナーファミリーのトランスポサーゼ(Plasterkら、上記)、及びAAV、レトロウイルスなどのウイルスを組み込むための構成成分、並びにレトロウイルス又はレンチウイルスのLTR配列及びAAVのITR配列などのウイルス組み込みを提供する構成成分を有するアンチウイルス(Kootstraら,Ann.Rev.Pharm.Toxicol.,43:413-439,2003)を含む。加えて、直接的及び標的遺伝子組み込み戦略が、CRISPR/CAS9、亜鉛フィンガー、TALEN、及びメガヌクレアーゼ遺伝子編集技術を含むキメラタンパク質をコードする核酸配列を挿入するために使用され得る。
【0165】
態様において、本発明は、ウイルスベクターであるキメラタンパク質(及び/又は追加の薬剤)の発現用の発現ベクターを提供する。遺伝子治療に有用な多くのウイルスベクターが公知である(例えば、Lundstrom,Trends Biotechnol.,21:1 17,122,2003を参照されたい)。例示的なウイルスベクターは、アンチウイルス(LV)、レトロウイルス(RV)、アデノウイルス(AV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、及びαウイルスから選択されるものを含むが、他のウイルスベクターも使用され得る。インビボ使用の場合、宿主ゲノムに組み込まれないウイルスベクターは、αウイルス及びアデノウイルスなどの使用に適する。αウイルスの例示的な種類は、シンドビスウイルス、ベネズエラ馬脳炎(VEE)ウイルス、及びセムリキフォレストウイルス(SFV)を含む。インビトロ使用の場合、レトロウイルス、AAV、及びアンチウイルスなどの、宿主ゲノムに組み込むウイルスベクターが適する。実施形態において、本発明は、インビボでヒト細胞を形質導入する方法であって、インビボで固形腫瘍を本発明のウイルスベクターと接触させることを含む、方法を提供する。
【0166】
実施形態において、本発明は、本明細書に記載のキメラタンパク質を含む発現ベクターを含む、宿主細胞を提供する。
【0167】
発現ベクターは、本発明のキメラタンパク質を生成するための宿主細胞に導入できる。細胞は、例えば、インビトロで培養されるか、又は遺伝子操作され得る。有用な哺乳動物宿主細胞は、限定されないが、ヒト、サル、及びげっ歯類に由来する細胞を含む(例えば、「遺伝子導入及び発現:実験室マニュアル(Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual)」1990、New York,Freeman & Co.を参照されたい)。これらは、SV40によって形質転換されたサル腎臓細胞株(例えば、COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(例えば、293、293-EBNA、又は懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら,J Gen Virol 1977,36:59);ベビーハムスター腎臓細胞(例えば、BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞DHFR(例えば、CHO、Urlaub及びChasin,Proc Natl Acad Sci USA 1980,77:4216);DG44 CHO細胞、CHO-K1細胞、マウスセルトリ細胞(Mather,Biol Reprod 1980,23:243-251);マウス線維芽細胞(例えば、NIH-3T3)、サル腎臓細胞(例えば、CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(例えば、BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(例えば、W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(例えば、Hep G2、HB 8065);及びマウス乳癌細胞(例えば、MMT 060562、ATCC CCL51)を含む。本明細書に記載の融合タンパク質を発現させるための例示的癌細胞型は、マウス線維芽細胞株、NIH3T3、マウスルイス肺癌細胞株、LLC、マウス肥満細胞株、P815、マウスリンパ腫細胞株、EL4及びそのオブアルブミン形質移入体、E.G7、マウス黒色腫細胞株、B16F10、マウス線維肉腫細胞株、MC57、及びヒト小細胞肺癌細胞株、SCLC#2及びSCLC#7を含む。
【0168】
宿主細胞は、健康なヒト、癌患者、及び感染症患者を含む健常又は罹患している患者、民間研究室預託、アメリカンタイプカルチャーコレクションなどの公共の培養物コレクション、又は商業サプライヤーから入手できる。
【0169】
インビトロ、エクソビボ、及び/又はインビボで本発明のキメラタンパク質の生成に使用できる細胞は、限定されないが、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血液細胞;様々な幹細胞又は前駆細胞、特に、造血幹細胞又は前駆細胞(例えば、骨髄から得られるもの)、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などを含む。細胞型の選択は、治療若しくは予防される腫瘍の種類又は感染症に依存し、当業者が決定できる。
【0170】
対象及び/又は動物
実施形態において、対象及び/又は動物は、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、又はサル、チンパンジー、若しくはヒヒなどの非ヒト霊長類である。実施形態において、対象及び/又は動物は、例えば、ゼブラフィッシュなどの非哺乳動物である。実施形態において、対象及び/又は動物は、蛍光タグ付き細胞(例えば、GFPで)を含み得る。実施形態において、対象及び/又は動物は、蛍光細胞を含むトランスジェニック動物である。
【0171】
実施形態において、対象及び/又は動物は、ヒトである。実施形態において、ヒトは小児のヒトである。実施形態において、ヒトは、成人のヒトである。実施形態において、ヒトは、老人のヒトである。実施形態において、ヒトは、患者と呼ばれ得る。
【0172】
実施形態において、ヒトは、生後約0ヶ月~約6ヶ月、生後約6ヶ月~約12ヶ月、生後約6ヶ月~約18ヶ月、生後約18ヶ月~約36ヶ月、約1歳~約5歳、約5歳~約10歳、約10歳~約15歳、約15歳~約20歳、約20歳~約25歳、約25歳~約30歳、約30歳~約35歳、約35歳~約40歳、約40歳~約45歳、約45歳~約50歳、約50歳~約55歳、約55歳~約60歳、約60歳~約65歳、約65歳~約70歳、約70歳~約75歳、約75歳~約80歳、約80歳~約85歳、約85歳~約90歳、約90歳~約95歳、又は約95歳~約100歳の範囲の年齢を有する。
【0173】
実施形態において、対象は非ヒト動物であり、したがって、本発明は獣医学での使用に関する。特定の実施形態において、非ヒト動物は家庭用ペットである。別の特定の実施形態において、非ヒト動物は家畜動物である。
【0174】
キット
本発明は、本明細書に記載の任意の薬剤の投与を簡素化できるキットを提供する。本発明の例示的なキットは、本明細書に記載の任意の組成物を単位剤形で含む。一実施形態において、単位剤形は、殺菌できる予め充填された注射器などの容器であり、本明細書に記載の任意の薬剤及び医薬として許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はビヒクルを含有する。キットは、本明細書に記載の任意の薬剤の使用を説明するラベル又は印刷された説明書をさらに含んでよい。キットはまた、蓋スペキュラム、局所麻酔薬、及び投与場所のための洗浄剤を含み得る。キットはまた、本明細書に記載の1以上の追加の薬剤をさらに含んでよい。一実施形態において、キットは、本明細書に記載のものなどの、有効量の本発明の組成物及び有効量の別の組成物を含有する容器を含む。
【0175】
本明細書に記載の任意の態様又は実施形態は、本明細書に開示される任意の他の態様又は実施形態と組み合わせることができる。
【0176】
本発明は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない以下の実施例でさらに説明される。
【0177】
実施例
実施例1:単量体CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の予測される作用機序及びコンピュータ予測構造
図1Aは、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の期待される作用機序の概略図を示す。CSF1Rドメインは、CSF1及び/又はIL-34を結合して「シンク効果」を提供し、CSF1及び/又はIL-34が抗原提示細胞の表面でCSF1Rに結合するのを防ぎ、それにより免疫阻害シグナルを遮断する。同時に、キメラタンパク質のCD40Lドメインは、抗原提示細胞の表面上でCD40を結合し、それにより免疫活性化シグナルを提供する。これらの2つの事象の最終効果は、阻害シグナル(IL-34及び/又はCSF1を介する)を遮断すること及びCD40を介する活性化シグナルを提供することにより免疫応答を増加させる。
【0178】
図1Bは、腫瘍細胞とT細胞の間でキメラタンパク質によって形成されたシナプスを示す。
【0179】
図1Cは、p値が1.69×10-29である、947個のアミノ酸残基(配列番号5)を有する単量体CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質(SL-115154)のコンピュータ構造予測を示す。単量体タンパク質の分子量は、105.4kDaであると予測された。キメラタンパク質の構造を図1Aに提供する。
【0180】
具体的には、構造予測は、33個のアミノ酸の位置(3%)が無秩序である可能性を明らかにした。キメラタンパク質の配列全体の二次構造予測は、タンパク質が2%のα-ヘリックス(H)、51%のβ-シート(E)、及び45%のコイル(C)の組成を有することを示した。絶対グローバル品質のGDT(グローバル距離検定)及びuGDT(非正規化GDT)も、キメラタンパク質について計算して、738(78)の全体的なuGDT(GDT)を得た。タンパク質残基の溶媒アクセシビリティに関する3つの状態の予測は、33%の露出(E)、46%の中間(M)、及び19%の埋没(B)であった。
【0181】
実施例2:CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の特徴付け
ヒトCSF1R-Fc-CD40L(本明細書ではCD115-Fc-CD40Lとも呼ばれる)キメラタンパク質を、詳細な説明で上に記載されるように、かつ内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第62/464,002号のように構築した。キメラタンパク質を、キメラタンパク質の各ドメインに対する、すなわち、抗CSF1R、抗Fc、及び抗CD40L抗体によるウェスタンブロット分析を行うことにより特徴付けた。
【0182】
ウェスタンブロットは、非還元レーン(図2、各ブロットのレーン2)で、約240kDaの見かけの分子量を有する単量体種(おそらく二量体)の存在を示し、これは還元剤β-メルカプトエタノールの存在下でグリコシル化単量体バンドに還元された(図2、各ブロットのレーン3)。図2、各ブロットのレーン4に示すように、キメラタンパク質は、還元剤(β-メルカプトエタノール)とエンドグリコシダーゼ(PNGアーゼ)の両方の存在下で、約105kDaの予測分子量で単量体として移動した。
【0183】
実施例3:ELISAを用いるCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の異なるドメインの結合親和性の特徴付け
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)アッセイを、hCSF1R-Fc-CD40L(本明細書ではCD115-Fc-CD40Lとも呼ばれる)の異なるドメインの、それらのそれぞれの結合パートナー(すなわち、CSF1、hIgG、又はCD40)に対する結合親和性を実証するために開発した。具体的には、キメラタンパク質のFc部分を、プレート結合ヒトIgGへ捕捉すること及びHRPコンジュゲート抗ヒトIgG抗体を介して検出することにより検出した(図3の左上四分円)。hCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のCSF1Rドメインを、プレート結合組換えヒトCSF1タンパク質に捕捉すること及びHRPコンジュゲート抗ヒトIgG抗体を介して検出することにより検出した(図3の右上四分円)。キメラタンパク質のCD40Lドメインを、プレート結合組換えヒトCD40タンパク質に捕捉すること及びCD40L特異的抗体を介して検出することにより検出した(図3の左下四分円)。最後に、CSF1とCD40の両方への同時結合を、組換えCD40を用いてCSF1R-Fc-CD40Lを捕捉しかつ組換えCSF1を用いてCSF1R-Fc-CD40L(図3の右下部)を検出するデュアルELISAフォーマットを用いて実証した。
【0184】
実施例4:CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のエクソビボ細胞結合親和性の特徴付け
細胞結合アッセイを行って、哺乳動物細胞膜の表面上のそれらのそれぞれの結合パートナーに対するmCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の異なるドメインの結合親和性を実証した。
【0185】
細胞結合アッセイのために、不死化細胞株を、CD40(Jurkat/CD40)を安定に発現するように工学処理した。漸増濃度のCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質を、過剰発現(Jurkat/CD40)細胞株と2時間インキュベートした。細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによるキメラタンパク質結合の検出のための抗体で染色した。
【0186】
図4に示すように、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質は、濃度依存的に低いnMの親和性で、細胞表面上に存在するCD40に結合した。具体的には、図4に示すように、細胞結合アッセイは、CSF1R-Fc-CD40Lが、約77nMの親和性(EC50計算による)でCD40に結合することを実証した。
【0187】
実施例5:表面プラズモン共鳴(SPR)及びバイオレイヤー表面干渉法によるCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の結合親和性の特徴付け
hCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の異なるドメインの結合親和性を、BioRad ProteOn XPR 360システムを用いる表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。具体的には、ヒトCSF1及びCD40に対するキメラタンパク質の親和性を決定し、組換え対照タンパク質と比較し、結果を以下の表に示す。
【表2】
【0188】
hCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質は、高い親和性でCSF1及びCD40に結合することが判明した。特に、hCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のオフ速度は対照タンパク質(すなわち、CSF1R-Fc及びCD40L-Fc)よりもはるかに遅いことが注目される。例えば、CSF1からのキメラタンパク質のオフ速度はCSF1R-Fcタンパク質よりも45.9倍遅かった。
【0189】
加えて、CSF1R-Fc-CD40Lの各ドメインの結合親和性を、バイオレイヤー表面干渉法に基づくOctetシステムを用いて測定した(図5A図5F)。これらの結果はさらに、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の各結合パートナーへの高親和性結合を確認する。
【0190】
実施例6.両方のCSF1Rリガンドへの結合親和性
CSF1Rは、2つのリガンド:CSF1とIL-34の両方を結合することが報告されている。そのため、CSF1R-Fc-CD40LがCSF1とIL-34の両方に結合できることを実証することが望ましい。これを、バイオレイヤー表面干渉法(Octet)を用いて試験し、結果を図6に示した。CSF1R-Fc-CD40LのCSF1及びIL-34への結合は、区別がつかなかった。そのため、曲線は事実上互いの上で重なる。
【0191】
実施例7.マウスCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の特徴付け
マウスCSF1R-Fc-CD40L(本開示ではmCSF1R-Fc-CD40Lとも呼ばれる)キメラタンパク質を、詳細な説明で上に記載されるように、かつ内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第62/464,002号のように構築した。キメラタンパク質を、キメラタンパク質の各ドメインに対する、すなわち、α-CSF1R、α-Fc、及びα-CD40L抗体によるウェスタンブロット分析を行うことにより特徴付けた。
【0192】
ウェスタンブロットは、非還元レーン(図7A、各ブロットのレーン2)での約240kDaの見かけの分子量を有するオリゴマー種(おそらく二量体)の存在を示し、これは還元剤β-メルカプトエタノールの存在下でグリコシル化単量体バンドに還元された(図7A、各ブロットのレーン3)。図7A、各ブロットのレーン4に示すように、キメラタンパク質は、還元剤(β-メルカプトエタノール)とエンドグリコシダーゼ(PNGアーゼ)の両方の存在下で、約105kDaの予測分子量で単量体として移動した。
【0193】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)アッセイを、mCSF1R-Fc-CD40Lの異なるドメインの、それらのそれぞれの結合パートナー(すなわち、CSF1、mIgG、又はCD40)に対する結合親和性を実証するために開発した。具体的には、キメラタンパク質のFc部分を、プレート結合マウスIgGへ捕捉すること及びHRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体を介して検出することにより検出した(図7Bの真ん中のグラフ)。mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のCSF1Rドメインを、プレート結合組換えマウスCSF1タンパク質に捕捉すること及びHRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体を介して検出することにより検出した(図7Bの左のグラフ)。キメラタンパク質のCD40Lドメインを、プレート結合組換えマウスCD40タンパク質に捕捉すること及びCD40L特異的抗体を介して検出することにより検出した(図7Bの右のグラフ)。
【0194】
図7Bに示すように、hCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の異なるドメインは、高い親和性でそれらのそれぞれの結合パートナーと効果的に相互作用した。それにもかかわらず、ELISAアッセイでは、中央Fc領域を用いてキメラタンパク質を検出すると、試料中の実際のタンパク質含有量を過小評価する傾向があることが観察された。したがって、このアッセイでは標準物質と比較して低レベルのhCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質が検出された。
【0195】
実施例8.マウスCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のエクソビボ細胞結合親和性の特徴付け
細胞結合アッセイを行って、哺乳動物細胞膜の表面上のそれらのそれぞれの結合パートナーに対するmCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の異なるドメインの結合親和性を実証した。
【0196】
細胞結合アッセイのために、不死化細胞株を、CD40(CHOK1/CD40)を安定に発現するように工学処理した。漸増濃度のマウスCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質を、過剰発現(CHOK1/CD40)細胞株と2時間インキュベートした。細胞を収集し、洗浄し、フローサイトメトリーによるキメラタンパク質結合の検出のための抗体で染色した。
【0197】
図8に示すように、マウスCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質は、濃度依存的に低いnMの親和性で、細胞表面上に存在するCD40に結合した。具体的には、図8に示すように、細胞結合アッセイは、CSF1R-Fc-CD40Lが、約91.1nMの親和性(EC50計算による)でCD40に結合することを実証した。陰性対照として、親(非CD40発現)CHOK1細胞株への検出可能な結合はなかった。
【0198】
実施例9.インビトロでのCD40シグナル伝達の誘導
ヒトCD40はホモ三量体受容体であり、活性化されると、NF-κΒとNIKの両方の活性化を伴うシグナル伝達カスケードの誘導をもたらす。図9は、ヒトCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質を用いるインビトロNF-κΒ/NIKシグナル伝達アッセイからの例示的なデータを示す。DiscoverX NIKシグナル伝達アッセイからのU2OS細胞を、市販の片側CD40L-Fc、片側CSF1R-Fc、又はCD40アゴニスト抗体、又はヒトCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のいずれかの滴定と培養した。相対ルシフェラーゼ単位(RLU)は、示されたレジメンによる処理後に活性化されたNF-κΒ/NIKシグナル伝達の相対強度を示す。hCSF1R-Fc-CD40Lは、CD40L-Fcキメラタンパク質と同等の程度に、NF-κΒ及びNIKを介するシグナル伝達を強く活性化したことが示される。CD40アゴニスト抗体は、この抗体がCD40受容体の適切なクラスタリングを促進するためにFc受容体架橋を必要とするので、このアッセイではCD40活性化を刺激しなかった。
【0199】
実施例10:CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の機能アッセイ
CSF1R(CD115とも呼ばれる)は、腫瘍微小環境内でのCSF1及び/又はIL-34への結合におけるその役割のために、緊急免疫チェックポイントとして特定されている。図1Aに示すように、これら2つのリガンドのいずれかへのCSF1Rの結合は、骨髄由来抑制細胞の誘導を含む様々なメカニズムを介して免疫抑制を刺激する。理論に縛られることなく、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質は同時に、CSF1/IL-34のサイトカイントラップとして作用しかつCD40を介してマクロファージ及び抗原提示細胞を刺激し、それにより強力な抗腫瘍免疫を生じると考えられる。
【0200】
2つの機能アッセイを、mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の機能活性を特徴付けるために開発した。
【0201】
第1のアッセイは、mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質が可溶性CSF1に結合し、その血清レベルを減少させる能力を評価するためのインビボトラップ/シンクアッセイである。具体的には、腫瘍を担持しないマウスに、0日目に抗CSF1R抗体(抗CD115抗体とも呼ばれる)の単回用量を注射した。2日目に、マウスを未処置のままにするか、又はマウスにCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の単回用量を注射した。血清を、キメラタンパク質の注射の2日前及びキメラタンパク質処置後3日目に採取した。マウスCSF1のELISAアッセイを血清で行った。図10Aに示すように、mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質は、可溶性CSF1に結合し、その血清レベルを著しく低減でき、したがってELISAによるその検出を排除した。
【0202】
第2のアッセイは、mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質での処置後13日目に、腫瘍担持マウスのインビボ免疫プロファイリングを伴った。具体的には、脾臓及びリンパ節におけるIL15Rα+細胞のレベルを、キメラタンパク質(特に、キメラタンパク質のCD40L部分)による免疫活性化の読み出しとして分析した。腫瘍担持マウスを、最初の腫瘍接種後5日目及び7日目に、150μgのmCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の2回用量で処置した。13日目に、マウスのコホートを屠殺し、それらの脾臓及びリンパ節をIL15Rαのフローサイトメトリー分析のために摘出及び解離した。脾臓及びリンパ節中のIL15Rα+細胞のレベルを、図10Bに示すように決定した。CD40L機能の既知のメカニズムと一致して、キメラタンパク質で処置したマウスは、未処置マウスと比較して、脾臓及びリンパ節でのIL15Rαの増加を示し、キメラタンパク質がCD40/CD40L経路を介して免疫活性化を刺激したことを強く示唆する。
【0203】
実施例11:CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のインビボ抗腫瘍活性の特徴付け
mCSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質のインビボ抗腫瘍活性を、CT26マウス大腸腫瘍モデルを用いて分析した。
【0204】
1組の実験において、Balb/cマウスに、0日目にCT26腫瘍細胞を接種し、30日目にCT26腫瘍細胞の2回目の接種を行った。腫瘍成長の5日後に、腫瘍が直径4~5mmに達すると、マウスをCD40アゴニスト抗体、CSF1R(CD115)ブロッキング抗体、これら2つの抗体の組み合わせ、又はmCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質のいずれかで処置した。処置を7日目に繰り返した。
【0205】
各処置群の腫瘍成長を、図11Aに示すように評価した。具体的には、未処置マウスは腫瘍を迅速に発症した。CD40アゴニスト抗体、CSF1R(CD115)ブロッキング抗体、又はこれら2つの抗体の組み合わせのいずれかによる処置は、腫瘍の発症をわずかに遅らせるように思われた。これに対して、mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質でのマウスの処置は、腫瘍の発症を著しく防ぎ、かつ/又は遅らせた。上のデータは、CSF1R(CD115)-Fc-CD40Lキメラタンパク質での処置がインビボで免疫記憶効果を生じさせることを示唆する。そのため、処置した動物は、キメラタンパク質での最初の処置後に再負荷した場合に、腫瘍細胞を後に攻撃し、かつ/又は腫瘍の発症を防ぐことができる。
【0206】
腫瘍接種後50日目までのマウスの全生存率も評価した。未処置マウスの全ては、腫瘍接種後30日以内に死亡した。CD40アゴニスト抗体、CSF1R(CD115)ブロッキング抗体、又はこれらの2つの抗体の組み合わせで処置したマウスの他のグループは、生存は延長したが、腫瘍接種後50日まで生存したマウスはなお25%未満であった。重要なことに、mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質で処置したマウスの70%超が、図11Bに示すように腫瘍接種後50日を過ぎて生存した。図11Cに示されるように、キメラタンパク質での処置は、CD40アゴニスト抗体、CSF1R(CD115)ブロッキング抗体、又は2つの抗体の組み合わせによる処置よりも顕著により高い腫瘍拒絶反応をもたらした。
【0207】
実施例12.腫瘍担持マウスからのリンパ球集団の免疫表現型検査
免疫表現型検査もまた、腫瘍接種後13日目に脾細胞、リンパ節細胞及び腫瘍浸潤リンパ球を分析することによって行った。図12Aに示すように、mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質で処置したマウスは、未処置マウスと比較してリンパ節又は腫瘍ではなく、脾臓においてCD4+T細胞とCD8+T細胞の両方の頻度の増加を示した。さらに、キメラタンパク質で処置したマウスは、脾臓及び腫瘍においてCD4+CD25+細胞の割合の減少を示し、キメラタンパク質が制御性T細胞を減少させることを示唆する(図12B)。特に、腫瘍内では全CD8+細胞の割合は顕著に増加しなかったにもかかわらず(図12A)、AH1腫瘍抗原に特異的なCD8+T細胞の割合の顕著な増加(四量体染色による)が、mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質で処置したマウスにおいて検出され(図12C)、キメラタンパク質がCD8+T細胞による腫瘍認識を高めたことを示唆する。
【0208】
mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質によるCD40受容体活性化を評価するために、キメラタンパク質によるCD19+細胞及びIL-15Rα陽性細胞の誘導を分析した。図12Dに示すように、CD19+細胞の顕著な増加がキメラタンパク質で処置したマウスの脾細胞で観察された。CD19+細胞のこの増加は、リンパ節又は腫瘍細胞では観察されなかった。さらに、キメラタンパク質で処置したマウスの脾細胞でのIL-15Rα陽性細胞の顕著な増加もあった(図12E)。再び、増加はリンパ節又は腫瘍細胞では認められなかった。
【0209】
実施例13.CSF1R及びCD40抗体と比較して低減されたCSF1R-Fc-CD40Lの毒性
インビボ研究もまた驚くべきことに、mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質が高められた安全性プロファイルを示したことを実証した。具体的には、CD40アゴニスト抗体とCD40+CD115抗体の併用治療で処置したマウスは、実験の過程で著しい下痢及び体重減少を発症することが観察された。CD40アゴニスト抗体で処置したマウスにおいて、腸内炎症応答が開始され下痢及び体重減少をもたらし、それはその後CD115遮断との併用治療によって顕著に悪化した。抗体併用(CD115+CD40抗体)グループのマウスは、体重を25%超失い(図13B)、瀕死の外観を有し、場合によっては、この炎症応答は致死的であった(図13A参照)。これに対し、mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質で処置したマウスは、健康的に見え、下痢又は体重減少の兆候は現れず、正常に行動した(図13A及び図13B)。
【0210】
全体として、これらのデータは、mCD115-Fc-CD40Lキメラタンパク質での処置が、CD115ブロッキング抗体単独、CD40アゴニスト抗体単独、又はCD115ブロッキング抗体とCD40アゴニスト抗体の組み合わせよりも、完全腫瘍拒絶反応の顕著に高い割合をもたらしたことを示す。さらに、キメラタンパク質での処置は、マウスに共投与した場合に非常に毒性が高く致死性の腸炎症及び下痢を引き起こした抗体での処置と比較して、高められた安全性プロファイルを提供した。
【0211】
実施例14:キメラタンパク質の機能性へのリンカー中のFcドメインの寄与の特徴付け
この実施例において、本発明のキメラタンパク質の機能性へのリンカー中のFcドメインの寄与をアッセイした。ここで、PD1-Fc-OX40LをFc含有キメラタンパク質のモデルとして用いた。そのため、以下に示すデータは、本発明のキメラタンパク質に関連する。
【0212】
天然状態では、PD1は単量体として存在し、一方でOX40Lは、OX40Lドメイン間の静電相互作用により二量体化する傾向がある。Fcドメインは、ジスルフィド結合を介して互いに結合する。まとめると、いくつかの分子間相互作用は、PD1-Fc-OX40Lの四次構造に寄与し得る。少なくとも、PD1-Fc-OX40Lの4つの潜在的な構造があり、キメラタンパク質は単量体、二量体、三量体、又は六量体として存在する。図14を参照されたい。
【0213】
キメラタンパク質の単量体及び二量体の構造の存在を、キメラタンパク質を還元条件及び非還元条件に暴露し、その後SDS-PAGEでタンパク質を泳動することによって試験した。非還元条件下(還元:「-」)では、キメラタンパク質は、SDS-PAGEで約200kDaの位置に移動した。ここで、ウェスタンブロットを、PD1、Fc、又はOX40Lに対する抗体でプローブし、それぞれ、図15の左、真ん中、及び右のブロットに示した。キメラタンパク質の予測単量体分子量は57.6kDaであるので、200kDa種は、少なくとも二量体であると予想された。しかしながら、ジスルフィド結合(例えば、Fcドメイン間の)を還元する還元条件下(還元:「+」)では、キメラタンパク質は、SDS-PAGEで約100kDaの位置に移動した。100kDa種は予想よりも大きかったので、余分な質量はグリコシル化によるものと予測された。最後に、キメラタンパク質をペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGアーゼF「+」)で処理し、還元条件下でSDS-PAGEで泳動した。これらの条件下で、キメラタンパク質は約57.6kDaの位置に移動した。これらのデータは、キメラタンパク質がグリコシル化され、少なくとも二量体として天然に存在することを示唆しており、二量体化は、Fcドメイン間のジスルフィド結合に起因する可能性が高い。
【0214】
SDS-PAGEゲル法は、高電荷及び/又は大きな分子量のタンパク質の分子量を正確に予測しない。そのため、キメラタンパク質を次に、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて特徴付けた。負電荷SDSがペプチド間の電荷ベースの相互作用を低下させるSDS-PAGEとは異なり、SECは界面活性剤又は還元剤を使用しない。PD1-Fc-OX40Lキメラタンパク質をSECにかけると、約200kDa付近にピークはなかった。これは、天然では、キメラタンパク質は二量体として存在しないことを示唆する。代わりに、670kDaを超えるサイズを有するピークが検出された。図16を参照されたい。このデータ及び以前のデータは、PD1-Fc-OX40Lキメラタンパク質がその天然状態で六量体として存在することを示唆する。
【0215】
上に示したように、非還元条件下又は還元条件下にてSDS-PAGEで泳動すると、試料及び/又は泳動緩衝液中のSDSは、還元剤の有無にかかわらず、六量体のPD1-Fc-OX40Lキメラタンパク質をそれぞれ優勢な二量体又は単量体に変換する。図17(左ゲル)を参照されたい。SDSを欠くネイティブPAGEで泳動すると、還元剤の非存在下で、キメラタンパク質は六量体として存在する。しかしながら、還元剤(ジスルフィド結合を還元する)の存在下で、ネイティブPAGEで泳動すると、キメラタンパク質は予想よりも重く移動した。図17に示すように(右ゲル、レーン2)、キメラタンパク質は、実質的に、ローディングウェルから移動できなかった。このデータは、キメラタンパク質が、より高次のタンパク質にオリゴマー化したことを示唆する。そのため、キメラタンパク質において、ジスルフィド結合は、より高次のオリゴマー化を制御するのに重要であると思われる。
【0216】
これをさらに確認するために、Fcドメインを欠くキメラタンパク質、例えば「PD1-NoFc-OX40L」を構築した。そのようなキメラタンパク質は、前述のキメラタンパク質中のFcドメイン間で生じるジスルフィド結合を有しない。図18に示すように、Fcドメインを欠くキメラタンパク質をネイティブPAGEで泳動すると、どのタンパク質もそのローディングウェルから実質的に移動しなかった(レーン1~4は、漸増ローディング濃度のPD1-No Fc-OX40Lを示す)ことから、再び、「Fcを含まない」キメラタンパク質は、多数のタンパク質を含むコンカテマー様複合体を形成したことを示唆する。そのため、キメラタンパク質中のFcドメインの除去は、タンパク質凝集体の形成をもたらす。これらのデータは、例えば、異なるキメラタンパク質上のFcドメイン間の、ジスルフィド結合が、キメラタンパク質を安定化しかつ、それらがより高次のタンパク質/コンカテマーとしてではなく、六量体としてそれぞれ存在することを保証することを示す。言い換えれば、Fcドメインは驚くべきことに、キメラタンパク質複合体に秩序をもたらす。レーン1~4はそれぞれ、PD1-NoFc-OX40Lを7.5μg、PD1-NoFc-OX40Lを10μg、PD1-NoFc-OX40Lを2.5μg、及びPD1-NoFc-OX40Lを5μg含む。
【0217】
図19に示すのは、上記のデータをまとめ、本発明のキメラタンパク質から六量体及びコンカテマーが形成される方法を示すモデルである。例示的なキメラタンパク質(PD1-Fc-OX40L)は、自然に六量体を形成する(OX40Lドメイン間の静電相互作用とFcドメインによる二量体化による)。しかしながら、PD1-Fc-OX40Lタンパク質について還元条件下で、Fcドメイン間のジスルフィド結合の制御効果が存在せず、かつPD1-NoFc-OX40L中にFcドメインが存在しないために、これらの後者のキメラタンパク質はコンカテマーを形成する。
【0218】
さらに、Fcドメイン(本明細書に記載の)がフィコリン(キメラタンパク質間のジスルフィド結合に必要なシステイン残基を欠く)と置換されたキメラタンパク質を構築した。Fcを含まないキメラタンパク質及びFcを含みネイティブPAGEで還元剤の存在下で泳動したキメラタンパク質(両方ともゲル中に移動しない凝集体を形成した)と同様に、フィコリンを含むキメラタンパク質もまた、高次格子を形成するように見え、ゲル中に移動しなかった。これらのデータは、ジスルフィド結合が本発明のキメラタンパク質の適切な折りたたみ及び機能にとって重要であるという結論を強化する。
【0219】
最後に、キメラタンパク質を、コイル状Fcドメイン(CCDFc)を用いて調製した。機能評価において、ほとんどの精製タンパク質は送達されなかった。
【0220】
したがって、キメラタンパク質のリンカー中にFcドメインを含めること(これはキメラタンパク質間のジスルフィド結合を形成できる)は、不溶性で、おそらく非機能的なタンパク質コンカテマー及び/又は凝集体の形成を回避するのに役立つ。
【0221】
実施例15:他のII型タンパク質の細胞外ドメインを含む追加のCSF1R含有キメラタンパク質の生成
この実施例で、本発明の追加のキメラタンパク質を記載する。このような追加のキメラタンパク質を、CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質の作製方法と同様に、例えば、詳細な説明で上に記載されるように、かつ内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第62/464,002号のように作製した。
【0222】
これらの追加のキメラタンパク質は、一般式:ECD 1-結合リンカー1-Fcドメイン-結合リンカー2-ECD 2を有し、式中、ECD 1はCSF1Rの細胞外ドメインであり、ECD 2は、CD40L以外のII型タンパク質の細胞外ドメインである。例示的なII型タンパク質は、4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILを含む。これらのキメラタンパク質は、結合リンカーの一方又は両方を欠く場合がある。
【0223】
これらのキメラタンパク質は、結合リンカーの一方又は両方を欠く場合がある。例示的な結合リンカー1、Fcドメイン、及び結合リンカー2は、上の表1に記載されている。キメラタンパク質を形成するのに有用で、かつ特異的結合リンカー1、Fcドメイン、及び結合リンカー2を含むモジュラーリンカーを、図20に示す。
【0224】
或いは、追加のキメラタンパク質は、一般式:N末端 -(a)-(b)-(c)-C末端(式中、(a)はCSF1Rであり、(b)はFcドメインの少なくとも一部を含むリンカーであり、(c)はCD40L以外のII型タンパク質の細胞外ドメインである)を有する融合タンパク質である。例示的なII型タンパク質は、4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILを含む。
【0225】
4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号9、11、13、15、17、6、21、及び23を含む。4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILの細胞外ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号10、12、14、16、18、7、22、及び24を含む。CSF1Rのアミノ酸配列は配列番号1を含み、CSF1Rの細胞外ドメインは配列番号2を含む。キメラタンパク質は、上記配列の変異体、例えば、上記の配列と少なくとも約95%の同一性を含み得る。
【0226】
例示的なリンカーを上の表1に記載する。キメラタンパク質を形成するのに有用で、特定の結合リンカー1、Fcドメイン、及び結合リンカー2を含むモジュラーリンカーを図20に示す。
【0227】
したがって、本発明は、以下の追加のキメラタンパク質及び追加のキメラタンパク質を用いる方法(例えば、癌の治療及び/又は炎症性疾患の治療において)をさらに含む:CSF1R-Fc-4-1BBL、CSF1R-Fc-CD30L、CSF1R-Fc-FasL、CSF1R-Fc-GITRL、CSF1R-Fc-LIGHT、CSF1R-Fc-OX40L、CSF1R-Fc-TL1A、及びCSF1R-Fc-TRAIL。
【0228】
追加のキメラタンパク質を、CSF1R-Fc-CD40Lを特徴付けるのに必要というよりむしろ追加のキメラタンパク質に特異的である試薬(例えば、結合パートナー、組換え標的細胞、及び癌細胞型/腫瘍型)と共にであるが、実施例1~13の中のCSF1R-Fc-CD40Lについて上記のように特徴付ける。そのため、例としてCSF1R-Fc-4-1BBLを用いて、実施例2と同様のCSF1R-Fc-4-1BBLの特徴付けを、CSF1R-Fc-CD40Lに必要な抗CSF1R、抗Fc、及び抗CD40L抗体よりむしろ抗CSF1R、抗Fc、及び抗4-1BBL抗体を用いて行うことができる。
【0229】
CSF1R-Fc-CD40Lキメラタンパク質でのように、追加のキメラタンパク質は、4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILの1つの受容体/リガンドの活性化を介してCSF1Rを遮断すること(これは免疫阻害性シグナル伝達を阻害する)かつ免疫刺激シグナルの伝達を増強する、増加する、及び/若しくは刺激することによる癌の治療並びに/又は炎症性疾患の治療において有効である。さらに、追加のキメラタンパク質は、複数の抗体、例えば、CSF1又はIL-34ブロッキング抗体及び4-1BBL、CD30L、FasL、GITRL、LIGHT、OX40L、TL1A、及びTRAILの1つの受容体/リガンドに対するアゴニスト抗体を含む治療から生じる毒性なしに、癌及び/又は炎症性疾患を治療するのに有効である。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
<1> (a)CSF1Rリガンドを結合できるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の一部を含む第1ドメイン、
(b)CD40L受容体を結合できるCD40リガンド(CD40L)の一部を含む第2ドメイン、及び
(c)前記第1ドメインと前記第2ドメインを連結するリンカー
を含む異種キメラタンパク質。
<2> 前記第1ドメインが、前記CSF1Rの細胞外ドメインの実質的に全てを含みかつ前記第2ドメインが、前記CD40Lの細胞外ドメインの実質的に全てを含む、<1>に記載の異種キメラタンパク質。
<3> 前記キメラタンパク質が、免疫抑制シグナルを阻害できる、<1>又は<2>に記載の異種キメラタンパク質。
<4> 前記キメラタンパク質が、
(a)前記CSF1Rの一部がそのリガンドに結合した時に免疫阻害シグナルを低減若しくは排除できかつ/又は
(b)前記CD40Lの一部がその受容体に結合した時に免疫刺激シグナルを増加若しくは活性化できる、
<1>~<3>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<5> 前記CSF1Rリガンドが、CSF1又はIL-34である、<1>~<4>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<6> 前記CD40L受容体が、CD40である、<1>~<5>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<7> 前記キメラタンパク質が、前記CSF1Rリガンド及び前記CD40L受容体を同時に結合でき、前記CSF1Rリガンドが、CSF1又はIL-34でありかつ前記CD40L受容体が、CD40である、<1>~<6>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<8> 前記キメラタンパク質が、インビトロで組換えヒトCD40及びヒトCSF1を同時に結合できる、<1>~<7>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<9> 前記キメラタンパク質が、必要に応じて血清中で、CSF1及び/又はIL-34を枯渇させる、<1>~<8>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<10> 前記キメラタンパク質が、CD40アゴニスト抗体及び/又はCSF1R拮抗抗体と比較して高められた安全性プロファイル及び/又は低減された毒性プロファイルを示す、<1>~<9>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<11> 前記キメラタンパク質が、CD40アゴニスト抗体及び/又はCSF1R拮抗抗体と比較して増強された抗腫瘍効果を示す、<1>~<10>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<12> 前記キメラタンパク質が、CD4+及び/又はCD8+T細胞のサブ集団の低下を増加させること又は防止することができる、<1>~<11>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<13> 前記キメラタンパク質が、T細胞による腫瘍殺傷活性を増強できる、<1>~<12>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<14> 前記キメラタンパク質が、持続的な免疫調節効果を提供できる、<1>~<13>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<15> 前記キメラタンパク質が、抗原提示細胞の活性化を引き起こすことができる、<1>~<14>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<16> 前記キメラタンパク質が、抗原を提示する抗原提示細胞の能力を増強できる、<1>~<15>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<17> 前記キメラタンパク質が、腫瘍を保護する細胞とは反対に腫瘍を死滅させることができる細胞に有利に免疫細胞の比をシフトさせる、<1>~<16>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<18> 前記腫瘍を死滅させることができる細胞が、T細胞、細胞傷害性Tリンパ球、Tヘルパー細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、抗腫瘍マクロファージ(例えば、M1マクロファージ)、B細胞、及び樹状細胞から選択され、腫瘍を保護する細胞が、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)、腫瘍関連好中球(TAN)、M2マクロファージ、及び腫瘍関連マクロファージ(TAM))から選択される、<17>に記載の異種キメラタンパク質。
<19> 前記キメラタンパク質が、抗腫瘍マクロファージ及び抗原提示細胞を刺激し、一方でCSF1及び/又はIL-34の阻害によるMDSCの誘導を回避する、<18>に記載の異種キメラタンパク質。
<20> 前記キメラタンパク質が、制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増加させる、<1>~<19>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<21> 前記キメラタンパク質が、免疫阻害シグナルの持続的なマスキング効果を提供する、<1>~<20>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<22> 前記キメラタンパク質が、前記キメラタンパク質の血清t 1/2 と比較してより長いオンターゲット(例えば、腫瘍内)の半減期(t 1/2 )を提供する、<1>~<21>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<23> 前記キメラタンパク質が、CSF1R及びCD40に対する抗体での治療と比較して毒性を低減する、<1>~<22>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<24> 前記リンカーが、柔軟なアミノ酸配列、IgGヒンジ領域、又は抗体配列から選択されるポリペプチドである、<1>~<23>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<25> 前記リンカーが、IgG4由来のヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを含む、<24>に記載の異種キメラタンパク質。
<26>
前記ヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインが、ヒトIgG4由来である、<25>に記載の異種キメラタンパク質。
<27> 前記キメラタンパク質が、分泌可能で機能的な単一ポリペプチド鎖として哺乳動物宿主細胞により発現される、<1>~<26>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<28> 前記CSF1Rの一部が、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、<1>~<27>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<29> 前記CD40Lの一部が、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である、<1>~<28>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<30> 前記リンカーが、配列番号25、配列番号26、又は配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、<1>~<29>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<31> 前記リンカーが、配列番号28~74から独立して選択される、1以上の結合リンカーを含む、<1>~<30>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<32> 前記リンカーが、配列番号28~74からそれぞれ独立して選択される2以上の結合リンカーを含み、1つの結合リンカーが、ヒンジ-CH2-CH3-Fc ドメインに対しN末端でありかつ別の結合リンカーが、ヒンジ-CH2-CH3-Fc ドメインに対しC末端である、<31>に記載の異種キメラタンパク質。
<33> 前記キメラタンパク質が、組換え融合タンパク質である、<1>~<32>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<34> 前記キメラタンパク質が、細胞間で安定なシナプスを形成できる、<1>~<33>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<35> 前記細胞間で安定なシナプスが、腫瘍縮小に有利である空間的配向を提供する、<34>に記載の異種キメラタンパク質。
<36> 前記空間的配向が、腫瘍細胞を攻撃するようT細胞を位置づけかつ/又は本発明のキメラタンパク質によってマスクされるもの以外の負のシグナルを含む、負のシグナルの送達から腫瘍細胞を立体的に防ぐ、<34>又は<35>に記載の異種キメラタンパク質。
<37> そのそれぞれの結合パートナーへの細胞外ドメインのいずれか又は両方の結合が、受容体とそのリガンドの長い相互作用を提供する遅いオフ速度(K off )で生じる、<1>~<36>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<38> 前記長い相互作用が、より長い正のシグナル効果を送達する、<37>に記載の異種キメラタンパク質。
<39> 前記より長い正のシグナル効果が、抗腫瘍効果のためにエフェクター細胞が十分に刺激されることを可能にする、<38>に記載の異種キメラタンパク質。
<40> 前記長い相互作用が、T細胞増殖を提供しかつ抗腫瘍攻撃を可能にする、<37>~<39>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<41> 前記長い相互作用が、刺激シグナルの放出を提供するのに十分なシグナル伝達を可能に
する、<37>~<40>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質。
<42> 前記刺激シグナルが、サイトカインである、<41>に記載の異種キメラタンパク質。
<43> <1>~<42>のいずれか一項に記載の異種キメラタンパク質をコードする核酸を含む、発現ベクター。
<44> <43>に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
<45> <1>~<42>のいずれか一項に記載の治療有効量の異種キメラタンパク質を含む、医薬組成物。
<46> 癌又は炎症性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に<45>に記載の有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法。
<47> 患者の免疫応答を調節する方法であって、それを必要とする対象に<45>に記載の有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法。
<48> 前記患者のT細胞が、活性化される、<46>又は<47>に記載の方法。
<49> 前記患者が、腫瘍を有しかつ1以上の腫瘍細胞が、免疫抑制シグナルを伝達することを防止される、<46>又は<47>に記載の方法。
<50> それを必要とする対象に有効量の医薬組成物を投与することを含む癌又は炎症性疾患を治療するための方法であって、前記医薬組成物が、
(a)CSF1Rリガンドを結合できるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の一部を含む第1ドメイン、
(b)CD40L受容体を結合できるCD-40リガンド(CD40L)の一部を含む第2ドメイン、及び
(c)前記第1のドメインと前記第2のドメインを連結するリンカー、
を含む異種キメラタンパク質を含む、方法。
<51> 前記対象のT細胞が、前記異種キメラタンパク質の第2のドメインにより結合される時に活性化されかつ、
(a)1以上の腫瘍細胞が前記異種キメラタンパク質の前記第1のドメインにより結合される時に免疫抑制シグナルを伝達することを防止され、
(b)前記対象の末梢血中の定量化可能なサイトカイン応答が達成され、かつ/又は
(c)腫瘍成長がCD40ブロッキング抗体、及び/若しくはCSF1若しくはIL-34ブロッキング抗体で治療された対象と比較してそれを必要とする対象において低下される、
<50>に記載の方法。
<52> 前記方法が、CSF1Rシグナル伝達を阻害しかつ抑制性骨髄細胞集団を阻害する、<50>又は<51>に記載の方法。
<53> 前記方法が、CD40シグナル伝達を刺激しかつ抗原提示細胞を活性化する、<50>~<52>のいずれか一項に記載の方法。
<54> 前記方法が、未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする対象と比較して腫瘍関連マクロファージ(TAM)の量又は活性を低下させる、<50>~<53>のいずれか一項に記載の方法。
<55> 前記方法が、未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする対象と比較して腫瘍微小環境(TME)において腫瘍関連マクロファージ(TAM)の量又は活性を低下させる、<50>~<54>のいずれか一項に記載の方法。
<56> 前記方法が、未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする対象と比較して制御性T細胞(Treg)の量又は活性を低下させる、<50>~<55>のいずれか一項に記載の方法。
<57> 前記方法が、未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする対象と比較してIL-10及び/又はIL-4の量又は活性を低下させる、<50>~<56>のいずれか一項に記載の方法。
<58> 前記方法が、未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする対象と比較して炎症促進性マクロファージ及び樹状細胞の成熟並びに分化を増加させる、<50>~<57>のいずれか一項に記載の方法。
<59> 前記方法が、未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする対象と比較して前記対象の流入領域リンパ節においてエフェクターT細胞のプライミングを増加させる、<50>~<58>のいずれか一項に記載の方法。
<60> 前記方法が、未治療の対象又はCD40/CD40L及びCSF1/CSF1Rの一方を標的とする対象と比較して免疫抑制細胞の全体的な減少及びより炎症性の腫瘍環境へのシフトを引き起こす、<50>~<59>のいずれか一項に記載の方法。
<61> 医薬としての使用のための<1>~<42>のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
<62> 癌の治療での使用のための<1>~<42>のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
<63> 炎症性疾患の治療での使用のための<1>~<42>のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
<64> 薬剤の製造における<1>~<42>のいずれか一項に記載のキメラタンパク質の使用。
<65> N末端-(a)-(b)-(c)-C末端の一般構造を含み、式中、
(a)が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%同一でありかつCSF1Rリガンドを結合できるCSF1Rの細胞外ドメインを含む第1のドメインであり、
(b)が、前記第1のドメイン及び前記第2のドメインを連結しかつヒトIgG4に由来するヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを含むリンカーであり、かつ必要に応じて配列番号28~74からの結合リンカー配列であり、並びに
(c)が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%同一でありかつCD40L受容体を結合できるCD40リガンド(CD40L)の細胞外ドメインを含む第2のドメインである、
組換え融合タンパク質。
<66> 前記リンカーが、配列番号25、配列番号26、又は配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である配列を含む、<65>に記載の組換え融合タンパク質。
<67> 医薬としての使用のための、<65>又は<66>に記載の組換え融合タンパク質。
<68> 癌の治療での使用のための、<65>~<67>のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
<69> 炎症性疾患の治療での使用のための、<65>~<68>のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
<70> 薬剤の製造における<65>~<69>のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質の使用。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
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