(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】流体殺菌装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
A61L2/10
(21)【出願番号】P 2019565236
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(86)【国際出願番号】 CA2018050616
(87)【国際公開番号】W WO2018213936
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518112077
【氏名又は名称】アキューバ、テクノロジーズ、インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ACUVA TECHNOLOGIES INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】505093792
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF BRITISH COLUMBIA
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】アシュカン、ババイエ
(72)【発明者】
【氏名】ババク、アデリ-コウデヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファリボルツ、タギプール
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特許第6080937(JP,B1)
【文献】特表2016-511138(JP,A)
【文献】特表2008-503347(JP,A)
【文献】特開2017-051289(JP,A)
【文献】特表2005-525232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00 - 2/28
A61L 11/00 - 12/14
A61L 9/00 - 9/22
C02F 1/20 - 1/26
C02F 1/30 - 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口と、反射チャンバと、前記反射チャンバからの出口とを含む本体と、
前記本体内の流体チャネルと、
前記反射チャンバ内に殺菌放射線を前記軸に実質的に平行な方向に出力するように配置された放射線源と、
を備える流体殺菌装置であって、
前記入口は、流体を受容するように前記本体を通過して延び、
前記反射チャンバは、前記本体の軸に沿って延び、前記軸は、前記本体の第1端部と前記本体の第2端部との間で延び、且つ前記本体の前記第1端部と前記第2端部との間に配置され、
前記出口は、前記流体を前記反射チャンバから及び前記本体から排出するように配置され
前記流体チャネルは、第1速度で前記入口からの流体を受け入れたとき、前記入口からの流体を、前記軸に沿って前記反射チャンバ内への方向で且つ前記第1速度より遅い第2速度で前記反射チャンバ内に導入するように、前記入口からの流体を前記反射チャンバに導入するようになっており、
前記放射線源は、前記本体の前記第2端部の隣に配置され、
前記流体チャネルは、少なくとも部分的に前記反射チャンバを囲む
流体殺菌装置。
【請求項2】
前記入口の少なくとも開口部は、前記軸に対して略横方向に延びる、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記出口の少なくとも開口部は、前記軸と同軸である、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記放射線源は前記軸と同軸であることにより、殺菌放射線の一部が前記流体とともに前記出口から排出される、
請求項2又3に記載の装置。
【請求項5】
前記排出された殺菌放射線の一部は、前記装置の下流において前記流体を更に殺菌する、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記出口は、前記第1端部を通過して延びる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記入口は、前記第1端部に隣接する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記反射チャンバの内面は、紫外線反射材料を含む、
請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記紫外線反射材料は、前記放射線源が前記反射チャンバに前記殺菌放射線を出力するときに、前記殺菌放射線を拡散して反射する、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記紫外線反射材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTET)、アルミニウム、又はその両方を含む、
請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記反射チャンバは、長さ及び直径を有し、
前記直径で割った前記長さは、およそ0.5乃至およそ2に等しい、
請求項1乃至10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記直径で割った前記長さは、およそ0.5乃至およそ3に等しい、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記放射線源は、単数又は複数の点光源を含み、
前記光源は、殺菌放射線を、全体的に前記軸と平行な方向において放出する、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記放射線源は、紫外線LEDである、
請求項1乃至13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記流体チャネルは、前記入口の断面を通して前記入口からの前記流体を受け入れるように配置され、前記入口の前記断面は、第1の断面領域を有し、
前記流体チャネルは、前記反射チャンバの断面を通して前記反射チャンバに前記流体を導入するように配置され、前記反射チャンバの前記断面は、第2の断面領域を有し、
前記流体チャネルが前記反射チャンバに前記入口からの前記流体を導入するとき、前記第2速度が前記第1速度よりも小さくなるように、前記第2の断面領域が前記第1の断面領域よりも大きくなっている、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記流体チャネルが前記反射チャンバに前記入口からの前記流体を導入するとき、前記第2速度が前記第1速度の50%よりも小さくなるように、前記第1の断面領域が前記第2の断面領域の50%よりも小さくなっている、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記流体チャネルが前記反射チャンバに前記入口からの前記流体を導入するとき、前記流体チャネルは、前記流体が前記殺菌放射線に晒される前に、前記流体を前記第1速度から前記第2速度に移行させる、
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記反射チャンバは、前記本体における前記軸に沿って延びる内部構造体によって区画され、前記流体チャネルは、前記内部構造体の外側での相互接続形状又は容積部であり、前記反射チャンバは、前記内部構造体の内側での第2の相互接続形状又は容積部である、
請求項1乃至17に記載の装置。
【請求項19】
前記内部構造体は、前記流体が前記殺菌放射線に晒される前に、前記流体を前記第1速度から前記第2速度に移行させる、
請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記放射線源は、前記反射チャンバ内および前記出口に向けて前記殺菌放射線を出力するように配置される、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記出口は、前記反射チャンバの端部を通して延びる、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体殺菌装置及び方法に関する。特定の態様には、紫外線(「UV」)光反応器を含む。
【背景技術】
【0002】
空気や水等の流体を、微生物を殺し且つ有機汚染物質を分解するように、一定放射線量の殺菌放射線で露光する場合がある。例えば、流体がチャンバ内に導かれ、紫外線がチャンバ内の紫外線LED等の点光源や同様の放射線源から出力され得る。放射線量は、流体が殺菌放射線で露光されるエネルギー量(「Q」(mJ/cm2))として定義され、放射照度「I」(mW/cm2)に流体滞留時間「ι」(s)を乗じた積として算出される。放射線量Qのアスペクトは調整され得る。例えば、紫外線放射照度を増加させることで紫外線の放射線量Qを得るように、より強力な紫外線の点光源を使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様は、例示的な流体殺菌装置である。本装置は、入口と、反射チャンバと出口と、を含む本体を備え得る。入口は、第1速度の流体を受容するように本体を通過して延び、反射チャンバは、本体の軸に沿って延び、出口は、流体を本体から排出するように、反射チャンバの端部を通過して延びる。装置は、本体内の流体チャネルであって、入口からの流体を反射チャンバ内に導入する流体チャネルを備え得る。例えば、流体は、反射チャンバ内に、流体チャネルによって、第1速度より遅い第2速度で導入され得る。また、装置は、反射チャンバ内に殺菌放射線を出口に向けて出力するように配置された放射線源を備え得る。例えば、源は紫外線LEDであり得る。
【0004】
入口は、全体的に軸に対して横方向であり得る。出口は、全体的に軸と平行であり得る。或る態様において、出口は軸と同軸であり得る。放射線源は、軸と同軸であり得る。これにより、殺菌放射線の一部が流体とともに出口から排出される。例えば、排出された放射線の一部が、装置の下流において流体を更に殺菌し得る。軸を横切る反射チャンバの断面は、円形であり得る。本体及び反射チャンバは、軸に沿って類似の形状部又は容積部を含み得る。任意の形状部又は容積部が使用され得る。例えば、類似の形状部又は容積部は、円筒状、円錐状、多角形、ピラミッド状、球状、又はプリズム状であり得る。
【0005】
反射チャンバ及び放射線源の寸法は、殺菌放射線が反射チャンバ内の全体にくまなく分布するように構成され得る。例えば、反射チャンバは、長さ及び直径を有し得る;直径で割った長さは、およそ0.5乃至およそ2、又はおよそ0.5乃至およそ3に等しくてもよい。或る態様において、軸は、本体の第1端部と本体の第2端部との間で延び得る;放射線源は、第1端部に配置され得る;反射チャンバは、第1端部と第2端部との間に配置され得る;出口は、第1端部を通過して延び得る;入口は第1端部に隣接し得る。
【0006】
反射チャンバの内面は、紫外線反射材料を含み得る。紫外線反射材料を含む任意のタイプの反射材料が使用され得る。例えば、流体チャネルは、少なくとも部分的に反射チャンバを包囲し得る;反射チャンバは、軸に沿って本体内で延びる内部構造体により規定され得る。別の例として、放射線源は、単数又は複数の点光源を含み得る;単数又は複数の点光源は、殺菌放射線を、全体的に軸と平行な方向において放出し得る。
【0007】
装置は、放射線源と反射チャンバとの間に配置された窓を備え得る。殺菌放射線は、窓を通過し得る。また、窓は、放射線源を流体からシールし得る。例えば、殺菌放射線は、およそ200nm乃至およそ320nmの波長を有し得る;又は、およそ230nm乃至およそ300nmのピーク波長を有し得る。放射線源は、紫外線LEDであり得るとともに、レンズ等の種々の光学部品を含み得る。
【0008】
本開示の別の態様は、例示的な流体殺菌方法である。本方法は、本体の入口からの第1速度の第1流体を、第1速度より遅い第2速度で反射チャンバ内に導入するステップと、反射チャンバ内に出口に向けて出力された殺菌放射線で、流体を露光するステップと、反射チャンバの端部を貫通して延びる出口を介して、流体を本体から排出するステップと、を備え得る。或る態様において、第2速度は、第1速度の50%未満であり得る。
【0009】
本体は、流体チャネルを備え得る;流体を導入するステップは、流体を流体チャネルを介して導入するステップを備え得る。反射チャンバは、長さ及び直径を有し得る;直径で割った長さは、およそ0.5乃至およそ2、又はおよそ0.5乃至およそ3に等しくてもよい。入口及び出口は、本体の一端部に配置され得る;流体を導入するステップは、入口からの流体を軸に沿った第1方向において導くステップと、流体を軸に沿った第2方向において反射チャンバに導くステップと、を備え得る;第1方向は、第2方向と異なる。例えば、流体を導入するステップは、流体を第1方向から第2方向に導くステップを備え得る。別の例として、流体を流体チャネルを介して導入するステップは、流体が少なくとも部分的に反射チャンバを包囲するようにさせるステップも備え得る。例えば、流体は、本体の内面と反射チャンバの外面との間に導入され得る。
【0010】
流体を殺菌放射線で露光するステップは、本体に配置された放射線源から殺菌放射線を出力するステップを備え得る。例えば、本方法は、流体を流体チャネルから反射チャンバ内へ方向転換させるステップであって、本体の内面が放射線源に隣接して配置されるステップを備え得る。本方法は、殺菌放射線を出口に向けて、例えば放射線源の単数又は複数の点光源から出力するステップを備え得る。入口は、全体的に出口に対して横方向であり得る。また、本方法は、殺菌放射線の少なくとも一部を流体とともに出口から排出するステップも備え得る。また、本方法は、殺菌放射線を反射チャンバの反射面で反射させるステップを備え得る。或る態様において、流体を殺菌放射線で露光するステップは、放射線源と反射チャンバとの間に配置された窓を介して、殺菌放射線を出力するステップを備え得る。例えば、殺菌放射線は、およそ200nm乃至およそ320nm、又はおよそ230nm乃至およそ300nmの波長を有し得る。これにより、流体を殺菌放射線で露光するステップは、紫外線を出力するステップを備え得る。
【0011】
本開示の更に別の態様は、別の流体殺菌装置である。本装置は、入口と反射手段と出口とを含む本体を備え得る。入口は、第1速度の流体を受容するように本体を通過して延び、反射手段は、本体の軸に沿って延び、出口は、流体を本体から排出するように、反射手段の端部を通過して延びる。装置は、本体内の流れ手段であって、流体を入口から反射手段内に導入する流れ手段を備え得る。流体は、流れ手段によって、第1速度より遅い第2速度で反射手段内に導入され得る。また、装置は、反射手段内に殺菌放射線を出口に向けて出力するための放射線手段を備え得る。
【0012】
入口は、全体的に軸に対して横方向であり得る。出口は、全体的に軸と平行であり得る。或る態様において、出口は軸と同軸であり得る;放射線手段は、軸と同軸であり得る。これにより、殺菌放射線の一部が流体とともに出口から排出される。例えば、排出された放射線の一部が、装置の下流において流体を更に殺菌し得る。軸を横切る反射手段の断面は、円形であり得る。本体及び反射手段は、軸に沿って類似の形状部又は容積部を含み得る。任意の形状部又は容積部が使用され得る。例えば、類似の形状部又は容積部は、円筒状、円錐状、多角形、ピラミッド状、球状、又はプリズム状であり得る。
【0013】
反射手段及び放射線手段の寸法は、殺菌放射線が反射手段内の全体にくまなく分布するように構成され得る。例えば、反射手段は、長さ及び直径を有し得る;直径で割った長さは、およそ0.5乃至およそ2、又はおよそ0.5乃至およそ3に等しくてもよい。或る態様において、軸は、本体の第1端部と本体の第2端部との間で延び得る;放射線手段は、第1端部に配置され得る;反射手段は、第1端部と第2端部との間に配置され得る;出口は、第1端部を通過して延び得る;入口は第1端部に隣接し得る。
【0014】
反射手段の内面は、紫外線反射材料を含み得る。紫外線反射材料を含む任意のタイプの反射材料が使用され得る。例えば、流れ手段は、少なくとも部分的に反射手段を包囲し得る;反射手段は、軸に沿って本体内で延びる内部構造体により規定され得る。別の例として、放射線手段は、単数又は複数の点光源を含み得る;単数又は複数の点光源は、殺菌放射線を、全体的に軸と平行な方向において放出し得る。
【0015】
また、装置は、放射線手段と反射手段との間に配置された塚手段を備え得る。殺菌放射線は、透過手段を通過する。そして、透過手段は、放射線手段を流体からシールし得る。例えば、殺菌放射線は、およそ200nm乃至およそ320nmの波長を有し得る;又は、およそ230nm乃至およそ300nmのピーク波長を有し得る。放射線手段は、紫外線LEDを備え得るとともに、レンズ等の光学手段を備え得る。
【0016】
本開示の更に別の態様は、別の流体殺菌装置である。本装置は、本体に取り付けられたキャップと、流体を受容するように本体を通過して延びる入口と、本体の軸に沿って延びる反射チャンバと、流体を本体から排出するように反射チャンバを通過して延びる出口と、を備え得る。キャップは、放射線源を備え得る。放射線源は、キャップが本体に取り付けられると、反射チャンバ内に殺菌放射線を出口に向けて出力するように配置される。本体及び/又はキャップは、熱伝導性材料から構成される。例えば、キャップが本体及び放射線源に熱的に連結されることにより、源からの熱がキャップを介して本体に伝達され得る。別の例として、本体及び/又はキャップは、流体に熱的に(例えば、接触することで)連結され得ることにより、熱の少なくとも一部が流体に伝達されて放射線源が冷却され得る。
【0017】
関連するキット及びシステムの態様も開示される。上述の概要及び下記の詳細な説明は、両者とも例示的且つ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0018】
本明細書に組み込まれるとともにその一部を構成する添付図面は、詳細な説明とともに本開示の原理を説明する助けとなる例示的な態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図8】例示的な絶対インコヒーレント放射照度を示す図。
【
図15】他の例示的な絶対インコヒーレント放射照度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示的な流体殺菌装置及び方法を参照して、本開示の態様を説明する。反射チャンバと、流体を反射チャンバ内に導入する流体チャネルと、放射線量Q(mJ/cm2)の殺菌放射線を反射チャンバに出力する放射線源とを備える本体を参照して、いくつかの態様を説明する。放射線量Qは、放射照度「I」(mW/cm2)に流体滞留時間「ι」(s)を乗じた積(「式1」)として算出され得る。例えば、反射チャンバ及び流体チャネルは、本体において相互接続容積部を含み得る。放射線源は、紫外線LED等の紫外線点光源であり得る。殺菌放射線は、紫外線を含み得る。これらの例は便宜上提供されたものであり、特に断りのない限り本開示を限定することを意図するものではない。したがって、本開示において説明される概念は、任意のタイプの殺菌放射線を使用する類似の装置又は方法において利用され得る。
【0021】
多数の軸が記述される。特に、X‐X軸、Y‐Y軸、及びZ‐Z軸を含む3つの方向軸のセットが記述され得る。各軸は、次の軸に対して横方向であり、座標系を確立し得る。「横方向」という用語は、横になっている、又は横切っている、斜めになっている、又は或る軸に対して直角であることを意味し、垂直又は非垂直配置を含む。「長手方向」という用語は、相対的な部品や特徴を説明するために使用され得る。例えば、長手方向とは、第2寸法すなわち幅に対して、これより長い第1寸法すなわち長さを有する物体について参照され得る。これらの方向を指す用語は、便宜上提供されるものであり、特に断りのない限り本開示を限定することを意図するものではない。
【0022】
本明細書で使用する、「備える」、「備えている」という用語、又はその他の変形例は、非網羅的な包含をカバーすることが意図されている。すなわち、一連の要素を備える装置、方法、又はその要素は、それら以外の要素を含まないばかりでなく、明示的に挙げられていないか、本装置や方法に固有の他の要素をも含み得る。特に明記しない限り、「例示的」という用語は、「理想的」ではなく「例としての」という意味で使用される。本開示において、「およそ」及び「全体的に」を含む種々の近似を意味する用語が使用される。およそとは、記載された数値のプラス又はマイナス10%内を意味する。
【0023】
例示的な殺菌装置10の態様について説明する。
図1に示すように、殺菌装置10は、放射線源90と動作可能な流体力学的及び光学的な態様を備えることにより、最適放射線量Qの殺菌放射線を第1流体F
1に送り得る。装置10の多数の流体力学的及び光学的アスペクトを、
図1に示す軸Y‐Yに沿って延びる例示的な本体20を参照して説明する。図示のように、本体20は、流体チャンバ40への入口30と、キャップ50と、流体チャンバ40内の反射チャンバ70と、チャンバ70からの出口80と、を備え得る。
【0024】
入口30は、第1流体F
1が投入されるように、本体20の任意の部分を通って延び得る。
図1に示すように、入口30は、本体20から外方に軸X‐Xに沿って延びる入口構造体32と、軸X‐Xに沿って本体20を通過して延びて流体チャンバ40と連通する管腔34と、を備え得る。例えば、第1流体F
1が、入口構造体32と係合可能な第1ホース又はチューブから、管腔34に投入され得る。
【0025】
流体チャンバ40は、単数又は複数の内部形状部又は容積部を備え得る。内部形状部容積部の少なくとも2つが相互接続し得る。
図2に示すように、例えば、内部構造体42が、流体チャンバ40内に配置されて、流体チャネル44及び反射チャンバ70を含む2つの相互接続された内部形状部又は容積部を規定し得る。例えば、流体チャネル44は、構造体42の外側の第1相互接続形状部又は容積部であり得る。また、反射チャンバ70は、構造体42の内側の第2相互接続形状部又は容積部であり得る。本例において、第1流体F
1は、(i)入口30を通って流入し得る、(ii)管腔34において本体20を通過し得る、(iii)流体チャネル44に流入し得る、(iv)チャネル44により反射チャンバ70内に導入され得る、(v)チャンバ70内で殺菌放射線で露光され得る、(v)第2流体F
2として出口80を通って流出し得る。殺菌放射線により、第2流体F
2は第1流体F
1と異なり得る。例えば、第1流体F
1は、第1の量の汚染物質(例えば、微生物及び有機汚染物質)を含有し得る。第2流体F
2は、第2の量の汚染物質(例えば、微生物及び有機汚染物質)を含有し得る。この第2の量は第1の量より少なくてもよく、これにより、流体F
2は流体F
1に対して殺菌されている。下記のように、第2流体F
2の他の特性、例えば速度や温度が、第1流体F
1と異なり得る。
【0026】
流体チャンバ40の単数又は複数の内部形状部又は容積部は、同一又は異なる断面を有し得る。円形、四角形、多角形等を含むあらゆる規則的又は不規則的な形状の領域が利用可能である、
図3に示すように、流体チャネル44及び反射チャンバ70は、軸Y‐Yと同軸の円形断面を有し得る。例えば、流体チャネル44は、管腔34に連通する第1端部と、反射チャンバ70に連通する第2端部との間において軸Y‐Yに沿って延びる開放円筒状容積部を備え得る。本例において、開放円筒状容積部は、(i)本体20の内面23と本体20内の内部隆起部43との間の軸Y‐Yに沿った距離と、(ii)本体20の内面28と構造体42の外面41との間の前記距離に沿った軸Y‐Yを中心とした断面と、により規定され得る。別の例として、流体チャネル44は、その第1端部と第2端部とを接続する導管を含み得る。この導管は、軸Y‐Yに沿って延び得る、軸Y‐Yを中心として内部構造体42を包囲し得る、又は流体チャンバ40内で他の経路を取り得る。
【0027】
流体チャネル44の第2端部は、第1流体F
1を反射チャンバ70内に導入するように構成され得る。例えば、チャネル44の第2端部は、第1流体F
1を、本体20の内面27に向けて導き得る。本体20は、流体F
1の向きを変えて、流体F
1が軸Y‐Yに向かい、内部構造体42を内部隆起部43において超えて反射チャンバ70内に導入されるように構成される。
図2に示すように、流体F
1を軸Y‐Yに向けてチャンバ70内に導入するように、内面27は軸Y‐Yを全体的に横切るように配置され得る。内面27は、湾曲部、凸部、突起等を含む、第1流体F
1の流れを導く及び/又は修正するように構成された任意の個数の特徴部を含み得る。
【0028】
キャップ50は、本体20の任意の部分に取り付けられ得るとともに、流体チャンバ40をシールするように構成され得る。
図2に示すように、キャップ50は、本体20の第1端部22に、接着剤、熱処理部、ねじ山等を含む任意のタイプのシール要素により取り付けられ得る。放射線源90は、キャップ50に取り付けられ得るとともに、流体チャンバ40内に殺菌放射線を出力するように構成され得る。例えば、源90は、キャップ50の下方の内部室54に装着された単数又は複数の点光源及び関連する電子部品を含み得る。点光源は、紫外線LEDを含み得る。また、殺菌放射線は、紫外線A波、紫外線B波及び紫外線C波の任意の組み合わせを含む紫外線放射線を含み得る。或る態様において、
図2に示すように、放射線源90及び内部室54は、軸Y‐Yと同軸であり得る。放射線源90は、殺菌放射線を反射チャンバ70内に出口80に向けて出力するように配置されることにより、放射線の一部がチャンバ70から出口80を介して第1流体F
1と共に排出される。例えば、このような配置により、単数又は複数の紫外線LEDが、反射チャンバ70に第1の放射線量Qの紫外線を照射するとともに、チャンバ70の下流に第2放射線量の紫外線を照射することができる。
【0029】
キャップ50又は本体20の第1端部22の少なくとも一方は、キャップ50の室54内の放射線源90をシールするように構成された窓56を備え得る。
図2に示すように室54は、キャップ50の下面に延び得る。また、窓56はこの下面に取り付けられ得る。例えば、窓56は、(i)キャップ50が第1端部22に取り付けられると放射線源90を内部室54内にシールする、及び(ii)殺菌放射線がチャンバ40内に入ることを許容する、ように構成された放射線透過材料から構成され得る。例えば、窓56は、紫外線を通過させるように構成された石英又は石英に類似した材料を含み得る。
【0030】
図1及び2に示すように、キャップ50は、熱伝導性材料(例えばアルミニウム)から構成され得る。また、キャップ50は、放射線源90を第1流体F
1で冷却するように構成され得る。例えば、キャップ50は、本体20に取り付けられた場合に、第1流体F
1及び放射線源90と伝導的に連通し得る。これにより、流体F
1の熱で放射線源90の点光源が冷却され得る。別の例として、キャップ50の熱伝導性材料が同様に本体20の熱伝導性部分に伝導的に連通し得る。これにより、本体20の全体又は一部が、更なるヒートシンクとなり得る。
【0031】
流体チャンバ40のいずれかの内面は、反射性であってもよい。例えば、反射チャンバ70の内面が、内部構造体42により規定され得る。そして、少なくとも当該表面が反射性材料から構成され得る、又は反射性材料で被覆され得る。
図2に示すように、例えば、チャンバ70の内面は、円筒形の表面領域を有し、流体チャンバ40の内側の少なくとも当該表面領域が反射性であり得る。紫外線反射材料を含むあらゆるタイプの反射材料が使用され得る。例えば、紫外線反射材料は、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、低密度PTFE、アルミニウム、及び高レベルの拡散反射率を提供するように構成されたテフロン又はテフロンに類似した材料のうちの1つ以上を含み得る。或る態様において、構造体42の内面は、半導体光触媒材料を含み得る。例えば、光触媒材料は、紫外線(例えば紫外線C波)により活性化され、有機化合物を分解するとともに、空気及び/又は水を媒介とする病原体を不活性化するように利用され得る。本体20の内面、及び/又は内部構造体42の外面41も反射性であり得る。或いは、内部構造体42は殺菌放射線を透過させ得る。また、本体20の少なくとも内面27は反射性であり得る。例えば、本体20は、アルミニウムから構成され得る、内面27は紫外線反射性材料で被覆され得る、内部構造体42は紫外線透過材料から構成され得る。
【0032】
或る態様において、入口30、流体チャネル44、反射チャンバ70、及び/又は出口80は、流体チャンバ40内で第1流体F1の流体力学性を更に調節するように構成されたバッフル等の混合要素を含み得る。また、追加の加熱要素(例えば電気コイル)も含まれ得る。例えば、混合要素及び/又は出口80は、第1流体F1を所望の使用温度まで加熱するように構成され得る。別の例として、内部構造体42の表面が、混合及び/又は加熱要素として構成され得る。
【0033】
出口80は、本体20の任意の部分を通過して延び、第2流体F
2を本体20から排出する。
図1に示すように、出口80は、軸Y‐Yに沿って本体20から外方に延びる出口構造体82と、軸Y‐Yに沿って本体20を通過して延びて第2流体F
2を本体20の内面23及び/又はチャンバ70を通過させて排出する管腔84と、を備え得る。例えば、第2流体F
2は、本体20を出て管腔84から排出され、出口構造体82と係合可能な第2ホース又はチューブに流入し得る。出口80の一部は、第1流体F
1の特性を変更するように使用され得る。
図2に示すように、例えば、管腔84は、軸Y‐Yに沿って一定の直径を有し得る。出口80は、任意選択的な絞り部86を有し得る。第1流体F
1が第2流体F
2として本体20から排出される前にその速度を変更する(例えば、わずかに増加させる)ように、絞り部86の直径は、軸Y‐Yに沿って変化する。
【0034】
図2に示すように、管腔84の少なくとも開口部が軸Y‐Yに対して同軸であり得ることにより、軸Y‐Yに沿って放射線源90と整列し得る。このように整列していることにより、殺菌放射線の大部分が反射チャンバ70から管腔84を通って第2流体F
2とともに排出され得ることで、装置10の下流において更なる殺菌が可能とされる。例えば、管腔84及び/又は第2ホース又はチューブの内面は、上記と同様の反射性材料から構成され得る、又は反射性材料で被覆され得る。同じく
図2に示すように、任意選択的な絞り部86は、管腔84より大きい開口部を有し、更に多くの殺菌放射線が排出され得る。
【0035】
図2に示すように、入口30は全体的に出口80に対して横方向であるため、流体チャネル44及び内部構造体42の相互接続容積部を使用して第1流体F
1の特性が変更され得る。例えば、入口構造体32の管腔34は、軸X‐Xに沿って延びる断面形状を有し得る。また、出口構造体82の管腔84は、軸Y‐Yに沿って延びる断面形状を有し得る。そして、軸X‐Xは、全体的に軸Y‐Yに対して横方向であり得る。
図3に示すように、管腔84及び/又は出口構造体82の断面形状は、軸Y‐Yと同軸であり得る。
図3に示す円形を含む任意の形状が利用され得る。特性には、第1流体F
1の速度が含まれ得る。例えば、流体チャンバ40は、第1流体F
1を入口30において第1速度で受容し、第1流体F
1を第1速度より遅い第2速度で反射チャンバ70内に導入するように構成され得る。少なくとも第1速度はジェット流速度であり得る。内部構造体42は、チャンバ70内で第1流体F
1を第2速度に移行させるように構成され得る。本例において、チャンバ70内での第1流体F
1の比較的遅い第2速度により、流体F
1の滞留時間が長くなり、最適放射線量Qの殺菌放射線を、本体20を通過する流体F
1に供給することが可能となる。
【0036】
或る態様において、殺菌装置10は、流体チャンバ70内又はその全体に亘る速度低下を実現するとともに、反射チャンバ70内の全体にくまなく殺菌光が分散するように構成される。これにより、殺菌装置10の全体に亘って、式(1)で表される最適放射線量Qが得られる。
【0037】
図6に、例示的なコンピュータによる流体力学(CFD)シミュレーションの結果を示す。図示のように、流体チャンバ40の上述の構成(例えば、内部構造体42を含む)により、入口30での第1流体F
1の第1速度が、反射チャンバ70の内部において、第1流体F
1より遅い第2速度へと大幅に低減され得る。これにより、殺菌の大部分が実施されるチャンバ70において、減速した速度分布が得られる。
【0038】
図7に示すように、放射線源90は、殺菌放射線を反射チャンバ70内に出力し得る。チャンバ70の少なくとも内面74が、放射線をチャンバ70内で反射することによりその有効性を最大とするように構成され得る。図示のように、放射線源90から殺菌放射線の一部が放出され、窓56を通過し、チャンバ70の内面74同士の間で反射する。反射チャンバ70の断面は、機能性に影響を及ぼすことなく変更可能である。例えば、図示の装置10は円形の形状を有しているが、
図7は、
図4の四角形の装置110、又は
図5の多角形の装置210にも同様に適用可能である。装置10の対応する要素と同様に、
図4の装置110は、入口130と、流体チャンバ140と、流体チャネル144と、反射チャンバ170と、出口180と、を備える。装置10の対応する要素と同様に、
図5の装置210は、入口230と、流体チャンバ240と、流体チャネル244と、反射チャンバ270と、出口280と、を備える。反射チャンバ70における殺菌放射線の例示的な放射照度分布を
図8に示す。図示のように、反射チャンバ70、170及び270のほぼ大部分において同様の放射照度が達成され得る。
【0039】
殺菌装置10の性能は、アスペクト比等の反射チャンバ70の寸法に関連し得る。
図2に示すように、アスペクト比「AR」は、軸Y‐Yに沿った反射チャンバ70の第1寸法すなわち長さ「L」を、軸X‐Xに沿った反射チャンバ70の第2寸法すなわち深さ「D」で割った商として定義され得る。例えば、反射チャンバ70が円形の断面形状を有する
図2及び3において、第2寸法すなわち深さDは、円形形状の直径であり得る。水力直径の定義を利用して、非円形の形状、例えば、
図4の四角形の反射チャンバ170や
図5の多角形の反射チャンバ270のARを決定することができる。ここで、ARは、4を形状の面積「A」及び断面「P」の濡れ外周で乗じた積に等しくてもよい。
【0040】
図8に示すように、反射チャンバ70のARは、チャンバ70の長さLに沿った電力保存に著しく影響を及ぼし得る。例えば、
図8に示すように、チャンバ70の容積を維持しながら、軸Y‐Yに沿ったチャンバ70の長さを延長すると、総紫外線出力が、長さLに沿って著しく減少し、特定の長さLを過ぎると供給される放射線量が最小になる。この最小の放射線量では殺菌に十分でない場合があるため、
図8は、例示的な幾何学的構成のARを最適化して反射チャンバ70内に供給される放射線量Qを最大化する利点も示す。
【0041】
反射チャンバ70の全体に亘る放射線量Qの例示的な平均分布を
図9に示す。
図9は、どのようにして、殺菌装置10の光学的及び流体力学的アスペクトが放射線量Qの最適な分布を実現するかを示す。
【0042】
次に、連続プロセス及びバッチプロセスを含む例示的なプロセスを参照して、殺菌装置10の追加態様を説明する。第1流体F1が本体20を連続的に通過する連続プロセスの場合、ARを反射チャンバ70の含む寸法は、チャンバ70内で流体F1の減速が達成されるように最適化され得る。或る態様において、1以上のARが利用され得る。
【0043】
第1流体F
1が同様に本体20を連続的に通過する他の連続プロセスの場合、反射チャンバ70の寸法が更に最適化されて、本体20での電力が節約され得るとともに、第1流体F
1に供給される放射線量Qが最大化され得る。例えば、チャンバ70の寸法は、殺菌放射線が本体20内の全体にくまなく提供されるように最適化され得る。本体20の特定の形状又は容積部について、例えば
図1‐3に示す円筒状の容積部の場合、本体20における電力損失を最小とするようにおよそ1のARが利用され得る。
【0044】
連続プロセスについて、
図7は、反射チャンバ70のARを最適化することでどのように放射照度が影響を受けるかを示す。また、
図8は、容積を一定にした場合に、ARの増加によりどのようにチャンバ70内で全出力が減少し得るかを示す。反射チャンバ70の或る容積について、0.5以下2以上のARを利用することで、チャンバ70を使用して本体20を通る放射線量Qを最大化させ得る。例えば、
図9は、反射チャンバ70の断面における放射線量Qの平均総分布を示す。
【0045】
これに対し、反射チャンバ70内に一時的に一定量の第1流体F1が貯蔵されるバッチプロセスでは、反射チャンバ70に沿ったより強い放射照度が望まれる場合、より低いARが利用され得る。例えば、放射線源90の出力を増加させる場合、1未満のARが利用され得る。
【0046】
次に、
図11に概念的に示す殺菌装置310、
図12に概念的に示す殺菌装置410、
図16に概念的に示す殺菌装置510、及び
図18に概念的に示す殺菌装置610を参照して、追加態様について説明する。装置110、210、310、410、510及び610等の装置10の各変形例は、装置10の要素と同様の要素を含み得るが、これらの要素をそれらが図示されているか否かに関わらず各100、200、300、400、500、または600の一連の番号で示す。
【0047】
図11に示すように、殺菌装置310は、本体320と、入口330と、流体チャンバ340と、流体チャネル344と、反射チャンバ370と、出口380と、放射線源390と、を備え得る。本体320は、円錐形状であり得る。例えば、
図11の本体320は、截頭円錐形状を有する。入口330及び出口380は、本体320の第1端部すなわち基端部にあり、放射線源390は、本体320の第2端部すなわち截頭端部322にある。上記と同様に、装置310は、流体チャンバ340内に内部構造体342を備え得る。流体チャネル344及び反射チャンバ370を含む少なくとも2つの相互接続内側形状部又は、容積部を規定し得る。例えば、流体チャネル344及び反射チャンバ370も、本体320の形状と同様の截頭円錐形状を軸Y‐Yに沿って有し得る。
【0048】
また、
図11に示すように、放射線源390に隣接する反射チャンバ370の第1寸法は、出口380に隣接するチャンバ370の第2寸法より小さくてもよい。第1及び第2寸法は、直径であり得る。或る態様において、第1及び第2寸法は、第1流体F
1の特性をチャンバ370において変更するように構成され得る。例えば、第2寸法を大きくすると、出口380の管腔384に隣接して渦及び/又は他の乱流状態が形成され、且つ軸Y‐Yに沿った第1流体F
1の速度が遅くなるため、流体F
1のチャンバ370における滞留時間が長くなり得る。
【0049】
図12に示すように、殺菌装置410は、本体420と、入口430と、流体チャンバ440と、流体チャネル444と、反射チャンバ470と、出口480と、放射線源490と、を備え得る。本体420は、円錐形状であり得る。例えば、
図13の本体420は、截頭円錐形状を同様に有する。入口430及び出口480は、本体420の第1端部すなわち截頭端部422にあり、放射線源490は、本体420の第2端部すなわち基端部にある。上記と同様に、装置410は、流体チャンバ440内に内部構造体442を備え、流体チャネル444及び反射チャンバ470を含む少なくとも2つの相互接続内側形状部又は容積部を規定し得る。例えば、流体チャネル444及び反射チャンバ470も、本体420の形状と同様の截頭円錐形状を軸Y‐Yに沿って有し得る。
【0050】
また、
図12に示すように、放射線源490に隣接する反射チャンバ470の第1寸法は、出口480に隣接するチャンバ470の第2寸法より大きくてもよい。第1及び第2寸法は、直径であり得るとともに、第1流体F
1の特性をチャンバ470において同様に変更し得る。例えば、小さい方の第1寸法は、チャンバ470において流体F
1を絞ることで、Y‐Y軸に沿ったその速度が出口480の管腔484から排出される前に増加し得る。別の例として、装置410は、入口430において第1速度の第1流体F
1を受容し、チャンバ470の第1部分において第1速度をより遅い第2速度に減速させ、そして、定速システムでの必要に応じて、チャンバ470の第2部分において第2速度を第1速度に徐々に戻すように移行させるように構成され得る。
【0051】
図13及び14に示すように、放射線源390、490は、殺菌放射線を反射チャンバ370、470内に出力し得る。また、チャンバ370、480の内面374、474及びチャンバ370、470の幾何学的構成は、放射線をチャンバ270、470内で反射することによりその有効性を最大化するように構成され得る。例えば
図13及び14において、殺菌放射線の第1部分が、放射線源390、490から放出され、反射チャンバ370、470の内面374、474同士の間で反射してチャンバ370、470内の第1流体F
1に照射される。そして、放射線の第2部分が、管腔384、484において、及びその下流において第2流体F
2に更に照射される。
図15に同様に示すように、チャンバ370、470のほぼ全体に亘って第1照射照度が達成されるとともに、管腔384、484において第2照射照度が達成され得る。
【0052】
図16に示すように、殺菌装置510は、本体520と、入口530と、流体チャンバ540と、流体チャネル544と、反射チャンバ570と、出口580と、放射線源590と、を備え得る。本体520は球形状であり得る。例えば、
図16の本体520は、球形状を有し、入口530及び出口580は、本体520の第1端部に隣接して配置され、放射線源590は、本体520の反対側の第2端部に隣接して配置される。上記と同様に、装置510は、流体チャンバ540内に内部構造体542を備え、流体チャネル544及び反射チャンバ570を含む少なくとも2つの相互接続内側形状部又は容積部を規定し得る。例えば、流体チャネル544及び反射チャンバ570も、本体520の形状と同様の球形状を有し得る。
【0053】
殺菌装置510の態様は、球形状の本体520と、流体チャネル544と、及び/又は反射チャンバ570と、を収容するように変更され得る。例えば、放射線源590は、本体520の内面から距離を置いてもよい。
図16に示すように、反射チャンバ570は、流体チャネル544と連通する開口部578を含み、放射線源590はこの開口部578に配置され得る。例えば、突起554が、本体520の第1端部から開口部578の第2端部に向かって内方に延び得る。本例において、放射線源590は、突起554の内部に配置され得るとともに、殺菌放射線を、突起554の第2端部における窓556を介して出力するように構成され得る。或る態様において、突起554は、第1流体F
1との干渉を最小限にしつつこれを更に導くように、湾曲した外面、及び/又は本体520への湾曲した移行部を有し得る。
【0054】
球形状の本体520と、流体チャネル544と、及び/又は反射チャンバ570とにより、流体力学的利点が提供され得る。例えば、流体チャネル544は、本体520の内面及び内部構造体542の外面により規定され得る。これらの面は、その球形状を理由として、装置10、110、210、310又は410の対応する面より大きい表面積を有し得る。したがって、本体520は、本体10、110、210、310又は410より小型であり得る。なぜならば、入口530での第1流体F
1の第1速度を、より効率的により遅い第2速度に移行させ得るからである。装置510の球形状により、光学利点も提供され得る。
図17に示すように、反射チャンバ570の球形の内面574は、放射線を本体520及び/又はチャンバ570内で反射して、反射した放射線をチャンバ570の中心の第1流体F
1の容積部に集中させることにより、放射線の有効性を最大化するように構成され得る。また、
図17に示すように、殺菌放射線の少なくとも一部は、第2流体F
2とともに出口580を介して排出され得る。
【0055】
図18に示すように、殺菌装置610は、本体620と、入口630と、流体チャネル644と、反射チャンバ670と、出口680と、放射線源690と、を備え得る。以下に説明する差異点を除き、装置610のこれらの要素は、装置10の対応する要素と同様であり得る。例えば、放射線源690は、放射線源90より強力であり、更なる熱を生じ得る。装置610の態様は、熱を奪うように変更され得る。例えば
図18に示すように、装置610は、断熱層652と、熱伝導層653と、冷却装置657と、を備えるキャップ650を備え得る。
【0056】
断熱層652は、本体620の一端部622に取り付けられ得るとともに、流体チャンバ640をシールするように構成され得る。
図18に示すように、放射線源690は、断熱層652の内部室654に装着され得る。また、窓656が、室654内に源690をシールし、且つ殺菌放射線を通過させて上方のチャンバ670内に入るように使用され得る。熱伝導層653は、放射線源690及び断熱層652の両方に取り付けられ得る。したがって、放射線源690により生成された更なる熱は層653に伝達され得るが、断熱層652があるため、本体620と熱伝導層653との間の熱破壊をもたらす本体620への伝達は制限される、又はゼロである。
【0057】
冷却装置657は、更なる熱を排出するように構成され得る。
図18に示すように、装置657は、ファン658及びヒートシンク659を備え得る。ヒートシンク659は、熱伝導層653に取り付けられ得るか、又はこれと一体化され得るとともに、複数のフィンを含み得る。ファン658は、電動ファンを含み得る。電動ファンは、装置610に取り付けられるか又はこれに隣接配置され、ヒートシンク659上に空気流を導くことにより、更なる熱を周囲環境に排出するように動作可能である。
【0058】
本明細書に記載のように、殺菌装置10、110、210、310、410、510及び610のいずれも殺菌放射線を同様に利用して、対応する反射チャンバ70、170、270、370、470、570又は670において第1流体F1を殺菌し得る。これらのチャンバの流体力学的アスペクトにより、特に流量が大きく(例えば1gpmを超える)、チャンバの容積が小さい(例えば500mL未満)である場合に、流体F1を短絡させ得るジェット速度が実質的に排除され得る。したがって、チャンバ70、170、270、370、470、570又は670のいずれも、流体F1が最適放射線量Qの殺菌放射線を受けるように構成され得る。例えば、各チャンバ70、170、270、370、470、570、670の寸法は、水及び表面吸収による紫外線電力損失を最小とするように、容積に基づいて同様に最適化され得る。
【0059】
装置10の多数の変形例を、同様に装置110、210、310、410、510及び610を参照して説明する。装置10のあらゆる変形例は、任意に配置された任意の個数の点光源を含む任意の放射線源90を含み得る。これらの変形例の態様も組み合わせることができる。各組合せや反復は、本開示の一部である。例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の任意の熱伝導性材料、及び又は他の材料から構成された本体20及び/又はキャップ50のあらゆる変形例のいずれもが、第1流体F1とともに放射線源90を冷却するように互いに結合され得る。別の例として、装置10のあらゆる変形例は、装置610の熱破壊及び/又は冷却装置と同様のものを同じく含み得る。
【0060】
また、殺菌装置10の任意の変形例は、第1流体F1及び/又は第2流体F2の流れを制御するように放射線源90とともに動作可能な制御要素を備え得る。例えば、装置10、110、210、310、410、510又は610は、殺菌流体の必要性を検出するとともに放射線源90、190、290、390、490、590又は690を作動させてこの必要に応えるように構成された上流センサを備え得る。別の例として、装置10、110、210、310、410、510又は610は、第2流体F2の殺菌レベルを測定し、この殺菌レベルが不十分な場合には、出口80、180、280、380、480、580又は690における作動バルブを閉鎖するように構成された下流センサを同様に備え得る。
【0061】
本開示の更なる態様を、例示的な殺菌方法700を参照して説明する。説明を簡単にするために、方法700の態様を殺菌装置10を参照して説明するが、同様の態様は装置10、110、210、310、410、510及び/又は610を参照して同じように説明され得る。
図19に示すように、方法700は、本体20の入口30からの第1速度の第1流体F
1を、第1速度より遅い第2速度で反射チャンバ70内に導入するステップ(「導入ステップ720)と、反射チャンバ70内に出口80に向けて出力された殺菌放射線で流体F
1を露光するステップ(「露光ステップ740)と、反射チャンバの端部を貫通して延びる出口80を介して、流体F
1を本体20から排出するステップ(「排出ステップ760」)と、を備え得る。ステップ720、740及び760の例示的な態様を説明する。
【0062】
導入ステップ720は、第1流体F
1を受容する、及び/又は導入するための任意の中間ステップを備え得る。例えば、本体20は、流体チャネル44(例えば
図2)を備え得る。そして、導入ステップ720は、第1流体F
1を、流体チャネル44を介して反射チャンバ70内に導入するステップを備え得る。或る態様において、反射チャンバ70は、長さ及び直径を有し得る。直径で割った長さは、およそ0.5乃至およそ2、又はおよそ0.5乃至およそ3に等しくてよい。
図2に示すように、入口30及び出口80は、本体20の一端部に配置され得る。そして、ステップ720は、第1流体F
1を入口30から軸Y‐Yに沿った第1方向に導くステップと、流体F
1を第1方向と異なる第2方向において反射チャンバ70内に導入するステップと、を備え得る。例えば、流体F
1を流体チャネル44から反射チャンバ70内に導入するステップは、流体F
1を第1方向から第2方向に導くステップを備え得る。或る態様において、第1流体F
1を流体チャネル44を介して導くステップは、流体1が少なくとも部分的にチャンバ70を包囲するようにさせるステップを備え得る。また、流体F
1を流体チャネル44を介して導くステップは、第1流体F
1を、本体20の内面28と反射チャンバ70の外面41との間に導入するステップを備え得る。或る態様において、ステップ720は、上流センサに応答して放射線源90を作動させるステップを更に備え得る。
【0063】
露光ステップ740は、第1流体F1を殺菌するための任意の中間ステップを備え得る。例えば、ステップ740は、殺菌放射線を、本体20の端部22に配置され得る放射線源90から出力するステップを備え得る。ステップ720及び/又は740は、流体F1を流体チャネル44から反射チャンバ70内へ方向転換させるステップであって、本体20の内面27が放射線源90に隣接して配置されたステップを備え得る。ステップ740は、放射線を出口80に向けて、例えば放射線源90の単数又は複数の点光源から出力するステップを更に備え得る。或る態様において、入口30は、出口80に対して実質的に横方向であり得る。そして、本方法は、放射線の少なくとも一部を、第2流体F2とともに出口80から排出するステップを更に備え得る。また、ステップ740は、殺菌放射線を反射チャンバ70の反射面で反射させるステップを備え得る。
【0064】
別の例として、露光ステップ740は、殺菌放射線を、放射線源90と反射チャンバ70との間に配置され得る窓56を介して出力するステップを備え得る。ステップ740において、殺菌放射線は、およそ200nm乃至およそ320nm、又はおよそ230nm乃至およそ300nmの波長を有し得る。これにより、ステップ740は、流体F1を紫外線で露光するステップを備え得る。別の例として、殺菌放射線は、放射線の光学品質を変更するように構成されたレンズ等の光学部品を介して出力され得る。
【0065】
排出ステップ760は、本体20から第1流体F1を第2流体F2として排出するための任意の中間ステップを備え得る。例えば、ステップ760は、流体F1の速度又は温度等の特性を変更するステップ、及び/又は下流センサに応答して出口80の制御バルブを操作するステップを備え得る。
【0066】
本開示の原理を、特定の用途の例示的な態様を参照して本明細書において説明したが、本開示はこれに限定されない。通常の知識を有し本明細書が提供する教示にアクセスできる当業者には、更なる変更、適用、態様、同等物の置換は全て本明細書で説明した対応の範囲にあることが認識される。したがって、本開示は、上記説明により限定されるとみなされるべきではない。