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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/114 20210101AFI20220809BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20220809BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20220809BHJP
   H01M 10/12 20060101ALI20220809BHJP
   H01M 50/541 20210101ALI20220809BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20220809BHJP
【FI】
H01M50/114
H01M50/15 101
H01M50/176 101
H01M10/12 Z
H01M50/541
H01M50/533
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020038551
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140967
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小野 祐太朗
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216085(JP,A)
【文献】特開2003-068352(JP,A)
【文献】特開2002-352780(JP,A)
【文献】特開2017-059419(JP,A)
【文献】実開昭55-045156(JP,U)
【文献】特開2005-203191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10 - 50/198
H01M 50/50 - 50/598
H01M 10/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁により区画されて一方向に沿って配列された複数のセル室を有する合成樹脂製の電槽と、
前記複数のセル室にそれぞれ収納された複数の極板群と、
前記電槽の上面を封止する合成樹脂製の蓋と、
を備え、
前記蓋は、前記電槽の二対の側壁に溶着により固定される二対の側壁、前記隔壁に溶着により固定されて前記複数のセル室の上側にそれぞれ上部空間を形成する仕切り板、前記仕切り板の厚さ方向両側に形成されたリブ、および前記リブに連続して形成され前記隔壁の厚さ方向両側に配置されるガイドを、一体に有するとともに、上板の前記複数のセル室の上方となる位置にそれぞれ形成された電解液の注入口を有し、
前記極板群は、複数枚の正極板および負極板をそれぞれ幅方向の別の位置で連結する正極ストラップおよび負極ストラップと、を有し、前記正極ストラップおよび前記負極ストラップの連結位置は、前記幅方向の中心を挟んだ各側であって、前記蓋の二対の側壁のうち前記仕切り板の両端に配置された一対の側壁と前記中心との間における中央位置より前記中心に近い側であり、
前記電槽は、前記複数のセル室の配列方向に前記隔壁を複数枚有することで、前記複数のセル室として、配列方向両端に配置されたセル室と、前記配列方向両端以外に配置された複数のセル室と、を有し、
前記蓋は、前記複数枚の隔壁にそれぞれ固定される複数枚の仕切り板を有し、
前記複数のセル室のうちの配列方向両端以外の前記セル室に配置された前記極板群は、前記正極ストラップの長手方向一端から立ち上がる正極中間極柱と、前記負極ストラップの長手方向他端から立ち上がる負極中間極柱と、を有し、
配列方向両端の前記セル室に配置された前記極板群の一方は、前記正極中間極柱と、前記負極ストラップから上方に延びる負極極柱を有し、他方は、前記負極中間極柱と、前記正極ストラップから上方に延びる正極極柱を有し、
隣り合う二つの前記セル室の一方に配置された前記正極中間極柱と他方に配置された前記負極中間極柱とが、前記隔壁に形成された貫通孔内を埋める金属部で接続され、
前記リブとして、前記仕切り板に沿う方向の四ケ所にそれぞれ配置された第一のリブ、第二のリブ、第三のリブ、および第四のリブを備え、
前記第一のリブは、前記金属部で接続された正極中間極柱および負極中間極柱の真上となる位置に配置され、
前記第二のリブおよび前記第三のリブは、前記仕切り板に沿う方向で前記真上となる位置を挟む両側に配置され、
前記第二のリブは前記第三のリブよりも、前記蓋の二対の側壁のうち前記仕切り板の両端に配置された一対の側壁に対する距離が大きく、
前記第四のリブは、前記第二のリブの前記第一のリブ側とは反対側に配置され、
前記第一のリブ、前記第二のリブ、前記第三のリブ、および前記第四のリブの前記仕切り板に沿う方向での配置が、隣り合う前記仕切り板で千鳥状にずれている鉛蓄電池。
【請求項2】
前記第四のリブは、前記正極ストラップの真上となる位置または前記負極ストラップの真上となる位置に配置されている請求項1記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記第二のリブは、前記注入口の隣に配置されている請求項1または2記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記第四のリブの前記仕切り板からの突出寸法は、前記第一のリブ、前記第二のリブ、および前記第三のリブの前記仕切り板からの突出寸法よりも大きい請求項1~3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記仕切り板の厚さは前記蓋の二対の側壁の厚さより薄く、
前記リブの前記仕切り板に沿う方向の寸法は、前記仕切り板の厚さ以上、且つ、前記側壁の厚さ以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池の従来例として、合成樹脂製の電槽の上面(開口面)が合成樹脂製の蓋で封止された構造のものがある。この構造の鉛蓄電池において、合成樹脂製の電槽は、隔壁により区画されて一方向に沿って配列された複数のセル室を有する。また、複数の極板群が一群ずつ複数のセル室に収納されている。そして、隔壁を介して隣接する極板群が、隔壁に設けた貫通孔を介して接続されている。この接続は、通常、極板群が有する正負の各ストラップから立ち上がる中間極柱同士で、隔壁の貫通孔およびその周辺部を挟み、抵抗溶接することで行われている。
【0003】
合成樹脂製の蓋は、電槽の複数の隔壁に対応する複数の仕切り板を有する。複数の仕切り板は、電槽の各セル室に極板群を収納して上記抵抗溶接を行った後、電槽の複数の隔壁にそれぞれ溶着により固定される。この溶着の際に、電槽の各隔壁と蓋の各仕切り板とを位置決めする必要がある。特許文献1および2には、この位置決めに関する記載がある。
特許文献1の鉛蓄電池では、蓋の仕切り板(蓋隔壁)の厚さ方向両側にリブが固定されている。また、蓋は、このリブに連続して電槽の隔壁の厚さ方向両側に配置されるガイドも有する。このガイドは、電槽の隔壁と対向する傾斜面(ガイド面)を有する。電槽の隔壁の上端面は、この傾斜面に案内されてスムーズに蓋の仕切り板の下端面と当接する。特許文献1の鉛蓄電池では、仕切り板に沿う方向に二個のリブが配置され、その配置は全てのセル室で同じである。
【0004】
特許文献2の鉛蓄電池でも、位置決め用のガイドとして、電槽の隔壁と対向する傾斜面を有するガイド部材が、蓋の仕切り板に設けてある。このガイド部材は、セル室の配列方向に対して垂直な方向に三個ずつ配置されている。さらに、蓋は、一つの注液孔に対応する一対の対向壁を注液孔毎に有し、その一方の対向壁とガイド部材が連結されている。特許文献2の鉛蓄電池では、仕切り板に三個ずつ配置されたリブのうち仕切り板に沿う方向で両端となるリブの配置が、隣り合うセル室で同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-142041号公報
【文献】特開2017-59419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉛蓄電池を車両に搭載する際には、走行中に鉛蓄電池が振動することを抑制するために、蓋の上にステーと呼ばれる固定金具を載せて、その長さ方向両端のボルトを締め付けることにより、鉛蓄電池を押さえつけている。この締め付けは適切な力で行う必要があり、締め付け力が強すぎると、電槽の外装や隔壁が弓状に変形するおそれがある。また、振動などの外的要因や正極格子基板のグロースなどの内的要因によっても蓋や隔壁が変形するおそれがある。
そして、隔壁の弓状変形により、中間極柱と隔壁の間に隙間が生じると、その部分から液リークが発生する。液リークが発生すると電池の内部抵抗が上昇し、アイドリングストップ車の場合は、アイドリングストップが禁止される状態になってしまう。
本発明の課題は、合成樹脂製の電槽の上面が合成樹脂製の蓋で封止された構造の鉛蓄電池として、電槽の隔壁が弓状に変形しにくいものを、低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、下記の構成(a)~(d)を備えた鉛蓄電池を提供する。
(a)隔壁により区画されて一方向に沿って配列された複数のセル室を有する合成樹脂製の電槽と、前記複数のセル室にそれぞれ収納された複数の極板群と、前記電槽の上面を封止する合成樹脂製の蓋と、を備える。
(b)前記蓋は、前記電槽の二対の側壁に溶着により固定される二対の側壁、前記隔壁に溶着により固定されて前記複数のセル室の上側にそれぞれ上部空間を形成する仕切り板、前記仕切り板の厚さ方向両側に形成されたリブ、および前記リブに連続して形成され前記隔壁の厚さ方向両側に配置されるガイドを、一体に有するとともに、上板の前記複数のセル室の上方となる位置にそれぞれ形成された電解液の注入口を有する。
【0008】
(c)前記極板群は、複数枚の正極板および負極板をそれぞれ幅方向の別の位置で連結する正極ストラップおよび負極ストラップと、を有し、前記複数のセル室のうちの配列方向両端以外の前記セル室に配置された前記極板群は、前記正極ストラップの長手方向一端から立ち上がる正極中間極柱と、前記負極ストラップの長手方向他端(前記長手方向一端とは反対の端部)から立ち上がる負極中間極柱と、を有する。配列方向両端の前記セル室に配置された前記極板群の一方は、前記正極中間極柱と、前記負極ストラップから(例えば、小片を介して)上方に延びる負極極柱を有し、他方は、前記負極中間極柱と、前記正極ストラップから(例えば、小片を介して)上方に延びる正極極柱を有する。隣り合う二つの前記セル室の一方に配置された前記正極中間極柱と他方に配置された前記負極中間極柱とが、前記隔壁に形成された貫通孔内を埋める金属部で接続されている。
(d)前記リブは、前記金属部で接続された正極中間極柱および負極中間極柱の真上となる位置と、前記仕切り板に沿う方向(前記セル室の配列方向と垂直な方向)で前記真上となる位置を挟む両側と、に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、合成樹脂製の電槽の上面が合成樹脂製の蓋で封止された構造の鉛蓄電池として、電槽の隔壁が弓状に変形しにくいものを、低コストで提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の鉛蓄電池を説明する図であって、電槽から蓋を外した状態を示している。
図2】実施形態の鉛蓄電池の部分断面図である。
図3】実施形態の鉛蓄電池における極板群のストラップ、中間極柱、および極柱を示すとともに、これらと蓋のリブとの位置関係を説明する平面図である。
図4】実施形態の鉛蓄電池を構成する蓋の電槽に向ける面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
[構成]
図1に示すように、実施形態の鉛蓄電池10は、電槽1と蓋2と六個の極板群3を備える。電槽1の形状は直方体であり、電槽1は、底面をなす長方形の一対の長辺上に形成された一対の第一の壁11と、一対の短辺上に形成された一対の第二の壁12を有する。電槽1の内部は、第二の壁12と平行な五枚の隔壁13により、六個のセル室4に区画されている。図1に示すように、セル室4の配列方向をX方向、これに垂直な方向をY方向とする。六個のセル室4には、それぞれ一個の極板群3が配置されている。
【0012】
図2に示すように、極板群3は、複数枚の正極板31および負極板32と、セパレータ33と、正極ストラップ310と、負極ストラップ320と、正極ストラップ310から立ち上がる正極中間極柱310aと、負極ストラップ320から立ち上がる負極中間極柱320aを有する。
正極板31は、格子状基板311と格子状基板311に連続して上方に突出する耳312とからなる集電体を有し、格子状基板311に正極活物質が保持されている。負極板32は、格子状基板321と格子状基板321に連続して上方に突出する耳322とからなる集電体を有し、格子状基板321に負極活物質が保持されている。複数枚の正極板31および負極板32は、セパレータ33を介して交互に配置されている。
【0013】
図2に示すように、正極ストラップ310および負極ストラップ320は、全ての正極板31および負極板32の上方に配置され、正極ストラップ310が全ての正極板31の耳312を厚さ方向(X方向)に連結し、負極ストラップ320が全ての負極板32の耳322を厚さ方向(X方向)に連結している。その結果、正極ストラップ310および負極ストラップ320により、それぞれ正極板31および負極板32が幅方向(セル室に入った時にY方向となる方向)の別の位置で連結された状態となっている。
【0014】
図2には、隣り合う二つのセル室4の上側部分が表示されている。この部分では、隣り合うセル室41,42において、一方(左側)のセル室41内の正極ストラップ310の右端から立ち上がる正極中間極柱310aと、他方(右側)のセル室42内の負極ストラップ320の左端から立ち上がる負極中間極柱320aとが、隔壁13に形成された貫通孔13a内を埋める金属部330aで接続されている。金属部330aは、正極中間極柱310aと負極中間極柱320aとで、隔壁13の貫通孔13aが形成されている部分を挟み、両中間極柱同士を抵抗溶接することで、貫通孔13aに生じさせたものである。
【0015】
図3に示すように、X方向の両端以外のセル室に配置される極板群3は、正極ストラップ310の長手方向一端(左)から立ち上がる正極中間極柱310aと、負極ストラップ320の長手方向他端(右)から立ち上がる負極中間極柱320aと、を有する。
図3に示すように、X方向の一端(左側の端部)のセル室に配置される極板群3は、負極ストラップ320から上方に延びる負極中間極柱320aと、正極ストラップ310から小片35を介して上方に延びる正極極柱(外部端子になる部分)36を有する。また、X方向の他端(右側の端部)のセル室に配置される極板群3は、正極ストラップ310から上方に延びる正極中間極柱310aと、負極ストラップ320から小片35を介して上方に延びる負極極柱(外部端子になる部分)37を有する。
つまり、金属部330aで接続された正極中間極柱310aおよび負極中間極柱320aは、隣り合う隔壁13でY方向の配置が千鳥状にずれている。
【0016】
図4に示すように、蓋2は、電槽1の第一の壁11および第二の壁12に対応する第一の壁21および第二の壁22と、電槽1の隔壁13に対応する五枚の仕切り板23と、長方形の上板24を有する。上板24は六個の貫通孔24aを有する。六個の貫通孔24aは、上板24の五枚の仕切り板23で区切られた各位置に形成されている。
上板24の内面(電槽1と対向させる面)には、貫通孔24aに連続する筒状部25が形成されている。貫通孔24aと筒状部25が注液口(電解液の注入口)26を構成する。筒状部25はスリット25aおよび雌ねじ部25bを有する。雌ねじ部25bは筒状部25の内周面の基端部にのみ形成されている。
【0017】
また、蓋2は、正極極柱36および負極極柱37を通すスリーブ27と、全ての仕切り板23の厚さ方向両側に配置された第一の突起61、第二の突起62、第三の突起63、および第四の突起64を有する。突起61~64の基本的な形状は全て同じであるため、図2では突起61~64を符号6で示す。
上板24の内面から、第一の壁21、第二の壁22、仕切り板23、筒状部25、スリーブ27、および突起61~64が突出している。蓋2は、これらの全てが合成樹脂の射出成形により一体に成形されたものであり、この射出成形時に金属製のブッシングがスリーブ27内に固定される。
【0018】
図2に示すように、突起6は、リブ6aとガイド(溶着時の位置決め用ガイド)6bとからなる。リブ6aは、仕切り板23の厚さ方向両側に形成された部分であり、ガイド6bは、リブ6aの先端に連続して形成されたものである。ガイド6bの先端の内面(隔壁13と対向させる面)に傾斜面6cが形成されている。
図2は、電槽1の第一の壁11が蓋2の第一の壁21に溶着され、電槽1の第二の壁12が蓋2の第二の壁22に溶着されるとともに、五枚の仕切り板23がそれぞれ溶着により電槽1の隔壁13に固定されて、セル室4の上側に上部空間5が形成された状態を示している。この状態で、突起6のガイド6bが、電槽1の隔壁13の厚さ方向両側に配置され、ガイド6bの傾斜面6cが隔壁13と対向する。さらに、蓋2の第二の壁22に固定された突起6のガイド6bの傾斜面6cが、電槽1の第二の壁12と対向する。
【0019】
なお、図2には、隣り合うセル室41,42と、その上方に形成された上部空間51,52が表示されている。また、図2において、セル室41が図1の最も左側のセル室4である場合、セル室41を構成する左側の隔壁13および仕切り板23は、それぞれ電槽1の第二の壁12および蓋2の第二の壁22に相当する。また、セル室42が図1の最も右側のセル室4である場合、セル室42を構成する右側の隔壁13および仕切り板23は、それぞれ電槽1の第二の壁12および蓋2の第二の壁22に相当する。
【0020】
鉛蓄電池10は、例えば以下の方法で製造できる。
先ず、公知の方法で作製された化成前の極板群3を、電槽1の各セル室4に配置した後、抵抗溶接を行って金属部330aを形成する。次に、電槽1の上面と蓋2の下面を熱で溶かして、熱溶着により電槽1に蓋2を固定する。なお、蓋2を電槽1に載せる際に、電槽1の隔壁13の上端面は、蓋2の突起6が有するガイド6bの傾斜面6cに案内されて、スムーズに蓋2の仕切り板23の下端面と当接する。また、電槽1の第二の壁12の上端面も、同様に突起6の傾斜面6cに案内されて、スムーズに蓋2の第二の壁22の下端面と当接する。
【0021】
その結果、図2に示すように、セル室4の上側に上部空間5が形成される。その後、各注液口26(図4参照)から各セル室4内に電解液を注入した後、注液口26に液口栓を入れて液口栓の雄ねじ部を筒状部25の雌ねじ部25bに螺合することで、各注液口26を液口栓で塞ぐなどの通常の工程を行うことにより、化成前の鉛蓄電池10の組み立てを完成させる。その後、通常の条件で電槽化成を行うことで鉛蓄電池10が得られる。
【0022】
[突起(リブ)の配置について]
図4に示すように、蓋2には、上板24の仕切り板23に沿う方向(セル室4の配列方向に垂直なY方向)の四カ所に、突起61~64が配置されている。図3には、蓋2に設けた突起61~64の位置が、電槽1に投影されて実線で示されている。なお、図4は蓋2の電槽1に向ける面を示しており、この面を電槽1に向けて蓋2が電槽1の上に設置されるため、蓋2を電槽1に溶着した状態での突起61~64の位置は図3に示す通りになる。
【0023】
図3および4に示すように、突起61~63は、仕切り板23に沿う方向(Y方向)で、正極中間極柱310aおよび負極中間極柱320aの真上となる位置(以下、「中間極柱上の位置」とも称する。)と、中間極柱上の位置を挟む両側に、配置されている。第一の突起61は中間極柱上の位置に配置されている。第二の突起62および第三の突起63は、中間極柱上の位置を挟む両側に配置されている。第二の突起62は注液口26の隣に配置されている。
【0024】
なお、「第二の突起62が注液口26の隣に配置されている」とは、図4に示すように、第二の突起62が、筒状部25をなす円のX方向に沿った直径の延長線上に存在していることだけを意味しているのではなく、注液口26を塞ぐ液口栓の頭部をなす円(筒状部25をなす円の同心円であって、直径が筒状部25をなす円よりも大きい円)のX方向に沿った一対の接線上およびこれらの接線の間に存在していることを意味する。
三個の突起61~63は、第一の突起61が中間極柱上の位置に配置され、第二の突起62および第三の突起63が中間極柱上の位置を挟む両側に配置されているため、Y方向(仕切り板23に沿う方向)での配置が、隣り合う仕切り板23で千鳥状にずれている。
【0025】
また、第二の突起62は第三の突起63よりも側壁21に対する距離が大きい。具体的に、図3の右端の仕切り板23では、一方の側壁211と第二の突起62との距離K1が、他方の側壁212と第三の突起63との距離K2より大きい。図3の右端から二番目の仕切り板23では、他方の側壁212と第二の突起62との距離が、一方の側壁211と第三の突起63との距離より大きい。
さらに、第四の突起64は、第二の突起62の第一の突起61側とは反対側の位置であって、正極ストラップ310または負極ストラップ320の真上となる位置に配置されている。そして、四個の突起61~64は、Y方向(仕切り板23に沿う方向)での配置が、隣り合う仕切り板23で千鳥状にずれている。
【0026】
[作用、効果]
この実施形態の鉛蓄電池は、蓋2の突起6(61~64)を上述の配置で設けたことにより、以下の作用、効果が得られる。
正極中間極柱310aおよび負極中間極柱320aの真上に配置された第一の突起61のリブ6aにより、抵抗溶接を行って形成された金属部330aを有する隔壁13の強度が高くなるため、この部分での変形が抑制される。
また、注液口26の隣に配置されている第二の突起62のリブ6aにより、貫通孔24aを含む注液口26が形成されている部分の強度が高くなるため、この部分での変形が抑制される。
【0027】
また、四個の突起61~64のY方向での配置が隣り合う仕切り板23で千鳥状にずれているため、四個の突起61~64のY方向での配置が全ての仕切り板23で同じであるもの(四個の突起61~64の配置が、一方の側壁211または他方の側壁212に近い方に偏っているもの)と比較して、五枚の隔壁13の合計強度を高くすることができる。
また、四個の突起61~64のうちの三個がY方向中心部の近くに存在するため、強度的に弱いY方向中心部での隔壁13の強度が向上する。
【0028】
また、第四の突起64が、正極ストラップ310または負極ストラップ320の真上となる位置に配置されていることで、第一の突起61と第二の突起62との間隔と、第二の突起62と第四の突起64との間隔と、をほぼ同じにすることができる。これにより、第四の突起64が、正極ストラップ310または負極ストラップ320の真上となる位置より第二の突起62から離れる方向に配置された場合と比較して、四個の突起61~64をY方向中心部の近くに存在させることができる。
【0029】
このように、この実施形態の鉛蓄電池によれば、少ない個数の突起6のリブ6aで効率的に電槽1の隔壁13の強度を高くすることができるため、蓋2の成形に使用する合成樹脂の量が少なくて済む。つまり、必要最小限の機能を必要最小限の樹脂量で達成することができる。これにより、電槽1の隔壁13が弓状に変形しにくいものを、低コストで提供することが可能になる。
なお、第一の突起61、第二の突起62、第三の突起63は必須のものであるが、第四の突起64は必須のものではない。また、四個の突起61~64以外の突起(例えば、第三の突起63の第一の突起61側とは反対側に第五の突起)6を設けてもよい。しかし、蓋2の成形に使用する合成樹脂の量を少なくするという点では、突起6の数は少ない方が好ましい。
【0030】
また、第四の突起64の仕切り板23からの突出寸法(X方向の寸法)が、第一の突起61、第二の突起62、および第三の突起63の仕切り板23からの突出寸法よりも大きいと、第四の突起64が、他の三個の突起61~63から離れた位置に配置された場合に、第四の突起64の強度を他の三個の突起61~63の強度と同等程度にすることができるため好ましい。
【0031】
また、通常の蓋2は、仕切り板23の厚さが蓋2の二対の側壁21,22の厚さより薄いため、突起61~64の仕切り板23に沿う方向の寸法が、仕切り板23の厚さ以上、且つ、側壁21,22の厚さ以下になっていると、コスト上昇を抑えながら突起61~64の強度を高くできるため好ましい。突起61~64の仕切り板23に沿う方向の寸法が、仕切り板23の厚さ以上であることで、突起61~64の強度が高くなって隔壁13の弓状変形抑制効果が向上する。突起61~64の仕切り板23に沿う方向の寸法を側壁21,22の厚さより厚くしても、効果は飽和するため、側壁21,22の厚さ以下にすることで、コスト上昇が抑えられる。
【符号の説明】
【0032】
10 鉛蓄電池
1 電槽
11 電槽の第一の壁
12 電槽の第二の壁
13 隔壁
13a 隔壁の貫通孔
2 蓋
21 蓋の第一の壁(仕切り板の両側に配置された一対の側壁)
211 一方の側壁
212 他方の側壁
22 蓋の第二の壁
23 仕切り板
24 蓋の上板
24a 上板の貫通孔
25 筒状部
26 注液口
3 極板群
31 正極板
312 正極板の耳
310 正極ストラップ
310a 正極中間極柱
32 負極板
322 負極板の耳
320 負極ストラップ
320a 負極中間極柱
330a 貫通孔内を埋める金属部
35 小片
36 正極極柱
37 負極極柱
4 セル室
41 セル室
42 セル室
5 上部空間
51 上部空間
52 上部空間
6 突起
6a 突起のリブ
6b 突起のガイド
6c ガイドの斜面
61 第一の突起(中間極柱上の位置に配置された突起)
62 第二の突起(中間極柱上の位置を挟む両側の一方に配置された突起)
63 第三の突起(中間極柱上の位置を挟む両側の他方に配置された突起)
64 第四の突起
図1
図2
図3
図4