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特許7121115配向性カーボンナノチューブからなるケーブルの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】配向性カーボンナノチューブからなるケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/164 20170101AFI20220809BHJP
   C01B 32/162 20170101ALI20220809BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20220809BHJP
   B01J 23/74 20060101ALI20220809BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220809BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C01B32/164
C01B32/162
C01B32/168
B01J23/74 M
H01B13/00 503Z
H01B1/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020520728
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 FR2018051475
(87)【国際公開番号】W WO2019002722
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】1755819
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519357305
【氏名又は名称】ナワテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーランジェ パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ゴワズラール ド モンサベール トマス
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-263564(JP,A)
【文献】特表2007-515364(JP,A)
【文献】国際公開第2014/202740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
B01J 21/00 - 38/74
H01B 13/00
H01B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材(43、64)上で、少なくとも1種のカーボン前駆体化合物及び少なくとも1種の触媒前駆体化合物を分解させることを含む、カーボンナノチューブから形成されたケーブルの製造方法であって、
連続的に:
- 触媒前駆体を含む第1ガス流れ(21)は、多孔質基材(43、64)との接触に供され、
- 少なくとも1種のカーボン前駆体を含む第2ガス流れ(22)は、前記多孔質基材(43、64)との接触に供され、
- 前記多孔質基材(43)は、触媒粒子の堆積、及び、カーボンナノチューブバンドルの触媒成長を引き起こす、好ましくは500℃~1000℃の温度にまで加熱され
- 前記多孔質基材(43、64)は、前記第1ガス流れ(21)が通過して前記基材(43、64)を出る領域の近傍の領域、又は、前記第1ガス流れ(21)が指向される領域において、加熱される、方法。
【請求項2】
前記カーボン前駆体は、炭化水素、及び/又は、一酸化炭素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質基材(43、64)への局所的な加熱は、電磁誘導により行われることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質基材(43、64)への局所的な加熱は、少なくとも部分的に、前記触媒粒子の誘導加熱によ行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質基材(43、64)は、多孔質シリコン、多孔質アルミナ、多孔質炭化ケイ素、相互接続された孔を有する発泡金属、相互接続された孔を有するカーボン発泡体、垂直配向性カーボンナノチューブ、これらの基材のいくつかを含む混合基材からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ナノチューブバンドルは、所定の長さに亘って、例えば銅等の金属でコーティングされるステップをさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ナノチューブバンドルは、その端部の一方において、金属でコーティングされることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノチューブバンドルの金属によるコーティングは、電気的接続要素との接触に供されることを特徴とする、請求項又は請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノチューブバンドルを、電気的に絶縁性の材料でコーティングするステップをさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の方法を実行するための反応器であって、
ガス流れの流れ方向に従って:
・触媒前駆体を含む第1反応性ガス流れ及び少なくとも1種のカーボン前駆体を含む第2反応性ガス流れの供給手段と、
・反応性ガスを250℃~450℃の温度T2にまで加熱可能な第1加熱手段(42)を備えた前記反応性ガスの流れを注入するための領域と、
・前記反応性ガスの流れにより通過される多孔質基材(43)と、
・前記多孔質基材(43)の少なくとも一部を450℃~700℃の温度T3にまで加熱可能な第2加熱手段(45)を備えた領域と、
・形成されたナノファイバ又はナノチューブの配置を可能にする管状配置領域(49)と、
・前記ナノファイバ又はナノチューブの収集手段(47)と、
・前記ガスが前記反応器から出ることができる出口(48)と、
を含む、反応器。
【請求項11】
形成されたナノチューブ又はナノファイバを、800℃~2,000℃の温度T4まで加熱できる第3加熱手段を、好ましくは前記配置領域(49)に、備えた、請求項10の反応器。
【請求項12】
前記カーボン前駆体の触媒分解領域の制限手段を含むことを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載の反応器。
【請求項13】
前記第2加熱手段は、局所加熱手段、好ましくは誘導による加熱手段であることを特徴とする、請求項1012のいずれかに記載の反応器。
【請求項14】
前記局所加熱手段は、前記カーボン前駆体の触媒分解領域の制限手段として機能することを特徴とする、請求項13に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、導電体、特に電流の伝導のためのワイヤ及びケーブルの分野に関する。さらに特には、それは、カーボン製のワイヤ又はケーブルの形の導電体の分野に関する。これらのカーボン製のワイヤ又はケーブルは、カーボン製のナノチューブを含み、これらはその長さ方向に沿って極めて良好な導電性を有する。また、本発明は、気相からカーボンナノチューブを合成する方法に関する:それは、極めて長いカーボン製のナノチューブを製造する新規な方法である。
【背景技術】
【0002】
従来技術
カーボンファイバは公知である。これらは、有機前駆体又はカーボン材料の熱分解により得られたファイバを紡ぐことにより工業的に製造される。カーボンナノチューブから得られたファイバもまた公知である。これらは、異なる技術によるナノカーボンの凝集により製造される。Nanocomp社は、化学気相成長(CVD)により得られたカーボンナノチューブのスパンから、Miralon(商標)スパンのブランド名で、カーボンナノチューブのファイバを販売している。
【0003】
カーボンファイバの従来技術の概要は、ジャーナルCarbon 98(2016)708-732に掲載されたJ.Zhangら、「2016年以降のカーボンサイエンス:状況、課題及び将来」に記載されている。
【0004】
著者は、3つの方法及び製品を区別する:
- ポリアクリロニトリル(PAN)系の有機前駆体の熱分解により得られたグラファイトファイバ:これらは、強い引張強度(約7GPa)及び適度なヤング率(約700GPa)、並びに適度な導電率及び熱伝導率(それぞれ、約1.10S/m及び100W/m.K)を有する;
- コールタールピッチ又はオイルの熱分解により得られたグラファイトファイバ:これらは、適度な引張強度(約3~4GPa)及び高いヤング率(約950GPa)、並びに優れた導電率及び熱伝導率(それぞれ約5×10S/m及び500W/m.K)を有する;
- 気相紡糸、湿式紡糸、又は乾式紡糸により、例えばグラフェン結晶又はカーボンナノチューブ等のナノカーボン(又はナノ構造カーボン又はカーボンナノ粒子)のある程度組織化された凝集から得られるファイバ。
【0005】
PANの熱分解により得られたグラファイトカーボンファイバの強い引張強度は、熱処理中における、ファイバ間の共有結合の形成によって説明できる。また、これらの共有結合の存在は、それらの適度な導電率及び熱伝導率の値も説明する:これらのファイバは、無秩序のグラファイト層から形成され、共有結合は電気伝導及び熱伝導の拡散中心である。しかしながら、タールピッチの熱分解により得られたグラファイトカーボンファイバは秩序化されたグラファイトセグメントを有するが、これらのセグメント間の界面における化学結合は弱く(ファンデルワールス力)、その機械強度は制限される。従って、現在のグラファイトファイバ技術では、高い伝導性及び高い機械強度の両立は、本質的に到達できない。
【0006】
さらに、カーボンナノチューブの凝集により得られたワイヤも知られており、非常に多くの刊行物及び特許の目的であるとともに(例えば以下を参照:Nat. Commun. 5:3848 doi:10.1038/ncomms4848 (2014)に掲載されたJ.N.Wangらによる「高い延性及び高い導電性を有する高強度カーボンナノチューブファイバ状リボン」;及び、垂直配向性カーボンナノチューブから同様のファイバを製造することを提案するUS2007/0237959)、市販されている(例えば、Nanocomp Technologies社により提案された「Miralon(商標)糸」製品を参照)。
【0007】
これらのファイバにおいて、個々のナノチューブ間の接触は、共有結合ではなくファンデルワース力を意味する:個々のナノチューブの長さ方向の導電性が高い場合、互いに接触しファンデルワース力によって結合される2本のナノチューブ間の接触は、かなりの接触抵抗があることを意味する:カーボンナノチューブの凝集(例えば紡糸)によって得られたこれらのファイバは、個々のナノチューブのものよりもかなり低い熱伝導率及び導電率、並びに引張強度を有する。
【0008】
例えば、個々のカーボンナノチューブは40GPa超の引張強度、約1000GPaのヤング率、約1,000W/m.Kの熱伝導率を有することが知られている。個々の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)では、導電性は主に2枚の外壁によってもたらされることが知られている(Frankら、Science 280、1744(1998);Bachtoldら、Nature(ロンドン)397,673(1999);Bourlonら、Phys.Rev.Lett. 93,17(2004)参照);その線形抵抗(R/L)は、約10kΩ/mである。
【0009】
しかしながら、グラファイトドメイン間のいかなる界面も、弱点として作用し、ファイバの性能を制限する。ナノスケールの塊からマクロスケールのファイバを製造しようとすると、この制限は依然として問題である。実際、ナノカーボン(カーボンナノチューブ及び/又はグラフェン)から得られるグラファイトファイバは、従来のカーボンファイバに近い機械的特性(約1GPaの引張強度、約200GPaのヤング率)を有する。しかしながら、ナノカーボン(カーボンナノチューブ又はグラフェン)を使用することにより、若干の著しい結果が得られている:グラフェン酸化物から得られたファイバについては、1,290W/mKの熱伝導率、ドープカーボンナノチューブから得られたファイバについては、50×10S/mの導電率;これらの2つの結果は、湿式法により得られた(上述のJ.Zhangらの論文の図14及び図15参照)。
【0010】
理論的には、この2本のカーボンナノチューブ間の接触抵抗の問題は、電気ケーブルを形成するために、非常に長いナノチューブの平行なバンドルを用いて解決され得る。この中で、電気抵抗は、それらの長さ方向のナノチューブの電気抵抗のみであり得るからである。水平配向単層ナノチューブのマクロスケールのセットについて、このことは、ナノチューブの密度に対する線形抵抗の比で表される等価抵抗をもたらし得る。従って、10-8Ωmの等価抵抗が得られ、これは、1010cm-2の密度のナノチューブについて、10S/mの伝導率である。
【0011】
しかしながら、このような電気ケーブルは概念だけであり、このような製品は市場には出回っておらず、信頼できる方法でこれまで記載されたことがない。
【0012】
米国特許出願2005/0170089には、カーボンナノチューブの成長方法が記載されており、この方法では、触媒が多孔質基材上へ堆積され、反応ガスをこの多孔質基材に通過させ、それが触媒と接触して分解する。より正確には、触媒は、湿式法及び乾式法その他の技術によって堆積した鉄塩粒子の化学的還元により、多孔質基材の「下流側」の部分上に堆積する;従って、1~50nmのサイズの粒子が得られ、これらは還元により活性化される。ガス状のカーボン源は、ガス状のカーボン源を触媒的に分解させるのに十分な温度にまで加熱された管により囲まれた多孔質基材を通じて導入される。成長の間、ナノチューブは、2本の電極、すなわち基材の上流側に配置された電極と、基材の下流側の電極と間に印加された電界によりガス流れの方向に維持される。この特許文献は、ナノチューブの補足収集装置を備える場合、約1mの所望の長さを有するナノチューブのバンドルが、この方法により、得られることを示唆している。
【0013】
しかしながら、この文献は、実施例を全く提供していない。従って、製造し得るナノチューブの長さが触媒の不活性化により制限されないということを疑う余地がある
:触媒基材上のカーボンナノチューブの成長が制限されることは当業者に周知である(例えば以下を参照:「カーボンナノチューブの合成及び成長機構」、第8章、Mukul Kumar、DOI:10.5772/19331、http://www.intechopen.com)。
【0014】
より正確には、クマールによる論文は、カーボンナノチューブに最もよく用いられる2つの成長モデルを示す。これらの2つのモデルは、基材上への触媒粒子の堆積から始まる。「先端成長モデル」と呼ばれる第1のモデルにおいて、この粒子は弱く基材と相互作用し、ナノチューブの成長は、粒子の上側において炭化水素ガスの触媒分解により生じたカーボンによって進行する。このとき、カーボンは、粒子のベースに向かって拡散し、粒子の下側にカーボンナノチューブを形成し、そのカーボンナノチューブが粒子を押し上げていく;しかしながら、触媒粒子は、その上部におけるカーボン層の形成により、又は、材料が徐々に失われていくことにより、次第に不活性化される。「ベース成長モデル」と呼ばれる第2のモデルにおいて、粒子は基材と強く相互作用し、ナノチューブの成長は、粒子のベースにおいて炭化水素ガスの触媒分解により生じたカーボンによって進行する。このとき、カーボンは、粒子の先端に拡散し、粒子の上側にカーボンナノチューブを形成する;しかしながら、触媒粒子は、化学反応性が失われていくことにより、又は、材料が徐々に失われていくことにより、次第に不活性化される。
【0015】
垂直配向性ナノチューブ(VACNT)も、公知である。VACNTは、直径が数ナノメートルから数十ナノメートルの間のカーボンナノチューブで形成される。VACNTの合成方法は、基材とカーボンナノチューブのベースの間の界面に位置する(「ベース成長機構」)触媒粒子上におけるガス前駆体の不均一系触媒分解(触媒CVD)にある。長さ(マットの厚さ)は、典型的には数百マイクロメートルに達するが、最大数ミリメートルにまで達し得る;ナノチューブの長さは、2つの現象により制限される:ナノチューブ合成の方法の過程において触媒粒子が不活性化又は徐々に分解していくこと、並びに、ナノチューブのベースへのガス前駆体の拡散に対する抵抗及びナノチューブの先端における反応副生成物の除去に対する抵抗が徐々に増加することである。実際、最もよく観察されるのは、垂直配向性ナノチューブの成長が時間とともに対数関数的に減少していくことである(例えば以下を参照:Jourdain及びBichara、Carbon 58(2013)p.2-39)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、開示された技術により約1メートルのカーボンナノチューブバンドルを製造できるという文献US2005/0170089の示唆は、少なくとも4つの理由により、当業者を混乱させる:この示唆は、カーボンナノチューブの成長機構に関する当業者の理解と対応していない、この特異性について文献自体の中で言及されていない、得られた製品が(例えば伝導率の測定値によって)特徴づけられていない、そして、このような製品は(非常に大きな技術的関心を引くと思われるが)、その存在を提案する文献US2005/0170089は2005年に公開されているにも拘わらず、公知になっていない。
【0017】
いくつかの他の刊行物は、センチメートル長さのカーボンナノチューブを得ることについて記載している。Zhengら(「ウルトラロング単層カーボンナノチューブ」、nature materials、第3巻、p.673-676(2004))は、シリコン基板上へトレース量のFeClの溶液を堆積させた後、まず触媒粒子を形成するためにAr/H雰囲気下で、次に40mmの長さの個々のナノチューブを形成するためにエタノール雰囲気下で、900℃の炉内に配置することにより、ナノチューブを成長させる技術を開示している。この技術は、工業化が難しいと考えられる。同様の方法が、Wangら(「清浄基材上の電気的に均一なウルトラロング単層カーボンナノチューブの製造」、NanoLetters、第9巻(9)、p3137-3141(2009))及びWenら(「80-90μm/sの急速な成長速度で成長する長さ20cmのロングDWNTs/TWNTs」Chem. Mater.第22巻、p1294-1296(2010))により記載されている。これらの方法は、個々のナノチューブをもたらす不連続的な方法である。
【0018】
従って、本発明が解決しようとする課題は、改善された導電率及び/又は熱伝導率が、及び/又は、改善された引張強度を有するカーボン製のファイバ又はケーブルを製造できる連続的な方法をもたらすことである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の目的
本発明に係る方法は、カーボン前駆体の触媒分解によるカーボンナノチューブの成長を含む。本発明によれば、反応領域には、触媒ナノ粒子及びカーボン前駆体が、常に、同時に、供給される。これにより、カーボンナノチューブ又はナノファイバの成長方法における第1の公知の課題、すなわち、触媒の消失又は不活性化という課題は解決される:不活性化された、又は、分解によって消失した(すなわち、ナノチューブの成長の間に、ナノチューブの本体内に、徐々に取り込まれた)触媒は、方法の過程全体において置き換えられる。
【0020】
本発明によれば、カーボン前駆体は、触媒粒子の近傍に、又は、より正確に言うと前記触媒粒子が堆積する基材の領域の近傍に直接供給される。これにより、カーボンナノチューブ又はナノファイバの成長方法における第2の公知の課題、すなわち、前駆体及び二次生成物の拡散の阻害により徐々にナノチューブの成長が止まるという課題は解決される。特に、試薬(触媒前駆体粒子及びカーボン前駆体)の流れが副生成物の流れにもはや対向しない構成が選択される。この流れの構成は、その中又はその上に触媒粒子が堆積する多孔質基材を用いることにより行われる。
【0021】
従って、本発明によれば、課題は、いくつかの手段を組み合わせた方法により解決される:
第1の手段は、触媒粒子との接触に供される多孔質基材である。第2の手段は、触媒又は触媒前駆体化合物を含む第1ガス流れの供給である。カーボン源化合物は、この第1ガス流れにより、及び/又は、第2ガス流れにより供給され得る;この第2ガス流れは、前記第1ガス流れから空間的に分離され得る。第3の手段は、この第1ガス流れ及びある場合は前記第2のガス流れの、前記多孔質基材の近傍への供給である。第4の手段は、前記多孔質基材の内部への、又は前記多孔質基材の表面上への、又は前記多孔質基材の近傍への、触媒の堆積、及び、この堆積した触媒上におけるカーボン源化合物の触媒分解である。
【0022】
好ましい実施形態において、反応領域、すなわちカーボン源化合物の触媒分解が起こる領域は、触媒粒子が堆積する領域に制限される。この制限は、種々の方法で行われ得る。多孔質基材を加熱して、少なくとも1種の反応性ガス、又は、全ての反応性ガスを、局所的に供給してもよい。局所的に多孔質基材を加熱してもよい。一実施形態において、これらの2つの手段、すなわち、反応性ガスの局所的な供給及び局所的な加熱は組み合わせられる。
【0023】
従って、本発明の第1の目的は、多孔質基材上で、少なくとも1種のカーボン前駆体化合物及び少なくとも1種の触媒前駆体化合物を分解させることを含む、カーボンナノチューブから形成されたケーブルの製造方法であって、
連続的に:
- 触媒前駆体を含む第1ガス流れは、多孔質基材との接触に供され、
- 少なくとも1種のカーボン前駆体を含む第2ガス流れは、前記多孔質基材との接触に供され、
- 前記多孔質基材は、触媒粒子の堆積及びカーボンナノチューブバンドルの触媒成長を引き起こす、好ましくは500℃~1000℃の温度にまで加熱される。
【0024】
好ましくは、前記多孔質基材は、少なくとも部分的に前記第1ガス流れにより通過される、及び/又は、前記第1ガス流れは、前記多孔質基材の表面領域に指向される。好ましくは、前記多孔質基材は、前記第1ガス流れが通過して基材を出る領域の近傍の領域、又は、前記第1ガス流れが指向される領域において、加熱される。前記局所加熱は、誘導により行われ得る。これらの特徴の各々により、触媒粒子が堆積する反応領域の制限をもたらすことができる。
【0025】
前記カーボン前駆体は、例えばアセチレン等の炭化水素であり得るか又は炭化水素を含み得る。
【0026】
好ましい実施形態において、前記多孔質基材は、多孔質シリコン、多孔質アルミナ、多孔質炭化ケイ素、相互接続された孔を有する発泡金属、相互接続された孔を有するカーボン発泡体、垂直配向性カーボンナノチューブ、これらの基材のいくつかを含む混合基材からなる群から選ばれる。
【0027】
本発明に係る方法は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の形成をもたらす。
【0028】
本発明に係る方法は、前記ナノチューブバンドルは、1又は複数の所定の長さに亘って、例えばその端部の一方において、又は例えばその端部の両方において、例えば銅等の金属でコーティングされるステップをさらに含む;従って、金属コーティングが形成される。これにより、例えば圧着、ネジ止め、又は溶接等の公知の技術により、前記金属コーティングを、電気的接続要素との接触に供することができる。
【0029】
また、本発明に係る方法は、前記ナノチューブバンドルを、例えばポリマー等の電気的に絶縁性の材料でコーティングするステップをさらに含み得る;いかなる公知の技術も使用できる。
【0030】
本発明の他の目的は、本発明に係る方法により製造されるカーボンナノチューブから形成されたケーブルである。
【0031】
また、本発明の他の目的は、本発明に係るケーブルを含むことを特徴とする、電気的接続要素である。
【0032】
また、本発明の別の目的は、本発明に係る方法を実行するための反応器であって、ガス流れの流れ方向に従って:
・反応性ガスを250℃~450℃の温度T2にまで加熱可能な第1加熱手段を備えた前記反応性ガスの流れを注入するための領域と、
・前記反応性ガスの流れにより通過される多孔質基材と、
・前記多孔質基材の少なくとも一部を450℃~700℃の温度T3にまで加熱可能な第2加熱手段を備えた領域と、
・形成された前記ナノファイバ又はナノチューブの配置を可能にする管状配置領域と、
・前記ナノファイバ又はナノチューブの収集手段と、
・前記ガスが前記反応器から出ることができる出口と、
を含む。
【0033】
この反応器は、形成されたナノチューブ又はナノファイバを、800℃~2,000℃の温度T4にまで加熱できる第3加熱手段を備える;これにより、それらの結晶性を改善できる。これらの第3手段は、好ましくは前記配置領域に配置される。
【0034】
前記反応器は、触媒前駆体を含む第1反応性ガス流れ及び少なくとも1種のカーボン前駆体を含む第2反応性ガス流れの供給手段を備え得る。第1反応性ガス流れ及び第2反応性ガス流れの前記供給手段は、第1反応性ガス及び第2反応性ガスの各々のための貯蔵部を含み得る。
【0035】
反応器は、前記カーボン前駆体の触媒分解領域の制限手段を含み得る。
【0036】
前記第2加熱手段は、好ましくは、局所加熱手段、すなわち前記多孔質基材の少なくとも一部を局所的に加熱できる手段である。従って、反応器の操作の間、好ましくは多孔質基材の少なくとも一部は、当該局所加熱手段の加熱効果により、前記多孔質基材の内部に入っていく反応性ガスの流れの温度よりも高い温度になる。このような局所加熱手段は、前記カーボン前駆体の触媒分解領域の制限手段として機能し得る。
【0037】
図面
図1~6は、本発明の種々の態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明に係る方法の原理を示す図である。
図2A図2Aは、本発明に係る方法の原理を示す図である。
図2B図2Bは、本発明に係る方法の原理を示す図である。
図2C図2Cは、本発明に係る方法の原理を示す図である。
図3図3は、多孔質基材の出口表面の近傍における、加熱の制限の2つの手段を示す図である。
図4A図4Aは、本発明に係る装置の3つの変形例を示す図である。
図4B図4Bは、本発明に係る装置の3つの変形例を示す図である。
図4C図4Cは、本発明に係る装置の3つの変形例を示す図である。
図4D図4Dは、本発明に係る装置の3つの変形例を示す図である。
図5A図5Aは、本発明に係る方法の2つの変形例を示す図である。
図5B図5Bは、本発明に係る方法の2つの変形例を示す図である。
図6図6は、同軸注入ノズルを有する本発明の3つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
説明
本発明はいくつかの必須の特徴と、任意に過ぎない他の特徴と、を有する。
【0040】
本発明によれば、カーボン前駆体(本明細書において、「カーボン源」ともいう)として機能する1種又は数種類の炭化水素化合物からの化学気相成長法が使用され、この化学気相成長は触媒粒子により触媒される。前記触媒粒子は、多孔性基材上に堆積され、又は、多孔性基材上に形成される。それらは、第1ガス流れにより供給される触媒前駆体化合物から生じる:これは、本発明の第1の必須の特徴である。好ましい実施形態において、前記触媒前駆体化合物は、微細化された液体又は固体粒子の状態で、前記第1ガス流れの中に導入される;換言すれば、前記第1ガス流れは、少なくともその流れの一部においてエアロゾル(本明細書において「触媒エアロゾル」ともいう)を含む。前記触媒前駆体化合物の固体及び/又は液体粒子を含むエアロゾルの状態での触媒前駆体化合物の導入は、本発明に係る方法の極めて好ましい実施形態を表す。他の実施形態において、前記触媒前駆体化合物は、ガスの状態で、第1ガス流れの中に導入される。
【0041】
本発明の他の必須の特徴によれば、反応性ガスは多孔質基材との接触に供される。本明細書において、用語「反応性ガス」は、第1ガス流れ、すなわち、一方には、粒子の前記多孔質基材への運搬の間においてそれらの部分的な又は全体的な蒸発及び/又は分解から生じる触媒エアロゾル及び気相を表し、及び、他方には、カーボン源化合物は前記第1ガス流れの一部であり得、及び/又は、第2ガス流れの一部であり得るから、カーボン源化合物、おそらくそのキャリアガス中のカーボン源化合物を表す。反応性ガスを多孔性基材との接触に供することは、例えば、触媒エアロゾルから生じる第1流れと、カーボン源化合物を含む第2流れとの共通の流れにおいて、又は、分離された流れにおいて行われる。また、触媒前駆体はカーボン源であり得る、すなわち、有機金属分子の有機部分は、前記分子の分解後に、カーボン源として使用され得る、及び/又は、溶媒が使用される場合には、前記有機金属分子の溶媒はカーボン源として使用され得ると理解される。
【0042】
図1に示される実施形態において、多孔質基材は膜であり、反応性ガスの流れにより通過される。これにより、反応性ガス流れの空間的な制限がもたらされる。この膜は、特に、マイクロ多孔質、メソ多孔質及び/又はナノ多孔質であり得る。
【0043】
本発明の他の必須の特徴によれば、カーボンナノチューブ又はナノファイバの成長を可能とするために、エネルギーが反応性ガスに供給される。このエネルギーの供給は、制限された領域において、行われ得る。図1に示される実施形態において、この制限は、ナノ多孔質膜の表面の近傍領域において行われる。従って、ナノチューブ又はナノファイバの成長に至る化学反応は、制限領域において起こる。
【0044】
本発明の他の必須の特徴によれば、反応性ガスの流れは連続的に供給され、これにより、ナノチューブ又はナノワイヤの連続的な成長が可能になる。図1に示される実施形態において、この成長は、バンドルを形成する非常に長いVANCTのマットをもたらす。
【0045】
図2は、エネルギー供給の制限の役割を図示している。図2Aは、第1ガス流れ21、及び、第2ガス流れ22により通過される多孔質基材を示す;これらの2つのガス流れは、基材の制限領域内で、加熱された出口において、混合する。基材の加熱のモードは、基材の範囲内における加熱のいかなる制限ももたらさない。図2Bは、多孔質基材の下流側に、基材におけるその出口近傍の薄い厚さの領域のみを加熱する局所化された熱エネルギー供給を備えた、単一のガス流れにより通過される多孔質基材を示す。図2Cは、同一の構成を示すが、エネルギー供給は、多孔質基材における出口近傍の薄い厚さの領域に制限されている。
【0046】
図3は、基材の局所加熱を誘導により行うための2つの実施形態を図示している:多孔質基材の出口に固定された発泡金属を有する場合(図4A)、及び多孔質基材の出口に金属リングを有する場合(図3(b))である。
【0047】
図4は、本発明の実施に好適な反応器の4つの部分断面図を図示する。
【0048】
1. 試薬
まず、第1ガス流れは触媒エアロゾルを含む。触媒エアロゾルは、触媒前駆体金属化合物を含む粒子を含み、前記粒子がキャリアガスにより運搬される。このキャリアガスは、カーボン前駆体炭化水素化合物を含み得る、又は、それは、選択される反応条件下において不活性であり得る(例えば、それは選択される反応条件下において、触媒的に分解しない炭化水素化合物であり得る、又は、それは窒素又は水素であり得る)。触媒前駆体金属化合物を含む前記粒子は、この化合物が液体である場合には前記触媒前駆体金属化合物により、又は、液体溶媒中に前記触媒前駆体金属化合物を含む溶液により、形成される液体から(エアロゾルを形成するために前記液体が装置に導入される瞬間の温度T1で)調製され得る。前記液体溶媒はカーボン前駆体炭化水素化合物であり得る、又は、それは多孔質基材上の触媒分解の反応条件下において、分解されない化合物であり得る。好ましくは、触媒エアロゾルは、最初に、液体粒子を含む。触媒エアロゾルは、キャリアガス中への(温度T1である)液相の定期的な注入により形成され得る。例えば内燃機関で使用されるような一般的なインジェクションポンプが使用され得る。
【0049】
多孔質基材への運搬の間、(反応器のこの領域の、本明細書においてT2と称される温度を有する)これらの液体粒子は、部分的に又は完全に蒸発し得る;特に、液体粒子の溶媒は、部分的に又は完全に蒸発し得る。そして、触媒エアロゾルを形成する粒子は、触媒前駆体金属化合物から形成される固体粒子になり得るか、又は、蒸発し得る。多孔質基材への運搬の間、(反応器のこの領域の、本明細書においてT3と称される温度を有する)これらの液体又は固体粒子又はこれらのガス分子は、特に、熱分解によって、部分的に又は完全に分解され得る。そうして、それらに含まれる金属触媒が放出される。触媒エアロゾル又は触媒前駆体ガス分子を形成する粒子の分解の詳細、及び、多孔質基材上又は多孔質基材中における触媒粒子の形成の詳細については、発明者には判っておらず、従って、彼らは、本発明に係る方法のこの部分について彼らが行う理論的な表現に束縛されることを望まない。
【0050】
前記カーボン前駆体炭化水素化合物は前記第1ガス流れ(ここで、それはエアロゾルのキャリアガスとして作用し得る)により供給され得る、及び/又は、それは他のガス流れにより(例えば前記第2ガス流れ、及び/又は第3ガス流れにより)供給され得る。また、前記カーボン前駆体炭化水素化合物は、カーボン前駆体炭化水素化合物を含む微細化された液体粒子を含むエアロゾル(本明細書において、以下「炭化水素エアロゾル」ともいう)の状態で、導入され得る;この後者の場合、炭化水素エアロゾルは、触媒エアロゾルと同一の流れにおいて、又は、他の流れにより供給され得る。
【0051】
いずれの場合も、カーボン前駆体化合物は、単一の化合物又は複数の化合物を含み得る。これは好ましくは炭化水素であるが、それは例えば一酸化炭素(CO)も含み得る。
【0052】
一実施形態において、触媒金属の前駆体化合物は、フェロセンである。フェロセンは、約172℃の融点及び約250℃の昇華点を有しているから、好ましくはトルエンに、それを溶かすことが適切である。従って、触媒エアロゾルは、フェロセンが溶解したトルエンの液滴を含む。温度T1は、例えば0℃~50℃、好ましくは15℃~30℃であり得る。トルエン(約110℃の沸点)が蒸発すると、フェロセンは固体又は液体粒子の状態で、触媒エアロゾル中に残る、又は、反応器の領域の温度T2により、混合物は単にガス状の混合物になる。例えば、T2は120℃~450℃、好ましくは250℃~450℃であり得る。例えばベンゼン又はキシレン等の他の溶媒を用いてもよい。
【0053】
フェロセンが約250℃の沸点(又は昇華点)を有することが知られている;発明者は、触媒エアロゾル中の触媒前駆体の粒子の正確な構造が本発明にとって重要であると思わない;方法を実行すれば、そして、特に温度T1及びT2によれば、触媒前駆体粒子が第1ガス流れのキャリアガスに注入される瞬間と、このガス流れが温度T3の領域において多孔質固体の表面に到達する瞬間との間で、触媒エアロゾルの構造は変化し得る。フェロセンは、約450℃で分解して、鉄及びシクロペンタンになることが知られており、好ましい実施形態では、温度T3は少なくとも450℃に等しい。例えばT3は、450℃~700℃であり得る。このフェロセンの分解は、第1ガス流れ中において、及び/又は、多孔質基材と接触して行われ得る。本発明の必須の態様によれば、触媒は、ナノ粒子の状態で、多孔質基材中又は多孔質基材上に堆積又は形成される。
【0054】
フェロセンの粒子から形成された鉄のナノ粒子によって、触媒的に分解され得るカーボン前駆体化合物は、アセチレンである;触媒エアロゾルのトルエンも分解されるか否かについては、実質的に温度に依存する。アセチレンは、触媒エアロゾルのキャリアガスであり得る。
【0055】
例えばコバルトセン、ニッケロセン、又は、フェロセン及び/又はコバルトセン及び/又はニッケロセンの混合物等の他の分子を、触媒前駆体として用いてもよい。
【0056】
2. 多孔質基材
前記触媒前駆体、好ましくは触媒エアロゾルは、キャリアガスにより運搬されて、第1ガス流れを形成する;この流れは、多孔質基材との接触に供される。これは、本発明に係る方法の第2の必須の特徴である。基材は、以下の特徴を有しなければならない:高温に対する優れた耐熱性、反応性ガスを受け入れる多孔性、試薬に対する良好な化学耐性、(上述のごとく、「ベース成長機構」の用語で知られる成長機構において、そのベースによりカーボンナノチューブ又はナノファイバの成長状態を促進する接着力をもたらすための)触媒との優れた表面親和性、及び、触媒粒子の拡散及び不活性化を制限するための触媒の低溶解性である。
【0057】
多孔質基材は、特に、ガス流れが通過可能な十分な開気孔率を有しなければならない。前記多孔質基材は、多孔質膜であり得る。
【0058】
(閉じた孔に対して)相互接続した孔を有する場合、以下の基材は、特に適切である:
- 多孔質シリコン(これは、適切なマイクロリソグラフィマスクを使用した単結晶シリコンの化学エッチングにより得られる;従って、約1マイクロメートル(典型的には、0.7μm~3μm)の直径の貫通細孔を有する膜(「マクロ多孔質シリコン」と呼ばれている)が得られる;シリコンの化学的性質が適切でない場合、例えば電気メッキにより、他の材料の薄層を堆積してもよい);
- 多孔質アルミナ(これは、アルミニウムシートの陽極酸化処理後、それらの基材から酸化膜を除去することにより得られる;陽極層は、互いに平行且つ基材に対して垂直な、典型的には10nm~100nmの径を有する円柱状の孔を有する);
- 多孔質炭化ケイ素、特にβ炭化ケイ素、及び好ましくは発泡状;
- 発泡金属(例えば発泡アルミニウム)、
- カーボン発泡体、
- VACNT(自立か又は多孔質基材上に成長させた、又は中央チャネルの空洞が金属又は金属炭化物で満たされた)、
- 混合基材(例えばアルミナ膜により支持された発泡ニッケル)。
【0059】
以下においてより詳細に説明されるように、電気を伝導しない非金属基材は、誘導による局所加熱の効果を強化するために、少なくとも部分的に(そして、好ましくはその出口表面の近傍の領域において)金属膜でコーティングされ得る。
【0060】
触媒又は触媒前駆体を多孔質基材と接触させることは、いくつかの方法で行われ得る。
【0061】
第1実施形態において、(キャリアガスとともに触媒前駆体化合物を含む)第1ガス流れは、それが少なくとも部分的に通過する前記多孔質基材に注入される。第2実施形態において、それは、外部を介して、前記多孔質基材の近傍、特にその外面の近傍に注入される。
【0062】
前記第1ガス流れは、多孔質基材に注入されることが好ましい。あるいは、それは、反応器内の、基材の近傍、特にその外面上に注入され得る。
【0063】
本発明に係る方法は、ナノチューブの成長の全工程に亘って、触媒ナノ粒子及びカーボン前駆体を含む反応媒体を同時に供給するという特徴を有する。従来技術による方法において、触媒の供給及びカーボン前駆体の供給は、通常2つの別々のステップに分けられる:第1ステップにおいて、触媒粒子を基材上又は基材中へ堆積させ、第2ステップで、カーボン前駆体の供給により、カーボンナノチューブを成長させる。
【0064】
発明者らは、本発明に係る方法によれば、実際に、触媒の消失又はその触媒活性の低下によるCNTの長さの制限を克服できることを見出した:本方法によれば、不活性化された、又は、分解により消失した(すなわち、ナノチューブの成長の間に、ナノチューブの本体内に、徐々に取り込まれた)触媒を常に置き換えることができる。実際、本発明に係る方法によれば、互いに離間しているが、チューブの全長に亘って存在する、ナノチューブの成長の間にナノチューブの中央チャネル内に閉じ込められた金属触媒のナノ粒子(例えば:鉄)を含むカーボンナノチューブが得られる:これは、エアロゾル状の触媒の連続供給によってもたらされるこの方法の特徴である。このことは、触媒の連続供給、及び、ナノチューブ中に取り込まれることにより、触媒が徐々に消失することを証明するEP1515911B1に記載された方法と同様である(上述のSebastien Lagoutteの論文の117/118ページの図III-5(a)を参照)。
【0065】
この理論に束縛されることなく、発明者らは、本発明に係る方法が、従来技術による方法の可能性を制限する反応機構の問題を解決すると考えている:VACNTの長さが、ある制限値(典型的には、数百マイクロメートル又は数ミリメートル)を超えると、(流れに対向する)前駆体及び副生成物の拡散が低下することにより、触媒サイトへの前駆体のアクセス及びVACNTのマットの表層への副生成物のアクセスが妨げられる。本発明に係る方法では、触媒は定期的に更新され、反応性ガスのアクセスは副生成物の放出から空間的に分離される。
【0066】
特定の実施形態によれば、VACNTのマットは多孔質基材として用いられる;変形例において、触媒エアロゾルの定期的な注入による触媒の連続供給に伴い生成した触媒から生じる金属粒子(例えばFe又はNi又はCo)又は金属炭化物(例えばFe、Ni又はCo炭化物)を中央チャネルに含むVACNTのマットが用いられる。本構成によれば、ナノチューブの中央チャネルに含まれる金属粒子又は金属炭化物により、誘導による当該基材の局所加熱が可能になる。
【0067】
3. 局所加熱
第3の必須の特徴は、化学気相成長が多孔質基材の局所領域、好ましくは(キャリアガスの流れ方向に関して)下流側の周辺の領域において実行されるということである。この領域の位置は、T3で表される温度における局所加熱の効果により定義され得る。加熱領域において、触媒のナノ粒子を形成するために触媒前駆体が分解されるのは加熱領域においてであり、カーボン前駆体の触媒分解は起こるのは、この領域である。温度T3の値により、触媒前駆体の分解は、この領域の上流側で始まり得る。
【0068】
第1ガス流れがカーボン前駆体化合物を含まない場合、又は、他のカーボン前駆体化合物(又は前記化合物の追加量)の供給が必要な場合、カーボン前駆体化合物を含む第2ガス流れは、この局所領域のできる限り近く、好ましくはこの局所領域に注入されなければならない。第2の反応生成物が容易に除去されなくなるため、前記第1ガス流れの流れに逆らう前記第2ガス流れの注入は回避される。
【0069】
カーボン前駆体化合物の触媒分解領域の制限は、本発明に係る方法の必須の態様である。この制限は、組み合わせてもよい2つの手段により行われ得る:多孔質基材を少なくともT3に等しい温度にまで局所的に加熱すること、及び、少なくともT3に等しい温度の基材上又は基材中(又は前記基材の領域)にカーボン前駆体化合物の流れを局所的に注入することである。この2つの実施形態において、この制限は、そのベースを介してカーボンナノチューブ又はナノファイバの連続成長が起こる不均一系触媒領域を区画する。
【0070】
第1実施形態において、不均一系触媒領域を区画するのは、エネルギー供給の位置である。局所加熱のいくつかの手段が、用いられ得る。例えば、反応領域の特定の一部を選択的に加熱することは可能であり、及び/又は、多孔質基材が加熱に関与する(それ自体、加熱される部分になる)こともできる。これは、例えば少なくとも部分的に基材を囲むコイルを使用した誘導加熱により、及び、反応領域の環境を形成する材料を上手く選択することにより、行われ得る。これは、好ましい実施形態である。
【0071】
誘導加熱において、加熱される領域は、前記領域を囲むコイルにより生じる振動磁場に中に配置される。一実施形態において、金属部分が反応の近傍(例えば多孔質基材の出口表面の近傍)に配置され、印加された磁場の影響が及ぶ領域にある他の全ての部分は、非金属であるか又は当該金属部分よりも低抵抗の導電性材料からなる。例えば、多孔質基材は(例えば多孔質アルミナ等の)非金属材料製であり、開いたマクロ孔を有する発泡金属が非金属多孔質基材の出口表面に固定(又はこの出口表面の極めて近傍に配置)されてもよい。これは図3(a)に図示されており、符号31は前記非金属多孔質基材、符号32は前記発泡金属を示す。図3(b)に示すように、発泡金属に代えて、又は、(図示しない変形例であるが)発泡金属に加えて、金属リング33を使用してもよい。
【0072】
局所化されたエネルギー供給はまた、いかなる好適な手段、特に抵抗又は多孔質基材自体の抵抗加熱(ジュール効果)により、たとえこれらの解決手段が好適な解決手段ではない場合においても(加熱の制限は制御がより困難であり、接続は管理が困難になる)、行われ得る。エネルギー供給はまた、レーザー照射により行われ得るが、(合成の間、表面堆積により表面の吸収係数が変化し得る、及び、レーザビームの光路のための空間的な制約を考慮に入れられなければならないので)これも好適な解決手段ではない。
【0073】
また、多孔質基材は、(好ましくは配向性)カーボンナノチューブにより形成され得る。多孔質基材がVACNTにより形成されると、局所化されたエネルギー供給はまた、上述のごとく中央チャネルにおそらく及び好ましくは金属粒子又は金属炭化物が含まれるVACNTの誘導加熱により行われ得る。
【0074】
局所化されたエネルギー供給はまた、カーボンナノチューブの合成のための活性な触媒粒子を、直接誘導加熱することにより行われ得る。この解決手段は、最も局所化された加熱を可能にする。それは、単独で、又は、特にそれ単独ではCNTの成長のために必要な全エネルギー供給を形成できない場合に、好ましくは他の加熱手段の補助として、用いられ得る。
【0075】
これらの局所加熱手段に、前記第1及び/又は第2ガス流れの予熱が付加され得る。
【0076】
また、(非金属及び絶縁性)多孔質基材は、その表層のみが誘導により加熱されるように、金属コーティング(例えば多孔質アルミナ上のアルミニウムコーティング)を備えてもよい。
【0077】
エネルギー供給の制限はまた、例えば反応領域の近傍(多孔質基材の出口表面)に低い熱伝導率を有する層を備える等の熱障壁の導入により補填され得る。
【0078】
4. 反応器
加熱される基材は、本明細書において「反応器」と称される筐体内にあり、好ましくは、前記方法は大気圧の近傍の圧力で起こる。この筐体は、閉じることができるか、又は、部分的に閉じることができるが、反応器の内側と外側との間のガス交換に対して密封され得る。それは、形成されたナノチューブの収集手段を含む。筐体は、反応器内における極度に高い熱勾配を回避するために、その壁を加熱する手段を含み得る。また、反応器に導入されるガス及び前記方法により生じるガスを連続的に除去すべく、反応器は、ポンプ手段を含む。また、反応器は、洗浄手段を含む;洗浄は、前記方法の開始前における反応器のスチーミングとともに、又は、当該スチーミングなしで、中性ガスを用いたリンスにより行われ得る。
【0079】
図4は、本発明に係る方法の実施に好適な反応器の3つの部分断面図を図示している。図4Aは、ガス混合物40(このガス混合物は触媒前駆体及びカーボン前駆体を含む)と、温度T2への到達を可能にする加熱手段42(上述のごとく定義された、例えば供給ダクトを囲む抵抗加熱)を有する供給ダクト41と、このガス流れにより通過される多孔質基材43とを示す。カーボンナノチューブ又はナノファイバの触媒成長を可能にするのに十分な温度T3への到達を可能にする局所加熱手段45(例えば誘導コイルにより加熱される金属リング)は、多孔質基材43の出口表面44の極めて近傍に位置する。任意で、ナノチューブ又はナノファイバを、その結晶性を改善可能な温度T4にまで加熱できる加熱手段55を備えた加熱領域が、多孔質基材43の下流側に配置される。T2<T3の条件を満たす必要がある。
【0080】
図4Bは、多孔質基材43の下流側に位置する管状配置領域49に配置されたカーボンナノチューブ又はナノファイバ46の成長を示す。反応器がナノチューブ又はナノファイバを温度T4まで加熱できる加熱手段55を含む場合、これらの手段はこの管状配置領域49の周辺に配置されることが好ましい。
【0081】
図4Cは、ナノチューブ又はナノファイバの巻回を可能にする手段47を示す。反応しなかった全反応性ガス、キャリアガス及びガス反応生成物は、吐出口48を通じて反応器から排出され得る。圧力は、常圧近傍であることが好ましい。
【0082】
図4Dは、図4Cの反応器の変形例を示し、反応器は、製造されたナノチューブを連続的に放出する手段を備える。なお、ナノチューブ又はナノファイバを巻回する手段47は、矢印の方向に横にナノチューブ又はナノファイバをずらすことができるエンドレススクリューであり得る。反応器は、完全に閉じられているわけではない:ナノチューブ又はナノファイバを巻回する手段47が出ることを可能にするために、スロット52が設けられている。反応器の内部を周囲雰囲気から分離するために、吸引手段51を備えた窒素ナイフ50が設けられている。
【0083】
5. 試薬の注入に関する変形例
反応領域の正確な制限を可能にするために、望ましくは、ガス状の化学種及び/又はエアロゾルの粒子の混合が、目標とする不均一系触媒領域(反応領域)のできる限り近傍、すなわち多孔質基材の出口表面のできる限り近傍で局所的に行われ得る。実際、反応混合物の分子の分解が多孔質基材の内部で起こる場合、及び、温度が十分に制限されない(典型的には450℃を超えた温度)場合、CNTの成長が多孔質基材の表面から遠く離れた位置で起こり、必然的に孔の閉塞及びCNTの成長の停止をもたらし得る。
【0084】
発明者らは、例えば電界紡糸によるファイバ合成の分野で使用される同軸注入ヘッドを使用することが可能であることを発見した:これらの同軸注入ヘッドによれば、特に、反応性ガスを、これらを混合させることなく、数ミリメートルのスケールで制限できる;注入ヘッドの出口は、多孔質基材の入口表面に対応し得る。
【0085】
2つのガス流れを(例えば同軸で)別々に注入する場合、2つの極端なケースがある:(i)ランダム多孔質基材では、反応性ガスは、多孔質基材を通過する間に徐々に混合される;温度が多孔質基材の出口表面の近傍で十分に制限されない場合、(いくつかの)孔が閉塞するおそれがある;(ii)区画された多孔質(密封チャンネル)基材では、反応性ガスは多孔質基材の出口だけで混合され、孔は閉塞しないが、混合が多孔質基材を完全に通過した後にだけ起こる場合、反応は基材の表面で起こることができない。
【0086】
他の中間のケース、特に多孔質基材の表面上における強制的流れの1つが考慮され得る:チャネルは、反応混合物のポンピング(抽出)専用であり、反応性ガスは、出口表面の極めて近傍であるが、出口表面の「下側」で混合されるケースである(おそらく多孔質基材に組み合わせられた相互接続されたチャネルを有する多連式インジェクタ)。これらの実施形態のうちの2つは、図6に示される。図6(a)は、(縦断面図として示される)同軸注入を備えた実施形態を示す:第1ガス流れ21は第1の周辺管61を通じて多孔質基材64を備えた反応器に注入される。その中央には、第2ガス流れ22を注入する第2の管62がある。2つのガス流れは多孔質基材64内で混合され、カーボンナノチューブ66の成長は基材の表面で起こる。図6(a)は、カーボンナノチューブの成長に必要な温度T4を与える制限された加熱のための手段を示していない。
【0087】
図6(b)は、図6(a)の実施形態から派生したより複雑な注入モードを示し、同軸の外管61及び内管62、並びに反応混合物の吸引専用の同軸周辺管63を備える;ガス流れは、それらが吸引管63に吸引されるときに、混合される。多孔質基材が設けられていない場合、カーボンナノチューブの成長は第2ガス流れ22を注入する管62の端(断面)で起こる;この場合、同軸管は、区画された多孔性を有する多孔質基材の役割を有する。多孔質基材が設けられている場合、カーボンナノチューブの成長は後者の出口表層の近傍上又は中で起こる;本実施形態において、多孔質基材は、好ましくは非常に薄い(多孔質膜)。
【0088】
6. 本方法の特徴の概要及び効果
図5は、本発明に係る方法の2つの実施形態を図示する。
【0089】
図5Aは、セクション3において上述した方法の1つによる、カーボン前駆体の触媒分解の温度にまで局所加熱を行う実施形態を示す。触媒前駆体は、液体溶媒に溶解している。これは、例えば、トルエンに溶解したフェロセンであり得る。この溶液の粒子(液滴)を含み、キャリアとしての相を有するエアロゾルが形成され、前記気相は、炭化水素であるカーボン前駆体ガスを含み、前記気相は、他のガスを含み得る。このエアロゾルは、溶媒及び触媒前駆体を蒸発させるのに十分な第1温度T1まで加熱される。この気相は、触媒前駆体を分解させるのに十分な第2温度T2まで加熱される。おそらく、この分解は、適切な金属元素の原子、従って金属凝集体を形成する。例えば、触媒前駆体がフェロセンである場合、鉄の原子が形成される。これらの原子は、凝集して、多孔質基材の表面上に金属ナノ粒子を形成する。(なお、本発明のフレームワークにおいて、凝集が気相中で起こるか又は基材の表面上で起こるかどうかについて理解することは重要ではない。)基材の出口表面の近傍の領域を、カーボンナノチューブ又はナノファイバを触媒成長させるのに十分な第3温度T3にまで局所加熱することにより、カーボン前駆体は、触媒ナノ粒子の表面において触媒的に分解される。カーボン前駆体の分解により新たに生じたカーボンの連続供給があり、この供給が多孔質基材を通じて行われる場合、この分解は、ベース成長機構によるカーボンナノチューブの形成をもたらす。凝集して新たなナノ粒子を形成する又は既存のナノ粒子に付加される金属原子の、多孔質基材を通じて行われる連続供給によって、新しい触媒ナノ粒子は、実質的に連続して又は少なくとも定期的に形成される。従って、反応条件下の不安定性による偶発的なイベントを除いて、カーボンナノチューブの成長は、通常中断されない。本実施形態において、条件T1< T2<T3を満たす必要がある。
【0090】
図5Bは、カーボンナノチューブ又はナノファイバを成長させるのに十分な温度T3にまで加熱される反応領域へのカーボン前駆体の局所的な供給を備えた他の実施形態を示す。第1ガス流れ21は、(カーボン源ガス、又は、図示するように、他のガスであり得る)キャリアガス中の触媒エアロゾルにより形成される。第2ガス流れ22は、おそらく他のガスにより希釈されたカーボン前駆体により形成される。図5Aの実施形態と同様に、液体溶媒に溶解した触媒前駆体は、エアロゾルを形成するために他のガスと混合され、溶媒及び触媒前駆体を蒸発させるために第1温度T1まで加熱される。このガス流れは、触媒前駆体を分解させるのに十分な第2温度T2まで加熱される;前記触媒前駆体の金属の原子は、凝集して、多孔質基材の表面上に金属ナノ粒子を形成する。上記実施形態と同様に、基材は、カーボンナノチューブ又はナノファイバを成長させるのに十分な第3温度T3まで加熱される。カーボン前駆体ガスを含み、おそらく他のガスと混合した第2ガス流れ22は、前記第3の温度T3まで加熱された領域への局所的な供給を通して、多孔質基材の出口表面に配置された触媒との接触に供される。そうして、カーボン前駆体の分解により生じた新しいカーボンの連続供給があり、この供給が局所的に行われる場合、この領域における前記カーボン前駆体の触媒分解が、ベース成長機構によるカーボンナノチューブの形成につながる。凝集して新たなナノ粒子を形成する又は既存のナノ粒子に付加される金属原子の、多孔質基材を通じて行われる連続供給によって、新しい触媒ナノ粒子は、実質的に連続して又は少なくとも定期的に形成される。従って、反応条件下の不安定性による偶発的なイベントを除いて、カーボンナノチューブの成長は、通常中断されない。本実施形態においても、条件T1<T2<T3を満たす必要がある。
【0091】
上記2つの実施形態、すなわち温度T3まで局所加熱する実施形態、又は、温度T3まで加熱された領域へのカーボン前駆体の局所的な供給を行う実施形態では、形成されたカーボンナノチューブ又はナノファイバの結晶性(すなわち原子及びナノメートルスケールのオーダー)を改善するために、第4温度T4の第4加熱領域が、ナノチューブの成長領域の下流側に設けられ得る。
【0092】
この理論に束縛されることなく、発明者らは、本発明に係る方法によれば、その場で(すなわち基材の多孔質表面上の反応領域において)、触媒エアロゾルの粒子から触媒粒子を形成できると考えている;実際、これらの触媒前駆体化合物の粒子は、多孔質基材の局所加熱された領域において熱分解により分解され、ナノメートルサイズの金属粒子を形成する。この同じ反応領域において、ガス状又は液体粒子状でキャリアガスにより運搬された又は独立に注入されたカーボン前駆体成分は、触媒粒子の触媒効果により分解される。
【0093】
従って、本発明に係る方法は、試薬の供給が触媒粒子の近傍及び反応領域に直接局所化されるという事実により特徴づけられる。このために、機械的支持、触媒再生器及びカーボン前駆体の供給源としての役割を同時に果たし得る多孔質基材が用いられる。この好ましい構成において、反応性試薬(触媒及びカーボン前駆体)の流れは、副生成物の流れに対向することがないから、カーボンナノチューブの長さに拘わらず、永続的な供給-除去システムを確立できる。この構成は、試薬の供給及び副生成物の除去の条件が安定的に、すなわち準無限に維持される限り持続するCNTの成長に対応する。
【0094】
本発明に係る方法は、極めて長いナノチューブ及びナノファイバの成長を可能にし、この成長は平行なナノチューブ又はナノファイバからなるバンドル状で起こる;このことは、得られたナノチューブ又はナノファイバの取扱いを容易にする。例えば、それらは、その成長の間、反応領域から管に排出されるガス流れを導くことにより、この管に運ばれる。例えば、この管は金属又はクォーツ製であってよく、その端は基材の近傍に配置され得る(それは、収集面、例えば回転ローラの表面であり得る)。これにより、得られたナノチューブ又はナノファイバのバンドルを受け取り、管理し、そして保護できる。
【0095】
これらのナノチューブ及びナノファイバは、その長さに沿って極めて少ない界面又は結晶の境界を示すか、又は、このような界面又は境界さえない;これらの界面及び境界は、当業者に公知の異なる分析技術、及び、どのような場合も透過型電子顕微鏡観察により強調され得る。
【0096】
本発明に係る極めて長い前記ナノチューブ及びナノファイバは、導電体として、又は、導電体の製造において使用され得る。また、これらは、おそらくコーティング後に、機械式ケーブルとして及び/又は熱エネルギー輸送部材として使用され得る。これら3つの応用において、これらの熱伝導性及び/又は導電性は、前記ナノチューブ及びナノファイバの連続的な性質により、及び、その優れた結晶学的品質により改善される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6