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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】マイクロ流体装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/12 20060101AFI20220809BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220809BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G01N1/12 B
G01N37/00 101
G01N1/00 101G
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020528937
(86)(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 GB2018053391
(87)【国際公開番号】W WO2019106345
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】1719855.7
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターマン,デイビッド
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0035349(US,A1)
【文献】特開2013-242247(JP,A)
【文献】特開2005-300460(JP,A)
【文献】特開2015-064373(JP,A)
【文献】特開2012-247231(JP,A)
【文献】特開2006-038842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験液を分析するためのマイクロ流体装置であって、
ブリッジ可能な障壁と、
検知チャンバ内に設けられたセンサを収容するために、かつ分析される試験液を受容するために、前記ブリッジ可能な障壁の上流に位置付けられている、上流部分であって、前記上流部分が、入口チャネルおよび出口チャネルを備え、前記入口チャネルと前記出口チャネルとの間が液体で充填可能である、上流部分と、
前記上流部分の前記出口チャネルからの液体を受容するために、前記ブリッジ可能な障壁の下流に位置付けられている、下流部分と、
取り外し可能に取り付け可能な封止材であって、前記上流部分を閉鎖するように構成され、ならびに、液体が前記上流部分に提供されたときに、
ー前記封止材の除去前に前記液体の流れを阻止するように、および
ー前記封止材の除去後に、液体が前記上流部分から前記下流部分に前記障壁を通過するのを可能にするように構成されている、取り外し可能に取り付け可能な封止材と、を備え、
ブリッジが、前記障壁と隣接して設けられており、前記封止材の除去後に、前記ブリッジは、液体が前記障壁を介してまたは越えて、前記上流部分から前記下流部分に流れるのを容易にする、
マイクロ流体装置。
【請求項2】
前記封止材は、液体が前記入口チャネルから前記出口チャネルに流れるのを阻止するように追加的に構成されている、請求項1に記載のマイクロ流体装置。
【請求項3】
前記障壁に面している前記ブリッジの表面が、90°以下、任意選択的に75°以下の水との濡れ接触角を有する、請求項1または請求項2に記載のマイクロ流体装置。
【請求項4】
前記障壁に面している前記ブリッジの前記表面が、20°以下の水との濡れ接触角を有する、請求項3に記載のマイクロ流体装置。
【請求項5】
前記障壁に面している前記ブリッジの前記表面に、化学的に親水性の層または処理、任意選択的に、前記ブリッジの未処理表面よりも親水性の層、またはプラズマ処理が提供されている、請求項3に記載のマイクロ流体装置。
【請求項6】
前記障壁に面している前記ブリッジの前記表面が、前記表面の表面積を増加させるための物理的なテクスチャ、任意選択的に、前記表面上に設けられた支柱、フィン、および/または溝を含む、請求項3に記載のマイクロ流体装置。
【請求項7】
前記上流部分が、前記入口チャネルと前記出口チャネルとの間において液体で充填されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項8】
前記センサが、濡れセンサである、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項9】
前記センサは、イオンが膜の一方の側面から膜の別の側面に流れるのを可能にするように構成される膜を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項10】
前記膜が、ナノ細孔を含む、請求項9に記載のマイクロ流体装置。
【請求項11】
試験液を分析するためのマイクロ流体装置であって、
検知チャンバ内に設けられたセンサと、
検知チャンバ入口チャネルおよび検知チャンバ出口チャネルであって、各々が、前記検知チャンバの内部および外部に液体をそれぞれ通過させるために前記検知チャンバに接続している、検知チャンバ入口チャネルおよび検知チャンバ出口チャネルと、
前記マイクロ流体装置へのサンプル入力ポートを形成するリザーバであって、前記リザーバが、前記検知チャンバ入口チャネルと流体連通している、リザーバと、
液体収集チャネルと、
前記検知チャンバ出口チャネルの端部と前記液体収集チャネルとの間の障壁と、
前記サンプル入力ポートを被覆する第1の封止材と、
前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部を被覆し、それによって、液体が前記検知チャンバから前記障壁を越えて前記液体収集チャネルの中に流れるのを防止する、第2の封止材と、を備え、
前記マイクロ流体装置が、前記サンプル入力ポートにおける前記第1の封止材から前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部における前記第2の封止材まで液体で充填されており、その結果、前記センサが、液体によって被覆されており、かつ気体または気体/液体境界面に露出されておらず、
前記第1および第2の封止材は、前記リザーバと前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部との間に前記液体を流して、一部の液体が前記障壁を越えて流れるように取り外し可能である、マイクロ流体装置。
【請求項12】
前記検知チャンバ出口チャネルを前記液体収集チャネルに接続するための、前記障壁を越えてブリッジチャネルを形成する、障壁カバーをさらに備える、請求項11に記載のマイクロ流体装置。
【請求項13】
前記障壁に面する前記障壁カバーの表面が、90°以下、任意選択的に75°以下の水との濡れ接触角を有する、請求項12に記載のマイクロ流体装置。
【請求項14】
前記障壁に面する前記障壁カバーの前記表面が、20°以上の水との濡れ接触角を有する、請求項13に記載のマイクロ流体装置。
【請求項15】
前記障壁カバーが、前記検知チャンバ出口チャネルを前記液体収集チャネルに接続するための位置に向かって付勢されている、請求項12~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項16】
前記第2の封止材が、前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部と前記ブリッジチャネルとの間において前記障壁カバーの下に位置付けられている、請求項12~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項17】
前記第2の封止材の前記取り外しを支援するように、前記第2の封止材に接続された剥離ライナをさらに備える、請求項16に記載のマイクロ流体装置。
【請求項18】
前記剥離ライナの少なくとも一部が、前記第2の封止材と前記障壁カバーとの間に位置付けられている、請求項17に記載のマイクロ流体装置。
【請求項19】
前記障壁カバーが、流れを前記ブリッジチャネル中に促進させるために、前記ブリッジチャネルから前記検知チャンバ出口チャネルに向かって延在するディッパをさらに備える、請求項12~18のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項20】
前記ブリッジチャネルが、前記障壁の脇の降水管に接続する湾曲部を備えており、前記湾曲部が、少なくとも一方の側に曲線状プロファイルを含む、請求項12~19のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項21】
前記装置は、前記第1および第2の封止材の除去が前記センサを気体または気体/液体境界面に露出させないように構成されている、請求項11~20のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項22】
前記第1および第2の封止材は、それらが一緒に除去され得るように接続されている、請求項11~21のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項23】
前記第1および第2の封止材に取り付けられた封止材ハンドルをさらに備え、前記封止材ハンドルが、前記第1および第2の封止材を除去するように引っ張られ得る、請求項22に記載のマイクロ流体装置。
【請求項24】
前記液体収集チャネルが、前記障壁の脇の降水管と、前記液体収集チャネルの主要部分との間に湾曲部を備えており、前記湾曲部が、少なくとも一方の側に曲線状プロファイルを含む、請求項11~23のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項25】
前記第2の封止材が、前記マイクロ流体装置の表面よりも親水性の接着剤によって前記マイクロ流体装置の前記表面に取り付けられている、請求項13に記載のマイクロ流体装置。
【請求項26】
障壁カバーが、前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部と前記ブリッジチャネルとの間の接触を促すように付勢されている、請求項12~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項27】
前記障壁カバーが、前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部と前記ブリッジチャネルとの間を封止するためのパッキンを有する、請求項12~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項28】
前記センサが、濡れセンサである、請求項11~27のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項29】
前記センサは、イオンが膜の一方の側面から膜の別の側面に流れるのを可能にするように構成される膜を含む、請求項11~28のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項30】
前記膜が、ナノ細孔を含む、請求項29に記載のマイクロ流体装置。
【請求項31】
請求項11~30のいずれか一項に記載のマイクロ流体装置を調製する方法であって、前記第1および第2の封止材を除去し、それによって、一部の液体が前記装置を作動させるために前記障壁を越えて流れるように、前記リザーバと前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部との間に液体を流すこと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体装置に関し、特に、濡れ条件において検知するためのセンサを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なマイクロ流体装置およびセンサが知られている。WO99/13101およびWO88/08534により開示されているようなセンサは、乾燥状態で提供され、その装置に適用された液状試験サンプルは、毛管流によって装置内のセンサ領域に輸送される。他のタイプのセンサとしては、イオン選択半透膜を備えるイオン選択センサなどが知られている。
【0003】
別の例が、WO2009/077734により提供され、それには、両親媒性分子の層を作り出すための装置が開示されており、ここでは、図1を参照して簡単に説明する。
【0004】
図1は、両親媒性分子の層を形成するために使用され得る装置1を示す。装置1は、非導電性材料の基板3を含む層構造を有する本体2を含み、その基板はまた、非導電性材料のさらなる層4をも支持する。凹部5が、さらなる層4に形成され、特に、さらなる層4を通って基板3に延在するアパーチャとして形成される。装置1は、さらに、本体2の上に延在するカバー6を含む。カバー6は、中空であり、カバー6を通る開口部によりそれぞれ形成された入口8および出口9を除き、閉じられたチャンバ7を画定する。チャンバ7の最低の壁は、さらなる層4によって形成されている。
【0005】
使用の際、水溶性溶液10が、チャンバ7の中に導入され、両親媒性分子の層11は、チャンバ7内の水溶性溶液の残量から凹部5内の水溶性溶液10を分離する凹部5を横断して形成される。閉鎖されたチャンバ7の使用により、水溶性溶液10はチャンバ7の内部および外部を極めて容易に流れる。これは、図1に示すように、チャンバ7が充填されるまで、入口8を通して水溶性溶液10を流すことにより、単純に行われる。このプロセスの間、チャンバ7内の気体(典型的には、空気)は、水溶性溶液10によって置換され、出口9を通って排出される。
【0006】
装置は、両親媒性分子の層11を横切る電気信号の測定を可能にする電極配列を含み、その層は、装置をセンサとして機能させる。基板3は、基板3の上面に堆積されかつさらなる層4の下で凹部5まで延在する第1の導電層20を有する。凹部5の下の第1の導電層20の一部は、凹部5の最低表面をも形成する電極21をなす。第1の導電層20は、さらなる層4の外側に延在し、第1の導電層20の一部が、露出して接点22をなす。
【0007】
さらなる層4は、その上に堆積され、かつカバー6の下をチャンバ7の中に延在する第2の導電層23を有し、チャンバ7の内側の第2の導電層23の一部は、電極24をなす。第2の導電層23は、カバー6の外側に延在して、第2の導電層23の一部が露出して接点25をなす。電極21および24は、凹部5およびチャンバ7内の水溶性溶液と電気的に接触する。これにより、接点22および25との電気回路接続による、両親媒性分子の層11を横切る電気信号の測定が可能になる。
【0008】
実際には、図1の装置は、係る多くの凹部5のアレイを有することができる。各凹部には、両親媒性分子の層11が設けられている。さらに、各層には、他の分子がその層(測定される電気信号に影響を及ぼす)を通過するのを可能にするナノ細孔を設けることができる。例えば、1つのナノ細孔は、半透膜毎に設けられる。これが生じる度合いは、一つには、半透膜に適用される媒体内のナノ細孔の密度に基づいて決定される。
【0009】
センサに両親媒性半透膜およびナノ細孔を設ける手段を組み込んだ分析装置が、WO2012/042226によって開示されている。両親媒性半透膜およびナノ細孔を設けるステップは、装置の使用以前に、典型的にはエンドユーザによって実行される。しかしながら、これは、消費者側に追加のステップが必要とされ、そしてまた、装置に、弁および供給リザーバを含む複雑な流体配置を設ける必要があるという欠点をもたらす。さらに、ユーザが使用するための係るセンサを設置することは、誤りを起こしがちであり得る。たとえシステムが正しく設置されていても、そのシステムが乾き切るリスクがあり、それにより、センサに損傷を与える可能性があり得る。サンプルチャンバ内の過度の流量は、センサに損傷を与える可能性があるというリスクもある。このリスクは、より小型の装置の場合に増大し、それらの装置は、サンプル入力ポートをセンサにさらに接近させる(このため、システム損失が装置を通過する流量を低減させる機会をより少なくする)。
【0010】
それゆえに、両親媒性半透膜およびナノ細孔が、事前に挿入され、かつ濡れ条件下で維持されている、「すぐに使用することができる」状態でユーザに装置を提供することが望ましい。より一般的には、センサが濡れ条件下で提供され、例えば、分析物の検出前に、ユーザにまたはユーザによって濡れ条件下で提供される装置を提供することもまた、望ましい。
【0011】
「すぐに使用することができる」状態で提供される典型的なナノ細孔装置は、両親媒性半透膜のアレイを備え、各半透膜は、ナノ細孔を含み、かつ液体を収容するウェル全体に設けられている。係る装置および製造方法については、WO2014/064443によって開示されている。分析される試験液は、両親媒性半透膜の上面に適用される。しかしながら、「すぐに使用することができる」状態で装置を提供するためには、センサが乾き切らない、すなわち、液体が、両親媒性半透膜を介する通過によって、ウェルから失われないことに注意する必要があるという点をさらに考慮し、結果としてセンサの性能損失または損傷をもたらす可能性がある。センサが乾き切るという問題に対処するための1つの解決策は、両親媒性半透膜の表面に緩衝液を有する装置を提供し、その結果、半透膜の表面を通るいずれの蒸発も最小限に抑えることであり、半透膜のどちらかの側面上に提供される液体は、いずれの浸透圧効果も低減するように同じイオン強度を有することができる。使用の際、緩衝液は、両親媒性半透膜の表面から除去されてもよく、分析される試験液は、その表面に接触するように導入される。装置が緩衝液を含む場合、緩衝液の除去方法、および試験液の導入方法についての問題が課題となる。緩衝液の存在、すなわち、センサが「濡れ状態」で提供されることに起因して、乾燥した毛管チャネルが引き起こす毛管力は、試験液をセンサ中に引き込むために利用することはできない。ポンプを使用して緩衝液を移動させ、試験液を導入してもよいが、これは、結果として、装置に複雑さおよびコストが加えられることになる。
【0012】
1つ以上のイオン選択半透膜を備えるイオン選択電極装置は、典型的には、既知のイオン濃度を有する溶液と一緒に使用する前に、較正される。イオン選択半透膜は、流体入力ポートと接続する毛管流路内に設けられ得、較正溶液は、その流体入力ポートを通って導入され、そして毛管作用によりイオン選択電極の上に流され得る。その後、較正用溶液は、移動され得、分析物溶液は、電極の上に流されて測定を実行し得る。イオン測定のための大型のベンチトップ型装置においては、例えば、蠕動ポンプを使用して液体を移動させてもよい。しかしながら、単純な使い捨て装置の場合には、あまり複雑でない解決策がいっそう望ましい。
【0013】
他の装置においては、一対の電極が、毛管チャネル内に設けられ得、第1の試験液が、毛管作用によってその毛管チャネルの中に引き込まれて電気化学分析が行われる。第1の試験液の測定に引き続いて、第2の試験液を測定することが望ましい場合がある。しかしながら、毛管力がより長く利用可能である場合、第2の試験液の導入の前に第1の試験液を除去するために、追加の力の関与が必要とされる。
【0014】
参照により本明細書に組み込まれるPCT/GB2017/052910は、図1および図2のものと同様の、両親媒性分子の層を形成するために使用され得る装置100を開示しており、その装置は、図10に示されている。ただし、図1および図2とは対照的に、図10の装置100は、脱着式コンポーネントで作製されている。したがって、装置100の構成コンポーネントは、キットとして提供することができる。
【0015】
第1のコンポーネント110は、装置100のベースを形成し、一方、第2のコンポーネント120は、ベースコンポーネント110に挿入され、そしてそれから取り外され得る。ベースコンポーネント110は、それ自体、複数のコンポーネント111、112から成り得る。挿入されると、第1および第2のコンポーネント110、120は、電気コネクタの第1のアレイと第2のアレイとの間の接続を形成する(さらに以下に説明される)。これにより、複数の第2のコンポーネントが単一のベースコンポーネント110と一緒に使用されるのを可能にする。第2のコンポーネントの本体は、典型的には、ある程度の弾力性を有するプラスチック材料で作製される。プラスチック材料は、例えば、ポリカーボネートであってもよい。
【0016】
図10の装置では、使い捨てフローセルは、第2のコンポーネント120として設けられている。フローセルは、WO2014/064443に説明されているフローセルと同等であり得、本明細書によって、その全体が参照により組み込まれる。図4の配置において、使い捨てフローセル120を提供できることにより、分析装置100のより高価なコンポーネントが、第1のコンポーネント110の中に組み込まれ得、比較的安価に様々なフローセル120で複数の実験を行うことが可能であることを意味する。したがって、フローセル120は、図1および図2に関して説明する凹部およびアパーチャ5に対応する特徴を含み得る。一方で、例えば、図2で説明する回路要素61およびトラック62は、ベース部110に設けられ得る。
【0017】
前述を考慮すると、使い捨てまたは再利用可能であり得るとともに、一方では、すぐに使用できる方法で供給され得る、マイクロ流体装置の簡単な使用を提供するためには難題が残っている。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、前述の問題を少なくとも部分的に低減または克服することを目的とする。
【0019】
本発明の態様によれば、試験液を分析するためのマイクロ流体装置が提供されており、そのマイクロ流体装置は、ブリッジ可能な障壁と、検知チャンバ内に設けられたセンサを収容するために、かつ分析される試験液を受容するために、ブリッジ可能な障壁の上流に位置付けられている、上流部分であって、上流部分が、入口チャネルおよび出口チャネルを備え、入口チャネルと出口チャネルとの間に液体で充填可能である、上流部分と、上流部分の出口チャネルからの液体を受容するために、ブリッジ可能な障壁の下流に位置付けられている、下流部分と、取り外し可能に取り付け可能な封止材であって、上流部分を閉鎖するように構成され、ならびに、液体が上流部分に提供されたときに、封止材の除去前に液体の流れを阻止するように、および封止材の除去後に、液体が上流部分から下流部分に障壁を通過するのを可能にするように構成されている、取り外し可能に取り付け可能な封止材と、のうちの1つ以上を備える。したがって、装置は、封止材の除去によって、装置が作動する前に、上流部分内に液体を保持することができる。液体は、液体が障壁を通り越して、または入口チャネルから戻って流れるのを防止する封止材によって、上流部分内に保持される。作動の後、液体は、障壁を通り越して下流部分に流れ込むことができる。
【0020】
任意選択的に、ブリッジは、障壁と隣接して設けられており、封止材の除去後に、そのブリッジは、液体が障壁を介してまたは超えて、上流部分から下流部分に流れるのを容易にする。
【0021】
任意選択的に、封止材は、液体が入口部分から出口部分に流れるのを阻止するように追加的に構成される。
【0022】
任意選択的に、障壁に面しているブリッジの表面は、90°以下、任意選択的に75°以下の水との濡れ接触角を有する。任意選択的に、障壁に面しているブリッジの表面は、20°以下の水との濡れ接触角を有するが、接触角は、最低0°にすることができる。したがって、表面が適切に親水性であり得ることで、検知チャンバの、入口で進入した空気の望ましくない排出を引き起こさずに流れを促進することができる。
【0023】
任意選択的に、障壁に面しているブリッジの表面には、化学的に親水性の層または処理、任意選択的に、ブリッジの未処理表面よりも親水性の層、またはプラズマ処理が提供される。表面は、1つ以上のそのような層には、例えば、追加材料の層、ならびに溶媒から蒸発した化学物質などの追加の化学的処理が提供されてもよい。表面は、さらに、または単独で、表面の表面積を増加させるための物理的なテクスチャ、任意選択的に、その表面上に設けられた支柱、フィン、および/または溝を含んでもよい。
【0024】
任意選択的に、上流部分は、入口チャネルと出口チャネルとの間において液体で充填され得る。
【0025】
別の態様によれば、マイクロ流体装置が提供されており、そのマイクロ流体装置は、検知チャンバ内に設けられたセンサと、検知チャンバ入口チャネルおよび検知チャンバ出口チャネルであって、各々が、検知チャンバの内部、および外部に液体をそれぞれ通過させるために検知チャンバに接続している、検知チャンバ入口チャネルおよび検知チャンバ出口チャネルと、マイクロ流体装置へのサンプル入力ポートを形成するリザーバであって、検知チャンバ入口チャネルと流体連通している、リザーバと、液体収集チャネルと、検知チャンバ出口チャネルの端部と液体収集チャネルとの間の障壁と、サンプル入力ポートを被覆する第1の封止材と、検知チャンバ出口チャネルの端部を被覆し、それによって、液体が検知チャンバから障壁を越えて液体収集チャネルの中に流れるのを防止する、第2の封止材と、のうちの1つ以上を備え、マイクロ流体装置が、サンプル入力ポートにおける第1の封止材から検知チャンバ出口チャネルの端部における第2の封止材まで液体で充填されており、その結果、センサが、液体によって被覆されており、気体または気体/液体境界面に露出されておらず、第1および第2の封止材は、リザーバと検知チャンバ出口チャネルの端部との間に液体を流して、一部の液体が障壁を越えて流れるように取り外し可能である。係る装置は、封止材が取り外される前はセンサを保護する(「非活性」)状態にセンサを確実に保持し、さらに、封止材を取り外すことによってユーザが簡単に装置を「活性」状態に作動させ、装置を検知目的のために使用することができる。
【0026】
出口チャネルは、検知チャンバに接続された第1の端部、および第2の封止材により被覆され得る第2の端部を有することができる。障壁は、検知チャンバ出口チャネルの第2の端部と液体収集チャネルとの間に存在し得る。
【0027】
任意選択的に、障壁に面する障壁カバーの表面は、90°以下、任意選択的に75°以下の水との濡れ接触角を有する。任意選択的に、障壁に面する障壁カバーの表面は、20°以上の水との濡れ接触角を有するが、接触角は、最低0°にすることができる。したがって、表面が適切に親水性であり得ることで、検知チャンバの、入口で進入した空気の望ましくない排水を引き起こさずに流れを促進することができる。
【0028】
第1の封止材は、リザーバを被覆することができる。
【0029】
任意選択的に、装置は、第1および第2の封止材の除去により、センサを気体または気体/液体境界面に露出させないように構成される。これは、装置全体の毛管力のバランスをとることによって達成され得る。
【0030】
任意選択的に、第1および第2の封止材は、それらが一緒に除去され得るように、接続される。任意選択的に、装置は、第1および第2の封止材を除去するように引っ張ることができる、第1および第2の封止材に取り付けられた封止材ハンドルをさらに備える。これにより、装置が1回の単純で単一の動作によって作動することが可能になる。
【0031】
任意選択的に、装置は、検知チャンバ出口を液体収集チャネルに接続するための、障壁を越えてブリッジチャネルを形成する、障壁カバーをさらに備える。障壁カバーは、検知チャンバ出口を液体収集チャネルに接続するための位置に向かって付勢され得る。第2の封止材は、検知チャンバ出口チャネルの端部と、ブリッジチャネルとの間において障壁カバーの下に位置付けられ得る。封止材の取り外しを支援するために、剥離ライナが、第2の封止材に接続され得る。ハンドルは、剥離ライナの一部を形成し得る。剥離ライナは、第2の封止材と障壁カバーとの間に位置付けられ得る。したがって、障壁カバーは、活性状態での、装置を通る流路を完成させるのに役立つ。障壁と障壁カバーとの間に封止材および/または剥離ライナを設けることにより、装置を停止する便利で利用しやすい方法を提供し、それは、ユーザが、装置を作動させるために簡単に戻し得る方法である。
【0032】
任意選択的に、障壁カバーは、流れをブリッジチャネルに促進するために、ブリッジチャネルから検知チャンバ出口チャネルに向かって延在するディッパをさらに備える。ブリッジチャネルは、障壁の脇の降水管に(ブリッジチャネルが障壁の上方に配置されている配向に)接続する湾曲部を含むことができ、湾曲部が、少なくとも一方の側に曲線状プロファイルを含む。液体収集チャネルは、障壁の脇の降水管と、液体収集チャネルの主要部分との間に湾曲部を含むことができ、湾曲部は、少なくとも一方の側に曲線状プロファイルを含む。これらの特徴は、装置を通る流れが、装置の作動中および/または最初の使用中にピニングする三日月曲面によって確実に妨げられないように支援する。
【0033】
任意選択的に、第2の封止材は、表面よりもある程度親水性の接着剤によってマイクロ流体装置の表面に取り付けられる。
【0034】
任意選択的に、障壁カバーは、検知チャンバ出口チャネルの端部とブリッジチャネルとの間の接触を促すように付勢される。障壁カバーは、検知チャンバ出口チャネルの端部とブリッジチャネルとの間を封止するためのパッキンを有し得る。これらの特徴は、良好な封止材が活性状態で提供されることを確実にする。
【0035】
別の態様によれば、先の請求項のいずれかに記載のマイクロ流体装置を調整する方法が提供されており、その方法は、第1および第2の封止材を除去することを含み、それによって、リザーバと検知チャンバ出口の端部との間に液体を流し、一部の液体が障壁を越えて流れ、装置を作動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明は、例示的な図を参照して、以下に説明される。
図1】両親媒性分子の層を形成するために使用することができる先行技術の装置を示す。
図2】マイクロ流体装置の一例を示す。
図3】電気回路の例示的な設計を示す。
図4a図2の装置に対応する装置の概略を示す。
図4b図4aの装置を通る流路に沿った概略断面を示す。
図5a】例えば、図2または図4の装置の検知チャンバおよび周辺接続の概略断面を示す。
図5b】作動した装置が、傾斜され、装置内の流体が排水収集チャネルの中に排出するように促進されるシナリオを説明する。
図5c】入口と出口との高さの違いを示す。
図5d】検知チャンバのためのシナリオを示す。
図5e】検知チャンバのためのシナリオを示す。
図5f】検知チャンバのためのシナリオを示す。
図6】代替構成におけるマイクロ流体装置の概略平面図である。
図7】本発明の例示的な実施形態を示す。
図8】本発明の例示的な実施形態を示す。
図9】サンプル入力ポートにピペットを誘導するためのガイドチャネルの例示的な設計を示す。
図10】複部構成のマイクロ流体装置を示す。
図11】別の複部構成のマイクロ流体装置を示す。
図12図11の複部構成のマイクロ流体装置のフローセルコンポーネントの上方からの斜視図を示す。
図13図11の複部構成のマイクロ流体装置のフローセルコンポーネントの下方からの斜視図を示す。
図14図11の複部構成のマイクロ流体装置のフローセルコンポーネントの概略断面図を示す。
図15図11の複部構成のマイクロ流体装置のフローセルコンポーネントの障壁カバー要素の概略断面図を示す。
図16】フローセルコンポーネントの別の障壁カバー要素の概略断面図を示す。
図17a図17aで除去され、図17bで置き換えられる封止材を有するフローセルコンポーネントの上方からの斜視図を示す。
図17b図17aで除去され、図17bで置き換えられる封止材を有するフローセルコンポーネントの上方からの斜視図を示す。
図18】サンプルポートにサンプルを加える際の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示により、「濡れセンサ」(すなわち、濡れた環境で機能するセンサ)を使用する、マイクロ流体装置を生産し、センサが必要になるまで濡れたままの状態で保管することが可能になる。これは、センサが濡れたままであるものの、装置を使用することができない「非活性」状態、および装置を使用することができる「活性」状態を有する装置を提供することによって、効果的に達成される。言い替えると、以下に説明するように、「非活性」状態は、サンプル入力ポートと液体収集チャネルとの間の流路が完全ではない状態であり得る。対照的に、「活性」状態は、サンプル入力ポートと液体収集チャネルとの間の流路が完全である状態であり得る。ナノ細孔センサ(より詳細は、以下を参照)を想定する場合、センサを濡れたまま保持することに関する特定の利益は、ウェルの液体が半透膜を通って漏れていないことを確実にすることである。半透膜は、極めて薄く、センサは、水分損失に極めて敏感である。水分損失は、例えば、ウェルの液体と半透膜との間に抵抗性のある空気間隙を作り出し、このため、ウェル内およびサンプル内に設けられた電極間の電気回路を破壊し得る。また、水分損失は、ウェルの液体のイオン強度を増加させる働きをし得、この働きが、ナノ細孔全体の電位差に影響を及ぼし得る。この電位差は、測定された信号に影響を及ぼし、このため、いずれの変化も測定値に影響を及ぼすことになる。
【0038】
いずれの場合においても、本発明の装置は、装置が必要とされるまでの長い期間の間「非活性」状態で保持することができる。当該期間中、例えば、装置が非標準的配向(すなわち、装置がその正常な機能を実行するために使用されない配向)にあるときでさえも、「非活性」状態が堅牢であり、センサを濡れ条件に保持することが可能であるため、その装置を輸送する(例えば、サプライヤからエンドユーザに出荷する)ことができる。これは、非活性状態が、センサを含めた、装置の内部容積を周囲から封止しているため、可能である。当該内部容積(以下では、「飽和容積」と呼ばれる)が、液体で充填される。いかなる空気間隙および/または泡も存在しないことは、装置が動き回された場合であっても、気体/空気境界面がセンサと交わる可能性(センサの機能に損傷を与え得る)からセンサが分離されていることを意味する。さらに、活性状態の場合でさえ、装置が作動し、次いで使用されない場合であっても、装置は、長い期間の間、濡れ条件でセンサを保持することができる。
【0039】
図2は、マイクロ流体装置30の一例の上面断面図を示し、サンプル入力ポート33を備えるマイクロ流体装置の一部の側断面図を示す挿入図を有する。マイクロ流体装置30は、センサを収容するための検知チャンバ37を備える。
【0040】
検知チャンバ37は、センサを備え、センサは、図2には示されていない。センサは、液体サンプルを分析するためのコンポーネントまたは装置であり得る。例えば、センサは、液体サンプル内に存在する単一分子(例えば、イオン、ブドウ糖などの生物学的および/または化学的分析物)を検出するためのコンポーネントまたは装置であり得る。たんぱく質、ペプチド、核酸(例えば、RNAおよびDNA)、および/または化学分子などの生物学的および/または化学的分析物を検出するための様々な種類のセンサが、当技術分野で既知であり、検知チャンバ内で使用され得る。いくつかの実施形態では、センサは、半透膜を含み、その半透膜は、イオンが半透膜の一方の側面から半透膜の別の側面に流れるのを可能にするように構成される。例えば、半透膜は、ナノ細孔、例えば、たんぱく質ナノ細孔または固体ナノ細孔を含み得る。いくつかの実施形態では、センサは、上記に図1を参照して説明した種類のものであってもよく、それは、WO2009/077734に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。センサは、使用時に電気回路に接続される。イオン選択半透膜であり得るセンサは、電極表面の上に、または下に横たわる電極と接触して設けられたイオン溶液の上に直接提供される。
【0041】
センサは、電極対を含むことができる。多くの電極のうちの1つは、分析物を検出するように、機能的なものにすることができる。電極のうちの1つ以上は、Nafion(登録商標)などの選択的透過膜でコーティングされ得る。
【0042】
係る電気回路26の例示的な設計が、図3に示されている。電気回路26の主要な機能は、共通電極第1の本体と電極アレイの電極との間に生成された電気信号(例えば、電流信号)を測定することである。これは、単純に、測定された信号の出力であってもよいが、原理的には、信号のさらなる分析もまた伴い得る。電気回路26は、通常極めて微弱である電流を検出および分析するために十分敏感である必要がある。例として、露出している半透膜たんぱく質ナノ細孔は、典型的には、1Mの食塩水の場合、100pA~200pAの電流を通すことができる。特に選ばれたイオン濃度は、変動してもよく、例えば、10mM~2Mであってもよい。一般的に言えば、イオン濃度が高いほど、大きい電流が、電位的または化学的勾配の下で流れる。また、半透膜全体に加えられる電位差の大きさは、半透膜全体に流れる電流にも影響を及ぼすことになり、典型的には50mV~2V、より典型的には100mV~1Vの値であるように選択され得る。
【0043】
この実施態様では、電極24は、アレイ電極として使用され、電極21は、共通電極として使用される。このため、電気回路26は、それ自体仮想的な接地電位にあり、かつ電流信号を電気回路26に供給する電極21に対して、バイアス電位を電極24に提供する。
【0044】
電気回路26は、電極24に接続され、かつ2つの電極21および24全体に有効に現れるバイアス電圧を印加するように配置されたバイアス回路40を有する。
【0045】
また、電気回路26は、2つの電極21および24全体に現れる電流信号を増幅するために、電極21に接続された増幅回路41も有する。典型的には、増幅回路41は、2つの増幅器段42および43から成る。
【0046】
電極21に接続された入力増幅器段42は、電流信号を電圧信号に変換する。
【0047】
入力増幅器段42は、電位差計オペアンプなどのトランスインピーダンス増幅器を含むことができ、その電位差計オペアンプは、例えば、500MΩの高インピーダンスフィードバック抵抗器を有する反転増幅器として構成されて、典型的には、数10~数100pA程度の大きさを有する電流信号を増幅するために必要な利得を提供する。
【0048】
別の方法として、入力増幅器段42は、スイッチト積分増幅器を含むことができる。これは、フィードバック素子がコンデンサであり、かつ実質的にノイズがないときに、極めて微弱な信号の場合に好ましい。さらに、スイッチト積分増幅器は、より広い帯域性能を有する。ただし、この積分器には、出力飽和が生じる前に積分器をリセットする必要があるため、むだ時間が存在する。このむだ時間は、必要とされるサンプリング速度がはるかに高い場合、多くの結果には影響しないマイクロ秒前後まで低減することができる。トランスインピーダンス増幅器は、必要とされる帯域幅がより狭い場合、より単純になる。一般的に、スイッチト積分増幅器の出力は、リセットパルスに続く各サンプリング周期の終了時にサンプリングされる。追加の技術を使用して、システム内のわずかなエラーを解消する積分の開始をサンプリングすることができる。
【0049】
第2の増幅器段43は、第1の増幅器段42によって出力された電圧信号を増幅およびフィルタリングする。第2の増幅器段43は、データ取得ユニット44において処理するために十分なレベルに信号を引き上げるための十分な利得を提供する。例えば、第1の増幅器段42において500MΩフィードバック抵抗器を有する場合、第2の増幅器段43への入力電圧は、100pA程度の典型的な電流信号を仮定すると、50mV程度の電圧になり、この場合には、第2の増幅器段43は、50mVの信号範囲を2.5Vに引き上げるには、利得50を与える必要がある。
【0050】
電気回路26は、データ取得ユニット44を含み、そのユニットは、適切なプログラムを実行するマイクロプロセッサであってもよく、または専用のハードウェアを含んでもよい。この場合、バイアス回路40は、デジタルアナログ変換器46から信号を供給される反転増幅器によって単純に形成され、そのデジタルアナログ変換器は、専用の装置であるかまたはデータ取得ユニット44の一部であってもよく、ソフトウェアからデータ取得ユニット44にロードされたコードに従って電圧出力を提供する。同様に、増幅器回路41からの信号は、アナログデジタル変換器47を通ってデータ取得カード40に供給される。
【0051】
電気回路26の様々なコンポーネントは、別個のコンポーネントによって形成され得るか、またはそれらのコンポーネントのうちのいずれかは、共通の半導体チップに集積され得る。電気回路26のコンポーネントは、プリント回路基板上に配置されたコンポーネントによって形成されてもよい。電極アレイからの複数の信号を処理するために、電気回路26は、各電極21に対して増幅器回路41およびA/D変換器47を複製することによって本質的に変更されて各凹部5からの信号を並行して取得することを可能にする。入力増幅器段42がスイッチト積分器を含む場合、次いでそれらは、サンプリングして保持した信号を処理し、そして積分器信号をリセットするために、デジタル制御システムが必要になる。デジタル制御システムは、フィールドプログラマブルゲートアレイ装置(FPGA)上で最も都合よく構成される。さらに、FPGAは、プロセッサと同様の機能、ならびに標準的な通信プロトコル、すなわちUSBおよびイーサネットとインターフェース接続するのに必要とされる論理回路を組み込むことができる。電極21が接地に保持されているという事実に起因して、その電極を電極アレイに対する共通電極として提供することは、現実的である。
【0052】
係るシステムにおいて、ポリヌクレオチドもしくは核酸などのポリマー、たんぱく質などのポリペプチド、多糖類、または任意の他のポリマー(天然または合成)は、適切にサイズ設計されたナノ細孔を通過することができる。ポリヌクレオチドまたは核酸の場合には、ポリマー単位は、ヌクレオチドであってもよい。したがって、分子が、ナノ細孔を通過し、同時にナノ細孔全体の電気的特性が、モニタリングされ、信号、すなわちナノ細孔を通過する特定のポリマー単位の特性が取得される。このため、その信号を使用して、ポリマー分子内の一連のポリマー単位を識別するか、または一連の特性を判定することができる。様々な異なる種類の測定を行うことができる。これには、電気測定および光学測定が含まれるが、これらに限定されない。蛍光の測定を包含する適切な光学的方法が、J.Am.Chem.Soc.2009、131 1652-1653によって開示されている。可能な電気測定には、電流測定、インピーダンス測定、トンネル測定(Ivanov AP他,Nano Lett.2011 Jan 12;11(1):279-85)、およびFET測定(国際出願WO2005/124888)が含まれる。光学測定は、電気測定と組み合わせることができる(Soni GV他,Rev Sci Instrum.2010 Jan;81(1):014301)。測定は、細孔を通って流れるイオン電流の測定などの、膜貫通電流測定であってもよい。
【0053】
ポリマーは、ポリヌクレオチド(または核酸)、たんぱく質などのポリペプチド、多糖類、または任意の他のポリマーであってもよい。ポリマーは、天然または合成であってもよい。ポリマー単位は、ヌクレオチドであってもよい。ヌクレオチドは、様々な核酸塩基を含む様々な種類のものであってもよい。
【0054】
ナノ細孔は、例えば、MspA、ライセニン、アルファ溶血素、CsgG、またはそれらの変形体もしくは突然変異体から選択された膜貫通たんぱく質細孔であってもよい。
【0055】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、cDNA、またはペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、もしくはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーなどの当技術分野で既知の合成核酸であってもよい。ポリヌクレオチドは、一本鎖、二重鎖であってもよく、または一本鎖領域および二重鎖領域の両方を含んでもよい。典型的には、cDNA、RNA、GNA、TNA、またはLNAは、一本鎖である。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された装置および/または方法を使用して、任意のヌクレオチドを識別することができる。ヌクレオチドは、天然に生じ得、または合成され得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基(本明細書では、「塩基」と短縮する場合がある)、糖、および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基は、典型的には、複素環式である。適切な核酸塩基は、プリンおよびピリミジンを含み、具体的には、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、およびシトシンを含む。糖は、典型的には、ペントース糖である。適切な糖は、リボースおよびデオキシリボースを含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、典型的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には、一燐酸塩、二燐酸塩、または三燐酸塩を含有する。
【0057】
ヌクレオチドは、損傷塩基または後成塩基を含む場合がある。ヌクレオチドは、標識付けまたは修飾されて識別しるしを有するマーカーとして機能することができる。この技術を使用して、塩基が存在しない、例えば、ポリヌクレオチド内の脱塩基単位またはスペーサを識別することができる。
修飾または損傷したDNA(または同様の系)の測定を考慮する場合の特定の用途の中で、相補型データが考慮される方法がある。追加の情報が提供されることにより、はるかに多くの潜在的な状態間の識別を可能にする。
【0058】
ポリマーは、また、ポリヌクレオチド以外の種類のポリマーであってもよく、その一部の非限定的な例は、以下の通りである。
【0059】
ポリマーは、ポリペプチドであってもよく、その場合には、ポリマー単位は、天然に生じるか、または合成されるアミノ酸であってもよい。
【0060】
ポリマーは、多糖類であってもよく、その場合には、ポリマー単位は、単糖類であってもよい。
【0061】
センサを濡れ状態に保持するために装置内に設けられた調整液は、装置と親和性のある任意の液体(例えば、センサの性能に悪い影響を及ぼさない液体)であってもよい。単なる例として、センサがたんぱく質ナノ細孔を含む場合、調整液は、たんぱく質を変性または不活性化させる薬剤を含む必要がないことは、当業者には明らかであろう。調整液は、例えば、緩衝液、例えば、イオン液またはイオン溶液を含んでもよい。調整液は、溶液のpHを維持するための緩衝液を含有してもよい。
【0062】
センサは、「濡れ条件」に保持される必要があるもの、すなわち、液体により被覆されるものである。センサは、例えば、イオン選択半透膜または両親媒性半透膜などの半透膜を含んでもよい。半透膜は、両親媒性であってもよく、ナノ細孔などのイオンチャネルを含んでもよい。
【0063】
半透膜は、両親媒性であってもよく、脂質二重膜または合成膜であってもよい。合成膜は、2ブロックまたは3ブロックコポリマーであってもよい。
【0064】
半透膜は、陰イオンおよび陽イオンの検出のために、イオン選択チャネルなどのイオンチャネルを含んでもよい。このイオンチャネルは、バリノマイシン、グラミシジン、および14クラウン4誘導体などの既知のイオン透過孔から選択されてもよい。
【0065】
図2に戻ると、検知チャンバは、それぞれが液体を検知チャンバ37の内部および外部に通過させるための液体入口38および液体出口39を有する。図2の挿入図には、装置30を通る断面において、入口38がサンプル入力ポート33と流体連通していることが示されている。サンプル入力ポート33は、サンプルをマイクロ流体装置30に導入するため、例えば、送達するため、例えば、試験または検知するために、構成されている。差し込み栓などの封止材33Aは、サンプル入力ポート33を封止または閉鎖するように設けられ得、装置30がその非活性状態にあるときに、いかなる流体もサンプル入力ポート33を通って進入または退出するのを回避することができる。したがって、封止材33Aは、非活性状態にあるサンプル入力ポート33内に設けられてもよい。封止材33Aは、取り外し可能であり、取り替え可能であることが好ましい。サンプル入力ポートは、図2に示すように、検知チャンバの近くに位置していることが望ましい場合があり、例えば、ポートは、検知チャンバに直接設けられている。これにより、流路の容積を減らすことによって装置に適用されるために必要となるサンプル液の容積を低減することができる。
【0066】
検知チャンバ37の出口39の下流は、液体収集チャネル32である。液体収集チャネルは、排水収集リザーバとすることができ、検知チャンバ37から排出された流体を受容するためのものである。最も下流の端部において、例えば、収集チャネル32の端部は、通気口ポート58であり、収集チャネル32が検知チャンバから液体を受容し、液体で充填されるときに気体が排出されるのを可能にするためのものである。
【0067】
図2に示す例において、検知チャンバ37の上流は、液体供給ポート34であり、任意選択可能である。このポートにより、装置30が活性状態になると、液体、例えば、緩衝液を装置の中に供給する機会を提供する。また、必要に応じて、そのポートは、容積のより大きいサンプルを送達するために、また新規のサンプルが送達される前に検知チャンバ37から以前のサンプルの多くの容積を押し流し/灌流するために使用することができる。
【0068】
さらに以下に説明するように、装置は、サンプル入力ポートにおいてサンプルを受け入れるように構成されており、続いてサンプルは、外部力または圧力の助けを借りずに、例えば、以下に説明するように、毛管圧力によって、ひとりでに検知チャンバの中に引き込まれる。これにより、加えられた正の圧力下でユーザが試験液を装置の中に導入する必要性を取り除くことができる。
【0069】
図2では、装置30は、非活性状態にある。これは、閉鎖状態で構成される弁31を備えることによって達成され、この状態は、流体が液体収集チャネル32と検知チャンバ37との間を流れることを不可能にし、ならびにサンプル入力ポート33を封止または閉鎖する、サンプル入力ポート33上の封止材33Aを備えることによって達成される。非活性状態においては、図2に示すように、検知チャンバ37を通る流れは、不可能である。閉鎖状態での弁31は、検知チャンバ37の液体出口39と液体収集チャネル32との間の流路遮断としての機能を果たす構造体であり、上流液体(例えば、検知チャンバ37からの液体)が液体収集チャネル32中に流れ込むことを防止している。同様に、閉鎖状態での弁31は、供給ポート34と検知チャンバ37との間の流路遮断としての機能を果たす構造体であり、上流液体(例えば、供給ポートを通って導入される液体)が検知チャンバ37中に流れ込むことを防止している。したがって、検知チャンバ37は、(大気に対して開放状態であり得る)液体収集チャネル32の形態で、供給ポート34および排水収集リザーバから分離されている。さらに、サンプル入力ポート33を封止する差し込み栓33Aを備えることにより、検知チャンバ37が完全に分離されることを確実にしている。また、差し込み栓33Aは、追加の目的を果たすこともでき、すなわち、その差し込み栓が取り除かれると、入口38における「吸気」を作り出すことができ、差し込み栓33Aが取り除かれると、ポート33が濡れる(したがって、サンプル流体を受容する用意ができ)ことを確実にすることができる。したがって、差し込み栓33Aは、呼び水動作を提供する。呼び水動作は、液体収集チャネルから流体を引き出す(例えば、間接的に、流体を検知チャンバ37中に移動させ、次に、入口38およびポート33の中に移動させる)ことができ、または別の呼び水リザーバから流体を引き出すことができる(以下の例を参照)。
【0070】
いくつかの実施形態では、弁31は、二重の機能を果たす。例えば、図2に示すように、弁31は、その弁が作動システムとして動作するような状態で構成することができる。作動システムは、液体出口39と液体収集チャネル32との間の流路(そしてまた、供給ポート34と検知チャンバ37との間の流路)を完成させることができる。さらに、以下により詳細に説明するように、係る作動は、センサチャンバ37から液体を排水しなくても生じる。すなわち、センサ37は、作動後、気体、または気体/液体境界面に露出されないままである。図2の例において、これは、弁座31A内で弁31を(図示してある配向から)90゜だけ回転させることによって達成される。これにより、弁のチャネル31Bが、液体出口39と液体収集チャネル32との間、ならびに緩衝液入力ポート34と検知チャンバ37との間の流路遮断36の完成をもたらす。当該活性状態において、液体が緩衝液供給ポート34(また、本明細書では、「パージポート」とも呼ばれる)から検知チャンバ37を通って液体収集チャネル32中に流れることが可能である。ただし、係る流れは、以下に図5a~fと関連してさらに詳細に説明するように、自由に生じるわけではない。
【0071】
その結果、検知チャンバ37は、弁31を図2に示された位置に向ける前に、緩衝液などの調整液で事前に充填することができる。調整液の種類は、本発明により特に限定されないが、センサ35の性質に従って適切である必要があることに留意されたい。差し込み栓33Aが挿入され、そしてセンサチャンバ37が気泡のないように適切に充填されたと想定すると、そのときは、センサが、センサに潜在的に損傷を与えるであろう気体/液体境界面と接触する機会は存在しない。したがって、装置30は、センサ自体に損傷を与えることを懸念せずに、堅牢に処理することができる。
【0072】
図4aは、図2の装置に対応する装置30の概略を示す。図4において、流体チャネルは、単純に線として示されている。さらに、弁31は、検知チャンバ37の上流および下流の2つの別個の弁31として示されている。これは、明快にするためであるが、いくつかの実施形態では、図に示すように2つの別個の弁31を有することが望ましい場合がある。
【0073】
図4bは、図4aの装置を通る流路に沿った概略断面を示す。これは、流路が、図4bに図示してあるように、直線的でなくてもよいという意味で、「実際の」断面図であるわけではない。それにもかかわらず、この概略は、流路が装置30内の液体にとって利用可能であることを理解するには有用である。特に、上流緩衝液供給/パージポート34は、上流弁31によって検知チャンバから分離されていることを理解することができる。さらに、下流通気口ポート58は、下流弁31によって検知チャンバ37から分離されていることを理解することができる。したがって、検知チャンバ37が流体で充填され、かつ上流ポート34および下流ポート58から分離され得ることがすぐに明らかになる。さらに、サンプル入力ポート33の上に封止材を設けることによって、検知チャンバは、完全に分離することができる。
【0074】
また、図4aおよび図4bに示した特徴の縮尺を考察することも、有益である。
【0075】
パージポート34およびサンプル入力ポート33は、両者が装置30に送達される流体を受容するように構成されているため、同様の設計のものであってもよい。いくつかの実施形態では、ポート33および/または34は、液体をポートの中に導入するための液体送達装置、例えば、ピペット先端の使用に適応するように設計されてもよい。好ましい実施形態では、両方のポートは、0.4~0.7mm前後の直径を有し、この直径は、ポート中への流体の吸取を可能にし、同時にまた、装置30が液体を自由に排水する可能性を制限することを可能にする(以下に、より詳細に説明される)。対照的に、下流通気口ポート58のサイズは、通常の使用において、液体送達装置(例えば、ピペット)を受け入れるか、または液体を送達するように意図されていないため、それほど重要ではない。
【0076】
センサのサイズは、任意に変動し、センサ内に設けられる検知要素、例えば、ナノ細孔またはイオン選択電極の種類および数量に依存する。センサ35のサイズは、8x15mm前後とすることができる。上述したように、そのセンサは、ナノ細孔を有する半透膜を包含する微視的な表面幾何形状を有する検知チャネルアレイであり得る。
【0077】
装置30の「飽和容積」とは、例えば、弁31(一方の弁は、液体出口39と液体収集チャネル32との間の流れを制御し、別の弁は、緩衝液入力ポート34と検知チャンバ37との間の流れを制御する)間を接続している容積、例えば、流路容積でであり、その容積は、液体で充填され、封止され、差し込み栓33aが存在するときに周囲から分離され得、すなわち単純な入力ポート33を封止することができ、弁31は、閉鎖状態で構成される。一実施形態において、飽和容積は、200μl前後とすることができ、本明細書に記載された装置の流路の設計に従って変化し得る。しかしながら、容積が小さいほど好ましく(例えば、必要とされるサンプルのサイズを低減するために)、飽和容積が20μl以下であることが好ましい。他の構成において、パージポート34を備えること(および流路を検知チャンバ37に接続すること)は、必要でない場合があり、その場合には、飽和容積は、封止されたサンプル入力ポート33から検知チャンバ37まで、かつ液体出口39を通過して流路遮断36まで延在する。
【0078】
対照的に、液体収集チャネル32が、はるかに大きい容積、例えば、飽和容積よりも、少なくとも3倍大きい、例えば少なくとも4倍大きい、少なくとも5倍大きい、少なくとも10倍大きい、または少なくとも15倍大きい容積を有することが望ましく、その結果、液体収集チャネルは、試験および押し流しのいくつかのサイクルにわたって飽和容積から排出された液体を収集することができる。一実施形態では、液体収集チャネル32は、2000μlの容積を有することができる。液体収集チャネルの水力半径は、典型的には、4mm以下である。
【0079】
弁31のサイズは、特に重要ではない(かつ、以下に説明するように、代替のフローチャネル遮断を設けることができる)。それらの弁は、差し込み栓33aと関連して飽和容積を分離する機能を果たす。
【0080】
さらに、活性状態においてさえ、装置は、検知チャンバ37が乾き切ることに対して耐性がある。これについては、図5aを参照して以下に説明されており、その図は、例えば、図2または図4の装置30の一実施形態による検知チャンバ37、および周辺接続の概略断面である。
【0081】
図5aにおいて、センサ35は、検知チャンバ37内に設けられている。検知チャンバ液体入口38は、表現を単純にするために、検知チャンバ37の上流に接続されている(すなわち、液体入口38は、図2および図4の上方から検知チャンバ37に入るように示されているが、図5aにおける場所の変更は、以下の分析の結果に影響を及ぼさない)。図5aは、液体が検知チャンバ37に到達する前に、液体入口の直径におけるさらなる制限38aを示している。これにより、例えば、入力33の拡幅によってサンプルの収集/提供を容易にすることができる。検知チャンバ37の下流には、液体収集チャネル32への液体出口39がある。
【0082】
この図において、いくつかのパラメータおよび寸法が示されている。高さ(メートルで測定される)は、記号hによって示されている。曲率半径(メートルで測定される)は、記号Rによって示されている。管状部分の半径(メートルで測定される)は、記号rによって示されている。表面張力(N/mで測定される)は、記号γによって示されている。液体密度(kg/mで測定される)は、記号ρによって示されている。流量(m/sで測定される)は、記号Qによって示されている。装置30の壁との液体/気体三日月曲面の接触角(°で測定される)は、記号θによって示されている。添え字「i」を用いて入口での条件を指し、添え字「c」を用いて狭窄部での条件を示し、添え字「o」を用いて出口での条件を示している。
【0083】
図示されたシステムの流体の挙動は、毛管ならびに/またはラプラス気泡圧力およびポアズイユ圧力降下によって制御され、流量を制限する。一般的に知られているように、三日月曲面における毛管圧力は、次式を用いて計算することができる。
式1

ここで、RおよびRは、垂直方向の曲率半径である。毛管などの管の場合には、曲率半径Rは、曲率半径Rと同じであり、曲率半径は、次式によって管の半径と関連付けられる。
式2
【0084】
さらに、矩形チャネルにおいては、ここで、Rは、Rと同じではなく、曲率半径は、次式で与えられる。
式3

ここで、aは、例えば、矩形部の幅であり、bは、矩形部の高さである。
【0085】
非圧縮性ニュートン流体の場合、パイプの直径よりも実質的に長い、一定の円形断面のパイプ内の非加速性層流を想定すると、圧力損失は、ハーゲン・ポアズイユの式から計算することができる。
式4
【0086】
ここで、μは、液体の粘性(N.s/mで測定される)であり、lは、流れが生じている管の長さ(メートルで)であり、rは、管の半径(メートルで)である。
【0087】
最後に、静圧力は、次式に従って計算される。
式5

ここで、gは、重力による加速度(9.81m/s)であり、hは、流体カラムの高さである。
【0088】
図5bは、作動した装置30が傾けられ、装置30内の流体を促進させて液体収集チャネル32の中に排水するシナリオを例証している。流体が入口38(すなわち、サンプル入力ポート33)の開口部に残っているかどうかを考察する場合、自由な排水を回避するために、入口における毛管圧力(Pci)は、出口における毛管圧力に、出口と同じ高さにはない入口(当該高さの差は、図5bおよび以下の式中のδhとして表示されている)によって生じる静水圧力の任意の差、をプラスした圧力と等しいかまたはそれよりも大きくなければならないことは理解され得る。これは、次式で表される。

この式から、式1および式2と組み合わせて、自由排水が起こる前の高さの最大の差δhは、次式のように推論され得る(入口および出口での接触角θは、同じと仮定する)。
【0089】
関連する変数の代表値(例えば、ri=0.4mm、ro=3.0mm、θ=82°、ρ=1000kg/m、γ=0.072N/m)を代入すると、約4mmの高さの差が、入口の脱濡れの前に達成され得る。
【0090】
これをさらに考察すると、図5cに示すように、高さの差がこの臨界値を超えると、入力ポート33での三日月曲面は、検知チャンバの入口に後退することとなる。三日月曲面が当該入口から脱する(すなわち、気体を検知チャンバ37に入れる)前の限界において、三日月曲面は、入口の半径に等しい最大曲率半径を有することになる(いずれの狭窄部38aも無視する)。その場合には、接触角θは、ゼロとなり、よって、排水のないシナリオは、次式によって説明され、


その限界においては、次式となる。
【0091】
再び、上記の代表値を用いると、これは、検知チャンバおよび下流三日月曲面の入口と、排水出口との間の許容可能な高さの差が、36mm程度であり得ることを示している。その結果、入口ポート33自体が濡れたままの状態ではない場合であっても、これは全く実質的な高さの差であるため、検知チャンバ37は、通常使用の脱濡れ状態である可能性は低く、このことは、異常な傾斜量を示し得る。
【0092】
さらに、検知チャンバは、入口から外へ滴り落ちることによって脱濡れ状態になる可能性も低い。
図5dに示すように、前に考察したシナリオに対する他の極端な状態としては、液体が入口から滴り落ち始める前の限界がある。再度、この場合、三日月曲面の曲率半径(今度は、他の方向に)は、入口毛管自体の曲率半径に等しい。この場合には、δhが入口三日月曲面と出口三日月曲面との間の高さの差であり、かつ出口が入口から外への流れを促進するように持ち上げられると想定すると、滴り落ちないシナリオが、次式によって表され、

その限界においては、次式となる。
【0093】
再度、代表値を代入すると、最大許容可能であるδhは、37mm程度のものとなる。再度、これは、使用時の通常の処理に対して許容可能範囲以内に十分入っている。
【0094】
それゆえに、上記の分析から、一旦、装置30が非活性状態から活性状態に切り替わると、液体センサ35は、通常条件で濡れたままとなる。さらに、入力ポート33が脱濡れ状態になったとしても、境界面が入口において検知チャンバ37にピニングされる可能性が高いという理由から、これは、必ずしもセンサが気体/液体境界面に露出されることになるわけではない。
【0095】
また、この安定性がサンプルを検知チャンバ37に送達する能力にどの程度影響を及ぼすかについて考察することも可能である。図5eにおいて、「液溜まり」から入力ポート33中に流体を吸取させる第1の極端な状態について考察される。その場合、液体を中に引き込むように動作する毛管圧力は、次式のように、入口内の層流損失によってバランスがとられる(長さlを有する)。
【0096】
代表値(μ=8.9x10-4Ns/m、およびl=3mm)を適用すると、流量25μl/sが導き出され得る。これは、例えば、200μl前後の全容積を有するマイクロ流体装置などにおいて、サンプル容積が少ない場合、十分過ぎるほどである。
【0097】
別の極端な状態では、図5fに示すように、サンプルは、入力ポート33に液滴(例えば、指からの血液の滴、またはピペットからの液滴)として供給され得る。その場合、駆動力は、次式のような、液滴に対するラプラス気泡圧力である。
【0098】
1mmの液滴の場合、圧力は、144Pa前後である(代表値を使用して)。液溜まり吸取シナリオと比較して、二次元近似によって、これは20倍前後大きいことが示され、よって、500μl/s前後の流量が、同じ粘性の薬物に対して予期することができる。
【0099】
その結果、装置30、例えば、入口38および出口39、ならびに液体収集チャネル32の寸法は、検知チャンバ37内の濡れ状態を堅牢に保持するだけでなく、検知チャンバ37中に液体を引き込むために容易に動作するように構成し得ることが理解され得る。サンプルが供給されたとき、装置30は、新たな平衡状態に戻り、そこでは、装置は、脱濡れ/排水乾燥しないことになる。すなわち、装置30は、検知チャンバ37の自由な排水を回避するように構成される。特に、サンプル入力ポート33、検知チャンバ入口38、および液体収集チャネル32は、係る排水を回避するように構成され、その結果、作動システムが検知チャンバ37の流路下流を完了するように動作されたとき、センサ35は、装置30が傾いている間であっても、気体または気体/液体境界面に露出されないままである。言い換えると、検知チャンバ入口33および液体収集チャネル32は、このため、毛管圧力および流れ抵抗のバランスをとって、流路が完了したとき、検知チャンバ37の自由な排水を回避するように構成されている。
【0100】
検知チャンバ入口および液体収集チャネルが、毛管圧力および流れ抵抗のバランスをとるためにどのように構成されているかを考察する際、装置が実際にどのように機能するかを考察することは、役に立つ。装置を「活性状態」に始動することは、液体出口と液体収集チャネル32との間の流路を完了することによって達成される。下流収集チャネルおよびサンプル入力ポートでの毛管圧力は、バランスがとられ、その結果、装置の作動に引き続いて、気体がサンプル入口ポート中に引き込まれず、そしてサンプル入力ポートは、濡れた表面を試験液に提供する。液体収集チャネルにおける毛管圧力がサンプル入力ポートにおける毛管圧力よりも大きい場合には、装置は、作動に続いて排水し、緩衝液は、収集チャネルに引き込まれることになる。
【0101】
装置の作動に引き続き、かつ試験液を加える前に、装置は、平衡状態にあること、すなわち、入力ポートにおける圧力が下流収集チャネルにおける圧力と等しいとみなされ得る。この平衡状態において、液体は、検知チャンバ内に残り、気体は、入力ポートに引き込まれず、その結果、入力ポートは、濡れた表面を、装置中に導入される試験液に提供する。装置は、検知チャンバが液体で充填されたままであるように力のバランスが存在すること、ならびに液体が、入口内、出口内、および液体収集チャネル内に(少なくとも部分的に)残っていることを確実にするように構成されている。平衡状態が液体の位置のシフトによって乱された場合(システムに対する液体の追加または除去なしに)、当該平衡状態に戻るための原動力が存在する。液体が移動するときは、液体が新規の気体/液体境界面を作り出すことになる。このため、この力のバランス、および平衡状態の復元は、それらの境界面における毛管力によって有効に制御されることになる。
【0102】
力のバランスが存在して、その結果、作動、または液体の容積の追加に引き続いて、液体がサンプル入力ポートを充填し、濡れた表面を提供することが理想的である。しかしながら、サンプル入力ポートにおいて濡れた表面を提供するために、作動/灌流に引き続いて、ある程度の調整が必要である場合がある。任意の場合において、入口ポートは、試験液をポートに加えることに引き続いて、入力ポートにおける毛管圧力が下流収集チャネルにおける毛管圧力より低くなるように構成されている。これにより、試験液を装置に引き込み、それによって検知チャンバから液体収集チャネルに液体を移動させるための駆動力が提供される。これは、サンプル入力ポートおよび液体収集チャネルにおける圧力が、もう一度平衡状態に到達するまで、継続する。この駆動力は、式1によって概説したように、入力ポートに適用された液体の容積の形状の変化によってもたらされ得、ポートに適用された液体の容積は、特定の曲率半径を有する図5fに示すように、ポート中に「決壊」し、このため、有効な曲率を低減し、かつラプラス圧力を供給する(例えば、試験液の容積の水頭圧に起因して、全体的な駆動圧力の他の構成要素も存在し得、その圧力は、当該容積が装置中に導入されるに従い、時間と共に減少することとなる)。液体入口の直径は、液体収集チャネルの直径よりも有利に小さく、その結果、液体は、入力ポートおよびセンサの上に配置され、液体は、気体により分離された離散相と対照的な連続相として装置内に存在する。
【0103】
その後、サンプルのさらなる容積が、装置に適用され、検知チャンバから緩衝液をさらに移動させることができる。これが何回も繰り返され得、その結果、緩衝液は、検知チャンバ内のセンサから除去され、そして試験液に置き換えられる。センサから緩衝液を完全に移動させるために必要とされる回数は、装置の内部容積、適用される試験サンプルの容積、ならびに達成され得る駆動力の度合いによって決定されることになる。
【0104】
このため、この特定の実施形態において、試験液は、ユーザが例えば、ピペットの使用によって追加の正の圧力を加える必要なく、装置中に引き込まれ、緩衝液を移動させることができる。これは、試験液を装置に適用することを簡略化する利点を有する。驚くことに、かつ有利なことに、本発明は、「濡れ状態」で提供され得る装置を提供し、液体は、別の液体を装置に適用するだけで装置から移動することができる。
【0105】
さらに、上記の分析は、直線的な構成のみを想定している。図6は、代替構成における例示的なマイクロ流体装置30の概略平面図である。この構成において、チャンバ37からの出口39の下流ある排水収集チャネル32は、サンプル入力ポート38から画定された最大半径以内にチャネル32を維持するように、ねじれたまたは曲がりくねった経路で提供されている。係る構成により、排水収集チャネル32の長い長さ(したがって、容積)を可能にし、同時に下流三日月曲面の最大距離を最大半径以内に保っている。当該最大許容半径は、入力ポート38と下流三日月曲面との間の高さにおける許容可能な差によって求められ、結果として、センサチャンバ37は排水しない。言い換えると、純粋に直線的な配置により、結果として、ある特定の量を使用した後に、三日月曲面は、最大許容可能な高さの差に到達するが、曲がりくねった配置では、三日月曲面は、入力ポート33のより近くに迂回して戻され、このため、臨界条件には、到達しない。その理由は、曲がりくねった配置により、下流三日月曲面が入力ポートにより接近することを維持し、同じ高さの差を得るにはより大きい傾斜角度が必要であるからである(チャネルの寸法は変化せず、チャネルの経路のみが変化するとする前提で、下流チャネル内に任意の所与の液体量がある場合)。
【0106】
さらに、サンプル入力ポート33が脱濡れ状態であっても、装置30は、活性状態でシステムを再始動するように動作可能であり得る。図2および図4の例において、サンプル入力ポート33を介して、入口38に追加の液体を直接供給することができる。別の方法として、出口39および検知チャンバ37から、入口38およびサンプル入力ポート33に液体を引き戻すことによって、再度の濡れを促進することができる。別の代替方法として、緩衝液供給ポート34を介して追加の流体を提供する場合がある。
【0107】
しかしながら、他の実施形態では、図2の実施形態の弁31の少なくとも下流部分は、省略され得、別の形態の流路遮断によって置き換えられ得る。例えば、下流排水チャネル32は、表面処理(例えば、撥水性のあるもの)によって飽和容積から分離され得、遮断が、呼び水または押し流し動作により始動された強制流動によって除去されるまで、その表面処理は、上流液体に対する障壁を有効に形成し得る。係る表面処理は、撥水性弁として有効である。実質上、遮断36は、作動システムが除去または乗り越えることができる任意の流れ障害物であってもよい。
【0108】
図7および図8は、本明細書に記載された装置の例示的な実施形態である。
【0109】
図7は、装置30を示し、そこでは、サンプルを入力ポート33に供給するために、ピペット90が使用されている。ポート33は、この例では、検知チャンバ37内のセンサの上方の中央に設けられている。この例、および図8の例では、図2で説明した種類の弁31(すなわち、サンプルチャンバ37への上流チャネルおよび下流チャネルの両方を開閉する単一の弁)が設けられている。
【0110】
図8において、装置30の主要画像は、サンプル入力ポート上の差し込み栓または封止材33Aの存在を示している。拡大画像は、差し込み栓33Aを取り除き、その下に露出したサンプル入力ポート33を示す。この例では、サンプル入力ポート33は、センサ35を含むチャンバ37の最上流端部に設けられている。この配置は、閉鎖された上流パージポート58を伴う作動状態においては、サンプルチャンバ37は、サンプルをポート33に押しやることによって速やかに充填され得、すでにサンプルチャンバ下流にある緩衝液を移動させる(すなわち、閉鎖されたパージポート58に起因して、上流移動は不可能である)ため、有利である。
【0111】
本発明のマイクロ流体装置30の一部の動作シナリオ(すなわち、図8によって例示したように)は、ここで、説明される。
【0112】
第1の構成では、弁31は開放しており、サンプルポート33も同様である(すなわち、差し込み栓33Aは、存在しない)。パージポート/緩衝液供給ポート34は、閉鎖されている。この構成では、ピペットを通気口ポート38において使用して、サンプルセルから含めてすべての液体を引き込むことができる。別の方法として、液体がこのポートに供給された場合、ポートは、流体を、排水リザーバ32を介してセンサチャンバ37中に、そしてサンプルポート33から外に移動させることになる。
【0113】
別の構成では、弁31およびサンプル入力ポート33は、開放され、通気口ポート58は封止されている。このシナリオでは、ピペットは、流体をパージポート34に供給することができ、パージポートは、流体を、セルを経由して(すなわち、飽和容積を経由して)サンプルチャンバ37中に、そして下流に向かってリザーバ32に押し流す。また、これにより、サンプル入力ポート33が脱濡れである場合、サンプル入力ポートを濡れさせる。別の方法として、ピペットを使用して液体を排水する場合、センサチャンバ、および装置の上流部分を排水することは可能である。
【0114】
別の構成では、弁31、パージポート34、および通気口ポート58は、すべて開放されている。この構成では、ピペットをサンプル入力ポート33に供給して、サンプルをセンサチャンバに提供することができる。別の方法として、ピペットを適用してサンプル入力ポート33から液体を排水する場合、センサチャンバ37を排水することができる。これがゆっくり実行されると、排水リザーバ32から液体を逆に引き込むことも可能である。
【0115】
別のシナリオでは、弁31およびパージポート34は、開放しており、同時に通気口ポート58は閉鎖している。このシナリオでは、必要に応じて、サンプル入力ポート33を介して流体を適用し、パージポート34から外部に流体を押し流すことが可能である。別の方法として、サンプル入力ポート33から液体を引き出すことは、パージポートを介してセル中に空気を引き込むことになる。
【0116】
別のシナリオでは、弁31および通気口ポート58は、開放しており、同時にパージポート34は、閉鎖している。このシナリオでは、サンプル入力ポート33に供給された流体は、流体をパージポートから流出することなく、より速やかにセル中に押し流すことができる。別の方法として、このシナリオにおいてサンプル入力ポート33から流体を引き出すことは、速やかに実行されると、セルおよび下流排水を排水することになる。
【0117】
さらなる2つの構成において、弁31は、閉鎖されている。いくつかの構成において、弁31を閉鎖することにより、検知チャンバを分離するのと同時に、上流パージポート34を下流排水リザーバ32に接続することができる(すなわち、図2の配置において、上流パージポート34は、下流排水32に接続されないが、弁チャネル31Bの長さを延ばすことにより、結果として接続することができる)。係る接続が行われると、通気口ポート58からの排水を充填させるか(すなわち、それにより、任意の液体がパージポート34から流出する)、またはパージポート34からの排水を充填させる(すなわち、それにより、任意の液体が通気口ポート58から流出する)かのどちらかが可能である。さらに、排水は、パージポート34か、または通気口ポート58かのどちらかから液体を引き出すことによって(他方が開放しているという前提で)、空にすることができる。
【0118】
図9は、装置90の一部分のサンプル入力ポート92から延在しているガイドチャネル91の例示的な設計を示す。ガイドチャネルは、ポートから外側に向かってテーパ形状を成し、サンプル入力ポートへのチャネルに適用されるピペット先端100を誘導する役割を果たす。また、ガイドチャネルは、サンプル入力ポートに向かって下向きに傾斜しており、このことが、ピペット先端のポートへの進行を支援している。ピペット先端がサンプル入力ポートに誘導されると、ユーザは、ピペット先端からポートに液体サンプルを加えることができる。カラー93は、チャネルの領域の範囲を定める役割を果たし、ピペット先端をサンプル入力ポートに直接適用するための支持体として機能する。ポートの寸法に起因して、例えば、直径を1mm以下とする場合、ユーザがサンプル入力ポート自体にピペット先端を直接配置することが難しい場合がある。外側に向かってテーパ形状を成すチャネル領域により、ユーザが、ピペット先端をサンプル入力ポートに配置および誘導するために、より広い目標領域を提供し、これは、必要とされるべきである。
【0119】
図11は、図10の装置と同様の装置を例証する。装置200は、装置200のベースを形成する第1のコンポーネント210を有し、一方、第2のコンポーネント220は、ベースコンポーネント210に挿入され、かつ取り外され得る。ベースコンポーネント210は、それ自体、複数のコンポーネント211、212から成り得る。第1および第2のコンポーネント210、220は、第1および第2のコンポーネント210、220が接続されたとき、各々が、互いに接続を形成するそれぞれの電気コネクタアレイを有する。これにより、複数の第2のコンポーネントが、単一のベースコンポーネント210と一緒に使用されるのを可能にする。第2のコンポーネント220の本体は、典型的には、ある程度の弾力性を有するプラスチック材料で作製される。プラスチック材料は、例えば、ポリカーボネートであってもよい。
【0120】
図11の第2のコンポーネント220は、マイクロ流体装置、すなわちフローセルである。フローセル220は、図12および図13の斜視図に示されている。図12は、上方からの図を示し、一方、図13は、下方からの図を示す。図13において、コネクタアレイ(図示せず)は、センサ235の底部を形成する。図11のベース210は、フローセル220上のアレイに接続するための、対応する電気コネクタアレイを有し得る。
【0121】
図14は、フローセル220を通る概略断面を示す。センサ235は、検知チャンバ237内に設けられている。液体(例えば、試験される緩衝液またはサンプル)は、入口チャネル261を介して検知チャンバに供給され得る。同様に、液体は、出口チャネル262を通って検知チャンバを出ることができる。入口チャネル261および出口チャネル262は、別個のチャネルであり、入口チャネル261から検知チャンバ237を通って出口チャネル262までの連続的な流体の流れを可能にする。
【0122】
フローセル220は、装置を通る流路が良好な液体保持特性を有する材料で作製されるように構成され得る。すなわち、その材料は、実質的に液体不透過性であり、非多孔質であり得る。これは、特に、作動前に濡れた容積を含む上流部分、すなわち、入口チャネル261、チャンバ237、および出口チャネル262を含む部分に適用される。以下に説明するブリッジチャネルなどの下流部分は、それらの下流部分が作動後まで流体に露出されないため、係る高い液体保持特性を必要としない。いずれの場合も、適切な障壁材料の例は、環状オレフィンコポリマー(COC)または環状オレフィンポリマー(COP)を含み、それらは、高い透明度を有しながら剛性である。他の適切な材料としては、より柔軟であり、かつ透明ではなく半透明ではあるが、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)をベースとする材料が含まれる。ただし、フローセル220は、また、追加コ-ティング材、共押し出し成形品、積層品、またはより低い障壁材料で作製される部分を含むこともできる(任意選択的に、装置の外装の一部としての二次障壁と組み合わされる)。すなわち、流路の表面は、良好な液体保持特性を有する材料で作製され得、周辺の材料は、異なってもよい。
【0123】
入口チャネル261は、フローセル220へのサンプル入力ポートとして機能するリザーバ233と連通する。言い替えると、図12においてわかるように、リザーバ233(第1の封止材251が除去されるときは、以下を参照)は、フローセル220の周辺に対して開放されている。これにより、ユーザが、フローセル220の活性状態において、試験するサンプルをリザーバ233内に置くことが可能になる。大きい(例えば、直径5mm)ポート233を設けることによって、ユーザがフローセル220に気体を導入せずにサンプルを入力ポート233に供給することが容易になる。
【0124】
すなわち、ポート233の幾何学的形状は、非作動状態にある間は、リザーバを提供するようになっている(封止材251および252が取り除かれる以前は、以下を参照)。また、作動状態にある間にサンプルが加えられる場合または加えられたとき、サンプルがフローセルに引き込まれ得るよりも速やかに、リザーバを瞬間的に提供することもできる。
【0125】
一旦作動すると、流路のサンプル入口端部における液体/空気境界面は、入口チャネル261とポート/リザーバ233との間の隅に静止するように付勢される。流路の他の端部における液体/空気境界面は、排水チャネル232に沿って自由にとどまり、境界面の位置は、流体の容積によって画定される。毛管作用に起因して、これは、セル流体が蒸発した場合であっても、どの液体/空気境界面で蒸発が生じているかにかかわらず、サンプル入口端部の境界面は静止したままであり、一方、流体容積の減少につれ排水端部が後退する、事象を維持する。
【0126】
サンプルをフローセル220に加えるために、ユーザは、サンプル入口端部(すなわち、入口チャネル261とポート/リザーバ233との間の移行場所)における液体/空気境界面にサンプルを接触させる必要があるだけである。これにより、直接的に、またはリザーバ中にサンプルを加えることによって、ポート233のための領域を形成することができ、サンプルが境界面に向かって移動し(例えば、重力流の下で)、そして境界面と接触するのを可能にする。サンプル入口ポート233は、液滴の直径よりも大きい入口直径を有し、有利には皿形状であってもよい。このため、装置に加えられ得る液滴は、重力によって皿の底部に移動し、サンプル入口ポートを有する境界面における入口チャネル261の上部で流体と接触することができる。サンプル入口ポート233のテーパ状側面により、液滴が入口チャネルに集束するようになり、かつ空隙の形成を防止することによって気体のフリーセル中への導入を最小限に抑えることを可能にする。また、サンプル入口ポート233は、皿形状以外の形状、例えば、浅い円錐形状のものでもよい。
【0127】
サンプルの追加については、図18にさらに例証され、この図は、サンプル流体291、フローセル成形品292、センサ293、およびセル流体294を示す。封止材表面295は、サンプル液滴半径297よりも大きい半径を有するサンプルポート開口部/リザーバ296を有する。これにより、サンプル流体291がセル流体空気境界面298と接触するのを可能にし、開口部にわたってブリッジせず、かつ流体境界面の間に空隙を閉じ込めない。セル流体空気境界面298は、製造中に成形ツール内に遮断表面によって形成される鋭利な円形縁端部299におけるピニングに起因した毛管作用による移行地点298にとどまるように付勢される。セル流体空気境界面298が、縁端部299から離れるように加力される場合、縁端部299に向かう表面284および285のテーパ形状は、セル流体空気境界面298を縁端部299に戻すように働く毛管力を高める。セル流体空気境界面298が縁端部299から離れるように加力される極端な場合において、縁端部286でのピニングは、ラプラス気泡圧力を加えて、センサ293に向かってさらに引き出される空気に抵抗する。
【0128】
リザーバ233がフローセル220の上面上にあるため、リザーバは、検知チャンバ235の上方にある。しかしながら、これは、直接的な意味で(すなわち、リザーバが、検知チャンバの上方に直接存在する必要はない)、または絶対的な意味で(すなわち、リザーバが、検知チャンバよりも高所の位置にある必要はない)必ずしも必要なことではなく、その理由は、以下で説明するように、液体が、毛管流によって装置を通って引き込まれるからである。リザーバ233は、検知チャンバ237と同じ高さまたはその下方に位置決めされてもよい。
【0129】
また、フローセル220には、排水液体収集チャネル232も設けられている。使用中、出口チャネル262を介してセンサチャンバ237を出る液体は、収集チャネル232によって受容される。
【0130】
しかしながら、出口チャネル262と収集チャネル232とのすぐ間に、流れ障壁231がある。 流れ障壁231は、収集チャネル232から出口チャネル262を分割する壁である。言い替えると、障壁231が存在しない場合、障壁231の流路上流は、出口チャネル262で終了し、障壁231の流路下流は、収集チャネル232から始まり、互いに直接接続される。障壁231(および、したがって出口チャネル262の端部)は、図示した構成においては、検知チャンバ237の高さよりも上方にある。しかしながら、これは、以下に説明するように、液体が毛管流により装置を通って引き込まれるため、必ずしも必要ではない。
【0131】
活性または作動状態において、液体は、障壁231を超えて通過し、排水収集チャネル232中を通過することができる。しかしながら、図14に示すように、フローセルは、非活性状態にある。この状態では、第1の封止材251は、サンプル入力ポート233を被覆し、これに対して第2の封止材252は、検知チャンバ出口チャネル262の端部を被覆する。例証した実施形態において、第1および第2の封止材251、252は、両方とも、同じ封止材要素250全体の一部として設けられている。図に示すように、封止材要素250全体はまた、非活性状態にある排水収集チャネル232への入口を被覆することができる。封止材要素250は、表面よりもある程度親水性の接着剤によってフローセル220の表面に取り付けられ得る。特に、係る接着剤は、第1および第2の封止材251、252が除去されたときに後に残る場合があり、それによって、表面に好都合な濡れ特性を与える(例えば、リザーバ233から外部への液体の流れを阻害し、または以下に説明するブリッジチャネル241への液体の流れを促進する)ことができる。
【0132】
出口チャネル262の端部、および排水収集チャネル232への入口は、活性状態において、障壁231を超え、障壁カバー240を介して接続され得る。障壁カバー240は、出口チャネル262および収集チャネル232を接続するためのブリッジチャネル241を含み得、以下にさらに詳細に説明される。
【0133】
封止材要素250は、剥離ライナ部253をさらに含むことができる。剥離ライナ253は、第2の封止材252に取り付けられている。剥離ライナ253は、第2の封止材252を超えて延在し得(図に示すように、障壁カバー240のさらに下に延在している)、またハンドル部分254を含むために封止材の上方に二重に折り返し得る。
【0134】
この配置において、ハンドル254を引っ張ることによって、封止材251および252の両方を除去するための簡単な方法が提供される。すなわち、ハンドル254を引っ張ることによって、剥離ライナ253は、障壁カバー240の下から引き戻され、封止材252も同じ方向に引き剥がされる。このように、第2の封止材252の下側に残った任意の接着剤は、接着剤が引き剥がされ露出されたときに、障壁240とは接触しないが、接着剤が第2の封止材252と一緒に障壁カバー240の下から同時に引き戻されたとき、接着剤は、剥離ライナ253によって代わりに被覆される。ハンドル254がさらに引っ張られると、第1の封止材251もまた、サンプル入力ポート233から取り外される。
【0135】
障壁カバー240は、たわむことが好ましく、その結果、障壁カバーは、フローセル220の主要本体に向かって付勢される。図12に示すように、障壁カバー240は、ボルトまたはねじ245などの固定手段によって適所に付勢され得る。他の配置において、障壁カバー240は、流体チャネルを形成する本体と一緒に単一の部品として形成されてもよい。どちらの配置においても、カバー240は、第2の封止材252が除去され、次いでカバー240が封止材252の下の露出された表面に対して調整し、かつ耐えることができるようにフレキシブルであり得る。
【0136】
その結果、封止材要素250が除去されると、障壁カバー240のブリッジチャネル241は、適所に付勢されて、出口チャネル262と排水収集チャネル232との間に接続チャネルを形成する。図15に示すように、ブリッジチャネル241は、パッキン244によって囲まれて、出口チャネル262と排水収集チャネル232との間の良好な封止を確実にする。しかしながら、封止はまた、パッキンを用いずに、ブリッジチャネル241の円周部の周りの流体のピニングを介して作り出すこともできる。別の方法として、障壁カバー240は、たわみ材料(例えば、金属または適切なプラスチック材料)で作製された主要本体を有してもよいが、ブリッジチャネル241は、エラストマー材料などの、封止材の作製を容易にする別の材料で作製することができる。係る材料は、例えば、Kraiburg TPE GmbH&Co(Waldkraiburg、独国)のThermolast K TF2 ATLなどの熱可塑性エラストマー(TPE)、シリコーン、熱可塑性加硫ゴム(TPV)、または熱可塑性ポリウレタン(TPU)であってもよい。これにより、パッキンをブリッジチャネル241に有効に組み込める。
【0137】
それゆえに、封止材要素250が除去されると、フローセル220を通る連続的な流路が、ポート233から入口チャネル261を通ってセンサチャンバ237まで、次いで出口チャネル262まで、そしてブリッジチャネル241を通って排水収集チャネル232中まで形成される。障壁231の両側の上流部分と下流部分との間のこの流路が完成すると、フローセル220は、「活性状態」に置かれる。すなわち、活性状態は、液体が、入力ポート233から、センサチャンバを通って、そして排水収集チャネル232中に通過することができる状態である。ブリッジチャネル241は、液体が収集チャネル232から出口チャネル262に通過するような毛管寸法を有する。
【0138】
封止材要素250が除去される前は(このため、第1および第2の封止材251、252は、依然として適所に存在する)、フローセル220は、「非活性状態」にある。その状態においては、第1の封止材251から、完全閉鎖された入力ポート233、入口チャネル261、検知チャンバ232、および出口チャネル262を通って、第2の封止材252の表面まで形成された、封止された流体容積または「飽和容積」が存在する。言い替えると、障壁231の流路上流は、密閉されている。非活性状態において、フローセルは、サンプル入力ポート233における第1の封止材251から、検知チャンバ出口チャネル262の端部における第2の封止材252まで、液体で充填される。緩衝液などの液体で充填された当該容積を有することによって、センサ235は、気体または気体/液体境界面に露出されるのを防止される。今度は、これによって、例えば、ナノ細孔が設けられた任意の半透膜などの、センサ235の壊れやすいコンポーネントを保護する。
【0139】
フローセル220が第1の封止材251から第2の封止材252まで液体で充填される非活性状態を与える利益は、フローセルを使用に向けて準備することができ、したがって、センサアレイを破壊することなく、容易に輸送することができることである。特に、内部容積から任意の気体、したがって任意の気体/液体境界面を排除することによって、フローセル220が動き回り、場合によっては輸送中に配向が変えられたときに、センサ235の表面を気泡が破壊する機会はない。
【0140】
対照的に、封止材要素250を除去することによってフローセルを「活性」状態に構成することにより、サンプルがポート233に加えられることを可能にし、液体は、検知チャンバ237を通って、そして排水収集232に流れることができる。それにもかかわらず、検知チャンバ237に対する入力ポート233および障壁231の配置は、液体が、活性状態にあっても検知チャンバ237から自由には排水しないことを意味する。これは、入力および出力チャネル261、262の寸法によって、毛管力が流体の移動を要求することを意味するからである。
【0141】
言い換えると、封止材要素250の最初の除去により、一部の液体を、当初の飽和容積から、すなわち出口チャネル262から外へ、そしてブリッジチャネル中、場合によっては排水チャネル232中に流すことができる。言い換えると、封止材要素250の除去は、装置を通る一部の液体を引き出す「呼び水」効果を有し得る。しかしながら、係る呼び水は、検知チャンバ23が毛管力のバランスに起因して排水するという結果を伴う、流体の自由な流れを生じさせる結果とはならない。
【0142】
使用の際、液体は、毛管作用によってリザーバ233から入口チャネル261中に引き込まれる。フローセル220を通して、特に出口チャネル262から外へ、そしてブリッジチャネル241中へ流体を引き出すことを支援するために、障壁カバー240は、ディッパ242および243を備えることができ、それらのディッパは、例えば、円形のプロファイルであり得る突起であるが、他の形状も可能である。第1のディッパ242は、障壁カバー240から、ブリッジチャネル241を通って、そして出口チャネル262中に延在する。第2のディッパ243は、障壁カバー240から、ブリッジチャネル241を通って、そして排水収集チャネル232中に延在する。いくつかの実施形態では、出口チャネル262へのディッパ242のみが設けられてもよい。他の実施形態では、排水収集チャネル232へのディッパ243のみが設けられてもよい。他の実施形態では、図に示すように、ディッパ242および243の両方が、設けられてもよい。
【0143】
ディッパ242および243は、液体がセル220を通って流れている間、毛管作用を抑制することができる任意の三日月曲面の「ピニング」を克服することに役立つ。言い替えると、液体が出口チャネル262の端部に近づくと、ディッパは、三日月曲面が出口チャネル262の端部に到達する前に、液体の中に進入する。これは、ブリッジチャネル241中に液体を引き出し続ける毛管作用を支援する。同様に、ディッパ243を設けることで、液体が液体収集チャネル232の入口でピニングする三日月曲面からの影響を受けることなく、流体を収集チャネル232中に導入することを支援する。
【0144】
また、ブリッジチャネル241から排水収集チャネル232への流れはまた、ブリッジチャネル241の端部に丸みのあるコーナーを設け、それによって、鋭利な縁端部の数を減らし、したがってピニングの可能性を減らすことによって、支援され得る。この丸みのあるコーナー263は、図14に示され、降水管264への入口における丸みのあるコーナー(チャネルへの液体の進行も支援する)もまた、見ることができる。同様に、丸みのあるコーナー265が、排水収集チャネル232の降水管264(すなわち、障壁231のすぐ隣のチャネル232の入口部分)と、排水収集チャネル232の主要チャネル266との間に設けられ得る。これは、図15に例証されている。その丸みのあるコーナー265は、チャネルの他方の側面上の鋭利な縁端部/コーナーに対向して設けられている。コーナー265には、丸みがあるが、流れの方向に対して垂直方向のチャネルの断面は、矩形とすることができる。この組み合わせにより、流体が鋭利な縁端部上でピニングすることを可能にし、同時に流体は、流れに抵抗しながら湾曲部の周りを進行することができる。この理由は、1箇所の接点がピニングされ、流体がチャネルに沿って進行するときに、流体は、露出された流体表面を「伸ばす」こと(すなわち、表面上で行われる動作を必要とすること)なく、その湾曲面とその固有の接触角を形成することができるからである。
【0145】
図16は、唯一のディッパ242を有する、図15の図の代替配置を示す。チャネルが上部および下部の成形部品、すなわちフローセルアセンブリ成形上部271、およびフローセルアセンブリ成形下部272からどのように形成されるかに関する追加の詳細もまた、示されている。図は、封止材要素(図示せず)が封止表面274から除去された後の構成を示している(N.B.封止表面274が、図の左から右へ連続的に走っているが、ポートを通過する特定部分において明らかに中断している)。封止材275は、障壁カバー240とフローセル上部成形271との間に作製され、セル出口チャネル262と排水入口チャネル232との間のブリッジチャネル241を密閉している。ブリッジチャネルの表面279は、親水性であり、毛管作用を支援することができる。ディッパ242は、障壁カバー240の突起によって形成され、その突起は、封止表面274を横断し、縁端部281でピンイングされたセル流体空気境界面に接触する。フローセルアセンブリ成形下部272の突起部282は、フローセルアセンブリ成形上部271内のポート中に延在しているが、封止表面274を横断せず、封止材要素が封止表面274に対して平坦に置かれることを可能にしている。ただし、半径283は、セル流体が表面274に沿って進行し、突起部282と接触することができるように、ピニングを防止している。流体が、突起部282においてフローセルアセンブリ成形下部と接触すると、毛管作用により、突起部を連続表面に引き降ろされ、その連続表面は、半径265を有し、その結果、フローセルアセンブリ成形上部縁端部285におけるピニングは、チャネルに沿って流体前部の進行を抑える。
【0146】
障壁231の周りの流れをさらに支援するため、ブリッジチャネル241、および/またはブリッジチャネル241に面する障壁の表面は、適切な表面濡れ特性を備えることができる。また、これは、排水チャネルにも適用されて、装置を通る液体の流れが排水チャネル内でピニングされるのを避けることができる。毛管作用を促進させるため、流路内部の接触角は、90°未満であることが好ましい。したがって、問題の表面は、90°以下の水との濡れ接触角を有し得る。任意選択的に、表面は、純水と比較してサンプルの濡れ特性の変動を考慮するために、例えば、75°以下の水との濡れ接触角を有する表面よりもさらに親水性であり得る。
【0147】
しかしながら、いくつかの配置では、これらの表面が、入力ポートにおける流体保持を克服する得られた毛管効果を回避し、装置を通る液体を引き出し、空気の進入を可能にして、場合によってはセンサを露出するほど親水性ではないことを確実にすることが望ましい場合がある。図5cの配置、および上述した圧力のバランスを考慮すると、ゼロの接触角が入口で生じて最小気泡半径を引き起こすことが考えられ、排水チャネルが入力ポートよりも小さい有効半径を有する場合にのみ、空気の進入が生じることが示され得る(流体表面は、同じ高さにあるものと想定する)。実際には、排水チャネルは、入口ポートの少なくとも2倍のサイズの有効半径を有することができる。それにもかかわらず、装置は、必ずしも水平であるとは限らないため、親水性または低接触角排水表面の効果は、装置を傾斜させる結果として許容され得る水頭圧を低減することである。その結果、水との接触角は、任意選択的に、10°以上であり、さらに任意選択的に20°以上である。
【0148】
表面特性は、物理的または化学的処理によって制御することができる。これは、製造中に容易にアクセス可能であるため、特にブリッジチャネル241に適用するが、上述したように、ブリッジチャネル241および排水チャネルに面する障壁の表面などの他のコンポーネントにも適用することができる。
【0149】
物理的な処理に関しては、ブリッジチャネル241は、疎水性の局所面積を凌駕するための親水性の表面積を増やすことによって毛管効果を増加するように設計されてもよい。すなわち、表面積は、平坦/質感のない表面と比較して増やすことができる。これは、例えば、障壁231に面する表面上へのテクスチャリングによって達成され、微視的な粗さおよび/または巨視的な特徴を提供することができる。係る巨視的な特徴は、例えば、支柱、フィン、またはチャネル/溝として設けることができる。追加的に、または別の方法として、非周期的および非確定的パターンが、当該表面上に作り出されてもよい。係る微視的な特徴は、スパーク仕上げを有する成形ツールを用いてブリッジチャネルの表面を形成することによって、および/または表面をエッチングすることによって、提供され得る。係る特徴は、例えば、0.2mm前後の深さであってもよい。係る特徴は、ブリッジチャネル241のための成形品の一部として生成されてもよい。
【0150】
物理的な処理の別の形態は、ブリッジチャネル241内に物理的に多孔質である要素を設けることを含み得る。係る要素は、液体をブリッジチャネル241中に吸取し、その後、それを通過するのを支援することができる。係る要素は、ブリッジチャネル241を充填することができる。係る要素は、例えば、セルロースで形成されたスポンジであってもよく、または布地もしくは繊維で作製されてもよい。いくつかの実施形態では、多孔質要素は、液体がブリッジチャネルを通って支援されると、その目的を果たすことになるため、(封止材の除去後に)装置を通って流れる液体内で溶解してもよい。
【0151】
化学処理に関しては、ブリッジチャネル241は、適切な化学物質でコーティングされて、チャネルの親水性を高めることができる。係る化学物質は、市販の親水性コーティング材であってもよく、典型的には、Jonnin(Gφrlφse、デンマーク)のP100およびS100など、親水性コンポーネントの層を背後に残すように蒸着する担体溶媒内に適用され得る。食塩水などの、親水性コンポーネントの層を背後に残すように蒸着する他の溶媒も使用することができる。
【0152】
化学処理の別の形態としては、封止材と、障壁231の上面との間に、固体またはゲル層などの異なる材料の層を設けることによって達成することができ、追加層は、231の下地材料よりも親水性の材料である。追加層は、下地材料基板に接合もしくは融着することができ、またはオーバーモールドすることができる。このアプローチの利点は、異なる材料が異なる利益をもたらすことができることであり、例えば、装置内に必要な流体を確実に閉じ込めるために、主要基板が良好な水蒸気障壁特性を有する材料であり得、同時に追加層が、障壁231を超える流れを促進するように、(良好な蒸気障壁特性を有する材料は、多くの場合、親水性ではなく、比較的疎水性であるために)基板よりも親水性の材料で作製され得る。このアプローチの例としては、63°前後の水との接触角を示す成形されたナイロン6(ポリカプロラクタム)を追加層として、または73°前後の水との接触角を示すPET(ポリエチレンテレフタレート)の薄いシートを使用することを含む。適切な親水性特性を示す他の材料としては、51°前後の接触角を有するポリビニルアルコール(PVOH)、61°前後の接触角を有するポリビニルアセテート(PVA)、63°前後の接触角を有するポリエチレン酸化物(PEO)/ポリエチレングリコール(PEG)、68°前後の接触角を有するナイロン6,6、70°前後の接触角を有するナイロン7,7、71°前後の接触角を有するポリスルホン(PSU)、71°前後の接触角を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)、または72°前後の接触角を有するナイロン12が含まれる。
【0153】
フローセル220全体の毛管力のバランスは、一部の追加の駆動力なしに、流体が、検知チャンバからブリッジチャネル241および排水収集232中に自由には流れないことを意味する。当該駆動力は、入口ポート233への追加流体の提供であり得る。また、その駆動力は、封止材251が除去されたときの、入口ポートリザーバ233内の流体の存在であってもよい。どちらの場合においても、係る流れは、上流の液体/空気境界面が、上述した毛管力のバランスに起因して入口チャネル261とポート/リザーバ233との間の移行場所において静止するまで、生じるにすぎない。したがって、フローセル220を作動させることは、センサ235を気体または気体/液体境界面には露出させない。言い替えると、フローセル220を作動させることにより、液体がフローセル220を通って排水されて、センサチャンバ237が空になり、そしてセンサ235を空気に露出させることはない。加えて、セル220への空気の侵入に対するさらなる保護が、例えば、フローセル220の過度の傾斜または加速の間に、チャンバ237と入口チャネル261との間の縁端部でピニングする流体によって提供される。係る過度的な事象が終了すると、境界面は、毛管作用を介して、この縁端部から、入口チャネル261とポート/リザーバ233との間の移行場所に戻ることになる。
【0154】
サンプルの追加に続いて、封止材は、サンプルポートおよび排水ポート上で置き換えられて蒸発を低減することができる。これを図17に示す。図17aは、サンプルポート233を露出するために、封止材要素250が除去された状態のセル220を例証する。また、この図は、流体排水ポート267および空気廃棄ポート268も例証している。これらのポートにより、流体が外に引き出され、フローセル220から完全に除去されるのを可能にする。ポート267は、排水チャネル232から流体を除去するためのアクセスポイントとして機能する。流体が除去されると、流体がセンサ235と連通しているにもかかわらず、空気は、上流センサチャンバ237およびサンプルポート233からの流体ではなく、ポート268を介して下流から取り出された流体に優先的に取って代わる。図17bは、サンプルがポート233に供給された後に、封止材要素250がどのように置き換えられて蒸発を低減し、汚染からポート233を保護することができるかを例証している。封止材要素250はまた、排水ポートカバー269を有してもよく、排水ポートカバーは、同様にポート267、268からの蒸発の低減を助け、また汚染の防止も助ける。封止材は、サンプルポートおよび/または廃棄ポートの領域内に、ポート検査を支援するための輸送窓を有してもよい。
【0155】
本発明は、上述の実施形態には限定されず、様々な修正および改良が、本明細書に記載された概念から逸脱せずに行うことができることを理解されたい。相互に排他的な場合を除いて、いかなる特徴も、任意の他の特徴とは別個に、またはそれらと組み合わせて用いることができ、本開示は、本明細書に記載された1つ以上の特徴のすべての組み合わせ、および部分組み合わせに適用されおよび包含する。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.試験液を分析するためのマイクロ流体装置であって、
ブリッジ可能な障壁と、
検知チャンバ内に設けられたセンサを収容するために、かつ分析される試験液を受容するために、前記ブリッジ可能な障壁の上流に位置付けられている、上流部分であって、前記上流部分が、入口チャネルおよび出口チャネルを備え、前記入口チャネルと前記出口チャネルとの間が液体で充填可能である、上流部分と、
前記上流部分の前記出口チャネルからの液体を受容するために、前記ブリッジ可能な障壁の下流に位置付けられている、下流部分と、
取り外し可能に取り付け可能な封止材であって、前記上流部分を閉鎖するように構成され、ならびに、液体が前記上流部分に提供されたときに、
ー前記封止材の除去前に前記液体の流れを阻止するように、および
ー前記封止材の除去後に、液体が前記上流部分から前記下流部分に前記障壁を通過するのを可能にするように構成されている、取り外し可能に取り付け可能な封止材と、を備える、マイクロ流体装置。
2.ブリッジが、前記障壁と隣接して設けられており、前記封止材の除去後に、前記ブリッジは、液体が前記障壁を介してまたは越えて、前記上流部分から前記下流部分に流れるのを容易にする、上記1に記載のマイクロ流体装置。
3.前記封止材は、液体が前記入口部分から前記出口部分に流れるのを阻止するように追加的に構成されている、上記2に記載のマイクロ流体装置。
4.前記障壁に面している前記ブリッジの表面が、90°以下、任意選択的に75°以下の水との濡れ接触角を有する、上記2または上記3に記載のマイクロ流体装置。
5.前記障壁に面している前記ブリッジの前記表面が、20°以下の水との濡れ接触角を有する、上記4に記載のマイクロ流体装置。
6.前記障壁に面している前記ブリッジの前記表面に、化学的に親水性の層または処理、任意選択的に、前記ブリッジの未処理表面よりも親水性の層、またはプラズマ処理が提供されている、上記4または上記5に記載のマイクロ流体装置。
7.前記障壁に面している前記ブリッジの前記表面が、前記表面の表面積を増加させるための物理的なテクスチャ、任意選択的に、前記表面上に設けられた支柱、フィン、および/または溝を含む、上記4または上記5に記載のマイクロ流体装置。
8.前記上流部分が、前記入口チャネルと前記出口チャネルとの間において液体で充填されている、上記1~7のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
9.試験液を分析するためのマイクロ流体装置であって、
検知チャンバ内に設けられたセンサと、
検知チャンバ入口チャネルおよび検知チャンバ出口チャネルであって、各々が、前記検知チャンバの内部および外部に液体をそれぞれ通過させるために前記検知チャンバに接続している、検知チャンバ入口チャネルおよび検知チャンバ出口チャネルと、
前記マイクロ流体装置へのサンプル入力ポートを形成するリザーバであって、前記リザーバが、前記検知チャンバ入口チャネルと流体連通している、リザーバと、
液体収集チャネルと、
前記検知チャンバ出口チャネルの端部と前記液体収集チャネルとの間の障壁と、
前記サンプル入力ポートを被覆する第1の封止材と、
前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部を被覆し、それによって、液体が前記検知チャンバから前記障壁を越えて前記液体収集チャネルの中に流れるのを防止する、第2の封止材と、を備え、
前記マイクロ流体装置が、前記サンプル入力ポートにおける前記第1の封止材から前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部における前記第2の封止材まで液体で充填されており、その結果、前記センサが、液体によって被覆されており、かつ気体または気体/液体境界面に露出されておらず、
前記第1および第2の封止材は、前記リザーバと前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部との間に前記液体を流して、一部の液体が前記障壁を越えて流れるように取り外し可能である、マイクロ流体装置。
10.前記検知チャンバ出口チャネルを前記液体収集チャネルに接続するための、前記障壁を越えてブリッジチャネルを形成する、障壁カバーをさらに備える、上記1~9のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
11.前記障壁に面する前記障壁カバーの表面が、90°以下、任意選択的に75°以下の水との濡れ接触角を有する、上記10に記載のマイクロ流体装置。
12.前記障壁に面する前記障壁カバーの前記表面が、20°以上の水との濡れ接触角を有する、上記11に記載のマイクロ流体装置。
13.前記障壁カバーが、前記検知チャンバ出口チャネルを前記液体収集チャネルに接続するための位置に向かって付勢されている、上記10~12のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
14.前記第2の封止材が、前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部と前記ブリッジチャネルとの間において前記障壁カバーの下に位置付けられている、上記10~13のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
15.前記封止材の前記取り外しを支援するように、前記第2の封止材に接続された剥離ライナをさらに備える、上記14に記載のマイクロ流体装置。
16.前記ハンドルが、前記剥離ライナの一部を形成する、上記4に従属する場合の、上記15に記載のマイクロ流体装置。
17.前記剥離ライナの少なくとも一部が、前記第2の封止材と前記障壁カバーとの間に位置付けられている、上記16に記載のマイクロ流体装置。
18.前記障壁カバーが、流れを前記ブリッジチャネル中に促進させるために、前記ブリッジチャネルから前記検知チャンバ出口チャネルに向かって延在するディッパをさらに備える、上記10~17のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
19.前記ブリッジチャネルが、前記障壁の脇の降水管に接続する湾曲部を備えており、前記湾曲部が、少なくとも一方の側に曲線状プロファイルを含む、上記10~18のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
20.前記装置は、前記第1および第2の封止材の前記除去が前記センサを気体または気体/液体境界面に露出させないように構成されている、上記1~19のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
21.前記第1および第2の封止材は、それらが一緒に除去され得るように接続されている、上記1~20のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
22.前記第1および第2の封止材に取り付けられた封止材ハンドルをさらに備え、前記封止材ハンドルが、前記第1および第2の封止材を除去するように引っ張られ得る、上記21に記載のマイクロ流体装置。
23.前記液体収集チャネルが、前記障壁の脇の降水管と、前記液体収集チャネルの主要部分との間に湾曲部を備えており、前記湾曲部が、少なくとも一方の側に曲線状プロファイルを含む、上記1~22のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
24.前記第2の封止材が、前記マイクロ流体装置の表面よりもある程度親水性の接着剤によって前記マイクロ流体装置の前記表面に取り付けられている、上記15、または上記16~23の従属上記のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
25.障壁カバーが、前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部と前記ブリッジチャネルとの間の接触を促すように付勢されている、上記10、または上記11~24の従属上記のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
26.前記障壁カバーが、前記検知チャンバ出口チャネルの前記端部と前記ブリッジチャネルとの間を封止するためのパッキンを有する、上記10、または上記11~25の従属上記のいずれかに記載のマイクロ流体装置。
27.上記1~26のいずれかに記載のマイクロ流体装置を調製する方法であって、前記第1および第2の封止材を除去し、それによって、一部の液体が前記装置を作動させるために前記障壁を越えて流れるように、前記リザーバと前記検知チャンバ出口の前記端部との間に液体を流すこと、を含む、方法。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17a
図17b
図18