(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
F02M 35/16 20060101AFI20220809BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20220809BHJP
F02M 35/104 20060101ALI20220809BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20220809BHJP
B62K 11/00 20060101ALI20220809BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F02M35/16 L
F02M35/10 101D
F02M35/104 A
F02M35/104 F
F02M35/10 311C
F02B37/00 302D
B62K11/00 A
B62M7/02 W
(21)【出願番号】P 2021515816
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020005971
(87)【国際公開番号】W WO2020217656
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019083161
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】牧田 直希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隼敏
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 昌樹
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295712(JP,A)
【文献】特開2017-210896(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185090(WO,A1)
【文献】特開昭61-93230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
F02M 35/10
F02B 29/04
F02B 37/00
B62K 11/00
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
複数の燃焼室を有するエンジンと、
過給機と、
大気から吸入した空気である吸入空気が前記複数の燃焼室の各々に向かって流れる吸気通路を形成する吸気通路部と、
前記吸気通路部内に配置されるスロットル弁とを備え、
前記過給機は、前記吸気通路部内を前記吸入空気が流れる方向において前記スロットル弁よりも上流側に位置しており、
前記吸気通路部は、
前記吸気通路部内を前記吸入空気が流れる方向において前記スロットル弁が配置された位置から下流に設けられた下流側吸気通路部を含み、
前記下流側吸気通路部は、
前記複数の燃焼室のそれぞれに対応して1つずつ設けられ、各々が前記複数の燃焼室のうち対応する燃焼室に連通する分岐吸気通路を形成する複数の分岐吸気通路部と、
前記吸気通路部内を前記吸入空気が流れる方向において前記複数の分岐吸気通路部の各々の上流端に接続されて、前記複数の分岐吸気通路部の各々が形成する前記分岐吸気通路に連通する単一の共通吸気通路を形成する単一の共通吸気通路部とを含み、
前記単一の共通吸気通路部の上流端は、前記スロットル弁が配置された位置であり、
前記
単一の共通吸気通路部の容積は、前記複数の分岐吸気通路部の各々の容積を合算したものよりも小さい、鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項
1に記載の鞍乗型車両であって、
前記単一の共通吸気通路の長さは、前記複数の分岐吸気通路の各々の長さよりも短い、鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の鞍乗型車両であって、さらに、
前記吸気通路部に設けられて、前記吸気通路部内を前記吸入空気が流れる方向において前記過給機と前記スロットル弁との間に配置されるインタークーラーを備える、鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記複数の分岐吸気通路の各々の長さが同じである、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関し、詳しくは、複数の燃焼室を有するエンジンとターボチャージャーとを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等の鞍乗型車両が知られている。鞍乗型車両は、アクセル操作子の操作で姿勢を制御する乗り物である。そのため、アクセル操作子を操作することによってエンジン出力が変化する特性、つまり、アクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性を向上させることが要求される。
【0003】
近年、特開2015-74986号公報に記載のように、ターボチャージャーを備える鞍乗型車両が提案されている。上記のようなエンジンの応答特性の向上は、ターボチャージャーを備える鞍乗型車両においても要求される。
【0004】
特開2015-74986号公報に記載の鞍乗型車両は、エンジンの応答特性を向上させるために、吸入した燃焼用の空気を圧縮する過給機と、当該過給機によって圧縮された空気を冷却するためのインタークーラーと、当該インタークーラーからの空気をスロットルボディに流すサージタンクと、過給機とインタークーラーとを接続する連結パイプと、連結パイプの中間部とサージタンクとを接続するバイパスパイプと、バイパスパイプの途中に設けられて当該バイパスパイプの開閉を制御する制御弁とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2015-74986号公報に記載の鞍乗型車両では、インタークーラーをバイパスするバイパス通路が設けられている。そのため、余分な通路(バイパス通路)が必要になる。
【0007】
本発明の目的は、複数の燃焼室を有するエンジンとターボチャージャーとを備える鞍乗型車両であって、アクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性を向上させることができる鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願の発明者は、複数の燃焼室のそれぞれに対応して1つずつ設けられる複数のスロットル弁を備えることについて検討した。しかしながら、複数のスロットル弁を配置するためのスペースを確保することが難しくなるとともに、鞍乗型車両の重量が増加するということに気付いた。
【0009】
そこで、本願の発明者は複数の燃焼室に共通のスロットル弁、つまり、単一のスロットル弁を備えることについて検討を進めた。その結果、単一のスロットル弁と複数の燃焼室との間に吸入空気を一時的に溜める容積部としてのサージタンクを設けない、具体的には、インテークマニホールドにおける集合部の容積を小さくするようにすれば、アクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性、特に、非過給領域での応答特性が向上するという新たな知見を得るに至った。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両は、エンジンと、過給機と、吸気通路部と、スロットル弁とを備える。エンジンは、複数の燃焼室を有する。吸気通路部は、大気から吸入した空気である吸入空気が複数の燃焼室の各々に向かって流れる吸気通路を形成する。スロットル弁は、吸気通路部内に配置される。過給機は、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向においてスロットル弁よりも上流側に位置している。吸気通路部は、下流側吸気通路部を含む。下流側吸気通路部は、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向においてスロットル弁が配置された位置から下流に設けられている。下流側吸気通路部は、複数の分岐吸気通路部と、単一の共通吸気通路部とを含む。複数の分岐吸気通路部は、複数の燃焼室のそれぞれに対応して1つずつ設けられ、各々が複数の燃焼室のうち対応する燃焼室に連通する分岐吸気通路を形成する。単一の共通吸気通路部は、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向において複数の分岐吸気通路部の各々の上流端に接続されて、複数の分岐吸気通路部の各々が形成する分岐吸気通路に連通する単一の共通吸気通路を形成する。単一の共通吸気通路部の容積は、複数の分岐吸気通路部の各々の容積を合算したものよりも小さい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両においては、下流側吸気通路部の容積、特に、単一の共通吸気通路部の容積を小さくすることができるので、鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性、特に、非過給領域での応答特性を向上させることができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両は、例えば、サドル型のシートを備える車両である。鞍乗型車両は、例えば、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを備える。つまり、鞍乗型車両は、二輪車に限定されず、前輪又は後輪が左右一対の車輪で構成された三輪車であってもよいし、前輪及び後輪がそれぞれ左右一対の車輪で構成された四輪車であってもよい。鞍乗型車両は、例えば、スクーター、モペッド、スノーモービル、ウォータークラフト、全地形対応車(ATV:All Terrain Vehicle)等を含む。鞍乗型車両は、例えば、傾斜車両であってもよい。傾斜車両とは、左旋回時に車両の左方向に傾斜し、右旋回時に車両の右方向に傾斜する傾斜車体を備える車両である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、エンジンが有する複数の燃焼室の各々は、例えば、主燃焼室と、当該主燃焼室につながる副燃焼室とを含んでいてもよい。複数の燃焼室を有するエンジンは、例えば、複数の気筒を有するエンジンである。複数の気筒のうち隣り合う2つの気筒は互いに連結されていてもよい。エンジンが複数の気筒を有する場合、燃焼室は複数の気筒の各々に1つずつ設けられる。複数の気筒の配置は、特に限定されない。複数の気筒を有するエンジンは、例えば、V型エンジンであってもよいし、直列エンジンであってもよいし、水平対向エンジンであってもよい。エンジンは、そのシリンダ軸線が前方に向かって傾斜する前傾エンジンであってもよいし、そのシリンダ軸線が後方に向かって傾斜する後傾エンジンであってもよい。エンジンは、例えば、水冷式エンジンであってもよいし、油冷式エンジンであってもよいし、空冷式エンジンであってもよい。空冷式エンジンは、自然空冷式エンジンであってもよいし、強制空冷式エンジンであってもよい。エンジンは、例えば、レシプロエンジンであってもよいし、ロータリーエンジンであってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、過給機は、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向においてスロットル弁よりも上流側に位置しているものであれば、特に限定されない。過給機は、例えば、大気から吸入した空気である吸入空気を圧縮して、当該吸入空気の圧力を高めるものである。過給機は、例えば、排気タービン式過給機(ターボチャージャー)であってもよいし、機械式過給機(メカニカルスーパーチャージャー)であってもよい。排気タービン式過給機は、例えば、エンジンが有する複数の燃焼室の各々から排出される排ガスによって回転するタービンと、当該タービンの回転に伴って駆動するコンプレッサとを含む。機械式過給機は、例えば、エンジンの回転に伴って駆動するコンプレッサを含む。
【0015】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、吸気通路部は、大気から吸入した空気である吸入空気が複数の燃焼室の各々に向かって流れる吸気通路を形成するものであれば、特に限定されない。吸気通路は、吸入空気が流れる空間である。吸気通路部は、吸入空気が流れる空間を形成する壁などを有する構造物である。吸気通路部は、例えば、エンジンの一部と、当該エンジンの一部に接続された管とを含む。つまり、吸気通路部は、少なくとも一部がエンジンに接続された部材によって実現されていてもよい。要するに、吸気通路部は、エンジンに接続され、大気から吸入した空気である吸入空気が複数の燃焼室の各々に向かって流れる吸気通路の一部である外部吸気通路を形成する外部吸気通路部を含んでいてもよい。別の表現をすれば、吸気通路部は、少なくとも一部がエンジンによって実現されていてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、スロットル弁は、吸気通路部内に配置されるものであれば、特に限定されない。スロットル弁は、例えば、鞍乗型車両に設けられたアクセル操作子に対して機械的に接続されることでアクセル操作子の動きに連動するものであってもよいし、鞍乗型車両に設けられたアクセル操作子の動きを電気信号に変換し、当該電気信号に対応して動くものであってもよい。スロットル弁が吸気通路部内に配置される態様としては、例えば、複数の燃焼室に向かって流れる吸入空気の量を調整できるように、スロットル弁が所定の回転中心軸線回りに回転可能な状態で吸気通路に配置される態様などが考えられる。所定の回転中心軸線は、例えば、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向に対して直交する方向に延びる。スロットル弁は、例えば、吸気通路部に対して回転可能に配置された回転支持軸に固定された状態で、吸気通路部内に配置される。これにより、スロットル弁は、その回転中心軸線回りに回転可能な状態で吸気通路部内に配置される。スロットル弁による燃焼室に向かって流れる吸入空気の量の調整は、例えば、スロットル弁の回転中心軸線回りの回転に起因して吸気通路部内の開閉状態が変化することによって実現される。スロットル弁を回転支持軸に固定する手段は、特に限定されない。スロットル弁を回転支持軸に固定する際には、例えば、ねじ等が用いられる。スロットル弁の形状等は、例えば、スロットル弁が配置される吸気通路部内の形状等に応じて、適宜、変更される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、下流側吸気通路部は、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向においてスロットル弁が配置された位置から下流に設けられているものであれば、特に限定されない。スロット弁が配置された位置とは、例えば、スロットル弁の回転中心軸線が通過する位置である。下流側吸気通路部は、複数の分岐吸気通路部と、単一の共通吸気通路部とを含むものであれば、特に限定されない。
【0018】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、複数の分岐吸気通路部は、複数の燃焼室のそれぞれに対応して1つずつ設けられ、各々が複数の燃焼室のうち対応する燃焼室に連通する分岐吸気通路を形成するものであれば、特に限定されない。分岐吸気通路は、吸入空気が流れる空間である。複数の分岐吸気通路部は、それぞれ、吸入空気が流れる空間を形成する壁などを有する構造物である。複数の分岐吸気通路部の各々の容積は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。複数の分岐吸気通路部の各々によって形成される分岐吸気通路の長さは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。複数の分岐吸気通路部の各々の通路断面は、互いに同じ大きさであってもよいし、互いに異なる大きさであっていてもよい。なお、分岐吸気通路部の容積とは、吸入空気が流れる空間の大きさ、つまり、分岐吸気通路部によって形成される分岐吸気通路の大きさを意味している。複数の分岐吸気通路部の各々は、例えば、エンジンの一部と、当該エンジンの一部に接続された管とを含む。つまり、複数の分岐吸気通路部は、それぞれ、少なくとも一部がエンジンに接続された部材によって実現されていてもよい。別の表現をすれば、複数の吸気通路部の各々は、少なくとも一部がエンジンによって実現されていてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、単一の共通吸気通路部は、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向において複数の分岐吸気通路部の各々の上流端に接続されて、複数の分岐吸気通路部の各々が形成する分岐吸気通路に連通する単一の共通吸気通路を形成するものであれば、特に限定されない。単一の共通吸気通路は、吸入空気が流れる空間である。単一の共通吸気通路部は、吸入空気が流れる空間を形成する壁などを有する構造物である。単一の共通吸気通路部の上流端は、例えば、スロットル弁が配置された位置である。
【0020】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、単一の共通吸気通路部の容積は、複数の分岐吸気通路部の各々の容積を合算したものである合算容積よりも小さければよい。単一の共通吸気通路部の容積とは、吸入空気が流れる空間の大きさ、つまり、単一の共通吸気通路部によって形成される単一の共通吸気通路の大きさを意味している。分岐吸気通路部の容積とは、吸入空気が流れる空間の大きさ、つまり、分岐吸気通路部によって形成される分岐吸気通路の大きさを意味している。
【0021】
単一の共通吸気通路部の容積は、例えば、合算容積の1/2よりも小さい。単一の共通吸気通路部の容積は、好ましくは、合算容積の1/4よりも小さい。単一の共通吸気通路部の容積は、より好ましくは、合算容積の1/5よりも小さい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、単一の共通吸気通路部の容積は、例えば、複数の分岐吸気通路部の各々の容積を平均した平均容積よりも小さくてもよい。このような態様においても、下流側吸気通路部の容積、特に、単一の共通吸気通路部の容積を小さくすることができるので、鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性を向上させることができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、単一の共通吸気通路部の容積は、例えば、複数の分岐吸気通路部の何れかの容積よりも小さくてもよい。このような態様においても、下流側吸気通路部の容積、特に、単一の共通吸気通路部の容積を小さくすることができるので、鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性を向上させることができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、単一の共通吸気通路部の容積は、例えば、複数の分岐吸気通路部の各々の容積のうち最小の容積よりも小さくてもよい。このような態様においても、下流側吸気通路部の容積、特に、単一の共通吸気通路部の容積を小さくすることができるので、鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性を向上させることができる。なお、複数の分岐吸気通路部の各々の容積が互いに同じである場合、複数の分岐吸気通路部の各々の容積が最小の容積になる。
【0025】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、共通吸気通路の長さは、好ましくは、複数の分岐吸気通路の各々の長さよりも短い。
【0026】
このような態様においては、共通吸気通路部の容積を複数の分岐吸気通路部の各々の容積を合算したものよりも小さくすることができる。
【0027】
共通吸気通路の長さは、例えば、複数の分岐吸気通路の何れかの長さの1/2よりも小さい。共通吸気通路の長さは、好ましくは、複数の分岐吸気通路の何れかの長さの1/4よりも小さい。共通吸気通路の長さは、より好ましくは、複数の分岐吸気通路の何れかの長さの1/5よりも小さい。
【0028】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両は、好ましくは、インタークーラーをさらに備える。インタークーラーは、吸気通路部に設けられて、吸気通路部内を吸入空気が流れる方向において過給機とスロットル弁との間に配置される。
【0029】
このような態様においては、過給機によって圧縮された空気を冷却することができる。そのため、エンジンに供給される空気の密度が高められ、吸入効率が向上する。
【0030】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、インタークーラーは、過給機によって圧縮された空気を冷却するものであれば、特に限定されない。インタークーラーは、空冷式であってもよいし、水冷式であってもよい。空冷式のインタークーラーは、例えば、走行中に空気が吹き付けられる位置に配置される。水冷式のインタークーラーは、例えば、過給機によって圧縮された空気を冷却するための冷却水が流れる冷却水通路部を有する。水冷式のインタークーラーが採用される場合、上記冷却水を冷却するためのサブラジエータが設けられる。上記冷却水は、水冷式のエンジンを冷却するための冷却水とは異なる。サブラジエータは、例えば、走行中に空気が吹き付けられる位置に配置される。
【0031】
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両において、好ましくは、複数の分岐吸気通路の各々の長さが同じである。
【0032】
このような態様においては、例えば、複数の分岐吸気通路部の各々の通路断面を同じ大きさにすることにより、複数の燃焼室の各々に導入される吸入空気の量を同じにすることができる。なお、分岐吸気通路部の通路断面とは、分岐吸気通路部を吸入空気が流れる方向に対して直交する方向に切断したときの分岐吸気通路部の内側の領域、つまり、当該切断面における分岐吸気通路部の開口部分である。
【0033】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0034】
本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0036】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0037】
一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0038】
本発明の説明においては、技術及び工程の数が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0039】
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、複数の燃焼室を有するエンジンとターボチャージャーとを備える鞍乗型車両において、鞍乗型車両が有するアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施の形態による鞍乗型車両を示す右側面図と、鞍乗型車両のエンジン、吸気通路部及び排気通路部を示す模式図と、吸気通路部における下流側吸気通路部を示す模式図とを併せて示す図面である。
【
図2】
図1に示す鞍乗型車両が有するエンジンの右側面図である。
【
図3】
図1に示す鞍乗型車両が有するエンジンの正面図である。
【
図4】
図1に示す鞍乗型車両が有するエンジンに接続された外部吸気通路部における外部下流側吸気通路部を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示す鞍乗型車両が有するエンジンに接続された吸気通路部における下流側吸気通路部を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態による鞍乗型車両について、当該鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの非過給領域での応答特性を調査した結果を示すグラフである。
【
図7】複数の燃焼室の各々に1つずつスロットル弁が配置された構造を有する鞍乗型車両について、当該鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの非過給領域での応答特性を調査した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態による鞍乗型車両の詳細について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施の形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0043】
図1を参照しながら、本発明の実施の形態による鞍乗型車両10について説明する。
図1は、鞍乗型車両10を示す右側面図と、鞍乗型車両10のエンジン20、吸気通路部30及び排気通路部70を示す模式図と、吸気通路部30における下流側吸気通路部31を示す模式図とを併せて示す図面である。なお、
図1における鞍乗型車両10のエンジン20、吸気通路部30及び排気通路部70を示す模式図では、エンジン20が有する複数のシリンダ22の何れかと、吸気通路部30のうち当該シリンダ22に接続される部分と、排気通路部70のうち当該シリンダ22に接続される部分とを示している。
【0044】
本明細書では、鞍乗型車両10における各種の方向を、以下のように定義する。
【0045】
鞍乗型車両10の前方向を車両前方向Fと定義する。鞍乗型車両10の後方向を車両後方向Bと定義する。鞍乗型車両10の左方向を車両左方向Lと定義する。鞍乗型車両10の右方向を車両右方向Rと定義する。鞍乗型車両10の上方向を車両上方向Uと定義する。鞍乗型車両10の下方向を車両下方向Dと定義する。鞍乗型車両10の前後方向を車両前後方向FBと定義する。鞍乗型車両10の左右方向を車両左右方向LRと定義する。鞍乗型車両10の上下方向を車両上下方向UDと定義する。なお、鞍乗型車両10の前後上下左右は、鞍乗型車両10のシート16に着座した乗員から見た前後上下左右である。
【0046】
本明細書において、前後方向に延びる軸線や部材は、必ずしも前後方向と平行である軸線や部材だけを示すものではない。前後方向に延びる軸線や部材とは、前後方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。同様に、上下方向に延びる軸線や部材とは、上下方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。左右方向に延びる軸線や部材とは、左右方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。
【0047】
本明細書における任意の2つの部材を第1部材及び第2部材と定義した場合、任意の2つの部材の関係は以下のような意味になる。なお、第1部材及び第2部材は、鞍乗型車両10を構成する部材を意味する。
【0048】
本明細書において、第1部材が第2部材よりも前方に配置されるとは、以下の状態を示す。第1部材は、第2部材の前端を通り前後方向に直交する平面の前方に配置される。この場合、第1部材及び第2部材は、前後方向に並んでいてもよく、並んでいなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0049】
本明細書において、第1部材が第2部材の前方に配置されるとは、以下の状態を示す。第1部材の少なくとも一部は、第2部材が前方向に平行移動するときに通過する領域内に配置されている。よって、第1部材は、第2部材が前方向に平行移動するときに通過する領域内に収まっていてもよいし、第2部材が前方向に平行移動するときに通過する領域から突出していてもよい。この場合、第1部材及び第2部材は、前後方向に並んでいる。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0050】
鞍乗型車両10は、傾斜車両としての自動二輪車である。鞍乗型車両10は、前輪12Fと、後輪12Rと、車体フレーム14と、シート16と、ハンドル18とを備える。
【0051】
前輪12Fは、車体フレーム14に支持される。前輪12Fは、車両左方向L又は車両右方向Rに見て、エンジン20よりも前方に配置されている。ハンドル18が操作されることにより、前輪12Fが操舵される。つまり、前輪12Fは、操舵輪である。
【0052】
後輪12Rは、車体フレーム14に支持される。後輪12Rは、車両左方向L又は車両右方向Rに見て、エンジン20よりも後方に配置されている。エンジン20の動力が伝達されることにより、後輪12Rが回転する。つまり、後輪12Rは、駆動輪である。
【0053】
シート16は、車体フレーム14に支持される。乗員は、例えば、シート16に着座した状態で、鞍乗型車両10を運転する。
【0054】
鞍乗型車両10は、エンジン20と、吸気通路部30と、エアクリーナ40と、スロットル弁50と、複数のインジェクタ60と、排気通路部70と、過給機としてのターボチャージャー80と、インタークーラー90とをさらに備える。以下、これらについて説明する。
【0055】
エンジン20は、複数(本実施の形態では、3つ)のシリンダ22が車両左右方向LRに並んで配置された直列エンジンである。つまり、エンジン20は、複数(本実施の形態では、3つ)の燃焼室224を有するエンジンである。エンジン20は、4ストローク式のエンジンである。4ストローク式のエンジンは、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程(膨張行程)及び排気行程を繰り返すエンジンである。4ストローク式のエンジンでは、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程(膨張行程)及び排気行程を1サイクルとしている。
【0056】
図2を参照して、エンジン20の詳細について説明する。
図2は、エンジン20の右側面図である。
【0057】
エンジン20は、複数(本実施の形態では、3つ)のシリンダ22と、クランクケース24とを有する。以下、これらについて説明する。
【0058】
複数のシリンダ22は、それぞれ、クランクケース24の上端部に接続される。複数のシリンダ22は、車両左右方向LRに並んで配置されている。
【0059】
本実施の形態では、複数のシリンダ22は、一体的に形成されている。より具体的には、複数のシリンダ22の各々を構成する部材が一体的に形成されている。
【0060】
複数のシリンダ22は、それぞれ、シリンダボディ221と、シリンダヘッド222と、ヘッドカバー223とを有する。以下、これらについて説明する。
【0061】
シリンダボディ221は、クランクケース24の上端部に接続される。シリンダヘッド222は、シリンダボディ221の上端部に接続される。ヘッドカバー223は、シリンダヘッド222の上端部に接続される。
【0062】
図1を参照して、シリンダボディ221には、シリンダ孔22Aが形成されている。シリンダ孔22Aには、ピストン26が摺動自在に配置されている。ピストン26は、コネクティングロッド28を介してクランク軸241に連結されている。
【0063】
シリンダ22には、燃焼室224が形成されている。燃焼室224は、シリンダヘッド222の下面と、シリンダ孔22Aと、ピストン26の上面によって形成される。つまり、シリンダ孔22Aは、燃焼室224の一部を区画する。要するに、燃焼室224は、シリンダヘッド222の下面とピストン26の上面との間に形成される。
【0064】
燃焼室224には、点火プラグ29の先端部が位置している。点火プラグ29の先端部は、火花放電を発生させる。この火花放電により、燃焼室224内の混合気が点火される。なお、混合気とは、吸入空気と燃料とが混合されたものである。
【0065】
クランクケース24は、クランク軸241を収容する。クランクケース24は、複数のシリンダ22の各々の下端部に接続されている。
【0066】
図1を参照して、吸気通路部30は、大気から吸入した空気である吸入空気が複数の燃焼室224の各々に向かって流れる吸気通路30Aを形成する。ここで、吸気通路30Aは、吸入空気が通過する空間である。吸気通路部30は、吸入空気が通過する空間を形成する壁などを有する構造物である。
【0067】
吸気通路部30は、複数(本実施の形態では、3つ)の内部吸気通路部32と、外部吸気通路部34とを含む。以下、これらについて説明する。
【0068】
複数の内部吸気通路部32は、それぞれ、吸気通路部30の一部である。複数の内部吸気通路部32は、それぞれ、吸気通路30Aの一部である内部吸気通路32Aを形成する。複数の内部吸気通路部32は、それぞれ、シリンダヘッド222の一部によって形成されている。別の表現をすれば、吸気通路30Aの一部である内部吸気通路32Aは、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222に形成されている。複数の内部吸気通路部32の各々によって形成される空間、つまり、吸入空気が流れる空間は、複数の燃焼室224のうち対応する燃焼室224に接続されている。要するに、吸気通路30Aのうち、複数の内部吸気通路部32の各々によって形成される内部吸気通路32Aは、複数の燃焼室224のうち対応する燃焼室224に接続されている。
【0069】
複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の燃焼室224を画定する面には、燃焼室吸気口321が形成されている。燃焼室吸気口321は、複数の内部吸気通路部32のうち対応する内部吸気通路部32の下流端に形成されている。複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の外面には、吸気口322が形成されている。吸気口322は、複数の内部吸気通路部32のうち対応する内部吸気通路部32の上流端に形成されている。1つの燃焼室224に対して設けられる燃焼室吸気口321の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。本実施の形態では、1つの燃焼室224に対して、1つの燃焼室吸気口321が設けられている。
【0070】
複数の内部吸気通路部32の各々によって形成される内部吸気通路32Aには、燃焼室吸気口321を開閉する吸気バルブ33が配置される。吸気バルブ33は、燃焼室吸気口321ごとに1つずつ設けられる。別の表現をすれば、1つの燃焼室吸気口321に対して、1つの吸気バルブ33が設けられている。吸気バルブ33は、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222に収容された動弁装置(図示せず)によって駆動される。動弁装置は、クランク軸241と連動して作動する。
【0071】
外部吸気通路部34は、吸気通路部30の一部である。外部吸気通路部34は、吸気通路30Aの一部である外部吸気通路34Aを形成する。外部吸気通路部34は、複数の内部吸気通路部32の各々に接続されている。つまり、外部吸気通路部34の下流端部は、分岐している。外部吸気通路部34は、例えば、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の一部、つまり、内部吸気通路部32に接続されるように、その下流端部が分岐された管によって形成されている。外部吸気通路部34は、大気に面した大気吸入口341を有する。大気吸入口341は、外部吸気通路部34の上流端に形成されている。大気吸入口341は大気から空気を吸入する。大気吸入口341から外部吸気通路部34に流入した空気は、エンジン20に供給される。なお、外部吸気通路部34の詳細については、後述する。
【0072】
エアクリーナ40は、外部吸気通路部34に設けられている。エアクリーナ40は、大気吸入口341から吸入した空気を浄化する。つまり、エンジン20に供給される空気は、エアクリーナ40を通過した空気、エアクリーナ40によって浄化された空気である。
【0073】
スロットル弁50は、吸気通路部30内に配置されている。具体的には、スロットル弁50は、吸気通路部30が有する外部吸気通路部34内に配置されている。スロットル弁50は、外部吸気通路部34内を吸入空気が流れる方向において、エアクリーナ40の下流に配置されている。なお、本実施の形態では、スロットル弁50は、外部吸気通路部34の一部を形成するスロットルボディ50A内に配置されている。
【0074】
スロットル弁50は、吸気通路部30によって形成される吸気通路30Aに配置されている。具体的には、スロットル弁50は、吸気通路部30が有する外部吸気通路部34によって形成される外部吸気通路34Aに配置されている。
【0075】
スロットル弁50は、複数の燃焼室224に対して1つだけ設けられている。別の表現をすれば、スロットル弁50は、複数の燃焼室224に共通のスロットル弁として設けられている。要するに、スロットル弁50は、単一のスロットル弁である。
【0076】
スロットル弁50は、複数の燃焼室224の各々に向かって流れる吸入空気の量を調整できるように、所定の回転中心軸線回りに回転可能な状態で、外部吸気通路34Aに配置されている。所定の回転中心軸線は、吸気通路部30内を吸入空気が流れる方向に対して直交する方向に延びる。スロットル弁50は、外部吸気通路部34に対して回転可能に配置された回転支持軸52に固定された状態で、外部吸気通路部34内に配置されている。スロットル弁50による燃焼室224に向かって流れる吸入空気の量の調整は、例えば、スロットル弁50の回転中心軸線回りの回転に起因して外部吸気通路部34内の開閉状態が変化することによって実現される。スロットル弁は、例えば、ねじ等によって回転支持軸52に固定されている。
【0077】
ここで、鞍乗型車両10は、アクセル操作子19をさらに備える。アクセル操作子19は、ハンドル18に配置されている。
【0078】
スロットル弁50は、アクセル操作子19の動きに連動する。具体的には、アクセル操作子19が第1方向に回転操作されることで、外部吸気通路34Aを通過する吸入空気の量が増えるように、スロットル弁50が動く。アクセル操作子19が第2方向(第1方向とは逆方向)に回転操作されることで、外部吸気通路34Aを通過する吸入空気の量が減るように、スロットル弁50が動く。つまり、スロットル弁50は、アクセル操作子19の動きに応じて、外部吸気通路34Aを通過する吸入空気の量を調整する。スロットル弁50の開度は、アクセル操作子19の第1方向への回転操作量に応じて変更される。
【0079】
複数のインジェクタ60は、それぞれ、複数の燃焼室224のうち対応する燃焼室224内に燃料を噴射する。具体的には、複数のインジェクタ60は、それぞれ、複数の燃焼室224のうち対応する燃焼室224に供給される吸入空気に向かって燃料を噴射する。別の表現をすれば、複数のインジェクタ60は、それぞれ、吸気通路部30が有する外部吸気通路部34に設けられたエアクリーナ40及びインタークーラー90を通過した吸入空気に向かって燃料を噴射する。
【0080】
複数のインジェクタ60は、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222に1つずつ設けられている。つまり、複数のインジェクタ60は、複数の燃焼室224の各々に1つずつ設けられる。
【0081】
ここで、鞍乗型車両10は、燃料タンク15をさらに備える。複数のインジェクタ60は、それぞれ、燃料タンク15内に配置された燃料ポンプ(図示せず)に接続されている。燃料ポンプは、燃料タンク15内の燃料を複数のインジェクタ60の各々に送る。
【0082】
排気通路部70は、複数の燃焼室224の各々から排出された排ガスが流れる排気通路70Aを形成する。ここで、排気通路70Aは、複数の燃焼室224の各々から排出された排ガスが通過する空間である。排気通路部70は、複数の燃焼室224の各々から排出された排ガスが通過する空間を形成する壁などを有する構造物である。
【0083】
排気通路部70は、複数(本実施の形態では、3つ)の内部排気通路部72と、外部排気通路部74とを含む。以下、これらについて説明する。
【0084】
複数の内部排気通路部72は、それぞれ、排気通路部70の一部である。複数の内部排気通路部72は、それぞれ、排気通路70Aの一部である内部排気通路72Aを形成する。複数の内部排気通路部72は、それぞれ、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の一部によって形成されている。別の表現をすれば、排気通路70Aの一部である内部排気通路72Aは、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222に形成されている。複数の内部排気通路部72の各々によって形成される空間、つまり、複数の燃焼室224の各々から排出された排ガスが流れる空間は、複数の燃焼室224のうち対応する燃焼室224に接続されている。要するに、排気通路70Aのうち、複数の内部排気通路部72の各々によって形成される内部排気通路72Aは、複数の燃焼室224のうち対応する燃焼室224に接続されている。
【0085】
複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の燃焼室224を画定する面には、燃焼室排気口721が形成されている。燃焼室排気口721は、複数の内部排気通路部72のうち対応する内部排気通路部72の上流端に形成されている。複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の外面には、排気口722が形成されている。排気口722は、複数の内部排気通路部72のうち対応する内部排気通路部72の下流端に形成されている。1つの燃焼室224に対して設けられる燃焼室排気口721の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。本実施の形態では、1つの燃焼室224に対して、1つの燃焼室排気口721が設けられている。
【0086】
複数の内部排気通路部72の各々によって形成される内部排気通路72Aには、燃焼室排気口721を開閉する排気バルブ73が配置される。排気バルブ73は、燃焼室排気口721ごとに1つずつ設けられる。別の表現をすれば、1つの燃焼室排気口721に対して、1つの排気バルブ73が設けられている。排気バルブ73は、吸気バルブ33と同様に、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222に収容された動弁装置(図示せず)によって駆動される。
【0087】
外部排気通路部74は、排気通路部70の一部である。外部排気通路部74は、排気通路70Aの一部である外部排気通路74Aを形成する。外部排気通路部74は、複数の内部排気通路部72の各々に接続されている。つまり、外部排気通路部74の上流端部は、分岐している。外部排気通路部74は、例えば、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の一部、つまり、内部排気通路部72に接続されるように、その上流端部が分岐された管によって形成されている。
【0088】
外部排気通路部74は、複数の外部分岐排気通路部741を含む。複数の外部分岐排気通路部741は、それぞれ、外部排気通路部74の上流端部に形成されている。つまり、外部排気通路部74の上流端部は、複数の外部分岐排気通路部741に分岐している。
【0089】
複数の外部分岐排気通路部741は、それぞれ、外部分岐排気通路741Aを形成している。外部分岐排気通路741Aは、外部排気通路74Aの一部である。
【0090】
複数の外部分岐排気通路部741の各々の上流端は、複数のシリンダ22の各々が有するシリンダヘッド222の外面に形成された排気口722、つまり、当該シリンダヘッド222によって形成される内部排気通路72Aの下流端を囲む部分に接続されている。複数の外部分岐排気通路部741の各々が形成する外部分岐排気通路741Aの上流端は、複数の内部排気通路部72のうち対応する内部排気通路部72が形成する内部排気通路72Aの下流端に接続されている。要するに、複数の外部分岐排気通路部741の各々によって形成される空間は、複数の内部排気通路部72のうち対応する内部排気通路部72によって形成される空間に接続されている。これにより、複数の内部排気通路72Aの各々から外部排気通路74Aに排気が流れることが許容されている。
【0091】
外部排気通路部74は、消音器76と、触媒部78とを含む。以下、これらについて説明する。
【0092】
消音器76は、排気通路部70内を流れる排ガスによる騒音を低減する。消音器76は、大気に面する大気放出口761を有する。排気通路部70内を流れる排ガスは、触媒部78を通過した後、大気放出口761から大気中に排出される。
【0093】
触媒部78は、触媒としてのメイン触媒781を有する。メイン触媒781は、所謂三元触媒である。メイン触媒781は、燃焼室224から排出される排ガスを浄化する。具体的には、燃焼室224から排出される排ガスは、触媒部78に流入し、メイン触媒781を通過することで浄化される。
【0094】
続いて、
図1、
図2及び
図3を参照しながら、ターボチャージャー80について説明する。なお、
図3は、エンジン20の正面図である。
【0095】
ターボチャージャー80は、排気通路部70内を流れる排ガスによって駆動され、吸気通路部30内を流れる吸入空気を圧縮する。具体的には、ターボチャージャー80は、外部排気通路部74内を流れる排ガスによって駆動され、外部吸気通路部34内を流れる吸入空気を圧縮する。
【0096】
ターボチャージャー80は、タービンホイール81と、コンプレッサホイール82と、連結軸83とを有する。以下、これらについて説明する。
【0097】
タービンホイール81は、軸部と、複数の羽根とを有する。複数の羽根は、例えば、軸部の外周面に設けられる。複数の羽根は、例えば、放射状に配置される。
【0098】
タービンホイール81は、排気通路部70内に配置される。具体的には、タービンホイール81は、外部排気通路部74内に配置される。
【0099】
ここで、外部排気通路部74は、スクロール排気通路部74Sを含む。スクロール排気通路部74Sは、タービンホイール81の外周を1周に亘って取り囲むように形成される。スクロール排気通路部74Sは、外部排気通路部74内を排ガスが流れる方向において、タービンホイール81の上流に位置している。
【0100】
コンプレッサホイール82は、軸部と、複数の羽根とを有する。複数の羽根は、例えば、軸部の外周面に設けられる。複数の羽根は、例えば、放射状に配置される。
【0101】
コンプレッサホイール82は、吸気通路部30内に配置される。具体的には、コンプレッサホイール82は、外部吸気通路部34内に配置される。
【0102】
コンプレッサホイール82は、外部吸気通路部34内を吸入空気が流れる方向において、エアクリーナ40よりも下流に配置されている。コンプレッサホイール82は、外部吸気通路部34内を吸入空気が流れる方向において、スロットル弁50よりも上流に位置している。つまり、ターボチャージャー80は、吸気通路部30内を吸入空気が流れる方向においてスロットル弁50よりも上流側に位置している。
【0103】
ここで、外部吸気通路部34は、スクロール吸気通路部34Sを含む。スクロール吸気通路部34Sは、コンプレッサホイール82の外周を1周に亘って取り囲むように形成される。スクロール吸気通路部34Sは、外部吸気通路部34内を吸入空気が流れる方向において、コンプレッサホイール82の下流に位置している。
【0104】
連結軸83は、タービンホイール81とコンプレッサホイール82とを連結する。連結軸83は、車両左右方向に延びる中心軸線回りに回転可能な状態でハウジング84に支持される。つまり、タービンホイール81及びコンプレッサホイール82は、それぞれ、連結軸83の中心軸線回りに回転可能な状態で配置される。
【0105】
このようなターボチャージャー80においては、スクロール排気通路部74S内を流れる排ガスがタービンホイール81の外周部に吹き付けられる。これにより、タービンホイール81が回転する。タービンホイール81の外周部に吹き付けられた排ガスは、タービンホイール81から連結軸83の中心軸線が延びる方向に排出される。タービンホイール81の回転に伴って、コンプレッサホイール82が回転する。これにより、コンプレッサホイール82は、連結軸83の中心軸線が延びる方向に空気を吸い込む。そして、コンプレッサホイール82は、吸い込んだ空気を圧縮して、外周部から排出する。コンプレッサホイール82の外周部から排出された圧縮空気は、スクロール吸気通路部34Sに流入する。その後、圧縮空気は、インタークーラー90で冷却されてから、複数の燃焼室224の各々に供給される。圧縮空気が複数の燃焼室224の各々に供給されることで、吸気効率が向上する。その結果、エンジン20の出力を向上できる。
【0106】
続いて、
図1、
図2及び
図3を参照しながら、インタークーラー90について説明する。インタークーラー90は、ターボチャージャー80によって圧縮された吸入空気を冷却する。つまり、外部吸気通路部34を流れる空気は、インタークーラー90によって冷却される。
【0107】
インタークーラー90は、外部吸気通路部34に設けられている。インタークーラー90は、外部吸気通路部34内を吸入空気が流れる方向において、ターボチャージャー80のコンプレッサホイール82よりも下流に配置される。つまり、インタークーラー90は、外部吸気通路部34内を吸入空気が流れる方向においてターボチャージャー80よりも下流に配置されている。また、インタークーラー90は、外部吸気通路部34内を吸入空気が流れる方向においてスロットル弁50よりも上流に配置されている。要するに、インタークーラー90は、吸気通路部30に設けられて、吸気通路部30内を吸入空気が流れる方向においてターボチャージャー80とスロットル弁50との間に配置されている。
【0108】
インタークーラー90には、ターボチャージャー80のコンプレッサホイール82によって圧縮された空気が流入する。インタークーラー90は、圧縮によって昇温した空気を冷却する。これにより、エンジン20に供給される空気の密度が高められ、吸入効率が向上する。
【0109】
インタークーラー90は、空冷式である。インタークーラー90は、走行中に空気が吹き付けられる位置に配置される。つまり、外部吸気通路部34を流れる空気は、走行中にインタークーラーに吹き付ける空気によって冷却される。
【0110】
図4及び
図5を参照しながら、外部吸気通路部34についてさらに詳しく説明する。
図4は、エンジン20に接続された外部吸気通路部34における外部下流側吸気通路部342の斜視図である。
図5は、エンジン20に接続された吸気通路部30における下流側吸気通路部31を示す模式図である。
【0111】
外部吸気通路部34は、外部下流側吸気通路部342を含む。外部下流側吸気通路部342は、吸気通路部30内を吸入空気が流れる方向においてスロットル弁50が配置された位置から下流に設けられている。つまり、外部下流側吸気通路部342の上流端は、スロットル弁50が配置された位置である。本実施の形態では、スロットル弁50を備えるスロットルボディ50Aの一部が外部下流側吸気通路部342を形成している。
【0112】
外部下流側吸気通路部342は、複数の外部下流側分岐吸気通路部3421と、単一の外部下流側共通吸気通路部3422とを含む。以下、これらについて説明する。
【0113】
複数の外部下流側分岐吸気通路部3421は、複数の燃焼室224のそれぞれに対応して1つずつ設けられている。複数の外部下流側分岐吸気通路部3421の各々は、複数の内部吸気通路部32のうち対応する内部吸気通路部32に接続されている。具体的には、複数の外部下流側分岐吸気通路部3421の各々の下流端は、複数の内部吸気通路部32のうち対応する内部吸気通路部32の上流端、つまり、シリンダヘッド222の外面のうち吸気口322を囲む部分に接続されている。
【0114】
複数の外部下流側分岐吸気通路部3421は、それぞれ、外部下流側分岐吸気通路3421Aを形成する。外部下流側分岐吸気通路3421Aは、複数の内部吸気通路部32のうち対応する内部吸気通路部32によって形成される内部吸気通路32Aに接続されている。具体的には、外部下流側分岐吸気通路3421Aの下流端は、当該外部下流側分岐吸気通路3421Aに対応する内部吸気通路32Aの上流端に接続されている。要するに、外部下流側分岐吸気通路部3421によって形成される空間は、内部吸気通路部32によって形成される空間に接続されている。これにより、外部下流側分岐吸気通路3421Aから内部吸気通路32Aに吸入空気が流れることが許容されている。
【0115】
つまり、本実施の形態では、複数の外部下流側分岐吸気通路部3421と、複数の内部吸気通路部32とによって、複数の分岐吸気通路部311が実現されている。また、外部下流側分岐吸気通路3421Aと、当該外部下流側分岐吸気通路3421Aに対応する内部吸気通路32Aとによって、分岐吸気通路311Aが実現されている。これらの説明から明らかなように、本実施の形態では、複数の分岐吸気通路311Aは、それぞれ、複数の燃焼室224のうち対応する燃焼室224に連通している。
【0116】
単一の外部下流側共通吸気通路部3422は、吸気通路部30内を吸入空気が流れる方向において複数の外部下流側分岐吸気通路部3421の各々に接続されている。具体的には、単一の外部下流側共通吸気通路部3422の下流端は、複数の外部下流側分岐吸気通路部3421の各々の上流端に接続されている。
【0117】
単一の外部下流側共通吸気通路部3422の上流端は、スロットル弁50が配置された位置である。つまり、単一の外部下流側共通吸気通路部3422の上流端は、外部下流側吸気通路部342の上流端と一致している。
【0118】
単一の外部下流側共通吸気通路部3422は、単一の外部下流側共通吸気通路3422Aを形成する。単一の外部下流側共通吸気通路3422Aは、複数の外部下流側分岐吸気通路部3421の各々によって形成される外部下流側分岐吸気通路3421Aに接続されている。
【0119】
つまり、本実施の形態では、単一の外部下流側共通吸気通路部3422によって、単一の共通吸気通路部312が実現されている。単一の外部下流側共通吸気通路3422Aによって、単一の共通吸気通路312Aが実現されている。
【0120】
また、上述の説明から明らかなように、本実施の形態では、外部下流側吸気通路部342と、複数の内部吸気通路部32とによって、下流側吸気通路部31が実現されている。外部下流側吸気通路部342によって形成される外部下流側吸気通路、つまり、単一の外部下流側共通吸気通路3422A及び複数の分岐吸気通路311Aによって、下流側吸気通路31Aが実現されている。
【0121】
ここで、共通吸気通路部312の容積は、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積を合算した合算容積よりも小さい。また、本実施の形態では、共通吸気通路部312の容積は、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積を平均した平均容積よりも小さい。特に、本実施の形態では、共通吸気通路部312の容積は、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積のうち最小の容積よりも小さい。なお、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積が互いに同じである場合、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積が最小の容積になる。
【0122】
共通吸気通路部312の容積とは、吸入空気が流れる空間の大きさ、つまり、共通吸気通路部312によって形成される共通吸気通路312Aの大きさを意味している。複数の分岐吸気通路部311の各々の容積とは、吸入空気が流れる空間の大きさ、つまり、複数の分岐吸気通路部311の各々によって形成される分岐吸気通路311Aの大きさを意味している。
【0123】
また、本実施の形態では、共通吸気通路312Aの長さL1は、複数の分岐吸気通路311Aの各々の長さL2よりも短い。また、本実施の形態では、共通吸気通路312Aの長さL1は、複数の分岐吸気通路311Aの各々の長さL2を平均した平均長さよりも小さい。特に、本実施の形態では、共通吸気通路312Aの長さL1は、複数の分岐吸気通路311Aの各々の長さL2のうち最小の長さよりも小さい。なお、複数の分岐吸気通路311Aの各々の長さL2が互いに同じである場合、複数の分岐吸気通路311Aの各々の長さが最小の長さになる。
【0124】
また、本実施の形態では、共通吸気通路312Aの長さL1は、外部下流側分岐吸気通路3421Aの長さL21よりも短い。また、本実施の形態では、共通吸気通路312Aの長さL1は、複数の外部下流側分岐吸気通路3421Aの各々の長さL21を平均した平均長さよりも小さい。特に、本実施の形態では、共通吸気通路312Aの長さL1は、複数の外部下流側分岐吸気通路3421Aの各々の長さL21のうち最小の長さよりも小さい。なお、複数の外部下流側分岐吸気通路3421Aの各々の長さL21が互いに同じである場合、複数の外部下流側分岐吸気通路3421Aの各々の長さが最小の長さになる。
【0125】
共通吸気通路312Aの長さL1は、共通吸気通路部312によって形成される共通吸気通路312Aの上流端から下流端までの長さであって、共通吸気通路部312の通路断面の中心を通過する線の長さである。ここで、共通吸気通路312Aの上流端は、スロットル弁50の回転中心軸線が通過する位置である。共通吸気通路312Aの下流端は、複数の分岐吸気通路311Aの各々の上流端のうち吸入空気が流れる方向において最も下流に位置する上流端が存在する位置である。共通吸気通路部312の通路断面とは、共通吸気通路部312を吸入空気が流れる方向に対して直交する方向に切断したときの共通吸気通路部312の内側の領域、つまり、当該切断面における共通吸気通路部312の開口部分である。
【0126】
分岐吸気通路311Aの長さL2は、分岐吸気通路部311によって形成される分岐吸気通路311Aの上流端から下流端までの長さであって、分岐吸気通路部311の通路断面の中心を通過する線の長さである。ここで、分岐吸気通路311Aの上流端は、分岐吸気通路311Aと共通吸気通路312Aとの境界である。分岐吸気通路311Aの下流端は、分岐吸気通路311Aと燃焼室224との境界である。分岐吸気通路部311の通路断面とは、分岐吸気通路部311を吸入空気が流れる方向に対して直交する方向に切断したときの分岐吸気通路部311の内側の領域、つまり、当該切断面における分岐吸気通路部311の開口部分である。
【0127】
ここで、本実施の形態では、複数の分岐吸気通路部311の各々の長さが同じである。また、複数の分岐吸気通路部311の各々の通路断面の大きさが同じである。そのため、本実施の形態では、複数の分岐吸気通路部311は、互いに同じ容積を有する。本実施の形態では、共通吸気通路部312の容積は、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積よりも小さい。
【0128】
鞍乗型車両10においては、下流側吸気通路部31の容積、特に、単一の共通吸気通路部312の容積を小さくすることができるので、鞍乗型車両10が備えるアクセル操作子19の操作に対するエンジン20の応答特性を向上させることができる。
【実施例】
【0129】
本発明の実施の形態による鞍乗型車両について、当該鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性であって、非過給領域での応答特性を調査した(本発明例)。また、比較のために、複数の燃焼室の各々に1つずつスロットル弁が配置された構造を有する鞍乗型車両について、当該鞍乗型車両が備えるアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性であって、非過給領域での応答特性を調査した(比較例)。
【0130】
上記調査において、エンジン回転数は3200rpmに固定した。ウェイストゲートバルブは全開の位置に固定した。VCT(可変カムシャフトタイミング)はロックポジションに固定した。IMEP(図示平均有効圧力)は1barからスロットル弁が全開になる位置まで測定した。
【0131】
本発明例では、吸気ボリューム(スロットル弁が配置された位置から下流側の容積)は782ccであった。スロットル弁の直径は45mmであった。スロットル弁が全開の位置での最大開口面積は1144mm2であった。
【0132】
比較例では、吸気ボリューム(スロットル弁が配置された位置から下流側の容積)は174ccであった。スロットル弁の直径は35mmであった。スロットル弁が全開の位置での最大開口面積は617mm2であった。
【0133】
上記調査の結果を、
図6及び
図7に示す。
図6は、本発明例についての結果を示すグラフである。
図7は、比較例についての結果を示すグラフである。
【0134】
図6及び
図7に示すように、本発明例は、比較例と比べて、非過給領域でのアクセル操作子の操作に対するエンジンの応答特性が向上した。
【0135】
(その他の実施形態)
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。
【0136】
当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【0137】
上記実施の形態では、3つの燃焼室を有するエンジンが設けられた鞍乗型車両について説明したが、エンジンが有する燃焼室は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0138】
上記実施の形態では、インジェクタがシリンダヘッドに設けられているが、インジェクタは、例えば、外部吸気通路部に設けられていてもよい。
【0139】
上記実施の形態では、燃料供給装置として、インジェクタが採用されているが、インジェクタの代わりに、キャブレターを採用してもよい。
【0140】
上記実施の形態では、過給機として、ターボチャージャーが採用されているが、ターボチャージャーの代わりに、スーパーチャージャーを採用してもよい。
【0141】
上記実施の形態において、コンプレッサホイールを迂回するように、バイパス吸気通路部を外部吸気通路部34に接続させてもよい。この場合、バイパス吸気通路部には、ブローオフバルブが設けられる。ブローオフバルブは、エンジン20に供給される空気の流量を調整するために設けられる。ブローオフバルブは、例えば、電磁弁である。
【0142】
上記実施の形態において、ウェイストゲートバルブを設けてもよい。
【0143】
上記実施の形態では、複数の分岐吸気通路部311の各々の長さが同じであるが、複数の分岐吸気通路部311の各々の長さは互いに異なっていてもよい。
【0144】
上記実施の形態では、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積が互いに同じであるが、複数の分岐吸気通路部311の各々の容積は互いに異なっていてもよい。
【0145】
上記実施の形態では、複数の分岐吸気通路部311の各々の長さが同じであって且つ複数の分岐吸気通路部311の各々の通路断面が同じであることにより、複数の分岐吸気通路部311の各々が互いに同じ容積を有しているが、例えば、複数の分岐吸気通路部311の各々の長さが互いに異なり且つ複数の分岐吸気通路部311の各々の通路断面が互いに異なっていても、複数の分岐吸気通路部311の各々が互いに同じ容積を有していてもよい。
【符号の説明】
【0146】
10 鞍乗型車両
20 エンジン
224 燃焼室
30 吸気通路部
31 下流側吸気通路部
31A 下流側吸気通路
311 分岐吸気通路部
311A 分岐吸気通路
312 共通吸気通路部
312A 共通吸気通路
30A 吸気通路
32 内部吸気通路部
32A 内部吸気通路
34 外部吸気通路部
34A 外部吸気通路
342 外部下流側吸気通路部
3421 外部下流側分岐吸気通路部
3421A 外部下流側分岐吸気通路
3422 外部下流側共通吸気通路部
3422A 外部下流側共通吸気通路
50 スロットル弁
50A スロットルボディ
52 回転支持軸
80 ターボチャージャー
90 インタークーラー