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特許7121233ラクトバチルス・パラカゼイ株及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・パラカゼイ株及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220810BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220810BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220810BHJP
   A23L 33/135 20160101ALN20220810BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61K35/747
A61P1/00
A61P1/12
A61P1/04
A61P37/08
A61P17/00
A61P11/02
A61P27/14
A61P11/06
A61P37/06
C12N15/11 Z
A23L33/135
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021513740
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2019005553
(87)【国際公開番号】W WO2019216662
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0053279
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC13509BP
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC13510BP
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC13511BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520435511
【氏名又は名称】コバイオラブズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グワン・ピョ・コ
(72)【発明者】
【氏名】ウンキ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユ-ジン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ボラム・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-チュル・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ-ウク・ナム
(72)【発明者】
【氏名】インス・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン-ウ・イ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511471(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0008060(KR,A)
【文献】特表2014-516589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0238548(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02581461(EP,A1)
【文献】国際公開第2009/131208(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/125447(WO,A1)
【文献】Woon-Ki Kim et al.,Journal of Functional Foods,2018年11月30日,Vol. 52,p. 565-575
【文献】Ira Ekmekciu et al.,Gut Pathogens,2017年,Vol. 9, No. 17,p. 1-13,DOI 10.1186/s13099-017-0168-y
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCTC13509BPを有するラクトバチルス・パラカゼイKBL382の株。
【請求項2】
前記株が、配列番号1の16s rDNA配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の株。
【請求項3】
受託番号KCTC13510BPを有するラクトバチルス・パラカゼイKBL384の株。
【請求項4】
前記株が、配列番号2の16s rDNA配列を含むことを特徴とする、請求項3に記載の株。
【請求項5】
受託番号KCTC13511BPを有するラクトバチルス・パラカゼイKBL385の株。
【請求項6】
前記株が、配列番号3の16s rDNA配列を含むことを特徴とする、請求項5に記載の株。
【請求項7】
有効量の、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む食品組成物。
【請求項8】
有効量の、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む食品添加物組成物。
【請求項9】
前記組成物が、腸の健康の改善のための健康機能性食品組成物であることを特徴とする、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項10】
有効量の、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、腸疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
【請求項11】
前記腸疾患が、腹部膨満、腹部不快感、病原性微生物に起因する感染性下痢、胃腸炎、炎症性腸疾患、神経性腸炎症候群、過敏性腸症候群、小腸内微生物の異常増殖、及び経腸栄養下痢からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、アレルギー症状を改善するための健康機能性食品組成物であることを特徴とする、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項13】
有効量の、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、アレルギー性疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
【請求項14】
前記アレルギー性疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息、食物アレルギー又はアナフィラキシーショックであることを特徴とする、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、自己免疫疾患又は炎症性疾患を軽減するための健康機能性食品組成物であることを特徴とする、請求項7に記載の食品組成物。
【請求項16】
有効量の、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、腸疾患の予防又は治療の使用のための組成物。
【請求項18】
請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、アレルギー性疾患の予防又は治療の使用のための組成物。
【請求項19】
請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療の使用のための組成物。
【請求項20】
腸疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用。
【請求項21】
アレルギー性疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用。
【請求項22】
自己免疫疾患又は炎症性疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の株及びその使用に関する。より詳細には、本発明は、アレルギー症状の軽減、免疫調節の改善、炎症症状の軽減、アトピー性皮膚炎の軽減、及び腸の健康の改善のための健康機能性食品組成物;並びにラクトバチルス・パラカゼイKBL382株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL385株、前記株の微生物細胞、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、アトピー性皮膚炎及び/又は腸疾患の治療又は予防のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、腸内微生物のバランスを助ける抗菌活性及び酵素活性を有する微生物、並びにそれから得られる産物を指す。更に、プロバイオティクスはまた、乾燥細胞又は発酵産物の形態でヒト又は動物に提供される場合、腸内フローラを改善する単一株又は複数株の形態の生菌としても定義される。プロバイオティクスは、ヒトの腸に生息し、非病原性及び非毒性で、腸に到達するまで十分な期間生存しなければならない。更に、プロバイオティクスは、送達される食品中で消費されるまで生存能及び活性を維持し、感染を予防するのに使用される抗生物質に感受性でなければならず、抗生物質耐性プラスミドを有してはならない。また、プロバイオティクスは、腸内環境において酸、酵素、及び胆汁に耐性を示さなければならない。
【0003】
これらのプロバイオティクスには、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、及びホスファターゼ等の消化酵素を産生する優れた能力を有するバチルス種、乳酸を産生するラクトバチルス種、並びに代謝プロセスにおいて家畜の糞便に残っている悪臭原因物質(アンモニア、硫化水素、及びアミン等)を使用して悪臭を防ぐ光合成細菌が含まれ得る。
【0004】
特に、バチルス種及びラクトバチルス種は様々な抗菌物質を産生する株を含むため、極めて有用なプロバイオティクスとして知られている。これらの乳酸菌は、抗生物質耐性の機構とは関係のない抗菌機構を有するバクテリオシンと呼ばれる抗菌ペプチドを産生する。バクテリオシンは、その分子量、生化学的特性、並びに宿主のための抗菌範囲及び機構がかなり異なるという多様な特徴を有する。Klaenhammerは、バクテリオシン産生菌に近い種に対する直接的抗菌活性を有するタンパク質又はタンパク質複合体としてバクテリオシンを定義している。
【0005】
一方、過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛、及び/又は腸管運動若しくは排便習慣の変化と関連する炎症を特徴とする症状であり、そのような症状を解剖学的又は生化学的異常で説明することはできない。IBSの一般的症状には、尿意切迫、膨満及び不完全腸管運動感も含まれる。したがって、IBSは、機能性膨満、非心臓性胸痛、非潰瘍性消化不良、及び慢性便秘又は下痢等の状態を含む機能性消化管障害として分類することができる。特に、IBSの場合、関連症状が患者のウェルビーイング及び通常機能の側面の両方に影響を与えるため、該疾患は腹痛及び不快感を超えて罹患率及び生活の質に多大な影響を及ぼす。
【0006】
炎症性腸疾患(IBD)は、クローン病、潰瘍性大腸炎、又はベーチェット病等の、ただしこれらに限定されない全ての腸の炎症性疾患を含む、腸の異常な慢性炎症が改善と再発を繰り返す状態である。多くの研究が、IBS及びIBDを治療するための創薬の分野で行われてきた。これに関して、様々な抗うつ薬は、臨床試験におけるその有効性が中程度であり、重大な副作用のためにその臨床的有用性が限られるにもかかわらず、一般的に使用されている。セロトニン作動性薬物療法も、全般的なIBS症状に対して有効であることが証明されている。しかし、これらの薬物療法の適用は、近年のいくつかの安全性の問題のために様々な形で限られている。したがって、IBSの新たな治療剤の開発に関心が高まっている。
【0007】
一方、アレルギーは、異物(抗原、アレルゲン)に対して特有の変化した応答を示す生化学的現象である。症状を引き起こす異物はアレルゲンと呼ばれるが、それらの症状由来の疾患はアレルギー性疾患と呼ばれる。アレルギーは、抗原抗体反応から生じる生体の病理学的プロセスである。一般に、反応及び補体関与を誘発する期間に応じて4種類のアレルギーがある。それらの中で1型は、標的器官が主に消化器官、皮膚及び肺であるアナフィラキシー型(即時型)であり、一般的な症状には、消化管アレルギー、蕁麻疹、萎縮性皮膚炎(atrophodermatitis)、アレルギー性鼻炎、及び気管支喘息等が含まれる。1型の病理学的機構は、以下のように知られている:抗原が肥満細胞及び好塩基球の表面に付着したIgE抗体と接触すると、標的細胞が活性化されてヒスタミン、ロイコトリエン、及びPAF等の化学伝達物質を分泌し、次いで血管及び平滑筋が収縮される。そのような機構は、多くの場合に4型(遅延型)と組み合わさっている可能性がある。言い換えれば、そのようなアナフィラキシー及びアレルギー反応は、多様な肥満細胞等の変化に起因して生じ得る。脱顆粒をもたらす肥満細胞の活性化は、Fc受容体への抗原、抗IgE、レクチン等の結合、アナフィラトキシン等、又は他の薬物、例えばカルシウムイオノフォア、化合物48/80、コデイン及び合成副腎皮質刺激ホルモン等の刺激によって引き起こされる。
【0008】
血液中の肥満細胞及び好塩基球は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、喘息、食物アレルギー及びアナフィラキシーショック等の多くのアレルギー性疾患を引き起こす主な体細胞として知られている。これらの細胞は、アレルギーを引き起こす抗体であるIgEに対する受容体(FcRI)をその表面に有する。該細胞は、アレルギー誘発物質(抗原、アレルゲン)によって刺激されて、細胞自身の様々なアレルギー誘発物質を細胞から分泌する(Kim Kら、Eur J Pharmacol、581:191~203頁、2008)。
【0009】
アレルギー性疾患の中で、アトピー性皮膚炎は、一般に広く知られているように、新生児又は小児を冒し、成人期まで持続し得る慢性再発性皮膚疾患である。喘息又はアレルギー性鼻炎と同じように、アトピー性皮膚炎は、IL-4及びIL-5を産生するTリンパ球の局所浸潤を伴う炎症性皮膚疾患である。IL-4はヘルパーT2 (Th2)表現型の発生を制御し、免疫グロブリン(Ig)の過剰産生及び好中球増多、及び血清IgEレベルの増加をもたらす。食品及び吸入アレルゲンに関する皮膚テストに陽性であった対象の80~90%は、アトピー性皮膚炎を有することが見出された。
【0010】
アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患を治療又は予防するための種々の治療があるが、有効な治療はまだ見出されていない。いくつかの薬物ベースの治療が知られているが、治療のための薬物の短期投与でさえ耐性が生じることになり、長期投与は重篤な副作用を引き起こす可能性があり、故にアレルギー性疾患のそのような薬物ベースの治療は最近では避けられている。こうした状況下で、何らかの絶対的な明白な効果をもたらす治療をしなければ、アレルギーに加えて皮膚の掻痒及び発赤等の不快な症状は改善しない場合が多い。
【0011】
WO 96/29083及びEP 554418は、腸でコロニーを形成する2種類のラクトバチルス株、すなわち、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum) 299v (DSM 6595)及びラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)亜種ラムノサス(rhamnosus) 271 (DSM 6594)等を開示している。EP 415941は、オート麦粥を乳酸桿菌と混合する前に酵素で処理する工程を含む、栄養組成物の調製方法を開示している。米国特許第7195906号は、炎症性疾患、特に、IBD及びIBS等の消化管炎症の治療のための、切除され、洗浄されたヒト消化管から単離されたビフィズス菌株を開示している。
【0012】
しかし、腸の健康の改善、例えば、IBD及びIBSの治療、並びにアレルギー症状の軽減に優れた効果をもたらす株はまだ見出されておらず、そのような効果をもたらす株を見出すために、多くの研究所が取り組んでいる。
【0013】
こうした状況下で、本発明者らは、プロバイオティクスの健康改善効果が属及び種の一般属性ではなく、むしろ株特異的であるという事実(食品中のプロバイオティクスの評価に関するガイドライン作成に関するFAO/WHO合同作業部会の報告、London Ontario、Canada、2002)に基づき様々な株をスクリーニングし、免疫調節、抗炎症活性、アレルギー性軽減、腸の健康の改善、及び腸疾患の治療に優れた効果をもたらす新規の株を同定した。次いで、本発明は、これらの株の優位な効果を確認することによって完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO 96/29083
【文献】EP 554418
【文献】EP 415941
【文献】米国特許第7195906号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Kim Kら、Eur J Pharmacol、581:191~203頁、2008
【文献】Slyter, L. L. J. Animal Sci.1976、43. 910~926頁
【文献】Johnson, D. Eら. J. Anim. Sci.、1983、56、735~739頁
【文献】Williams, P. E. V.ら、1990、211頁
【文献】L. Lachmanら、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy、第3版、1986、365~373頁
【文献】H. Suckerら、Pharmazeutische Technologie、Thieme、1991、355~359頁
【文献】Hagers Handbuchder pharmazeutischen Praxis、第4版、7巻、739~ 742頁、及び766~778頁(SpringerVerlag、1971)
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences、第13版、1689~1691頁 (Mack Publ., Co.、1970)
【文献】Matsumoto M、J. Immunol. 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、腸の健康の改善、腸疾患の治療又は予防、免疫調節の改善、自己免疫疾患治療又は予防、アレルギー症状の軽減、炎症症状の軽減、アトピー性皮膚炎の軽減及び治療に有用な新規の株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)を提供する。
【0018】
また、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、食品組成物又は食品添加物組成物も提供する。
【0019】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、腸疾患の治療又は予防のための医薬組成物も提供する。
【0020】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、アレルギー性疾患の治療又は予防のための医薬組成物も提供する。
【0021】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療又は予防のための医薬組成物も提供する。
【0022】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの治療的有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、腸疾患を治療するための方法も提供する。
【0023】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの治療的有効量をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、アレルギー性疾患を治療するための方法も提供する。
【0024】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの治療的有効量をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するための方法も提供する。
【0025】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、腸疾患の予防又は治療の使用のための組成物も提供する。
【0026】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、アレルギー性疾患の予防又は治療の使用のための組成物も提供する。
【0027】
本発明はまた、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療の使用のための組成物も提供する。
【0028】
本発明はまた、腸疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用も提供する。
【0029】
本発明はまた、アレルギー性疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用も提供する。
【0030】
本発明はまた、自己免疫疾患又は炎症性疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】PBMCにおける本発明のKBL382株、KBL384株及びKBL385株による炎症性サイトカインの制御効果を確認する結果を例示する図である。
図2】PBMCにおける本発明のKBL382株、KBL384株及びKBL385株によるT細胞分化マーカーの遺伝子発現の制御効果を確認する結果を例示する図である。
図3】T-細胞が抗CD3抗体の添加により活性化されるPBMC細胞系における、本発明のKBL382株、KBL384株及びKBL385株の投与によるサイトカイン(A) IL-2、(B) IFN-γ、(C) IL-4、(D) IL-13、(E) IL-17A及び(F) IL-10の発現レベルの変化の観察結果を例示する図である。
図4】腸炎が誘導されたマウスモデルに本発明のKBL382株、KBL384株及びKBL385株のそれぞれを投与した後の(A)体重の変化、(B)結腸の長さの変化、(C)結腸の長さの変化及び盲腸質量の変化、(D)結腸組織のH&E染色、並びに(E)結腸組織中のMPO (ミエロペルオキシダーゼ)レベルの変化により、腸炎の軽減に対する効果を確認する結果を例示する図である。
図5】腸管壁タイトジャンクション関連遺伝子(A) ZO1、(B)クローディン3、及び(C) MUC4の発現レベルの変化による、本発明のKBL382株及びKBL385株のタイトジャンクションを強化する効果の観察結果を例示する図である。
図6】本発明のKBL382株によって腸炎を軽減する効果を確認するために、本発明のKBL382株及び市場で入手可能な腸炎を治療するための抗体、インフリキシマブによる、(A)結腸の長さの回復効果、及び(B)体重減少の改善効果を比較する結果を例示する図である。
図7】KBL382株によりアトピー症状を軽減する効果を確認するために、アトピー性皮膚炎が誘導された動物モデルへの本発明のKBL382株の投与による、(A)皮膚炎スコア測定、(B)掻痒軽減効果、(C)皮膚の厚みの低下効果、及び(D)血中IgE濃度低下効果を観察する結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
特に定義されない限り、本明細書で使用される専門的、科学的用語は全て当技術分野において通常の技術を有する者(「当業者」)によって理解されるのと同じことを意味する。一般に、本明細書で使用される命名法は当技術分野で周知であり、一般的に使用されている。
【0033】
本発明は、人体に由来する微生物の免疫調節性効果を確認し、優れた免疫調節作用を有するラクトバチルス・パラカゼイ株、すなわち、KBL382 (受託番号KCTC13509BP)、KBL384 (受託番号KCTC13510BP)及びKBL385株(受託番号KCTC13511BP)を見出した。前記株の16s rDNAの解析は、前記株が一般に知られていなかった新規の株であることを示している。
【0034】
1つの実施形態において、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385の新規のプロバイオティクス株に関し、前記株は、以下のように、それぞれ配列番号1~3の16s rDNA配列を含むことを特徴とする。
【0035】
<配列番号1>ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株の16s rDNA配列
【化1】
【0036】
<配列番号2>ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株の16s rDNA配列
【化2】
【0037】
<配列番号3>ラクトバチルス・パラカゼイKBL385株の16s rDNA配列。
【化3】
【0038】
本発明はまた、KBL382株、KBL384株、及びKBL385株がそれぞれ、抗炎症性及び免疫調節性効果に加えて腸管壁のタイトジャンクションに対する強化効果を有すること、並びに腸炎が誘導された動物モデルへのKBL382株、KBL384株及びKBL385株の投与は、腸炎による体重減少及び結腸の長さの減少を著しく軽減したことを確認した。更に、上記の株の中でKBL382株の、アトピー性皮膚炎が誘導された動物モデルへの投与は、皮膚炎スコアを著しく改善し、掻痒症状を軽減し、皮膚の厚みを低下させ、アレルギー反応による血中IgE濃度を著しく改善したことも確認されている。
【0039】
したがって、別の実施形態において、本発明は、KBL382株、KBL384株、又はKBL385株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物の微生物細胞からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む食品組成物又は食品添加物組成物に関する。
【0040】
前記食品組成物又は食品添加物組成物は、腸の健康の改善及び腸疾患の予防に有効な食品として、例えば、以下に限定されるものではないが、食品の主成分又は微量成分、食品添加物、健康機能性食品組成物又は機能性飲料として、容易に利用することができる。
【0041】
前記食品組成物又は食品添加物組成物は、アレルギー症状の軽減に有効な食品として、例えば、以下に限定されるものではないが、食品の主成分又は微量成分、食品添加物、健康機能性食品組成物又は機能性飲料として、容易に利用することができる。
【0042】
更に、前記食品組成物又は食品添加物組成物は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の軽減に有効な食品として、例えば、以下に限定されるものではないが、食品の主成分又は微量成分、食品添加物、健康機能性食品組成物又は機能性飲料として、容易に利用することができる。
【0043】
用語「食品」は、少なくとも1つの栄養素を含む天然又は人工の産物を指し、より好ましくは、特定の処理により食用になった産物を指し、通常は食品、食品添加物、健康機能性食品及び機能性飲料の全てを包含する。
【0044】
本発明による前記食品組成物を添加物として含み得る食品には、例えば、種々のタイプの食品、飲料、チューインガム、茶、複合ビタミン剤、及び機能性食品が含まれ得る。更に、本発明の食品には、特別栄養食品(例えば、調製乳、乳児食/離乳食)、食肉加工品、魚肉製品、豆腐、ムク、麺(例えば、ラーメン、アジアンヌードル)、ベーカリー製品、健康補助食品、調味料製品(例えば、醤油、味噌、唐辛子ペースト、ミックスペースト)、ソース、菓子類(例えば、スナック食品)、飴、チョコレート、チューインガム、アイスクリーム、乳製品(例えば、発酵乳、チーズ)、他の加工食品、キムチ、塩蔵食品(例えば、種々のタイプのキムチ、漬物)、飲料(例えば、フルーツジュース、野菜ジュース、豆乳、発酵飲料)、及び天然調味料(例えば、ラーメンのブロスパウダー)が含まれるが、これらに限定されない。前記食品、飲料又は食品添加物は、従来の方法で調製することができる。
【0045】
用語「健康機能性食品」は、その機能が所定の目的のために発揮され、発現されるように、物理的、生化学的又は生物工学的手法を使用して価値が付加される食品群、又は予防的リズム調整(rhythm adjustment in prophylaxis)、疾患の予防及び疾患からの回復等の当該食品組成物のインビボ調整機能が十分に発現されるように設計された加工食品である。そのような機能性食品は、食品科学的に許容可能な栄養補助食品添加物を含んでもよく、その製造において一般的に使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤を更に含んでもよい。
【0046】
用語「機能性飲料」は、本発明で使用される場合、渇きを癒す又は味を楽しむための飲料製品を集合的に指す。前記腸疾患症状の改善又は予防のための組成物を、示された割合での必須成分として含むこと以外これに特定の制限はなく、様々な香味剤又は天然の糖質が、一般的な飲料と同じように追加の成分として含有されていてもよい。
【0047】
上記に加えて、前記腸疾患症状の改善又はその予防のための本発明による食品組成物を含む食品は、様々な栄養素、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成香味剤及び天然香味剤等の香味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、保存料、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭化剤等を含有してもよく、上記の成分の各々は、単独で又は互いに組み合わせて使用されてもよい。
【0048】
本発明による食品組成物を含む食品中に、本発明の組成物は、食品の総質量に対して0.001質量%~100質量%、及び好ましくは1質量%~99質量%の量で含まれていてもよい;飲料の場合、本発明の組成物は、100mLに対して0.001g~10g、及び好ましくは0.01g~1gの量で含まれていてもよい。しかし、健康及び衛生の目的、又は健康管理の目的での長期摂取に関して、量は上述した範囲より下であってもよい;有効成分は安全性プロファイルの点で問題がないため、範囲より上の量で使用されてもよく、上述した量範囲に限定されない。
【0049】
本発明による食品組成物は、KBL382株、KBL384株、又はKBL385株を単独で又は許容される担体と組み合わせて含んでもよく、又はヒト若しくは動物による消費に適した組成物の形態で調製されてもよい。すなわち組成物は、プロバイオティクス細菌を含有しない食品、又はいくつかのプロバイオティクス細菌を含有する食品に添加されてもよい。例えば、本発明の食品の調製において本発明による株と組み合わせて使用することができる微生物は、以下に限定されるものではないが、ヒト又は動物による消費に適しているべきであり、病原性有害細菌を阻害する、又は摂取すると哺乳動物腸管の微生物のバランスを改善するプロバイオティクス活性を有するべきである。そのようなプロバイオティクス微生物には、例えば、サッカロミセス、カンジダ、ピキア及びトルロプシス等の酵母、アスペルギルス、リゾプス、ムコール、及びペニシリウム等の真菌、並びにラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ロイコノストック属、ラクトコッカス属、バチルス属、ストレプトコッカス属、プロピオニバクテリウム属、エンテロコッカス属、及びペディオコッカス属に属する細菌が含まれ得る。適切なプロバイオティクス微生物には、具体的には例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、フィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブリュッキー(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ファルシミニス(Lactobacillus farciminus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、又はペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)が含まれ得る。好ましくは、本発明による食品組成物は、その効果を更に増強するために、優れたプロバイオティクス活性及び免疫の増強に対して優位な効果を有するプロバイオティクス微生物混合物を更に含んでもよい。本発明の食品組成物に含めることができる担体には、例えば、当技術分野で広く周知されている増量剤、高繊維添加物、カプセル化剤、及び脂質が含まれ得る。本発明におけるラクトバチルス・パラカゼイの株は、凍結乾燥若しくはカプセル化された形態、又は培養懸濁液若しくは乾燥粉末の形態であってもよい。
【0050】
本発明の組成物はまた、前記株を含む飼料添加物又はこれを含む飼料の形態で提供することもできる。
【0051】
本発明の飼料添加物は、乾燥又は液体製剤の形態であってもよく、KBL382、KBL384、又はKBL385の前記株に加えて他の非病原性微生物を更に含んでもよい。飼料添加物に添加することができる微生物には、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ及び糖転換酵素を産生することができるバチルス・スブチリス、ウシの胃等の嫌気条件下で有機化合物の生理活性及び分解性を有するラクトバチルス株、家畜の体重、乳量、及び飼料の消化率の増加に対して効果を示す麹菌(Aspergillus oryzae)等の糸状菌(Slyter, L. L. J. Animal Sci.1976、43. 910~926頁)、並びにサッカロミセス・セレビシエ等の酵母(Johnson, D. Eら. J. Anim. Sci.、1983、56、735~739頁; Williams, P. E. V.ら、1990、211頁)が含まれ得る。
【0052】
本発明の飼料添加物は、前記ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株に加えて少なくとも1つの酵素剤を更に含んでもよい。追加の酵素剤は、乾燥又は液体形態であってもよく、例えば、リパーゼ等の脂肪分解酵素、フィチン酸を分解してリン酸及びイノシトールリン酸を産生するフィターゼ、アミラーゼ、すなわち、例えばデンプン及びグリコーゲンに含まれるα-1,4-グリコシド結合を加水分解する酵素、ホスファターゼ、すなわち、有機リン酸エステルを加水分解する酵素、セルロースを分解するカルボキシメチルセルラーゼ、キシロースを分解するキシラーゼ、マルトースを2つのグルコース分子に加水分解するマルターゼ、及びショ糖を加水分解してグルコース-フルクトース混合物を産生するインベルターゼ等の糖産生酵素が含まれ得る。
【0053】
本発明のラクトバチルス・パラカゼイKBL382株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株の飼料添加物としての使用において、様々な穀類及び大豆タンパク質を含む、落花生、エンドウ豆、ビート、パルプ、穀類副産物、動物腸粉末及び魚肉粉末等の飼料の原料が使用され得る。これらは、加工されても又は加工されなくてもよく、無制限に使用することができる。加工には、以下に限定されるものではないが、飼料の原料が詰められ、任意の吐出口に対して圧力下で圧縮することができるような加工が含まれ得、タンパク質に関しては、利用能を高めるようにタンパク質が変性される押出しが好ましくは使用され得る。押出しは、熱処理によりタンパク質を変性させ、抗酵素要因を破壊する利点を有する。更に、大豆タンパク質に関して、その消化率が押出しにより改善されて、大豆中に存在するプロテアーゼインヒビターの1つであるトリプシンインヒビター等の抗栄養素を不活性化することができる。更に、押出しは、プロテアーゼによる消化率の改善を促進し、大豆タンパク質の栄養価を増強することができる。
【0054】
別の実施形態において、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物の微生物細胞からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、腸疾患の治療又は予防のための医薬組成物に関する。
【0055】
別の実施形態において、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物の微生物細胞からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、アレルギー性疾患の治療又は予防のための医薬組成物に関する。
【0056】
別の実施形態において、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物の微生物細胞からなる群から選択される少なくとも1つの有効量を含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療又は予防のための医薬組成物に関する。
【0057】
本発明の医薬組成物は、生菌、乾燥株、前記株の培養物、前記株の溶解物、又は薬学的に許容される担体又は媒体と組み合わせた組成物の形態で提供することができる。本明細書で使用され得る担体又は媒体には、溶媒、分散剤、コーティング剤、促進剤、制御放出製剤(すなわち、持続放出製剤)、又は少なくとも1つの不活性賦形剤(デンプン、ポリオール、顆粒剤、微細セルロース、微結晶性セルロース、例えばセルフィア、セルフィアビーズ等、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を含む)が含まれ得る。上記の組成物の錠剤が、所望であれば、標準的な水性又は非水性法によってコーティングされてもよい。薬学的に許容される担体並びに薬学的に許容される不活性担体、及び前記追加の成分として使用するための賦形剤には、以下に限定されるものではないが、例えば、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、抗菌剤及びコーティング剤が含まれ得る。
【0058】
本発明は、前記腸疾患が、腹部膨満、腹部不快感、病原性微生物に起因する感染性下痢、胃腸炎、炎症性腸疾患、神経性腸炎症候群(neurogenical intestinitis syndrome)、過敏性腸症候群、小腸内微生物の異常増殖、及び経腸栄養下痢(intestinal feeding diarrhea)からなる群から選択されることを特徴としてもよく、また疾患には、腸のバリア機能の損傷に起因するものも含まれる。
【0059】
炎症性腸疾患(IBD)には、クローン病、腸病変(ベーチェット病、潰瘍性大腸炎、出血性直腸潰瘍、及び回腸嚢炎に関連する)が含まれ得、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む疾患群を指す。潰瘍性大腸炎は結腸のみに影響を及ぼす。潰瘍性大腸炎の炎症及び潰瘍は、結腸の4つの層のうち2つの最内層、粘膜及び粘膜下層に限定される。クローン病の炎症及び潰瘍は、小腸及び大腸の両方の腸壁の全ての層にわたって広がり得る。
【0060】
一方、過敏性腸症候群は、腹部膨満等の持続性再発性の腹部不快感及び腹痛だけでなく、下痢及び便秘等の排便習慣の変化も伴う慢性状態である。症状は、心理的要因又はストレスの多い社会的環境によって悪化し得る。
【0061】
本発明において、アレルギー性疾患には、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息、食物アレルギー及びアナフィラキシーショックが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0062】
本発明において、自己免疫疾患には、例えば、関節リウマチ、ループス、全身性強皮症、アトピー性皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、結節性多発動脈炎、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、側頭動脈炎、若年性糖尿病、円形脱毛症、天疱瘡、アフタ性口内炎、自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、アジソン病、クローン病、及びベーチェット病が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0063】
更に、本発明の炎症性疾患は、主病変として炎症を有する状態をまとめて指し、例えば、浮腫、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、慢性副鼻腔炎、咽頭喉頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、大腸炎、痛風、湿疹、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、強直性脊椎炎、リウマチ熱、線維筋痛、骨関節炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、肩の関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、筋炎、肝炎、膀胱炎、腎炎、シェーグレン症候群、重症筋無力症、敗血症、血管炎、滑液包炎、側頭動脈炎、及び多発性硬化症が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0064】
自己免疫疾患は、調節性T細胞(Treg)又はT細胞への分化の活性化によって予防又は治療できることが知られている。CD4+ T細胞の一種であるTregは、自己抗原に対する耐性の維持によって免疫系を調節し、自己免疫疾患を制御する上で役割を果たす。Foxp3と呼ばれる転写因子は、調節性T細胞の発生、維持、及び機能に特異的に関与し、免疫抑制性サイトカインIL-10及びTGF-βの分泌により免疫応答を調節する。
【0065】
更に、T細胞のTh1細胞、Th2細胞、及びTh17細胞への分化速度が低く、T細胞のTreg細胞への分化速度が高い場合、炎症性応答は有効に抑制され得ることが知られている。
【0066】
脾臓T細胞から分化されるTh1細胞、Th2細胞及びTh17細胞は、以下の転写因子及びサイトカインの発現に関連していることが知られている:Th1細胞の場合、T-bet、IFN-γ及びIL-12; Th2細胞の場合、GATA3及びIL-5; Th17細胞の場合、RORγt、IL-17。
【0067】
本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患を軽減、治療又は予防するための本発明の株から生じる効果が、以下の機構から選択される少なくとも1つによって誘導され得ることを特徴としてもよい:
i)炎症性サイトカインIL-6、TNF、IL-1b、IL-8、IL-2、IFN-γ、IL-4、IL-13、及びIL-17Aからなる群から選択される少なくとも1つの発現又は分泌の抑制;
ii)抗炎症性及び免疫調節性サイトカインIL-10の発現又は分泌の増加;並びに
iii)抗炎症性活性及び免疫調節に関与するTregの発現の増加。
【0068】
用語「治療(treating)」は、特に言及されない限り、前記用語と共に使用される疾患若しくは状態、又は1つ若しくは複数のその症状を好転させ又は軽減し、これの進行を阻害する、又はこれを予防することを指す。用語「治療(treatment)」は本発明で使用される場合、上記に定義される「治療」の行為を指す。したがって、哺乳動物における腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療(treatment)又は治療的レジメン(therapeutic regimen)には、以下の1つ又は複数が含まれ得る:
(1)腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患の発生を阻害する、
(2)腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患の広がりを予防する、
(3)腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患を軽減する、
(4)腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患の再発を予防する、及び
(5)腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患の症状を緩和する。
【0069】
腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患を予防又は治療するための本発明の組成物は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株、ラクトバチルス・パラカゼイKBL385株の薬学的に有効な量を、単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤のうちの少なくとも1つと組み合わせて含んでもよい。
【0070】
本発明において、用語「有効量」は、所望の効果をもたらすには十分高いが、医学的判断の下の重篤な副作用を防ぐには十分低い量を意味する。本発明の組成物により身体に投与される微生物の量は、投与経路及び投与標的を考慮して適宜調整され得る。
【0071】
本発明の組成物は、対象に1日1回又は複数回投与することができる。単位投与量は、ヒト対象及び他の哺乳動物への単位投与に適した物理的に個別の単位を意味し、各単位は、適切な医薬担体及び治療効果をもたらす本発明の微生物の所定の量を含む。成人患者に対する経口投与の投与量単位は、好ましくは0.001g以上の本発明の微生物を含有し、本発明の組成物の経口投与量は、用量あたり0.001g~10gであり、好ましくは0.01g~5gである。本発明の微生物の薬学的に有効な量は、0.01g~10g/日である。しかし、投与量は、患者の疾患の重症度、並びに微生物及び一緒に使用される補助的有効成分に応じて異なる。更に、合計1日投与量は数回に分けられてもよく、必要に応じて連続的に投与されてもよい。したがって、上記の投与量範囲は、本発明の範囲を決して限定しない。
【0072】
更に、上記に使用される用語「薬学的に許容される」は、ヒトに投与される場合、生理的に許容され、消化管障害、眩暈等のアレルギー反応、又は類似の反応を引き起こさない組成物を指す。
【0073】
本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速放出、持続放出又は遅延放出がもたらされ得るように、当技術分野で公知の方法を使用して製剤化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、又は滅菌粉末であってもよい。更に、腸疾患を予防又は治療するための本発明の組成物は、経口、経皮、皮下、静脈内又は筋肉内投与を含むいくつかの経路を介して投与することができる。活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、質量、及び患者の重症度等の様々な要因に応じて適宜選択され得る。胃腸疾患を予防又は治療するための本発明の組成物は、腸疾患の症状を予防又は治療する効果を有する公知の化合物と組み合わせて投与されてもよい。
【0074】
本発明の医薬組成物は、特に、腸溶製剤の経口単位剤形で提供されてもよい。用語「腸溶コーティング」は、本明細書で使用される場合、胃酸によって劣化することなく胃に残ることができ、腸管で十分に分解して活性成分をその中に放出することができる任意の公知の薬学的に許容されるコーティングを含む。本発明の「腸溶コーティング」は、pH1のHCl溶液等の人工胃液が36℃~38℃でこれと接触されるとき2時間以上維持され得、その後、好ましくはpH6.8のKH2PO4緩衝液等の人工腸液中で30分内に劣化し得るコーティングを指す。
【0075】
本発明の腸溶コーティングは、約16mg~30mg、好ましくは16mg~20mg、又は25mg以下の量で1つのコアにコーティングされる。本発明の腸溶コーティングの厚さが5μm~100μm、及び好ましくは20μm~80μmであるとき、腸溶コーティングとして満足のいく結果が得られ得る。腸溶コーティングの材料は、公知のポリマー材料から適切に選択することができる。適切なポリマー材料は、多くの公知の文献に列挙されており[L. Lachmanら、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy、第3版、1986、365~373頁; H. Suckerら、Pharmazeutische Technologie、Thieme、1991、355~359頁; Hagers Handbuchder pharmazeutischen Praxis、第4版、7巻、739~ 742頁、及び766~778頁(SpringerVerlag、1971);並びにRemington's Pharmaceutical Sciences、第13版、1689~1691頁(Mack Publ., Co.、1970)]、セルロースエステル誘導体、セルロースエーテル、アクリル樹脂及びメチルアクリレートのコポリマー、並びにマレイン酸及びフタル酸誘導体のコポリマーがその中に含まれていてもよい。
【0076】
本発明の腸溶コーティングは、腸溶コーティング溶液がコアに噴霧される従来の腸溶コーティング方法を使用して調製することができる。腸溶コーティングプロセスに使用される適切な溶媒は、エタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、ジクロロメタン(CH2Cl2)等のハロゲン化炭化水素溶媒、及びこれらの溶媒の混合溶媒である。フタル酸ジ-n-ブチル又はトリアセチン等の軟化剤は、1:約0.05~約0.3 (コーティング剤材料:軟化剤)の比でコーティング剤溶液に添加される。噴霧プロセスを連続的に実施することが適当であり、コーティング条件を考慮して噴霧量を調整することができる。噴霧圧力は様々に調整することができ、一般的に約1バール~約1.5バールの噴霧圧力で満足のいく結果が得られ得る。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療のための前記株又は組成物の使用、及び腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療剤を調製するための前記株又は組成物の使用に関する。
【0078】
具体的には、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、腸疾患の予防又は治療の使用のための組成物に関する。
【0079】
更に、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、アレルギー性疾患の予防又は治療の使用のための組成物に関する。
【0080】
更に、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患の予防又は治療の使用のための組成物に関する。
【0081】
本発明はまた、腸疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用に関する。
【0082】
更に、本発明は、アレルギー性疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用に関する。
【0083】
更に、本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の予防薬又は治療薬を調製するための、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物の使用に関する。
【0084】
用語「予防」は、本明細書で使用される場合、疾患を回避し、遅延させ、阻害し又は妨げてこれを低減することに関連している。
【0085】
用語「治療(treatment)」は、本明細書で使用される場合、疾患の症状を改善、治癒若しくは低減するため、又は疾患の進行を低下若しくは停止させるために、疾患に罹患している対象をケアすることに関連している。
【0086】
別の実施形態において、本発明は、前記株又は前記組成物の薬学的に有効な量を、前記疾患の予防若しくは治療を必要とする、又は腸の健康、アレルギー反応の軽減、免疫反応若しくは炎症反応のレベルの低下を必要とする対象に投与する工程を含む、腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患を予防又は治療するための方法を提供する。
【0087】
具体的には、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの治療的有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、腸疾患を治療するための方法を提供する。
【0088】
更に、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの治療的有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、アレルギー性疾患を治療するための方法を提供する。
【0089】
更に、本発明は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382株(受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384株(受託番号KCTC13510BP)、又はラクトバチルス・パラカゼイKBL385株(受託番号KCTC13511BP)、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つの治療的有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するための方法を提供する。
【0090】
前記腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患を予防又は治療するための方法に使用される医薬組成物、及びその投与方法は上記に記載されているため、組成物と方法の間の重複する内容は、本明細書の過剰な複雑さを避けるために本明細書では省略される。
【0091】
一方、前記腸疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患又は炎症性疾患を予防又は治療するための組成物が投与され得る前記対象には、ヒトを含む全ての動物が含まれる。例えば、対象は、イヌ、ネコ、又はマウス等の動物であってもよい。
【0092】
以下、本発明は、例を通じてより詳細に記載される。これらの例は、本発明を例示するためだけのものであり、本発明の範囲がこれらの例によって限定されると解釈されるべきではないことは当業者に明らかであろう。
【0093】
実施例1. 免疫調節性機能を有するプロバイオティクス株のスクリーニング
免疫調節性機能を有するプロバイオティクス株を、白血球単球THP-1細胞系及び末梢血単核球(PBMC)を使用してスクリーニングした。ヒト腸又は膣に由来する株を、それぞれ、細胞系:株の比が1:100となるように上記の2つの細胞系に播種し、炎症反応を示す主なサイトカインであるIL-6に対する、炎症制御を示す主なサイトカインであるIL-10の比(IL-10/IL-6)、及び自己免疫反応を示す主なサイトカイン、IFN-γに対するIL-10の比(IL-10/IFN-γ)を測定した。合計23株を以下のようにスクリーニングに使用した:ラクトバチルス・ガセリ2株、ラクトバチルス・ロイテリ1株、ラクトバチルス・ラムノサス5株、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)2株、ラクトバチルス・パラカゼイ4株、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)4株、ラクトバチルス・プランタルム1株、ラクトバチルス・アシドフィルス2株及びラクトコッカス・ラクティス2株。
【0094】
スクリーニングの結果として、最も高いIL-10/IL-6値は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385の3つの株で示された。特に、3つのラクトバチルス・パラカゼイ株のうち、KBL382はTHP-1細胞系で2.22の最も高いIL-10/IL-6値を有し、IL-10/IFN-γ値は末梢血単核球で9であり、極めて高い免疫調節性効果を示した。以下のTable 1(表1)は、本スクリーニングに使用した23のプロバイオティクス株のうち、3つのラクトバチルス・パラカゼイ株について測定したIL-10/IL-6値及びIL-10/IFN-γ値の結果を示している。したがって、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385の3つの株は、腸の健康の改善に対する効果が高いと予測し、追加の実験をこれらの株で行った。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例2. 炎症性サイトカイン発現及びT細胞分化調節に対するラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株の効果の検証(インビトロテスト)
前記ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株からの免疫調節性効果を検証するために、免疫調節に関与するサイトカインを生成する能力を、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株で処理したTHP-1細胞系で確認し、一方、T細胞分化のマーカー遺伝子が発現されたかどうかを、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382及びKBL385株で処理したPBMCで確認した。
【0097】
まず、THP-1細胞系を24ウェルプレートの各ウェルに1×105細胞ずつ播種し、成熟マクロファージに分化させ、次いで培養溶液を交換した。3時間後、陽性対照として1個のウェルを1μg/mLの濃度のLPSで処理し、他のウェルを、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384又はKBL385株を用いて、それぞれ生菌数に基づき1×107細胞により処理した; 24時間後、培養溶液を回収し、BD Cytometric Bead Array (CBA)ヒト炎症キット(カタログ番号551811)を使用して製造者の方法に従って、各サイトカインの量を測定した。陰性対照(Cont)として、ウェルをPBS緩衝液で処理し、同じ実験手順を行った。結果として、図1に示すように、測定により、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382及びKBL385株で処理したTHP-1細胞系の群は、炎症性サイトカインIL-6、TNF、IL-1b及びIL-8の量がLPS処理群より有意に低いことが示された。KBL384株による処理の場合、IL-6は、LPSで処理したテスト群より有意に低いが、TNF、IL-1b及びIL-8はLPSで処理した群と有意に異ならないことが確認された。IL-10の場合、KBL382、KBL384及びKBL385で処理した群では、LPSで処理した群と比較していかなる有意な増加又は減少も観察されなかったが、陰性対照群と比較してIL-10レベルの全体的な増加が誘導されたことが観察された。したがって、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382及びKBL385株は、THP-1細胞における炎症性サイトカインの生成を有意に抑制するのに有効であると結論づけられた。その後実験を行ってT細胞分化のパターンを検証した。
【0098】
T細胞分化に対するKBL382及びKBL385株の効果を確認するために、PBMC細胞を24ウェルプレートの各ウェルに5×105細胞ずつ播種し、次いでラクトバチルス・パラカゼイKBL382又はKBL385株を5×106細胞ずつ添加した。対照として、大腸菌(E.coli) (大腸菌0157 EC4115)を、生細胞数に基づき5×106細胞ずつ各ウェルに添加し、又はLPSを500ng/mLの濃度で添加した。大腸菌は、炎症性応答に関連するT細胞のエフェクター細胞マーカーであるT-bet、GATA3、及びRORγt遺伝子の発現を増加させることが知られているが、LPSは、炎症調節に関連するTreg細胞のマーカー、FOXP3遺伝子の発現を増加させることが知られている。上記の条件下で調製したPBMC細胞テスト群を5日間インキュベートし、次いで細胞を得、回収した。遺伝子発現のレベルを確認するために、まず、easy-spin (商標) (DNAフリー) Total RNA Extraction Kit (Intron社)を使用してRNAを抽出し、次いでHigh Capacity RNA-to-cDNA Kit (ThermoFisher社)を使用してcDNAを合成した。リアルタイムPCRを、Rotor-Gene(登録商標) Q (Qiagen社)装置を使用するRotor-Gene SYBR Green PCRキット(Qiagen社)により製造者の方法に従って合成cDNAで行い、Th1マーカー(エフェクター細胞マーカー)遺伝子であるT-bet、Th2マーカー遺伝子であるGATA3、Th17マーカー遺伝子であるRORγt、及びTreg細胞マーカー遺伝子であるFOXP3のmRNA発現を測定した。同時に、各テスト群間の相対的遺伝子発現レベルを補正するための内部対照として、B2M遺伝子の発現レベルを測定した。各遺伝子の発現を確認するのに使用したプライマーの塩基配列は、次の通りである。
B2M
フォワード: 5'-CCA GCA GAG AAT GGA AAG TC-3' (配列番号4)
リバース: 5'-GAT GCT TCT TAC ATG TCT CG-3' (配列番号5)
T-bet
フォワード: 5'-CCC CAA GGA ATT GAC AGT TG-3' (配列番号6)
リバース) 5'-GGG AAA CTA AAG CTC ACA AAC-3' (配列番号7)
GATA3
フォワード: 5'-CTG CAA TGC CTG TGG GCT C-3' (配列番号8)
リバース: 5'-GAC TGC AGG GAC TCT CGC T-3' (配列番号9)
RORγt
フォワード: 5'-AAG ACT CAT CGC CAA AGC AT-3' (配列番号10)
リバース: 5'-TCC ACA TGC TGG CTA CAC A-3' (配列番号11)
FOXP3
フォワード: 5'-TCA AGC ACT GCC AGG CG-3' (配列番号12)
リバース: 5'-CAG GAG CCC TTG TCG GAT-3' (配列番号13)
【0099】
結果として、図2に示すように、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382及びKBL385株は、大腸菌と比較して、炎症性T細胞のエフェクター細胞マーカーであるT-bet、GATA3、及びRORγt遺伝子の発現レベルを有意に低いレベルで維持したが、LPSと同様に免疫恒常性を維持するためのTreg細胞のマーカー、FOXP3のmRNAを有意に増加させたことが確認された。
【0100】
実施例3. T細胞免疫調節に対するラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株の効果の検証(インビトロテスト)
一方、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株によるT細胞免疫調節性効果を検証するために、T細胞がPBMC細胞において活性化され、次いでその後前記パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株で処理されたときの炎症性サイトカインの発現レベルを検証した。
【0101】
PBMC細胞を、T細胞を活性化するための抗CD3抗体(1μg/mL、ebioscience)と共に96ウェルプレートの各ウェルに2×105細胞ずつ播種し、次いでラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384又はKBL385株を、生細胞数に基づき1×107細胞ずつ添加して「細菌:PBMC=50:1」とした。対照として大腸菌K12 (ATCC 10798)を、生細胞数に基づき1×107細胞ずつ各ウェルに添加した。上記の条件下で調製したT細胞活性化PBMC細胞のテスト群を3日間インキュベートした後、上清を回収し、BD cytometric Bead Array (CBA)ヒト炎症キット(カタログ番号551811)を使用して製造者の方法に従って、各サイトカインの量を測定した。
【0102】
結果として、図3に示すように、抗CD3抗体の添加によりT細胞が活性化されたPBMC細胞系では、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株は全て、大腸菌添加株及びPBSのみで処理したテスト群と比較して、Th1のサイトカインであるIL-2、それぞれIFNγ及びTh2のサイトカインであるIL-4及びIL-13、並びにTh17のサイトカインであるIL-17Aの発現を有意に減少させたが、抗炎症性サイトカインIL-10は、実験で使用した3つのラクトバチルス・パラカゼイ株の全てにおいて、PBSのみで処理したテスト群と比較して著しく増加した; 3つのうち、特にKBL 382株は、大腸菌添加群と比較してIL-10を有意に増加させたことが確認された。上記のような実験結果により、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株は全て、T細胞の炎症性サイトカインを有意に減少させ、抗炎症性サイトカインを増加させるという結論に至った。
【0103】
実施例4. 腸炎軽減効果に対するラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株の効果の検証(インビボテスト)
本例は、ラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384及びKBL385株がインビボでも腸機能改善効果を示すかどうかを確認するためであった。この目的のために、C57BL/6マウスを各10匹の群に分け、次いで2% DSSをその中に溶解させた水道水を9日間与え、それにより腸炎を誘導した。同時に、対照群のマウスにPBS 200μLを毎日経口投与し、テスト群のマウスには、毎日投与量を4×109CFUに設定できるように2×1010CFU/mLまでPBSに希釈したラクトバチルス・パラカゼイKBL382、KBL384又はKBL385株の各々200μLを、経口投与により毎日提供した。次いで、DSSによって腸炎を誘導した9日の間、対照群及びテスト群のマウスの体重変化を毎日測定し、DSSを供給した9日後にマウスを剖検に供して結腸の長さを測定した。
【0104】
結果として、図4に示すように、体重変化に関して、KBL382、KBL384及びKBL385株で処理した群は全て、処理なしの対照群のマウスと比較して、体重減少の軽減に対する有意な効果を示した;結腸の長さの変化に関して、結腸の長さの減少幅は、対照群のマウスと比較して3つの株の群全てで有意に改善したことが確認された。
【0105】
更に、H&E染色を行って、KBL382及びKBL385株のテスト群における炎症の程度を測定し、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを組織で測定した。剖検後、結腸の病変をH&E染色によって調べるために、結腸の遠位部分を10%中性ホルマリン溶液で固定し、次いでパラフィン組織標本を5μmの厚さで薄切し、ヘマトキシリン&エオシンで染色し、光学顕微鏡で観察した。更に、MPO測定のために、結腸組織をまず、プロテアーゼインヒビターを添加したRIPA緩衝液に入れ、ホモジナイザーで破壊した。破壊した組織を4℃、15,000×gで10分間遠心分離した後、ELISAキット(Hycult Biotech社、MPO、Mouse、カタログHK210-02)のプロトコルに従って、上清を使用してMPOを測定した。
【0106】
結果として、図4に示すように、2つの株、KBL382及びKBL385を投与したテスト群は全て、対照群と比較して炎症を軽減し、MPOのレベルはKBL385テスト群でわずかに減少し、KBL382テスト群で有意に減少したことがH&E染色結果により確認された。故に得られた結腸組織を使用して、腸管壁のタイトジャンクションに対する強化効果を確認した。
【0107】
実施例5. 腸管壁タイトジャンクションの強化に対するラクトバチルス・パラカゼイKBL382及びKBL385株の効果
腸管壁タイトジャンクションの強化に対するラクトバチルス・パラカゼイKBL382及びKBL385株の効果を検証するために、腸管壁タイトジャンクションに関与する遺伝子のmRNA発現レベルを、実施例4において単離したマウス結腸組織から単離した細胞で比較し、測定した。遺伝子発現量をチェックするために、RNAをまずeasy-spin(商標) (DNAフリー) Total RNA Extraction Kit (Intron社)を使用して組織から抽出し、次いでcDNAをHigh Capacity RNA-to-cDNAキット(ThermoFisher社)で合成した。Rotor-gene SYBR green PCRキット(Qiagen社)を使用して、腸管壁タイトジャンクションマーカータンパク質であるzonula occluden-1 (ZO-1)、クローディン3及びMUC-4のmRNA発現レベルをRotor-Gene (登録商標) Q (Qiagen社)によりインビボで測定した。ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子の発現レベルを対照として測定して、各テスト群間の相対的な遺伝子発現レベルを正規化した。発現を確認するのに使用するプライマーを、各遺伝子に特異的に結合できるように以下のように調製する。
Zo-1
Fw: 5'-ACC CGA AAC TGA TGC TGT GGA TAG-3' (配列番号14)
Rw: 5'-AAA TGG CCG GGC AGA ACT TGT GTA-3' (配列番号15)
クローディン3
Fw: 5'-CAG ACG TCC GTC AGT TTT CG-3' (配列番号16)
Rw: 5'-CAT GGC TGC TGG ACT TGA AC-3' (配列番号17)
MUC-4
Fw: 5'-GTC TCC CAT CAC GGT TCA GT-3' (配列番号18)
Rw: 5'-TGT CAT TCC ACA CTC CCA GA-3' (配列番号19)
HPRT
Fw: 5'-TTA TGG ACA GGA CTG AAA GAC-3'' (配列番号20)
Rw: 5'-GCT TTA ATG TAA TCC AGC AGG T-3'' (配列番号21)
【0108】
結果として、図5に示すように、KBL382及びKBL385株を投与したマウスで測定した3つの遺伝子のレベルは、PBSのみを投与した対照群と比較して増加し、それにより腸管壁タイトジャンクションが回復されることが見出された;したがって、前記株は、IBD及びIBS等の疾患を治療するのに使用することができる。
【0109】
実施例6. 腸炎の治療抗体とKBL382の間の腸炎軽減効果の比較
インフリキシマブ(製品名レミケード)は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、成人のクローン病、小児のクローン病、乾癬、及び乾癬性関節炎等の自己免疫疾患に対する注射として使用される治療組換え抗体薬である。この試験の目的は、KBL 382株とインフリキシマブの間で腸疾患症状のインビボでの軽減に対する効果の違いを確認することであった。
【0110】
効果の比較のために、C57BL/6マウスを8匹の群に分けた後、2% DSSをその中に溶解させた水道水をマウスに9日間与え、腸炎を誘導した。同時に、PBS 200μLを対照群のマウスに毎日経口投与し、一方、毎日投与量を4×109CFUに設定できるように2×1010CFU/mLまでPBSに希釈したKBL382株200μLを、テスト群のマウスに毎日経口投与した。治療抗体投与群に、インフリキシマブ抗体を1匹あたり5mg/kgの用量となるように3日目に1回投与した。
【0111】
その後、DSSによって腸炎を誘導した9日の間、対照群及びテスト群のマウスの体重変化を毎日測定し、DSSを供給した9日後にマウスを剖検に供して結腸の長さを測定した。
【0112】
結果として、図6(A)に示すように、結腸の長さの変化に関して、結腸の長さの減少幅は、対照群のマウスと比較して、KBL382株を処理した群及びインフリキシマブを投与した群で有意に改善したことが確認された。KBL382株を処理した群の結腸の長さを改善する効果は、インフリキシマブを投与した群と類似していた、又はむしろ高かったことが確認された。
【0113】
体重の変化に関して、図6(B)に示すように、体重減少に対する効果は、処理なしの対照群のマウスと比較して、KBL382株を処理した群及びインフリキシマブを投与した群で有意に改善した。投与後5日間の初期の体重減少を軽減する効果は、KBL382株を処理した群よりインフリキシマブを投与した群で優位であったが、後にインフリキシマブによる改善効果は減少し、一方、体重減少に対するKBL382株処理群の効果は増加し、9日目まで2群間で類似の効果を示したことが確認された。したがって、炎症性腸疾患及び過敏性腸症候群の治療のための前記株の使用に関して、市販の治療抗体と同様の治療効果が期待できることが確認された。
【0114】
実施例7. アトピー状態の軽減に対するKBL382の効果
KBL382株のアトピー軽減に対する効果を検証するために、アトピー皮膚疾患の動物モデル、NC/Ngaマウスモデルを使用した。
【0115】
NC/Ngaマウスを9匹の群に分けた後、各マウスの背面を耳下方から尾部上方まで脱毛し、マウスを24時間放置した。次いで、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)エキス(DFE)、イエダニ(HDM)抗原を含む軟膏を、各マウスがDFE 100mgで処理され、それによりアトピー性皮膚炎を誘導し得るように、週1回又は2回、7週間脱毛部分に塗布した。皮膚炎誘導の第3週から、PBS 200μLを対照群のマウスに毎日経口投与した;少なくとも1×109CFU/匹となるようにPBS 200μLに希釈したKBL382株及びラクトバチルス・ラムノサスKBL365株の各々を、テスト群のマウスに毎日200μLずつ経口投与した。次いで、細菌の投与の4週間の間、対照群及びテスト群のマウスの皮膚炎スコアを毎週測定し、細菌の投与の第4週後に、マウスの擦過時間及び皮膚の厚み、並びにマウスの剖検を行った後の血中IgE濃度を測定した。
【0116】
7-1.皮膚炎スコアの評価
DFE誘導皮膚病変を評価するために、以下の方法により皮膚炎スコアを測定した。株を投与して以降、第3週から1週間隔で4週間撮影して皮膚状態をモニターした。皮膚の乾燥度、浮腫、紅斑/出血、及びびらん/表皮剥離の4つの指標をチェックした。合計スコアを、病変なし0点、軽度1点、中程度2点、及び重度3点で評価した。
【0117】
結果として、図7(A) に示すように、皮膚炎スコアは、アトピー性皮膚炎を誘導した対照群(陰性)、及びKBL365株を投与した群と比較してKBL382株を投与した群で有意に低下した。結果として、KBL382株の摂取によるアトピー性皮膚炎スコアを軽減する効果を検証した。
【0118】
7-2.掻痒症状の軽減に対する効果
DFEによって誘導されたアトピー性皮膚炎に罹患しているマウスモデルにおいてKBL382株の投与による掻痒の軽減に対する効果を検証するために、株投与の4週後に10分間、引っ掻き傷の数をマウスについて測定した。
【0119】
結果として、図7(B)に見られるように、引っ掻き傷の数は、PBS投与群と比較して、KBL382を投与したテスト群で有意に低減したようであった。これは、アトピー性皮膚炎の掻痒症状がKBL382株の投与により軽減したことを確認するものであった。
【0120】
7-3.皮膚の厚みの減少
DFEによって誘導されたアトピー性皮膚炎に罹患しているマウスモデルへのKBL382の投与後の皮膚の厚みを減少させる効果を検証するために、株を投与した4週後にマウスの耳の厚さ及び背部皮膚の厚さをノギスで測定し、アトピー性皮膚炎による浮腫症状の緩和を観察した。結果として、図7(C)に見られるように、KBL382を投与したテスト群では、対照群及びKBL365投与群と比較して、耳及び皮膚の厚みが有意に低減したことが観察された。
【0121】
7-4.血中IgE濃度の減少
アトピー性皮膚炎を有する患者のIgEの濃度は、アトピー性皮膚炎の臨床的重症度が増加するにつれて主に増加していることが見出されている(Matsumoto M、J. Immunol. 1999)。故に、アトピー性皮膚炎が生じるにつれて現れる代表的な血液学的因子、IgEの濃度を、株を投与した3週間後に血液を回収し、そこから血清を分離し、Mouse IgE ELISA Set (カタログ番号555248、BD OptEIA(商標))を使用して測定した。結果として、図7(D)に示すように、血中IgEの濃度は、KBL382を経口投与したテスト群で有意に減少したことが見出された。これは、KBL382の摂取後のアトピー性皮膚炎の治療効果を示した。
【0122】
本発明の特定の態様が上記に詳細に記載されてきた。これらの特定の態様は、好ましい実施形態にすぎず、本発明の範囲はそれにより限定されないことが当業者には明らかである。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲の同等物と共に、以下の特許請求の範囲によって実質的に定義される。
【0123】
寄託機関の名称:韓国生命工学研究院(Korea Research Institute of Bioscience & Biotechnology)
受託番号: KCTC13509BP
受託日: 20180417
【0124】
寄託機関の名称: 韓国生命工学研究院
受託番号: KCTC13510BP
受託日: 20180417
【0125】
寄託機関の名称:韓国生命工学研究院
受託番号: KCTC13511BP
受託日: 20180417
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によるラクトバチルス・パラカゼイKBL382 (受託番号KCTC13509BP)、ラクトバチルス・パラカゼイKBL384 (受託番号KCTC13510BP)、及びラクトバチルス・パラカゼイKBL385 (受託番号KCTC13511BP)の株は、抗炎症性及び免疫調節性機能に優れ、腸管壁のタイトジャンクションに対する卓越した強化効果を有し、腸炎誘発性体重減少及び結腸の長さの減少を抑制し、それによって腸炎に対する治療効果を示し、細胞(celss)のアレルギー反応を弱め、アトピー性皮膚炎の症状を有意に軽減し、それによってアレルギー性疾患の改善を提供する。したがって、単一株により、抗炎症効果の増強、免疫の強化、腸の健康機能の改善、アレルギー性疾患の軽減を達成することができ、故にプロバイオティクス材料として有用であり得る。
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
配列表フリーテキスト
配列表の電子ファイルが添付される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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