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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】車両用内装材、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20220810BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
B60R13/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020215808
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022091084
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】510206039
【氏名又は名称】スミノエ テイジン テクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】國田 敏一
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-326598(JP,A)
【文献】特開2019-077040(JP,A)
【文献】特開2016-147432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/04
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布帛層とクッション層とが積層一体化された複合シートにエンボス模様が形成された車両用内装材であって、
前記エンボス模様の凹部の繊維布帛層の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ複合シートの厚み変化率が30%以上であることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
繊維布帛層とクッション層とが積層一体化された複合シートにエンボス模様を形成する車両用内装材の製造方法であって、
表面に型押凸部が突設されたエンボスロールと表面が金属製のバックアップロールとの間に前記複合シートの繊維布帛層側を前記エンボスロール側にして供給して、エンボスロールとバックアップロールとの間で前記複合シートを加熱押圧する加熱押圧工程を備え、
前記加熱押圧工程では、前記エンボスロールは40℃から105℃の温度範囲であり、前記バックアップロールは200℃から235℃の温度範囲であり、かつ
前記エンボスロールの温度が前記バックアップロールの温度より100℃以上低いことを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
前記加熱押圧工程において、前記エンボスロールに対する前記バックアップロールのロールの表面速度比が1.0~1.05である請求項2に記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項4】
前記加熱押圧工程において、前記複合シートのエンボス模様の凹部の繊維布帛層の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ
複合シートの厚み変化率が30%以上である請求項2又は3に記載の車両用内装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にシートやドアに使用される積層シート材にエンボス模様が形成された車両用内装材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内装材として、繊維布帛の表面にエンボス模様を形成したものが広く知られている。例えば特許文献1には、織物、編物、不織布等の繊維布帛からなる表地と、ポリウレタンフォーム材等からなるクッション層とを積層一体化した複合シートを、エンボス模様を深くはっきりと形成させるために加熱温度を共に100℃~250℃の範囲に加熱したエンボスロールとヒートロールとの間でエンボス加工する車両の座席用表皮材の製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、エンボスロールの凸状の型部にスリットと段差を設けることで、表層布帛との接地面を減少させ、繊維布帛のテカリをおさえることが提案されているが、複雑な形状のエンボスロールが必要となる。また、エンボスロールの凸状の型部の突起は平滑であることから加熱押し圧した場合には繊維布帛のテカリを抑えることは十分とは言えない。
【0004】
ところで、近年のデザインニーズにより深くやわらかいエンボス模様が求められている。すなわち、クッション層に凹凸形状を賦形することで繊維布帛の表面にはやわらかい意匠表現を実現するといった要望が高まっている。なお、本願において「やわらかい」と「マイルド」とは、「エンボス模様がはっきりとした」、「エンボス模様がシャープ」の反対の意味で用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-276285号公報
【文献】特開2020-142402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のようにエンボスロールとヒートロールを共に100℃~250℃の範囲に加熱したエンボスロールとヒートロールとの間でエンボス加工を施すと繊維布帛の表面にエンボス模様を深くはっきりと形成することはできるものの、深くやわらかいエンボス模様を形成することはできなかった。
【0007】
一方、この問題を解決するためにエンボスロールとヒートロールをより低温に設定しても、エンボス模様が中途半端に弱くなるばかりで深くやわらかいエンボス模様を形成することはできないといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、繊維布帛層の表面にエンボス模様のやわらかい意匠表現を有する車両用内装材を提供すること、及びクッション層に凹凸形状を賦形することで繊維布帛層のダメージ(潰れ)を軽減し、繊維布帛層の表面にはやわらかい意匠表現を付与できる車両用内装材の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]繊維布帛層とクッション層とが積層一体化された複合シートにエンボス模様が形成された車両用内装材であって、
前記エンボス模様の凹部の繊維布帛層の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ複合シートの厚み変化率が30%以上であることを特徴とする車両用内装材。
【0012】
[2]繊維布帛層とクッション層とが積層一体化された複合シートにエンボス模様を形成する車両用内装材の製造方法であって、
表面に型押凸部が突設されたエンボスロールと表面が金属製のバックアップロールとの間に前記複合シートの繊維布帛層側を前記エンボスロール側にして供給して、エンボスロールとバックアップロールとの間で前記複合シートを加熱押圧する加熱押圧工程を備え、
前記加熱押圧工程では、前記エンボスロールは40℃から105℃の温度範囲であり、前記バックアップロールは200℃から235℃の温度範囲であり、かつ
前記エンボスロールの温度が前記バックアップロールの温度より100℃以上低いことを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【0013】
[3]前記加熱押圧工程において、前記エンボスロールに対する前記バックアップロールのロールの表面速度比が1.0~1.05である前項2に記載の車両用内装材の製造方法。
【0014】
[4]前記加熱押圧工程において、前記複合シートのエンボス模様の凹部の繊維布帛層の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ
複合シートの厚み変化率が30%以上である請求項2又は3に記載の車両用内装材の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、繊維布帛層とクッション層とが積層一体化された複合シートにエンボス模様が形成された車両用内装材において、エンボス模様の凹部の繊維布帛層の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ複合シートの厚み変化率が30%以上であることから、繊維布帛層の表面にエンボスロールの凸形状を転写するというよりも、クッション層に凹凸形状が賦形されクッション層の凹凸形状に引っ張られた繊維布帛には表面にやわらかい意匠表現を有する車両用内装材とすることができる。
【0016】
[2]の発明では、繊維布帛の表面にエンボスロールの凸形状を転写するというよりも、クッション層に凹凸形状を賦形することでどちらかというとクッション層の凹凸形状に引っ張られた繊維布帛には表面にやわらかい意匠表現を出現させることができる。
【0017】
[3]の発明では、エンボスロールに対するバックアップロールのロールの表面速度比を1.0~1.05の範囲にすることで、クッション層がバックアップロールの回転により同調または押し込まれるためにクッション層に凹凸形状を賦形することができる。
【0018】
[4]の発明では、前記複合シートのエンボス模様の凹部の繊維布帛層の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ複合シートの厚み変化率が30%以上とすことから、維布帛層の表面にエンボスロールの凸形状を転写するというよりも、クッション層に凹凸形状が賦形されクッション層凹凸形状に引っ張られた繊維布帛には表面にやわらかい意匠表現を賦形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る車両用内装材の一実施形態を示す模式的平面図である。
図2図1に示す車両用内装材の模式的A-A断面図である。
図3】本発明に係る車両用内装材における厚み変化率の説明図である。
図4】従来の車両用内装材の一例を示す模式図である。
図5】本発明の車両用内装材の製造方法で用いるロールエンボス装置の一例を示す模式図である。
図6】実施例1の車両用内装材の断面写真である。
図7】比較例4の車両用内装材の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
次に、本発明に係る車両用内装材の一実施形態について図1図3を参照しつつ説明する。
【0020】
本発明に係る車両用内装材1は、繊維布帛層2とクッション層3とが積層一体化された複合シート4にエンボス模様が形成された車両用内装材であって、前記エンボス模様の凹部5の繊維布帛層2の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ複合シート4の厚み変化率が30%以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明の繊維布帛層2としては、特に限定されず、例えば織物、編物、不織布を挙げることができる。なお、繊維布帛層2を構成する繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の合成繊維、木綿、レーヨン繊維を挙げることができる。これらを適宜組み合せてもよい。
【0022】
本発明のクッション層3としては、軟質ウレタンフォームが好ましく、軟質ウレタンフォームは、クッション性が良好な範囲で密度、硬さ、厚さを選ぶことができる。密度は15Kg/m~45Kg/mの範囲、硬さは60N~180Nの範囲、厚さは1mm~10mmの範囲が好ましい。なお、良好な工程通過性と裁断縫製等の作業性が向上することから、軟質ウレタンフォームは裏基布として裏面に丸編地を積層されたものが好ましい。
【0023】
本発明において、複合シート4は繊維布帛層2とクッション層3とが積層一体化されたものである。積層一体化する方法は特に限定されないが、接着剤を用いてもフレームラミネート法によって行っても良い。なかでも接着強度の点からフレームラミネート法により行うのが好ましく、エンボス模様が形成された状態での繊維布帛層2とクッション層3の一体化の強度を一段と向上させることができる。
【0024】
本発明において、エンボス模様の凹部5の繊維布帛層2の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ複合シート4の厚み変化率が30%以上である。ここで、図3に示すようにエンボス模様の凹部5の繊維布帛層2の厚み変化率と複合シート4の厚み変化率は、エンボス模様の凸部6の繊維布帛層2の厚さをT、エンボス模様の凹部5の繊維布帛層2の厚さをT、エンボス模様の凸部6の複合シート4の厚さをH、エンボス模様の凹部5の複合シート4の厚さをHとすると、それぞれ次の式で算出される。なお、厚みについては、各断面をマイクロスコープ(HOZAN L-KIT581)を用いて測定した。
エンボス模様の凹部5における繊維布帛層2の厚み変化率(%)=100×(T-T)/T
エンボス模様の凹部5における複合シート4の厚み変化率(%)=100×(H-H)/H
【0025】
このような構成を採用することで、本発明の車両用内装材1は、繊維布帛層2の表面にエンボスロールにより凹凸形状が転写されたというよりも、むしろ凹凸形状が賦形されたクッション層3の凹凸形状に引っ張られた繊維布帛層2の表面にやわらかい意匠表現を有する車両用内装材とすることができる。すなわち、本発明の車両用内装材1のエンボス模様は、クッション層3に賦形された凹凸形状に追従して繊維布帛層2にもエンボス模様として発現したもので、金型の凹凸がそのまま転写した様な深くはっきりと形成された従来のエンボス模様とは異なり、ふんわりとしたやわらかい意匠となる。
【0026】
エンボス模様の凹部5の繊維布帛層2の厚み変化率を20%以上50%以下、かつ複合シート4の厚み変化率を30%以上とすることで、繊維布帛層2の厚み変化率よりも複合シート4の厚み変化率の方が一段と大きく、繊維布帛層2がクッション層3の凹凸形状によって確実に引っ張られたやわらかい意匠表現を有する車両用内装材1とすることができる。なお、より好ましくはエンボス模様の凹部5の繊維布帛層2の厚み変化率は20%~50%の範囲、かつ複合シート4の厚み変化率は30%~70%の範囲である。
【0027】
一方、図4に示すように従来の車両用内装材ではエンボス模様がよりシャープであり、本願発明とは明らかに異なり、本発明の意匠表現を有しているとは言い難い。
【0028】
次に、本発明の車両用内装材1の製造方法の一例について図1~2、図5を参照しつつ説明する。
【0029】
本発明に係る車両用内装材1の製造方法は、繊維布帛層2とクッション層3とが積層一体化された複合シート4にエンボス模様を形成する車両用内装材1の製造方法であって、表面に型押凸部が突設されたエンボスロール8と表面が金属製のバックアップロール9との間に複合シート4の繊維布帛層2側をエンボスロール8側にして供給して、エンボスロール8とバックアップロール9との間で複合シート4を加熱押圧する加熱押圧工程を備え、前記加熱押圧工程では、エンボスロール8は40℃から105℃の温度範囲であり、バックアップロール9は200℃から235℃の温度範囲であり、かつエンボスロール8の温度がバックアップロール9の温度より100℃以上低いことを特徴とする。
【0030】
ロールエンボス装置の一例を図5に示す。ロールエンボス装置7を用いて複合シート4にエンボス模様を形成するには、回転可能に設けられたエンボスロール8と、エンボスロール8(表面に突設された型押凸部は図示していない。)に対向して回転可能に設けられたバックアップロール9との間に、複合シート4を供給し、繊維布帛層2をエンボスロール8の側にして通過させればよい。図5に示すように複合シート4がバックアップロール9に巻き付きながらエンボスロール8とバックアップロール9との間に供給されてもよい。こうすることで複合シート4の送り込みが安定するので好ましい。
【0031】
図5には図示していないが、エンボスロール8とバックアップロール9にはそれぞれ加熱手段を備えている。そして、エンボスロール8は表面に型押凸部が突設され、バックアップロール9は表面が金属製である。熱伝導性が良好なことからエンボスロール8及びバックアップロール9の材質は炭素鋼でS25CもしくはS45Cが好ましい。なお、エンボスロール8の温度は、バックアップロール9の温度より100℃以上低く設定され、供給された複合シート4はエンボスロール8とバックアップロール9との間で加熱押圧される。
【0032】
前記加熱押圧工程では、エンボスロール8の温度をバックアップロール9の温度より100℃以上低く設定する。100℃以上低く設定することで、複合シート4の繊維布帛層2よりも裏面側のクッション層3が凹凸形状となりエンボスロール8とバックアップロール9による加熱押圧から解放されたのちクッション層3の凹凸形状に引っ張られた繊維布帛層2の表面にやわらかい意匠表現を出現させることができる。また、複合シート4のエンボス模様の凹部5の繊維布帛層2の厚み変化率が20%以上50%以下であり、かつ複合シート4の厚み変化率が30%以上とすることから、繊維布帛層2の表面にエンボスロール8の凸形状を転写するというよりも、クッション層3に凹凸形状が賦形されクッション層3の凹凸形状に引っ張られた繊維布帛2には表面にやわらかい意匠表現を賦形することができる。
【0033】
エンボスロール8には、突設された型押凸部の数は特に限定されないが、複数が好ましい。また、型押凸部の高さ、型押凸部同士の間隔、型押凸部大きさは特に限定されない。もちろん、突設された型押凸部はライン状の連続線の形状でもよい。また、形成するエンボス模様にもよるが、型押凸部の高さは複合シート4の総厚みよりも+1.0mm~+5.0mmの範囲が好ましく、型押凸部同士の間隔は複合シート4の総厚みよりも+1.0mm~+50.0mmの範囲が好ましい。この範囲にすることで、エンボス模様をより明確にふっくらさせることができるので好ましい。
【0034】
この製造方法によれば、繊維布帛2の表面にエンボスロール8により凸形状を転写するというよりも、クッション層3に凹凸形状を賦形することでどちらかというとクッション層3の凹凸形状に引っ張られた繊維布帛2には表面にやわらかい意匠表現を出現させることができる。すなわち、本発明の車両用内装材1のエンボス模様は、クッション層3に賦形された凹凸形状に追従して繊維布帛層2にもエンボス模様として発現したもので、金型の凹凸がそのまま付いた様な深くはっきりと形成された従来のエンボス模様とは異なり、ふんわりとしたやわらかい意匠である。
【0035】
前記加熱押圧工程において、クッション層3がバックアップロール9の回転により同調または押し込まれるためにクッション層3に凹凸形状を賦形することができることから、エンボスロール8に対するバックアップロール9のロールの表面速度比が1.0~1.25の範囲が好ましい。表面速度比が1.0より小さいと、やわらかな凹凸形状が弱まり、平坦になるおそれがあり、逆に表面速度比が1.25を超えると、バックアップロール9から浮き上がり、複合シート4にシワが発生する恐れがあるので好ましくない。表面速度比が1.0~1.05の範囲がさらに好ましい。
【0036】
前記加熱押圧工程において、クッション層3により確実に凹凸形状を賦形することができることから、エンボスロール8は40℃から105℃の温度範囲で、バックアップロール9は200℃から235℃の温度範囲が好ましい。エンボスロール8の温度が40℃よりも低いとエンボス模様が明確にならないおそれがあり、エンボスロール8の温度が105℃よりも高いと繊維布帛層2に鋭い凹部が発生するおそれがあるので好ましくない。バックアップロール9の温度が200℃よりも低いと十分にクッション層3を賦形することが困難になるおそれがあり、バックアップロール9の温度が235℃よりも高いとクッション層3の裏面が熔融し、バックアップロール9に融着するおそれがあるので好ましくない。
【0037】
また、エンボスロール8とバックアップロール9との間の圧力は2~60kg/cmの条件の範囲で、複合シート4の通過速度は0.1~5m/分の範囲で行うのが好ましい。この圧力と通過速度の範囲にすることで、やわらかい明瞭なエンボス模様の形成がより安定するので好ましい。
【実施例
【0038】
次に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに特に限定されるものではない。
【0039】
<使用材料他>
繊維布帛層:織物(厚さ1.0mm)
クッション層:軟質ウレタンフォーム(密度20Kg/m、厚さ5mm、株式会社イノアックコーポレーション製 商品名EL67)
クッション層の裏基布:丸編地(目付40g/m
複合シート:上記繊維布帛層にクッション層をフレームラミネーション法により積層一体化(総厚6.0mm)
【実施例1】
【0040】
図5に示すようなロールエンボス装置7を用いて、あらかじめ用意した上述の複合シートにエンボス模様を形成した。すなわち、エンボスロール8に対するバックアップロール9のロールの表面速度比を1.0、複合シートの通過速度を2m/分に設定し、表面温度が100℃のエンボスロール8と表面温度が230℃のバックアップロール9との間で複合シートを50Kg/cmの圧力で加熱押圧して複合シートにエンボス模様を形成し、車両用内装材を得た。得られた車両用内装材のエンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は25%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は38%であった。なお、図6は得られた車両用内装材の断面写真である。車両用内装材のエンボス模様の評価は「○」、凹部の評価は「◎」であった。
【実施例2】
【0041】
実施例1において、エンボスロール8に対するバックアップロール9のロールの表面速度比を1.05とした以外は実施例1と同様にして車両用内装材を得た。車両用内装材のエンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は30%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は45%であった。バックアアップロール9を送り込むことで、やわらかな凹凸感が向上し、得られた車両用内装材のエンボス模様の評価は「◎」、凹部の評価は「◎」であった。
【実施例3】
【0042】
実施例1において、エンボスロール8に対するバックアップロール9のロールの表面速度比を1.10とした以外は実施例1と同様にして車両用内装材を得た。車両用内装材のエンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は30%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は52%であった。バックアアップロール9を送り込むことで、やわらかな凹凸感が向上し、得られた車両用内装材のエンボス模様の評価は「◎」、凹部の評価は「◎」であった。
【実施例4】
【0043】
実施例1において、エンボスロール8に対するバックアップロール9のロールの表面速度比を1.20とした以外は実施例1と同様にして車両用内装材を得た。車両用内装材のエンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は34%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は65%であった。バックアアップロール9を送り込むことで、やわらかな凹凸感が向上し、得られた車両用内装材のエンボス模様の評価は「◎」、凹部の評価は「◎」であった。
【実施例5】
【0044】
実施例1において、エンボスロール8の表面温度を60℃にした以外は実施例1と同様にして車両用内装材を得た。車両用内装材のエンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は22%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は32%であった。繊維布帛層の厚み変化率は実施例1のものより減少した。すなわち、やわらかい凹凸感は減少したが、得られたエンボス模様の評価は「○」、凹部の評価は「◎」であった。
【0045】
<比較例1>
実施例1において、エンボスロール8の表面温度を190℃、バックアップロール9の表面温度を100℃にした以外は実施例1と同様にした。エンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は82%、エンボス模様の凹部における複合シート材の厚み変化率は15%であった。エンボス模様の評価は、「××」、凹部の評価は「×」であった。
【0046】
<比較例2>
実施例1において、エンボスロール8の表面温度を120℃にした以外は実施例1と同様にした。エンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は56%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は38%であった。エンボス模様の評価は「×」、凹部の評価は「△」であった。
【0047】
<比較例3>
実施例1において、エンボスロール8の表面温度を120℃にし、エンボスロール8に対するバックアップロール9の表面速度比を1.10にした以外は実施例1と同様にした。エンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は63%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は54%であった。エンボス模様の評価は「×」、凹部の評価は「△」であった。
【0048】
<比較例4>
実施例1において、エンボスロール8の表面温度を150℃にし、エンボスロール8に対するバックアップロール9の表面速度比を1.10にした以外は実施例1と同様にした。エンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は70%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は56%であった。なお、図7は比較例4の断面写真である。エンボス模様の評価は「×」、凹部の評価は「×」であった。
【0049】
<比較例5>
実施例1において、エンボスロール8の表面温度を180℃にし、エンボスロール8に対するバックアップロール9の表面速度比を1.10にした以外は実施例1と同様にした。エンボス模様の凹部における繊維布帛層の厚み変化率は75%、エンボス模様の凹部における複合シートの厚み変化率は68%であった。エンボス模様の評価は「×」、凹部の評価は「×」であった。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から明らかなように、実施例1~5の車両用内装材は、繊維布帛層の表面が過度に圧縮されておらず、クッション層に凹凸形状が賦形されたものなので、やわらかいエンボス模様の意匠表現を有していた。しかも、実施例2~4の車両用内装材はバックアップロール9を送り込み凹凸形状が賦形されたものなので、さらに大きく明瞭なやわらかなエンボス模様を有していた。
【0052】
一方、比較例1~4では、繊維布帛層も加熱圧縮されたうえ、繊維布帛層に凹凸形状が賦形されたもので、従来通りのエンボス模様が深くはっきりした凹凸形状であり、やわらかなエンボス模様ではなかった。
【0053】
<外観評価法(エンボス模様)>
エンボス模様を上にして机に並べた後、エンボス模様の真上からと斜め45度の方向から、凹凸形状を比較例1と比べて目視観察し、次の基準で評価した。判定の「○」以上を合格とした。
(判定基準)
「◎」:凹凸形状がマイルドで、複合シート全体は凹凸形状が大きく明瞭である。
「○」:凹凸形状がマイルドで、複合シート全体は凹凸形状もある。
「△」:凹凸形状がマイルドで、複合シート全体は凹凸形状が小さい。
「×」:凹凸形状がシャープで、複合シート全体は凹凸形状もある。
「××」:凹凸形状がシャープで、複合シート全体は凹凸形状が小さい。
【0054】
<外観評価法(凹部)>
エンボス模様の凹部における繊維布帛層の繊維のダメージ(潰れ)の有無を比較例1と比べて目視観察し、次の基準で評価した。判定の「○」以上を合格とした。
(判定基準)
「◎」:繊維に潰れが認められない。
「○」:繊維に潰れはほとんど認められない。
「△」:繊維に潰れが認められる。
「×」:繊維に潰れが明らかに認められる。
【0055】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る車両用内装材は、主にシートやドアに好適に使用できる。また、複合シート材にエンボス模様を形成する製造方法として好適である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・車両用内装材
2・・・繊維布帛層
3・・・クッション層
4・・・複合シート
5・・・エンボス模様の凹部
6・・・エンボス模様の凸部
7・・・ロールエンボス装置
8・・・エンボスロール
9・・・バックアップロール
・・・エンボス模様の凸部の繊維布帛層2の厚さ
・・・エンボス模様の凹部の繊維布帛層2の厚さ
・・・エンボス模様の凸部の複合シート4の厚さ
・・・エンボス模様の凹部の複合シート4の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7