(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】同期電動機の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20220810BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220810BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20220810BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 F
H02P6/08
(21)【出願番号】P 2017176701
(22)【出願日】2017-09-14
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【氏名又は名称】鳥居 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【氏名又は名称】松川 克明
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】丸山 真
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-259575(JP,A)
【文献】特開2013-230052(JP,A)
【文献】特開2014-207765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00- 31/00
H02P 6/00- 6/34
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期電動機の駆動を制御する同期電動機の制御装置であって、
入力指令に基づいて、PWM信号を生成するPWM信号生成部と、
前記入力指令に基づいて、矩形波信号を生成する矩形波信号生成部と、
前記同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部と、
少なくとも前記回転速度に応じて、前記PWM信号生成部によって生成された前記PWM信号、または、前記矩形波信号生成部によって生成された前記矩形波信号のいずれの信号を、前記同期電動機を駆動制御する際の制御信号として用いるかを判定する信号切替判定部と、
前記PWM信号及び前記矩形波信号のうち、前記信号切替判定部によって前記制御信号として用いると判定された信号を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する駆動制御部と、
前記入力指令に基づいて、前記PWM信号に対応する電圧指令を生成する電圧指令生成部と、
を備え、
前記信号切替判定部は、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記PWM信号によって駆動制御されるPWM駆動制御の場合には、前記回転速度が前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の回転速度の閾値である第1回転速度閾値以上の場合で且つ前記電圧指令の振幅が電圧指令振幅閾値以上の場合に、前記矩形波信号を前記制御信号として用いると判定し、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記矩形波信号によって駆動制御される矩形波駆動制御の場合には、前記回転速度が前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の回転速度の閾値である第2回転速度閾値よりも小さい場合に、前記PWM信号を前記制御信号として用いると判定する、
同期電動機の制御装置
。
【請求項2】
請求項
1に記載の同期電動機の制御装置において、
前記第1回転速度閾値は、前記第2回転速度閾値よりも大きい、
同期電動機の制御装置。
【請求項3】
同期電動機の駆動を制御する同期電動機の制御装置であって、
入力指令に基づいて、PWM信号を生成するPWM信号生成部と、
前記入力指令に基づいて、矩形波信号を生成する矩形波信号生成部と、
前記同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部と、
少なくとも前記回転速度に応じて、前記PWM信号生成部によって生成された前記PWM信号、または、前記矩形波信号生成部によって生成された前記矩形波信号のいずれの信号を、前記同期電動機を駆動制御する際の制御信号として用いるかを判定する信号切替判定部と、
前記PWM信号及び前記矩形波信号のうち、前記信号切替判定部によって前記制御信号として用いると判定された信号を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する駆動制御部と、
前記入力指令に基づいて、前記PWM信号に対応する電圧指令を生成する電圧指令生成部と、
を備え、
前記信号切替判定部は、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記PWM信号によって駆動制御されるPWM駆動制御の場合に
、前記回転速度が
前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の回転速度の閾値である第1回転速度閾値以上の場合で且つ前記電圧指令振幅が
前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の電圧指令振幅の閾値である第1電圧指令振幅閾値以上の場合に、前記矩形波信号を前記制御信号として用いると判定し、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記矩形波信号によって駆動制御される矩形波駆動制御の場合に
、前記回転速度が
前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の回転速度の閾値である第2回転速度閾値よりも小さい場合、または、前記電圧指令振幅が
前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の電圧指令振幅の閾値である第2電圧指令振幅閾値よりも小さい場合に、前記PWM信号を前記制御信号として用いると判定する、
同期電動機の制御装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の同期電動機の制御装置において、
前記第1回転速度閾値は、前記第2回転速度閾値よりも大きく、
前記第1電圧指令振幅閾値は、前記第2電圧指令振幅閾値よりも大きい、
同期電動機の制御装置。
【請求項5】
入力信号に基づいて生成されるPWM信号または矩形波信号を用いて、同期電動機の駆動を制御する同期電動機の制御方法であって、
前記同期電動機の回転速度を取得する回転速度取得工程と、
入力指令に基づいて、前記PWM信号に対応する電圧指令の振幅を取得する電圧指令振幅取得工程と、
少なくとも前記回転速度に応じて、前記PWM信号または前記矩形波信号のいずれの信号を、前記同期電動機を駆動制御する際の制御信号として用いるかを判定する信号切替判定工程と、
前記PWM信号及び前記矩形波信号のうち、前記信号切替判定工程で前記制御信号として用いると判定された信号を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する駆動制御工程と、
を有し、
前記信号切替判工程では、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記PWM信号によって駆動制御されるPWM駆動制御の場合には、前記回転速度が前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の回転速度の閾値である第1回転速度閾値以上の場合で且つ前記電圧指令の振幅が電圧指令振幅閾値以上の場合に、前記矩形波信号を前記制御信号として用いると判定し、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記矩形波信号によって駆動制御される矩形波駆動制御の場合には、前記回転速度が前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の回転速度の閾値である第2回転速度閾値よりも小さい場合に、前記PWM信号を前記制御信号として用いると判定する、
同期電動機の制御方法。
【請求項6】
入力信号に基づいて生成されるPWM信号または矩形波信号を用いて、同期電動機の駆動を制御する同期電動機の制御方法であって、
前記同期電動機の回転速度を取得する回転速度取得工程と、
入力指令に基づいて、前記PWM信号に対応する電圧指令の振幅を取得する電圧指令振幅取得工程と、
少なくとも前記回転速度に応じて、前記PWM信号または前記矩形波信号のいずれの信号を、前記同期電動機を駆動制御する際の制御信号として用いるかを判定する信号切替判定工程と、
前記PWM信号及び前記矩形波信号のうち、前記信号切替判定工程で前記制御信号として用いると判定された信号を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する駆動制御工程と、
を有し、
前記信号切替判工程では、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記PWM信号によって駆動制御されるPWM駆動制御の場合に、前記回転速度が前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の回転速度の閾値である第1回転速度閾値以上の場合で且つ前記電圧指令振幅が前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の電圧指令振幅の閾値である第1電圧指令振幅閾値以上の場合に、前記矩形波信号を前記制御信号として用いると判定し、
前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記矩形波信号によって駆動制御される矩形波駆動制御の場合に、前記回転速度が前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の回転速度の閾値である第2回転速度閾値よりも小さい場合、または、前記電圧指令振幅が前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の電圧指令振幅の閾値である第2電圧指令振幅閾値よりも小さい場合に、前記PWM信号を前記制御信号として用いると判定する、
同期電動機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期電動機の駆動を制御する制御装置及び同期電動機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同期電動機の駆動を制御する制御方法として、PWM信号を用いたPWM駆動制御と、パルス状の矩形波信号を用いた矩形波駆動制御とが知られている。PWM駆動制御では、同期電動機の制御装置から出力される正弦波の電圧波形の範囲内の電圧を、前記同期電動機に印加することができる。一方、矩形波駆動制御では、パルス状に同期電動機に電圧を印加するため、該同期電動機の制御装置に入力された最大電圧を、前記同期電動機に印加することができる。よって、一般的に、前記矩形波駆動制御における変調率は、前記PWM駆動制御における変調率よりも高い。
【0003】
同期電動機の電圧利用率を向上させるために、前記同期電動機の制御方法として、前記PWM駆動制御と前記矩形波駆動制御とを切り替える方法が用いられている。このように前記PWM駆動制御と前記矩形波駆動制御とを切り替える構成として、例えば、特許文献1から3のような構成が知られている。
【0004】
特許文献1には、交流電動機に供給される交流電流の電流位相に応じて、PWM電流制御と矩形波電圧位相制御とを切り替える交流電動機の駆動制御装置が開示されている。この特許文献1に開示されている駆動制御装置では、交流電流の電流位相を検出する必要があるため、電流センサ及び電流位相判定部が必要である。
【0005】
特許文献2には、モータのトルク指令値に基づいて、PWM制御とワンパルス制御とを切り替えるインバータ制御装置が開示されている。この特許文献2に開示されているインバータ制御装置では、電流センサで検出された電流から得られた値を、トルク指令値に対してフィードバックすることにより、モータをトルク指令値に従って駆動させるように駆動制御している。
【0006】
特許文献3には、電圧指令Dutyを用いて、PWM通電と矩形波通電とを切り替える電動機の駆動制御装置が開示されている。この特許文献3に開示されている駆動制御装置は、電流センサを用いずにPWM通電と矩形波通電との制御切替を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-218299号公報
【文献】特開2017-60367号公報
【文献】特開2014-207765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、同期電動機に供給される交流電流を検出するための電流検出器を設けずに、前記同期電動機の駆動制御の切替を行う制御装置が求められている。そのため、前記同期電動機の駆動制御として、電流検出が必要な上述の特許文献1、2のような駆動制御ではなく、上述の特許文献3のような駆動制御の適用が検討されている。
【0009】
しかしながら、前記特許文献3の駆動制御では、電圧指令Dutyのみを用いて、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とを切り替える。そのため、前記特許文献3の構成では、前記同期電動機の回転速度に応じて、前記PWM駆動制御及び前記矩形波駆動制御から適切な駆動制御を選択することができない。
【0010】
例えば、前記同期電動機の回転速度が大きい場合には、前記同期電動機で生じる誘起電圧の増大によって前記同期電動機に流せる電流が低下する。そのため、前記同期電動機の駆動制御に電圧利用率がより高い矩形波駆動制御を用いることが好ましい。しかしながら、前記同期電動機の回転速度に関係なく前記同期電動機の駆動制御を切り替える前記特許文献3の構成では、上述の場合に、矩形波駆動制御を用いることができない可能性がある。
【0011】
また、前記同期電動機の回転速度が小さい場合には、前記同期電動機に印加される電圧と前記同期電動機で生じる誘起電圧との電位差が大きく、且つ、電気角の半周期の期間が長い。そのため、前記同期電動機の駆動制御に矩形波駆動制御を用いた場合、制御装置における特定相のスイッチング素子及び前記同期電動機の特定相のコイルに過電流が流れる可能性がある。前記特許文献3の構成では、上述のように前記同期電動機の回転速度を考慮していないため、上述のような場合でも、前記同期電動機の駆動制御を矩形波駆動制御に切り替える可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、同期電動機の駆動制御を、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とに切り替える同期電動機の制御装置において、前記同期電動機の回転速度の影響を考慮して、前記同期電動機を効率良く駆動可能な構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る同期電動機の制御装置は、同期電動機の駆動を制御する同期電動機の制御装置である。この制御装置は、入力指令に基づいて、PWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記入力指令に基づいて、矩形波信号を生成する矩形波信号生成部と、前記同期電動機の回転速度を検出する回転速度検出部と、少なくとも前記回転速度に応じて、前記PWM信号生成部によって生成された前記PWM信号、または、前記矩形波信号生成部によって生成された前記矩形波信号のいずれの信号を、前記同期電動機を駆動制御する際の制御信号として用いるかを判定する信号切替判定部と、前記PWM信号及び前記矩形波信号のうち、前記信号切替判定部によって前記制御信号として用いると判定された信号を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する駆動制御部と、を備える(第1の構成)。
【0014】
これにより、少なくとも同期電動機の回転速度に応じて、PWM信号または矩形波信号のいずれか一方を用いた駆動制御を行うことができる。よって、PWM信号を用いたPWM駆動制御と矩形波信号を用いた矩形波駆動制御とを、同期電動機の回転速度に対し、適切なタイミングで行うことができる。したがって、同期電動機を効率良く駆動させることができる。
【0015】
前記第1の構成において、同期電動機の制御装置は、前記入力指令に基づいて、前記PWM信号に対応する電圧指令を生成する電圧指令生成部をさらに備える。前記信号切替判定部は、前記回転速度が回転速度閾値よりも小さい場合、または、前記電圧指令の振幅が電圧指令振幅閾値よりも小さい場合に、前記PWM信号を前記制御信号として用いると判定し、前記回転速度が前記回転速度閾値以上の場合には、前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御状態及び前記電圧指令振幅の少なくとも一方に応じて、前記PWM信号または前記矩形波信号のいずれか一方を前記制御信号として用いると判定する(第2の構成)。
【0016】
これにより、同期電動機の回転速度が回転速度閾値よりも小さい場合には、前記同期電動機はPWM駆動制御によって駆動制御される。前記同期電動機の回転速度が回転速度閾値よりも小さい場合には、前記同期電動機を矩形波駆動制御すると、制御装置のスイッチング素子及び前記同期電動機のコイルに過電流が流れる可能性がある。よって、上述のように、同期電動機の回転速度が回転速度閾値よりも小さい場合には、前記同期電動機をPWM駆動制御によって駆動制御することにより、前記制御装置及び前記同期電動機に過電流が流れることを防止できる。
【0017】
また、PWM信号に対応して生成された電圧指令の振幅が電圧指令振幅閾値よりも小さい場合にも、前記同期電動機はPWM駆動制御によって駆動制御される。前記電圧指令振幅が電圧指令振幅閾値よりも小さい場合には、同期電動機の電圧利用率を向上させる必要がないため、前記同期電動機をPWM駆動制御する。
【0018】
一方、前記同期電動機の回転速度が前記回転速度閾値以上の場合には、前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御状態及び前記電圧指令振幅の少なくとも一方に応じてPWM駆動制御または矩形波駆動制御を行うことにより、適切なタイミングでPWM駆動制御と矩形波駆動制御とを切り替えることができる。これにより、前記同期電動機を効率良く駆動させることができる。
【0019】
前記第2の構成において、前記信号切替判定部は、前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記PWM信号によって駆動制御されるPWM駆動制御の場合には、前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の回転速度の閾値である第1回転速度閾値を前記回転速度閾値として設定し、前記回転速度が前記第1回転速度閾値以上の場合で且つ前記電圧指令振幅が電圧指令振幅閾値以上の場合に、前記矩形波信号を前記制御信号として用いると判定し、前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記矩形波信号によって駆動制御される矩形波駆動制御の場合には、前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の回転速度の閾値である第2回転速度閾値を前記回転速度閾値として設定し、前記回転速度が前記第2回転速度閾値よりも小さい場合に、前記PWM信号を前記制御信号として用いると判定する(第3の構成)。
【0020】
これにより、同期電動機をPWM駆動制御している場合において、前記同期電動機の回転速度が第1回転速度閾値以上で且つ電圧指令振幅が電圧指令閾値以上の場合、すなわち、前記電圧指令振幅が大きいにも関わらず、前記同期電動機で生じる誘起電圧の増大によって前記同期電動機に流せる電流が低下する場合には、前記同期電動機を矩形波駆動することにより、前記同期電動機に供給する電圧を増大させることができる。よって、前記同期電動機で発生するトルクの低下を防止できる。
【0021】
一方、前記同期電動機を矩形波駆動制御している場合において、前記同期電動機の回転速度が回転速度閾値よりも小さい場合には、前記同期電動機をPWM駆動制御することにより、制御装置及び前記同期電動機に過電流が流れることを防止できる。
【0022】
しかも、上述の構成により、前記同期電動機の駆動制御を矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際に、PWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替える際のように電圧指令振幅の判定を行う必要がない。よって、前記同期電動機の駆動制御を矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際に、制御装置の演算負荷を軽減することができる。
【0023】
前記第3の構成において、前記第1回転速度閾値は、前記第2回転速度閾値よりも大きい(第4の構成)。
【0024】
回転速度の微小な変化によって、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とが頻繁に切り替わると、同期電動機の駆動制御が安定しない。これに対し、上述の構成により、前記回転速度において、前記PWM駆動制御から前記矩形波駆動制御に切り替えられる際の領域と、前記矩形波駆動制御から前記PWM駆動制御に切り替えられる際の領域とは重複する。よって、前記同期電動機の前記回転速度の微小な変動によって、前記同期電動機の駆動制御が頻繁に変更されることを防止できる。よって、前記同期電動機の駆動制御を安定して行うことができる。
【0025】
前記第2の構成において、前記信号切替判定部は、前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記PWM信号によって駆動制御されるPWM駆動制御の場合に、前記回転速度閾値として、前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の回転速度の閾値である第1回転速度閾値を設定するとともに、前記電圧指令振幅閾値として、前記PWM信号から前記矩形波信号に切り替える際の電圧指令振幅の閾値である第1電圧指令振幅閾値を設定し、前記回転速度が前記第1回転速度閾値以上の場合で且つ前記電圧指令振幅が前記第1電圧指令振幅閾値以上の場合に、前記矩形波信号を前記制御信号として用いると判定し、前記駆動制御部による前記同期電動機の駆動制御が、前記矩形波信号によって駆動制御される矩形波駆動制御の場合に、前記回転速度閾値として、前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の回転速度の閾値である第2回転速度閾値を設定するとともに、前記電圧指令振幅閾値は、前記矩形波信号から前記PWM信号に切り替える際の電圧指令振幅の閾値である第2電圧指令振幅閾値を設定し、前記回転速度が前記第2回転速度閾値よりも小さい場合、または、前記電圧指令振幅が前記第2電圧指令振幅閾値よりも小さい場合に、前記PWM信号を前記制御信号として用いると判定する(第5の構成)。
【0026】
これにより、駆動制御判定部によって判定された同期電動機の駆動制御に応じて、回転速度閾値及び電圧指令振幅閾値が変更される。よって、同期電動機の駆動制御の状態に応じて、適切な閾値を設定することができる。したがって、前記同期電動機の駆動制御におけるPWM駆動制御と矩形波駆動制御との切替を、前記同期電動機の運転状態に合わせて、より適切に行うことができる。
【0027】
前記第5の構成において、前記第1回転速度閾値は、前記第2回転速度閾値よりも大きい。前記第1電圧指令振幅閾値は、前記第2電圧指令振幅閾値よりも大きい(第6の構成)。
【0028】
回転速度及び電圧指令振幅の微小な変化によって、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とが頻繁に切り替わると、同期電動機の駆動制御が安定しない。これに対し、上述の構成により、前記回転速度及び前記電圧指令振幅において、前記PWM駆動制御から前記矩形波駆動制御に切り替えられる際の領域と、前記矩形波駆動制御から前記PWM駆動制御に切り替えられる際の領域とは重複する。よって、前記同期電動機の前記回転速度及び前記電圧指令振幅の微小な変動によって、前記同期電動機の駆動制御が頻繁に変更されることを防止できる。よって、前記同期電動機の駆動制御を安定して行うことができる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る同期電動機の制御方法は、入力信号に基づいて生成されるPWM信号または矩形波信号を用いて、同期電動機の駆動を制御する同期電動機の制御方法である。この制御方法は、前記同期電動機の回転速度を取得する回転速度取得工程と、入力指令に基づいて、前記PWM信号に対応する電圧指令の振幅を取得する電圧指令振幅取得工程と、少なくとも前記回転速度に応じて、前記PWM信号または前記矩形波信号のいずれの信号を、前記同期電動機を駆動制御する際の制御信号として用いるかを判定する信号切替判定工程と、前記PWM信号及び前記矩形波信号のうち、前記信号切替判定工程で前記制御信号として用いると判定された信号を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する駆動制御工程と、を有する(第1の方法)。
【0030】
これにより、同期電動機の回転速度に応じて、前記同期電動機の駆動制御におけるPWM駆動制御と矩形波駆動制御との切替を適切に行うことができる。したがって、同期電動機を効率良く駆動させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一実施形態に係る同期電動機の制御装置によれば、入力指令に基づいてPWM信号に対応して生成された電圧指令の振幅、及び、前記同期電動機の回転速度に応じて、PWM信号または矩形波信号のいずれか一方を用いて、前記同期電動機の駆動を制御する。これにより、前記同期電動機の回転速度の影響を考慮して、前記同期電動機を効率良く駆動可能な制御装置の構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る制御装置の概略構成を示す制御ブロック図である。
【
図2】
図2は、信号切替判定部の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1回転速度閾値、第2回転速度閾値及び第1電圧指令振幅閾値によって規定されるモータの駆動制御の領域を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る制御装置の信号切替判定部の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態2において、第1回転速度閾値、第2回転速度閾値、第1電圧指令振幅閾値及び第2電圧指令振幅閾値によって規定されるモータの駆動制御の領域を示す図である。
【
図6】
図6は、その他の実施形態において、第1回転速度閾値、第2回転速度閾値、第1電圧指令振幅閾値及び第2電圧指令振幅閾値によって規定されるモータの駆動制御の領域を示す図である。
【
図7】
図7は、その他の実施形態において、第1回転速度閾値、第2回転速度閾値、第1電圧指令振幅閾値及び第2電圧指令振幅閾値によって規定されるモータの駆動制御の領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0034】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る制御装置1の概略構成を示すブロック図である。こ制御装置1は、入力指令としての回転速度指令に基づいてPWM信号及び矩形波信号をそれぞれ生成し、電圧指令振幅及びモータ2の回転速度に応じてPWM信号または矩形波信号のいずれの信号を用いるかを決定し、決定された信号を用いてモータ2(同期電動機)を駆動制御する。なお、本実施形態では、モータ2は、三相交流モータであるが、モータ2はどのような構成のモータであってもよい。
【0035】
制御装置1は、PWM駆動制御部10と、矩形波駆動制御部20と、駆動制御部30と、回転速度検出部40と、信号切替判定部50とを備える。
【0036】
PWM駆動制御部10は、制御装置1に入力される回転速度指令(入力指令)に基づいてPWM信号を生成する。PWM駆動制御部10は、トルク指令生成部11と、電流指令生成部12と、電圧指令生成部13と、PWM信号生成部14とを有する。
【0037】
トルク指令生成部11は、制御装置1に入力される回転速度指令に基づいてトルク指令Trefを生成する。
【0038】
電流指令生成部12は、トルク指令生成部11で生成されたトルク指令Trefに基づいて、d軸電流指令Idref及びq軸電流指令Iqrefを生成する。
【0039】
電圧指令生成部13は、電流指令生成部12で生成されたd軸電流指令Idref及びq軸電流指令Iqrefに基づいて、d軸電圧指令Vdref及びq軸電圧指令Vqrefを生成するとともに、これらの指令からU相電圧指令Vuref、V相電圧指令Vvref及びW相電圧指令Vwrefを生成する。また、電圧指令生成部13は、d軸電圧指令Vdref及びq軸電圧指令VqrefからPWM駆動制御における電圧指令の振幅である電圧指令振幅Apwmを求める。電圧指令生成部13で得られた電圧指令振幅Apwmは、後述の信号切替判定部50に入力される。
【0040】
なお、電圧指令生成部13は、U相電圧指令Vuref、V相電圧指令Vvref及びW相電圧指令Vwrefのうち、電圧の絶対値が最も大きい値を、電圧指令振幅と見做して、電圧指令振幅Apwmとして扱ってもよい。
【0041】
PWM信号生成部14は、電圧指令生成部13で生成されたU相電圧指令Vuref、V相電圧指令Vvref及びW相電圧指令Vwrefに基づいて、PWM駆動制御のためのPWM信号を生成する。このPWM信号は、駆動制御部30に入力されて、駆動制御部30の図示しないスイッチング素子の駆動制御に用いられる。
【0042】
なお、PWM駆動制御部10におけるトルク指令生成部11、電流指令生成部12、電圧指令生成部13及びPWM信号生成部14の各構成は、従来のPWM駆動制御において各信号を生成する構成と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0043】
矩形波駆動制御部20は、制御装置1に入力される回転速度指令(入力指令)に基づいて矩形波信号を生成する。矩形波駆動制御部20は、位相生成部21と、矩形波信号生成部22とを有する。
【0044】
位相生成部21は、制御装置1に入力される回転速度指令に基づいて位相指令を生成する。矩形波信号生成部22は、位相生成部21で生成された位相指令に基づいて、矩形波信号を生成する。この矩形波信号は、駆動制御部30に入力されて、駆動制御部30の図示しないスイッチング素子の駆動制御に用いられる。
【0045】
なお、矩形波駆動制御部20における位相生成部21及び矩形波信号生成部22の各構成は、従来の矩形波駆動制御において各信号を生成する構成と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0046】
駆動制御部30は、PWM駆動制御部10で生成されたPWM信号、または、矩形波駆動制御部20で生成された矩形波信号のいずれか一方を用いて、モータ2の駆動を制御する。具体的には、駆動制御部30は、信号選択部31と、インバータ部32とを有する。
【0047】
信号選択部31は、PWM駆動制御部10で生成されたPWM信号、または、矩形波駆動制御部20で生成された矩形波信号のいずれか一方を、後述の信号切替判定部50の判定結果に応じて選択する。詳しくは後述するが、信号選択部31は、電圧指令生成部13から出力された電圧指令振幅Apwm及び回転速度検出部40で検出されたモータ2の回転速度Nmtrに応じて、PWM信号または矩形波信号の一方を選択し、制御信号として出力する。
【0048】
インバータ部32は、信号選択部31から出力された制御信号(PWM信号または矩形波信号)に基づいて、モータ2の各相のコイル(図示省略)に電力を供給する。特に図示しないが、インバータ部32は、複数のスイッチング素子を有する。インバータ部32は、これらのスイッチング素子を信号選択部31から出力された制御信号(PWM信号または矩形波信号)に基づいて駆動制御することにより、モータ2の各相のコイルに対して、PWM信号または矩形波信号に応じた電力を供給する。なお、インバータ部32は、従来のインバータ装置と同様の構成を有するため、インバータ部32の詳しい構成については説明を省略する。
【0049】
すなわち、駆動制御部30は、PWM信号を用いてモータ2の駆動を制御するPWM駆動制御と、矩形波信号を用いてモータ2の駆動を制御する矩形波駆動制御とを切り替え可能に構成されている。
【0050】
なお、本実施形態では、モータ2は、駆動制御部30によって、停止状態から所定回転速度以上の高回転速度の領域まで急加速されるように制御される。駆動制御部30は、モータ2が前記所定回転速度以上に達してから規定時間経過後に、インバータ部32の複数のスイッチング素子をすべてOFF状態にすることにより、モータ2をフリーラン状態で減速させて、停止させる。
【0051】
回転速度検出部40は、モータ2の図示しない回転子の回転位置を検出する位置センサ2aから出力された位置信号に基づいて、モータ2の回転速度Nmtrを検出する。
【0052】
信号切替判定部50は、モータ2の駆動制御状態に応じて、回転速度検出部40で検出された回転速度Nmtr及び電圧指令生成部13から出力された電圧指令振幅Apwmを用いて、駆動制御部30がPWM信号または矩形波信号のいずれの信号を制御信号として用いてモータ2を駆動制御するかを判定する。すなわち、信号切替判定部50は、駆動制御部30にPWM駆動制御または矩形波駆動制御のいずれの駆動制御を行わせるかを判定する。なお、モータ2の駆動制御状態とは、モータ2がPWM駆動制御または矩形波駆動制御されている状態を意味する。
【0053】
信号切替判定部50は、回転速度Nmtr及び電圧指令振幅Apwmが、それぞれ設定された閾値以上の場合に、駆動制御部30の信号選択部31に矩形波信号を選択させる判定信号を出力し、それ以外の場合には、駆動制御部30の信号選択部31にPWM信号を選択させる判定信号を出力する。
【0054】
詳しくは、信号切替判定部50は、駆動制御部30がPWM駆動制御を行っている際に、回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_one(回転速度閾値)よりも小さい場合、及び、回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_one以上で且つ電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_one(電圧指令振幅閾値)よりも小さい場合には、駆動制御部30にPWM駆動制御を継続させるように判定信号を出力する。また、信号切替判定部50は、駆動制御部30がPWM駆動制御を行っている際に、回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_one以上で且つ電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_one以上の場合には、駆動制御部30にPWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替えさせるように判定信号を出力する。
【0055】
また、信号切替判定部50は、駆動制御部30が矩形波駆動制御を行っている際に、回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwm(回転速度閾値)以上の場合には、駆動制御部30に矩形波駆動制御を継続させるように判定信号を出力する。信号切替判定部50は、駆動制御部30が矩形波駆動制御を行っている際に、回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも小さい場合には、駆動制御部30にPWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替えさせるように判定信号を出力する。
【0056】
ここで、第2回転速度閾値Nthr_pwmは、モータ2及び駆動制御部30に過電流が流れないように、矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える回転速度である。また、第1回転速度閾値Nthr_oneは、第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも大きい。
【0057】
第1電圧指令振幅閾値Athr_oneは、電圧利用率を考慮して、PWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替える電圧指令振幅値である。
【0058】
なお、信号切替判定部50は、判定結果を図示しないメモリ等に記憶していて、その判定結果を用いて、現在のモータ2の駆動制御がPWM駆動制御であるか矩形波駆動制御であるかを判定する。
【0059】
(モータの駆動制御の切替)
次に、上述のような構成を有する制御装置1において、モータ2の駆動制御の切替動作について
図2を用いて説明する。
図2は、信号切替判定部50によるモータ2の駆動制御の切替判定を示すフローである。
【0060】
図2に示すフローがスタートすると(START)、まずステップSA1において、信号切替判定部50は、回転速度検出部40によって検出されたモータ2の回転速度Nmtrを取得する。続くステップSA2において、信号切替判定部50は、電圧指令生成部13から出力された電圧指令振幅Apwmを取得する。
【0061】
その後、ステップSA3で、信号切替判定部50は、駆動制御部30による駆動制御がPWM駆動制御であるかどうかを判定する。ステップSA3において、駆動制御部30による駆動制御がPWM駆動制御であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSA4以降に進んで、モータ2の回転速度Nmtrの判定を行う。
【0062】
一方、ステップSA3において、駆動制御部30による駆動制御がPWM駆動制御でないと判定された場合、すなわち駆動制御部30による駆動制御が矩形波駆動制御であると判定された場合(NOの場合)には、ステップSA9以降に進んで、モータ2の回転速度Nmtrの判定を行う。
【0063】
駆動制御部30による駆動制御がPWM駆動制御の場合に進むステップSA4では、モータ2の回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_one以上であるかどうかを判定する。この第1回転速度閾値Nthr_oneは、駆動制御部30においてPWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替え可能なモータ2の回転速度である。
【0064】
ステップSA4において、回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_one以上の場合(YESの場合)には、ステップSA5以降に進んで、電圧指令振幅Apwmの判定を行う。
【0065】
一方、ステップSA4において、回転速度Nmtrが第1回転速度閾値よりも小さい場合(NOの場合)には、ステップSA6に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30に対してPWM駆動制御を継続させる判定信号を出力する。
【0066】
回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_one以上の場合に進むステップSA5では、電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_one以上であるかどうかを判定する。この第1電圧指令振幅閾値Athr_oneは、電圧利用率を考慮して、PWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替える電圧指令振幅値である。
【0067】
ステップSA5において、電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_one以上であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSA7に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30に対して矩形波駆動制御に切り替えるように判定信号を出力する。
【0068】
一方、ステップSA5において、電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_oneよりも小さいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSA8に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30にPWM駆動制御を継続させる判定信号を出力する。
【0069】
ステップSA6からSA8において、信号切替判定部50が駆動制御部30に判定信号を出力した後、このフローを終了する。
【0070】
上述のステップSA3において駆動制御部30による駆動制御が矩形波駆動制御であると判定された場合(NOの場合)に進むステップSA9では、モータ2の回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwm以上であるかどうかを判定する。この第2回転速度閾値Nthr_pwmは、モータ2及び駆動制御部30に過電流が流れないように、矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える回転速度である。
【0071】
ステップSA9において、回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwm以上の場合(YESの場合)には、ステップSA10に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30に対して矩形波駆動制御を継続させる判定信号を出力する。
【0072】
一方、ステップSA9において、回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも小さい場合(NOの場合)には、ステップSA11に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30に対してPWM駆動制御に切り替えるように判定信号を出力する。
【0073】
このように、本実施形態では、信号切替判定部50によって駆動制御部30による駆動制御が矩形波駆動制御であると判定された場合(ステップSA3においてNOの場合)には、回転速度Nmtrのみを用いて、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とを切り替える。これは、本実施形態のモータ2の運転パターンが、モータ2を停止させる際に、モータ2をフリーラン状態で減速させて、停止させる運転パターンであるからである。そのため、モータ2を矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際に、PWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替える際のように電圧指令振幅を考慮する必要がなく、モータ2を停止後に再始動する際にモータ2をPWM駆動制御できるように駆動制御部30が設定されていればよい。
【0074】
ステップSA10、SA11において、信号切替判定部50が駆動制御部30に判定信号を出力した後、このフローを終了する(END)。
【0075】
ここで、ステップSA1が回転速度取得工程に対応し、ステップSA2が電圧指令振幅取得工程に対応する。ステップSA3からSA5、SA9が、信号切替判定工程に対応し、ステップSA6からSA8、SA10、SA11が、駆動制御工程に対応する。
【0076】
本実施形態では、第1回転速度閾値Nthr_oneは、第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも大きい回転速度である。
【0077】
図3に、モータ2の回転速度と電圧指令振幅との関係において、上述の第1回転速度閾値Nthr_one、第2回転速度閾値Nthr_pwm及び第1電圧指令振幅閾値Athr_oneによって規定されるモータ2の駆動制御の領域を示す。
【0078】
図3に示すように、回転速度と電圧指令振幅との関係において、PWM駆動制御を行うPWM駆動制御領域と矩形波駆動制御を行う矩形波駆動制御領域との間には、混在領域が存在する。この混在領域では、駆動制御部30が切替判定部50による判定時にPWM駆動制御を行っている際には、回転速度が第1回転速度閾値Nthr_oneよりも小さい場合、または、回転速度が第1回転速度閾値Nthr_one以上で且つ電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_oneよりも小さい場合に、PWM駆動制御を継続する。
【0079】
一方、前記混在領域では、駆動制御部30が切替判定部50による判定時に矩形波駆動制御を行っている際には、回転速度が第2回転速度閾値Nthr_pwm以上の場合に、矩形波駆動制御を継続する。
【0080】
このように、
図3において、PWM駆動制御領域と矩形波駆動制御領域との間には、混在領域が位置し、該混在領域では、駆動制御部30が切替判定部50による判定時にPWM駆動制御を行っているか矩形波駆動制御を行っているかによって、モータ2の駆動制御が異なる。
【0081】
これにより、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とを切り替える際に、モータ2の回転速度及び電圧指令振幅の変動によって、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とが頻繁に切り替わることを防止できる。よって、モータ2の駆動制御を安定して行うことができる。
【0082】
以上より、本実施形態では、モータ2の駆動制御をPWM駆動制御と矩形波駆動制御とで切り替える際に、モータ2の回転速度Nmtr及びPWM駆動制御時の電圧指令振幅Apwmを考慮することで、適切なタイミングでモータ2の駆動制御を切り替えることができる。これにより、モータ2に過電流が流れたり、モータ2の出力トルクの低下が生じたりすることを防止できる。
【0083】
また、モータ2の駆動制御をPWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替える際の第1回転速度閾値Nthr_oneを、モータ2の駆動制御を矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際の第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも大きくすることにより、モータ2の回転速度Nmtrが変動した場合でも、モータ2の駆動制御が頻繁に切り替わることを防止できる。
【0084】
さらに、モータ2をフリーラン状態で減速させて、停止させる運転パターンにおいて、モータ2の駆動制御を矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際に、PWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替える際のように電圧指令振幅の判定を行う必要がない。よって、モータ2の駆動制御を矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際に、制御装置1の演算負荷を軽減することができる。
【0085】
[実施形態2]
図4に、実施形態2に係る制御装置において、信号切替判定部50によるモータ2の駆動制御の切替判定のフローを示す。この実施形態では、制御装置の構成は実施形態1の制御装置1の構成と同様であり、モータ2の駆動制御の切替判定のフローが実施形態1のフローとは異なる。具体的には、信号切替判定部50によるモータ2の駆動制御の切替判定フローのうち、矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際のフローが、実施形態1のフローとは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1の構成とは異なる構成についてのみ説明する。
【0086】
図4に示すフローがスタートする(START)と、信号切替判定部50は、モータ2の回転速度Nmtr及びPWM駆動制御時の電圧指令振幅Apwmを取得した後(ステップSB1、SB2)、モータ2の現在の駆動制御がPWM駆動制御であるか矩形波駆動制御であるかの判定を行う(ステップSB3)。
【0087】
モータ2の駆動制御がPWM駆動制御の場合(ステップSB3においてYESの場合)には、実施形態1のステップSA4からSA8と同様、モータ2の回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_one以上で且つ電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_one以上の場合に、信号切替判定部50は、モータ2の駆動制御をPWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替えるように判定信号を出力する。モータ2の回転速度Nmtrが第1回転速度閾値Nthr_oneよりも小さい場合、または、電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅閾値Athr_oneよりも小さい場合には、信号切替判定部50は、モータ2の駆動制御としてPWM駆動制御を継続するように判定信号を出力する。
【0088】
信号切替判定部50におけるステップSB1からステップSB8までの動作は、実施形態1のステップSA1からSA8までの動作と同様であるため、各ステップの動作の詳しい説明を省略する。
【0089】
モータの駆動制御が矩形波駆動制御の場合(ステップSB3においてNOの場合)には、ステップSB9に進んで、実施形態1のステップSA9と同様に、モータ2の回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwm(回転速度閾値)以上であるかどうかの判定を行う。
【0090】
ステップSB9において、モータ2の回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwm以上であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSB10以降に進んで、電圧指令振幅Apwmが第2電圧指令振幅閾値Athr_pwm以上であるかどうかを判定する。この第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmは、駆動制御部30において矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替え可能な電圧指令振幅値である。
【0091】
一方、ステップSB9において、モータ2の回転速度Nmtrが第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも小さいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSB11に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30に対してPWM駆動制御に切り替えるように判定信号を出力する。
【0092】
ステップSB10において、電圧指令振幅Apwmが第2電圧指令振幅閾値Athr_pwm以上であると判定された場合(YESの場合)には、ステップSB12に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30に対して矩形波駆動制御を継続するように判定信号を出力する。
【0093】
一方、ステップSB10において、電圧指令振幅Apwmが第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmよりも小さいと判定された場合(NOの場合)には、ステップSB13に進んで、信号切替判定部50は、駆動制御部30にPWM駆動制御に切り替えるように判定信号を出力する。
【0094】
ステップSB11からSB13において、信号切替判定部50が駆動制御部30に判定信号を出力した後、このフローを終了する(END)。
【0095】
ここで、ステップSB1が回転速度取得工程に対応し、ステップSB2が電圧指令振幅取得工程に対応する。ステップSB3からSB5、SB9、SB10が、信号切替判定工程に対応し、ステップSB6からSB8、SB11からSB13が、駆動制御工程に対応する。
【0096】
本実施形態では、第1回転速度閾値Nthr_oneは、第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも大きい回転速度である。第1電圧指令振幅閾値Athr_oneは、第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmよりも大きい電圧指令振幅値である。
【0097】
図5に、モータ2の回転速度と電圧指令振幅との関係において、上述の第1回転速度閾値Nthr_one、第2回転速度閾値Nthr_pwm、第1電圧指令振幅閾値Athr_one及び第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmによって規定されるモータ2の駆動制御の領域を示す。
【0098】
図5に示すように、回転速度と電圧指令振幅との関係において、PWM駆動制御を行うPWM駆動制御領域と矩形波駆動制御を行う矩形波駆動制御領域との間には、混在領域が存在する。この混在領域では、駆動制御部30が切替判定部50による判定時にPWM駆動制御を行っている際には、回転速度が第1回転速度閾値Nthr_oneよりも小さい場合、または、回転速度が第1回転速度閾値Nthr_one以上で且つ電圧指令振幅Apwmが第1電圧指令振幅Athr_oneよりも小さい場合に、PWM駆動制御を継続する。
【0099】
一方、前記混在領域では、駆動制御部30が切替判定部50による判定時に矩形波駆動制御を行っている際には、回転速度が第2回転速度閾値Nthr_pwm以上で且つ電圧指令振幅が第2電圧指令振幅閾値Athr_pwm以上の場合に、矩形波駆動制御を継続する。
【0100】
このように、
図5において、PWM駆動制御領域と矩形波駆動制御領域との間には、混在領域が位置し、該混在領域では、駆動制御部30が切替判定部50による判定時にPWM駆動制御を行っているか矩形波駆動制御を行っているかによって、駆動制御が異なる。
【0101】
これにより、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とを切り替える際に、モータ2の回転速度及び電圧指令振幅の変動によって、PWM駆動制御と矩形波駆動制御とが頻繁に切り替わることを防止できる。よって、モータ2の駆動制御を安定して行うことができる。
【0102】
以上より、本実施形態では、モータ2の駆動制御が矩形波駆動制御の場合、電圧指令振幅Apwmが第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmよりも小さい場合に、モータ2の駆動制御をPWM駆動制御に切り替える。これにより、モータ2の駆動制御が矩形波駆動制御の場合にも、電圧指令振幅Apwmを考慮して、モータ2の駆動制御を切り替えることができる。よって、モータ2の駆動制御を、より適切なタイミングで行うことが可能になる。なお、本実施形態の構成は、モータ2の減速時もモータ2の駆動制御を行う場合に、特に有効である。
【0103】
また、モータ2の駆動制御をPWM駆動制御から矩形波駆動制御に切り替える際の第1電圧指令振幅閾値Athr_oneを、モータ2の駆動制御を矩形波駆動制御からPWM駆動制御に切り替える際の第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmよりも大きくすることにより、電圧指令振幅Apwmの値が変動した場合でも、モータ2の駆動制御が頻繁に切り替わることを防止できる。
【0104】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0105】
前記各実施形態では、モータ2の回転速度と電圧指令振幅との関係において、PWM駆動制御領域と混在領域との境界、及び、矩形波駆動制御領域と混在領域との境界では、回転速度閾値及び電圧指令振幅閾値は、それぞれ一定である。しかしながら、回転速度閾値及び電圧指令振幅閾値は、それぞれ、変化する値であってもよい。
【0106】
図6に、実施形態2の場合において、モータ2の回転速度に応じて第1電圧指令振幅閾値Athr_one及び第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmを変化させた場合のモータ2の駆動制御の領域を示す。この
図6では、第1電圧指令振幅閾値Athr_one及び第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmは、モータ2の回転速度が大きくなるほど、小さくなる。
【0107】
すなわち、
図6の場合には、第1電圧指令振幅閾値Athr_one及び第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmは、モータ2の回転速度が大きいほど値が小さくなるように設定されている。なお、第1電圧指令振幅閾値Athr_oneまたは第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmのいずれか一方のみが、モータ2の回転速度が大きいほど値が小さくなるように設定されていてもよい。
【0108】
図7に、実施形態2の場合において、電圧指令振幅に応じてモータ2の第1回転速度閾値Nthr_one及び第2回転速度閾値Nthr_pwmを変化させた場合のモータ2の駆動制御の領域を示す。この
図7では、第1回転速度閾値Nthr_one及び第2回転速度閾値Nthr_pwmは、電圧指令振幅が大きくなるほど、小さくなる。
【0109】
すなわち、
図7の場合には、第1回転速度閾値Nthr_one及び第2回転速度閾値Nthr_pwmは、電圧指令振幅が大きいほど値が小さくなるように設定されている。なお、第1回転速度閾値Nthr_one及び第2回転速度閾値Nthr_pwmのいずれか一方のみが、電圧指令振幅が大きいほど値が小さくなるように設定されていてもよい。
【0110】
なお、回転速度閾値及び電圧指令振幅閾値を、それぞれ変化させてもよい。すなわち、第1電圧指令振幅閾値Athr_one及び第2電圧指令振幅閾値Athr_pwmは、モータ2の回転速度が大きくなるほど、小さくなり、且つ、第1回転速度閾値Nthr_one及び第2回転速度閾値Nthr_pwmは、電圧指令振幅が大きくなるほど、小さくなってもよい。
【0111】
また、
図6及び
図7では、実施形態2の場合におけるモータの駆動制御の領域について、他の例を示したが、実施形態1の場合におけるモータの駆動制御の領域についても同様である。
【0112】
前記実施形態1では、第1回転速度閾値Nthr_oneは、第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも大きい回転速度である。しかしながら、第1回転速度閾値Nthr_oneは、第2回転速度閾値Nthr_pwmと同じ回転速度であってもよい。
【0113】
前記実施形態2では、第1回転速度閾値Nthr_oneは、第2回転速度閾値Nthr_pwmよりも大きい回転速度であり、第1電圧指令振幅閾値Athr_oneは、第2電圧指令振幅閾値Athr_oneよりも大きい電圧指令振幅値である。しかしながら、第1回転速度閾値Nthr_oneは、第2回転速度閾値Nthr_pwmと同じ回転速度であってもよい。第1電圧指令振幅閾値Athr_oneは、第2電圧指令振幅閾値Athr_oneと同じ電圧指令振幅値であってもよい。
【0114】
前記各実施形態では、3相交流モータ2の駆動を制御する制御装置1の構成について説明したが、この限りではなく、3相以外の複数相の交流モータ2の駆動を制御する制御装置に適用してもよい。すなわち、モータ2は、同期電動機であれば、どのような構成を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、同期電動機の駆動制御をPWM駆動制御と矩形波駆動制御とで切り替え可能な制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 制御装置
2 モータ(同期電動機)
10 PWM駆動制御部
11 トルク指令生成部
12 電流指令生成部
13 電圧指令生成部
14 PWM信号生成部
20 矩形波駆動制御部
21 位相生成部
22 矩形波信号生成部
30 駆動制御部
31 信号選択部
32 インバータ部
40 回転速度検出部
50 信号切替判定部