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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】コーヒーメーカー
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/44 20060101AFI20220810BHJP
   A47J 31/10 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A47J31/44 120
A47J31/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018103348
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019205765
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】米原 詩織
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-113816(JP,A)
【文献】特開2007-307029(JP,A)
【文献】特開昭62-84711(JP,A)
【文献】特開平6-123545(JP,A)
【文献】特開2002-306342(JP,A)
【文献】米国特許第4138936(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ィルターバスケットと前記フィルターバスケットが載置される抽出液容器と前記フィルターバスケットが載置された前記抽出液容器が挿入される本体で構成されるコーヒーメーカーであって、
前記本体は、
前記フィルターバスケットに対向し抽出湯の吐出口と蒸気排出口が設けられた天面を有する上部と、
前記抽出液容器の底に接触するヒータープレートを有する底部と、
前記上部と前記底部を連結する奥壁を有する後部と、
を有し、
前記フィルターバスケットは、前記抽出液容器が引き出される際に、前記天面に結露した水滴を前記フィルターバスケットに回収する縦壁を有し、
前記天面の前端から前記奥壁に向かって山谷形状が形成されていることを特徴とするコーヒーメーカー。
【請求項2】
前記天面は前記天面の前端から前記奥壁に向かって下り勾配に形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたコーヒーメーカー。
【請求項3】
前記山谷形状は、前記天面の所定位置から前記奥壁側には形成されていないことを特徴とする請求項1または2に記載されたコーヒーメーカー。
【請求項4】
前記山谷形状はのこぎり波状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一の請求項に記載されたコーヒーメーカー。
【請求項5】
前記縦壁は前記奥壁側に切り欠きが形成され、
前記フィルターバスケットは、前記奥壁側に前記切り欠きから伝わる水滴を回収するリブポケットが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一の請求項に記載されたコーヒーメーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリップ方式の自動コーヒーメーカーに関するもので、特にフィルターバスケットの上方に位置する天面に結露した水が、ヒータープレートに落下しにくい構造を有するコーヒーメーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーメーカーでは、抽出容器を温めるため、抽出容器の下には、保温用のヒータープレートが配置されている。コーヒーメーカーは、水を扱うため、この水が直接若しくは一度結露してから間接的に、このヒータープレートに落下することが生じうる。ヒータープレートは高温に加熱されているため、落下した水はジュッと音を立てて蒸発する。この蒸発音は、製品の使用感に良い印象を与えないので好ましくないものとされている。また、結露水がヒータープレートに落下して瞬時に蒸発する際には、湯滴となって飛散する場合もあり、使用者にかかる恐れもあった。
【0003】
特許文献1では、コーヒーメーカーが、コーヒー粉が入れられたフィルターバスケットに熱湯を注ぐ際に、熱湯の蒸気が本体上部や支持部等で結露し、結露水がヒータープレートに落ちて蒸発音を立てるという課題に対して、本体のバスケットの受け口縁よりも上方の部分に受け口縁に向けて突出する壁面を設け、受け口縁と本体間の間隙を狭め、本体側の結露水がバスケット内に流れやすくする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-230617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、本体上部の下面や側面の結露水は、バスケットに落下するか、壁面を流れてバスケットに収容するとしている。しかし、コーヒーの抽出後で、まだ時間が経過していない状態(結露水がバスケット中に落ち切っていない状態)で、バスケットを引き出すと、結露水はヒータープレートに落下し、蒸発音が生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑み、抽出後いつバスケットを取り出しても、結露水のヒータープレートへの落下を抑制するコーヒーメーカーを提供するものである。
【0007】
より具体的に本発明に係るコーヒーメーカーは、
ィルターバスケットと前記フィルターバスケットが載置される抽出液容器と前記フィルターバスケットが載置された前記抽出液容器が挿入される本体で構成されるコーヒーメーカーであって、
前記本体は、
前記フィルターバスケットに対向し抽出湯の吐出口と蒸気排出口が設けられた天面を有する上部と、
前記抽出液容器の底に接触するヒータープレートを有する底部と、
前記上部と前記底部を連結する奥壁を有する後部と、
を有し、
前記フィルターバスケットは、前記抽出液容器が引き出される際に、前記天面に結露した水滴を前記フィルターバスケットに回収する縦壁を有し、
前記天面の前端から前記奥壁に向かって山谷形状が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るコーヒーメーカーは、天面に形成した山谷形状の凹凸に結露水が溜まり、大きな水滴になりにくく、落下しにくくなる。
【0009】
また、天面に設けられた抽出湯の吐出口後方に蒸気排出口を設ければ、吐出口より後方には結露水が生じにくく、吐出口より前側に結露水が生じやすい。山谷形状を吐出口より手前に設けておくことで、効果的に結露水を落下しにくくすることができる。
【0010】
また、天面には本体後方(奥壁側)に向かって傾斜を設ければ、結露水は後方に向かって流れる。したがって、仮に結露水が落下したとしても、天面中央より奥側に落下するので、瞬間に蒸発する際に、湯滴が飛散しても、使用者にかかりにくい。
【0011】
山谷形状を、本体後方に向かって浅くなるように構成すれば、蒸気が多量に発生した場合でも、結露水は製品後方に向かって流れ、溝がなくなった地点(抽出湯の吐出口付近)に結露水溜まりが生じやすい。したがって、結露水が落下しても、ヒータープレートの中央部より前側で、湯滴が飛散することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るコーヒーメーカーの外観を示す図である。
図2】コーヒーメーカーを本体とフィルターバスケットと抽出液容器に分けた図である。
図3図3(a)は、本体前面の開口を斜め下から見上げた図であり、図3(b)はその一部拡大図であり、図3(c)は山谷形状の断面を示す図である。
図4】フィルターバスケットの外観を示す斜視図である。
図5】結露水の流れ方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明に係るコーヒーメーカーについて図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0014】
図1に本発明に係るコーヒーメーカー1の外観を示す。コーヒーメーカー1は、本体10と、フィルターバスケット20と、抽出液容器30を有する。本体10は上部10a、側部10b、底部10d、後部10cで形成されている。後部10cの上には抽出湯のための水タンク10Tが配置される。なお、本明細書を通じて、本体10の水タンク10Tがある方向を「後方」といい、その反対側を「前方」と呼ぶ。また「上方」は、重力方向上方をいい、「下方」は重力方向下方をいう。
【0015】
図2には、コーヒーメーカー1の本体10からフィルターバスケット20と抽出液容器30を抜いた状態を示している。本体10は、底部10dと両側の側部10bおよび上部10aで囲まれた開口10fを有する。また開口10fの奥には図3で示すが、奥壁10gがあり、水タンク10Tとの間を仕切っている。したがって、フィルターバスケット20および抽出液容器30は、底部10dと側部10bと上部10aと、奥壁10gで囲まれた箱状空間に開口10fから挿入して使用される。
【0016】
底部10dには、ヒータープレート12が配置され、コーヒーの抽出後に、抽出液容器30を加熱保温する。上部10aには蒸気排出口10Eが配置されている。また、上部10aの裏面には天面14がヒータープレート12と対向して配置されている。
【0017】
フィルターバスケット20は、本体10前面側に扉部20aを有している。扉部20aは、フィルターバスケット20を本体10に挿入するとちょうど開口10fの一部を閉じる形状に成型されている。したがって、フィルターバスケット20は、コーヒー抽出の時は、扉部20a、天面14、側部10bおよび奥壁10gで囲まれた略閉空間に配置される。
【0018】
フィルターバスケット20には、ドリッププレート40が載置される。滴下される抽出湯をフィルターバスケット20中のコーヒー粉に好適に滴下するためである。なお、抽出湯は、ドリッププレート40の中央42に供給される。言いかえると、フィルターバスケット20が本体10に収納された際には、ドリッププレート40に対向する天面14の位置に抽出湯の吐出口10W(図3参照)が形成されている。ドリッププレート40は、吐出口10Wから吐出された抽出湯を一時的に貯留しつつ、フィルターバスケット20内のコーヒー粉に滴下する。
【0019】
このように、フィルターバスケット20が略閉空間に配置され、天面14と対向するドリッププレート40に抽出湯を貯留できる構造の場合は、天面14に結露による水滴が溜まりやすい。
【0020】
図3(a)は、図2の矢印Cから本体10を見た図である。これは本体10の開口10fを前側斜め下から見上げた図である。天面14から奥壁10gおよび側部10bの内側および、底部10dの裏面を見ることができる。例えば、底部10dには、4つの脚10dfが設けてある。図3(a)では、そのうち2脚が見えている。
【0021】
天面14には、フィルターバスケット20の中央部(ドリッププレート40の中央42)に抽出湯を供給する吐出口10Wが設けてあり、その後方に蒸気排出口10Eが設けてある。
【0022】
吐出口10Wは複数個の孔を有するシャワー形状を呈している。このような形状によって、吐出される抽出湯の勢いが低減され、コーヒー粉の飛び散りも抑えることができる。また、フィルターバスケット20中のコーヒー粉に満遍なく抽出湯をかけることができる。また、吐出口10Wにはリブ形状10Wrが形成されている。リブ形状10Wrは吐出口10Wからの抽出湯が天面14に飛び散るのを抑制する。
【0023】
本発明に係るコーヒーメーカー1では、天面14は、天面前端14fから奥壁10gに向かって下方に下がる勾配が設けてある。勾配は、水平距離100mmに対して5乃至10mm程度あればよい。
【0024】
また、天面14には、天面前端14fから奥壁10gに向かって深さ及び幅が浅くなる山谷形状16が形成されている。山谷形状16は、天面前端14fから吐出口10Wまで形成されてある。しかし、山谷形状16は、さらに奥まで形成してあってもよいし、より前側までであってもよい。
【0025】
図3(b)には、山谷形状16の拡大図を示す。また、図3(c)は、図2のB-B断面の一部拡大図を示す。これはちょうど、山谷形状16の断面にあたる。山谷形状16の深さ16dは、最も大きくなる天面前端14fにおいて、0.5乃至1.5mmであり、ピッチ16pは1乃至5mmである。山谷形状16正弦波のように緩やかな山谷であってもよいが、のこぎり波のように明確に峰16tと谷底16bが形成されていればより好適である。結露水が流れやすいからである。
【0026】
図4には、フィルターバスケット20の斜視図を示す。フィルターバスケット20には、フィルタ(図示せず)を配置するバスケット20bと前面側に扉部20aが一体形成されている。また、底部20bbには、図示されていない抽出口が形成されている。バスケット20bの上端縁20btからは、縦壁22が形成されている。縦壁22の縁は上端22tと呼ぶ。縦壁22は、ドリッププレート40(図1参照)を配置するためであり、さらにバスケット20bの上端縁20btと天面14との隙間を少なくするためのものである。
【0027】
縦壁22には、最も奥側に切り欠き22aが形成されている。フィルターバスケット20を本体10から引き出す際に吐出口10Wと縦壁22が干渉しないためである。
【0028】
フィルターバスケット20の奥側には、リブポケット24が形成されている。リブポケット24は、一定容量の水を貯留できる深さを有する開口容器である。
【0029】
以上の構成を有するコーヒーメーカー1の作用について説明する。図5を参照する。図5には、本体10およびフィルターバスケット20の一部断面を示す。図2のA-A断面の一部にフィルターバスケット20およびドリッププレート40の断面を示した図である。図5(a)は、フィルターバスケット20が本体10内に収容された状態である。リブポケット24の最後端24bは、奥壁10gに近接する位置に配置される。また縦壁22の上端22tは、天面14に近接する位置に配置される。
【0030】
天面14は、天面前端14fから奥壁10gに向かって下り勾配を有しているので、縦壁22の上端22tと天面14との距離は、前側に行くほど広がる。
【0031】
図5(b)は、天面14に結露水が生じた場合を示している。吐出口10Wから出た抽出湯によって、フィルターバスケット20上部には蒸気が充満し、天面14に結露する。しかし、天面14の前方向に形成された山谷形状16の谷間で結露し、数mm程度の水滴Dpとなる。この程度の大きさの水滴であれば、表面張力で水滴状体を保持し、天面14から落下しない。
【0032】
図5(c)は、結露水による水滴Dpがより大きくなった場合を示す。水滴Dpが大きくなると、天面14の下り勾配で吐出口10W方向に水滴Dpは流れる。この際、山谷形状16の、谷底16bがV字であれば、より流れやすい。また、山谷形状16は、奥へ行くほど幅が狭くなり、水滴がまとまりやすい。そして、吐出口10W付近で大きな水滴となり、フィルターバスケット20にむかって滴下する。この際、吐出口10Wの周囲のリブ形状10Wrに水滴が集まることでより落下を促進させる。
【0033】
なお、吐出口10Wより後方には蒸気排出口10Eが設けられているので、吐出口10Wより後方での、結露水の発生量は比較的少ない。また、吐出口10Wより後方で発生した結露水は、リブポケット24に回収される。
【0034】
図5(d)は、フィルターバスケット20を引き出す状態を示している。フィルターバスケット20の縦壁22の上端22tは天面14には接することはない。しかし、天面14に非常に近接して配置されているので、フィルターバスケット20を引き出す際に、縦壁22の上端22tが、天面14に存在している数mm以上の水滴に当接する。結果、水滴Dpは、縦壁22を伝わって、フィルターバスケット20内に流れる若しくは、縦壁22の切り欠き22aを伝ってリブポケット24に回収される。
【0035】
つまり、大きな水滴Dpは、吐出口10W付近に集まり、自重でフィルターバスケット20に落下する。若しくはフィルターバスケット20を取り出す際に、縦壁22の上端22tで集められ、縦壁22を伝わりフィルターバスケット20内に落ちるか、リブポケット24に回収される。したがって、フィルターバスケット20を取り出すと、天面14には、小さな水滴状の結露水しか残らず、自重でヒータープレート12に落下するものはほとんどない。
【0036】
以上のように、本発明に係るコーヒーメーカー1は、結露水がヒータープレート12に落下して急激に蒸発する蒸発音や、湯滴が飛散するといった事態を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るコーヒーメーカーは、コーヒーを自動抽出する際に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 コーヒーメーカー
10 本体
10a 上部
10b 側部
10c 後部
10d 底部
10f 開口
10df 脚
10g 奥壁
10E 蒸気排出口
10T 水タンク
10W 吐出口
10Wr リブ形状
12 ヒータープレート
14 天面
14f 天面前端
16 山谷形状
16d 深さ
16p ピッチ
16t 峰
16b 谷底
20 フィルターバスケット
20a 扉部
20b バスケット
20bb 底部
20bt 上端縁
22 縦壁
22t 上端
22a 切り欠き
24 リブポケット
24b 最後端
30 抽出液容器
40 ドリッププレート
42 中央
図1
図2
図3
図4
図5