(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】シートレール装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2018202506
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良啓
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-30227(JP,U)
【文献】特開2013-35420(JP,A)
【文献】実開平3-121125(JP,U)
【文献】特開2007-230331(JP,A)
【文献】特開2018-90053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06-2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されるロアレールと、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対しスライド可能に設けられるアッパーレールと、
前記アッパーレールを前記ロアレールに対してスライドさせるための駆動部と、
を備えるシートレール装置であって、
前記ロアレールは、底壁と、前記底壁を介して対向し当該底壁に対してスライド方向に伸びるように連結する一側壁部及び他側壁部と、前記一側壁部の上端から前記底壁の一部と平行であってスライド方向に伸びるように延出する延出部と備え、
前記他側壁部の一部には、スライド方向に伸びるラックが設けられ、
前記アッパーレールには、前記延出部及び前記底壁の一部に対して上下方向にて転動する第1転動体と、前記一側壁部に対して転動する第2転動体と、前記ラックに噛合した状態で前記駆動部のモータによって回転するピニオンとが支持されることを特徴とするシートレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のシートを前後にスライドさせるためのシートレール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシートを前後にスライドさせるためのシートレール装置として、例えば、下記特許文献1に開示されるシートレール装置が知られている。このシートレール装置は、アッパーレールを構成する第1アッパーレール及び第2アッパーレールのそれぞれに設けられるローラーが、ロアレールに左右対称に設けられる一対の案内部により上下方向にて案内されるようにして、アッパーレールがロアレールに対してスライドする。これにより、アッパーレールが固定される車両用のシートを、ロアレールが固定される車両用フロアに対して前後方向にスライド可能に支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-186984号公報
【文献】特開2006-112528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような構成では、
図8に例示するように、ロアレール110において左右対称となるように設けられる一対の案内部111のそれぞれに対して、アッパーレール120に支持されたローラー等の転動体121を上下方向にて転動させている。しかしながら、このように上下方向にて転動体が転動する案内部をロアレールに対して左右一対設ける構成では、一対の案内部間を狭くしない限り左右方向の長さ(
図8の符号Wt参照)を小さくすることができず、ロアレールの更なる小型軽量化が困難になるという問題がある。
【0005】
このため、例えば、一方の案内部を無くすように設けた壁部にラックを形成し、このラックに噛合するピニオンを回転させる機構をアッパーレール側に組み付けることで、ロアレールの小型軽量化を図ることができる。このような構成では、アッパーレール側となるピニオンを、ロアレール側となるラックに常時噛合させる必要があり、このような機構に関する技術として、例えば、特許文献2に開示される伝動機構が知られている。この伝動機構では、ばね材による付勢力に応じて歯車(ピニオン)をラックに押し付けるように構成されている。
【0006】
しかしながら、上述のようなばね材を利用した噛合構成をシートレール装置に採用すると、ばね材をロアレールの所定の位置に固定する必要があるため、ロアレールに対するアッパーレールのスライド量が制限されてしまう。そうすると、ロングレール用のシートレール装置のように、ロアレールに対するアッパーレールのスライド量が多い場合には、ばね材を利用した噛合構成を採用できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、スライド量が多いシートレール装置であっても、アッパーレール側のピニオンをロアレール側のラックに常時噛合させ得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
車体に固定されるロアレール(20)と、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対しスライド可能に設けられるアッパーレール(30)と、
前記アッパーレールを前記ロアレールに対してスライドさせるための駆動部(50)と、
を備えるシートレール装置(10)であって、
前記ロアレールは、底壁(21)と、前記底壁を介して対向し当該底壁に対してスライド方向に伸びるように連結する一側壁部(22)及び他側壁部(23)と、前記一側壁部の上端から前記底壁の一部(21a)と平行であってスライド方向に伸びるように延出する延出部(24)と備え、
前記他側壁部の一部には、スライド方向に伸びるラック(26)が設けられ、
前記アッパーレールには、前記延出部及び前記底壁の一部に対して上下方向にて転動する第1転動体(41)と、前記一側壁部に対して転動する第2転動体(42)と、前記ラックに噛合した状態で前記駆動部のモータ(51)によって回転するピニオン(52)とが支持されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、ロアレールは、底壁と、底壁を介して対向し当該底壁に対してスライド方向に伸びるように連結する一側壁部及び他側壁部と、一側壁部の上端から底壁の一部と平行であってスライド方向に伸びるように延出する延出部と備え、他側壁部の一部には、スライド方向に伸びるラックが設けられる。そして、アッパーレールには、延出部及び底壁の一部に対して上下方向にて転動する第1転動体と、一側壁部に対して転動する第2転動体と、ラックに噛合した状態で駆動部のモータによって回転するピニオンとが支持される。
【0010】
このように、一方の案内部を無くすように設けた他側壁部のラックとアッパーレール側となるピニオンとを噛合させる構成とすることで、2つの案内部が設けられる従来のロアレールと比較して、ロアレールの小型軽量化を図ることができる。特に、ラックが設けられる他側壁部に対して底壁を介して対向する一側壁部に第2転動体が転動するため、この転動に応じてピニオンがラックに押し付けられるので、ピニオンとラックとを確実に常時噛合させることができる。したがって、スライド量が多いシートレール装置であっても、アッパーレール側のピニオンをロアレール側のラックに常時噛合させることで、ロアレールの小型軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るシートスライド装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、
図1に示すシートスライド装置の平面図であり、
図2(B)は、
図1に示すシートスライド装置の側面図である。
【
図3】
図2(B)のX-X断面を示す断面図である。
【
図4】
図1からロアレール等を除いた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、
図4に示すアッパーレール等の平面図であり、
図5(B)は、
図4に示すアッパーレール等の側面図である。
【
図6】
図4のアッパーレール等を前方から見た状態を拡大して示す拡大図である。
【
図7】ピニオンとローラー及びサイドローラーとを利用した支持状態を説明する説明図である。
【
図8】従来のロアレールに対するアッパーレールの支持状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るシートレール装置について図を参照して説明する。
本実施形態に係るシートレール装置10は、電動式スライドシートとして構成される車両用シート(図示略)を前後スライド可能に車両フロア(図示略)に固定する装置である。このシートレール装置10は、
図1及び
図2に示すように、主に、車両フロア(車体)に固定されるロアレール20と、車両用シートに固定されるアッパーレール30と、アッパーレール30をロアレール20に対してスライドさせるための駆動部50とをそれぞれ左右一対備えるように構成されている。また、シートレール装置10は、一対の駆動部50を駆動してロアレール20に対するアッパーレール30のスライド位置を調整するために操作される操作部(図示略)を備えている。以下、シートレール装置10の長手方向(
図2の左右方向)を前後方向として、シートレール装置10を構成する各要素について詳述する。なお、
図1及び
図2では、一組のロアレール20及びアッパーレール30等を備える一方のレールを図示しており、他方のレールに関しては、便宜上、図示を省略している。
【0013】
まず、一方のレールにおけるロアレール20の詳細構成について、図面を参照して説明する。
ロアレール20は、長尺のレール状に形成されており、
図2及び
図3に示すように、底壁21と、一側壁部22及び他側壁部23と、延出部24と、延出部24の内側端から垂下する内壁部25とを備えている。一側壁部22及び他側壁部23は、底壁21を介して対向し当該底壁21に対してスライド方向に伸びるように連結している。底壁21は、一側壁部22側となる一部(以下、対向部21aともいう)が他側壁部23側に対して底上げされるように形成されている。
【0014】
他側壁部23の上部には、後述するピニオン52に噛合するラック26が、スライド方向に伸びるように設けられている。特に、このラック26は、底壁21の内面から下端までの距離がスライド方向に沿って一定となるように配置されている。
【0015】
延出部24は、一側壁部22の上端から底壁21の対向部21aに対向してスライド方向に伸びるように延出している。すなわち、延出部24及び対向部21aは、後述するローラー41が上下方向にて転動するように互いに平行となっている。
【0016】
次に、一方のレールにおけるアッパーレール30の詳細構成について、図面を参照して説明する。
アッパーレール30は、電動式スライドシート用のアッパーレールであって、モータ51によるピニオン52の回転を利用してスライド制御を行なうための駆動部50が組み付けられている。このアッパーレール30は、ラック26に噛合するピニオン52と、ロアレール20に対して上下方向にて転動する2つのローラー41と左右方向にて転動する2つのサイドローラー42と、を支持することで、ロアレール20に対してピニオン52の回転に応じてスライドするように組み付けられている。なお、ローラー41は、「第1転動体」の一例に相当し、サイドローラー42は、「第2転動体」の一例に相当し得る。
【0017】
図4~
図6に示すように、アッパーレール30は、ピニオン52及びローラー41が支持されるアッパーレール本体31と、サイドローラー42が支持されるL字状の前側支持部32及び後側支持部33とを備えている。アッパーレール本体31は、シートに連結されるシート連結部31aと、前後2つのローラー41を支持するローラー支持部31bとが、連結部31cを介して対向するように連結して構成されている。シート連結部31aには、駆動部50が組み付けられており、この駆動部50は、ロアレール20への組み付け時にピニオン52がラック26に噛合するように配置されている。
【0018】
前側支持部32は、ピニオン52がラック26に噛合する状態では、サイドローラー42が一側壁部22に適度に押し付けられて転動するように形成されている。同様に、後側支持部33は、ピニオン52がラック26に噛合する状態では、サイドローラー42が一側壁部22に適度に押し付けられて転動するように形成されている。
【0019】
本実施形態では、他方のレールは、上述のように形成される一方のレールに対して左右対称となるように形成されている。このように形成されるロアレール20及びアッパーレール30等を備える一方のレールと他方のレールとは、他側壁部23が内側となるように左右に配置される。
【0020】
上述のように構成されるロアレール20及びアッパーレール30では、ローラー41が上下方向にて転動する案内部は、ロアレール20において延出部24及び対向部21aにより構成される一側壁部22側だけであるため、前後方向から見てレール断面が非対称であって、案内部が左右一対設けられる従来の構成(
図8参照)と比較して、左右方向の長さ(
図7の符号W参照)を小さくすることができる。
【0021】
次に、上述のように構成されるロアレール20とアッパーレール30との組み付け状態について、図面を参照して説明する。
図7等からわかるように、アッパーレール30の前方では、アッパーレール本体31の前側のローラー41が、延出部24及び対向部21aにより構成される案内部に案内され、前側支持部32のサイドローラー42が、一側壁部22に対して転動可能に押し付けられている。また、アッパーレール30の後方では、アッパーレール本体31の後側のローラー41が、延出部24及び対向部21aにより構成される案内部に案内され、後側支持部33のサイドローラー42が、一側壁部22に対して転動可能に押し付けられている。そして、アッパーレール30の長手方向中間部位では、駆動部50のピニオン52が他側壁部23の上部に設けられたラック26に噛合している。
【0022】
このような組み付け状態では、アッパーレール30は、
図7に示すように、ロアレール20に対して、前後のローラー41及びサイドローラー42とラック26に噛合するピニオン52とで支持されて、自立した状態となる。そして、この自立状態にて、モータ51によりピニオン52が回転することでアッパーレール30がロアレール20に対してスライドすると、アッパーレール30に支持されるローラー41が上下方向にて転動しサイドローラー42が左右方向にて転動する。このような転動状態により、スライド時のスライド荷重の低減が図られ、上下方向及び左右方向に関してスライド時のがたつきが抑制される。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係るシートレール装置10では、ロアレール20は、底壁21と、底壁21を介して対向し当該底壁21に対してスライド方向に伸びるように連結する一側壁部22及び他側壁部23と、一側壁部22の上端から底壁21の対向部21aと平行であってスライド方向に伸びるように延出する延出部24と備え、他側壁部23の一部には、スライド方向に伸びるラック26が設けられる。そして、アッパーレール30には、延出部24及び対向部21aに対して上下方向にて転動するローラー41と、一側壁部22に対して転動するサイドローラー42と、ラック26に噛合した状態で駆動部50のモータ51によって回転するピニオン52とが支持される。
【0024】
このように、一方の案内部を無くすように設けた他側壁部23のラック26とアッパーレール側となるピニオン52とを噛合させる構成とすることで、2つの案内部が設けられる従来のロアレールと比較して、ロアレールの小型軽量化を図ることができる。特に、ラック26が設けられる他側壁部23に対して底壁21を介して対向する一側壁部22にサイドローラー42が転動するため、この転動に応じてピニオン52がラック26に押し付けられるので、ピニオン52とラック26とを確実に常時噛合させることができる。したがって、スライド量が多いシートレール装置であっても、アッパーレール側のピニオン52をロアレール側のラック26に常時噛合させることで、ロアレール20の小型軽量化を図ることができる。
【0025】
なお、一方のレール及び他方のレールは、他側壁部23が内側となるように左右に配置されることに限らず、一側壁部22が内側となるように左右に配置されてもよい。また、一方のレール及び他方のレールは、一方のレールの他側壁部23と他方のレールの一側壁部22とが内側となるように左右に配置されてもよいし、一方のレールの一側壁部22と他方のレールの他側壁部23とが内側となるように左右に配置されてもよい。
【0026】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本実施形態では、ローラー41及びサイドローラー42は、一方のレールと他方のレールとで前後方向の位置がそれぞれ同じになるように配置されているが、これに限らず、一方のレールと他方のレールとで前後方向の位置が異なるように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10…シートレール装置
20…ロアレール
21…底壁
21a…対向部(底壁の一部)
22…一側壁部
23…他側壁部
24…延出部
26…ラック
30…アッパーレール
41…ローラー(第1転動体)
42…サイドローラー(第2転動体)
50…駆動部
51…モータ
52…ピニオン