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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】加飾パネル製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/12 20060101AFI20220810BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20220810BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20220810BHJP
   B29C 51/42 20060101ALI20220810BHJP
   B32B 21/08 20060101ALI20220810BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B29C51/12
B29C51/10
B29C51/14
B29C51/42
B32B21/08
B32B27/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018523938
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2017021840
(87)【国際公開番号】W WO2017217416
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2016117477
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 招次
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078278(JP,A)
【文献】特開平05-293895(JP,A)
【文献】特開平11-048408(JP,A)
【文献】特開2005-313345(JP,A)
【文献】特開2012-245637(JP,A)
【文献】特開2015-134466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が開口した第一のボックスと、前記第一のボックス側が開口した第二のボックスとを突き合わせることで構成される密閉空間を減圧可能な真空成形機を用いて、パネル基材の表面に、突板を含む加飾材を貼合した加飾パネルを製造する加飾パネル製造方法であって、
前記第一のボックス内に前記パネル基材を配置する工程と、
前記第一のボックスと前記第二のボックスとの境界に前記加飾材を配置した状態で、前記第一のボックスと前記第二のボックスとを突き合わせて、前記第一のボックスと前記加飾材により密閉される第一の空間、及び前記第二のボックスと前記加飾材により密閉される第二の空間を構成する工程と、
前記加飾材と対向する位置に配置された噴出孔から前記加飾材に蒸気を注入する工程と、
前記第一の空間が前記第二の空間よりも減圧された状態で、前記加飾材を所定の形状に成形する工程と、
前記加飾材を前記パネル基材の表面に貼合する工程と、を有し、
前記蒸気を注入する工程は、前記パネル基材を前記加飾材に接触させるよりも前に行うことを特徴とする加飾パネル製造方法。
【請求項2】
記加飾材は、表面保護層と、樹脂含浸突板と、基材接着層とを有し、
前記第一の空間と前記第二の空間を構成する際に、前記第一のボックスと前記第二のボックスとは、前記表面保護層もしくは前記基材接着層のどちらかに接触した状態で前記加飾材を挟み込むことを特徴とする請求項1に記載の加飾パネル製造方法。
【請求項3】
前記第一のボックス内には、前記加飾材を加熱するためのヒーターが配置され、
前記蒸気を注入する工程を実行中は、前記ヒーターが動作していることを特徴とする
請求項1又は2に記載の加飾パネル製造方法。
【請求項4】
前記噴出孔は、前記ヒーターの間に配置されることを特徴とする請求項3に記載の加飾パネル製造方法。
【請求項5】
前記突板は、樹脂を含浸させた樹脂含浸突板であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の加飾パネル製造方法。
【請求項6】
前記加飾材は、
前記樹脂含浸突板と、
前記パネル基材に接着する基材接着層と、を有することを特徴とする請求項に記載の加飾パネル製造方法。
【請求項7】
前記第一のボックス内に前記パネル基材を配置する工程では、前記第一のボックス内に設けられた可動台に前記パネル基材を載置し、
前記加飾材に蒸気を注入する工程では、前記可動台と対向する位置に配置された前記噴出孔から前記蒸気が排出されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の加飾パネル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル基材の表面に天然木の突板を含む加飾材を貼合した加飾パネルを製造する加飾パネル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアトリムやインストルメントパネル等の車両用内装部品には、高級感を出すために熱可塑性樹脂等からなる基材の表面に天然木の突板を含む加飾材を部分的に貼合することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、天然木の突板を含む加飾材を予め所定の形状に成形し、その後加飾材を成形型内にインサートし,基材樹脂を射出成形して加飾材をパネル基材に貼合する工法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-26082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来工法によれば予め加飾材を所定の形状に成形しておく必要があり、2つの型が必要なので工法が煩雑であり、意匠性に問題がある場合があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加飾材を簡易な工法でパネル基材に貼合することができ、意匠性の優れた加飾パネル製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、一方が開口した第一のボックスと、前記第一のボックス側が開口した第二のボックスとを突き合わせることで構成される密閉空間を減圧可能な真空成形機を用いて、パネル基材の表面に、突板を含む加飾材を貼合した加飾パネルを製造する加飾パネル製造方法であって、前記第一のボックス内に前記パネル基材を配置する工程と、前記第一のボックスと前記第二のボックスとの境界に前記加飾材を配置した状態で、前記第一のボックスと前記第二のボックスとを突き合わせて、前記第一のボックスと前記加飾材により密閉される第一の空間、及び前記第二のボックスと前記加飾材により密閉される第二の空間を構成する工程と、前記加飾材と対向する位置に配置された噴出孔から前記加飾材に蒸気を注入する工程と、前記第一の空間が前記第二の空間よりも減圧された状態で、前記加飾材を所定の形状に成形する工程と、前記加飾材を前記パネル基材の表面に貼合する工程と、を有し、前記蒸気を注入する工程は、前記パネル基材を前記加飾材に接触させるよりも前に行うことを特徴とする加飾パネル製造方法により解決される。
【0008】
上記の加飾パネル製造方法によれば、真空成形機により第一の空間が第二の空間よりも減圧された状態で、加飾材を所定の形状に成形しつつ、加飾材をパネル基材の表面に貼合することができるので簡易な工法で、かつ加飾材の形状がパネル基材に適合したものとなるので、意匠性の優れた加飾パネルを製造することができる。
【0009】
また、上記の加飾パネル製造方法において、前記加飾材を基材と同等の表面形状に成形する工程に先立って、前記加飾材と対向する位置に配置された噴出孔から前記加飾材に蒸気を注入する工程を有するので、突板を含む加飾材を蒸気により加熱することで変形しやすくなり、加飾材に含まれる突板の割れを防ぐことができる。
また、上記の加飾パネル製造方法において、前記加飾材は、表面保護層と、樹脂含浸突板と、基材接着層とを有し、前記第一の空間と前記第二の空間を構成する際に、前記第一のボックスと前記第二のボックスとは、前記表面保護層もしくは前記基材接着層のどちらかに接触した状態で前記加飾材を挟み込むとよい。
また、上記の加飾パネル製造方法において、前記第一のボックス内には、前記加飾材を加熱するためのヒーターが配置され、前記蒸気を注入する工程を実行中は、前記ヒーターが動作しているとよい。
また、上記の加飾パネル製造方法において、前記噴出孔は、前記ヒーターの間に配置されるとよい
【0010】
また、上記の加飾パネル製造方法において、前記突板は、樹脂を含浸させた樹脂含浸突板であることとしてよい。
こうすることで、突板内部に含まれる樹脂が応力集中を緩和することで、パネル基材に貼合する際に、さらに加飾材に含まれる突板の割れを防ぐことができる。
【0011】
また、上記の加飾パネル製造方法において、前記加飾材は、前記樹脂含浸突板と、前記パネル基材に接着する基材接着層と、を有することとしてよい。
こうすることで、加飾材をパネル基材に好適に接着できる。
また、上記の加飾パネル製造方法において、前記第一のボックス内に前記パネル基材を配置する工程では、前記第一のボックス内に設けられた可動台に前記パネル基材を載置し、前記加飾材に蒸気を注入する工程では、前記可動台と対向する位置に配置された前記噴出孔から前記蒸気が排出されることとしてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な工法で加飾材をパネル基材に貼合することができ意匠性の優れた加飾パネルを製造することができる。
【0013】
また、本発明の一態様では、加飾材をパネル基材に貼合する際に、加飾材を蒸気により加熱することでより変形しやすくなり、加飾材に含まれる突板の割れを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、突板内部に含まれる樹脂が応力集中を緩和することで、パネル基材に貼合する際に、加飾材に含まれる突板の割れを防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の一態様では、加飾材をパネル基材に好適に接着できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】真空成形機を用いた加飾パネルの製造工程を説明する図である。
図2】真空成形機を用いた加飾パネルの製造工程を説明する図である。
図3】真空成形機を用いた加飾パネルの製造工程を説明する図である。
図4】真空成形機を用いた加飾パネルの製造工程を説明する図である。
図5】真空成形機を用いた加飾パネルの製造工程を説明する図である。
図6】真空成形機を用いた加飾パネルの製造工程を説明する図である。
図7】真空成形機を用いた加飾パネルの製造工程を説明する図である。
図8】加飾パネルの断面図である。
図9】加飾材の構成を示す斜視図である。
図10】加飾材の断面図である。
図11】本実施形態に係る製造工程により製造した加飾パネルを備えるドアトリム5の一例を示す図である。
図12図11のXII-XII断面図である。
図13図11のXIII-XIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1乃至図13を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る加飾パネル製造方法について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0018】
本実施形態に係る加飾パネル製造方法は、一方が開口した第一のボックスと、第一のボックス側が開口した第二のボックスとを突き合わせることで構成される密閉空間を減圧可能な真空成形機を用いて、パネル基材の表面に、突板を含む加飾材を貼合した加飾パネルを製造する方法である。
まず、本実施形態に係る加飾パネル製造方法の概要について説明する。本実施形態に係る加飾パネル製造方法は、以下の工程(1)~(8)を有する。
(1)第一のボックスとしての下ボックス内に設けられた上下可動の台にパネル基材を載置する工程
(2)下ボックスと第二のボックスとしての上ボックスとの境界に加飾材を配置した状態で、上ボックスと下ボックスとを突き合わせて、下ボックスと加飾材により密閉される第一の空間としての下空間、及び上ボックスと加飾材により密閉される第二の空間としての上空間を構成する工程
(3)下空間と上空間をそれぞれ減圧する工程
(4)上ボックス内に設けられたヒーターにより加熱する工程
(5)加飾材を所定の形状に成形するのに先立って加飾材を蒸気により加熱する工程
(6)台を上に移動させてパネル基材の表面を加飾材に当接させる工程
(7)上空間の減圧を解除するとともに加飾材を所定の形状に成形しつつ、加飾材をパネル基材の表面に貼合する工程
(8)加飾材を真空成形機から取り出す工程
【0019】
以下、上記の各工程の詳細について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、加飾パネルとは、例えば車両のドアトリムやインストルメントパネル等の内装部品の一部に用いられる部材とする。
【0020】
[真空成形機1の説明]
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る加飾パネルの製造工程に用いられる真空成形機1の構成の概要について説明する。なお、図1(及び図2図7)は、真空成形機1の断面を模式的に示したものである。
【0021】
図1に示されるように、真空成形機1は、上部ユニット10と下部ユニット20を備える。
【0022】
上部ユニット10は、第のボックスとしての上ボックス11、上ボックス11の内部に配されるヒーター12を備える。本実施形態では、ヒーター12は、上ボックス11の内壁の上面に取り付けられており、例えば複数の加熱素子から構成されることとしてよい。
【0023】
上ボックス11は、一方が開口した箱型のチャンバー部材である。具体的には、上ボックス11は、下面の一部が開口している。上ボックス11は、上下に移動可能となっており、後述する下ボックス21と突き合わせることにより、上ボックス11の内部空間を密閉することができる。
【0024】
図1に示されるように、上ボックス11の内壁には、配管14、配管16、配管19が連結されている。
【0025】
配管14は、蒸気供給装置13からの加熱蒸気を上ボックス11の内部に供給する管である。また、配管14において、上ボックス11と蒸気供給装置13とを接続する間の一部に開閉弁15が設けられている。そして、開閉弁15を開いている間のみ、上ボックス11の内部に加熱蒸気が供給されるようになっている。
【0026】
配管16は、その一部に開閉弁17が設けられており、上ボックス11の内部空間を閉じて減圧する際には、開閉弁17を閉じる。その後、開閉弁17を開くことにより、減圧した上ボックス11の内部空間の圧力を大気圧に戻すことができる。
【0027】
配管19は、開閉弁18、配管25を介して吸引ポンプ24に接続している。上ボックス11の内部空間を密閉した後に、開閉弁18を開けた状態で吸引ポンプ24により空気を吸引することで、上ボックス11の内部空間を減圧状態(真空状態)にすることができる。
【0028】
次に、下部ユニット20について説明する。図1に示されるように、下部ユニット20は、第のボックスとしての下ボックス21、下ボックス21の内部に配される台22A、台22Aを上下動可能とする可動機構22を備える。
【0029】
下ボックス21は、上ボックス11側が開口した箱型のチャンバー部材である。具体的には、下ボックス21は上面の一部が開口している。なお、上ボックス11と下ボックス21の開口部はそれぞれ対向する位置に設けられている。また、上述したように、下ボックス21は上ボックス11と突き合わせることで、下ボックス21の内部空間を密閉することができる。すなわち、上ボックス11と下ボックス21を突き合わせることにより構成される空間は密閉空間となる。
【0030】
図1に示されるように、下ボックス21の内壁には、配管25が連結されている。
配管25は、下ボックス21と吸引ポンプ24を連結する管であり、配管25と吸引ポンプ24の間には開閉弁26が設けられる。下ボックス21の内部空間を密閉した後に、開閉弁26を開けた状態で吸引ポンプ24により空気を吸引することで、下ボックス21の内部空間を減圧状態(真空状態)にすることができる。
【0031】
[加飾パネルの製造工程の説明]
次に、図1乃至図7に基づいて、真空成形機1を用いて行われる、パネル基材2に加飾材3を貼合して加飾パネルを製造する工程の詳細について説明する。なお、初期状態においては、開閉弁15、開閉弁17、開閉弁18、開閉弁26は全て閉じておくこととする。
【0032】
[工程(1)]
まず、図1に示されるように、台22Aの上にパネル基材2を載置する。具体的には、台22Aの上には、パネル基材2の下面形状に沿った基材支持部30が設置されており、基材支持部30の上にパネル基材2の下面を当接させた状態で配置する。これにより、パネル基材2が可動機構22に対して位置が固定される。
なお、パネル基材2は、例えば射出成形等により製造した樹脂からなる部材としてよい。
【0033】
また、図1に示されるように、下ボックス21の開口部を覆うように加飾材3が載置される。すなわち、加飾材3により、下ボックス21の内部空間が密閉されるように、加飾材3を配置する。
【0034】
加飾材3は突板を含む。なお、突板とは、木材を薄くスライスした板材である。
ここで、本実施形態に係る加飾材3の構成例については、図9及び図10を参照しながら説明する。図9及び図10に示されるように、加飾材3は、下から順に基材接着層3C、樹脂含浸突板3B、表面保護層3Aが積層された部材である。
【0035】
表面保護層3Aは、クリア塗装又は透明フィルムにより構成される、加飾材3の表面を保護する層である。
【0036】
樹脂含浸突板3Bは、突板(例えば天然木の薄板材)に樹脂(例えば合成樹脂)を含浸させた部材である。このように、突板内部の導管や繊維に樹脂が含まれることにより、突板内部の応力集中が緩和可能となっている。
【0037】
基材接着層3Cは、パネル基材2に接着する層である。例えば基材接着層3Cに加熱により硬化する熱硬化性樹脂を用いることで、加熱工程によりパネル基材2と加飾材3とを接着させることができる。
加飾材3は、図9及び図10に示すように中央部分にだけ樹脂含浸突板3Bを有し、外周部分には表面保護層3Aと基材接着層3Cだけが積層されている。
【0038】
[工程(2)]
次に、図2に示されるように、上ボックス11が加飾材3と当接するまで上ボックス11を下側に移動させて、上ボックス11と下ボックス21により加飾材3を挟み込むようにする。
換言すれば、上ボックス11と下ボックス21とを突き合わせることで、上ボックス11と下ボックス21により加飾材3を挟み込むようにする。
このとき表面保護層3Aと基材接着層3Cだけが挟み込まれることになり、樹脂含浸突板3Bは挟み込まれない。
【0039】
本工程により、上ボックス11と加飾材3により密閉される上空間10Aと、下ボックス21と加飾材3により密閉される下空間20Aが構成される。
なお、本工程の際には、ヒーター12のスイッチをONとして、加熱を開始することとしてよい。以後、ヒーター12による加熱は工程終了まで継続する。また、図面においては、ヒーター12がONである状態を、ヒーター12を黒く塗ることにより表している。
【0040】
[工程(3),(4)]
次に、開閉弁18と、開閉弁26を開いた後に、吸引ポンプ24により上空間10Aと下空間20Aの減圧を開始し、それぞれを真空状態にまで減圧する。図3には、真空状態にまで減圧される上空間10Aと下空間20Aの状態を示している。本実施形態においては、真空状態である場合を、内部をドットで埋めることにより表している。
なお、真空状態にまで減圧した後には、開閉弁18と開閉弁26を再び閉じることとしてよい。
また、上空間10Aと下空間20Aを減圧した状態においても、ヒーター12による加熱工程を実行する(工程(4))。
【0041】
[工程(5)]
次に、図5に示されるように、加飾材3をパネル基材2に沿って変形させるに先立って、蒸気供給装置13からの加熱蒸気Sを上空間10Aに注入する。これにより突板(樹脂含浸突板3B)を含む加飾材3を変形しやすくする。
【0042】
[工程(6)]
次に、図5に示されるように、可動機構22により台22Aを上に移動させて、パネル基材2を加飾材3に近付ける。こうして、パネル基材2の表面が加飾材3の基材接着層3Cに当接する。
【0043】
[工程(7)]
次に、図6に示されるように、上空間10Aの圧力が、開閉弁17を開くことにより減圧状態から大気圧に戻されるとともに、蒸気供給装置13による加熱蒸気により加圧状態に切り替わる。
また、可動機構22により台22Aを更に上に移動させて、パネル基材2を加飾材3に対して強く押し当てることで加飾材3をパネル基材2の表面に沿った形状に成形する。こうすることで、加飾材3を、パネル基材2の表面に沿った所定の形状に成形する。
この際、加飾材3をヒーター12に近づけてより加飾材3を加熱する。このとき表面保護層3Aと基材接着層3Cだけが挟み込まれているので、突板に負荷がかからず、樹脂含浸突板3Bが割れることを抑制できる。
【0044】
本工程では、上空間10Aを加圧する一方で、下空間20Aは真空状態に維持する。これにより生じる上空間10Aと下空間20Aの圧力差により、加飾材3が上からパネル基材2に対して強く付けられると同時に、台22Aからの支持によりパネル基材2も下から加飾材3に対して強く押し付けられる。
この際、加熱蒸気Sとヒーター12による加熱により、加飾材3の樹脂含浸突板3Bが柔軟に変形しやすくする。これにより、樹脂含浸突板3Bが割れることを抑制できる。
また、樹脂含浸突板3Bには樹脂が含浸されているため、その点でも応力集中が緩和され、更に割れにくくなる。
そして、本工程により、パネル基材2に加飾材3が貼合され、加飾パネル4が形成される。
【0045】
[工程(8)]
次に、上記工程(7)の後に、必要に応じて加飾パネル4を冷却してから、上ボックス11を上部に移動させて、加飾パネル4を真空成形機1から取り出す。
【0046】
図8には、上記工程により製造された加飾パネル4の断面構成を示した。図8に示されるように、パネル基材2は、基材接着層3Cにより加飾材3と接着される。また、樹脂含浸突板3Bの上には、表面保護層3Aが設けられることで、樹脂含浸突板3Bの表面を保護することができる。
【0047】
以上説明した、真空成形機1を用いた加飾パネル4の製造方法によれば、上空間10Aと下空間20Aの間に圧力差が生じて、加飾材3がパネル基材2に押し当てられる際に、加熱蒸気Sを加飾材3に当てることにより、樹脂含浸突板3Bを含む加飾材3が変形しやすくなる。これにより、加飾材3をパネル基材2に貼合する際に、加飾材3に含まれる樹脂含浸突板3Bの割れを防ぐことができる。
【0048】
また、加飾材3をパネル基材2に貼合する際に、加飾材3をヒーター12で加熱することでより変形させやすくすることで、加飾材3に含まれる樹脂含浸突板3Bの割れを防ぐことができる。
【0049】
また、加飾材3の突板に、樹脂含浸突板3Bを用いることで、加飾材3内部の応力集中を緩和できる。これにより、加飾材3をパネル基材2に貼合する際に、加飾材3の割れを防ぐことができる。
【0050】
また、加飾材3が樹脂含浸突板3Bと基材接着層3Cを有するように構成することで、加飾材3をパネル基材2に好適に接着することができる。
【0051】
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、工程(2)と工程(3)の間に、開閉弁15を一旦開いて、蒸気供給装置13からの加熱蒸気Sを加飾材3に当てるようにしてもよい。
また、工程(3)を行いながら、加熱蒸気Sを加飾材3に当てるようにしてもよい。
また、工程(5)は、パネル基材2が加飾材3に当接する前に開始してもよい。
また、工程(4)、(5)は、省略してもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、第一のボックスと第二のボックスを上下に配置したが、第一のボックスと第二のボックスは左右に配置してもよい。
【0053】
次に、図11乃至図13には、本実施形態に係る加飾パネル製造方法より製造される加飾材3の一例を示した。
【0054】
図11は、乗用車のドアの室内側の側面に設けられるドアトリム5を示す。そして、ドアトリム5のスイッチ部6の周囲には、加飾パネル4Aが設けられる。また、ドアトリム5のトリムアッパー部には、加飾パネル4Bが設けられる。
【0055】
図12に示されるように、加飾パネル4Aは、断面がM字形状であり、中央上部にスイッチ部6が配される。そして、加飾パネル4Aは、パネル基材2の上に、突板を含む加飾材3を貼合して構成される。本実施形態に係る加飾パネル製造方法によれば、このような複雑な3次元形状のパネル基材2に対しても、突板を含む加飾材3を好適に貼合して加飾パネル4Aを製造できる。
【0056】
図13に示されるように、加飾パネル4Bは、断面が湾曲した形状である。そして、加飾パネル4Bは、パネル基材2の上に、突板を含む加飾材3を貼合して構成される。本実施形態に係る加飾パネル製造方法によれば、このような湾曲した3次元形状のパネル基材2に対しても、突板を含む加飾材3を好適に貼合して加飾パネル4Bを製造できる。
【符号の説明】
【0057】
1 真空成形機
2 パネル基材
3 加飾材
3A 表面保護層
3B 樹脂含浸突板
3C 基材接着層
4 加飾パネル
4A 加飾パネル
4B 加飾パネル
5 ドアトリム
6 スイッチ部
10 上部ユニット
10A 上空間
11 上ボックス
12 ヒーター
13 蒸気供給装置
14 配管
15 開閉弁
16 配管
17 開閉弁
18 開閉弁
19 配管
20 下部ユニット
20A 下空間
21 下ボックス
22 可動機構
22A 台
24 吸引ポンプ
25 配管
26 開閉弁
30 基材支持部
S 加熱蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13