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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20220810BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
F02D13/02 H
F02D13/02 J
F02D45/00 364A
F02D45/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018058924
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019173566
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】板野 良輔
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】戸田 仁司
(72)【発明者】
【氏名】忠永 剛
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053244(JP,A)
【文献】特開平10-141098(JP,A)
【文献】特開平04-269339(JP,A)
【文献】特開2010-216300(JP,A)
【文献】特許第2749226(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/02
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁又は排気弁の何れか一方或いは双方の開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング機構を有する内燃機関の制御装置であって、
大気圧を検出する大気圧検出手段と、
吸気通路を流通する空気量に基づいて充填効率を算出する充填効率算出手段と、
前記空気量と前記大気圧検出手段によって検出した前記大気圧とから体積効率を算出する体積効率算出手段と、
前記可変バルブタイミング機構による前記吸気弁の開弁時期を設定する開弁時期設定手段と
を備え、
前記開弁時期設定手段は、
前記充填効率算出手段による前記充填効率に基づいて前記吸気弁の開弁時期を算出する充填効率開弁時期算出部と、
前記体積効率算出手段による前記体積効率に基づいて前記吸気弁の開弁時期を算出する体積効率開弁時期算出部と
を有し、
前記充填効率開弁時期算出部により算出された開弁時期と前記体積効率開弁時期算出部により算出された開弁時期との何れか一方に基づいて前記吸気弁又は前記排気弁の何れか一方或いは両方の開弁時期を設定 し、
前記充填効率開弁時期算出部による充填効率開弁時期と前記体積効率開弁時期算出部による体積効率開弁時期の内、開弁時期がより進角側に設定されるものを、前記吸気弁の開弁時期として設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関は過給手段を備え、
前記体積効率開弁時期算出部は、目標トルク算出部により算出された目標トルクが、前記過給手段により過給される範囲にある際は、前記過給手段による過給を実現可能な開弁時期のうち最も遅い時期を、前記吸気弁の開弁時期として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記体積効率開弁時期算出部は、前記目標トルク算出部により算出された前記目標トルクが、前記過給手段により過給されない範囲にある際は、前記吸気弁の開弁時期を最も遅い時期に設定する
ことを特徴とする請求項に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転状態に応じて最適なバルブオーバラップ量となるように可変バルブタイミング機構を制御して、エンジンの出力を充分に確保しつつ触媒の熱害発生の可能性を低減した内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるエンジンには、近年、吸気弁を開く時期(吸気開時期)と排気弁を閉じる時期(排気閉時期)とを連続的に変更可能な可変バルブタイミング機構(VVT機構)を具備するものがある。このVVT機構を制御することで、バルブオーバラップ量(吸気開時期から排気閉時期までの区間)を連続的に変更することが可能である。一般的に、低中負荷領域においてはバルブオーバラップ量を増大させ、内部EGR量を増大させることにより排出ガス浄化性能の向上とポンピング損失の低減による燃費の向上が図られている。一方、高負荷域においては、出力を向上させるという観点から吸気開時期及び排気閉時期をVVT機構で制御しており、バルブオーバラップ量について言えば、エンジン回転速度の上昇に伴って比較的小さい状態から大きい状態に変化し、そして再度小さい状態へと変化することになる。このように吸気弁を開くタイミング(吸気開時期)及び排気弁を閉じるタイミング(排気閉時期)は運転状態に応じて適宜制御されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2749226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したバルブオーバラップ量は、通常、平地(標準状態)の運転状態に合わせて設定されているため、平地の運転状態では、勿論、問題なく設定されるが、例えば、大気圧の低い高地では、空気密度が低下し、特に、高負荷領域では必要な空気吸入量が得られず、所望の出力が得られないという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、エンジンの出力を充分に確保しつつ高地においても出力の低下を抑制できるようにVVT位相角を設定できる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の態様は、吸気弁又は排気弁の何れか一方或いは双方の開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング機構を有する内燃機関の制御装置であって、大気圧を検出する大気圧検出手段と、吸気通路を流通する空気量に基づいて充填効率を算出する充填効率算出手段と、前記空気量と前記大気圧検出手段によって検出した前記大気圧とから体積効率を算出する体積効率算出手段と、前記可変バルブタイミング機構による前記吸気弁の開弁時期を設定する開弁時期設定手段とを備え、前記開弁時期設定手段は、前記充填効率算出手段による前記充填効率に基づいて前記吸気弁の開弁時期を算出する充填効率開弁時期算出部と、前記体積効率算出手段による前記体積効率に基づいて前記吸気弁の開弁時期を算出する体積効率開弁時期算出部とを有し、前記充填効率開弁時期算出部により算出された開弁時期と前記体積効率開弁時期算出部により算出された開弁時期との何れか一方に基づいて前記吸気弁又は前記排気弁の何れか一方或いは両方の開弁時期を設定することを特徴とする内燃機関の制御装置にある。
【0007】
かかる態様では、充填効率に基づいて吸気弁の開弁時期を算出する充填効率開弁時期算出部と、体積効率に基づいて吸気弁の開弁時期を算出する体積効率開弁時期算出部とを有し、充填効率開弁時期算出部により算出された開弁時期と体積効率開弁時期算出部により算出された開弁時期との何れか一方に基づいて吸気弁又は排気弁の何れか一方或いは両方の開弁時期を設定するように制御することにより、高地での最大出力が実現できるようにVVT位相角を設定することができる。
【0008】
ここで、前記開弁時期設定手段は、前記充填効率開弁時期算出部による充填効率開弁時期と前記体積効率開弁時期算出部による体積効率開弁時期の内、開弁時期がより進角側に設定されるものを、前記吸気弁の開弁時期として設定することが好ましい。
【0009】
これによれば、充填効率開弁時期と体積効率開弁時期とに乖離がある場合、すなわち、標高による大気圧の影響により、充填効率開弁時期と体積効率開弁時期とで目標位相角が異なる場合、より進角側の目標位相角を用いることで、吸入空気量が減ることを防ぎ、出力低下を防ぐことができる。
【0010】
また、前記内燃機関は過給手段を備え、前記体積効率開弁時期算出部は、目標トルク算出部により算出された目標トルクが、前記過給手段により過給される範囲にある際は、前記過給手段による過給を実現可能な開弁時期のうち最も遅い時期を、前記吸気弁の開弁時期として算出することが好ましい。
【0011】
これによれば、体積効率開弁時期算出手段による開弁時期を、過給可能な開弁時期のうち最も遅い時期として設定することで、大気圧(標高)の影響により、過給可能な領域が変化する場合でも、出力を実現でき燃費の良い体積効率開弁時期を用いることができる。
【0012】
また、前記体積効率開弁時期算出部は、前記目標トルク算出部により算出された前記目標トルクが、前記過給手段により過給されない範囲にある際は、前記吸気弁の開弁時期を最も遅い時期に設定することが好ましい。
【0013】
これによれば、大気圧(標高)の影響を受け難い非過給域においては、体積効率開弁時期を最遅角に設定することで、充填効率開弁時期が確実に選択されるようにし、バルブオーバラップによる燃焼悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明の内燃機関の制御装置では、充填効率に基づいて吸気弁の開弁時期を算出する充填効率開弁時期算出部と、体積効率に基づいて吸気弁の開弁時期を算出する体積効率開弁時期算出部とを有し、充填効率開弁時期算出部により算出された開弁時期と体積効率開弁時期算出部により算出された開弁時期との何れか一方に基づいて吸気弁又は排気弁の何れか一方或いは両方の開弁時期を設定するように制御することにより、高地であっても出力の低下を抑制できるようにVVT位相角を設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る制御装置を含むエンジンシステムの概略構成図である。
図2】実施形態1に係る平地及び高地の充填効率と目標吸気開弁時期との関係を示す図である。
図3】実施形態1に係る平地及び高地の充填効率と排気閉弁時期との関係を示す図である。
図4】実施形態1に係るタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に基づいて本発明について説明する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る制御装置を含むエンジンシステムの概略構成を示す図である。以下、本実施形態では、この制御装置を吸気管噴射型ガソリンエンジンに適用した場合を例に採って説明する。
【0017】
図1に示すエンジン11は、吸気管噴射型(Multi Point Injection)のエンジンであり、シリンダヘッド12とシリンダブロック13とを有している。シリンダブロック13の各シリンダ14内には、ピストン15が往復移動自在に収容されている。このピストン15とシリンダ14とシリンダヘッド12とで燃焼室16が形成されている。ピストン15は、コンロッド17を介してクランクシャフト18に接続されている。ピストン15の往復運動は、コンロッド17を介してクランクシャフト18に伝達される。
【0018】
シリンダヘッド12には吸気ポート19が形成されている。この吸気ポート19には吸気マニホールド20が接続されている。吸気ポート19には吸気弁22が設けられており、この吸気弁22は、エンジン回転に応じて回転するカムシャフト23の吸気カム23aに倣って作動して燃焼室16と吸気ポート19との連通・遮断を行うように構成されている。吸気マニホールド20には、例えば、電磁式の燃料噴射弁24が設けられ、この燃料噴射弁24には、図示しないが、燃料バルブを介して燃料タンクを擁した燃料供給装置が接続されている。
【0019】
シリンダヘッド12には、さらに排気ポート25が形成されている。この排気ポート25には排気マニホールド26の一端が接続され、排気マニホールド26の他端には排気管(排気通路)27が接続されている。なお、排気ポート25には排気弁28が設けられており、排気弁28は、吸気ポート19における吸気弁22と同様に、カムシャフト29の排気カム29aに倣って作動して燃焼室16と排気ポート25との連通・遮断を行うように構成されている。
【0020】
シリンダヘッド12には、各カム23a,29aの回転位相を進角或いは遅角させることで吸気弁22及び排気弁28の開閉タイミングを可変させる可変バルブタイミング機構(VVT機構)30,31が設けられている。これらの可変バルブタイミング機構30,31によって吸気弁及び排気弁を駆動する各カム23a,29aのクランクシャフトに対する位相をそれぞれ変更することで、吸気弁22を開く時期である吸気開時期と排気弁28を閉じる時期である排気閉時期を変更できるようになっている。
【0021】
可変バルブタイミング機構30,31としては、公知の種々のものを適用することができる。例えば、各カム23a,29aの位相を連続的に変更可能な油圧式のものが好適に用いられる。また、本実施形態では、可変バルブタイミング機構30,31が吸気カム23a及び排気カム29aにそれぞれ設けられているが、可変バルブタイミング機構30,31は吸気カム23a又は排気カム29aの何れか一方に設けられていてもよい。
【0022】
シリンダヘッド12には、気筒毎に点火プラグ32が取り付けられている。各点火プラグ32には、高電圧を出力する点火コイル33が接続されている。吸気マニホールド20の上流側にはサージタンク34が設けられている。サージタンク34の上流側には吸気量を調整するスロットルバルブ35が設けられており、併せてスロットルバルブ35の開度を検出するスロットルポジションセンサ(TPS)36が設けられている。なおスロットルバルブ35は、図示しないがアクセルペダルの操作に連動して開度が調整される。またスロットルバルブ35の上流には、吸気量を計測するエアフローセンサ37が介装されている。
【0023】
ECU(電子コントロールユニット)41は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えている。このECU41によって、エンジン11の総合的な制御が行われる。ECU41の入力側には、上述したスロットルポジションセンサ36、エアフローセンサ37等の他、エンジン11のクランク角を検出するクランク角センサ42や、エンジン11の水温を検出する水温センサ43、さらには大気圧を検出する大気圧検出手段である大気圧センサ44等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。
【0024】
一方、ECU41の出力側には、上述の燃料噴射弁24、点火コイル33、VVT機構30,31、スロットルバルブ35等の各種出力デバイスが接続されている。これら各種出力デバイスは、各種センサ類からの検出情報に基づきECU41から所定の情報が出力されている。
【0025】
本実施形態の制御装置100は、このような各種センサとECU41とで構成されており、以下に詳述する。
制御装置100は、各種センサ類によって検出したエンジン11の運転状態等の情報に基づき、目標トルクを算出する目標トルク算出手段110を具備する。目標トルク算出手段110は、運転状態検出手段であるクランク角センサ42によって検出されたエンジン11のエンジン回転速度Neと、アクセル開度に基づいた運転状況に応じて目標トルクを算出する。
【0026】
また、制御装置100は、目標トルク算出手段110が算出した目標トルクに基づき、目標充填効率を算出する充填効率算出手段120と、目標トルク算出手段110が算出した目標トルクと大気圧センサ44によって検出した大気圧とから、目標トルクに基づく目標体積効率を算出する体積効率算出手段130とを具備する。なお、充填効率算出手段120は、目標トルクに基づいて目標充填効率を算出したが、例えば、クランク角センサ42によって検出されたエンジン11のエンジン回転速度Neと吸気マニホールド20の圧力によって目標充填効率を算出してもよい。
【0027】
ここで、体積効率は、4ストロークエンジンにおける吸込能力を表す効率である。充填効率は、燃焼に寄与する新気の絶対量を表す指標であり、標準大気条件での行程容積を占める乾燥新気の質量に対する吸入乾燥新気の質量で表される。一方、体積効率は、行程容積に対する吸入乾燥新気の容量で表され、大気圧や大気温度に依存しない指標である。
【0028】
また、制御装置100は、可変バルブタイミング機構30,31により吸気弁22及び排気弁28の開弁時期を設定する開弁時期設定手段140を具備する。
【0029】
ここで、開弁時期設定手段140は、目標充填効率に基づいて、すなわち、目標充填効率と、所定の充填効率に対して設定可能な吸気弁22の開弁時期との関係を示すマップなどに基づいて、吸気弁22の開弁時期(以下、Ec目標位相角ともいう)を算出する充填効率開弁時期算出部141と、目標体積効率に基づいて、すなわち、目標体積効率と、所定の体積効率に対して設定可能な吸気弁22の開弁時期との関係を示すマップなどに基づいて、吸気弁22の開弁時期(以下、Ev目標位相角ともいう)を算出する体積効率開弁時期算出部142とを具備する。
【0030】
そして、本実施形態では、開弁時期設定手段140は、吸気弁22の開弁時期を設定する際には、充填効率開弁時期算出部141が算出したEc目標位相角と、体積効率開弁時期算出部142が算出したEv目標位相角との何れかを用いる。このように、本実施形態では、Ec目標位相角及びEv目標位相角は、吸気弁22についてのみ算出するようにしたが、排気弁28についても、Ec目標位相角及びEv目標位相角を算出し、何れかを排気弁28の開弁時期としてもよい。
【0031】
ここで、開弁時期設定手段140は、吸気弁22の開弁時期を設定する際には、充填効率開弁時期算出部141が算出したEc目標位相角と、体積効率開弁時期算出部142が算出したEv目標位相角との何れかを選択するかは、所定条件に基づいて選択すればよい。詳細は後述するが、例えば、全ての開弁時期が選択できる、充填効率又は体積効率の範囲においては、Ec目標位相角を選択し、一部の開弁時期が選択できない、充填効率又は体積効率の範囲においては、Ev目標位相角を選択するようにすることができる。また、例えば、大気圧センサ44における大気圧が所定気圧より低圧になった場合、すなわち、所定標高以上の高地となった場合には、Ev目標位相角を選択し、それ以外にはEc目標位相角を選択することができる。また、例えば、常にEc目標位相角とEv目標位相角とを比較し、進角側の開弁時期を選択するようにすることができる。
【0032】
何れにしても、平地運行など特に問題が生じない場合には、Ec目標位相角を選択し、高地運行など必要な空気吸入量が得られない場合には、Ev目標位相角を選択するようにすればよい。本実施形態では、開弁時期設定手段140は、常にEc目標位相角とEv目標位相角とを比較し、進角側の開弁時期を選択するようにした。
【0033】
このような制御装置100においては、エンジン11の運転状態等の情報に基づき、目標トルク算出手段110が目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき、充填効率算出手段120は、目標充填効率を算出する。また、体積効率算出手段130は、目標トルク算出手段110が算出した目標トルクと大気圧センサ44によって検出した大気圧とから、目標体積効率を算出する。
【0034】
次に、充填効率開弁時期算出部141は、目標充填効率から、上述したマップなどを用いてEc目標位相角を算出し、体積効率開弁時期算出部142は、目標体積効率から、上述したマップなどを用いてEv目標位相角を算出する。そして、開弁時期設定手段140は、前述のEc目標位相角とEv目標位相角の何れかを用いる。このように、本実施形態では、Ec目標位相角及びEv目標位相角は、吸気弁22についてのみ算出するようにしたが、排気弁28についても、Ec目標位相角及びEv目標位相角を算出し、何れかを排気弁28の開弁時期としてもよい。
【0035】
ここで、目標吸気開時期(目標IO)及び目標排気閉時期(目標EC)は、Ec目標位相角及びEv目標位相角の何れか一方を選択し、吸気弁22の開弁時期を設定すると共に、排気弁28の閉弁時期を設定する。そして、開弁時期設定手段140は、上述したように、吸気開時期と排気閉時期の目標値を適宜設定し、実際の吸気開時期及び排気閉時期がこの目標値となるようにVVT機構30,31をフィードバック制御する。
【0036】
図2には、平地及び高地における充填効率と吸気開弁時期の位相との関係の一例を示す。位相はマイナス側が進角、プラス側が遅角であり、領域Cは、その領域内で開弁時期を設定すると、目標吸入空気量が実現できない領域である。図2(a)は、平地のグラフであり、図2(b)は、高地のグラフであり、領域Cは、高地になると範囲が大きくなる。
【0037】
実線で示したグラフは、充填効率を因数とした場合のEc目標位相角を示し、破線で示したグラフは、体積効率を因数とした場合のEv目標位相角を示す。平地では、両者はほぼ一致するが、高地では、充填効率を因数としたEc目標位相角は、点Xを越えた領域で、領域Cに入り込んでしまうが、体積効率を因数としたEv目標位相角は、領域Cの外側にある。
【0038】
よって、本実施形態では、平地や高地の点Xを越えるまでは、充填効率を因数としたEc目標位相角を選択するが、点Xを越えて、Ev目標位相角がEc目標位相角より進角側に位置するようになると、Ev目標位相角を選択する。
【0039】
図3は、充填効率と排気閉弁時期の位相との関係の一例を示したグラフであり、図3(a)は平地、図3(b)は高地の場合である。図3(a)に示すように、平地の場合には、結果的に全域において充填効率を因数としたEc目標位相角を選択する。高地の場合には、点Xを越えるまでは充填効率を因数としたEc目標位相角を選択するが、点Xを越えた領域では充填効率を因数としたEc目標位相角と体積効率を因数としたEv目標位相角とが異なるので、進角側に位置する体積効率を因数としたEv目標位相角を採用する。
【0040】
図4は、実施形態に係るタイミングチャートの一例であり、高地走行における、アクセルの開度、エンジンの回転数、インテークマニホールドの圧力、空気量、吸気VVT位相角の関係を示す図である。吸気VVT位相角は、充填効率を因数としたEc目標位相角と体積効率を因数としたEv目標位相角とを示し、空気量は、充填効率及び体積効率で示す。また、タイミングチャートには、上述した実施形態の制御を行ったものを実施例、かかる制御を行わなかったものを比較例として示す。
【0041】
アクセルが開となり、低圧加速されている状態であり、エンジン回転数が上昇し、インテークマニホールドの圧力も上昇する。例えば、図2に示すように、大気圧が比較的高い平地では、高負荷運転時(TPSの開度が全開に近い場合)には充填効率Ecも最大値に近い値まで上昇する。この場合、Ec目標位相角がEv目標位相角より遅角側に存在するので、Ec目標位相角が選択される。
【0042】
点Xを越えると、Ec目標位相角がEv目標位相角より進角側に存在するので、上述した実施形態の制御に基づいて、体積効率を因数としたEv目標位相角が採用される。これにより、Ec目標位相角をそのまま採用したとする比較例と比較して、Ev目標位相角を採用した実施例では、十分な空気量が得られ、体積効率も充填効率も比較例より上昇する。
【0043】
(実施形態2)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、勿論、このような実施形態に限定されるものではない。
本実施形態の制御装置を適用するエンジンは、排気系に配設されたタービンを排気により回転させることで吸気系に配設されたコンプレッサを回転させて吸気の過給を行う過給手段であるターボチャージャを備えたものである。
【0044】
このようなターボチャージャを備えた場合において、体積効率開弁時期算出部142は、目標トルク算出手段110により算出された目標トルクが、ターボチャージャにより過給される範囲にある際は、ターボチャージャによる過給を実現可能な開弁時期のうち最も遅い時期を、吸気弁22の開弁時期として算出することが好ましい。
【0045】
このように体積効率開弁時期算出部142による開弁時期を、過給可能な開弁時期のうち最も遅い時期として設定すると、大気圧(標高)の影響により、過給可能な領域が変化する場合でも、安定して燃焼可能な開弁時期として体積効率開弁時期を用いることができる。
【0046】
なお、ターボチャージャにより過給される範囲は、図2で示すと、領域Cが存在し始めるより少し前の充填効率から領域Cが存在する充填効率の範囲である。
【0047】
また、体積効率開弁時期算出部142は、目標トルク算出手段110により算出された目標トルクが、ターボチャージャにより過給されない範囲にある際も、吸気弁22の開弁時期を最も遅い時期に設定することが好ましい。
【0048】
このように大気圧(標高)の影響を受け難い非過給域においては、体積効率開弁時期を最遅角に設定することで、充填効率開弁時期が確実に選択されるようにし、充填効率開弁時期と体積効率開弁時期とが頻繁切り替わることを防止することができる。
【0049】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、吸気管噴射型のエンジンを例示して本発明を説明したが、本発明は、例えば、筒内噴射型等、他のタイプのエンジンにも採用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
10 制御装置
11 エンジン
12 シリンダヘッド
13 シリンダブロック
14 シリンダ
15 ピストン
16 燃焼室
17 コンロッド
18 クランクシャフト
19 吸気ポート
20 吸気マニホールド
22 吸気弁
23 カムシャフト
23a カム
24 燃料噴射弁
25 排気ポート
26 排気マニホールド
27 排気管
28 排気弁
29 カムシャフト
29a カム
30,31 可変バルブタイミング機構(VVT機構)
32 点火プラグ
33 点火コイル
34 サージタンク
35 スロットルバルブ
36 スロットルポジションセンサ(TPS)
37 エアフローセンサ
40 温度センサ
41 ECU
42 クランク角センサ
44 大気圧センサ
図1
図2
図3
図4