(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】コードレス電話装置
(51)【国際特許分類】
H04M 1/725 20210101AFI20220810BHJP
【FI】
H04M1/725
(21)【出願番号】P 2018066434
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】田脇 雄太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 孝
(72)【発明者】
【氏名】川井 大地
(72)【発明者】
【氏名】青名畑 翔
【審査官】白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177239(JP,A)
【文献】米国特許第06259710(US,B1)
【文献】特開平08-126047(JP,A)
【文献】特開平08-223109(JP,A)
【文献】特開2015-061296(JP,A)
【文献】特開2014-090350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04J3/00-3/26
H04L5/22-5/26
H04M1/00
1/24-1/82
99/00
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と子機とからなり、前記親機と前記子機との間は、制御信号伝送用の第1フィールドと前記第1フィールドよりもデータ長が長い音声信号伝送用の第2フィールドとを有する伝送単位で信号の伝送を行い、TDMA(Time Division Multiple Access;時分割多元接続)/TDD(Time Division Duplex;時分割複信)方式の無線通信方式を用いるコードレス電話装置であって、
前記親機は、
通話捕捉状態のときに、
通話の相手先側に送信する送信対象の音声信号
と通話の相手先側から受信する受信対象の音声信号に
ついて、所定の検出処理を行い、通話音声としての音声信号を送信する必要があるか否かを判別する第1の親機側判別手段と、
自機に操作部がある場合における前記操作部に対する操作中か否かと自機が保留中か否かとの状態を含む
自機の動作状態を把握して、各部を制御する親機制御手段と、
通話捕捉状態のときに、前記親機制御手段で把握されている自機の動作状態
である、自機に操作部がある場合における前記操作部に対する操作中か否かと自機が保留中か否かの状態に基づいて、通話音声としての音声信号を送信する必要があるか否かを判別する第2の親機側判別手段と、
前記第1の親機側判別手段により、あるいは、前記第2の親機側判別手段により、通話音声としての音声信号を送信する必要はないと判別された場合に、前記第2フィールドを用いて前記子機に対して送信すべき音声信号の対応区間に、前記子機に対して送信すべき制御信号を挿入する親機側挿入手段と
を備え、
前記子機は、
前記親機からの前記音声信号に挿入されている前記制御信号を抽出して利用可能にする子機側抽出手段と、
前記親機からの前記音声信号において、前記制御信号が挿入されている区間の前記制御信号を、音声信号として再生しても不都合のない所定の信号に代替する子機側代替手段と、
を備えることを特徴とするコードレス電話装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコードレス電話装置であって、
前記子機は、
通話捕捉状態のときに、
通話の相手先側に送信する送信対象の音声信号
と通話の相手先側から受信する受信対象の音声信号
について、所定の検出処理を行い、通話音声としての音声信号を送信する必要があるか否かを判別する第1の子機側判別手段と、
自機の操作部に対する操作中か否かと自機が保留中か否かと自機が半二重通信時の未使用側であるか否かとの状態を含む
自機の動作状態を把握して、各部を制御する子機制御手段と、
通話捕捉状態のときに、前記子機制御手段で把握されている自機の動作状態
である、自機の操作部に対する操作中か否かと自機が保留中か否かと自機が半二重通信時の未使用側であるか否かの状態に基づいて、通話音声としての音声信号を送信する必要があるか否かを判別する第2の子機側判別手段と、
前記第1の子機側判別手段により、あるいは、前記第2の子機側判別手段により、通話音声としての音声信号を送信する必要はないと判別された場合に、前記第2フィールドを用いて前記親機に対して送信すべき音声信号の対応区間に、前記親機に対して送信すべき制御信号を挿入する子機側挿入手段と
を備え、
前記親機は、
前記子機からの前記音声信号に挿入されている前記制御信号を抽出して利用可能にする親機側抽出手段と、
前記子機からの前記音声信号の前記制御信号が挿入されている区間の前記制御信号を、音声信号として再生しても不都合のない所定のデータに代替する親機側代替手段と、
を備えることを特徴とするコードレス電話装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコードレス電話装置であって、
前記親機側挿入手段は、挿入する前記制御信号に対して、制御信号であることを示す情報と、制御信号長を示す情報とを付加することを特徴とするコードレス電話装置。
【請求項4】
請求項2に記載のコードレス電話装置であって、
前記子機側挿入手段は、挿入する前記制御信号に対して、制御信号であることを示す情報と、制御信号長を示す情報とを付加することを特徴とするコードレス電話装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のコードレス電話装置であって、
前記第1の親機側判別手段は、送信される音声信号について、一定音量レベル以上の音声信号が連続して検出されなかった場合
と、無音検出領域が一定サイズ以上連続した場合
と、RTP(Real time Transport Protocol)で送信する1パケット分の音声信号が無音となっている場合
と、送信対象の音声信号がホワイトノイズデータと一致する場合
と、受信する音声信号が所定の保留音である場合
とのいずれか
が検出された場合に、通話音声としての音声信号を送信する必要はないと判別し、
前記第2の親機側判別手段は、
前記親機制御手段で把握されている自機の動作状態が、通話用途以外での操作中状態
と、保留中の状態
とのいずれかである場合に、通話音声としての音声信号を送信する必要はないと判別する
ことを特徴とするコードレス電話装置。
【請求項6】
請求項2に記載のコードレス電話装置であって、
前記第1の子機側判別手段は、送信される音声信号について、一定音量レベル以上の音声信号が連続して検出されなかった場合
と、無音検出領域が一定サイズ以上連続した場合
と、RTP(Real time Transport Protocol)で送信する1パケット分の音声信号が無音となっている場合
と、送信対象の音声信号がホワイトノイズデータと一致する場合
と、受信する音声信号が所定の保留音である場合
とのいずれか
が検出された場合に、通話音声としての音声信号を送信する必要はないと判別し、
前記第2の子機側判別手段は、
前記子機制御手段で把握されている自機の動作状態が、通話用途以外での操作中状態
と、保留中の状態
と、半二重通信時の未使用側の状態
とのいずれかである場合に、通話音声としての音声信号を送信する必要はないと判別する
ことを特徴とするコードレス電話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、親機と子機との間を無線により接続されるコードレス電話装置であって、例えば、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunication)規格が用いられて、TDMA(Time Division Multiple Access;時分割多元接続)/TDD(Time Division Duplex;時分割複信)方式の無線通信方式を利用して、親機と子機との間を接続するコードレス電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コードレス電話装置についての規格であるDECT規格においては、符号化データの1チャンネルにおける1フレームは、
図8(A)に示すように、24スロットからなるものとされている。そして、前半の1/2フレームの12スロットS0~S11は、親機から子機へのダウンリンクに用いられ、後半の1/2フレームの12スロットS12~S23は、子機から親機へのアップリンクに用いられる。そして、各スロットは、
図8(B)に示すように、制御信号(制御データ)を伝送する64ビットのAフィールド(第1のフィールド)や音声信号(音声データ)を伝送する320ビットのBフィールド(第2のフィールド)などが設けられた構成を有する。
【0003】
主装置に対して複数の電話端末が接続されて構成されるビジネスホンシステムにおいては、制御信号が大量に発生するが、ビジネスホンシステムに収容される電話端末としてコードレス電話装置を用いた場合にも同様である。そして、コードレス電話装置の場合には、親機と子機との間においても、制御信号の送受を行う必要がある。しかし、上述したように、例えば、DECT規格の通信方式の場合、制御信号を伝送するAフィールドは、音声信号を伝送するBフィールドに比べて非常に小さい。このため、エリアの小さなAフィールドを用いて大量の制御信号を送受することとなり、必要な制御信号を適切なタイミングで伝送することができない場合が発生する可能性がある。このような場合には、LCD(Liquid Crystal Display)の表示が遅れたり、着信通知にタイムラグが生じたりすることが懸念される。
【0004】
このような課題を解決するため、後に記す特許文献1には、通話中か否か(通話回線を捕捉中か開放中か)を判別して、捕捉中であれば制御信号はAフィールドを用いて送信し、開放中であれば制御信号はBフィールドを用いて送信する発明が記載されている。従って、解放中における制御信号の伝送は遅滞なく行える。また、後に記す特許文献2には、周囲に他のコードレス電話装置が存在しない場合に、空きスロットとなっている他のコードレス電話装置のスロットを併せて使用して、制御信号を伝送する発明が記載されている。無線帯域が空いている場合において、制御信号の伝送を遅滞なく行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-177239号公報
【文献】特開2017-11545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明の場合には、通話中においては、制御信号の伝送は従来と変わらず、Aフィールドを用いて行われる。このため、通話中において制御信号の伝送量を増やすことはできない。また、特許文献2に記載された発明の場合には、無線帯域において複数のコードレス電話装置が用いられて通話が行われている場合には、空いている他のスロットを利用することができないため、制御信号の伝送には時間がかかることになる。
【0007】
以上のことに鑑み、この発明は、無線帯域に空スロットがなく、しかも通話中であっても、通話で使用されているフィールドを有効活用することができ、制御信号を親機と子機との間において遅滞なく伝送できるコードレス電話装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のコードレス電話装置は、
親機と子機とからなり、前記親機と前記子機との間は、制御信号伝送用の第1フィールドと前記第1フィールドよりもデータ長が長い音声信号伝送用の第2フィールドとを有する伝送単位で信号の伝送を行い、TDMA(Time Division Multiple Access;時分割多元接続)/TDD(Time Division Duplex;時分割複信)方式の無線通信方式を用いるコードレス電話装置であって、
前記親機は、
通話捕捉状態のときに、通話の相手先側に送信する送信対象の音声信号と通話の相手先側から受信する受信対象の音声信号について、所定の検出処理を行い、通話音声としての音声信号を送信する必要があるか否かを判別する第1の親機側判別手段と、
自機に操作部がある場合における前記操作部に対する操作中か否かと自機が保留中か否かとの状態を含む自機の動作状態を把握して、各部を制御する親機制御手段と、
通話捕捉状態のときに、前記親機制御手段で把握されている自機の動作状態である、自機に操作部がある場合における前記操作部に対する操作中か否かと自機が保留中か否かの状態に基づいて、通話音声としての音声信号を送信する必要があるか否かを判別する第2の親機側判別手段と、
前記第1の親機側判別手段により、あるいは、前記第2の親機側判別手段により、通話音声としての音声信号を送信する必要はないと判別された場合に、前記第2フィールドを用いて前記子機に対して送信すべき音声信号の対応区間に、前記子機に対して送信すべき制御信号を挿入する親機側挿入手段と
を備え、
前記子機は、
前記親機からの前記音声信号に挿入されている前記制御信号を抽出して利用可能にする子機側抽出手段と、
前記親機からの前記音声信号において、前記制御信号が挿入されている区間の前記制御信号を、音声信号として再生しても不都合のない所定の信号に代替する子機側代替手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、親機と子機との間で、通話中においても、通話で使用されているフィールドを有効活用することができ、制御信号を遅滞なく伝送することができるコードレス電話装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態の電話システムの全体の構成例を示すブロック図である。
【
図3】重要性の低い区間が存在するサンプル音声信号と、当該重要性の低い区間に制御信号を挿入した音声信号とを説明するための図である。
【
図4】音声信号に挿入される制御信号の例を説明するための図である。
【
図6】子機から親機へ音声信号を伝送する場合の処理を説明するためのシーケンス図である。
【
図7】親機から子機へ音声信号を伝送する場合の処理を説明するためのシーケンス図である。
【
図8】DECT規格のフレーム及びスロットの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、この発明のコードレス電話装置の一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、この発明のコードレス電話装置を、例えば企業の事務所などに形成されるいわゆるビジネスホンシステムと呼ばれる電話システムで用いるようにした場合を例にして説明する。
【0014】
[電話システムの構成例]
図1は、この実施形態の電話システム10の全体の構成例を示すブロック図である。電話システム10においては、上位装置の例としての主装置1に対して、内線電話装置として、この発明に係る複数のコードレス電話装置21、22、・・・、2nが接続されている。なお、添え字としての文字nは、基本的には1以上の整数を意味する。しかし、
図1においては既にコードレス電話装置21,22が存在するため、
図1において文字nは3以上の整数を意味している。以下、この明細書において、添え字としての文字nは、同様の意味で用いている。
【0015】
コードレス電話装置21~2nのそれぞれは、親機としてのベースセットBS1、BS2、・・・、BSnのそれぞれと、子機としてのハンドセットHS1、HS2、・・・、HSnのそれぞれとからなり、親機BS1~BSnのそれぞれと、子機HS1~HSnのそれぞれとは、無線接続される。
【0016】
なお、親機BS1~BSnのそれぞれに対しては、複数の子機を無線接続することも可能であるが、この例では、1台の親機に対して、1台の子機が接続される構成とされている。また、図示は省略するが、主装置1に接続される内線電話装置としては、コードレス電話装置21、22、・・・、2nのみではなく、通常のビジネスホンシステムと同様に、デジタルボタン電話端末も接続することも可能である。
【0017】
そして、この実施形態では、コードレス電話装置21~2nの親機BS1~BSnのそれぞれと、子機HS1~HSnのそれぞれとの間の無線接続は、前述したデジタルコードレス電話のDECT規格(方式)を用いたTDMA/TDD方式により行う。
【0018】
主装置1は、1又は複数の電話回線L1~Lm(mは1以上の整数)を収容可能である。そして、コードレス電話装置21~2nのそれぞれの親機BS1~BSnが、この主装置1に接続されている。
図1の例では、親機BS1~BSnと主装置1とは有線で接続されているが、無線であってもよい。
【0019】
主装置1は、複数のコードレス電話装置21~2nについての呼制御及び回線交換制御、その他のビジネスホンとしての制御を行うと共に、基準同期信号SYNCを複数のコードレス電話装置21~2nのそれぞれに供給する機能を備えている。基準同期信号SYNCは、この例では、130ミリ秒(ms)周期の信号とされている。
【0020】
コードレス電話装置21~2nの親機BS1~BSnのそれぞれは、主装置1からの基準同期信号SYNCに同期して、DECT規格のデジタルコードレス電話の単位通信期間である1フレーム(10ミリ秒(ms))の周期の同期信号としてのフレーム同期信号を生成し、その生成したフレーム同期信号に基づいて、DECT規格を用いたTDMA/TDD方式の無線通信を子機HS1~HSnとの間で実行する。したがって、複数のコードレス電話装置21~2nの全ては、主装置1からの基準同期信号SYNCに同期した動作をする。
【0021】
そして、
図1に示したように、コードレス電話装置21~2nのそれぞれは、主装置1に接続されてビジネスホンシステムを構成する電話端末である。このため、着信通知や発信要求といった呼制御信号やその他の制御信号が、主装置1との間で送受される。なお、その他の制御信号には、例えば、主装置1に接続された他のコードレス電話装置の動作状態を使用者に通知するためにコードレス電話装置21~2nのLCDやLED(Light Emitting Diode)を制御するための制御信号などがある。
【0022】
コードレス電話装置においては、親機が、リンガ、LCD、LED、操作部といったユーザインターフェースを備えるものもある。しかし、親機が主装置と子機との間を接続する機能だけを実現し、子機がリンガ、LCD、LED、操作部といったユーザインターフェースを備える場合もある。この場合には、親機と子機との間でも、相互に種々の制御信号が送受される。この実施の形態においても、コードレス電話装置21~2nの親機BS1~BSnは、基本的にユーザインターフェースは備えず、主装置1と子機HS1~HSnとの間を接続する機能を実現するものである。
【0023】
従って、親機BS1~BSnと対応する子機HS1~HSnとの間においては、種々の制御信号が頻繁に送受される状況にある。このため、通話回線を捕捉して通話が可能な状態であっても、親機BS1~BSnと子機HS1~HSnとの間においては、フレームのBフィールドを通じて送信される音声信号において、重要性が低いと判別できた区間には制御信号を挿入して送信する。これにより、制御信号を遅滞なく送受信することができるようにしている。
【0024】
すなわち、通常、電話による通話においては、双方の話者が同時に話すことは少なく、双方の話者が交互に話し手/聞き手の立場に変わる。このため、聞き手となった側では当該聞き手側からの音声信号(送話信号)は少なくなって重要性は低下し、これに応じて、話し手となった側では聞き手側からの音声信号(受話信号)の重要性は低下する。このように、重要性が低下した送話データ/受話データにおいて、特に送信する必要がないと判別できる区間に対して、種々の制御信号を挿入して伝送する。これにより、大量に発生する制御信号を、通話回線を捕捉して通話が可能な状態においても遅滞なく、親機と子機との間で伝送できるようにしている。
【0025】
そして、送信される音声信号について、重要性が低く、送信する必要がないと判別できる場合は、例えば、以下の(1)~(7)の場合が考えられる。
(1)一定音量レベル以上の音声信号が連続して検出されなかった場合
(2)無音検出領域が一定サイズ以上連続した場合
(3)RTP(Real time Transport Protocol)で送信する1パケット分の音声信号が無音となっている場合
(4)送信対象の音声信号がホワイトノイズデータと一致する場合
(5)子機において、メニュー操作中などの通話用途以外での子機操作中を検知している場合
(6)保留中/被保留中の場合
(7)半二重通信時(エコーサプレッサー動作中など)における未使用側である場合
には、当該音声信号は重要性が低いものと判別できる。
【0026】
(1)に示した「一定音量レベル以上の音声信号が連続して検出されなかった場合」は、送信対象の音声信号の振幅が連続して一定レベルに達していなければ、話音声ではなく、例えば背景音などであるため、重要性は低いと判別できることを意味する。また、(2)に示した「無音検出領域が一定サイズ以上連続した場合」は、サンプリング後の音声信号が時間方向に一定サイズ(一定区間)無音になっていれば、送信すべき音声信号は存在しないのであるから、重要性は低いと判別できることを意味する。ここで、「無音」との文言は、真に無音であること(狭義の無音)を意味するものではなく、音声信号の出力レベルが一定レベル以下で、人の聴覚で認識可能な音声が存在しない状態(広義の無音)を意味している。
【0027】
また、(3)に示した「RTP(Real time Transport Protocol)で送信する1パケット分の音声信号が無音となっている場合」は、送信対象の音声信号を2進数的に見て、その信号レベルが一定レベル以下である状態であれば、重要性は低いと判別できることを意味する。また、(4)に示した「送信対象の音声信号がホワイトノイズデータと一致する場合」は、一定レベル以上のなんらかの音声信号は存在するものの、その音声信号があらゆる周波数成分を同等に含むいわゆるホワイトノイズと見做せる場合を意味する。送信対象の音声信号がホワイトノイズであれば、その音声信号の重要性は低いと特定できる。
【0028】
また、(5)に示した「子機において、メニュー操作中などの通話用途以外での子機操作中を検知している場合」は、子機操作中においては、送話データは基本的に存在せず、また、受話データも聴取できないために意味がないことを意味する。この場合にも、送信対象の音声信号の重要性は低いと判別できる。なお、この実施の形態では、親機BS1~BSnは操作部を備えないものであるが、操作部を備える親機の場合には、親機においても同様の判別が可能となる。
【0029】
また、(6)に示した「保留中/被保留中の場合」は、通話回線は捕捉されているものの、保留操作をした側の話音声は相手先に送信されない。また、保留状態にあるときには、通話ができない状態にあるため、被保留側から送信されて来る音声にも意味はないものといえる。従って、保留中/被保留中において保留側より送信する話音声及び被保留側より送信されて来る音声は、重要性の低いものと判別できる。また、(7)に示した「半二重通信時(エコーサプレッサー動作中など)における未使用側である場合」は、例えば、エコーサプレッサーを用いるなどして、送話データと受話データのいずれかを減衰させている場合に、その減衰させている方の音声信号の重要性は低いと判別できることを意味する。
【0030】
なお、エコーサプレッサーは、送信信号と受信信号の信号レベルを比較し、信号レベルの高い方の信号を通過させ反対の信号は減衰させることにより、エコーやハウリングを抑制する技術である。また、ここに示した(1)~(7)の場合は、送受信の対象になっている音声信号の重要性が低いと判別できる場合の一例であり、これ以外の場合によって、送受信の対象になっている音声信号の重要性を判別してもよい。例えば、子機HS1~HSnのスピーカ部分に例えば温度センサや照度センサなどを設けておく。そして、使用者が子機を耳部分にあてていると判別できる場合には、送受信する音声信号は話音声であるため重要なものであり、そうでない時には重要性は低いと判別することも可能である。
【0031】
そして、上述した(1)~(4)、(6)の場合については、親機BS1~BSnや子機HS1~HSnにおいて、自機から音声信号として送信する信号の状態に基づいて判別できる。また、(5)、(7)の場合や子機を耳部分にあてているか否かに応じる場合については、親機BS1~BSnや子機HS1~HSnの例えば制御回路などにおいて、その状態が把握されるので、当該状態に基づいて判別できる。
【0032】
[コードレス電話装置の構成例]
次に、上述したように、例え通話中であっても制御信号を遅滞なく送受する機能を備えた、この実施の形態のコードレス電話装置21~2nの親機BS1~BSn及び子機HS1~HSnの構成例について説明する。この実施の形態のビジネスホンシステムで用いられる複数個のコードレス電話装置21~2nの親機BS1~BSn及び子機HS1~HSnのそれぞれは、全て同じ構成を備える。そこで、以下の説明では、コードレス電話装置21の親機BS1及び子機HS1の場合を例にとって、親機及び子機の構成例を説明する。
【0033】
<親機の構成例;
図2>
図2は、親機BS1の構成例を示すブロック図である。この
図2に示すように、親機BS1は、親機BS1の全体を制御するための制御回路41と、回線LSI部42と、同期信号発生回路43と、無線通信回路44と、発振器45及び46と、挿入抽出処理部47とを備えて構成されている。
【0034】
制御回路41は、コンピュータを搭載して構成されている。そして、制御回路41は、この親機BS1における呼制御などの制御を行う機能を備える。回線LSI部42は、主装置1との間で音声信号、制御信号及び同期信号のやり取りをするための回路であり、分割化/多重化処理部421と、制御信号処理部422と、音声信号処理部423と、同期信号検出部424と、PLL(Phase locked Loop)部425とからなる。
【0035】
PLL部425には、発振器45からの基準周波数の発振信号が供給されると共に、主装置1からの多重化信号が供給される。この例では、発振器45の発振信号の周波数は、例えば2048MHz(0.488ナノ秒(ns))とされている。
【0036】
PLL部425は、主装置1からの多重化信号から、いわゆるセルフクロッキングにより、主装置1のタイミング信号生成部からのクロック信号CKの成分を抽出し、その抽出したクロック信号CK成分と発振器45からの発振信号とを位相比較して、その比較結果に基づいて、発振器45の発振信号から、クロック信号CK成分に同期する親機BS1のシステムクロック信号SCKを生成する。
【0037】
そして、PLL部425は、生成したシステムクロック信号SCKを、分割化/多重化処理部421、制御信号処理部422、音声信号処理部423、同期信号検出部424のそれぞれに、信号処理用クロック信号として供給する。また、PLL部425は、生成したシステムクロック信号SCKを、後段の同期信号発生回路43にも供給する。
【0038】
分割化/多重化処理部421は、主装置1に接続されると共に、制御信号処理部422、音声信号処理部423、同期信号検出部424に接続される。そして、分割化/多重化処理部421は、主装置1からの多重化信号から制御信号と音声信号と基準同期信号SYNCを分割(分離)して、制御信号は制御信号処理部422に、音声信号は音声信号処理部423に、基準同期信号SYNCは同期信号検出部424に、それぞれ供給する。
【0039】
また、分割化/多重化処理部421は、制御信号処理部422からの制御信号と、音声信号処理部423からの音声信号とを多重化して多重化信号を生成し、その生成した多重化信号を主装置1に供給する。
【0040】
制御信号処理部422は、制御回路41の制御信号入出力端に接続されると共に、分割化/多重化処理部421に接続されており、発信時及び着信時、また、終話時などにおける呼制御信号などの制御信号(主装置1からコードレス電話装置21への制御信号と、コードレス電話装置21から主装置1への制御信号の両方)の処理回路である。
【0041】
音声信号処理部423は、挿入抽出処理部47を介して、無線通信回路44に接続されると共に、分割化/多重化処理部421に接続されており、無線通信回路44からの子機HS1から受信した送話音声信号及び分割化/多重化処理部421からの受話音声信号の処理回路である。
【0042】
同期信号検出部424は、分割化/多重化処理部421からの基準同期信号SYNCを受けて、当該基準同期信号SYNCが備える所定の同期信号パターンを検出することで、その検出時点の信号として、基準同期信号SYNCと同期する、基準同期信号SYNCと同一周期(130ms)の基準同期パルスPSを発生する。そして、同期信号検出部424は、発生した基準同期パルスPSを同期信号発生回路43に供給する。
【0043】
同期信号発生回路43は、カウンタ431と、同期信号生成部432とからなる。カウンタ431には、回線LSI部42の同期信号検出部424からの130msの周期の基準同期パルスPSがプリセット端子に供給されると共に、PLL部425からのシステムクロック信号SCKがカウント入力として供給される。そして、このカウンタ431の出力カウント値CNTが同期信号生成部432に供給される。
【0044】
同期信号生成部432は、カウンタ431の出力カウント値CNTから、DECT規格のフレーム周期(10ms)のフレーム同期信号FLを発生する。同期信号発生回路43は、同期信号生成部432で生成したフレーム同期信号FLを無線通信回路44に供給する。
【0045】
挿入抽出処理部47は、通話回線を捕捉して(接続して)、相手先と通話ができる状態にあるときに、子機HS1に送信する音声信号への制御信号の挿入機能と、子機HS1から送信されてきた音声信号に挿入されている制御信号を抽出機能とを実現する。挿入機能は、通話状態にあるときに子機HS1に対して送信する音声信号に重要性の低い区間が存在する場合に、当該区間に制御信号の挿入する機能である。また、抽出機能は、通話状態にあるときに子機HS1から送信されてきた音声信号に制御信号が挿入されている場合にこれを特定して抽出する機能である。
【0046】
図2に示すように、挿入抽出処理部47は、挿入区間検出部471と、制御信号挿入部472と、制御信号抽出部473と、ノイズ挿入部474とを備えている。挿入区間検出部471は、前段の音声信号処理部423からの音声信号について、上述した(1)~(4)の場合に該当する区間を検出する処理を行い、検出結果を制御信号挿入部472に通知する。制御信号挿入部472は、挿入区間検出部471からの検出結果に基づいて、送信対象の音声信号において、重要性が低い区間として検出された当該区間に、制御回路41から提供を受けた子機HS1に送信すべき制御信号を挿入して、無線通信回路44に供給する。
【0047】
なお、挿入区間検出部471において、上述した(1)~(4)の場合に該当する区間が検出できなかった場合には、制御信号挿入部472において制御信号の挿入処理が行われることはない。この場合には、音声信号処理部423からの音声信号が、そのまま無線通信回路44に供給される。また、この実施の形態において、親機BS1は、操作部や送受話器は備えないので、上述した(5)、(7)の場合に対応する区間の検出は行わない。つまり、親機に対して使用者が操作を行うことはないし、送受話器がないのでエコーやハウリングが起こることもなく、基本的に半二重通信を行う場合がないためである。
【0048】
しかし、後述する子機HS1を通じて保留操作が行われた場合には、親機BS1と子機HS1とからなるコードレス電話装置21は保留状態となる。この場合、親機BS1と子機HS1と間においては、親機BS1から子機への音声信号(通話の相手先からの音声信号)と、子機から親機への音声信号(保留音ではなく、子機HS1で収音された音声信号)との重要性は低下する。そこで、挿入区間検出部471は、自機が保留状態になってから、当該保留状態が解除されるまでの間、通話の相手先からの音声信号については、重要性が低い区間として制御信号挿入部472に通知する。これにより、自機から保留にした場合に、親機BS1から子機HS1への音声信号には、制御信号が挿入できる。
【0049】
なお、自機が保留状態になったこと、また、自機の保留状態が解除されたことは、HS1からのスロットのAフィールド(第1のフィールド)に挿入された制御信号に応じて制御回路41が把握して挿入抽出処理部47に通知する場合がある。また、以下に説明するように、挿入抽出処理部47の制御信号抽出部473が抽出するHS1からのBフィールド(第2のフィールド)の音声信号に挿入されている制御信号に応じて制御回路41が把握して挿入抽出処理部47に通知する場合がある。
【0050】
図3は、重要性の低い区間が存在するサンプル音声信号と、当該重要性の低い区間に制御信号を挿入した音声信号とを説明するための図である。また、
図4は、音声信号に挿入される制御信号の例を説明するための図である。まず、挿入区間検出部471においては、子機HS1に送信すべき音声信号中において、
図3(A)に示すように、例えば、音声信号として「0」の羅列となっており実質的に無音となっている区間などの、重要性の低い区間を検出する。挿入区間検出部471は、子機HS1へ送信する1スロット分の音声信号のどこからどこまでが、重要性の低い区間かを検出する。
【0051】
そして、制御信号挿入部472は、上述もしたように、挿入区間検出部471の検出出力に基づいて、子機HS1に送信する1スロット分の音声信号において、重要性が低いと検出された区間に、制御回路41からの制御信号を挿入する。この場合、制御信号挿入部472は、制御信号を挿入する当該区間の先頭に制御信号を挿入したことを示す所定のコードである挿入区間開始コードを挿入する。この実施の形態において、挿入区間開始コードは16進数で「FFFFFF」である。
【0052】
さらに、制御信号挿入部472は、当該挿入区間開始コードの次に、何桁の制御信号を挿入したのかを示す情報を挿入する。音声信号を伝送するために用いられるBフィールドは
図8(B)に示したように、320ビット(40バイト)の領域であり、16進数で80文字分のデータを伝送できる。このため、何桁の制御信号を挿入したのかを示す情報は、16進数で2桁(8ビット)あればよい。このように、制御信号を挿入したことを示す挿入区間開始コードと挿入した制御信号の桁数を示す情報に続き、制御回路41から取得した制御信号を挿入する。
【0053】
したがって、
図3(A)に示したように、音声信号として16進数の値「0」が続く区間が16進数で39文字分検出できた場合には、この区間に
図3(B)に示すように、制御信号を挿入したことを示す挿入区間開始コード「FFFFFF」と、制御信号の桁数を示す16進数2桁の情報「1F」と、その後に16進数で31文字分の制御信号が挿入される。すなわち、16進数で「1F」は10進数で「31」である。
【0054】
従って、
図3(A)に示したサンプル音声信号の場合には、子機HS1に対して1スロットで送信すべき320ビット分の音声信号のうち重要性の低い部分として16進数で39文字分の区間が検出される。この区間に対して、
図3(B)に示し、更に
図4にまとめたように、制御信号が挿入される。その内訳は、当該区間の先頭6文字分は、制御信号の挿入区間開始コード「FFFFFF(16進数)」が挿入される。これに続き挿入された制御信号のデータ長を示す2桁のデータ、この例の場合には「1F(16進数)」が挿入される。これに続き、「1F(16進数)」=「31(10進数)」桁の制御信号が挿入される。なお、詳しくは後述するが、子機HS1から親機BS1へ送信される音声信号についても、重要性の低い区間に対して、
図3、
図4を用いて説明した態様で制御信号が挿入される。
【0055】
一方、挿入抽出処理部47の制御信号抽出部473は、子機HS1からの音声信号を確認し、制御信号が挿入されている区間を特定して当該制御信号を抽出して、制御回路41に供給する。すなわち、制御信号抽出部473は、音声信号に制御信号が挿入されている場合に、当該制御信号の先頭に付加されている挿入区間開始コード「FFFFFF(16進数)」を検出することにより、制御信号が挿入されていることと、制御信号の先頭位置を特定する。そして、当該挿入区間開始コードの直後には挿入された制御信号のデータ長を示す情報が付加されているので、この制御信号のデータ長を示す情報に基づいて、制御信号の末尾位置を特定する。この特定した先頭位置から末尾位置までの制御信号を抽出する。
【0056】
ノイズ挿入部474は、制御信号抽出部473の検出結果に基づいて、処理対象の音声信号において、制御信号が挿入されている区間に対して、当該制御信号に替えてホワイトノイズを挿入する処理を行う。これにより、当該制御信号が挿入されていた音声信号が、そのまま再生された場合に、再生側の使用者にとって不快な音声が放音されるといった不都合を防止できる。なお、子機HS1からの音声信号に制御信号が挿入されていない場合には、子機HS1からの当該音声信号は、そのまま音声信号処理部423に供給されて通常通り処理される。
【0057】
このように、挿入区間検出部471及び制御信号挿入部472が音声信号への制御信号の挿入機能を実現する。また、制御信号抽出部473及びノイズ挿入部474が音声信号に挿入されている制御信号の抽出機能を実現する。
【0058】
次に、無線通信回路44について説明する。この無線通信回路44は、制御部441と、TDMA変復調部442と、RF部(無線通信部)443とを備えて構成されている。RF部443は、子機HS1との間で、無線通信を行うための回路部である。制御部441は、TDMA変復調部442及びRF部443に接続されると共に、制御回路41に接続されている。制御部441は、この無線通信回路44の全体の動作を制御すると共に、制御回路41から得た制御信号に基づく制御信号をTDMA変復調部442に供給する。
【0059】
TDMA変復調部442は、制御部441及び挿入抽出処理部47に接続されると共に、RF部443に接続されている。TDMA変復調部442は、制御部441からの制御信号と挿入抽出処理部47からの音声信号を子機HS1に送信するために変調を行う。このTDMA変復調部442で変調された信号は、RF部443を通じて子機HS1に送信される。また、TDMA変復調部442は、RF部443で受信された子機HS1からの受信信号から、音声信号及び制御信号を復調し、復調した音声信号は挿入抽出処理部47に供給し、復調した制御信号は、制御部441に供給する。
【0060】
そして、TDMA変復調部442は、クロック生成用のPLL部4421を備える。このPLL部4421には、発振器46からの発振信号が供給されると共に、同期信号発生回路43からのフレーム同期信号FLが供給される。PLL部4421は、同期信号発生回路43からのフレーム同期信号FLと発振器46からの発振信号とを位相比較して、その比較結果に基づいて、発振器46の発振信号から、フレーム同期信号FLに同期するタイミング信号及びクロック信号を生成する。
【0061】
TDMA変復調部442は、フレーム同期信号FLに同期するタイミング信号及びクロック信号を用いて、割り当て使用可能となるダウンリンクでのスロットの一つに相当する期間で子機HS1への送信信号を生成すると共に、アップリンクでのスロットの一つを用いて、子機HS1からの受信信号の処理を行うようにする。
【0062】
なお、親機BS1は、主装置1に接続されて、前述したように、子機HS1との通信のための同期処理を開始し、常に、子機HS1に対して送信信号を送る。そして、親機BS1の無線通信回路44の制御部441は、TDMA変復調部442で生成した送信信号を、自親機に設定された一つのスロットを用いて、RF部443を通じて子機HS1に送る。これに応じて、当該子機HS1から応答が返って来た時に、制御部441は、送信信号を送信するために用いたスロットをダウンリンク用とし、子機HS1からの応答を受信したスロットをアップリンク用として同期を確立して、送受信を行うように制御する。
【0063】
<子機の構成例;
図5>
図5は、子機HS1の構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、子機HS1は、無線通信回路51と、制御回路52と、コーデック回路53と、発振器54と、マイクロホン55と、スピーカ56と、挿入抽出処理部57と、操作部58と、センサ部59とを備えて構成されている。マイクロホン55は送話器を構成し、スピーカ56は受話器を構成する。
【0064】
無線通信回路51は、制御部511と、TDMA変復調部512と、RF部(無線通信部)513とを備えて構成されている。RF部513は、親機BS1との間で、無線通信を行うための回路部である。制御部511は、TDMA変復調部512及びRF部513に接続されると共に、制御回路52に接続されている。制御部511は、この無線通信回路51の全体の動作を制御すると共に、制御回路52から得た制御信号に基づく制御信号をTDMA変復調部512に供給する。
【0065】
TDMA変復調部512は、制御部511及びRF部513に接続されると共に、挿入抽出処理部57を介して、コーデック回路53と接続されている。TDMA変復調部512は、制御部511からの制御信号と、挿入抽出処理部57を介して提供されるコーデック回路53からの音声信号を親機BS1に送信するために変調を行う。このTDMA変復調部512で変調された信号は、RF部513を通じて親機BS1に送信される。また、TDMA変復調部512は、RF部513で受信された親機BS1からの受信信号から、音声信号及び制御信号を復調し、復調した音声信号は挿入抽出処理部57を介してコーデック回路53に供給し、復調した制御信号は、制御部511に供給する。
【0066】
そして、TDMA変復調部512は、クロック生成用のPLL部5121を備える。このPLL部5121には、発振器54からの発振信号が供給されると共に、RF部513からの受信信号の復調信号が供給され、このPLL部5121からは、発振器54からの発振信号から、受信信号の復調信号のクロック成分に同期したクロック信号が生成される。このPLL部5121からのクロック信号は、TDMA変復調部512における処理用クロック信号とされる。
【0067】
コーデック回路53は、TDMA変復調部512で復調された音声信号を復号して、アナログ音声信号に変換し、そのアナログ音声信号をスピーカ56に供給して、受話音声として放音する。また、コーデック回路53は、マイクロホン55で収音したアナログ音声信号を符号化して、挿入抽出処理部57を介して、TDMA変復調部512に供給するようにする。
【0068】
なお、制御回路52は、この子機HS1からの発呼時には、発呼時の呼制御信号を、無線通信回路51を通じて親機BS1に送信し、また、親機BS1からの着信時の呼制御信号を受けた時には、着信音をスピーカ56から放音するなどの処理を行う。
【0069】
挿入抽出処理部57は、上述した親機BS1の挿入抽出処理部47に対応する部分である。すなわち、挿入抽出処理部57は、通話回線を捕捉して(接続して)、相手先と通話ができる状態にあるときに、親機BS1に送信する音声信号への制御信号の挿入機能と、親機BS1から送信されてきた音声信号に挿入されている制御信号の抽出機能とを実現する。挿入機能は、通話状態にあるときに親機BS1に対して送信する音声信号に重要性の低い区間が存在する場合に、当該区間に制御信号を挿入する機能である。また、抽出機能は、通話状態にあるときに親機BS1から送信されてきた音声信号に制御信号が挿入されている場合にこれを特定して抽出する機能である。
【0070】
図5に示すように、挿入抽出処理部57は、制御信号抽出部571と、ノイズ挿入部572と、挿入区間検出部573と、制御信号挿入部574とを備えている。制御信号抽出部571は、TDMA変復調部512において復調された親機BS1からの音声信号を確認し、制御信号が挿入されている区間を特定して当該制御信号を抽出し、これを制御回路52に供給する。そして、
図3、
図4を用いて説明した態様で、親機BS1からの音声信号に制御信号が挿入されているとする。
【0071】
この場合、制御信号抽出部571は、供給された親機BS1からの音声信号において、当該制御信号の先頭に付加されている挿入区間開始コードである「FFFFFF(16進数)」を検出することにより、制御信号が挿入されていることと、制御信号の先頭位置を特定する。そして、当該挿入区間開始コード「FFFFFF(16進数)」の直後には挿入された制御信号のデータ長を示す情報が付加されているので、この制御信号のデータ長を示す情報に基づいて、制御信号の末尾位置を特定する。この特定した先頭位置から末尾位置までの制御信号を抽出し、制御回路52に供給して、制御信号として利用可能にする。
【0072】
ノイズ挿入部572は、制御信号抽出部571の検出結果に基づいて、処理対象の音声信号の制御信号が挿入されている区間に対して、当該制御信号に替えてホワイトノイズを挿入するように処理する。これにより、当該制御信号が挿入されていた音声信号が、そのまま再生された場合に、再生側の使用者にとって不快な音声が放音されるといった不都合を防止できる。なお、子機HS1からの音声信号に制御信号が挿入されていない場合には、子機HS1からの当該音声信号は、制御信号抽出部571及びノイズ挿入部572をそのまま通過し、コーデック回路53に供給されて通常通り処理(再生)される。
【0073】
一方、挿入区間検出部573は、マイクロホン55で収音され、コーデック回路53でデジタル信号に変換された音声信号について、上述した(1)~(4)の場合に該当する区間を検出する処理を行い、検出結果を制御信号挿入部574に通知する。制御信号挿入部574は、挿入区間検出部573からの検出結果に基づいて、送信対象の音声信号において、重要性が低い区間として検出された当該区間に、制御回路52から提供を受けた親機BS1に送信すべき制御信号を挿入して、無線通信回路51に供給する。
【0074】
なお、挿入区間検出部573において、上述した(1)~(4)の場合に該当する区間が検出できなかった場合には、制御信号挿入部574において制御信号の挿入処理が行われることはない。この場合には、コーデック回路53からの音声信号が、そのまま無線通信回路51に供給される。そして、この実施の形態において、子機HS1は、操作部58及びマイクロホン55、スピーカ56を備えているので、上述した(5)~(7)の場合に該当する区間の検出も行う。
【0075】
すなわち、
図3に示したように、制御回路52には操作部58が接続されている。操作部58は、いわゆる数字キー(テンキー)や幾つかのファンクションキーなどを備え、使用者からの操作入力を受け付けて、これを電気信号に変換して制御回路52に通知する。このため、制御回路52は、メニュー操作中などの通話用途以外での子機操作中を検知している場合には、これを挿入抽出処理部57に通知する。
【0076】
これにより、挿入抽出処理部57の挿入区間検出部573は、制御回路52からメニュー操作中などの通話用途以外での子機操作中であることが通知されている場合においては、当該通知中におけるコーデック回路53からの音声信号は重要性が低いと判別する。そして、挿入区間検出部573は、コーデック回路53からの音声信号について、重要性が低いと判定した区間を制御信号挿入部574に通知する。
【0077】
また、子機HS1において、操作部58を通じて保留操作を受け付けた場合には、親機BS1と子機HS1とからなるコードレス電話装置21は保留状態となり、この場合にHS1から通話の相手先に送信する音声信号の重要性は低下する。そこで、挿入区間検出部573は、自機が保留状態になってから、当該保留状態が解除されるまでの間、コーデック回路53からの音声信号については、重要性が低い区間として制御信号挿入部574に通知する。これにより、自機から保留にした場合に、子機HS1から親機BS1への音声信号には、制御信号が挿入される。
【0078】
なお、親機BS1と子機HS1とからなるコードレス電話装置21が保留状態にある場合には、例えば、親機BS1や主装置から保留音が相手先に送信される。しかし、通話の相手先に送信される保留音については、親機BS1と子機HS1との間では特に重要性はないため、保留中における子機HS1から親機BS1への音声信号の重要性は低いと判定しても問題は生じない。
【0079】
また、(7)に示した、半二重通信時(エコーサプレッサー動作中など)における未使用側である場合については、コーデック回路53と制御回路52とが機能することにより判定可能である。すなわち、エコーサプレッサー機能などの半二重通信を行う機能は、コーデック回路53において実現される。従って、半二重通信を行うようにしている場合には、その状態がコーデック回路53から制御回路52に通知される。このため、制御回路52は、半二重通信時において、その状態を挿入抽出処理部57に通知する。
【0080】
これにより、コーデック回路53において、親機BS1に送信する音声信号、すなわち、マイクロホン55を通じて集音している音声信号を減衰させている音声信号の区間については、重要性は低いと判定できる。そして、当該区間については、制御信号挿入部574に通知されるので、親機BS1の当該区間には、制御信号を挿入することができる。
【0081】
また、子機HS1は、センサ部59を備えている。当該センサ部59は、例えば、温度センサや照度センサからなり、使用者がスピーカ56部分を自分の耳部分にあてて通話を行うようにしている場合とそうでない場合とを区別して検知できる。センサ部59での検知結果は、制御回路52に通知される。このため、制御回路52は、通話回線が接続された状態にあるときに、スピーカ56部分が使用者の耳部分にあてられていない状態が検知されている場合には、コーデック回路53からの親機BS1に送信すべき音声信号の重要性は低いと判別できる。
【0082】
このため、制御回路52は、通話回線が接続された状態にあるときに、スピーカ56部分が使用者の耳部分にあてられていない状態が検知されている場合には、これを挿入抽出処理部57に通知する。挿入抽出処理部57の挿入区間検出部573は、通話回線が接続されているときに、スピーカ56部分が使用者の耳部分にあてられていない状態であることが通知されている場合には、親機BS1に送信すべき音声信号の該当区間は重要性が低い区間と判別する。この判別結果は、制御信号挿入部574に通知され、当該区間には、制御回路52からの制御信号を挿入し、親機BS1に提供することができる。
【0083】
なお、子機HS1の使用者が操作部58を操作しているときにも、センサ部59によってスピーカ56部分が使用者の耳部分にあてられていないことが検知される。このため、センサ部59を備える子機の場合には、通話回線が接続されている状態にあるときに、操作部58を操作している場合を検出することなく、スピーカ56部分が使用者の耳部分にあてられていないことを検出すれば、親機BS1に送信すべき音声信号の重要性の低い区間を判別できる。
【0084】
すなわち、通話回線が接続されている状態にあるときに、スピーカ56部分が使用者の耳部分にあてられていない場合は、操作部58を操作している場合含め、何等かの理由により、通話よりも優先して行わなければならないことが発生している場合を検知できる。この場合には、通話は行われないので、この通話が行われることのない区間に対応する音声信号は、重要性の低いものであると判定できる。
【0085】
このように、制御信号抽出部571及びノイズ挿入部572が音声信号に挿入されている制御信号の抽出機能を実現する。また、挿入区間検出部573及び制御信号挿入部574が音声信号への制御信号の挿入機能を実現する。
【0086】
以上の説明は、コードレス電話装置21の親機BS1及び子機HS1についての説明であるが、前述したように、その他のコードレス電話装置22~2nの親機BS2~BSn及び子機HS2~HSnについても同様の構成を有するものである。
【0087】
[通話時の親機と子機の処理]
次に、通話回線が接続されて通話が可能な状態にあるときに、コードレス電話装置を構成する親機と子機のそれぞれにおいて行われる処理について説明する。ここでも親機BS1と子機HS1とからなるコードレス電話装置21の場合を例にして説明するが、コードレス電話装置22~2nのそれぞれにおいても同様の処理が行われる。
【0088】
<送話音声信号に対する処理>
図6は、通話回線を接続し、通話が可能な状態にあるときの子機HS1から親機BS1へ音声信号を伝送する場合の処理を説明するためのシーケンス図である。通話回線が接続されて通話が可能な状態にあるときに、子機HS1のマイクロホン55は使用者の発する音声(送話音声)を集音して、コーデック回路53に供給する(ステップSP11)。子機HS1のコーデック回路53は、マイクロホン55からのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換し、これを挿入抽出処理部57の挿入区間検出部573に供給する(ステップSP12)。
【0089】
そして、挿入区間検出部573と制御信号挿入部574とが協働し、コーデック回路53からの音声信号において重要性の低い区間を検出し、検出した区間に制御回路52から提供される制御信号を挿入して、無線通信回路51に供給する(ステップSP13)。ステップSP13において、挿入区間検出部573は、これに供給された音声信号の状態、または、制御回路52からの情報に基づき、コーデック回路53からの音声信号中の重要性の低い区間を検出し、これを制御信号挿入部574に通知する。
【0090】
挿入区間検出部573で行われる検出処理は、親機BS1に供給する音声信号において、上述した(1)~(7)の場合に対応する区間を検出するものである。また、この実施の形態において、挿入区間検出部573は、親機BS1に送信する音声信号において、使用者の耳部分にスピーカ56があてられていない区間を、音声信号としては重要性の低い区間として特定することもできるようにしている。
【0091】
そして、ステップSP13において、制御信号挿入部574は、挿入区間検出部573を通じて供給される音声信号について、挿入区間検出部573が検出した区間に対して、制御回路52からの制御信号を挿入する。この制御信号の挿入処理は、
図3、
図4を用いて説明した親機BS1の制御信号挿入部472で行われる処理と同様の処理である。なお、挿入区間検出部573において、親機BS1に送信する音声信号について、重要性の低い区間が検出できなかった場合には、コーデック回路53からの音声信号は、そのまま無線通信回路51に提供される。
【0092】
無線通信回路51は、制御信号挿入部574からの音声信号と制御部511からの制御信号とから、
図8に示した態様の送信信号を形成し、親機BS1に対して送信する(ステップSP14)。従って、この例の場合、
図8(B)に示したAフィールドを通じて制御信号が送信されると共に、Bフィールドの音声信号の重要性の低い区間にも、制御信号が挿入されて親機BS1に送信される。これにより、通話が可能な状態においても、子機HS1からの制御信号を遅滞なく親機BS1に送信することができる。
【0093】
一方、親機BS1においては、子機HS1からの受信信号を解析することにより、制御信号を抽出し、これを制御回路41に供給して利用可能にする(ステップSP15)。まず、ステップSP15においては、子機HS1からの受信信号をTDMA変復調部442において復調し、Aフィールドの制御信号を抽出して、制御部441を通じて制御回路41に供給し利用可能にする。
【0094】
さらに、ステップSP15においては、TDMA変復調部442において復調されたBフィールドの音声信号が、挿入抽出処理部47の制御信号抽出部473に供給される。制御信号抽出部473は、供給された音声信号に制御信号が挿入されている場合には、挿入区間を特定して、挿入されている制御信号を抽出し、これを制御回路41に供給して、利用可能にする。
【0095】
次に、制御信号抽出部473で制御信号が抽出された音声信号は、ノイズ挿入部474に供給される。当該音声信号は制御信号が挿入された状態のものであるので、このまま相手先において再生された場合には、耳障りな音声が再生される可能性がある。そこで、ノイズ挿入部474は、これに供給された音声信号に対して、制御信号が挿入されている区間にホワイトノイズを上書きする(ステップSP16)。すなわち、ノイズ挿入部474は、音声信号に挿入されている制御信号を打ち消して、音声信号として再生されても耳障りな音声となることがないようにする処理を行う。
【0096】
この後、子機HS1からの音声信号は、親機BS1を通じて、主装置1に送信され(ステップSP17)、主装置1から外線(電話網)に送出されて(ステップSP18)、通話の相手先に送信される。このように、子機HS1からの音声信号(送話音声)の重要性の低い区間に制御信号を挿入して親機BS1に提供し、親機において抽出して利用できるようにすると共に、子機HS1からの重要性の高い音声信号については、適切に通話の相手先に送信される。
【0097】
<受話音声信号に対する処理>
図7は、通話回線を接続し、通話が可能な状態にあるときの親機BS1から子機HS1へ音声信号を伝送する場合の処理を説明するためのシーケンス図である。通話回線が接続されて通話が可能な状態にあるときに、通話の相手先からの音声信号(受話音声)は、外線(電話網)を通じて主装置1に供給され(ステップSP21)、主装置1を通じて親機BS1に供給される(ステップSP22)。
【0098】
親機BS1では、主装置1を介して供給された通話の相手先からの音声信号は、回線LSI部42の音声信号処理部423を通じて、挿入抽出処理部47の挿入区間検出部471に供給される。そして、挿入区間検出部471と制御信号挿入部472とが協働し、通話の相手先からの音声信号において重要性の低い区間を検出し、検出した区間に制御回路41から提供される制御信号を挿入して、無線通信回路44に供給する(ステップSP23)。
【0099】
ステップSP23において、挿入区間検出部471は、これに供給された音声信号の状態、または、制御回路41からの情報に基づき、音声信号処理部423からの音声信号中の重要性の低い区間を検出し、これを制御信号挿入部472に通知する。挿入区間検出部471で行われる検出処理は、子機HS1に供給する音声信号において、上述した(1)~(4)、(6)の場合に対応する区間を検出するものである。
【0100】
そして、ステップSP23において、制御信号挿入部472は、挿入区間検出部471を通じて供給される音声信号について、挿入区間検出部471が検出した区間に対して、制御回路41からの制御信号を挿入する。この制御信号の挿入処理は、
図3、
図4を用いて説明した処理である。なお、挿入区間検出部471において、子機HS1に送信する音声信号について、重要性の低い区間が検出できなかった場合には、主装置を介して供給される通話の相手先からの音声信号は、そのまま無線通信回路44に提供される。
【0101】
無線通信回路44は、制御信号挿入部472からの音声信号と制御部441を通じて制御回路41から供給される制御信号とから、
図8に示した態様の送信信号を形成し、子機HS1に対して送信する(ステップSP24)。従って、この例の場合、
図8(B)に示したAフィールドを通じて制御信号が送信されると共に、Bフィールドの音声信号の重要性の低い区間にも、制御信号が挿入されて子機HS1に送信される。これにより、通話が可能な状態においても、親機BS1からの制御信号を遅滞なく子機HS1に送信することができる。
【0102】
一方、子機HS1においては、親機BS1からの受信信号を解析することにより、制御信号を抽出し、これを制御回路52に供給して利用可能にする(ステップSP25)。まず、ステップSP25においては、親機BS1からの受信信号をTDMA変復調部512において復調し、Aフィールドの制御信号を抽出して、制御部511を通じて制御回路52に供給し利用可能にする。
【0103】
さらに、ステップSP25においては、TDMA変復調部512において復調されたBフィールドの音声信号が、挿入抽出処理部57の制御信号抽出部571に供給される。制御信号抽出部571は、供給された音声信号に制御信号が挿入されている場合には、挿入区間を特定して、挿入されている制御信号を抽出し、これを制御回路52に供給して、利用可能にする。
【0104】
次に、制御信号抽出部571で制御信号が抽出された音声信号は、ノイズ挿入部572に供給される。当該音声信号は制御信号が挿入された状態のものであるので、このままコーデック回路53において再生するようにされた場合には、耳障りな音声が再生される可能性がある。そこで、ノイズ挿入部572は、これに供給された音声信号に対して、制御信号が挿入されている区間にホワイトノイズを上書きする(ステップSP26)。すなわち、ノイズ挿入部572は、音声信号に挿入されている制御信号を打ち消して、音声信号として再生されても耳障りな音声となることがないようにする処理を行う。
【0105】
この後、親機BS1からの音声信号は、コーデック回路53に供給されて、D/A変換され(ステップSP27)、変換後のアナログ音声信号がスピーカ56に供給されて受話音声が放音される(ステップSP28)。このように、親機BS1からの音声信号(受話音声)の重要性の低い区間に制御信号を挿入して子機HS1に提供し、子機HS1において抽出して利用できるようにすると共に、親機BS1を介して提供される通話の相手先からの重要性の高い音声信号については、適切に子機HS1を通じて、子機HS1の使用者に提供される。
【0106】
[実施の形態の効果]
上述したように、この実施の形態のコードレス電話装置21~2nにおいては、親機BS1~BSnと子機HS1~HSnとの間においては、通話時においても、音声信号の重要性の低い区間を通じて制御信号の送受を行うことができる。これにより、通話回線を接続して通話が可能な状態にあるときでも、通話で使用されているフィールドを有効活用することができ、送受する必要のある制御信号を遅滞なく親機と子機との間で送受することができる。これにより、子機のLCD表示が遅れたり、着信通知にタイムラグが生じたりすることを防止できる。また、子機の動作状態なども遅滞なく、親機を通じて主装置に通知できる。
【0107】
[変形例]
なお、上述した実施の形態では、スロット分の伝送データ(
図8(B))のAフィールドを使用して通常通り制御信号を送信すると共に、送信対象の音声信号の重要性の低い区間を使用して必要となる制御信号を送信するようにした。しかし、これに限るものではない。音声信号の重要性の低い区間を使用して、伝送の必要のなる制御信号を遅滞なく伝送できるのであれば、1スロット分の伝送データのAフィールドを使用して制御信号を伝送する必要はない。
【0108】
また、通話回線が解放された状態にある非通話中においては、1スロット分の伝送データのBフィールドを用いて制御信号を伝送する特許文献1に記載の方式を併用するようにしてもよい。また、周囲に他のコードレス電話装置が存在しない場合に、空きスロットとなっている他のコードレス電話装置のスロットを併せて使用して、制御信号を伝送する特許文献2に記載の方式を併用するようにしてもよい。
【0109】
また、伝送すべき音声信号の重要性の低い区間を特定する方式は、上述した(1)~(7)に示した場合に限るものではない。例えば、所定の保留音が送信されてきている場合には、通話の相手先からの音声信号の重要性は低いと判別することもできる。また、送信すべき音声信号が、明らかに話音声ではないと判別できる場合にも、当該音声信号の重要性は低いと判別できる。このように、送信対象の音声信号の重要性は、その音声信号の特徴や送信時におけるコードレス電話装置の操作の状況などに応じて判別できれば、これを採用することができる。
【0110】
なお、上述した実施の形態においては、DECT規格の通信方式により無線通信を行う親機と子機とからなるコードレス電話装置にこのはめを適用した場合を例にして説明したが、これに限るものではない。ビジネスホンシステムを構成するコードレス電話装置であって、種々の通信方式で親機と子機との間で無線通信が行われるコードレス電話装置にこの発明を適用できる。
【0111】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項における親機側判別手段の機能は、実施の形態の親機BS1の挿入区間検出部471が実現し、請求項における親機側挿入手段の機能は、実施の形態の親機BS1の制御信号挿入部472が実現している。また、請求項における子機側抽出手段の機能は、実施の形態の子機HS1の制御信号抽出部571が実現し、請求項における子機側代替手段の機能は、実施の形態の子機HS1のノイズ挿入部572が実現している。
【0112】
また、請求項における子機側判別手段の機能は、実施の形態の子機HS1の挿入区間検出部573が実現し、請求項における子機側挿入手段の機能は、実施の形態の子機HS1の制御信号挿入部574が実現している。また、請求項における親機側抽出手段の機能は、実施の形態の親機BS1の制御信号抽出部473が実現し、請求項における親機側代替手段の機能は、実施の形態の親機BS1のノイズ挿入部474が実現している。
【0113】
また、
図6、
図7のシーケンス図を用いて説明した親機と子機との間で制御信号を送受する方法が、この発明のコードレス電話装置に適用された制御信号の伝送方法である。すなわち、親機BS1と子機HS1との間において送受される信号について、自機から送信する音声信号の重要性の低い区間に制御信号を挿入して送信し、自機が受信した音声信号に挿入されている制御信号を抽出して利用可能にする方法となる。
【符号の説明】
【0114】
1…主装置、21~2n…コードレス電話装置、BS1~BSn…親機、41…制御回路、42…回路LSI部、421…分割化/多重化処理部、422…制御信号処理部、423…音声信号処理部、424…同期信号検出部、425…PLL部、43…同期信号発生回路、431…カウンタ、432…同期信号生成部、44…無線通信回路、441…制御部、442…TDMA変復調部、443…RF部、4421…PLL部、45、46…発振器、47…挿入抽出処理部、471…挿入区間検出部、472…制御信号挿入部、473…制御信号抽出部、474…ノイズ挿入部、HS1~HSn…子機、51…無線通信回路、511…制御部、512…TDMA変復調部、5121…PLL部、513…RF部、52…制御回路、53…コーデック回路、54…発振器、55…マイクロホン、56…スピーカ、57…挿入抽出処理部、571…制御信号抽出部、572…ノイズ挿入部、573…挿入区間検出部、574…制御信号挿入部、58…操作部、59…センサ部