特許 7121342 還元剤注入口構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-08-09

(45)【発行日】2022-08-18

(54)【発明の名称】還元剤注入口構造

(51)【国際特許分類】

   F01N 3/08 20060101AFI20220810BHJP

   B01D 53/94 20060101ALI20220810BHJP

【ＦＩ】

F01N3/08 B

B01D53/94 400

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2018189255

(22)【出願日】2018-10-04

(65)【公開番号】P2020056386

(43)【公開日】2020-04-09

【審査請求日】2021-03-26

(73)【特許権者】

【識別番号】000006286

【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100174366

【弁理士】

【氏名又は名称】相原 史郎

(72)【発明者】

【氏名】高橋 聡

(72)【発明者】

【氏名】月元 久人

【審査官】稲村 正義

(56)【参考文献】

【文献】特開２００９－２２１８８４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特表２０１７－５３８６２３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－１４３２６２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－０９６２２３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１８－１４５８４１（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２０１３／０２９２３８６（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ０１Ｎ ３／００－３／３８

Ｂ０１Ｄ ５３／９４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

エンジンの排気通路に還元剤を噴射して排気ガスを浄化する排気浄化装置を備えた車両における還元剤注入口構造であって、
還元剤を貯留する還元剤タンクと、
前記還元剤を補給する補給口と前記還元剤タンクとを接続する補給管と、
前記補給口を覆うとともに一方にヒンジ部材を有して前記一方へ向けて開扉されるリッド部材と、
前記補給管の管周りに配置され、前記補給口から漏れた還元剤を受ける還元剤受け部と、
前記還元剤受け部に漏れた還元剤を前記還元剤受け部から排出する排出口と、
を備え、
前記排出口は、前記還元剤受け部に挿入される前記補給管を挟んで前記一方とは反対の他方に設けられたことを特徴とする還元剤注入口構造。

【請求項2】

一方側に前記補給管が挿入される第一開口が形成された第一開口部を有するとともに他方側に前記補給口が臨む前記第一開口より大きな第二開口が形成された第二開口部を有する還元剤排出補助部材を備え、
前記還元剤受け部は、前記第一開口部に接続される
ことを特徴とする請求項１に記載の還元剤注入口構造。

【請求項3】

前記還元剤排出補助部材の前記第二開口は、前記リッド部材で覆われる
ことを特徴とする請求項２に記載の還元剤注入口構造。

【請求項4】

前記補給口は、車両幅方向の一方側に寄せて車両の上方向を臨むように配置され、
前記リッド部材は、車両幅方向の前記一方側に配置されたヒンジ部材を介して前記還元剤排出補助部材に接続される
ことを特徴とする請求項３に記載の還元剤注入口構造。

【請求項5】

前記還元剤排出補助部材は、前記車両のフロアパネルと別体で形成されて当該フロアパネルに組み付けられる
ことを特徴とする請求項３または請求項４に記載の還元剤注入口構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを還元するための還元剤を貯留する還元剤タンクを備えた自動車における還元剤注入口構造に関する。

【背景技術】

【0002】

エンジン（内燃機関）を備えた自動車には、当該エンジンから排出される排気ガス中の有害成分を低減するために、触媒コンバータ等の排気浄化装置が設けられている。

【0003】

近年では、排気浄化装置の一つとして、排気ガス中に含まれる窒素酸化物（ＮＯ_X）を還元反応によって低減させるための還元触媒コンバータが備えられ、この還元触媒コンバータに使用される還元物質（還元剤）として、熱分解によってアンモニアを発生する尿素水溶液（尿素水）が用いられている。

【0004】

このような尿素水を還元剤として利用する自動車には、排気系統に注入する尿素水を貯留するための還元剤タンクが設けられ、この還元剤タンクには、尿素水を当該還元剤タンクに補給するための補給口が設けられている（例えば、特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】特開２００９－９６２２３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

特許文献１に記載された技術においては、尿素水溶液を尿素タンクに補給する際に、尿素水溶液が周囲に零れると、当該尿素水溶液が時間の経過と共に固形化し、その固形物が注入口の周囲に堆積してしまう。

【0007】

本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、補給口から零れた還元剤が固形化して堆積するのを防ぐことを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

上記課題を解決する第一の発明に係る還元剤注入口構造は、エンジンの排気通路に還元剤を噴射して排気ガスを浄化する排気浄化装置を備えた車両における還元剤注入口構造であって、還元剤を貯留する還元剤タンクと、前記還元剤を補給する補給口と前記還元剤タンクとを接続する補給管と、前記補給口を覆うとともに一方にヒンジ部材を有して前記一方へ向けて開扉されるリッド部材と、前記補給管の管周りに配置され、前記補給口から漏れた還元剤を受ける還元剤受け部と、前記還元剤受け部に漏れた還元剤を前記還元剤受け部から排出する排出口と、を備え、前記排出口は、前記還元剤受け部に挿入される前記補給管を挟んで前記一方とは反対の他方に設けられたことを特徴とする。

【0009】

上記課題を解決する第二の発明に係る還元剤注入口構造は、第一の発明に係る還元剤注入口構造において、一方側に前記補給管が挿入される第一開口が形成された第一開口部を有するとともに他方側に前記補給口が臨む前記第一開口より大きな第二開口が形成された第二開口部を有する還元剤排出補助部材を備え、前記還元剤受け部は、前記第一開口部に接続されることを特徴とする。

【0010】

上記課題を解決する第三の発明に係る還元剤注入口構造は、第二の発明に係る還元剤注入口構造において、前記還元剤排出補助部材の前記第二開口は、前記リッド部材で覆われることを特徴とする。

【0011】

上記課題を解決する第四の発明に係る還元剤注入口構造は、第三の発明に係る還元剤注入口構造において、前記補給口は、車両幅方向の一方側に寄せて車両の上方向を臨むように配置され、前記リッド部材は、車両幅方向の前記一方側に配置されたヒンジ部材を介して前記還元剤排出補助部材に接続されることを特徴とする。

【0012】

上記課題を解決する第五の発明に係る還元剤注入口構造は、第三または第四の発明に係る還元剤注入口構造において、前記還元剤排出補助部材は、前記車両のフロアパネルと別体で形成されて当該フロアパネルに組み付けられることを特徴とする。

【発明の効果】

【0013】

本発明に係る還元剤注入口構造によれば、補給時に補給口から零れた還元剤が固形化して堆積するのを防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】実施例１に係る還元剤注入口構造を備えた自動車の構成を示す説明図である。

【図2】実施例１に係る還元剤注入口構造における還元剤タンクと補給口ユニットおよび保護ユニットの組み付け方向を示す説明図である。

【図3】実施例１に係る還元剤注入口構造における還元剤の補給口近傍の構造を示す説明図（図１におけるIII－III矢視断面図）である。

【図4A】実施例１に係る還元剤注入口構造における補給口ユニットの組み付け手順を示す説明図（図１におけるIV－IV矢視断面図に相当）である。

【図4B】実施例１に係る還元剤注入口構造における補給口ユニットの組み付け手順を示す説明図（図１におけるIV－IV矢視断面図に相当）である。

【図4C】実施例１に係る還元剤注入口構造における補給口ユニットの組み付け手順を示す説明図（図１におけるIV－IV矢視断面図に相当）である。

【図4D】実施例１に係る還元剤注入口構造における補給口ユニットの組み付け手順を示す説明図（図１におけるIV－IV矢視断面図に相当）である。

【図5】実施例１に係る還元剤注入口構造における補給口ユニットが組み付けられた状態のフロアパネルの下面側を示す説明図である。

【図6】実施例１に係る還元剤注入口構造における補給口ユニットおよび保護ユニットの組み付け構成を変更した例を示す説明図（図１におけるIII－III矢視断面図に相当）である。

【図7】実施例１に係る還元剤注入口構造における補給口ユニットおよび保護ユニットの組み付け構成を変更した例を示す説明図（図１におけるIII－III矢視断面図に相当）である。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下に、本発明に係る還元剤注入口構造の実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。

【実施例1】

【0016】

本発明の実施例１に係る還元剤注入口構造について、図１から図５を参照して説明する。

【0017】

図１に示すように、車両１には、車両の下部構造を構成する（車室の底部を形成する）フロアパネル１１が設けられており、このフロアパネル１１の下方には、図示しないエンジン（内燃機関）と接続された排気通路（排気系統）１２が配設されると共に、排気ガスを浄化可能な還元剤（例えば、尿素水溶液）を貯留する還元剤タンク１３が設けられている。

【0018】

ここで、還元剤タンク１３は、還元剤を排気系統１２に噴射して排気ガスを浄化する排気浄化装置の一部を構成するものであり、還元剤タンク１３に貯留された還元剤は、図示しない還元剤注入装置によって排気系統１２内に注入されるようになっている。なお、還元剤タンク１３は、断熱材を含んで構成されており、還元剤タンク１３内に貯留される還元剤は、排気系統１２の熱による影響を受けないものとする。

【0019】

図１および図２に示すように、還元剤タンク１３には、当該還元剤タンク１３に還元剤を補給するための補給経路である補給管２１および補給口ユニット１４が設けられている。

【0020】

補給管２１は、還元剤を流通可能な管であり、一端が還元剤タンク１３の側部（側面）に接続され、当該還元剤タンク１３の側部（側面）に沿って配設されると共に、他端が還元剤タンク１３の側部（側面）近傍に位置する補給口ユニット１４の補給口に接続されている。

【0021】

図３に示すように、補給口ユニット１４は、還元剤補給装置１５（図３における二点鎖線参照）を装着可能な補給口３１を有し、還元剤の補給が可能である。補給口ユニット１４の一部（補給口３１）がフロアパネル１１に形成された取り付け穴１１ａを挿通して当該フロアパネル１１の上方に位置するように、車両下方側からフロアパネル１１に取り付けられている。

【0022】

このように、補給口３１をフロアパネル１１の上方に突出して配置することにより、使用者は、フロアパネル１１の上方（車室内空間Ｓ１側）から容易に補給口３１にアクセスすることができ、還元剤の補給作業を容易に行うことができる。なお、補給口ユニット１５をフロアパネル１１に取り付ける構成および手順については、後に詳述する。

【0023】

補給口ユニット１４は、車両幅方向中央部から車両幅方向一方側に寄せて配置されており（図１参照）、補給口３１は、車両幅方向中央部側（車両幅方向他方側であって、図３においては右方側）へ向けて僅かに傾斜して設けられている（図３参照）。これにより、使用者は、車両幅方向中央部側の広い空間から還元剤補給装置１５を補給口３１に装着し易く、還元剤の補給動作を容易に行うことができる。

【0024】

また、図３および図４Ｄに示すように、補給口ユニット１４には、還元剤の補給時に補給口３１および還元剤補給装置１５から零れた還元剤を受けるための還元剤受け部（ドレン受け部）３２が設けられている。還元剤受け部３２は、補給管の管周りに配置され、補給口から漏れた還元剤を受ける機能を有する。ドレン受け部３２は、取り付け穴１１ａに対応した桶状（凹状）に形成されており、補給口３１の下方に位置する底部３２ａと、この底部３２ａの外周縁から立設する側壁部３２ｂと、この側壁部３２ｂの上端縁から拡径方向に傾斜する傾斜部３２ｃとから概略構成されている。

【0025】

底部３２ａには、ドレン受け３２で受けた還元剤を排出するための排出口（ドレン穴）３３およびドレン管３４が設けられている。使用者は、車両幅方向中央部側（車両幅方向他方側）の広い空間から還元剤補給装置１５を補給口３１に装着して還元剤の補給を行うため、ドレン穴３３は、補給口３１周辺で還元剤が零れやすい位置、すなわち、補給口３１よりも車両幅方向他方側に形成されている。
また、ドレン管３４は、その先端部（大気開放された端部）が下方に他部材の存在しない所望の位置に位置するように配されており、このドレン管３４から排出される還元剤は、車両１における各種部材に付着することなく排出されるようになっている。

【0026】

また、図２に示すように、還元剤タンク１３には、大気に常時開放されて還元剤タンク１３内の過圧および負圧を防止するベント管２２と、補給管２１と共に還元剤タンク１３と補給口ユニット１４との間に介装されて補給口３１からの還元剤の噴き出しを防止するブリーザ管２３とが設けられている。よって、使用者は、補給口３１から還元剤タンク１３への還元剤の補給作業をスムーズに行うことができる。

【0027】

車両１において、補給口ユニット１４、補給管２１、ベント管２２、ブリーザ管２３、および、ドレン管３４は、還元剤タンク１３の側方であって、還元剤タンク１３に対して排気系統１２と反対の側、すなわち、排気系統１２に対して還元剤タンク１３の影に配設されている。

【0028】

つまり、排気系統１２の発する熱（輻射線）がこれら補給口ユニット１４、補給管２１、ベント管２２、ブリーザ管２３、および、ドレン管３４に直接的に照射されることはなく、また、ドレン管３４およびブリーザ管２３の開口部が排気系統１２近傍における高温の雰囲気に存在せず、排気系統１２から離れた（還元剤タンク１３の陰に隠れた）低温の雰囲気に存在する。

【0029】

よって、還元剤の補給時に、補給口ユニット１４、補給管２１およびベント管２２を流れる還元剤が排気系統１２の熱（輻射熱）による影響を受けることはなく、また、還元剤タンク１３および補給口ユニット１４内の空間がブリーザ管２３およびドレン管３４の開口部を介して高温の雰囲気に晒されること（排気系統１２の熱）による影響を受けることもない。

【0030】

また、図４Ｄおよび図５に示すように、補給口ユニット１４には、当該補給口ユニット１４を固定するための固定用ブラケット３５が設けられている。固定用ブラケット３５は、補給管２１およびドレン管３４等を避けて、ドレン受け部３２を車両下方側から覆うように形成されており、後述するボルトＢの案内部Ｂ１およびねじ部Ｂ２を挿通可能なボルト穴３５ａを有する。なお、固定用ブラケット３５は、接着剤や図示しないねじ等によって補給口ユニット１４（ドレン受け部３２）に固定されるものであっても良く、また、補給口ユニット１４は、直接的に（固定用ブラケット３５を介さずに）フロアパネル１１に固定されるものであっても良い。

【0031】

図１および図２に示すように、車両１には、フロアパネル１１の上方に突出して配置された補給口３１のカバーとして機能する保護ユニット１６が設けられている。

【0032】

図３に示すように、保護ユニット１６は、取り付け穴１１ａの近傍（周縁部）に取り付けられる漏斗状の還元剤排出補助部材（カップ部材）４１と、このカップ部材４１の上部開口部（第二開口部）４１ａにヒンジ部材４２を介して開閉可能に取り付けられるリッド部材４３とから概略構成されている。上部開口部（第二開口部）４１ａは補給口が臨むような位置に配置される。

【0033】

カップ部材４１の下部開口部（第一開口部）４１ｂは、取り付け穴１１ａおよびドレン受け部３２に対応して配置され、ドレン受け部３２とカップ部材４１の下部開口部（第一開口部）４１ｂとは接続されている。ここで、第二開口部４１ａは第一開口部４１ｂより大きな開口となっているため、還元剤の補給時に補給口３１から零れた還元剤を還元剤排出補助部材(カップ部材)４１の内面にうまくつたわらせて下方に流すことで、下部開口部(第二開口部)４１ｂからドレン受け部３２に落ちて集約されるようになっている。

【0034】

図４Ｄに示すように、カップ部材４１には、下部開口部４１ｂの近傍において、外周に突出したフランジ部４１ｃが設けられており、このフランジ部４１ｃには、当該カップ部材４１（保護ユニット１６）をフロアパネル１１に固定するためのボルトＢが固定（固着）されている。

【0035】

保護ユニット１６には、複数（本実施例においては、三つ）のボルトＢが設けられており、フロアパネル１１には、これら複数のボルトＢに対応したボルト穴１１ｂが形成されている。よって、保護ユニット１６をフロアパネル１１に対して車両上方側から組み付ける際には、複数のボルトＢを複数のボルト穴１１ｂにそれぞれ挿通させることにより、カップ部材４１における下部開口部４１ｂが取り付け穴１１ａに対応した位置（取り付け穴１１ａと同じ位置）に位置するようになっている。

【0036】

また、図４Ｄに示すように、カップ部材４１には、下部開口部４１ｂの内周面から下方側へ突出してドレン受け部３２の側壁部３２ｂと係合するガイド部４４が設けられている。ガイド部４４は、下部開口部４１ｂの周方向に離間して複数箇所（例えば、三箇所）に設けられており、これら複数のガイド部４４がそれぞれ側壁部３２ｂと係合する（詳細には、複数のガイド部４４の外周面が側壁部３２ｂの内周面と密接する）ことにより、カップ部材４１（保護ユニット１６）とドレン受け部３２（補給口ユニット１４）との相対的な位置決めがなされるようになっている。

【0037】

つまり、保護ユニット１６および補給口ユニット１４をフロアパネル１１に組み付ける際には、保護ユニット１６をフロアパネル１１の車両上方側からボルトＢによって所定の位置に配置した後、この保護ユニット１６に対して、補給口ユニット１４を車両下方側からガイド部４４と側壁部３２ｂとが係合するように組み付ける。

【0038】

このとき、保護ユニット１６および補給口ユニット１４等の形状寸法が所定の相対的な関係にあることにより、保護ユニット１６と補給口ユニット１４のフロアパネル１１への組み付け作業が容易なものとなっている。具体的には、前述したように固定用ボルトＢによって所定の位置に位置した保護ユニット１６に対して、補給口ユニット１４を組み付ける際に、補給口ユニット１４の位置が段階的（本実施例においては、四段階）に規制され、作業者が意識的に細かい位置調整をすることなく、補給口ユニット１４を組み付けることができるようになっている。保護ユニット１６および補給口ユニット１４のフロアパネル１１への組み付け手順については、後に詳述する。

【0039】

図３に示すように、ヒンジ部材４２は、カップ部材４１における車両幅方向一方側（図３においては、左方側）の端部に設けられており、リッド部材４３は、車両幅方向中央側（または、車両幅方向他方側であって、図３においては右方側）から車両幅方向一方側へ向けて開扉されるようになっている。

【0040】

よって、使用者は、リッド部材４３をカップ部材４１に対して開閉する際には、車両幅方向中央側の広い空間を利用して（図示しないサイドパネル等に阻害されることなく）開閉動作を行うことができ、還元剤補給装置１５によって補給口３１から還元剤を補給する際には、車両幅方向中央側の広い空間を利用して（図示しないサイドパネル等に阻害されることなく）補給動作を行うことができる（図３における二点鎖線参照）。

【0041】

図３および図４Ｄに示すように、フロアパネル１１とカップ部材４１との間には、その隙間をシールする第一のシール部材４５が介装されており、カップ部材４１とリッド部材４３との間には、その隙間をシールする第二のシール部材４６が介装されている。

【0042】

よって、リッド部材４３をカップ部材４１に対して開扉したときには、使用者は補給口３１にアクセスして還元剤の補給作業を行うことができる一方で（図３における二点鎖線参照）、リッド部材４３をカップ部材４１に対して閉扉したときには、保護ユニット１６内の空間（補給空間）Ｓ１６を車室内の空間（車室内空間）Ｓ１と確実に隔離することができるので、還元剤タンク１３内の還元剤および補給口３１等に付着した還元剤の臭気を補給空間Ｓ１６内に留め、その臭気が車室内空間Ｓ１に浸入することを防ぐことができる（図３における実線参照）。

【0043】

ここで、ドレン受け部３２およびドレン穴３３は、補給口３１と共に、保護ユニット１６によって画成された補給空間Ｓ１６に臨んで設けられており、リッド部材４３の閉扉状態において、ドレン受け部３２およびドレン穴３３等に残留される還元剤の臭気は、補給空間Ｓ１６内に留められ、車室内空間Ｓ１に浸入することはない。

【0044】

本発明の実施例１に係る自動車における保護ユニットおよび補給口ユニットのフロアパネルへの組み付け手順について、図１から図５を参照して説明する。

【0045】

まず、保護ユニット１６をフロアパネル１１上に配置し、補給口３１を取り付け穴１１ａおよびカップ部材４１の下部開口部４１ｂに挿通させるように、補給口ユニット１４を、フロアパネル１１および保護ユニット１６に対して車両下方側から近づけ、ボルト穴３５ａをボルトＢの案内部Ｂ１に係合させる（図４Ａ参照）。これにより、補給口ユニット１４は、案内部Ｂ１の外径とボルト穴３５ａの内径との差分の範囲のみで移動可能な状態（第一の位置規制状態）となる。

【0046】

このとき、補給口ユニット１４が還元剤タンク１３の側方に位置しているので（図１および図２参照）、作業者は、フロアパネル１１の下方に突出したボルトＢと、補給口ユニット１４の取り付け面（ボルト穴３５ａ）とを視認しつつ、上述の作業（ボルト穴３５ａをボルトＢの案内部Ｂ１に係合させる作業）を行うことができる。

【0047】

また、三つのボルトＢのうち二つのボルトＢが車両後方側に配置されているので（図５参照）、作業者は、車両後方側に配置された二つのボルトＢと二つのボルト穴３５ａとを視認しながら係合させることができると共に、これら二つのボルトＢおよびボルト穴３５ａの係合により、車両前方側に配置された一つのボルトＢと一つのボルト穴３５ａとを視認することなく係合させることができる。

【0048】

次に、作業者は、第一の位置規制状態で、補給口ユニット１４をフロアパネル１１および保護ユニット１６に対して更に近づけ（車両下方側から車両上方側へ向けて移動し）、ボルト穴３５ａをボルトＢの案内部Ｂ１よりも拡径された部分であるねじ部Ｂ２と係合させる（図４Ｂ参照）。これにより、補給口ユニット１４は、ねじ部Ｂ２の外径とボルト穴３５ａの内径との差分の範囲のみで移動可能な状態（第二の位置規制状態）となる。

【0049】

このとき、ドレン受け部３２の傾斜部３２ｃが車両上下方向においてガイド部４４とラップした位置となる、すなわち、傾斜部３２ｃの上端縁がガイド部４４の下端縁と車両上下方向において略同じ位置またはガイド部４４の下端縁よりも車両上方側の位置に位置することとなる。

【0050】

なお、ねじ部Ｂ２の外径とボルト穴３５ａの内径との差分は、車両上下方向においてラップしているガイド部４４と傾斜部３２ｃとの水平方向の距離よりも小さい（短い）ので、補給口ユニット１４が第二の位置規制状態において水平方向に移動したとしても、ガイド部４４が傾斜部３２ｃの径方向外側に位置することはなく、常にガイド部４４が傾斜部３２ｃの径方向内側に位置する。つまり、作業者は、第二の位置規制状態における補給口ユニット１４の保護ユニット１６に対する水平方向の位置について、特に気を付ける必要がなく、ボルト穴３５ａおよびボルトＢ（ボルト穴３５ａとねじ部Ｂ２との係合）のみを注視して作業を行うことができる。

【0051】

次に、作業者は、第二の位置規制状態で、補給口ユニット１４をフロアパネル１１および保護ユニット１６に対して更に近づけ（車両下方側から車両上方側へ向けて更に移動し）、側壁部３２ｂをガイド部４４と係合させる（図４Ｃ参照）。これにより、補給口ユニット１４は、複数のガイド部４４と側壁部３２ｂとの係合によって略位置決めされた状態であって、組み付け方向のみ移動が可能な状態（第三の位置規制状態）となる。

【0052】

このとき、傾斜部３２ｃが側壁部３２ｂの上端縁から拡径方向に傾斜して形成されているので、補給口ユニット１４は、車両上方に移動するにつれて水平方向に移動可能な範囲が傾斜部３２ｃの傾斜角に応じて徐々に狭められることにより、第二の位置規制状態から第三の位置規制状態へと徐々に変態されることとなる。

【0053】

そして、作業者は、第三の位置規制状態で、補給口ユニット１４をフロアパネル１１および保護ユニット１６に対して更に近づけ（車両下方側から車両上方側へ向けて更に移動し）、補給口ユニット１４（傾斜部３２ｃの上端縁および固定用ブラケット３５）をフロアパネル１１に当接させると共に、補給口ユニット１４（傾斜部３２ｃ）を第一のシール４５に密接させる（図４Ｄ参照）。

【0054】

このとき、補給口ユニット１４は、複数のガイド部４４と側壁部３２ｂとの係合によって略位置決めされた状態（第三の位置規制状態）で第一のシール部材４５と当接されるので、第一のシール部材４５において傾斜部３２ｃ側に突設されたリップ部４５ａは、良好な形態で傾斜部３２ｃと当接することとなり、保護ユニット１６と補給口ユニット１４との間の隙間をシールする十分な機能を発揮することができる。

【0055】

最後に、作業者は、ナットＮをボルトＢのねじ部Ｂ２にねじ込んで保護ユニット１６および補給口ユニット１４をフロアパネル１１の上下面に固定する（図４Ｄ参照）。

【0056】

以上により、作業者は、保護ユニット１６および補給口ユニット１４をフロアパネル１１に対して容易に組み付けることができる。

【0057】

本実施例においては、補給口ユニット１４および保護ユニット１６を、ボルトＢとナットＮとの機械的締結手段により、フロアパネル１１を上下方向で挟持するようにして当該フロアパネル１１に固定している。

【0058】

もちろん、本発明は、本実施例の構成に限定されず、補給口ユニット１４および保護ユニット１６をそれぞれ別個にフロアパネル１１に固定しても良く、また、リベットなどの他の機械的締結手段により固定するようにしても良い。

【0059】

また、本実施例においては、第一のシール４５を、フロアパネル１１と保護ユニット１６（カップ部材４１）との間に介装すると共に、取り付け穴１１ａの径方向内側に延設して補給口ユニット１４と保護ユニット１６との間にも介装するようにしており、第一のシール４５は、フロアパネル１１と保護ユニット１６（カップ部材４１）との間をシールする機能と、補給口ユニット１４と保護ユニット１６との間をシールする機能とを有している。

【0060】

もちろん、本発明は、本実施例の構成に限定されず、第一のシール部材４５を複数（例えば、二つ）の別体のシール部材で構成する、すなわち、フロアパネル１１と保護ユニット１６（カップ部材４１）との間の隙間と、補給口ユニット１４と保護ユニット１６との間の隙間とを、別体のシール部材でシールするようにしても良い。

【0061】

また、本実施例においては、フロアパネル１１の一部を車室のフロア面Ｆに対して窪んで形成すると共に、保護ユニット１６の下端部をフロアパネル１１のフロア面Ｆに対して窪んだ箇所に取り付け、保護ユニット１６の上端部をフロア面Ｆの近傍に位置するようにしている。

【0062】

もちろん、本発明は、本実施例の構成に限定されず、図６に示すように、フロアパネル１１の一部を車室のフロア面Ｆに対して僅かに窪んで形成すると共に、保護ユニット１６の上端部近傍をフロアパネル１１に取り付けるようにしても良い。また、図７に示すように、フロアパネル１１の一部を車室のフロア面Ｆに対して窪んで形成すると共に、さらにその一部を漏斗状に形成し、このフロアパネル１１における漏斗状の部分を、本実施例におけるカップ部材４１の代用としても良い。なお、図６および図７においては、本実施例と同様の機能を有する部材に対して同一の符号を付している。

【符号の説明】

【0063】

１ 車両
１１ フロアパネル
１１ａ フロアパネルにおける取り付け穴
１１ｂ フロアパネルにおけるボルト穴
１２ 排気系統
１３ 還元剤タンク
１４ 補給口ユニット
１５ 還元剤補給装置
１６ 保護ユニット
２１ 補給管
２２ ベント管
２３ ブリーザ管
３１ 補給口
３２ ドレン受け部（還元剤受け部、還元剤排出手段、位置規制手段）
３２ａ ドレン受け部における底部
３２ｂ ドレン受け部における側壁部（位置規制手段）
３２ｃ ドレン受け部における傾斜部（位置規制手段）
３３ 排出口（ドレン穴、還元剤排出手段）
３４ ドレン管（還元剤排出手段）
３５ 固定用ブラケット
３５ａ 固定用ブラケットにおけるボルト穴（位置規制手段）
４１ カップ部材（還元剤排出補助部材、隔離手段）
４１ａ 第二開口部（カップ部材における上部開口部）
４１ｂ 第一開口部（カップ部材における下部開口部）
４１ｃ カップ部材におけるフランジ部
４２ ヒンジ部材
４３ リッド部材（隔離手段）
４４ ガイド部（位置規制手段）
４５ 第一シール部材（隔離手段）
４６ 第二シール部材（隔離手段）
Ｂ ボルト（位置規制手段）
Ｂ１ ボルトにおける案内部（位置規制手段）
Ｂ２ ボルトにおけるねじ部（位置規制手段）
Ｎ ナット

【図1】

【図2】

【図3】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図5】

【図6】

【図7】