(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、樹脂シート、積層樹脂シート、積層板、金属箔張積層板、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08G 73/00 20060101AFI20220810BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220810BHJP
B32B 17/04 20060101ALI20220810BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
C08G73/00
B32B15/08 J
B32B17/04
H05K1/03 610N
(21)【出願番号】P 2021115454
(22)【出願日】2021-07-13
(62)【分割の表示】P 2018515427の分割
【原出願日】2017-04-24
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2016092758
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】濱嶌 知樹
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 環
(72)【発明者】
【氏名】志賀 英祐
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-028164(JP,A)
【文献】特開2014-084452(JP,A)
【文献】特開2014-019758(JP,A)
【文献】特開2015-147869(JP,A)
【文献】特許第6924388(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
B32B
H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン酸エステル化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、アミン変性シリコーン(F)と、を含有し、
該マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)に対する前記シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)の比(〔α/β〕)が、0.30以上であり、
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記式(2)で表される化合物を含む、
【化1】
(式(2)中、R
3は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、n2は1以上の整数である。)
樹脂組成物。
【請求項2】
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記一般式(1)で表される化合物をさらに含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(1)中、R
1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R
2は、各々独立して、置換基としてシアン酸エステル基、ヒドロキシル基及びアリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有してもよいフェニル基、水素原子、アリル基、シアン酸エステル基、又は、エポキシ基を表し、n1は1以上の整数であり、mは1~4の整数である。)
【請求項3】
前記シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基当量が、100~220g/eq.である、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記一般式(3)で表される化合物をさらに含む、
請求項1~
3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化3】
【請求項5】
前記マレイミド化合物(B)が、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、及び下記式(4)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
請求項1~
4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化4】
(式中、R
4は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n3は1以上の整数を表す。)
【請求項6】
前記比(〔α/β〕)が、0.45~1.0である、
請求項1~
5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
無機充填材(C)をさらに含む、
請求項1~
6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機充填材(C)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、25~700質量部である、
請求項
7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記無機充填材(C)が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種類を含む、
請求項
7又は8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
基材と、
該基材に含浸又は塗布された請求項1~
9のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、
プリプレグ。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の樹脂組成物をシート状に形成してなる、
樹脂シート。
【請求項12】
シート基材と、該シート基材の片面又は両面に配された請求項1~
9のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、
積層樹脂シート。
【請求項13】
請求項
10に記載のプリプレグ、請求項
11に記載の樹脂シート、及び請求項
12に記載の積層樹脂シートからなる群より選択される少なくとも1種を1枚以上有する、
積層板。
【請求項14】
請求項
10に記載のプリプレグ、請求項
11に記載の樹脂シート、及び請求項
12に記載の積層樹脂シートからなる群より選択される少なくとも1種と、
前記プリプレグ、前記樹脂シート、及び前記積層樹脂シートの片面又は両面に配された金属箔と、を有する、
金属箔張積層板。
【請求項15】
絶縁層と、該絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、を有し、
前記絶縁層が、請求項1~
9のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂シート、積層樹脂シート、積層板、金属箔張積層板、及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化、小型化が進むに従い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化が近年益々加速している。それに伴い、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板との熱膨張率の差によって生じる半導体プラスチックパッケージの反りが問題となっており、様々な対策が講じられてきている。
【0003】
その対策の一つとして、プリント配線板に用いられる絶縁層の低熱膨張化が挙げられる。これは、プリント配線板の熱膨張率を半導体素子の熱膨張率に近づけることで反りを抑制する手法であり、現在盛んに取り組まれている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
半導体プラスチックパッケージの反りを抑制する手法としては、プリント配線板の低熱膨張化以外にも、積層板の剛性を高くすること(高剛性化)や積層板のガラス転移温度を高くすること(高Tg化)が検討されている(例えば、特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-216884号公報
【文献】特許第3173332号公報
【文献】特開2009-035728号公報
【文献】特開2013-001807号公報
【文献】特開2011-178992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に記載の従来の手法によるプリント配線板の低熱膨張化は既に限界が近づいており、さらなる低熱膨張化が困難となっている。
【0007】
積層板の高剛性化は積層板に使用する樹脂組成物中にフィラーを高充填させることや、アルミナなどの高弾性率の無機充填材を使用することで達成される。しかしながら、フィラーの高充填化は積層板の成形性を悪化させ、アルミナなどの無機充填材の使用は積層板の熱膨張率を悪化させてしまう問題がある。したがって、積層板の高剛性化は半導体プラスチックパッケージの反りの抑制を十分に達成できていない。
【0008】
また、積層板の高Tg化による手法はリフロー時の弾性率を向上させることから、半導体プラスチックパッケージの反り低減に効果を示す。しかしながら、高Tg化による手法は、架橋密度の上昇による吸湿耐熱性の悪化や、成形性の悪化によるボイドの発生を引き起こすことから、非常に高い信頼性が必要とされる電子材料分野では実用上問題となることが多い。したがって、これらの問題を解決する手法が望まれている。
【0009】
またさらに、プリント配線板の絶縁層には、高い弾性率維持率、高い銅箔ピール強度及びめっきピール強度に優れることが同時に求められる。しかし、これらすべての課題を満足し得るような硬化物を与える樹脂組成物は報告されていない。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、銅箔ピール強度及びめっきピール強度に優れる硬化物を与える樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた、プリプレグ、樹脂シート、積層樹脂シート、積層板、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った。その結果、シアン酸エステル化合物(A)とマレイミド化合物(B)を所定量用いることにより、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
シアン酸エステル化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、を含有し、
該マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)に対する前記シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)の比(〔α/β〕)が、0.30以上である、
樹脂組成物。
〔2〕
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される化合物を含む、
〔1〕に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R
2は、各々独立して、置換基としてシアン酸エステル基、ヒドロキシル基及びアリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有してもよいフェニル基、水素原子、アリル基、シアン酸エステル基、又は、エポキシ基を表し、n1は1以上の整数であり、mは1~4の整数である。)
【化2】
(式(2)中、R
3は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、n2は1以上の整数である。)
〔3〕
シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基当量が、100~220g/eq.である、
〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記一般式(1’’)で表される化合物を含む、
〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(1’’)中、R
1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、n1は1以上の整数である。)
〔5〕
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記一般式(3)で表される化合物を含む、
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化4】
〔6〕
前記マレイミド化合物(B)が、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、及び下記式(4)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化5】
(式中、R
4は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n3は1以上の整数を表す。)
〔7〕
前記比(〔α/β〕)が、0.45~1.0である、
〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔8〕
無機充填材(C)をさらに含む、
〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔9〕
前記無機充填材(C)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、25~700質量部である、
〔8〕に記載の樹脂組成物。
〔10〕
前記無機充填材(C)が、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種類を含む、
〔8〕又は〔9〕に記載の樹脂組成物。
〔11〕
基材と、
該基材に含浸又は塗布された〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、
プリプレグ。
〔12〕
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物をシート状に形成してなる、
樹脂シート。
〔13〕
シート基材と、該シート基材の片面又は両面に配された〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、
積層樹脂シート。
〔14〕
〔11〕に記載のプリプレグ、〔12〕に記載の樹脂シート、及び〔13〕に記載の積層樹脂シートからなる群より選択される少なくとも1種を1枚以上有する、
積層板。
〔15〕
〔11〕に記載のプリプレグ、〔12〕に記載の樹脂シート、及び〔13〕に記載の積層樹脂シートからなる群より選択される少なくとも1種と、
前記プリプレグ、前記樹脂シート、及び前記積層樹脂シートの片面又は両面に配された金属箔と、を有する、
金属箔張積層板。
〔16〕
絶縁層と、該絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、を有し、
前記絶縁層が、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
プリント配線板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、銅箔ピール強度及びめっきピール強度に優れる硬化物を与える樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた、プリプレグ、樹脂シート、積層樹脂シート、積層板、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)と、マレイミド化合物(B)と、を含有し、該マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)に対する前記シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)の比(〔α/β〕)が、0.30以上である。
【0016】
〔シアン酸エステル化合物(A)〕
シアン酸エステル化合物(A)としては、シアン酸エステル基を少なくとも1つ有する化合物であれば特に限定されない。シアン酸エステル化合物(A)はシアン酸エステル基以外の反応性官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0017】
シアン酸エステル基以外の反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、アリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、グリシジル基及びリン酸基が挙げられる。このなかでも、アリル基、ヒドロキシル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、アリル基がより好ましい。このような反応性官能基を有することにより、樹脂組成物の曲げ強度及び曲げ弾性率、ガラス転移温度、熱膨張率がより向上する傾向にある。
【0018】
シアン酸エステル化合物(A)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上を併用する場合、シアン酸エステル以外の反応性官能基を有しているものと有していないものを併用してもよく、2種類以上のシアン酸エステル基以外の反応性置換基を有するものを併用してもよい。その際、シアン酸エステル基以外の反応性官能基は同一であってもよく、異なっていてもよい。このなかでも、シアン酸エステル化合物(A)が、少なくともシアン酸エステル基以外の反応性官能基を有するシアン酸エステル化合物を含むことが好ましい。このようなシアン酸エステル化合物(A)を用いることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【0019】
上記のようなシアン酸エステル化合物(A)としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物(ナフトールアラルキル型シアン酸エステル)、ノボラック型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、ビス(3,5-ジメチル4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2、7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4、4’-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、及び2、2’-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン;これらシアン酸エステルのプレポリマーが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なかでも、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
【0020】
上記シアン酸エステル化合物(A)のなかでもシアン酸エステル基以外の反応性官能基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく、下記一般式(1’)で表される化合物がより好ましく、下記一般式(1’’)で表される化合物がさらに好ましい。このようなシアン酸エステル化合物(A)を含むことにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【化6】
(式(1)中、R
1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R
2は、各々独立して、置換基としてシアン酸エステル基、ヒドロキシル基及びアリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有してもよいフェニル基、水素原子、アリル基、シアン酸エステル基、又は、エポキシ基を表し、n1は1以上の整数であり、mは1~4の整数である。)
【化7】
(式(1’)中、R
1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R
2は、各々独立して、置換基としてシアン酸エステル基、ヒドロキシル基及びアリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有してもよいフェニル基、水素原子、アリル基、シアン酸エステル基、又は、エポキシ基を表し、n1は1以上の整数である。)
【化8】
(式(1’’)中、R
1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、n1は1以上の整数である。)
【0021】
式(1)中、R1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子、メチル基を表し、より好ましくはメチル基を表す。また、R2は、各々独立して、置換基としてシアン酸エステル基、ヒドロキシル基及びアリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有してもよいフェニル基、水素原子、アリル基、シアン酸エステル基、又は、エポキシ基を表し、好ましくは水素原子又はアリル基を表す。さらに、n1は1以上の整数であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数である。また、mは1~4の整数であり、好ましくは1~2の整数である。
【0022】
式(1’)及び(1’’)中、R1は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子、メチル基を表し、より好ましくはメチル基を表す。R1がメチル基であるビスフェノールA骨格を有する化合物を用いることにより、銅箔ピール、めっきピール強度、ガラス転移温度がより向上する傾向にある。また、アリル基をさらに有することにより、可撓性と成形性もより向上する傾向にある。さらに、式(1’)及び(1’’)中、n1は1以上の整数であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1である。
【0023】
一般式(1’’)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(3)で表される化合物がより好ましい。このようなシアン酸エステル化合物(A)を含むことにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率、可撓性、成形性がより向上する傾向にある。
【化9】
【0024】
一方、上記シアン酸エステル化合物(A)のなかでもシアン酸エステル基以外の反応性官能基を有しない化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。このようなシアン酸エステル化合物(A)を含むことにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度及びめっきピール強度がより向上する傾向にある。
【化10】
(式(2)中、R
3は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、n2は1以上の整数である。)
【0025】
式(2)中、R3は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子を表す。また、n2は1以上の整数であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数である。
【0026】
シアン酸エステル化合物(A)1分子中のシアン酸エステル基の数は、特に限定されないが、好ましくは1~50であり、より好ましくは2~12であり、さらに好ましくは2~6である。シアン酸エステル化合物(A)1分子中のシアン酸エステル基の数が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【0027】
また、シアン酸エステル化合物(A)1分子中のシアン酸エステル基以外の反応性官能基の数は、特に限定されないが、好ましくは1~50であり、より好ましくは2~12であり、さらに好ましくは2~6である。シアン酸エステル化合物(A)1分子中のシアン酸エステル基以外の反応性官能基の数が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【0028】
シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)は、特に限定されないが、好ましくは0.075~0.5であり、より好ましくは0.085~0.4であり、さらに好ましくは0.095~0.3である。シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。シアン酸エステル基量(α)は、樹脂固形分100質量部に対するシアン酸エステル化合物(A)の含有量(質量部)を、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基当量で除して求めることができる。なお、本願明細書において、「樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における、溶剤、及び無機充填材(C)を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」とは、樹脂組成物における溶剤、及び無機充填材(C)を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
【0029】
シアン酸エステル化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10~65質量部であり、より好ましくは15~60質量部であり、さらに好ましくは15~55質量部である。シアン酸エステル化合物(A)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【0030】
シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基当量は、好ましくは100~290g/eq.であり、より好ましくは120~270g/eq.であり、更に好ましくは150~220g/eq.である。シアン酸エステル化合物(A)ののシアン酸エステル基当量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度がより向上する傾向にある。
【0031】
〔マレイミド化合物(B)〕
マレイミド化合物(B)としては、分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(4)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、若しくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーが挙げられる。このなかでも、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、及び下記式(4)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。このようなマレイミド化合物(B)を含むことにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。また、上述したなかで、高ガラス転移温度(高Tg)の観点から、下記式(4)で表されるマレイミド化合物が、より好ましい。
【化11】
(式中、R
4は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n3は1以上の整数を表す。)
【0032】
式(4)中、R4は、水素原子又はメチル基を表し、好ましくは水素原子を示す。また、式(4)中、n3は1以上の整数を表す。n3は、好ましくは10以下であり、より好ましくは7以下である。
【0033】
マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)は、特に限定されないが、好ましくは0.175~0.6であり、より好ましくは0.185~0.5であり、更に好ましくは0.195~0.4である。マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。マレイミド基量(β)は、樹脂固形分100質量部に対するマレイミド化合物(B)の含有量(質量部)を、マレイミド化合物(B)のマレイミド基当量で除して求めることができる。
【0034】
マレイミド化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは30~80質量部であり、より好ましくは35~75質量部であり、さらに好ましくは40~72質量部である。マレイミド化合物(B)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【0035】
マレイミド化合物(B)のマレイミド基当量は、好ましくは100~350g/eq.であり、より好ましくは150~300g/eq.である。マレイミド化合物(B)のマレイミド基当量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物において、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)に対するシアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)の比(〔α/β〕)は、0.30以上であり、好ましくは0.30~2.0であり、より好ましくは0.40~1.1であり、特に好ましくは0.45~1.0である。比(〔α/β〕)が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【0037】
〔無機充填材(C)〕
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材(C)をさらに含んでもよい。無機充填材(C)としては、特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカなどのシリカ類;ホワイトカーボンなどのケイ素化合物;チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物;窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物;硫酸バリウムなどの金属硫酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウムなどの金属水和物;酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛などのモリブデン化合物;ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛などの亜鉛化合物;アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラスなどのガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなどが挙げられる。無機充填材(C)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
このなかでも、シリカ、ベーマイト、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような無機充填材(C)を用いることにより、曲げ強度及び曲げ弾性率、熱膨張率がより向上する傾向にある。
【0039】
無機充填材(C)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは25~700質量部であり、より好ましくは50~500質量部であり、さらに好ましくは75~300質量部である。無機充填材(C)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度がより向上する傾向にある。
【0040】
〔シランカップリング剤及び湿潤分散剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤や湿潤分散剤をさらに含んでもよい。シランカップリング剤や湿潤分散剤を含むことにより、上記無機充填材(C)の分散性、樹脂成分、無機充填材(C)、及び後述する基材の接着強度がより向上する傾向にある。
【0041】
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物;γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン系化合物;N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系化合物;フェニルシラン系化合物などが挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されないが、例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDISPER-110、111、118、180、161、BYK-W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0043】
〔その他の樹脂等〕
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、エポキシ樹脂(D)、アルケニル置換ナジイミド化合物(E)、アミン変性シリコーン化合物(F)をさらに含有してもよい。このようなその他の樹脂等を含むことにより、銅箔ピール強度、曲げ強度、曲げ弾性率がより向上し、線熱膨脹率が低下する傾向にある。
【0044】
〔エポキシ樹脂(D)〕
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(D)をさらに含んでもよい。エポキシ樹脂(D)をさらに含むことにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。なお、シアン酸エステル化合物(A)がエポキシ基を有する場合において、エポキシ樹脂(D)を用いる場合には、エポキシ樹脂(D)は、エポキシ基を有するシアン酸エステル化合物(A)以外の化合物を言うものとする。
【0045】
エポキシ樹脂(D)としては、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂、或いはこれらのハロゲン化物が挙げられる。なかでも、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0046】
エポキシ樹脂(D)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは2.5~20質量部であり、より好ましくは5.0~17.5質量部であり、さらに好ましくは7.5~15質量部である。エポキシ樹脂(D)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の柔軟性、銅箔ピール強度、耐薬品性、及び耐デスミア性がより向上する傾向にある。
【0047】
〔アルケニル置換ナジイミド化合物(E)〕
アルケニル置換ナジイミド化合物(E)は、分子中に1個以上のアルケニル置換ナジイミド基を有する化合物であれば特に限定されない。このなかでも、下記式(5)で表される化合物が好ましい。このようなアルケニル置換ナジイミド化合物(E)を用いることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度、めっきピール強度、ガラス転移温度、及び弾性率維持率がより向上する傾向にある。
【化12】
(式中、R
5は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を示し、R
6は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(6)若しくは(7)で表される基を示す。)
【化13】
(式中、R
7は、メチレン基、イソプロピリデン基、又は、CO、O、S、若しくはSO
2で表される置換基を示す。)
【化14】
(式中、R
8は、各々独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数5~8のシクロアルキレン基を示す。)
【0048】
アルケニル置換ナジイミド化合物(E)は、下記式(9)及び/又は(10)で表される化合物が好ましい。このようなアルケニル置換ナジイミド化合物(E)を用いることにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下し、耐熱性がより向上する傾向にある。
【化15】
【0049】
その他、アルケニル置換ナジイミド化合物(E)は、市販のものを用いることもできる。市販されているものとしては、特に限定されないが、例えば、BANI-M(丸善石油化学(株)製、式(9)で表される化合物)、BANI-X(丸善石油化学(株)製、式(10)で表される化合物)などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
アルケニル置換ナジイミド化合物(E)の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは20~45質量部であり、より好ましくは25~40質量部であり、さらに好ましくは30~35質量部である。アルケニル置換ナジイミド化合物(E)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の銅箔ピール強度及びめっきピール強度がより向上する傾向にある。
【0051】
〔アミン変性シリコーン化合物(F)〕
アミン変性シリコーン化合物(F)は、分子中に1個以上のアミノ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては下記一般式(11)で表される化合物が挙げられる。
【化16】
【0052】
式(11)中、R8は各々独立に水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、中でもメチル基が好ましい。R9は各々独立に単結合、炭素数1~8のアルキレン基及び/又はアリーレン基を表す。R9としては、炭素数1~8のアルキレン基とアリーレン基が連結して2価の基を形成するものであってもよい。このなかでも、R9は炭素数2~4のアルキレン基が好ましい。式(11)中、n4は各々独立に1以上の整数を表す。
【0053】
アミン変性シリコーン化合物(F)のアミノ基当量として、130~6000が好ましく、400~3000がより好ましく、600~2500がさらに好ましい。このようなアミン変性シリコーン化合物(F)を用いることにより、弾性率維持率が良好で、熱膨張率がより低い樹脂組成物を得ることができる。
【0054】
アミン変性シリコーン化合物(F)の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~40質量部であり、より好ましくは3~30質量部であり、さらに好ましくは5~20質量部である。アミン変性シリコーン化合物(F)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の弾性率維持率、熱膨張率がより向上する傾向にある。
【0055】
〔硬化促進剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルイミダゾール、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレートなどの有機過酸化物;アゾビスニトリルなどのアゾ化合物;N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジンなどの第3級アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどのフェノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄などの有機金属塩;これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノールなどの水酸基含有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの無機金属塩;ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイドなどの有機錫化合物などが挙げられる。これらのなかでも、トリフェニルイミダゾールが硬化反応を促進し、ガラス転移温度、熱膨張率が優れる傾向にあるため、特に好ましい。
【0056】
〔溶剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤をさらに含んでもよい。溶剤を含むことにより、樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性がより向上するとともに後述する基材への含浸性がより向上する傾向にある。
【0057】
溶剤としては、樹脂組成物中の樹脂成分の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテートなどが挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
本実施形態の樹脂組成物のガラス転移温度は、好ましくは270~360℃であり、より好ましくは290~355℃であり、さらに好ましくは310~350℃である。ガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0059】
〔弾性率維持率〕
本実施形態の樹脂組成物の弾性率維持率は、好ましくは75~99%であり、より好ましくは80~95%であり、さらに好ましくは85~95%である。「弾性率維持率」とは、JIS規格C6481に準じて、27℃及び260℃の曲げ弾性率を測定し、得られた27℃の曲げ弾性率(a)と260℃の熱時曲げ弾性率の弾性率(b)との差を下記式によって算出したものをいう。なお、弾性率維持率に優れるとは、例えば27℃における曲げ弾性率と260℃における曲げ弾性率(熱時弾性率)の差が小さいことをいう。
弾性率維持率=[(b)/(a)]×100
【0060】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解或いは分散させるため、攪拌、混合、混練処理などの公知の処理を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する無機充填材(C)の分散性を向上させることができる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0061】
また、本実施形態の樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例は、上述したとおりである。
【0062】
〔用途〕
本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、樹脂シート、積層樹脂シート、積層板、金属箔張積層板、又はプリント配線板として好適に用いることができる。以下、プリプレグ、樹脂シート、積層樹脂シート、積層板、金属箔張積層板、又はプリント配線板について説明する。
【0063】
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された、上記樹脂組成物と、を有する。プリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、本実施形態における樹脂成分を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の乾燥機中で1~30分加熱するなどして半硬化(Bステ-ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することができる。
【0064】
樹脂組成物(無機充填材(C)を含む。)の含有量は、プリプレグの総量に対して、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは35~85質量%であり、好ましくは40~80質量%である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0065】
基材としては、特に限定されず、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。基材を構成する繊維の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツなどのガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)などの全芳香族ポリアミド;2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)などのポリエステル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これらのなかでも低熱膨張率の観点から、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これら基材は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0066】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m2以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、及びTガラスのガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0067】
〔樹脂シート〕
本実施形態の樹脂シートは、上記樹脂組成物をシート状に成形してなるものである。樹脂シートの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、下記積層樹脂シートの製法において、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液をシート基材上に塗布して乾燥させた後に、積層樹脂シートからシート基材を剥離又はエッチングする方法が挙げられる。なお、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、シート基材を用いることなく単層樹脂シート(樹脂シート)を得ることもできる。
【0068】
〔積層樹脂シート〕
本実施形態の積層樹脂シートは、シート基材と、該シート基材の片面または両面に積層された、上記樹脂組成物と、を有する。積層樹脂シートとは、薄葉化の1つの手段として用いられるもので、例えば、金属箔やフィルムなどの支持体に、直接、プリプレグ等に用いられる熱硬化性樹脂(無機充填材(C)を含む)を塗布及び乾燥して製造することができる。
【0069】
シート基材としては、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている公知の物もの使用することができる。例えばポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、アルミニウム箔、銅箔、金箔など挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフィルムが好ましい。
【0070】
塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等でシート基材上に塗布する方法が挙げられる。
【0071】
積層樹脂シートは、上記樹脂組成物をシート基材に塗布後、半硬化(Bステージ化)させたものであることが好ましい。具体的には、例えば、上記樹脂組成物を銅箔などのシート基材に塗布した後、100~200℃の乾燥機中で、1~60分加熱させる方法などにより半硬化させ、積層樹脂シートを製造する方法などが挙げられる。シート基材に対する樹脂組成物の付着量は、積層樹脂シートの樹脂厚で1~300μmの範囲が好ましい。
【0072】
〔積層板〕
本実施形態の積層板は、上記プリプレグ、上記樹脂シート、及び上記積層樹脂シートからなる群より選択される少なくとも1種を1枚以上有する。
【0073】
〔金属箔張積層板〕
本実施形態の金属箔張積層板は、上記プリプレグ、上記樹脂シート、及び上記積層樹脂シートからなる群より選択される少なくとも1種と、上記プリプレグ、上記樹脂シート、及び上記積層樹脂シートの片面又は両面に配された金属箔と、を有する。すなわち、本実施形態の金属箔張積層板は、上記プリプレグ、上記樹脂シート、及び上記積層樹脂シートからなる群より選択される少なくとも1種と、金属箔とを積層して硬化して得られるものである。
【0074】
絶縁層は、上記樹脂組成物、1層のプリプレグ、樹脂シート、又は積層樹脂シートであっても、上記樹脂組成物、プリプレグ、樹脂シート、又は積層樹脂シートを2層以上積層したものであってもよい。
【0075】
導体層は、銅やアルミニウムなどの金属箔とすることができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、導体層の厚みは、特に限定されないが、1~70μmが好ましく、より好ましくは1.5~35μmである。
【0076】
金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0077】
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、上記樹脂組成物を含む。上記の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。そして、上記の金属箔張積層板は、低い熱膨張率、良好な成形性及び耐薬品性を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0078】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、上述の金属箔張積層板(金属箔張積層板等)を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作成する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去するためデスミア処理が行われる。その後この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
【0079】
例えば、上述のプリプレグ(基材及びこれに添着された上述の樹脂組成物)、金属箔張積層板の樹脂組成物層(上述の樹脂組成物からなる層)が、上述の樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
【0080】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグ、上記積層樹脂シート、又は上記樹脂組成物からなるものに、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0081】
本実施形態のプリント配線板は、上述の絶縁層が半導体実装時のリフロー温度下においても優れた弾性率を維持することで、半導体プラスチックパッケージの反りを効果的に抑制することから、半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0083】
〔合成例1:ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物の合成〕
ジアリルビスフェノールA700g(ヒドロキシル基当量154.2g/eq.)(OH基換算4.54mol)(DABPA、大和化成工業(株)製)及びトリエチルアミン459.4g(4.54mol)(ヒドロキシル基1モルに対して1.0モル)をジクロロメタン2100gに溶解させ、これを溶液1とした。
【0084】
塩化シアン474.4g(7.72mol)(ヒドロキシル基1モルに対して1.7モル)、ジクロロメタン1106.9g、36%塩酸735.6g(7.26mol)(ヒドロキシル基1モルに対して1.6モル)、水4560.7gを、撹拌下、液温-2~-0.5℃に保ちながら、溶液1を90分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン459.4g(4.54mol)(ヒドロキシル基1モルに対して1.0モル)をジクロロメタン459.4gに溶解させた溶液(溶液2)を25分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
【0085】
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を、0.1N塩酸 2Lにより洗浄した後、水2000gで6回洗浄した。水洗6回目の廃水の電気伝導度は20μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
【0086】
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて、目的とするジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物(DABPA-CN、シアン酸エステル基当量:179g/eq.)を薄黄色液状物として805g得た。得られたDABPA-CNのIRスペクトルは2264cm-1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシル基の吸収は示さなかった。
【0087】
〔合成例2:α-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物の合成〕
反応器内で、α-ナフトールアラルキル樹脂(SN495V、OH基当量:236g/eq.、新日鐵化学(株)製:ナフトールアラルキルの繰り返し単位数nは1~5のものが含まれる。)0.47mol(OH基換算)を、クロロホルム500mLに溶解させ、この溶液にトリエチルアミン0.7molを添加した。温度を-10℃に保ちながら反応器内に0.93molの塩化シアンのクロロホルム溶液300gを1.5時間かけて滴下し、滴下終了後、30分撹拌した。その後さらに、0.1molのトリエチルアミンとクロロホルム30gの混合溶液を反応器内に滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。副生したトリエチルアミンの塩酸塩を反応液から濾別した後、得られた濾液を0.1N塩酸500mLで洗浄した後、水500mLでの洗浄を4回繰り返した。これを硫酸ナトリウムにより乾燥した後、75℃でエバポレートし、さらに90℃で減圧脱気することにより、褐色固形のα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)を得た。得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SN495-V-CN、シアン酸エステル基当量:261g/eq.)を赤外吸収スペクトルにより分析したところ、2264cm-1付近のシアン酸エステル基の吸収が確認された。
【0088】
〔実施例1〕
合成例1で得られたDABPA-CNを48.3質量部、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製、マレイミド基当量:186g/eq.)を27質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-80、大和化成工業(株)製、マレイミド基当量:285g/eq.)を14.7質量部、アミン変性シリコーン化合物(X-22-161B、信越化学工業(株)製、官能基当量:1500g/eq.)を10質量部、スラリーシリカ(SC-5050MOB、平均粒子径1.5μm、アドマテックス(株)製)を100質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、「BYK-310」)を0.05質量部、硬化促進剤(2,4,5-トリフェニルイミダゾール、東京化成工業(株)製)を0.5質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量44質量%のプリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.270であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.197であり、比(〔α/β〕)は1.37であった。
【0089】
〔実施例2〕
DABPA-CNの使用量を40.3質量部とし、BMI-2300の使用量を35質量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.225であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.240であり、比(〔α/β〕)は0.94であった。
【0090】
〔実施例3〕
DABPA-CNの使用量を27.3質量部とし、BMI-2300の使用量を48質量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.153であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.310であり、比(〔α/β〕)は0.49であった。
【0091】
〔実施例4〕
DABPA-CNの使用量を19.3質量部とし、BMI-2300の使用量を56質量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.108であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.353であり、比(〔α/β〕)は0.31であった。
【0092】
〔比較例1〕
DABPA-CNの使用量を14.3質量部とし、BMI-2300の使用量を61質量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、プリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.080であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.380であり、比(〔α/β〕)は0.21であった。
【0093】
〔実施例5〕
合成例2で得られたSN495-V-CNを52.7質量部、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製、マレイミド基当量:186g/eq.)を37.3質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC-3000H、日本化薬(株)製、官能基当量:290g/eq.)を10質量部、スラリーシリカ(SC-5050MOB、平均粒子径1.5μm、アドマテックス(株)製)を100質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、「BYK-310」)を0.05質量部、硬化促進剤(2,4,5-トリフェニルイミダゾール、東京化成工業(株)製)を0.5質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量48質量%のプリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.202であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.201であり、比(〔α/β〕)は1.01であった。
【0094】
〔比較例2〕
SN495-V-CNの使用量を25.3質量部とし、BMI-2300の使用量を64.7質量部としたこと以外は、実施例5と同様の方法により、プリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.097であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.348であり、比(〔α/β〕)は0.28であった。
【0095】
〔実施例6〕
合成例2で得られたSN495-V-CNを24.9質量部、ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製、マレイミド基当量:186g/eq.)を43.3質量部、ビスアリルナジイミド(丸善石油化学社製、「BANI-M」)を31.8質量部、スラリーシリカ(SC-5050MOB、平均粒子径1.5μm、アドマテックス(株)製)を200質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、「BYK-310」)を0.05質量部、硬化促進剤(2,4,5-トリフェニルイミダゾール、東京化成工業(株)製)を0.5質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量48質量%のプリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.095であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.233であり、比(〔α/β〕)は0.41であった。
【0096】
〔比較例3〕
SN495-V-CNの使用量を5質量部とし、BMI-2300の使用量を49質量部とし、BANI-Mの使用量を36質量部とし、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC-3000H、日本化薬(株)製、官能基当量:290g/eq.)を10質量部用いたこと以外は、実施例6と同様の方法により、プリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.019であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.263であり、比(〔α/β〕)は0.07であった。
【0097】
〔実施例7〕
ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物(CA210、三菱ガス化学(株)製、シアネート当量:139g/eq.)40.5質量部、マレイミド化合物(BMI-70、マレイミド基当量221g/eq、ケイ・アイ化成(株)製)29.8質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC-3000H、日本化薬(株)製、官能基当量:290g/eq.)15質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-80、大和化成工業(株)製、マレイミド基当量:285g/eq.)14.7質量部、スラリーシリカ(SC-5050MOB、平均粒子径1.5μm、アドマテックス(株)製)を100質量部、湿潤分散剤(DISPERBYK-161、ビックケミー・ジャパン(株)製)を1質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、「BYK-310」)を0.05質量部、硬化促進剤(2,4,5-トリフェニルイミダゾール、東京化成工業(株)製)を0.5質量部混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量44質量%のプリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.291であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.186であり、比(〔α/β〕)は1.56であった。
【0098】
〔比較例4〕
ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物(CA210、三菱ガス化学(株)製、シアネート当量:139g/eq.)の使用量を12質量部とし、マレイミド化合物(BMI-70、マレイミド基当量221g/eq、ケイ・アイ化成(株)製)の使用量を58.3質量部としたこと以外は、実施例7と同様の方法により、プリプレグを得た。なお、シアン酸エステル化合物(A)のシアン酸エステル基量(α)(質量部/シアン酸エステル基当量)は0.086であり、マレイミド化合物(B)のマレイミド基量(β)(質量部/マレイミド基当量)は0.315であり、比(〔α/β〕)は0.27であった。
【0099】
〔金属箔張積層板の作製〕
得られたプリプレグを、それぞれ4枚または8枚重ねて12μm厚の電解銅箔(3EC-VLP、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成型を行い、絶縁層厚さ0.4mm及び0.8mmの金属箔張積層板を得た。得られた金属箔張積層板を用いて、下記ガラス転移温度(Tg)線熱膨張係数、銅箔ピール強度の測定を実施した。
【0100】
〔銅箔ピール強度〕
得られた金属箔張積層板(絶縁層厚さ0.8mm)を用い、JIS C6481に準じて、銅箔ピール強度(kg/cm)を測定した。
【0101】
〔めっきピール強度〕
得られた金属箔張積層板(絶縁層厚さ0.4mm)の表層銅箔をエッチングにより除去し、上村工業製の無電解銅めっきプロセス(使用薬液名:MCD-PL、MDP-2、MAT-SP、MAB-4-C、MEL-3-APEA ver.2)にて、約0.5μmの無電解銅めっきを施し、130℃で1時間の乾燥を行った。続いて、電解銅めっきをめっき銅の厚みが18μmになるように施し、180℃で1時間の乾燥を行った。こうして、厚さ0.4mmの絶縁層上に厚さ18μmの導体層(めっき銅)が形成されたプリント配線板サンプルを作製した。上記手順により作製された絶縁層厚さ0.4mmのプリント配線板サンプルを用い、めっき銅の接着力をJIS C6481に準じて3回測定し、その平均値(kg/cm)を求めた。
【0102】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
得られた金属箔張積層板(絶縁層厚さ0.8mm)をダイシングソーでサイズ12.7×2.5mmに切断後、表面の銅箔をエッチングにより除去し、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを用い、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法によりガラス転移温度を測定した(n=3の平均値)。
【0103】
〔弾性率維持率〕
得られた金属箔張積層板(絶縁層厚さ0.8mm)から銅箔を除去したものを試料として用い、JIS C 6481に規定される方法に準じて、オートグラフ((株)島津製作所製AG-Xplus)にて、それぞれ27℃、260℃で曲げ弾性率を測定した。上記によって測定された27℃の曲げ弾性率(a)と260℃の熱時曲げ弾性率(b)とから、下記式によって弾性率維持率を算出した。
弾性率維持率=(b)/(a)×100
【0104】
〔可撓性〕
得られたプリプレグを、所定直径の棒に巻きつけて180°に折り曲げ、プリプレグの折り曲げ部を観察し、プリプレグに破損が発生したばあいを破損あり、破損が発生しない場合を破損なしとすることで評価を行った。
A:3mmφでプリプレグに破損なし。
B:5mmφでプリプレグに破損なし。
C:10mmφでプリプレグに破損なし。
D:10mmφでプリプレグに破損あり。
【0105】
【0106】
本出願は、2016年5月2日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2016-92758)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の樹脂組成物は、プリプレグ、樹脂シート、積層樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板の材料として産業上の利用可能性を有する。