(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】撹拌混合装置
(51)【国際特許分類】
B01F 31/441 20220101AFI20220810BHJP
B01F 31/50 20220101ALI20220810BHJP
【FI】
B01F31/441
B01F31/50
(21)【出願番号】P 2017209901
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000251211
【氏名又は名称】冷化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 徹
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-262013(JP,A)
【文献】特開平11-057441(JP,A)
【文献】特開平04-235729(JP,A)
【文献】特開平09-173812(JP,A)
【文献】特開2008-229454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 31/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動を行う軸部に取り付けられた螺旋状の撹拌板と、
該軸部に該螺旋状の撹拌板とは別の位置に取り付けられた平板状の撹拌板と、
該螺旋状の撹拌板及び該平板状の撹拌板を取り囲むケーシングと、
該ケーシングから該軸部に向かって張り出し、該平板状の撹拌板を挟むように配置された複数の固定板とを備え、
被混合物が
最初に該螺旋状の撹拌板により
全体的に混合された後に、該平板状の撹拌板により更に混合されるように、該被混合物の流路が該ケーシング内に形成されていることを特徴とする撹拌混合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撹拌混合装置において、
該螺旋状の撹拌板として、第1の螺旋状の撹拌板と、該第1の螺旋状の撹拌板と該平板状の撹拌板との間に配置された第2の螺旋状の撹拌板とを有し、
該第1の螺旋状の撹拌板と該第2の螺旋状の撹拌板との間の位置に、該ケーシングから該軸部に向かって張り出した仕切板を備え、
被混合物が該第1の螺旋状の撹拌板により混合され、該第2の螺旋状により混合された後に、該平板状の撹拌板により更に混合されるように、該被混合物の流路が形成されていることを特徴とする撹拌混合装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の撹拌混合装置において、
該螺旋状の撹拌板は、該軸部の軸方向に直交する方向の最大幅は、該平板状の撹拌板の同方向の最大幅よりも短いことを特徴とする撹拌混合装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の撹拌混合装置において、
該螺旋状の撹拌板又は該平板状の撹拌板の少なくとも一方には、該軸部の往復運動により、該軸部の軸方向に該被混合物が移動可能な複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする撹拌混合装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の撹拌混合装置において、
該固定板には、該平板状の撹拌板の移動により、該被混合物が該軸部の周囲を回る流れを発生するための流路が形成されていることを特徴とする撹拌混合装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の撹拌混合装置において、
該軸部は、該ケーシングの外側に配置された駆動手段に連結され、該駆動手段により往復運動を行うことを特徴とする撹拌混合装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の撹拌混合装置において、
該ケーシング内の空間を、該螺旋状の撹拌板により該被混合物を混合する区間と、該平板状の撹拌板により該被混合物を混合する区間とに仕切る仕切部材を備えたことを特徴とする撹拌混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌混合装置に関し、特に、複数種類の液体や粉体を均一に撹拌混合する撹拌混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、特許文献1乃至3に示すように、従来より、複数種類の液体や粉体を混合する場合や、混合して重合反応を促進する場合などに使用できる撹拌混合装置として、ケーシング内で往復運動をする撹拌板を用いた撹拌混合装置を提案している。
【0003】
図1は、特許文献1にも示されている、撹拌混合装置の一例である。撹拌混合装置1の基本構成は、ケーシング2内に平板状の撹拌板6を配置し、該撹拌板6を往復運動(両矢印X)させ、ケーシング2内の被混合物(液体又は粉体)を混合する。撹拌板6を往復運動させるため、撹拌板6は軸部3に取り付けられ、さらに、駆動手段4により軸部3を往復運動させている。被混合物は、矢印aからケーシング内に入り、混合された状態で矢印bから排出される。
【0004】
さらに均一な混合物を得るため、
図1では、複数の撹拌板6の間に、ケーシング2の側壁から軸部3方向に延びる固定板8を配置している。換言すれば、撹拌板6を挟むように複数の固定板8を配置している。側壁や固定板で囲まれた空間内で撹拌板を往復運動させる際に、より多くの被混合物を撹拌するには、撹拌板の外周端部をケーシングの側壁に近づけ、また、固定板の内側端部を軸部3に近づけることが必要である。しかしながら、このような構造では、被混合物の移動が十分に行なうことが難しくなるため、特許文献1では、
図2A及び2Bに示すように、撹拌板と固定板に貫通孔も受けることを提案している。
図2Aは、
図1のA-A’における断面図を示し、
図2Bは、
図1のB-B’における断面図を示している。
【0005】
撹拌板6に設ける貫通孔60と、固定板8に設ける貫通孔80との各々の配置については、撹拌をより効率的に行なうためにも、両者の貫通孔が一致しないように配置することが好ましい。
図2A及び2Bに示すように、撹拌板では貫通孔を主に周囲部分に配置し、固定板では貫通孔を主に軸部付近に配置している。このような配置で貫通孔を形成した場合は、
図1の点線矢印C1及びC2に示すように、被混合物が、蛇行しながら進むため、より多くの撹拌作用を受け、より均一な混合物が得られる。
【0006】
しかしながら、
図1に示すように、点線矢印C1とC2は、互いに交わることは無いため、各矢印のルートを移動する被混合物が互いに混合される機会が殆ど無く、被混合物が通過するルートに応じて混合物の性状が異なるなど、均一な混合物が得られないことが危惧される。現実の撹拌混合装置では、撹拌作用により被混合物が複雑な動きをするため、
図1の異なる移動ルート(C1,C2)であっても、幾分の混合は発生するが、それには撹拌時間をより長く確保する必要があり、混合物の生産効率が低下するという問題があった。
【0007】
特に、
図3Aに示すように、軸部3の外径D1が比較的小さい場合には、固定板8の内側端部の内径D2も小さくなり、内側端部近傍に配置される貫通孔80も少ない数で軸部3を取り囲むことができる。このような場合には、複数の固定板の貫通孔を通過する間に、被混合物が軸部の反対側に回り込むことも可能となる。しかしながら、
図3Bに示すように、軸部3の外径D1が大きくなると、軸部の周辺の一部で混合されている被混合物が、該軸部を挟んで反対側に回りこむことは、殆ど不可能となる。なお、
図3A及び3Bでは、貫通孔80の配置を一部省略して示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-173812号公報
【文献】特開2012-176349号公報
【文献】特開平10-328547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題を解決するために為されたものであり、均一な混合物の生産効率を向上させた撹拌混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の撹拌混合装置は以下のような技術的特徴を有する。
(1) 往復運動を行う軸部に取り付けられた螺旋状の撹拌板と、該軸部に該螺旋状の撹拌板とは別の位置に取り付けられた平板状の撹拌板と、該螺旋状の撹拌板及び該平板状の撹拌板を取り囲むケーシングと、該ケーシングから該軸部に向かって張り出し、該平板状の撹拌板を挟むように配置された複数の固定板とを備え、被混合物が最初に該螺旋状の撹拌板により全体的に混合された後に、該平板状の撹拌板により更に混合されるように、該被混合物の流路が該ケーシング内に形成されていることを特徴とする。
【0011】
(2) 上記(1)に記載の撹拌混合装置において、該螺旋状の撹拌板として、第1の螺旋状の撹拌板と、該第1の螺旋状の撹拌板と該平板状の撹拌板との間に配置された第2の螺旋状の撹拌板とを有し、該第1の螺旋状の撹拌板と該第2の螺旋状の撹拌板との間の位置に、該ケーシングから該軸部に向かって張り出した仕切板を備え、被混合物が該第1の螺旋状の撹拌板により混合され、該第2の螺旋状により混合された後に、該平板状の撹拌板により更に混合されるように、該被混合物の流路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の撹拌混合装置において、該螺旋状の撹拌板は、該軸部の軸方向に直交する方向の最大幅は、該平板状の撹拌板の同方向の最大幅よりも短いことを特徴とする。
【0013】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の撹拌混合装置において、該螺旋状の撹拌板又は該平板状の撹拌板の少なくとも一方には、該軸部の往復運動により、該軸部の軸方向に該被混合物が移動可能な複数の開口が形成されていることを特徴とする。
【0014】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の撹拌混合装置において、該固定板には、該平板状の撹拌板の移動により、該被混合物が該軸部の周囲を回る流れを発生するための流路が形成されていることを特徴とする。
(6) 上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の撹拌混合装置において、該軸部は、該ケーシングの外側に配置された駆動手段に連結され、該駆動手段により往復運動を行うことを特徴とする。
(7) 上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の撹拌混合装置において、該ケーシング内の空間を、該螺旋状の撹拌板により該被混合物を混合する区間と、該平板状の撹拌板により該被混合物を混合する区間とに仕切る仕切部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、往復運動を行う軸部に取り付けられた螺旋状の撹拌板と、該軸部に該螺旋状の撹拌板とは別の位置に取り付けられた平板状の撹拌板と、該螺旋状の撹拌板及び該平板状の撹拌板を取り囲むケーシングと、該ケーシングから該軸部に向かって張り出し、該平板状の撹拌板を挟むように配置された複数の固定板とを備え、被混合物が該螺旋状の撹拌板により混合された後に、該平板状の撹拌板により更に混合されるように、該被混合物の流路が該ケーシング内に形成されているので、被混合物を平板状の撹拌板によって混合する前に、螺旋状の撹拌板によって予備的に混合することが可能となるため、より均一な混合物を効率的に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2A】平板状の撹拌板の例を示す平面図であり、
図1のA-A’における断面図を示す。
【
図2B】固定板の例を示す平面図であり、
図1のB-B’における断面図を示す。
【
図3A】軸部の外径D1が小さい場合の固定板の平面図である。
【
図3B】軸部の外径D1が大きい場合の固定板の平面図である。
【
図4】本発明の撹拌混合装置の一例(第1実施例)を示す概略図である。
【
図5A】螺旋状の撹拌板の例を示す平面図であり、
図4のC-C’における断面図を示す。
【
図5B】螺旋状の撹拌板の例を示す平面図であり、
図4のD-D’における断面図を示す。
【
図6】本発明の撹拌混合装置の応用例を示す図である。
【
図7】
図6の撹拌混合装置の平板状の撹拌板の外周端部の形状を示す図である。
【
図8】
図6の撹拌混合装置の固定板の内側端部の形状を示す図である。
【
図9】本発明の撹拌混合装置の別の例(第2実施例)を示す概略図である。
【
図10】本発明の撹拌混合装置の別の例(第3実施例)を示す概略図である。
【
図11A】
図10の撹拌混合装置に使用される固定板の第1構成例を示す斜視図である。
【
図12A】
図10の撹拌混合装置に使用される固定板に嵌め込む螺旋状部材を示す平面図である。
【
図13A】
図10の撹拌混合装置に使用される固定板の第2構成例を示す斜視図である。
【
図14】本発明の撹拌混合装置の別の例(第4実施例)を示す概略図である。
【
図15】
図14の各固定板に設けられる貫通孔の配置を示す図である。
【
図16】
図14の撹拌混合装置に使用される固定板の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る撹拌混合装置について、図面を用いて説明する。
図4は、本発明に係る撹拌混合装置の一例(第1実施例)を示す概略図である。本例の撹拌混合装置1は、往復運動を行う軸部3に取り付けられた螺旋状の撹拌板5と、軸部3に螺旋状の撹拌板5とは別の位置に取り付けられた平板状の撹拌板6と、螺旋状の撹拌板5及び平板状の撹拌板6を取り囲むケーシング2と、ケーシング2から軸部3に向かって張り出し、平板状の撹拌板6を挟むように配置された複数の固定板8とを備え、被混合物が螺旋状の撹拌板5により撹拌混合された後に、平板状の撹拌板6により更に撹拌混合されるように、被混合物の流路がケーシング内に形成されていることを特徴とする。
【0018】
軸部3は駆動手段4により往復運動され、これに伴って撹拌板5,6も往復運動される。撹拌板5,6を支える軸部3は、1本に限られず、複数本であってもよい。
被混合物である液体や粉体は、矢印aからケーシング内に入り、螺旋状の撹拌板5を有する第1区間10、平板状の撹拌板6を有する第2区間11の順に経由して、矢印bから排出される。第1区間10に供給された被混合物は、撹拌板5によって形成された螺旋状の流路に沿って、軸部3の軸回りを周回しながら第2区間11に向かって移動していき、その過程で撹拌板5の往復運動によって混合される。第1区間10で混合された被混合物は、第2区間11内の固定板8で区切られた複数の小空間を順番に経由しながら矢印bに向かって移動していき、その過程で各小空間内の撹拌板6の往復運動によって更に混合される。すなわち、本例の撹拌混合装置1は、第1区間10で被混合物を全体的に混合した後に、第2区間11で被混合物を更に混合する構成となっている。
【0019】
第1区間10では、被混合物の殆どを共通の螺旋経路を移動させながら混合できるので、被混合物を全体的に混ぜ合わせる作業(予備混合)を効率的に行うことができる。第2区間11では、ケーシング2の側壁や固定板8で囲まれた小空間内での撹拌板6の往復運動によって被混合物を混合できるので、局所的に強い撹拌作用を得ることができ、良質な分散状態の混合物を生成することができる。
【0020】
したがって、第2区間11内のどのルートを移動する被混合物も、第1区間10での予備混合によって略同様な混合状態となっているため、被混合物が通過するルートによらずに均一な混合物を得ることができる。また、平板状の撹拌板6だけを用いる従来技術に比べ、短い撹拌時間で均一な混合物を得ることができる。しかも、撹拌板5,6を同じ軸部3に設けたので、駆動手段4を個別に用意する必要がなく、装置の簡易化及びコンパクト化も実現できる。
【0021】
螺旋状の撹拌板5としては、特許文献2又は3に示すような、従来型の螺旋状の撹拌板を使用することができる。
図5Aは、
図4のC-C’における断面図を示し、
図5Bは、
図4のD-D’における断面図を示している。撹拌板5には、より効率的に被混合物の撹拌を行えるよう、軸部3の往復運動により軸方向に被混合物が移動可能な複数の開口を設けることが好ましい。
図5A及び5Bでは、撹拌板5に設ける開口として、軸部付近に複数の貫通孔50を配置し、周囲部分に複数の切欠き51を配置してある。なお、撹拌板5に設ける開口(50,51)は、隣接する撹拌板部分(1周前又は1周後の撹拌板部分)の開口と重なると、これら開口を被混合物が連続的に通過(ショートカット)して十分に混合できないことが考えられるので、互いに重なり合わないよう配置することが好ましい。また、
図5A及び5Bに示すように、開口を設ける区間と開口を設けない区間とを交互に配置することも有効である。
【0022】
平板状の撹拌板6としては、
図2Aに示すような、従来型の円盤状の撹拌板を使用することができる。撹拌板6には、
図2A及び2Bを参照して説明したように、より効率的に被混合物の撹拌を行えるよう、軸部3の往復運動により軸方向に被混合物が移動可能な複数の開口を設けることが好ましい。また更に、固定板8にも、複数の開口を設けることが好ましい。撹拌板6及び固定板8に設ける開口は、撹拌板6に設けた開口と固定板に設けた開口とが互いに対向する位置でなければ、特に限定されない。ただし、撹拌板6にはその周囲部分に貫通孔60を配置し、固定板8には軸部付近に貫通孔80を配置した方が、被混合物の移動経路を長くすることができると共に、軸部3の近傍で軸部3の反対側に回り込む流路を形成し易くなる。
【0023】
平板状の撹拌板6は、円盤状の撹拌板に限定されず、長方形などの多角形の平板で構成することも可能である。この場合は、撹拌板6が配置されるケーシング2の第2区間11の内壁を、撹拌板6の形状と同様の多角形状に構成すればよい。
【0024】
さらに、撹拌板6とケーシング2の側壁との間や、固定板8と軸部3との間から被混合物が大量に移動するのを抑制するため、これらの間を被混合物が通過する際の流体抵抗を増加することが好ましい。このような流体抵抗を増加させる方法としては、
図6に示すように、撹拌板6の外周部62の厚みや固定板8の内側端部(軸部3付近)82の厚みを、各々増加させる方法がある。外周部62や内側端部82は、撹拌板6や固定板8の一部を切削して削り出す方法で製作することも可能であるが、円筒部材を撹拌板6や固定板8に接合させることも可能である。
【0025】
図7及び
図8には、外周部62,62’の断面図や内側端部82,82’の断面図を示してある。断面が長方形のものに限らず、一部を切削し曲面(63,83)を設け、被混合物が当該曲面で移動方向を変え、撹拌板と側壁との隙間等に入るの抑制することも可能である。
【0026】
ここで、螺旋状の撹拌板5は、軸部3の軸方向に直交する方向の最大幅が、平板状の撹拌板6の同方向の最大幅よりも短いサイズであることが好ましい。すなわち、上方から平面視した場合に撹拌板5,6がいずれも円形を成す本例では、螺旋状の撹拌板5の径(φ1)が平板状の撹拌板6の径(φ2)よりも小さいことが好ましい(φ1<φ2)。撹拌板5の径が大きいと、軸付近を移動する被混合物と周囲部分を移動する被混合物とが混ざりにくくなるためである。
【0027】
図9は、本発明に係る撹拌混合装置の別の例(第2実施例)を示す概略図である。本例の撹拌混合装置1は、第1実施例の拡張例であり、螺旋状の撹拌板として、第1の螺旋状の撹拌板5Aと、第1の螺旋状の撹拌板5Aと平板状の撹拌板6との間に配置された第2の螺旋状の撹拌板5Bとを有し、第1の螺旋状の撹拌板5Aと第2の螺旋状の撹拌板5Bとの間の位置に、ケーシング2から軸部3に向かって張り出した仕切板7を備え、被混合物が第1の螺旋状の撹拌板5Aにより混合され、第2の螺旋状5Bにより混合された後に、平板状の撹拌板6により更に混合されるように、被混合物の流路が形成されていることを特徴とする。
【0028】
すなわち、第2実施例の撹拌混合装置2は、第1区間10を仕切板7で複数のブロックに分けてあり、第1区間10の各ブロックで被混合物を螺旋状の撹拌板により混合した後に、第2区間11で被混合物を更に混合する構成となっている。このような構成によれば、最初のブロックで撹拌板5Aにより被混合物を粗めに混合し、次のブロックで撹拌板5Bにより被混合物をよりしっかりと混合するなど、混合の度合いが次第に高まるような段階的な混合を行うことが可能となる。この場合には、撹拌板5Aと撹拌板5Bは、所望の混合度合いが得られるように螺旋のピッチやサイズ(径)を互いに異ならせることが好ましい。また、撹拌効率を高めるために、
図9に示すように、撹拌板5Aの螺旋の向きと撹拌板5Bの螺旋の向きとを逆にしてもよい。なお、螺旋状の撹拌板は、2つに限られず、3以上であってもよい。すなわち、第1区間10を3以上のブロックに分けてもよい。
【0029】
また、第1区間10を複数のブロックに分ける構成は、途中で被混合物を追加する場合にも有効である。符号a1は、混合の途中で液体や粉体を追加することを意味している。すなわち、矢印aから入れられた被混合物である液体や粉体を撹拌板5Aで全体的に混合した後に、符号a1から入れられた液体や粉体を被混合物に追加して更に全体的に混合し、被混合物をある程度混合できた状態で第2区間11に供給することができる。
【0030】
図10は、本発明に係る撹拌混合装置の別の例(第3実施例)を示す概略図である。本例の撹拌混合装置1は、第1実施例の別の拡張例であり、固定板8には、平板状の撹拌板6の移動により、被混合物が軸部3の周囲を回る流れを発生するための流路(C3)が形成されていることを特徴とする。
【0031】
このような流路は、固定板8に限らず、撹拌板6にも受けることも可能である。しかしながら、撹拌板6は、往復運動しているため、一方向の運動で軸部3の周囲を被混合物がある方向に流れても、他方向の運動で、被混合物は軸部3を逆方向に流れるため、被混合物が効率よく軸部の反対側に回り込むことができない。このため、固定板8にこのような流路を設けることが、より好ましい。
【0032】
図11A及び11Bは、軸部の反対側に回り込む流路を有する固定板8の第1構成例である。固定板8の内側端部に、軸部3側に開口した螺旋状の溝81を形成している。
図11Bは
図11AのE-E’における断面図を示している。この螺旋状の溝81は、固定板8の下面側の入口の位置と上面側の出口の位置とが、固定板8を上方から平面視した際に一致しないよう構成されている。
図5Bでは、軸部3の周方向に180度ずれた位置に入口と出口とが配置されている。このように、溝81の入口と出口の位置とが平面視した場合にずれていると、被混合物を軸部3の周りに移動させることが可能となり、例えば、軸部の反対側にある被混合物とも容易に混合することが可能となる。
【0033】
図11A及び11Bに示した溝81は、固定板8の中央の開口部(軸部3を挿入する開口部)から横方向に切削加工して形成することが可能である。ただし、これに限らず、
図12A、12B及び12Cに示すように、溝を形成する螺旋状部材85を別途形成し、円板状部材84の中央の開口部に螺旋状部材85を嵌め込むことで、螺旋状の溝を構成することが可能である。
図12Bは、
図12AのF-F’における断面図である。
図12では、螺旋状の先端部分が平面視した場合に一部重なるように構成(約20度の円弧部分が重複)されている。
【0034】
図13A及び13Bは、固定板の第2構成例を示す図である。第2構成例の特徴は、固定板8に設ける貫通孔82を軸部3の周方向に対して傾斜させることである。
図13Bは、
図13AのG-G’における断面図である。軸部3の周りに複数の貫通孔82を設ける場合には、傾斜する方向を全ての貫通孔で同じにしても良いし、逆方向に傾斜する貫通孔を部分的に配置しても良い。このような傾斜した貫通孔82によっても、被混合物を軸部3の周りで移動させることができる。ただし、螺旋状の溝のように、大きな角度で回り込む流路を形成することは難しい。このため、複数の貫通孔82を使用して、軸部3を回る流れる効果を高めることが好ましい。
【0035】
図14は、本発明に係る撹拌混合装置の別の例(第4実施例)を示す概略図である。
図14では主に第2区間部分の構成を示しており、他の部分の構成は省略してある。第4実施例は、固定板に形成される複数の貫通孔の配置パターンを利用して、軸部の周方向に被混合物が移動する流れを形成するものである。そのためには、固定板に形成される貫通孔の形成位置が、隣接する撹拌板に形成された開口に対向しない位置(平面視した際に形成位置が一致しない状態)であって、隣接する固定板に各々形成された該貫通孔に対向しない位置であることを特徴としている。
【0036】
第4実施例では、
図14のように、複数の固定板(8a~8d)を利用している。
図15は、各固定板(8a~8d)に設けた貫通孔83の配置位置である。
図15を従来の固定板の貫通孔の配置パターン(例えば
図2B)と比較すると、
図15の貫通孔83の配置は、軸部3の周りに均一なパターンではなく、局所的に偏在している。
図15では、偏在している箇所は1箇所(貫通孔83が並んでいる場所が1箇所)であるが、円周方向に複数個所設けても良い。
【0037】
そして固定板毎に貫通孔83の偏在位置をずらすことにより、軸部3の周りで被混合物の移動を発生させることが可能となる。
図15では、固定板8aでは、軸部3の上側の貫通孔83で被混合物を通過させ、固定板8bでは、軸部3の下側の貫通孔83で被混合物を通過させている。さらに、固定板8cでは軸部3の上側で、固定板8dでは軸部3の下側で、各々、被混合物を通過させている。このように、固定板毎に被混合物の通過位置を周方向で変えることにより、周方向に混合物を移動させることが可能となる。
【0038】
図16は、貫通孔(83,83’)の偏在位置を、固定板毎に角度θだけずらすことを示した図である。このθは、固定板の数によって、任意に設定することができる。
【0039】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能であることはいうまでもない。例えば、各実施例を組み合わせた構成とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、均一な混合物の生産効率を向上させた撹拌混合装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 撹拌混合装置
2 ケーシング(側壁)
3 軸部
4 駆動装置
5 螺旋状の撹拌板
6 平板状の撹拌板
7 仕切板
8 固定板
a 流入口
b 流出口