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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】落下物飛散防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20220810BHJP
   E04G 5/00 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
E04G21/32 B
E04G5/00 301E
E04G5/00 301Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018041932
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019157399
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500489015
【氏名又は名称】建装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】歳清 昭二
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224996(JP,A)
【文献】特開昭64-066363(JP,A)
【文献】特開2015-218576(JP,A)
【文献】登録実用新案第3195041(JP,U)
【文献】特開2004-300838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 5/00
E04G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数階を有する建築物に取り付けて作業者の足場となるとともに前方支柱とを具備する足場と、
前記足場より、ロープ、ワイヤ、紐等を用いて荷物を下方の階から上方の階へ引き上げたり、上方の階から下方の階に下ろすための通路となる昇降部と、を有し、
前記昇降部は、前記足場の前方に取り付けられ、かつ、アサガオを設置する高さに準ずるために前記建築物の2階または3階相当の高さから上方に向かって設置し、
前記昇降部は、昇降前方支柱と、その昇降前方支柱を支持する支え部材と、をさらに有し、前記支え部材は、前記アサガオを設置する高さに準ずるために前記建築物の2階または3階相当の高さに対応する前記前方支柱と接続することで前記昇降部を支持し、
前記昇降部は、開口部と、を有し、
前記開口部は、上方の階に相当する高さから、前記建築物の2階または3階相当の高さに至るまで貫通するように構成されており、前記開口部内のスペースを、前記ロープ、ワイヤ、紐等を用いて前記荷物の引き上げおよび荷下ろしをするための通路として使用することで、作業者が当該荷物を前記通路となる前記昇降部内に落下した場合にその下方の階の足場上の他の作業者にその荷物が衝突することを避けるための落下物飛散防止装置。
【請求項2】
前記足場は、その足場の支柱となる後方支柱と、を有し、
前記後方支柱は、前記建築物に固定されている請求項1記載の落下物飛散防止装置。
【請求項3】
前記昇降部を覆うネットを具備した請求項1または2記載の落下物飛散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建築時に使用される足場において建築資材等を引き上げたり、下ろしたりする際に、その建築資材等の落下による飛散を防止する落下物飛散防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の建築現場あるいは、建築物の改修工事の現場において、仮設の足場を組み立てる場合がある。これらの足場を組み立てる際に必要となるその足場の部材や、建築や改修工事に必要な部材を上方階に引き上げる必要がある。この場合、それら必要な部材が落下するおそれがあり、その場合に、歩行者に危害を加える恐れがある。これを防止するために、あらかじめ規制により、足場の高さを基準として、地上における足場の基礎部分から水平方向に向かって、その高さの半分の距離について、歩行者等の第三者の立ち入りを禁止するという規制を設ける場合がある。
【0003】
このように上記規制では、高層建物の場合には、その高さに比例して、その高層建築における基礎部分から水平方向において一定の範囲の立ち入りを規制する必要があるものの、特に都市部においては、その規制には限界がある。
【0004】
これを解決するものとして、特開2015-052255号公報に記載されている鉄筋コンクリート造の外壁の表面を外装材で仕上げた建築物に対して施工される建築物用防護ネット柵であって、該建築物の外壁の全体または一部に取り付けられ出幅調整孔とワイヤー通し管を備えている複数の留め具と、この留め具を連結する連結部材と、該それぞれの留め具のワイヤー通し管に通されているワイヤーと、各ワイヤーの張りを調整するワイヤーの上下部に備えられたターンバックルと、該ターンバックルに掛けられたワイヤーを備えており、該複数本のワイヤーにはネットが結束線によって取り付けられ、建築物の外壁の全体または一部がネットで覆われていることを特徴とする、防護ネットを備えている建築物用防護ネット柵が開示されている。
【0005】
しかしながら、比較的大型の資材を上方階へ持ち上げる際には、このネットを外し、下方階に配置された足場から、上方階に配置された足場へ、ロープを使用して引き上げるということが行われている。このようにネットを外さなくては資材を上方階へ引き上げることができず、そのネットを外した箇所からその資材が落下した場合、落下物が周囲に飛散する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-052255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたもので、その課題は、足場のネットを取り外す必要がなく、仮に資材が落下してもその落下物が周囲に飛散する恐れを可及的に防止する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、第1観点の落下物飛散防止装置は、少なくとも複数階を有する建築物に取り付けて作業者の足場となる足場と、上方または下方からの荷物の上げ下ろしを行うための通路となる昇降部と、を有し、昇降部は、前記足場の前方に取り付けられているというものである。
また、第2観点の落下物飛散防止装置は、第1観点において、足場は、その足場の支柱となる後方支柱と前方支柱を有し、後方支柱は、建築物に固定され、前方支柱は昇降部と固定されているというものである。
また、第3観点の落下物飛散防止装置は、第2観点において、昇降部は、支柱となる昇降前方支柱を有し、昇降前方支柱の下部と、前方支柱と、を接続する支え部材と、をさらに有するというものである。
また、第4観点の落下物飛散防止装置は、第1観点から第3観点において、昇降部を覆うネットを具備したというものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のように構成され、かつ、作用するものであるから、足場のネットを取り外す必要がなく、仮に資材が落下してもその落下物が周囲に飛散する恐れを可及的に防止する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】落下物飛散防止装置の斜視図である。
図2】落下物飛散防止装置の概略斜視図である。
図3】足場と昇降部との斜視図である。
図4図1のIV-IV線端面図である。
図5】足場と昇降部との正面図である。
図6】足場と昇降部との平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施例を説明する。本実施例の落下物飛散防止装置10は、建築物100の複数階にそれぞれ取り付けて足場となる足場20と、複数階の足場20に取り付けられその複数階における上方である上方階及び下方である下方階へ荷物を引き上げおよび引き下ろしするための通路となる昇降部30と、を有するものである。すなわち作業者は足場20から、ロープを使用して、その昇降部30を通路として使用して建築資材などの荷物を、引き上げたり下ろしたりすることができる。
【0012】
建築物100は、マンション等の集合住宅やビルなどの複数階を有する建物が好ましい。本実施例において、複数階を有する建築物100を建築する際や、その建築物100をリフォームする際に、作業するための足場20が取り付けられている。なお足場20の外周部分に図示しない防護ネットを配置することができる。なお図2においては、理解容易のために、足場20についてはその外形を概念的に記載し、昇降部30を記載している。
【0013】
足場20は、建物100側に配置した複数の後方支柱21と、建物100とは反対側に配置した前方支柱22とを有し、それら後方支柱21と、前方支柱22との最下部22aは、その後方支柱21と前方支柱22とを保持するためのベースとなる複数のジャッキベース23にそれぞれ接続されている。またそのジャッキベース23は、敷き板23aに載置されている。
【0014】
複数の後方支柱21と、複数の前方支柱22の数量は、建築物100の規模によって異なるものであって、その複数の後方支柱21と、複数の前方支柱22及びジャッキベース23は、所定の間隔に配置されている。この間隔は1800ミリメートルから2000ミリメートルが好ましい。
【0015】
また、足場20は、後方支柱21および前方支柱22における建築物100の各階に相当の床面と天井面との間の任意の位置に、それら後方支柱21と前方支柱22をそれぞれ連結するために水平に配置する複数の横桟24を有している。また、その複数の後方支柱21と、前方支柱22と複数の横桟24と、はそれぞれ接続されている。もっとも、後述する筋交い27と共に、ピン25で接続することもできる。
【0016】
さらに、その複数の横桟24のうち2本の横桟24を渡すように、建築物100と平行に板状の足場板26を配置する。また、さらに他のそれぞれ2本の横桟24を渡すように、建築物100と平行に板状の足場板26をそれぞれ配置する。これによって、建築物100の各階に対応する足場20を構成することができる。なお、強度確保のためX字状の筋交い27を、その2本の後方支柱21のそれぞれの上下部分に斜めに渡すように配置することができる。また、前方支柱22においても同様である。なお、そのX字状の筋交い27の下部に、作業者の転落防止のために水平に棒状の第2横桟を使用することも好ましい。また、さらに他の前方支柱22のそれぞれの上下部分に斜めに渡すように配置することで、筋交い27は、建築物100の各階に対応する部分に設けることもできる。なお、後述するように昇降部30を取り付ける部分については、筋交い27を取り付けないことが好ましい。
【0017】
また、建築物100と上記足場20を接続してその足場をその建築物100と固定するための複数の壁つなぎ28を有する。壁つなぎ28は、建築物100側に配置した後方支柱21においてたとえば、建築物100の各階に対応する部分に設けることも可能であり、また、建築物100において、1階おきに対応する部分に設けることも可能である。
【0018】
建築資材を下方の階から上方の階へ引き上げたり、上方の階から下方の階に下ろすための通路となる昇降部30は、上記足場20を介して、その足場20の前方Fすなわち建築物100の位置の方向(後方R)とは反対の方向に配置されるものであり、建築物100と足場20との間の図示しない作業者の移動に支障がないように配置している。
【0019】
すなわち、図示しない作業者が、建築物100に対してリフォームなどの作業をする際に、建築物100と足場20との間(後方R)ではなく、足場20の前方Fに、昇降部30を配置することによって、作業者におけるリフォームなどの作業をする際に、その上方の階へ引き上げたり、上方の階から下方の階に下ろす際に、作業者が誤って、その建築資材が落下した場合に、下方の階において足場20上で作業している他の作業者との衝突を避けることができる(図4参照)。
【0020】
なお、ここで前方Fとは、建築物100に背を向けて正面が前方Fである。従って、後方Rから前方Fに向けて、端面視、建築物100、足場20、昇降部30の順に配置されていることが好ましい。このように昇降部30を、足場20の外側(建築物100とは反対側、前方F)に設けることが好ましい。
【0021】
昇降部30は、複数の前方支柱22に取り付けて、後述する複数の自在クランプ36aで固定される複数の昇降後方支柱31と、前方支柱22とは反対側に配置した昇降前方支柱32とを有する。昇降後方支柱31と、昇降前方支柱32は、共に、支柱として昇降部30を構成する。また、昇降部30は、昇降後方支柱31および昇降前方支柱32における建築物100の各階に相当の床面と天井面との間の任意の位置にそれぞれ、昇降後方支柱31および昇降前方支柱32をそれぞれ連結するために水平に配置する複数の昇降横桟34を有している。また、その昇降後方支柱31と昇降前方支柱32と複数の昇降横桟34とは、それぞれ接続されている。もっとも、後述する筋交い38と共に、ピン37で接続することもできる。
【0022】
また、昇降部30は、地上から設置するのではなく、たとえば建築物100の2階あるいは3階相当から、上方に向かって配置することが好ましい。また昇降前方支柱32の最下部にその昇降前方支柱32を支持する支え部材36を配置し自在クランプ36aを用いることで、支え部材36の一端はその下層階に対応する前方支柱22と接続し、他端は、昇降前方支柱32と接続することで、昇降部30を支持することができる。なお、足場の設置基準として、いわゆるアサガオを設置する高さを路面から物件の下端までの高さを、歩車道の区別がない道路の場合はその高さを5m以上とし、 歩道が存在する場合はその高さを 4m以上としたことから、それに準ずるために建築物100の2階あるいは3階相当から、上方に向かって配置することが好ましい。
【0023】
昇降部30は、少なくとも足場20の一部に取り付けることができる。すなわち、複数の前方支柱22のうち、2本の前方支柱22に取り付けてそれぞれ固定される2本の昇降後方支柱31と、その2本の昇降後方支柱31とは反対側(前方F)に配置した2本の昇降前方支柱32とを有する。また、昇降後方支柱31および昇降前方支柱32をそれぞれ連結するために、後方Rから前方F、かつ水平に配置する2本の昇降横桟34を有している。また、2本の昇降前方支柱32を連結するための前方横桟35を有する。これは、昇降横桟34と同じ高さに配置することが好ましい。
【0024】
また、複数の昇降後方支柱31と前方支柱22とを接続するために、その接続する角度を変えられる自在クランプ36aを使用することができる。
【0025】
また、強度確保のためX字状の筋交い38をその、昇降前方支柱32に設けることもできる。なお、そのX字状の筋交い38の下部に、水平に棒状の第2横桟を使用することも好ましい。さらに、昇降部30全体を覆うネット40をさらに配置することができる。これにより、昇降部30内において、仮に建築資材等の荷物が落下したとしても周囲にその荷物が飛び出し飛散することを防止することができる。特に足場20に防護ネットを配置した場合に、荷物の上げ下ろしをするためにそのネットを取り外す必要がないので、足場20で作業をしている作業者の安全を図ることができる。なお、上述の横桟24を延長して、昇降横桟34と一体のものとしても好ましい。
【0026】
上記構成の昇降部30は、上方階に相当する高さから、下方階に相当する高さに至るまでに、昇降後方支柱31と昇降前方支柱32と、2本の昇降横桟34と、前方横桟35とにおいて、平面視、口の字状の開口部39を有している。また、すなわちこの開口部39は、上方階に相当する高さから、下方階に相当する高さに至るまで貫通するように構成されており、その開口部39内のスペースを、建築資材などの荷物の引き上げおよび荷下ろしをするための通路として使用することができる。このように作業者は、任意の各階に相当するそれぞれの足場20に位置する場合に、その昇降部30は、その階に対応する開口部39を有するので、図示しないロープ、ワイヤ、紐等と、滑車を使用し、当該作業に最適な階における足場20から、荷物を引き上げたり下ろしたりすることができる。
【0027】
なお、上記のとおり、昇降部30は全体をネット40で覆うことにより、仮にその荷物が落下した場合の飛散をさらに防止することができる。なお本実施例における昇降部30は、足場20における1箇所に配置しているが、たとえば、建築物100の周囲に、昇降部30を複数配置することもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 落下物飛散防止装置
20 足場
21 後方支柱
22 前方支柱
23 ジャッキベース
24 横桟
25 ピン
30 昇降部
31 昇降後方支柱
32 昇降前方支柱
34 昇降横桟
35 前方横桟
36 支え部材
36a クランプ
37 ピン
40 ネット
100 建築物
図1
図2
図3
図4
図5
図6