IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクシヴィオン リミテッドの特許一覧

特許7121396バリアントフラビウイルスエンベロープ配列およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】バリアントフラビウイルスエンベロープ配列およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20220810BHJP
   C07K 14/08 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220810BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20220810BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20220810BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20220810BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20220810BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220810BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20220810BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C07K14/08
C12N15/85 Z
C12N7/04
C12N1/19
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/10
C12N15/115 Z
C12Q1/70
C12Q1/6888 Z
C12P21/02 C
A61K39/12
A61P31/14
G01N33/569 L
G01N33/53 D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018561062
(86)(22)【出願日】2017-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 US2017033882
(87)【国際公開番号】W WO2017201543
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】1608896.5
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518407489
【氏名又は名称】エクシヴィオン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Excivion Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ペーター
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】ウイルス, 2011, 第61巻, 第2号,pp.221-238
【文献】Journal of Virology, 2013, Vol.87, pp.52-66
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY, 2011, Vol.85, pp.11800-11808
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離組換え改変フラビウイルスEタンパク質融合ループであって、
配列番号1の天然フラビウイルスEタンパク質融合ループ配列中に存在しないN連結グリカンのための少なくとも1つのグリコシル化部位を含み、
前記少なくとも1つのグリコシル化部位は、Asn(N)残基が天然フラビウイルスEタンパク質融合ループアミノ酸配列の98~110位DRGWGNGCGLFGKの何れかに対応するアミノ酸位置を占めるように置換されたN連結グリコシル化シークオンAsn-X-Ser/Thrであり、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸残基であり、Ser/Thrは、セリン残基又はトレオニン残基を示す
ことを特徴とする単離組換え改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ。
【請求項2】
請求項1に記載の単離組換え改変フラビウイルスEタンパク質融合ループにおいて、天然フラビウイルスEタンパク質融合ループ配列(配列番号1)中に存在しない2つのグリコシル化部位を含むことを特徴とする単離組換え改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ。
【請求項3】
単離組換え改変フラビウイルスEタンパク質であって、請求項1又は2に記載のフラビウイルスEタンパク質融合ループを含むことを特徴とする単離組換え改変フラビウイルスEタンパク質。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又は請求項3に記載のフラビウイルスEタンパク質において、それに付着された少なくとも1つのN連結グリカンを有することを特徴とする改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はフラビウイルスEタンパク質。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質において、組換えDNA又は組換えRNAの発現産物であることを特徴とする改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質において、N連結グリコシル化シークオンAsn-X-Ser/Thrを含み、それにより、前記シークオンのAsn(N)残基は、98~101位及び/又は106~110位の何れかを占めることを特徴とする改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質において、Xは、以下の13種のアミノ酸残基Gly、His、Asn、Gln、Tyr、Val、Ala、Met、Ile、Lys、Arg、Thr又はSerの何れかであることを特徴とする改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質において、前記フラビウイルスEタンパク質は、デングウイルスEタンパク質であり、シークオンのAsn(N)残基は、前記フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列の101位、108位若しくは101位及び108位の両方を占めるか、又は、前記フラビウイルスEタンパク質は、ジカEタンパク質であり、シークオンのAsn(N)残基は、前記フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列の100位を占めることを特徴とする改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質において、
前記フラビウイルスは、デングウイルスであり、前記フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列98~110は、

から選択され、又は
前記フラビウイルスは、ジカウイルスであり、前記フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列98~110は、

であることを特徴とする改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質。
【請求項10】
単離組換えDNA又は単離組換えRNAであって、
(a)請求項1乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質をコードするDNA又はRNA、
(b)プラスミド若しくは線形DNAをベースとするワクチンである、前記(a)の単離組換えDNA、又は
(c)哺乳類のプロモーターの制御下において、請求項1乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質をコードする、前記(a)若しくは前記(b)の単離組換えDNA
を含むことを特徴とする単離組換えDNA又は単離組換えRNA。
【請求項11】
宿主細胞であって、
(a)請求項10に記載のDNA又はRNAを含む、
(b)請求項10(a)に記載のDNA、請求項10(b)に記載のプラスミド若しくは線形DNAをベースとするワクチン免疫原、若しくは請求項10(c)に記載の単離組換えDNAを含む真核宿主細胞である、又は
(c)(i)請求項1乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質を発現し得る、若しくは(ii)請求項1乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質を発現及びグリコシル化し得る、前記(a)若しくは前記(b)の宿主細胞である
ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項12】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質を作製する方法であって、請求項11に記載の宿主細胞を前記改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質の発現に適した条件で培養するステップと、前記改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質を単離するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
組成物であって、
(a)請求項1乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質と希釈剤とを含む、又は
(b)前記組成物を接種された対象中で免疫反応を誘発し得、請求項1乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質を薬学的に許容される希釈剤、アジュバント及び/又は担体と一緒に含む免疫原性(ワクチン)組成物である
ことを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物において、
(i)DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4、及びジカの改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質から選択される、請求項1乃至9の何れか1項に記載の1種若しくは複数の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ又はEタンパク質、
(ii)4種のデングウイルス血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3、及びDEN-4のそれぞれを表す、請求項1乃至9の何れか1項に記載の4種のデング改変Eタンパク質融合ループ又はEタンパク質、
(iii)請求項1乃至9の何れか1項に記載のジカウイルス改変Eタンパク質融合ループ又はEタンパク質、又は
(iv)4種のデング血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3、及びDEN-4のそれぞれを表す、請求項1乃至9の何れか1項に記載の4種のデング改変Eタンパク質融合ループ又はEタンパク質、並びに請求項1乃至9の何れか1項に記載のジカウイルス改変Eタンパク質融合ループ又はEタンパク質
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項15】
請求項1、2、4乃至9の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループに特異的に結合し得る結合分子であって、前記結合分子が、抗体又はその断片、ドメイン抗体、タンパク質足場、及びアプタマーから選択されることを特徴とする結合分子。
【請求項16】
請求項1乃至9、13、14又は15の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ、改変フラビウイルスEタンパク質、組成物又は結合分子において、
(a)薬剤としての使用のためのもの
(b)ワクチンとしての使用のためのもの
(c)フラビウイルス感染の予防的処置若しくは治療的処置における使用のためのもの
(d)フラビウイルス感染の予防的処置若しくは治療的処置のための薬剤の製造のためのもの
(e)フラビウイルスによる感染から対象を防御するためのもの
(f)診断薬としての使用のためのもの
であることを特徴とする改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ、改変フラビウイルスEタンパク質、組成物又は結合分子。
【請求項17】
診断キットであって、請求項1乃至9、13、14又は15の何れか1項に記載の改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ、改変Eタンパク質、組成物又は結合分子と、前記改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ、改変Eタンパク質、組成物、又は結合分子を含有する免疫学的(抗原-抗体)複合体を検出し得る試薬とを含むことを特徴とする診断キット。
【請求項18】
請求項17に記載の診断キットにおいて、1種若しくは複数のコントロール標準物質、及び/又は検体希釈剤、及び/又は洗浄緩衝液を含むことを特徴とする診断キット。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の診断キットにおいて、前記改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ若しくは改変Eタンパク質及び/又は結合分子は、固体支持体上に固定されていることを特徴とする診断キット。
【請求項20】
請求項17乃至19の何れか1項に記載の診断キットにおいて、前記改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ若しくは改変Eタンパク質及び/又は結合分子は、マイクロプレートウェル上に固定されていることを特徴とする診断キット。
【請求項21】
請求項17乃至20の何れか1項に記載の診断キットにおいて、前記改変フラビウイルスEタンパク質融合ループ若しくは改変Eタンパク質又は結合分子を含有する免疫学的複合体は、ELISAによって又はラテラルフローによって検出されることを特徴とする診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラビウイルス(例えば、デングウイルスまたはジカウイルス)の野生型Eタンパク質の核酸およびタンパク質のバリアント、ならびにこれらに特異的な結合分子、例えば相補的核酸または抗原結合分子、例えば抗体、ならびに組成物、例えば治療用組成物、予防用組成物または診断用組成物、キット、パーツキット(kit-of-parts)、方法、ならびに特にフラビウイルス感染の診断のためのおよびフラビウイルス感染に対して免疫付与するワクチンのためのこれらに関する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フラビウイルスは、陽性で一本鎖のエンベロープRNAウイルスのファミリである。フラビウイルスは、節足動物(主にマダニおよび蚊)で見出され、ヒトに感染する可能性がある。このファミリのメンバーは、単一属フラビウイルスに属し、世界中で広範な罹患率および死亡率をもたらす。蚊により伝播されるウイルスの一部として、デング熱ウイルス、ジカウイルス、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルスおよび西ナイルウイルスが挙げられる。他のフラビウイルスは、マダニにより伝播され、下記の脳炎および出血性疾患の原因となる:ダニ媒介脳炎(TBE)、キャサヌル森林病(KFD)およびAlkhurma病、ならびにオムスク出血熱。
【0003】
フラビウイルスは、下記の10種のウイルスタンパク質をコードする小さい球状ビリオンである:3種の構造タンパク質(カプシド、前駆体膜/膜およびエンベロープ(E))ならびに7種の非構造タンパク質。Eタンパク質は、細胞へのウイルス付着、エンドソームコンパートメントとの融合および宿主免疫反応の調節で重要な役割を果たす。ウイルスEタンパク質の外部ドメインは、ビリオンの表面上でヘッドトゥーテールホモ二量体を形成する3種の構造的に異なるドメイン(DI、DIIおよびDIII)へと折り重なる。DIは、Eタンパク質の構造全体を構築する中心ドメインである。DIIは、DIから突出する2つの延長ループから形成され、この二量体中の隣接Eタンパク質のDIおよびDIIIの界面でのポケット内に位置する。DIIの遠位末端では、残基98~110を包含するグリシンリッチの疎水性配列(融合ループと呼ばれている)が存在し、フラビウイルス間で高度に保存されている。この領域は、pH依存性のII型融合事象に関与しており、このプロセス中、この領域は、露出して外方へ再配向されるようになり、この領域が膜接触に利用可能になる。DIIIは、7本鎖Ig様折り畳みを形成し、成熟ビリオン中で最も膜遠位のドメインであり、レセプター結合に関与することが示唆されている。基部領域は、この外部ドメインを、ビリオンの集合および融合に重要な2ヘリックスC末端膜貫通アンカーと連結する。
【0004】
デング熱疾患は、世界中で最も重要なヒト病原体の1つであるデングウイルス(DENV)により引き起こされる蚊媒介性ウイルス感染である。この感染症は、広範囲の結果(非症候性/軽度の熱性疾患(デング熱、DF)から重度の血漿漏出、および潜在的に致命的な状態(デングショック症候群、DSS)へとさらに発展する可能性がある出血性症状(デング出血熱、DHF)まで)を伴う全身性疾患を引き起こす。DENVは、アエデス(Adedes)種の蚊により伝播され、世界中の熱帯および亜熱帯の全体にわたって広く分布している。100カ国以上で約30億人が感染のリスクがあると推定されており、毎年、3億超例の感染、DHF症状の500,000例のエピソードおよび20,000例の死亡が報告されている。デング熱疾患の蔓延および影響により、デング熱疾患は、世界保健機関(World Health Organization)により「世界で最も重要な蚊媒介性ウイルス疾患」と分類されるに至った。
【0005】
デングウイルスの4種の異なる血清型(DENV1、DENV2、DENV3およびDENV4)がこれまで同定されており、各血清型は、ヒトにおいて病原性である。何れか1つの血清型による感染は、その特定の血清型に対する生涯の免疫を誘発し、3種の他の血清型に対して一時的な交差防御のみを誘発する。デング感染の重度の症状は、異なるウイルス血清型を伴う二次感染と関連し、これは、感染の抗体依存性増強(ADE)として知られている機序により起こる。ADEでは、交差反応性ではあるが弱中和または非中和の抗体によるウイルス粒子の認識は、単球、マクロファージおよび樹枝状細胞(ヒトでのデングウイルス感染の一次標的)による未熟または不完全に中和されたウイルスのFcレセプター媒介性取り込みの増加に至り、感染力および患者の臨床状態の悪化の増加をもたらす。ADEは、デングワクチンの開発において重要な考慮すべき事項であり、なぜなら、4種の全ての血清型に対して完全中和抗体を誘発しない免疫原は、感染を予防するよりもむしろ疾患に寄与する場合があるからである。感染に対する効率的な処置の欠如およびヒトの健康へのリスクを考慮して、抗体依存性増強を引き起こす可能性がない防御反応を生じる効率的なワクチンを開発することが必要とされている。
【0006】
Sanofi Pasteurにより開発された1種のデングワクチンDengvaxia(登録商標)(CYD-TDV)が認可されている。約5種の追加のデングワクチン候補が臨床開発中であり、2種の候補(ButantanおよびTakedaにより開発された)は、2016年初頭に第3相臨床試験を開始することが期待されている。
【0007】
臨床試験では、Dengvaxia(登録商標)ワクチンは、幼児(5歳未満)でのデング出血熱(まさに予防することが意図されている疾患)に起因して入院のリスクを増加させることが分かった。結果として、Dengvaxia(登録商標)ワクチンは、認可が限定されており、即ち9歳以上の人にのみ限定されている。ジカとデングとの抗原交差反応性を考慮すると、Dengvaxia(登録商標)ワクチンおよび開発中の他のデングワクチンによるワクチン接種は、ジカウイルスのADEを促進する場合があり、成人におけるギラン・バレー症候群の発生率および幼児における小頭症の発生率が増加するという懸念と、ジカに対する開発中のワクチンが、一部の対象でDengvaxiaが行うようにデング出血熱のリスクが同様に増加する場合があるという懸念とがある。
【0008】
ジカウイルスは、サルにおいて1947年にウガンダで最初に同定された蚊媒介性フラビウイルスであり、後にウガンダおよびタンザニア連合共和国で1952年にヒトにおいて同定された。アフリカ、アメリカ、アジアおよび太平洋ではジカウイルス疾患の大流行が記録されている。1960年代から1980年代にかけて、アフリカおよびアジアの全域でヒト感染が見出され、通常、軽度の病気を伴った。症状は、デング熱等の感染症と類似しており、発熱、皮膚発疹、結膜炎、筋肉および関節痛、倦怠感および頭痛が挙げられる。これらの症状は、通常、軽度であり、2~7日にわたり持続する。しかしながら、ジカウイルス感染は、一部の対象で合併症を引き起こす場合がある。妊娠期間中でのジカウイルス感染は、小頭症等の先天性脳異常の原因として認識されている。ジカウイルスは、ギラン・バレー症候群の引き金である。ジカウイルスと一連の神経障害との間の関連が研究されている。
【0009】
Sanofiは、米国のWalter Reed Army Institute of Research(WRAIR)およびブラジルのFiocruz公衆衛生センターとの共同研究でジカワクチンを開発したことを2016年に報告し、2016年、プラスミドDNAワクチンまたは精製済の不活性化ウイルスワクチンによる免疫付与により、ブラジル北東部でのアウトブレイクに関与するジカウイルスの株によるチャレンジに対する感受性マウスでの完全な防御がもたらされることを報告した(Larocca et al.,2016 Nature 536,474-478(25 August 2016)。
【0010】
しかしながら、ヒトでのプラスミドDNAワクチン接種は、送達するための「遺伝子銃」または類似の技術(例えば、エレクトロポレーション)を必要とし、このアプローチは、デングおよびジカの問題に対する世界的規模の解決策を提供すると考えられていない。同様に、開発中のDNAワクチンアプローチおよび不活性化ウイルスワクチンアプローチの両方は、ADEの原因に関与するデング-ジカ交差反応性エピトープを含む。
【0011】
感染またはワクチン接種後、身体の免疫系は、ウイルスの表面タンパク質に結合して感染を遮断する中和抗体を産生する。抗体依存性増強(ADE)は、あるウイルスにより誘発された抗体が類似のウイルスに結合し得るが、このウイルスの感染を遮断しない(中和しない)場合に起こる。
【0012】
ADEは、デングウイルスで最も一般的に観察される。デングウイルスの4種の既知の血清型は、異なるが関連する表面タンパク質を有する。第1のデングウイルス血清型による感染は、概して、感染した個体において軽度のまたは全くない症状をもたらす。対象が第2のデング血清型に続いて感染する場合、免疫系は、ウイルスの第2の血清型に結合するが、必ずしも感染を遮断するとは限らず、かつADEを引き起こす可能性を有する、第1の血清型に対する抗体を産生する。結果として、デングウイルスが通常感染しない細胞(即ち抗体の「テイル」またはFc領域のレセプターを有する細胞)へのウイルスの抗体媒介性取り込みが存在する。これにより、デング出血熱またはデングショック症候群等のより重症な疾患がもたらされ得る。若い幼児のみが、胎盤を通して伝播した母親の抗デング抗体の結果としてデングへの最初の暴露時にデング出血熱を発症する。従って、抗体は、成人でも幼児でも(重度の)疾患原因においてウイルスと同等のパートナーである。
【0013】
デングウイルス抗体は、他のデングウイルス血清型のADEを促進するだけでなくジカウイルス感染も増強する。Dejnirattisai et al.,(2016)Nature Immunology 17,1102-1108.“Dengue virus sero-cross-reactivity drives antibody-dependent enhancement of infection with Zika virus”。Dejnirattisaiらは、デング中和抗体またはデングウイルス患者からの血清の、細胞培養物中のジカウイルスへの効果を試験した。抗体の非存在下において、ジカウイルスは、細胞に十分に感染しないが、ジカウイルスをデング血清または中和抗体と共にインキュベートした場合、ジカウイルスは、この細胞に頑強に感染し、これは、ADEの作用を示す。この発見の生理学的関連性は、疫学研究での確認を必要とするが、これらの発見は、現在のワクチンアプローチの明らかなリスクを提起する。これまで、この問題に対する満足な解決策は、考えられていないかまたは提唱されていない。
【0014】
本分野でのワクチンは、人口ベースで純便益を有することが判明し得るが、個人ベースでは実態が異なる。一部の対象では、悲惨なことに、ある疾患を予防することにより、別のものからの重症度または死亡率のリスクが増加する場合がある。Paul LM et al.Clinical&Translational Immunology(2016)5,e117“Dengue virus antibodies enhance Zika virus infection”は、下記のように報告している。
「数十年にわたり、蚊伝播性フラビウイルスであるジカウイルス(ZIKV)によるヒト感染は、軽度の疾患と関連して散発的であり、症状が他の急性発熱疾患と類似していたことから過小報告されていた。ZIKVと関連する重症疾患の近年の報告は、認識を大幅に高めている。コンピテントなアエデス(Aedes)蚊ベクターが発見された場合、ZIKVがアメリカおよび世界規模で蔓延し続けているであろうと予測される。最も一般的な蚊伝播性ヒトフラビウイルスであるデングウイルス(DENV)は、十分に確立されており、近年のZIKV導入の分野では大流行の原因でもある。DENVおよびZIKVは、密接に関連しており、結果として実質的な抗原重複が生じる。抗体依存性増強(ADE)を介して、抗DENV抗体は、特定のクラスの免疫細胞に関してDENVの感染力を増強し得、重症疾患の結果と相関するウイルス産生が増加する。同様に、ZIKVは、他のフラビウイルスにより産生された抗体に反応してADEを受けることが分かっている。著者らは、中和アッセイおよびADEアッセイを使用して、ZIKVに対する、十分に特徴付けられた広範な中和ヒト抗DENVモノクローナル抗体(HMAb)およびヒトDENV免疫血清の中和能力および増強能力を試験した。著者らは、抗DENV HMAbが交差反応し、中和せず、インビトロでZIKV感染を大きく増強することを示す。DENV免疫血清は、ZIKVに対する中和の様々な程度を有し、ZIKV感染を同様に増強した。著者らの結果は、既存のDENV免疫がインビボでZIKV感染を増強する場合があり、疾患の重症度を高めるようになる場合があることを示唆する。ZIKVとDENVとの間の相互作用を理解することは、公衆衛生の対応の報告で重要であり、特にZIKVおよびDENVのワクチン設計および実施戦略にとって有益であろう。」
【0015】
デングウイルス抗体は、ジカウイルスのADEを促進し得る。ジカウイルス抗体は、デングウイルスのADEを促進し得る。そのため、ジカウイルスに対する免疫付与は、デング出血熱もしくはデングショック症候群の発生率を増加させる可能性があるか、または免疫付与がなければ発症しなかったであろう個体でのこれらの状態の発症を促進する可能性がある。数年であり得る感染の間隔を考慮すると、市販流通後の調査研究が、新規のワクチンが重度のデング熱疾患(出血熱、ショック症候群)または重度のジカ後遺症(例えば、ギラン・バレー症候群または小頭症)に罹りやすくするかどうか、およびどの程度まで罹りやすいかについて通知し得るまで数年かかるであろう。
【0016】
従って、抗体依存性増強の問題を回避するために意図的に設計されているワクチンアプローチが明らかに必要とされている。
【0017】
現在の血清学的試験を使用するフラビウイルス感染の特定の診断は、他の臨床的に関連するフラビウイルスに対する抗体間の交差反応により複雑になる。交差反応性は、異なるフラビウイルスが共循環する領域またはフラビウイルスに対するワクチンにより免疫付与されている集団で特に問題である。交差反応性抗体の大部分は、ドメインIIの遠位末端の融合ループ中の保存されたエピトープを標的とする免疫優性フラビウイルスエンベロープ(E)タンパク質に対して産生される。
【0018】
個体が血清陰性であり、そのため、デングもしくはジカに暴露されていないかどうかを評価するために、または個体が血清陽性であり、ジカおよび/またはデングに暴露されているかどうかを評価するために、かつ血清陽性である個体に関してジカおよび/または4種のデング血清型の何れに個体が暴露されているかを区別するために、密接に関連するフラビウイルス間を区別し得る診断アプローチが必要とされている。免疫付与の対象を選択するために使用され得るか、または免疫付与によりデングおよびジカに対する防御免疫反応が生じているかどうかを判定するために血清陽転を評価するために使用され得る診断アプローチが必要とされている。そのため、デングウイルス血清型に対する抗体およびジカウイルスに対する抗体を区別するために免疫反応の調査を可能にする診断アプローチが必要とされている。
【0019】
国際公開第2016012800号パンフレットは、デングウイルスに感染した患者から得られた交差反応性中和抗体の同定およびキャラクタリゼーションを開示する。急性ヒト抗体反応は、下記の2つの重要なエピトープに焦点を合わせていることが見出された:融合ループ上の既知のエピトープ(FL FLE)、ならびにインタクトなビリオンまたはエンベロープタンパク質の二量体で見出されかつドメインI、IIおよびIIIの領域を包含する、新規であると言われている第2のエピトープ。第2のエピトープ、エンベロープ二量体エピトープまたはEDEと反応する抗体は、低ピコモル範囲において、昆虫および初代ヒト細胞の両方において作製されたウイルスを完全に中和することが報告されれた。従って、安定化された可溶性タンパク質E二量体を含むサブユニットワクチンがデングワクチンとして提案された。国際公開第2016012800号パンフレットでは、デングウイルスエンベロープ糖タンパク質E外部ドメイン(sE;可溶性エンベロープポリペプチド/糖タンパク質)は、デングウイルス血清型1、2および4のエンベロープ糖タンパク質Eの1~395アミノ酸断片ならびにデングウイルス血清型3のエンベロープ糖タンパク質Eの1~393アミノ酸断片を意味することが開示されている。国際公開第2016012800号パンフレットでは、sEの安定化二量体としてのEDEは、DENV-1 sE、DENV-2 sE、DENV-3 sE、DENV-4 sE、ならびにこれらのH27F、H27W、L107C、F108C、H244F、H244W、S255C、A259C、T/S262C、T/A265C、L278F、L292F、L294N、A313C(DEN3中のS313C)およびT315Cの中から選択される少なくとも1つの変異(置換)を有する変異体sEから選択され、この変異は、二量体の立体配置の安定性の増加に寄与すると考えられることが説明されている。その変異体sEは、Q227N、E174NおよびD329Nから選択される少なくとも1つの変異(置換)をさらに含み得、好ましくは3つの全ての変異Q227N、E174NおよびD329をさらに含み得ることが開示されており、この変異により、適切でない免疫原性領域がマスクされ、この発明の安定化された組換えsE二量体が、4種の全てのデングウイルス血清型を対象とする中和抗体を優先的に誘発することが可能になると言われている。
【0020】
説明されているsE二量体変異は、免疫原性を妨げるのではなく、架橋により安定化をもたらすために二量体接触面でシステイン変異を含むことにより、および/またはクリック化学による二量体上の隣接する糖間で化学的架橋を可能にする新規のグリコシル化部位の導入により、および/または二量体界面でもしくは各モノマーのドメイン1(D1)/ドメイン3(D3)リンカー中で空洞の形成を可能にするための少なくとも1つの嵩高い側鎖アミノ酸による少なくとも1つのsEモノマーのアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基の置換により、より高い二量体親和性を提供すると言われている。
【0021】
国際公開第2016012800号パンフレットでは、改善されたEDEが産生されるようにエンベロープタンパク質が操作され得、認識され得ないかまたは抗融合ループ(抗FL)抗体を生じさせ得ないEDEが改善されたEDEであると考えられていたことが開示されている。そのような改善は、エンベロープタンパク質中での1つまたは複数の変異、欠失または挿入により、特定のエピトープ(抗FL抗体を生じることになるあらゆる抗原を含まない)が足場タンパク質に融合しているハイブリッドタンパク質を生成することにより、またはN連結グリカン配列もしくはO連結グリカン配列を追加することにより免疫原性を低下させるために二量体(ウイルスの内部へと突出している)の内表面を糖で修飾することによってエンベロープタンパク質を操作することにより達成され得ることが開示されている。
【0022】
Robyら(2013、2014)は、フラビウイルスゲノムのカプシド(C)遺伝子内に大きい内部欠失を導入して、ビリオンへのパッケージ化が不能であり、感染性ウイルスが生成されることなく、高度に免疫原性のサブウイルス粒子(SVP)の分泌が依然として維持される複製可能なRNAを生成することによる、西ナイルウイルスのワクチン候補の開発へのアプローチを説明している。そのような偽感染性のC欠失ワクチンは、トランスフェクト細胞からの大量の非感染性免疫原性サブウイルス粒子(SVP)の複製および分泌が可能であり、そのため、生ワクチンの複製により生じた頑強な免疫反応を有する非感染性の不活性化ワクチンまたはサブユニットワクチンの安全性の複合利益を提供すると言われている。
【0023】
Robyら(2013)は、アルファヘリックス1、2および4が2つの別々のセグメントで除去されており、かつ親水性アルファヘリックス3が維持されている西ナイルウイルスKunjin(KUNV)の、C欠失CMVプロモーター駆動されるcDNAを有する構築物pKUNdC/C(KUNdC18-100/CMV-C)を作製した。pKUNdC/C C-欠失WNVでは、cDNAは、あるコピーのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下に置かれ、C遺伝子は、同一のプラスミドDNA中の別のコピーのCMVプロモーターの制御下に置かれていた。より大きい細胞質部分(アルファヘリックス3)の保存により、CおよびdC44~59の全てのアルファヘリックスが欠失している構築物の場合と比較して、SVP分泌が有意に改善されるに至った。SVP分泌のさらなる改善を、WNVの多くの循環株およびKUNVの近年の単離物の特徴であるEタンパク質のN154でのAsn連結グリコシル化モチーフ(Eタンパク質のアミノ酸154~156でのNYSモチーフに対応する)の組込み時にも観測した。pKUNdC/Cは、SVPを産生する自己複製C欠失RNAを周囲の細胞に送達し得る単一ラウンドの感染性粒子(SRIP)を生成することが分かった。しかしながら、pKUNdC/C DNAから産生されたSRIPおよびSVPの両方の量は比較的低かった。
【0024】
Robyら(2014)は、CMVプロモーターがより強力な伸長因子EF1aプロモーターに置き換えられており、かつtrans-C発現を最適化することによりSRIP産生を増加させるために異なる形態のCが使用される、西ナイルウイルスKunjin(KUNV)のC欠失cDNAを有する第二世代構築物の作製を報告した。拡張形態のCをコードする伸長因子EF1aプロモーターを含む構築物は、最高力価のSRIPを産生することが実証されており、マウスでは、免疫原性であった。SRIPおよびSVPの力価は、SVPの分泌を増強するエンベロープタンパク質(Eタンパク質のアミノ酸154~156でのNYSモチーフに対応する)中でのN154グリコシル化モチーフの組込みによりさらに改善された。
【0025】
Davisら(2014)は、西ナイルウイルス(WNV)の、CD209発現細胞に感染する能力を調べた。哺乳類細胞由来の西ナイルウイルスは、C型レクチンCD209Lを発現する細胞に優先的に感染するが、CD209を発現する細胞には感染せず、これに対して、デングウイルス(DENV)感染は、何れかの付着因子を発現する細胞中で増強される。DENVビリオンおよびWNVビリオンは、非常に類似した構造を有する。これらの表面は、正20面体格子(36)で配列された180個のエンベロープ(E)タンパク質サブユニットの規則的なアレイからなる。前膜タンパク質(prM)のフリン介在性プロセシング後に生成される小膜(M)タンパク質もビリオン表面上に存在するが、大部分がウイルス膜に埋没している。DENVビリオンとWNVビリオンとの間の主な構造的相違は、DENVウイルスEタンパク質中でのN連結グリコシル化部位の数および位置に由来する。ほとんどのDENV単離物は、残基67および153でグリコシル化部位を含むが、153での部位は、必ずしも利用されるとは限らない場合があり、WNV Eタンパク質は、アスパラギン154でN連結グリカンのみを含むが、これは、多くのウイルス株で存在しない。WNV Eタンパク質上のN-グリコシル化の存在は、いくつかの研究において、マウスでの神経侵襲性の増加およびインビトロでの細胞指向性の変更と関連している。Davisらは、西ナイルウイルスEに67位置でのグリコシル化部位でグリコシル化を導入した。このEタンパク質でシュードタイプ化されたレポーターウイルス粒子を、CD209またはCD209Lの何れかを使用して細胞に感染させた。いくつかの他の位置でグリコシル化部位を導入した。WNV株NY99 prM-E発現プラスミドpCBWNおよびEタンパク質残基154でN連結グリコシル化部位を欠く、このプラスミドの誘導体(NY99-N154Q)を、部位特異的変異誘発によるWNV Eタンパク質への新規のN連結グリコシル化部位の導入用のテンプレートとして使用した。下記のアミノ酸変更をNY99-N154Qに導入した:(i)Ala-54からThrへ(A54T)は、Asn-52でN連結グリコシル化部位を付加する;(ii)D67Nは、Asn-67で部位を付加する;(iii)K84Tは、Asn-82で部位を付加する;(iv)A173NおよびP174G(AP173NG)は、Asn-173で部位を付加する;(v)Glu-182からNGSへ(E182NGS)は、Glu-182をAsnに変異させ、かつ2つのアミノ酸(Gly-Ser)を挿入してシークオンを完成させることにより、Asn-182で部位を付加する;(vi)S230NおよびV232T(STV230NTT)は、Asn-230で部位を付加する;(vii)V279Tは、Asn-277で部位を付加する;(viii)T301NおよびG303S(TYG301NYS)は、Asn-301で部位を付加する;(ix)T330Nは、Asn-330で部位を付加する;(x)K370Tは、Asn-368で部位を付加する;(xi)G389NおよびQ391(GEQ389NET)は、Asn-389で部位を付加する。全ての部位でCD209L媒介性感染が認められたが、サブセットのみがCD209の使用を促進した。他のウイルスに見られるように、西ナイルウイルスとCD209との相互作用には西ナイルウイルスに対してマンノースリッチグリカンが必要であったが、マンノースリッチグリカンは、CD209L媒介性感染に必要とされなかった。複雑なグリカン(特にN-アセチルグリコサミン末端構造)は、レポーターウイルス粒子とCD209Lとの相互作用を媒介し得た。Davisらは、CD209Lは、広い特異性を有するグリコシル化フラビウイルスを認識するが、CD209は、マンノースリッチグリカンを有するフラビウイルスに対して選択的であり、そのため、ビリオン上でのN連結グリコシル化部位の位置が、組み込まれたグリカンのタイプを決定し、そのため、CD209発現細胞のウイルス指向性を制御することを提案した。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、天然フラビウイルスEタンパク質融合ループ配列中に存在しないN連結グリカンのための少なくとも1つのグリコシル化部位を含むフラビウイルスEタンパク質融合ループの単離組換え類似体であって、この少なくとも1つのグリコシル化部位は、N連結グリコシル化シークオン(Asn-X-Ser/Thr)であり、およびこのシークオンのAsn(N)残基は、天然フラビウイルスEタンパク質融合ループアミノ酸配列の98~110位(配列番号1:DRGWGNGCGLFGK)の何れかを占め得、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸残基であり、およびSer/Thrは、セリン残基またはトレオニン残基を示す、フラビウイルスEタンパク質融合ループの単離組換え類似体を提供する。
【0027】
本発明に係るフラビウイルスEタンパク質融合ループの単離組換え類似体は、天然フラビウイルスEタンパク質融合ループ配列中に存在しない2つのグリコシル化部位を含み得る。
【0028】
本発明は、本発明のフラビウイルスEタンパク質融合ループの類似体を含むフラビウイルスEタンパク質の単離組換え類似体を提供する。一部の実施形態では、フラビウイルスEタンパク質の単離組換え類似体の配列への唯一の改変は、N連結グリコシル化シークオン(Asn-X-Ser/Thr)を導入するためのこの融合ループ中での本発明の改変であり、他の実施形態では、この融合ループ外の残基においてフラビウイルスEタンパク質中で1種または複数のさらなる改変を導入し得る。
【0029】
本発明の類似体であって、それに付着された少なくとも1つの追加のグリカンを有する類似体が提供される。好ましくは、この少なくとも1つの追加のグリカンは、N連結グリカンである。好ましくは、本発明の類似体は、組換えDNA配列または組換えRNA配列の発現産物である。この少なくとも1つの追加のグリカンは、フラビウイルスEタンパク質融合ループ外のフラビウイルスEタンパク質中の1つまたは複数の天然グリコシル化部位に存在し得る。
【0030】
本発明の類似体は、N連結グリコシル化シークオン(Asn-X-Ser/Thr)を含み得、それにより、このシークオンのAsn(N)残基は、98~101位および/または106~110位の何れかを占める。
【0031】
好ましくは、本発明の類似体において、Xは、以下の13種のアミノ酸残基Gly、His、Asn、Gln、Tyr、Val、Ala、Met、Ile、Lys、Arg、ThrまたはSerの何れかである。
【0032】
本発明の好ましい類似体において、このフラビウイルスEタンパク質は、デングウイルスEタンパク質であり、およびシークオンのAsn(N)残基は、類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列の101位、108位もしくは101位および108位の両方を占めるか、またはこのフラビウイルスEタンパク質は、ジカEタンパク質であり、およびシークオンのAsn(N)残基は、類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列の100位を占める。
【0033】
本発明の好ましい類似体では、フラビウイルスは、デングウイルスであり、およびこの類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列98~110は、
から選択される。
【0034】
本発明の別の好ましい類似体では、このフラビウイルスは、ジカウイルスであり、およびこの類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列98~110は、
である。
【0035】
本発明は、本発明に係るフラビウイルスEタンパク質融合ループの類似体をコードする配列を含む単離組換えDNA配列または単離組換えRNA配列をさらに提供する。
【0036】
単離組換えDNA配列は、プラスミドまたは線形DNAをベースとするワクチンであり得る。本発明の単離組換えDNA配列は、哺乳類のプロモーターの制御下において、本発明に係るフラビウイルスEタンパク質の類似体をコードし得る。
【0037】
本発明は、本発明に係るDNA配列またはRNA配列を含む宿主細胞をさらに提供する。この宿主細胞は、本発明に係るDNA配列または本発明に係るプラスミドもしくは線形DNAをベースとするワクチン免疫原を含む真核宿主細胞であり得る。
【0038】
好ましくは、本発明の宿主細胞は、本発明の類似体を発現し得る。さらに好ましくは、本発明の宿主細胞は、本発明の類似体を発現およびグリコシル化し得る。
【0039】
本発明は、本発明の類似体を作製する方法であって、本発明に係る宿主細胞をこの類似体の発現に適した条件下で培養するステップと、この類似体を単離するステップとを含む方法を提供する。
【0040】
さらに提供されるのは、本発明の類似体と希釈剤とを含む組成物である。
【0041】
本発明の組成物は、免疫原性(ワクチン)組成物であって、前記組成物を接種された対象中で免疫反応を誘発し得、本発明に係る類似体を薬学的に許容される希釈剤、アジュバントおよび/または担体と一緒に含む組成物であり得る。
【0042】
本発明の組成物は、DEN-1の類似体、DEN-2の類似体、DEN-3の類似体、DEN-4の類似体およびジカの類似体から選択される本発明の1種または複数のフラビウイルス類似体を含み得る。
【0043】
本発明の組成物は、4種のデングウイルス血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3およびDEN-4のそれぞれを表す本発明の4種のデング類似体を含み得る。
【0044】
本発明の組成物は、本発明のジカウイルス類似体を含み得る。
【0045】
本発明の組成物は、4種のデング血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3およびDEN-4のそれぞれを表す本発明の4種のデング類似体と、本発明のジカウイルス類似体とを含み得る。
【0046】
本発明は、本発明の類似体に特異的に結合し得る結合分子も提供する。この結合分子は、抗体もしくはその断片、ドメイン抗体、タンパク質足場またはアプタマーであり得、但し、これらは、本発明の類似体に特異的に結合し得る。
【0047】
本発明は、薬剤としての使用のための本発明の類似体、組成物または結合分子を提供する。
【0048】
さらに、本発明は、ワクチンとしての使用のための本発明の類似体、組成物または結合分子を提供する。
【0049】
同様に提供されるのは、フラビウイルス感染の予防的処置もしくは治療的処置のための薬剤としての使用、またはフラビウイルス感染の予防的処置もしくは治療的処置のための薬剤の製造における使用のための本発明の類似体、組成物または結合分子である。
【0050】
本発明は、フラビウイルスによる感染から対象を防御する方法であって、本発明の類似体、組成物または結合分子を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0051】
好ましい実施形態では、このフラビウイルス感染は、デングウイルス感染またはジカウイルス感染である。
【0052】
本発明は、診断薬としての使用のための本発明の類似体、組成物または結合分子を提供する。
【0053】
本発明は、本発明の類似体、組成物または結合分子と、前記単離類似体または結合分子を含有する免疫学的(抗原-抗体)複合体を検出し得る試薬とを含む診断キットを提供する。
【0054】
本発明に従う診断試験キットは、1種または複数のコントロール標準物質、および/または検体希釈剤、および/または洗浄緩衝液をさらに含み得る。
【0055】
本発明の診断試験キットでは、本発明の類似体および/またはこの類似体に特異的な結合分子は、固体支持体上に固定され得る。この固体支持体は、マイクロプレートウェルであり得る。本発明に係る診断試験キットでは、前記単離類似体または結合分子を含有する免疫学的複合体は、ELISAまたはラテラルフローによって検出され得る。
【0056】
本発明は、抗体依存性増強の問題を回避するように意図的に設計されているワクチンアプローチを提供する。
【0057】
本発明は、密接に関連するフラビウイルスを区別して、個体が血清陰性であり、そのため、デングもしくはジカに暴露されていないかどうかを評価し得、または個体が血清陽性であり、ジカおよび/もしくはデングに暴露されているかどうかを評価し得、かつ血清陽性である個体に関してこの個体が暴露されているのがジカおよび/もしくは4種のデング血清型の何れかであるかを区別し得る診断アプローチを提供する。本発明は、免疫付与の対象を選択するために、または免疫付与がデングもしくはジカに対する防御的免疫反応を生じさせているかどうかを判定するために抗体陽転を評価するために使用され得る診断アプローチを提供する。本発明は、デングウイルス血清型およびジカウイルスに対する抗体を識別するための免疫反応の調査を可能にする診断アプローチを提供する。
【0058】
ここで、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、交差反応性の融合ループ抗体の産生および感染増強抗体の誘発または刺激を回避するための、本発明のワクチン免疫原の設計である。図1「A」は、4種のデング血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3およびDEN-4を含む、当技術分野で既知の生弱毒化ワクチン等のフラビウイルスワクチンによるワクチン接種の効果を示す。弱毒化ワクチンビリオンを、このビリオンから突出するEタンパク質部分幹状部を有する丸い構造として示し、融合ループを、ビリオンEタンパク質部分の幹状部上の小さい距状突起として描写し、抗体をY字型分子として描写し、感染増強抗体を黒塗りで示し、中和抗体を黒枠の白色で示し、「B」は、本発明のワクチン免疫原設計を示す。新規の免疫原は、感染増強抗体が産生されることなくワクチンのEタンパク質に対して中和抗体が産生されるために、融合ループ配列がグリカン(融合ループ距状突起に付着した三日月形で描写するの付着用のグリコシル化部位を含むように置換されているEタンパク質を含む。「C」は、Eタンパク質の融合ロープに対する感染増強抗体が、野生型フラビウイルスビリオンのEタンパク質に結合した場合、Fc-ガンマ-レセプターIIa(黒枠の白色長方形で描写する)にどのように高親和性で関与し得、Fc-ガンマレセプターIIaを担持する骨髄細胞の感染を促進するかを示す。「D」は、ワクチンの、一部の対象(例えば、免疫抑制されている)中での防御レベルの抗体反応の誘発の時折の失敗を表す。デングに対して防御されていないが、そのような免疫無防備状態の対象(本開示のワクチンで免疫付与されている)は、新規のワクチンにより少なくともデング熱に罹り難く、なぜなら、この対象は、融合ループに対する抗体反応を開始していないからである。これは、覆い隠されていない融合ループを含む従来の設計のワクチンと対照的であり得、この従来の設計のワクチンでは、対象は、中和濃度未満の融合-ループ抗体を誘発している従来のワクチンにより重度のデング感染に罹りやすい可能性がある。
図2a図2aは、デング外部ドメインタンパク質およびジカ外部ドメインタンパク質の糖操作(glycoengineered)形態の組換え発現である。HEK293細胞中でのデング構築物およびジカ構築物の発現の評価を示すクマシー染色ゲル、示されるレーンは、下記の通りである:1:pSF236トランスフェクト細胞WT、2:pCRO21トランスフェクト細胞、3:pSF237トランスフェクト細胞WT、4:pCRO22トランスフェクト細胞、5:pSF238トランスフェクト細胞WT、6:pCRO23トランスフェクト細胞、7:pSF239トランスフェクト細胞WT、8:pCRO24トランスフェクト細胞、9:pSF233トランスフェクト細胞WT、10:pCRO25トランスフェクト細胞、11:pSF236トランスフェクト細胞WT、12:pCRO21トランスフェクト細胞、13:pSF237トランスフェクト細胞WT、14:pCRO22トランスフェクト細胞、15:pSF238トランスフェクト細胞WT、16:pCRO23トランスフェクト細胞、17:pSF239トランスフェクト細胞WT、18:pCRO24トランスフェクト細胞、19:pSF233トランスフェクト細胞WT、20:pCRO25トランスフェクト細胞。レーン1~10の場合、上清濃縮物は、1ul/1.1mlであり、レーン11~20の場合、上清濃縮物Talon溶出液濃縮物は、26ul/400ulであった。
図2b図2bは、デング外部ドメインタンパク質およびジカ外部ドメインタンパク質の糖操作(glycoengineered)形態の組換え発現である。デング-1構築物およびジカ構築物のさらなる発現評価を示す抗his-タグウエスタンブロット。下記のように、レーン1~8は、細胞ペレットを示し、レーン9~16は、未加工(ろ過済)上清を示し、レーン17~24は、Ni-NTA溶出液を示す:1:pSF236細胞ペレット、2:pCRO26細胞ペレット、3:pCRO27細胞ペレット、4:pSF233細胞ペレット、5:pCRO28細胞ペレット、6:pCRO29細胞ペレット、7:pCRO30細胞ペレット、8:pCRO31細胞ペレット、9:pSF236ろ過上清、10:pCRO26ろ過上清、11:pCRO27ろ過上清、12:pSF233ろ過上清、13:pCRO28ろ過上清、14:pCRO29ろ過上清、15:pCRO30ろ過上清、16:pCRO31ろ過上清、17:pSF236 Ni-NTA溶出液、18:pCRO26 Ni-NTA溶出液、19:pCRO27 Ni-NTA溶出液、20:pSF233 NI-NTA溶出液、21:pCRO28 Ni-NTA溶出液、22:pCRO29 Ni-NTA溶出液、23:pCRO30 Ni-NTA溶出液、24:pCRO31 Ni-NTA溶出液。3つの矢印は、検出された高グリコシル化外部ドメイン形態を示す。
図2c図2cは、デング外部ドメインタンパク質およびジカ外部ドメインタンパク質の糖操作(glycoengineered)形態の組換え発現である。デング血清型1~4(D1、D2、D3およびD4)のそれぞれに関する高グリコシル化形態pCRO21、pCRO22、pCRO23、pCRO24およびジカに関するpCRO28のウエスタンブロットを示す。各対の左側のレーンは、野生型(wt)を示す一方、各対の右側のレーンは、デングまたはジカのEタンパク質外部ドメインの高グリコシル化形態を示す。+2は、2つの追加のグリコシル化部位/グリカンを示し、+1は、1つの追加のグリコシル化部位/グリカンを示す。
図2d図2dは、デング外部ドメインタンパク質およびジカ外部ドメインタンパク質の糖操作(glycoengineered)形態の組換え発現である。精製済の高グリコシル化E外部ドメインタンパク質D1、D2、D3、D4およびジカ(それぞれ配列表のプラスミドpCRO21、pCRO22、pCRO23、pCRO24およびpCRO28に対応する)のクマシーブルー染色ゲルを示す。左側のスケールは、‘000での分子量マーカーの移動位置である。
図3a図3aは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。PNGアーゼ消化前後のデング試料およびジカ試料のSDS-PAGE分析を示す。
図3b図3bは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。HPAEC-PADによる、参照標準と比較したデング-2およびジカから遊離されたグリカンの分析を示す。
図3c図3cは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。デング-2のトリプシン切断部位およびペプチド断片を示す。
図3d図3dは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。ジカのトリプシン切断部位およびペプチド断片を示す。
図3e図3eは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。ジカのエンド-Lys-C切断部位およびペプチド断片を示す。
図3f図3fは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。PNGアーゼF消化を伴うおよび伴わないデング-2のトリプシン消化を示す。
図3g図3gは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。PNGアーゼ消化を伴うおよび伴わないジカのトリプシン消化を示す。
図3h図3hは、糖操作されたデング2外部ドメインタンパク質上におよび糖操作されたジカ外部ドメインタンパク質上に存在するグリカンのキャラクタリゼーションならびに配列プログラムされたN連結グリコシル化部位の占有度である。PNGアーゼ消化を伴うおよび伴わないジカのエンド-Lys-C消化を示す。
図4図4は、直接ELISAにより測定した、マウスにおける選択糖操作デングタンパク質1、2、3および4ならびにジカの免疫原性である。x軸は、免疫付与後の日数を示し、y軸は、IgG抗体力価を示す。0日目、14日目および21日目に投与量を3回投与した。投与量を表9に示す。下記で示すように、ELISA固相上の野生型VLPとしての5種の全ての抗原に対して個々のマウスで抗体反応を測定した:上列の左側Den1 VLP抗原、上列の右側Den2 VLP抗原、中央列の左側Den3 VLP抗原、中央列の右側Den4 VLP抗原、下列の左側ジカVLP抗原。免疫原(上記のアッセイのために使用する抗原と異なる)は、白色円形で示すペンタ-DNA(本発明のDen1~4およびジカのDNAのそれぞれの組み合わせ)であり、ペンタ-Prot(本発明のDen1~4およびジカのタンパク質のそれぞれの組み合わせ)を黒色四角形で示し、一価のジカを黒色三角形で示し、ペンタVLP(本発明のDen1~4およびジカのVLPのそれぞれの組み合わせ)を黒色逆三角形で示す。PBSコントロールを白色逆三角形で示す。
図5a図5aは、融合ループ抗体による糖操作タンパク質の認識の回避および中和エピトープの保持である。本開示の高グリコシル化抗原をさらにキャラクタライズする(この抗原を野生型の等価の抗原と比較する)ために、ELISAアッセイを確立して多様な野生型外部ドメインおよび組換え外部ドメイン(図4のVLP抗原と異なる)に結合する抗体を測定した。図4で使用したELISA(抗原として野生型VLPのみを使用した)と異なり、このアッセイは、外部ドメイン型抗原(本発明の組換え野生型および組換え高グリコシル化形態「HX」)のみを使用した。これらの物質的に多様な(非グリコシル化細菌、昆虫-グリコシル化、およびヒト-グリコシル化)種のそれぞれの同一配向性を確保するために、これらの種をウサギ抗His-タグモノクローナル抗体(これらの種のC末端Hisタグを認識する)で固相に固定する。コーティングしたプレートをブロックし、「コーティング後」ステップで様々なHis-タグ付きタンパク質の一定濃度に暴露し、次いで様々な濃度(4G2に関する)においてモノクローナル抗体でプローブした。プローブ抗体に続いて、ウサギ抗マウスIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ(またはウサギ-抗ヒトIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ)コンジュゲート(必要に応じて)およびテトラメチルベンジジン基質と共にインキュベートした。マウスモノクローナル抗ヒト-CD4抗体は、マウスモノクローナル抗体のコントロールとして機能した。デング-2血清型に対して産生されたが、フラビウイルス間で高度に交差反応性であり、固相野生型デング血清型-2もしくはデング血清型-4野生型外部ドメイン抗原に結合する融合-ループ抗体4G2(x軸、ng/ml)、または融合ループ中に2つの追加のプログラムされたシークオンを含む高グリコシル化カウンターパート(抗グリコシル化外部ドメインに関して「HX」)を表す。(アスタリスクは、ELISAリーダーの読み取り能力と比べて高い吸光度値を示し)、Y軸は、450nmでの吸光度を示す。点は、2回の反復の測定の平均である。
図5b図5bは、融合ループ抗体による糖操作タンパク質の認識の回避および中和エピトープの保持である。本開示の高グリコシル化抗原をさらにキャラクタライズする(この抗原を野生型の等価の抗原と比較する)ために、ELISAアッセイを確立して多様な野生型外部ドメインおよび組換え外部ドメイン(図4のVLP抗原と異なる)に結合する抗体を測定した。図4で使用したELISA(抗原として野生型VLPのみを使用した)と異なり、このアッセイは、外部ドメイン型抗原(本発明の組換え野生型および組換え高グリコシル化形態「HX」)のみを使用した。これらの物質的に多様な(非グリコシル化細菌、昆虫-グリコシル化、およびヒト-グリコシル化)種のそれぞれの同一配向性を確保するために、これらの種をウサギ抗His-タグモノクローナル抗体(これらの種のC末端Hisタグを認識する)で固相に固定する。コーティングしたプレートをブロックし、「コーティング後」ステップで様々なHis-タグ付きタンパク質の一定濃度に暴露し、次いで一定濃度においてモノクローナル抗体でプローブした。様々なデング抗原およびジカ抗原ならびにプローブ抗体を、ヒトポリクローナル抗ジカ回復期血清サンプルを含めて試験した。プローブ抗体に続いて、ウサギ抗マウスIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ(またはウサギ-抗ヒトIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ)コンジュゲート(必要に応じて)およびテトラメチルベンジジン基質と共にインキュベートした。マウスモノクローナル抗ヒト-CD4抗体は、マウスモノクローナル抗体のコントロールとして機能した。本アッセイ設計のELISAプレート結果の写真であり、様々な外部ドメインを抗体への結合に関してスクリーニングした:例えば、一連のネズミモノクローナル抗体(左側から右側へ第1行および第2行:4G2(交差反応性融合-ループ抗体)、第3行および第4行:Aalto Bioreagents抗ジカ抗体AZ1176-0302156-Lot3889、第5行および第6行:Z48抗ジカ抗体、第7ウェルおよび第8ウェル:Z67抗ジカ抗体(これらは、Zhao et al,Cell 2016ではZV48およびZV67ジカ中和抗体と説明されており、The Native Antigen Company ZV67=MAB12125およびZV48=MAB12124から得た)、第9ウェルおよび第10ウェル:抗ヒト-CD4コントロールMillipore 024-10D6.B3 2322501;第11ウェルおよび第12ウェル:ジカヒト回復期血清)。外部ドメイン(全てがHis-6C末端タグを有する)は、下記の通り(上から下へ)であった:「Aalto昆虫」=Aalto Bioreagents,Dublin,Irelandからの、Sf9昆虫細胞により産生された野生型組換えジカ外部ドメイン;Prospecジカ=Prospec,Israelからの、細菌により産生された組換え野生型外部ドメイン;NAC WT den-2=HEK293により産生されたヒト野生型デング-2外部ドメイン(NCBI ACA48859.1の残基280~675、続いて7個または8個のアミノ酸長のグリシン-セリンリンカー、続いてHis6タグに基づく);「Excivion HX den-1(ヒト)覆い隠されている」は、融合ループにプログラムされた2つのN-グリコシル化シークオンを有する、HEK293細胞からのプラスミドpCRO21の発現産物を表す;同様に、Excivion HX den-2からden-4の場合、それぞれプラスミドpCRO22、pCRO23およびpCRO24を表す。「Excivion HX ジカヒト(覆い隠されている)」は、融合ループにプロブラムされた単一のグリコシル化を有する、HEK293細胞中で発現されたプラスミドpCRO28のタンパク質産物を表す。
図5c図5cは、融合ループ抗体による糖操作タンパク質の認識の回避および中和エピトープの保持である。本開示の高グリコシル化抗原をさらにキャラクタライズする(この抗原を野生型の等価の抗原と比較する)ために、ELISAアッセイを確立して多様な野生型外部ドメインおよび組換え外部ドメイン(図4のVLP抗原と異なる)に結合する抗体を測定した。図4で使用したELISA(抗原として野生型VLPのみを使用した)と異なり、このアッセイは、外部ドメイン型抗原(本発明の組換え野生型および組換え高グリコシル化形態「HX」)のみを使用した。これらの物質的に多様な(非グリコシル化細菌、昆虫-グリコシル化、およびヒト-グリコシル化)種のそれぞれの同一配向性を確保するために、これらの種をウサギ抗His-タグモノクローナル抗体(これらの種のC末端Hisタグを認識する)で固相に固定する。コーティングしたプレートをブロックし、「コーティング後」ステップで様々なHis-タグ付きタンパク質の一定濃度に暴露し、次いでまたは一定濃度においてモノクローナル抗体でプローブした。様々なデング抗原およびジカ抗原ならびにプローブ抗体を、ヒトポリクローナル抗ジカ回復期血清サンプルを含めて試験した。プローブ抗体に続いて、ウサギ抗マウスIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ(またはウサギ-抗ヒトIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ)コンジュゲート(必要に応じて)およびテトラメチルベンジジン基質と共にインキュベートした。マウスモノクローナル抗ヒト-CD4抗体は、マウスモノクローナル抗体のコントロールとして機能した。最大吸光度(3.0吸光度単位であった)の%値としてExcelデータバーとして表された吸光度値を示し、反復(2回の反復)の品質を示す。図5bのデータのグラフ表示であり、図5bと同一のレイアウトを有する。
図5d図5dは、融合ループ抗体による糖操作タンパク質の認識の回避および中和エピトープの保持である。本開示の高グリコシル化抗原をさらにキャラクタライズする(この抗原を野生型の等価の抗原と比較する)ために、ELISAアッセイを確立して多様な野生型外部ドメインおよび組換え外部ドメイン(図4のVLP抗原と異なる)に結合する抗体を測定した。図4で使用したELISA(抗原として野生型VLPのみを使用した)と異なり、このアッセイは、外部ドメイン型抗原(本発明の組換え野生型および組換え高グリコシル化形態「HX」)のみを使用した。これらの物質的に多様な(非グリコシル化細菌、昆虫-グリコシル化、およびヒト-グリコシル化)種のそれぞれの同一配向性を確保するために、これらの種をウサギ抗His-タグモノクローナル抗体(これらの種のC末端Hisタグを認識する)で固相に固定する。コーティングしたプレートをブロックし、「コーティング後」ステップで様々なHis-タグ付きタンパク質の一定濃度に暴露し、次いでまたは一定濃度においてモノクローナル抗体でプローブした。様々なデング抗原およびジカ抗原ならびにプローブ抗体を、ヒトポリクローナル抗ジカ回復期血清サンプルを含めて試験した。プローブ抗体に続いて、ウサギ抗マウスIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ(またはウサギ-抗ヒトIgG Fc-西洋ワサビペルオキシダーゼ)コンジュゲート(必要に応じて)およびテトラメチルベンジジン基質と共にインキュベートした。マウスモノクローナル抗ヒト-CD4抗体は、マウスモノクローナル抗体のコントロールとして機能した。図5bに示すELISAプレートをより詳細に示す。
図6図6は、糖操作タンパク質による融合-ループ抗体の産生の回避である。図4および図5で使用されるものと異なるさらなるELISAアッセイを開発して、融合ループに対する、免疫付与マウスからのポリクローナル血清中の抗体を検出した。このアッセイは、ビオチン標識付与4G2を標識として使用し、かつ未標識4G2を標準として使用する競合結合アッセイであった。上列の左側、非コンジュゲート4G2、x軸 4G2の濃度ng/mL;上列の中央、ペンタDNA、群1、42日目、x軸 血清の希釈;上列の右側 ペンタProt 群2、42日目、x軸 血清の希釈;下列の左側 モノジカ、群3 42日目、X軸 血清の希釈;下列の中央 ペンタVLP、群4 42日目、x軸 血清の希釈;下列の右側 PBS、群5 42日目、x軸 血清の希釈。何れの場合でも、y軸は、ビオチン化(Bt)-4G2結合%であった。
図7a図7aは、糖操作タンパク質(PRNT)による中和抗体の産生である。プールした血清で測定した試料群1~5についてのデングPRNT反応を示す:DENVに対する用量反応曲線、上列の左側 ペンタDNA(群1プールによるDENVの中和);上列の中央 ペンタProt(群2プールによるDENVの中和);上列の右側 モノジカ(群3プールによるDENVの中和);下列の左側 ペンタVLP(群4プールによるDENVの中和);下列の中央 PBS(群5プールによるDENVの中和)。何れの場合でも、x軸は、希釈係数であり、y軸は、中和のパーセンテージを示す。
図7b図7bは、糖操作タンパク質(PRNT)による中和抗体の産生を示すグラフである。プールした血清で測定した試料群1~5についてのPRNT反応を示す:ZIKVに対する用量反応曲線、上列の左側 ペンタDNA(群1プールによるZIKVの中和);上列の中央 ペンタProt(群2プールによるZIKVの中和);上列の右側 モノジカ(群3プールによるZIKVの中和);下列の左側 ペンタVLP(群4プールによるZIKVの中和);下列の中央 PBS(群5プールによるZIKVの中和)。何れの場合でも、x軸は、希釈係数であり、y軸は、中和のパーセンテージを示す。
図8図8は、回復期のデングおよびジカ血清と、固定されたジカ外部ドメインタンパク質およびデング野生型(WT)外部ドメインタンパク質および高グリコシル化(HX)外部ドメインタンパク質との反応である。上方のパネルは、血清インキュベーション中に10ug/mlの濃度での、競合するマウスモノクローナルフラビウイルス融合ループ抗体4G2(抗デング血清型-2交差反応性モノクローナル抗体)の存在下(灰色のバー、各対の右側)および非存在下(黒色のバー、各対の左側)での、ウサギ抗His-タグモノクローナル抗体による補足によって固相上で配向された、固定されたジカ外部ドメインタンパク質およびデング野生型(WT)外部ドメインタンパク質および高グリコシル化(HX)外部ドメインタンパク質との、デング熱回復期血清中の抗体のELISA反応性を示す。ヒト血清を1/1000の一定濃度で試験した。下方のパネルは、競合するマウスモノクローナルフラビウイルス融合ループ抗体4G2の存在下(灰色のバー)および非存在下(黒色のバー)での、固定されたジカ外部ドメインタンパク質およびデング野生型(WT)外部ドメインタンパク質および高グリコシル化(HX)外部ドメインタンパク質との、ジカ回復期血清中の抗体のELISA反応性を示す。条件および標識付けは、上方のパネルの場合と同一である。エラーバーは、2回の反復の測定の標準誤差である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の異なる態様の様々な実施形態を参照して本発明を説明する。明確にするために、別個の実施形態に関連して説明されている本発明の特定の特徴は、1つもしくは複数の実施形態または単一の実施形態で組み合わされて提供され得ることが認識される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態に関連して説明されている本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な部分的組み合わせで提供され得る。本実施形態の全ての組み合わせは、本発明に具体的に包含され、各組み合わせおよび全ての組み合わせが個々にかつ明示的に開示されたかのように本明細書で開示される。加えて、全ての部分的組み合わせも本発明に具体的に包含され、そのような各部分的組み合わせおよび全ての部分的組み合わせが個々にかつ明示的に本明細書で開示されたかのように本明細書で開示される。
【0061】
本発明は、改変フラビウイルス核酸配列および改変フラビウイルスタンパク質配列において、フラビウイルス交差反応性の感染増強抗体の産生に関連していることが知られている天然の(天然型の、野生型の)Eタンパク質融合ループエピトープが、この天然融合ループエピトープ上に通常存在しないN連結グリカンによるこのタンパク質のグリコシル化用の1つまたは複数の(例えば、2つの)グリコシル化部位を含むように改変されている、改変フラビウイルス核酸配列および改変フラビウイルスタンパク質配列を提供する。そのような改変により融合ループのアミノ酸配列が変化し、グリカンの存在によりエピトープがさらに隠れる。そのため、本発明の改変フラビウイルス核酸配列および改変フラビウイルスタンパク質配列は、フラビウイルス交差反応性の感染増強抗体が同時に産生されることなく防御的反応を生じさせるように設計されており、それにより、既存のワクチンアプローチで観察される抗体依存性の増強の問題を回避することを意図している。本発明の改変フラビウイルス核酸配列および改変フラビウイルスタンパク質配列は、特定のフラビウイルスの検出のための抗原としての診断用途または特定のフラビウイルスの検出のための抗体等の結合分子を産生するための診断用途の何れかのためにも設計されている。
【0062】
抗体は、実質的にインタクトな抗体分子、ならびにキメラ抗体、ヒト化抗体(少なくとも1つのアミノ酸が非ヒト抗体(例えば、天然に存在する非ヒト抗体、または非ヒト抗体配列から構築された抗体)と比較して変異されている)、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または抗体軽鎖のホモ二量体またはヘテロ二量体、ならびにこられの抗原結合部分および誘導体の意味を含む。この化合物がタンパク質である場合、例えば抗体またはこの断片をヒト対象に投与し、この抗体がヒト抗体またはこの断片ではない場合、この抗体をヒト化させてヒト中での免疫原性を低減させ得る。ヒト化抗体またはこの断片を作製する方法は、当技術分野で既知である。
【0063】
本発明の結合分子は、好ましくは、抗体またはこの抗原結合部分である。この抗原結合部分は、Fv断片;Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab)2断片、Fv断片もしくはscFv断片);またはドメイン抗体であり得る。この抗体の結合部分は、インタクトな抗体中に存在する線形アミノ酸配列に由来し得るが、または任意選択で他のアミノ酸が散在している非連続アミノ酸のセットを含み得るが(例えば、エピトープとの接触に必要とされる特定のアミノ酸を含み得るが)、例えば、天然抗体のフレームワークに必要なアミノ酸を含み得ず、このアミノ酸は、場合により例えば異種足場タンパク質に置き換えられ得る。当業者に公知であるように、本発明に係る抗体を、哺乳類(例えば、ヒト、サル、ウサギもしくはマウス)に免疫付与するステップを含む方法によりおよび/またはインビトロでの方法(例えば、ファージディスプレイ選択ステップを含む方法)により得ることができる。
【0064】
用語抗体は、全てのクラスの抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IdDおよびIgE)も含む。用語抗体は、任意の定義された抗体およびこの抗原結合部分のバリアント、融合体および誘導体も含む。
【0065】
中和するは、ウイルスの、これまで感染していない細胞を感染させる能力を低減することを意味する。当業者は、ウイルス中和能力をモニタリングするための適切な技術を十分に認識しているであろう。
【0066】
本明細書で説明されている配列変化を導入するための核酸配列の操作方法は、当技術分野で公知である。
【0067】
野生型配列(第1~9列)中の融合ループDRGWGNGCGLFGK(残基98~110と定義される、配列番号1)を太字で示す。第10~20列において、改変類似体HX配列中にN連結グリコシル化シークオンを作るために変更した残基を太字で示す。構築物pCRO21~24、26および28は、十分に発現し、さらなる研究のためにこれらを選択した。デングEタンパク質の場合、2つのグリコシル化部位を作るために4個の残基を変更した(pCRO21~24)。ジカEタンパク質の場合、1つのグリコシル化部位を作るために3個の残基を変更した(pCRO28)。
【0068】
構築物pCRO25、29、30および31は、選択した発現系では十分に発現せず、そのため、いくつかの状況では、本発明の組換え類似体配列は、下記の配列を含まない:
pCRO25 CKRTLVDRGNGSGCGLNGSGSLVTCAKFA(配列番号7)
pCRO29 CKRTLVDRGWGNGCGNHTKGSLVTCAKFA(配列番号8)
pCRO30 CKRTLVDRGNGSGCGLFGKGSLVTCAKFA(配列番号9)
pCRO31 CKRTLVDRGWGNGCGLNGSGSLVTCAKFA(配列番号10)。
【0069】
本発明の類似体では、N連結グリコシル化シークオン(Asn-X-Ser/Thr)は、このシークオンのAsn(N)残基が98~101位および/または106~110位の何れかを占めるように存在し得る。即ち、このN残基は、98,99、100および101から選択される位置ならびに/または106、107、108、109および110から選択される位置を占め得る。
【0070】
好ましくは、本発明の類似体では、Xは、下記の13種のアミノ酸残基Gly、His、Asn、Gln、Tyr、Val、Ala、Met、Ile、Lys、Arg、ThrまたはSerの何れかであり、GlyまたはHisが特に好ましい。デングウイルスに関して本明細書で説明されている本発明の具体的な実施形態では、Xは、Glyであることが好ましく、ジカの場合、Xは、Hisであることが好ましい。
【0071】
本発明の好ましい類似体では、このフラビウイルスEタンパク質は、デングウイルスEタンパク質であり、およびシークオンのAsn(N)残基は、類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列の101位、108位もしくは101位および108位の両方を占めるか、またはこのフラビウイルスEタンパク質は、ジカEタンパク質であり、およびシークオンのAsn(N)残基は、類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列の100位を占める。
【0072】
本発明の好ましい類似体では、このフラビウイルスは、デングウイルスであり、およびこの類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ酸配列98~110は、
から選択される。
【0073】
本発明の別の好ましい類似体では、このフラビウイルスは、ジカウイルスであり、およびこの類似体フラビウイルスEタンパク質融合ループのアミノ鎖配列98~110は、
である。
【0074】
組換え類似体Eタンパク質融合ループタンパク質をコードする核酸配列またはそのような融合ループタンパク質を含む組換え類似体Eタンパク質をコードする核酸配列は、通常、制御配列および分泌シグナル配列を含む発現ベクターへのこのDNA配列の機能的なかつ作動可能な挿入後に発現され得る。
【0075】
本発明の核酸配列の発現に適したプロモーターは、CMVである。
【0076】
本発明に従って利用され得る宿主細胞として、HEK細胞株およびCHO細胞株が挙げられる。この宿主を、ヒト様N連結グリカンを有する治療用糖タンパク質を産生するように遺伝子操作し得る。
【0077】
本発明の免疫原性組成物をアジュバントと共にまたはアジュバントなしで投与し得る。アジュバントをこの免疫原性組成物に直接添加し得るか、またはワクチンの投与と同時もしくはこの投与の直後の何れかで別々に投与し得る。そのようなアジュバントとして、アルミニウム塩(水酸化アルミニウム)、特定の刺激剤(例えば、ムラミルペプチド、サポニンアジュバント、サイトカイン、細菌毒素(例えば、コレラ毒素、百日咳毒素または大腸菌(E.coli)熱不安定性毒素)の解毒変異体)を含むかまたは含まない水中油型乳濁液製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明の免疫原性組成物を他の免疫原または免疫調節剤(例えば、免疫グロブリン、サイトカイン、リンホカインおよびケモカイン)と共に投与し得る。
【0079】
本明細書で説明されている具体的な実施形態では、使用されるアジュバントは、Alhydrogel(登録商標)であり、このAlhydrogel(登録商標)は、ヒトでの使用および獣医学的使用に許容されているアジュバントである。しかしながら、他の適切なアジュバントならびにアジュバント化(adjuvantation)戦略および製剤化戦略が抗原の核酸形態およびタンパク質形態の何れか(または両方)に利用可能であることが当業者に明らかなはずである。Alhydrogelは、最大限有効であるためにタンパク質が中性または中性付近のpH値(例えば、pH7.4)で負に帯電していることを必要とする。これは、AlhydrogelがそのようなpH条件下で正味の正電荷を有するからである。逆に、リン酸アルミニウムは、正味の負電荷を有し、ワクチン製剤に使用されるpHの生理学的条件下で正に帯電するタンパク質に概して良好である。タンパク質が中性付近の等電点を有する場合、このタンパク質は、Alhydrogelまたはリン酸アルミニウムアジュバントに十分に結合し得ず、このアジュバントの効果が制限され、他のアジュバント化戦略から利益を得るであろう。
【0080】
例えば、水中油型乳濁液またはリポソーム懸濁液をベースとするワクチンアジュバントは、近年、認可されたワクチン製品および臨床試験で相当に進歩している(Alving,Beck,Matyas,&Rao,2016)。これらのアジュバント材料は、他のアジュバント材料(例えば、QS21サポニンおよびCpGアジュバント)と共にまたはこれらのアジュバント材料なしでモノホスホリル脂質-Aの天然バージョンまたは合成バージョンの何れかを利用する。そのような戦略は、帯状疱疹に対する非常に効果的なワクチンおよび早期に認可されることが期待される有望なマラリアワクチン候補(研究から30年後)の開発を可能としている。
【0081】
他の有望な送達戦略およびアジュバント化戦略(例えば、ビロソーム)が開発されており、このビロソームは、本開示のグリコシル化外部ドメインタンパク質との使用に適し得る。同様に、開発の初期段階である有望なアジュバント材料およびアジュバント戦略(例えば、独立型のワクチン成分、コンジュゲートワクチン成分またはリポソームワクチン成分としてのCD40アゴニスト抗体)も存在する(Hatzifoti C,Bacon A,Marriott H,Laing P,Heath AW(2008)Liposomal Co-Entrapment of CD40mAb Induces Enhanced IgG Responses against Bacterial Polysaccharide and Protein.PLOS ONE 3(6):e2368)。本発明の組成物を例えばリポソーム製剤によるタンパク質ワクチンおよびDNAワクチンの投与のための共送達戦略で使用し得る(Laing et al.,2006)。
【0082】
本発明の実施では、別途示さない限り、当技術分野の技術の範囲内である分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の技術が利用される。そのような技術は、文献で詳細に説明されている。例えば、Sambrook,Fritsch,and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait Ed.,1984)、Animal Cell Culture(R.I.Freshhey,Ed.,1987)、シリーズMethods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos eds.1987)、Handbook of Experimental Immunology,(D.M.Weir and C.C.Blackwell,Eds.)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,R.Brent,R.E.Kingston,D.D.Moore,J.G.Siedman,J.A.Smith,and K.Struhl,eds.,1987)、およびCurrent Protocols in Immunology(J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)を参照されたい。本明細書の上記および下記で言及される全ての特許、特許出願および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
アミノ酸残基に関して、標準的な3文字用語および1文字用語を使用する。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「組換え」は、類似体または結合分子(例えば、本発明の抗体または抗体断片)を産生するための遺伝子操作方法(クローニング、増幅)の使用を意味する。
【0085】
デングワクチン開発の主な問題(ワクチンの使用により、デング感染の「抗体依存性増強」が引き起こされるという(有限の数の場合での)リスクがある)により、病気が予防されるよりもむしろ病気が悪化する。本出願は、非常に広範にはフラビウイルスワクチンに関し、なぜなら、このフラビウイルスワクチンは、このファミリのウイルスのエンベロープタンパク質「E」の高度に保存された配列に適用されるからである。増強は、自然感染の特徴(このウイルスを中和するために送られた抗体が破壊されてヒト骨髄細胞へのアクセスを獲得する)であり、通常、ウイルスの別の「血清型」との遭遇時により重度の症状を引き起こす(Halstead,Rojanasuphot,&Sangkawibha,1983)。ワクチン接種は、大部分が防御を付与するが、野生デングウイルスへの最初の暴露時にレシピエントが重度のデング熱(例えば、デング出血熱(DHF))に罹りやすい場合もある(即ち、このワクチンの場合でなければ発生していないはずの重度のデング熱またはDHFの「医原性」症例)。さらに、既存のワクチンアプローチは、このワクチン(またはワクチンコース)を投与した後にある間隔を置いて(例えば、10年)、重度の医原性デング熱を発症するワクチン接種個体の集団ができる可能性も有する。これは、デングに対する免疫が衰えるにつれて、防御抗体が感染を予防するよりもむしろ「増強する」濃度に達するからである。同様に、「免疫学的記憶」(免疫系が野生ウイルスまたはワクチン用量との遭遇を思い出す)の減衰速度は、ワクチンの4種の血清型に関して同期しておらず、その結果、デングの(抗体および記録のレベルでの)各血清型に対する免疫性が異なる時点で失われ、重度の疾患のリスクが連続的に増加する。同様に、この免疫記憶の漸進的な欠如により、以前のワクチン接種の結果として、防御されているのではなく(感染した蚊に刺された場合に)重度のデング熱に現在罹りやすくなる個体の新たな集団ができる。解決策は、現在存在する様々なワクチンフォーマット(生ベクター、DNAワクチン、経口ワクチン、サブユニットワクチン、ウイルス様粒子等)のいくつかへの組込みを受けやすい方法で、効力を保持しつつ「抗体依存性増強」を生じる傾向がゼロまたは最小のワクチンを作製することである。本出願の発明は、感染を促進する抗体を産生しない新規の免疫原を作製することにより、デングワクチンおよび/またはジカワクチンによる疾患のワクチン誘発性増強の症例を回避する。これは、感染増強抗体の産生に特に関連するデングウイルスおよびジカウイルスの組換え発現Eタンパク質の特定の部位への1つまたは複数の追加のグリコシル化部位(例えば、N連結グリコシル化部位)の導入により達成され、それにより、そのような部位が覆い隠され、ワクチン接種後の抗体の産生が防止される。
【0086】
デングに対する現在のワクチン(認可済および開発中)は、公衆衛生に実質的に「正味」の利益を一方でもたらし得るが、ワクチン誘発性のデング熱(即ち医原的に引き起こされる重度のデング熱)の症例を回避するために安全性の改善が依然として望ましい。ジカ感染のパンデミックへの道を開く上での自然界でのデング感染の可能性のある役割が、Sabin Vaccine InstituteのPhilip K Russell(Russell,2016)により近年詳述されている。ジカウイルス感染に罹りやすくするデングワクチン接種のリスクまたは重症度が高いジカ感染を引き起こすデングワクチン接種のリスクを決定することになる体系的調査は行われていないが、そのような症例を予想することは、Russellの観察の論理的延長である。同様に、重度のデング熱に対するデングワクチン誘発性の傾向は、依然として報告されていないかまたはそれ自体調査されていないが、Sanofi-Pasteurワクチンの最近3年間のフォローアップ研究では、重度のデング熱に対する感受性のワクチン誘発性増強により説明され得る9歳未満の子供での入院率の増加が見られた(Hadinegoro et al.,2015)。これらの新たな疫学的進展および実験室データ(下記)は、(増強を避けるように設計さいれていない限り)ワクチンが場合により疾患の増強を引き起こすであろう有意なリスクが存在する(即ち、デングワクチン接種は、このデングワクチン接種がなければ起こらなかったはずの重度のデング熱の症例をもたらす)ことを示す。全人口ベースで使用される場合、デングワクチンがジカウイルス感染の蔓延を促進する可能性もある。この懸念の妥当性は、デングウイルス抗体がジカウイルスによるヒト骨髄細胞の感染を増強することを実証するインビトロでの実験データによりさらに支持される(Paul et al.,2016)。さらに、独立型のジカワクチンは、デングウイルスと交差反応する抗ジカ抗体が産生されることにより重度の医原性デング熱の症例を生じるデング感染を(逆に)増強することになり、かつデング感染を促進する同様の抗体を生じる可能性があることになる。本出願の目的のために、任意の特定の仮説に拘束されることを望まないが、ジカウイルスに「第5のデング血清型」の地位を付与する。これは、デング感染(およびデングワクチン)が、ジカウイルスとも反応して体細胞のジカウイルス感染を促進する感染増強抗体の産生によりジカの蔓延を促進する可能性を有するからである。新規の免疫原に加えて、本開示は、これらのワクチンを、デングの4種の血清型およびジカウイルスを表す五価のワクチンの形態でワクチン接種の単回用量または経過において組み合わせることにより、ワクチンが(感染した蚊に刺された場合に)デング感染またはジカ感染を増強するあらゆる傾向を最小限に抑えるさらなる安全性の特徴を有する。
【0087】
本発明は、フラビウイルス感染を予防するためのワクチンに関し、特にデング感染およびジカ感染を予防するためのワクチンに関する。パンデミック事象としてのジカの出現から、ジカの迅速で世界規模の蔓延は、デング感染により明らかに促進されており(Russell,2016)、ワクチン接種の問題(即ち、場合により疾患を悪化させないワクチンをどのように作製するか)がより複雑になってきている。相同的な増強(この増強により、デングワクチンが場合によりデング感染を促進することになる)および交差増強(この増強により、デングワクチンが場合によりジカ感染を促進することになる)を回避するために新規のワクチン設計が必要とされており、さらに、交差増強により、ジカワクチンが場合によりデング感染を促進することになる。単一ワクチン(Sanofi-Pasteur)中でデングの4種の全ての血清型を組み合わせるような戦略を伴う、抗体増強問題に対する従来のアプローチ、または例えばデングのEタンパク質のN末端領域を使用するサブユニットアプローチ(Merck)は、抗体増強問題を認識しているが、ジカのパンデミック状況に適した包括的な解決策を提供していない。最も進歩したデングワクチン(認可されたSanofi-Pasteur生弱毒化四価デングワクチン)は、ジカに対処することができず、上記の疫学的なおよびインビトロでの観察から、(集団免疫によってコミュニティ全体で純便益を有していても)交差増強によりジカウイルス感染の症例を促進し得る場合がある。
【0088】
エピトープを増強することと、フラビウイルスの防御エピトープを増強することとの間の区別は、特徴において「二元」でないことを認識することが重要である。一般的に言うと、ほとんど全ての抗デングE抗体は、(例えば)中和および感染増強の両方の可能性を有し、後者の特性は、例えば、ワクチンに対する免疫力または暴露の低下に伴って低い抗体濃度で出現する(Dejnirattisai et al.,2014)。さらに、Dejnirattisaiらは、デングEタンパク質の融合ループに対する抗体(回復期に産生された全ての抗体の約半分を構成する)は、感染の抗体依存性増強の傾向に関して、Eタンパク質上の他の部位に対する抗体と比べて著しく悪いことも見出した。
【0089】
本開示は、感染増強抗体を誘発または刺激する能力が低下している免疫原を提供することにより、抗体依存性増強および交差増強の問題に対処するワクチンを提供する。感染増強抗体が産生されないことを確実にするために、本開示は、組換えにより発現されるEタンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列への追加の新規のグリコシル化部位の操作により融合ループに植え付けられた追加のグリカンを有するEタンパク質を使用する。グリカンの「覆い隠す」効果により、中和抗体を産生するためにより良好に位置する他の部位が保存されつつ、融合ループ部位に対して抗体が産生されることが防止される。このようにして、(例えば、宿主糖タンパク質のものと実質的に同一なグリカン構造を有するタンパク質表面の大部分が覆われるHIVの場合には)中和抗体の産生を妨げると通常考えられているグリカンを有利な効果で使用し、即ち、本開示では、マスクされなければ問題のある抗体反応(この場合には感染増強抗体)を生じることになるワクチン免疫原上の部位をマスクするために使用する。
【0090】
デングの場合、4種のワクチン抗原が必要とされ、即ち、抗体依存性増強に関与するエピトープをマスクするために糖操作により適切に改変された4種の血清型のEタンパク質が必要とされる。しかしながら、感染またはワクチン接種の結果としてのデングウイルス感染およびジカウイルス感染の相互の交差増強のリスクのために、ジカ成分も望ましいことが明らかであり、即ち、デングの4種の血清型「および」ジカをカバーする「五価」ワクチンが望ましいことが明らかである。
【0091】
幸いなことに、本ワクチンの設計の観点からすると、ジカウイルスのEタンパク質は、そのアミノ酸配列および三次元構造に関してデングウイルスのEタンパク質のものと高度に相同である。ジカビリオンEタンパク質の近年の低温EM3.8オングストローム構造は、ジカEタンパク質融合ループ位置を(類似性により)明確に同定する(Kostyuchenko et al.,2016;Sirohi et al.,2016)。実際には、Sirohiらは、融合ループ配列「DRGWGNGCGLFGK」(残基98~110)に関する多様なフラビウイルス間の顕著な相同性の程度を分類しており、この融合ループ配列は、ジカの多様なウイルス単離株、4種のデング血清型、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルスおよび黄熱病ウイルス間で完全に保存されている(Sirohiの補足図S2を参照されたい)。
【0092】
デングEタンパク質とジカEタンパク質との間に顕著な相違(例えば、ジカEタンパク質中での5個のアミノ酸挿入物、およびジカは、1つの単量体当たり2つではなくむしろ単一のN連結グリカンを有するという事実)が存在するが、これらの相違は、本ワクチン設計を強度に許容する。本開示では、ジカウイルスのEタンパク質融合ループは、感染の同種および異種の増強が可能な感染増強抗体により特に認識される部位(即ち、部位において、感染またはワクチン接種中にこの部位に対する抗体産生が望ましくない部位)であろうことが予想される。
【0093】
部位特異的変異誘発によるタンパク質中への追加のグリコシル化部位の導入の方法は、当技術分野で公知である。特に、天然ホルモンエリスロポエチンの改変形態であるAranesp(ダルベポエチンアルファ)の作製は、良い例である(Elliott(「欧州特許出願公開第0640619A1号明細書」、2010)、(Elliott et al.,2003)。新生ポリペプチド鎖を宿主細胞の小胞体に導き、グリコシル化を可能にし、タンパク質の折り畳みを容易にするために、タンパク質のリーダー配列が組換えプラスミドまたは他のベクターDNA配列に確実に組み込まれるように適切な遺伝子構築物を作製することが重要である。様々な真核細胞系が組換え産生に適しており、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)および酵母(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))および他のベクター系(例えば、バキュロウイルス(フラビウイルスの接種形態のようにウイルスタンパク質免疫原に昆虫グリカンを装備させるというさらなる利点を有する))が組換え産生に適している。しかしながら、原核生物系(例えば、大腸菌(E.coli)をベースとするもの)は適切ではなく、なぜなら、原核生物系は、タンパク質のグリコシル化を引き起こすのに必要な細胞装置を有していないからである。
【0094】
Aranespの場合、この分子は、糖操作された分子とエリスロポエチンレセプターとの相互作用の妨害を回避するように戦略的に配置された2つの追加のN連結グリコシル化部位を有する。このようにして初期のエリスロポエチンベースの生成物を糖操作する目的は、分子のサイズを増大させることにより循環中のこの分子の寿命を改善し、1週間に3回の代わりに1回で投与し得る生成物を生じさせることであった(Elliott et al.,2003)。糖操作は、この糖操作がなければ感染の抗体依存性増強という有害な結果を有することになるワクチン免疫原上の部位を覆い隠すために本開示で「再度提案される」。
【0095】
ウイルスは、中和抗体の産生を妨げるグリカンの免疫回避特性を利用することが実証されている。(例えば、HIV糖タンパク質gp160/120に対する)ワクチン開発の分野では、グリカンは、概して(ワクチン開発への援助ではなくむしろ)問題と見なされており(宿主グリカンで構成される高密度の多糖外被を形成することにより糖タンパク質抗原のタンパク質表面への抗体のアクセスを制限する)、宿主の免疫系は、この問題に対して免疫学的に寛容であるようにプログラムされている。このルールの一般性を証明する下記の注目すべき例外が存在する:例えば、グリカン自体またはマイナーなバリアントが標的またはその一部である場合(これは、希な抗HIV中和抗体の場合である);およびアルボウイルス上の昆虫特異的グリカンエピトープの場合、グリカン自体が一部のワクチン設計の標的である(Dalziel,Crispin,Scanlan,Zitzmann,&Dwek,2014)。本開示は、ワクチン免疫原における有利な効果のためのグリカンのステルス特性の利用において先行技術と異なる。新規な本出願では、グリカンを使用してワクチン免疫原上の厄介な部位を覆い隠し、天然ビリオン上の等価の覆い隠されていない部位を認識するはずである抗体が産生されることを防止する。糖操作(アミノ酸配列エレメントの欠失またはトランケーションと異なる)により、この覆い隠すことは、抗原のタンパク質部分の下部構造との干渉を最小限に抑えつつ達成され得る。欠失またはトランケーションではなくむしろ糖操作を用いることによるタンパク質構造の保存は、この保存がなければ有害な効果に変わる可能性がある遠隔の中和エピトープを保護する。
【0096】
本開示の糖操作フラビウイルスEタンパク質は、ワクチン接種の目的のために様々な形態に組み込まれ易い。これらの形態は、特徴がタンパク質(即ち糖タンパク質)または核酸であり得る。これらの形態は、精製済タンパク質の混合物として(例えば、アジュバントとしての水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムを含むサブユニットワクチンとして)、ウイルス様粒子として(Frietze,Peabody,&Chackerian,2016)、またはサブユニットを使用するDNAワクチンとしての投与(Tregoning&Kinnear,2014)もしくは黄熱病ウイルスのYFD株に関して例示されるような感染性弱毒化クローンアプローチ(Tretyakova et al.,2014)のために哺乳類が発現可能なDNA構築物(例えば、サイトメガロウイルスプロモーターを有するプラスミドDNA)としてワクチン製剤で表され得る。これらの形態はまた、Themis Bioscience GmbH(Ramsauer et al.,2015)によるChikungunyaワクチン候補のように、麻疹ベクターワクチン等の生弱毒化ウイルスベクターに組み込まれ易い。同様に、本開示の糖操作フラビウイルスEタンパク質は、同一の免疫原の哺乳類が発現可能なDNAおよびタンパク質の表現が、単離で使用されるタンパク質またはDNA免疫原と比較して抗体反応の劇的な改善をもたらす同一粒子(例えば、リポソーム)中で共製剤化される「共送達」等の先進的なアジュバント戦略の適切な候補のはずである(Laing et al.,2006)。
【0097】
本糖操作アプローチは、Eタンパク質の核酸配列中の複数の塩基位置で規定の変化を含むことから、本開示の生弱毒化ワクチンは野生型への変異による復帰(これは、生弱毒化アプローチでの既知の問題(例えば、この理由のために米国で非生存Salkバージョンに置き換えられたSabinポリオワクチン)である)に対する高レベルの耐性を有し、即ち、本開示の生弱毒化ワクチンは、より安全であり、野生型への復帰または増加した病原性へのデノボ変異により疾患の症例が生じる可能性がより低い(Hanley,2011)。Hanleyの推論から、および本開示を前提として、ウイルスタンパク質へのさらなるグリコシル化部位の導入(即ち感染増強エピトープを覆い隠すことを達成するのに必要とされるよりも多くの導入)は、生弱毒化ウイルスワクチン中での有害な変異を防ぐための、および蚊のベクター伝播により可能な病原性の増加への進化を可能にする「蚊の能力」(それにより生弱毒化フラビウイルスワクチンが蔓延する可能性がある)を防ぐための実行可能な戦略であることが現在では明白である。そのような追加のグリコシル化部位は、フラビウイルスEタンパク質の非中和部位に位置するのが最良である。
【0098】
本開示のフラビウイルスサブユニットワクチン(生ベクターアプローチと異なる)の場合、別の追加のグリカンに好ましい部位は、ビリオンの下部Mタンパク質とのEの接触面を構成する配列エレメントを含むはずである。これらの高度に可溶性の高グリコシル化Eタンパク質は、抗原特異的B細胞の一価の結合を可能にし、抗原特異的B細胞のクローン選択および体細胞変異中に抗原に関するより大きい競合を引き起こすことにより、より高い親和性の中和抗体を好む。
【0099】
本発明を下記の条項によりさらに説明する:
1.天然配列中に存在しないグリコシル化のため用の部位を含むアミノ酸配列を含む、フラビウイルスEタンパク質の類似体
2.グリコシル化部位は、N連結グリカンのためのものである、第1項に記載の類似体
3.グリコシル化部位は、O連結グリカンのためのものである、第1項に記載の類似体
4.その類似体に付着された少なくとも1つの追加のグリカンを有する、第1項に記載の類似体
5.グリカンは、N連結グリカンである、第4項に記載の類似体
6.グリカンは、O連結グリカンである、第4項に記載の類似体
7.組換えDNA配列の発現産物である、第1~6項の何れか1項に記載の類似体
8.N連結グリコシル化シークオン(Asn-X-Ser/Thr)は、置換されており、それにより、シークオンのAsn(N)残基は、フラビウイルスEタンパク質のアミノ酸配列の下記の残基DRGWGNGCGLFGKの何れかである98~110位の何れかを占め、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸残基であり、およびSer/Thrは、セリン残基またはトレオニン残基を示す、第2項に記載の類似体
9.N連結グリコシル化シークオン(Asn-X-Ser/Thr)は、置換されており、それにより、シークオンのAsn(N)残基は、98~101位または106~110位の何れかを占める、第2項に記載の類似体
10.Xは、下記の13種のアミノ酸残基Asn、Gln、Tyr、Val、Ala、Met、Ile、Lys、Gly、Arg、Thr、HisまたはSerの何れかである、第8項に記載の類似体
11.置換シークオンは、NTTであり、T(Thr)は、シークオンの「X」位で明示的に置換されており、およびシークオンの任意選択のSer/Thrエレメントは、Tである、第8項に記載の類似体
12.置換配列は、N連結グリコシル化シークオンの一部(X)として天然システイン残基(C)を利用するDRGWGNNCTLFGK(配列番号11)を示す、第8項に記載の類似体
13.置換配列は、N連結グリコシル化シークオンの一部として天然システイン残基(C)を利用し、かつ第11項のトレオニンシークオン残基の代わりにセリン残基を有するDRGWGNNCSLFGK(配列番号12)を示す、第8項に記載の類似体
14.第1~13項の何れか1項に記載のフラビウイルスEタンパク質の類似体をコードする、DNA配列
15.哺乳類の発現可能なプロモーターを有する第1~13項の何れか1項に記載のフラビウイルスEタンパク質の類似体をコードする、プラスミドまたは線形DNAをベースとするワクチン免疫原
16.真核宿主細胞であって、前記フラビウイルスEタンパク質の類似体を発現することを可能にする方法で第1項に記載のDNA配列でトランスフェクトされている、真核宿主細胞
17.第1~16項の何れか1項に記載のフラビウイルスEタンパク質類似体の治療上有効な量を薬学的に許容される希釈剤、アジュバントまたは担体と一緒に含むワクチン組成物
18.4種のデング血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3およびDEN-4を表す4種のデングEタンパク質の治療上有効な量を含む、第17項に記載のワクチン組成物
19.ジカウイルスEタンパク質の治療上有効な量を含む、第17項に記載のワクチン組成物
20.ジカウイルスEタンパク質の治療上有効な量をさらに含む、第18項に記載のワクチン組成物。
【実施例
【0100】
実施例1 感染増強抗体の誘発または刺激を回避するように設計されている新規のワクチン免疫原の設計
図1「A」は、4種のデング血清型DEN-1、DEN-2、DEN-3およびDEN-4を含む、当技術分野で既知の生弱毒化ワクチン等のフラビウイルスワクチンによるワクチン接種の効果を示す。このワクチンにより、ウイルス中和が可能な抗体と感染の抗体依存性増強が可能な他の抗体との混合物が産生される。ウイルス中和が可能な抗体として、ビリオンEタンパク質のレセプター相互作用表面(即ちDCSIGNレクチン/レセプターに結合する表面)上の部位を認識するものが挙げられる。(説明を簡単にするためにDCSIGNレセプターのみを示しており、通常、デングおよびフラビウイルスの他のレセプターが存在することに留意されたい)。「C」は、このEタンパク質の融合ループに対する感染増強抗体が、このビリオンのEタンパク質に結合した場合、Fc-ガンマ-レセプター-IIaにどのように高親和性で関与し得、骨髄細胞の感染を促進するかを示す。この現象では、いくつかのタイプのFc-ガンマレセプター(通常、骨髄細胞およびB細胞に対して抑制性である低親和性レセプターFc-ガンマ-レセプター-IIbさえも(逆説的に)含む)が関与している(Bournazos S,Signaling by Antibodies...Ann.Rev.Immunol 2017,35:285-311)。生弱毒化ワクチン(当技術分野で既知のワクチンの一例)によるワクチン接種の結果は、抗体の2つの対立集団(デングビリオンを中和する1つのセットおよび感染増強が可能であるさらなるセット)の正味の効果である。ワクチン接種のほとんどの対象では、中和抗体は、感染増強抗体の影響を克服し、その結果、ワクチン接種の正味の効果は、4種のデング血清型に対する防御である。しかしながら、4種の血清型に対して釣り合いがとれた反応を開始しない対象または例えば麻疹もしくはHIV感染に起因して免疫抑制されている対象では、フラビウイルス感染増強抗体が優性であり、そのような対象を、デングによる重度の感染に対する防御よりもむしろデングによる重度の感染に罹りやすくし、かつ他のフラビウイルスにより感染しやすくする。さらに、一部の健康な(免疫抑制されていない)デングワクチン接種済対象での感染増強抗体は、ジカウイルスと交差反応する。これらのデング免疫付与済対象は、ジカ感染した蚊に最初に刺された際に現在はジカ感染に罹りやすい「C」。逆に、「B」は、本発明に従って設計されたワクチン免疫原を示す。Eタンパク質を含む新規の免疫原において、融合ループ配列が改変されておりかつ感染増強抗体を産生することなくこのワクチンのEタンパク質に対して中和抗体を産生することを目的としてグリカンで置換されるように設計されている新規の免疫原。「D」は、本発明のワクチンの一部の対象(例えば、免疫抑制されいてる)中での防御レベルの抗体反応の誘発の時折の失敗を表すが、当技術分野で既知の他のワクチン設計と異なり、本発明のワクチンは、免疫抑制対象をデングウイルスまたはジカウイルスによる感染の増強に対して感受性にしないように設計されている。それにより、本設計の免疫原およびワクチンは、個々の対象基準でより安全であるように設計されており、さらに、中和抗体の非存在下でジカ感染増強抗体を有する対象の集団を作ることによりジカの流行的蔓延を促進する可能性を欠くように設計されている。(WT=野生型)。
【0101】
実施例2(図2) デング外部ドメインタンパク質およびジカ外部ドメインタンパク質の糖操作(高グリコシル化)形態の組換え発現
4種のデング血清型およびジカを代表する天然野生型(WT)外部ドメイン配列の様々な新規の組換え形態をコードし、かつ大腸菌(E.coli)複製起点およびサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターならびにヘキサヒスチジンC末端タグを含むプラスミド挿入物をデノボ遺伝子合成により作製した(Thermofisher,GeneArt)。2つのグリコシル化シークオンをこのDNA配列に挿入する場合、望ましくない相同組換え事象を許容し得る直接DNA配列反復の生成を回避するために、この配列を「手動」で変更した。
【0102】
DENV1、DENV2、DENV3、DENV4およびZIKVのエンベロープタンパク質の変異外部ドメインをそれぞれコードするプラスミド発現ベクターpCRO21(配列番号13)、pCRO22(配列番号14)、pCRO23(配列番号15)、pCRO24(配列番号16)およびpCRO28(配列番号17)を最終的に選択し、下記のようにThe Native Antigen Company,Oxfordが作製した:発現カセットを、分泌シグナルとして作用するインフルエンザ-Aウイルス赤血球凝集素タンパク質の最初の17個のアミノ酸のコード配列が続くコンセンサスKozak配列が続く5’NotI部位を含むようにデノボで合成した。使用したエンベロープタンパク質コード配列(このポリタンパク質に対するナンバリング)は、それぞれ280-675(NCBI ACA48859.1)、281-676(NCBI ADK37484.1)、281-673(NCBI AIH13925.1)、280-675(NCBI ANK35835.1)および291-696(NCBI ARB07957.1)であった。[他の箇所では、参照を容易にするために、ナンバリングを、融合ループの101でのWを参照点として、Eタンパク質の残基番号に従って表す]。各構築物は、6×His-タグおよび終止コドンが続く7~8個のアミノ酸長のグリシン-セリンリンカーのコード配列を含んだ。各発現カセットでは、この終止コドン後にNheI部位が続く。哺乳類発現ベクターpSF-CMV(Oxford Genetics,Oxford)をNotIおよびNheIで消化し、4.2kb断片を、維持ベクター(maintenance vector)(pUC57)を有する発現カセットの1.3kbのNotIおよびNheI断片に連結した。それぞれの場合、一般式(NXS/T)の1つまたは2つの追加のシークオンを、機能性N連結グリコシル化部位を(理論的に)コードし得るEタンパク質外部ドメインの融合ループに導入した。野生型デングタンパク質は、2つのグリコシル化部位を天然で既に有し、ジカでは1つである。融合ループ中に天然グリカンは見出されない。
【0103】
小規模調製の場合、3e6/mlでのHEK293FT細胞の15mlアリコートにpCRO21、pCRO22、pCRO23、pCRO24またはpCRO25(配列番号18)を個々にトランスフェクトし、4種のコントロールトランスフェクションを、pSF233、pSF236、pSF237、pSF238またはpSF239を使用して実施した。1日後、各トランスフェクションにレスキュー培地15mlを添加した。トランスフェクションから3日後、10種のトランスフェクションのそれぞれを下記と同じ方法で処理した:懸濁液30mlを7分にわたり4,000gで回転させた。得られた上清を、0.22umディスクフィルタを使用してろ過した。ペレットをPBS 1mlに再懸濁させた。次いで、ろ過した上清を、製造業者の指示に従ってVivaspin20(30,000Daカットオフ)を使用して濃縮した。濃縮物体積は、0.6ml~1.2mlの範囲であった。全ての濃縮物をPBSで1.2mlにした。濃縮した上清を、Talon HiTrap Spin(GE)を使用して製造業者の指示に従ってTalon精製にかけた。Talon補足用の緩衝液は、下記であった:平衡緩衝液:50mMのリン酸塩pH7.8、300mMのNaCl;洗浄緩衝液:50mMのリン酸塩pH78、300mMのNaCl、5mMのイミダゾール;溶出緩衝液:50mMのリン酸塩pH7.8、300mMのNaCl、150mMのイミダゾール。
【0104】
SDS電気泳動ゲルのクマシーブルー染色(図2a、図2d)およびウエスタンブロット(図2b、図2c)による、得られたタンパク質のキャラクタリゼーションを図2に示す。
【0105】
図2cは、高グリコシル化タンパク質が分泌される、選択した構築物pCRO21(D1)、pCRO22(D2)、pCRO23(D3)、pCRO24(D4)(それぞれデング血清型1~4に関する)およびジカに関するpCRO28の抗His-タグモノクローナル抗体によるウエスタンブロットを示す。グリコシル化に起因する分子量増加は、明らかであり(+2グリカンデング構築物の場合、ジカ+1グリカン構築物の場合と比べて高い)、これは、発現可能なタンパク質として選択理論的に設計された構築物の実際の達成を実証する。野生型の形態を各対の左側に示す。
【0106】
図2dは、コバルトキレートを使用するコバルトキレート(TALON)クロマトグラフィー後の、4種のデングウイルス株D1、D2、D3、D4およびジカに由来する高グリコシル化Eタンパク質外部ドメインである精製済タンパク質のクマシーブルー染色ゲルを示す。高グリコシル化外部ドメインD1、D2、D3、D4およびジカは、それぞれプラスミドpCRO21、pCRO22、pCRO23、pCRO24およびpCRO28に対応する。
【0107】
スケールアップ産生の場合、pCRO21をベースとするデング-1高グリコシル化構築物に関して下記の通り説明するように、新規の高グリコシル化タンパク質を、線形ポリエレンイミン(PEI)による一過性のトランスフェクションによりヒト胚腎臓細胞(HEK293)中で組換え発現させ、コバルトキレート(TALON(登録商標)、Clontech/GE)による金属キレートアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。20×1LのHEK293細胞をDENV1_Eexo_2xglyco発現ベクターpCRO21でトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、遠心分離により上清を回収し、清澄化された上清を0.2umろ過し、接線流ろ過(TFF)により約200mlまで濃縮した。固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)を、20mMのリン酸ナトリウムpH7.8をベースとする緩衝系を使用し、製造業者の指示に従って5ml HiTRAP Talonプレパックカラム(GE)を使用してTFF保持液に対して実施した。DENV1_Eexo_2xglycoタンパク質含有画分をプールし、20mMのTRIS-HCl pH7.8 10mMのNaClに対して透析した。製造業者の指示に従って、予め充填した5ml HiTrap Q HPカラムを使用してイオン交換クロマトグラフィーを実施した。DENV1_Eexo_2xglycoをプールし、DPBS pH7.4に対して透析した。透析した溶液を0.22umろ過し、無菌条件下でガラス瓶に入れて保存した。BCAアッセイおよびSDS-PAGEを製造業者の指示に従って実施した(Bio-Rad)。
【0108】
高グリコシル化構築物の3種は、野生型と比べてはるかに高いレベルで発現することに留意されたい(これらは、プラスミドpCRO22、pCRO23およびpCRO24に対応する高グリコシル化デング血清型2、3および4である)。ジカプラスミドpCRO25は検出可能な分泌タンパク質を生じなかった(図2a、レーン20)が、有意な量の細胞関連タンパク質を見出した(示さない)。
【0109】
従って、デング-1およびジカの高グリコシル化形態の発現レベルを改善しようとするさらなるラウンドの構築物を作製した(図2bを参照されたい)。この場合、ニッケルキレートクロマトグラフィーを精製に使用した。デングのさらなる構築物(pCRO26(配列番号19)およびpCRO27(配列番号20))ならびにジカのさらなる構築物(pCRO28(配列番号17)、pCRO29(配列番号21)、pCRO30(配列番号22)およびpCRO31(配列番号23))を発現させて精製した。抗His-タグウエスタンブロット(図2c)およびクマシー染色(図2d)により、プラスミド構築物pCRO28の有利な発現が示された。
【0110】
選択した高グリコシル化形態は、pCRO21、pCRO22、pCRO23、pCRO24(それぞれデング血清型1~4に関する)およびジカに関するpCRO28であった。高グリコシル化外部ドメインD1、D2、D3、D4およびジカは、それぞれプラスミドpCRO21、pCRO22、pCRO23、pCRO24およびpCRO28(それぞれ配列番号24、25、26、27および28)に対応する。グリコシル化に起因する分子量増加は、明らかであり、+2デング構築物の場合、ジカ+1構築物の場合と比べて高い。
【0111】
11種の全てのプラスミド構築物を作製してタンパク質発現に関して試験し、野生型と比較して同等のまたは(ほとんどの場合には)優れたレベルの発現に基づいて5種をさらなる研究のために選択した(デングの4種の血清型を表すpCRO21、pCRO22、pCRO23、pCRO24およびジカを表すpCRO28)。
【0112】
驚くべきことに、デングの場合、融合ループ(3次元空間においてEタンパク質の遠位端で密接に並ぶEタンパク質の先端で露出した残基W、FおよびLを特徴とする)の極端な疎水性を考慮すると、4種の全ての代表的な血清型は、発現レベルにペナルティを課すことなく、2つのグリカンの置換(親水性であり、タンパク質のこの部分のトポグラフィをアミノ酸置換が全く起こり得ない程度まで急激に変える)に耐容性を示す(即ち全てが野生型配列と同様に発現し、場合により著しく良好である)。プロテアソーム分解のためのERADチャネルを介して小胞体から根絶されているはずであるタンパク質が誤って折り畳まれないことを確実にするために、発現レベルが「野生型よりも低くない」ことを目標に設定した。融合ループ中に単一のグリカンを有するデング血清型-1配列の例も作製したが、この例は、野生型または2つのグリカンを有する種と比べて少しも良好に発現しなかった。ジカの場合、融合ループに2つのグリコシル化部位を有するバリアントを作製する試み(デングに関して確立された方法に従う)は、成功せず、野生型の場合と比べて組換えタンパク質の培養培地への分泌が少なかった。
【0113】
従って、ジカEタンパク質外部ドメインの場合、本発明者らは、融合ループ中の様々な位置で単一のグリカンを有するバリアントの産生を調査した。デングシークオンの1つに関して、アスパラギンによるトリプトファン(W101)の置換(Wの代わりに101でのシークオンのN)により、この構築物の発現レベルが野生型の場合と比べて低くなった。同様に、F108でのグリカンの挿入(即ちFの代わりに108でのシークオンのN)により、この構築物の発現レベルが野生型の場合と比べて低くなった。本発明者らは、ジカ融合ループがグリカン挿入に対する許容性が低いと結論付け、グリカン挿入を可能にするより保守的な方法を求めた。
【0114】
ジカの場合、融合ループのW101も後続のFもN連結グリコシル化シークオンのNで置き換えられ得なかったことが確立されていることから、代替戦略を開発し、この戦略は、デングのために用いられるアプローチをモデルにしなかった。本発明者らは、(3D構造PDB 5IREに基づいて)融合ループの終わりの可能な限り近くに単一のグリカンを配置しようとした。グリカンの挿入を可能にする可能性がある数百もの可能なバリアントを体系的に作製して試験するプロセスを経るよりもむしろ(遺伝子合成またはライブラリ技術により困難であった可能性がある)、本発明者らは、仮想上の解決策を考案して試験した。本発明者らは、N連結グリコシル化シークオンにより融合ループの頂点でWをまたがるようにように工夫した。しかしながら、本発明者らは、WがシークオンのX位で許容されないことから、古典的なNXS/Tシークオンの挿入により実行不可能であった可能性があると推論した。しかしながら、Wは、シークオンの中心の「X」位で許容されないが、H(疎水性-芳香族/カチオン性の二重特性を有するヒスチジン(Wの比較的保存された置き換え))は、このX位で許容され得る。従って、本発明者らは、100位をNで置換し、X位にWの代わりにHを使用し、T(本発明者らは、Sと比べてHと良好に作用することを発見している)を使用して、「NHT」(即ち残基100、101、102、ポリタンパク質ナンバリング規定ではなく、Eタンパク質ナンバリング規定を使用する)を示す単一シークオンを作製した。得られたタンパク質(プラスミドpCRO28から作られた)が野生型と同様に発現することおよび野生型と比べて精製率が高いことを発見しており、これは、発現の障害がないことを示す。本発明者らが調査したジカの他の変異体は、使用した発現系で低レベルの分泌タンパク質を生じるかまたは分泌タンパク質を生じなかった。
【0115】
実施例3(図3)糖操作されたデング血清型-2タンパク質上におよび糖操作されたジカタンパク上に存在するグリカンのキャラクタリゼーション
実施例2から選択したタンパク質の2つ(HEK293のトランスフェクションから得られたpCRO22(融合ループ中に2つのグリカンを有するように全てが設計されている選択したデング構築物の代表)のデング-2血清型産物およびジカの産物(pCRO28の産物、融合ループ中に1つのグリカンを有するように設計されている))に対してグリカン組成分析(GlycoThera,Germany)を実施した。
【0116】
ポリペプチドNグリコシダーゼF(PNGアーゼ、Prozyme Inc.)による消化の前後のデング試料およびジカ試料のSDS-PAGE分析の結果を図3aに示す。SDS-PAGE分析(クマシーブルー染色後の15%ポリアクリルアミドゲル)前に、95℃で5分にわたり50mMのDTT中で試料を還元した レーン1:PNGアーゼ消化前のCV94(pCRO22タンパク質、デング-2);レーン2:PNGアーゼ消化後のCV94;レーン3:PNGアーゼ消化前のCV95(pCRO28タンパク質、ジカ);レーン4:PNGアーゼ消化後のCV95;レーン5:分子量標準。この場合、見かけ上の分子量の減少の程度(WTに対する図2c中の増分と異なる)は、配列に導入された追加のグリカンの数に基づく理論的予想と一致し、即ち、デング-2は、この消化で4つのグリカンを喪失している(天然の2つおよび追加のシークオンの配列プログラミングにより導入された2つ)が、ジカは、2つのグリカン(天然の1つおよび1つの追加のシークオンの配列プログラミングにより導入された1つ)を喪失している。PNGアーゼによる酵素的消化をTarentino and Plummer,Methods in Enzymology,1994;230;44-57に従って行った。
【0117】
高グリコシル化タンパク質産物からグリカンを遊離させ、特異的エキソグリコシダーゼ処理と一緒に、パルスドアンペロメトリ検出を伴う高速アニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)および2-AB標識付与N-グリカンの蛍光検出を伴う順相HPLCにより定量化した(図3b)。この分析の結果を表2でまとめる。
【0118】
天然オリゴ糖の定量的HPAEC-PAD分析を、高分解能CarboPac PA200カラムを使用してThermo Fisher Scientific Inc.(Waltham,MA,USA;GlycoThera device-ID:HPAEC-7)のICS5000+イオンクロマトグラフィーシステムで実施した。適切なオリゴ糖参照標準の注入を分析シークエンスに含めた。
【0119】
電気化学的検出によりN-グリカンを検出した。データを収集し、Chromeleon Chromatography Management System Version 6.8を使用することによりクロマトグラムを得た。天然N-グリカンを、GlycoTheraの参照オリゴ糖標準に照らして両方の調製物中で中性オリゴ糖、モノシアリル化オリゴ糖、ジシアリル化オリゴ糖およびトリシアリル化オリゴ糖を主に明らかにするHPAEC-PADにより分析した(図3b、表3)。
【0120】
脱シアリル化N-グリカンを、GlycoTheraの参照オリゴ糖標準に照らして両方の試料(CV94=デング-2およびCV95=ジカ)中で近位のα1,6-連結フコースを有する、顕著な順列多様性を有する複合型N-グリカンを主に明らかにする2-AB標識付与後にNP-HPLCにより分析した。デング調製物およびジカ調製物CV94(デング2pCRO22タンパク質)およびCV95(pCRO28タンパク質)ジカ(表2に示す)から遊離した天然N-グリカンのHPAEC-PADマッピングにより、両方の試料中に主に中性オリゴ糖(それぞれ16.9%および17.0%)、モノシアリル化オリゴ糖(それぞれ30.7%および36.9%)、ジシアリル化オリゴ糖(それぞれ26.6%および32.0%)ならびにトリシアリル化オリゴ糖(それぞれ15.0%および8.4%)の存在が明らかになった。デング試料およびジカ試料CV94およびCV95中に顕著な量のテトラシアリル化N-グリカン(それぞれ9.5%および5.1%)ならびに低い割合のペンタシアリル化/硫酸化オリゴ糖(それぞれ1.3%および0.6%)を見出しており、分析した試料の何れにおいても、リン酸化N-グリカン構造(例えば、1つのリン酸残基を有するオリゴマンノシドMan5-6GlcNAc2グリカン鎖)を検出しなかった。
【0121】
グリカンの部位占有率分析:
部位占有率をトリプシンペプチドのLC-MS測定により決定した。この分析は、PNGアーゼFにより酵素的に脱N-グリコシル化されたタンパク質から遊離したトリプシン生成ペプチドまたはエンドLys-C生成ペプチドのLC-MS測定に基づいた。PNGアーゼFは、グリコアミダーゼであることから、アスパラギン(N)は、アスパラギン酸残基(D)に変換される。抽出イオンクロマトグラム(EIC)の作成により定量化を行った。0.01の+/-m/zの質量ウィンドウ内で異なる荷電標的ペプチドの理論m/z値を使用してEICを作成した。脱N-グリコシル化により生成された、特異的に改変されたカウンターパートとペプチド強度を比較するために、EICのピーク面積を使用した。次いで、改変の比率/程度を下記のように算出した:改変の程度=[改変ペプチドのEIC下の面積]/([改変ペプチドのEIC下の面積]+[非改変ペプチドのEIC下の面積])。
【0122】
配列ナンバリングは、ポリタンパク質配列ナンバリング規定ではなく、有用な参照点として(融合ループの最先端での)W101によりタンパク質によるものである。部位を、デング(pCRO22、GlycoThera試料番号CV94)において部位2および3を含む2つの追加のシークオンが存在したように、N末端で始まる線形配列中での出現に従ってナンバリングする。天然WT N-グリコシル化部位の占有率が部位1および部位4に関してそれぞれ100%および99%であることを確認した。追加されたN-グリコシル化部位2および3(融合ループ中)は、1つのトリプシンペプチド(T15)上に位置しており、占有率は、38%(両方の部位)およびさらに51%であり、2つの部位の一方のみがN-グリコシル化されていた。全てにおいて、融合ループの89%が少なくとも1つのグリカンを有した。
【0123】
ジカの場合、N-グリコシル化部位の占有率は、追加された「部位1」(残基100、融合ループ)および部位2(残基154、天然に存在するグリカン)のそれぞれに関して99.5%および100%であることを確認した。プログラムされたグリコシル化シークオンの部位占有率を、PNGアーゼ消化およびトリプシンペプチド断片の質量に対するPNGアーゼ消化の効果(それにより、アスパラギン側鎖のアミドNH基が失われてヒドロキシル基に変換される)から推定した。(下記の配列において、プログラムされたシークオンを太字で示す)。高グリコシル化デング2外部ドメインでは、関連するトリプシンペプチドはT15であり、即ち101および108で置換されたN残基を含む15番目のトリプシンペプチド
であった。高グリコシル化ジカ外部ドメイン(単一の導入されたグリコシル化シークオン「NHT」を有する)では、関連するペプチドは、T10
であった。
【0124】
デング外部ドメインタンパク質およびジカ外部ドメインタンパク質の融合ループへの大きくかつ複雑なグリカンの効率的な導入というこれらの発見は、これらのタンパク質が融合ループに結合せず融合-ループ抗体を誘発もしないはずであるという本発明者らの予想を強化し、融合ループの野生型バージョンを認識し得るB細胞または抗体が本発明のグリコシル化形態と結合しないはずであるという自信を付与する。このシナリオは、誘導ループへの変異の単なる導入と著しく異なり、なぜなら、融合ループに1つまたは複数の大きい追加のグリカン構造を課すことにより、得られたバリアント融合ループは、抗体またはB細胞レセプターに結合し得ないか、または融合ループの野生型バージョンと反応する融合ループ抗体を産生し得ないからである。これを後の実施例で完全に確認した。この戦略は、タンパク質の構造からドメインIおよびIIを欠失させることと対照的でもあり得、なぜなら、これらのドメインは、天然ウイルス感染または他のワクチンに対する免疫反応での融合ループの危険な優位性を回避するような方法で免疫系をプレコンディショニングしつつ、野生のフラビウイルスとの遭遇時に既住の免疫反応に有用な中和エピトープおよびT細胞エピトープにも寄与するからである。
【0125】
実施例4(図4)直接ELISAにおける選択糖操作デングタンパク質1、2、3および4ならびにジカの免疫原性。
雌のBalb-cマウスを、PBS(陰性コントロール)、ならびにAlhydrogel上の、単独(ジカモノ)でのおよび組み合わせ(ペンタ-)での高グリコシル化外部ドメインタンパク質の様々なデング製剤およびジカ製剤、ならびに裸のDNA(DNA)で免疫付与した。タンパク質のAlhydrogel製剤を200ulの総体積で皮下(s.c.)注射し、五価DNA(各プラスミド免疫原5マイクログラムを表す)の場合に裸のDNA(デングのプラスミドpCRO21、pCRO22、pCRO23およびpCRO24ならびにジカを表すpCRO28を含む)を50ulの総体積で筋肉内(i.m.)注射した。五価のタンパク質組み合わせは、各高グリコシル化外部ドメインの用量当たり5ugの量を含み、一価(ジカ)は、用量当たり10ugを含んだ。マウスに3回(0日目、14日目および21日目のそれぞれで1回)投与した。図4の右下の凡例は各免疫原の組成を示す。各パネルの表題は、固相ELISAプレート上で使用した抗原を示す。(野生型組換えVLPを、免疫原(群4)としておよび図4での抗原としての両方で使用した)。示した間隔でマウスの後眼窩から採血し、ELISAアッセイおよびPRNTアッセイのために血清を採取した。
【0126】
Balb-cマウスに糖操作外部ドメインのDNA表現およびタンパク質表現で免疫付与し、陽性コントロールとして、The Native Antigen Company Ltd,Oxford,UKの対応するVLP(即ち野生型配列を表すVLP)(余分なグリカンなし、および融合ループは露出している)で免疫付与した。これらのVLP(表8を参照されたい、図4のELISA試験において免疫原として使用されかつ試験抗原としても使用される)は、外部ドメイン中に存在しない複数の追加のエピトープも含み、特にプレメンブランタンパク質prMのエピトープも含む。
【0127】
リポソーム製剤、遺伝子銃またはエレクトロポレーション技術による送達補助がない場合に予想されるように、5種の外部ドメインを表す裸のDNAに対する抗体反応はほとんどなかった。裸のDNAに対する抗体反応は、デング1、2おび3の天然VLPに対して明らかであり、ジカおよびデング4のVLPに対して明らかでなかった。しかしながら、これらの結果は、適切な送達システムによる、これらのDNAにコードされた抗原(これらの全て)の潜在的有用性を実証するのに役立った。このアッセイは、当然のことながら、追加のエピトープ(上記)の存在に起因して、VLPに対する免疫反応の検出により敏感であり、その結果、予想されたように、VLP抗原に対する抗体反応は、VLPで免疫付与された「群4」において均一でありかつ非常に強力であった。しかしながら、本発明の新規の糖操作外部ドメインタンパク質に対する反応もそうであり、五価免疫原製剤により5種の全ての成分(デング血清型1、2、3および4ならびにジカ)に対して強力でバランスのとれた免疫反応を付与した。反応は、外部ドメイン免疫原(五価タンパク質および一価ジカ)に対して一様に高く、非反応者はいなかった。同様に、一価ジカ高グリコシル化外部ドメイン免疫付与群(10μg用量)でのジカに対する反応は、同一の外部ドメインを半分用量で使用した五価タンパク質群の場合と比べてやや高かった。この発見は、型特異的免疫反応の発生での血清型間の競合(これは、デング血清型2に対する免疫反応が問題になるほど低い生弱毒化フラビウイルスワクチンアプローチ(例えば、Dengvaxia)による既知の問題である)の好都合な欠如を示す。
【0128】
デングウイルスおよびジカウイルスに対するネズミ抗体を測定するための直接ELISA(図4)のために、Nunc(商標)Flat 96-Well Microplates,Thermoscientific,Cat.No.269620を、室温で2時間にわたり100μl/ウェルにおいて、4.43g/lで重炭酸ナトリウムを含み、1.59g/lで炭酸ナトリウムを含む重炭酸塩-炭酸塩緩衝液(pH9.4~9.6)中の0.5μg/mlの濃度でVLP(The Native Antigen Company(Oxford)から)でコーティングした。プレートを吸引し、Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、ThermoFisher-Gibco 14190136)中の2%中性BSA(SigmaAldrich A7906)(PBS-BSA)でブロックした。このブロッキング緩衝液を、1/100および1/10,000の濃度で希釈したマウス血清の試験のための希釈剤として使用した(各濃度で2回の反復)。プレートを、PBS-Tweenで5回ウェルを満たして空にすることによる各インキュベーション(ブロッキング、希釈血清インキュベーション、コンジュゲートインキュベーション)後、0.05%Tween-20界面活性剤を含むPBS(Sigma-Aldrich)(PBS-Tween)で洗浄した。血清のインキュベーションおよび洗浄後、二次抗体コンジュゲートをPBS-BSA(ヤギ抗マウスIgG HRPコンジュゲートBioRad 103005)中に1:4000の希釈でアプライした。最後にプレートを洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)の基質を添加し(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、TMB、Sigma-Aldrich T00440)、室温での20分のインキュベーション後に0.16Mの硫酸で停止させた。インキュベーションをミキサー(Grant Bio、約500rpmでPMS-1000)で行った。停止させた反応の吸光度を450nmで読み取った。
【0129】
抗体反応を、コーティング濃度1ml当たり0.5マイクログラムで固相上の血清型2を表すデングVLPで融合ループ抗体4G2(The Native Antigen Company Ltd,Oxford)に対して較正した。抗体測定値「IgG抗体価」の単位は、4成分多項式回帰適合(AssayFit、IVD Tools)を用いた標準曲線の補間によって決定される、希釈されていない血清中の4G2相当物1mlあたりのマイクログラムである。42日目に、抗体反応は、高グリコシル化外部ドメイン免疫原に関して10~10(理論上、正味の血清中に1ml当たり10mg~1ml当たり100mg)に達した。これらの濃度(文字通り)は、達成不可能なほど高く、なぜなら、マウス血清のIgG濃度は、1ml当たりわずか2~5mgであり、標準化に使用される抗体4G2と比較して産生される抗体の高い親和性(affinity)または親和性(avidity)をおそらく反映するかまたはより良好なエピトープ露出を反映し得る(4G2の融合ループエピトープは、VLPおよびビリオンの構造中では半分隠れている)。それにもかかわらず、4G2較正は、アッセイをときに実行することを可能にするという有用な目的を果たし、コンジュゲート(バッチ毎に異なるポリクローナル抗体から作製された抗IgG-Fcセイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲート)中のバッチ間の変動のような変数を制御する。これは、コンジュゲートバッチおよび抗原バッチに非常に依存し、かつ異なる製造業者により供給されるコンジュゲート間でさらに変動し得る閾値吸光度値に基づく抗体「力価」を引用することと比べて信頼性が高い。
【0130】
これらの観察のさらなる側面は、産生された抗体が、タンパク質免疫原の全てに関してIgMからのクラススイッチング(14日目であっても)を示すIgGクラスであることである。これは、B細胞記憶反応の必須成分であり、ワクチンの開発にとって重要である。これらの発見のさらなる側面は、外部ドメインタンパク質免疫原(およびある程度まではDNA免疫原)により産生された抗体がVLP抗原の天然型(Hisタグも欠く)を強く認識し、抗His-タグ反応に起因して偽陽性の可能性を除外することである。これは、デング外部ドメイン材料およびジカ外部ドメイン材料の両方が、抗ウイルス(VLP)抗体の産生で免疫原性である外部ドメインタンパク質の天然エピトープを表すことを証明する。これらの結果は、高グリコシル化外部ドメイン種(例えば、リポソームRNAまたはリポプレックスRNA)の、他の核酸でコードされる形態もビリオン(VLP)およびウイルスに対する望ましい抗体反応を生じることになることを示唆する。
【0131】
ジカ一価高グリコシル化外部ドメインに対する免疫反応で特異性が存在しており、この特異性により、これらの様々なウイルスと抗体との既知の交差反応性にもかかわらず、相同ジカVLPに対して他のVLPに対するのと比べて高い抗体力価が生じた。これは、有利な結果であり、なぜなら、型特異的抗ジカ抗体が一般にデング交差反応性と比べて良好な中和活性を有することが分かっているからである。同様に、より後の時点(2回または3回の投与後)でのジカ一価高グリコシル化外部ドメインに対する抗体反応で見られるように、デング株に対してある程度の交差反応性が経時的に生じており、融合ループエピトープ(後の実施例に続くデータで示されるように、高グリコシル化外部ドメイン種により産生された抗体により認識されなかった)を除いて、有益な交差反応中和反応の発生の可能性が上昇した。
【0132】
実施例5(図5)融合ループ抗体による糖操作タンパク質の認識の回避および中和エピトープの保持。
固相上のHis-6-タグ付与外部ドメインタンパク質の指向性補足を用いるELISA試験(図5)を考案した(図4のVLPはHis-タグを有しない)。別途明記しない限り、条件は、実施例4および図4のELISA試験の場合と同一であった。8ウェルストリップELISAプレート(Dynex)を室温で1時間にわたりウサギモノクローナル抗His-6タグ(Anti-6X His tag(登録商標)抗体[HIS.H8](ab18184)Abcam)でコーティングし、次いで重炭酸塩-炭酸塩コーティング緩衝液中の1μg/mlの濃度で一晩コーティングした。プレートを洗浄し、次いで室温で30分にわたりStarting Block(ThermoFisher 37538)に暴露し、次いで37度で2時間にわたり、次いで4度で一晩、0.5μg/mlの濃度で様々な外部ドメインタンパク質(全てがC末端ヘキサ-ヒスチジンタグを有する)に暴露した。抗体をPBS-Tween中の0.4%BSA中の適切なウェルに添加し、37度で2時間にわたりインキュベートした。次に、マウス抗体用の二次抗体コンジュゲート(ウサギ-抗マウスHRP IgG H&L、Abcam ab97046)を1/10,000の希釈でPBS-Tween中の0.4%BSAでアプライした。ヒト血清の場合、希釈係数は、PBS-Tween0.4%BSAで1/1000であり、続いて予め吸着されたヤギ抗ヒトIgGFc(HRP)(Abcam ab98624)で1/20,000であった。二次抗体HRPコンジュゲートを37度で2時間にわたりインキュベートした。連続した試薬への暴露中にプレートを洗浄した。最後に、TMB基質を添加し、室温で10分後に停止させた。
【0133】
抗原は、下記の通りであった:デング血清型2および4を表す野生型デング外部ドメインは、The Native Antigen Company(DENV2-ENV、DENV4-ENV)由来であり;「HX」指定外部ドメイン(高グリコシル化外部ドメイン)は、本開示のExcivion外部ドメインの選択されたセットであった(デングの場合にpCRO21~24、ジカの場合にpCRO28)。Prospecジカは、Prospec of Israel(zkv-007-a)由来の非グリコシル化細菌外部ドメインであり、Aaltoジカは、昆虫(Sf9細胞)由来のジカ外部ドメイン(AZ6312-Lot3909)であった。ジカウイルス外部ドメインに対するマウスモノクローナル抗体は、下記の通りであり:Aalto Bioreagents AZ1176-0302156-Lot3889;Z48およびZ67は、Zhao et al,Cell 2016により説明されている中和抗体であった(The Native Antigen Company ZV67 MAB12125およびZV48 MAB12124)。抗体4G2は、融合ループを認識する抗デング血清型2抗体である(The Native Antigen Company AbFLAVENV-4G2)。
【0134】
図5aは、抗体4G2によるデング2および4の野生型外部ドメインの高感度検出を示し、非常に低い濃度(250pg/ml)でもバックグラウンドを有意に上回るシグナルを示す。対照的に、高グリコシル化外部ドメインは、試験した濃度の何れでも検出可能なシグナルを示さなかった(図5a)。野生型外部ドメインおよび融合-ループグリコシル化(HX)外部ドメインのこのサイドバイサイド比較により、使用したデング-2HX外部ドメイン中の非グリコシル化(たとえ変異していても)融合ループの11%の存在にもかかわらず(グリコシル化部位占有率データについて実施例3を参照されたい)、後者がこの古典的な融合ループ抗体(ロイシン107に高度に依存する、Stiasny K et al.,J Virol 2006 80:19 9557-68、この位置でのD、TまたはFの不耐容)と反応しないことが実証されている。これにより、用いた変異は、たとえグリカンがなくても、この特定の融合ループ抗体(4G2)の結合を防止するのに十分であることが実証される。しかしながら、ヒト抗体のクローン多様性を前提として、最終的には、フラビウイルスの野生型融合ループを認識し得る融合ループ抗体が、ワクチンとして使用される場合にこの新規の免疫原によりヒト中で産生されないことの保証のさらなる積み重ねとしてグリコシル化形態を用いることが好ましい。
【0135】
図5bおよび図5cのデータから、ジカの場合、外部ドメインのHXバージョンが3種の全てのジカモノクローナル抗体(2種の中和エピトープZV48(Z48)およびZV67(Z67)を含む)と反応することも実証される。これにより、ジカHX外部ドメインが、グリカン挿入により融合ループの構造が劇的に変化するにもかかわらず、これらの中和エピトープおよびAaaltoエピトープを保持していることが実証される。さらに、このジカHX外部ドメインは、4種のデングHX外部ドメインと同様に4G2と反応せず、これにより、このエピトープは、5種の全てのHXタンパク質において効果的に覆い隠されていることが確認される。
【0136】
試験したジカヒト回復期血清に関する図5bおよび図5cのデータも診断上有益である。この血清は、ジカに対する高PRNT活性および高レベルのジカNS1抗体に関して選択されたNIBSCのMark Pageからの寄贈であった。図5bおよび図5cのデータから、このジカ回復期血清は、この試験において他の抗原よりもデング-2wt外部ドメインを強くに認識し、実際には好むことが実証される。この観測は、HXシリーズのタンパク質の診断上の有用性を実証し、この患者がジカ以外の別のフラビウイルスにも以前に暴露されていたことを示す。実際には、他のフラビウイルスは、デングでなかったことが示唆されており、なぜなら、ジカ回復期血清は、(デング熱回復期血清と異なり)高グリコシル化外部ドメイン形態のデングと反応しないからである。従って、ジカ回復期血清中の融合ループ抗体は、第3のフラビウイルス(例えば、黄熱病(ワクチン接種もしくは感染による)または西ナイルウイルス)への暴露に由来していなければならず、これらは、両方ともこの血清が採取されたトリニダードで流行している。
【0137】
図5bおよび図5cのデータのさらなる側面は、ジカHX抗原が中和抗体の存在を選択的に知らせる能力を有することであり、なぜなら、上記の中和エピトープが保持されつつ、4G2融合ループエピトープが効果的に覆い隠されているからである。従って、HXジカ外部ドメインタンパク質およびおそらくデングHX外部ドメインタンパク質は、ジカワクチンおよびデングワクチンの開発および展開を知らせる能力を有するであろう。後者の場合、試験のHX抗原は、その後のデング出血熱への素因(これにより、ワクチンは、サイレントな一次デング感染として作用する)のリスクを低減するために、デングに対してナイーブである人と現在認可されているDengVaxia(登録商標)抗デングワクチンによるワクチン接種を免れている可能性がある人とを特性するのに有用である。そのような試験は、DengVaxiaの有用性をより若い人々にまで拡大し得(現在は9歳兆の子供に対してのみ認可されている)、または(例えば、DengVaxiaワクチン接種が現在提唱されいない旅行者集団での使用のために)欧州および米国等の非風土地域中のナイーブな人々にまで拡大し得る。
【0138】
実施例6(図6)糖操作タンパク質による融合-ループ抗体の産生の回避。
ELISA試験を確立して、融合ループ(この実施例では、固相ELISAプレート上のデング血清型-3VLPで表される)に対するポリクローナル抗体の結合を測定した。
【0139】
ストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを使用して検出したビオチン化4G2(Integrated Biotherapeutics)を使用して、競合ELISAを設定した。免疫付与血清型デング-2VLPと比べてわずかに良好に4G2と反応するデング血清型3VLP(The Native Antigen Company)を、固相上で1ml当たり0.5ugでコーティングした抗原として使用した。(図4の群から)プールした血清または非標識4G2(標準として)を様々な希釈度(この血清プールの最高濃度の1/10から)で滴定して、融合ループへの結合に関してビオチン化4G2と競合する能力を測定した。ジカVLPおよびデング-2VLPの野生型組換え物質を抗原として使用して同様の標準曲線を作成し(図示せず)、目的のフラビウイルスにわたるこの現象(融合ループ抗体の交差反応性)の一般性を強調する。
【0140】
このアッセイ(図6)では、ビオチン化4G2およびストレプトアビジン-HRPコンジュゲート(1/3000でKirkegaardおよびPerry KPL KPL 14-30-00)を使用して、非標識4G2の固相抗原への結合に関して競合する能力を実証した。別途明記しない限り、条件は、実施例4の場合と同じであった。最初に、30:1の反応物のモル比を使用してBioRad EZ-link NHS-PEG4ビオチン化キット(21455)を使用し、製造業者の指示に従って4G2の試料をビオチン化した。非標識抗体およびビオチン化抗体を、固相抗原への結合に関して一晩の室温でのインキュベーションで競合させた。抗原をコーティングしたプレートを標準抗体の希釈物(4G2の4倍または5倍の連続希釈、非標識)に同時に暴露した。ビオチン化抗体を100ng/mlの濃度で使用した。
【0141】
図6は、4種の全てのデング血清型およびジカのVLPを含む、Alhydrogel上の五価VLPに対して産生された抗体が豊富な融合ループ抗体を産生することを実証する。VLP免疫付与血清は、融合ループ抗体1ml当たり約100マイクログラムを含むことがこれらのデータ(4G2および産生された抗体の同様の親和性を仮定する)から算出され得、これは、ポリクローナル抗血清中のウイルス抗体に関して一般に最大量である。対照的に、他の群の何れにおいても、結合が4G2と相互に排他的である融合ループ抗体の有意な量が産生されない。特に、本開示の五価(HX)外部ドメインタンパク質は、この試験で評価されたように融合ループ抗体を産生せず、競合ELISA試験で使用されるVLP抗原に対する非常に実質的な抗体反応が生じているにもかかわらず、一価ジカ(HX)タンパク質も産生されない。ジカの場合、試験した最高濃度でのみ阻害を検出し、これは、1/10血清希釈でのこの単一点が(議論のために)有意であると見なされる場合、VLP免疫原と比較して融合ループ抗体の回避において>1000倍の利点を示した。
【0142】
図6のデータから、本発明のデングワクチン(またはジカワクチン)が、保存された融合ループに対する抗体反応を刺激しないことになることが実証される。これは、デングの別の血清型との遭遇時に後の出血熱を刺激する天然の原発性デング感染と対照的である。天然の原発性デング感染に対するそのような抗体反応は、抗体の生理学的濃度では中和が不十分であるかまたは中和せず、抗体複合化ビリオンがFcレセプターを介して骨髄細胞に侵入して感染させることを可能にすることにより、デング感染および疾患の抗体依存性増強の原因に特に関与し、さらに他の宿主細胞への感染の予防に失敗する。
【0143】
実施例7(図7)糖操作されたデングタンパク質およびジカタンパク質による中和抗体の産生
実施例4からの血清プールを、プラーク減少中和試験(PRNT)においてVero細胞を使用して、デング血清型2ウイルスおよびジカウイルスを中和する能力に関して試験した。
【0144】
デングの場合、Vero細胞(D2Y98P)を感染させるために使用されるデング血清型2株は、VLPおよび外部ドメインの免疫付与デング2株の配列と異なる血清型-2株(非相同)であった。デング中和抗体(即ち五価タンパク質および五価VLP、群2および4)を産生することが(実施例4から)予想される群では、「オフターゲット」デング試験ウイルスの強力な中和が存在した。ジカの場合、天然ジカVLP(即ち五価タンパク質および五価VLP、群2、3および4)を認識する抗体を含むことが分かった群において、実施例4の結果から予想されるように有意な(部分的ではあるが)中和が存在した。試料体積への制限に起因して、試験した血清の最大濃度は1/50であり、その結果、これらの結果の解釈ではこの因子を考慮する必要がある(即ち免疫付与した動物の血液中でより高い中和能が存在するはずである)。
【0145】
PRNTアッセイを下記の通りに実施した。5匹のマウスの血清試料を各群(次のスライドでの試料の説明)で等体積の個々の試料を採取することによりプールし、次いでZIKVおよびDENVそれぞれに対して試験した。1:50で開始する2回の反復での各血清試料の12個の2倍連蔵希釈液を、ウイルスによる2時間接種のために調製した。次いで、血清-ウイルス混合物を、24ウェル培養プレートに播種したVero細胞に添加し、加湿5%CO雰囲気中で37℃においてインキュベートした。Vero細胞をZIKV PRNTの場合にはインキュベーションから3日目(dpi)で固定し、DENV PRNTの場合には4dpiで固定した。ウイルスプラークをクリスタルバイオレット染色により決定した。
【0146】
本開示の高グリコシル化外部ドメインタンパク質で免疫付与した群(ペンタ-prot)では、デングによる感染の強力な阻害を観測した。ジカ免疫付与動物は、Vero細胞のデング感染を予防しない抗体を産生しており、これは、この新規の免疫原により産生された抗体の型特異的性質を示す。これらのジカ抗体(ジカ一価群由来および五価タンパク質群由来)は、ジカウイルスによるVero細胞の感染を有意に防御した。予想されるように、PBSシャム免疫付与動物は、防御抗体を産生せず、五価DNAも筋肉内投与しなかった。この後者の結果は、(遺伝子銃もしくはエレクトロポレーション戦略または分子アジュバントとしてコードされたタンパク質を組み込む戦略と異なり)筋肉内注射から予想されるように、裸のDNAにより産生された低濃度の抗体に起因している可能性がある。
【0147】
本発明の高グリコシル化外部ドメインタンパク質による実施例5の結果(融合ループ抗体による認識または産生の欠如)と組み合わせた実施例6の結果(中和抗体の産生)は、これらのタンパク質が、感染の抗体依存性増強に特に関与する融合ループ抗体を産生することなく、デングウイルスまたはジカウイルスの防御ワクチン(または両方のウイルスの場合には組み合わせ)の基礎を形成し得ることを強く示唆する。
【0148】
実施例8(図8)回復期のデング血清またはジカ血清と、固定されたジカおよびデングの野生型(WT)外部ドメインタンパク質および高グリコシル化(HX)外部ドメインタンパク質との反応
血清インキュベーション中に10μg/mlの濃度での、競合するマウスモノクローナルフラビウイルス融合ループ抗体4G2(抗デング血清型-2モノクローナル抗体)の存在下(灰色のバー、各対の右側)および非存在下(黒色のバー、各対の左側)での、ウサギ抗His-タグモノクローナル抗体による補足によって固相上で配向された、固定されたジカおよびデングの野生型(WT)外部ドメインタンパク質および高グリコシル化(HX)外部ドメインタンパク質との、デング熱回復期血清中の抗体のELISA反応性である(図8、上方のパネル)。ヒト血清を1/1000の一定濃度で試験した。
【0149】
競合するマウスモノクローナルフラビウイルス融合ループ抗体4G2の存在下(灰色のバー)および非存在下(黒色のバー)での、固定されたジカおよびデングの野生型(WT)外部ドメインタンパク質および高グリコシル化(HX)外部ドメインタンパク質との、ジカ回復期血清中の抗体のELISA反応性である(図8、下方のパネル)。条件および標識付けは、上方のパネルの場合と同一である。エラーバーは、標準誤差である。
【0150】
結果は、下記を示す:
1)本発明のHXジカ抗原は、回復期デング血清によるWTジカ外部ドメインのオフターゲット認識に対して感受性ではない。
2)デング血清によるWTジカ外部ドメイン(Aalto)のオフターゲット認識は、VLP(1ml当たり10マイクログラム)に対して80%阻害を引き起こす濃度において溶液相中で4G2(抗融合ループモノクローナル抗体)により無効になることから、融合ループ特異的現象である(この場合の固相上の抗原は、VLPではなく外部ドメインである)。
3)「ジカ」回復期血清は、3種のジカ外部ドメインを何れも認識しないが、WTデング2およびWTデング4を強く認識する。実施例6では、本発明のHXジカ抗原およびAaltoのジカ外部ドメインは、高次構造依存性の抗ジカ中和抗体と反応する)。これにより、この特定のジカ血清(ジカプラーク中和およびジカNS1抗体に対して陽性)は、別のフラビウイルスにも暴露された対象由来であることが実証される。ジカ回復期血清(デング熱回復期血清と異なる)は、融合ループが覆い隠された外部ドメインを認識しないことから、この他のフラビウイルスは、デングではないと結論付けられ得る。
4)ヒトジカ回復期血清によるWTデング-2外部ドメインおよびWTデング-4外部ドメインのオフターゲット認識は、本発明のHXにより覆い隠されたデング外部ドメインでは見られない。これは、オフターゲット認識が融合ループ特異的であり、本発明に従ってグリカンにより覆い隠されたタンパク質を使用しない他のフラビウイルス診断試験において偽陽性を示すことになることを示唆する。
5)ヒトジカ回復期血清によるWTデング-2外部ドメインおよびWTデング-4外部ドメインのオフターゲット認識は、オフターゲット認識が融合ループ特異的現象であることを示す4G2により完全にブロックされる。
6)デング熱回復期血清は、WT2およびWT4を無差別に認識するが、4の組のうちのd2外部ドメインを明らかに好む。これにより、本発明の融合ループ抗原は、この融合ループのグリカンによる覆い隠しに起因して、デング血清型を識別するのに(この野生型の等価の形態を比較して)優れた選択性を有することが実証される。
【0151】
配列表フリーテキスト
【0152】
参考文献
国際公開第2016012800A1号パンフレット
Dalziel,M.,Crispin,M.,Scanlan,C.N.,Zitzmann,N.,&Dwek,R.A.(2014).Emerging Principles for the Therapeutic Exploitation of Glycosylation.Science,343(6166),1235681-1235681.http://doi.org/10.1126/science.1235681
Davis C W et al.,(2014)J Biol Chem Vol 281“The location of asparagine-linked....”p37183-37194
Dejnirattisai,W.,Wongwiwat,W.,Supasa,S.,Zhang,X.,Dai,X.,Rouvinsky,A.,et al.(2014).A new class of Highly potent,broadly neutralizing antibodies isolated from viremic patients infected with dengue virus.Nature Immunology,16(2),170-177.http://doi.org/10.1038/ni.3058
Elliott,S.,Lorenzini,T.,Asher,S.,Aoki,K.,Brankow,D.,Buck,L.,et al.(2003).Enhancement of therapeutic protein in vivo activities through glycoengineering.Nature Biotechnology,21(4),414-421.http://doi.org/10.1038/nbt799
欧州特許出願公開第0640619A1号明細書.(2010).欧州特許出願公開第0640619A1号明細書,1-65.
Frietze,K.M.,Peabody,D.S.,&Chackerian,B.(2016).Engineering virus-like particles as vaccine platforms.Current Opinion in Virology,18,44-49.http://doi.org/10.1016/j.coviro.2016.03.001
Hadinegoro,S.R.,Arredondo-Garcia,J.L.,Capeding,M.R.,Deseda,C.,Chotpitayasunondh,T.,Dietze,R.,et al.(2015).Efficacy and Long-Term Safety of a Dengue Vaccine in Regions of Endemic Disease.The New England Journal of Medicine,373(13),1195-1206.http://doi.org/10.1056/NEJMoa1506223
Halstead,S.B.,Rojanasuphot,S.,&Sangkawibha,N.(1983).Original antigenic sin in dengue.The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene,32(1),154-156.
Hanley,K.A.(2011).The Double-Edged Sword:How Evolution Can Make or Break a Live-Attenuated Virus Vaccine.Evolution:Education and Outreach,4(4),635-643.http://doi.org/10.1007/s12052-011-0365-y
Kostyuchenko,V.A.,Lim,E.X.Y.,Zhang,S.,Fibriansah,G.,Ng,T.-S.,Ooi,J.S.G.,et al.(2016).Structure of the thermally stable Zika virus.Nature.http://doi.org/10.1038/nature17994
Laing,P.,Bacon,A.,McCormack,B.,Gregoriadis,G.,Frisch,B.,&Schuber,F.(2006).The“co-delivery”approach to liposomal vaccines:application to the development of influenza-A and Hepatitis-B vaccine candidates.Journal of Liposome Research,16(3),229-235.http://doi.org/10.1080/08982100600880432
Paul,L.M.,Carlin,E.R.,Jenkins,M.M.,Tan,A.L.,Barcellona,C.M.,Nicholson,C.O.,et al.(2016).Dengue Virus Antibodies Enhance Zika Virus Infection(p.050112).Cold Spring Harbor Labs Journals.
Ramsauer,K.,Schwameis,M.,Firbas,C.,Muellner,M.,Putnak,R.J.,Thomas,S.J.,et al.(2015).Immunogenicity,safety,and tolerability of a recombinant measles-virus-based chikungunya vaccine:a randomised,double-blind,placebo-controlled,active-comparator,first-in-man trial.The Lancet.Infectious Diseases,15(5),519-527.http://doi.org/10.1016/S1473-3099(15)70043-5
Roby J A et al.,(2013)West Nile Virus Genome with Glycosylated Envelope Protein and Deletion of Alpha Helices 1,2,and 4 in the Capsid Protein Is Noninfectious and Efficiently Secretes Subviral Particles...”J Virol Vol 87(23),13063-16069
Roby J A et al.,(2014)Increased expression of capsid protein in trans enhances production of single-round infectious particles by West Nile virus DNA vaccine candidate.J Gen Virol,95,2176-2019.
Russell,P.K.(2016).The Zika Pandemic-A Perfect Storm? PLoS Neglected Tropical Diseases,10(3).http://doi.org/10.1371/journal.pntd.0004589
Sirohi,D.,Chen,Z.,Sun,L.,Klose,T.,Pierson,T.C.,Rossmann,M.G.,&Kuhn,R.J.(2016).The 3.8 A resolution cryo-EM structure of Zika virus.Science,352(6284),467-470.http://doi.org/10.1126/science.aaf5316
Tregoning,J.S.,&Kinnear,E.(2014).Using Plasmids as DNA Vaccines for Infectious Diseases.Microbiology Spectrum,2(6).http://doi.org/10.1128/microbiolspec.PLAS-0028-2014
Tretyakova,I.,Nickols,B.,Hidajat,R.,Jokinen,J.,Lukashevich,I.S.,&Pushko,P.(2014).Plasmid DNA initiates replication of yellow fever vaccine in vitro and elicits virus-specific immune response in mice.Virology,468-470,28-35.http://doi.org/10.1016/j.virol.2014.07.050
図1
図2a
図2b
図2c-2d】
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図3h
図4
図5a-5b】
図5c
図5d
図6
図7a
図7b
図8
【配列表】
0007121396000001.app