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  • 特許-高圧タンク及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】高圧タンク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 12/00 20060101AFI20220810BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20220810BHJP
   B29C 70/34 20060101ALI20220810BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20220810BHJP
   F17C 1/16 20060101ALI20220810BHJP
   B29K 705/00 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
F16J12/00 C
B29C70/32
B29C70/34
F17C1/06
F17C1/16
B29K705:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021203151
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2021-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514154503
【氏名又は名称】株式会社The MOT Company
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲済▼藤 友明
(72)【発明者】
【氏名】首藤 祥史
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-219390(JP,A)
【文献】特開2010-265931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0384719(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0353704(US,A1)
【文献】特開2005-273724(JP,A)
【文献】特開2018-083391(JP,A)
【文献】特開2022-90691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08J 5/04- 5/24
F16J 12/00
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質樹脂製タンクライナーを用意する工程と、
前記タンクライナーの外側表面に樹脂の硬化時間を速めるための金属層を配置する工程であって、前記金属層は、金属箔からなる、又は金属粉を塗装スプレーで吹き付けることにより形成される工程と、
前記金属層の外側に、前記金属層と接するように樹脂含浸炭素繊維を巻回し、樹脂含浸炭素繊維層を形成する工程と、
前記タンクライナーのシリンダー部において、前記樹脂含浸炭素繊維層の外側に矩形シート状プリプレグを端部同士が重なるように1周巻き付けるように配置し、かつ、巻き付けたシート状プリプレグの外側に、別の矩形シート状プリプレグを端部同士が重なるように1周巻き付けるように配置することにより、プレス前高圧タンクを得る工程と、
前記プレス前高圧タンクを加熱プレスし、高圧タンクを得る工程とを含み、
前記シート状プリプレグの巻き付けは複数回実施し、2回目及び3回目に巻き付けられたシート状プリプレグの重なった端部は、1回目に巻き付けられたシート状プリプレグの端部とは異なる部分に配置される、高圧タンクの製造方法。
【請求項2】
前記金属層の金属が、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル及びマグネシウムからなる群から選択される一種である、請求項1に記載の高圧タンクの製造方法。
【請求項3】
前記プリプレグが、繊維強化樹脂のプリプレグである、請求項1に記載の高圧タンクの製造方法。
【請求項4】
高圧タンクが、水素タンクである、請求項1に記載の高圧タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧タンクと、高圧タンクのタンクライナーの外周部に巻く繊維強化樹脂のプレス成形に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車や水素自動車等に搭載される水素タンクなどの燃料タンクには、高圧に耐えるために十分な強度を有すること、及び軽量であることが要求されている。このような燃料タンクの製造方法として、円筒状のタンクライナーを回転させながら、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸した炭素繊維を当該タンクライナーの表面に繰り返し巻き付けてタンク容器を作製し、その後に熱硬化性樹脂を熱硬化させる方法(すなわち、フィラメントワインディング法)が知られている。
【0003】
この種の高圧タンクの製造方法として、タンクライナーの外周に熱硬化性樹脂を含浸した繊維束を繰り返し巻き付けて繊維強化樹脂層とし、加熱炉で繊維強化樹脂層を加熱して硬化させるものが開示されている(特許文献1、2参照)。この高圧タンクの製造方法においては、高圧に耐えるのに十分な強度を有するために熱硬化性樹脂を含浸した繊維束を繰り返し巻き付けるが、巻き付けには時間を要する。また、繊維強化樹脂層の硬化を加熱炉で行っているが、加熱炉での硬化も時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-088131号公報
【文献】特開2017-043045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、高圧に耐えるのに十分な強度を有しつつ、製造時間を短縮し、生産性を高めた、高圧タンク、及び高圧タンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、タンクライナーの外側に金属層を配置することにより、高圧に耐えるのに十分な強度を有しつつ、短時間で、高圧タンクが製造できることを見出した。すなわち、本発明は、以下を包含する。
[1] タンクライナーと、
前記タンクライナーの外側に配置される金属層と、
前記金属層の外側に配置される繊維強化樹脂を含む補強層を含む高圧タンク。
[2] 前記補強層が、前記金属層の外側に炭素繊維を巻回されて形成される炭素繊維層と、前記炭素繊維層の外側に配置された繊維強化樹脂層とを含む[1]に記載の高圧タンク。
[3] 前記金属が、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル及びマグネシウムからなる群から選択される一種である、[1]に記載の高圧タンク。
[4] 高圧タンクが、水素タンクである、[1]に記載の高圧タンク。
[5] タンクライナーを用意する工程と、
前記タンクライナーの外側表面に金属層を配置する工程と、
前記金属層の外側に、炭素繊維を巻回し、炭素繊維層を形成する工程と、
前記炭素繊維層の外側にシート状プリプレグを配置し、プレス前高圧タンクを得る工程と、
前記プレス前高圧タンクを加熱プレスし、高圧タンクを得る工程とを含む、高圧タンクの製造方法。
[6] 前記タンクライナーの外側表面に金属層を配置する工程が、金属箔を配置することによって実施される、[5]に記載の高圧タンクの製造方法。
[7] 前記タンクライナーの外側表面に金属層を配置する工程が、金属粉を塗装スプレーでタンクライナーに吹き付けることにより実施される、[5]に記載の高圧タンクの製造方法。
[8] 前記プリプレグが、繊維強化樹脂のプリプレグである、[5]に記載の高圧タンクの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高圧に耐えるのに十分な強度を有しつつ、短時間で、高圧タンクを製造することができる。
本発明の高圧タンクの補強層は、繊維強化樹脂層を含むが、タンクライナーと繊維強化樹脂よりなる補強層との間に金属層を備えている。金属層を構成する金属は高い熱伝導性と、熱を反射する性質があり、加熱プレスに用いる金型からプリプレグ全体に熱が伝わりやすくなる。この作用により、金型の熱は早く繊維強化樹脂(プレプレグ等)に伝導し、金属層と金型に挟まれた繊維強化樹脂の硬化時間を速めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係る高圧タンクの断面図であり、図1(a)は正面断面図を示し、図1(b)は側面断面図を示す。
図2図2は、プレス前高圧タンクの製造工程である。
図3図3は金属層の外側にフィラメントワインディング法により炭素繊維を巻回し、炭素繊維層を形成する様子を示す説明図である。
図4図4は、プリプレグの配置方法を説明する図である。
図5図5は、プレス前高圧タンクをプレスする模式図であり、図5(a)は下金型にプレス前高圧タンクを金型に戴置する様子を示す図であり、図5(b)はプレスしている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施する形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
[高圧タンク]
図1を用いて説明する。高圧タンク8は、タンクライナー1と;タンクライナー1の外側表面に配置される金属層3と;金属層3の外側に樹脂を含浸した繊維束を巻回されて形成される炭素繊維層41と炭素繊維層の外側に配置される繊維強化樹脂層42とを含む補強層4と;から形成される高圧タンクである。プレス成形により、繊維強化樹脂の補強層を構成する繊維強化樹脂が硬化し、高圧タンク8を得る。
【0011】
タンクライナー1とは、ガスバリア性に優れ、低温でも耐衝撃性を有する材料を使用したタンク形状の部材であれば特に限定されるものではなく、材料はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、またはその他の硬質樹脂などにより形成されたタンクライナーを用いることが出来るが、ポリアミド樹脂を材料として使用したタンクライナーが好ましい。
【0012】
金属層3を構成する金属とは、熱伝導が良く、輻射熱を反射する性質がある材料であれば特に限定されるものではなく、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、マグネシウム等の種々の金属を用いることができる。
金属層3の厚さは限定されるものではないが、金属層3を容易に形成するため、0.05~3mm程度が好ましい。
金属層3は、タンクライナー1の外側表面の少なくとも一部又は全部に配置されるものであるが、少なくともタンクライナー1の筒の側部(シリンダー部)を覆うものが好ましい。
金属層3は、アルミフォイル等の金属箔であってもよいし、金属粉を塗装スプレーでタンクライナーに吹き付けることにより形成してもよい。アルミフォイルは安価な市販品で薄く巻き付けることができ、金属粉は均一に塗布できるという特徴を有する。
【0013】
補強層4は、少なくとも、繊維強化樹脂を含む。補強層4の好ましい態様としては、炭素繊維5を巻回されて形成される炭素繊維層41と、繊維強化樹脂層42bとを含む。
まず、炭素繊維層41について説明する。
炭素繊維層41は、樹脂を含浸した炭素繊維5の繊維束から構成される。繊維束とは、連続した炭素繊維5に樹脂を均等に含浸させ、加熱又は乾燥して粘性状態にした束状の中間素材であれば特に限定されるものではない。
炭素繊維5は、例えば、ポリアクリルニトリルを原料とするPAN系炭素繊維とピッチを原料とするピッチ系炭素繊維等を用いることが出来る。炭素繊維層41を構成する炭素繊維としては、PAN系炭素繊維が好ましいが、それに限定されるものではない。
炭素繊維5に含浸させる樹脂についても、特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びそれらの一種を含む樹脂組成物を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、これらは組み合わせて使用することができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数混合して用いてもよい。
炭素繊維層41の厚さは限定されるものではないが、高圧に耐えるのに十分な強度を有するため、0.1~50mm程度が好ましい。
【0014】
炭素繊維層41の外側に配置される繊維強化樹脂層42bは、プリプレグ42aを配置した上で加熱プレスにより得られる繊維強化樹脂から構成される。
繊維強化樹脂層42bを形成するためのプリプレグ42aは、ガラスクロス、炭素繊維のような繊維状補強材に樹脂を均等に含浸させ、加熱又は乾燥して粘性状態にしたシート状の中間素材であれば特に限定されるものではなく、織物プリプレグ、一方向プリプレグ等を用いることが出来る。
プリプレグ42aを構成する樹脂についても、特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びそれらの一種を含む樹脂組成物を用いることができる。例えば、100℃~150℃未満の耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック、150℃以上の耐熱性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。具体的な種類としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、これらは組み合わせて使用することができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数混合して用いてもよい。
【0015】
プリプレグ42aを構成する繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等を用いることができる。繊維強化樹脂プレプレグ中の繊維基材としては、0.03mm~0.5mmの厚さの炭素繊維材が好ましいが、それに限定されるものではない。また、プリプレグ42aを構成する炭素繊維はポリアクリルニトリルを原料とするPAN系炭素繊維とピッチを原料とするピッチ系炭素繊維等を用いることが出来る。プリプレグ層を構成するプリプレグ中の炭素繊維としては、PAN系炭素繊維が好ましいが、それに限定されるものではない。また、プリプレグを構成する繊維には、SMC(Sheet Molding Compound)などの複合体も包含されるものとする。
【0016】
プリプレグ42aとしては、エポキシ樹脂と炭素繊維とから構成されている織物プリプレグが好ましいが、それに限定されるものではない。また、一枚のプリプレグで構成されてもよいし、同種又は異種の複数枚のプレプレグで構成されていてもよい。
炭素繊維層41の外側に配置するプリプレグの厚さは限定されるものではないが、高圧に耐えるのに十分な強度を有するため、0.1~50mm程度が好ましい。
【0017】
[高圧タンクの製造方法]
本明細書において、高圧タンク8の製造方法とは、タンクライナー1を用意する工程と;タンクライナー1の外側表面に金属層3を配置する工程と;金属層3の外側に、炭素繊維5を巻回し、炭素繊維層41を形成する工程と;炭素繊維層41の外側にシート状プリプレグ42aを配置し、プレス前高圧タンク7を得る工程と;プレス前高圧タンク7を加熱プレスし、高圧タンク8を得る工程とを含む、高圧タンク8の製造方法である。製造方法について、図2を用いて説明する。
【0018】
タンクライナー1を用意する工程(図2(a))では、図示しないが、繊維束をタンクライナー1の外側に繰り返し巻き付けることが出来るように、タンクライナー1を回転軸に装着し、モーターによりタンクライナー1が回転できるようにすることを含む。
【0019】
タンクライナー1の外側表面に金属層3を配置する工程(図2(b))には、タンクライナー1に金属箔を貼り付ける方法、円筒状の薄い金属箔にタンクライナーを差し込む方法、金属粉を塗装スプレーで吹き付ける方法等が挙げられる。金属粉を塗装スプレーで吹き付ける方法は、金属層の厚さを一定にしやすい点で好ましい。
【0020】
金属層3の外側に、炭素繊維5を巻回し、炭素繊維層41を形成する工程(図2(c))は、具体的な例として、周知のフィラメントワインディング(FW)法により、樹脂を含浸した繊維束を、タンクライナー1の外側表面に形成された金属層3の外側に繰り返し巻き付ける工程などが挙げられる。具体的な繊維巻き付け方法としては、図3に挙げられるように、フープ巻き(図3の5P)、低角度ヘリカル巻き(図3の5H)、高角度のヘリカル巻きなどが挙げられ、状況や場所により使い分けられる。本明細書ではタンクライナー1の略半球状部分をドーム部、筒状胴体部分をシリンダー部とし、こうした繊維巻き付けの使い分けにより、炭素繊維層41は、タンクライナー1におけるシリンダー部およびドーム部の外表全域を被覆する。
【0021】
炭素繊維層41の外側にシート状のプリプレグ42aを配置し、プレス前高圧タンク7を得る工程とは、炭素繊維層41の外側にシート状のプリプレグ42aを配置し、タンクライナー7におけるシリンダー部およびドーム部の外表全域を被覆する工程である(図2(c)参照)。シート状プリプレグは、半硬化な状態であるため、フレキシブルな硬さであり、図2(c)のように、口金21,22を含み、一度に外側全体を被覆してのよいし、まず被覆しやすいシリンダー部のみについてプリプレグ41a1を配置し、その後、ドーム部41a2を配置してもよい。
【0022】
シート状のプリプレグ42aを貼り付ける方法とは、例えば、シリンダー部については、図4に示すように、炭素繊維層の外側のシリンダー部において、矩形シート状のシリンダー用プリプレグ42aを1周巻き、端部Eを少し重ねるようにする。このようにすることにより、端部Eを強化することができる。図4(a)では、プリプレグのシートを1周のみ巻いたものを示すが、シリンダー用プレプレグ42a1は複数層重ねることができ、その際は、2層目、3層目の端部は、下層のプリプレグの端部Eとは重ならないところに配置することが好ましい。例えば、3層のプリプレグを配置する際は、各端部は、高圧タンクの円周において、互いに等距離にはなれる、すなわち、中心からのそれぞれの端部までのなす角度が120°になるように配置する。
その後、ドーム部にドーム部用プリプレグ42a2を配置する。図4では、ドーム部用プリプレグ42a2は口金付近の形状にあわせてキャップ状に加工したプリプレグを配置するが、別の方法として、プリプレグを細く切断し、それを巻き付ける方法が挙げられる。この方法であれば複雑な形状であっても、微調整が可能となる。なお、ドーム部用プリプレグ42a2についても、1層又は複数層(例えば、2層、3層、4層など)設けることができる。
【0023】
プレス前高圧タンク7を加熱プレスし高圧タンク8を得る工程を、図5を用いて説明する。具体的には、電熱線等の加熱手段を有する上金型62と下金型61とを用いて、プレス前高圧タンク7を両金型に挟み込むことによって行われる工程である。上金型62及び下金型61は、成形品を形成するために、所定の形状を有することができる。例えば、上金型62及び下金型61のプレス面に、プレス前高圧タンク7に対応する(プレス前高圧タンクが入り込むことができる)凹部を設けることができる。
【0024】
本発明のプレス前高圧タンク7のプレス成形においてプレス加工温度は通常100~350℃である。炭素繊維層41、及びプリプレグ42aの樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、120~160℃にすることができ、炭素繊維層41、及びプリプレグ42bの樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、230~350℃にすることができる。
【0025】
プレス前高圧タンク7のプレス加工の圧力についても、特に限定されるものではなく、通常0.1~15MPaである。
【0026】
このようにして得られる高圧タンク8は、水素タンク等に使用することができる。
【実施例
【0027】
次に本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明は、実施例に限定されるものではなく、当業者に周知された範囲で適宜設計変更等することが可能である。
【0028】
[プレス前高圧タンクの製造]
まず、口金21と口金22とがドーム部12に装着済みのタンクライナー1が準備され、このタンクライナー1に回転軸(図示しない)を装着する。
次に、モーター(図示しない)の回転により回転するタンクライナー1にアルミフォイルを貼り付け、金属層3をタンクライナー1の外側に形成する(図2(a)参照)。
【0029】
次に、金属層3が形成されたタンクライナー30にFW法を用いて炭素繊維層41を形成する。
金属層3が形成されたタンクライナー30を回転させつつ、シリンダー部11の外周範囲に亘るフープ巻き(5P)による半硬化樹脂付炭素繊維5(トウプリプレグ)の繰り返し巻き付けと、ドーム部12の外周範囲に亘る低角度・高角度のヘリカル巻き(5H等)による半硬化樹脂付炭素繊維5の繰り返し巻き付けとを使い分け、回転速度やトウプリプレグ5の送り出し速度についても調整し、繰り返し巻き付ける(図2(b)、図3参照)。
【0030】
次に、炭素繊維層41が形成されたタンクライナー411にプリプレグ42aを配置し、プレス前高圧タンク7を形成する(図2(c)参照)。
【0031】
[プレス前高圧タンクの成形]
プレス機を用いるプレス方法について説明する。まず、プレス前高圧タンク7に対応する(プレス前高圧タンク7が入り込むことができる)凹部を設けた下金型61、及び上金型62を内部又は外部に備えられている加熱ヒーター(図示しない)により、130℃に加熱する。
次に、回転軸からプレス前高圧タンク7を取り外し、下金型61に載置する(図5(a)参照)。
そして、上金型62の凹部にプレス前高圧タンク7が入り込み、下金型61と上金型62が接するまで、下金型61を上昇させる。
【0032】
下金型61と上金型62が接し、プレス前高圧タンク7を加圧した状態で、所定の位置で下金型の上昇を停止する。上昇を停止した位置で、引き続き加熱を行い、繊維強化樹脂が硬化するように、加圧、加熱を継続する。下金型61の停止した状態の時間は、10秒から1時間の範囲である(図5(b)参照)。
【0033】
必要な加圧、加熱を実施した後、加熱を停止し、所定の温度まで冷却した後、下金型61を降下させ、プレス成形された高圧タンク8を得た。
【符号の説明】
【0034】
1・・・タンクライナー
11・・・シリンダー部
12・・・ドーム部
21・・・口金
22・・・口金
3・・・金属層
30・・・金属層が形成されたタンクライナー
41・・・炭素繊維層
411・・・炭素繊維層が形成されたタンクライナー
42・・・プリプレグ
5・・・(粘性樹脂付)炭素繊維
61・・・下金型
62・・・上金型
7・・・プレス前高圧タンク
8・・・高圧タンク
【要約】
【課題】
高圧に耐えるのに十分な強度を有しつつ、製造時間を短縮し、生産性を高めた、高圧タンク、及びプレス成形により繊維強化樹脂を硬化させて得られる高圧タンクの製造方法。
【解決手段】
タンクライナーと、タンクライナーの外側に金属層と、金属層の外側周に樹脂を含浸した繊維束を巻回されて形成される炭素繊維層と、炭素繊維層の外側に配置された繊維強化樹脂層とを含む補強層から形成される高圧タンクであって、プレス成形により、補強層を構成する繊維強化樹脂が硬化し、高圧タンクを得る。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5