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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】3Dプリンタ装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/264 20170101AFI20220810BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220810BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20220810BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220810BHJP
   B29C 64/255 20170101ALI20220810BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20220810BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20220810BHJP
【FI】
B29C64/264
B33Y30/00
B29C64/295
B29C64/209
B29C64/255
B29C64/106
B29C64/245
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022011149
(22)【出願日】2022-01-27
【審査請求日】2022-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594034005
【氏名又は名称】ホッティーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】田鍋 史生
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111246(JP,A)
【文献】特許第6949191(JP,B1)
【文献】特開2016-016553(JP,A)
【文献】特表2016-526495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の照射により硬化する紫外線硬化材料を用いて造形物を製造する3Dプリンタ装置であって、
当該3Dプリンタ装置は、
前記紫外線硬化材料を貯留する材料タンクと、
当該3Dプリンタ装置上下方向及び当該3Dプリンタ装置左右方向に移動可能であり且つ前記材料タンクに貯留された前記紫外線硬化材料を射出可能な射出部と、
該射出部により射出された紫外線硬化材料が上面に載置され且つ当該3Dプリンタ装置前後方向に移動可能なステージ部と、
所定の照射範囲にて紫外線を照射可能であり且つ前記ステージ部が移動して該ステージ部の上面に射出された前記紫外線硬化材料が前記照射範囲内に位置した状態にて前記紫外線硬化材料に対して紫外線を照射する紫外線照射部と、を備え、
前記紫外線照射部は、前記ステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成されており、
前記紫外線照射部の前記紫外線照射面は、当該3Dプリンタ装置上下方向において前記射出部の下端部よりも下方に配置され、前記造形物の上面全域に対向するように紫外線を照射することが可能な照射範囲を有することを特徴とする3Dプリンタ装置。
【請求項2】
前記材料タンク、前記ステージ部、前記射出部及び前記紫外線照射部を内部に収納する筐体と、
該筐体の外部から該筐体の内部への紫外線の侵入を防止する紫外線遮蔽部とを備え、
前記射出部は、当該3Dプリンタ装置を平面視したとき当該3Dプリンタ装置の前後方向中央部に配置されて当該3Dプリンタ装置上下方向及び当該3Dプリンタ装置左右方向に移動可能に設置され、
前記紫外線照射部は、当該3Dプリンタ装置前後方向における前記射出部の前方に固定した状態で配置され、
前記ステージ部は、前記射出部及び前記紫外線照射部よりも当該3Dプリンタ装置上下方向における下方に配置され、前記射出部及び前記紫外線照射部それぞれの下方間を移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の3Dプリンタ装置。
【請求項3】
前記紫外線照射部は、UVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)照射器であることを特徴とする請求項1又は2記載の3Dプリンタ装置。
【請求項4】
前記紫外線硬化材料は、紫外線硬化シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の3Dプリンタ装置。
【請求項5】
前記紫外線遮蔽部は、前記筐体に設けられた窓開口部の光透過材料の内方に貼設された紫外線遮蔽シートからなることを特徴とする請求項2記載の3Dプリンタ装置。
【請求項6】
熱エネルギー照射部を加熱部としてさらに有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の3Dプリンタ装置。
【請求項7】
基部と、前後方向において基部の前端に配置された支持部と、基部の後端に立設された昇降機構と、前記昇降機構に支持され且つ左右方向に延在するように設けられた左右方向移動機構と、前記基部上における左右方向の中間部に配置され且つ基部上における前端側から後端側にわたって延在するように設けられた前後方向移動機構とを備え、
前記射出部は、前記昇降機構及び前記左右方向移動機構により、前記基部に対して上下方向及び左右方向に移動可能に配置され、
前記ステージ部は、前記前後方向移動機構により前記基部上を前後方向に移動可能に配置され、
前記紫外線照射部は、前記基部に対して、前記支持部により前後方向における射出部の前方に固定された状態で配置されていることを特徴とする請求項2記載の3Dプリンタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタ装置に係り、特に、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化材料を用いて造形物を製造する3Dプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化材料を用いて造形物を造形する造形装置(所謂「3Dプリンタ装置」)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された3Dプリンタ装置(以下、本明細書では「従来技術」と言う)は、紫外線硬化材料を貯留する材料タンクと、紫外線硬化材料を射出可能な射出部と、射出された紫外線硬化材料が載置されるステージ部と、左右方向及び前後方向に移動可能でありステージ部に射出された紫外線硬化材料に対して紫外線を照射する紫外線照射部と、材料タンク、ステージ部、射出部及び紫外線照射部を内部に収納する筐体と、筐体外部から筐体内部への紫外線の侵入を防止する紫外線遮蔽部と、を備えている。
【0004】
さらに、特許文献1では、紫外線照射部は、射出部において紫外線硬化材料が注入されるディスペンサー部に固定されており、ステージ部上に配置された紫外線硬化材料の周囲を囲むことができるように全体リング状に形成され、複数の点光源を有するように構成されている(特許文献1の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6949191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術では、紫外線照射部の外形全体がリング状に形成されていることから、以下のような問題点があった。
【0007】
まず第1に、紫外線照射部がリング状であることから、平面視方形状の造形物を形成する場合に、造形物の隅部が、はみ出してしまうという虞があった。このため、従来技術では、製造しようとする造形物の形状にマッチした紫外線硬化材料の紫外線硬化を行い難く、その結果、造形物の品質に影響を来してしまう可能性があった。
【0008】
第2に、リング状に形成された紫外線照射部では、造形物の外周を囲むように紫外線を照射することが可能であるが、造形部の上面全域に対向するように紫外線を確実に照射し難かった。このため、例えば、「ある硬化層を硬化形成した後、当該硬化層の上面に別の硬化層を硬化形成する」というような造形物の形成工程が実行し難いという虞があった。したがって、従来技術では、多層硬化による造形物の製造を迅速、確実且つ高品質に行い難い可能性があった。
【0009】
本発明は、紫外線硬化材料を用い、良好な硬化品質を実現することにより高品質な造形物を製造することができる3Dプリンタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明にあっては、 紫外線の照射により硬化する紫外線硬化材料を用いて造形物を製造する3Dプリンタ装置であって、当該3Dプリンタ装置は、前記紫外線硬化材料を貯留する材料タンクと、当該3Dプリンタ装置上下方向及び当該3Dプリンタ装置左右方向に移動可能であり且つ前記材料タンクに貯留された前記紫外線硬化材料を射出可能な射出部と、該射出部により射出された紫外線硬化材料が上面に載置され且つ当該3Dプリンタ装置前後方向に移動可能なステージ部と、所定の照射範囲にて紫外線を照射可能であり且つ前記ステージ部が移動して該ステージ部の上面に射出された前記紫外線硬化材料が前記照射範囲内に位置した状態にて前記紫外線硬化材料に対して紫外線を照射する紫外線照射部と、を備え、前記紫外線照射部は、前記ステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、該紫外線照射面は平面視方形状に形成されており、前記紫外線照射部の前記紫外線照射面は、当該3Dプリンタ装置上下方向において前記射出部の下端部よりも下方に配置され、前記造形物の上面全域に対向するように紫外線を照射することが可能な照射範囲を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明にあっては、前記材料タンク、前記ステージ部、前記射出部及び前記紫外線照射部を内部に収納する筐体と、該筐体の外部から該筐体の内部への紫外線の侵入を防止する紫外線遮蔽部とを備え、前記射出部は、当該3Dプリンタ装置を平面視したとき当該3Dプリンタ装置中央部に配置されて当該3Dプリンタ装置上下方向及び当該3Dプリンタ装置左右方向に移動可能に設置され、前記紫外線照射部は、当該3Dプリンタ装置前後方向における前記射出部の前方に固定した状態で配置され、前記ステージ部は、前記射出部及び前記紫外線照射部よりも当該3Dプリンタ装置上下方向における下方に配置され、前記射出部及び前記紫外線照射部それぞれの下方間を移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明にあっては、前記紫外線照射部は、UVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)照射器であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明にあっては、前記紫外線硬化材料は、紫外線硬化シリコーンゴムであることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明にあっては、前記紫外線遮蔽部は、前記筐体に設けられた窓開口部の光透過材料の内方に貼設された紫外線遮蔽シートからなることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明にあっては、熱エネルギー照射部を加熱部としてさらに有することを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明にあっては、基部と、前後方向において基部の前端に配置された支持部と、基部の後端に立設された昇降機構と、前記昇降機構に支持され且つ左右方向に延在するように設けられた左右方向移動機構と、前記基部上における左右方向の中間部に配置され且つ基部上における前端側から後端側にわたって延在するように設けられた前後方向移動機構とを備え、前記射出部は、前記昇降機構及び前記左右方向移動機構により、前記基部に対して上下方向及び左右方向に移動可能に配置され、前記ステージ部は、前記前後方向移動機構により前記基部上を前後方向に移動可能に配置され、前記紫外線照射部は、前記基部に対して、前記支持部により前後方向における射出部の前方に固定された状態で配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、紫外線照射部がステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、紫外線照射面が平面視方形状に形成されていることから、従来技術のような外形全体がリング状の紫外線照射部では隅部がはみ出してしまうような造形物を製造するような場合であっても、当該造形物の形状にマッチした紫外線硬化材料の紫外線硬化を行うことが可能となる。その結果、良好な品質の造形物を製造することが可能となる。
また、紫外線照射面にて造形物の上面全域に対向するように紫外線を確実に照射することが可能であることから、例えば「ある硬化層を硬化形成した後、当該硬化層の上面に別の硬化層を硬化形成する」というような造形物の形成工程を、より確実に実行することが可能となる。その結果、多層硬化による造形物の製造を迅速、確実且つ高品質に行うことが可能となる。
以上より、良好な硬化品質を実現することにより高品質な造形物を製造することが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、紫外線照射部の紫外線照射面が射出部の下端部よりも下方に配置されていることから、紫外線照射面が射出部よりも造形物に接近するため、造形物の大きさ、形状及び構造に応じた紫外線供給が可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、射出部が3Dプリンタ装置中央部に配置されて上下方向及び左右方向に移動可能に設置され、紫外線照射部が前後方向における射出部の前方に固定した状態で配置され、ステージ部が射出部及び紫外線照射部よりも上下方向における下方に配置され、射出部及び紫外線照射部それぞれの下方間を移動可能に構成されていることから、従来技術では困難であった平面視方形状の造形物や多層硬化による造形物の形成をするにあたり、より一層、造形物を迅速、確実且つ高品質に製造することが可能となる。
また、前記材料タンク、前記ステージ部、前記射出部及び前記紫外線照射部を内部に収納する筐体と、該筐体の外部から該筐体の内部への紫外線の侵入を防止する紫外線遮蔽部とを備えていることから、より外部の紫外線の影響を確実に排除した状態で紫外線硬化材料による造形物を高品質に製造することが可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、紫外線照射部がUVLED照射器であることから、造形物を広範囲にて紫外線を一括照射することが可能となるとともに、造形物に対して紫外線を均等に照射することが可能となる。
したがって、造形物の製造に係るコスト及び作業時間を低減することが可能となるとともに、より一層良好な品質の造形物を製造することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、紫外線硬化材料が紫外線硬化シリコーンゴムであることから、熱により硬化させる熱硬化シリコーンゴムを使用しないようにすることが可能となる。
したがって、紫外線硬化材料として紫外線硬化シリコーンゴムを用いることにより、熱硬化シリコーンゴムと比較して、エネルギーの無駄が無くなるだけでなく、筐体内部が低温になるため、造形物の製造作業における作業性及び安全性を良好にすることが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、紫外線遮蔽部は、筐体に設けられた窓開口部の光透過材料の内方に貼設された紫外線遮蔽シートからなることから、筐体の、外部に対して透明な部位からの紫外線の侵入を防ぎ、筐体外部からの紫外線の影響を排除した状態で、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化材料に対して紫外線を照射しつつ造形物を硬化させて造形物の製造を行うことが可能となる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、熱エネルギー照射部を加熱部としてさらに有することから、熱エネルギー照射部と紫外線照射部とを併用することにより、造形物に応じてより効率的な硬化作業を行うことができ、造形物の硬化スピードを上げて、造形物の硬化時間を低減することが可能となる。
したがって、造形物の製造に係る作業時間をより一層低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る3Dプリンタ装置の構成を示す正面図である。
図2図1に図示する3Dプリンタ装置の構成を示す平面図である。
図3図1に図示する3Dプリンタ装置の構成を示す側面(右側面)図である。
図4】本実施形態に係る3Dプリンタ装置を用いた造形物の形成工程の一例について説明する図であり、(a)は第1硬化層を形成するための紫外線硬化材料を射出した状態を示す図、(b)は紫外線硬化材料に紫外線を照射し第1硬化層を形成した状態を示す図である。
図5図4に続く図であり、(a)は第1硬化層の上面に第2硬化層を形成するための紫外線硬化材料を射出した状態を示す図、(b)は紫外線硬化材料に紫外線を照射し第2硬化層を形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る3Dプリンタ装置の構成を示す正面図、図2図1に図示する3Dプリンタ装置の構成を示す平面図、図3図1に図示する3Dプリンタ装置の構成を示す側面(右側面)図、図4は本実施形態に係る3Dプリンタ装置を用いた造形物の形成工程の一例について説明する図であり、(a)は第1硬化層を形成するための紫外線硬化材料を射出した状態を示す図、(b)は紫外線硬化材料に紫外線を照射し第1硬化層を形成した状態を示す図、図5図4に続く図であり、(a)は第1硬化層の上面に第2硬化層を形成するための紫外線硬化材料を射出した状態を示す図、(b)は紫外線硬化材料に紫外線を照射し第2硬化層を形成した状態を示す図である。
【0025】
なお、図中に図示する矢印において、X軸は3Dプリンタ装置の左右方向を、Y軸は3Dプリンタ装置の前後方向を、Z軸は3Dプリンタ装置の上下方向を、それぞれ示している(矢印の各方向は一例であるものとする)。
【0026】
図1図3に図示する本実施形態に係る3Dプリンタ装置10は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化材料を用いて造形物を製造する3Dプリンタ装置である。3Dプリンタ装置10は、基部12と、前後方向において基部12の前方に配置された支持部13と、基部12上における後端に立設された昇降機構14と、昇降機構14に支持され且つ左右方向に延在するように設けられた左右方向移動機構15と、基部12上における左右方向の中間部に配置され且つ基部12上における前端側から後端側にわたって延在するように設けられた前後方向移動機構16と、を備えている。
【0027】
3Dプリンタ装置10は、上記各構成12~16に加え、紫外線硬化材料を貯留する材料タンク(図示せず)と、昇降機構14にて上下方向に移動可能であるとともに左右方向移動機構15にて左右方向に移動可能であり且つ材料タンクに貯留された紫外線硬化材料を射出可能な射出部17と、射出部17により射出された紫外線硬化材料が上面21に載置され且つ前後方向移動機構16にて基部12上を前後方向に移動可能なステージ部18と、所定の照射範囲にて紫外線を照射可能であり且つステージ部18が移動してステージ部18の上面21に射出された紫外線硬化材料が照射範囲内に位置した状態にて紫外線硬化材料に対して紫外線を照射する紫外線照射部19と、筐体20及びこの筐体20の外部から筐体20に設けられた内部確認用の窓開口部等からの内部への紫外線の侵入を防止する紫外線遮蔽部(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態にあっては、筐体20及びこの筐体20の外部から筐体20の内部への紫外線の侵入を防止する紫外線遮蔽部と、を備えている場合を例に説明したが、本実施の形態に限定されず、筐体20及び紫外線遮蔽部が設けられていなくてもよい。
【0028】
また、本実施形態に係る3Dプリンタ装置10は、ディスペンスコントローラ22と、紫外線照射用電源23と、を備えている。ディスペンスコントローラ22は、射出部17における紫外線硬化材料の射出を制御するように構成された装置である。また、紫外線照射用電源23は、紫外線照射部19に対して紫外線を照射するための電源を供給可能に構成された装置である。
【0029】
さらに、本実施形態に係る3Dプリンタ装置10は、制御部を備えている。制御部は、予め格納された造形物11の形状、構造データ及び紫外線硬化材料の材料データ等に基づいて、3Dプリンタ装置10の各部を制御し、造形物11を製造するように構成されている。
【0030】
以下、図1図3を参照しつつ、本実施形態に係る3Dプリンタ装置10の各構成について説明する。
【0031】
材料タンクは、図示及び詳細な説明を省略するが、この材料タンクの内部に貯留した紫外線硬化材料を、材料供給チューブを介して射出部17に供給するように構成されている。
【0032】
射出部17は、基部12の上方で且つ3Dプリンタ装置10を平面視したとき3Dプリンタ装置10の前後方向中央部に配置されている。射出部17は、紫外線硬化材料が注入されるディスペンサー部24と、ディスペンサー部24の下部に設けられ紫外線硬化材料を射出するヘッド部25と、を備えている。射出部17は、前後方向における射出部17の後方に配置された圧縮空気吐出機構26に連設されている。
【0033】
圧縮空気吐出機構26は、射出部17における紫外線硬化材料の射出に供する圧縮空気を吐出するように構成されている。圧縮空気は、圧縮空気供給チューブ27を介して圧縮空気吐出機構26に供給されている。圧縮空気吐出機構26は、左右方向移動機構15に支持されており、昇降機構14及び左右方向移動機構15にて基部12の後端側で且つ基部12の上方に支持されている。
【0034】
昇降機構14、左右方向移動機構15、射出部17及び圧縮空気吐出機構26が上記構成を備えることにより、射出部17は、基部12の上方で且つ3Dプリンタ装置10を平面視したとき3Dプリンタ装置10の前後方向中央部に配置された状態において、昇降機構14にて上下方向に移動可能であるとともに左右方向移動機構15にて左右方向に移動可能に設置されている。
【0035】
ステージ部18は、平面視方形状の板状に形成されている。ステージ部18は、基部12上における左右方向の中間部に配置され且つ射出部17及び紫外線照射部19よりも上下方向における下方に配置されている。ステージ部18は、前後方向移動機構16にて射出部17及び紫外線照射部19それぞれの下方間を移動可能に構成されている。
【0036】
紫外線照射部19は、UVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)照射器であり、支持部13にて前後方向における射出部17の前方に固定した状態で配置されている。紫外線照射部19は、ステージ部18の上面21に対向する紫外線照射面28を有している。
【0037】
紫外線照射面28は、所定の照射範囲(図2に図示する矢印L1、L2参照)にて紫外線を照射する部分であり、平面視方形状に形成されている。ここで、上記「所定の照射範囲」とは、3Dプリンタ装置10にて製造しようとする造形物11の上面全域に対向するように紫外線を照射することが可能な照射範囲である。紫外線照射面28は、上下方向において射出部17におけるヘッド部25の下端部よりも下方に配置されている。
【0038】
筐体20は、3Dプリンタ装置10の各構成12~19、26を、この筐体20の内部に収容可能に形成されている。筐体20には、特に図示しないが、光透過材料(例えば、透明ガラス等)により形成された窓開口部が設けられている。紫外線遮蔽部は、窓開口部の光透過材料の内方に貼設された紫外線遮蔽シートからなるものである。
【0039】
本実施形態における紫外線硬化材料は、紫外線硬化シリコーンゴムである。紫外線硬化材料に対して紫外線照射部19から紫外線が照射された場合には「紫外線硬化(UV硬化)」の事態が起きる。この「紫外線硬化(UV硬化)」は、紫外線を利用した化学反応(重合反応)による硬化であり、例えば、熱硬化シリコーンゴムに対してハロゲン光が照射された場合における「熱硬化」とは異なる。
【0040】
なお、本実施形態に係る3Dプリンタ装置10は、図示及び詳細な説明を省略するが、熱エネルギー照射部を加熱部としてさらに有するものであってもよいものとする。
【0041】
つぎに、図4及び図5を参照しつつ、本実施形態に係る3Dプリンタ装置10を用いた造形物30の形成工程の一例について説明する。なお、以下、平面視方形状の第1硬化層32を形成した後、第1硬化層32の上面に平面視方形状の第2硬化層34を形成する場合について説明する。
【0042】
まず、図4(a)に図示するように、ステージ部18を射出部17の下方に配置させ、ステージ部18の上面21に紫外線硬化材料31を平面視方形状に射出する。上下方向及び左右方向における射出部17の位置は、昇降機構14及び左右方向移動機構15にて調整する。
【0043】
次に、図4(b)に図示するように、ステージ部18を射出部17の前方に移動させて紫外線照射部19の下方に配置させる。しかる後、紫外線照射材料31が照射範囲内に位置した状態において、紫外線硬化材料31の上面全域に対向するように紫外線照射部19にて紫外線UVを照射する。紫外線硬化材料31が紫外線UVにて紫外線硬化すると、第1硬化層32が形成される。
【0044】
第1硬化層32の形成後、図5(a)に図示するように、ステージ部18を射出部17の下方に配置させ、第1硬化層32の上面に紫外線硬化材料33を平面視方形状に射出する。
【0045】
図5(b)に図示するように、ステージ部18を前方に移動させて紫外線照射部19の下方に配置させる。しかる後、紫外線照射材料33が照射範囲内に位置した状態において、紫外線硬化材料33の上面全域に対向するように紫外線照射部19にて紫外線UVを照射する。紫外線硬化材料33が紫外線UVにて紫外線硬化すると、第2硬化層34が形成される。
【0046】
以上により、本実施形態に係る3Dプリンタ装置10を用いた造形物30の形成が完了する。
【0047】
本実施形態に係る3Dプリンタ装置10は、以上の構成を有し、以下に、本実施形態により得られる効果について説明する。
【0048】
本実施形態によれば、紫外線照射部19がステージ部18の上面21に対向する紫外線照射面28を有し、紫外線照射面28が平面視方形状に形成されていることから、従来技術のような外形全体がリング状の紫外線照射部では隅部がはみ出してしまうような造形物11、30を製造するような場合であっても、当該造形物11、30の形状にマッチした紫外線硬化材料の紫外線硬化を行うことが可能となる。その結果、良好な品質の造形物11、30を製造することが可能となる。
また、紫外線照射面にて造形物11、30の上面全域に対向するように紫外線を照射することが可能であることから、従来技術では困難であった例えば「第1硬化層32を硬化形成した後、第1硬化層32の上面に第2硬化層34を硬化形成する」というような造形物11、30の形成工程を実行することが可能となる。その結果、多層硬化による造形物11、30の製造を迅速、確実且つ高品質に行うことが可能となる。
以上より、良好な硬化品質を実現することにより高品質な造形物11、30を製造することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態によれば、射出部17が3Dプリンタ装置10の中央部に配置されて上下方向及び左右方向に移動可能に設置され、紫外線照射部19が前後方向における射出部17の前方に固定した状態で配置され、ステージ部18が射出部17及び紫外線照射部19よりも上下方向における下方に配置され、射出部17及び紫外線照射部19それぞれの下方間を移動可能に構成されていることから、従来技術では困難であった平面視方形状の造形物11や多層硬化による造形物30の形成をするにあたり、より一層、造形物11、30を迅速、確実且つ高品質に製造することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、紫外線照射部19がUVLED照射器であることから、造形物11、30を広範囲にて紫外線を一括照射することが可能となるとともに、造形物11、30に対して紫外線を均等に照射することが可能となる。
したがって、造形物11、30の製造に係るコスト及び作業時間を低減することが可能となるとともに、より一層良好な品質の造形物11、30を製造することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態によれば、紫外線照射部19の紫外線照射面28が射出部17におけるヘッド部25の下端部よりも下方に配置されていることから、紫外線照射面28が射出部17よりも造形物11、30に接近するため、造形物11、30の大きさ、形状及び構造に応じた紫外線供給が可能となる。
【0052】
また、本実施形態によれば、紫外線硬化材料が紫外線硬化シリコーンゴムであることから、熱により硬化させる熱硬化シリコーンゴムを使用しないようにすることが可能となる。
したがって、紫外線硬化材料として紫外線硬化シリコーンゴムを用いることにより、熱硬化シリコーンゴムと比較して、エネルギーの無駄が無くなるだけでなく、筐体20内部が低温になるため、造形物11、30の製造作業における作業性及び安全性を良好にすることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態によれば、紫外線遮蔽部は、筐体20に設けられた窓開口部の光透過材料の内方に貼設された紫外線遮蔽シートからなることから、筐体20の、外部に対して透明な部位からの紫外線の侵入を防ぎ、筐体20外部からの紫外線の影響を排除した状態で、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化材料に対して紫外線を照射しつつ造形物11、30を硬化させて造形物11、30の製造を行うことが可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、熱エネルギー照射部を加熱部としてさらに有することから、熱エネルギー照射部と紫外線照射部とを併用することにより、造形物11、30に応じてより効率的な硬化作業を行うことができ、造形物11、30の硬化スピードを上げて、造形物11、30の硬化時間を低減することが可能となる。
したがって、造形物11、30の製造に係る作業時間をより一層低減することが可能となる。
【0055】
なお、上記実施形態に記載した構成に関しては、本発明の範囲内において適宜の変更が可能であり、上記実施形態の構成には限定されない。
【符号の説明】
【0056】
10…3Dプリンタ装置
11、30…造形物
12…基部
13…支持部
14…昇降機構
15…左右方向移動機構
16…前後方向移動機構
17…射出部
18…ステージ部
19…紫外線照射部
20…筐体
21…上面
22…ディスペンスコントローラ
23…紫外線照射電源
24…ディスペンサー部
25…ヘッド部
26…圧縮空気吐出機構
27…圧縮空気供給チューブ
28…紫外線照射面
31、33…紫外線硬化材料
32…第1硬化層
34…第2硬化層
【要約】
【課題】紫外線硬化材料を用い、良好な硬化品質を実現することにより高品質な造形物を製造することができる3Dプリンタを提供する。
【解決手段】3Dプリンタ装置は、上下方向及び左右方向に移動可能であり且つ材料タンクに貯留された紫外線硬化材料を射出可能な射出部と、射出された紫外線硬化材料が上面に載置され且つ前後方向に移動可能なステージ部と、紫外線を照射可能であり且つステージ部が移動して紫外線硬化材料が照射範囲内に位置した状態にて紫外線硬化材料に対して紫外線を照射する紫外線照射部と、材料タンク、ステージ部、射出部及び紫外線照射部を内部に収納する筐体と、筐体の外部から内部への紫外線の侵入を防止する紫外線遮蔽部とを備えている。紫外線照射部は、ステージ部の上面に対向する紫外線照射面を有し、紫外線照射面は平面視方形状に形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5