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特許7121458新しいボツリヌス毒素製剤の長期持続作用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】新しいボツリヌス毒素製剤の長期持続作用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20220810BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220810BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A61K38/48
A61K38/16
A61K9/19
A61K47/26
A61K47/18
A61P17/00
A61P21/02
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019217930
(22)【出願日】2019-12-02
(62)【分割の表示】P 2016538656の分割
【原出願日】2014-12-12
(65)【公開番号】P2020045360
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】61/915,476
(32)【優先日】2013-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513243723
【氏名又は名称】メディトックス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ヒュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ギ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒュン ジー
(72)【発明者】
【氏名】リー チャン フーン
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532784(JP,A)
【文献】国際公開第2012/134240(WO,A2)
【文献】特表2008-514353(JP,A)
【文献】特表2013-509248(JP,A)
【文献】国際公開第2013/151671(WO,A1)
【文献】特表2011-530392(JP,A)
【文献】特表2011-506511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療が必要な患者の状態を治療するための、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素を含む医薬組成物であって、前記組成物が、ボツリヌス毒素、ポリソルベート、及びメチオニンを含み、かつ糖、糖アルコール、及びイオン化合物からなる群から選択される1つ以上の成分を含む凍結乾燥組成物であり、前記状態が、眉間線、マリオネット線、前額の深いしわ、側方眼角線、及び任意のこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記状態の症状が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素を含む組成物より長い時間、効果的に軽減される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素血清A型、B型、C型、D型、E型、F型、及びG型からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記患者中で動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素を含む組成物より長く持続する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記状態の症状の効果的軽減が、皺眉筋及び/または鼻根筋活動と関係する中等度から重度の眉間線の外観の一時的な改善である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
少なくとも16週間の期間、効果的軽減をもたらす、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記状態の症状の効果的軽減が、眼輪筋活動と関係する中等度から重度の側方眼角線の外観の一時的な改善である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも16週間の期間、効果的軽減をもたらす、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
治療が必要な患者の状態を治療するための、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、ボツリヌス毒素、ポリソルベート、及びメチオニンを含み、かつ糖、糖アルコール、及びイオン化合物からなる群から選択される1つ以上の成分を含む凍結乾燥組成物であり、前記状態が、眉間線、マリオネット線、前額の深いしわ、側方眼角線、及び任意のこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記状態の症状が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素を含む組成物より長い時間、効果的に軽減され、前記医薬組成物が、前記状態の少なくとも1つの症状の軽減を維持するのに効果的な第1の治療と第2の治療の間の時間間隔で投与され、前記時間間隔は、前記医薬組成物と同じ量で投与され、且つ同じ方法で同じ部位(単数及び複数)に投与される動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素を含む組成物の時間間隔より長い、前記医薬組成物。
【請求項9】
前記ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素血清A型、B型、C型、D型、E型、F型、及びG型からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
第1の治療と第2の治療の間の時間間隔が、3ヶ月より長い、請求項またはに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年12月12日に出願した米国特許仮出願第61/915,476号に対する利益を主張するものであり、その全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1980年代半ばから末期に開拓されたボツリヌス毒素(BoNT/A)による皺眉筋及び/または鼻根筋の化学的徐神経が、眉間しわ線の治療のための理想的な美容技術の基準の多くに適合した。経験のある作業者が実施する場合、BoNT/Aを注入すると、実質的に有意な有害作用なしで、眉間線が急速に及び可逆的に改善する、またはさらに除去される(Becker-Wegerich P,et al.,Clin Exp Dermatol,2001 Oct;26(7):619-30;Letessier S.,J Dermatol Treat,1999;10(1):31-6及びAlam M,et al.,Arch Dermatol,2002 Sep;138(9):1180-5)。
【0003】
眉間しわ線の治療へのBoNT/Aの使用についての最初に公開された報告書の後10年である2002年に(Carruthers JDA,et al. J Dermatol Surg Oncol,1992 Jan;18(1):17-21)、眉間線へのBoNT/Aの作用の広く認められた有効性及び耐容性が、2つの同一大規模多施設プラセボ対照試験で最終的に確認された(Carruthers JA,et al.,J Am Acad Dermatol,2002 Jun;46(6):840-9及びCarruthers J,et al.,Journal of Plastic及びReconstructive Surgery 2003)。その後、BoNT/Aは、眉間線並びに水平な前額線(「思想家の皺」)及び眼窩外側線(「カラスの足跡」)を含む他の過緊張性顔のしわを一時的に治療するためにさまざまな方法で広く使用されている。
【0004】
現在市販されているBoNT/Aの全てが、アルブミンなどの動物性タンパク質を含有する。さらに、BOTOX(登録商標)などの市販されているBoNT/A組成物では、カラスの足跡線または眉間線などの状態を治療するための作用の持続期間が、およそ3ヶ月である。
【0005】
それゆえに、当技術分野では、市販されている組成物(例えば、BOTOX(登録商標)、DYSPORT(登録商標)、またはXEOMIN(登録商標))より作用の持続期間が長く、効果的で安全な新しい型の組成物が必要となる。本発明は、この必要性を満たす。
以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面とともに読むとよりよく理解される。本発明を示すために、現時点で好ましい実施形態が、図面に示される。しかし、本発明は、図面に示した実施形態の正確な構成及び手段を制限するものでないと理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】評価の試験デザイン及びスケジュールを示す画像である。
図2】注入部位を示す画像である。眉間線に単一セッションのMT10109Lまたはona-BoN/Tを投与した。総注入量0.5mL(20U)を5つの相称性筋肉内注入に分けた:鼻根筋に0.1mL(4U)、各皺眉筋の中間に0.1mL(4U)、及び各皺眉筋の中央に0.1mL(4U)。
図3A図3A及び3Bを含む図3は、生の評価による最大渋面の応答個体率を示す一連の画像である。(図3A)PP集団及び(図3B)FAS集団。
図3B図3A及び3Bを含む図3は、生の評価による最大渋面の応答個体率を示す一連の画像である。(図3A)PP集団及び(図3B)FAS集団。
図4A図4A及び4Bを含む図4は、(図4A)対象の評価による応答個体率(PP集団)及び(図4B)対象の満足率(PP集団)を示す一連の画像である。
図4B図4A及び4Bを含む図4は、(図4A)対象の評価による応答個体率(PP集団)及び(図4B)対象の満足率(PP集団)を示す一連の画像である。
図5】さまざまな用量の凍結乾燥MT10109(10U、20U、及び30U)について、20U Botox(登録商標)と比べて、第30日の最大渋面の眉間線重症度の治験担当者評価評点によって表した応答個体の割合の差を示すグラフである(最大解析対象集団)。略語。CI=信頼区間;vs=対。応答個体は、対応するベースライン後訪問日の眉間線重症度評点がなし(0)または軽度(mile)(1)と定義した。分析は、多くの帰属計算方法を使用した入力データに基づいた。マンテル-ヘンツェルカイ二乗検定を使用して治療を2つずつ比較し、2つの治療の間の差を推定した。
図6】全訪問日の眉間線重症度の治験担当者評価評点によって表した応答個体のパーセントを示すグラフである(最大解析対象集団)。分析に含まれる対象は、ベースライン眉間線重症度評点が、中等度(2)または重度(3)でなければならなかった。応答個体は、対応するベースライン後訪問日の重症度がなし(0)または軽度(1)と定義した。
図7】眉間線改善の対象の自己評価によって表した応答個体のパーセントを示すグラフである(最大解析対象集団)。分析に含まれる対象は、ベースライン眉間線重症度評点が、中等度(2)または重度(3)でなければならなかった。応答個体は、スコアが、9ポイントスケールで少なくとも+2(中等度改善、すなわち、約50%)であることと定義した。
図8】治療の作用による満足の対象の自己評価によって表した応答個体のパーセントを示すグラフである(最大解析対象集団)。分析に含まれる対象は、ベースライン眉間線重症度評点が、中等度(2)または重度(3)でなければならなかった。応答個体は、スコアが、7ポイントスケールで少なくとも6(満足)であることと定義した。
図9】実験の結果を示す一連のグラフである。データは、最大渋面の治験担当者評価(上段左)、休息の治験担当者評価(中段左)、渋面の独立したリーダー評価(上段右)、休息の独立したリーダー評価(中段右)、対象総合的評価(下段左)、及び対象満足(下段右)によって表した治療後の日数の関数として応答パーセントを含む。
図10】実験の結果を示す一連のグラフである。データは、最大渋面の治験担当者によって表された応答パーセントを含む。上段のグラフは、集合的なデータを示す。中段左及び下段左のグラフは、部位1のデータを示す一方で、中段右及び下段右のグラフは、部位2のデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、疾患、障害または状態の治療が必要な患者を治療するための動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の使用に関し、当該動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物と比べて患者での作用が長く継続することを示す。
【0008】
少なくとも1つの実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物が、液体形態で製剤化される。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の液体製剤が、全体が参照により組み込まれるUS20100291136に開示された製剤である。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の液体製剤により、アルブミンまたはゼラチンなどの動物由来タンパク質を使用せず、また、ボツリヌス毒素の安定剤として、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギンまたはアスパラギン酸などの極性または酸性アミノ酸を使用しないでも、ボツリヌス毒素の活性が、冷凍または高温状態で安定して維持される。
【0009】
少なくとも1つの実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物が、凍結乾燥形態で製剤化される。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤が、全体が参照により組み込まれるPCT/KR2012/002418に開示された製剤である。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥製剤により、ボツリヌス毒素活性が維持され、ボツリヌス毒素の貯蔵、輸送または使用中に生じる可能性がある高温状態でも、著しく優れた長期安定性が実現される。
【0010】
特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物(例えば、液体製剤または凍結乾燥形態)の有効性が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物と比べて患者で長く持続する。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物(例えば、液体製剤または凍結乾燥形態)の投与により、同じまたは同等の用量で、かつ同じまたは同等の部位に投与される動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素を使用する場合の間隔時間と比べて、ボツリヌス毒素組成物の投与間の間隔時間が長くなる。
【0011】
特定の実施形態では、本発明により、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用することを含む治療計画が提供され、この治療計画では、当該ボツリヌス毒素組成物が、これを必要とする患者に動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物で使用される用量と比べて少ない用量で投与される。
【0012】
特定の実施形態では、本発明により、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用することを含む治療計画が提供され、この治療計画では、当該ボツリヌス毒素組成物が、これを必要とする患者に動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物(例えば、BOTOX(登録商標)、DYSPORT(登録商標)、及びXEOMIN(登録商標)を含む市販されているボツリヌス毒素型A;MyoBloc(登録商標)を含む市販されているボツリヌス毒素型B)で使用される時間間隔と比べて、投与間の時間間隔を長くして投与される。
【0013】
定義
【0014】
特に定義しない限り、本明細書に用いられる全専門及び科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般的に理解される意味と同じである。本発明の実施または試験では、本明細書に記載したものとほぼ同じまたは等しい任意の方法及び材料を用いることができるが、好適な方法及び材料を記載する。
【0015】
本明細書に使用される場合、以下の用語のそれぞれは、このセクションで、それと関係した意味である。
【0016】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、冠詞の文法上の目的語の1つ、または1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すように本明細書に使用される。例によると、「1つの要素」は、1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0017】
本明細書に使用される場合、「約」は、量、一時的な持続期間などの計測可能な値を指す場合、特定の値からの変化が開示した方法を実施するのに好適であるような特定の値からの変化±20%、±10%、±5%、±1%、または±0.1%を包含することを意味する。
【0018】
疾患または障害の症状の重症度、患者がこのような症状を経験する頻度、または両者が減少する場合、疾患または障害が「軽減する」。
【0019】
本明細書に使用される場合、用語「動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物」は、血液由来、血液貯留または他の動物由来の生成物を含有しない(例えば、アルブミンを含有しない)ボツリヌス毒素組成物を指す。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物が、ヒト血清アルブミンまたは遺伝子組換えヒトアルブミンを含まない。
【0020】
本明細書に使用される場合、用語「動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物」は、血液由来、血液貯留または他の動物由来の生成物を含有する(例えば、アルブミンを含有する)ボツリヌス毒素組成物を指す。特定の実施形態では、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物が、ヒト血清アルブミンまたは遺伝子組換えヒトアルブミンを含有する。
【0021】
「ボツリヌス毒素」は、純粋毒素または複合体、天然、遺伝子組換え、または修飾ボツリヌス神経毒素のいずれかのボツリヌス神経毒素を意味し、ボツリヌス毒素A型、B型、C1型、D型、E型、F型、及びG型を含む。本明細書に使用される場合、細胞毒性ボツリヌス毒素C2及びC3などの非神経毒素は、この用語から除外される。
【0022】
用語「患者」、「対象」、「個体」などは、本明細書に交換可能で使用され、本明細書に記載した方法に適用可能な任意の動物、またはin vitroまたはin situのいずれかのその細胞を指す。特定の非限定実施形態では、患者、対象または個体がヒトである。
【0023】
本明細書に使用される場合、用語「組成物」または「医薬組成物」は、少なくとも1つの本発明の化合物と、キャリア、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。当該医薬組成物は、当該化合物の生体への投与を容易にする。
【0024】
本明細書に使用される場合、用語「有効量」、「薬剤有効量」及び「治療有効量」は、所望の生物学的結果をもたらすために非毒性であるが十分な薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、または原因の減少及び/または軽減、または生物学的系の他の所望の変性である可能性がある。任意の個体事例の好適な治療量が、通常の実験を使用する当業者によって決定される可能性がある。
【0025】
本明細書に使用される場合、用語「有効性」は、アッセイ内で達成される最大作用(Emax)を指す。
【0026】
「局所投与」は、非全身経路による患者の筋肉附近または皮下部位への医薬薬剤の投与を意味する。このため、静脈内または経口投与などの投与の全身経路は、局所投与から除外される。
【0027】
「長く持続する」または「より長く持続する」または「より長い持続期間」は、同じまたは同等の量で投与され、同じ方法(例えば、注入による)で同じまたは同等の部位(単数及び複数)に投与される動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物と比べて、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の有効性のより長い持続期間を指す。
【0028】
「末梢投与」は、局所投与と対照的に症状の部位から離れた部位への投与を意味する。
【0029】
「製剤的に許容可能な」は、組成物、製剤、安定性、患者による受容及び生物学的利用性に関して、薬理学的/毒性学的観点から患者に許容可能であり、物理的/化学的観点から製造医薬化学者に許容可能である特性及び/または物質を指す。「製剤的に許容可能なキャリア」は、有効成分(単数及び複数)の生物学的活性の有効性を妨げ、投与される宿主に有毒でない媒質を指す。
【0030】
「治療的」治療は、病理学の徴候または症状を減らす、または除去するために、病理学の徴候または症状を示す対象に実施される治療である。
【0031】
本明細書に使用される場合、用語「治療」または「治療すること」は、本明細書で考察した状態、本明細書で考察した状態の症状または本明細書で考察した状態を発症する可能性を治療する、癒やす、軽減する、緩和する、変える、治す、改善する、改良する、またはこれらに影響を及ぼすために、本明細書で考察した状態、本明細書で考察した状態の症状または本明細書で考察した状態を発症する可能性がある患者への治療薬剤、すなわち、本発明の化合物(単独または別の医薬薬剤と組み合わせて)の適用または投与と定義される、または患者からの分離した組織または細胞株への治療薬剤の適用または投与(例えば、診断またはex vivo適用のため)と定義される。このような治療は、ファーマコゲノミクスの分野から得た知識に基づいて、個別に適応させる、または変更される可能性がある。
【0032】
範囲:本開示全体を通じて、本発明のさまざまな実施形態は、範囲フォーマットで示すことができる。範囲フォーマットでの記載は、単に簡便及び簡潔のためであり、本発明の範囲に対して確固として限定するものと解釈すべきではないと理解しなければならない。それゆえに、範囲の記載は、可能性がある部分範囲の全て並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと考えなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を具体的に開示したものと考えなければならない。これは、範囲の幅にかかわらず当てはまる。
【0033】
説明
【0034】
本発明は、ボツリヌス毒素組成物の投与の16週間後に患者を評価した場合、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物のレシピエント患者では、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物を服用している同一のレシピエント患者と比べて、転帰の改善を示した発見に基づいている。すなわち、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物は、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物と比べてより長く持続する有効性を示す。
【0035】
液体動物性タンパク質非含有製剤
【0036】
本発明に有用な組成物が、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を含む。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物が液体製剤である。
【0037】
特定の実施形態では、本発明に使用される液体医薬組成物が、ボツリヌス毒素、ポリソルベート20、及びメチオニンを含む。
【0038】
特定の実施形態では、本発明に使用される液体医薬組成物が、ボツリヌス毒素、ポリソルベート20、メチオニン及びイソロイシンを含む。
【0039】
特定の実施形態では、液体医薬組成物が、ボツリヌス毒素、ポリソルベート20及びメチオニン及び任意でイソロイシンを含む。
【0040】
ボツリヌス毒素のための安定剤として、アルブミンまたはゼラチンなどの動物由来タンパク質の代わりにポリソルベート20、メチオニン及び任意でイソロイシンを用いると、本発明に使用される液体医薬組成物が、血清由来の病原体または微生物がレシピエントに感染する潜在的なリスクを排除し、このため、身体に摂取するのに安全なものとなる。また、安定剤ポリソルベート20、メチオニン及び任意でイソロイシンの使用により、25℃~約37℃あたりでボツリヌス毒素組成物の安定性を高くすることができる。このため、25℃~約37℃でのボツリヌス毒素組成物の貯蔵安定性の点で、当該液体医薬組成物は、低温が維持されない環境などの緊急状況下で、ボツリヌス毒素組成物を貯蔵するのに非常に有用であり、このため、洗浄剤またはアミノ酸のいずれかを用いる従来の液体医薬組成物より優れている。
【0041】
特定の実施形態では、メチオニンが、ボツリヌス毒素100単位当たり約0.5~100μモルの量で存在し、濃度の範囲が、好ましくは約0.5~100mMであり、より好ましくは約25~約75mMである。別の実施形態では、メチオニンの濃度の範囲が、約0.5mM~約100mMである。
【0042】
ボツリヌス毒素100単位当たり0.5μモル未満のメチオニン含量では、室温で長期貯蔵時に好ましいレベルまでのボツリヌス毒素の安定化を保証することができない。一方、メチオニンがボツリヌス毒素100単位当たり100μモルを越える量で使用される場合、超過増加分により、経済的不利益を被ることに加えて安定化作用を増す見込みがない可能性がある。本発明に使用される液体医薬組成物では、ボツリヌス毒素の濃度が100単位/mLである場合、メチオニンの好適な濃度は、0.5~100mMの範囲である。その好適な濃度は、ポリソルベート20の濃度範囲を考慮して、約25mM~約75mMに調整される。メチオニンの濃度が、本発明に使用される液体医薬組成物中で25mM未満である場合、ボツリヌス毒素へのその長期安定化作用は、室温でボツリヌス毒素の好適な濃度範囲で得ることができる好ましいレベルに到達しない。一方、75mMを越えるメチオニン濃度では、更なる作用がもたらされない。
【0043】
特定の実施形態では、ポリソルベート20は、ボツリヌス毒素100単位当たり0.01~50mgの量で存在し、濃度の範囲が、好ましくは0.01~50mg/mLであり、より好ましくは0.1~2.5mg/mLである。
【0044】
ポリソルベートは、いくつかの薬剤及び食品調製に使用される乳化剤のクラスである。これは、水性(水中油滴)生成物に芳香油を溶解するために化粧品に使用されることが多い。ポリソルベート20、40、60及び80などのオキシエチレン基の総数を指す数によって分類される多くの種類のポリソルベートがある。特定の実施形態では、本発明に使用される液体医薬組成物が、ボツリヌス毒素のための安定剤としてポリソルベート20(商標名Tween20として市販されている)を用いる。
【0045】
本発明の特定の実施形態に使用される液体医薬組成物が、ボツリヌス毒素100単位当たり0.01mg未満の量でポリソルベート20を含有する場合、ボツリヌス毒素へのその長期安定化作用は、室温で好ましいレベルに到達しない。一方、50mg/mLを越える濃度のポリソルベート20では、経済的不利益を被ることに加えて、更なる作用がもたらされない。本発明の特定の実施形態に使用される液体医薬組成物中のボツリヌス毒素100単位/mLの濃度では、メチオニン濃度を考慮する場合、ポリソルベート20が、好適に約0.01mg/mL~約50mg/mLの量で存在し、好ましくは約0.1mg/mL~約2.5mg/mLの量で存在する。本発明の特定の実施形態に使用される液体医薬組成物中のポリソルベート20の濃度が、0.1mg/mL未満である場合、ボツリヌス毒素へのその長期安定化作用が、室温で、ポリソルベート20の目標濃度によって得ることができる所望のレベルに到達しない。一方、2.5mg/mLを越える濃度のポリソルベート20では、更なる作用がもたらされない。
【0046】
本発明の特定の実施形態に使用される液体医薬組成物の構成成分であるボツリヌス毒素は、血清型A、B、C、D、E、F及びGから選択される1つとであり得る。用語、ボツリヌス毒素は、嫌気性菌クロストリジウムボツリヌスによって生成される毒素のファミリーを包含する総称であり、これまで、7つの免疫学的に異なる神経毒素血清型が確認されている。これらには名称A、B、C、D、E、F及びGが与えられ、標的動物への作用、及び麻痺の程度及び持続期間が1つ1つ異なる。ボツリヌス毒素の全血清型が、神経筋接続部で神経伝達物質アセチルコリンを抑制することによって神経毒素として作用することが知られている。
【0047】
本発明の特定の実施形態に使用される液体医薬組成物のボツリヌス毒素は、非複合体形態または別のタンパク質との複合体形態である可能性がある。ボツリヌス毒素血清型A、B、C、D、E、FまたはGは、単独で、クロストリジウムボツリヌスによって合成され、そのものの分子量がおよそ150kDaである。クロストリジウムボツリヌスに発現した場合、ボツリヌス毒素は、ヘマグルチニンタンパク質及び、促進し、その活性を保護する非ヘマグルチニンタンパク質とさまざまな複合体を形成する。自然ボツリヌスA型複合体の分子量は、およそ900kDa、500kDaまたは300kDaである。分子量を測定すると、ボツリヌス毒素B型複合体及びC型複合体では、およそ500kDaであり、D複合体型では、およそ300kDaまたは500kDaであり、E型及びF型複合体では、およそ300kDaである。
【0048】
特定の実施形態では、液体医薬組成物中のボツリヌス毒素の濃度が、一般的なその使用に応じて、好ましくは50~5,000単位/mLの範囲である。
【0049】
特定の実施形態では、本発明に使用する液体医薬組成物のpHが、約5.5~7.0である。特定の実施形態では、本発明に使用される液体医薬組成物のpHが、約5.5~約7.0に調整される場合、ボツリヌス毒素は、室温(特に40℃)で長期間、安定して維持される。
【0050】
液体医薬組成物は、凍結乾燥工程なしで洗剤及びアミノ酸(単数及び複数)を用いるため、容易に調製することができる。
【0051】
凍結乾燥動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素製剤
【0052】
本発明に有用な組成物が、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を含む。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物が、ボツリヌス毒素の凍結乾燥調剤である。例えば、本発明に有用なボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤は、動物由来のタンパク質安定剤を含有しない。
【0053】
特定の実施形態では、本発明が、:1)ボツリヌス毒素;2)ポリソルベート;3)メチオニン;及び4)糖、糖アルコール、イオン化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つの以上の成分を含むボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤を提供する。
【0054】
特定の実施形態では、ボツリヌス毒素組成物が、凍結乾燥調剤として形成される場合、当該成分(単数及び複数)は、室温以上の温度で安定化を促進しながら、ボツリヌス毒素組成物の活性を維持する役割を演じる。凍結乾燥時には、1)ボツリヌス毒素;2)ポリソルベート;及び3)メチオニンを含有する調剤は、安定性の低下を示し、これが液体調剤として製剤化される場合、室温以上の温度で安定性が低下する;しかし、本発明の特定の実施形態で使用されるボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤は、室温以上の温度でボツリヌス毒素組成物の活性を維持するだけでなく、長期間にわたって貯蔵安定性が優れている。
【0055】
ボツリヌス毒素は、クロストリジウムボツリヌス由来のものである可能性がある。ボツリヌス毒素は、公知の方法によってこれらの菌株から分離され、精製される可能性があり、そうでなければ市販されている生成物が使用される可能性がある。
【0056】
ボツリヌス毒素は、ボツリヌス血清型A、B、C、D、EF及びGからなる群から無作為に選択される可能性がある。
【0057】
凍結乾燥調剤中に存在するボツリヌス毒素は、複合体中にタンパク質を含有する、及び含有しない形態である可能性がある。ボツリヌス毒素の活性は、タンパク質が複合体中にあるか、ないかにかかわず影響を受けない。本発明の特定の実施形態で使用されるボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤では、ポリソルベートが、ボツリヌス毒素の安定剤の1つであり、非イオン界面活性剤であり、医薬または食品産業で乳化剤として主に使用される。ポリソルベートの型としては、オキシエチレン基の総数に基づいてポリソルベート20、40、60、80または100がある。本発明の特定の実施形態で使用されるボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤では、これらの中から任意のものを使用することができる。ポリソルベートは、ボツリヌス毒素100単位当たり約0.01~約2mgの量で存在する可能性がある。ポリソルベートがこの範囲内で存在する場合、その後、ボツリヌス毒素の活性は、室温以上の温度でも維持することができ、長期貯蔵安定性を維持することができる。
【0058】
特定の実施形態では、メチオニンは、安定剤の1つであり、また、ボツリヌス毒素の安定剤としてアルブミンまたはゼラチンなどの動物性タンパク質の代替物として使用される可能性がある。メチオニンは、ボツリヌス毒素100単位当たり約0.01~10mgの量で存在する可能性がある。メチオニンがこの範囲内で含まれる場合、その後、ボツリヌス毒素組成物の活性は、室温以上の温度でも維持することができ、長期貯蔵安定性を維持することができる。
【0059】
既存の液体調剤と異なり、本発明の特定の実施形態で使用されるボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤は、さらにメチオニン及びポリソルベート以外の追加成分として糖、糖アルコールまたはイオン化合物から少なくとも1つを含む。糖は、高分子の変性を防ぐことがわかっている。本発明の特定の実施形態で使用される凍結乾燥調剤に使用される可能性がある糖として、トレハロース、スクロース、マルトース、果糖、ラピノーズ(lapinose)、ラクトースまたはグルコースが使用される可能性がある;しかし、その使用はこれらの型に限定されない。糖の量は、ボツリヌス毒素100単位当たり約0.1~50mgである可能性がある。糖がこの範囲内で存在する場合、その後、ボツリヌス毒素組成物の活性は、室温以上の温度でも維持することができ、長期貯蔵安定性を維持することができる。
【0060】
糖アルコールは、凍結乾燥状態で高分子を安定させ、有用に変性を防ぐことがわかっている。本発明の特定の実施形態で使用される凍結乾燥調剤に使用される可能性がある糖アルコールとして、シクロデキストリン(cylodextrin)、マニトール、ソルビトール、グリセロール、キシリトールまたはイノシトールなどが使用される可能性がある。糖アルコールの量は、ボツリヌス毒素100単位当たり約0.1~50mgである可能性がある。糖アルコールがこの範囲内で存在する場合、その後、ボツリヌス毒素組成物の活性は、室温以上の温度でも維持することができ、長期貯蔵安定性を維持することができる。
【0061】
特定の実施形態では、「イオン化合物」が塩、緩衝剤などを指す。イオン化合物は、特異的または非特異的結合により高分子とともに作用する。塩は、温度安定性を増大させ、溶解性を低下させ、凝集性の程度を低下させることができる。しかし、タンパク質変性の傾向がみられるため、高濃度の塩では注意が必要となる。イオン化合物として、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウムまたは亜リン酸カリウムが使用される可能性がある;しかし、その使用はこれらの型に限定されない。イオン化合物は、ボツリヌス毒素100単位当たり約0.1~10mgの量で存在する可能性がある。イオン化合物がこの範囲内で存在する場合、その後、ボツリヌス毒素組成物の活性は、室温以上の温度でも維持することができ、長期貯蔵安定性を維持することができる。
【0062】
特定の実施形態では、本発明に使用されるボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤が、これに限定されないが、特定の媒質で培養されるクロストリジウムボツリヌスの培養菌から製造される。ボツリヌス毒素複合体は、活性高分子毒素タンパク質及び関連ヘマグルチニンタンパク質からなる結晶性複合体として一連の酸沈殿により精製される。結晶性複合体は、塩及び安定剤を含有する溶液中で溶解し、ボツリヌス毒素組成物の凍結乾燥調剤は、凍結乾燥工程を経ることによって生成される。
【0063】
方法
【0064】
本発明は、疾患、障害または状態の治療が必要な患者を治療するための動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の使用に関し、当該動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物と比べて患者での作用が長く継続することを示す。例えば、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物では、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物を服用する患者の転帰と比べて、患者の治療転帰がさらに改善することを示すことが観察された。
【0065】
特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物(例えば、液体製剤または凍結乾燥形態)の有効性が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物と比べて患者で長く持続する。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物(例えば、液体製剤または凍結乾燥形態)の投与により、同じまたは同等の用量で、かつ同じまたは同等の部位に投与される動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素を使用する場合の間隔時間と比べて、ボツリヌス毒素組成物の投与間の間隔時間が長くなる。
【0066】
特定の実施形態では、本発明により、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用することを含む治療計画が提供され、この治療計画では、当該ボツリヌス毒素組成物が、これを必要とする患者に動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物で使用される用量と比べて少ない用量で投与される。
【0067】
特定の実施形態では、本発明は、治療が必要な患者の状態を治療する方法を提供し、当該方法が、治療有効量の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を局所に投与するステップを含み、これにより当該状態の少なくとも1つの症状が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物より長い時間、効果的に軽減する。
【0068】
特定の実施形態では、本発明により、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用することを含む治療計画が提供され、この治療計画では、当該ボツリヌス毒素組成物が、これを必要とする患者に、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物で使用される時間間隔と比べて投与間の時間間隔を長くして投与される。
【0069】
特定の実施形態では、本発明は、治療が必要な患者の状態を治療する方法を提供し、当該方法が、治療有効量の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を局所に投与するステップを含み、当該組成物が、当該状態の少なくとも1つの症状の軽減を維持するのに効果的な第1の治療と第2の治療の間の時間間隔で投与され、これは、動物性タンパク質非含有組成物と同じまたは同等の量で投与され、同じ方法(例えば、注入による)で同じ部位に投与される動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物の時間間隔より長い。
【0070】
特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用するヒト患者の状態の第1の治療と第2の治療の間の時間が、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも12週間、少なくとも13週間、少なくとも14週間、少なくとも15週間、少なくとも16週間、少なくとも17週間、少なくとも18週間、少なくとも19週間、少なくとも20週間、少なくとも21週間、少なくとも22週間、少なくとも23週間、少なくとも24週間、少なくとも25週間、少なくとも26週間、少なくとも27週間、少なくとも28週間、少なくとも29週間、少なくとも30週間、少なくとも31週間、少なくとも32週間、少なくとも33週間、少なくとも34週間、少なくとも35週間、少なくとも36週間、少なくとも37週間、少なくとも38週間、少なくとも39週間、少なくとも40週間、少なくとも41週間、少なくとも42週間、少なくとも43週間、少なくとも44週間、少なくとも45週間、少なくとも46週間、少なくとも47週間、少なくとも48週間、少なくとも49週間、少なくとも50週間、少なくとも51週間、少なくとも52週間以上である。特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用する第1の治療と第2の治療の間の時間が、患者の状態の少なくとも1つの症状の効果的軽減のために3ヶ月超である。特定の実施形態では、本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用する第1の治療と第2の治療の間の時間が、患者の状態の少なくとも1つの症状の効果的軽減のために16週間超である。
【0071】
特定の実施形態では、本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物は、個体のしわを含む皮膚輪郭不足を治療するためなどの化粧目的のために使用することができる。
【0072】
特定の実施形態では、本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物は、眉間線を治療するために使用することができる。
【0073】
特定の実施形態では、本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物は、側方眼角線を治療するために使用することができる。
【0074】
特定の実施形態では、本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物は、非化粧目的のために使用することができる。特定の実施形態では、本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物は、これらに限定されないが、神経学的状態と関係する排尿筋過活動、慢性片頭痛、上肢痙攣、頸部ジストニア、原発性腋窩多汗症、眼瞼痙攣及び斜視、特発性過活動膀胱などを含むさまざまな疾患及び障害を治療するために使用することができる。
【0075】
特定の実施形態では、本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物は、非化粧目的のために使用することができる。非化粧目的の非限定例としては、これらに限定されないが、抗コリン性医薬品への不適当応答がある、または抗コリン性医薬品への耐容性がない成人の神経学的状態[例えば、脊髄損傷(SCI)、多発性硬化症(MS)]と関係する排尿筋過活動による尿失禁の治療、慢性片頭痛(例えば、1日に4時間以上持続する頭痛が1ヶ月当たり15日間以上)の患者の頭痛の予防、成人患者の上肢痙攣の治療、成人患者の頸部ジストニアの治療、異常頭位及び頸痛の重症度の軽減、成人患者の局所用剤によって不適当に扱われる重度の腋窩多汗症の治療、ジストニアと関係する眼瞼痙攣の治療、12歳以上の患者の斜視の治療が挙げられる。
【0076】
しかし、本発明は、本明細書に開示した疾患、障害、または状態だけに限定すべきではない。それどころか、本発明は、ボツリヌス毒素が使用される任意の疾患を治療するために本発明の動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物を使用することを包含する。例えば、ボツリヌス毒素が、耳の中耳炎(米国特許第5,766,605号)、内耳障害(米国特許第6,265,379;6,358,926号)、緊張性頭痛,(米国特許第6,458,365号)、片頭痛頭痛(米国特許第5,714,468号)、術後痛及び内臓痛(米国特許第6,464,986号)、育毛及び毛髪維持(米国特許第6,299,893号)、乾癬及び皮膚炎(米国特許第5,670,484号)、筋損傷(米国特許第6,423,319号)さまざまな癌(米国特許第6,139,845号)、平骨筋障害(米国特許第5,437,291号)、及び神経性炎症(米国特許第6,063,768号)を治療するために適用、または使用されてきた。また、ボツリヌス毒素は、化粧適用並びに過活動性骨格筋を特徴とする神経筋障害の治療の臨床現場で使用されてきた。ボツリヌス毒素は、現在、多汗症の治療に使用されており、また、アカラジア、慢性限局性神経障害、肛門裂瘡、腟痙攣、中枢神経系の損傷または疾患と関係する痙性障害(例えば、トラウマ、脳卒中、多発性硬化症、パーキンソン病、脳性麻痺などを含む)、手足、顔、顎または声帯に影響を及ぼす限局性ジストニア、顎関節障害(TMJ)、糖尿病性末梢神経障害、創傷治癒障害、唾液分泌過剰、声帯機能障害(VCD)を含む攣縮性発声障害、及び振戦の治療に使用することができる。ボツリヌス毒素A型が、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面スパスムス、頸部ジストニア、片頭痛、神経学的状態と関係する過活動膀胱及び排尿筋過活動の治療のためにアメリカ食品医薬品局によって承認された。
【0077】
特定の実施形態では、本発明の方法が、アカラジア、肛門裂瘡、アニスムス、眼瞼痙攣、脳性麻痺、頸部ジストニア、頸性頭痛、片側顔面スパスムス、異汗性湿疹、嚥下障害、発声障害、食道運動障害、食道筋輪、内斜位(小児)、アイリフト、顔面筋波動症(myokemia)、歩行障害(特発性つまさき歩行)、全身性ジストニア、片側顔面スパスムス、過緊張性顔のしわ(眉間、前額、カラスの足跡、下向きの口角)、多汗症、失禁(脊髄損傷)、片頭痛、筋クロヌス、筋膜性疼痛症候群、閉塞性尿路症状、膵分離膵炎、パーキンソン病、恥骨直腸筋症候群、減少外科的瘢痕性緊張、唾液分泌過多、睡液腺腫、第VI脳神経麻痺、痙攣、発音/発声障害、斜視、外科アジュバント(adjunct)(眼外科)、遅発性ジスキネジア、顎関節障害、緊張性頭痛、胸郭口症候群、捻転ジストニア、斜頸、トゥレット症候群、振戦、むち打ちによる頸痛、痛、痒み、炎症、アレルギー、癌及び良性腫瘍、発熱、肥満、伝染性疾患、ウイルス性及び細菌性、高血圧症、心不整脈、血管痙攣、アテローム硬化症、内皮細胞過形成、静脈性血栓症、静脈瘤、アフタ性口内炎(apthousstomatitis)、唾液分泌過多、顎関節症候群、発汗、体臭、にきび、しゅさ鼻、色素沈着過度(hyperpigmention)、肥厚性瘢痕、ケロイド、カルス及びうおのめ、皮膚のしわ、過剰皮脂産生、乾癬、皮膚炎、アレルギー性鼻炎、鼻閉、後鼻漏、くしゃみ、耳垢、漿液性及び化膿性中耳炎、扁桃及びアデノイド肥大、耳鳴、めまい、眩暈、嗄声、せき、睡眠時無呼吸、いびき、緑内障、結膜炎、ブドウ腺炎、斜視、グレーブス病、喘息、気管支炎、肺気腫、粘液産生、肋膜炎、凝固障害、骨髄増殖性障害、酸性球、貪食細胞、マクロファージ及びリンパ球に関わる障害、免疫耐性及び移植、自己免疫性障害、嚥下障害、酸逆流、裂孔ヘルニア、胃炎及び胃酸過多、下痢及び便秘、痔核、尿失禁、前立腺肥大症、勃起機能障害、持続勃起症及び陰茎形成性硬結、精巣上体炎、避妊、月経痙攣、早産予防、子宮内膜様増殖及び子宮筋腫、関節リウマチ、変性関節疾患、リウマトイド、滑液包炎、腱炎、腱鞘炎、線維筋肉痛、痙攣性障害、脳性麻痺、痙攣、頭痛、抑うつ及び神経痛の治療、症状の減少、及び/または予防に有用なものとすることができる。
【0078】
特定の実施形態では、本発明の治療計画が、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の局所投与を含む。特定の実施形態では、治療計画が、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の非経口投与を含む。特定の実施形態では動物性タンパク質非含有組成物が、注入、局所的に、または制御放出インプラントの埋込みによって投与される。注入による投与の例としては、筋肉内注入、非筋肉内注入、関節内注入、関節外注入、関節周囲注入、または皮下注入が挙げられる。
【0079】
特定の実施形態では、本発明の治療計画が、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物を使用する場合と比べて、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の使用に関係した長期持続作用及び転帰の改善のため有益である。特定の理論に束縛されることを望まないと、特定の実施形態では、動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物の長期持続作用により、動物性タンパク質含有ボツリヌス毒素組成物を使用する場合の間隔時間と比べて動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物による治療間の間隔時間が長くなると考えられる。
【0080】
さらに、特定の理論に束縛されることを望まないと、特定の実施形態では、本発明に使用する組成物のユニークな製剤により患者中で組成物の作用がより長く持続すると考えられる。
【0081】
特定の実施形態では、治療間の間隔時間を長くすることによって、治療計画で治療の頻度が減少する。このため、本発明により、患者の都合が向上する可能性がある。また、治療間の間隔時間が長くなり、治療の頻度が少なくなると、副作用が減少する可能性がある。
【0082】
特定の実施形態では、本発明の治療計画が、本明細書に記載したとおり、液体動物性タンパク質非含有ボツリヌス毒素組成物または凍結乾燥動物性タンパク質非含有ボツリヌス組成物の使用と関係した長期持続作用及び転帰の改善のため有益である。
【0083】
特定の実施形態では、本発明の治療方法で、治療的に効果的なレベルのボツリヌス毒素が、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、少なくとも26週間、少なくとも28週間、少なくとも30週間、少なくとも32週間、少なくとも34週間、少なくとも36週間、少なくとも38週間、少なくとも40週間、少なくとも42週間、少なくとも44週間、少なくとも46週間、少なくとも48週間、少なくとも50週間以上、長時間、レシピエント患者中に存在する。
【0084】
値及び範囲が本明細書のどこに提供されようと、これらの値及び範囲に包含される値及び範囲全てが、本発明の範囲内に包含されることを意味すると理解しなければならない。さらに、これらの範囲内に入る値全て、並びに値の範囲の上限または下限が、また、本出願で検討される。
【0085】
以下の実施例は、さらに本発明の実施形態を示す。しかし、本明細書に記載した本発明の教示または開示を限定するものでは一切ない。
【0086】
実験実施例
【0087】
本発明は、さらに以下の実験実施例を参照して詳細に記載される。これらの実施例は、説明する目的だけのために提供されており、特に指示がない限り、限定することを意図しない。このため、本発明は、以下の実施例に限定されると解釈しては一切ならず、むしろ、本明細書に提供した教示の結果として明白になる任意の変化及び全ての変化を包含すると解釈しなければならない。
【0088】
さらに説明なしで、当業者であれば、前記の説明及び以下の実例を使用して、本発明の化合物を生成し、利用し、クレームされている方法を実施することができると考えられる。それゆえに、以下の作業実施例では、具体的に本発明の好ましい実施形態を明らかにし、いかなる方法でも本開示の残りを限定するものと解釈してはならない。
【0089】
実施例1:中等度から重度の眉間しわ線の処理のための液体型ボツリヌス毒素型の有効性及び安全性:平行、無作為化、二重盲検、多施設、実薬制御、第III相臨床試験。
【0090】
ボツリヌス毒素A(BoNT/A)が、望ましくない眉間線及び他の過緊張性顔のしわを治すためにさまざまな方法で広く使用されている。しかし、現在のBoNT/Aの使用のほとんどで、生理食塩水による希釈を必要とし、使用者にとってきわめて不便であり、通常、毎回正確な濃度にするのが困難である。本明細書に示した結果は、中等度から重度の眉間線のために、新たに開発した液体型BoNT/A(MT10109L)とonabotulinumtoxinA(BOTOX(登録商標);ona-BoNT/A)の有効性及び安全性を比較して実施した実験に基づいている。
【0091】
これらの実験に用いられる材料及び方法をここに記載している。
【0092】
材料及び方法
【0093】
この試験は、韓国の3つの施設(セントポール病院、カトリック大学校;仁荷大学病院;江東にある慶熙大学病院)で実施された眉間しわ線補正についてのMT10109Lの有効性及び安全性の評価のための前向き、無作為化、二重盲検、平行、実薬制御、第III相臨床試験である。試験及び全て好適な修正は、ヘルシンキ宣言(南アフリカ、1996年修正)で公表された指針及び臨床試験の実施に関する基準に従って各参加施設の治験審査委員会によって審査され、承認された。全参加者から試験に参加するための同意文書を得た。
【0094】
参加者
【0095】
眉間線がある20~65歳の男性及び女性健常被験者は、治験担当者によってスクリーニングされた。顔しわスケール(FWS)に従って、中等度から重度の(重症度スコア2~3)眉間しわ線がある対象をこの試験に登録した(表1)。除外基準としては、患者にボツリヌス毒素によるリスクを負わす可能性がある医学的状態(例えば、重症筋無力症、ランバートイートン症候群、筋萎縮性側面索硬化症)、神経筋接続部に影響を及ぼす可能性がある医薬品(例えば、筋弛緩剤、スペクチノマイシンHCl、アミノグリコシド類、ポリペプチド系抗生物質、抗コリン薬、ベンゾジアゼピン)の事前使用、または治験薬剤またはその成分に対するアレルギーまたは過敏性が挙げられる。除外基準としては、3ヶ月以内のボツリヌス毒素による前治療、6ヶ月以内に眉間及び前額線に影響を及ぼした可能性がある他の方法、顔の美容整形及び/または永久インプラントなどの眉間(前額を含む)治療歴、または治療結果に影響を及ぼす可能性がある瘢痕が挙げられる。眉間線が徒手伸張法でも十分に改善しなかった患者も除外した。注入する可能性がある部位に皮膚障害または感染がある、または顔面神経麻痺または瞼下垂の病歴がある場合、その患者は適格ではなかった。妊娠または授乳中の女性を除外した。
【0096】
【0097】
試験デザイン
【0098】
無作為化により、全適格対象を1:1の割合で2つの群に割り付け、16週間の持続期間試験デザインが続いた(図1)。第2訪問日(0週、ベースライン)に、二重盲検法で各対象に総用量20U(4U/0.1ml)の液体BoNT/A(MT10109L;Medytox Inc.、清原郡、韓国)またはonabotulinumtoxinA(BOTOX(登録商標);ona-BoNT/A)を5つのポイントに筋肉内注入した。総注入量0.5mLを5つの注入に分けた:鼻根筋に0.1mL(4U)、左右皺眉筋の中間にそれぞれ0.1mL(4U)、及び左右皺眉筋の中央にそれぞれ0.1mL(4U)(図2)。この臨床試験では、MT10109L(0.625ml/バイアル(4U/0.1ml))及び50U ona-BoNT/Aを使用した。MT10109Lは、その液体性質のためさらに希釈する必要がないが、1.25mlの0.9%NaCl1.25ml中にona-BoNT/Aを溶解し、0.1ml当たり4Uとした。
【0099】
有効性測定
【0100】
16週間の観察期間中、第4週、第10週、第16週に対象を評価した。各訪問日に、治験担当者及び患者の両者が有効性及び安全性を評価した。また、再現性を確実にするために同じ機器(EOS600d、キャノン、東京、日本)を使用して、同じ設定で治療した顔領域の標準化デジタル写真を取った(図1)。医師が、生の評価により、FWSを使用して、最大渋面と休息の眉間線の重症度を評価した。各施設の全治験担当者が、標準化写真の等級判定システムを提供した。3人の盲検評価者が、FWSに従って、最大渋面と休息の写真を評価した(表1)。
【0101】
第1の有効性評価項目は、治験担当者の生の評価(対面観察)に基づいた第4週の最大渋面の応答個体のパーセンテージであった。第2の有効性評価項目としては、1)第16週の最大渋面の応答個体のパーセンテージ;2)治験担当者の生の評価に基づいた第4週及び第16週の休息した眉間線の応答個体のパーセンテージ;及び3)写真の評価に基づいた第4週の最大渋面で休息した応答個体のパーセンテージが挙げられた。ona-BoNT/Aの以前の試験に従って、応答個体とは、治療前FWSスコアが2または3であり、治療後FWSスコアが0または1である個体と定義した。これは、中等度のしわの対象では、少なくとも1ポイントの改善、重度のしわの対象では、少なくとも2ポイントの改善を意味する。また、第2の有効性評価項目として、第4週、第10週及び第16週の対象の自己評価によって決定される眉間線改善率及び満足率も含まれた。対象が、9ポイントスケール、+4(100%改善)~0(変化なし)~-4(100%悪化)を使用して線重症度の変化を評価し、7ポイントスケール、-3(非常に不満足)~+3(非常に満足)で治療の満足度に評点をつけた。+2ポイント超のスコア(中等度の改善)を改善とみなした。さらに、6ポイント超のスコア(満足)を満足とみなした。
【0102】
安全性測定
【0103】
試験中、訪問日ごとに身体的検査及びバイタルサインを検討した。スクリーニング日及び第16週に、治験担当者及び対象が、徴候及び症状を報告し、実験室試験(全血球計算、及び血液化学)を実施した。スクリーニング日、治療日、及び第16週に、尿hCGを検討した。同意の受領後に生じた全有害事象について有害事象の要約及び分析を実施した。全有害事象の頻度、試験薬剤に関係した有害事象の頻度、及び重度有害事象の頻度を比較することによって有害事象の頻度を記録した。
【0104】
統計的方法
【0105】
第1の評価項目のデータがある全対象が、最大解析対象集団(FAS)に含まれた。治験実施計画書に適合した対象(PP)集団は、主要なプロトコール違反を犯していなかったFASの対象の亜集団であった。第1の有効性評価項目パラメーターでは、2つの群間の応答個体率の差の97.5%片側信頼区間(CI)の下限を計算した。CIの解釈は、治療群の間の応答個体率の期待差が非劣性境界-15%より小さいという帰無仮説に基づいていた。推定CIの下限が限界-15%を越えた場合、MT10109Lは、ona-BoNT/Aに劣らないと結論づけることができた。この確認分析は、PP分析に基づいていた。第2の有効性評価項目では、対応のあるt検定、ピアソンのカイ二乗検定、またはフィッシャーの正確確率検定を実施した。
【0106】
有害事象の群間差を試験するためにフィッシャーの正確確率検定を実施した。臨床検査項目、血圧、及び心拍数では、集団内分析のために、ウィルコクソンの符号順位検定を実施し、試験の終了時にデータの集団間分析のためにウィルコクソンの符号順位検定を使用した。
【0107】
実験の結果は、本明細書に記載している。
【0108】
ベースラインの人口統計学的特性
【0109】
登録した対象168例のうち、対象159例が試験を完了し、そのため、PP集団は、MT10109L群、対象78例及びona-BoNT/A群、対象81例で構成された。登録した対象の年齢は、20~65歳であり、平均年齢は、それぞれ、MT10109L群が48.94歳であり、ona-BoNT/A群が49.86歳であった。全対象は韓国人であった。2つの群の人口統計は同等であり、2つの群は、治療前に、休息でも、最大渋面でも治療前線重症度の差がなかった。全対象に休息の中等度から重度の眉間しわ線があり、対象の大多数に最大渋面で重度眉間しわ線があった。(MT10109L群の56.41%;ona-BoNT/A群の50.62%)(表2)。
【0110】
【0111】
治験担当者の評価
【0112】
両群とも眉間線の有意な改善を示した。注入の4週間後、PP集団の生の評価による最大渋面の応答個体のパーセンテージは、MT10109L群が87.18%であり、ona-BoNT/A群が87.65%であったまた、MT10109L群及びona-BoNT/A群のFASの応答個体パーセンテージは、PP集団とほぼ同じであり、それぞれ85.54%及び85.71%であった(図3A)。2つの治療群間の応答個体のパーセンテージの差の97.5%CI(PP>-15%では-10.79%;FAS>-15%では-10.47%)は、MT10109Lがona-BoNT/Aに劣らないことを示した。
【0113】
第16週の生の評価による最大渋面の応答個体のパーセンテージは、ona-BoNT/A群の方がMT10109L群より有意に少なかった。PP集団の応答個体のパーセンテージは、MT10109L群が62.34%であり、ona-BoNT/A群が40.51%であった(p値=0.0064)(表3)。また、FAS集団の応答個体のパーセンテージは、MT10109L群が60.71%であり、ona-BoNT/A群が41.67%であった(表3、図3B)。PP集団及びFAS集団とも、2つの群の有意な差を示し、MT10109Lの優越性を示した。
【0114】
第4週及び第16週に、休息の応答個体のパーセンテージを評価し、PP集団及びFAS集団とも、第4週に、MT10109L群及びona-BoNT/A群の間の有意な差は、認められなかった。第16週に、PP集団の休息の応答個体のパーセンテージは、MT10109L群が50.00%であり、ona-BoNT/A群が31.58%であり、MT10109L群が有意な改善を示した(p値=0.0482)。しかし、FAS集団では、応答個体のパーセンテージは、MT10109L群(50.00%)及びona-BoNT/A群(33.33%)の間の有意な差を示さなかった。(p値:0.0641)(表3)。
【0115】
【0116】
写真の評価では、3人の独立した盲検評価者による第4週の最大渋面の応答個体率が、また、PP集団及びFAS集団でMT10109L群及びona-BoNT/A群の間の有意な差を示さなかった。結果は、表4に示している。
【0117】
【0118】
対象の評価
【0119】
眉間線の改善及び満足に対する対象の評価は、両群とも同等の結果をもたらした。第4週、第10週、及び第16週に、+2ポイント超をつけた(中等度に改善した)対象の割合と定義されるピーク改善率を評価した。集団及び集団とも、第4週、第10週、及び第16週のピーク改善率が、MT10109L及びona-BoNT/A群の間の有意な差を示さなかった。主観的評価による改善率は、PP集団のMT10109L及びona-BoNT/A群が、それぞれ、第4週に89.74%及び92.59%、第10週に81.82%及び91.14%、第16週に70.13%及び68.35%を示した。第4週、第10週、第16週に、「非常に満足」または「満足」を示す患者と定義される満足率を評価し、これは、また、PP集団及びFAS集団で、MT10109L及びona-BoNT/A群の間の有意な差を示さなかった。満足率は、PP集団のMT10109L及びona-BoNT/A群が、それぞれ、第4週に78.21%及び71.60%、第10週に74.03%及び68.35%、第16週に58.44%及び48.10%であった。PP集団の結果を図4に示している。
【0120】
安全性
【0121】
同等の数の治療により発現した有害事象が報告され、MT10109L群(21.43%)及び対照群(16.67%)であった(表5)。MT10109L群には、有害薬剤反応がなかった。注入に関係した有害薬剤反応は、対照群に報告された顔浮腫の1つのインシデントだけであった。両群とも重度有害薬剤反応は観察されなかった。有害事象のために中止した対象はなかった。
【0122】
【0123】
患者が試験医薬品を服用した後に生じた重篤な有害事象は、MT10109L群の1.19%(対象1/84、1インシデント)、対照群の2.38%(対象2/84、2インシデント)と報告された。重篤な有害事象では、ona-BoNT/A群の各患者が、急性心筋梗塞及び腹膜炎と報告された。急性心筋梗塞を発症した患者は、循環器科で心疾患の治療を受けており、このため、この事象は、試験薬剤注入と関係がないと思われる。また、患者が試験医薬品を服用した後、MT10109L群の患者1名が、ロテーターカフ症候群と報告された。
【0124】
実験室試験及びバイタルサインでは、MT10109L群及びona-BoNT/A群に試験薬剤を投与後、有意な異常な変化は、認められなかった。
【0125】
液体型ボツリヌス毒素A型の有効性及び安全性
【0126】
本明細書に示した結果は、MT10109Lが眉間線の治療に安全で効果的であることを示している。MT10109Lによる治療の結果、第4週及び第16週に、生の評価により、最大収縮及び休息とも眉間しわ線重症度の有意な改善が認められた。この試験の盲検評価者による写真の評価の結果及び対象の評価は、ona-BoNT/A及びMT10109Lが、任意の変数で任意のポイントで有意な差がないことを示している。当該結果は、また、MT10109Lが、第16週にona-BoNT/Aより大きく改善する可能性があることを示した。当該結果は、また、MT10109Lの有効性が、ona-BoNT/Aより長く持続することを示唆していることを示した。
【0127】
市販されているBoNT/A調剤は、非常に多様であり、そのユニークな生物学的性質のため有効性及び安全性が異なっていた(Klein AW,et al.,Plast Reconstr Surg.,2008;121(6):413e-422e)。これらのうち、ona-BoNT/Aは、1989年に米国で最初に承認され、市販されたためボツリヌス毒素市場を支配している最も知られる型である(Yang GH,et al.,Dermatologic Surgery,2013;39(1pt2):165-170)。結果として、ボツリヌス毒素A型を扱うことについての情報の大多数は、ona-BoNT/Aにみられる(Trindade De Almeida AR,et al.,Dermatologic Surgery,2011;37(11):1553-1565)。このため、この試験は、MT10109L及びona-BoNT/Aの有効性及び安全性を比較するように設計した。
【0128】
現在使用されているBoNT/A生成物の全ては、生成物が凍結乾燥粉末製剤として提供されるため、注入前に可変物質を使用して再調製を実施することを推奨している。これらの生成物は、また、供給、希釈及び貯蔵に関して不利である。例えば、Ona-BoNT/Aは、再調製後、2℃~8℃で貯蔵しなければならず、再調製の24時間以内に使用しなければならない(Huang W,et al.,J Am Acad Dermatol 2000;43:249-59)。
【0129】
rimabotulinumtoxin b(Myobloc(登録商標)、Solstice Neurosciences、Louisville、KY)が、液体注入形態のボツリヌス毒素Bとして使用されてきたが、BoNT/Aほど広く使用されておらず、BoNT/Aと等価用量のrimabotulinumtoxin bは、試験が完了していない(Trindade De Almeida AR,et al.,Dermatologic Surgery,2011;37(11):1553-1565)。
【0130】
MT10109Lは、最初の液体注入形態のBoNT/Aである。MT10109Lは、ona-BoNT/Aとほぼ同じである分子量900kDのBoNT/A型高分子タンパク質複合体を含有する(表6)。MT10109Lは、ona-BoNT/Aとほぼ同じ拡散能を示す。
【0131】
MT10109Lは、使用準備済の無菌液体として提供され;再調製の必要がなく、ほとんどのBoNT/Aと比べて貯蔵及び再使用に便利である。MT10109Lの有効期間は、現在、製造日から約22ヶ月と推定される。しかし、特定の理論に束縛されることを望まないと、安定性の延長試験により長くなっていると推測される。有効期間中、MT10109Lは、期限なしで随時再使用することができるのに対して、ona-BoNT/Aは、再調製後4時間~6週間以内に使用するよう推奨されている(Carruthers J,et al.,Plast Reconstr Surg.,2004;(Suppl);11(6)4:2S及びHexsel DM,et al.,Dermatol Surg.,2003;29:523-9)。MT10109Lは、本明細書に記載のとおり、より長い安定性が確認されているため、MT10109Lには、再使用するのにona-BoNT/Aの再調製より利点がある。さらに、MT10109Lは、現在、小パッケージ単位(25U/バイアル)として利用可能であり、眉間線の治療に好適である(表6)。
【0132】
【0133】
本明細書に示した結果は、MT10109Lの有効性が、ona-BoNT/Aより長く持続したことを示している。眉間線改善のためのBoNT/Aの治療作用は、注入後4週間以内に認められ、3~6ヶ月で次第に減少する。MT10109Lの使用と関係する眉間線の改善期間をより長く維持するという事実により、他の型のBoNT/Aより大きな利点がもたらされる。Glogau Rらによるメタ分析の結果では、20単位のona-BoNT/Aによる眉間線の治療が、第16週で50%以上の応答個体に臨床的作用を持続させたことを示した(Glogau R,et al.,Dermatol Surg.,2012;38(11):1794-803)。しかし、この試験では、ona-BoNT/Aの応答個体率が、以前の報告より小さかった。このため、この結果を確認するために、いくつかの医療センターの患者を登録し、追跡期間がより長い大規模試験が必要である。
【0134】
現在使用されているBoNT/Aは、安定化のために、アルブミンまたはゼラチンを含有するが、MT10109Lでは、全製造工程の成分からアルブミンだけでなく、動物由来の材料を除去した。このため、MT10109Lでは、伝達性海綿状脳症を含む感染性疾患のリスクが最少になった。本試験ではいずれの毒素でも重度有害薬剤反応が観察されなかった。このため、MT10109Lは、ona-BoNT/Aと同じくらい安全である。
【0135】
本明細書に示した結果は、MT10109Lが、眉間線の改善でona-BoNT/Aに劣らず、安全性が比較的ほぼ同じであることを示しており、このため、当該症状の治療に使用されると判断することができる。MT10109Lは、眉間線の改善期間がより長く維持され、希釈ステップを加えることなく簡便であり、貯蔵及び再使用が容易であり、構成成分に動物由来のタンパク質を含有しないため、従来のBoNT/Aの粉末製剤の好ましい代替物となる。
【0136】
実施例2:中等度~重度の眉間線の対象でBOTOXに対するMT10109の安全性及び有効性を測定するための無作為化、二重盲検、多施設、第II相、最適用量発見試験
【0137】
本明細書に示した結果は、中等度~重度の眉間線の対象でMT10109及びBOTOX(登録商標)の凍結乾燥製剤の安全性及び有効性を比較している。最大渋面の応答がMT10109 20U群で最長120日間、持続したことを示す。
【0138】
本明細書に記載した実験は、10U、20U及び30UでMT10109を投与した場合と20UでBOTOX(登録商標)を投与した場合を比較した。MT10109の有効性は、最初に第30日(第4訪問日;±7日間)に評価し、関心がある比較は、MT10109 20UとBOTOX(登録商標)20Uの応答個体率の比較であった。応答個体は、分析に応じて、第30日の最大渋面、または休息の眉間線重症度評点が、なし(0)または軽度(1)と定義した。
【0139】
第14日(第3訪問日)、第30日(第4訪問日)、第60日(第5訪問日)、第90日(第6訪問日)及び第120日(第7訪問日)の測定時点は、訪問日の前後7日間を許容するものとした。そのため、例えば、第30日は、正確に試験治療投与後30日間とならない可能性がある。本明細書に示したとおり、測定時点は、訪問日でなく日によって表示される。最大解析対象集団(FAS)を使用して有効性の全分析を実施し、援助的分析として治験実施計画書に適合した対象(PP)集団を使用して繰り返した。
【0140】
第1の有効性パラメーター:生の評価による第30日の最大渋面の眉間線重症度の治験担当者の評点
【0141】
表7にFASについて第30日の最大渋面の眉間線重症度の治験担当者の生の評価をまとめている。マンテル-ヘンツェルカイ二乗検定を使用して治療群を比較し、図5にグラフ形式で示している。表8にPP集団の結果をまとめている。
【0142】

【0143】
FASでは、第30日の最大渋面の対象の眉間線重症度の治験担当者の生の評価に基づくと、MT10109 20U群の応答個体(重症度評点、なし[0]または軽度[1])の割合が、BOTOX(登録商標)20U群とほぼ同じであった(表7)。
【0144】
MT10109 20U群の応答個体の割合が、69.2%(対象26例のうち18例)であり、BOTOX(登録商標)20U群の応答個体の割合が、73.1%(対象26例のうち19例)であった。
【0145】
MT10109 20U及びBOTOX(登録商標)20U群の間に、応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった(-3.2[95%CI:-28.3~21.8];p値0.760)(図5)。
【0146】
MT10109 10U群の応答個体の割合の方が、BOTOX(登録商標)20U群と比べて小さく、MT10109 30U群の応答個体の割合の方が、BOTOX(登録商標)20Uと比べて大きかった(表7)。
【0147】
MT10109 10U群の応答個体の割合が、60.0%(対象例30のうち18例)であり、MT10109 30U群の応答個体の割合が88.0%(対象25例のうち22例)であり、BOTOX(登録商標)20U群の応答個体の割合が、73.1%(対象26例のうち19例)であった
【0148】
MT10109 10U及びBOTOX(登録商標)20U群の間(-9.7[95%CI:-34.6~15.2];p値0.448)、またはMT1010930U及びBOTOX(登録商標)20U群の間(17.6[95%CI:-4.1~39.3];p値0.117)に、応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった(図5)。
【0149】
MT10109 10U及びMT10109 20U群の間(-6.5[95%CI:-31.4~18.4];p値0.614)、またはMT1010930U及びMT10109 20U群の間(20.8[95%CI:-0.9~42.5];p値0.066)に、応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。MT10109 10U群の応答個体の割合の方が、MT10109 30U群の応答個体の割合より小さく、統計的に有意な差であった(-27.3[95%CI:-48.8~-5.8];p値0.020)。
【0150】
表8にPP集団について第30日の最大渋面の眉間線重症度の治験担当者の生の評価をまとめている。マンテル-ヘンツェルカイ二乗検定を使用して治療群を比較した。
【0151】
【0152】
PP集団の結果は、FASの結果を支持した。
【0153】
MT10109 20U群の応答個体の割合が69.2%(対象26例のうち18例)であり、BOTOX(登録商標)20U群の応答個体の割合が、73.1%(対象26例のうち19例)であった(表8)。
【0154】
MT10109 20U及びBOTOX(登録商標)20U群の間の応答個体の割合の差は、-3.8(95%CI:-32.8~25.1;p値0.762)であり、統計的に有意でなかった。
【0155】
PP集団では、MT10109 10U群の応答個体の割合の方が、BOTOX(登録商標)20U群と比べて小さく、MT10109 30U群の応答個体の割合の方が、BOTOX(登録商標)20Uと比べて大きかった。
【0156】
MT10109 10U群の応答個体の割合が、60.0%(対象例30のうち18例)であり、MT10109 30U群の応答個体の割合が、87.0%(対象23例のうち20例)であり、BOTOX(登録商標)20U群の応答個体の割合が、73.1%(対象26例のうち19例)であった(表8)。
【0157】
MT10109 10U及びBOTOX(登録商標)20U群の間(-13.1[95%CI:-41.6~15.4];p値0.307)、またはMT1010930U及びBOTOX(登録商標)20U群の間(13.9[95%CI:-12.6~40.3];p値0.234)に、応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。
【0158】
第2の有効性パラメーター:生の評価による最長第120日の最大渋面及び休息の眉間線重症度の治験担当者の評点
【0159】
FASについて他の訪問日の最大渋面及び休息の眉間線重症度の治験担当者の生の評価を、表9にまとめ、図6にグラフ形式でまとめている。マンテル-ヘンツェルカイ二乗検定を使用して治療群を比較した。
【0160】
【0161】
最大渋面の応答個体の割合は、第14日から第120日に全治療群で減少した(治験担当者の生の評価に基づく)。第120日の当該割合は、MT10109 20U群の方が、BOTOX(登録商標)20U及び他のMT10109群と比べて大きかった(図6)。
【0162】
第60日及び第120日の最大渋面の応答個体の割合は、MT10109 20U群が、それぞれ65.2%(対象23例のうち15例)及び52.2%(対象23例のうち12例)であり、BOTOX(登録商標)20U群が、それぞれ68.0%(対象25例のうち17例)及び23.1%(対象26例のうち6例)であった(表9)。
【0163】
MT10109 20U及びBOTOX(登録商標)20U群の間の最大渋面の応答個体の割合の差は、第60日が-4.3(95%CI:-30.7から22.1;p値0.714)であり、第120日が24.0(-0.7~48.7;p値0.058)であった。
【0164】
他のMT10109群では、第60日の最大渋面の応答個体の割合は、BOTOX(登録商標)20U群(68.0%;対象25例のうち17例)と比べて、MT10109 10U群の方が小さく(50.0%;対象30例のうち15例)、MT10109 30U群とほぼ同じであった(68.0%;対象25例のうち17例)。第120日の最大渋面の応答個体の割合は、MT10109 10U(32.1%;対象28例のうち9例)及びMT1010930U(28.0%;対象25例のうち7例)群の方が、BOTOX(登録商標)20U群(23.1%;対象26例のうち6例)より大きかった(表9)。任意の測定時点で、MT10109 10U及びBOTOX(登録商標)20U群の間、またはMT10109 30U及びBOTOX(登録商標)20U群の間に、最大渋面の応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。任意の測定時点で、MT10109 10U及びMT10109 20U群の間、またはMT10109 30U及びMT10109 20U群の間に、最大渋面の応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。第14日の応答個体の割合は、MT10109 10U群の方が、MT10109 30U群より一般に小さく、差は、統計的に有意であった(-30.4[95%CI:-55.6~-5.2];p値0.012)。
【0165】
休息の眉間線重症度の治験担当者の生の評価の分析では、分析に含めるのに適格であった(すなわち、ベースライン眉間線重症度が中等度[2]または重度[3])対象の数が小さかった。従って、治療群の間の比較及びいずれの得られたp値も、注意して扱わなければならない。
【0166】
休息の応答個体の割合は、第14日から第120日に全治療群で減少した(治験担当者の生の評価に基づく)(図9中央左)。当該割合は、MT10109 20U群の方が、BOTOX(登録商標)20U群と比べてどの測定時点でも小さかった。
【0167】
第14日及び第120日の休息の応答個体の割合は、MT10109 20U群が、それぞれ25.0%(対象12例のうち3例)及び10.0%(対象10例のうち1例)であり、BOTOX(登録商標)20U群が、それぞれ63.6%(対象11例のうち7例)及び30.0%(対象10例のうち3例)であった(表9)。
【0168】
第120日の休息の応答個体の割合は、BOTOX(登録商標)20U群(30.0%;対象10例のうち3例)より、MT10109 10U(10.0%;対象例10のうち1例)の方が小さく、MT10109 30U(38.5%;対象13例のうち5例)群の方が大きかった(表9)。
【0169】
第2の有効性パラメーター:治療の作用による眉間線改善及び満足の対象の評価
【0170】
眉間線改善の対象の自己評価を、表10にまとめ、図7にグラフ形式でまとめている。治療の作用による満足の対象の自己評価を、表11にまとめ、図8にグラフ形式でまとめている。マンテル-ヘンツェルカイ二乗検定を使用して治療を比較した。
【0171】
【0172】
眉間線改善の対象の自己評価では、第30日の応答個体の割合(9ポイントスケールで、少なくとも+2[中等度改善、約50%]のスコア)は、生の評価評点を反映すると、MT10109 20UとBOTOX(登録商標)20U群(FAS)がほぼ同じであった。当該割合は、また、MT10109 30UとBOTOX(登録商標)20U群がほぼ同じであった。第60日の応答個体の割合は、MT10109 20U及びMT10109 30U群の方が、BOTOX(登録商標)20U群より大きく、第120日の応答個体の割合は、MT10109 20U群の方が、他の治療群と比べて依然として大きかった(図7)。
【0173】
第30日、第60日及び第120日の応答個体の割合は、MT10109 20U群が、それぞれ73.1%(対象26例のうち19例)、65.2%(対象23例のうち15例)及び43.5%(対象23例のうち10例)であり、BOTOX(登録商標)20U群が、それぞれ69.2%(対象26例のうち18例)、52.0%(対象25例のうち13例)及び30.8%(対象26例のうち8例)であった(表10)。任意の測定時点で、MT10109 20U及びBOTOX(登録商標)20U群の間に、応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。
【0174】
他のMT10109群では、第30日及び第60日の応答個体の割合は、BOTOX(登録商標)20U群と比べて、MT10109 10U群の方が小さく、MT10109 30U群の方が大きかった(表10)。第120日の応答個体の割合は、3つの治療群(MT10109 10U、28.6%[対象28例のうち8例];MT10109 30U、28.0%[対象25例のうち7例];BOTOX(登録商標)20U、30.8%[対象26例のうち8例])がほぼ同じであった。第14日のMT10109 10U及びBOTOX(登録商標)20Uの間の応答個体の割合の差は、統計的に有意であった(-23.6[95%CI:-46.5~-0.6];p値0.049)。任意の測定時点で、MT10109 30U及びBOTOX(登録商標)20U群の間に、応答個体の割合の統計的に有意な差が認められなかった。MT10109 30U及びMT10109 20U群の間に、眉間線改善の対象の評価の応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。各測定時点で、MT10109 10U群の応答個体の割合の方が、他の2つの群より小さかった。第14日のMT10109 10U及びMT1010930U群の間の差(-30.4[95%CI:-52.0~8.7];p値0.011)及び第90日のMT10109 10U及びMT10109 20U群の間の差(-34.7[95%CI:-58.8~-10.7];p値0.007)が、統計的に有意であった。
【0175】
【0176】
治療の作用による満足の対象の自己評価では、応答個体は、スコアが、7ポイントスケールで少なくとも6(満足)であることと定義した。
【0177】
改善の自己評価にみられるとおり、第30日の満足の評価の応答個体の割合は、生の評価評点を反映すると、MT10109 20U及びBOTOX(登録商標)20U群ともほぼ同じであった。MT10109 20U群の第120日の応答個体率の方が、他の治療群より大きかった(図8)。MT10109 20U群の満足は、安定していると思われたが、BOTOX(登録商標)20U及び他のMT10109群では、パターンを見分けるのは困難であった。
【0178】
第30日、第60日及び第120日の応答個体の割合は、MT10109 20U群が、それぞれ65.4%(対象26例のうち17例)、60.9%(対象23例のうち14例)及び56.5%(対象23例のうち13例)であり、BOTOX(登録商標)20U群が、それぞれ61.5%(対象26例のうち16例)、44.0%(対象25例のうち11例)及び46.2%(対象26例のうち12例)であった(表11)。任意の測定時点で、MT10109 20U及びBOTOX(登録商標)20U群の間に応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。
【0179】
他のMT10109群では、第30日の応答個体の割合は、BOTOX(登録商標)20U群と比べて、MT10109 10U群の方が小さく、MT10109 30U群の方が大きかった(表11)。MT10109両群の第60日の応答個体の割合の方が、BOTOX(登録商標)20Uと比べて大きかった。第120日の応答個体の割合は、MT10109 10U(39.3%[対象28例のうち11例])及びMT1010930U(44.0%[対象25例のうち11例])治療群の方が、BOTOX(登録商標)20U群(46.2%[対象26例のうち12例])と比べて小さかった任意の測定時点で、MT10109 10U及びBOTOX(登録商標)20U群の間、またはMT1010930U及びBOTOX(登録商標)20U群の間に、応答個体の割合の統計的に有意な差が認められなかった。
【0180】
MT10109 10U及びMT10109 20U群の間、またはMT10109 30U及びMT10109 20U群の間に、治療の作用による満足の対象の評価の応答個体の割合の統計的に有意な差がなかった。MT10109 10U群の応答個体の割合の方が、各測定時点で、MT10109 30U群より小さく、第30日の差は、統計的に有意であった(-27.3[95%CI:-52.8~-1.9];p値0.040)。
【0181】
有効性結果(FAS)-MT10109の有効性の持続性の改善
【0182】
単一用量20UのMT10109では、対象の眉間線を減少させるBOTOX(登録商標)20Uとほぼ同じ作用を示した。
【0183】
第30日の最大渋面の眉間線重症度の治験担当者の生の評価後、MT10109 20U群の応答個体の割合が69.2%であり、BOTOX(登録商標)20U群の応答個体の割合が73.1%であった。2つの治療群の間の応答個体の割合の差は、-3.2(95%CI:-28.3~21.8)であり、統計的に有意でなかった(p値0.760)。
【0184】
治療の作用による眉間線改善及び満足の対象の自己評価では、MT10109 20U及びMT10109 30U群の応答個体の割合の方が、一般に、BOTOX(登録商標)20Uと比べて大きかった。MT10109 20U及びBOTOX(登録商標)20U群の第30日の応答個体率は、生の評価評点(MT10109 20U群の治療作用による改善73.1%及び満足65.4%;BOTOX(登録商標)20U群の治療作用による改善69.2%及び満足61.5%)に表され、ほぼ同じであった。
【0185】
MT10109 20U群の最大渋面の応答は、第120日まで持続した。第120日の応答個体の割合は、治験担当者の生の評価によると、BOTOX(登録商標)20U群の23.1%と比べてMT10109 20U群の52.2%であった。ほとんどの測定時点で、BOTOX(登録商標)20U群と比べて、MT10109 30U群の最大渋面の応答個体の割合の方が大きく、MT10109 10U群の最大渋面の応答個体の割合の方が小さかった。
【0186】
写真の評価に基づく独立した審査専門員によると、応答個体と考えられる対象はより少なかった;しかし、第30日及び第60日の最大渋面の応答個体の割合(平均スコアを使用すると)は、治験担当者の生の評価を反映すると、MT10109 20U(第30日48.1%及び第60日40.7%)及びBOTOX(登録商標)20U治療群(第30日51.7%及び第60日41.4%)がほぼ同じであった。
【0187】
休息の眉間線重症度の治験担当者の生の評価及び独立した審査専門員の写真の評価とも、応答個体の割合が、全治療群で小さかった。ほとんどの測定時点で、MT10109 20U群の応答個体率の方が、BOTOX(登録商標)20U群と比べて小さかった。
【0188】
第30日の最大渋面のロジスティック回帰を使用すると、用量応答曲線が、用量及び応答の間に相関がないことを示した。
【0189】
さらに、図9及び図10に実験のデータを示した。図9は、最大渋面及び休息の治験担当者の評価、最大渋面及び休息の独立したリーダーの評価、及び対象の評価及び満足を示す一連のグラフである。図10は、集合的に生成したデータを示し、2つの異なる治療部位に分割している。
【0190】
要約すると、本明細書に示したデータは、20Uで投与した凍結乾燥MT10109が、初期の測定時点(例えば、第30日)でBOTOX(登録商標)との類似性を示すことを示す。さらに、MT10109 20U群の治療の応答が、治療後第120日に、BOTOX(登録商標)20U群と比べて増大するとみられたため、20Uで投与したMT10109が、BOTOX(登録商標)と比べて持続作用の増大を示すことが示されている。
【0191】
本明細書に引用した特許、特許出願、及び出版物のそれぞれ及びすべての開示が、全体として参照により本明細書に組み込まれる。本発明が特定の実施形態を参照して開示されている一方で、本発明の他の実施形態及び変更が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者によって考案される可能性がある。添付したクレームは、このような実施形態及び均等の変更全てを含むと解釈されることを意図している。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10