(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20220810BHJP
E02D 27/08 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E02D27/08
(21)【出願番号】P 2017240350
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596036692
【氏名又は名称】株式会社タツミ
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(72)【発明者】
【氏名】小橋 知季
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 唯一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 邦生
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-089749(JP,U)
【文献】特開2011-047118(JP,A)
【文献】特開平09-088086(JP,A)
【文献】特開2001-049675(JP,A)
【文献】特開2003-293449(JP,A)
【文献】実開昭63-190337(JP,U)
【文献】特開平10-018304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0266659(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎底面に形鋼で形成された基礎本体が設置されてなる基礎構造であって、
前記基礎本体の下フランジは、前記基礎底面との間に所定の間隔をもって配置され、
前記下フランジに、ねじ孔が前記下フランジの幅方向に離間して設けられ、
前記ねじ孔に頭付き高さ調整ボルトが上側から螺合され、当該高さ調整ボルトの下端部が
砕石によって形成された前記基礎底面に
直接当接されていることを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記基礎本体は、下フランジの幅が上フランジの幅より大きい形鋼によって構成され、
前記下フランジが基礎底面側に向けられていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記下フランジを包み込むようにして下フランジ被覆材が設けられ、この下フランジ被覆材が前記基礎底面に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基礎構造。
【請求項4】
前記基礎本体のウエブの上下方向の少なくとも一部を囲むようにしてウエブ被覆材が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の基礎構造。
【請求項5】
前記基礎本体は、前記高さ調整ボルトを有する下側形鋼と、この下側形鋼の上フランジに設置された上側形鋼とを備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の基礎構造。
【請求項6】
平面視において、建物の外周部に配置されている前記基礎本体は、前記建物の外壁側を向く面が被覆材によって被覆されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物を支持する基礎の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の建物を支持する基礎の一例として、H形鋼で形成された連続フーチング基礎が知られている(例えば特許文献1参照)。この連続フーチング基礎を使用した基礎構造は、地盤を地盤面から所定の深さだけ掘削し、掘削底面に敷き詰めた砕石や捨てコンクリートによって形成される基礎底面にH形鋼で形成された基礎の下フランジを設置することによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の基礎構造では、基礎底面が砕石や捨てコンクリートによって形成されているため、基礎底面に不陸が生じ易く、基礎底面が水平にレベル出しされていない場合がある。このように、基礎底面が水平にレベル出しされていないと、H形鋼の上フランジの上面で構成される基礎上面が水平面に対して傾いてしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、基礎底面が水平にレベル出しされていない場合でも、形鋼で形成された基礎本体の上フランジの上面を容易に水平にレベル出しできる基礎構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の基礎構造は、基礎底面に形鋼で形成された基礎本体が設置されてなる基礎構造であって、
前記基礎本体の下フランジは、前記基礎底面との間に所定の間隔をもって配置され、
前記下フランジに、ねじ孔が前記下フランジの幅方向に離間して設けられ、
前記ねじ孔に高さ調整ボルトが螺合され、当該高さ調整ボルトの下端部が前記基礎底面に当接されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記基礎本体は、上下のフランジと、これら上下フランジを連結するウエブを有していればよく、例えばH形鋼、I形鋼、溝形鋼等の形鋼によって形成される。
また、前記ねじ孔は、下フランジの幅方向に離間して設けられるとともに、基礎本体の長手方向に所定ピッチで複数設けられる。
【0008】
本発明においては、基礎本体の下フランジは、前記基礎底面との間に所定の間隔をもって配置されているので、基礎底面が水平にレベル出しされていない場合、高さ調整ボルトを正逆方向に適宜回すことによって、基礎本体の水平面に対する傾きを調整して、当該基礎本体の上フランジの上面を容易に水平にレベル出しできる。
特に本発明においては、上部の基礎本体に曲げ剛性の高い形鋼が使用される。曲げ剛性の高い形鋼を仕様することで、前記ねじ孔のピッチを大きくすることが可能になる。また場合によっては、基礎本体の傾き状況に応じて必要最低限の高さ調整ボルトを設置すればよく、すべてのねじ孔に高さ調整ボルトを設置する必要はなくなるため、施工時の調整手間を削減することが可能になる。
【0009】
また、本発明の前記構成において、前記基礎本体は、下フランジの幅が上フランジの幅より大きい形鋼によって構成され、前記下フランジが基礎底面側に向けられていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、下フランジの幅が上フランジの幅より大きい形鋼によって構成され、下フランジが基礎底面側に向けられているので、基礎底面に作用する地耐力(接地圧)を分散させることが可能になるともに、基礎本体としての安定性にも優れたものとなる。
【0011】
また、本発明の前記構成において、前記下フランジを包み込むようにして下フランジ被覆材が設けられ、この下フランジ被覆材が前記基礎底面に設置されていてもよい。
【0012】
下フランジ被覆材としては、コンクリートが好適に使用されるが、コンクリートに限ることはない。例えば、モルタルや硬質樹脂等を使用することもできる。
また、下フランジを包み込むようにして下フランジ被覆材を設ける場合、当該下フランジ被覆材が基礎本体のフーチングを形成すように設けるのが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、下フランジを包み込むようにして設けられた下フランジ被覆材が基礎底面に設置されているので、基礎底面での基礎本体の下面の接触を強固なものとすることができるとともに、地耐力を効率的に基礎本体へ伝達できる。
【0014】
また、本発明の前記構成において、前記基礎本体のウエブの上下方向の少なくとも一部を囲むようにしてウエブ被覆材が設けられていてもよい。
【0015】
ウエブ被覆材としては、コンクリートが好適に使用されるが、コンクリートに限ることはない。例えば、モルタルや硬質樹脂等を使用することもできる。
また、基礎本体のウエブの上下方向の少なくとも一部を囲むようにしてウエブ被覆材を設ける場合、例えば、前記下フランジ被覆材の上面から立ち上がるようにしてウエブ被覆材を設け、当該ウエブ被覆材の上面が地盤面より高くなるようにしてもよい。また、ウエブ被覆材の上面を上フランジの下面に接触させてもよい。
【0016】
このような構成によれば、基礎本体のウエブの上下方向の少なくとも一部を囲むようにしてウエブ被覆材が設けられているので、地盤からウエブに対して作用する水平力に対して十分な抵抗を確保でき、形鋼のウエブの板厚を削減できる。また、基礎本体のウエブの上部、例えば地盤より突出する上部を囲むようにウエブ被覆材を設けることによって、従来の基礎と同じ意匠性を保つことができる。
【0017】
なお、ウエブ被覆材はかならずしもウエブのみを被覆するものである必要はなく、施工状況や防錆処理を目的として、上フランジまで包み込むように被覆材が設けられていてもよい。
【0018】
また、本発明の前記構成において、前記基礎本体は、前記高さ調整ボルトを有する下側形鋼と、この下側形鋼の上フランジに設置された上側形鋼とを備えていてもよい。
【0019】
この場合、下側形鋼の下フランジが前記下フランジを構成し、上側形鋼の上フランジが前記上フランジを構成する。
また、下側形鋼の上フランジは地盤面より上方に配置し、この上フランジに上側形鋼を設置するのが好ましく、当該上側形鋼は下側形鋼より高さ寸法を短く設定するのが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、基礎本体が、下側形鋼と、この下側形鋼の上フランジに設置された上側形鋼とを備えているので、コンクリート打設時等に下側形鋼の位置ずれが発生した場合でも、上側形鋼の水平方向の位置を調整することで、高精度の基礎本体の上面を構築できる。すなわち、上述したように、基礎本体の下フランジは、基礎底面との間に所定の間隔をもって配置されているので、高さ調整ボルトによるレベル出しの後、前記間隔に土砂等を充填したり、下フランジを包み込むようにしてコンクリート等の下フランジ被覆材を基礎底面に設置(打設)する場合に、これら土砂やコンクリートの圧力によって基礎本体が水平方向に若干位置ずれを生じる場合がある。この場合に、上側形鋼を下側形鋼の位置ずれの分だけ、位置調整することによって、高精度の基礎本体の上面を構築できる。
【0021】
また、本発明の前記構成において、平面視において、建物の外周部に配置されている前記基礎本体は、前記建物の外壁側を向く面が被覆材によって被覆されていてもよい。
【0022】
被覆材としては、コンクリートが好適に使用されるが、コンクリートに限ることはない。例えば、モルタルや硬質樹脂等を使用することもできる。
【0023】
このような構成によれば、基礎本体の、建物の外壁側を向く面が被覆材によって被覆されているので、建物の外部から基礎本体を見た場合に、従来の基礎と同じ意匠性を保つこことができる。
また、平面視において、建物の内部側に設けられている基礎本体を被覆材によって被覆しないことによって、基礎重量の削減、施工手間の削減を行える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基礎底面が水平にレベル出しされていない場合、高さ調整ボルトを正逆方向に適宜回すことによって、基礎本体の水平面に対する傾きを調整して、当該基礎本体の上フランジの上面を容易に水平にレベル出しできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る基礎構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る基礎構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態を示すもので、(a)は基礎構造を示す断面図、(b)は変形例の基礎構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の第4の実施の形態に係る基礎構造を示すもので(a)は断面図、(b)は要部の断面図である。
【
図5】本発明の第5の実施の形態に係る基礎構造を示す断面図である。
【
図6】本発明の第6の実施の形態に係る基礎構造を示す断面図である。
【
図7】本発明の第6の実施の形態に係る基礎構造の基礎伏図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る基礎構造の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態の基礎構造の断面図である。
図1において、符号10は基礎本体を示す。基礎本体10は、上フランジ11と、下フランジ12と、これら上下のフランジ11,12を連結するウエブ13とを備えている。
また、基礎本体10は、下フランジ12の幅が上フランジ11の幅より大きいH形鋼によって形成されている。
【0027】
このような基礎本体10は、
図1において紙面と直交する方向に延在する布基礎を構成するものであり、基礎底面15aに設置されている。すなわち、地盤を地盤面GLから所定の深さまで掘削し、この掘削底面に敷き詰めた砕石15によって基礎底面15aが形成されている。
この基礎底面15aに基礎本体10の下フランジ12が、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置されている。この間隔Sには土砂16が充填されている。
【0028】
下フランジ12には、ねじ孔12dが下フランジ12の幅方向(
図1において左右方向)に離間して設けられている。具体的には、ねじ孔12dは、平面視において、ウエブ13を挟んで対称的に設けられ、さらに、基礎本体10の長手方向(
図1にいて紙面と直交する方向)に所定ピッチで複数設けられている。
ねじ孔12dには高さ調整ボルト17が螺合され、当該高さ調整ボルト17の下端部が基礎底面15aに当接されている。
【0029】
本実施の形態の基礎構造を構築するとともに、基礎本体10の上フランジ11の上面のレベル出しを行う場合、まず、基礎底面15aに基礎本体10の下フランジ12を設置する。この際、高さ調整ボルト17を下フランジ12の下面より所定長さだけ突出させ、当該高さ調整ボルト17の下端部を基礎底面15aに当接させる。これによって下フランジ12は、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置される。
【0030】
次に、上フランジ11の上面に図示しない水平器を載置し、この水平器を目視しながら高さ調整ボルト17を正逆方向に適宜回すことによって、上フランジ11の上面が水平となるようにレベル出しする。
次に、前記間隔Sに土砂16を充填することによって、当該土砂16を介して上フランジ11を基礎底面15aに設置する。これによって基礎構造が構築される。
なお、土砂16の充填作業は高さ調整ボルト17によるレベル出しの前に行って、充填作業後に、高さ調整ボルト17によってレベル出しを行ってもよい。
【0031】
以上のように本実施の形態によれば、基礎本体10の下フランジ12は、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置されているので、高さ調整ボルト17を正逆方向に適宜回すことによって、基礎本体10の水平面に対する傾きを調整して、当該基礎本体10の上フランジ11の上面を容易に水平にレベル出しできる。
また、基礎本体10は、下フランジ12の幅が上フランジ11の幅より大きい形鋼によって構成され、下フランジ12が基礎底面15a側に向けられているので、基礎底面15aに作用する地耐力(接地圧)を分散させることが可能になるともに、基礎本体10としての安定性にも優れたものとなる。
さらに、基礎本体10が平板等に比べ剛性の高いH形鋼を用いていることにより、基礎本体10の長手方向のねじ孔12dのピッチを大きくでき、また、設けられたねじ孔12dをすべて用いることなくレベル出しができる可能性がある。
【0032】
(第2の実施の形態)
図2は第2の実施の形態の基礎構造の断面図である。
本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、下フランジ12を包み込むようにして下フランジ被覆材20が設けられ、この下フランジ被覆材20が基礎底面15aに設置されている点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0033】
本実施の形態では、下フランジ12を包み込むようにして下フランジ被覆材20が設けられている。下フランジ被覆材20は、本実施の形態では、コンクリートによって構成されている。また、下フランジ被覆材20は、下フランジ12の断面を包み込むような断面矩形状に形成されており、
図2において紙面と直交する方向に延在し、当該下フランジ被覆材20と下フランジ12とによって基礎のフーチングが構成されている。
また、下フランジ被覆材20の内部には下フランジ12より上側および下側で、かつ下フランジ12よりその幅方向(
図2において左右方向)の外側に、ひび割れ防止筋21が設けられている。このような下フランジ被覆材20は基礎底面15aに設置されており、下フランジ12と基礎底面15aとの間には、第1の実施の形態と異なり、土砂16は充填されておらず、その代わりに下フランジ12と基礎底面15aとの間は、下フランジ被覆材20を構成するコンクリートによって満たされている。
なお、基礎本体10の大きさ等によっては、ひび割れ防止筋21は設けなくてもよい。
【0034】
本実施の形態の基礎構造を構築するとともに、基礎本体10の上フランジ11の上面のレベル出しを行う場合、まず、基礎底面15aに基礎本体10の下フランジ12を設置する。この際、高さ調整ボルト17を下フランジ12の下面より所定長さだけ突出させ、当該高さ調整ボルト17の下端部を基礎底面15aに当接させる。これによって下フランジ12は、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置される。
【0035】
次に、上フランジ11の上面に図示しない水平器を載置し、この水平器を目視しながら高さ調整ボルト17を正逆方向に適宜回すことによって、上フランジ11の上面が水平となるようにレベル出しする。
次に、下フランジ12の幅方向の両側において、当該下フランジ12の幅方向端部より外側に、図示しないフーチング型枠をそれぞれ配置するとともに当該フーチング型枠を基礎底面15aに設置固定する。次に、両フーチング型枠間にひび割れ防止筋21を配筋した後、当該両フーチング型枠間に、下フランジ被覆材20を構成するコンクリートを下フランジ12より上方でかつ高さ調整ボルト17の頭部より上方まで打設する。これによって、下フランジ12を包み込むようにして下フランジ被覆材20を設ける。そして、コンクリートが硬化した後、フーチング型枠を脱型することによって、基礎構造が構築される。
【0036】
以上のように本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に効果を得られる他、下フランジ12を包み込むようにして設けられた下フランジ被覆材20が基礎底面15aに設置されているので、基礎底面15aでの基礎本体10の下面の接触を強固なものとすることができるとともに、地耐力を効率的に基礎本体10へ伝達できる。
【0037】
(第3の実施の形態)
図3(a)は第3の実施の形態の基礎構造の断面図である。
本実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、基礎本体10のウエブ13の上下方向の少なくとも一部を囲むようにしてウエブ被覆材22が設けられている点であるので、以下ではこの点について説明し、第2の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0038】
本実施の形態では、下フランジ被覆材20の上面から立ち上がるようにしてウエブ被覆材22が設けられており、当該ウエブ被覆材22の上面は地盤面GLより高くなっているとともに上フランジ11より下方に位置している。
ウエブ被覆材22は、本実施の形態では、コンクリートによって構成されている。また、ウエブ被覆材22は、下フランジ被覆材20より上方において、ウエブ13の断面を包み込むような断面矩形状に形成されており、
図3において紙面と直交する方向に延在し、当該ウエブ被覆材22とウエブ13とによって基礎の立ち上り部が構成されている。
【0039】
本実施の形態の基礎構造を構築するとともに、基礎本体10の上フランジ11の上面のレベル出しを行う場合、まず、基礎底面15aに基礎本体10の下フランジ12を設置する。この際、高さ調整ボルト17を下フランジ12の下面より所定長さだけ突出させ、当該高さ調整ボルト17の下端部を基礎底面15aに当接させる。これによって下フランジ12は、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置される。
次に、上フランジ11の上面に図示しない水平器を載置し、この水平器を目視しながら高さ調整ボルト17を正逆方向に適宜回すことによって、上フランジ11の上面が水平となるようにレベル出しする。
【0040】
次に、下フランジ12の幅方向の両側において、当該下フランジ12の幅方向端部より外側に図示しないフーチング型枠をそれぞれ配置するとともに当該フーチング型枠を基礎底面15aに設置固定し、その後、両フーチング型枠内にひび割れ防止筋21を配筋する。
次に、ウエブ13よりその厚さ方向外側にそれぞれ図示しない立ち上り型枠を配置するとともに当該立ち上り型枠の下端部を前記フーチング型枠の上部に設けた上面枠(図示略)に連結する。次に、両立ち上り型枠間の上部から、下フランジ被覆材20およびウエブ被覆材22を構成するコンクリートを打設する。
この場合、フーチング型枠内にコンクリートが充満し、かつ立ち上り型枠内にコンクリートが地盤面Gより高く、かつ上フランジ11より所定寸法だけ下方に位置するようにコンクリートを打設する。これによって、下フランジ12を包み込むようにして下フランジ被覆材20を設けるとともに、ウエブ13を、その上端部を所定寸法だけ残して囲むようにしてウエブ被覆材22を設ける。そして、コンクリートが硬化した後、フーチング型枠および立ち上り型枠を脱型することによって、基礎構造が構築される。
【0041】
以上のように本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に効果を得られる他、基礎本体10のウエブ13をその上端部を所定寸法だけ残して囲むようにしてウエブ被覆材22が設けられているので、地盤からウエブ13に対して作用する水平力に対して十分な抵抗を確保でき、H形鋼のウエブ13の板厚を削減できる。また、基礎本体10のウエブ13の上端部、すなわち地盤Gより突出する上端部を所定寸法だけ残して囲むようにウエブ被覆材22を設けることによって、従来の基礎と同じ意匠性を保つことができる。
【0042】
図3(b)は、第3の実施の形態の変形例を示す基礎構造の断面図である。
本変形例が第3の実施の形態と異なる点は、ウエブ被覆材22の構成であるので、以下ではこの点について説明し、第3の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
本変形例では、下フランジ被覆材20の上面から立ち上がるようにしてウエブ被覆材22が設けられ、当該ウエブ被覆材22の上面は上フランジ11より上方に位置している。すなわち、ウエブ被覆材22はウエブ13を被覆するとともに、上フランジ11を包み込むようにして当該上フランジ11を被覆している。
【0043】
本変形例では、第3の実施の形態と同様に、地盤からウエブ13に対して作用する水平力に対して十分な抵抗を確保でき、H形鋼のウエブ13の板厚を削減でき、さらに、ウエブ13および上フランジ11がウエブ被覆材22によって被覆されているので、防錆の点で優れるという利点がある。
【0044】
(第4の実施の形態)
図4は第4の実施の形態の基礎構造の断面図である。
本実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、基礎本体10が、高さ調整ボルト17を有する下側形鋼10Aと、この下側形鋼10Aに設置された上側形鋼10Bとを備えている点であるので、以下ではこの点について説明し、第2の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0045】
本実施の形態では、
図4(a)に示すように、基礎本体10が、高さ調整ボルト17を有する下側形鋼10Aと、この下側形鋼10Aに設置された上側形鋼10Bとを備えている。
下側形鋼10Aは、上フランジ11aと、下フランジ12aと、これら上下のフランジ11a,12aを連結するウエブ13aとを備えている。また、下側形鋼10Aは、下フランジ12aの幅が上フランジ11aの幅より大きいH形鋼によって形成されている。このような構成の下側形鋼10Aは、第2の実施の形態における基礎本体10を構成するH形鋼より上下の高さ寸法が短くなっている。
【0046】
上側形鋼10Bは、上フランジ11bと、下フランジ12bと、これら上下のフランジ11b,12bを連結するウエブ13bとを備えており、上フランジ11bと下フランジ12bとは同幅でかつ、下側形鋼10Aの上フランジ11aと同幅となっている。また、上側形鋼10Bは下側形鋼10Aより高さ寸法が短くなっている。
【0047】
このような上側形鋼10Bは、その下フランジ12bを、下側形鋼10Aの上フランジ11aに設置することで、下側形鋼10Aの上面に接合されている。また、上側形鋼10Bのウエブ13bと、下側形鋼10Aのウエブ13aとは同心となっている。つまり、ウエブ13aの延長上にウエブ13bが配置されている。
【0048】
また、上側形鋼10Bは下側形鋼10Aに対する水平方向における相対位置が調整可能となるようにして、下側形鋼10Aに接合されている。
例えば、
図4(b)に示すように、上側形鋼10Bの下フランジ12bと、下側形鋼10Aの上フランジ11aとは、ボルト23によってボルト結合されているが、当該ボルト23を挿通する上フランジ11aのボルト孔23aより、下フランジ12bのボルト孔23bが大径に形成されている。
したがって、ボルト23を緩めることによって、下フランジ12bが上フランジ11aに対して、所定の距離だけ水平方向に移動可能となり、これによって、上側形鋼10Bは下側形鋼10Aに対する水平方向における相対位置が調整可能となる。
【0049】
本実施の形態の基礎構造を構築するとともに、基礎本体10の上フランジ11bの上面のレベル出しを行う場合、まず、下側形鋼10Aと上側形鋼10Bとをボルト23によって接合した状態で、基礎底面15aに基礎本体10の下フランジ12aを設置する。この際、高さ調整ボルト17を下フランジ12aの下面より所定長さだけ突出させ、当該高さ調整ボルト17の下端部を基礎底面15aに当接させる。これによって下フランジ12aは、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置される。
【0050】
次に、上フランジ11bの上面に図示しない水平器を載置し、この水平器を目視しながら高さ調整ボルト17を正逆方向に適宜回すことによって、上フランジ11bの上面が水平となるようにレベル出しする。
次に、下フランジ12aの幅方向の両側において、当該下フランジ12aの幅方向端部より外側に図示しないフーチング型枠をそれぞれ配置するとともに当該フーチング型枠を基礎底面15aに設置固定する。次に、両フーチング型枠内にひび割れ防止筋21を配筋した後、当該両フーチング型枠間に、下フランジ被覆材20を構成するコンクリートを下フランジ12aより上方でかつ高さ調整ボルト17の頭部より上方まで打設する。これによって、下フランジ12aを包み込むようにして下フランジ被覆材20を設ける。そして、コンクリートが硬化した後、フーチング型枠を脱型することによって、基礎構造が構築される。
【0051】
コンクリート打設時において、下側形鋼10Aにコンクリートの打設圧によって水平方向に位置ずれが発生した場合、上側形鋼10Bの水平方向の位置を調整する。
すなわち、下側形鋼10Aと上側形鋼10Bとを接合(結合)しているボルト23を緩めることで、下フランジ12bが上フランジ11aに対して、所定の距離だけ水平方向に移動可能となり、これによって、上側形鋼10Bの下側形鋼10Aに対する水平方向における相対位置を調整する。そして、位置調整が終了した後、ボルト23を締め付ける。
【0052】
以上のように本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に効果を得られる他、基礎本体10が、下側形鋼10Aと、この下側形鋼10Aの上フランジ11aに設置された上側形鋼10Bとを備えているので、コンクリート打設等に下側形鋼10Aの位置ずれが発生した場合でも、上側形鋼10Bの水平方向の位置を調整することで、高精度の基礎本体10の上面(上フランジ11bの上面)を構築できる。
【0053】
(第5の実施の形態)
図5は第5の実施の形態の基礎構造の断面図である。
本実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、基礎本体10が、高さ調整ボルト17を有する下側形鋼10Cと、この下側形鋼10Cに設置された上側形鋼10Dとを備えている点であるので、以下ではこの点について説明し、第2の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0054】
本実施の形態では、
図5に示すように、基礎本体10が、高さ調整ボルト17を有する下側形鋼10Cと、この下側形鋼10Cに設置された上側形鋼10Dとを備えている。
下側形鋼10Cは、上フランジ11cと、下フランジ12cと、これら上下のフランジ11c,12cを連結するウエブ13cとを備えている。また、下側形鋼10Cは、下フランジ12cの幅が上フランジ11cの幅より大きいH形鋼によって形成されている。このような構成の下側形鋼10Aは、第2の実施の形態における基礎本体10を構成するH形鋼より上下の高さ寸法が短くなっている。
【0055】
上側形鋼10Dは、溝形鋼によって構成されており、左右のフランジ11d,11dと、当該フランジ11d,11dを連結するウエブ13dと、を備えている。
ウエブ13dは下側形鋼10Cの上フランジ11cと平行に配置され、当該上フランジ11cにボルト23によって結合され、これによって、上側形鋼10Dは上面側が開口した断面矩形状の凹溝24を有している。また、ウエブ13dの幅は上フランジ11cの幅と等しくなっている。
左右のフランジ11d,11dは、それらの外側を向く側面が、上フランジ11cの幅方向の側面とほぼ面一となっている。
さらに、前記凹溝24にはモルタル等のレベル材25が充填されている。レベル材25は流動性を有しており、凹溝24に充填されることで当該凹溝24に隙間なく行き渡るとともに、上面25aを水平に均すことが可能であり、さらに、所定時間放置することによって硬化して、図示しない上構造物の下方に向かう軸力に抵抗できるものである。
【0056】
なお、このような上側形鋼10Dは、第4の実施の形態と同様にして、下側形鋼10Cに対する水平方向における相対位置が調整可能となるようにして、下側形鋼10Cにボルト23によって接合されていてもよい。
【0057】
本実施の形態の基礎構造を構築するとともに、基礎本体10のレベル材25の上面25aのレベル出しを行う場合、まず、下側形鋼10Cと上側形鋼10Dとをボルト(図示略)によって接合した状態で、基礎底面15aに基礎本体10の下フランジ12cを設置する。この際、高さ調整ボルト17を下フランジ12cの下面より所定長さだけ突出させ、当該高さ調整ボルト17の下端部を基礎底面15aに当接させる。これによって下フランジ12cは、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置される。
【0058】
次に、上側形鋼10Dの上面に図示しない水平器を載置し、この水平器を目視しながら高さ調整ボルト17を正逆方向に適宜回すことによって、上側形鋼10Dの上面が水平となるようにレベル出しする。
次に、下フランジ12cの幅方向の両側において、当該下フランジ12cの幅方向端部より外側に図示しないフーチング型枠をそれぞれ配置するとともに当該フーチング型枠を基礎底面15aに設置固定する。次に、両フーチング型枠内にひび割れ防止筋21を配筋した後、当該両フーチング型枠間に、下フランジ被覆材20を構成するコンクリートを下フランジ12cより上方でかつ高さ調整ボルト17の頭部より上方まで打設する。これによって、下フランジ12cを包み込むようにして下フランジ被覆材20を設ける。そして、コンクリートが硬化した後、フーチング型枠を脱型することによって、基礎構造が構築される。
【0059】
コンクリート打設時において、コンクリートの打設圧によって下側形鋼10Cのウエブ13cが面外方向に撓んで、上側形鋼10Dの上面が水平面に対して傾いた場合、上側形鋼10Dの凹溝24に充填されているレベル材25を水平に均す。なお、レベル材25が硬化することによって、当該レベル材25の上面に上部構造物を設置できる。
【0060】
以上のように、本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を得られる他、コンクリート打設時において、コンクリートの打設圧によって下側形鋼10Cのウエブ13cが面外方向に撓んでも、上側形鋼10Dの凹溝24に充填されているレベル材25を水平に均すことによって、高精度の基礎本体10の上面(レベル材25の上面25a)を構築できる。
【0061】
(第6の実施の形態)
図6は第6の実施の形態の基礎構造の断面図、
図7は当該基礎構造の基礎伏図である。
本実施の形態が第3の実施の形態と異なる点は、基礎本体10が平面視において建物の外周部に配置されており、建物の外壁側を向く面が被覆材によって被覆されている点であるので、以下ではこの点について説明し、第3の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0062】
図7に示すように、本実施の形態における基礎構造の基礎本体10は、平面視矩形状に配置されている。
また、平面視矩形状の基礎本体10の内側には他の基礎が配置されているが、本実施の形態では、例えば、第1および第2の実施の形態における基礎本体10が設けられている。
【0063】
平面視矩形状の基礎本体10の上面には、図示しない建物本体が設置されており、この建物本体の外壁は基礎本体10の外面側を向いている。
そして、
図6に示すように、基礎本体10は、建物の外壁側を向く面が被覆材22Aによって被覆されている。すなわち、被覆材22Aは、ウエブ13の建物の外側を向く面(
図6において左面)を覆っており、下フランジ被覆材20の上面から立ち上がるようにして地盤面GLより上方でかつ下フランジ12より下方に設けられている。被覆材22Aは、本実施の形態では、コンクリートによって構成されている。
【0064】
本実施の形態の基礎構造を構築するとともに、基礎本体10の上フランジ11の上面のレベル出しを行う場合、まず、基礎底面15aに基礎本体10の下フランジ12を設置する。この際、高さ調整ボルト17を下フランジ12の下面より所定長さだけ突出させ、当該高さ調整ボルト17の下端部を基礎底面15aに当接させる。これによって下フランジ12は、基礎底面15aとの間に所定の間隔Sをもって配置される。
次に、上フランジ11の上面に図示しない水平器を載置し、この水平器を目視しながら高さ調整ボルト17を正逆方向に適宜回すことによって、上フランジ11の上面が水平となるようにレベル出しする。
【0065】
次に、下フランジ12の幅方向の両側において、当該下フランジ12の幅方向端部より外側に図示しないフーチング型枠をそれぞれ配置するとともに当該フーチング型枠を基礎底面15aに設置固定し、その後、両フーチング型枠内にひび割れ防止筋21を配筋する。
次に、ウエブ13よりその厚さ方向の一方(
図6において左方)の外側に図示しない立ち上り型枠を配置するとともに当該立ち上り型枠の下端部を前記フーチング型枠の上部に設けた上面枠(図示略)に連結する。次に、立ち上り型枠とウエブ13との間の上部から、下フランジ被覆材20および被覆材22Aを構成するコンクリートを打設する。
この場合、フーチング型枠内にコンクリートが充満し、かつ立ち上り型枠とウエブ13との間にコンクリートが地盤面Gより高く、かつ上フランジ11より所定寸法だけ下方に位置するようにコンクリートを打設する。これによって、下フランジ12を包み込むようにして下フランジ被覆材20を設けるとともに、ウエブ13の片面(左面)に、その上端部を所定寸法だけ残して被覆材22Aを設ける。そして、コンクリートが硬化した後、フーチング型枠および立ち上り型枠を脱型することによって、基礎構造が構築される。
【0066】
以上のように、本実施の形態によれば、基礎本体10の、建物の外壁側を向く面が被覆材22Aによって被覆されているので、建物の外部から基礎本体10を見た場合に、従来の基礎と同じ意匠性を保つこことができる。
また、平面視において、建物の内部側に設けられている基礎本体10を被覆材によって被覆しないことによって、つまり、
図1および
図2等に示す基礎本体10を平面視において建物の内部側に設けることによって、基礎重量の削減、施工手間の削減を行える。
【符号の説明】
【0067】
10 基礎本体
10A,10C 上側形鋼
10B,10D 下側形鋼
11,11b 上フランジ
12,12a 下フランジ
12d ねじ孔
13 ウエブ
15a 基礎底面
17 高さ調整ボルト
20 下フランジ被覆材
22 ウエブ被覆材