(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】フラビウイルスレプリコン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20220810BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220810BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220810BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20220810BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20220810BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220810BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220810BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220810BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220810BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220810BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20220810BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220810BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220810BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220810BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220810BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220810BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220810BHJP
A61K 35/76 20150101ALN20220810BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20220810BHJP
A61K 38/22 20060101ALN20220810BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20220810BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20220810BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
A61K9/107
A61K9/14
A61K31/4745
A61K39/12
A61K45/00
A61K47/34
A61K47/44
A61K47/46
A61K48/00
A61P5/00
A61P37/04
A61P43/00 107
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K35/76
A61K38/19
A61K38/22
A61K39/00 H
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12N9/12
(21)【出願番号】P 2017545379
(86)(22)【出願日】2016-02-25
(86)【国際出願番号】 IB2016051045
(87)【国際公開番号】W WO2016135675
(87)【国際公開日】2016-09-01
【審査請求日】2018-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン,ケイトリン ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,ピーター ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】シャヒニァン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ドン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】吉森 晃
【審判官】阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-530032(JP,A)
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY, 2000年,Vol.74, No.9,p.4394-4403
【文献】Virology, 2002年,Vol.296,p.219-233
【文献】VIROLOGY,2004年,vol.319 ,p.237-248
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY, 2002年,Vol.76, No.8,p.3791-3799
【文献】Parasites & Vectors, 2014年,Vol.7, 542,p.1-10
【文献】Wiley Interdiscip. Rev. RNA, 2013年,Vol.4, No.6,p.723-735
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY, 2007年,Vol.81, No.9,p.4412-4421
【文献】Virology, 2008年,Vol.381,p.123-135
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY, 2006年,Vol.80, No.17,p.8362-8370
【文献】Virology Journal, 2013年,Vol.10, 242,p.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
PubMed
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)鎖自己複製RNAをコードする配列を含む、単離された核酸であって、前記自己複製RNAが、フラビウイルスレプリカーゼコーディング配列と異種タンパク質コーディング配列とを含み、前記異種タンパク質コーディング配列が、少なくとも2つの隣接する分離配列の間に配置されており、前記自己複製RNAが、ウイルス粒子を形成することができるウイルス構造タンパク質のコーディング配列を欠いており、前記フラビウイルスレプリカーゼが、
西ナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)レプリカーゼであって、前記WNVが、WNV NY99、WN NY 2000-crow3356、HNY1999、NY99flamingo38299、IS98STD、goose-Hungary/03、Italy1998Equine、RO9750、VLG4、LEIV-Vlg99-27889、PaH001、PaAn001、Eg101、Chin-01、Sarafend、B956(WNFCG)、goshawk-Hungary/04、LEIV-Krnd88-190、Nea Santa-Greece 2010、Goshawk-Hungary/04、Greece/2012/Kavala.39.1、Italy/2013/Rovigo/32.1、Austria/2008-ghからなる群から選択される、WNVレプリカーゼであり;
前記分離配列はウイルスの2A配列であり;
前記自己複製RNAの合成は、該自己複製RNAの5’末端の上流の改変T7プロモーターにより駆動され、前記改変T7プロモーターは、配列番号25または配列番号26のヌクレオチド配列
からなり、該改変T7プロモーターの最後のヌクレオチドは、該自己複製RNAの5’非翻訳領域(UTR)配列の最初のヌクレオチドと重複するAであり;
前記核酸は、前記自己複製RNAの3’末端の下流のリボザイムをコードする配列を含む、核酸。
【請求項2】
前記レプリカーゼが、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記少なくとも2つの隣接する分離配列が組換えを起こさない、請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
前記核酸が、前記リボザイム配列の下流の制限酵素認識配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
前記核酸が、配列番号1と少なくとも90%同一な配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項6】
前記核酸がプラスミドであり、任意選択で前記プラスミドが低コピー数プラスミドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項7】
前記異種タンパク質コーディング配列が抗原タンパク質である、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
前記異種タンパク質コーディング配列が治療用タンパク質であり、任意選択で、前記治療用タンパク質が、成長因子、サイトカイン、抗体または抗体の抗原結合断片から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
送達系と複合体化されており、任意選択で、前記送達系が、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、脂質ナノ粒子(LNP)、カチオン性ナノエマルションまたは生分解性ポリマーから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸を含む宿主細胞であって、任意選択で、前記宿主が、TetrD(mcrA)183 D(mcrCB-hsdSMR-mrr)173 endA1 supE44 thi-1 recA1 gyrA96 relA1 lac Hte[F’proAB lacIqZDM15 Tn10(Tetr)Amy Camr](例えば、XL10Gold(登録商標)ウルトラコンピテント)細胞またはF-、endA1、supE44、thi-1、recA1、relA1、gyrA96、phoA、Φ80d lacZΔ M15、Δ(lacZYA-argF)U169、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、ΔmcrA、λ-(例えば、STELLAR(登録商標))細胞から選択される、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸によりコードされる自己複製RNA。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸を含む組成物であって、アジュバントを更に含み、任意選択で前記アジュバントが金属塩である、組成物。
【請求項13】
TLRアゴニストを更に含み、任意選択で前記TLRアゴニストがTLR7アゴニストであり、更に任意選択で前記TLR7アゴニストがベンゾナフチリジン化合物である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
目的のタンパク質または前記目的のタンパク質をコードする核酸を発現させる方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸と、転写機構、翻訳機構、または転写機構および翻訳機構を含む発現系とを接触させる工程を含み、前記核酸の前記異種タンパク質コーディング配列が前記目的のタンパク質である、方法。
【請求項15】
哺乳類対象中で抗原タンパク質に対する免疫応答を上昇させるための医薬組成物であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸または請求項11に記載の自己複製RNAを含む、医薬組成物。
【請求項16】
哺乳類対象に治療用タンパク質を投与する方法において用いるための医薬組成物であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の核酸または請求項11に記載の自己複製RNAを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特に、改善されたレプリコン、および異種タンパク質の発現用のレプリコンコーディングベクター、ならびにそれらを使用する関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
例えばウイルスレプリコンに由来する自己複製リボ核酸(RNA)は、様々な目的のためのタンパク質、例えば異種タンパク質の発現、例えば治療用タンパク質の発現およびワクチン用の抗原の発現に有用である。そのようなレプリコンの望ましい特性はタンパク質の持続的発現能力である。
【0003】
国際公開第99/28487号パンフレット(Queensland Dept.Health)およびVarnavski et al., Virology 255, 366-375 (1999)は(+)鎖自己複製RNAをコードする核酸配列を開示しており、この核酸配列には、クンジンウイルス(Kunjin Virus)レプリカーゼコーディング配列、フラビウイルスコアタンパク質の一部およびフラビウイルス5’未翻訳領域(UTR)をコードするタンパク質コーディング配列が含まれる。このレプリコンをウイルスレプリコン粒子(VRP)にパッケージングしてワクチンとして使用することができる。
【0004】
Herd et al., "Recombinant Kunjin virus replicon vaccines induce protective T-cell immunity against human papillomavirus 16 E7-expressing tumour", Virology 319: 237-248 (2004)は(+)鎖自己複製RNAをコードする核酸配列を開示しており、この核酸配列には、クンジンウイルス(Kunjin Virus)レプリカーゼコーディング配列、およびワクチンとして使用するヒトパピローマウイルス(HPV)エピトープをコードするタンパク質コーディング配列が含まれる。
【0005】
Alcaraz-Estrada et al., "Construction of self-replicating subgenomic West Nile virus replicons for screening antiviral compounds", Methods Mol. Biol. 1030: 283-299 (2013)は(+)鎖自己複製RNAをコードする核酸配列を開示しており、この核酸配列には、西ナイルウイルス(West Nile Virus)株956レプリカーゼコーディング配列およびレポーター遺伝子が含まれる。
【0006】
国際公開第2006/086838号パンフレット(Queensland Inst.Med.Res.)は(+)鎖自己複製RNAを開示しており、このRNAには、クンジンウイルス(Kunjin Virus)レプリカーゼコーディング配列および腫瘍治療で使用するGM-CSFタンパク質のタンパク質コーディング配列が含まれる。‘833親出願はまた、西ナイルウイルス(West Nile Virus)および黄熱ウイルス(Yellow Fever Virus)の使用も開示する。
【0007】
Queiroz et al., “Construction of yellow fever virus subgenomic replicons by yeast-based homologous recombination cloning technique”, Anais da Academia Brasileira de Ciencias 85: 159-168 (2010)は(+)鎖自己複製RNAをコードする核酸配列を開示しており、この核酸配列には、黄熱ウイルス(Yellow Fever Virus)株170レプリカーゼコーディング配列およびレポーター遺伝子が含まれる。
【0008】
Jones et al., "Construction and applications of yellow fever virus replicons", Virology 331: 247-259 (2005)は、様々なレポーター遺伝子をコードする黄熱ウイルス(Yellow Fever Virus)レプリコンを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、特に、改善されたレプリコンおよびこのレプリコンをコードするベクターを提供し、このレプリコンは、コードされるタンパク質の持続的発現を提供する。これらのレプリコンは、フラビウイルスレプリカーゼと異種タンパク質コーディング配列とを含む。この異種タンパク質コーディング配列は、有効性を改善するための分離配列(separation sequences)に隣接している。本発明により提供される自己複製RNAを含め、本発明により提供されるこれらの核酸は、例えばワクチン用の(例えば免疫付与方法のための)タンパク質発現の方法および(例えば処置方法のための)抗体などの治療用タンパク質の発現で有用である。
【0010】
本発明を下記の例により更に説明するが、これらの例は限定的であると解釈すべきではない。これらの例は下記の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】レプリコンWNV001およびY030を示す概略図である。WNV001は、in vitroでの転写前のテンプレート線状化用のXbaI部位を含み、テンプレート鎖上の望ましくないヌクレオチドをエキソヌクレアーゼでポリッシングしてランオフ(run-off)テンプレートを生成する。Y030は、in vitroでの転写前の線状化用のSapI部位を含み、消化直後にランオフテンプレートを生じる。UTR=未翻訳領域、C
*=環化配列を維持するように操作された欠失後のカプシド構造タンパク質の残存配列。E
*=NS1シグナル配列を維持するように操作された欠失後のエンベロープ構造タンパク質の残存配列。NS1-NS5=非構造WNVタンパク質。
【
図2】
図2A~
図2Cは、BHK細胞でのWNV001 RNAの免疫組織化学的分析からの顕微鏡写真を示す図である。簡潔に述べると、RNA 4μgでBHK細胞をエレクトロポレートし、この細胞を固定し、透過性にし(permeabilzied)、エレクトロポレーションの48時間後にWNV抗原の存在に関して分析した。WNV-NS1(A609)を発現するアルファウイルスレプリコンからのRNAを陽性対照として使用した。
図2A:免疫組織化学(IHC)に対して陽性に反応するA609 RNAでエレクトロポレートした細胞。
図2B:WNV001 RNAでエレクトロポレートした細胞は、IHCに対して陽性に反応する細胞をほとんど示さない。
図2C:モックエレクトロポレーションではIHC陽性細胞は生じない。
【
図3】BHK細胞でのY030RNAのフローサイトメトリー分析をまとめた棒グラフを示す図である。簡潔に述べると、BHK細胞をRNA 1μgでエレクトロポレートし、エレクトロポレーションの24時間後にYFV抗原の存在に関して分析した。モックエレクトロポレーションを陰性対照として実施した。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、異なるWNVレプリコンおよび転写スキームの概略図である。
図4A:センスまたはアンチセンスのデルタ型肝炎ウイルスリボザイム(S-HDVRまたはAS-HDVR)配列をWNV001の3’UTRの直後に加え、それぞれセンスHDVRまたはアンチセンスHDVRを含む第2世代のレプリコンWNV006およびWNV007を生成した。
図4B:リボザイム配列の付加により、テンプレート鎖上のエキソヌクレオヌクレアーゼポリッシングの必要性がなくなる。
図4Bは、Shi et al. Virology 296, 213-233 (2002)が出典である。
【
図5】HDVRの付加によりWNVレプリコンの効力が有意に改善されることを示す棒グラフである。簡潔に述べると、WNV001、WNV006またはWNV007のRNA 0.25μg~4μgをBHK細胞中にエレクトロポレートした。エレクトロポレーションの48時間後に、フローサイトメトリーによりWNV抗原の存在に関して細胞を分析した。結果は、試験した全ての範囲でセンスHDVR(WNV006に含まれる)が最も強力なWNVレプリコンRNAを得ることを示す。
【
図6】YFVレプリコンの効力へのS-HDVRの効果を評価するために使用するレプリコンの概略図である。両方のレプリコンは、構造欠失領域(structural deleted region)内に、インフレームで融合したFLAGタグレポーターを有するGFPを含んだ。
【
図7】HDVリボザイムを付加してもYHFレプリコンの効力が増強されないことを示す棒グラフである。簡潔に述べると、Y037またはY040のRNA 0.1μg~1μgをBHK細胞中にエレクトロポレートした。エレクトロポレーションの24時間後に、フローサイトメトリーによりYFV抗原の存在に関して細胞を分析した。結果は、センスHDVRがYFV効力に有意な影響を及ぼさないことを示す。
【
図8】フラビウイルスレプリコンRNAの転写を駆動する改変T7プロモーターを示す図である。
図8A:ATPにより開始されるレプリコンRNAを生成するために、WNV008またはY042のレプリコンに付加した様々なプロモーター改変。転写が開示されるヌクレオチドは太字であり、フラビウイルスの真の5’UTRの最初のヌクレオチドに下線を引いている。OL=重複プロモーター-プロモーターの最後のヌクレオチドがフラビウイルス5’UTR配列の最初のヌクレオチドと重複する。
*WNV008は、AflIIクローニング部位を生成するために構造欠失領域中にサイレント変異が存在するWNV006と等しい。
図8B:同じin vitroでの転写下で改変プロモーターを使用するin vitroでの転写後に生成されたWNV RNAの収率。WNV008の転写を駆動する従来のT7プロモーターf6.5プロモーターにより最大のRNAが得られる。WNV017およびWNV026の転写を駆動する改変プロモーターは、RNA収率を有意に低下させている。WNV027およびWNV028の転写を駆動する改変プロモーターは、約0.66~0.75倍でRNA収率を低下させる。RNA収率をWNV008のRNA収率に対して正規化している。
図8C:同じin vitroでの転写条件下で改変プロモーターを使用するin vitroでの転写後に生成されたYFVレプリコンRNAの収率の例。
【
図9】WNVレプリコンRNAの転写を駆動する改変T7プロモーターがレプリコンの効力を有意に増強することを示す棒グラフである。簡潔に述べると、WNV008、WNV017、WNV026、WNV027またはWNV028 100ngをBHK細胞中にエレクトロポレートし、エレクトロポレーションの24時間後にWNV抗原の存在に関して分析した。データは、それぞれWNV027およびWNV028におけるレプリコンRNAの転写を駆動するATP開始T7プロモーターf2.5(OL)およびT7プロモーターf6.5mut(OL)は、WNV008にける従来のT7プロモーターf6.5から生成されたWNV RNAよりも約15倍超で効力を増強したことを示す。
【
図10】YFVレプリコンRNAの転写を駆動する改変T7プロモーターが効力をわずかに増強することを示す棒グラフである。簡潔に述べると、Y037、Y042、Y043、Y044またはY045のRNA 100ngをBHK細胞中にエレクトロポレートし、エレクトロポレーションの24時間後にYFV抗原の存在に関して分析した。データは、それぞれY042およびY043におけるレプリコンRNAの転写を駆動するATP開始T7プロモーターf2.5およびT7プロモーターf6.5mutが、Y037における従来のT7プロモーターf6.5から生成されたYFV RNAよりも約2倍超で効力を増強したことを示す。
【
図11】構造欠失領域中に挿入された最適化導入遺伝子発現カセットを有するWNVレプリコンまたはYFVレプリコンの概略図である。最適化WNV構築物は、重複したATP開始プロモーターおよびリボザイムの両方を含む。最適化fYFV構築物は、ATP開始プロモーターおよび正確な線状化部位を含む。
【
図12】最適化されたWNVレプリコンおよびYFVレプリコンが強力であることを示す棒グラフである。簡潔に述べると、各RNA 250ngをBHK細胞中にまたはHela細胞中にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、48時間後または72時間後にGFP陽性細胞のFACS分析により効力を観察した。WNVは効力がTC83レプリコンと類似しているが、YFVは効力がより低い。
【
図13】YFVレプリコンおよびWNVレプリコンがTC83レプリコンと比べて細胞毒性が低いことを示す棒グラフである。簡潔に述べると、各RNA 250ngをBHK細胞中にまたはHela細胞中にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、48時間後および72時間後に、死滅したレプリコン陽性細胞の割合により細胞毒性を決定した。
【
図14】WNVレプリコンおよびYFVレプリコンが72時間にわたりGFPを発現することができることを示す棒グラフである。簡潔に述べると、各RNA 250ngをBHK細胞中にまたはHela細胞中にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、48時間後または72時間後に、平均蛍光強度により発現を決定した。
【
図15】HDVRの付加によりWNVレプリコンの効力が有意に改善されることを示す棒グラフである。簡潔に述べると、WNV001RNA(XbaI/マング・ビーンテンプレートに由来するRNA)、WNV006RNA(センスHDVRテンプレレートに由来するRNA)またはWNV007RNA(アンチセンスHDVRテンプレートに由来するRNA)0.25μg~4μgをBHK細胞中にエレクトロポレートした。エレクトロポレーションの48時間後に、フローサイトメトリーによりWNV抗原の存在に関して細胞を分析した。
【
図16】リボザイムを使用して生成されたRNAが、ランオフテンプレートを使用して生成されたRNAと比べて更により強力であったことを示す棒グラフである。テンプレート鎖からの非天然ヌクレオチドを整えるためのマング・ビーンヌクレアーゼ処理を必要とすることなく完全なランオフ末端を生成するために、PCRを使用してWNV006のテンプレートDNAを開発した。PCRにより生成されたテンプレートからのRNAを、リボザイムの助けを借りて生成されたRNAに対して評価した。理論的には、全てのRNA転写物は同じ最終産物を生じるはずである。
【
図17】PCRまたはSapI線状化により生成されたDNAテンプレートに由来するYFVレプリコンRNAは効力が同等であることを示す棒グラフである。完全なランオフ末端を生成するために、PCRを使用してY030またはY031のテンプレートDNAを開発した。或いは、完全なランオフ末端を生成するために、操作されたSapI部位を使用してY030およびY031のテンプレートDNAを生成した。
【
図18】更なる構築物の概略図である。WNV006に由来する第2世代のWNV008構築物(クローニング目的のために、構造欠失領域中のCタンパク質の残余部分とEタンパク質の残余部分との間でAFlIIクローニング部位が操作された)中への完全長融合ペプチド呼吸器合胞体ウイルスFタンパク質(FLFPD.RSFV)およびGFP二重レポーターカセットの、以下からの付加:WNV008(レポーターカセットが付加されていないおよびセンスHDVRを有するWNVレプリコン)、WNV010(構造欠失領域中に挿入されているFLFPD.RSVF’およびGFP’二重レポーターカセット。FLFPD.RSVF’およびGFP’の両方に、’で表されるC末端FLAGタグを付けた。天然のFLFPD.RSVFシグナルペプチドを、通常は構造タンパク質prM用のシグナルペプチドとして働く構造タンパク質CのC末端からの配列で置き換えた。FLFPD.RSVFおよびGFPの両方を、口蹄疫ウイルス由来のフリンプロテアーゼ部位およびF2A自己タンパク質分解部位で離した。ブタテッショウウイルス由来の類似のフリンプロテアーゼおよびGSGP2A自己タンパク質分解部位をGFP’の後に付加し、ウイルスポリペプチドから離した)、WNV011(RSVF.FLFPDの天然のシグナルペプチドを維持した以外は、類似のレポーターを構造欠失領域中に付加した)、またはWNV012(存在する天然のNSiI部位を使用して、類似のレポーターを3’UTRの上流領域中に付加した。このレポーターは、WNV011中に存在するものと同一であるが、代わりに追加のフリン+GSGP2A配列を終止コドンで置き換えた)。
【
図19-1】
図19A~
図19Cは、WNV010、WNV011およびWNV012のin vitroでの試験をまとめた図である。
図19A:レポーター構築物をトランスフェクトした細胞の蛍光顕微鏡画像。簡潔に述べると、各RNA 4μgをBHK細胞中にエレクトロポレートし、GFP発現を介したレポーター機能に関して観察した。エレクトロポレーションの72時間後に撮影した。WNV010およびWNV011からのRNAでエレクトロポレートした細胞中では約48時間でGFP発現が容易に見られたが、WNV012からのRNAでエレクトロポレートした細胞はエレクトロポレーションの72時間後まで観測可能なGFP発現を示さなかった。
図19B:フローサイトメトリーのデータ。簡潔に述べると、BHK細胞を各RNA 4μgでエレクトロポレートした。エレクトロポレーションの72時間後に細胞を回収し、フローサイトメトリーによりWNV抗原の存在またはGFP発現に関して分析した。データは、WNV抗原+集団により決定した場合にWNV008 RNAのみが約19.5%の効力を生じることを示す。細胞をWNV010およびWNV011のRNAでそれぞれエレクトロポレートした場合には、効力が約8%および4%まで低下する。WNV012の効力はほとんど無視できるほどであった。フローサイトメトリーのデータは、GFP発現がWNV抗原の存在と共に直線的に増加することも示しており、このことは予想されるはずである。
図19C:BHK細胞溶解物の抗FLAGウエスタンブロット。簡潔に述べると、BHK細胞を各構築物4μgでエレクトロポレートし、溶解物を回収し、エレクトロポレーションの48時間後に抗FLAG抗体により分析し、FLFPD.RSVF’FLAG+フリンF2A+GFP’FLAGを発現するVEEレプリコンを陽性対照(A611)として使用した。A611溶解物は、切断されていないFLFPD.RSVF’FLAG+フリンF2A+GFP’FLAGポリペプチドならびにRSVF’FLAGおよびGFP’FLAGを明らかに示す。WNV008でエレクトロポレートした細胞由来の溶解物は、予想したようにシグナルを示さなかった。WNV010およびWNV011のRNAをトランスフェクトした細胞の溶解物では、予想したように、GFP’FLAG+フリンGSGP2Aペプチドと同様に切断されていないレポーターのわずかなバンドを見出すことができる。なぜならば、細胞質GFPはフリンによって切断され得ないが、切断されたRSFV’FLAGはバックグランド反応性と重複し、明確に見出すことができないからである。WNV012の溶解物中では、検出可能な抗FLAGシグナルを観測しなかった。おそらくは、この構築物からのレポーターの発現が非常に低かったからである。
【
図19-2】
図19A~
図19Cは、WNV010、WNV011およびWNV012のin vitroでの試験をまとめた図である。
図19B:フローサイトメトリーのデータ。簡潔に述べると、BHK細胞を各RNA 4μgでエレクトロポレートした。エレクトロポレーションの72時間後に細胞を回収し、フローサイトメトリーによりWNV抗原の存在またはGFP発現に関して分析した。データは、WNV抗原+集団により決定した場合にWNV008 RNAのみが約19.5%の効力を生じることを示す。細胞をWNV010およびWNV011のRNAでそれぞれエレクトロポレートした場合には、効力が約8%および4%まで低下する。WNV012の効力はほとんど無視できるほどであった。フローサイトメトリーのデータは、GFP発現がWNV抗原の存在と共に直線的に増加することも示しており、このことは予想されるはずである。
【
図19-3】
図19A~
図19Cは、WNV010、WNV011およびWNV012のin vitroでの試験をまとめた図である。
図19C:BHK細胞溶解物の抗FLAGウエスタンブロット。簡潔に述べると、BHK細胞を各構築物4μgでエレクトロポレートし、溶解物を回収し、エレクトロポレーションの48時間後に抗FLAG抗体により分析し、FLFPD.RSVF’FLAG+フリンF2A+GFP’FLAGを発現するVEEレプリコンを陽性対照(A611)として使用した。A611溶解物は、切断されていないFLFPD.RSVF’FLAG+フリンF2A+GFP’FLAGポリペプチドならびにRSVF’FLAGおよびGFP’FLAGを明らかに示す。WNV008でエレクトロポレートした細胞由来の溶解物は、予想したようにシグナルを示さなかった。WNV010およびWNV011のRNAをトランスフェクトした細胞の溶解物では、予想したように、GFP’FLAG+フリンGSGP2Aペプチドと同様に切断されていないレポーターのわずかなバンドを見出すことができる。なぜならば、細胞質GFPはフリンによって切断され得ないが、切断されたRSFV’FLAGはバックグランド反応性と重複し、明確に見出すことができないからである。WNV012の溶解物中では、検出可能な抗FLAGシグナルを観測しなかった。おそらくは、この構築物からのレポーターの発現が非常に低かったからである。
【
図20】
図20Aおよび
図20Bは、A)二重レポーター遺伝子または単一レポーター遺伝子を有するYFVレプリコンの概略図およびB)BHK細胞での試験をまとめた棒グラフである。
【
図21-1】
図21Aおよび
図21Bは、構築物の概略図およびウエスタンブロットの結果を示す写真である。
図21Aは、自己切断2A部位を有しない(Y037もしくはY040)、1個のC末端P2A部位を有する(Y038)、またはN末端F2A部位とC末端P2A部位とを有するYFVレプリコン中へのGFP’FLAGレポーターの添加の概略図である。
図21Bは、GFP’FLAGがN末端P2AおよびC末端F2Aに隣接する場合(Y039)にウイルスポリペプチド鎖からのGFP’FLAGレポーターの完全な分離を明らかにする抗FLAGウエスタンブロットの写真である。
【
図21-2】
図21Aおよび
図21Bは、構築物の概略図およびウエスタンブロットの結果を示す写真である。
図21Bは、GFP’FLAGがN末端P2AおよびC末端F2Aに隣接する場合(Y039)にウイルスポリペプチド鎖からのGFP’FLAGレポーターの完全な分離を明らかにする抗FLAGウエスタンブロットの写真である。
【
図22】GFP’FLAG、ホタルルシフェラーゼ(FLUC)または抗YFVscFv-hFcsを発現する最適化フラビウイルスレプリコンの概略図である。この時点では、FLUCを発現するYFVを構築しておらず試験もしていない。
【
図23】
図23Aおよび
図23Bは、実験結果をまとめた棒グラフである。
図23A)GFP’FLAGまたはFLUCを発現する誘導体(WNV029およびWNV030)と比較した、レポーターを有しない最適化WNVレプリコン(WNV028)のin vitroでの効力アッセイ。効力アッセイの結果は、レポーターカセットの導入により効力が約0.5倍低下することを示す。
図23B)scFv-hFcを発現するレプリコン(WNV038およびWNV039)と比較したGFP’FLAGを発現するレプリコン(WNV029)のin vitroでの効力アッセイ。効力アッセイの結果は、scFv-hFcを発現するレプリコンが更なる効力の低下を経験することを示す。
【
図24】
図24A~
図24Cは、全てのWNV構築物が目的のレポーター遺伝子を産生することを示す図である。
図24A:WNV028、WNV029からのRNAまたはモックエレクトロポレーションでエレクトロポレートしたBHK細胞からの細胞溶解物の抗FLAGウエスタンブロット。
図24A:2A部位プロセシング後のGFP’FLAGのサイズに対応するWNV029溶解物レーンにおいて約32kbのバンドが見える。
図24B)BHK細胞溶解物からのルシフェラーゼデータ。細胞を、WNV028(陰性対照、左端)、WNV030(ルシフェラーゼを発現するWNV、中央)またはA1007(ルシフェラーゼを発現するTC83陽性対照、右端)でエレクトロポレートし、エレクトロポレーションの24時間後または48時間後に回収した。データは、WNV030がルシフェラーゼを発現することができることを示す。
図24C:WNV038、WNV039またはA612(scFv-hFcを発現する対照)からのRNAでエレクトロポレートしたBHK細胞からの細胞上清の抗hFCウエスタンブロットを示す図である。ブロットは、scFv-hFvがWNV038またはWNV039でエレクトロポレートした細胞中で発現されており、かつ適切なサイズであり、かつこの細胞から分泌されていることを示す。
【
図25】
図25A~
図25Cは、TC83およびWNVに対するYFVレプリコン機能の評価をまとめた図である。
図25A:BHK細胞中でのGFP発現による、最適化された、GFPを発現するTC83レプリコン、WNVレプリコンまたはYFVレプリコン(それぞれA750、WNV029、Y042)の経時的な効力アッセイ。この特定のアッセイのために、エレクトロポレーションの代わりにカチオン性トランスフェクション試薬を使用してBHK細胞をトランスフェクトした。データは、フローサイトメトリー分析により全てのレプリコンがGFPを発現することができることを示す。
図25B:最適化された、scFv-hFcを発現するTC83レプリコン、WNVレプリコンまたはYFVレプリコン(それぞれA612-A613、WNV038-WNV039およびY046-Y047)の効力アッセイ。BHK細胞をRNAでエレクトロポレートし、レプリコン特異的抗原の存在により効力を決定した(dsRNA染色により検出されたTC83レプリコンの存在、抗WNV MHIAFにより検出されたWNVの存在、抗YFV MHIAFにより検出されたYFVの存在)。
図25C:Y046、Y047またはA612(scFv-hFcを発現する対照)からのRNAでエレクトロポレートしたBHK細胞からの細胞上清の抗hFcウエスタンブロット。ブロットは、scFv-hFvがY046またはY047でエレクトロポレートした細胞中で発現されているおよび適切なサイズであるおよびこの細胞から分泌されていることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
第1の実施形態では、本発明は、(+)鎖自己複製RNAをコードする配列を含む、単離された核酸であって、自己複製RNAが、フラビウイルスレプリカーゼコーディング配列と異種タンパク質コーディング配列とを含み、異種タンパク質コーディング配列が、少なくとも2つの隣接する分離配列の間に配置されており、自己複製RNAが、ウイルス粒子を形成することができるウイルス構造タンパク質のコーディング配列を欠いている、核酸を提供する。
【0013】
「フラビウイルスレプリカーゼ」は、例えば転写機構、翻訳機構、または転写機構および翻訳機構を含む適切な発現系中でのウイルスRNA複製に必要な最小機構(例えばタンパク質因子および/またはヌクレオチド因子)を含む。代表的な発現系として宿主細胞が挙げられ、例えば昆虫宿主細胞または哺乳類宿主細胞が挙げられる。一部の実施形態では、フラビウイルスレプリカーゼは、天然に存在する配列、キメラ配列および合成誘導体等の、1種または複数のフラビウイルスのNSP(非構造タンパク質、NSとも呼ばれる)3~5(例えば、任意選択でNS1、NS2(NS2A、NS2BもしくはNS2AおよびNS2Bの両方を含む)、またはNS1およびNS2を含む)を含む。
【0014】
第2の実施形態では、本発明は第1の実施形態に係る核酸を提供し、フラビウイルスレプリカーゼは西ナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)レプリカーゼである。
【0015】
第3の実施形態では、本発明は第2の実施形態に係る核酸を提供し、WNVは、WNV NY99、WN NY 2000-crow3356、HNY1999、NY99flamingo38299、IS98STD、goose-Hungary/03、Italy1998Equine、RO9750、VLG4、LEIV-Vlg99-27889、PaH001、PaAn001、Eg101、Chin-01、Sarafend、B956(WNFCG)、goshawk-Hungary/04、LEIV-Krnd88-190、Nea Santa-Greece 2010、Goshawk-Hungary/04、Greece/2012/Kavala.39.1、Italy/2013/Rovigo/32.1、Austria/2008-ghから選択され、より特に、この株は、WNV NY99、WN NY 2000-crow3356またはHNY1999から選択される。
【0016】
第4の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれかに係る核酸を提供し、レプリカーゼは、配列番号2に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。一部のその他の実施形態では、フラビウイルスレプリカーゼは、例えば配列番号2または配列番号4で示されるYFV配列もしくはWNV配列に対して、またはNS3~5に対応し、もしくはより特に、NS1、NS2(NS2A、NS2BもしくはNS2AおよびNS2Bの両方を含む)、もしくはNS1およびNS2を更に含む、YFV配列もしくはWNV配列の一部に対して、少なくとも約60%(例えば約50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.9%もしくはより高い)相同である。フラビウイルスレプリカーゼに関する更なる配列がNCBI参照受託番号ABU54838に記載されており、これにはウイルスポリタンパク質中の所定のNSPの境界が記載されている。WNV、YFVのその他の株由来のまたはその他のフラビウイルス(例えば群:アロア(Aroa)、デング熱(Dengue)、日本脳炎(Japanese encephalitis)(WNVを含む)、ココベラ(Kokobera)、ウンタヤ(Ntaya)、スポンドウェニ(Spondweni)、黄熱(Yellow fever)、エンテベ(Entebbe)、モディック(Modic)およびリオブラボー(Rio Bravo))由来の対応する配列を本発明で使用することができ、公的に入手可能な配列中のアノテーションによりおよび本明細書に記載されている参照配列との(例えばBLASTによる)アラインメントにより容易に同定することができる。更なる株を表Aおよび表Bに記載する。更なる株がBakonyi et al. Emerg. Infect. Dis. 12(4):618-23 (Apr. 2006)、Hernandez-Triana et al. Front. Public Health 2:271. doi: 10.3389/fpubh.2014.00271、Wang, et al., J. of General Virology 78:1349-1352 (1997)、Wang et al. Virology 225: 274-281 (1996)に記載されており、これらはそれぞれ、その記載内容が参照により組み込まれる。
【0017】
第5の実施形態では、本発明は第1の実施形態に係る核酸を提供し、フラビウイルスレプリカーゼは黄熱ウイルス(Yellow Fever Virus)(YFV)レプリカーゼである。
【0018】
第6の実施形態では、本発明は第5の実施形態に係る核酸を提供し、YFVは、17Dワクチン株、Asibi株、Uganda481、Angola71、17D-204、17DD、17D-213、Uganda2010、88/1999であり、より特に、この株は17Dワクチン株またはAsibi株である。
【0019】
第7の実施形態では、本発明は第5または第6の実施形態に係る核酸を提供し、レプリカーゼは、配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。一部のその他の実施形態では、レプリカーゼは、配列番号4に対して少なくとも60%の相同性(例えば約50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.9%またはより高い)を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
第8の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、分離配列はウイルスの2A配列である。代表的な2A配列を下記の表1に記載し、当業者により容易に同定することもできる。
【0021】
第9の実施形態では、本発明は第8の実施形態に係る核酸を提供し、2つの隣接する分離配列は、口蹄疫ウイルスの2A、ブタテッショウウイルスの2Aまたはピコルナウイルスの2Aから選択される。
【0022】
第10の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、少なくとも2つの隣接する分離配列は組換えを起こさない(do not recombine)。
【0023】
第11の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、自己複製RNAは、ウイルス単離体の天然の開始配列に対応する機能的5’UTRを保持する。機能的5’UTRは、適切な発現系の存在下でRNAが自己複製するのに必要な最小配列を含む。ウイルス単離体の天然の開始配列は、天然に存在する5’UTRに対応しており、一部の実施形態では、5’ウイルスの配列の最初の約20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個もしくは70個のヌクレオチドまたはより多くを含む。
【0024】
第12の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、自己複製RNAの合成は、T7、SPC6、CMVまたはこれらのいずれかの機能的断片から選択されるプロモーターにより駆動される。ある特定のその他の実施形態では、自己複製RNAは、T7、SPC6、CMVまたは上述のいずれかの機能的断片から選択されるプロモーターに作動的に付随する(例えば、その発現が、このプロモーターにより駆動される)。
【0025】
第13の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、この核酸は、機能的3’UTRを産生するための、自己複製RNAの下流の配列を含む。
【0026】
第14の実施形態では、本発明は第13の実施形態に係る核酸を提供し、機能的3’UTRを産生するための配列はリボザイムをコードする。リボザイムは、RNAを切断するRNA配列である。本発明で有用なリボザイムは、例えば機能的3’UTR配列、即ち、ウイルスタンパク質により認識されるおよびウイルス形成に必要な環化配列のような配列を保持することにより、本発明により提供される自己複製RNAを切断して自己複製RNAの機能を保持する。一部の特定の実施形態では、本発明は、天然に存在する3’UTRの産生で有用なリボザイムをコードする核酸を提供する。
【0027】
第15の実施形態では、本発明は第14の実施形態に係る核酸を提供し、リボザイムはデルタ型肝炎ウイルス(HDV)リボザイムまたはその機能的変異体である。HDVリボザイムまたは本発明で有用なあらゆるその他のリボザイムの「機能的変異体」は、ヌクレオチド置換を含むが、例えば三次構造でヌクレオチドが塩基対を形成して三次塩基対形成を保つヌクレオチドの変異によっても機能性を保持する。
【0028】
第16の実施形態では、本発明は第13の実施形態に係る核酸を提供し、下流の配列は例えばBspQI部位等の制限酵素認識配列である。
【0029】
第17の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、この核酸は、配列番号1または配列番号3と少なくとも約60、65、60、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または99.9%同一な配列を含む。
【0030】
第18の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、この核酸はプラスミドであり、任意選択で、このプラスミドは低コピー数プラスミドである。代表的な低コピー数プラスミドとして、p15A複製起点を含むプラスミド(例えば(NEBの)pACYC、pACNR(NEBのpACYC177に由来する、Bredenbeek et al., J. Gen. Virol. 84: 1261-68 (2003)を参照されたい))、BR322複製起点を含むプラスミド(例えばSIGMAのpBR322)、SC101複製起点を含むプラスミド(例えば(ATCCの)pSC101)および同類のものが挙げられる。
【0031】
関連する態様では、本発明はまた、本発明により提供される核酸を含む宿主細胞も提供する。
【0032】
そのため、第19の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を含む宿主細胞を提供し、任意選択で、この宿主は、TetrD(mcrA)183 D(mcrCB-hsdSMR-mrr)173 endA1 supE44 thi-1 recA1 gyrA96 relA1 lac Hte[F’proAB lacIqZDM15 Tn10(Tetr)Amy Camr](例えばXL10Gold(登録商標)ウルトラコンピテント)細胞またはF-、endA1、supE44、thi-1、recA1、relA1、gyrA96、phoA、Φ80d lacZΔ M15、Δ(lacZYA-argF)U169、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、ΔmcrA、λ-(例えばSTELLAR(登録商標))細胞から選択される。
【0033】
別の関連する態様では、本発明は、例えば、本発明により提供される核酸のいずれかでコードされるまたは本発明により提供される任意の核酸から発現され得る(例えば転写され得る)自己複製RNAを提供する。第12の実施形態では、本発明は、上述の実施形態のいずれか1つの核酸によりコードされる自己複製RNAを提供する。一部のその他の実施形態では、本発明は、フラビウイルスレプリカーゼをコードする配列と異種タンパク質コーディング配列とを含む自己複製RNAであって、異種タンパク質コーディング配列が、少なくとも2つの隣接する分離配列の間に配置されており、自己複製RNAが、ウイルス粒子を形成することができるウイルス構造タンパク質を欠いている、自己複製RNAを提供する。
【0034】
第21の実施形態では、本発明は、フラビウイルスレプリカーゼをコードする配列と異種タンパク質コーディング配列とを含む自己複製RNAであって、異種タンパク質コーディング配列が、少なくとも2つの隣接する分離配列の間に配置されており、自己複製RNAが、ウイルス粒子を形成することができるウイルス構造タンパク質を欠いている、自己複製RNAを提供する。
【0035】
第22の実施形態では、本発明は、上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、前記異種タンパク質コーディング配列は抗原タンパク質である。
【0036】
第23の実施形態では、本発明は第22の実施形態に係る核酸を提供し、抗原タンパク質は、哺乳類対象に投与された場合に病原体に対する免疫応答を上昇させ、任意選択で、病原体は、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性またはがん性であり、任意選択で、より特に、抗原タンパク質は病原体の外表面上で発現される。
【0037】
第24の実施形態では、本発明は第1~第21の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、異種タンパク質コーディング配列は治療用タンパク質であり、任意選択で、この治療用タンパク質は、成長因子、サイトカイン、抗体または抗体の抗原結合断片から選択される。
【0038】
第25の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つに係る核酸を提供し、この核酸は送達系と複合体化されており、任意選択で、この送達系は、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、脂質ナノ粒子(LNP)、カチオン性ナノエマルションまたは生分解性ポリマーから選択される。
【0039】
第26の実施形態では、本発明は上述の実施形態のいずれか1つの核酸を含む組成物を提供する。
【0040】
第27の実施形態では、本発明は、核酸が第20の実施形態の核酸(the nucleic acid the twenty)である第26の実施形態に係る組成物であって、アジュバントを更に含み、任意選択で、このアジュバントは金属塩である、組成物を提供する。
【0041】
第28の実施形態では、本発明は、第26または第27の実施形態に係る組成物であって、TLRアゴニストを更に含み、任意選択で、このTLRアゴニストはTLR7アゴニストであり、更に任意選択で、このTLR7アゴニストはベンゾナフチリジン(benzonapthyridine)化合物である、組成物を提供する。
【0042】
第29の実施形態では、本発明は、目的のタンパク質または目的のタンパク質をコードする核酸を発現させる方法であって、上述の請求項のいずれか1つの核酸と、転写機構、翻訳機構、または転写機構および翻訳機構を含む発現系とを接触させる工程を含み、核酸の異種タンパク質コーディング配列が目的のタンパク質である、方法を提供する。
【0043】
第30の実施形態では、本発明は第29の実施形態に係る方法を提供し、発現系は無細胞in vitro転写系であり、任意選択で、核酸は自己複製RNAをコードするDNA配列である。
【0044】
第31の実施形態では、本発明は第29の実施形態に係る方法を提供し、発現系は翻訳系を含み、任意選択で、核酸は請求項17または18の自己複製RNAである。
【0045】
第32の実施形態では、本発明は第29~第31の実施形態のいずれか1つに係る方法を提供し、発現系は真核細胞である。
【0046】
第33の実施形態では、本発明は第32の実施形態に係る方法を提供し、真核細胞は昆虫細胞である。
【0047】
第34の実施形態では、本発明は第32の実施形態に係る方法を提供し、真核細胞は哺乳類細胞である。
【0048】
第35の実施形態では、本発明は第34の実施形態に係る方法を提供し、哺乳類細胞はCHO細胞またはCOS細胞である。
【0049】
第36の実施形態では、本発明は、哺乳類対象中で抗原タンパク質に対する免疫応答を上昇させる方法であって、第22の実施形態の核酸を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0050】
第37の実施形態では、本発明は、哺乳類対象に治療用タンパク質を投与する方法であって、請求項24の核酸を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0051】
第38の実施形態では、本発明は第36または第37の実施形態に係る方法を提供し、哺乳類対象はヒトである。
【0052】
【0053】
【0054】
配列のアラインメントおよび比較に有用なプログラムとして、FASTA(Lipman and Pearson, Science, 227: 1435-41 (1985)およびLipman and Pearson, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 2444-48)、BLAST(McGinnis & Madden, Nucleic Acids Res., 32:W20-W25 (2004)(特にMegaBlastを記載する最新のBLAST参考文献)、Zhang et al., J. Comput. Biol., 7(1-2):203-14 (2000)(MegaBlastで実行される「貪欲アルゴリズム(greedy algorithm)」を記載する)、Altschul et al., J. Mol. Biol., 215:403-410 (1990)(最初のBLAST論文))、Needleman-Wunsch(Needleman and Wunsch, J. Molec. Bio., 48 (3): 443-53(1970))、Sellers(Sellers, Bull. Math. Biol., 46:501-14 (1984)およびSmith-Waterman(Smith and Waterman, J. Molec. Bio., 147: 195-197 (1981))、ならびにその他のアルゴリズム(Gerhard et al., Genome Res., 14(10b):2121-27 (2004)に記載されているアルゴリズム等)が挙げられ、これらは参照により組み込まれる。
【0055】
「転写機構」は、適切なDNA配列、例えばプロモーター配列、ポリメラーゼ結合部位等の存在下でRNA転写物を生成することができる。転写機構として、全細胞、生物またはin vitro系を挙げることができる。
【0056】
「翻訳機構」は、適切なRNA配列、例えばリボソーム結合部位等の存在下でポリペプチドを生成することができる。翻訳機構として、全細胞、生物またはin vitro系を挙げることができる。
【0057】
「分離配列」は、2種以上のポリペプチドを形成する単一の転写物を促進する。代表的な分離配列として、ウイルスの2A配列、IRES(内部リボソーム侵入部位)、シグナル配列およびプロテアーゼ認識部位が挙げられる。代表的なウイルスの2A配列(任意選択で、GSGリンカー等のリンカー配列を有する、または有しない)として、P2A、F2A、E2A、T2A(表1に記載されている)、ピコルナウイルス、またはSzymczak-Workman et al. Cold Spring Harbor Protoc, 2012(2): 199-204 (2012)に記載されている配列が挙げられ、この文献は参照により組み込まれる。代表的なIRES配列を表2に示す。
【0058】
「ウイルス粒子を形成することができるウイルス構造タンパク質を欠いている」自己複製RNAは、相補的なヘルパー配列の非存在下では、成熟ウイルス粒子を形成することができない(例えば結晶構造または電子顕微鏡法等の様々な技術で評価した場合に、例えば全カプシドタンパク質コーディング配列を欠いている場合がある)。しかしながら、本明細書で使用する場合、「ウイルス粒子を形成することができるウイルス構造タンパク質を欠いている」自己複製RNAは、RNAを複製するのに必要なエレメント(例えば環化配列およびシグナル配列)を保持することができる。代表的な環化配列およびシグナル配列を表3および表4に記載しており、Khromykh et al., J. Virol. 75: 6719-28 (2001)およびHahn et al., J. Mol. Biol. 198: 33-41 (1987)で更に記載されており、これらは両方とも参照により組み込まれる。例えば、WNVの場合、タンパク質CのN末端コーディング領域(参照受託番号EF530047に関してnt.97~189);対応するRNA配列は必須のシス作用エレメントであり、マイナスセンスRNA合成の制御において役割を果たす場合がある。Eタンパク質のC末端コーディング配列(参照受託番号EF530047に関してnt.2380~2469)は維持された。なぜならば、この領域は、非構造タンパク質1(NS1)の移行およびプロセシングを導いた後に残りの非構造タンパク質NS2~NS5の翻訳およびプロセシングを導くシグナル配列として作用するからである。これらの欠失により、WNVは非感染性になるが複製能力を有する。YFVレプリコン等のその他のフラビウイルスレプリコンでも同様の欠失を実施することができる。
【0059】
異種タンパク質コーディング配列
第39の実施形態では、本発明は(例えば、哺乳類対象等の宿主への)投与方法を提供し、この投与方法によって、自己複製RNAがin vivoで翻訳され、異種タンパク質コーディング配列が発現され、例えば、レシピエント中での異種タンパク質コーディング配列に対する免疫応答を誘発することができ、または治療効果をもたらすことができ、異種タンパク質コーディング配列は治療用タンパク質である。
【0060】
免疫原性タンパク質
第40の実施形態では、本発明は上述の態様および実施形態のいずれかの異種タンパク質コーディング配列を提供し、この異種タンパク質コーディング配列は抗原タンパク質または免疫原であり、これらの用語を互換的に使用することができる。
【0061】
第41の実施形態では、第40の実施形態の抗原タンパク質は、哺乳類対象に投与された場合に病原体に対する免疫応答を上昇させ、任意選択で、この病原体は、細菌性、ウイルス性、真菌性、原生動物性またはがん性である。一部のより具体的な実施形態では抗原タンパク質は病原体の外表面上で発現されるが、その他のより特定の実施形態では抗原は非表面抗原であり得、例えばT細胞エピトープとして有用であり得る。免疫原は、病原体(例えば細菌、ウイルス、真菌または寄生虫)に対する免疫応答を誘発することができるが、一部のその他の実施形態では、アレルゲンまたは腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する。免疫応答は、抗体応答(通常はIgGを含む)および/または細胞により媒介される免疫応答を含むことができる。ポリペプチド免疫原は、典型的には、対応する病原体(またはアレルゲンもしくは腫瘍)ポリペプチドを認識する免疫応答を誘発することができるが、一部の実施形態では、このポリペプチドはミモトープとして作用して、糖類を認識する免疫応答を誘発することができる。免疫原は、典型的には表面ポリペプチドであってよく、例えばアドヘシン、赤血球凝集素、エンベロープ糖タンパク質、スパイク糖タンパク質等であってよい。
【0062】
RNA分子は、単一のポリペプチド免疫原または複数のポリペプチドをコードすることができる。複数の免疫原は、単一のポリペプチド免疫原(融合ポリペプチド)としてまたは別々のポリペプチドとして提示され得る。免疫原がレプリコンとは別のポリペプチドとして発現される場合、これらの内の1種または複数は、上流のIRESまたは追加のウイルスプロモーターエレメントと一緒に生成され得る。或いは、複数の免疫原は、短い自己触媒性プロテアーゼ(例えば口蹄疫ウイルスの2Aタンパク質)に融合した個々の免疫原をコードするポリタンパク質からまたはインテインとして発現され得る。
【0063】
第42の実施形態では、第40または第41の実施形態のポリペプチド免疫原(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはより多くの免疫原)を、単独でまたは1種もしくは複数の免疫原(ポリペプチド免疫原と同じまたは異なる)をコードするRNA分子(例えば自己複製RNA)と一緒に使用することができる。
【0064】
第43の実施形態では、第40、第41または第42の実施形態の免疫原は、下記の細菌の内の1種に対する免疫応答を誘発する:
【0065】
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis):膜タンパク質、例えばアドヘシン、オートトランスポーター、毒素、鉄獲得タンパク質および因子H結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない有用な免疫原。3種の有用なポリペプチドの組合せがGiuliani et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103(29):10834-9 (2006)で開示されている。
【0066】
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae):有用なポリペプチド免疫原が国際公開第2009/016515号パンフレットで開示されている。これらとして、RrgB線毛サブユニット、ベータ-N-アセチル-ヘキソサミニダーゼ前駆体(spr0057)、spr0096、一般的なストレスタンパク質(General stress protein)GSP-781(spr2021、SP2216)、セリン/スレオニンキナーゼStkP(SP1732)および肺炎球菌の表面アドヘシンPsaAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes):有用な免疫原として、国際公開第02/34771号パンフレットおよび国際公開第2005/032582号パンフレットで開示されているポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)。
【0069】
百日咳菌(Bordetella pertussis):有用な百日咳免疫原として、百日咳毒素または百日咳トキソイド(PT)、線維状ヘマグルチニン(FHA)、パータクチンならびに凝集原2および凝集原3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus):有用な免疫原として、国際公開第2010/119343号パンフレットで開示されているポリペプチド、例えば溶血素、esxA、esxB、フェリクロム結合タンパク質(ferrichrome-binding protein)(sta006)および/またはsta011リポタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
破傷風菌(Clostridium tetani):典型的な免疫原は破傷風トキソイドである。
【0072】
コリネバクテリウム・ジフテリアエ(Cornynebacterium diphtheriae):典型的な免疫原はジフテリアトキソイドである。
【0073】
インフルエンザエ菌(Haemophilus influenzae):有用な免疫原として、国際公開第2006/110413号パンフレットおよび国際公開第2005/111066号パンフレットで開示されているポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
【0075】
ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae):有用な免疫原として、国際公開第02/34771号パンフレットで開示されているポリペプチドが挙げられるがこれに限定されない。
【0076】
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis):有用な免疫原として、PepA、LcrE、ArtJ、DnaK、CT398、OmpH様、L7/L12、OmcA、AtoS、CT547、Eno、HtrAおよびMurG(例えば国際公開第2005/002619号パンフレットで開示されている)が挙げられるが、これらに限定されない。LcrE(国際公開第2006/138004号パンフレット)およびHtrA(国際公開第2009/109860号パンフレット)が2種の好ましい免疫原である。
【0077】
クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae):有用な免疫原として、国際公開第02/02606号パンフレットで開示されているポリペプチドが挙げられるがこれに限定されない。
【0078】
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori):有用な免疫原として、CagA、VacA、NAPおよび/またはウレアーゼ(国際公開第03/018054号パンフレット)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
大腸菌(Escherichia coli):有用な免疫原として、腸内毒素原性大腸菌(E.coli)(ETEC)に由来する免疫原、腸管凝集性大腸菌(E.coli)(EAggEC)に由来する免疫原、分散接着性大腸菌(diffusely adhering E.coli)(DAEC)に由来する免疫原、腸管病原性大腸菌(E.coli)(EPEC)に由来する免疫原、腸管外病原性大腸菌(extraintestinal pathogenic E.coli)(ExPEC)に由来する免疫原および/または腸管出血性大腸菌(E.coli)(EHEC)に由来する免疫原が挙げられるが、これらに限定されない。ExPEC株として、尿路病原性大腸菌(E.coli)(UPEC)および髄膜炎/敗血症に関連する大腸菌(E.coli)(MNEC)が挙げられる。有用なUPEC免疫原が国際公開第2006/091517号パンフレット(Chiron Corp.)および国際公開第2008/020330号パンフレット(Novartis AG)で開示されている。有用なMNEC免疫原が国際公開第2006/089264号パンフレット(Chiron Corp.)で開示されている。いくつかの大腸菌(E.coli)型の有用な免疫原はAcfDである。国際公開第2009/104092号パンフレット(Novartis AG)を参照されたい。
【0080】
炭疽菌(Bacillus anthracis)
【0081】
エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis):有用な免疫原として、国際公開第2007/049155号パンフレットおよび国際公開第2009/031043号パンフレットで開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
スタフィロコッカス・エピデルミス(Staphylococcus epidermis)
【0083】
クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)またはクロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinums)
【0084】
レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)
【0085】
コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)
【0086】
ブルセラ(Brucella)、例えば、B.アボルタス(B.abortus)、B.カニス(B.canis)、B.メリテンシス(B.melitensis)、B.ネオトマエ(B.neotomae)、B.オビス(B.ovis)、B.スイス(B.suis)、B.ピニペディアエ(B.pinnipediae)。
【0087】
フランシセラ(Francisella)例えば、F.ノビシダ(F.novicida)、F.フィロミラジア(F.philomiragia)、F.ツラレンシス(F.tularensis)。
【0088】
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)
【0089】
梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)
【0090】
軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)
【0091】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)またはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
【0092】
スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)
【0093】
エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)
【0094】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)
【0095】
リケッチア(Rickettsia)
【0096】
リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)
【0097】
コレラ菌(Vibrio cholerae)
【0098】
チフス菌(Salmonella typhi)
【0099】
ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)
【0100】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)
【0101】
クレブシエラ(Klebsiella)
【0102】
第44の実施形態では、免疫原は、下記のウイルスの内の1種に対する免疫応答を誘発する:
【0103】
オルソミクソウイルス(Orthomyxovirus):有用な免疫原は、インフルエンザAウイルス、BウイルスまたはCウイルスに由来することができ、例えば赤血球凝集素、ノイラミニダーゼまたはマトリックスM2タンパク質であってよい。免疫原がインフルエンザAウイルスの赤血球凝集素である場合、この免疫原は任意のサブタイプ、例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16由来であってよい。
【0104】
パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)ウイルス:免疫原として、ニューモウイルス(Pneumovirus)(例えば呼吸器合抱体ウイルス、RSV)に由来するもの、ルブラウイルス(Rubulavirus)(例えばムンプスウイルス)に由来するもの、パラミクソウイルス(Paramyxovirus)(例えばパラインフルエンザウイルス)に由来するもの、メタニューモウイルス(Metapneumovirus)に由来するものおよびモルビリウイルス(Morbillivirus)(例えば麻疹ウイルス)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
ポックスウイルス科(Poxviridae):免疫原として、オルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)、例えば、大痘瘡(Variola major)および小痘瘡(Variola minor)が挙げられるが、これらに限定されない真正痘瘡(Variola vera)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
ピコルナウイルス(Picornavirus):免疫原としてピコルナウイルス(Picornavirus)に由来するものが挙げられ、例えばエンテロウイルス(Enterovirus)に由来するもの、ライノウイルス(Rhinovirus)に由来するもの、ヘパルナウイルス(Heparnavirus)に由来するもの、カルジオウイルス(Cardiovirus)に由来するものおよびアフトウイルス(Aphthovirus)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、このエンテロウイルスはポリオウイルスであり、例えば1型ポリオウイルス、2型ポリオウイルスおよび/または3型ポリオウイルスである。別の実施形態では、このエンテロウイルスはEV71エンテロウイルスである。別の実施形態では、このエンテロウイルスはコクサッキーAウイルスまたはコクサッキーBウイルスである。
【0107】
ブニヤウイルス(Bunyavirus):免疫原として、オルソブニヤウイルス(Orthobunyavirus)、例えばカリフォルニア脳炎(California encephalitis)ウイルス)に由来するもの、フレボウイルス(Phlebovirus)(例えばリフトバレー熱(Rift Valley Fever)ウイルス)に由来するものまたはナイロウイルス(Nairovirus)(例えばクリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo hemorrhagic fever)ウイルスに由来するものが挙げられるが、これらに限定さない。
【0108】
ヘパルナウイルス(Heparnavirus):免疫原として、ヘパルナウイルス(Heparnavirus)、例えばA型肝炎ウイルス(HAV)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
フィロウイルス(Filovirus):免疫原として、フィロウイルス(filovirus)に由来するもの、例えばエボラ(Ebola)ウイルス、例えばザイールエボラウイルス(Zaire ebolavirus)、アイボリーコーストエボラウイルス(Ivory Coast ebolavirus)、レストンエボラウイルス(Reston ebolavirus)もしくはスーダンエボラウイルス(Sudan ebolavirus)またはマールブルグ(Marburg)ウイルスに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
トガウイルス(Togavirus):免疫原として、トガウイルス(Togavirus)、例えばルビウイルス(Rubivirus)、アルファウイルス(Alphavirus)またはアルテリウイルス(Arterivirus)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。これには風疹ウイルス(rubella virus)が含まれる。
【0111】
フラビウイルス(Flavivirus):免疫原として、フラビウイルス(Flavivirus)、例えばダニ媒介脳炎(Tick-borne encephalitis)(TBE)ウイルス、デング(Dengue)(1型、2型、3型または4型)ウイルス、黄熱(Yellow fever)ウイルス、日本脳炎(Japanese encephalitis)ウイルス、キャサヌール森林(Kyasanur Forest)ウイルス、西ナイル脳炎(West Nile encephalitis)ウイルス、セントルイス脳炎(St. Louis encephalitis)ウイルス、ロシア春夏脳炎(Russian spring-summer encephalitis)ウイルス、ポワッサン脳炎(Powassan encephalitis)ウイルスに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
ペスチウイルス(Pestivirus):免疫原として、ペスチウイルス(Pestivirus)、例えば牛ウイルス性下痢(BVDV)、豚コレラ(CSFV)またはボーダー病(BVD)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
ヘパドナウイルス(Hepadnavirus):免疫原として、ヘパドナウイルス(Hepadnavirus)、例えばB型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)表面抗原(HBsAg)を含むことができる。
【0114】
その他の肝炎ウイルス:組成物は、C型肝炎ウイルス、デルタ型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスまたはG型肝炎ウイルスに由来する免疫原を含むことができる。
【0115】
ラブドウイルス(Rhabdovirus):免疫原として、ラブドウイルス(Rhabdovirus)、例えばリッサウイルス(Lyssavirus)、例えば狂犬病ウイルス(Rabies virus)およびベジクロウイルス(Vesiculovirus)(VSV)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
カリシウイルス科(Caliciviridae):免疫原として、カリシウイルス科(Calciviridae)、例えばノーウォーク(Norwalk)ウイルス(ノロウイルス(Norovirus))ならびにノーウォーク(Norwalk)様ウイルス、例えばハワイ(Hawaii)ウイルスおよびスノーマウンテン(Snow Mountain)ウイルスに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
コロナウイルス:免疫原として、SARASコロナウイルス、鶏感染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TEGV)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。このコロナウイルス免疫原はスパイクポリペプチドであってよい。
【0118】
レトロウイルス:免疫原として、オンコウイルス(Oncovirus)、レンチウイルス(Lentivirus)(例えばHIV-1もしくはHIV-2)またはスプーマウイルス(Spumavirus)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
レオウイルス(Reovirus):免疫原として、オルトレオウイルス(Orthoreovirus)、ロタウイルス(Rotavirus)、オルビウイルス(Orbivirus)またはコルチウイルス(Coltivirus)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
パルボウイルス(Parvovirus):免疫原としてパルボウイルスB19(Parvovirus B19)に由来するものが挙げられるが、これに限定されない。
【0121】
ヘルペスウイルス(Herpesvirus):免疫原としてヒトヘルペスウイルス、例えば、単なる例として単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus)(HSV)(例えばHSV1型およびHSV2型)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus)(VZV)、エプスタイン-バーウイルス(Epstein-Barr virus)(EBV)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)(CMV)、ヒトヘルペスウイルス(Human Herpesvirus 6)(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(Human Herpesvirus 7)(HHV7)およびヒトヘルペスウイルス8(Human Herpesvirus 8)(HHV8)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
パポーバウイルス(Papovavirus):免疫原として、パピローマウイルス(Papillomavirus)およびポリオーマウイルス(Polyomavirus)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。(ヒト)パピローマウイルスは、血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63または65であってよく、例えば血清型6、11、16および/または18の内の1種または複数であってよい。
【0123】
アデノウイルス(Adenovirus):免疫原として血清型36(Ad-36)に由来するものが挙げられる。
【0124】
一部の実施形態では、免疫原は、魚、例えば:伝染性サケ貧血ウイルス(ISAV)、サケ膵臓病ウイルス(salmon pancreatic disease virus)(SPDV)、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、アメリカナマズウイルス(CCV)、魚類リンホシスチス病ウイルス(fish lymphocystis disease virus)(FLDV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、コイヘルペスウイルス、サケピコルナ様ウイルス(タイセイヨウサケのピコルナ様ウイルとしても公知である)、陸封型サケウイルス(landlocked salmon virus)(LSV)、タイセイヨウサケロタウイルス(ASR)、マスイチゴ病ウイルス(trout strawberry disease virus)(TSD)、ギンザケ腫瘍ウイルス(coho salmon tumor virus)(CSTV)またはウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)に感染するウイルスに対する免疫応答を誘発する。
【0125】
真菌免疫原は皮膚糸状菌(Dermatophytres)に由来することができ、例えばエピデルモフィトン・フロッコースム(Epidermophyton floccusum)、ミクロスポルム・オーズアニー(Microsporum audouini)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・ジストルツム(Microsporum distortum)、ミクロスポルム・エクイヌム(Microsporum equinum)、ミクロスポルム・ギプセウム(Microsporum gypsum)、ミクロスポルム・ナヌム(Microsporum nanum)、トリコフィトン・コンセントリクム(Trichophyton concentricum)、トリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・ガリネ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・ジプセウム(Trichophyton gypseum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・キンケアヌム(Trichophyton quinckeanum)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・シェーンレイニ(Trichophyton schoenleini)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ベルコスム(Trichophyton verrucosum)、T.ベルコスム・アルブム変種(T. verrucosum var. album)、ジスコイデス変種(var. discoides)、オクラセイム変種(var. ochraceum)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)および/もしくはトリコフィトン・ファビホルメ(Trichophyton faviforme);またはアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowi)、アスペルギルス・フラバタス(Aspergillus flavatus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)、ブラストシゾミセス・カピタツス(Blastoschizomyces capitatus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・エノラーゼ(Candida enolase)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・クセイ(Candida kusei)、カンジダ・パラクエセイ(Candida parakwsei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondi)、クラドスポリム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ゲオトリクム・クラバタム(Geotrichum clavatum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、微胞子虫門(Microsporidia)、エンセファリトゾーン属(Encephalitozoon)種、セプタタ・インテスティナリス(Septata intestinalis)およびエンテロシトゾーン・ビエヌーシ(Enterocytozoon bieneusi)に由来することができ、あまり一般的でないのは、ブラキオラ(Brachiola)種、ミクロスポリジウム属(Microsporidium)種、ノゼマ属(Nosema)種、プレイストフォラ属(Pleistophora)種、トラキプレイストフォラ(Trachipleistophora)種、ビタフォルマ(Vittaforma)種パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ピシウムン・インシジオスム(Pythiumn insidiosum)、ピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale)、出芽酵母(Sacharomyces cerevisae)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、スケドスポリウム・アピオスペルム(Scedosporium apiosperum)、スポロトリクス・シェンキィ(Sporothrix schenckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、マラセジア属(Malassezia)種、フォンセセア属(Fonsecaea)種、ワンギエラ属(Wangiella)種、スポロトリクス属(Sporothrix)種、バシジオボラス属(Basidiobolus)種、コニディオボラス属(Conidiobolus)種、クモノスカビ属(Rhizopus)種、ムコール属(Mucor)種、アブシディア属(Absidia)種、モルチエレラ属(Mortierella)種、クニンガメラ属(Cunninghamella)種、サクセネア(Saksenaea)種、アルテルナリア属(Alternaria)種、クルブラリア属(Curvularia)種、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)種、フサリウム属(Fusarium)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、ペニシリウム属(Penicillium)種、アモノリニア(Monolinia)種、リゾクトニア属(Rhizoctonia)種、ペシロミセス属(Paecilomyces)種、ピトミケス(Pithomyces)種およびクラドスポリウム属(Cladosporium)種である。
【0126】
第45の実施形態では、免疫原は、プラスモジウム(Plasmodium)属の寄生虫、例えば熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)または卵形マラリア原虫(P. ovale)に対する免疫応答を誘発する。そのため、本発明は、マラリアに対して免疫付与するために使用され得る。一部の実施形態では、免疫原は、ウオジラミ(Caligidae)科の寄生虫、特にレペオフィティルス(Lepeophtheirus)属およびカリグス(Caligus)属の寄生虫、例えばレペオフィティルス・サルモニス(Lepeophtheirus salmonis)またはカリグス・ロゲルクレッセイイ(Caligus rogercresseyi)等のシーライス(sea lice)に対する免疫応答を誘発する。
【0127】
第46の実施形態では、免疫原は、花粉アレルゲン(樹木、ハーブ、草およびイネ科の草の花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲンまたはクモアレルゲン(吸入性アレルゲン、唾液アレルゲンおよび毒液アレルゲン、例えばダニアレルゲン、ゴキブリアレルゲンおよびユスリカアレルゲン、ハチ毒アレルゲン)、(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウス等からの)動物の毛アレルゲンおよびフケアレルゲン、ならびに食物アレルゲン(例えばグリアジン)に対する免疫応答を誘発する。樹木、イネ科の草およびハーブからの重要な花粉アレルゲンは、ブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)およびスズカケノキ科(platanaceae)の分類学上の目に由来し、この分類学上の目には、カバノキ(カバノキ属(Betula))、ハンノキ(ハンノキ属(Alnus))、ハシバミ(ハシバミ属(Corylus))、シデ(クマシデ(Carpinus))およびオリーブ(オリーブ属(Olea))、ヒマラヤスギ(スギ属(Cryptomeria)およびビャクシン属(Juniperus))、スズカケノキ(プラタナス(Platanus))、イネ目(Poales)の序列、例えばドクムギ(Lolium)属、アワガエリ(Phleum)属、イチゴツナギ(Poa)属、ギョウギシバ(Cynodon)属、カモガヤ(Dactylis)属、シラゲガヤ(Holcus)属、クサヨシ(Phalaris)属、ライムギ(Secale)属およびモロコシ(Sorghum)属の草、キク目(Asterales)およびイラクサ目(Urticales)の序列、例えばブタクサ(Ambrosia)属、ヨモギ(Artemisia)属およびヒカゲミズ(Parietaria)属のハーブが含まれるが、これらに限定されない。その他の重要な吸入性アレルゲンは、ヒョウヒダニ(Dermatophagoides)属およびユーログリファス(Euroglyphus)属のチリダニ、貯蔵庫ダニ(storage mite)、例えばレピドグリフィス(Lepidoglyphys)、ニクダニ属(Glycyphagus)およびチロファグス属(Tyrophagus)に由来するもの、ゴキブリ、ユスリカおよびノミ、例えばチャバネゴキブリ属(Blatella)、ワモンゴキブリ属(Periplaneta)、ユスリカ属(Chironomus)およびイヌノミ属(Ctenocepphalides)に由来するもの、ならびに哺乳類、例えばネコ、イヌおよびウマに由来するもの、毒液アレルゲン、例えば針で刺すまたはかみつく昆虫、例えばミツバチ(ミツバチ科(Apidae))、スズメバチ(スズメバチ科(Vespidea))およびアリ(アリ科(Formicoidae))等のハチ目(Hymenoptera)の分類学上の目に由来するものである。
【0128】
第47の実施形態では、免疫原は:(a)がん精巣抗原、例えばNY-ESO-1、SSX2、SCP1、ならびにRAGEファミリー、BAGEファミリー、GAGEファミリーおよびMAGEファミリーのポリペプチド、例えばGAGE-1、GAGE-2、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6およびMAGE-12(これらを、例えばメラノーマ、肺、頭頸部、NSCLC、乳房、胃腸および膀胱の腫瘍に対処するために使用することができる);(b)変異抗原、例えばp53(様々な固形腫瘍、例えば大腸、肺、頭頸部がんと関連する)、p21/Ras(例えばメラノーマ、膵臓がんおよび結腸直腸がんと関連する)、CDK4(例えばメラノーマと関連する)、MUM1(例えばメラノーマと関連する)、カスパーゼ8(例えば頭頸部がんと関連する)、CIA0205(例えば膀胱がんと関連する)、HLA-A2-R1701、ベータカテニン(例えばメラノーマと関連する)、TCR(例えばT細胞非ホジキンリンパ腫と関連する)、BCR-ab1(例えば慢性骨髄性白血病と関連する)、トリオースリン酸イソメラーゼ、KIA0205、CDC-27およびLDLR-FUT;(c)過剰発現抗原、例えばガレクチン4(例えば結腸直腸がんと関連する)、ガレクチン9(例えばホジキン病と関連する)、プロテイナーゼ3(例えば慢性の骨髄性白血病と関連する)、WT1(例えば様々な白血病と関連する)、炭酸脱水酵素(例えば腎がんと関連する)、アルドラーゼA(例えば肺がんと関連する)、PRAME(例えばメラノーマと関連する)、HER-2/neu(例えば乳がん、結腸がん、肺がんおよび卵巣がんと関連する)、マンマグロビン、アルファ-フェトプロテイン(例えば肝癌と関連する)、KSA(例えば結腸直腸がんと関連する)、ガストリン(例えば膵臓がんおよび胃がんと関連する)、テロメラーゼ触媒性タンパク質、MUC-1(例えば乳がんおよび卵巣がんと関連する)、G-250(例えば腎細胞癌と関連する)、p53(例えば乳がん、結腸がんと関連する)ならびに癌胎児抗原(例えば乳がん、肺がん、および結腸直腸がん等の消化管のがんと関連する);(d)共通抗原、例えばメラノーマ-メラニン形成細胞分化抗原、例えばMART-1/Melan A、gp100、MC1R、メラニン形成細胞刺激ホルモンレセプター、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質-1/TRP1およびチロシナーゼ関連タンパク質-2/TRP2(例えばメラノーマと関連する);(e)前立腺関連抗原、例えばPAP、PSA、PSMA、PSH-P1、PSM-P1、PSM-P2、例えば前立腺がんと関連する;(f)免疫グロブリンイディオタイプ(例えば骨髄腫およびB細胞リンパ腫と関連する)から選択される腫瘍抗原である。ある特定の実施形態では、腫瘍免疫原として、p15、Hom/Mel-40、H-Ras、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタイン・バーウイルス抗原、EBNA、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原、例えばE6およびE7、B型肝炎ウイルス抗原およびC型肝炎ウイルス抗原、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス抗原、TSP-180、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、mn-23H1、TAG-72-4、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、p16、TAGE、PSCA、CT7、43-9F、5T4、791 Tgp72、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3(CA 27.29\BCAA)、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPSおよび同類のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
治療用タンパク質
第48の実施形態では、上述の態様および実施形態のいずれかの異種タンパク質コーディング配列は治療用タンパク質であり、任意選択で、この治療用タンパク質は、成長因子、サイトカイン、抗体または抗体の抗原結合断片から選択される。
【0130】
「抗体」は、本明細書で使用する場合、免疫グロブリンまたはその一部を意味しており、供給源、起源の種、作製方法および特徴にかかわらず、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドを包含する。非限定的な例として、用語「抗体」には、ヒト抗体、オランウータン抗体、マウス抗体、ラット抗体、ヤギ抗体、ヒツジ抗体およびニワトリ抗体が含まれる。この用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体、非特異性抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体およびCDR-グラフト化抗体が含まれるが、これらに限定されない。本発明の目的のために、この用語には、特に明記しない限り、抗体断片、例えばFab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb、VHH(ナノボディとも称される)、および抗原結合機能を保持するその他の抗体断片も含まれる。下記で更に記載するように、抗体は、免疫グロブリンをベースとしない抗原結合分子も意味する。
【0131】
抗体を、例えば伝統的なハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein, Nature 256: 495-499 (1975))、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号明細書)、または抗体ライブラリを使用するファージディスプレイ技術(Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991)、Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991))により作製することができる。様々なその他の抗体作製技術に関して、Antibodies: A Laboratory Manual, eds. Harlow et al., Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。
【0132】
用語「抗原結合ドメイン」は、抗体分子において抗原の一部または全てに特異的に結合する領域またはこれらに相補的な領域を含む部分を意味する。抗原が大きい場合、抗体が抗原の特定の部分にのみ結合する場合がある。「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗原分子において抗体の抗原結合ドメインとの特異的相互作用の原因となる一部である。抗原結合ドメインは、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(例えば、VHドメインからなるいわゆるFd抗体断片)により提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むことができる。ラクダおよびラマ(ラクダ科、ラクダ科動物)由来の抗体として独特な種類の抗体が挙げられ、この抗体は、重鎖のみによって形成されていて軽鎖を欠いている。そのような抗体の抗原結合部位は1つの単一ドメインであり、VHHと称される。これらは「ラクダ化抗体」または「ナノボディ」と呼ばれている。例えば、米国特許第5,800,988号明細書および米国特許第6,005,079号明細書ならびに国際出願公開である国際公開第94/04678号パンフレットおよび国際公開第94/25591号パンフレットを参照されたく、これらは参照により組み込まれる。一部の実施形態では、「抗体」として、免疫グロブリン以外の足場をベースとする抗原結合分子が挙げられる。例えば、当技術分野で公知の非免疫グロブリン足場として、小モジュラー免疫医薬(例えば、それぞれ2008年7月31日および2008年9月18日に公開された米国特許出願公開第20080181892号明細書および米国特許出願公開第20080227958号明細書を参照されたい)、テトラネクチン、フィブロネクチンドメイン(例えばAdNectin、例えば、2007年4月12日に公開された米国特許出願公開第2007/0082365号明細書を参照されたい)、プロテインA、リポカリン(例えば米国特許第7,118,915号明細書を参照されたい)、アンキリン反復ならびにチオレドキシンが挙げられる。非免疫グロブリン足場をベースとする分子は概して、高親和性結合配列を同定するために、ファージディスプレイ(例えばHoogenboom, Method Mol. Biol. 178:1-37 (2002)を参照されたい)、リボソームディスプレイ(例えばHanes et al., FEBS Lett. 450:105-110 (1999)およびHe and Taussig, J. Immunol. Methods 297:73-82 (2005)を参照されたい)または当技術分野で公知のその他の技術(Binz et al., Nat. Biotech. 23:1257-68 (2005)、Rothe et al., FASEB J. 20:1599-1610 (2006)ならびに米国特許第7,270,950号明細書、米国特許第6,518,018号明細書および米国特許第6,281,344号明細書も参照されたい)によるライブラリのin vitroでの選択により製造される。
【0133】
送達系
本発明により提供される核酸を任意の適切な手段で送達することができる。この核酸を、裸で、水溶液(例えば緩衝液)で、またはアジュバント送達系等の送達系により送達することができる。従って、別の態様では、本発明により提供される核酸を送達系と複合体化することができる。代表的な送達系として、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、脂質ナノ粒子(LNP)、カチオン性ナノエマルション(CNE)または生分解性ポリマーが挙げられる。本発明により提供される核酸に有用な送達系は、特にCNEに関して、公開されている国際特許出願である国際公開第2012/006380号パンフレット、国際公開第2013/006837号パンフレット、国際公開第2013/006834号パンフレットに記載されている。LNPに関しては、国際公開第2012/006378号パンフレット、国際公開第2012/030901号パンフレット、国際公開第2012/031046号パンフレット、国際公開第2012/031043号パンフレット、国際公開第2013/033563号パンフレット、国際公開第2013/006825号パンフレット、国際公開第2011/076807号パンフレット、国際公開第2015/095340号パンフレット(Novartis AG)および国際公開第2015/095346号パンフレット(Novartis AG)を参照されたい。その他の様式に関しては、国際公開第2012/006359号パンフレットまたは国際公開第2012/006376号パンフレットを参照されたい。上述の出願は全て参照により組み込まれる。
【0134】
組成物
別の態様では、本発明は、例えば対象(例えばヒト対象)への投与に適した、本発明により提供される任意の核酸を含む組成物(例えば医薬組成物)を提供する。そのような医薬組成物は、当業者に公知の適切な添加剤を含むことができる。一部の実施形態では、この核酸は本発明により提供される自己複製RNAである。一部のより具体的な実施形態では、この組成物は金属塩等のアジュバントを更に含む。
【0135】
第49の実施形態では、本発明により提供される組成物のいずれかはTLRアゴニストを更に含むことができ、例えばベンゾナフチリジン化合物等のTLR7アゴニストを更に含むことができる。TLRアゴニストおよびこのTLRアゴニストを含む製剤は当技術分野で公知であり、特に国際公開第2009/111337号パンフレット、国際公開第2011/049677号パンフレット、国際公開第2011/027222号パンフレット、国際公開第2011/084549号パンフレット、国際公開第2012/031140号パンフレット、国際公開第2013/131985号パンフレット、国際公開第2012/103421号パンフレットに記載されており、これらは参照により完全に組み込まれる。
【0136】
使用方法
別の態様では、本発明は、目的のタンパク質または目的のタンパク質をコードする核酸を発現させる方法を提供する。この方法は、本発明により提供される核酸と、転写機構、翻訳機構、または転写機構および翻訳機構を含む発現系とを接触させるステップを含み、この核酸の異種タンパク質コーディング配列は目的のタンパク質である。一部の実施形態では、この発現系は無細胞のin vitro転写系であり、任意選択で、核酸は自己複製RNAをコードするDNA配列である。その他の実施形態では、この発現系は翻訳系を含み、例えば、本発明により提供される核酸は本発明により提供される自己複製RNAである。
【0137】
第50の実施形態では、この発現系は真核細胞である。より具体的な実施形態では、この真核細胞は昆虫細胞である。その他の具体的な実施形態では、この真核細胞は哺乳類細胞であり、例えばCHO細胞またはCOS細胞である。
【0138】
別の態様では、本発明は、哺乳類対象中で抗原タンパク質に対する免疫応答を上昇させる方法であって、本発明により提供される自己複製RNAを対象に投与することを含み、自己複製RNAが免疫原をコードする、方法を提供する。
【0139】
更に別の態様では、本発明は、哺乳類対象に治療用タンパク質を投与する方法であって、本発明により提供される自己複製RNAを対象に投与することを含み、自己複製RNAが治療用タンパク質をコードする、方法を提供する。
【0140】
本発明により提供される方法のある特定の具体的な実施形態では、哺乳類対象はヒトである。
【実施例】
【0141】
最初のフラビウイルスレプリコンの設計および評価
第1世代の西ナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)レプリコンを、WNV株3356(GenBank:AF404756.1)の配列から構築した。Shi P.Y., Tilgner M., Lo M., “Construction and Characterization of Subgenomic Replicons of New York Strain of West Nile Virus.” Virology 296: 213-233 (2002)。nt.90~2379の欠失を含むこのWNV配列を、Genewizから3つの断片で注文し、WNV001(
図1)を生じるWNVレプリコン配列の上流に従来のT7プロモーター配列を用いる従来のクローニング方法を使用して、低コピー数のp15A複製開始点ベクター中において組み立てた。この欠失は、タンパク質CのN末端コーディング領域(nt.97~189)を維持しており、対応するRNA配列は必須のシス作用エレメントであり、マイナスセンスRNA合成の制御において役割を果たす場合がある。Hahn, C. et al. J. Mol. Biol. 198, 33-41 (1987)、Khromykh, A. A. and Westaway, E. G., J. Virol. 71(2), 1497-1505 (1997)およびWestaway, E. G. Adv. Virus Res. 33, 45-90 (1987)を参照されたい。Eタンパク質のC末端コーディング配列(nt.2380~2469)を維持した。なぜならば、この領域は、非構造タンパク質1(NS1)の移行およびプロセシングを導き、その後に残余の非構造タンパク質NS2~NS5の移行およびプロセシングを導くシグナル配列として作用するからである。両方の領域がRNAゲノムの複製に必要である。これらの欠失により、WNVは非感染性となるが複製能力がある。完全なWNVレプリコン配列を低コピープラスミドベクター中において組み立てた。なぜならば、完全長WNVレプリコン配列を高コピープラスミドにクローニングすると不安定になるからである。
【0142】
同様の原理を使用しておよびYFV 17Dワクチン株(GenBank:X15062.1)の配列をベースとして黄熱ウイルス(Yellow Fever vVrus)(YFV)レプリコンを構築し、レプリコンY030を得た。このYFVレプリコンは、このYFVレプリコンが非感染性となるが複製能力がある構造遺伝子欠失を含む。WNVレプリコンと同様に、レプリコン機能に必要なエレメントを保持するために、タンパク質Cの25個のN末端アミノ酸およびタンパク質Eの24個のC末端アミノ酸に対応するコーディング領域を維持した(
図1)。
【0143】
ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞中へのエレクトロポレーション、続いて免疫組織化学的(IHC)方法を使用したWNV抗原の存在に関する染色により、WNV001レプリコンRNAを機能的に評価した。WNV-NS1(A609)を発現するベネズエラウマ脳炎の非感染性ワクチン株からのレプリコンRNA(VEE、Geall, A.J. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109(36): 140604-14609 (2012)を参照されたい)を陽性対照として使用した。一次抗体としてのWNV過免疫マウス腹水(R.B.Teshからの贈与物)と、二次抗体としての西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgM(H+L)とを使用して、エレクトロポレーションの48時間後にIHCを実施した。TrueBlueペルオキシダーゼ基質との反応時に残った青色残基により、陽性細胞を同定した。予想したように、A609でエレクトロポレートした細胞は強いIHC陽性シグナルを示したが、WNV001でエレクトロポレートした細胞の1%未満がIHC陽性シグナルを示した(
図2)。
【0144】
フローサイトメトリーを使用して、Y030 RNA 1μgのBHK細胞へのエレクトロポレーション、続いてYFV抗原の存在に関する染色により、黄熱レプリコンの機能を評価した。エレクトロポレーションの24時間後に細胞を回収し、一次抗体としてのYFV過免疫マウス腹水(R.B.Teshからの贈与物)と、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG
2aとを使用して染色した。フローサイトメトリー分析中にAPCチャンネルを使用する蛍光により、陽性細胞を同定した(
図3)。
【0145】
デルタ型肝炎ウイルスリボザイムは、WNVレプリコン効力を増強するがYFVレプリコン効力を増強しない
第1世代のWNV001レプリコンによる結果は、低い効力(エレクトロポレーションまたはトランスフェクションの後に抗原またはレポーター遺伝子を発現する細胞のパーセントと定義する)を示した。レプリコンの効力を改善するために、センスのまたはアンチセンスのデルタ型肝炎ウイルス配列(それぞれS-HDVRまたはAS-HDVR)をWNV001の3’UTRのすぐ下流に加え、それぞれS-HDVRまたはAS-HDVRを含む第2世代のレプリコンWNV006およびWNV007を得た(
図4)。
【0146】
フローサイトメトリーを使用して、BHK細胞中でWNV001、WNV006およびWNV007のレプリコンRNAを評価した。ある範囲のWNV001、WNV006またはWNV007のRNA(0.25μg~4μg)をBNK細胞中にエレクトロポレートし、エレクトロポレーションの24時間後に、細胞をWNV過免疫マウス腹水およびアロフィコシアニン(APC)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG
2aで染色した(
図5)。第2世代のWNVレプリコンRNAでエレクトロポレートした細胞は第1世代のWNVレプリコンと比べて約5倍~10倍多いWNV抗原陽性細胞を示しており、このことは、フローサイトメトリーで定量化した場合にS-HDVRまたはAS-HDVRの付加により効力が有意に改善されたことを示す。試験した全ての範囲で、S-HDVRを含むWNV006RNAでエレクトロポレートした細胞が最高の効力を示した。
【0147】
本発明者らは、WNVレプリコンを使用して得られた結果に基づいて、3’UTRに続くHDV-R配列の付加により、YFV RNA効力が更に改善されるかどうかを試験した。リボザイムをY037(GFPレポーターを有するY030をベースとする)の3’UTRの直後に加えてY040を生成した。(
図6)。効力へのHDV-リボザイムの効果を試験するために、ある範囲のY037またはY040のRNA(0.1~1μg)でBHK細胞をエレクトロポレートし、エレクトロポレーションの24時間後にフローサイトメトリーによりYFV抗原陽性細胞の割合を決定した。WNVレプリコンで得られた結果とは異なり、リボザイムを使用してもYFVレプリコンRNAの効力は認識できるほど改善されなかった。(
図7)
【0148】
本発明者らは、リボザイム配列の付加によりWNVレプリコンの効力が改善されるメカニズムが、in vitroでの転写後に天然3’UTRの発生を促進するかどうかを試験した。これは、下記のテンプレートから生成されたRNAを含むことにより評価した:(1)線状化XbaIおよびエキソヌクレアーゼポリシングされたWNV001、(2)PCRにより生成されたWNV001テンプレート、ならびに(3)XbaI線状化WNV006を含むリボザイム。理論的には、WNVレプリコンRNAを生成するために使用される全てのテンプレートは同じ配列を生じるが、リボザイムの助けを借りて生成されたRNAの効力は、XbaI、エキソヌクレアーゼポリシングされたテンプレートまたはPCRにより生成されたテンプレートから生成されたRNAの効力を大きく上回った。
図15~
図17を参照されたい。
【0149】
XbaIで線状化したおよびエキソヌクレアーゼでポリッシングしたWNV001またはPCRで生成したWNV001テンプレートを使用したWNVレプリコンRNAのin vitroでの転写は、非テンプレートヌクレオチドの異常な付加に起因して多くの転写物が非天然3’末端を含む可能性があることから、低い効力に悩まされる可能性があり、天然末端を含まない転写物は機能的に障害がある可能性がある、または機能しない可能性がある。リボザイムの付加により、この方法を使用して生成されたWNVレプリコンRNAの優位性をおそらく説明する、正確に定まった天然3’末端の発生が促進される。
【0150】
黄熱レプリコンにHDV-Rを付加しても同じ効果が得られなかったが、YFVレプリコンは、WNVと比較して初めから著しく高い効力を有した(例えば、BHK細胞中にエレクトロポレートされたYFVレプリコンRNA 1μgは典型的には、それぞれ約1.5%~約9%のWNV抗原陽性細胞を生じるWNV001またはWNV006のレプリコンRNA 4μgと比較して60~70%のYFV抗原陽性細胞を生じる)。そのため、YFVレプリコンRNAの3’UTRは、更に改変することなく既に効率的に最適化されていた。
【0151】
5’ATP開始プロモーターはフラビウイルスレプリコンの効力を改善する
第2世代のWNVレプリコンからの結果は、in vitroでの転写中ではレプリコンRNAの真の3’末端の生成においてリボザイムの付加が助けとなることを示唆した。本発明者らは、レプリコンRNAの真の5’末端の発生を容易にするであろう改変によりWNVレプリコンの効力が更に増強されるかどうかを試験した。これまで、従来のT7クラスIIIphi6.5プロモーターを使用してWNVレプリコンRNAの転写を駆動していたが、このプロモーターはGTPで開始され、1つの余分な非ウイルスのグアノシンがレプリコンRNAの5’末端に付加される。従来のT7クラスIIIphi6.5プロモーターを使用する転写から余分なグアノシンヌクレオチドを含むゲノムウイルスRNAを使用した場合、フラビウイルスのウイルス回収率が低いことが実証されている。更に、レプリコンRNAの5’末端は、細胞内での複製中に訂正されていて、真の配列に戻る。例えばKhromykh and Westaway, J Virol, 68(7): p. 4580-8 (1994)を参照されたい。
【0152】
正しい5’末端を有するWNVレプリコンRNAの産生を容易にするために、WNV008(WNV006をベースとするが、AflIIクローニング部位を生じさせるためにC
*とE
*との間にサイレント変異を有する)のプロモーターを改変することにより、ATP開始転写を駆動する一連の代替T7プロモーターを生成し、WNVレプリコンWNV017、WNV026、WNV027およびWNV028を得た(
図8A)。WNV017レプリコンRNAを、T7クラスIIphi2.5プロモーター(Coleman et al., Nucleic Acids Res, 32(1): p. e14 (2004))により生成し、WNV026を、GからAへの置換を含む変異T7phi6.5プロモーターを使用して転写した。これらのプロモーターの最後のヌクレオチドがフラビウイルスレプリコンRNAの最初のヌクレオチドと重複している重複プロモーター(OL)も試験した。WNV027の転写をT7プロモーターphi2.5(OL)によって駆動させ、WNV028の転写をT7プロモーターphi6.5mut(OL)によって駆動させた。
【0153】
プロモーター改変を最初に試験して、既に使用した、WNV008の転写を駆動するT7プロモーターと比較して、転写効率に有害であるかどうかを決定した。それぞれWNV017およびWNV026で使用されるphi2.5変異プロモーターおよびphi6.5変異プロモーターは、in vitroでの転写においてRNA収率を著しく低下させたが、それぞれWNV027およびWNV028で使用されるphi2.5(OL)プロモーターおよびphi6.5mut(OL)プロモーターはRNA収率に有意な悪影響を及ぼさなかった(
図8B)。改変T7プロモーターを使用して転写されたRNAの効力を、BHK細胞中へのレプリコンRNA 100ngのエレクトロポレーションおよびフローサイトメトリーによる24時間でのWNV抗原陽性細胞の割合の決定により評価した(
図9)。データは、WNV026を除く第2世代のWNVレプリコンと比べて、転写中にA開始T7プロモーターにより駆動される、第3世代のWNVレプリコンが有意に強力であることを示した。WNV027およびWNV028からのRNAは、WNV008と比較して効力が約15倍高かった。
【0154】
Y037のプロモーター(それぞれ口蹄疫ウイルスおよびブタテッショウウイルスに由来するF2A自己切断ペプチド部位およびGSGP2A自己切断ペプチド部位に隣接するGFPレポーターを有するY030をベースとする)を改変することにより、YFVレプリコン系中においてATP開始改変プロモーターを使用する効果も評価した。WNVにより実施したように、プロモーター改変を最初に試験してYFVレプリコンの転写効率に有害であるかどうかを決定した。代替プロモーターは、従来のプロモーターと比較してRNAを60%多く得た(
図8C)。改変T7プロモーターを使用して転写したRNAの効力を、BHK細胞中へのレプリコンRNA 100ngのエレクトロポレーションおよびフローサイトメトリーによる24時間でのYFV抗原陽性細胞の割合の決定により評価した(
図10)。データは、ATP開始プロモーターもYFVレプリコンの効力を改善するが、ATP開始プロモーターの使用による最大の効力改善は、従来のプロモーターを使用するGTP開始RNAと比べて約2倍大きいだけであることを示した。
【0155】
導入遺伝子発現部位の最適化
異種遺伝子を発現するフラビウイルスレプリコンを開発する2つの異なる戦略を評価した。1つの戦略は、3’UTRの上流領域中にEMCV IRESにより駆動されるレポーター遺伝子を挿入することからなる。第2の戦略は、構造欠失領域内のインフレーム置き換えとしてのレポーター遺伝子の付加に焦点を当てた。WNVレプリコンまたはYFVレプリコンの3’UTRの上流領域中にIRESにより駆動されるレポーター遺伝子を付加する試みにより、挿入された導入遺伝子の効力および発現が低いレプリコンを得た。対照的に、レプリコンの構造欠失領域中にインフレームで挿入されたレポーター遺伝子により、このレポーターの発現がより高い強力なレプリコンを得た。
図18~21を参照されたい。この領域内の遺伝子の挿入の最適化が今後の焦点であった。
【0156】
FLAGタグ(GFP’FLAG)、ホタルルシフェラーゼ(FLUC)および抗YFV抗体断片(scFv-hFc)を有するGFP等の導入遺伝子を、F2A自己切断ペプチドおよびGSGP2A自己切断ペプチドに隣接している、最適化されたWNVまたはYFVベースのレプリコンの構造欠失遺伝子領域中に挿入した(
図11)。GFP’FLAG、FLUCまたはscFv-hFcを発現するWNVレプリコンRNAおよびGFP’FLAGまたはscFv-hFcを発現するYFVレプリコンRNAをin vitroで評価し、全てが目的の遺伝子を発現することができた。
図22~
図25を参照されたい。
【0157】
フラビウイルスレプリコンは、アルファウイルスレプリコンと比較して代わりの特徴を有する。
複数の細胞株中においてGFPを発現するレプリコンを使用して、様々な測定基準で、WNV、YFVおよびTC83をベースとするレプリコンの特性を評価した。
【0158】
異なる細胞株で作業する場合のトランスフェクション条件をより画一化するためにカチオン性トランスフェクション試薬を使用して、BHK細胞中でまたはHeLa細胞中でレプリコンの効力、細胞毒性および発現を決定した。簡潔に述べると、6ウェルフォーマットでMIRUS mRNAトランスフェクション試薬(Mirus)を使用して、GFPを発現するTC83レプリコン、WNVレプリコンまたはYFVレプリコン(A750、WNV029またはY042)由来のレプリコンRNA 250ngをBHK細胞またはHeLa細胞の80%コンフルエント層上にトランスフェクトした。各ウェルからの上清および細胞層を24時間、48時間および72時間の時点で回収し、アポトーシス前細胞およびアポトーシス細胞の損なわれている膜中に浸透する遠赤色の生存/死滅染色試薬(Molecular Probes)を使用して染色した。フローサイトメトリー分析を使用し、生存細胞集団を使用してレプリコンの効力を決定し、全生存細胞に対するGFP+細胞の割合を決定した(
図12)。GFP+細胞を使用してレプリコンの細胞毒性を決定し、全GFP+細胞と比較して死滅したGFP+細胞の割合を決定した(
図13)。生存しているGFP+細胞の平均蛍光強度により発現を決定した(
図14)。
【0159】
BHK細胞を使用した効力の結果は、24時間で、TC83をベースとするレプリコンA750がWNV029と比較して効力がほぼ同等であることを示した。Y042は、その他のレプリコンと比べて効力がはるかに低かった。データは、24時間と48時間とでの効力の比較では3種全てのレプリコンによって効力が保持されることを示唆する。48時間と72時間とでの効力の比較では、A750レプリコンまたはWNV029レプリコンのいずれかをトランスフェクトした細胞では効力が劇的に低下したが、Y042は、この時点では効力を依然として維持しているように思われる。HeLa細胞を使用した効力の結果は、WNVレプリコンが、TC83をベースとするレプリコンと同程度に強力であるが、YFVをベースとするレプリコンはHeLa細胞中では低い効力に悩まされることを示した。加えて、48時間では効力はTC83レプリコン細胞と比べてWNVレプリコントランスフェクト細胞により良好に保持されたが、72時間では効力はほぼ同レベルまで低下した。
【0160】
BHK細胞では、GFPを発現するTC83レプリコン(A750)は、GFPを発現するフラビウイルスレプリコンと比べて高いレベルの細胞毒性を示した。しかしながら、72時間の時点は、WNVレプリコンを有する細胞が約9%から約54%へと細胞死滅率を大幅に増加させることを示していた。これには多くの理由が考えられるが、1つの大きな理由は、生存/死滅染色系は、完全に溶解している細胞ではなく膜が損なわれている細胞のみを検出することができるということである。A750レプリコンをトランスフェクトされた細胞は、早期の時点ではるかに劇的なレベルのアポトーシスを経験している可能性があり、48時間および72時間の時点で生存/死滅染色アッセイにより検出されるには損傷が大きすぎる可能性があり、そのため、この試験条件では細胞毒性の見かけ上のレベルが過小評価されている可能性がある。対照的に、WNVレプリコンの軽度の細胞毒性は、膜が損なわれてはいるが完全には破壊されていない多くの細胞を導入した可能性がある。そのため、72時間の試料では見かけ上の細胞毒性が増加しているであろう。このことを更に調べることはできるが、これまでの結果および生存-死滅染色が機能する方法は、TC83ベースのレプリコンがフラビウイルスレプリコンと比較して極度に細胞毒性であることを示すことができる。HeLaを使用した細胞毒性データは、全ての時点でTC83レプリコンが最も細胞毒性であり、予想したように続いてWNVレプリコンおよびYFVレプリコンであることを示した。細胞毒性のレベルは、実験の継続期間中ずっと全てのレプリコンで増加した。
【0161】
BHK細胞での発現データは、TC83レプリコンからのGFP発現は経時的に低下することを示し、これは細胞毒性効果による可能性が最も高い。WNVレプリコンからのGFP発現は、最初は低かったが48時間で有意に増加し、続いて72時間で再び低下する。YFVレプリコンからのGFPの発現は安定しているように思われた。HeLa細胞では、TC83レプリコンからのGFP発現は、BHK細胞で低下し続けたように低下し続けたが、フラビウイルスレプリコンからのGFPの発現は、実験の継続期間中ずっと増加し続ける。
【0162】
この結果は、TC83レプリコンプラットフォームおよびフラビウイルスレプリコンの可能性と比較してフラビウイルスレプリコンの異なる特性を示す。
【0163】
図15~
図25は、下記で更に記載されるおよび上記でのそれらの記述で記載されている補足データを提供する。
【0164】
図15~
図17の場合、テンプレートの3’UTRに付加されたセンスまたはアンチセンスのHDV-R配列の助けを借りて生成されたWNVレプリコンRNAは、XbaI/マング・ビーンエキソヌクレアーゼ処理により生成されたテンプレートまたはPCRにより生成されたテンプレートから生成されたWNVレプリコンRNAよりも優れていた。
【0165】
レポーターの最適化を示すデータ
図18~
図22では、異種遺伝子を発現するフラビウイルスレプリコンを開発する2つの異なる戦略を評価した。1つの戦略は、3’UTRの上流領域中にEMCV IRESにより駆動されるレポーター遺伝子を挿入することからなる。Shi et al. Virology 296, 213-233 (2002)、Khromykh and Westaway J. Virol. 71(2), 1497-1505 (1997)。別の戦略は、構造欠失領域内のインフレーム置き換えとしてのレポーター遺伝子の付加に焦点を当てた。Jones et al. Virology 331 247-259 (2005)。WNV006をベースとするWNVレプリコンでは、効率的な導入遺伝子発現を可能にするであろうFLFPD.RSVF-フリンF2A-GFP二重レポーターカセットを挿入する様々な方法を評価した。これらの研究中では5’UTR最適化が未だ発見されていないことから、リボザイム3’UTR最適化のみを含むWNVレプリコンに関してレポーター最適化を実施した。
【0166】
FLFPD.RSVF-フリンF2A-GFPを発現するレプリコン3種を開発した。2種は構造欠失領域中にレポーターカセットを含んだ。構造欠失領域からカセットを発現するレプリコンの内、一方はRSVFのプロセシングを駆動するためのウイルスpRMシグナルペプチドを含むが、他方は天然RSVFシグナルペプチドを含み、これらの構築物は両方とも、GFPに続く追加のGSGP2A自己タンパク質分解切断部位を含んだ(WNV010またはWNV011)。3番目のレプリコンは、天然NsiI部位を使用して添加した3’UTRの上流領域中にEMCV-IRESにより駆動されるFLFPD.RSVF-フリンF2A-GFPレポーターカセットを含んだ(WNV012)。RSVFレポーター構築物およびGFPレポーター構築物の両方のC末端にFLAGタグも付加した(
図18)。
【0167】
これらの構築物からのRNAを、様々な方法を使用してBHK細胞を使用しin vitroで試験した(
図19A、
図19B、
図19C)。最も成功したレポーター遺伝子のセットアップは、ウイルスpRMシグナルペプチドを有する欠失した構造遺伝子領域内にレポーターを含むWNV010であり、続いてWNV011であった。IRESにより駆動されるレポーター構築物は本質的に非現実的であり、非常に少数の細胞がGFPまたはWNV+抗原を発現した。これらの予備的研究は、その他のフラビウイルスレプリコンを使用して得られた先の結果と一致して、WNV構築物は構造欠失領域中に挿入された場合に異種遺伝子を良好に発現することを示した。
【0168】
YFVレプリコン(これらの試験中に未だ発見されなかった5’UTR最適化を含まない)中でFLFPD.RSVF-フリンF2A-GFPレポーター遺伝子も評価した。レプリコンY032は、3’UTRの上流領域中にEMCV-IRESにより駆動されるFLFPD.RSVF-フリンF2A-GFPレポーターカセットを含んだ。Y033は、WNVによる結果に基づいて、レポーターのプロセシングを駆動させるウイルスpRMシグナルペプチドを有する構造欠失領域中にレポーターカセットを含んだ。RSVFレポーター構築物およびGFPレポーター構築物の両方のC末端にFLAGタグも付加した。別のレプリコンY037は、シグナルレポーター遺伝子の有効性を決定するためにF2A-GFP’FLAG-GSGP2Aレポーターカセットのみを含んだ(
図20A)。各レプリコンからのRNAをBHK細胞中にてin vitroで試験し、エレクトロポレーションの24時間後および48時間後に効力を測定した。結果は、3’UTRに挿入されている二重レポーターにより効力が著しく低下することを示した。構造欠失領域中に挿入されている二重レポーターはIRES-3’UTRレポーターと比べて有効であったが、効力は依然として大きく低下した。Y037中のGFP単一レポーターは効力に影響を及ぼしていないと思われる。
【0169】
YFVレプリコン中で更なる単一レポーター(
図21)カセットを評価し、結果は、導入遺伝子とF2A自己切断ペプチド配列およびGSGP2A自己切断ペプチド配列との隣接がレプリコンの効力を改善することおよびウイルスポリペプチド鎖からの導入遺伝子の分離を助けることを示した。
【0170】
最適化されたレプリコンレポーターの試験を
図22~
図25で更に記載する。
【0171】
材料および方法
フラビウイルスベクターの構築および増殖:
この研究に記載されている全てのWNVレプリコン配列またはYFVレプリコン配列を、アンピシリン耐性カセットを有する低コピー数(p15 ori)ベクター中において組み立てた。一般的な制限消化およびライゲーション、PCR、部位特異的変異誘発ならびにin-fusionクローニング等の様々な分子生物学的ツールを使用してベクターを構築した。XL-10 Goldウルトラコンピテントセル(Agilent)の形質転換によりWNVベクターを増殖させた。Stellarコンピテントセル(Clontech)の形質転換によりYFVベクターを増殖させた。プラスミドの調製および増殖中では寒天Luriaブロスプレート(Teknova)上でまたはLuriaブロス培地中でカルベニシリン(25μg/ml)を選択マーカーとして使用した。
【0172】
in vitroでの転写用のフラビウイルステンプレートの生成:
WNVレプリコン配列をもつプラスミドを使用して、様々な方法を使用してin vitroでの転写前にテンプレートを生成した:(i)XbaI線状化およびエキソヌクレアーゼ処理-WNV001等の構築物の場合、37℃での2時間にわたるXbaI(New England Biolabs)消化によりプラスミドWNV001を線状化し、続いてマング・ビーンヌクレアーゼ(New England Biolabs)で処理してテンプレート鎖から非天然ヌクレオチドを除去した。(ii)PCRテンプレート生成-WNV001等の構築物の場合、消化またはエキソヌクレアーゼ処理を必要とすることなく、プラスミドWNV001をPCRテンプレートとして使用してWNVレプリコンテンプレートを生成した。(iii)XbaI線状化-リボザイム配列を含む構築物の場合、37℃での2時間にわたるXbaI消化によりプラスミドを線状化した。YFVレプリコン配列をもつプラスミドを使用して、様々な方法を使用してin vitroでの転写前にテンプレートを生成した。(i)PmeI線状化-リボザイム配列を含む構築物の場合、37℃での2時間にわたるPmeI消化(New England Biolabs)消化によりプラスミドを線状化した。(ii)PCRテンプレート生成-消化を必要とすることなく、PCRを使用してYFVレプリコンテンプレートを生成した。(iii)BspQI線状化-50℃での2時間にわたるBspQI(New England Biolabs)消化により、BspQI線状化部位を含むYFVプラスミドを線状化した。QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して、全てのタイプのテンプレートの生成用の反応生成物を精製した。
【0173】
in vitroでの転写用のアルファウイルステンプレートの生成:
50℃での2時間にわたるBspQI消化によりA750等のTC83レプリコン配列を含むプラスミドを線状化し、続いてQIAquick PCR精製キットを使用して精製した。
【0174】
in vitroでの転写:
調製したDNAテンプレート約1μg~5μgを下記の配合のin vitro転写ミックス50μl~100μlに添加した:40mMのTris-HCl pH8.0(SIGMA)、MgCl2(SIGMA)、6mMのATP、6mMのGTP、6mMのCTP、6mMのUTP(NEB)、10mMのジチオスレイトール(SIGMA)、2mMのスペルミジン(SIGMA)、0.002U/μlのピロホスファターゼ(NEB)、0.8U/μlのRNase阻害剤(NEB)、1U/μlのT7RNAポリメラーゼ(NEB)。この反応物を30℃で2時間にわたりインキュベートした。下記の成分:50mMのTris-HCl pH8.0、5mMのKCl(SIGMA)、2.5mMのGTP、0.1mMのS-アデノシルメチオニン(NEB)、3.5mMのジチオスレイトール、0.01U/μlのTurbo DNAse(Invitrogen)、0.95U/μlのRNAse阻害剤、0.2U/μlのワクシニアキャッピングシステム(NEB)、水を示した最終濃度まで添加してRNAをキャップし、最初の反応の体積を4倍に増加させた。キャッピング反応物を30℃で1時間にわたりインキュベートした。このin vitro転写反応物に7.5MのLiClを2.8Mの最終濃度まで添加し、30分にわたりまたは一晩-20℃でインキュベートした。遠心分離によりRNAをペレット化した。このペレットを70%エタノールで1回洗浄して空気乾燥させ、続いてヌクレアーゼフリー水中に再懸濁させた。キャップされていないRNAを必要とする用途の場合、ワクシニアキャッピング酵素を成分として含めなかった。
【0175】
ベビーハムスター腎臓細胞またはHeLa細胞の培養:
BHK細胞を、5%ウシ胎仔血清(Omega Scientific)、ペニシリン100ユニットおよび100μg/mlのストレプトマイシン(Invitrogen)ならびに2mMのL-グルタミン(Invitrogen)を補充したDulbecco改変Eagle培地(DMEM)(Hyclone)中で増殖させた。細胞を37℃および5%CO2で増殖させた。10%FBSの補充以外は同様の培地製剤を使用してHeLa細胞を増殖させた。
【0176】
BHK細胞のエレクトロポレーション:
培地を吸引して1×DPBS 10mlで洗浄することにより、80%~90%の培養密度でベビーハムスター腎臓(BHK)細胞をT225親フラスコから収集した。このフラスコにトリプシン(0.25%、フェノールレッド、Life Technologies)約10mlを添加して吸引した。細胞を5分にわたり37℃でインキュベートし、フラスコを撹拌して細胞剥離を補助した。トリプシン処理(trypsination)を停止するために、このフラスコに培地10mlを添加した。細胞を5分にわたり約460×gで遠心分離し、培地を除去した。細胞をOPTI-MEM(Life Technologies)中に4×106個の細胞/mlの最終濃度まで再懸濁させた。マウス胸腺RNA(Hyclone)と共に2mmのキュベットに所望の量のRNAを加えて全RNAを4.2μgとし、続いてOPTI-MEM再懸濁細胞250μl(1×106個の細胞/ml)を加えた。下記のパラメータを有するSquare Waveプロトコルを使用して、Bio-Rad Gene Pulser X-Cellでエレクトロポレーションを実施した:120V、25秒パルス、0パルスインターバル、1パルス。エレクトロポレートした細胞を10分にわたり静置した後、培地2mlを含む6ウェルプレート中のウェルに移した。
【0177】
mRNAのカチオン性トランスフェクション
BHKまたはHeLaを250k/ウェルで6ウェルプレートに播種し、80%の培養密度まで増殖させた。TransIT-mRNAキット(MIRUS)を使用して、細胞中にRNAをトランスフェクトした。1つのウェルのトランスフェクションプロトコルは下記の通りであり、適切にスケールアップすることができる:RNA 250ngを265μlの全体積までOpti-MEMに希釈した;mRNAブースト試薬1μlを直ちに添加し、穏やかに旋回させ、続いてTransIT-mRNA試薬1μlを添加した;この溶液を再び緩やかに旋回させ、3分にわたり室温でインキュベートした;このトランスフェクション溶液を完全増殖培地(BHK細胞またはHeLa細胞それぞれの場合にDMEM+5%FBSまたはDMEM+10%FBS)に2.5mlの最終体積まで希釈し、緩やかに混合した。トランスフェクトするウェルから培地を吸引し、トランスフェクション培地と交換した。細胞を37℃5%CO2で4時間にわたりインキュベートした後、トランスフェクション培地を通常の増殖培地に置き換えた。
【0178】
WNV抗原を発現する細胞を検出するための免疫組織化学:
エレクトロポレートした細胞を含むウェル(6ウェルフォーマット)を1×DPBSで洗浄し、3分にわたり-20℃のアセトン:メタノール(1:1v/v)で固定した。固定溶液を吸引し、細胞層を1×DPBSで洗浄し、続いて室温で1時間にわたりPBS+2%正常ヤギ血清(NGS、SIGMA)ブロッキング溶液を添加した。ブロッキング後、細胞を、1時間にわたり室温でPBS+2%NGS中の抗WNVマウス過免疫腹水(MHIAF、R.B.Teshからの贈与物)の一次抗体溶液の1:1000希釈液と共にインキュベートした。一次抗体溶液を除去し、細胞を1×DPBSで2回洗浄した。次いで、PBS+2%NGS中の1:1000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgM(HAL、Rockland)の二次抗体溶液を添加し、2時間にわたり室温でインキュベートした。二次抗体溶液を除去し、1×PBSで3回洗浄した。細胞を可視化するために、細胞層にTrue Blue Peroxidase Substrate(KPL)を添加し、青色が現れるまで室温で5分インキュベートした。
【0179】
ウエスタンブロット分析:
下記のように細胞上清および/または細胞溶解物にウエスタンブロットを実施した。上清を収集し、遠心分離して破片をペレット化した。破片を含まない上清を分析まで-20℃で保管した。培地を吸引して細胞層を1×DPBSで洗浄することにより細胞溶解物を収集した。洗浄液を除去し、細胞溶解を促進するためにピペッティングしながらRIPA緩衝液(Boston BioProducts)を使用して細胞を溶解させた。溶解物を遠心分離して破片をペレット化した。溶解物を分析まで-20℃で保管した。上清または溶解物を4×NuPage LDS Buffer(Life Technologies)で希釈し、還元を必要とする用途の場合、1MのDTT(Life Technologies)を62.5mMの最終濃度まで添加した。試料を5分にわたり95℃で加熱し、続いてNuPAGE Novex4~12%Bis-Trisタンパク質ゲル(Life Technologies)上にロードし、1時間にわたり150Vで1×MOPS Buffer(Life Technologies)中で泳動させた。iBlot Gel Transfer装置(Invitrogen)を製造業者の指示に従って使用して、ゲルをニトロセルロース膜上に移した。ニトロセルロース膜を1×PBS+0.1%Tween+10%ミルクでブロックした。膜を1×PBS+0.1%Tweenで3回洗浄し、下記のように用途に応じてWNV抗原、YFV抗原またはFLAGタグに関して染色した。WNV抗原染色:膜に一次抗体溶液(1×PBS+0.1%Tween中の抗WNV MHIAFの1:1000希釈)を添加し、2時間にわたり室温でインキュベートし、PBS+0.1%Tweenで3回洗浄した。次いで、ブロットに二次抗体溶液(1×PBA+0.1%Tween中の1:10000希釈Rockland HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgM)を添加し、1時間にわたり室温でインキュベートした。試料を5分にわたり1×PBS+0.1%Tweenおよび1×PBSで3回洗浄した。ECLウエスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare)を製造業者の指示に従ってブロットに添加した。ウエスタンブロットフィルムをELCハイパーフィルム(GE Healthcare)への曝露により現像し、Konica Minolta SRX-101AX線装置を使用して処理した。YFV抗原染色:一次抗抗体溶液(1×PBS+0.1%Tween中の抗WNV MHIAFの1:1000希釈)を使用した以外は上記と同じプロトコル。FLAGタグ抗原染色:一次抗体溶液(1×PBS-T中のマウスモノクローナル抗FLAG M2抗体1μg/ml、クローンM2、SIGMA F1804 SLBD6976)を使用した以外は上記と同じプロトコル。
【0180】
ルシフェラーゼアッセイ:
培地を細胞から除去し、細胞層を1×DPBSで洗浄した。洗浄液を除去し、1×Cell Culture Lysis Buffer(Promega)をウェルに添加し、続いて削り取って細胞層の溶解を促進させた。破片を遠心分離によってペレット化して廃棄した。溶解物を分析まで-80℃で保管した。ルシフェラーゼ活性を測定するために、試料を解凍して室温で平衡化し、各試料20μlを96ウェル平底の不透明ウェルプレート(Costar)中のウェルに添加した。このプレートを、Centro LB960ルミノメーターおよび下記のパラメータを使用し、付随するMikroWin2000ソフトウェアを使用して分析した:ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)100μlを注入する;2秒休止;1秒読み取り。
【0181】
フローサイトメトリー分析による抗原レプリコンの効力:
培地を細胞から除去し、細胞層を1×DPBSで洗浄した。細胞にトリプシン(0.25%)を添加し、細胞が剥離し始めるまで37℃でインキュベートした。ピペッティングにより剥離を促進させ、96ウェル丸底プレート中に移した。3分にわたる約462×gでの遠心分離により細胞をペレット化した。トリプシンをデカントし、細胞を染色緩衝液(1×PBS+0.25%ウシ血清アルブミン+0.2%NaN3)で1回洗浄し、上記と同様にペレット化した。ペレットをCytofix/Cytoperm溶液(BD)中に再懸濁させ、20分にわたり4Cでインキュベートして再ペレット化した。細胞を、洗浄と洗浄の間にペレット化しながらPerm/Wash緩衝液(Perm/Wash緩衝液、BD、1×PBSで1×に希釈する)で2回洗浄した。TC83、WNVまたはYFVからの抗原を、試料毎に下記のように検出した。TC83抗原検出:J2モノクローナル抗体マウス、IgG2a、カッパ鎖(Scicons)0.75μlをZenon Allophycocyanin(APC)マウスIgG2標識キット成分A(Invitrogen)0.75μlに希釈し、室温で5分にわたりインキュベートし、続いてZenon Allophycocyanin(APC)マウスIgG2A標識キット成分B 0.75μlを添加し、室温で5分にわたりインキュベートした。染色剤をperm/wash溶液57.5μlで希釈し、この希釈溶液50μlで細胞ペレットを再懸濁させ、4℃で30分にわたりインキュベートした。染色した細胞を再ペレット化し、perm/wash緩衝液で2回洗浄して染色緩衝液で2回洗浄した。細胞をBD FACsCalibur E-4647 Instrumentに通し、全細胞集団と比較して抗原陽性細胞の数を決定することにより、FlowJo分析ソフトウェアを使用して効力を決定した。WNV抗原検出:抗WNV MHIAFを成分Aで希釈した以外は上記と同じプロトコル。YFV抗原検出:抗YFV MHIAFを成分Aで希釈した以外は上記と同じプロトコル。
【0182】
GFPを発現するレプリコンを使用する効力、細胞毒性および発現の分析
GFPを発現するレプリコンをトランスフェクトした細胞から培地を回収して、0.25%トリプシンによる処理によって、細胞層と共に、あらゆる死滅したまたは付着していない細胞を収集した。モックトランスフェクト細胞を陰性対照として使用し、培地中の10μg/μlのピューロマイシンで処理した細胞を陽性対照として使用した。培地およびトリプシン処理した細胞を組み合わせ、3分にわたり約462×gで一緒に遠心分離した。細胞ペレットを1×DPBSで洗浄し、96ウェル丸底プレート中の1つのウェルに移した。細胞をペレット化し、1×DBPS中のLive/Dead Fixable Far Red Dead Cell Stain(Molecular Probes)の1:1000希釈液に再懸濁させ、30分にわたり4℃でインキュベートした。Live/Dead染色した細胞をペレット化し、1×DPBS+1%ウシ血清アルブミンで2回洗浄した。試料をBD FACsCalibur E-4647 Instrumentに通し、FlowJo分析ソフトウェアを使用してデータを分析した。レプリコンの存在を示すGFP陽性細胞に関してゲーティングし、続いてGFP陽性集団内の死滅細胞の割合を決定することにより、細胞毒性を決定した。生存細胞および生存集団内のGFP陽性細胞の割合に関してゲーティングすることにより効力を決定した。GFP発現は、生存しているGFP発現細胞の平均蛍光強度(MFI)を分析にすることにより決定した。
【0183】
本出願においていくつかのパラメータを記載する全ての数値境界、例えば「約」、「少なくとも」、「より少ない」および「より多い」に関して、この記載はまた、列挙されている値によって境界が示される任意の範囲も必然的に包含することを理解すべきである。従って、例えば記載「少なくとも1、2、3、4または5」は、特に範囲1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5および4~5等も記載する。
【0184】
非特許文献および参照配列情報等の本明細書で引用されている全ての特許、出願またはその他の参考文献に関して、それらは、引用されている命題のためだけでなく全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれることを理解すべきである。参照により組み込まれる文書と本出願との間で何らかの矛盾が存在する場合には、本出願は調整することができる。本出願で開示されている参照遺伝子配列と関連する全ての情報、例えばゲノム遺伝子座、ゲノム配列、機能的アノテーション、対立遺伝子多様体および参照mRNA(例えばエクソン境界または応答エレメントを含む)およびタンパク質配列(例えば保存されているドメイン構造)を含むGeneIDまたは受託番号(典型的にはNCBI受託番号を言及する)、ならびに化学的参照物(例えばPubChem化合物、PubChem物質またPubChemバイオアッセイエントリ、例えばこれらでのアノテーション、例えば構造およびアッセイ等)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0185】
本出願で使用されている見出しは便宜のみを目的としており、本出願の解釈には影響を及ぼさない。
【0186】
本発明により提供される態様それぞれの好ましい特色は、変更すべきところは変更して本発明の他の態様全てに適用可能であり、限定されることなく従属請求項により例示され、実施例を含む本発明の特定の実施形態および態様の個々の特色(例えば数値範囲および代表的な実施形態等の要素)の組合せおよび並べ替えも包含する。例えば、実施例で例示されている特定の実験パラメータは、本発明を逸脱することなく、段階的に特許請求されている本発明での使用に適応され得る。例えば、開示されている材料に関して、これらの化合物の様々な個々のおよび集合的な組合せおよび並べ替えそれぞれの具体的な言及が明白に開示されていない場合があるが、それぞれが具体的に意図されており、かつ本明細書に記載される。そのため、要素A、BおよびCの群が開示され、要素D、EおよびFの群ならびに要素A~Dの組合せの例が開示されている場合、それぞれが個別に列挙されていなくても、それぞれは個々にかつ集合的に意図されている。そのため、この例では、組合せA~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~EおよびC~Fそれぞれが具体的に意図されており、A、BおよびC;D、EおよびF;ならびに例示的組合せA~Dの開示から開示されていると見なされるべきである。同様に、これらの任意の部分集合または組合せも具体的に意図されており、かつ開示されている。そのため、例えば、A~E、B~FおよびC~Eの下位群が具体的に意図されており、A、BおよびC;D、EおよびF;ならびに例示的組合せA~Dから開示されていると見なされるべきである。この概念は、問題の組成物の要素およびこの組成物を製造するまたは使用する方法のステップ等の本出願の全ての態様に適用される。
【0187】
本明細書の教示に従って当業者により認識される本発明の上記の態様を、それらが先行技術に対して新規および非自明である限り任意の組合せまたは並べ替えで特許請求することができ、そのため、ある要素が、当業者に公知である1つまたは複数の参考文献に記載されている限り、上記の態様は、特に特色または特色の組合せの否定的な但し書きまたは放棄により、特許請求されている本発明から除外され得る。
【0188】
配列表
WNVレプリコンのヌクレオチド配列(UTRを含む);配列番号1:
【化1】
【0189】
WNVレプリコンのペプチド配列(5’UTRおよび3’UTRを含まない);配列番号2:
【化2】
【0190】
YFVレプリコンのヌクレオチド配列(UTRを含む);配列番号3:
【化3】
【0191】
YFVレプリコンのペプチド配列(5’UTRおよび3’UTRを含まない);配列番号4:
【化4】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【表7】
本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
(+)鎖自己複製RNAをコードする配列を含む、単離された核酸であって、前記自己複製RNAが、フラビウイルスレプリカーゼコーディング配列と異種タンパク質コーディング配列とを含み、前記異種タンパク質コーディング配列が、少なくとも2つの隣接する分離配列の間に配置されており、前記自己複製RNAが、ウイルス粒子を形成することができるウイルス構造タンパク質のコーディング配列を欠いており、前記フラビウイルスレプリカーゼが、
(a)西ナイルウイルス(West Nile Virus)(WNV)レプリカーゼであって、前記WNVが、WNV NY99、WN NY 2000-crow3356、HNY1999、NY99flamingo38299、IS98STD、goose-Hungary/03、Italy1998Equine、RO9750、VLG4、LEIV-Vlg99-27889、PaH001、PaAn001、Eg101、Chin-01、Sarafend、B956(WNFCG)、goshawk-Hungary/04、LEIV-Krnd88-190、Nea Santa-Greece 2010、Goshawk-Hungary/04、Greece/2012/Kavala.39.1、Italy/2013/Rovigo/32.1、Austria/2008-ghからなる群から選択され、より特に、株がWNV NY99、WN NY 2000-crow3356もしくはHNY1999から選択される、WNVレプリカーゼ、または
(b)黄熱ウイルス(Yellow Fever Virus)(YFV)レプリカーゼであって、前記YFVが、17Dワクチン株、Asibi株、Uganda481、Angola71、17D-204、17DD、17D-213、Uganda2010、88/1999からなる群から選択され、より特に、株が17Dワクチン株もしくはAsibi株である、YFVレプリカーゼ
である、核酸。
[2]
前記レプリカーゼが、配列番号2または配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、上記[1]に記載の核酸。
[3]
前記分離配列がウイルスの2A配列である、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[4]
前記少なくとも2つの隣接する分離配列が組換えを起こさない、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[5]
前記自己複製RNAの合成が、T7、SPC6、CMVまたはこれらのいずれかの機能的断片からなる群から選択されるプロモーターにより駆動される、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[6]
前記核酸が、機能的3’UTRを産生するための、前記自己複製RNAの下流の配列を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[7]
機能的3’UTRを産生するための前記配列がリボザイムをコードする、上記[6]に記載の核酸。
[8]
前記下流の配列が制限酵素認識配列であり、任意選択でBspQI部位である、上記[6]に記載の核酸。
[9]
前記核酸が、配列番号1または配列番号3と少なくとも約60%同一な配列を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[10]
前記核酸がプラスミドであり、任意選択で前記プラスミドが低コピー数プラスミドである、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[11]
前記異種タンパク質コーディング配列が抗原タンパク質である、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[12]
前記異種タンパク質コーディング配列が治療用タンパク質であり、任意選択で、前記治療用タンパク質が、成長因子、サイトカイン、抗体または抗体の抗原結合断片から選択される、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[13]
送達系と複合体化されており、任意選択で、前記送達系が、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、脂質ナノ粒子(LNP)、カチオン性ナノエマルションまたは生分解性ポリマーから選択される、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸。
[14]
先行する項目のいずれか一項に記載の核酸を含む宿主細胞であって、任意選択で、前記宿主が、TetrD(mcrA)183 D(mcrCB-hsdSMR-mrr)173 endA1 supE44 thi-1 recA1 gyrA96 relA1 lac Hte[F’proAB lacIqZDM15 Tn10(Tetr)Amy Camr](例えば、XL10Gold(登録商標)ウルトラコンピテント)細胞またはF-、endA1、supE44、thi-1、recA1、relA1、gyrA96、phoA、Φ80d lacZΔ M15、Δ(lacZYA-argF)U169、Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)、ΔmcrA、λ-(例えば、STELLAR(登録商標))細胞から選択される、宿主細胞。
[15]
先行する項目のいずれか一項に記載の核酸によりコードされる自己複製RNA。
[16]
先行する項目のいずれか一項に記載の核酸を含む組成物であって、アジュバントを更に含み、任意選択で前記アジュバントが金属塩である、組成物。
[17]
TLRアゴニストを更に含み、任意選択で前記TLRアゴニストがTLR7アゴニストであり、更に任意選択で前記TLR7アゴニストがベンゾナフチリジン化合物である、上記[16]に記載の組成物。
[18]
目的のタンパク質または前記目的のタンパク質をコードする核酸を発現させる方法であって、先行する項目のいずれか一項に記載の核酸と、転写機構、翻訳機構、または転写機構および翻訳機構を含む発現系とを接触させる工程を含み、前記核酸の前記異種タンパク質コーディング配列が前記目的のタンパク質である、方法。
[19]
哺乳類対象中で抗原タンパク質に対する免疫応答を上昇させる方法であって、上記[11]に記載の核酸を前記対象に投与する工程を含む、方法。
[20]
哺乳類対象に治療用タンパク質を投与する方法であって、上記[12]に記載の核酸を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【配列表】