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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】エアゾール式吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/68 20060101AFI20220810BHJP
   B65D 83/30 20060101ALI20220810BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B65D83/68 100
B65D83/30
B05B9/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018085644
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019189310
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-11-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 舞
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-223242(JP,A)
【文献】特開2017-128373(JP,A)
【文献】特開2017-197261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/28-83/68
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ヘッドをエアゾール式の吐出容器に設けたエアゾール式吐出容器であって、
前記吐出容器は、ステムを複数備え、各ステムから異なる色の内容物を吐出させるものであり、
前記吐出ヘッドは、
前記吐出容器の前記ステムから吐出される内容物をそれぞれ内部空間に送給する複数の送給筒と、該内部空間に連通する成形孔を複数備え水平方向に延在して上面が平坦な造形壁とを有し、該成形孔から内容物を吐出させて形作られる造形要素が該造形壁の面上で組み合わさって内容物の造形物が形成されるものであって、
複数の前記送給筒を備えるとともに該送給筒から吐出される内容物をそれぞれ通過させる複数の開口を有する天壁を備え、該天壁を前記造形壁に対して対向姿勢で備えるベース部材と、
前記ベース部材を上下動可能に保持するとともに前記造形壁を備える吐出部材と、
を備え、
前記天壁は一体的に形成されていて、
前記ベース部材が上方へ移動した際に前記天壁が前記造形壁に当接する一方、前記ベース部材が下方へ移動した際に前記天壁と前記造形壁との間で複数の前記開口が連通する前記内部空間が区画形成されるものであり、
前記内部空間は、それぞれの送給筒から送給される内容物が合流するものであって、
前記成形孔を通過させて形成される前記造形物を、各ステムから吐出される内容物の色になる部分と各ステムから吐出される内容物が混合した状態の色になる部分とになるよう構成したエアゾール式吐出容器
【請求項2】
前記ベース部材は、前記ステムから内容物を吐出させる際に該ベース部材を押し下げるための指掛け部を有する請求項に記載のエアゾール式吐出容器
【請求項3】
前記造形壁は、前記ベース部材が上方へ移動した際に前記開口に挿入されるシール部を有する請求項1又は2に記載のエアゾール式吐出容器
【請求項4】
前記吐出容器に取り付けられる保持部材を有し、
前記吐出部材は、前記保持部材に対して不動に保持される請求項1~3の何れか一項に記載のエアゾール式吐出容器
【請求項5】
前記保持部材と前記ベース部材との相互間に、該ベース部材を前記造形壁に向けて付勢する弾性体を有する請求項に記載のエアゾール式吐出容器
【請求項6】
前記吐出容器は、複数の吐出容器体を組み合わせて構成され、該吐出容器体のそれぞれは、前記ステムを一つ備えるマウンティングカップを有する請求項1~5の何れか一項に記載のエアゾール式吐出容器
【請求項7】
前記吐出容器は、前記ステムを複数備えるマウンティングカップを有する一の吐出容器体で構成される請求項1~5の何れか一項に記載のエアゾール式吐出容器
【請求項8】
前記造形物は泡状である、請求項1~7の何れか一項に記載のエアゾール式吐出容器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出容器に装着されて内容物を吐出する吐出ヘッドに関するものであり、特に、吐出した内容物によって所定形状の造形物が形成される吐出ヘッド、及びこの吐出ヘッドをエアゾール式の吐出容器に装着したエアゾール式吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、吐出容器に装着されて内容物を吐出する吐出ヘッドにおいては、吐出した内容物によって所定形状の造形物が形成されるものが出始めている。例えば特許文献1に示された吐出ヘッドは、頂部に位置する造形壁に、内容物が通過する複数の成形孔が設けられていて、これらの成形孔から吐出される内容物の造形要素が造形壁の面上で組み合わさることで、所定の造形物が形成されるようにしている。このような吐出ヘッドによれば、成形孔の大きさや形状、位置などに応じて、様々な造形物を形成することができる。例えば特許文献1では一例として、内容物が薔薇のような八重咲きの花として造形される吐出ヘッドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-26962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の吐出ヘッドでも複雑な造形物が形成可能であるが、更に見栄えのよい造形物が形成できれば、これまでの吐出ヘッドよりも付加価値が高まることになる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、吐出させる内容物によって形成される造形物を、従来よりも更に見栄えよく造形することが可能な吐出ヘッド、及びエアゾール式吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吐出ヘッドをエアゾール式の吐出容器に設けたエアゾール式吐出容器であって、
前記吐出容器は、ステムを複数備え、各ステムから異なる色の内容物を吐出させるものであり、
前記吐出ヘッドは、前記吐出容器の前記ステムから吐出される内容物をそれぞれ内部空間に送給する複数の送給筒と、該内部空間に連通する成形孔を複数備え水平方向に延在して上面が平坦な造形壁とを有し、該成形孔から内容物を吐出させて形作られる造形要素が該造形壁の面上で組み合わさって内容物の造形物が形成されるものであって、
複数の前記送給筒を備えるとともに該送給筒から吐出される内容物をそれぞれ通過させる複数の開口を有する天壁を備え、該天壁を前記造形壁に対して対向姿勢で備えるベース部材と、
前記ベース部材を上下動可能に保持するとともに前記造形壁を備える吐出部材と、
を備え、
前記天壁は一体的に形成されていて、
前記ベース部材が上方へ移動した際に前記天壁が前記造形壁に当接する一方、前記ベース部材が下方へ移動した際に前記天壁と前記造形壁との間で複数の前記開口が連通する前記内部空間が区画形成されるものであり、
前記内部空間は、それぞれの送給筒から送給される内容物が合流するものであって、
前記成形孔を通過させて形成される前記造形物を、各ステムから吐出される内容物の色になる部分と各ステムから吐出される内容物が混合した状態の色になる部分とになるよう構成したエアゾール式吐出容器である。
【0008】
前記ベース部材は、前記ステムから内容物を吐出させる際に該ベース部材を押し下げるための指掛け部を有することが好ましい。
【0009】
前記造形壁は、前記ベース部材が上方へ移動した際に前記開口に挿入されるシール部を有することが好ましい。
【0010】
前記吐出容器に取り付けられる保持部材を有し、
前記吐出部材は、前記保持部材に対して不動に保持されることが好ましい。
【0011】
前記保持部材と前記ベース部材との相互間に、該ベース部材を前記造形壁に向けて付勢する弾性体を有することが好ましい。
【0012】
前記吐出容器は、複数の吐出容器体を組み合わせて構成され、該吐出容器体のそれぞれは、前記ステムを一つ備えるマウンティングカップを有することが好ましい。
【0013】
前記吐出容器は、前記ステムを複数備えるマウンティングカップを有する一の吐出容器体で構成されることが好ましい。
【0015】
前記造形物は、泡状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吐出ヘッドは、ステムから吐出される内容物を送給する送給筒を複数備えていて、吐出ヘッドの内部空間は、それぞれの送給筒から送給される内容物が合流して成形孔を通過するように構成されている。このため、複数の内容物を個別に充填するとともに、それぞれの内容物を吐出するステムを備える容器に使用することによって、複数の内容物が混合する部分(例えば、マーブル柄のように複数の内容物が互いに練り込まれる部分、グラデーションのようにある内容物から他の内容物に徐々に変わっていく部分、複数の内容物が略完全に混ざり合う部分など)を含む造形物を形成することができる。例えば2色の内容物を個別に充填するとともに、それぞれの内容物を吐出する2つのステムを持つ吐出容器に対し、本発明に従う吐出ヘッドは、2つの送給筒から送給される内容物が内部空間で合流して成形孔を通過するため、例えば一端から他端に向かって一の色から他の色に徐々に変化していくような造形物を形成することができる。このように本発明の吐出ヘッドによれば、一種類の内容物で造形物を形成していた従来の吐出ヘッドに比して高い装飾性が得られるため、更に見栄えがよくなる。
【0018】
また本発明の吐出ヘッドを、上述したベース部材と吐出部材とを備えるものとする場合は、比較的簡素な構成でありながら上述した効果を実現することができる。また、内容物を吐出した後にベース部材が上方へ復帰すると、天壁が造形壁に当接するため、内部空間や成形孔に残る内容物を極力減らすことができる。すなわち、例えば発泡性の内容物を使用する場合において、内部空間や成形孔に残った内容物は時間が経つと液体に戻るため、次回内容物を吐出させる際には、残った内容物によって泡の性状が変わってしまい、造形物が意図した形にならないおそれがあるが、上述した構成を採用することによって、このような不具合を防止することができる。
【0019】
そして上述した指掛け部を設ける場合は、ベース部材を押し下げやすくなるため、操作性が向上する。また、造形壁に指等が触れたままの状態で内容物を吐出させると、吐出した内容物に指等が触れて造形物の形が崩れるおそれがあるが、このような指掛け部を設けることで、このような不具合も防止することができる。
【0020】
また、上述したシール部を設ける場合は、開口に内容物が残ったままになることがないため、例えば長期間不使用の状態でも内容物が開口で固化してしまうことがない。
【0021】
そして、上述した保持部材に対して吐出部材が不動に保持される場合は、吐出部材に対して上下動するベース部材を安定的に動かすことができるため、操作性がよくなる。
【0022】
また、上述した弾性体を設ける場合は、内容物を吐出させるべく下方に押し下げたベース部材を、上方の初期位置まで自動的に復帰させることができる。
【0023】
本発明の吐出ヘッドを取り付ける吐出容器は、複数の吐出容器体を組み合わせて構成されるものであって、吐出容器体のそれぞれがステムを一つ備えるマウンティングカップを有するものでもよいし、一の吐出容器体で構成されるものであって、この吐出容器体がステムを複数備えるマウンティングカップを有するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に従う吐出ヘッドの第一実施形態につき、これをエアゾール式の吐出容器に装着してエアゾール式吐出容器として示した平面図と断面図(吐出容器は側面図)である。
図2図1に示す吐出ヘッドの成形孔から内容物が吐出される状況を説明する図である。
図3】本発明に従う吐出ヘッドの第二実施形態につき、これをエアゾール式の他の吐出容器に装着してエアゾール式吐出容器として示した平面図と断面図(吐出容器は側面図)である。
図4図3に示す吐出ヘッドの成形孔から内容物が吐出される状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に従う吐出ヘッドの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」の関係は、図1に示すように正立させた吐出容器に取り付けた状態での向きをいう。
【0026】
図1図2は、本発明に従う吐出ヘッドの第一実施形態について示した図である。本実施形態の吐出ヘッド1は、エアゾール式の吐出容器100に取り付けて使用される。また吐出ヘッド1は、保持部材2、ベース部材3、吐出部材4、弾性体5で構成されている。
【0027】
まず吐出容器100について説明する。吐出容器100は、複数の吐出容器体を組み合わせて構成されるものである。本実施形態においては、エアゾール式の2つの吐出容器体101、102を左右に並べて構成したものである。吐出容器体101、102は、有底円筒状となる金属製の容器本体101a、102aと、容器本体101a、102aの上端部で巻き締められて固着された金属製のマウンティングカップ101b、102bとを備えている。またマウンティングカップ101b、102bの中央部には、円筒状をなし、上方へ向けて付勢されているステム101c、102cが設けられている。このような吐出容器体101、102の内部には、内容物と高圧ガスが充填されていて、ステム101c、102cを下方へ向けて押圧することで、内容物を吐出させることができる。また本実施形態において、2つの吐出容器体101、102のそれぞれには、互いに異なる色であって、吐出後は泡状になる内容物が収められている。
【0028】
保持部材2は、2つの吐出容器体101、102における2つのマウンティングカップ101b、102bを全て取り囲む環状壁2aを備えている。環状壁2aの下部内周面には、マウンティングカップ101b、102bに係合する爪部2bが設けられていて、保持部材2をマウンティングカップ101b、102bに抜け止め保持している。なお環状壁2aの内側には、環状壁2aとともにマウンティングカップ101b、102bをそれぞれ取り囲む内側壁2cが設けられている。環状壁2a及び内側壁2cの上部には、2つのマウンティングカップ101b、102bの上面に沿って延在するとともに、2つのステム101c、102cをそれぞれ露出させる2つの孔と、中央部に設けられる1つの孔とを有する頂壁2dが設けられている。頂壁2dにおける中央部の孔の縁部には、上方へ向けて延在する内側側壁2eが設けられている。また頂壁2dの外縁部には、上方へ向けて延在する上部環状壁2fが設けられている。また、上部環状壁2fの内側には、ステム101c、102cをそれぞれ取り囲む円環状の下部ガイド壁2gが設けられている。そして環状壁2aの下端部には、径方向外側に延在した後、上下方向に延在するとともに、上部内周面に爪部を有する係合壁2hが設けられている。
【0029】
ベース部材3は、保持部材2の上方において水平方向に延在する天壁3aを備えている。天壁3aの外縁部には、上部環状壁2fを取り囲むようにして下方へ向けて延在する周壁3bが設けられている。ここで周壁3bは、上部環状壁2fに対して摺動可能となっている。そして周壁3bの下端部には、径方向外側に向けて延在し、内容物を吐出する際に指で押圧する部位となる指掛け部3b1が設けられている。また天壁3aには、2つのステム101c、102cの上方において、天壁3aを貫通する2つの開口3c、3dが設けられている。そして天壁3aの下面には、円筒状をなし、開口3c、3dとともにステム101c、102cをそれぞれ取り囲むように形成され、ステム101c、102cから吐出される内容物をそれぞれ開口3c、3dに向けて送給する2つの送給筒3e、3fが設けられている。更に、天壁3aの下面における中央部には、隣り合う内側側壁2eの間に挿入される中央壁3gが設けられている。また、天壁3aの下面において、送給筒3e、3fの径方向外側には、送給筒3e、3fをそれぞれ取り囲む円環状の上部ガイド壁3hが設けられている。
【0030】
そして図1に示すように吐出部材4は、周壁3bを取り囲んで液密に当接するとともに、周壁3bを上下動可能に摺動させる外周壁4aを備えている。なお外周壁4aには、指掛け部3b1を逃がす切り欠き4a1が設けられている。また外周壁4aの下端部には、係合壁2hの爪部に係合する係合爪4a2が設けられている。そして吐出部材4は、天壁3aに対向する造形壁4bを備えていて、外周壁4aの上端部は造形壁4bと一体に連結している。また造形壁4bには、これを貫通する複数の成形孔4c、4dが設けられている。ここで成形孔4cは、本実施形態では、図1の平面図に示すように造形壁4bの中央部に設けられている。なお成形孔4cは、個々の形状は円弧状になるものであるが、一つ一つの向きを変えつつ、半径の異なるものを複数寄せ集めていて、複数の成形孔4cがまとまることによって、全体として花のような形態で内容物を吐出することができる。また成形孔4dは、図1の平面図に示すように造形壁4bの四隅に設けられている。そして成形孔4dも、個々の形状は円弧状になるものであるが、各隅部において複数がまとまることによって、花のような形態で内容物を吐出することができる。また造形壁4bの下面には、円柱状をなすとともに開口3c、3dに挿入されるシール部4eが設けられている。
【0031】
弾性体5は、本実施形態では図示したようなコイルバネを使用している。弾性体5は、頂壁2dと天壁3aとの間に設けられていて、保持部材2に対してベース部材3を上方に向けて付勢している。また弾性体5は、下部は下部ガイド壁2gの内側に配置され、上部は上部ガイド壁3hの外側に配置されていて、保持部材2とベース部材3との間で位置決めされている。
【0032】
このような構成になる吐出ヘッド1から内容物を吐出させるには、指掛け部3b1を指で押圧して、図2に示すようにベース部材3を下方に向けて移動させる。ここで、ベース部材3の周壁3bは、上部環状壁2fを取り囲むとともに上部環状壁2fに対して摺動可能に設けられている。また周壁3bは、これを取り囲む外周壁4aに対しても摺動可能に設けられている。更に中央壁3gは、隣り合う内側側壁2eの間に挿入されている。このためベース部材3は、保持部材2に対して傾くことなく水平状態を保ったままスムーズに下方に移動する。ここで、下方に移動した天壁3aと造形壁4bの間には、開口3c、3dと連通するとともに成形孔4c、4dとも連通する内部空間Nが区画形成される。そして、ベース部材3が下方に移動するに伴ってステム101c、102cが押し下げられるため、吐出容器体101、102の内容物は、ステム101c、102cからそれぞれ吐出される。そしてステム101cから吐出された内容物は、送給筒3eを経由して開口3cから内部空間Nに導入される。またステム102cから吐出された内容物は、送給筒3fを経由して開口3dから内部空間Nに導入される。このため、ステム101cからの内容物と、ステム102cからの内容物は、内部空間Nで合流して成形孔4c、4dから吐出される。なお、2種類の内容物の混ざり具合は、内部空間Nの大きさや成形孔4c、4dの位置などによって変えることができる。本実施形態においては、開口3cに近い成形孔4c、4dからはステム101cからの内容物が吐出され、また開口3dに近い成形孔4c、4dからはステム102cからの内容物が吐出され、更に開口3cと開口3dの間(造形壁4bの中央部)からは、ステム101cとステム102cの内容物が混合した状態(例えば、2つの色の内容物が互いに練り込まれてマーブル柄のようになる状態、1色目の色から2色目の色に徐々に変わっていくグラデーションのようになる状態、2つの色の内容物が略完全に混ざり合って別の色になる状態など)で吐出される。従って、開口3cに近い成形孔4dから吐出される造形要素が組み合わさって形成される、花の如き造形物は、ステム101cからの内容物の色となる。また開口3dに近い成形孔4dから吐出される造形要素で形成される花の如き造形物は、ステム102cからの内容物の色となる。そして成形孔4cから吐出される造形要素が組み合わさって形成される花の如き造形物は、例えば、開口3cに近い側の端部から開口3dに近い側の端部に向かって、ステム101cの内容物の色からステム102cの内容物の色に徐々に変わることになる。このため、造形物の形状のみならず、色によっても目を惹くことができ、高い装飾性を得ることができる。
【0033】
そして指掛け部3b1への押圧を解除すると、弾性体5の弾性力によって、ベース部材3は図1の状態に復帰する。この状態においては、天壁3aが造形壁4bに当接するため、内部空間Nに収容された内容物は、成形孔4c、4dから吐出されて天壁3aと造形壁4bの間には殆ど残らない。このため次に内容物を吐出する際は、吐出容器体101、102から新たな内容物が内部空間Nに導入される。またこの状態において、開口3c、3dにはシール部4eが挿入されるため、内容物が開口3c、3dに残ったままになることがない。このため、例えば長期間使用しなくても、内容物が開口3c、3dで固化する不具合が有効に防止される。
【0034】
次に、本発明に従う吐出ヘッドの第二実施形態について、図3図4を参照しながら説明する。本実施形態の吐出ヘッド11は、エアゾール式の吐出容器200に取り付けて使用されるものである。また吐出ヘッド11は、保持部材12、ベース部材13、吐出部材14、弾性体15で構成されている。
【0035】
本実施形態の吐出容器200は、エアゾール式の一つの吐出容器体201で構成されるものである。吐出容器体201は、有底円筒状となる金属製の容器本体201aの上端部に金属製のマウンティングカップ201bを巻き締めて固着させてものである。またマウンティングカップ201bには、円筒状をなし、上方へ向けて付勢されている2つのステム201c、201dが設けられている。そして吐出容器体201の内部には、2種類の内容物が高圧ガスとともに別々に収容されていて、ステム201c、201dを下方へ向けて押圧すると、それぞれのステム201c、201dから2種類の内容物を別々に吐出することができる。なお、本実施形態においてもステム201c、201dから吐出される内容物は、互いに異なる色であって、吐出後は泡状になるものである。
【0036】
保持部材12は、マウンティングカップ201bを取り囲む環状壁12aを備えていて、環状壁12aの下部内周面には、爪部12bが設けられている。これにより保持部材12は、マウンティングカップ201bに抜け止め保持される。環状壁12aの上端部は、基壁12cと連結している。ここで基壁12cは、径方向内側に延在しつつ環状壁12aの上端部に連結する部位からマウンティングカップ201bの上部を取り囲むように上方に向けて延在し、その後、2つのステム201c、201dを露出させるようにしてマウンティングカップ201bの上面に沿って延在する形態をなすものである。また基壁12cの外縁部には、上下方向に延在するとともに、上部内周面に爪部を有する係合壁12dが設けられている。
【0037】
ベース部材13は、保持部材12の上方において水平方向に延在する天壁13aを備えている。天壁13aの外縁部には、下方へ向けて延在する周壁13bが設けられていて、周壁13bの下端部には、径方向外側に向けて延在し、内容物を吐出する際に指で押圧する部位となる指掛け部13b1が設けられている。また天壁13aは、2つのステム201c、201dの上方に位置する2つの開口13c、13dと、円筒状をなし、開口13c、13dとともにステム201c、201dをそれぞれ取り囲むように形成される送給筒13e、13fを備えている。また、天壁13aの下面には、送給筒13e、13fをまとめて取り囲む円環状の上部ガイド壁13gが設けられている。
【0038】
吐出部材14は、周壁13bを取り囲んで液密に当接するとともに、周壁13bを上下動可能に摺動させる外周壁14aを備えている。なお外周壁14aには、指掛け部13b1を逃がす切り欠き14a1が設けられていて、その下端部には、係合壁12dの爪部に係合する係合爪14a2が設けられている。そして吐出部材14は、外周壁14aの上端部に一体に連結するとともに天壁13aに対向する造形壁14bを備えていて、造形壁14bの中央部には、前述の成形孔4cと同様の形状及び配置になる成形孔14cが設けられている。また造形壁14bの下面には、円柱状をなすとともに開口13c、13dに挿入されるシール部14eが設けられている。
【0039】
弾性体15は、基壁12cと天壁13aとの間であって、上部ガイド壁13gの外側に配置されていて、保持部材12に対してベース部材13を上方に向けて付勢している。
【0040】
本実施形態の吐出ヘッド11から内容物を吐出させる場合も、上述した吐出ヘッド1と同様に、指掛け部13b1を指で押圧して、図4に示すようにベース部材13を下方に向けて移動させる。ここで、ベース部材13の周壁13bは、外周壁14aに対して摺動可能に設けられている。このためベース部材13は、水平状態を保ったままスムーズに下方に移動する。そして、ベース部材13によってステム201c、201dが押し下げられるため、吐出容器体201に収容された2種類の内容物は、ステム201c、201dからそれぞれ吐出される。そしてステム201cから吐出された内容物は、送給筒13eを経由して開口13cから内部空間Nに導入され、またステム201dから吐出された内容物は、送給筒13fを経由して開口13dから内部空間Nに導入される。そして内部空間Nに導入された2種類の内容物は、開口13cに近い成形孔14cからはステム201cの内容物が吐出され、また開口13dに近い成形孔14cからはステム201dの内容物が吐出され、更に開口13cと開口13dの間の成形孔14cからは、ステム201cとステム201dの内容物が混ざり合った状態で吐出される。従って、成形孔14cから吐出される造形要素が組み合わさって形成される花の如き造形物は、開口13cに近い側の端部はステム201cの内容物の色となり、開口13dに近い側の端部はステム201dの内容物の色となり、中央部はステム201cとステム201dが混ざり合った色となる。このように本実施形態においても、造形物の色を変えることができるため、高い装飾性を得ることができる。
【0041】
そして本実施形態においても、指掛け部13b1への押圧を解除すると、弾性体15の弾性力によって、ベース部材13は図3の状態に自動的に復帰させることができる。
【0042】
以上、本発明について具体的な実施形態を示しながら説明したが、本発明に従う吐出ヘッドは、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば上述した吐出容器は、1つのステムを有する吐出容器体を2つ並べたものや、2つのステムを1つの吐出容器体に設けたものであって、これに対応させるべく、吐出ヘッドも2つの送給筒を有するように構成したが、1つのステムを有する吐出容器体を3つ以上並べたものや、3つ以上のステムを1つの吐出容器体に設けたものに使用することも可能であって、その場合は吐出ヘッドの送給筒もステムの数に対応させて3つ以上とすればよい。また上述した実施形態では、エアゾール式の吐出容器を示したが、他の手段で内容物を吐出させる容器(例えばポンプなど)を使用してもよい。また成形孔の形状や数、配置等は所望する造形物にあわせて適宜変更すればよく、これらを適宜選択することによって、例えば造形物における内容物が混合する部分の位置やその部分が占める割合などを変えることもできる。また吐出容器に収容する内容物も任意に変更してよく、例えば色は同色であっても吐出後の質感が互いに相違するような内容物を使用してもよい。また内容物は、泡状に吐出されるものに限られず、ある程度保形性が得られるもの(例えば、ある程度粘性があるものや練り状のものなど)であればよい。
【符号の説明】
【0043】
1:吐出ヘッド
2:保持部材
2a:環状壁
2b:爪部
2c:内側壁
2d:頂壁
2e:内側側壁
2f:上部環状壁
2g:下部ガイド壁
2h:係合壁
3:ベース部材
3a:天壁
3b:周壁
3b1:指掛け部
3c:開口
3d:開口
3e:送給筒
3f:送給筒
3g:中央壁
3h:上部ガイド壁
4:吐出部材
4a:外周壁
4a1:切り欠き
4a2:係合爪
4b:造形壁
4c、4d:成形孔
4e:シール部
5:弾性体
11:吐出ヘッド
12:保持部材
12a:環状壁
12b:爪部
12c:基壁
12d:係合壁
13:ベース部材
13a:天壁
13b:周壁
13b1:指掛け部
13c、13d:開口
13e、13f:送給筒
13g:上部ガイド壁
14:吐出部材
14a:外周壁
14a1:切り欠き
14a2:係合爪
14b:造形壁
14c:成形孔
14e:シール部
15:弾性体
100:吐出容器
101、102:吐出容器体
101a、102a:容器本体
101b、102b:マウンティングカップ
101c、102c:ステム
200:吐出容器
201:吐出容器体
201a:容器本体
201b:マウンティングカップ
201c、201d:ステム
N:内部空間
図1
図2
図3
図4