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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
A61H33/00 310N
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018087366
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019188032
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 龍雄
(72)【発明者】
【氏名】阿尾 泰宏
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-185332(JP,U)
【文献】特開2017-080166(JP,A)
【文献】特開2016-112415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給する流体供給源と、
流体の流入排出によって往復駆動する駆動部を有する駆動機構と、
前記駆動機構により下側と上側との間を昇降移動する昇降部材と、
前記流体供給源から前記駆動機構へと流体を搬送する供給路と、
前記流体供給源から供給された流体を排出する排出路と、
弁体を有し、流体を前記排出路に排出する排出弁と、
前記排出弁を操作する操作部と、
前記排出弁と前記操作部とを繋ぎ、前記操作部の操作によって移動する連結部材と、
前記昇降部材の移動を規制する規制機構と、
前記排出弁に前記連結部材を介して接続された被作動部と
を備えた昇降装置であって、
前記昇降部材は、前記駆動部に供給された過剰な流体を排出するために、前記昇降部材が所定の高さに到達したときに、前記被作動部と当接することにより、前記被作動部を作動させて前記排出弁から前記流体を排出する作動部を備え、
前記連結部材は前記規制機構と接続し、
前記規制機構は、
前記昇降部材の降下を規制する規制位置と前記昇降部材が下側から上側へと移動するのを許容する退避位置との間を移動する規制部材と、
前記連結部材の移動に応じて前記規制部材を移動させる補助部材とを有し、
前記連結部材は前記排出弁が開状態となる開弁位置と前記排出弁が閉状態となる閉弁位置との間を移動し、
前記昇降部材は、
上側から降下したときに、前記規制部材に対して降下方向に相対移動することで、前記規制位置に位置する前記規制部材と係合する被係合部と、下側から上昇するときに、前記規制部材に対して上昇方向に相対移動することで、前記規制部材を押圧して前記規制部材を前記退避位置へと移動させる押圧部とを有し、前記昇降部材の押圧または前記連結部材の移動によって前記規制部材が前記退避位置へ移動したときに前記規制部材による移動の規制が解除され
前記規制機構は、
前記規制部材が前記昇降部材の降下方向の移動を規制するように前記被係合部と係合した状態で、前記操作部が操作された際に、前記連結部材が前記規制部材に対して相対移動することを許容する移動許容機構を有する
昇降装置。
【請求項2】
前記移動許容機構は前記補助部材が弾性体であることにより構成された請求項に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体力が低下した高齢者、身体障害者等の、入浴に介護・支援等の手助けや補助が必要な入浴者にとって、浴槽外から浴槽内に入り、浴槽に浸かって、再び、浴槽外に出るといった入浴の動作は大きな負担となる。そのため、入浴の動作の負担を軽減するために、浴槽内で昇降する昇降装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この昇降装置は、リンク機構と駆動機構としてのケーブルを浴槽中で用いるために機械的であり、入浴の際の気分を損なうことも考えられる。そのため、水などの流体を用いた駆動機構によって、着座者が着座する座部が昇降する昇降装置を用いることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-049414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、流体を用いて座部を昇降させる駆動機構を用いた場合には、着座者が着座できるような着座高さで座部が停止する必要がある。座部が着座高さに到達して移動が停止した状態では、更にポンプ等の流体供給源によって流体が供給されると、流体が過剰に供給された状態となり、過剰な圧が生じてしまって、駆動機構が破損することも考えられる。
【0006】
流体の過剰な供給を防止するための排出弁を設けると、排出弁からの流体の排出によって圧が減少し、座部が着座高さからの落下を生じ、着座者に不安感を与えてしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は、流体を用いた昇降装置において、過剰な流体が供給された際に弁から流体を排出しても、昇降部材が所定の位置から移動しない昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の昇降装置は、流体を供給する流体供給源と、流体の流入排出によって往復駆動する駆動部を有する駆動機構と、前記駆動機構により下側と上側との間を昇降移動する昇降部材と、前記流体供給源から前記駆動機構へと流体を搬送する供給路と、前記流体供給源から供給された流体を排出する排出路と、弁体を有し、流体を前記排出路に排出する排出弁と、前記排出弁を操作する操作部と、前記排出弁と前記操作部とを繋ぎ、前記操作部の操作によって移動する連結部材と、前記昇降部材の移動を規制する規制機構と、を備えた昇降装置であって、前記連結部材は前記規制機構と接続し、前記規制機構は、前記昇降部材の降下を規制する規制位置と前記昇降部材が下側から上側へと移動するのを許容する退避位置との間を移動する規制部材と、前記連結部材の移動に応じて前記規制部材を移動させる補助部材とを有し、前記連結部材は前記排出弁が開状態となる開弁位置と前記排出弁が閉状態となる閉弁位置との間を移動し、前記昇降部材は、上側から降下したときに前記規制位置に位置する前記規制部材と係合する被係合部と、下側から上昇するときに前記規制部材を押圧して前記規制部材を前記退避位置へと移動させる押圧部とを有し、前記昇降部材の押圧または前記連結部材の移動によって前記規制部材が前記退避位置へ移動したときに前記規制部材による移動の規制が解除される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体を用いた昇降装置において、過剰な流体が供給された際に弁から流体を排出しても、昇降部材が所定の位置から移動をしない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の昇降装置の昇降部材が上昇した状態を示す斜視図である。
図2図1の昇降装置の昇降部材が下降した状態を示す斜視図である。
図3図1の昇降装置の昇降部材に設けられた押圧部が規制部材と当接した状態を示す概略図である。
図4図1の昇降装置の昇降部材に設けられた押圧部が規制部材を退避位置側に押圧している状態を示す概略図である。
図5図1の昇降装置の昇降部材に設けられた作動部が被作動部と当接した状態を示す概略図である。
図6図1の昇降装置の昇降部材に設けられた作動部が被作動部を作動させ、排出弁が開放した状態を示す概略図である。
図7図1の昇降装置の規制機構に設けられた操作部が操作され、規制部材が退避位置に移動して、排出弁が開放した状態を示す概略図である。
図8図1の昇降装置の昇降部材と規制部材とが係合した状態を示す概略図である。
図9図1の昇降装置の昇降部材と規制部材とが係合した状態において、操作部が操作され、補助部材が弾性変形した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の昇降装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の昇降装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1および図2に示されるように、本実施形態の昇降装置1は、流体を供給する流体供給源2と、流体の流入排出によって往復駆動する駆動部31を有する駆動機構3と、駆動機構3により下側と上側との間を昇降移動する昇降部材4とを備えている。また、昇降装置1は、流体供給源2から駆動機構3へと流体を搬送する供給路5と、流体供給源2から供給された流体を排出する排出路6と、流体を排出路6に排出する排出弁7(図3参照)とを備えている。
【0013】
昇降装置1は、昇降対象を昇降させる装置である。昇降装置1は、流体を駆動部31に流入することにより駆動機構3の駆動部31を一方の方向に駆動して昇降部材4を上昇させ、流体を駆動部31から排出することにより駆動機構3の駆動部31を他方の方向に駆動して昇降部材4を降下させる。本実施形態では、昇降装置1は、図1および図2に示されるように、浴槽Ba内で用いられる入浴支援用の昇降装置として示されている。しかし、昇降装置1の用途は、流体を用いて昇降対象を昇降させるものであれば特に限定されない。
【0014】
本実施形態では、昇降装置1は、浴槽Baの上縁Eに取り付けられる取り付け部Aを有している。取り付け部Aは、昇降装置1を浴槽Baに取り付けることができれば、その構造は特に限定されない。本実施形態では、取り付け部Aは、浴槽Baの上縁Eを跨いで、浴槽Baの内面と外面とを挟み込むようにして浴槽Baに取り付けられる。
【0015】
流体供給源2は、供給路5を介して駆動機構3に流体を供給する。流体供給源2は、駆動機構3に流体を供給することができれば、その構造は特に限定されない。たとえば、流体供給源2は、図1および図2に示されるように、水道の蛇口であってもよいし、流体を供給するポンプ、コンプレッサー等であってもよい。なお、流体供給源2から供給される流体は特に限定されず、水、水以外の液体、空気等の気体など、流動性のあるものであればよい。
【0016】
供給路5は、本実施形態では、一端が流体供給源2に着脱可能に接続され、他端が駆動機構3に着脱可能に接続されている。供給路5は、たとえば、ホース、パイプ、チューブ等の管状部材により構成される。本実施形態では、供給路5の他端は、流通ポート32を介して駆動機構3に接続されている。流体供給源2により供給される流体は、流通ポート32を介して駆動機構3に供給される。供給路5は、流体供給源2から駆動機構3に流体を供給する流路を有していれば、その形状、長さ、経路等は特に限定されない。
【0017】
駆動機構3から流体を排出する排出路6は、図1および図2に示されるように、駆動機構3に着脱可能に接続されている。排出路6は、たとえば、ホース、パイプ、チューブ等の管状部材により構成される。排出路6の一端は流通ポート32を介して駆動機構3に着脱可能に接続され、他端は浴槽Baの外部で開口している。駆動機構3から排出される流体は、排出路6の他端から浴槽Baの外部に排出される。なお、駆動機構3から排出される流体は、浴槽Baの内部に排出されてもよい。本実施形態では、排出路6は、図1および図2に示されるように、第1排出路61と第2排出路62とを有しており、第1排出路61と第2排出路62との間に後述する排出弁7(図3参照)が設けられている。第1排出路61は、本実施形態では、排出弁7の排出側に設けられた流路であり、第2排出路62は、排出弁7と駆動機構3との間に設けられた流路である。排出弁7が閉じている場合には、第2排出路62から第1排出路61までの流路は遮断され、第1排出路61から流体は排出されない。なお、排出路6は、駆動機構3に供給された流体を排出する流路を有していれば、その形状、長さ、経路等は特に限定されない。本実施形態では、図1および図2に示されるように、第1排出路61は、浴槽Baの上縁Eの形状に対応して略U字状に構成された掛止部61aにより、浴槽Baの上縁Eに掛止されている。このため、第1排出路61は、浴槽Baの上縁Eに掛止されるので、流体の排出時にバタつかずに安定する。
【0018】
駆動機構3は、図1および図2に示されるように、流体を駆動部31に流入排出することにより駆動部31を往復駆動し、昇降部材4を昇降移動させる。駆動部31の往復動作の方向は、昇降部材4が昇降移動することができれば特に限定されない。本実施形態では、図1および図2に示されるように、駆動部31の往復動作の方向は上下方向である。駆動部31の上下方向の往復動作は、昇降部材4が昇降移動できれば、鉛直方向に対して傾斜して行われてもよい。
【0019】
駆動部31は、本実施形態では、内部に流体を充填可能な充填部F(図3参照)を有している。駆動部31には、図1および図2に示されるように、供給路5および排出路6が接続され、供給路5から供給された流体により充填部Fが充填され、充填部Fに充填された流体は、排出路6から排出される。駆動部31は、充填部Fに流体が供給されることにより伸長状態となり(図1参照)、充填部Fから流体が排出されることにより収縮状態となる(図2参照)。これにより、駆動部31が往復動作を行って、昇降部材4を昇降させる。
【0020】
本実施形態では、駆動部31は、略筒状体であり、図1および図2に示されるように、駆動部31の軸X方向に伸縮可能な、山部と谷部とを交互に有する蛇腹部31aを有している。また、本実施形態では、駆動部31は、蛇腹部31aの軸X方向の一端側(下端側)に、一端側閉鎖部31bと、蛇腹部31aの軸X方向の他端側(上端側)に、他端側閉鎖部31cとを有している。蛇腹部31aの両端は、一端側閉鎖部31bおよび他端側閉鎖部31cにより閉鎖され、駆動部31の内部空間である充填部Fが画定される。本実施形態では、図1および図2に示されるように、充填部Fへの流体の充填および排出により、蛇腹部31aが伸縮し、駆動部31の軸X方向の長さが変動し、昇降部材4を昇降移動させる。なお、駆動部31は蛇腹部31aを有するものに限定されず、駆動部31の形状および構造は、流体の流入排出により、昇降部材4を昇降移動させるように寸法変化が生じるものであればよい。たとえば、駆動部31は、流体が環状に充填されるように、環状の充填部Fを有するものであってもよい。また、駆動部31の材料は、昇降部材4の昇降移動に支障のないものであれば特に限定されない。たとえば、駆動部31(蛇腹部31a)は、ゴムや弾性を有する合成樹脂などの弾性材料により構成することができる。
【0021】
充填部F内に流体を供給するために、本実施形態では、駆動機構3は、図1および図2に示されるように、供給路5および排出路6(第2排出路62)が接続される流通ポート32を有している。流通ポート32には、供給路5および排出路6が接続され、供給路5と充填部Fとを連通し、充填部Fと排出路6とを連通する。なお、流通ポート32は、本実施形態では、流体の供給および排出が可能な1つのポートとして例示されているが、流通ポート32はたとえば2つ以上(たとえば流体の流入用の流入ポートと、排出用の排出ポート)設けられても構わない。また、本実施形態では、流通ポート32は、一端側閉鎖部31bに設けられているが、他端側閉鎖部側31cに設けられてもよいし、他の部位に設けられてもよい。
【0022】
昇降部材4は、駆動部31の往復駆動により昇降移動する。昇降部材4は、駆動部31に直接または間接的に接続され、図1および図2に示されるように、駆動部31の往復動作に連動して下側と上側との間を昇降移動する。なお、「下」とは、昇降部材4の昇降移動範囲における最下点であり、本実施形態では、浴槽Baの上縁Eに対して浴槽Baの底部B側が「下側」となる。また、「上」とは、昇降部材4の昇降移動範囲における最上点であり、本実施形態では、浴槽Baの底部Bに対して浴槽Baの上縁E側が「上側」となる。昇降部材4は、駆動部31の往復動作により昇降移動するものであれば特にその形状や構造は限定されない。昇降部材4は駆動部31と一体に設けられていてもよいし、別体として設けられていてもよい。
【0023】
本実施形態では、昇降装置1は、昇降部材4の昇降方向に延びる案内部材Gを有し、昇降部材4は案内部材Gに沿って案内される。案内部材Gは、本実施形態では、昇降部材4の昇降方向に沿って延びるロッド状部材であるが、昇降部材4を昇降方向に案内することができれば、案内部材Gの形状は特に限定されない。たとえば、案内部材Gは、昇降部材4を案内可能な溝や突条を有する板状部材やレール状の部材などであってもよい。案内部材Gの材料は特に限定されないが、案内部材Gは、昇降部材4や昇降部材4に加わる荷重を支持するために所定の剛性を有していることが好ましい。また、案内部材Gの数は特に限定されないが、本実施形態では、図2に示されるように、一対の案内部材Gを有し、一対の案内部材Gに昇降部材4が案内される。
【0024】
本実施形態では、昇降部材4は、図1および図2に示されるように、昇降本体41と、案内部材Gに沿って摺動し、昇降本体41の昇降移動を補助する移動体42と、昇降本体41と移動体42とを接続する接続部43とを有している。
【0025】
昇降本体41は、駆動部31の往復動作により昇降する部材である。本実施形態では、昇降本体41は駆動部31の上端側に設けられ、具体的には駆動部31の他端側閉鎖部31cの上部に設けられている。本実施形態では、昇降本体41は、入浴者が着座する座部である。昇降本体41は、入浴者が容易に姿勢を変更できるように、他端側閉鎖部31cに対して回転するように構成されてもよい。なお、本実施形態では、昇降本体41に入浴者等の人が乗るように構成されているが、物が載せられてもよい。また、昇降本体41の形状および構造は特に限定されず、用途や荷重の大きさ等により適宜変更が可能である。
【0026】
移動体42は、案内部材Gに沿って摺動して、昇降本体41の昇降方向に沿った昇降移動を補助する。移動体42は、接続部43を介して昇降本体41に接続されている。移動体42は、駆動部31による昇降本体41の昇降移動に伴って、昇降本体41とともに昇降移動する。移動体42の詳細については後述するが、移動体42は、移動体42が案内される案内部材Gの形状および構造に応じた形状および構造とすることができる。本実施形態では、移動体42は、昇降方向に沿って延びるロッド状の案内部材Gを内側に挿通可能な略筒状に構成されている。
【0027】
接続部43は、本実施形態では、昇降本体41の移動に伴って移動体42が案内部材Gが延びる方向に沿って移動し、昇降本体41の案内部材Gに対する離間位置を規制する剛性を有している。これにより、昇降本体41は案内部材Gに対して、水平方向で所定の離間距離が維持された状態で昇降移動することができる。したがって、流体によって駆動される昇降本体41の昇降動作を安定させることができる。なお、接続部43は、昇降本体41と移動体42とを直接または間接的に接続することができればよく、その形状や構造は特に限定されない。本実施形態では、接続部43は、移動体42から浴槽Baの内面に対して略垂直方向に延びるアーム状の部材であり、他端側閉鎖部31cを介して昇降本体41に接続されている。
【0028】
また、本実施形態では、昇降部材4は、接続部43から上方向に延びる支持部材44を有している。本実施形態では、支持部材44は、図1および図2に示されるように、入浴者が入浴を開始する際の、昇降部材4に着座する時に背凭れとして機能する第1背凭れ部45、昇降部材4の昇降時や入浴中に入浴者により把持される持ち手46、および、昇降部材4の昇降時および入浴時に背凭れとして機能する第2背凭れ部47を支持する。本実施形態では、支持部材44は、昇降本体41を挟むように延びる一対の接続部43から上方向に向かって一対延びている。第1背凭れ部45は、一対の支持部材44を結ぶように水平方向に設けられている。持ち手46および第2背凭れ部47は、一対の支持部材44の上端から昇降装置1の取り付け部A側に水平方向に互いに略平行に設けられている。持ち手46および第2背凭れ部47は、支持部材44に対して回転可能に構成され、入浴中の入浴者の前後方向が開放するようにしても良い。
【0029】
昇降部材4は、駆動部31に流体を流入させることにより上昇し、駆動部31から流体を排出することにより降下する。昇降部材4を上昇させる際は排出弁7を閉鎖して駆動部31に流体を流入させる。昇降部材4を降下させる際は排出弁7を開放し、駆動部31から流体を排出する。本実施形態では、昇降装置1は、排出弁7を操作する操作部OP1を備えている。操作部OP1によって排出弁7が操作されると、駆動部31から流体が排出されて、昇降部材4が降下する。昇降装置1は、排出弁7と操作部OP1とを繋ぐ連結部材9を有し、操作部OP1の操作によって連結部材9が移動し、連結部材9を介して排出弁7が操作される。
【0030】
なお、本実施形態では、昇降装置1は、排出弁7、操作部OP1および連結部材9を備えた操作ユニットUを有している。操作ユニットUは操作を容易にするために案内部材Gの上端近傍に設けられている。操作ユニットUは、本実施形態では、ケーシング等の支持体C内に排出弁7および連結部材9を収容し、第1排出路61および第2排出路62が接続されている。
【0031】
操作部OP1は、排出弁7に接続された連結部材9に直接または間接的に接続され、操作部OP1が操作されると連結部材9が移動して、排出弁7が操作される。本実施形態では、操作部OP1は、操作ユニットUの支持体Cの外側に操作可能に突出している。操作部OP1の形状や構造は、連結部材9を移動させることができれば特に限定されない。本実施形態では、操作部OP1は、昇降部材4の昇降方向に沿って直線的に移動するように構成された操作レバーである。なお、操作部は、連結部材を所望の方向に移動させることができれば、回転動作により連結部材を移動させるように構成してもよい。また、操作部は、本実施形態では、手動により操作されるように構成されているが、電動で操作されるものであってもよい。
【0032】
連結部材9は、操作部OP1の操作によって移動して、排出弁7を操作する。連結部材9は、操作部OP1および排出弁7に直接または間接的に接続されている。操作部OP1が操作されると、連結部材9は排出弁7が開状態となる開弁位置と排出弁7が閉状態となる閉弁位置との間を移動し、排出弁7を開閉する。連結部材9は、本実施形態では、ロッド状の部材であるが、連結部材9の形状は、連結部材9の移動により排出弁7を開弁位置と閉弁位置に移動させることができれば特に限定されない。また、本実施形態では、連結部材9は昇降部材4の昇降方向に沿って直線的に移動するように構成されているが、連結部材9の移動は直線移動に限定されない。たとえば、連結部材は、操作部の直線運動によって回転移動してもよい。また、連結部材は、操作部の回転によって回転移動してもよいし、操作部の回転によって直線移動してもよい。
【0033】
排出弁7は、弁体Vを有し、排出路6の流路を閉鎖または開放する。排出弁7は、連結部材9に接続され、連結部材9の移動に伴って、排出路6の流路を閉鎖または開放する。排出弁7は排出路6を閉鎖または開放することができれば、その構造は特に限定されない。本実施形態では、排出弁7は、バネ等の付勢部材S1により弁体Vが排出路6の流路を閉鎖する方向に付勢されることにより、排出路6が閉鎖され、排出弁7が操作されることにより、排出路6の流路が開放されるように構成されている。
【0034】
具体的には、図3図9に示されるように、排出弁7は、支持体C内の連結部材9の下端側に、連結部材9の軸方向に沿って伸縮可能な中空の筒状部材71を備えている。筒状部材71は、第1排出路61および第2排出路62に接続され、第2排出路62から筒状部材71の内部に流体が流入可能であり、筒状部材71の内部に流入した流体が第1排出路61から排出される。また、排出弁7は、筒状部材71の内部に、筒状部材71よりも細径で、連結部材9の軸方向に沿って延びる管状部材72を備え、管状部材72を介して筒状部材71の内部と第2排出路62とを連通させている。筒状部材71は上端に連結部材9の移動方向に沿って伸縮する伸縮部71aを有している。本実施形態では、操作部OP1が操作されず、連結部材9が付勢部材S1によって閉弁位置に位置する際に、伸縮部71aは収縮状態であり、管状部材72の上端の開口が、閉鎖された筒状部材71の上面(弁体V)により閉鎖され、流体の排出を阻止している。また、連結部材9が操作部OP1により操作されて開弁位置に移動すると、伸縮部71aが伸長状態となり、筒状部材71の上面(弁体V)が管状部材72の上端から離れ、駆動部31の流体が、管状部材72の上端と筒状部材71の上面との間の隙間を通って、筒状部材71に設けられた排出口O1を介して第1排出路61に排出される。
【0035】
筒状部材71の伸縮部71aは、本実施形態では蛇腹状に設けられ、連結部材9が移動した際に伸縮しやすく、流体が流れる隙間の確保を容易にしている。また、筒状部材71の上端には、連結部材9の下端に設けられたフランジ部91が取り付けられ、付勢部材S1の下方への付勢力によって、フランジ部91および筒状部材71の上面が、管状部材72の上端の開口を密に閉鎖するように構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、昇降装置1は、昇降部材4が所定の高さ位置に到達したとき(図6参照)に、排出弁7から流体が排出されるように構成されている。本実施形態では、昇降装置1は、排出弁7に連結部材9を介して接続された被作動部OP2と、昇降部材4が所定の高さ位置に到達したときに、被作動部OP2を作動させて排出弁7から流体を排出する作動部42cとを有している。図6に示されるように、昇降部材4が所定の高さ位置に到達したときに、作動部42cは、被作動部OP2を作動することにより、排出弁7を開放し、第2排出路62の流体を第1排出路61へ移動させることで、流体が排出される。したがって、駆動部31に過剰な流体が供給されたときに流体が排出弁7から排出され、駆動部31が過剰な量の流体により、塑性変形したり破損したりすることが抑制される。なお、被作動部OP2が作動部42cにより作動される際の所定の高さは、特に限定されず、たとえば、駆動部31内部への流体の供給を停止すべき高さに設定でき、また、昇降本体41が予め設定された移動範囲の上限に到達した際に被作動部OP2を作動するように設定できる。この所定の高さ位置は、駆動部31の材質や大きさ、昇降部材4の移動範囲等に応じて適宜設定される。
【0037】
作動部42cは、昇降部材4の上昇により、被作動部OP2に当接し、被作動部OP2を作動させる。被作動部OP2は、作動部42cにより作動されて、排出弁7を開放するように構成されている。被作動部OP2は、昇降部材4の移動経路上に位置し、昇降部材4が所定の高さ位置に到達したときに、昇降部材4の作動部42cが当接する位置に設けられる。本実施形態では、案内部材Gの上端近傍に作動部42cが到達したときに作動部42cが被作動部OP2に当接するように被作動部OP2が配置されている。
【0038】
本実施形態では、被作動部OP2は、図3図9に示されるように、作動部42cにより作動される。被作動部OP2は、本実施形態では連結部材9に接続され、被作動部OP2が作動部42cにより作動した際に、連結部材9を開弁位置に移動させることにより、排出弁7を開放する。なお、本実施形態では、被作動部OP2は操作部OP1と一体に設けられているが、排出弁7を開放させることができれば、操作部OP1と別体として設けてもよい。
【0039】
被作動部OP2は、本実施形態では、昇降部材4の昇降方向に沿って移動するように構成されている。本実施形態では、被作動部OP2が作動部42cにより押圧され、上側に移動することにより、連結部材9も上側に移動して、排出弁7を開放している。なお、被作動部OP2は、所定の軸周りに回転動作することにより、連結部材9を開弁位置に移動させて排出弁7を開放してもよい。
【0040】
作動部42cは、被作動部OP2に当接して、被作動部OP2が作動する方向に押圧等の操作力を加えるように構成されている。作動部42cは、本実施形態では、昇降部材4の移動体42に設けられているが、被作動部OP2を作動させることができれば、昇降部材4の移動体42以外の位置(たとえば昇降本体41)に設けられていてもよい。移動体42に作動部42cが設けられている場合は、移動体42が案内部材Gに沿って移動するため、移動体42の被作動部OP2に対する位置ずれが生じにくく、作動部42cが被作動部OP2に当接しやすくなる。
【0041】
また、作動部42cは、被作動部OP2を作動させることができれば、その形状や構造は特に限定されない。本実施形態では、作動部42cは、図5および図6に示されるように、移動体42の軸心からの突出量が移動体42の上端側に向かって小さくなる傾斜面を有している。
【0042】
昇降装置1は、本実施形態では、図3図9に示されるように、昇降部材4を支持することにより昇降部材4の移動を規制する規制機構8を備えている。規制機構8は、昇降部材4の降下を規制する規制位置(図5図8等参照)と昇降部材4が下側から上側へと移動するのを許容する退避位置(図7参照)との間を移動する規制部材81を有している。本実施形態では、規制機構8は、上述した操作ユニットUに設けられている。
【0043】
規制部材81は、規制位置に位置するときに、昇降部材4が所定の位置よりも下側に降下することを規制する。規制位置に位置する規制部材81は、昇降部材4が降下しようとする際に、図8に示されるように、昇降部材4と上下方向で係合して、昇降部材4が降下することを規制する。本実施形態では、昇降部材4は、上側から降下したときに規制位置に位置する規制部材81と係合する被係合部42aを有し、規制部材81が被係合部42aと上下方向で係合することにより、昇降部材4が降下することが規制される。
【0044】
規制部材81の規制位置は、図5および図8に示されるように、規制部材81が昇降部材4の昇降移動経路上に位置し、昇降部材4の降下を妨げる位置である。また、規制部材81の退避位置は、図7に示されるように、規制部材81が昇降部材4の移動経路から外れ、昇降部材4の上昇および降下を妨げない位置である。後述するように、昇降部材4の押圧または連結部材9の移動によって規制部材81が退避位置へ移動したときに規制部材81による移動の規制が解除される。なお、規制位置にある規制部材81は、たとえば、図5に示されるように、昇降部材4が上昇した位置にあるときに、昇降部材4の被係合部42aに対して、下方かつ上下方向で近傍に位置するように設けられる。
【0045】
上述したように、本実施形態では、昇降装置1は、規制位置と退避位置との間を移動する規制部材81を有する規制機構8を備え、昇降部材4が上側から降下したときに、昇降部材4が規制位置に位置する規制部材81と係合する被係合部42aを有している。したがって、たとえば、供給路5、排出路6、駆動部31、排出弁7などが破損したり、供給路5や排出路6の接続部分が外れたりして駆動部31に供給された流体が漏れてしまった場合に、昇降部材4が上昇した位置から降下されることが抑制される。したがって、昇降部材4に人や物を載せる作業中に昇降部材4が降下することが抑制され、昇降装置1の使用時の安全性を高めることができる。
【0046】
規制部材81は、本実施形態では、図3図9に示されるように、支持体Cに移動可能に設けられている。支持体Cは、本実施形態では、図1および図2に示されるように、案内部材Gの側方に設けられた筐体として示されているが、支持体Cは、規制部材81を移動可能に支持することができれば、特にその形状や構造は限定されず、板状体等であってもよい。
【0047】
規制部材81は、規制位置と退避位置との間で移動可能であり、昇降部材4の被係合部42aと係合して昇降部材4の降下を規制することが可能であれば特にその形状は限定されない。たとえば、本実施形態では、規制部材81は、細長い板状に構成されているが、規制部材81に加わる荷重を支持することが可能なロッド状など、他の形状であってもよい。規制部材81は、規制位置にあるときに、昇降部材4の降下を規制するように、昇降部材4により規制部材81に加わる荷重を支持することができる剛性を有し、支持体Cに取り付けられている。
【0048】
また、本実施形態では、規制部材81は、支持体Cに対して回転軸Ax周りに回転するように取り付けられ、規制位置と退避位置との間を移動するように構成されている。しかし、規制部材81は、昇降部材4の降下を規制することができれば、たとえば、水平方向に直線的に進退することにより規制位置と退避位置との間を移動するものであってもよい。また、本実施形態では、規制部材81は、規制位置において、規制部材81が回転軸Axから先端に向って鉛直に延びた状態に対して、規制部材81の先端が昇降部材4に向かって近付き、規制部材81の先端が回転軸Axよりも上方に位置するように傾斜した状態で保持されるように構成されている。この場合、規制部材81が水平に保持される場合と比較して、昇降部材4から加わる荷重に対する耐性が高まり、規制部材81の変形を抑制することができる。また、規制部材81が支持体Cに対して回転軸Ax周りに回転するように構成されている場合、操作ユニットUの内部でロッド状の規制部材を水平方向に往復移動させて昇降部材4の降下を規制する構造と比較して、規制部材81の移動に必要な操作ユニットUの内部での水平方向のスペースを小さくすることができる。したがって、操作ユニットUの水平方向の幅を小さくすることができ、入浴中に操作ユニットUが邪魔になることが抑制される。
【0049】
本実施形態では、連結部材9は規制機構8と接続し、規制機構8は、連結部材9の移動に応じて規制部材81を規制位置と退避位置との間で移動させる。具体的には、規制機構8は、連結部材9の移動に応じて規制部材81を移動させる補助部材82を有している。本実施形態では、連結部材9が閉弁位置に位置する際は、補助部材82は規制部材81を規制位置に位置付け、連結部材9が開弁位置に位置する際には、補助部材82は規制部材81を退避位置に移動させる。補助部材82は、連結部材9に直接または間接的に接続され、連結部材9の移動に連動させて規制部材81を移動させるように規制部材81に直接または間接的に接続される。なお、本実施形態では、補助部材82は、一端が操作部OP1(または被作動部OP2)に取り付けられ、操作部OP1を介して連結部材9に接続され、他端が規制部材81に接続されている。しかし、補助部材82は、直接連結部材9に接続されていてもよいし、規制部材81に間接的に接続されていてもよい。本実施形態では、連結部材9が上側に移動すると規制部材81が退避位置に向かって移動するように補助部材82に引っ張られ、連結部材9が下側に移動すると規制部材81が規制位置に向かって押し出されるように、補助部材82の他端は、規制部材81の回転軸Axと規制部材81の先端との間の中間位置で規制部材81に接続されている。具体的には、補助部材82の一端の位置が規制部材81の回転軸Axの位置よりも昇降部材4に対して水平方向で遠くなるように、補助部材82の一端が配置されている。また、補助部材82の他端の位置が規制部材81の回転軸Axの位置よりも昇降部材4に対して水平方向で近くなるように、補助部材82の他端が配置されている。
【0050】
本実施形態では補助部材82はコイルバネ等の弾性体により構成されている。弾性体により構成された補助部材82は、規制部材81が昇降部材4と係合していない状態で、連結部材9の移動に応じて規制部材81を退避位置へ移動させることが可能な弾性力を有していればよい。なお、補助部材82は、連結部材9の移動に応じて規制部材81を移動させることができれば、その構造や形状は特に限定されない。たとえば、補助部材82は、連結部材9の移動を規制部材81の回転運動に変換する伝動機構などであってもよい。
【0051】
また、昇降部材4は、図3図9に示されるように、下側から上昇するときに規制部材81を押圧して規制部材81を退避位置へと移動させる押圧部42bを有している。押圧部42bは、図3および図4に示されるように、昇降部材4が上昇移動する際に、昇降部材4の上昇方向の移動により、規制部材81を押圧し、退避位置側へと移動させるように構成されている。押圧部42bおよび規制部材81の押圧部42bとの当接箇所は、押圧部42bが規制部材81に当接して上昇移動したときに、押圧部42bから規制部材81に加わる力が、規制部材81を退避位置側に移動させる方向の成分を有するように構成されている。なお、昇降部材4が上昇移動する際に規制部材81が押圧部42bにより退避位置側へ移動するものであれば、押圧部42bおよび規制部材81の構造は限定されない。押圧部42bは、本実施形態では、案内部材Gに沿って移動する移動体42に設けられているが、押圧部42bにより規制部材81を押圧して退避位置側へ移動させることができれば、たとえば、座面などの昇降本体41など、昇降部材4を構成する他の部材に設けられていてもよい。
【0052】
昇降部材4が押圧部42bを有していることにより、駆動部31に流体が供給されて昇降部材4が規制部材81の位置まで上昇したときに、図3および図4に示されるように、押圧部42bが規制部材81を押圧して退避位置側へと移動させる。退避位置側に規制部材81が移動することにより、昇降部材4が規制部材81よりも下側から上側へ上昇する場合に、規制部材81が規制位置に突出していても、昇降部材4は規制部材81により移動を妨げられることがなく、規制部材81を押し退けてそのまま上昇することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、規制部材81は、補助部材82により規制位置側に押圧されている。そのため、昇降部材4により退避位置側へと移動した規制部材81は、昇降部材4が規制部材81を乗り越えた後に、補助部材82により再び規制位置側へと戻る。そのため、流体の駆動部31への供給が可能な状態で、昇降部材4が規制部材81を乗り越える前後で、規制部材81が規制位置に位置付けられているため、昇降部材4の降下による事故などを防ぐことができる。また、昇降部材4が上昇した後に、規制部材81を規制位置に移動させる操作をその都度行う必要がなく、操作性が向上する。
【0054】
また、本実施形態では、規制機構8が連結部材9の移動に応じて規制部材81を移動させる補助部材82を有しているため、昇降部材4を降下させる際に、補助部材82により規制部材81が退避位置に移動し、昇降部材4を上昇させる際には、昇降部材4の押圧部42bが規制部材81を押圧して退避位置へと移動させるため、昇降部材4の昇降操作がシンプルとなる。
【0055】
本実施形態では、押圧部42bと被係合部42aとは、案内部材Gが延びる方向に沿って移動する移動体42に設けられている。規制部材81は、案内部材Gに対して所定の距離となるように配置された支持体Cに設けられ、規制位置にある規制部材81は案内部材Gに対して位置が定まっている。したがって、昇降部材4の上昇時および降下時に規制部材81と当接する移動体42の被係合部42aおよび押圧部42bの、規制部材81に対する位置が定まる。そのため、昇降部材4の降下時に被係合部42aの規制部材81との係合が確実となり、昇降部材4の上昇時に押圧部42bの規制部材81との当接が確実となり、規制部材81を退避位置側に円滑に移動させることができる。また、被係合部42aおよび押圧部42bの両方が移動体42に設けられているので、昇降部材4の構造がシンプルとなり、部品点数が少なくなる。
【0056】
また、本実施形態では、押圧部42bと作動部42cとの両方が、移動体42に設けられている。案内部材Gに案内され位置決めされた移動体42に押圧部42bおよび作動部42cが設けられていることにより、規制部材81の退避位置側への移動と、被作動部OP2の作動とを確実に行うことができる。なお、押圧部42bと作動部42cとは、本実施形態では、別々の箇所に設けられているが、移動体42の同一の部位としてもよい。
【0057】
また、規制部材81は、本実施形態では、先端側に昇降部材4の被係合部42aと係合する係合部81aを有している。本実施形態では、図8に示されるように、昇降部材4の被係合部42aと、係合部81aとは、昇降部材4が規制部材81に支持されているときに、規制部材81が規制位置から退避位置へ移動することを抑制するように係合する。これにより、たとえば、供給路5、排出路6、駆動部31、排出弁7などが破損したり、供給路5や排出路6の接続部分が外れたりして駆動部31に供給された流体が漏れてしまった場合など、規制部材81が規制位置になければ昇降部材4が降下してしまう状態において、規制部材81が退避位置に移動することが抑制される。したがって、上述したような駆動部31に供給された流体が漏れてしまった場合のような状態で、操作部OP1の操作により規制部材81が退避位置に移動して昇降部材4が降下してしまうことを抑制することができる。
【0058】
本実施形態では、被係合部42aは筒状の移動体42から支持体Cに向かって突出した突出部の下端に設けられた凹部である。しかし、被係合部42aは、規制部材81が規制位置から退避位置へ移動することを抑制するように係合することができれば、被係合部42aの形状や構造は特に限定されない。
【0059】
また、本実施形態では、規制機構8は、規制部材81が昇降部材4の移動を規制した状態で、連結部材9が規制部材81に対して相対移動を許容する移動許容機構Mを有している。この場合、操作部OP1の操作によって連結部材9が規制部材81に対して相対移動し、規制部材81が昇降部材4の移動を規制した状態が保たれる。より具体的には、規制部材81が昇降部材4を支持している際に、連結部材9のみが規制部材81に対して相対移動するため、規制部材81が退避位置に移動しにくくなる。そのため、たとえば、規制部材81が被係合部42aと係合している場合において、使用者が操作部OP1を操作したとしても、規制部材81は昇降部材4の移動を規制した状態を保つことができる。したがって、駆動部31に供給された流体が漏れてしまった場合など、規制部材81が昇降部材4の降下などを規制する必要がある状態において、規制部材81が退避位置に移動することを抑制し、昇降部材4が降下してしまうことを抑制することができる。また、操作部OP1を操作しても、連結部材9が規制部材81に対して相対的に移動し、規制部材81の移動は抑制されている。したがって、規制部材81が被係合部42aと係合している状態で無理に操作部OP1が操作されて、規制部材81や規制部材81と接続された他の部材などが破損することが抑制される。
【0060】
なお、本実施形態では、移動許容機構Mは補助部材82が弾性体であることにより構成されている。補助部材82がコイルバネ等の弾性体により構成されている場合、操作部OP1が操作されると、弾性体である補助部材82が伸長して規制部材81に加わる力を緩和する。これにより、規制部材81による昇降部材4の移動の規制が解除されにくくなるとともに、規制部材81や規制部材81に接続された他の部材の破損を抑制することができる。
【0061】
つぎに、図3図9を参照し、本実施形態の昇降装置1の使用方法の一例について説明する。なお、本発明の昇降装置は、以下の使用方法に限定されるものではない。
【0062】
まず、図2に示されるように、駆動部31が収縮した状態の昇降装置1を浴槽Baに設置する。本実施形態では、取り付け部Aを浴槽Baの上縁Eに取り付けることにより、昇降装置1が浴槽Baに取り付けられている。このとき、規制部材81は規制位置に位置し、操作部OP1が操作されておらず、被作動部OP2は作動しておらず、排出弁7は閉鎖した状態である。
【0063】
流体供給源である蛇口2を操作して水を供給すると、水は供給路5、流通ポート32を経由して駆動部31の充填部Fに供給される。充填部Fに水が供給されると、水量に応じて駆動部31の蛇腹部31aが伸長し、蛇腹部31aの伸長に伴い、昇降本体41が上昇する。昇降本体41が上昇すると、昇降本体41に接続部43を介して接続された移動体42が案内部材Gに沿って上昇する。
【0064】
移動体42が案内部材Gに沿って上昇していき、入浴者が着座する着座高さの手前で、移動体42の押圧部42bは、図3に示されるように、規制位置に突出した状態の規制部材81の下面と接触する。この状態からさらに昇降本体41および移動体42が上昇すると、押圧部42bも上側に移動することにより、規制位置に位置する規制部材81は、図4に示されるように、押圧部42bにより回転軸Axを中心として退避位置に向かって押し出されるように回転する。
【0065】
昇降本体41がさらに上昇し、押圧部42bが上下方向で規制部材81を乗り越えると、退避位置側に移動した規制部材81は、補助部材82により、再度規制位置に押し戻される。昇降本体41がさらに上昇すると、図5に示されるように、移動体42の作動部42cが被作動部OP2の先端部に当接する。昇降本体41はこの時点で、入浴者が着座できる所定の高さ位置まで到達するが、蛇口2からの水の供給を停止しない場合、駆動部31の蛇腹部31aはさらに伸長しようとする。このとき、蛇腹部31aの伸長に伴い昇降本体41および移動体42はさらに上昇し、図6に示されるように、移動体42の作動部42cが被作動部OP2を押し上げ、被作動部OP2は移動体42とともに上側に移動する。被作動部OP2が上側に移動すると、被作動部OP2と接続された連結部材9が、バネ(付勢部材)S1の付勢力に抗して上側に引き上げられ、筒状部材71の内部の管状部材72の上端と筒状部材71の上面(弁体V)との間に隙間が生じる。これにより、排出弁7が開放し、駆動部31の充填部Fの水が、第2排出路62、および管状部材72を介して筒状部材71の内部で管状部材72の外側となる排出室CH内に流れ込み、排出室CHから排出口O1を経由して第1排出路61へと排出される。したがって、駆動部31に過剰な水が供給されることが抑制され、駆動部31の蛇腹部31aや、駆動部31と供給路5や排出路6との接合部などの変形や破損を抑制することができる。また、被作動部OP2が押し上げられることにより排出弁7が開放して、昇降本体41を所定の着座高さの範囲に位置させることができる。
【0066】
その後、蛇口2からの水の供給を停止すると、昇降本体41は所定の着座高さ(図5に示す位置または図5図8との間の高さ)で停止して、入浴者を昇降本体41に乗せる準備が完了する。入浴者を昇降本体41に乗せると、通常は、入浴者の体重により、昇降本体41はわずかに降下するが、移動体42の被係合部42aは、規制部材81に対して上下方向に離間した位置で停止する。一方、たとえば、蛇腹部31a、供給路5、第2排出路62などに孔が開いていたり、排出弁7が破損している場合、供給路5や排出路6の接続部分が外れている場合、蛇腹部31aに供給される水の量が少ない場合、誤って操作部OP1を操作して排出弁7が開放している場合などには、昇降本体41は下方に向かって降下する可能性がある。本実施形態では、このような場合であっても、規制部材81が規制位置に位置しているため、図8に示されるように、昇降本体41が降下したとしても、規制部材81と移動体42の被係合部42aとが係合して、昇降本体41の降下が所定範囲に制限される。したがって、入浴者は安心して昇降本体41に乗ることができ、仮に入浴者が昇降本体41に乗った際に昇降本体41が降下する状態であったとしても、規制部材81の位置で昇降本体41が留まるため、昇降本体41の降下によって入浴者がバランスを崩したり、不安を覚えることが抑制される。
【0067】
入浴者が昇降本体41に乗り、入浴準備が完了すると、入浴者が浴槽Ba内のお湯に浸かるために、昇降本体41を降下させる。昇降本体41を降下させるためには、入浴者または入浴を補助する補助者が、操作部OP1を操作する。図7に示されるように、操作部OP1を操作すると、連結部材9が上方に移動し、補助部材82によって操作部OP1を介して連結部材9に接続された規制部材81が連結部材9と連動して退避位置に移動する。これにより、昇降本体41が降下するときに、移動体42の被係合部42aが通る移動経路から規制部材81が外れる。本実施形態では、操作部OP1が操作されると、コイルバネである補助部材82によって規制部材81が退避位置に向かって引っ張られることにより規制部材81が退避位置に移動する。補助部材82は、連結部材9に直接または間接的に接続して、規制部材81を連結部材9の移動に連動させて移動させるので、規制部材81が退避位置に位置する状態で、移動体42を、規制部材81と接触することなしに、規制部材81が存在する高さ位置を通過させることができる。しかも、補助部材82は、弾性を有するために、規制部材81と移動体42が係合した状態では、連結部材9が上方に移動することを許容するために、規制部材81との係合により昇降本体41の降下を抑制した状態で、排出弁7からの液体の排出を許容することができる。
【0068】
操作部OP1が上側に操作されると、連結部材9がバネS1の付勢力に抗して弁体Vを上側に移動させ、管状部材72の上端と弁体Vとの間に隙間が生じる。これにより、駆動部31の充填部Fの水は、昇降本体41側からの入浴者の体重による圧力により、第2排出路62を経由して開放した管状部材72の上端と弁体Vとの間の隙間を通過し、排出室CHから排出口O1を経由して第1排出路61に向かって排出され、昇降本体41が降下する。このように、操作部OP1の操作により、規制部材81の退避位置への移動と、排出弁7の操作の両方を行うことができ、昇降本体41の降下動作が非常に簡単に行うことができる。
【0069】
なお、たとえば、入浴者を昇降本体41に乗せる過程などにおいて、上述のように、駆動部31に供給された流体が漏れて昇降本体41が規制部材81に支持されて降下を規制されているときに、規制部材81が退避位置に移動してしまうと、昇降本体41が入浴者が昇降本体41に乗る前に降下してしまう。本実施形態では、昇降本体41が所定の量の降下をすると、規制部材81の係合部81aと移動体42の被係合部42aとが、規制部材81の退避位置側への移動が抑制されるように係合する。この場合、規制部材81が退避位置に移動することが抑制されるので、規制部材81が規制位置に留まり、昇降本体41の降下を防ぐことができる。また、本実施形態では、補助部材82がコイルバネ等の弾性体であることにより、操作部OP1が操作されたとしても、補助部材82が弾性変形して伸長することにより、操作部OP1による規制部材81を退避位置側に移動させようとする力は、補助部材82の変形により逃がされる。したがって、操作部OP1が強い操作力で操作されても、補助部材82が弾性変形して、操作部OP1に加わる操作力が規制部材81に伝わりにくくなる。そのため、係合部81aと被係合部42aとの係合が解除されにくくなり、規制部材81の退避位置側への移動を抑制し、昇降本体41が急激に降下することが抑制される。
【0070】
入浴者の入浴が完了すると、操作部OP1を操作して、排出弁7を閉鎖した後、蛇口2を操作することにより、再び駆動部31の充填部Fに水を充填し、昇降本体41を上昇させて、入浴者を昇降本体41から下ろす。このときにおいても、規制部材81は規制位置に位置しているため、昇降本体41の降下が所定範囲に制限され、入浴者は安心して昇降本体41から下りることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 昇降装置
2 流体供給源
3 駆動機構
31 駆動部
31a 蛇腹部
31b 一端側閉鎖部
31c 他端側閉鎖部
32 流通ポート
4 昇降部材
41 昇降本体
42 移動体
42a 被係合部
42b 押圧部
42c 作動部
43 接続部
44 支持部材
45 第1背凭れ部
46 持ち手
47 第2背凭れ部
5 供給路
6 排出路
61 第1排出路
61a 掛止部
62 第2排出路
7 排出弁
71 筒状部材
71a 伸縮部
72 管状部材
8 規制機構
81 規制部材
81a 係合部
82 補助部材
9 連結部材
91 フランジ部
A 取り付け部
Ax 回転軸
B 浴槽の底部
Ba 浴槽
C 支持体
CH 排出室
E 浴槽の上縁
F 充填部
G 案内部材
M 移動許容機構
O1 排出口
OP1 操作部
OP2 被作動部
S1 付勢部材(バネ)
U 操作ユニット
V 弁体
X 駆動部の軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9