(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】積込機械の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20220810BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220810BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F3/43 M
E02F9/22 K
E02F9/20 N
(21)【出願番号】P 2018087703
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西郷 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089389(JP,A)
【文献】特開平09-256407(JP,A)
【文献】特開平10-212740(JP,A)
【文献】特開2017-044027(JP,A)
【文献】特開2018-003515(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111205(WO,A1)
【文献】特開2014-122654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/22
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械を制御する制御装置であって、
前記バケットをオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作の開始指示に基づいて、前記バケットを積込点へ移動させるための作業機操作信号と目標旋回速度に係る旋回操作信号とを生成する移動処理部と、
前記旋回体の旋回中に、
前記作業機の高さが積込対象より高い位置に到達するまでの時間と、前記作業機の上方からの平面位置が前記積込対象に干渉するまでの旋回角度とに基づいて、前記作業機が積込対象に干渉しないように前記目標旋回速度を変更する目標速度変更部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記旋回体の旋回中に、前記旋回操作信号によって前記作業機が前記積込対象に干渉することになるか否かを判定する干渉判定部を備え、
前記目標速度変更部は、前記作業機が前記積込対象に干渉することになると判定した場合に、前記目標旋回速度を変更する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記旋回体が旋回しているときの前記作業機の速度を推定する作業機速度推定部を備え、
前記干渉判定部は、推定された前記作業機の速度に基づいて、前記作業機が前記積込対象に干渉することになるか否かを判定する
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、作動油を吐出するポンプと、
前記作動油によって前記旋回体を旋回させる旋回モータと
、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械を制御する制御装置であって、
前記バケットをオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作の開始指示に基づいて、前記バケットを積込点へ移動させるための作業機操作信号と目標旋回速度に係る旋回操作信号とを生成する移動処理部と、
前記ポンプの吐出流量から前記旋回モータに流れる作動油の流量を減算した流量に基づいて、前記旋回体が旋回しているときの前記作業機の速度を推定する
作業機速度推定部と、
前記旋回体の旋回中に、推定された前記作業機の速度に基づいて、前記旋回操作信号によって前記作業機が積込対象に干渉することになるか否かを判定する干渉判定部と、
前記旋回体の旋回中に、前記作業機が前記積込対象に干渉することになると判定した場合に、前記作業機が積込対象に干渉しないように前記目標旋回速度を変更する目標速度変更部と
を備える制御装置。
【請求項5】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、
前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機と、
前記作業機を作動させるアクチュエータと、
前記旋回体を旋回させる旋回モータと、
前記アクチュエータに流れる作動油の流量を制御する作業機側流量制御弁と、
前記旋回モータに流れる作動油の流量を制御する旋回側流量制御弁と、
前記作業機側流量制御弁にのみ接続される第1ポンプと
前記旋回側流量制御弁および作業機側流量制御弁に接続される第2ポンプと、
を備える積込機械を制御する制御装置であって、
前記バケットをオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作の開始指示に基づいて、前記バケットを積込点へ移動させるための作業機操作信号と目標旋回速度に係る旋回操作信号とを生成する移動処理部と、
前記第1ポンプの吐出流量
から前記旋回モータに流れる作動油の流量を減算した流量に基づいて、前記旋回体が旋回しているときの前記作業機の速度を推定する
作業機速度推定部と、
前記旋回体の旋回中に、推定された前記作業機の速度に基づいて、前記旋回操作信号によって前記作業機が積込対象に干渉することになるか否かを判定する干渉判定部と、
前記旋回体の旋回中に、前記作業機が前記積込対象に干渉することになると判定した場合に、前記作業機が積込対象に干渉しないように前記目標旋回速度を変更する目標速度変更部と
を備える制御装置。
【請求項6】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
前記バケットをオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作の開始指示に基づいて、前記バケットを積込点へ移動させるための作業機操作信号と目標旋回速度に係る旋回操作信号とを生成するステップと、
前記旋回体の旋回中に、
前記作業機の高さが積込対象より高い位置に到達するまでの時間と、前記作業機の上方からの平面位置が前記積込対象に干渉するまでの旋回角度とに基づいて、前記作業機が積込対象に干渉しないように前記目標旋回速度を変更するステップと
を備える積込機械の制御方法。
【請求項7】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、作動油を吐出するポンプと、前記作動油によって前記旋回体を旋回させる旋回モータと、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
前記バケットをオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作の開始指示に基づいて、前記バケットを積込点へ移動させるための作業機操作信号と目標旋回速度に係る旋回操作信号とを生成するステップと、
前記ポンプの吐出流量から前記旋回モータに流れる作動油の流量を減算した流量に基づいて、前記旋回体が旋回しているときの前記作業機の速度を推定するステップと、
前記旋回体の旋回中に、推定された前記作業機の速度に基づいて、前記旋回操作信号によって前記作業機が積込対象に干渉することになるか否かを判定するステップと、
前記旋回体の旋回中に、前記作業機が前記積込対象に干渉することになると判定した場合に、前記作業機が積込対象に干渉しないように前記目標旋回速度を変更するステップと
を備える制御方法。
【請求項8】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、
前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機と、
前記作業機を作動させるアクチュエータと、
前記旋回体を旋回させる旋回モータと、
前記アクチュエータに流れる作動油の流量を制御する作業機側流量制御弁と、
前記旋回モータに流れる作動油の流量を制御する旋回側流量制御弁と、
前記作業機側流量制御弁にのみ接続される第1ポンプと
前記旋回側流量制御弁および作業機側流量制御弁に接続される第2ポンプと、
を備える積込機械の制御装置であって、
前記バケットをオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作の開始指示に基づいて、前記バケットを積込点へ移動させるための作業機操作信号と目標旋回速度に係る旋回操作信号とを生成するステップと、
前記第1ポンプの吐出流量から前記旋回モータに流れる作動油の流量を減算した流量に基づいて、前記旋回体が旋回しているときの前記作業機の速度を推定するステップと、
前記旋回体の旋回中に、推定された前記作業機の速度に基づいて、前記旋回操作信号によって前記作業機が積込対象に干渉することになるか否かを判定するステップと、
前記旋回体の旋回中に、前記作業機が前記積込対象に干渉することになると判定した場合に、前記作業機が積込対象に干渉しないように前記目標旋回速度を変更するステップと
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積込機械の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積込機械の自動積込制御に関する技術が開示されている。自動積込制御とは、制御装置が積込機械のオペレータ等から積込点の指定を受け付け、制御装置が旋回体および作業機の動作を制御することで、バケットを積込点へ移動させる制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積込機械の自動積込制御中において、作業機の上昇速度が想定速度より遅い場合、または旋回体の旋回速度が想定速度より速い場合、バケットと積込対象とが干渉する可能性がある。
本発明の目的は、自動積込における旋回中にバケットと積込対象とが干渉しないように旋回を制御する積込機械の制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、制御装置は、旋回中心回りに旋回する旋回体と、前記旋回体に取り付けられバケットを有する作業機とを備える積込機械を制御する制御装置であって、前記バケットをオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作の開始指示に基づいて、前記バケットを積込点へ移動させるための作業機操作信号と目標旋回速度に係る旋回操作信号とを生成する移動処理部と、前記旋回体の旋回中に、前記作業機が積込対象に干渉しないように前記目標旋回速度を変更する目標速度変更部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、積込機械の制御装置は、自動積込における旋回中にバケットと積込対象とが干渉しないように旋回を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る積込機械の油圧装置の構成を示す概略図である。
【
図3】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る自動積込制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態に係る自動積込制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】エンジンとポンプのマッチング関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
〈第1の実施形態〉
《積込機械の構成》
図1は、第1の実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
積込機械100は、土砂を運搬車両などへ積込を行う積込機械である。第1の実施形態に係る積込機械100は、油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る積込機械100は、油圧ショベル以外の積込機械であってもよい。また
図1に示す積込機械100はフェイスショベルであるが、バックホウショベルやロープショベルであってもよい。
積込機械100は、走行体110と、走行体110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。旋回体120は、旋回中心を中心として旋回自在に支持される。
【0009】
作業機130は、ブーム131と、アーム132と、バケット133と、ブームシリンダ134と、アームシリンダ135と、バケットシリンダ136と、ブーム角度センサ137と、アーム角度センサ138と、バケット角度センサ139とを備える。
【0010】
ブーム131の基端部は、旋回体120にピンを介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を収容するための容器とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にピンを介して取り付けられる。
【0011】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ135は、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ135の先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、ブーム131に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133に取り付けられる。
【0012】
ブーム角度センサ137は、ブーム131に取り付けられ、ブーム131の傾斜角を検出する。
アーム角度センサ138は、アーム132に取り付けられ、アーム132の傾斜角を検出する。
バケット角度センサ139は、バケット133に取り付けられ、バケット133の傾斜角を検出する。
第1の実施形態に係るブーム角度センサ137、アーム角度センサ138、およびバケット角度センサ139は、地平面に対する傾斜角を検出する。なお、他の実施形態に係る角度センサはこれに限られず、他の基準面に対する傾斜角を検出してもよい。例えば、他の実施形態においては、角度センサは、ブーム131、アーム132およびバケット133の基端部に設けられたポテンショメータによって相対回転角を検出してもよいし、ブームシリンダ134、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136のシリンダ長さを計測し、シリンダ長さを角度に変換することで傾斜角を検出するものであってもよい。
【0013】
旋回体120には、運転室121が設けられる。運転室121の内部には、オペレータが着座するための運転席122、積込機械100を操作するための操作装置123、検出方向に存在する対象物の三次元位置を検出するための検出装置124が設けられる。操作装置123は、オペレータの操作に応じて、ブームシリンダ134の操作信号、アームシリンダ135の操作信号、バケットシリンダ136の操作信号、旋回体120の左右への旋回操作信号、走行体110の前後進のための走行操作信号を生成し、制御装置128に出力する。また操作装置123は、オペレータの操作に応じて作業機130に自動積込制御を開始させるための積込指示信号を生成し、制御装置128に出力する。積込指示信号は、バケット133の自動移動(バケット133をオペレータの操作によらずに積込点へ移動させる移動動作)の開始指示の一例である。操作装置123は、例えばレバー、スイッチおよびペダルにより構成される。積込指示信号はスイッチの操作により生成される。例えば、スイッチがONになったときに、積込指示信号が出力される。操作装置123は、運転席122の近傍に配置される。操作装置123は、オペレータが運転席122に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。
検出装置124の例としては、ステレオカメラ、レーザスキャナ、UWB(Ultra Wide Band)測距装置などが挙げられる。検出装置124は、例えば検出方向が積込機械100の運転室121の前方を向くように設けられる。検出装置124は、対象物の三次元位置を、検出装置124の位置を基準とした座標系で特定する。
なお、第1の実施形態に係る積込機械100は、運転席122に着座するオペレータの操作に従って動作するが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、積込機械100の外部で操作するオペレータの遠隔操作によって操作信号や積込指示信号が送信され動作するものであってもよい。
【0014】
積込機械100は、位置方位演算器125、傾斜計測器126、油圧装置127、制御装置128、旋回モータ129(
図2参照)を備える。
【0015】
位置方位演算器125は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器125は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器125は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器125は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。
【0016】
傾斜計測器126は、旋回体120の加速度および角速度(旋回速度)を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)を検出する。傾斜計測器126は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器126は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0017】
油圧装置127は、制御装置128による操作信号に従って、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、バケットシリンダ136、旋回モータ129、および図示しない左右の走行モータに作動油を供給する。
制御装置128は、操作装置123から操作信号を受信する。制御装置128は、受信した操作信号に基づいて、油圧装置127を駆動させる。
旋回モータ129は、旋回体120を旋回させるためのモータである。
【0018】
《油圧装置の構成》
図2は、第1の実施形態に係る積込機械の油圧装置の構成を示す概略図である。
油圧装置127は、作動油タンク1271、複数の油圧ポンプ1272、および複数の流量制御弁1273を備える。より具体的には、油圧装置127は、作動油タンク1271、第1油圧ポンプ1272A、第2油圧ポンプ1272B、第3油圧ポンプ1272C、第4油圧ポンプ1272D、第5油圧ポンプ1272E、および第6油圧ポンプ1272F、ならびに第1ブーム流量制御弁1273A1、第1アーム流量制御弁1273A2、第1バケット流量制御弁1273A3、第2ブーム流量制御弁1273B1、第2アーム流量制御弁1273B2、第2バケット流量制御弁1273B3、第3ブーム流量制御弁1273C1、第3アーム流量制御弁1273C2、第3バケット流量制御弁1273C3、旋回流量制御弁1273C4、図示しない左走行流量制御弁、および右走行流量制御弁を備える。
【0019】
油圧ポンプ1272は、図示しないエンジンの動力で駆動し、各流量制御弁1273を介してブームシリンダ134、アームシリンダ135、バケットシリンダ136、旋回モータ129、および走行体110を走行させる図示しない走行モータに作動油を供給する。各流量制御弁1273はロッド状のスプールを有し、スプールの位置によってブームシリンダ134、アームシリンダ135、バケットシリンダ136、旋回モータ129、および走行体110に供給する作動油の流量を調整する。スプールは、制御装置128から受信する制御指令に基づいて駆動される。つまり、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、バケットシリンダ136および旋回モータ129に供給される作動油の量は、制御装置128によって制御される。
【0020】
第1油圧ポンプ1272Aおよび第2油圧ポンプ1272Bは、第1ブーム流量制御弁1273A1、第1バケット流量制御弁1273A3、第1アーム流量制御弁1273A2の順に接続される。つまり、第1ブーム流量制御弁1273A1は、第1油圧ポンプ1272Aおよび第2油圧ポンプ1272Bが吐出する作動油をブームシリンダ134に供給する。第1バケット流量制御弁1273A3は、第1油圧ポンプ1272Aおよび第2油圧ポンプ1272Bが吐出する作動油のうち、ブームシリンダ134に供給されなかった作動油をバケットシリンダ136に供給する。第1アーム流量制御弁1273A2は、第1油圧ポンプ1272Aおよび第2油圧ポンプ1272Bが吐出する作動油のうち、ブームシリンダ134およびバケットシリンダ136に供給されなかった作動油をアームシリンダ135に供給する。
【0021】
第3油圧ポンプ1272Cおよび第4油圧ポンプ1272Dは、第2アーム流量制御弁1273B2、第2バケット流量制御弁1273B3、第2ブーム流量制御弁1273B1の順に接続される。つまり、第2アーム流量制御弁1273B2は、第3油圧ポンプ1272Cおよび第4油圧ポンプ1272Dが吐出する作動油をアームシリンダ135に供給する。第2バケット流量制御弁1273B3は、第3油圧ポンプ1272Cおよび第4油圧ポンプ1272Dが吐出する作動油のうち、アームシリンダ135に供給されなかった作動油をバケットシリンダ136に供給する。第2ブーム流量制御弁1273B1は、第3油圧ポンプ1272Cおよび第4油圧ポンプ1272Dが吐出する作動油のうち、アームシリンダ135およびバケットシリンダ136に供給されなかった作動油をブームシリンダ134に供給する。
【0022】
第5油圧ポンプ1272Eは、第3バケット流量制御弁1273C3、第3ブーム流量制御弁1273C1、第3アーム流量制御弁1273C2の順に接続される。また、第6油圧ポンプ1272Fは、旋回流量制御弁1273C4、第3バケット流量制御弁1273C3、第3ブーム流量制御弁1273C1、第3アーム流量制御弁1273C2の順に接続される。
つまり、旋回流量制御弁1273C4は、第6油圧ポンプ1272Fが吐出する作動油を旋回モータ129に供給する。第3バケット流量制御弁1273C3は、第6油圧ポンプ1272Fが吐出する作動油のうち旋回モータ129に供給されなかった作動油、および第5油圧ポンプ1272Eが吐出する作動油をバケットシリンダ136に供給する。第3ブーム流量制御弁1273C1は、第6油圧ポンプ1272Fが吐出する作動油のうち旋回モータ129およびバケットシリンダ136に供給されなかった作動油、および第5油圧ポンプ1272Eが吐出する作動油のうちバケットシリンダ136に供給されなかった作動油をブームシリンダ134に供給する。第3アーム流量制御弁1273C2は、第6油圧ポンプ1272Fが吐出する作動油のうち旋回モータ129、バケットシリンダ136、およびブームシリンダ134に供給されなかった作動油、および第5油圧ポンプ1272Eが吐出する作動油のうちバケットシリンダ136およびブームシリンダ134に供給されなかった作動油をアームシリンダ135に供給する。
【0023】
つまり、第1ブーム流量制御弁1273A1、第1アーム流量制御弁1273A2、第1バケット流量制御弁1273A3、第2ブーム流量制御弁1273B1、第2アーム流量制御弁1273B2、第2バケット流量制御弁1273B3、第3ブーム流量制御弁1273C1、第3アーム流量制御弁1273C2、および第3バケット流量制御弁1273C3は、作業機130を作動させるアクチュエータに流れる作動油の流量を制御する作業機側流量制御弁の一例である。また、旋回流量制御弁1273C4は、旋回モータ129に流れる作動油の流量を制御する旋回側流量制御弁の一例である。
また、第1油圧ポンプ1272A、第2油圧ポンプ1272B、第3油圧ポンプ1272C、第4油圧ポンプ1272D、および第5油圧ポンプ1272Eは、作業機側流量制御弁にのみ接続される第1ポンプの一例である。第6油圧ポンプ1272Fは、旋回側流量制御弁および作業機側流量制御弁に接続される第2ポンプの一例である。
なお、油圧装置127の構成は
図2に示す構成に限られない。
【0024】
《制御装置の構成》
図3は、第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置128は、プロセッサ1100、メインメモリ1200、ストレージ1300、インタフェース1400を備えるコンピュータである。ストレージ1300は、プログラムを記憶する。プロセッサ1100は、プログラムをストレージ1300から読み出してメインメモリ1200に展開し、プログラムに従った処理を実行する。
【0025】
ストレージ1300の例としては、HDD、SSD、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM等が挙げられる。ストレージ1300は、制御装置128の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1400を介して制御装置128に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ1300は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0026】
プロセッサ1100は、プログラムの実行により、車両情報取得部1101、検出情報取得部1102、操作信号入力部1103、バケット位置特定部1104、積込位置特定部1105、回避位置特定部1106、作業機速度推定部1107、移動処理部1108、干渉判定部1109、目標速度変更部1110、操作信号出力部1111を備える。
【0027】
車両情報取得部1101は、旋回体120の旋回速度、位置および方位、ブーム131、アーム132およびバケット133の傾斜角、走行体110の走行速度、ならびに旋回体120の姿勢を取得する。以下、車両情報取得部1101が取得する積込機械100に係る情報を車両情報とよぶ。
【0028】
検出情報取得部1102は、検出装置124から三次元位置情報を取得し、積込対象200(例えば、運搬車両やホッパ)の位置および形状を特定する。
【0029】
操作信号入力部1103は、操作装置123から操作信号の入力を受け付ける。ブーム131の操作信号、アーム132の操作信号、バケット133の操作信号、旋回体120の旋回操作信号、走行体110の走行操作信号、ならびに積込機械100の積込指示信号が含まれる。
【0030】
バケット位置特定部1104は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、ショベル座標系におけるアーム132の先端の位置Pおよびアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbを特定する。バケット133の最下点とは、バケット133の外形のうち地表面からの距離が最も短い点をいう。特に、バケット位置特定部1104は、積込指示信号の入力を受け付けたときのアーム132の先端の位置Pを掘削完了位置P10として特定する。
図4は、第1の実施形態に係るバケットの経路の例を示す図である。具体的には、バケット位置特定部1104は、ブーム131の傾斜角と既知のブーム131の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム131の長さの垂直方向成分および水平方向成分を求める。同様に、バケット位置特定部1104は、アーム132の長さの垂直方向成分および水平方向成分を求める。バケット位置特定部1104は、積込機械100の位置から、積込機械100の方位および姿勢から特定される方向に、ブーム131およびアーム132の長さの垂直方向成分の和および水平方向成分の和だけ離れた位置を、アーム132の先端の位置P(
図1に示すアーム132の先端部のピンの位置P)として特定する。また、バケット位置特定部1104は、バケット133の傾斜角と既知のバケット133の形状とに基づいて、バケット133の鉛直方向の最下点を特定し、アーム132の先端から最下点までの高さHbを特定する。
【0031】
積込位置特定部1105は、操作信号入力部1103に積込指示信号が入力された場合に、検出情報取得部1102が特定した積込対象200の位置および形状に基づいて、積込位置P13を特定する。積込位置特定部1105は、車両情報取得部1101が取得した旋回体120の位置、方位および姿勢に基づいて積込対象200の位置情報が示す積込点P21を現場座標系からショベル座標系に変換する。積込位置特定部1105は、特定した積込点P21から、積込機械100の旋回体120の向く方向にバケット133の中心からアーム132の先端までの距離D1だけ離れた位置を、積込位置P13の平面位置として特定する。つまり、アーム132の先端が積込位置P13に位置するとき、バケット133の中心は積込点P21に位置することとなる。したがって、制御装置128は、アーム132の先端が積込位置P13へ移動するように制御することで、バケット133の中心を積込点P21に移動させることができる。積込位置特定部1105は、積込対象200の高さHtに、バケット位置特定部1104が特定したアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbと、バケット133の制御余裕分の高さとを加算することで、積込位置P13の高さを特定する。なお、他の実施形態においては、積込位置特定部1105は、制御余裕分の高さを加算せずに積込位置P13を特定してもよい。すなわち、積込位置特定部1105は、高さHtに高さHbを加算することで、積込位置P13の高さを特定してもよい。
【0032】
回避位置特定部1106は、積込位置特定部1105が特定した積込位置P13と、車両情報取得部1101が取得した積込機械100の位置と、検出情報取得部1102が特定した積込対象200の位置および形状に基づいて、バケット133が積込対象200と干渉しない点である干渉回避位置P12を特定する。干渉回避位置P12は、積込位置P13と同じ高さを有し、かつ旋回体120の旋回中心からの距離が、当該旋回中心から積込位置P13までの距離と等しく、かつ下方に積込対象200が存在しない位置である。回避位置特定部1106は、例えば、旋回体120の旋回中心を中心とし、当該旋回中心と積込位置P13との距離を半径とする円を特定し、当該円上の位置のうち、バケット133の外形が平面視で積込対象200と干渉せず、かつ積込位置P13に最も近い位置を、干渉回避位置P12と特定する。回避位置特定部1106は、積込対象200の位置および形状、ならびにバケット133の既知の形状に基づいて、積込対象200とバケット133とが干渉するか否かを判定することができる。ここで、「同じ高さ」、「距離が等しい」とは、必ずしも高さまたは距離が完全に一致するものに限られず、多少の誤差やマージンが許容されるものとする。
【0033】
作業機速度推定部1107は、旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定する。具体的には、旋回体120が旋回していない場合、各油圧ポンプ1272から吐出されるすべての作動油が、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給される。他方、旋回体120が旋回している場合、各油圧ポンプ1272から吐出されるすべての作動油のうち、第6油圧ポンプ1272Fから旋回モータ129に流れる作動油分だけ少ない流量が、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給される。そのため、第1の実施形態において、作業機速度推定部1107は、第1油圧ポンプ1272A、第2油圧ポンプ1272B、第3油圧ポンプ1272C、第4油圧ポンプ1272D、および第5油圧ポンプ1272Eの吐出流量の和に基づいて、旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定する。すなわち、作業機速度推定部1107は、すべての油圧ポンプの吐出流量の和から第6油圧ポンプ1272Fの吐出流量を減算した流量に基づいて、旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定する。
【0034】
移動処理部1108は、操作信号入力部1103が積込指示信号の入力を受け付けた場合に、積込位置特定部1105が特定した積込位置P13、回避位置特定部1106が特定した干渉回避位置P12に基づいて、バケット133を積込位置P13まで移動させるための操作信号を生成する。すなわち、移動処理部1108は、掘削完了位置P10から、旋回開始位置P11および干渉回避位置P12を経由して、積込位置P13に到達するように、操作信号を生成する。また、移動処理部1108は、ブーム131およびアーム132が駆動してもバケット133の対地角度が変化しないように、バケット133の操作信号を生成する。
【0035】
干渉判定部1109は、旋回体120の旋回中に、推定された作業機130の速度、旋回体120の旋回速度、および干渉回避位置P12に基づいて、現在の旋回速度のまま旋回を続けた場合に、作業機130が積込対象200に干渉することになるか否かを判定する。
目標速度変更部1110は、作業機130が積込対象200に干渉することになると判定した場合に、作業機130が積込対象200に干渉しないように目標旋回速度を変更する。具体的には、目標速度変更部1110は、作業機130の高さが干渉回避位置P12より高い位置に到達するまでの時間と、作業機130の上方からの平面位置が積込対象200に干渉するまでの旋回角度とに基づいて、目標旋回速度を変更する。
【0036】
操作信号出力部1111は、操作信号入力部1103に入力された操作信号、または移動処理部1108が生成した操作信号を出力する。
【0037】
《動作》
積込機械100のオペレータは、積込機械100と積込対象200とが積込処理可能な位置関係にあると判断すると、操作装置123のスイッチをONにする。これにより、操作装置123は、積込指示信号を生成し出力する。
【0038】
図5-
図6は、第1の実施形態に係る自動積込制御方法を示すフローチャートである。制御装置128は、オペレータから積込指示信号の入力を受け付けると、
図5-
図6に示す自動積込制御を実行する。
【0039】
車両情報取得部1101は、旋回体120の位置および方位、ブーム131、アーム132およびバケット133の傾斜角、ならびに旋回体120の姿勢および旋回速度を取得する(ステップS1)。バケット位置特定部1104は、車両情報取得部1101が取得した旋回体120の位置および方位に基づいて、旋回体120の旋回中心の位置を特定する(ステップS2)。また検出情報取得部1102は、検出装置124から、積込対象200の三次元位置情報を取得し、三次元位置情報から積込対象200の位置および形状を特定する(ステップS3)。
【0040】
バケット位置特定部1104は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、積込指示信号の入力時のアーム132の先端の位置P、およびアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbを特定する(ステップS4)。バケット位置特定部1104は、当該位置Pを掘削完了位置P10と特定する。
【0041】
積込位置特定部1105は、ステップS1で取得した旋回体120の位置、方位および姿勢に基づいて検出情報取得部1102が取得した積込対象200の位置情報を現場座標系からショベル座標系に変換する。積込位置特定部1105は、検出情報取得部1102が特定した積込対象200の位置および形状に基づいて、積込位置P13の平面位置を特定する(ステップS5)。このとき、積込位置特定部1105は、積込対象200の高さHtに、ステップS4で特定したアーム132の先端からバケット133の最下点までの高さHbと、バケット133の制御余裕分の高さとを加算することで、積込位置P13の高さを特定する(ステップS6)。
【0042】
回避位置特定部1106は、ステップS2で特定した旋回中心から積込位置P13までの平面距離を特定する(ステップS7)。回避位置特定部1106は、旋回中心から特定した平面距離だけ離れた位置であって、バケット133の外形が平面視で積込対象200と干渉せず、かつ積込位置P13から最も近い位置を、干渉回避位置P12として特定する(ステップS8)。
【0043】
移動処理部1108は、アーム132の先端の位置が積込位置P13に至ったか否かを判定する(ステップS9)。アーム132の先端の位置が積込位置P13に至っていない場合(ステップS9:NO)、移動処理部1108は、アーム132の先端の位置が干渉回避位置P12の近傍にあるか否かを判定する(ステップS10)。例えば、移動処理部1108は、アーム132の先端の高さと干渉回避位置P12の高さとの差が所定の閾値未満であり、または旋回体120の旋回中心からアーム132の先端までの平面距離と旋回中心から干渉回避位置P12までの平面距離との差が所定の閾値未満であるか否かを判定する。アーム132の先端の位置が干渉回避位置P12の近傍にない場合(ステップS10:NO)、移動処理部1108は、アーム132の先端を干渉回避位置P12まで移動させるブーム131およびアーム132の操作信号を生成する(ステップS11)。このとき、移動処理部1108は、ブーム131およびアーム132の位置および速度に基づいて、操作信号を生成する。具体的には、速やかにアーム132の先端を干渉回避位置P12まで移動させるために、アーム132の先端と干渉回避位置P12との距離が大きい時は、ブーム131およびアーム132の操作信号を最大値とする。また、アーム132の先端を緩やかに停止させるために、アーム132の先端と干渉回避位置P12との距離が小さい時は、ブーム131およびアーム132の操作信号を小さくする。なお、アーム132の先端の位置に基づいて操作信号を生成する例を示したが、これに限らない。例えば、ブーム131の角度およびアーム132の角度を、アーム132の先端が干渉回避位置P12に一致する時のブーム131の角度およびアーム132の角度に、それぞれ移動するように独立に操作信号を生成してもよい。また、アーム132の先端を干渉回避位置P12まで移動させるためのブーム131およびアーム132の目標角度あるいは目標速度を生成して、それぞれ目標に従うように一般的なフィードバック制御やフィードフォワード制御により、操作信号を生成してもよい。
【0044】
また移動処理部1108は、生成したブーム131およびアーム132の操作信号に基づいてブーム131およびアーム132の角速度の和を算出し、当該角速度の和と同じ速度でバケット133を回動させる操作信号を生成する(ステップS12)。これにより、移動処理部1108は、バケット133の対地角を保持する操作信号を生成することができる。なお、他の実施形態においては、移動処理部1108は、ブーム角度センサ137、アーム角度センサ138およびバケット角度センサ139の検出値より算出されるバケット133の対地角度が、自動制御開始時の対地角度と等しくなるようにバケット133を回動させる操作信号を生成してもよい。
【0045】
アーム132の先端の位置が干渉回避位置P12の近傍にある場合(ステップS10:YES)、移動処理部1108は、作業機を駆動する操作信号を生成しない。つまり、ブーム131、アーム132およびバケット133の操作信号を生成しない。
【0046】
移動処理部1108は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、旋回体120の旋回速度が所定速度未満であるか否かを判定する(ステップS13)。すなわち、移動処理部1108は、旋回体120が旋回中であるか否かを判定する。
旋回体120の旋回速度が所定速度未満である場合(ステップS13:YES)、作業機速度推定部1107は、第1油圧ポンプ1272A、第2油圧ポンプ1272B、第3油圧ポンプ1272C、第4油圧ポンプ1272D、および第5油圧ポンプ1272Eの吐出流量の和に基づいて、旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定する(ステップS14)。移動処理部1108は、推定した作業機130の速度に基づいて、バケット133の高さが掘削完了位置P10の高さから干渉回避位置P12の高さに至るまでの上昇時間を特定する(ステップS15)。バケット133の上昇時間に基づいて、現在時刻から旋回操作信号を出力した場合に、アーム132の先端が干渉回避位置P12または干渉回避位置P12より高い点を通過することになるか否かを判定する(ステップS16)。現在時刻から旋回操作信号を出力した場合に、アーム132の先端が干渉回避位置P12または干渉回避位置P12より高い点を通過することになる場合(ステップS16:YES)、移動処理部1108は、旋回操作信号を生成する(ステップS17)。速やかにアーム132の先端を干渉回避位置P12まで移動させるために、当該旋回操作信号が示す目標旋回速度は、旋回モータ129の旋回速度の最大値である。
現在時刻から旋回操作信号を出力した場合に、アーム132の先端が干渉回避位置P12より低い点を通過することになる場合(ステップS16:NO)、移動処理部1108は、旋回操作信号を生成しない。
【0047】
旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合(ステップS13:NO)、移動処理部1108は、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合(旋回の制動を開始した場合)に、アーム132の先端が積込位置P13に到達することになるか否かを判定する(ステップS18)。なお、旋回体120は、旋回操作信号の出力の停止後、減速しながらも慣性により旋回し続け、その後停止する。現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13に到達することになる場合(ステップS18:YES)、移動処理部1108は、旋回操作信号を生成しない。これにより、旋回体120の制動が開始される。
【0048】
他方、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13より手前で停止することになる場合(ステップS18:NO)、作業機速度推定部1107は、第1油圧ポンプ1272A、第2油圧ポンプ1272B、第3油圧ポンプ1272C、第4油圧ポンプ1272D、および第5油圧ポンプ1272Eの吐出流量の和に基づいて、旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定する(ステップS19)。干渉判定部1109は、推定した作業機130の速度に基づいて、現在のバケット133の高さから干渉回避位置P12の高さに至るまでの上昇時間を特定する(ステップS20)。
【0049】
干渉判定部1109は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、旋回体120の旋回速度を維持した場合に、上昇時間が経過する前にバケット133の旋回角度が干渉回避位置P12の旋回角度に到達するか否かを判定する(ステップS21)。すなわち、干渉判定部1109は、現在の旋回速度のまま旋回を続けた場合に、作業機130が積込対象200に干渉することになるか否かを判定する。例えば、干渉判定部1109は、現在の旋回速度に上昇時間を乗算することで、バケット133の高さが干渉回避位置P12の高さに至るときの旋回角度を求める。そして、干渉判定部1109は、求めた旋回角度が、現在の旋回位置から干渉回避位置P12までの旋回角度より少ない場合に、上昇時間が経過するまでバケット133が干渉回避位置P12に到達しないと判定する。
【0050】
干渉判定部1109が、上昇時間が経過する前にバケット133の旋回角度が干渉回避位置P12の旋回角度に到達すると判定した場合(ステップS21:YES)、目標速度変更部1110は、現在の旋回位置から干渉回避位置P12までの旋回角度を上昇時間で除算することで、変更後の目標旋回速度を算出する(ステップS22)。そして、移動処理部1108は、変更された目標旋回速度に従って旋回操作信号を生成する(ステップS23)。具体的には、移動処理部1108は、現在の旋回速度と目標旋回速度の差に所定のゲインを乗算した補正値を目標旋回速度に加える。そして、移動処理部1108は、予め試験等により同定した旋回速度から旋回操作信号を生成する関数に補正した目標旋回速度を代入することで、変更後の目標旋回速度に係る旋回操作信号を生成する。
【0051】
他方、干渉判定部1109が、上昇時間が経過するまでバケット133の旋回角度が干渉回避位置P12の旋回角度に到達しないと判定した場合(ステップS21:NO)、目標旋回速度を変更しない。移動処理部1108は、ステップS17で設定した目標旋回速度またはステップS22で変更された目標旋回速度に従って旋回操作信号を生成する(ステップS23)。
【0052】
ステップS9からステップS23の処理でブーム131、アーム132およびバケット133の操作信号、並びに旋回体120の旋回操作信号の少なくともいずれか1つを生成すると、操作信号出力部1111は、生成した操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS25)。そして、車両情報取得部1101は、車両情報を取得する(ステップS26)。これにより、車両情報取得部1101は、出力した操作信号によって駆動した後の車両情報を取得することができる。制御装置128は、処理をステップS9に戻し、操作信号の生成を繰り返し実行する。
【0053】
他方、ステップS9にて、アーム132の先端の位置が積込位置P13に至っている場合(ステップS9:YES)、移動処理部1108は操作信号を生成しない。したがって、アーム132の先端の位置が積込位置P13に至ると、作業機130および旋回体120は停止する。アーム132の先端の位置が積込位置P13に至っている場合(ステップS9:YES)、移動処理部1108は、バケット133を積込動作させる操作信号を生成する(ステップS27)。バケット133を積込動作させる操作信号の例としては、バケット133を積込方向に回動させる操作信号や、バケット133がクラムバケットである場合におけるクラムシェルを開く操作信号が挙げられる。操作信号出力部1111は、生成した操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS28)。そして、制御装置128は、自動積込制御を終了する。
【0054】
ここで、
図4を用いて、自動積込制御時の積込機械100の動作について説明する。
自動積込制御が開始されると、ブーム131およびアーム132は、掘削完了位置P10から旋回開始位置P11へ向けて上昇する。このとき、バケット133は、掘削終了時の角度を維持するように駆動する。
【0055】
アーム132の先端が旋回開始位置P11にくると、旋回体120は積込位置P13へ向けて旋回を開始する。このとき、アーム132の先端は干渉回避位置P12の高さに至っていないため、ブーム131およびアーム132の上昇は継続される。またこのとき、
図4に示すように、旋回中心からアーム132の先端(位置P10a、位置P10b)までの距離が、旋回中心から干渉回避位置P12までの距離と異なる場合、制御装置128は、旋回中心からアーム132の先端までの距離が旋回中心から干渉回避位置P12までの距離と等しくなるように、作業機130を旋回半径方向にも移動させる。アーム132の先端が旋回開始位置P11から干渉回避位置P12へ移動する途中で、アーム132の先端の高さが干渉回避位置P12と等しくなるように、ブーム131、アーム132およびバケット133は減速する。
【0056】
アーム132の先端が干渉回避位置P12にくると、作業機130の駆動は停止する。一方、旋回体120は旋回を継続する。すなわち、干渉回避位置P12から積込位置P13までの間、アーム132の先端は、作業機130の駆動によらず、旋回体120の旋回のみにより移動する。アーム132の先端が旋回開始位置P11から積込位置P13へ移動する途中で、アーム132の先端の位置が積込位置P13と等しくなるように、旋回体120は減速する。
【0057】
アーム132の先端が積込位置P13にくると、作業機130および旋回体120の駆動は停止する。その後、バケット133が積込動作を実行する。
【0058】
上述の自動積込制御により、積込機械100は、バケット133がすくった土砂を自動的に積込対象200に積込することができる。オペレータは、作業機130による掘削と、積込指示信号の入力による自動積込制御とを、積込対象200の積載量が最大積載量を超えない程度に繰り返し実行する。
【0059】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、積込機械100の制御装置128は、バケット133の自動移動の開始指示に基づいて、バケット133を積込点へ移動させるための作業機操作信号と旋回操作信号とを生成し、旋回体120の旋回中に、作業機130が積込対象200に干渉しないように目標旋回速度を変更する。
これにより、制御装置128は、旋回体120の旋回を開始した後に、作業機130の上昇速度が想定速度より遅く、または旋回体120の旋回速度が想定速度より速かったとしても、目標旋回速度を変更することで、作業機130が積込対象200に干渉しないように旋回速度を修正することができる。
【0060】
また、第1の実施形態によれば、制御装置128は、旋回体120の旋回中に、旋回操作信号によって作業機130が積込対象200に干渉することになるか否かを判定し、作業機130が積込対象200に干渉することになると判定した場合に、目標旋回速度を変更する。これにより、制御装置128は、現在の目標旋回速度での制御によって作業機130が積込対象200に干渉することがない場合には、目標旋回速度を維持することで高速な旋回を実現しつつ、現在の目標旋回速度での制御によって作業機130が積込対象200に干渉する可能性がある場合には、目標旋回速度を変更することで干渉を防止することができる。なお、他の実施形態に係る制御装置128は、旋回操作信号によって作業機130が積込対象200に干渉することになるか否かを判定せず、作業機130が積込対象200に干渉しないように常に目標旋回速度を計算してもよい。
【0061】
また、第1の実施形態によれば、制御装置128は、油圧ポンプの吐出量に基づいて旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定し、推定された速度に基づいて作業機130が積込対象200に干渉することになるか否かを判定する。すなわち、第1の実施形態に係る制御装置128は、作業機130の速度を、センサの検出値の微分計算をすることなく求める。精度よく微分計算を行うためには、分解能が高いセンサが必要となる。また、作業機130の振動やセンサ信号へのノイズの混入などが生じるため、検出値に誤差が含まれなくすることは困難である。そのため、第1の実施形態によれば、高分解能のセンサを用いることなく、精度よく作業機130の速度を推定することができる。なお、他の実施形態に係る制御装置128は、各ストロークセンサの微分計算によって作業機130の速度を計算してもよい。
【0062】
また、第1の実施形態によれば、制御装置128は、油圧ポンプの吐出流量から旋回モータ129に流れる作動油の流量を減算した流量に基づいて、旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定する。つまり、第1の実施形態によれば、油圧ポンプから吐出される作動油の一部が旋回モータ129に供給される場合にも、適切に作業機130の速度を推定することができる。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、作業機130が作動速度の最大値を目標速度として制御され、旋回体120が旋回速度の最大値を目標速度として制御されるため、制御装置128は、作業機130のアクチュエータにのみ作動油を供給する油圧ポンプの最大吐出流量に基づいて旋回体120が旋回しているときの作業機130の速度を推定する。つまり、制御装置128は、油圧ポンプの吐出流量を固定値として、吐出流量を計測することなく作業機130の速度を推定することができる。
【0064】
図7は、エンジンとポンプのマッチング関係の例を示す図である。
積込機械100のエンジンは、回転数に応じたトルクを出力する。つまり、
図7に示すようにエンジンの回転数が大きいほど、出力トルクは小さくなる。他方、制御装置128は、エンジンの回転数と油圧ポンプの圧力とを検出することで、油圧ポンプの容量を制御する。その結果、油圧ポンプはエンジンの回転数に応じた負荷トルクを発生する。
図7に示すように、エンジンの回転数が大きいほど、油圧ポンプが吸収するトルクは大きくなる。
そのため、エンジンの回転数が上がると、エンジン出力トルクが低下し、油圧ポンプによる吸収トルクが上昇するため、エンジンの回転数は低下し始める。他方、エンジンの回転数が下がると、エンジン出力トルクが上昇し、油圧ポンプによる吸収トルクが低下するため、エンジンの回転数は増加し始める。この繰り返しにより、エンジンおよび油圧ポンプは、エンジン回転数とエンジン出力トルクと油圧ポンプの回転数および吸収トルクとが一致するマッチング点で安定して動作することとなる。
【0065】
エンジン回転数が固定値であって、油圧ポンプによる吸収トルクとエンジンの出力トルクとが一致する場合、ポンプの吐出流量は、エンジン出力馬力をポンプ圧力で除算することで求められる。積込機械100と積込対象200の距離およびバケット133の積荷量はほぼ毎回同じであるため、作業中における作業機130のシリンダ圧力および油圧ポンプの圧力もほぼ毎回同じになる。したがって、制御装置128は、油圧ポンプの吐出流量を固定値として作業機130の速度を推定することができる。
【0066】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0067】
また、第1の実施形態に係る積込機械100は、検出装置124が検出した積込対象200の三次元位置に基づいて積込位置P13、干渉回避位置P12を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、オペレータによって入力された積込対象200の座標に基づいて積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。積込機械100が運転席122にタッチパネルなどの入力装置を備える場合、オペレータが当該入力装置に積込対象200の座標を入力することで、制御装置128が積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。また例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、オペレータの手動操作による1杯目の積込対象200への積込操作を記憶し、当該積込操作に基づいて積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。
また他の実施形態において、積込対象200が固定されている場合、積込機械100は、既知の積込対象200の位置に基づいて積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。例えば、積込対象200がGNSSによる自車位置特定機能を有する運搬車両である場合、積込機械100は、積込場所に停車した積込対象200から位置および方位を示す情報を取得し、当該情報に基づいて積込位置P13、干渉回避位置P12を特定してもよい。
【0068】
また、上述した実施形態においては、制御装置128が作業機130を退避させるために作業機130を上昇させるが、他の退避方法を用いてもよい。例えば、他の実施形態においては、作業機130を上昇させることで退避するほか、作業機130を縮めた姿勢にすることで退避させてもよい。作業機130を縮めた姿勢とは、ブーム131を上昇させると共にアーム132を手前に回動することをいう。これにより、作業機130の姿勢は旋回半径方向に縮んだ姿勢となり、作業機130がこの姿勢をとることにより、積込対象200との干渉を回避するように構成しても良い。
【0069】
また、上述した実施形態に係る制御装置128は、油圧ポンプの吐出流量を固定値として算出したが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置128は、ポンプ容量の指令値または計測値と、エンジン回転数の指令値または計測値との積によって油圧ポンプの吐出流量を求めてもよい。また例えば、他の実施形態に係る制御装置128は、エンジン出力馬力の指令値または計測値を、ポンプ圧力で除算することによって油圧ポンプの吐出流量を求めてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100…積込機械 110…走行体 120…旋回体 130…作業機 200…積込対象 131…ブーム 132…アーム 133…バケット 127…油圧装置 1272A…第1油圧ポンプ 1272B…第2油圧ポンプ 1272C…第3油圧ポンプ 1272D…第4油圧ポンプ 1272E…第5油圧ポンプ 1272F…第6油圧ポンプ 1273A1…第1ブーム流量制御弁 1273A2…第1アーム流量制御弁 1273A3…第1バケット流量制御弁 1273B1…第2ブーム流量制御弁 1273B2…第2アーム流量制御弁 1273B3…第2バケット流量制御弁 1273C1…第3ブーム流量制御弁 1273C2…第3アーム流量制御弁 1273C3…第3バケット流量制御弁 1273C4…旋回流量制御弁 128…制御装置 129…旋回モータ 1101…車両情報取得部 1102…検出情報取得部 1103…操作信号入力部 1104…バケット位置特定部 1105…積込位置特定部 1106…回避位置特定部 1107…作業機速度推定部 1108…移動処理部 1109…干渉判定部 1110…目標速度変更部 1111…操作信号出力部