(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
H04N 9/04 20060101AFI20220810BHJP
H04N 9/64 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
H04N9/04 B
H04N9/64 R
(21)【出願番号】P 2018097587
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 仁
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/015580(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/011824(WO,A1)
【文献】特開2014-165528(JP,A)
【文献】特開2007-288549(JP,A)
【文献】特開2007-202107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 9/04
H04N 9/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外光領域を含む波長領域の入射光を受光して、前記入射光の輝度に応じた出力信号に変換して出力する撮像素子と、
前記出力信号の中に含まれる近赤外光成分の強度を取得する近赤外光強度取得部と、
前記近赤外光成分の強度の値に第一の所定値を乗じた値を、前記出力信号の強度の値から減算して赤外減算信号を生成する赤外信号減算部と、
前記赤外減算信号の値が0以下であったときに前記赤外減算信号の値を0とする赤外減算信号補正値を算
出し、前記赤外減算信号の値が0を超えるときは前記赤外減算信号の値を前記赤外減算信号補正値とする赤外減算信号補正部と、
前記赤外減算信号補正値に、前記近赤外光成分の強度の値に第二の所定値を乗じた値を加算して色信号強度調整信号を生成する赤外信号加算部
と、
互いに異なる波長を有する可視光領域の光を選択的に透過して、かつ近赤外光領域において、互いに等しい分光透過率を持つ3種類のフィルタと、可視光領域の分光透過率が前記3種類のフィルタの各分光透過率の線形和で表わされて、かつ、近赤外領域において、前記3種類のフィルタの分光透過率と等しい分光透過率を持つ1種類のフィルタと、が所定のパターンで配列された光学フィルタと、を有し、
前記撮像素子は、前記光学フィルタを透過した前記入射光を受光して、前記入射光の輝度に応じた前記出力信号に変換して出力し、
前記第一の所定値は1より大きい値であることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記赤外信号減算部は、前記出力信号に含まれる色信号と輝度信号とを分離した後の前記色信号の強度を前記出力信号の強度として前記赤外減算信号を算出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記赤外信号加算部は、前記色信号強度調整信号を色差信号に変換した後、前記輝度信号と合成して出力することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記赤外信号減算部は、前記出力信号に含まれる色信号の強度を前記出力信号の強度として前記赤外減算信号を算出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記赤外信号加算部は、前記色信号強度調整信号を色差信号に変換して出力することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記近赤外光強度取得部は、前記出力信号から前記近赤外光成分と可視光成分とを分離してそれぞれの強度を取得し、
前記赤外信号減算部は、前記近赤外光成分の強度の値に前記第一の所定値を乗じた値を、前記可視光成分の強度の値から減算して前記赤外減算信号を生成することを特徴とする請求項1
~5のいずれかに記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を備えた撮像装置に関し、特に、明暗の差(ダイナミックレンジ)が大きい被写体を撮影した場合であっても、適切なカラー画像を生成することができる撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通事故の予防安全への関心が高まってきており、自動車の運転支援システムにおける要素技術として、車載監視用の撮像装置の研究開発が盛んに行われている。その中では、夜間の暗闇と高輝度な信号灯や車両灯(ヘッドライトなど)とが同時に存在する、明暗の差が非常に大きくて視界不良となり得る状況において、高い監視性能を確保すること、すなわち、視界不良となり得る状況においても信号や車線の色を判別できるように、撮像装置において、広いダイナミックレンジと人間の色覚特性と合致した色再現性を両立することが課題となっている。
【0003】
このような暗闇において、歩行者や車線の監視性能を向上させるための手段として、近赤外線を透過する色フィルタを用いて、近赤外光領域に感度を持ったまま色再現を行うIRカラーカメラ技術の開発が行われている。
【0004】
IRカラーカメラは、赤外線除去フィルタ(IRカットフィルタ)を有していないため、近赤外光領域の光に対しても感度を有しており、観測対象から放射される近赤外光、または赤外投光器によって照射された近赤外光の反射光をIRカラーカメラで観測することによって、車両のヘッドライトが照射されていない暗い領域においても撮像を行うことが可能、すなわち、撮像可能な輝度範囲を拡大してダイナミックレンジを広げることが可能となる。
【0005】
そして、このようなIRカラーカメラで撮像された画像の中から、可視光と近赤外光をともに含む輝度信号と、可視光と近赤外光をともに含む色信号の中から近赤外光成分のみを除去した色信号を得て、この輝度信号と色信号を適切に再合成することによって、広いダイナミックレンジ(高い感度)と人間の視覚に近い色再現性を両立した出力信号を得る撮像装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
同様に、IRカラーカメラの出力信号の中に含まれる近赤外光成分の比率を算出し、光源の近赤外光成分の比率に応じた除去率(0~100%)で出力信号の中から近赤外光成分を除去して赤外分離信号を生成することによって、広いダイナミックレンジ(高い感度)と人間の視覚に近い色再現性を両立した出力信号を得る撮像装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-165528号公報
【文献】国際公開第2017/033687号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に開示された技術では、色信号の中から全ての近赤外光成分を除去していたため、例えば、近赤外光のみを発する光源を撮像したときには、光源が有する近赤外光成分が全て除去されてしまい、色信号は理想的には0となる。
【0009】
しかしながら、実際には撮像された信号の中にノイズ成分が混入しているため、近赤外光成分を除去したときにこのノイズ成分が残留してしまう。こうして残留したノイズ成分を含む色信号は、偽色と呼ばれる色ノイズとなる可能性があった。
【0010】
この可能性は、特許文献2に開示された技術においても、同様に色信号の中から全ての近赤外光成分を除去していることがあるため、同様に生じうる。
【0011】
そこで、本発明は、撮像された画像信号の中に含まれる近赤外光成分の量によらずに、ノイズの影響を抑えて、人間の視覚に近い色再現性を持った色信号を得ることが可能な撮像装置及び撮像方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、近赤外光領域を含む波長領域の入射光を受光して、入射光の輝度に応じた出力信号に変換して出力する撮像素子と、出力信号の中に含まれる近赤外光成分の強度を取得する近赤外光強度取得部と、近赤外光成分の強度の値に第一の所定値を乗じた値を出力信号の強度の値から減算して赤外減算信号を生成する赤外信号減算部と、赤外減算信号の値が0以下であったときに赤外減算信号の値を0とする赤外減算信号補正値を算出する赤外減算信号補正部と、赤外減算信号補正値に、近赤外光成分の強度の値に第二の所定値を乗じた値を加算して色信号強度調整信号を生成する赤外信号加算部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明の撮像装置では、赤外信号減算部が、近赤外光成分の強度の値に第一の所定値を乗じた値を出力信号の強度の値から減算して赤外減算信号を生成し、この赤外減算信号の値が0以下であったときに、赤外減算信号補正部が赤外減算信号の値を0とする赤外減算信号補正値を算出し、そして、この赤外減算信号補正値に、赤外信号加算部が近赤外光成分の強度の値に第二の所定値を乗じた値を加算して色信号強度調整信号を生成する。
【0014】
このようにすることで、撮像された画像信号の中に含まれる近赤外光成分の量によらずに、ノイズの影響を抑えて、人間の視覚に近い色再現性を持った色信号を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態である撮像装置の色信号生成部の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態である撮像装置の原理を説明するための図である。
【
図4】第1の実施形態である撮像装置の原理を説明するための図である。
【
図5】第1の実施形態である撮像装置の原理を説明するための図である。
【
図6】第1の実施形態である撮像装置の原理を説明するための図である。
【
図7】第1の実施形態である撮像装置の原理を説明するための図である。
【
図8】第1の実施形態である撮像装置の原理を説明するための図である。
【
図9】第1の実施形態である撮像装置の原理を説明するための図である。
【
図10】第1の実施形態である撮像装置に使用される光学フィルタの配列の一例を示す図である。
【
図11】第1の実施形態である撮像装置に使用される光学フィルタの分光透過率特性の一例を示す図である。
【
図12】第1の実施形態である撮像装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図13】本発明の第2の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図16】本発明の第5の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図17】第5の実施形態である撮像装置の色信号生成部の構成を示すブロック図である。
【
図18】本発明の第6の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図19】第6の実施形態である撮像装置の色信号生成部の構成を示すブロック図である。
【
図20】本発明の第7の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図21】本発明の第8の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図22】本発明の第9の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図23】本発明の第10の実施形態である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図24】第10の実施形態である撮像装置の色信号生成部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下に説明する各実施形態は、本発明に係る撮像装置を、車両周囲の監視を行って、撮像された画像または撮像された画像の認識結果に基づく警報や警告灯を車両の乗員に提示する周囲監視装置に適用した例である。
【0017】
なお、本明細書の記載において、「赤外」という用語を「近赤外」と同等に用いることがある。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る撮像装置10は車両(図示省略)に設置されている。撮像装置10は、
図1に示すように、被写体を観測する光学系101と、撮像素子102と、信号分離部103と、色信号生成部104aと、輝度信号生成部105と、輝度信号補正部106と、色差信号生成部107と、色輝度合成部108とを有する。
【0019】
(撮像装置の概略構成)
本実施形態に係る撮像装置10は、光学系101及び撮像素子102を除き、CPU、FPGAなどのプログラマブルロジックデバイス、ASIC等の集積回路に代表される演算素子、及び、ハードディスクドライブ等の大容量記憶媒体やROM、RAM等の半導体記憶媒体などの記憶媒体、さらには外部機器との間のインタフェース回路を有する。記憶媒体には図略の制御用プログラムが格納されており、この制御用プログラムが撮像装置10の起動時に演算素子により実行されて、撮像装置10は
図1に示すような機能構成を備えたものとなる。特に、本実施形態の撮像装置10は、後述するように高速の画像処理を行うので、高速演算可能な演算素子、例えばFPGAなどを有することが好ましい。
【0020】
光学系101は、レンズやミラー等の光学素子から構成されて、被写体から出射した光または被写体で反射した光を、後述する撮像素子102の図略の撮像面に結像させる光学系である。光学系101は、車載監視用途の撮像装置の場合には、一般に狭角、広角、魚眼等のパンフォーカスレンズが用いられる。さらに、ズーム機構やオートフォーカス機構を備えたレンズ系が用いられてもよいし、絞りやシャッターを備えたレンズ系が用いられてもよい。また、画質や色再現性の向上のために光学ローパスフィルタや帯域分離フィルタや偏光フィルタ等の各種フィルタ類を備えたレンズ系が用いられてもよい。
【0021】
撮像素子102は複数の画素から構成されており、光学系101によりその撮像面に結像された被写体の像に基づく入射光を、その輝度に応じた出力電圧信号に光電変換する。光電変換された出力電圧信号は、撮像素子102の内部に備えられたアンプ(図示省略)、更に同じく撮像素子102の内部に備えたADコンバータ(図示省略)を通してデジタル化されて、出力信号RAW0が生成される。出力信号RAW0として、例えば、12ビット(0~4095)にデジタル化された信号が出力される。
【0022】
撮像素子102としては、最大120dB程度の入力輝度のダイナミックレンジを有するCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の光電変換素子が用いられる。なお、撮像素子102を構成する各画素の上には、透過する波長帯域が異なる4種類のフィルタ(赤色フィルタR、緑色フィルタG、青色フィルタB、透明フィルタC)がそれぞれ規則的に配列され、これら4種類のフィルタにより光学フィルタが構成されている。
【0023】
信号分離部103は、撮像素子102に対して撮像を行うタイミングを指示するとともに、撮像素子102で撮像された出力信号RAW0を受けて、同一の2つの出力信号RAW0、RAW0に分離する。
【0024】
色信号生成部104aは、信号分離部103で分離された信号のうち一方の出力信号RAW0を、R,G,B,Cの各色フィルタを透過した光にそれぞれ対応する4つの信号に分離する。このとき、撮像素子102のうち、例えば赤色フィルタRが配置された画素からは赤色成分のみしか得られないため、色信号生成部104aは対象画素の近傍の画素の出力を用いて線形補間を行い、対象画素における線形色信号を予測する。
【0025】
次いで、色信号生成部104aは、線形補間された色信号から赤色成分、緑色成分、青色成分からなる可視光成分と近赤外光成分とを算出し、この近赤外光成分に第一の所定値を乗じた値を可視光成分のそれぞれから減算した赤外減算信号を算出する。そして、色信号生成部104aは、算出した赤外減算信号が0以下であったときに、この赤外減算信号を0とする赤外減算信号補正値を算出する。この後、色信号生成部104aは、赤外減算信号補正値にいわゆるホワイトバランス処理、言い換えれば色温度補正処理を行う。
【0026】
そして、色信号生成部104aは、色温度補正処理を行った赤外減算信号補正値に、近赤外光成分に第二の所定値を乗じた値を加算して色信号強度調整信号を算出し、これを色信号生成部104aの出力色信号(R0,G0,B0)とする。色信号生成部104aの動作の詳細については後に詳述する。
【0027】
輝度信号生成部105は、信号分離部103で分離された信号のうち他方の出力信号RAW0から輝度信号Y0を生成する。この際、ローパスフィルタや、バンドパスフィルタなどのディジタルフィルタを用いて周波数選択のためのディジタルフィルタリングを実施することも可能である。
【0028】
輝度信号補正部106は、輝度信号生成部105で生成された輝度信号Y0に対してガンマ補正やヒストグラム補正等のコントラスト調整を実施して、輝度補正信号Y1を生成する。
【0029】
色差信号生成部107は、色信号生成部104aの出力色信号(R0,G0,B0)を用いて色差信号(U1,V1)を算出する。
【0030】
そして、色輝度合成部108は、色差信号生成部107から出力された色差信号(U1、V1)と輝度信号補正部106から出力された輝度補正信号Y1とを合成し、YUV形式の映像信号を生成する。この後、色輝度合成部108から出力される映像信号は、例えば表示用モニタなどの図略の画像出力部に出力される。
【0031】
(撮像素子のフィルタ構成の説明)
撮像素子102は、出力電圧信号を出力する複数の画素を二次元的に備えている。各画素の受光面の上には、
図10(a)に示すように、可視光を波長毎に選択的に透過し、かつ近赤外光に対しては互いに等しい透過率をもつ3種類のフィルタX,Y,Zと、可視光の波長毎の透過率を3種類のフィルタの透過率の線形和で表すことができ、かつ近赤外光に対しては3種類のフィルタと等しい透過率をもつ第4のフィルタTとが規則的に配列された光学フィルタが形成されている。
【0032】
図11(a)は、このような特性を有する光学フィルタの例として、多くの撮像素子に用いられているRGBフィルタを配列した撮像素子102の波長毎の出力値である分光感度Sを示している。すなわち、
図10(b)に示すように、3種類のフィルタX,Y,Zがそれぞれ、赤色フィルタR,緑色フィルタG,青色フィルタBに対応し、第4のフィルタTに対応するフィルタとして、近赤外光を含む可視光全体を透過する透明フィルタCを適用した例である。
【0033】
図11(a)において、可視光と近赤外光の境目は曖昧であるが、一般的に約700nm~約850nmの波長領域と考えてよく、この波長領域よりも高波長領域では、4種類のフィルタの分光透過率に差がないため、4種類のフィルタを透過した光がそれぞれ入射した画素の出力値は互いに漸近する。
【0034】
本実施形態に係る撮像装置10は、このような4種類のフィルタの特性を活用したものであり、撮像素子102の特性に基づき4種類の色フィルタの出力値が十分に漸近して一致するとみなした点(
図11(a)の例では、波長840nm付近)を可視光領域と近赤外光領域の境界とみなして、撮像素子102の出力信号の中から、可視光領域に占める成分(可視光成分)と近赤外光領域に占める成分(近赤外光成分)とを分離した後、近赤外光成分を用いて可視光成分を補正することを特徴としている。
【0035】
次に、この4種類のフィルタの特性に関して説明する。4種類のフィルタX,Y,Z,Tの可視光領域の任意の波長における透過率を、それぞれXT,YT,ZT,TTとすると、それらの関係は次式のように表せる。
[数1]
TT=αXT+βYT+γZT …(1)
【0036】
このように、第4のフィルタTの透過率TTは3種類のフィルタX,Y,Zの各透過率XT,YT,ZTの線形和で表すことができ、正負を問わない係数α,係数β,係数γが一意に定まるものとする。すなわち、撮像装置10は(1)式の条件を満たす4色のフィルタを使用する必要があるが、これは、多くの撮像素子に利用されているRGBフィルタを用いることによって実現できる。そして、さらに、第4のフィルタTとして、近赤外光を含む可視光領域全体を透過する透明(Clear)フィルタCを用いればよい。
【0037】
これら4種類のフィルタの波長λに対する分光特性から、
図11(a)に示すような撮像素子102の分光感度Sが得られる。そして、詳細な説明は省略する階調変換処理によって、撮像素子102に対する入力輝度と撮像素子102から出力される出力電圧信号との関係を線形関係に変換することによって、
図11(b)に示す分光感度Sが得られる。そして、
図11(b)に示す分光感度Sから、(1)式に示した係数α,β,γの値を算出することができる。
【0038】
係数α,β,γの値は、複数の異なる波長λの光に対して計測された分光感度Sから、最小二乗法を用いて、真値に対して許容範囲内に収まるような値を設定することができる。そして、本実施例は、RGBCフィルタ配列に限らず、(1)式の関係式で表すことができる任意の4種類のフィルタ配列に適用することができる。
【0039】
(色信号生成部の構成)
図2は、本実施形態の撮像装置10における色信号生成部104aの構成を示すブロック図である。色信号生成部104aは、
図2に示すように、色分離部1041と、色線形補間処理部1042と、赤外分離部1043と、赤外減算算出部1044と、赤外加算算出部1045と、赤外減算処理部1046と、色温度補正部1047と、赤外信号加算部1048とを有する。
【0040】
色分離部1041は、信号分離部103で分離された信号のうち一方の出力信号RAW0を、出力信号RAW0を構成する各色に対応する4つの色信号(R1,G1,B1,C1)に分離する。このとき、信号がない画素は出力を0(空白)とする。
【0041】
色線形補間処理部1042は、色分離部1041において信号を分離する際に発生した空白の画素において観測されると予想される画素値を、近傍の画素値を用いて線形補間する。そして、全ての画素において、それぞれ4つの線形色信号(R2,G2,B2,C2)を生成する。
【0042】
この線形補間の方法について、
図10(c)を用いて具体的に説明する。
図10(c)のように配列されたフィルタにおいて、例えば、B22で示される画素には、青色光を透過するフィルタが配列されている。したがって、B22で示される画素からは、青色に対応する出力電圧信号が得られるのみである。
【0043】
したがって、B22で示される画素から出力されると予想される赤色光、緑色光、白色光に対応する信号は、B22で示される画素の周囲の出力電圧信号を補間して予測する必要がある。
【0044】
例えば、B22で示される画素から出力されると予想される赤色光成分は、B22で示される画素に隣接する画素のうち、赤色フィルタRが配列された画素であるR11,R13,R31,R33で示される画素の出力電圧信号の平均値を当てはめることによって予測する。
【0045】
また、B22で示される画素から出力されると予想される緑色光成分は、B22で示される画素に隣接する画素のうち、緑色フィルタGが配列された画素であるG12,G32で示される画素の出力電圧信号の平均値を当てはめることによって予測する。
【0046】
そして、B22で示される画素から出力されると予想される白色光成分は、B22で示される画素に隣接する画素のうち、透明フィルタCが配列された画素であるC21,C23で示される画素の出力電圧信号の平均値を当てはめることによって予測する。
【0047】
なお、このとき、単に補間するだけではなく、ローパスフィルタや、バンドパスフィルタなどのディジタルフィルタを用いて周波数選択のためのディジタルフィルタリングを実施してもよい。
【0048】
近赤外光強度取得部として機能する赤外分離部1043は、色線形補間処理部1042の出力信号の中に含まれる近赤外光成分の強度を取得する。より詳細には、赤外分離部1043は、一般的な線形特性を持つ撮像素子を用いた撮像装置で実施されている技術(ターゲットカラーに基づくリニアマトリクス演算)により、撮像装置10によって再現される色がターゲットカラーとなるように色信号補正処理を行う。
【0049】
具体的には、赤外分離部1043は、色線形補間処理部1042から出力された色信号(R2,G2,B2,C2)に対して、次式に示すようなリニアマトリクス演算を行い、出力が飽和していない非飽和画素(通常画素)で再現される色がターゲットカラーとなるように補正して、補正された4つの線形補正色信号(R3,G3,B3,Ir3)を出力する。ここでは、Ir3は赤外成分の強度を表す。
[数2]
ここに、係数x11~x14、y11~y14、z11~z14及びt11~t14は、上述のように、線形補正色信号(R3,G3,B3,Ir3)がターゲットカラーとなるように補正を行うための係数である。事前に標準となる色を有する被写体を撮像装置10により撮像して、撮像素子102からの出力信号RAW0に基づいて得られた色信号(R2,G2,B2,C2)が所望の線形補正色信号(R3,G3,B3,Ir3)となるようにこれら係数が定められる。
【0050】
赤外分離部1043から出力される4つの線形補正色信号(R3,G3,B3,Ir3)のうち、可視光成分に対応する信号(R3,G3,B3)は赤外減算処理部1046に入力され、近赤外光成分に対応する信号Ir3は、赤外減算算出部1044及び赤外加算算出部1045にそれぞれ入力される。
【0051】
赤外減算算出部1044は、赤外分離部1043から出力された赤外信号Ir3に対し、1に赤外除去係数αを加算した値を乗算し、赤外除去信号Ir_subを出力する。
[数3]
Ir_sub=Ir3*(1+α)
このαは可視光成分の色信号と近赤外光成分の信号の比率において、無色化を行う閾値をあらわし、0以上の値を取る。
【0052】
赤外加算算出部1045は、赤外分離部1043から出力された赤外信号Ir3に対し、赤外加算係数βを乗算した赤外加算信号Ir_addを出力する。
[数4]
Ir_add=Ir3*β
このβは処理における色ずれを補正するための係数であり、原理的にα=βで使用するが、αとβとの比率を変更して使用しても良い。
【0053】
赤外減算処理部1046は、赤外信号減算部1046a及び赤外減算信号補正部1046bを有する。赤外信号減算部1046aは、赤外分離部1043から出力された色信号(R3,G3,B3)に対し、赤外減算算出部1044から出力された赤外除去信号を減算した赤外減算信号(R3-Ir_sub,G3-Ir_sub,B3-Ir_sub)を算出する。赤外減算信号補正部1046bは、赤外信号減算部1046aが算出した赤外減算信号と0のいずれか大きいほうである赤外減算信号補正値(R4,G4,B4)を出力する。
[数5]
R4=max(R3-Ir_sub,0)
G4=max(G3-Ir_sub,0)
B4=max(B3-Ir_sub,0)
この処理により、可視光成分の色信号における近赤外光成分の信号の比率が閾値を超えたものが無色となる。
【0054】
色温度補正部1047は、赤外減算処理部1046から出力された色信号(R4,G4,B4)それぞれに対し、色温度に応じた補正係数(WR,WG,WB)を乗算する。
[数6]
R5=R4*WR
G5=G4*WG
B5=B4*WB
この処理は、通常ホワイトバランス処理と呼ばれるもので、色温度に応じた補正係数を乗算するのは一般的な処理である。この際、色温度補正部1047によるホワイトバランス処理は、赤外減算処理部1046による演算の結果無色(つまりR4=G4=B4=0)となった画素が着色しない処理であることが必要となる。
【0055】
赤外信号加算部1048は、色温度補正部1047から出力された色信号(R5,G5,B5)それぞれに対し、赤外加算算出部1045から出力された赤外加算信号Ir_addを加算し、色信号強度調整信号(R6、G6,B6)を出力する。
[数7]
R6=R5+Ir_add
G6=G5+Ir_add
B6=B5+Ir_add
この処理は、無色化された箇所においては、R5=G5=B5=0であり、処理結果はR6=G6=B6となる。これは、RGBが同一値は無色をあらわし、処理によっても色がつくことはない。また、無色化されていない箇所においては色ずれを補正する効果となる。加算結果である色信号強度調整信号(R6、G6,B6)が色信号生成部104aの出力色信号(R0,G0,B0)となる。
【0056】
(色信号生成部の作用)
次に、
図3~
図9を用いて、本実施形態の撮像装置10に用いられる色信号生成部104aの作用について説明する。
【0057】
既に説明したように、上述した特許文献1では、
図3に示すように可視光領域の色信号から近赤外光領域の色信号を100%除去している。これにより、例えば近赤外光のみを発する光源を撮像装置により撮像すると、光源が有する近赤外光成分を全て除去することができ、可視光領域の色成分は理想的には0になる。これにより、ダイナミックレンジが大きい被写体を撮像した場合でも、適切なカラー画像を生成することができる。
【0058】
ここに、
図3においては撮像素子からの出力信号にノイズ成分が含まれていない理想的な状態を示す。従って、演算結果である赤色成分R、緑色成分G、青色成分Bは次式により表される。
[数8]
(R+Ir)-Ir=R
(G+Ir)-Ir=G
(B+Ir)-Ir=B
【0059】
しかしながら、実際には、撮像素子から出力される出力信号にノイズ成分Nが含まれることを避けることはできない。
【0060】
図4に示すように、色信号における近赤外光成分の比率が小さい場合、ノイズ成分Nのうち近赤外光成分に対応する成分は近赤外光成分に比例するので、
図3と同様に可視光成分から近赤外光成分を全て除去しても、可視光成分における各色成分の比は大きく変化しないので、色再現性という観点からは大きな問題にはならない。
【0061】
ノイズ成分Nのうち赤色成分Rに対応する成分をNr、緑色成分Gに対応する成分をNg、青色成分Bに対応する成分をNb、近赤外光成分Irに対応する成分をNirとすると、近赤外光成分Irを可視光成分から除去した結果は次式のようになる。
[数9]
(R+Ir+Nr)-(Ir+Nir)=R+Nr-Nir
(G+Ir+Ng)-(Ir+Nir)=G+Ng-Nir
(B+Ir+Nb)-(Ir+Nir)=B+Nb-Nir
【0062】
色信号における近赤外光成分の比率が小さいことから、Nr-Nir、Ng-Nir、Nb-Nirの値も支配的なものとならず、従って、色再現性を大きく損なうことない画像処理を行うことができる。
【0063】
一方、
図5に示すように、色信号における近赤外光成分の比率が大きい場合、ノイズ成分Nのうち近赤外光成分に対応する成分Nirも大きくなるので、近赤外光成分Irを可視光成分から除去した結果はノイズ成分Nが支配的となり、正確な色再現が難しくなる。つまり、近赤外光成分を除去した可視光成分にノイズ成分が残留し、残留したノイズ成分を含む色信号が、本来の色とは異なる偽色と呼ばれる色ノイズとなる可能性があった。
【0064】
本実施形態の撮像装置10、特に色信号生成部104aは、近赤外光成分の信号に1と0以上の係数αとを加算した値である(1+α)を乗算したものを可視光成分の色信号から減算する。可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が大きい場合、減算された値はマイナスとなるので、その場合の値は0で置き換える。この処理により、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における、近赤外光成分の比率が大きい箇所においての色成分は0、すなわち無色となる。
【0065】
可視光成分の色信号から過剰に近赤外光成分の信号が除去される(つまり近赤外光成分の信号に1+αを乗算したものが減算される)ことにより、無色となった箇所以外の「色の信号」では、色ずれ現象が発生する。この色ずれを修正するため、色信号生成部104aは、減算された信号に対して、近赤外光成分の信号に0以上の係数βを乗算したものを加算する。原理的には係数βはαと等しいことが好ましいが、αとβの係数の組合せは任意に設定してもよい。この処理では、減算処理において無色となった箇所は無色のまま変化せず、無色でない箇所のみ色ずれを修正できる。
【0066】
これにより、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が大きい場合、例えば、近赤外光成分のみの信号における色成分を完全に0(無色)とすることができ、ノイズ成分を除去できるだけでなく、近赤外光成分の比率が大きくない箇所における色再現の両立が実現可能となる。
【0067】
本実施形態の色信号生成部104aの作用の詳細を、
図6~
図9を参照してさらに詳細に説明する。
【0068】
図6~
図7は、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が大きい場合における、本実施形態の色信号生成部104aの作用を説明する図である。
【0069】
図6(a)は、撮像素子102からの出力信号をフィルタ処理することにより得られる、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号と近赤外光成分の信号を示す。
【0070】
図6(b)は、
図6(a)における近赤外光成分の信号に対し、1+αを乗算したもの、および、βを乗算したものを示す。0以上の係数αに1を加えたものを乗算することにより、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が大きい場合は、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号よりも近赤外光成分の信号に1+αを乗算した値のほうが大きくなる。
【0071】
図6(c)は、
図6(a)における可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号から、
図6(b)における近赤外光成分の信号に1+αを乗算した値を減算した値を示す。この例においては、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が大きいため、RGB各成分のそれぞれが0以下となっている。
【0072】
図6(d)は、
図6(c)のRGB各成分において0以下の値を0に置き換えたものを示す。この結果として、R=G=B=0すなわち無色となる。
【0073】
図7(a)は、
図6(d)のRGB信号に対してホワイトバランス処理をした結果を示す。この図に示すホワイトバランス処理は、ホワイトバランス調整として一般的なRGB各成分に対して係数(WR、WG、WB)を乗算したものである。0に対する乗算のため、値は0のまま変化しない。
【0074】
図7(b)は、
図7(a)に示すホワイトバランス処理後のRGB各成分に、近赤外光成分の信号にβを乗算した値を加算した結果を示す。RGBそれぞれの信号に対し同一の値を加算しているため、処理後の値はR=G=Bとなっている。これは色が無い状態すなわち、無色を表している。
【0075】
以上から、本実施形態の撮像装置10、特に色信号生成部104aによれば、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が大きい場合、近赤外光成分のみの信号における色成分を完全に0(無色)とすることができ、ノイズ成分を除去できる。
【0076】
次に、
図8~
図9は、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が小さい場合における、本実施形態の色信号生成部104aの作用を説明する図である。
【0077】
図8(a)は、
図6(a)と同様に、撮像素子102からの出力信号をフィルタ処理することにより得られる、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号と近赤外光成分の信号を示す。
【0078】
図8(b)は、
図6(b)と同様に、
図8(a)における近赤外光成分の信号に対し、1+αを乗算したもの、および、βを乗算したものを示す。
【0079】
図8(c)は、
図8(a)に示す可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号から近赤外光成分の信号を減算したものを示す。これは、本実施形態の色信号生成部104aによる色信号処理において、本来表現されるべき色であるといえる。
【0080】
図8(d)は、
図6(c)と同様に、
図8(a)における可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号から、
図8(b)における近赤外光成分の信号に1+αを乗算した値を減算した値を示す。
図8(d)に示すRGB各成分の値は
図8(c)に示す値と異なっている。すなわち色ずれが発生している。
【0081】
図9(a)は、
図7(a)と同様に、
図8(d)のRGB信号に対してホワイトバランス処理をした結果を示す。
【0082】
図9(b)は、
図7(b)と同様に、
図9(a)に示すホワイトバランス処理後のRGB各成分に、近赤外光成分の信号にβを乗算した値を加算した結果を示す。この処理により、色ずれが改善することがわかる。
【0083】
以上から、本実施形態の撮像装置10、特に色信号生成部104aによれば、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が小さい場合、色信号生成部104aによる色信号処理の結果における色ずれを改善することができる。
【0084】
(撮像装置の動作)
次に、
図12のフローチャートを用いて、本実施形態の撮像装置の動作について再度説明する。
【0085】
(ステップS10)信号分離部103から撮像素子102に対して撮像タイミングが指示されて、撮像素子102による撮像が行われる。
【0086】
(ステップS12)撮像素子102が光学系101を透過した光を受光して光電変換を行い、出力信号RAW0を出力する。
【0087】
(ステップS14)信号分離部103が出力信号RAW0を同一の2つの出力信号RAW0,RAW0に分離する。
【0088】
(ステップS16)色分離部1041が、信号分離部103で分離された信号のうち一方の出力信号RAW0を、出力信号RAW0を構成する各色に対応する4つの色信号(R1,G1,B1,C1)に分離する。
【0089】
(ステップS18)色線形補間処理部1042が、色分離部1041における分離の際に発生する空白の画素に対して、近傍の画素の値を用いて線形補間を行い、4つの線形色信号(R2,G2,B2,C2)を生成する。
【0090】
(ステップS20)近赤外光強度取得部である赤外分離部1043が、色線形補間処理部1042の出力信号の中に含まれる近赤外光成分の強度を取得する。より詳細には、赤外分離部1043が、色線形補間処理部1042から出力された色信号(R2,G2,B2,C2)に対してリニアマトリクス演算を行い、補正された4つの線形補正色信号(R3,G3,B3,Ir3)を出力する。
【0091】
(ステップS22)赤外減算算出部1044が、赤外分離部1043から出力された赤外信号Ir3に対し、1に赤外除去係数αを加算した値を乗算し、赤外除去信号Ir_subを出力する。
【0092】
(ステップS24)赤外加算算出部1045が、赤外分離部1043から出力された赤外信号Ir3に対し、赤外加算係数βを乗算した赤外加算信号Ir_addを出力する。
【0093】
(ステップS26)赤外減算処理部1046の赤外信号減算部1046aが、赤外分離部1043から出力された色信号(R3,G3,B3)に対し、赤外減算算出部1044から出力された赤外除去信号を減算した赤外減算信号(R3-Ir_sub,G3-Ir_sub,B3-Ir_sub)を算出し、さらに、赤外減算処理部1046の赤外減算信号補正部1046bが、赤外減算信号と0のいずれか大きいほうである赤外減算信号補正値(R4,G4,B4)を出力する。
【0094】
(ステップS28)色温度補正部1047が、赤外減算処理部1046から出力された色信号(R4,G4,B4)それぞれに対し、色温度に応じた補正係数(WR,WG,WB)を乗算して、色温度補正後の色信号(R5,G5,B5)を出力する。
【0095】
(ステップS30)赤外信号加算部1048が、色温度補正部1047から出力された色信号(R5,G5,B5)それぞれに対し、赤外加算算出部1045から出力された赤外加算信号Ir_addを加算し、色信号強度調整信号(R0、G0,B0)を出力する。
【0096】
(ステップS32)色差信号生成部107が、色信号生成部104aの出力色信号(R0,G0,B0)を用いて色差信号(U1,V1)を算出する。
【0097】
(ステップS34)輝度信号生成部105が出力信号RAW0から輝度信号Y0を生成する。
【0098】
(ステップS36)輝度信号補正部106が、輝度信号Y0に対してガンマ補正やヒストグラム補正等のコントラスト調整を実施して、輝度補正信号Y1を生成する。
【0099】
(ステップS38)色輝度合成部109が、色差信号(U1,V1)と輝度補正信号Y2を合成してYUV形式の映像信号を生成する。
(第1の実施形態の効果)
【0100】
以上のように構成された本実施形態の撮像装置10では、赤外信号減算部1046aが、近赤外光成分の強度の値に第一の所定値である1+αを乗じた値を出力信号の強度の値から減算して赤外減算信号を生成し、この赤外減算信号の値が0以下であったときに、赤外減算信号補正部1046bが赤外減算信号の値を0とする赤外減算信号補正値を算出し、そして、この赤外減算信号補正値に、赤外信号加算部1048が近赤外光成分の強度の値に第二の所定値であるβを乗じた値を加算して色信号強度調整信号を生成する。
【0101】
このようにすることで、上述した色信号生成部104aの作用で説明したように、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が大きい場合、近赤外光成分のみの信号における色成分を完全に0(無色)とすることができ、ノイズ成分を除去できる。一方、可視光成分と近赤外光成分とが合成された色信号における近赤外光成分の比率が小さい場合、色信号生成部104aによる色信号処理の結果における色ずれを改善することができる。従って、本実施形態の撮像装置10によれば、撮像された画像信号の中に含まれる近赤外光成分の量によらずに、ノイズの影響を抑えて、人間の視覚に近い色再現性を持った色信号を得ることが可能となる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、
図13を参照して、本発明の第2の実施形態である撮像装置について説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図である。
【0103】
上述した第1の実施形態である撮像装置10では、撮像素子102で撮像された出力信号RAW0を信号分離部103により同一の2つの出力信号RAW0、RAW0に分離し、それぞれ色信号及び輝度信号に分離して処理し、色輝度合成部108において合成して出力していたが、処理の軽減を目的として、色信号と輝度信号とを分離せずに処理を行ってもよい。
【0104】
かかる観点から、本実施形態の撮像装置10では、第1の実施形態で設けられていた信号分離部103に代えて撮像素子制御部110を設け、この撮像素子制御部110により撮像素子102に対して撮像を行うタイミングを指示するとともに、撮像素子102で撮像された出力信号RAW0を色信号生成部104aに出力している。
【0105】
さらに、色信号と輝度信号とに分離して処理をしていないことから、輝度信号生成部105、輝度信号補正部106及び色輝度合成部108を省略している。
【0106】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第1の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0107】
(第3の実施形態)
次に、
図14は、本発明の第3の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図である。
【0108】
撮像装置10からの出力である映像信号はYUV形式に限定されず、RGB形式であってもよい。かかる観点から、第3の実施形態である撮像装置10は、第2の実施形態である撮像装置10において色差信号生成部107を省略し、色信号生成部104aから直接RGB形式の映像信号を出力している。
【0109】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第2の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
(第4の実施形態)
次に、
図15は、本発明の第4の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図、
図17は、本実施形態の撮像装置10における色信号生成部104bの構成を示すブロック図である。
【0111】
上述した第1の実施形態である撮像装置10では、輝度信号として可視光成分の信号と近赤外光成分の信号との両方を使用していた。これは、近赤外光成分の信号を使用することで、暗い箇所を明るく表示するためである。一方、近赤外光成分の信号を使用すると、出力された映像信号の特性が人間の眼の特性と異なってくる。
【0112】
かかる観点から、本実施形態の撮像装置10では、近赤外光成分を除いた色信号に基づくカラー映像と、近赤外光成分に基づくモノクロ映像とを同時に出力している。
【0113】
具体的には、
図17に示すように、色信号生成部104bの赤外分離部1043aは、色線形補間処理部1042から出力された色信号(R2,G2,B2,C2)に対してリニアマトリクス演算を行った4つの線形補正色信号(R3,G3,B3,Ir3)を出力し、可視光成分に対応する信号(R3,G3,B3)を赤外減算処理部1046に出力し、近赤外光成分の強度に対応する信号Ir3を赤外減算算出部1044及び赤外加算算出部1045にそれぞれ出力するとともに、信号Ir3を色信号生成部104bの近赤外光出力信号Ir0として出力する。
【0114】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第2の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0115】
(第5の実施形態)
次に、
図16は、本発明の第5の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図である。
【0116】
本実施形態の撮像装置10は、第4の実施形態の撮像装置10において、第3の実施形態と同様に、色差信号生成部107を省略し、色信号生成部104bから直接RGB形式の映像信号を出力している。
【0117】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第4の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0118】
(第6の実施形態)
次に、
図18は、本発明の第6の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図、
図19は、本実施形態の撮像装置10における色信号生成部104cの構成を示すブロック図である。
【0119】
上述した第1~第5の実施形態である撮像装置10では、撮像素子102にRGBCセンサを用いていたが、本実施形態の撮像装置10、及び以降説明する撮像装置10では撮像素子102aにRGBIrセンサを用いている。これに伴って、色信号生成部104cの構成も上述した第1~第5の実施形態である撮像装置10における色信号生成部104a、104bと異なっている。以下、第1~第5の実施形態である撮像装置10との相違点について詳細に説明する。
【0120】
撮像素子102aを構成する各画素の上には、透過する波長帯域が異なる4種類のフィルタ(赤色フィルタR、緑色フィルタG、青色フィルタB、近赤外フィルタIr)がそれぞれ規則的に配列され、これら4種類のフィルタにより光学フィルタが構成されている。
【0121】
また、
図19に示すように、色信号生成部104cの色分離部1041aは、信号分離部103で分離された信号のうち一方の出力信号RAW0を、出力信号RAW0を構成する各色に対応する4つの色信号(R1,G1,B1,Ir1)に分離する。
【0122】
色線形補間処理部1042aは、色分離部1041aにおいて信号を分離する際に発生した空白の画素において観測されると予想される画素値を、近傍の画素値を用いて線形補間する。そして、全ての画素において、それぞれ4つの線形色信号(R2,G2,B2,Ir2)を生成する。
【0123】
赤外分離部1043bは、色線形補間処理部1042aから出力された色信号(R2,G2,B2,Ir2)に対して、次式に示すようなリニアマトリクス演算を行い、出力が飽和していない非飽和画素(通常画素)で再現される色がターゲットカラーとなるように補正して、補正された4つの色信号(R3,G3,B3,Ir3)を出力する。
[数10]
【0124】
近赤外光強度取得部1043b-1及び赤外信号減算部1043b-2として機能する本実施形態の赤外分離部1043bは、上述した第1の実施形態である撮像装置10の色信号生成部104aにおける赤外減算算出部1044、赤外加算算出部1045の処理、及び赤外信号減算部1046aの処理を同時に実施することができる。
【0125】
すなわち、x14′、y14′、z14′の値をそれぞれ-(1+α)にし、t11′~t13′の値をそれぞれ0、t14′の値をβにすることで、赤外分離部1043bからの出力信号(R3,G3,B3,Ir3)を次式のようにすることができる。
[数11]
R3=R2-Ir_sub
G3=G2-Ir_sub
B3=B2-Ir_sub
Ir3=Ir2*β
つまり、赤外分離部1043bから出力された色信号(R3,G3,B3)は赤外減算信号であり、近赤外信号Ir3は赤外加算信号となる。ここで、
[数12]
Ir_sub=Ir2*(1+α)
である。
【0126】
赤外減算信号補正部として機能する色信号リミッタ部1049は、赤外分離部1043bから出力された赤外減算信号(R3,G3,B3)と0のいずれか大きいほうである赤外減算信号補正値(R4,G4,B4)を出力する。
[数13]
R4=max(R3,0)
G4=max(G3,0)
B4=max(B3,0)
【0127】
そして、赤外信号加算部1048aは、色温度補正部1047から出力された色信号(R5,G5,B5)それぞれに対し、赤外分離部1043bから出力された赤外加算信号Ir3を加算し、色信号強度調整信号(R6、G6,B6)を出力する。
[数14]
R6=R5+Ir3
G6=G5+Ir3
B6=B5+Ir3
【0128】
このようにして、本実施形態の撮像装置10によっても、上述の第1の実施形態の撮像装置10と同一の出力である映像信号を得ることができる。
【0129】
(第7の実施形態)
次に、
図20は、本発明の第7の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図である。
【0130】
本実施形態の撮像装置10は、第6の実施形態の撮像装置10において、第2の実施形態である撮像装置10と同様に、処理の軽減を目的として、色信号と輝度信号とを分離せずに処理を行ったものである。
【0131】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第2、第6の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0132】
(第8の実施形態)
次に、
図21は、本発明の第8の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図である。
【0133】
本実施形態の撮像装置10は、第6の実施形態の撮像装置10において、第3の実施形態である撮像装置10と同様に、色信号生成部104cから直接RGB形式の映像信号を出力している。
【0134】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第3、第6の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0135】
(第9の実施形態)
次に、
図22は、本発明の第9の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図、
図24は、本実施形態の撮像装置10における色信号生成部104dの構成を示すブロック図である。
【0136】
本実施形態の撮像装置10は、第6の実施形態の撮像装置10において、第4の実施形態である撮像装置10と同様に、近赤外光成分を除いた色信号に基づくカラー映像と、近赤外光成分に基づくモノクロ映像とを同時に出力している。
【0137】
具体的には、
図24に示すように、近赤外光強度取得部1043c-1及び赤外信号減算部1043c-2として機能する色信号生成部104dの赤外分離部1043cは、色線形補間処理部1042から出力された色信号(R2,G2,B2,C2)に対してリニアマトリクス演算を行った4つの色信号(R3,G3,B3,Ir3)を出力する。
[数15]
【0138】
ここに、x14′、y14′、z14′の値はそれぞれ-(1+α)にする一方、t11″~t13″の値を0に、t14″の値を1にすることで、赤外分離部1043cからの出力信号(R3,G3,B3,Ir3)を次式のようにすることができる。
[数16]
R3=R2-Ir_sub
G3=G2-Ir_sub
B3=B2-Ir_sub
Ir3=Ir2
つまり、赤外分離部1043bから出力された色信号(R3,G3,B3)は赤外減算信号となる。ここに、既に説明したように、
[数17]
Ir_sub=Ir2*(1+α)
である。
【0139】
赤外分離部1043cから出力される4つの色信号(R3,G3,B3,Ir3)のうち、信号(R3,G3,B3)は赤外減算信号補正部として機能する色信号リミッタ部1049に入力され、近赤外光成分に対応する信号Ir3は、赤外加算算出部1045にそれぞれ入力されるとともに、色信号生成部104bの近赤外光出力信号Ir0として出力される。
【0140】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第4、第6の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0141】
(第10の実施形態)
次に、
図23は、本発明の第10の実施形態である撮像装置の概略構成を示す図である。
【0142】
本実施形態の撮像装置10は、第9の実施形態の撮像装置10において、第8の実施形態と同様に、色差信号生成部107を省略し、色信号生成部104dから直接RGB形式の映像信号を出力している。
【0143】
それ以外の各ブロックの構成及び作用、動作については上述の第8、第9の実施形態である撮像装置10と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0144】
(その他)
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
10 撮像装置
102、102a 撮像素子
1043、1043a 赤外分離部(近赤外光強度取得部)
1043b-1、1043c-1 近赤外光強度取得部
1043b-2、1043c-2、1046a 赤外信号減算部
1046b 赤外減算信号補正部
1048、1048a 赤外信号加算部
1049 色信号リミッタ部(赤外減算信号補正部)