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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】流動化砂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20220810BHJP
   E02D 3/10 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D3/10 104
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018101648
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019206814
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 英典
(72)【発明者】
【氏名】今井 優輝
(72)【発明者】
【氏名】永石 雅大
(72)【発明者】
【氏名】中井 啓二
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-192650(JP,A)
【文献】特開2004-044179(JP,A)
【文献】特開2015-059070(JP,A)
【文献】特開2015-183466(JP,A)
【文献】特開2018-053701(JP,A)
【文献】特開2005-036502(JP,A)
【文献】特開2004-060326(JP,A)
【文献】米国特許第05647690(US,A)
【文献】特開2019-104805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
E02D 15/00-15/10
E02D 7/00-13/10
E02D 5/22-5/80
C09K 17/00-17/52
C09K 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動化砂製造部で砂材料に含水比調整用水と共に流動化剤を加えて混合する流動化砂の製造方法において、
前記流動化砂製造部で混合された流動化砂を受け入れると共に、流動化砂用の体積計測手段及び重量計測手段、並びに流動化砂中の空気量を増減調整する空気量増減手段として流動化砂中の空気を減らす空気脱気機構及び流動化砂中の空気を増やす空気追加機構を設けた密度調整部を有しており、
前記体積計測手段及び重量計測手段により前記流動化砂製造部から前記密度調整部に受け入れた流動化砂の密度及び混入している空気量を把握し、前記密度が所定の値ないしは範囲より低い場合は前記空気脱気機構により流動化砂から空気を抜いて高くなるよう調整し、密度が所定の値ないしは範囲より高い場合は前記空気追加機構により空気を流動化砂内に混入して低くなるよう調整することを特徴とする流動化砂の製造方法。
【請求項2】
前記空気脱気機構は振動機構又は/及び真空吸引機構であり、前記空気追加機構は攪拌機構又は/及び空気吹込み機構であることを特徴とする請求項1に記載の流動化砂の製造方法。
【請求項3】
前記砂材料に前記含水比調整用水及び前記流動化剤と共に遅効性塑性化剤を添加していることを特徴とする請求項1又は2に記載の流動化砂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂材料に含水比調整用水と共に流動化剤を加えて移送される流動化砂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築構造物の解体時、護岸や河川橋梁の架替え時には、多くの既設杭などが引抜き撤去されると共に、引抜きにより形成される引抜き孔や空洞を埋戻し材ないしは充填材(以下、充填材という)により充填される。この充填操作では、特に不完全な充填によって後で空隙や軟弱部が残ることに起因して引き込み沈下など様々な問題となる。
【0003】
詳述すると、従来の充填材としては現地発生土、流動化処理土、セメントスラリーが一般的である。このうち、セメントスラリーは、アルカリ溶出や地中障害物となるため敬遠されることが多い。充填方法は、杭等の引抜き後、地表側より充填材を投入する構成、杭等の引抜く際に管を脇に挿入し、充填材を自由落下か、ポンプ圧送にて注入する構成に大別される。前者では、孔底まで埋まらず空洞ができたり、引抜き時に孔内に落下した土砂が軟弱土として残り易い。後者では、充填材を杭等の引抜きに合わせて入れるため孔底の部分から良好に充填し易い。
【0004】
ところで、本出願人らは、矢板を引抜くと同時に引抜きで形成される孔に砂を確実に充填するため、特許文献1に開示のごとく矢板の内側面縦方向に砂投入筒を予め設けておき、矢板を地中から引抜くと同時に引抜き孔に砂投入筒を介して砂を投入する構成を開発している。しかし、このような構成では、打設前の矢板や杭に砂投入筒や砂投入管を付設しおかなくてはならず、既設杭や矢板の引抜きの場合に適用できない。
【0005】
また、本出願人らは、特許文献2に開示のごとく地盤改良用砂材料をポンプで圧送可能な流動化状態にし、地中に形成される孔にポンプ圧送することでコスト削減と環境負荷の低減を可能にした圧入式砂杭造成工法を開発し既に実用化している。この工法は、SAVE-SP工法(登録商標)とも称され、砂材料に含水比調整用水と共に流動化剤と遅効性塑性化剤を含有する流動化砂を、流動状態を保ったまま地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させる。すなわち、図4に示されるごとく中空管23を地盤中に貫入した後、中空管23を通して流動化砂を地中に圧入し地中に該流動化砂を残致し、この上に次のステップ分の流動化砂を圧入し、これを繰り返すことで所定長さの改良体25を造成する。符号10は流動化砂製造プラント、1は流動化砂供給手段、2は砂材料供給手段、3は流動化剤供給手段、4は圧送ポンプ、5は遅効性塑性化剤供給手段である。製造プラント10において、流動化砂は砂材料に水、流動化剤、遅効性塑性化剤の順に混合する。
【0006】
図5は流動化砂の状態変化を示した模式図である。(a)は圧入前の流動化砂を示す。流動化砂は、中空管から地盤中に圧入されるまでは流動化剤が砂の粒子同士の間隙水の粘性を高め、粒子同士の摩擦をなくし砂と水との分離を抑制して高い流動性を維持している。(b)は圧入中の流動化砂を示す。圧入中は流動化砂が脱水し密な状態に締め固められる。流動化剤は網状で残る。(c)は塑性化終了状態を示す。この状態では、遅効性塑性化剤が電気的に流動化剤を中和して流動化剤の網状構造を保持できなくなり粒子同士の摩擦を回復している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭61-254715号公報
【文献】特開2010-13885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した流動化砂は、取扱性及び充填性に優れていることから、地盤改良以外に、既設杭や矢板の引抜きにより形成される孔や空洞充填材としての適用を検討してきたが、次のようなことが問題となる。すなわち、流動化砂の物性管理は、主にテーブルフロー値、テクスチャー値、ブリーデイング値により調整管理されていた。この点は、特開2015-183466号公報(以下、参考文献1という)、特願2017-152091号(以下、参考文献2という)を参照されたい。理由は、流動化砂の製造において、製造中の流動化砂には空気が混合攪拌時に混入しその混入量も幅が大きいため、その体積や密度を管理したり調整が難しいものと考えられていた。また、上記SAVE-SP工法では、流動化砂が設定吐出圧力で地中に圧入されるが、該圧入により流動化砂に混入していた空気が分離されて地表側へ上昇排気され易いため改良体への影響がない。ところが、引抜きにより形成される引抜き孔や空洞を流動化砂で充填する場合は、圧入による周囲地盤への影響を抑えるため吐出圧力を低く設定される関係で、含有された空気が分離されずそのまま残る。このような背景から、本出願人らは流動化砂について物性値として密度で管理する方法を検討してきた。
【0009】
本発明の目的は、流動化砂の密度を比較的容易に調整管理できるようにし、例えば砂充填工法や圧入式砂杭造成工法への適用に際し、目的に応じた密度に管理した流動化砂、更にはより的確に評価可能な流動化砂を提供することにある。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、流動化砂製造部で砂材料に含水比調整用水と共に流動化剤を加えて混合する流動化砂の製造方法において、前記流動化砂製造部で混合された流動化砂を受け入れると共に、流動化砂用の体積計測手段及び重量計測手段、並びに流動化砂中の空気量を増減調整する空気量増減手段として流動化砂中の空気を減らす空気脱気機構及び流動化砂中の空気を増やす空気追加機構を設けた密度調整部を有しており、前記体積計測手段及び重量計測手段により前記流動化砂製造部から前記密度調整部に受け入れた流動化砂の密度及び混入している空気量を把握し、前記密度が所定の値ないしは範囲より低い場合は前記空気脱気機構により流動化砂から空気を抜いて高くなるよう調整し、密度が所定の値ないしは範囲より高い場合は前記空気追加機構により空気を流動化砂内に混入して低くなるよう調整することを特徴としている。
【0011】
ここで、本発明において、砂材料は、従来の流動化砂製造に用いられてきたものであればよく、純粋な砂に限られず、シルトや礫を含む砂、砂類似のスラグなどを含む広義な意味で使用している。また、本出願人らは、流動化砂に用いられる砂材料の適用範囲を拡大する構成として、参考文献1では高吸収性樹脂を含有させる構成、参考文献2では非イオン系の流動化保持剤を含有させる構成を開発している。本発明は、砂材料の適用範囲を拡大するため、必要に応じてそのような高吸収性樹脂や非イオン系の流動化保持剤を含ませる構成でもよい。
【0012】
以上の本発明は、以下のように更に具体化されることがより好ましい。すなわち、
第1に、前記空気脱気機構は振動機構又は/及び真空吸引機構であり、前記空気追加機構は攪拌機構又は/及び空気吹込み機構である(請求項2)。
【0013】
これは空気脱気機構と空気追加機構の具体例を挙げたものであり、これ以外でも差し支えない、また、攪拌機構については、駆動速度を高くすると空気追加機構として有効となり、逆に、駆動速度を低くすると実施例2のように空気脱気機構として有効となる。
【0014】
第2に、前記砂材料に前記含水比調整用水及び前記流動化剤と共に遅効性塑性化剤を添加している構成である(請求項3)。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、体積計測手段及び重量計測手段により流動化砂の密度及び混入している空気量を把握し、その密度が所定の値ないしは範囲外になっている場合に空気量増減手段により流動化砂の含有する空気量を調整することで該密度の制御を行うため、密度が管理された充填用や地盤改良用の流動化砂として提供できる。
【0016】
結果として、充填用流動化砂の場合は、圧入式砂杭造成用流動化砂に比べ圧入締固め作用が不要、つまり締固めによる周囲地盤への影響を抑えるため含有する空気量を少なめに設定し密度を的確に調整することで、充填材として良質で最良の評価が得られる。圧入式砂杭造成用流動化砂の場合は、使用する砂杭造成用流動化材の密度から造成される砂杭の密度も推察したり評価し易くなり信頼性を向上できる。
【0017】
また、この発明は、空気量増減手段が空気脱気機構及び空気追加機構を有している点と密度の制御を詳細に特定したもので、密度の制御が空気脱気機構又は空気追加機構により製造される流動化砂の含有空気量を調整することで比較的簡単に行える。
【0018】
請求項2の発明は、空気脱気機構又は空気追加機構の典型例を例示したものである。但し、空気脱気機構としては振動機構又は/及び真空吸引機構以外でもよく、空気追加機構としては攪拌機構又は/及び空気吹込み機構以外でもよい。
【0019】
請求項3の発明は、流動化砂の理想的な組成として、砂材料に含水比調整用水及び流動化剤と共に遅効性塑性化剤を添加している構成である。
【0020】
遅効性塑性化剤は、流動化砂に含有された流動化剤を電気的に中和するよう作用し、流動化砂に保水されている水を分離することで元の砂状態に戻し易くする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る流動化砂の製造方法に用いられる流動化砂製造装置の一例を示す模式図である。
図2】上記流動化砂の製造手順例を示す流れ図である。
図3図1の流動化砂製造装置で作られた流動化砂を使用した砂充填工法の概要を示す模式図である。
図4】特許文献2に開示されている砂杭造成装置を示す図である。
図5】(a)~(c)は施工時における流動化砂の状態変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した形態例を図面を参照して説明する。この説明では、本発明に係る流動化砂の製造方法を明らかにした後、これまでと同様に作成した流動化砂について密度調整したときの実施例1及び2と、密度調整後の流動化砂の使用例に言及する。
【0023】
(流動化砂の製造方法)図1は本発明の製造方法に用いられる流動化砂製造装置の一例を示し、図2は流動化砂の製造手順例を示している。図1において、この流動化砂製造装置1は、上段枠体10Aに設けられた流動化砂製造部2と、中段枠体10Bに設けられた密度調整部3と、下段枠体10Cに設けられた養生部(アジテーター部)4を備え、養生部4において密度制御された流動化砂が圧送ポンプPにより管路6へ移送される。符号5は、管路6内を移送される流動化砂の圧力を計測する圧力計である。なお、流動化砂製造部2及び養生部4は既存の流動化砂製造装置の構成とほぼ同じ。
【0024】
すなわち、流動化砂製造部2は、混合槽20がパドルミキサー等の攪拌機構21と、投入される砂材料Sの重さを計測するロードセル等の重量計測手段22とを備えている。混合槽20には、バックホウ等の砂供給手段12により1バッチ量に対応する所定量の砂材料Sが投入された後、図2に示されるごとく混合槽20内の砂材料Sの重量に対し、含水比調整用の水が水供給手段13により所定水量だけ供給されると共に、必要に応じて流動化保持剤が流動化保持剤供給手段16により所定量だけ供給される。また、流動化剤が流動化剤供給手段14により、遅効性塑性化剤が塑性化剤供給手段15によりそれぞれ所定量だけ供給される。好ましくは、混合槽内の砂材料の重量に基づき、含水比調整用水、流動化剤、遅効性塑性化剤の使用量を自動的に計算して供給することである。混合槽20では、それらが均一になるよう攪拌機構21により混合攪拌される。
【0025】
ここで、砂供給手段12により投入される砂材料S、水供給手段13により供給される水、流動化保持剤供給手段16により供給される流動化保持剤、流動化剤供給手段14により投入される流動化剤、塑性化剤供給手段15により供給される塑性化剤については、以下にその選択基準などを明らかにする。
【0026】
(1)、砂材料は、一旦流動性を高めた状態でポンプ圧送するため、配管内で閉塞しない保水性の良さと、圧入時に脱水する排水性の良さとを併せ持つ性質が好ましい。この点は、参考文献1の図6及びその関連記載を参照されたい。
【0027】
(2)、水は、含水比調整用であり、流動化剤等に影響する成分、特に金属イオン等の陽イオンを含む工業用水や海水は避けて中性の水道水を用いることが好ましい。水の使用量は通常、製造される流動化砂の含水比が20~40%となるよう算出される。この含水比は、高くなると投入容量も比例して多くなり地盤変位を生じ易くなるためその点も考慮して決められる。
【0028】
(3)、流動化保持剤は、流動化砂の経時的な性状を改善して正常な圧入施工を維持可能にするもので、具体的には非イオン性界面活性剤やそれに類似のものである。非イオン性界面活性剤は、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤よりも流動化砂の経時的な性状を改善する上でかなり優れていることが判明している(参考文献2を参照)。以上の流動化保持剤は、原料の砂材料に流動化剤と同時に混ぜても改善効果はあまり期待できず、更に砂材料に流動化剤を混入した後に混ぜると改善効果が得られない。つまり、原料の砂材料には、当該砂材料や水に含まれる上記した流動化剤の阻害要因を流動化保持剤にて予め解消ないしは抑制してから流動化剤を混入する。また、砂材料に対する混合割合は、砂材料や含水比によっても異なるが、一般的には添加量の下限値が0.05%以上で、添加量の上限値が大きくなると経費も比例して高くなるため0.10%程度にすることが好ましい。但し、流動化保持剤は省略しても差し支えない。
【0029】
(4)、流動化剤は、砂の粒子間の間隙水の粘性を高め、飽和状態で砂と水の分離を抑制してポンプ圧送性を向上させる添加剤である。好ましくは、粘性を高め砂粒子の沈降分離を抑制するアニオン系高分子凝集剤であり、他にノニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤などでもよい。これらは、高分子の親水基と高分子の網の内部に水分を保持する性能に優れ、品質の長期安定性も高い。流動化剤の配合割合は、砂材料に対し、外割配合で0.01~2.0重量%、好ましくは0.1~1.0重量%である。この配合割合は、少な過ぎると、砂材料が流動化せず、配管内で分離したり目詰まりしたりして圧送できなくなり、逆に多過ぎても流動化効果は変わらずコスト上昇要因となる。
【0030】
(5)、遅効性塑性化剤は、圧送時、圧入時共に流動性を確保すると共に、塑性化迄の時間を制御するために使用される。遅効性塑性化剤としては、分子量104~107のカチオン系合成高分子剤が挙げられる。このカチオン系合成高分子剤としては、アンモニア、脂肪族アルキルモノ又はジアミン又はポリアミンとエピハロヒドリンの重縮合物が挙げられる。塑性化剤の使用量は、製造される流動化砂中の砂材料に対し、外割配合で0.001~2重量%、好ましくは0.01~1.0重量%である。添加量は、少な過ぎると、流動化物が塑性化せず設計通りの充填体や改良体が造成できなくなり、添加が多過ぎると塑性化が早く起こりポンプ圧送に支障をきたす。
【0031】
密度調整部3は、密度調整槽30がパドルミキサー等の攪拌機構31と、流動化砂製造部2から受け入れた流動化砂の重さを計測するロードセル等の重量計測手段32、及び体積を計測する体積計測手段33と、流動化砂に含有されている空気量を調整する空気量増減手段17とを備えている。このうち、空気量増減手段17は、図示を省略したが、密度調整槽30内に移された流動化砂中の空気を密度調整槽30の上方又は吸排気管18などを介し外へ逃がして減らす空気脱気機構、及び空気を外部より流動化砂中に槽上側空間や吸排気管18などを介し混入したり導入して増やす空気追加機構を有している。吸排気管18の先端には、水や砂を通さず空気だけを出入り可能にするフイルターが装着されている。
【0032】
ここで、空気脱気機構としては、密度調整槽30に振動を加えて流動化砂に含有している空気を密度調整槽30の上面側開口、更に吸排気管18から逃がす振動機構、及び/又は、流動化砂に含有している空気を吸排気管18及び不図示の切換バルブ等を介して真空引きする真空ポンプを使用した真空吸引機構などである。一方、空気追加機構としては、攪拌速度などを工夫することで密度調整槽30内の流動化砂に空気を混入させる攪拌機構31、及び/又は、密度調整槽30内の流動化砂に吸排気管18及び不図示の切換バルブ等を介して空気を吹き込むエアポンプを使用した空気吹き込み機構などである。但し、空気脱気機構や空気追加機構はここに挙げた機構以外でもよい。
【0033】
そして、密度調整部3では、密度の制御として、流動化砂の密度が所定の値ないしは範囲(例えば、1.50~1.70g/cm)に設定されており、その最小値(例えば、1.50g/cm)より低い場合は前記空気脱気機構により密度調整槽30内の流動化砂から空気を抜いて高くなるよう調整され、その最大値(例えば、1.70g/cm)より高い場合は前記空気追加機構により空気を密度調整槽30に移された流動化砂内に吹き込んで混合し低くなるよう調整される。これらの調整操作は、図2に示されるごとく流動化砂中の空気量を増減し、目的の密度の値又は範囲になるまで繰り返される。
【0034】
養生部4は、アジテータ槽40がパドルミキサー等の攪拌機構41を備えており、密度調整槽30から受け入れたアジテータ槽40内の流動化砂を密度等の品質を維持すべく攪拌養生している。この攪拌機構41は、流動化砂製造部の攪拌機構21、密度調整部の攪拌機構31に比べ攪拌時に空気が流動化砂に極力混入しないよう攪拌翼形状や回転速度などが工夫されている。
【0035】
アジテータ槽40内の流動化砂は、圧送ポンプP及び管路6を介して充填用、又は、圧入式砂杭造成用として使用場所へポンプ圧送される。この圧送ポンプPは、特に高い吸込み力、機密性、空気の吸込みを起こさず、流動化砂性状の変化を低く抑えられるものとして、圧送構造が油圧ピストンを利用したタイプが選択されている。ポンプ駆動は、制御部を介して自動制御されたり、操縦者により制御される。
【0036】
(実施例1)この実施例1では、原料の砂材料として菰野砂(三重県菰野町産)を用い、図1の流動化砂製造部の混合槽20に類似の混合槽により、含水比が25%、流動化剤L1=0.64%、流動化保持剤S1=0.1%、遅効性塑性化剤P1=0.05%の組成の流動化砂を作成した。この流動化砂を混合槽から密度調整部の密度調整槽30に類似の密度調整槽に移した。この初期状態の流動化砂は、重量計測手段32より得られた流動化砂の重量/体積計測手段33より得られた流動化砂の体積から、密度γ=1.115g/cm であった。また、相対密度Dr=-256.6%であり、含有する空気量=43.7%であった。
【0037】
(1)相対密度Drの算出式は次の通りである。
Dr=(emax-e)/(emax-emin) ×100(%)
ここで、emax:砂の最大間隙比(砂の最小密度・最大密度試験より算出)
min:砂の最小間隙比(砂の最小密度・最大密度試験より算出)
e:流動化砂の間隙比
【0038】
流動化砂の間隙比eの算出式は次の通りである。
e=(V-V)/V =(流動化砂体積-砂粒子体積)/砂粒子体積
ここで、流動化砂に使う砂粒子比重は土質試験より求めることができるので、仮に砂粒子の体積を1cm とした場合の砂重量を算出できる。
【0039】
次に、流動化砂は、砂重量に対する割合で含水比、流動化剤(L1)の配合量、流動化保持剤(S1)の配合量、遅効性塑性化剤(P1)の配合量を決めているので、砂粒子体積1cm の時の、流動化砂重量は計算で求められる。また、流動化砂の密度は、上記の密度計測より求められるので、砂粒子体積1cm の時の流動化砂体積も求められる。以上より上式を用いて流動化砂の間隙比を算出することができる。
【0040】
以上より、実施例1において、砂粒子比重が2.651、emaxが0.913、eminが0.493の砂材料を用いて、砂粒子の重量に対して、含水比が25%、L1が0.64%、P1が0.05%、S1が0.1%の割合で作成した流動化砂の計測密度が1.115g/cm とする。この場合、
・砂粒子体積1cm の砂粒子重量は2.651×1=2.651g
・流動化砂の重量は2.651×(1+0.25+0.0064+0.0005+0.001)=3.335g
・砂粒子体積1cm の流動化体積は3.335/1.115=2.991
・よって、流動化砂の間隙比は(2.991-1)/1=1.991
・流動化砂の相対密度は{(0.913-1.991)/(0.913-0.493)}×100=-256% となる。
【0041】
(2)流動化砂に混入している空気量の割合は以下の式で求められる。
空気量の割合=空気体積/流動化砂体積
・ここで、流動化砂の重量は、砂重量と配合割合から求められる。
・また、流動化砂の密度は計測されるので、流動化砂体積も計算することができる。
・更に、砂重量と砂粒子比重が分かっているので流動化砂中の砂粒子体積は計算できる。
・よって、間隙(水+空気)の体積を(流動化砂体積-砂粒子体積)より求められる。
【0042】
次に、間隙内の水と空気の割合を求める。
流動化砂の間隙比は既知なので、液体のみの間隙比を求めることができれば、水と空気の割合を求めることができ、空気量の体積を求めることができる。この場合、流動化砂中の液体の間隙比は、流動化砂が砂と水のみで構成されると仮定したときの理論飽和密度の時の間隙比を求めればよい。理論飽和密度は、流動化砂の配合比と、砂粒子及び薬剤(上記L1、P1、S1)の比重が分かっているので求めることができる。
【0043】
以上より、実施例1において、砂粒子比重が2.651、emaxが0.913、eminが0.493の砂材料を用いて、砂粒子の重量に対して、含水比が25%、L1が0.64%(比重1.05)、P1が0.05%(比重1.15)、S1が0.1%(比重1.0)の割合で作成した流動化砂の計測密度が1.115g/cm とする。ここで、流動化砂の配合は砂を1000gとすると、含水量250g、L1量6.4g、P1量0.5g、S1量1.0gとなる。
・上記配合時の流動化砂体積は(1000+250+6.4+0.5+1.0)/1.115=1128.161cm
・砂粒子体積は1000/2.651=377.216cm
・間隙体積は1128.161-377.216=750.945cm
【0044】
次に、流動化砂の理論飽和密度は、
(1000+250+6.4+0.5+1.0)/(1000/2.651+250/1+6.4/1.05+0.5/1.15+1.0/1.0)=1.983g/cm
理論飽和の間隙比(水のみの間隙比)は、
(2.651×(1+0.25+0.0064+0.0005+0.001))/1.983=0.681
上記流動化砂の間隙比1.991のうち、水の間隙比0.681、空気の間隙比1.309を求めることができる。間隙体積は750.945cm より、
空気の体積は750.945×(1.309/1.991)=493.715cm
よって、流動化砂の中の空気の割合は(493.715/1128.161)×100=43.7% となる。
【0045】
以上の製造初期の流動化砂は、含有する空気量がかなり高く、孔や空洞用の充填材、又は、圧入砂杭造成用としては含有空気量を減らすことが好ましい。そこで、上記空気脱気機構としては、密度調整槽30に類似の密度調整槽の上面を開放ないしは半開した状態で、該密度調整槽に付設した振動器つまり振動機構にて加振することにより、流動化砂に含有する空気を脱気ないしは抜気した。つまり、抜気方法は振動を加える構成である。その際は、含有する空気が流動化砂の上方及び吸排気管18からも逃げるようにした。また、その抜気時間10分経過時点、15分経過時点、20分経過時点でそれぞれ流動化砂の密度を計測した。表1はその結果と共に相対密度及び含有空気量を一覧したものである。
【0046】
(表1)
【0047】
(実施例2)この実施例2では、原料の砂材料として、吉良砂(愛知県吉良町産)を用い、図1の混合槽20に類似の混合槽により、含水比が25.0%、流動化剤L1=0.64%、遅効性塑性化剤P1=0.05%の組成の流動化砂を作成した。この流動化砂を混合槽から密度調整部の密度調整槽30に類似の密度調整槽に移した。この初期状態の流動化砂は、重量計測手段32より得られた流動化砂の重量/体積計測手段33より得られた流動化砂の体積から、密度γ=1.861g/cm であった。また、相対密度Dr=-25.8%であり、含有する空気量=7.2%であった。相対密度及び含有する空気量の算出方法は、実施例1と同じのため説明を省略する。
【0048】
また、実施例2では、空気脱気機構としては、密度調整槽の上面を半開した状態で、密度調整槽に付設した攪拌機構の駆動により、つまり抜気方法は攪拌する構成である。その際は、含有する空気が流動化砂の上方及び吸排気管18からも逃げるようにした。また、その抜気時間10分経過時点、60分経過時点でそれぞれ流動化砂の密度を計測した。表2はその結果と共に相対密度及び含有空気量を一覧したものである。
【0049】
(表2)
【0050】
以上の各実施例から明らかなごとく、流動化砂としては、含有する空気量を調整することで密度で管理したり制御可能となる。この利点として、充填用流動化砂の場合は、圧入式砂杭造成用流動化砂に比べ締固めによる周囲地盤への影響を抑えるため含有する空気量を少なめに設定し密度を高めに調整管理することにより、密度が管理された充填材として使用でき、良質で最良の評価が得られる。圧入式砂杭造成用流動化砂の場合は、使用する流動化砂の密度から造成される砂杭の密度も推察したり評価し易くなり信頼性を向上できる。勿論、流動化砂の好適な密度については、充填用や圧入式砂杭造成用と言っても、対象の地盤性状や目標値などによってその都度、最適な値ないしは範囲が設計される。本発明は、そのような設計を可能にしたことに意義がある。
【0051】
(流動化砂の使用例)図3は既設杭の引抜きにより形成される孔に以上のアジテータ槽40内の密度が調整された流動化砂を充填して埋め戻す一例を示している。この使用域には、地盤改良又は基礎構造物に使用された多数の杭9が打設されており、不図示の杭引抜き装置と共に砂充填装置7が配設されている。この砂充填装置7は、図4に示されるような砂杭造成装置(圧入式砂杭造成装置)を代用したものであり、ベースマシン24に移動可能に起立されたリーダー25と、リーダー25の一側に沿ってラック・ピニオン機構等を介して上下動される昇降機構26と、昇降機構26に組付けられてトレミー管8の上端側を支持する保持手段28と、リーダー25の上側に付設されて管路6の上側を支えるガイド具29などを有している。管路6の上端は、ジョイント27を介しトレミー管8の上端に接続されている。
【0052】
そして、この例では、トレミー管8が杭9を引抜く際にその杭9に沿って昇降機構26により貫入され、杭9の引抜きに合わせてアジテータ槽40内の密度を調整した流動化砂S1が圧送ポンプP及び管路6、更にトレミー管8を介して杭9の引抜きにより形成される孔に送られる。このため、この砂充填工法では、杭9の引抜きとほぼ同時に引抜き孔を充填して埋め戻すことができ、密度管理された流動化砂S1を使用して圧入力も低くして孔周囲を不用意に締め固めることなく、孔の底から的確に塑性化した砂Sにて埋め戻すことができる。その結果、砂充填工法としては、流動化砂S1の密度、充填量などを一元管理し易く、より的確に評価可能なものとなる。付言すると、このような密度を調整管理した流動化砂は、図3に例示した砂充填工法以外に、図4に示されるような地盤改良のうち圧入式砂杭造成工法に好適なものとなる。
【0053】
なお、以上の形態例や実施例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。図1の流動化砂装置1については、流動化砂の製造規模や経費などに応じて変形されるものである。例えば、この形態例では、上段の流動化砂製造部2、中段の密度調整部3、下段の養生部4、つまり縦型の三段式にしたが、養生部4を分離して流動化砂製造部2と密度調整部3の二段式にしたり、流動化砂製造部2を分離して密度調整部3と養生部4の二段式にすることも考えられる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・・流動化砂製造装置
2・・・・・流動化砂製造部
3・・・・・密度調整部
4・・・・・養生部(アジテータ部)
5・・・・・圧力計
6・・・・・管路
7・・・・・流動化砂充填装置
8・・・・・トレミー管
9・・・・・杭
12・・・・・砂供給手段
13・・・・・調整用水供給手段
14・・・・・流動化剤供給手段
15・・・・・塑性化剤供給手段
16・・・・・流動化保持剤供給手段
17・・・・・空気量増減手段(18は吸排気管)
20・・・・・混合槽(21は攪拌機構、22は重量計測手段)
30・・・・・密度調整槽(31は攪拌機構、32は重量計測手段)
33・・・・・体積計測手段
40・・・・・アジテータ槽(41は攪拌機構)
図1
図2
図3
図4
図5