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  • 特許-細胞培養装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220810BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018107110
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019208428
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第17回 日本再生医療学会総会 開催日 平成30年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 公揮
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】柿本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】猿田 正明
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3032639(JP,U)
【文献】中国実用新案第207391442(CN,U)
【文献】日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),2017年07月29日,P. 605-605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 ー 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞が入れられた容器を本体内に保管して前記細胞を培養する細胞培養装置であって、
前記本体内に設けられ四周に周壁が立設しているトレーと、
前記周壁の内側に配置されて、上面に前記容器が載置される保管プレートと、
前記周壁と前記保管プレートとの間に設けられて前記保管プレートに加わる水平方向の振動加速度を軽減させる水平加速度吸収部と、
を有し、
前記水平加速度吸収部は水平2軸で対向するように設けられ、水平方向に伸縮可能な2対の弾性体であって前記保管プレートを弾性的に保持することを特徴とする細胞培養装置。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養装置において、
前記トレーは摩擦材を介して前記保管プレートに載置されていることを特徴とする細胞培養装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細胞培養装置おいて、
前記弾性体は板バネであり、それぞれの前記板バネは一端が前記周壁に固定され、他端が前記保管プレートの各辺に対して非固定で弾性的に当接していることを特徴とする細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞が入れられた容器を本体内に保管して細胞を培養する細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療施設をはじめ、細胞を取り扱う施設ではインキュベータで培養容器を保管し細胞を培養している。ところで、地震発生時に培養容器に過大な振動加速度が加わると培地が培養容器の天面、側面や開口部近辺へ付着する現象が発生する。このような付着が発生すると細菌などによる汚染が発生する可能性がある。汚染が発生すると患者の治療に必要な細胞の準備に時間が掛かることになるだけではなく、汚染が大量に発生してしまうと細胞培養をはじめからやり直す必要がある。このような事態が発生すると、治療に対する影響が懸念され、確実で迅速に細胞培養を行うことが求められている。また、建物や部屋に免振設備が設けられていない場合は培養細胞に影響があるだけではなく、培養に必要な装置等も転倒してしまう事が報告されている。装置を耐震固定すれば装置の転倒は防止できるが、培養中の培養容器に振動加速度が直接かかることになる。
【0003】
そのため、このような施設において、細胞を培養している建物や部屋に免振対策が取られる場合がある。細胞培養室に免震装置を設けることは、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-65844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞培養室に対して十分な能力の免震装置が設けられていれば地震発生時も培養容器に加わる振動加速度は抑えられると考えられる。しかしながら、建物や部屋に免震設備を設けることは大規模工事が必要でコスト高となり、さらに既設建築物に対して後付け的に免震設備を設けることは困難である。また、細胞培養装置自体を免震化することも考えられるが、細胞培養装置は温度管理装置やCO管理装置などが含まれていてやや重いため、免震装置はある程度大型化してしまう。さらに、培養を行う細胞培養室は狭いスペースであることも多く、スペースを取る地震対策技術の適用が難しい場合がある。さらにまた、何らかの振動対策を施したとしても細胞培養装置に加わる振動加速度を完全に0にすることは困難であるが、細胞培養装置に許容されるべき振動加速度のレベルは明らかになっていない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、培養容器の培地への影響がないレベルに振動加速度を抑えながら、省スペースで低コストの細胞培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる細胞培養装置は、細胞が入れられた容器を本体内に保管して前記細胞を培養する細胞培養装置であって、前記本体内に設けられて前記容器が載置される保管プレートと、前記本体と前記保管プレートとの間に設けられて前記保管プレートに加わる振動加速度を軽減させる加速度吸収部と、を有し、前記加速度吸収部は前記保管プレートに加わる振動加速度を水平方向で200Gal以下に抑えるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
前記加速度吸収部は前記保管プレートに加わる振動加速度を垂直方向で350Gal以下に抑えるように構成されていてもよい。
【0009】
前記加速度吸収部は、弾性体を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる細胞培養装置は、保管プレートに加わる振動加速度を軽減させる加速度吸収部を有し、保管プレートに加わる振動加速度を200Gal以下に抑えるように構成されており、培養容器の培地への影響がないレベルに振動加速度を抑えることができる。また、保管プレートに加わる振動加速度だけを吸収すればよいので、省スペースで低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態にかかる細胞培養装置を示す模式側面図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかる細胞培養装置のトレーおよび保管プレートを示し、(a)は模式平面図であり、(b)はb~b線視による断面側面図である。
図3図3は、第2の実施形態にかかる細胞培養装置のトレーおよび保管プレートを示し、(a)は模式平面図であり、(b)はb~b線視による断面側面図である。
図4図4は、第3の実施形態にかかる細胞培養装置のトレーおよび保管プレートを示し、(a)は模式平面図であり、(b)はb~b線視による断面側面図である。
図5図5は、細胞培養装置に求められる振動吸収能力について行った実験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる細胞培養装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下、3つの実施形態にかかる細胞培養装置10a、10bおよび10c(以下、代表的に細胞培養装置10とも呼ぶ)を順に説明し、さらに細胞培養装置に求められる振動吸収能力について行った実験について説明する。
【0013】
図1に示すように、第1の実施形態にかかる細胞培養装置10aは、本体12と、トレー14と、トレー14の上面に設けられて容器16が載置される保管プレート18と、保管プレート18に加わる垂直方向の振動加速度を軽減させる複数の垂直加速度吸収部20とを有する。さらに、細胞培養装置10aは、保管プレート18に加わる水平方向の振動加速度を軽減させる水平加速度吸収部22a~22d(図2参照)を有する。細胞培養装置10aは、細胞を培養するCOインキュベータであり、図示しない自動制御装置によって適度な温度およびCO濃度に保たれるように調整される。容器16は培養する細胞、すなわち培地が入れられるもので、ディッシュ16aと、蓋16bとを備える。保管プレート18には複数の容器16が載置可能である。複数の容器16は重ねて載置してもよい。容器16としては、例えばフラスコやビーカでもよい。図1では、本体12内にトレー14および保管プレート18が一段だけ設けられているが複数段あってもよい。
【0014】
垂直加速度吸収部20は、トレー14を介して本体12と保管プレート18との間に設けられている。垂直加速度吸収部20は、トレー14の四方に設けられており、それぞれトレー14を固定する把持部20aと、把持部20aを上下から挟み込む一対のスプリング(弾性体)20bと、一対のスプリング20bを保持するブラケット20cとを有する。ブラケット20cは本体12の内面に固定されている。なお、図1では4つの垂直加速度吸収部20のうち2つを示している。
【0015】
図2に示すように、トレー14および保管プレート18は矩形であって、保管プレート18はトレー14よりもやや小さい。保管プレート18は4つの水平加速度吸収部22a、22b、22cおよび22d(以下、代表的に水平加速度吸収部22とも呼ぶ)によって弾性的に支持されている。トレー14には周壁14aが立設しいる。
【0016】
水平加速度吸収部22は保管プレート18の端面と周壁14aとの間に介挿されている。すなわち、水平加速度吸収部22は、トレー14を介して本体12と保管プレート18との間に設けられている。水平加速度吸収部22は、それぞれ平面視で1/4の楕円弧形状の板バネである。水平加速度吸収部22a~22dは、一端がトレー14の内面に固定され、他端が保管プレート18の各辺に対して非固定で弾性的に当接している。水平加速度吸収部22によれば保管プレート18は水平の縦・横・回転に対して弾性的に保持される。図2(b)に示すように、保管プレート18の下面には摩擦材18aが貼られており、トレー14との間に適度な摩擦を生じさせ減衰作用を奏する。水平加速度吸収部22a~22dは、十分に柔軟性がある場合には仮想線で示すように、トレー14の4隅を支持するように設けてもよい。
【0017】
このように構成される細胞培養装置10aでは、保管プレート18は水平方向が水平加速度吸収部22によって弾性的に保持され、垂直方向が垂直加速度吸収部20によって保持されており、地震発生時に大きな振動加速度が加わったとしても、各方向の振動加速度は弾性的に吸収される。そして、水平加速度吸収部22および垂直加速度吸収部20の弾性率等を適切に設定することにより保管プレート18に加わる振動加速度を、容器16の培地へ影響のない程度に軽減させることができる。すなわち、保管プレート18の動きが抑制され、培地が蓋16bやディッシュ16aの側面や開口部近辺へ付着することを防止できる。
【0018】
細胞培養装置10aでは、本体12が振動しても軽量な保管プレート18の振動を抑制するだけで足りるため、建物や部屋を免震化することと比較して構成が簡単であり廉価である。水平加速度吸収部22および垂直加速度吸収部20はコンパクトであることから、これらを収容する本体12は比較的小型のもので足り、狭い細胞培養室にも設置可能である。もちろん、細胞培養装置10aは既存の細胞培養室に設置可能である。
【0019】
細胞培養装置10aでは、本体12、垂直加速度吸収部20、水平加速度吸収部22、トレー14および保管プレート18はそれぞれ着脱可能な構成にしておくとよい。後述する細胞培養装置10b,10cにおいても対応する要素について同様である。
【0020】
次に、図3に示すように、第2の実施形態にかかる細胞培養装置10bは水平加速度吸収部24を有する。細胞培養装置10bが備える本体12、垂直加速度吸収部20、トレー14および保管プレート18は上記の細胞培養装置10aと同じであり、詳細な説明を省略する。
【0021】
水平加速度吸収部24は上記の水平加速度吸収部22に相当するものであり、保管プレート18の四辺とトレー14の周壁14aとの間に介挿されており、それぞれ両端が保管プレート18および周壁14aに固定されている。水平加速度吸収部22はコイルスプリングである。このような水平加速度吸収部22によって、保管プレート18は水平方向が弾性的に保持される。
【0022】
次に、図4に示すように、第3の実施形態にかかる細胞培養装置10cは水平加速度吸収部24と垂直加速度吸収部26とを有する。細胞培養装置10cが備える本体12、トレー14および保管プレート18は上記の細胞培養装置10aと同じであり、詳細な説明を省略する。
【0023】
水平加速度吸収部24は上記の細胞培養装置10bにおけるものと同じである。垂直加速度吸収部26は上記の垂直加速度吸収部20に相当するものであり、保管プレート18の下面とトレー14の上面との間に介挿されており、それぞれ両端が保管プレート18およびトレー14に固定されている。垂直加速度吸収部26はコイルスプリングであり、保管プレート18の四隅近傍および中央部の合計5か所に設けられている。このような垂直加速度吸収部26によって、保管プレート18は垂直方向が弾性的に保持される。細胞培養装置10cでは、水平加速度吸収部24および垂直加速度吸収部26がトレー14と保管プレート18との間に設けられており、本体12とは独立的な構成であることから汎用性が高い。
【0024】
上記の細胞培養装置10における水平加速度吸収部22,24および垂直加速度吸収部20,26は、板バネやコイルスプリングなどの弾性体によって振動加速度を吸収するが、弾性体としては例えばゴム、スポンジ、バルーン、ゲルを用いてもよい。このような弾性体は、想定される地震に基づいて特性を設定するとよく、例えば荷重とたわみとの関係が非線形であるものを用いてもよい。また、地域により想定される最大震度の違いや、保管される容器16の個数や重量に応じて弾性体の初期圧縮量を調整する装置を設けてもよいし、弾性体の個数を増減可能なようにしてもよい。摩擦材18a以外にも適当なダンパーを設けてもよい。振動加速度を吸収する手段としては、弾性体に限らず、アクティブ制振としてもよい。
【0025】
次に、細胞培養装置10に求められる振動吸収能力について本願発明者が行った実験について説明する。実験ではキャビン内に細胞培養装置10に相当するインキュベータを設置し、インキュベータ内には培地を入れた直径10cmのディッシュを3段重ねて載置した。そしてキャビンに対して地震時の揺れを与え、その際のインキュベータ内のディッシュが受ける影響について調べた。加振時にはインキュベータ表面の水平2軸のX,Y方向と垂直のZ方向の加速度を測定した。保管プレート18に対する振動加速度を吸収する手段としては、便宜上、既存の免震装置を用いた。実験は免震装置のある建物内とない建物内の2通りで行い比較した。免震装置としては複合式免震床を用いた。免震装置のない建物は耐震構造とした。
【0026】
この実験の結果を図5に示す。図5において欄51は加振条件であり、欄52は免震装置のある建物内での結果であり、欄53は免震装置のない耐震構造の建物内での結果である。欄51において「EL」および「エルセントロ地震」と表記しているのは1940年5月18日に米国のエル・セントロで発生した地震の振動を再現した加振条件であり、「KOBE」および「兵庫県南部地震」と表記しているのは1995年1月17日に兵庫県南部で発生した地震の振動を再現した加振条件である。また「X」は水平1軸加振、「X+Y」は水平2軸加振、「X+Y+Z」は水平2軸および垂直の3軸加振を示す。さらに「50%」および「100%」は対象地震に対する加速度の印加割合を示す。
【0027】
欄52および欄53における「インキュベータへの最大加速度」の欄では、加速度センサで計測されたインキュベータの実際の加速度をX方向,Y方向およびZ方向に分けて示している。単位はGal(1Gal=1cm/sec)である。なお、振動を加えていない軸方向について加速度が必ずしも0とならないのは、加振軸による影響のためである。
【0028】
加振後、目視によりディッシュの移動、培地の内壁への付着および飛散状態を評価した。この評価結果を欄52および欄53における「評価」の欄に示す。このうち「位置ズレ」の欄はディッシュの移動、「付着」の欄は培地の内壁への付着の評価を示す。評価基準として、「位置ズレ」に関しては「○」はディッシュの移動がない状態であり、「△」は上段のディッシュのみが移動した状態であり、「×」は3段のディッシュが全体的に移動した状態であり、「××」は蓋が外れたり荷崩れが発生した状態である。なお、この実験では「△」に相当する結果はなかった。また「付着」に関しては「○」は培地の内壁への付着がない状態であり、「×」は付着が発生した状態である。
【0029】
欄53で示される「免震なし」の実験では、全ての加振条件でディッシュの移動が認められ、また多くの場合で培地の内壁への付着が認められた。一方、欄52で示される「免震あり」の実験では、「KOBE X+Y+Z 100%」以外の加振条件でディッシュの移動は認められず、またすべての加振条件で培地の内壁への付着は認められなかった。
【0030】
「KOBE X+Y+Z 100%」について「免震なし」と「免震あり」で比較すると、X,Y,Z軸方向の最大加速度は、前者ではそれぞれ616.21Gal、2940.55Gal、628.32Galであり、後者ではそれぞれ203.36Gal、156.72Gal、348.28Galであった。また、この時のインキュベータ内のディッシュやフラスコの状態は、前者では激しく移動して、培地の飛散も観察され、細胞への悪影響が推定された。一方、後者では加振前後で顕著な違いは観察されなかった。
【0031】
さらに、「KOBE X+Y 100%」の場合と「KOBE X+Y+Z 100%」で比較すると、両者は水平方向のXの加速度が約200Gal、Yの加速度が約150Galと同程度であり、Z方向の加速度だけが前者がほぼ0、後者が約350Galと異なっている。そして、前者ではディッシュの移動がなく、後者では移動している。また、前者および後者とも培地の付着は発生していない。ディッシュが多少移動しても培地付着が起こっていないため、コンタミネーションは発生しにくいと考えられ、少なくとも水平方向に200Gal以下、垂直方向に350Gal以下であれば、コンタミネーションリスクを低減できるといえる。
【0032】
したがって、細胞培養装置10では、水平加速度吸収部22,24の振動吸収能力として、保管プレート18に加わる振動加速度を水平方向で200Gal以下に抑えるように構成されているとよく、また垂直加速度吸収部20,26の振動吸収能力として、保管プレート18に加わる振動加速度を垂直方向で350Gal以下に抑えるように構成されているとよい。さらに、設計上統一的に、水平方向および垂直方向で200Gal以下に抑えるように構成してもよい。これにより、細胞培養装置10は十分な振動吸収能力を備え、地震の振動を受けても細胞が入れられた容器が過度に揺れたり移動することを防止し、コンタミネーションが発生することがなくなる。
【0033】
また、各加振条件で「X+Y」と「X+Y+Z」とを比較するとそれぞれ評価にほとんど差がないことが分かる。つまり、Z軸の振動の影響は少なく、X,Y軸方向の加速度抑制は効果が顕著であるといえる。したがって、垂直成分の振動吸収については積極的に行わずとも、水平方向の振動を200Gal以下に抑制することで相当な効果が得られると考えられる。
【0034】
さらに、想定される地震としては細胞培養装置10が設置される地域で予想されている最大震度を基準にするとよい。例えば、日本国では最大震度が7と予想されており、具体的には周期1秒の波が同じ振幅で数秒間続くとするとX,Y,Zの3軸成分合成値で600Gal、周期0.1秒の波では2700Galと予想される。したがって、これらの数値を基準最大加速度とし、この地震動に対して水平200Gal,垂直350Galという制限値以内に抑えられるように水平加速度吸収部22,24および垂直加速度吸収部20,26を選定、または調整するとよい。また、設置地域ごとの予想震度、地層、地盤に合わせて基準最大加速度を設定してもよい。
【0035】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
10,10a,10b,10c 細胞培養装置
12 本体
14 トレー
16 容器
16a ディッシュ
16b 蓋
18 保管プレート
18a 摩擦材
22,24 水平加速度吸収部
20,26 垂直加速度吸収部
図1
図2
図3
図4
図5