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特許7121552ギラツキ評価装置およびギラツキ評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ギラツキ評価装置およびギラツキ評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20220810BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20220810BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02B21/36
G02B21/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018113397
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019056687
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017181058
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】飯山 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】守田 真彦
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-175041(JP,A)
【文献】特開2008-180628(JP,A)
【文献】特開2010-243663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0221264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/08
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G02B 19/00 - G02B 21/00
G02B 21/06 - G02B 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防眩加工が施された表示装置の表示部におけるギラツキを評価するギラツキ評価装置であって、
前記表示部に表示された表示画像を撮像して撮像データを得る撮像装置と、
前記撮像装置の撮像素子の1画素あたり撮像される前記表示画像の撮影サイズを調整する調整部と、
前記調整部によって前記撮影サイズが調整された状態で前記撮像装置によって前記表示画像を撮像して得た撮像データに対してフーリエ変換及び逆フーリエ変換を行うことなく、前記撮像データから、ギラツキの大小を示すギラツキ値として、該ギラツキの大きさに相関する前記表示画像における輝度のばらつきを求めるギラツキ測定部と、を備え、
前記調整部は、前記撮像データにおいて、前記撮像装置の撮像素子の1画素あたり撮像される撮影サイズが、前記表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上11倍以下となるように調整するギラツキ評価装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記表示部と前記撮像装置との間の相対的な距離を変更させるように、該撮像装置を移動可能に保持する撮像装置保持部と、前記表示部と前記撮像装置との間の相対的な距離を変更させるように、前記表示装置を移動可能に支持する表示装置用架台との少なくともいずれか1つを備える請求項1に記載のギラツキ評価装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記撮像装置の焦点距離を変更可能とするズームレンズを備える請求項1に記載のギラツキ評価装置。
【請求項4】
前記撮像装置の露光時間の設定を行う撮像装置設定部と、
前記調整部によって前記撮影サイズが調整された状態で前記撮像装置によって撮像された撮像データの輝度平均の値を求め、該輝度平均の値が所定値と一致するか否か判定する輝度判定部と、を備え、
前記輝度判定部が前記輝度平均の値が所定値と一致しないと判定した場合、前記撮像データの輝度平均の値と前記露光時間との対応関係を求め、前記撮像データの輝度平均の値が所定値と一致するように前記露光時間の設定を行う請求項1から3のいずれか1項に記載のギラツキ評価装置。
【請求項5】
防眩加工が施された表示装置の表示部におけるギラツキを評価するギラツキ評価方法であって、
前記表示部に表示された表示画像を撮像装置により撮像して得た撮像データにおいて、前記撮像装置の撮像素子の1画素あたりに撮像される前記表示画像の撮影サイズが、該表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上11倍以下となるように調整する第1ステップと、
前記表示部においてギラツキを評価する領域である測定エリアを設定する第2ステップと、
前記第1ステップにより前記撮影サイズが調整された状態で、前記第2ステップにおいて設定された前記測定エリアの表示画像を、前記撮像装置により撮像して撮像データを得る第3ステップと、
前記第3ステップにおいて得られた前記撮像データに対してフーリエ変換及び逆フーリエ変換を行うことなく、前記撮像データから、ギラツキの大小を示すギラツキ値として、該ギラツキの大きさに相関する、前記測定エリアの表示画像の輝度のばらつきを求める第4ステップと、を含むギラツキ評価方法。
【請求項6】
前記第2ステップを実施した後でかつ、前記第3ステップを実施する前に、前記測定エリアの表示画像を前記撮像装置により撮像して得た撮像データから輝度平均の値を求め、該輝度平均の値が所定値と一致するように前記撮像装置の露光時間の設定を変更して、該撮像データの輝度平均の値を調整する第5ステップをさらに含む、請求項5に記載のギラツキ評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩加工が施された表示装置が備える表示部のギラツキを定量的に評価するギラツキ評価装置およびギラツキ評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示部への外光の映り込みを防止するために、表示部に装着するための防眩フィルムが開発されている。防眩フィルムは、例えば、透明な樹脂フィルムの表面に粗面化処理を施して、微細な凹凸面を形成させたフィルムであり、この凹凸面で外光を散乱反射させて外光の映り込みを防止することができる。防眩フィルムは、その基体として、例えばポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いることができる。また、凹凸面の形成方法としては、例えば、コーティング方式、サンドブラスト方式、エンボス加工方式、エッチング方式等の表面加工方法が挙げられる。
【0003】
ところで、近年の表示部における画素の高精細化に伴い、防眩フィルムを装着した表示部では画像が見づらくなる、いわゆる、ギラツキが発生するようになっている。このギラツキ発生の主な要因として、以下の2点が考えられる。まず1点目は、バックライトからの光が防眩フィルムの凹凸面によって屈折して視認される点である。2点目は、防眩フィルムの凹凸面によるレンズ効果によって表示部の画素が拡大されて視認される点である。
【0004】
従来、防眩フィルムを装着した表示部におけるギラツキの評価は、一般的には検査者による目視による評価が行われてきた。このような目視による主観的な評価方法では、個人差が生じる上に、定量的な評価が難しいという問題があった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1、2において、防眩フィルムの装着に起因して発生するギラツキの大きさ(ギラツキ値)を定量的に評価するギラツキ評価装置が提案されている。より具体的には、特許文献1、2に開示されたギラツキ評価装置は、表示部に表示された画像を撮影手段によって撮影し、得られた画像データをフーリエ変換した後、表示装置固有の構造に由来する周期的な輝度ムラを除去し、逆フーリエ変換を行う。そして、特許文献1、2に開示されたギラツキ評価装置は、逆フーリエ変換像のデータ処理を行い、ギラツキによる輝度のばらつきを定量的に評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3766342号公報
【文献】特開2009-175041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような特許文献1、2に開示された従来技術は、評価方法が煩雑であるとともに、防眩フィルムと表示装置との組合せを考慮した評価となっていないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な方法により防眩加工が施された表示装置が備える表示部のギラツキを定量的に評価できるギラツキ評価装置およびギラツキ評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るギラツキ評価装置は、上記した課題を解決するために、防眩加工が施された表示装置の表示部におけるギラツキを評価するギラツキ評価装置であって、前記表示部に表示された表示画像を撮像して撮像データを得る撮像装置と、前記撮像装置の撮像素子の1画素あたり撮像される前記表示画像の撮影サイズを調整する調整部と、前記調整部によって前記撮影サイズが調整された状態で前記撮像装置によって前記表示画像を撮像して得た撮像データに基づき、ギラツキの大小を示すギラツキ値として、該ギラツキの大きさに相関する前記表示画像における輝度のばらつきを求めるギラツキ測定部と、を備え、前記調整部は、前記撮像データにおいて、前記撮像装置の撮像素子の1画素あたり撮像される撮影サイズが、前記表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整する。
【0010】
上記構成によると、撮像装置とギラツキ測定部とを備えるため、ギラツキの大きさに相関する、表示部に表示された表示画像における輝度のばらつきを求めることができる。つまり、ギラツキを定量的に評価することができる。なお、輝度のばらつきを求める方法としては、例えば輝度分布の標準偏差を求める方法、または輝度分布の微分積和によって求める方法などが挙げられる。
【0011】
また、調整部を備えるため、撮像データにおいて、撮像装置の撮像素子の1画素あたりに撮像される撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整することができる。このため、撮像データにおいて、表示画像の画素の輝点(輝度ムラ)が見えない、あるいは画素の輝点が見えていたとしてもギラツキ評価に影響を与えない程度となるように調整することができる。
【0012】
したがって、従来技術のように撮像データに対してフーリエ変換を行い、表示画像の画素により生じる輝点をマスクすることによって除去し、逆フーリエ変換を行った逆フーリエ変換像をデータ処理する必要がない。すなわち、従来技術と比較して簡易な方法によりギラツキを評価でき、該評価に関する測定処理を早く行うことができる。また、測定処理を早く行うことができるため、例えば、インライン測定に適用させることができる。
【0013】
また、従来技術のように撮像データから表示画像の画素により生じる輝点をマスクすることによって除去することがないため、輝点とともにギラツキの要因となる情報も一緒に除去してしまうことを防ぐことができ、表示装置の機種に応じて異なる、例えばサブピクセルの配列パターンの相違などを考慮したギラツキ評価となる。このため、例えば、表示部に防眩フィルムを装着することで防眩加工を該表示部に施す場合、該防眩フィルムが装着される表示装置との組合せとを考慮したギラツキ評価となっている。
【0014】
また、表示画像におけるギラツキが小さい低ギラツキになればなるほど、上記した従来技術の方法では、ギラツキの大きさに関する情報が欠落する割合がより大きくなるとともに、ギラツキの大きさに関する情報をノイズとしてとらえてしまう可能性が高くなる。このため、従来技術と比較してギラツキの評価精度を向上させることができる。
【0015】
また、ギラツキの評価対象となる表示部が大型の表示画面となる場合、表示画像の各画素のサイズは大きくなり、また視認性向上のため複雑な形状となる場合がある。このような場合、従来技術のようにフーリエ変換を利用する方法では、表示画像の画素により生じる輝点を効率よく取り除くことが困難となる。しかしながら、本願は、従来技術の方法とは異なり、フーリエ変換等を行わないためこのような問題が生じることがなく、大型の表示画面に対するギラツキ評価に適用させることができる。
【0016】
したがって、本発明に係るギラツキ評価装置は、簡易な方法により防眩加工が施された表示装置の表示部のギラツキを定量的に評価できるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係るギラツキ評価装置は、上記した構成において、前記調整部は、前記表示部と前記撮像装置との間の相対的な距離を変更させるように、該撮像装置を移動可能に保持する撮像装置保持部と、前記表示部と前記撮像装置との間の相対的な距離を変更させるように、前記表示装置を移動可能に支持する表示装置用架台との少なくともいずれか1つを備える構成であってもよい。
【0018】
上記構成によると、前記調整部は、撮像装置保持部および表示装置用架台の少なくともいずれか1つを備える。このため、表示装置の表示部と撮像装置との間の相対的な距離を変更させることで、撮像データにおいて、撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整することができる。
【0019】
また、本発明に係るギラツキ評価装置は、上記した構成において、前記調整部は、前記撮像装置の焦点距離を変更可能とするズームレンズを備えるように構成されていてもよい。
【0020】
上記構成によると、前記調整部は、ズームレンズを備えるため、撮像装置の焦点距離を変更させることで、撮像データにおいて、該撮像データの1画素のサイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整することができる。
【0021】
また、本発明に係るギラツキ評価装置は、上記した構成において、前記撮像装置の露光時間の設定を行う撮像装置設定部と、前記調整部によって前記撮影サイズが調整された状態で前記撮像装置によって撮像された撮像データの輝度平均の値を求め、該輝度平均の値が所定値と一致するか否か判定する輝度判定部と、を備え、前記輝度判定部が前記輝度平均の値が所定値と一致しないと判定した場合、前記撮像データの輝度平均の値と前記露光時間との対応関係を求め、前記撮像データの輝度平均の値が所定値と一致するように前記露光時間の設定を行うように構成されていてもよい。
【0022】
ここで撮像データの輝度平均の値とは、撮像データにおける各画素の輝度の平均となる値である。なお、この輝度とは、1画素を8ビットで表した、グレースケール画像における明るさ情報である。
【0023】
上記構成によると、輝度判定部を備えるため、撮像データの輝度平均の値が所定値と一致するか否か判定することができる。また、撮像装置設定部を備えるため、輝度平均の値が所定値と一致しない場合、撮像装置の露光時間の設定を変更させて撮像データの輝度平均の値を所定値とすることができる。
【0024】
したがって、本発明に係るギラツキ評価装置では、表示部におけるギラツキを評価するにあたり、撮像装置によって撮像され、得られた撮像データの輝度平均を所定値とするように調整することができる。
【0025】
ここで、撮像データの輝度平均と輝度のばらつきの大きさ(ギラツキ値)とは正の相関関係を示す。このため、本発明に係るギラツキ評価装置は、表示部におけるギラツキを評価するにあたり、撮像データにおける輝度平均の値の相違によってギラツキ値が変動することを防ぐことができる。
【0026】
本発明に係るギラツキ評価方法は、防眩加工が施された表示装置の表示部におけるギラツキを評価するギラツキ評価方法であって、前記表示部に表示された表示画像を撮像装置により撮像して得た撮像データにおいて、前記撮像装置の撮像素子の1画素あたりに撮像される前記表示画像の撮影サイズが、該表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整する第1ステップと、前記表示部においてギラツキを評価する領域である測定エリアを設定する第2ステップと、前記第1ステップにより前記撮影サイズが調整された状態で、前記第2ステップにおいて設定された前記測定エリアの表示画像を、前記撮像装置により撮像して撮像データを得る第3ステップと、前記第3ステップにおいて得られた前記撮像データから、ギラツキの大小を示すギラツキ値として、該ギラツキの大きさに相関する、前記測定エリアの表示画像の輝度のばらつきを求める第4ステップと、を含む。
【0027】
上記方法によると、ギラツキ値として、測定エリアにおけるギラツキの大きさに相関する、該測定エリアの表示画像の輝度のばらつきを求めることができる。つまり、測定エリアにおけるギラツキを定量的にギラツキ値として評価することができる。なお、輝度のばらつきを求める方法としては、例えば輝度分布の標準偏差を求める方法、または輝度分布の微分積和によって求める方法などが挙げられる。
【0028】
また、撮像データにおいて、撮影データのサイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整することができる。このため、撮像データにおいて、表示画像の画素の輝点(輝度ムラ)が見えない、あるいは画素の輝点が見えていたとしてもギラツキ評価に影響を与えない程度となるように調整することができる。
【0029】
したがって、従来技術のように撮像データに対してフーリエ変換を行い、表示画像の画素により生じる輝点をマスクすることによって除去し、逆フーリエ変換を行った逆フーリエ変換像をデータ処理する必要がない。すなわち、従来技術と比較して簡易な方法によりギラツキを評価でき、該評価に関する測定処理を早く行うことができる。また、測定処理を早く行うことができるため、例えば、インライン測定に適用させることができる。
【0030】
また、従来技術のように撮像データから表示画像の画素により生じる輝点をマスクすることによって除去することがないため、輝点とともにギラツキの要因となる情報も一緒に除去してしまうことを防ぐことができ、表示装置の機種に応じて異なる、例えばサブピクセルの配列パターンの相違などを考慮したギラツキ評価となる。このため、例えば、表示部に防眩フィルムを装着することで防眩加工を該表示部に施す場合、該防眩フィルムが装着される表示装置との組合せとを考慮したギラツキ評価となっている。
【0031】
また、表示画像におけるギラツキが小さい低ギラツキになればなるほど、上記した従来技術の方法では、ギラツキの大きさに関する情報が欠落する割合がより大きくなるとともに、ギラツキの大きさに関する情報をノイズとしてとらえてしまう可能性が高くなる。このため、従来技術と比較してギラツキの評価精度を向上させることができる。
【0032】
また、ギラツキの評価対象となる表示部が大型の表示画面となる場合、表示画像の各画素のサイズは大きくなり、また視認性向上のため複雑な形状となる場合がある。このような場合、従来技術のようにフーリエ変換を利用する方法では、表示画像の画素により生じる輝点を効率よく取り除くことが困難となる。しかしながら、本願は、従来技術の方法とは異なり、フーリエ変換等を行わないためこのような問題が生じることがなく大型の表示画面に対するギラツキ評価に適用させることができる。
【0033】
したがって、本発明に係るギラツキ評価方法は、簡易な方法により防眩加工が施された表示装置の表示部のギラツキを定量的に評価できるという効果を奏する。
【0034】
また、本発明に係るギラツキ評価方法は、上記した方法において、前記第2ステップを実施した後でかつ、前記第3ステップを実施する前に、前記測定エリアの表示画像を前記撮像装置により撮像して得た撮像データから輝度平均の値を求め、該輝度平均の値が所定値と一致するように前記撮像装置の露光時間の設定を変更して、該撮像データの輝度平均の値を調整する第5ステップをさらに含んでもよい。
【0035】
ここで撮像データの輝度平均の値とは、撮像データにおける各画素の輝度の平均となる値である。なお、この輝度とは、1画素を8ビットで表した、グレースケール画像における明るさ情報である。
【0036】
上記方法によると、撮像装置の露光時間の設定を変更させて撮像データの輝度平均の値を調整することができる。このため、撮像データの輝度平均の値を所定値とすることができる。
【0037】
ここで、撮像データの輝度平均の値と輝度のばらつきの大きさ(ギラツキ値)とは正の相関関係を示す。このため、本発明に係るギラツキ評価方法は、表示部におけるギラツキを評価するにあたり、撮像データにおける輝度平均の値の相違によってギラツキ値が変動することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、簡易な方法により防眩加工が施された表示装置の表示部のギラツキを定量的に評価できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】撮像データにおける、撮像データの1画素の撮影サイズと表示画像の1画素のサイズとの関係を模式的に示す図である。
図3】撮像データにおいて、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が見える場合(または見えない場合)における、撮像データの1画素あたりの撮影サイズと表示画像の1画素のサイズ(1画素のピッチ)との関係を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態に係る撮像装置によって撮像された撮像データの一例を示す図であり、同図(a)は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.52倍となるときの撮像データを示し、同図(b)は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.74倍となるときの撮像データを示す。
図5】撮像データの1画素のサイズと表示画像の1画素のサイズとの比率と、撮像データにおける輝度の分布との関係の一例を示すグラフである。
図6図1に示すギラツキ評価装置を用いて実施するギラツキ評価方法の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置の撮像装置によって撮像された撮像データの輝度平均の値とギラツキの大きさとの対応関係の一例を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置の撮像装置によって撮像された撮像データの輝度平均の値と、撮像装置の露光時間との対応関係の一例を示すグラフである。
図9】本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置における輝度調整処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施例1における、防眩フィルムを装着した表示部で表示された画像の輝度分布に関する標準偏差の値と、官能評価結果がそれぞれ異なるサンプルとの対応関係を示す棒グラフである。
図11】本発明の実施例2における、防眩フィルムを装着した2種類の表示部で表示された画像の輝度分布に関する標準偏差の値と、官能評価結果がそれぞれ異なるサンプルとの対応関係を示す棒グラフである。
図12】本発明の実施例3における、防眩フィルムを、両面テープを介して装着した場合と、両面テープを用いない場合との表示部に表示された画像の輝度分布に関する標準偏差の値と、官能評価がそれぞれ異なるサンプルとの対応関係を示す棒グラフである。
図13】本発明の一形態を得るに至った経緯を説明するために用いる図面であり、同図(a)、(b)は、表示部におけるサブピクセルの配列パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(本発明の一形態を得るに至った経緯)
本発明者らは、防眩加工が施された表示部におけるギラツキ評価について鋭意検討した。特に、防眩フィルムを装着した表示部におけるギラツキ評価について検討した。例えば、防眩フィルムはその種類によって凹凸のピッチが異なる。一方、表示装置が備える表示部は、図13(a)、(b)に示すように、表示装置の機種に応じて、サブピクセルの配列パターンがそれぞれ異なる。それ故、ギラツキ度合は、表示部におけるサブピクセルの配列パターンの違いと防眩フィルムの有する凹凸形状の違いとによって影響される。そのため、表示部と防眩フィルムとを組み合わせてギラツキを評価することで初めて目視によるギラツキ評価と相関し得るものとなることに本発明者らは気が付いた。そして、同一種類の表示装置の表示部に対して凹凸形状が異なる防眩フィルムを装着した場合と、複数種類の表示装置の表示部それぞれに対して同じ防眩フィルムを装着した場合との両方について、同じ評価方法によりギラツキ評価できることが好適であることに気が付いた。図13は、本発明の一形態を得るに至った経緯を説明するために用いる図面であり、同図(a)、(b)は、表示部におけるサブピクセルの配列パターンの一例を示す図である。なお、R、G、Bそれぞれのサブピクセルを合わせたものを表示画像の1画素とする。
【0041】
ここで、特許文献1、2に開示されたギラツキ評価装置(以下、従来のギラツキ評価装置)は、表示部に表示された表示画像を撮影手段によって撮影し、得られた撮像データをフーリエ変換した後、表示画像の画素により生じる周期的な輝度ムラ(輝点)をマスクすることによって除去し、逆フーリエ変換を行う。そして、逆フーリエ変換像をデータ処理することでギラツキを評価する構成であった。この構成により、従来のギラツキ評価装置は、防眩フィルムの有する凹凸形状に起因するギラツキを評価することができる。
【0042】
しかしながら、上記したように、従来のギラツキ評価装置は、撮影した撮像データから、表示画像の画素により生じる周期的な輝度ムラを除去する構成であった。このため、従来のギラツキ評価装置では、例えばサブピクセルの配列パターンの違い等、表示装置の機種ごとの違いが考慮された評価結果とはなっていない。また、フーリエ変換像においてマスクする輝点にはギラツキの要因となる情報も含まれている。そのため、輝点をマスクして逆フーリエ変換した場合、ギラツキの要因となる情報も除去されてしまうため、この手法によっては本質的に正確なギラツキ評価を行うことが出来ない。したがって、特許文献1、2の評価結果は、防眩フィルムが装着された、様々な機種の表示装置ごとのギラツキを目視により官能評価した結果と相関しないものとなると考えられる。
【0043】
そこで、本発明者らは、ギラツキを定量的に評価することができるとともに、ギラツキに対する官能評価と相関する評価結果が得られるギラツキ評価装置について検討し、その結果、本発明に至った。
【0044】
以下、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0045】
(ギラツキ評価装置の構成)
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1の要部構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1の概略構成の一例を示す図である。ギラツキ評価装置1は、防眩加工が施された表示装置7の表示部におけるギラツキを評価する評価装置である。防眩加工が施された表示装置7の表示部としては、例えば、表示部の表示画面をAGガラスなどにより形成する態様、または、表示部に防眩フィルムを装着する態様等が例示できる。本発明の実施形態では、表示部に防眩フィルムを装着する態様を例に挙げて、防眩加工が施された表示装置7の表示部におけるギラツキの評価方法について説明する。
【0046】
図1に示すように、ギラツキ評価装置1は、筐体2、撮像装置3、撮像装置保持部(調整部)4、撮像装置用架台5、表示装置用架台(調整部)6、表示装置7、および主制御部8を備えてなる構成である。
【0047】
筐体2は、ギラツキ評価を行う検査空間として暗室を形成するためのものであり、中空の直方体形状をしている。筐体2内には、撮像装置3、撮像装置保持部4、撮像装置用架台5、表示装置用架台6、および表示装置7が収容される。なお、筐体2は、これら各部を収容できるために必要な強度を有しつつ、外部から筐体2内への光の進入を防止できる材質から形成されていればよい。
【0048】
撮像装置3は、表示装置7の表示部において表示された画像を撮像するための、レンズ3aと撮像素子とを有するエリアカメラであり、撮像された撮像データは筐体2の外部に設けられた主制御部8に送信される。撮像装置3は、表示装置7の真上に位置し、レンズ3aと表示装置7の表示部とが対向するように、撮像装置保持部4によって保持されている。
【0049】
撮像装置保持部4は、表示装置7と撮像装置3との間の相対的な距離を変更させるように、撮像装置3を図1の紙面における上下方向(鉛直方向)に移動可能に保持するものであり、鉛直方向に延伸した棒形状をしている。撮像装置保持部4の先端部側において撮像装置3が保持されており、一方、基端部側は撮像装置用架台5によって固定されている。このように、撮像装置保持部4によって撮像装置3を鉛直方向に移動させることができる構成となっているため、撮像装置3と表示装置7の表示部との間の相対的な位置関係を調整することができる。撮像装置保持部4による撮像装置3の移動は、例えば、モータ等の駆動により行われる構成であってもよいし、手動により行われる構成であってもよい。なお、この撮像装置保持部4と後述する表示装置用架台6とによって本発明の調整部を実現することができる。なお、撮像装置3と表示装置7との間の距離は、表示装置7の実際の使用環境を考慮し、設定されることが好適である。
【0050】
本発明の実施形態では、図1に示すように、表示装置7の真上に撮像装置3が配置された位置関係となるため、撮像装置保持部4による撮像装置3の移動方向は鉛直方向となっている。しかしながら、表示装置7と撮像装置3との位置関係によっては、撮像装置3の移動方向は異なる方向となる。例えば、撮像装置3と表示装置7とが水平方向(図1の紙面における左右方向)に、対向するように配置されている場合は、撮像装置3の移動方向は水平方向となる。つまり、撮像装置保持部4は、撮像装置3と表示装置7との間の距離が可変となるように、撮像装置3を表示装置7に近づける方向、あるいは表示装置7から遠ざける方向に移動可能となっていればよい。
【0051】
また、撮像装置保持部4は、撮像装置3と表示装置7との間の距離が可変となるように鉛直方向に移動するだけではなく、表示装置7における、ギラツキを評価する測定エリアと撮像装置3とが対向した位置となるように、該撮像装置3を水平方向に移動可能とする構成となっていてもよい。
【0052】
表示装置7はギラツキ評価の評価対象であり、図示しないが表示装置7の表示部には防眩フィルムが装着されている。この表示装置7は、表示装置用架台6の上面に載置されている。
【0053】
表示装置用架台6は、表示装置7の主面(表示部が設けられている面)が撮像装置3と対向し、かつ水平面となるように支持するとともに、該表示装置7を鉛直方向に移動させることができる。表示装置用架台6は、例えば、モータ等の駆動により移動する構成であってもよいし、手動により移動する構成であってもよい。表示装置用架台6による表示装置7の移動方向も、上記した撮像装置保持部4による撮像装置3の移動方向と同様に、表示部と撮像装置3との位置関係によって決まる。
【0054】
また、表示装置用架台6は、撮像装置3と表示装置7との間の距離が可変となるように鉛直方向に移動するだけではなく、表示装置7における、ギラツキを評価する測定エリアと撮像装置3とが対向した位置となるように、該表示装置7を水平方向に移動可能とする構成となっていてもよい。
【0055】
以上のように、ギラツキ評価装置1では、撮像装置保持部4(調整部)による撮像装置3の移動と、表示装置用架台6(調整部)による表示装置7の移動とによって撮像装置3と表示装置7の表示部との間の相対的な距離、すなわち両者の相対的な位置関係を精度よく調整することができる構成となっている。そして、上記した調整部により撮像装置3と表示装置7の表示部との間の相対的な距離を調整することによって、撮像装置3(撮像素子)により、表示部に表示された表示画像(表示画像の画素)をどのくらいの大きさで撮像するのか調整される。すなわち、調整部により撮像装置3と表示装置7の表示部との間の相対的な距離を調整することによって、撮像装置3により撮像される表示画像のサイズである撮影サイズが調整される。具体的には、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れないように、撮像装置3により撮像された撮像データにおいて、撮像装置3の撮像素子の1画素あたりに撮像される撮像対象(表示画像)のサイズ(撮像データの1画素あたりの撮影サイズ)が、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整される。
【0056】
なお、図2に示すように、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(サイズY)とは、この撮像データの1画素の1辺のサイズに相当する、撮像された表示画像のサイズを意味する。一方、表示画像の1画素のサイズ(サイズX)とは、表示画像の1画素の1辺のサイズを意味する。撮像データの1画素および表示画像の1画素それぞれが正方形ではない場合は、それぞれのサイズを、それぞれの水平方向または垂直方向における一辺のサイズとしてもよい。図2は、撮像データにおける、撮像データの1画素あたりの撮影サイズと表示画像の1画素のサイズとの関係を模式的に示す図である。本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1では、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(サイズY)が、表示画像の1画素のサイズ(サイズX)の0.7倍以上、好ましくは0.75倍以上、より好ましくは0.8倍以上、特に好ましくは1.0倍以上となるように調整される。
【0057】
あるいは、水平方向および垂直方向の撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(サイズY)各々が、水平方向および垂直方向の表示画像の1画素のサイズ(サイズX)各々の0.7倍以上、好ましくは0.75倍以上、より好ましくは0.8倍以上、特に好ましくは1.0倍以上となるように調整されてもよい。
【0058】
また、上記した撮像データの1画素あたりの撮影サイズと、表示画像の1画素のサイズとの比率の調整は、例えば、以下のように行うことができる。まず、表示部上に1辺1cmの升形が複数配列された升目状シートを配置する。そして、撮像装置3によって表示部を撮像し、得られた撮像データにおいて、撮像された各升の1辺(1cm)が撮像データにおいて何画素分に相当するかを求めることによって撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(サイズY)を計算することが出来る。例えば、撮像された各升の1辺(1cm)が撮像データにおいて200画素に相当する場合、サイズY=50μm(=1cm/200)と算出することができる。
【0059】
ここで、表示部で表示される表示画像の1画素のサイズは表示装置によって予め分かっている。そこで、ギラツキ評価装置1では、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(サイズY)が表示画像の1画素のサイズ(サイズX)の0.7倍以上となるように、撮像データの1画素あたりの撮影サイズと升目状シートの各升のサイズとの比率を調整する。
【0060】
このようにして、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1では、撮像データにおける、該撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(サイズY)と、表示画像の1画素のサイズ(サイズX)との比率の調整を行うことができる。なお、この調整は、上記した方法に限定されるものではなく、撮像データにおいて、該撮像データの1画素あたりの撮影サイズと表示画像の1画素のサイズとが上記した所望の関係となるように調整できる方法であれば特に限定されない。また、撮像データにおいて、該撮像データの1画素あたりの撮影サイズを、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上とする根拠に関する詳細な説明は後述する。
【0061】
主制御部8は、ギラツキ評価装置1が備える各部の各種制御を行うものであり、ギラツキ測定部10、輝度判定部11、撮像装置設定部12、および記憶部13を備えている。
【0062】
ギラツキ測定部10は、撮像装置3によって得られた撮像データに基づき、撮像された表示部の表示画像の輝度の標準偏差の値を求める。なお、ギラツキ測定部10は、求めた標準偏差の値を輝度平均(階調)によって除して得られる値(ギラツキ率)をさらに求める構成としてもよい。ここで求められるギラツキ率は、後述する図7に示すグラフの傾きとして表される。ギラツキ率により表示装置7の表示部と、表示部に装着された防眩フィルムとの組合せにおける、ギラツキの出やすさの指標を得ることができる。このため、ギラツキ測定部10がさらにギラツキ率を求める構成とした場合、ギラツキの出やすさに関して防眩フィルムと表示装置7の表示部との組合せの是非についての評価を行うことができる。また、表示装置7を特定した場合、この表示装置7の表示部に装着する防眩フィルムのギラツキに関する性能(ギラツキの出やすさ)を評価することもできる。
【0063】
輝度判定部11は、撮像データに基づき、撮像された表示部の表示画像の輝度平均の値を求め、該輝度平均の値と所定値との一致の有無を判定する。そして、この判定において輝度平均の値が所定値と一致しない場合、輝度判定部11は、撮像装置設定部12に撮像装置3の露光時間の設定を変更するように指示する。なお、輝度平均の値とは、撮像データにおける各画素の輝度の平均となる値である。また、この輝度とは、1画素が8ビットで表された、グレーススケール画像における明るさ情報である。
【0064】
撮像装置設定部12は、撮像装置3の各種設定を制御するものである。例えば、輝度判定部11から露光時間の設定に関する指示を受けつけると、撮像装置3の露光時間の設定を変更する。
【0065】
記憶部13はデータの読み書き可能な記録媒体であり、主制御部8がギラツキ評価装置1を制御するにあたり必要なデータ等が記録されている。また、記憶部13には、後述する露光時間調整データも記録される。
【0066】
なお、図1では特に図示しないが、主制御部8は、撮像装置3によって撮像された撮像データが入力される入力部、撮像データに対する処理結果を、不図示の表示装置または印字装置等に出力する出力部等を備えていてもよい。
【0067】
上記したように、実施形態に係るギラツキ評価装置1では、本発明の調整部として、撮像装置保持部4と表示装置用架台6とを備え、撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な距離を調整する。そして、撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な距離を調整することで、撮像データの1画素あたりの撮影サイズと、表示画像の1画素のサイズとの関係(比率)が調整される構成であった。
【0068】
しかしながら、撮像装置保持部4のみだけで撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な距離を適切な距離となるように調整できる場合は、本発明の調整部として、撮像装置保持部4のみを備える構成であってもよい。あるいは、表示装置用架台6のみだけで撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な距離を適切な距離となるように調整できる場合は、本発明の調整部として、表示装置用架台6のみを備える構成であってもよい。
【0069】
また、撮像データの1画素あたりの撮影サイズと、表示画像の1画素のサイズとの比率の調整は、撮像装置3と表示装置7の表示部との間の相対的な距離を変更させる方法に限定されるものではない。例えば、撮像装置3が備えるレンズ3aがズームレンズである場合、撮像装置3の焦点距離を変えることで、調整する構成としてもよい。この構成の場合、本発明の調整部は、レンズ3aによって実現される。
【0070】
なお、本発明の実施形態では、ギラツキ評価を行う評価対象となる表示装置7の表示部として、スマートフォンのディスプレイを例に挙げて説明するが、表示装置7はスマートフォンに限定されるものではない。例えば、表示装置7の表示部は、コンピュータやテレビなどの液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等であってもよい。
【0071】
(表示画像の画素に起因する輝度ムラの有無)
ここで、本発明者らが、撮像装置3によって撮像された撮像データにおいて、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れる場合と、現れない場合とについて、鋭意検討した。その結果、図3に示すように、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(サイズY)と表示画像の1画素のサイズ(サイズX)との比率を、所定の範囲の値としたとき撮像データにおいて表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れないという知見を得た。具体的には、サイズY/サイズXの値が0.7以上の範囲の値となるように調整したとき、撮像データにおいて表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れないという知見を得た。また、このときのサイズY/サイズXが取りうる値の範囲の上限値は、11とすることができる。なお、この上限値は、将来的にさらに高精細となったときの表示画像の1画素のサイズ、撮像装置3の解像度、撮像装置3と表示装置7の表示部との間の距離として設定可能な範囲に応じて適宜設定することができる。例えば、本発明の実施形態のように表示装置7の表示部を、例えば画面サイズが4インチ、解像度が300ppi以上となるスマートフォンとした場合、上記したように、サイズY/サイズXが取りうる値の範囲の上限値は、11とすることができる。一方、表示装置7の表示部を、例えば画面サイズが9.7インチ、解像度が200ppi~300ppiとなるタブレットPCとした場合、サイズY/サイズXが取りうる値の範囲の上限値は、5とすることができる。また、表示装置7の表示部を、例えば画面サイズが40インチ、解像度が100ppi以下となる4Kテレビとした場合、サイズY/サイズXが取りうる値の範囲の上限値は、1.5としてもよい。
【0072】
なお、図3は、撮像データにおいて、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が見える場合(または見えない場合)における、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(μm)と表示画像の1画素のサイズ(1画素のピッチ)(μm)との関係を示すグラフである。図3において、「〇」は、撮像データにおいて、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れない場合を示しており、「×」は表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れる場合を示している。また、図3において、縦軸は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(μm)を示す。換言すると、撮像装置3の撮像素子の1画素あたり撮像された表示画像のサイズ(μm)を示す。また、横軸は、表示画像の画素のピッチ(表示画像において隣接する画素の中心間の距離)、換言すると表示画像の1画素のサイズを示している。
【0073】
すなわち、表示画像の1画素のサイズが、任意のサイズにあるとき、この表示画像の1画素のサイズに対して、撮像素子の1画素あたり撮像された表示画像のサイズ(撮像データの1画素あたり撮影サイズ)が徐々に大きくなるようにまたは小さくなるように表示装置7の表示部と撮像装置3との相対的な距離を調整し、表示部と撮像装置3との相対的な距離が異なる複数のポイントで輝点(輝度ムラ)の有無を、目視によってそれぞれ確認した。その結果、撮像データの1画素あたりの撮影サイズの値がある範囲にあるときは、撮像データにおいて輝点(輝度ムラ)が現れ、その範囲を超えると輝点(輝度ムラ)が現れなくなることが分かった。この作業を、1画素のサイズが異なる表示画像についてそれぞれ行った結果、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(Y)と表示画像の1画素のサイズ(X)とがY=0.7Xの関係を満たす時が、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れるか否かを弁別する閾値となることが分かった。
【0074】
例えば、図4(a)に示すように、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.52倍となる場合(すなわち、0.7倍より小さくなる場合)、撮像データにおいて周期的な輝点(輝度ムラ)が現れた。一方、図4(b)に示すように、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.74倍となる場合(すなわち、0.7倍以上となる場合)、撮像データにおいて周期的な輝点(輝度ムラ)が現れなかった。図4は、本発明の実施形態に係る撮像装置3によって撮像された撮像データの一例を示す図であり、同図(a)は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.52倍となるときの撮像データを示し、同図(b)は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.74倍となるときの撮像データを示す。
【0075】
また、図5に示すように、撮像データの1画素あたりの撮影サイズと表示画像の1画素のサイズとの比率を変えて撮像データにおける輝度の分布を調べた。図5は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズと表示画像の1画素のサイズとの比率と、撮像データにおける輝度の分布との関係の一例を示すグラフである。図5では、横軸は輝度(8ビット階調)を示し、縦軸は度数を示す。
【0076】
すなわち、図5に示すように、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.52倍となるとき、0.58倍となるとき、0.65倍となるとき、0.71倍となるとき、0.74倍となるときそれぞれについて輝度分布を調べた。このとき、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.52倍、0.58倍、0.65倍となるときの輝度分布では、2つのピークが現れたが、0.71倍、0.74倍となるときの輝度分布では1つのピークのみしか現れなかった。これは、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍より小さくなるとき、周期的に表れる輝点(輝度ムラ)が支配的となり、輝度分布において2つのピークが現れたものと考えられる。一方、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるとき、表示画像は輝点(輝度ムラ)の影響を受けず、ギラツキに起因する輝度のみとなっているものと判断できる。
【0077】
また、上記した図3では、撮像対象となる表示装置7の表示部として、有機ELディスプレイを用いた場合について、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が見えるとき(または見えないとき)について評価した。なお、表示装置7の表示部として、上記した有機ELディスプレイとはサブピクセルの配列パターンが異なる液晶ディスプレイを用いた場合についても評価した。その結果、表示装置7の表示部が有機ELディスプレイの場合と同様に、撮像データの1画素あたりの撮影サイズ(Y)と表示画像の1画素のサイズ(X)とがY=0.7Xの関係を満たす時が、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れるか否かを弁別可能とする閾値となることが分かった。つまり、図3に示す評価と同様の評価結果が得られた。この結果から、表示形態およびサブピクセルの配列の違いに関係なく、撮像データにおいて、表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が現れる場合と現れない場合とを弁別する閾値として上記したY=0.7Xの関係が成り立つことが分かった。
【0078】
以上より、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1では、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように、撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な距離を調整することで、適切に、ギラツキを評価できることが分かった。
【0079】
なお、表示画像の1画素のサイズが大きすぎる、または小さすぎるため、撮像装置3においてデフォルトで備えられているレンズ3aでは、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整できない場合も考えられる。このような場合は、ギラツキ評価装置1は、レンズ3aを倍率の異なる別のレンズに交換できるように構成されていてもよい。
【0080】
(ギラツキ評価方法)
次に、図6を参照して、上記した構成を有するギラツキ評価装置1によるギラツキ評価方法について説明する。図6は、図1に示すギラツキ評価装置1を用いて実施するギラツキ評価方法の一例を示すフローチャートである。このギラツキ評価方法では、防眩フィルムが装着されたスマートフォンを表示装置7として用い、表示装置7の表示部の表示は、評価の便宜上、発光面を均一に発光させて、例えば緑色一色の表示とする。なお、表示部の表示は、この緑色一色の表示に限定されるものではなく、白など他の一色を表示させる構成であってもよい。
【0081】
まず、撮像装置3の撮像素子に取り込まれた撮像データにおいて、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズに対して所定の大きさとなるように調整する(ステップS11)。すなわち、撮像装置3と表示装置7の表示部との間の相対的な距離を調整し、撮像装置3の撮像素子に取り込まれた撮像データにおいて、表示装置7の表示部に表示された表示画像の画素に起因する輝点(輝度ムラ)が見えない、あるいは輝度ムラが見えていたとしてもギラツキ評価に影響を与えない程度となるように調整する。
【0082】
上記したように本発明者らが実験により調べたところ、撮像データにおいて、この撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように撮像装置3と表示装置7の表示部との間の相対的な距離を調整すればよいことが分かった。そこで、ステップS11では、撮像データにおいて、この撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整する。
【0083】
ステップS11で、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.7倍以上となるように調整した後、測定エリアを設定する(ステップS12)。測定エリアは、表示部における、ギラツキが評価される領域であって、評価対象となる表示装置7の表示部のサイズに応じて適切に設定される。
【0084】
次に、撮像装置3により測定エリア内の表示画像を撮像し(ステップS13)、得られた撮像データは主制御部8が有するギラツキ測定部10へと入力される。ギラツキ測定部10は、入力された撮像データから、測定エリアに表示された表示画像の輝度のばらつきを求める(ステップS14)。輝度のばらつきは、例えば、輝度分布の標準偏差を求めることで数値化できる。また、輝度のばらつき度合と表示部の表示画像のギラツキ度合を示すギラツキ値との関係は、標準偏差の値が小さいほどギラツキ値が小さくなる関係にある。なお、輝度のばらつきは、輝度分布の標準偏差を求める方法に限定されるものではなく、例えば、各ピクセルにおける輝度の微分値を求め、全ピクセルの微分値の和をとる積和演算(微分積和)によって求めてもよい。また、ギラツキ測定部10は、輝度分布の標準偏差に加えて、さらに、この標準偏差の値を輝度平均(階調)によって除して得られる値(ギラツキ率)をさらに求める構成としてもよい。ギラツキ率により表示装置7の表示部と、表示部に装着された防眩フィルムとの組合せにおける、ギラツキの出やすさの指標を得ることができる。このため、ギラツキの出やすさに関して防眩フィルムと表示装置7の表示部との組合せの是非についての評価を行うことができる。また、表示装置7を特定した場合、この表示装置7の表示部に装着する防眩フィルムのギラツキに関する性能(ギラツキの出やすさ)を評価することもできる。
【0085】
ところで、本発明者らは、撮像装置3によって撮像された表示画像の撮像データの輝度の大きさ(輝度平均の値の大きさ)と、輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)とが、図7に示すように正の相関関係にあることを見出した。図7は、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1の撮像装置3によって撮像された撮像データの輝度平均の値とギラツキ値との対応関係の一例を示すグラフである。図7のグラフにおいて横軸は輝度平均の値(8ビット階調)を示し、縦軸は、表示画像の輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)を示す。
【0086】
このため、複数種類の表示装置7で表示された表示画像それぞれについてギラツキの大きさを比較する場合、撮像装置3によって撮像された撮像データの輝度平均の値の大きさを一定にする必要があることを見出した。また、本発明者らは、図8に示すように、撮像装置3における露光時間(μ秒)と輝度平均の値とは正の相関関係にあることを発見し、撮像装置3の露光時間を調整することで輝度平均の値を調整することができることを見出した。図8は本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1の撮像装置3によって撮像された撮像データの輝度平均の値と、撮像装置3の露光時間との対応関係の一例を示すグラフである。
【0087】
これらの知見から、本発明者らは、表示装置7の表示部におけるギラツキを評価するにあたり、撮像データの輝度平均の値が所定値となるように、撮像装置3の露光時間の設定を調整することができる構成とすることが好適であるという考えに至った。
【0088】
具体的には、主制御部8が、図8に示す撮像データの輝度平均の値と、撮像装置3の露光時間との対応関係を示すデータ(露光時間調整データ)を記憶部13に記憶しておく。なお、撮像データの輝度平均の値と撮像装置3の露光時間との対応関係は、撮像対象となる表示装置7の表示部ごとに異なる。このため、記憶部13では、予め、ギラツキの評価対象となる表示装置7ごとに露光時間調整データを記憶しておく。そして、ステップS12の後でかつステップS13の前に図9に示す輝度調整処理を実施する構成としてもよい。以下、輝度調整処理について図9を参照して説明する。図9は、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1における輝度調整処理の一例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、ステップS12において測定エリアを設定した後、撮像装置3により該測定エリアの撮像データを試験的に取得する(ステップS21)。そして、輝度判定部11が撮像データから輝度平均の値を求め(ステップS22)、求めた輝度平均の値が所定値と一致しないか判定する(ステップS23)。ここで、輝度判定部11が、求めた輝度平均の値が所定値と一致しないと判定した場合(ステップS23において「YES」)、撮像装置設定部12が、記憶部13に記憶した露光時間調整データに基づき、撮像装置3において設定されている露光時間を変更させる(ステップS24)。具体的には、撮像装置設定部12は、露光時間調整データを参照して、撮像データの輝度平均の値が所定値と一致するように露光時間の設定を変更する。以上のようにして、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1では、撮像データの輝度平均の値が所定値と一致するように輝度調整処理(本発明の第5ステップ)を実施した上で、ステップS13以降の各ステップによって表示装置7の表示部のギラツキを評価する構成としてもよい。
【0090】
なお、上記では、ステップS24において、撮像装置設定部12が、記憶部13に記憶された露光時間調整データに基づき、撮像装置3において設定されている露光時間を変更させる構成であったが、露光時間の設定変更はこの構成に限定されるものではない。例えば、撮像装置設定部12が撮像装置3の露光時間を任意に設定し、その時の輝度平均の値を求めるように輝度判定部11に指示する。この指示に応じて輝度判定部11が輝度平均の値を求める。この作業を露光時間の設定を変えて再度行う。以上の操作を行って得た結果から撮像装置設定部12が撮像データの輝度平均の値と撮像装置3の露光時間との対応関係を求め、この求めた対応関係に基づき撮像装置3において設定されている露光時間を変更させる構成としてもよい。
【0091】
以下では、上記したギラツキ評価装置1を用いてギラツキ評価を行った実施例について説明する。撮像装置3として500万画素のエリアカメラを用意した。
【0092】
(実施例1)
実施例1では、表示装置7の表示部に、異なる種類の防眩フィルムをそれぞれ装着したときのギラツキ評価を、ギラツキ評価装置1を用いて上記したギラツキ評価方法を実施して行った。なお、実施例1では、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.75倍となるように、撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な位置関係を調整してギラツキ評価を行った。
【0093】
まず、評価対象となる表示装置7として表示装置Aを準備した。表示装置Aの表示部は、解像度が306ppiである有機ELディスプレイ(三星電子株式会社製「Galaxy(登録商標) S3」)である。また、表示装置Aの表示部に装着する防眩フィルムとして、ギラツキの官能評価結果が異なるサンプルα、β、γ、δ、εの5種類を準備した。なお官能評価は5段階で評価されており、数値が高いほどギラツキ度合が小さいことを示している。サンプルαは官能評価結果が3.0、サンプルβは官能評価結果が3.5、サンプルγは官能評価結果が4.0、サンプルδは官能評価結果が4.5、サンプルεは官能評価結果が5.0となった。したがって、官能評価結果においてサンプルεがもっともギラツキが小さかった防眩フィルムとなる。
【0094】
次に、表示装置Aの表示部に上記した5種類の防眩フィルムをそれぞれ装着し、ギラツキ評価装置1を用いて上記したギラツキ評価方法を実施した。そして、表示部にサンプルα、β、γ、δ、εそれぞれを装着した場合について、各標準偏差の値を求め、その値をギラツキ値とした。標準偏差の値と官能評価結果との対応関係は図10に示すようになった。図10は、本発明の実施例1における、防眩フィルムを装着した表示部で表示された画像の輝度分布に関する標準偏差の値と、官能評価結果がそれぞれ異なるサンプルとの対応関係を示す棒グラフである。図10では、横軸に官能評価の異なるサンプルα、β、γ、δ、εが示されており、縦軸に標準偏差の値(ギラツキ値)が示されている。図10に示すように標準偏差の値(ギラツキ値)の大小関係と官能評価結果の良否が対応していることが分かる。
【0095】
(実施例2)
次に、実施例2として、異なる種類の表示装置7の表示部に防眩フィルムを装着したときのギラツキ評価を行った。評価対象となる表示装置7として表示装置A、Bの2種類を準備した。なお、実施例2の表示装置Aに対するギラツキ評価は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.76倍となるように、撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な位置関係を調整して行った。一方、実施例2の表示装置Bに対するギラツキ評価は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.81倍となるように、撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な位置関係を調整して行った。
【0096】
また、表示装置Aは、実施例1で用いた表示装置と同じである。表示装置Bの表示部は、解像度が326ppiである液晶ディスプレイ(アップル社製「iPhone(登録商標) 4S」)である。また、表示装置A、Bの表示部に装着する防眩フィルムとして、実施例1と同様にサンプルα、β、γ、δ、εの5種類を準備した。
【0097】
まず、表示装置Aの表示部に上記した5種類の防眩フィルムをそれぞれ装着し、ギラツキ評価装置1を用いて上記したギラツキ評価方法を実施して、それぞれ標準偏差の値(ギラツキ値)を求めた。次に、表示装置Bに上記した5種類の防眩フィルムをそれぞれ装着し、ギラツキ評価装置1を用いて上記したギラツキ評価方法を実施して、それぞれ標準偏差の値(ギラツキ値)を求めた。標準偏差の値と官能評価結果との対応関係は図11に示すようになった。図11は、本発明の実施例2における、防眩フィルムを装着した2種類の表示部で表示された画像の輝度分布に関する標準偏差の値と、官能評価結果がそれぞれ異なるサンプルとの対応関係を示す棒グラフである。図11では、横軸に官能評価の異なるサンプルα、β、γ、δ、εが示されており、縦軸に標準偏差の値(ギラツキ値)が示されている。図11に示すように表示装置Aの標準偏差の値(ギラツキ値)の大小関係と官能評価結果の良否が対応している。また、表示装置Bの標準偏差の値(ギラツキ値)の大小関係と官能評価結果の良否が対応していることが分かる。また、同じ防眩フィルムを装着した場合であっても表示装置Aと表示装置Bとは標準偏差の値が異なっており、表示装置Aよりも表示装置Bの方が標準偏差の値が小さくなっていることが分かる。つまり、表示装置Aよりも表示装置Bの方が防眩フィルムを装着したときのギラツキが小さいことが分かる。
【0098】
(実施例3)
次に、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1を用いて、実施例3として、表示装置7に防眩フィルムを装着したときのギラツキ評価を行った。特には、防眩フィルムを表示部に装着するためのバインダーとしてシリコンを含む両面テープを用いた場合と、両面テープなしでそのまま防眩フィルムを表示部に載置した場合とに分けてギラツキ評価を行った。なお、この両面テープとしては、例えば、第1剥離フィルム層、強粘着剤(光学粘着シート;OCA(Optically Clear Adhesive))層、支持基体(ポリエチレンテレフタラート;PET(polyethylene terephthalate))層、シリコン粘着層、第2剥離フィルム層から構成された、所謂、ABテープが例示できる。両面テープでは、第1剥離フィルム層をはがして防眩フィルムの非凹凸面に接着し、第2剥離フィルム層をはがして表示装置7の表示部に接着することで防眩フィルムを表示部に装着させることができる。
【0099】
例えば、防眩フィルムを別途、購入し、表示装置7に後付けで装着する場合は、この防眩フィルムを表示装置7に装着するにあたり、両面テープを介して装着する場合が考えられる。この場合は、防眩フィルムと表示装置7の表示部との間に両面テープを挟まない場合に比べて、防眩フィルムと表示部との間の距離が大きくなる。ここで、この防眩フィルムと表示部との間の距離が大きくなればなるほどギラツキの度合が大きくなるという官能評価となることが経験的に知られている。
【0100】
そこで、実施例3では、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1用いた上記したギラツキ評価方法によって、両面テープの有無に起因して変わるギラツキ度合の違いについて、官能評価と相関した結果が得られるか調べた。
【0101】
まず、評価対象となる表示装置7として表示装置Cを準備した。表示装置Cの表示部は、解像度が441ppiである有機ELディスプレイ(三星電子株式会社製「Galaxy S4」)である。また、表示装置Cの表示部に装着する防眩フィルムとして、実施例1と同様のギラツキの官能評価結果が異なるサンプルα、β、γ、δ、εの5種類を準備した。そして、表示装置Cの表示部に上記した5種類の防眩フィルムを、それぞれ両面テープを用いて装着し、ギラツキ評価装置1を用いて上記したギラツキ評価方法を実施した。なお、実施例3の表示装置Cに対するギラツキ評価は、撮像データの1画素あたりの撮影サイズが、表示画像の1画素のサイズの0.95倍となるように、撮像装置3と表示装置7の表示部との相対的な位置関係を調整してギラツキ評価を行った。
【0102】
次に、表示装置Cの表示部に上記した5種類の防眩フィルムをそれぞれ、直接、載置し、ギラツキ評価装置1を用いて上記したギラツキ評価方法を実施した。そして、得られた標準偏差の値(ギラツキ値)と官能評価結果との対応関係は図12に示すようになった。図12は、本発明の実施例3における、防眩フィルムを、両面テープを介して装着した場合と、両面テープを用いない場合との表示部に表示された画像の輝度分布に関する標準偏差の値と、官能評価がそれぞれ異なるサンプルとの対応関係を示す棒グラフである。図12では、横軸に官能評価の異なるサンプルα、β、γ、δ、εが示されており、縦軸に標準偏差の値(ギラツキ値)が示されている。
【0103】
ギラツキ評価装置1を用いて上記したギラツキ評価方法を実施した結果、図12に示すように、両面テープをバインダーとして用いた場合と、両面テープを用いない場合とにおけるギラツキ度合の差を評価できることが分かった。すなわち、上記したギラツキ評価方法の結果、両面テープをバインダーとして用いた場合の方が、どのサンプルであっても総じて両面テープを用いない場合よりも標準偏差の値(ギラツキ値)が大きくなるという官能評価に相関した結果となった。
【0104】
また、両面テープをバインダーとして用いた場合と用いない場合とでは標準偏差の値は異なるものとなるが、両方の場合とも、サンプルα、β、γ、δ、εそれぞれの官能評価と対応した標準偏差の値(ギラツキ値)が得られた。
【0105】
したがって、本発明の実施形態に係るギラツキ評価装置1は、バインダーとして両面テープが利用された場合と両面テープが利用されなかった場合とのギラツキ度合の官能的な相違を定量的に示すことができるとともに、サンプルα、β、γ、δ、εそれぞれに対する官能評価に応じた定量的な評価値を得ることができる。
【0106】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、スマートフォンのように様々な種類の表示部を採用する表示装置において、防眩フィルムを装着した際に生じるギラツキの評価に幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0108】
1 ギラツキ評価装置
2 筐体
3 撮像装置
3a レンズ
4 撮像装置保持部
5 撮像装置用架台
6 表示装置用架台
7 表示装置
8 主制御部
10 ギラツキ測定部
11 輝度判定部
12 撮像装置設定部
13 記憶部
図1
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