(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】ゲル状組成物の品質改良方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/206 20160101AFI20220810BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20220810BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20220810BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220810BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220810BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220810BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220810BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220810BHJP
A23K 50/80 20160101ALI20220810BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20220810BHJP
A23K 40/10 20160101ALI20220810BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20220810BHJP
A23K 20/22 20160101ALI20220810BHJP
A23K 20/24 20160101ALI20220810BHJP
【FI】
A23L29/206
A23L29/00
A23L29/244
A23L33/105
A61K9/06
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/02
A23K50/80
A23K20/163
A23K40/10
A23K10/30
A23K20/22
A23K20/24
(21)【出願番号】P 2018123953
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2018025050
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591050822
【氏名又は名称】清水化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593050116
【氏名又は名称】南日本酪農協同株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】深津 佳也
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】有馬 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】溝口 竜
(72)【発明者】
【氏名】柴立 亜理沙
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-195664(JP,A)
【文献】特開2006-288310(JP,A)
【文献】特開2016-116509(JP,A)
【文献】特開2009-291111(JP,A)
【文献】ポイントは“脱水症状”!? こんにゃくに味を染み込ませる驚きの裏技- レタスクラブ[online],2017年09月30日,[検索日:2021.11.4],https://www.lettuceclub.net/news/article/122896/
【文献】こんにゃくの下ごしらえ(下ゆでやあく抜き)のやり方:白ごはん.com,InternetArchive Wayback Machine[online],2017年02月07日,[検索日:2021.11.4],https://web.archive.org/web/20170207084450/https://www.sirogohan.com/recipe/konsita/
【文献】こんにゃくの下ごしらえ方法を画像で解説。料理によってやり方が違う!- macaroni[online],2017年11月27日,[検索日:2021.11.4],https://macaro-ni.jp/36601
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23K
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維を含むゲル状組成物の水分の少なくとも一部を除去する水分除去工程と、
水分の少なくとも一部を除去された前記ゲル状組成物を
、乳糖を含む含浸液に含浸する含浸工程と、
前記含浸
液に含浸された前記ゲル状組成物を
加熱しながら減圧
して前記ゲル状組成物の固形分が73%以上になるまで濃縮する減圧工程
と、
濃縮された前記ゲル状組成物を冷却して前記含浸液に含まれる乳糖を結晶として析出させる冷却工程とを含み、
前記冷却工程において乳糖の微細結晶を添加し、20℃以下に徐冷するシーディング工程をさらに含む、ゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項2】
前記水分除去工程は、遠心分離、ドラム型真空式ろ過、ベルトフィルターろ過、または、自然ろ過によって行われる、請求項1に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項3】
前記ゲル状組成物は、グルコマンナンと、グルコマンナン以外の増粘多糖類との混合物にアルカリ凝固剤を添加して製造される、請求項1
または請求項2に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項4】
前記ゲル状組成物は熱不可逆性ゲルである、請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項5】
前記ゲル状組成物はこんにゃくである、請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項6】
前記ゲル状組成物は、グルコマンナンまたはこんにゃく粉1部に対して、澱粉15部以下、水100部以下、および、アルカリ凝固剤を含む、請求項1から請求項
5までのいずれか1項に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項7】
前記ゲル状組成物は、食品である、請求項1から請求項
6までのいずれか1項に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項8】
前記ゲル状組成物は、疑似餌である、請求項1から請求項
6までのいずれか1項に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項9】
前記ゲル状組成物は、薬剤を含む医薬組成物である、請求項1から請求項
6までのいずれか1項に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【請求項10】
前記水分除去工程において水分の少なくとも一部を除去され、前記含浸工程において前記含浸液に含浸される前記ゲル状組成物は、90重量%以上の水分を含む、請求項1から請求項
9までのいずれか1項に記載のゲル状組成物の品質改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはゲル状組成物の品質改良方法に関し、特定的には、食物繊維を含むゲル状組成物の品質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食物繊維は、血清コレステロール濃度の調整作用や血糖調節作用などに優れている。食物繊維をゲル状組成物にしたものは、整腸作用などの機能性を有する食品として活用されている。
【0003】
しかし、ゲル状組成物は、独特の風味や物性から、特定の料理にしか使用されず、用途が限られていた。
【0004】
食品の品質改良方法としては、例えば、特開平8-238074号公報(特許文献1)には、魚肉落とし身に、約0.7倍~等量の重曹ピロリン酸ナトリウム混合水溶液を加え、減圧下で晒しを行い、脱脂脱水することよりなる落とし身の品質改良法が記載されている。
【0005】
また、特開2003-284522号公報(特許文献2)には、生あるいは加熱した植物食品素材を凍結した後、解凍し、酵素液に浸漬して減圧下に放置する植物組織への酵素急速導入法が記載されている。
【0006】
特開2009-89668号公報(特許文献3)には、食品素材の表面に接触させた分解酵素を圧力処理により食品素材の内部に均一に含有させる分解酵素導入工程であって、食品素材を減圧工程により形状を保持した状態で膨張させる膨張工程と、膨張した食品素材を元の食品素材の体積より小さい体積に圧縮させる圧縮工程とを有する分解酵素導入工程を含む熟成食品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-238074号公報
【文献】特開2003-284522号公報
【文献】特開2009-89668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~3に記載されているような方法は、ゲル状組成物の品質改良には適していない。ゲル状組成物を減圧しても、それだけでは、水分量を十分に低減することができず、室温では長期保管ができず、十分な冷凍耐性を得ることもできない。また、例えば、特許文献2に記載されているような凍結乾燥では、ゲル状組成物に鬆が入ってしまい、凍結乾燥後に調味液等に浸しても、水分が内部まで浸みこまない。
【0009】
また、ゲル状組成物としてこんにゃくを用いる場合には、冷凍耐性を付与する目的で、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、果糖類のうち1種または数種をこんにゃくに含浸させることが知られている。しかしながら、含浸後の固形分が少ないので、水分活性が高くカビなどが発生しやすく、室温で長期保管できない。さらに、含浸物質が糖類である場合、できあがった製品に甘みが強く残り、調理用として不向きな素材となる場合がある。また、この糖類を含浸しても、水分が多く、所望の冷凍耐性を得ることができない。例えば、冷凍後には、冷凍前の弾力性がなくなり、所望のテクスチャー(食感)を得ることができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ゲル状組成物の保存性を向上させ、含浸液の特性を生かした機能性を付与することが可能なゲル状組成物の品質改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法は、食物繊維を含むゲル状組成物の水分の少なくとも一部を除去する水分除去工程と、水分の少なくとも一部を除去されたゲル状組成物を含浸液に含浸する含浸工程と、含浸物質に含浸されたゲル状組成物を減圧する減圧工程とを含む。
【0012】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、水分除去工程は、遠心分離、ドラム型真空式ろ過、ベルトフィルターろ過、または、自然ろ過によって行われることが好ましい。
【0013】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、含浸液は、練乳、糖類、油脂類の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0014】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、減圧工程は、ゲル状組成物を加熱しながら行われることが好ましい。
【0015】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、減圧されたゲル状組成物を冷却する冷却工程をさらに含むことが好ましい。
【0016】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、ゲル状組成物は、グルコマンナンと、グルコマンナン以外の増粘多糖類との混合物にアルカリ凝固剤を添加して製造されることが好ましい。
【0017】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、ゲル状組成物は熱不可逆性ゲルであることが好ましい。
【0018】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、ゲル状組成物はこんにゃくであることが好ましい。
【0019】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、ゲル状組成物は、グルコマンナンまたはこんにゃく粉1部に対して、澱粉15部以下、水100部以下、および、アルカリ凝固剤を含むことが好ましい。
【0020】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、ゲル状組成物は、食品であることが好ましい。
【0021】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、ゲル状組成物は、疑似餌であることが好ましい。
【0022】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、ゲル状組成物は、薬剤を含む医薬組成物であることが好ましい。
【0023】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法においては、水分除去工程において水分の少なくとも一部を除去され、含浸工程において含浸液に含浸されるゲル状組成物は、90重量%以上の水分を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明に従えば、ゲル状組成物の保存性を向上させ、含浸液の特性を生かした機能性を付与することが可能なゲル状組成物の品質改良方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ゲル状組成物(こんにゃく)の処理前後のこんにゃくと含浸液の全重量の減少率の時間変化を示す図である。
【
図2】ゲル状組成物の処理前後のこんにゃくの重量の減少率の時間変化を示す図である。
【
図3】ゲル状組成物の糖液(含浸液)Bx(%)の時間変化を示す図である。
【
図4】ゲル状組成物の固形分の時間変化を示す図である。
【
図5】ゲル状組成物の乾燥重量100gあたりの糖質含量を示す図である。
【
図6】ゲル状組成物の乾燥重量1gあたりの色素含有量を吸光度によって示す図である。
【
図7】ゲル状組成物の体積の時間変化を示す図である。
【
図8】本発明に従った品質改良方法によって品質改良したゲル状組成物(試料15)のSEM像を示す写真である。
【
図9】減圧工程を行っていないゲル状組成物(試料16)のSEM像を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法は、食物繊維を含むゲル状組成物の水分の少なくとも一部を除去する水分除去工程と、水分の少なくとも一部を除去されたゲル状組成物を含浸液に含浸する含浸工程と、含浸物質に含浸されたゲル状組成物を減圧する減圧工程とを含む。
【0027】
食物繊維を含むゲル状組成物としては、例えば、グルコマンナンを主成分とし、アルカリ凝固されたこんにゃくや、耐熱性のゼリーなどが挙げられる。ゲル状組成物は熱不可逆性ゲルであることが好ましく、特に、こんにゃくであることが好ましい。
【0028】
ゲル状組成物は、例えば、グルコマンナンと、グルコマンナン以外の増粘多糖類との混合物に、アルカリ凝固剤を添加して製造される。また、澱粉がさらに添加されてもよい。
【0029】
増粘多糖類は、1種、または、2種含まれることが好ましい。増粘多糖類としては、例えば、果物または植物系のグアガム、グルコマンナン、ローカストビーンガム、タラガム、澱粉等、海藻系のカラギーナン、アルギン酸、寒天等、微生物系のジェランガム、キサンタンガム、カードラン等、その他のメチルセルロース等の化学修飾体が挙げられる。
【0030】
澱粉は、1種、または、2種含まれることが好ましい。澱粉としては、例えば、穀類のとうもろこし、小麦、米等、イモ類のジャガイモ、キャッサバ、サツマイモ等、根や幹類のサゴヤシ、レンコン等、豆類の緑豆、小豆、インゲン等が挙げられる。
【0031】
アルカリ凝固剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ホタテ貝の殻や牡蠣殻や卵殻の粉末を焼成したもの、塩基性アミノ酸としてアルギニン、ヒスチジン、リジン等、ピロリン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
より具体的には、ゲル状組成物は、グルコマンナンまたはこんにゃく粉1部に対して、澱粉15部以下、水100部以下と、アルカリ凝固剤を含むことが好ましい。
【0033】
ゲル状組成物の水分除去工程は、遠心分離、ドラム型真空式ろ過、ベルトフィルターろ過、または、自然ろ過によって行われることが好ましい。遠心分離は、スクリューデカンター、ポールセパレーター、バスケット遠心機等、公知の手段が用いられ得る。自然ろ過は、フィルターろ過、布ろ過等、公知の手段が用いられ得る。
【0034】
水分除去工程の後、含浸工程が行われる。含浸工程では、水分の少なくとも一部を除去されたゲル状組成物を含浸液に含浸する。
【0035】
含浸液は、ゲル状組成物に風味や特性を付与するための液体である。含浸液は、練乳、糖類、油脂類の少なくとも1つを含むことが好ましい。練乳としては、例えば、加糖練乳、加糖脱脂練乳、調整練乳が挙げられる。糖類としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、黒糖、乳糖、果糖、オリゴ糖、トレハロース、希少糖等が挙げられる。油脂類としては、バター、ヤシ油、ココナッツ油、オリーブ油、菜種油、ベニバナ油、大豆油、ひまわり油、綿実油、アマニ油、魚油、動物脂、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-9系脂肪酸等が挙げられる。また、含浸液は、リキュール、ワイン、梅酒等のアルコール類、牛乳、はちみつ、黒蜜、羅漢果等のガムシロップ、ココナッツ、ビタミンプレミックス、ミネラルプレミックス、魚エキスを含んでいてもよい。含浸液は、これらの含浸物質の1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0036】
含浸工程の後、含浸物質に含浸されたゲル状組成物を減圧する減圧工程が行われる。減圧工程によって、ゲル状組成物中の水分量がさらに低減され、ゲル状組成物中の固形分が濃縮される。真空圧範囲は、-0.099MPa~-0.0036MPaであることが好ましい。
【0037】
減圧工程は、ゲル状組成物を加熱しながら行われることが好ましい。減圧工程の温度は、20℃~99℃であることが好ましい。
【0038】
減圧工程、または、加熱しながらの減圧工程は、例えば、多重効用缶、泡末濃縮機、レオニーダー、グローバル濃縮機、バッチ式真空濃縮機、蒸発濃縮装置、ギスティーミックスタンク、加圧真空釜、加圧真空ケトミキサー等によって行われ得る。
【0039】
減圧工程の圧力や温度の条件は、含浸液の特性、例えば、密度、比重、溶解度、融点、沸点、凝固点、pHや、最終製品のpH、塩濃度・糖濃度による水分活性、充填方法(アセプティック充填であるかどうか)、充填温度等によって設定される。
【0040】
減圧工程の後、特に、減圧工程においてゲル状組成物が加熱された場合には、減圧されたゲル状組成物を冷却する冷却工程をさらに含むことが好ましい。
【0041】
冷却工程の圧力や温度の条件は、含浸液の特性、例えば、密度、比重、溶解度、融点、沸点、凝固点、pH等によって設定される。
【0042】
このようにすることにより、ゲル状組成物の風味の改良、テクスチャの改良、耐酸性、耐塩性、耐熱性、冷凍耐性等の付与、賞味期限の延長、常温保管可能食品としての保存性の向上が可能になる。
【0043】
本発明の品質改良方法によって品質改良されたゲル状組成物は、調理材料、製菓原料、機能性素材として用いることができる。機能性素材としては、例えば、含浸液として魚エキスを用いて、生分解性を有する疑似餌とすることができる。また、含浸液としてビタミン、ミネラル、オリゴ糖、DHA等を用いることによって、機能性食品とすることができる。また、ゲル状組成物に薬剤を含ませ、徐放性を備える医薬組成物として用いることもできる。
【0044】
本発明の品質改良方法によって品質改良されたゲル状組成物は、より具体的には、例えば、ソフトクリーム、シャーベット、アイスクリーム等の冷菓にミックス、フィリング、トッピングして用いることができる。また、ケーキや饅頭の生地にミックス、フィリング、トッピングして用いることもできる。また、飲料やゼリーに用いることもできる。さらに、疑似梅干しなどの疑似食品として用いることもできる。
【0045】
また、本発明の品質改良方法によって品質改良されたゲル状組成物を乾燥させることによって、保存性をさらに向上させることができる。また、このようにすることにより、グミのような食感を与えることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例等により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
[ゲル状組成物]
ゲル状組成物としてこんにゃくを用いた。こんにゃくは、こんにゃく粉1.9%、白玉粉0.1%、加工でんぷん粉8.7%、食用加工油脂0.9%、増粘多糖類0.9%、水を残部入れ合計100%とした配合比で原材料を混合し、凝固剤(水酸化カルシウム)を添加して混練し、押出し、切断、加熱成形(85±3℃、5±1分)、熟成(30分以上)して調製した。こんにゃくの大きさは、1粒が長辺9.5mm、短辺8.2mm、体積363mm3であった。以下の実施例と試験例では、それぞれ、このこんにゃく10粒をゲル状組成物として使用した。
【0048】
上述のこんにゃくの水分量は、上述の熱成後の時点では97.7重量%であった。また、このこんにゃくを3,000Gで20分間、遠心分離器で遠心分離したところ、水分量は92.4重量%であった。水分量の測定は、常圧乾燥法(海砂法)を用いた。
【0049】
なお、本願発明のゲル状組成物はこんにゃくに限定されるものではない。ゲル状組成物がこんにゃくである場合には、こんにゃく原料はこんにゃく粉5%以下、白玉粉3%以下、加工でんぷん粉15%以下、増粘多糖類3%以下であることが好ましく、その他の成分として食用加工油脂、水酸化カルシウム、pH調整剤を適量含み、残部として水を加えて100%とすることが好ましい。
【0050】
[実施例1]
[水分除去工程]
ゲル状組成物として上述のこんにゃくを用い、バスケット型遠心分離機で遠心分離(遠心効果:500G、時間:10分間以上)によって水分除去工程を行った。水分除去工程後のこんにゃくの水分量は、90重量%以上(実測値;96.6重量%)であった。水分量の測定は、常圧乾燥法(海砂法)を用いた。
【0051】
[含浸工程]
含浸液として、加糖練乳を用いた。ゲル状組成物と加糖練乳を混合して、ゲル状組成物に加糖練乳を含浸させた。
【0052】
[減圧工程]
次に、85℃、真空圧-0.0435Mpaの減圧濃縮装置を用いて、ゲル状組成物を減圧した。濃縮終点を固形分73%以上とした。
【0053】
[冷却工程]
ゲル状組成物の濃縮終了後、急冷を行った。これは、品質保持、さらには冷却の過程で過飽和となった乳糖をできるだけ細かな結晶として析出させることを目的としている。冷却温度は38℃であった。
【0054】
[シーディング工程]
ゲル状組成物が冷却温度に達した後、微細な乳糖結晶を生成させるため、撹拌冷却しながら乳糖の微細結晶を添加し、20℃以下に除冷した。その後さらに1時間程度撹拌を続け、過飽和の乳糖をすべて結晶化させた。
【0055】
[充填工程]
ゲル状組成物を冷却後8時間以上静置し、あらかじめ滅菌、乾燥した容器(缶)に充填した。なお、充填方法はアセプティック充填であってもよい。
【0056】
[実施例2]
[水分除去工程]
ゲル状組成物として上述のこんにゃくを用い、バスケット型遠心分離機で遠心分離(遠心効果:500G、時間:10分間以上)によって水分除去工程を行った。水分除去工程後のこんにゃくの水分量は、90重量%以上(実測値;96.6重量%)であった。水分量の測定は、常圧乾燥法(海砂法)を用いた。
【0057】
[含浸工程]
含浸液として、砂糖40%、トレハロース15%、果糖ぶどう糖液糖15%、レモン果汁30%の混合液に、レモンエキス適量、酸味料適量を加えた液を用いた。ゲル状組成物と含浸液を混合して、ゲル状組成物に含浸液を含浸させた。
【0058】
[減圧工程]
次に、85℃、真空圧-0.0435Mpaの減圧濃縮装置を用いて、ゲル状組成物を減圧した。濃縮終点を固形分73%以上とした。濃縮終点において、ゲル状組成物はpH4.0以下であった。
【0059】
[冷却工程]
ゲル状組成物の濃縮終了後、急冷を行った。冷却温度は10℃以下であった。
【0060】
[充填工程]
ゲル状組成物を冷却後、あらかじめ滅菌、乾燥した容器(缶)に充填した。なお、充填方法はアセプティック充填、ホット充填であってもよい。
【0061】
[実施例3]
[水分除去工程]
ゲル状組成物として上述のこんにゃくを用い、バスケット型遠心分離機で遠心分離(遠心効果:500G、時間:10分間以上)によって水分除去工程を行った。水分除去工程後のこんにゃくの水分量は、90重量%以上(実測値;96.6重量%)であった。水分量の測定は、常圧乾燥法(海砂法)を用いた。
【0062】
[含浸工程]
含浸液として、オリーブオイル71%、米黒酢25%、バジルエキス3%、食塩1%の混合液に、スパイス適量、pH調整剤適量を加えた液を用いた。ゲル状組成物と含浸液を混合して、ゲル状組成物に含浸液を含浸させた。
【0063】
[減圧工程]
次に、85℃、真空圧-0.0435Mpaの減圧濃縮装置を用いて、ゲル状組成物を減圧した。濃縮終点を固形分73%以上とした。
【0064】
[冷却工程]
ゲル状組成物の濃縮終了後、急冷を行った。冷却温度は25℃であった。
【0065】
[充填工程]
ゲル状組成物を冷却後、あらかじめ滅菌、乾燥した容器(缶)に充填した。なお、充填方法はアセプティック充填、ホット充填であってもよい。
【0066】
[実施例4]
[水分除去工程]
ゲル状組成物として上述のこんにゃくを用い、バスケット型遠心分離機で遠心分離(遠心効果:500G、時間:10分間以上)によって水分除去工程を行った。水分除去工程後のこんにゃくの水分量は、90重量%以上(実測値;96.6重量%)であった。水分量の測定は、常圧乾燥法(海砂法)を用いた。
【0067】
[含浸工程]
含浸液として、加糖練乳60%、オリゴ糖40%の混合液に、pH調整剤適量を加えた液を用いた。ゲル状組成物と含浸液を混合して、ゲル状組成物に含浸液を含浸させた。
【0068】
[減圧工程]
次に、85℃、真空圧-0.0435Mpaの減圧濃縮装置を用いて、ゲル状組成物を減圧した。濃縮終点を固形分73%以上とした。
【0069】
[冷却工程]
ゲル状組成物の濃縮終了後、急冷を行った。冷却温度は38℃であった。
【0070】
[シーディング工程]
ゲル状組成物が冷却温度に達した後、微細な乳糖結晶を生成させるため、撹拌冷却しながら乳糖の微細結晶を添加し、20℃以下に除冷した。その後さらに1時間程度撹拌を続け、過飽和の乳糖をすべて結晶化させた。
【0071】
[充填工程]
ゲル状組成物を冷却後8時間以上静置し、あらかじめ滅菌、乾燥した容器(缶)に充填した。なお、充填方法はアセプティック充填、ホット充填であってもよい。
【0072】
[試験例1]
ゲル状組成物として上述のこんにゃくを用いた。遠心分離によってこんにゃくの水分量の少なくとも一部を低減させた。水分除去工程として、3,000Gで20分間、遠心分離器で遠心分離した。水分除去工程後のこんにゃくの水分量は、試料1~6のいずれの試料でも、90重量%以上(実測値;92.4重量%)であった。水分量の測定は、常圧乾燥法(海砂法)を用いた。果糖ぶどう糖液糖に純水、及び、食用合成着色料(赤色40号)を0.0165%加え、糖度(Bx)70の糖液を調整して含浸液とした。この含浸液に遠心分離したこんにゃく、または、遠心分離していないこんにゃくを、含浸液の重量:含浸するこんにゃくの重量を2:1として含浸させた。
【0073】
次の表1の条件で各試料を作製し、減圧した。減圧は、各試料100gを200mLのナス型フラスコに量り、ウォーターバス(YAMATO BT-15)にて各条件の温度まで昇温させた後、エバポレータ(ロータリーエバポレーター Buchi Rotavapor(登録商標)R-300)にて減圧を開始した。
【0074】
【0075】
各条件の真空度に達した時点を処理時間開始とし、規定の処理時間、減圧工程を行った。処理終了後はシリコン栓によって密栓し、測定試料とした。
【0076】
[重量測定]
試料の混合直後(こんにゃくの含浸液への含浸直後)と、減圧工程の終了後のそれぞれにおいて、含浸液とゲル状組成物(こんにゃく)の全重量と、ゲル状組成物の重量を測定した。ゲル状組成物の重量は、100メッシュ(ステンレスメッシュ)ろ過後、ペーパーにて表面の水分を拭き取って測定した。重量の測定は、電気式はかり(新光電気(株)製)を用いた。結果を表2と
図1,2に示す。
【0077】
【0078】
表2と
図1,2に示されているように、減圧工程をしない(常圧)場合には、60分間加熱しても、全重量も、こんにゃく重量も、減少率に変化が見られなかった。一方、減圧工程を行った場合には、加熱時間の経過とともに全重量も、こんにゃくの重量も、減少率が上昇した。
【0079】
[糖度(Bx)および固形分の測定]
試験例1の減圧工程後、100メッシュろ過にてこんにゃくを取り除いた糖液について20℃におけるBxを測定した。測定は、デジタル屈折計(アタゴ RX-5000α)とpHメーター(東亜DKK HM-30S)を用いた。
【0080】
また、減圧工程の終了後、表面の水分を拭き取ったこんにゃくを15g量り、ホモジナイザー(エースホモジナイザー 日本精機(株)製)で10,000rpm、2分間破砕を行った。破砕したものについて、常圧乾燥法(海砂法)にて固形分を測定した。常圧乾燥法(海砂法)は、102℃の乾熱器(ADVANTEC FS-33)中で乾燥し、恒量とした海砂入りのアルミニウム製平底ひょう量ざらに試料約3~5gを採取し精ひょうした。水浴上で注意しながら加熱し、大部分の水分を蒸発させたのち、乾熱器にいれ、恒量となるまで乾燥させた。結果を表3と
図3,4に示す。
【0081】
【0082】
表3と
図3,4に示すように、常圧条件では、60分間の加熱において糖液Bx、こんにゃく固形分の顕著な上昇は見られなかった。一方、減圧工程した場合には、加熱時間の経過とともに糖液Bx、こんにゃく固形分が上昇した。
【0083】
[ゲル状組成物中の糖含量の測定]
表4に示す各試料の減圧工程の終了後、表面の水分を拭き取ったこんにゃくを15g量り、ホモジナイザー(エースホモジナイザー 日本精機(株)製)で10,000rpm、2分間破砕を行った。破砕したものを0.5g精秤し、水を7mL添加後、アセトニトリルにて25mLに定容した。遠心分離機(サーモフィッシャーサイエンティフィク(株)製 LYNX6000)にて8,000rpm、10分間、20℃で処理後、上澄み液をHPLC(Agilent 1100シリーズ)にて測定した。HPLCの条件は以下の通りであった。
カラム:Nucleosil 5NH2 4.6×250mm
溶媒:70%アセトニトリル
流量:1.0mL/min
検出器:視差屈折率計
結果を表5と
図5に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
[ゲル状組成物中の色素含量測定]
表4に示す各試料の減圧工程の終了後、表面の水分を拭き取ったこんにゃくを15g量り、ホモジナイザー(エースホモジナイザー 日本精機(株)製)で10,000rpm、2分間破砕を行った。破砕したものを0.6~0.8g精秤し、1N塩酸を5mL、99.5%エタノールを5mL添加し、室温で1時間放置した。遠心分離機にて10,000G、10分間、20℃で処理後、上澄み液を50%エタノールで20mLに定容し、510nmの吸光度を測定した。結果を表6と
図6に示す。
【0087】
【0088】
[ゲル状組成物の寸法の測定]
表1の試料1~6の減圧工程後、表面の水分を拭き取ったこんにゃく10粒について、長辺と短辺の長さを測定し、その平均値を求めた。結果を表7と
図7に示す。
【0089】
【0090】
表7と
図7に示されているように、減圧工程を行うことによって、時間の経過とともにこんにゃくの体積が減少した。
【0091】
以上のように、本発明に従ったゲル状組成物の品質改良方法によれば、ゲル組成物中の含水率が減少するが、これは、糖分が水分と置換されることによるものではなく、ゲル状組成物が収縮するためであると考えられる。この収縮と、含浸液の特性との相乗効果によって、耐酸性、耐塩性、耐熱性、耐冷凍性の機能性の付与が可能となっていると考えられる。
【0092】
[試験例2]
ゲル状組成物として上述のこんにゃくを用いた。遠心分離によってこんにゃくの水分量の少なくとも一部を低減させた。水分除去工程として、3,000Gで20分間、遠心分離器で遠心分離した。水分除去工程後のこんにゃくの水分量は、いずれの試料でも、90重量%以上(実測値;92.4重量%)であった。水分量の測定は、常圧乾燥法(海砂法)を用いた。果糖ぶどう糖液糖に純水を加え、糖度(Bx)70の糖液を調整して含浸液とした。この含浸液に遠心分離したこんにゃくを、含浸液の重量:含浸するこんにゃくの重量を2:1として含浸させた。減圧は、各試料100gを200mLのナス型フラスコに量り、ウォーターバス(YAMATO BT-15)にて各条件の温度まで昇温させた後、エバポレータ(ロータリーエバポレーター Buchi Rotavapor(登録商標)R-300)にて85℃で60分間、真空度260mbarにて減圧を行い、試料15のゲル状組成物を得た。一方、ゲル状組成物としてこんにゃくを用い、含浸液として果糖ブドウ糖液糖を用いて同様に含浸工程を行い、85℃で60分間に保って減圧工程を行わないものを、試料16のゲル状組成物とした。得られた試料15,16のゲル状組成物をSEMで観察した。SEMは、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JSM-6010LA)を使用した。SEM像を
図8,9に示す。
【0093】
図8,9において、白い部分はこんにゃくの表面である。
図8,9に示されているように、減圧処理がされたゲル状組成物(試料15)は、全体に果糖ブドウ糖液糖が浸透していることがわかった。
【0094】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。