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7121603チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤用のマスキング香料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤用のマスキング香料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/33 20060101AFI20220810BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20220810BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20220810BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20220810BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20220810BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220810BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20220810BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220810BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
A61K8/33
A61K8/46
A61Q5/04
A61Q13/00 101
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/40
A61K8/49
A61K8/63
A61K8/9794
A61K8/9789
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018168529
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020040902
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106769
【氏名又は名称】新井 信輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐人
(72)【発明者】
【氏名】石津 武士
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-277239(JP,A)
【文献】特開2006-298915(JP,A)
【文献】特開2018-070458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00-5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A群から選ばれる1種又は2種以上の香料、B群から選ばれる1種又は2種以上の香料、およびC群から選ばれる1種又は2種以上の香料を含有する香料組成物であって、チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤用のマスキング剤であることを特徴とする香料組成物。
A群: アリル アミルグリコレート、ジヒドロミルセノール、フロラゾン、シトロネロール、δ-ダマスコン、ジャバノール、トリデセン-2-ニトリル、トリフェルナール、アルデヒドC-8、シス-3-ヘキセノール、フロロパル、ネクタリル、バクダノール、インドール、アンブロセニド、アンバーマックス、フェニルエチル メチル エーテル、シス-6-ノネノール、シス-6-ノナナール、シス-6-ノネニル アセテート、シス-4-デセノール、シス-4-デセナール、p-クレジル メチル エーテル、マルトール、アルデヒドC-12 ラウリック、シクロガルバネート、アルデヒドC-6、フロルヒドラル、ダイナモール、メチル オクチンカーボネート、メロナール、カローン、エチルバニリン、ベチバーオイル、ベチコール アセテート、ベチベリル アセテート、シトロネラール、ゲラニアール、ネラール、フェンキルアルコール、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-ヘキセニル アセテート、メチル ベンゾエート、エチル ベンゾエート、n-アミル アセテート、イソアミル アセテート、アリル カプロエート、アリル カプレート、エチル プロピオネート、リナリル アセテート、イソブチル
アセテート、ブチル アセテート、エチル アセテート、ヘキシル ブチレート、イソプロピル イソブチレート、イソアミル イソブチレート、イソアミル ブチレート、ベンジルアルコール、1,8-シネオール、アルデヒドC-9、メチル フェニルアセテート、フェニルエチル アセテート、フェンキル アセテート、フランビノン メチル エーテル、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、アンブロックス DL、アンブロキサン、セタロックス、スチラリル アセテート、ベチベロール、マグノラン、アルデヒドC-16(ストロベリー)、ジヒドロジャスモン、ゲラニオール、プレニル アセテート、オクチル アセテート、ヘプチル アセテート、ノピル アセテート、ジメチルベンジルカルビニル ブチレート、オクチル ブチレート、ベルドックス、シス-3-ヘキセニル アセテート、パンプルローム、アリル ヘプタノエート、イソボルニル アセテート、ゲラニル アセテート、ベルテネックス、ジメチルベンジルカルビニル アセテート、
ベルートン、リファローム、テザロン、フェニルアセトアルデヒド DMA、アセトフェノン、トリプラール、シトロネリル アセテート、エチル 2-メチルペンタノエート、テルピニル アセテート、ヘキシル アセテート、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、レモンオイル、ライムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ローズオイル。
B群: ステモン、トナリド、α-ダマスコン、アニスアルデヒド、ジフェニルオキサイド、フロロサイクレン、γ-メチルイオノン、カラナール、レモニール、オイゲノール、アルデヒドC-10、アルデヒドC-11〈ウンデシレニック〉、アルデヒドC-12 MNA、ダイナスコン、γ-ウンデカラクトン、インドフロール、パルマニール、パチュリーオイル、ルバフラン、イリソンα、イリソンβ、ジヒドロ-β-ヨノン、γ-オクタラクトン、メチル セドリル ケトン、カシュメラン、イロチル、フルーテート、ハーバネート、トリスアンバー、チンベロール、ベンジル アセテート、ロザリン、イソ-E スーパー、リリアール、ダマセノン、γ-ノナラクトン、β-イオノン、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール。
C群: アリル シクロヘキサンプロピオネート、ヤラヤラ、シトロネリルニトリル、ラウリルニトリル、エチルマルトール、ベルビオン、γ-デカラクトン、ジャスマサイクレン、ペオニル、ラズベリーケトン、サンタリフ、オレンジリキッド、グロバノン、ヘルベットリド、ロマンロリド、ミュセノン、ガラクソリド、アンブレットリド、エチレン ブラッシレート、ムスコン、コスモン、ペンタリド、エキザルテノン。
【請求項2】
チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤の施術反応臭が、プロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールであることを特徴とする請求項1に記載の香料組成物。
【請求項3】
A群、B群およびC群から選ばれる香料を、それぞれ以下の範囲で含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の香料組成物。
A群:1~50質量%
B群:0.1~70質量%
C群:0.01~30質量%
【請求項4】
チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体が、チオグリコール酸アンモニウムである請求項1~3のいずれか1項に記載の香料組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の香料組成物を含有することを特徴とするチオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の香料組成物を0.05~5質量%含有することを特徴とするチオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤。
【請求項7】
チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体が、チオグリコール酸アンモニウムである請求項5または6に記載の毛髪変形剤。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の香料組成物を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の香料組成物を0.05~5質量%含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項10】
チオグリコール酸の塩又はその誘導体が、チオグリコール酸アンモニウムである請求項8または請求項9に記載の毛髪化粧料。
【請求項11】
A群から選ばれる1種又は2種以上の香料、B群から選ばれる1種又は2種以上の香料、およびC群から選ばれる1種又は2種以上の香料を含有する香料組成物により、チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤の施術反応臭をマスキングする方法。
A群: アリル アミルグリコレート、ジヒドロミルセノール、フロラゾン、シトロネロール、δ-ダマスコン、ジャバノール、トリデセン-2-ニトリル、トリフェルナール、アルデヒドC-8、シス-3-ヘキセノール、フロロパル、ネクタリル、バクダノール、インドール、アンブロセニド、アンバーマックス、フェニルエチル メチル エーテル、シス-6-ノネノール、シス-6-ノナナール、シス-6-ノネニル アセテート、シス-4-デセノール、シス-4-デセナール、p-クレジル メチル エーテル、マルトール、アルデヒドC-12 ラウリック、シクロガルバネート、アルデヒドC-6、フロルヒドラル、ダイナモール、メチル オクチンカーボネート、メロナール、カローン、エチルバニリン、ベチバーオイル、ベチコール アセテート、ベチベリル アセテート、シトロネラール、ゲラニアール、ネラール、フェンキルアルコール、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-ヘキセニル アセテート、メチル ベンゾエート、エチル ベンゾエート、n-アミル アセテート、イソアミル アセテート、アリル カプロエート、アリル カプレート、エチル プロピオネート、リナリル アセテート、イソブチル
アセテート、ブチル アセテート、エチル アセテート、ヘキシル ブチレート、イソプロピル イソブチレート、イソアミル イソブチレート、イソアミル ブチレート、ベンジルアルコール、1,8-シネオール、アルデヒドC-9、メチル フェニルアセテート、フェニルエチル アセテート、フェンキル アセテート、フランビノン メチル エーテル、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、アンブロックス DL、アンブロキサン、セタロックス、スチラリル アセテート、ベチベロール、マグノラン、アルデヒドC-16(ストロベリー)、ジヒドロジャスモン、ゲラニオール、プレニル アセテート、オクチル アセテート、ヘプチル アセテート、ノピル アセテート、ジメチルベンジルカルビニル ブチレート、オクチル ブチレート、ベルドックス、シス-3-ヘキセニル アセテート、パンプルローム、アリル ヘプタノエート、イソボルニル アセテート、ゲラニル アセテート、ベルテネックス、ジメチルベンジルカルビニル アセテート、ベルートン、リファローム、テザロン、フェニルアセトアルデヒド DMA、アセトフェノン、トリプラール、シトロネリル アセテート、エチル 2-メチルペンタノエート、テルピニル アセテート、ヘキシル アセテート、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、レモンオイル、ライムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ローズオイル。
B群: ステモン、トナリド、α-ダマスコン、アニスアルデヒド、ジフェニルオキサイド、フロロサイクレン、γ-メチルイオノン、カラナール、レモニール、オイゲノール、アルデヒドC-10、アルデヒドC-11〈ウンデシレニック〉、アルデヒドC-12 MNA、ダイナスコン、γ-ウンデカラクトン、インドフロール、パルマニール、パチュリーオイル、ルバフラン、イリソンα、イリソンβ、ジヒドロ-β-ヨノン、γ-オクタラクトン、メチル セドリル ケトン、カシュメラン、イロチル、フルーテート、ハーバネート、トリスアンバー、チンベロール、ベンジル アセテート、ロザリン、イソ-E スーパー、リリアール、ダマセノン、γ-ノナラクトン、β-イオノン、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール。
C群: アリル シクロヘキサンプロピオネート、ヤラヤラ、シトロネリルニトリル、ラウリルニトリル、エチルマルトール、ベルビオン、γ-デカラクトン、ジャスマサイクレン、ペオニル、ラズベリーケトン、サンタリフ、オレンジリキッド、グロバノン、ヘルベットリド、ロマンロリド、ミュセノン、ガラクソリド、アンブレットリド、エチレン ブラッシレート、ムスコン、コスモン、ペンタリド、エキザルテノン。
【請求項12】
チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤の施術反応臭が、
プロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールであることを特徴とする請求項11に記載の施術反応臭をマスキングする方法。
【請求項13】
A群、B群およびC群から選ばれる香料を、それぞれ以下の範囲で含有することを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の施術反応臭をマスキングする方法。
A群:1~50質量%
B群:0.1~70質量%
C群:0.01~30質量%
【請求項14】
チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体が、チオグリコール酸アンモニウムである請求項11~13のいずれか1項に記載の施術反応臭をマスキングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤を毛髪に施術した際に発生する反応臭をマスキングするための香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘアスタイルを変え、これらをファッションとして楽しむための手段として、毛髪変形剤(例えばパーマネントウェーブ用剤や縮毛矯正剤)が広く利用されている。
毛髪変形剤による毛髪変形は、毛髪をロッドで巻き、毛髪ケラチンのジスルフィド結合を第1剤に含まれる還元剤で部分的に切断、次に第2剤に含まれる酸化剤で再結合させることにより、毛髪にウェーブを与え、また、くせ毛を真っ直ぐにさせ毛髪を変形させることをいう。
毛髪変形剤の第1剤に含まれる還元剤には、チオグリコール酸、チオ乳酸、システイン、システアミンもしくはその塩またはその誘導体が使われており、一方、第2剤に含まれる酸化剤には、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化水素が使われている。
【0003】
これまで半世紀以上、還元剤としてチオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体(以下、「チオグリコール酸等」と称する)を含む毛髪変形剤が中心に用いられてきた。これらチオグリコール酸等の特徴としては油分になじみやすく、毛髪内に浸透しやすいため、強いウェーブを与えることができる。
しかしながら、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤を毛髪に施術した際に発生する反応臭は非常に強く、さらに施術後数日間残存するため、使用者に不快感を与えていた。また、美容院等で施術する場合は施術者や周囲の顧客にとっても問題であった。
【0004】
このような不快な反応臭の消臭やマスキングは重要な課題となっており、これまでに様々な方法が提案されている。
還元剤としてチオグリコール酸等を用いた場合のマスキングについては、例えば、特許文献1ではジメトール、パラクレジルアセテート、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン-2-イルカルボキシレート、トリシクロデセニルアセテート、3,3-ジメチルシクロヘキシルメチルケトン及びフェニルエチルイソアミルエーテルから選ばれる1種以上を含有するパーマネントウエーブ用消臭剤組成物が提案され、特許文献2では(1)化学的消臭成分(アルデヒド類、ギ酸エステル類およびチグリン酸誘導体)と(2)蒸気圧抑制成分とを併用する毛髪化粧料用消臭香料組成物が提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、アセチルジイソアミレン、リナロールオキシド、ローズフェノン、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン、シス-p-メンタン-7-オール、ネロリドール、ラズベリーケトン、α,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルフォメート、パラメトキシフェネチルアルコール、2,2,6-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル、2,6,6-トリメチル-1-クロトニルシクロヘキサン、タンジー油、バジル油から選ばれる少なくとも1種の化合物あるいは精油を含む組成物を含有することを特徴とするパーマネントウェーブ用消臭剤組成物が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献4では、ヒバ油、ヒノキ油から選ばれる少なくとも1種の消臭剤を含有してなることを特徴とするパーマネントウエーブ用剤が提案されている。
しかしながら、上記文献で提案された技術が対象としている反応臭とは硫化水素、スルフィド類、ジスルフィド類、トリスルフィド類などのいわゆる硫黄臭を想定しており、反応臭の原因物質自体についての考察はなされていなかった。
【0007】
特許文献5では、還元剤としてチオグリコール酸等を用いた場合の反応臭については、施術中にコラーゲン様、ゼラチン様の臭気を有するジメチルジセレニドとメチルメチルチオセレニドが発生し、これらが反応臭として重要であることを見い出し、さらにこれらの化合物を有効にマスクする香料の提案がなされている。
しかしながら、パーマネント施術中に発生する施術臭はさらに複雑なものであり、完全にマスキングを行うことは困難であり、また、施術後も数日にわたり匂い続ける反応臭については有効であるとは言えなかった。
【0008】
前記のとおり、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤を毛髪に施術した際に発生する反応臭は非常に強く、さらに施術後数日間残存するという特徴がある。このため、毛髪変形剤中のチオグリコール酸等のマスキングだけでは不十分であり、施術後に残存する反応臭へのマスキングが重要となる。
また、施術した際に発生する反応臭の原因物質は、前記ジメチルジセレニド、メチルメチルチオセレニド以外は特定されておらず、いまだ複雑な反応臭全般に有効であり、かつ、長期間にわたり効果が持続する消臭やマスキングは達成されていないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-344636号公報
【文献】特開2002-241237号公報
【文献】特開2003-277239号公報
【文献】特開2006-16333号公報
【文献】特開2015-67558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤を毛髪に施術した際に発生する施術臭、さらには残存する反応臭をマスキングするための香料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤を毛髪に施術した際、発生する施術臭及び残存する反応臭が4種の化合物、すなわちプロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールに基づいており、それぞれが悪臭となっていることを解明した。
さらに、これらの化合物にそれぞれ有効なマスキング香料を検討した結果、特定の3つの香料群のそれぞれから選択される香料組成物がチオグリコール酸等を含む毛髪変形剤を毛髪に施術した際に発生する施術臭のマスキングに好適であり、さらには施術後も残存する反応臭をもマスキングできることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は以下の通りである。
〔1〕A群から選ばれる1種又は2種以上の香料、B群から選ばれる1種又は2種以上の香料、およびC群から選ばれる1種又は2種以上の香料を含有する香料組成物であって、チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤用のマスキング剤で
あることを特徴とする香料組成物。
【0013】
A群: アリル アミルグリコレート、ジヒドロミルセノール、フロラゾン、シトロネロール、δ-ダマスコン、ジャバノール、トリデセン-2-ニトリル、トリフェルナール、アルデヒドC-8、シス-3-ヘキセノール、フロロパル、ネクタリル、バクダノール、インドール、アンブロセニド、アンバーマックス、フェニルエチル メチル エーテル、シス-6-ノネノール、シス-6-ノナナール、シス-6-ノネニル アセテート、シス-4-デセノール、シス-4-デセナール、p-クレジル メチル エーテル、マルトール、アルデヒドC-12 ラウリック、シクロガルバネート、アルデヒドC-6、フロルヒドラル、ダイナモール、メチル オクチンカーボネート、メロナール、カローン、エチルバニリン、ベチバーオイル、ベチコール アセテート、ベチベリル アセテート、シトロネラール、ゲラニアール、ネラール、フェンキルアルコール、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-ヘキセニル アセテート、メチル ベンゾエート、エチル ベンゾエート、n-アミル アセテート、イソアミル アセテート、アリル カプロエート、アリル カプレート、エチル プロピオネート、リナリル アセテート、イソブチル
アセテート、ブチル アセテート、エチル アセテート、ヘキシル ブチレート、イソプロピル イソブチレート、イソアミル イソブチレート、イソアミル ブチレート、ベンジルアルコール、1,8-シネオール、アルデヒドC-9、メチル フェニルアセテート、フェニルエチル アセテート、フェンキル アセテート、フランビノン メチル エーテル、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、アンブロックス DL、アンブロキサン、セタロックス、スチラリル アセテート、ベチベロール、マグノラン、アルデヒドC-16(ストロベリー)、ジヒドロジャスモン、ゲラニオール、プレニル アセテート、オクチル アセテート、ヘプチル アセテート、ノピル アセテート、ジメチルベンジルカルビニル ブチレート、オクチル ブチレート、ベルドックス、ローズオキサイド、シス-3-ヘキセニル アセテート、パンプルローム、アリル ヘプタノエート、イソボルニル アセテート、ゲラニル アセテート、ベルテネックス、ジメチルベンジルカルビニル アセテート、ベルートン、リファローム、テザロン、フェニルアセトアルデヒド DMA、アセトフェノン、トリプラール、シトロネリル アセテート、エチル 2-メチルペンタノエート、テルピニル アセテート、ヘキシル アセテート、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、レモンオイル、ライムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ローズオイル。
【0014】
B群: ステモン、トナリド、α-ダマスコン、アニスアルデヒド、ジフェニルオキサイド、フロロサイクレン、γ-メチルイオノン、カラナール、レモニール、オイゲノール、アルデヒドC-10、アルデヒドC-11〈ウンデシレニック〉、アルデヒドC-12 MNA、ダイナスコン、γ-ウンデカラクトン、インドフロール、パルマニール、パチュリーオイル、ルバフラン、イリソンα、イリソンβ、ジヒドロ-β-ヨノン、γ-オクタラクトン、メチル セドリル ケトン、カシュメラン、イロチル、フルーテート、ハーバネート、トリスアンバー、チンベロール、ベンジル アセテート、ロザリン、イソ-E スーパー、リリアール、ダマセノン、γ-ノナラクトン、β-イオノン、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール。
【0015】
C群: アリル シクロヘキサンプロピオネート、ヤラヤラ、シス-ジャスモン、シトロネリルニトリル、ラウリルニトリル、エチルマルトール、ベルビオン、γ-デカラクトン、ジャスマサイクレン、ペオニル、バニリン、ラズベリーケトン、サンタリフ、オレンジリキッド、グロバノン、ヘルベットリド、ロマンロリド、ミュセノン、ガラクソリド、アンブレットリド、エチレン ブラッシレート、ムスコン、コスモン、ペンタリド、エキザルテノン。
【0016】
〔2〕チオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤の施術反応臭
が、プロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールであることを特徴とする〔1〕に記載の香料組成物。
【0017】
〔3〕A群、B群およびC群から選ばれる香料を、それぞれ以下の範囲で含有することを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の香料組成物。
A群:1~50質量%
B群:0.1~70質量%
C群:0.01~30質量%
【0018】
〔4〕上記の〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の香料組成物を含有することを特徴とするチオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤。
〔5〕上記の〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の香料組成物を0.05~5質量%含有することを特徴とするチオグリコール酸もしくはその塩またはその誘導体を含む毛髪変形剤。
【0019】
〔6〕上記の〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の香料組成物を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
〔7〕上記の〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の香料組成物を0.05~5質量%含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0020】
本発明の香料組成物は、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤施術臭、さらには施術後も残存する反応臭のマスキング効果に優れたものであり、種々の毛髪変形剤や毛髪化粧料に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔1〕香料組成物
本発明の香料組成物は、必須成分として、以下の香料群A、BおよびCのそれぞれから選ばれる香料(各群から1種又は2種以上)を組み合わせた香料組成物であり、さらに付加的香料や、製剤化に必要な各種成分を配合することができる。
【0022】
(1)A群の化合物
本発明で用いるA群に係る香料は、アリル アミルグリコレート、ジヒドロミルセノール、フロラゾン、シトロネロール、δ-ダマスコン、ジャバノール、トリデセン-2-ニトリル、トリフェルナール、アルデヒド C-8、シス-3-ヘキセノール、フロロパル、ネクタリル、バクダノール、インドール、アンブロセニド、アンバーマックス、フェニルエチル メチル エーテル、シス-6-ノネノール、シス-6-ノナナール、シス-6-ノネニル アセテート、シス-4-デセノール、シス-4-デセナール、p-クレジル メチル エーテル、マルトール、アルデヒドC-12 ラウリック、シクロガルバネート、アルデヒドC-6、フロルヒドラル、ダイナモール、メチル オクチンカーボネート、
【0023】
メロナール、カローン、エチルバニリン、ベチバーオイル、ベチコール アセテート、ベチベリル アセテート、シトロネラール、ゲラニアール、ネラール、フェンキルアルコール、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-ヘキセニル アセテート、メチル ベンゾエート、エチル ベンゾエート、n-アミル アセテート、イソアミル アセテート、アリル カプロエート、アリル カプレート、エチル プロピオネート、リナリル アセテート、イソブチル アセテート、ブチル アセテート、エチル アセテート、ヘキシル ブチレート、イソプロピル イソブチレート、イソアミル イソブチレート、イソアミル ブチレート、ベンジルアルコール、1,8-シネオール、アルデヒドC-9、メチル フェニルアセテート、
【0024】
フェニルエチル アセテート、フェンキル アセテート、フランビノン メチル エーテル、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、アンブロックス DL、アンブロキサン、セタロックス、スチラリル アセテート、ベチベロール、マグノラン、アルデヒドC-16(ストロベリー)、ジヒドロジャスモン、ゲラニオール、プレニル アセテート、オクチル アセテート、ヘプチル アセテート、ノピル アセテート、ジメチルベンジルカルビニル ブチレート、オクチル ブチレート、ベルドックス、ローズオキサイド、シス-3-ヘキセニル アセテート、
【0025】
パンプルローム、アリル ヘプタノエート、イソボルニル アセテート、ゲラニル アセテート、ベルテネックス、ジメチルベンジルカルビニル アセテート、ベルートン、リファローム、テザロン、フェニルアセトアルデヒド DMA、アセトフェノン、トリプラール、シトロネリル アセテート、エチル 2-メチルペンタノエート、テルピニル アセテート、ヘキシル アセテート、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、レモンオイル、ライムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ローズオイルから選ばれる。
【0026】
好ましくは、アリル アミルグリコレート、フロラゾン、シトロネロール、δ-ダマスコン、ジャバノール、トリデセン-2-ニトリル、トリフェルナール、アルデヒドC-8、シス-3-ヘキセノール、フロロパル、ネクタリル、バクダノール、ベルドックス、ローズオキサイド、シス-3-ヘキセニル アセテート、パンプルローム、アリル ヘプタノエート、イソボルニル アセテート、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、レモンオイル、ライムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ローズオイルから選ばれる。
【0027】
さらに好ましくは、アリル アミルグリコレート、ジヒドロミルセノール、フロラゾン、シトロネロール、δ-ダマスコン、ジャバノール、トリデセン-2-ニトリル、トリフェルナール、アルデヒドC-8、シス-3-ヘキセノール、フロロパル、ネクタリル、バクダノール、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、レモンオイル、ライムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイルから選ばれる。
【0028】
これらの香料は主として施術臭のプロパンチオールのマスキングに有効である。プロパンチオールは腐敗臭に近い香調を有し、施術中の早い段階から発生し、施術者と被施術者の両者に不快感を与える施術臭である。上記の香料は、1種以上用いることができ、香料組成物中に合計で通常は1~50質量%配合され、より好ましくは2~50質量%配合され、さらに好ましくは5~40質量%配合される。
【0029】
(2)B群の化合物
本発明で用いるB群に係る香料は、ステモン、トナリド、α-ダマスコン、アニスアルデヒド、ジフェニルオキサイド、フロロサイクレン、γ-メチルイオノン、カラナール、レモニール、オイゲノール、アルデヒドC-10、アルデヒドC-11〈ウンデシレニック〉、アルデヒドC-12 MNA、ダイナスコン、γ-ウンデカラクトン、インドフロール、パルマニール、パチュリーオイル、ルバフラン、イリソンα、イリソンβ、ジヒドロ-β-ヨノン、γ-オクタラクトン、メチル セドリル ケトン、カシュメラン、イロチル、フルーテート、ハーバネート、トリスアンバー、チンベロール、ベンジル アセテート、ロザリン、イソ-E スーパー、リリアール、ダマセノン、γ-ノナラクトン、β-イオノン、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロールから選ばれる。
【0030】
好ましくは、ステモン、トナリド、α-ダマスコン、アニスアルデヒド、ジフェニルオ
キサイド、フロロサイクレン、γ-メチルイオノン、カラナール、レモニール、オイゲノール、アルデヒドC-10、アルデヒドC-11〈ウンデシレニック〉、アルデヒド C-12 MNA、ダイナスコン、γ-ウンデカラクトン、インドフロール、パルマニール、パチュリーオイル、ルバフラン、トリスアンバー、チンベロール、ベンジル アセテート、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロールから選ばれる。
【0031】
さらに好ましくは、ステモン、トナリド、α-ダマスコン、アニスアルデヒド、ジフェニルオキサイド、フロロサイクレン、γ-メチルイオノン、カラナール、レモニール、オイゲノール、アルデヒド C-10、アルデヒドC-11〈ウンデシレニック〉、アルデヒドC-12 MNA、ダイナスコン、γ-ウンデカラクトン、インドフロール、パルマニール、パチュリーオイル、ルバフラン、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロールから選ばれる。
【0032】
これらの香料は主として施術反応臭の2,6-ジメチルピラジンのマスキングに有効である。2,6-ジメチルピラジンは焦げ臭に近い香調を有し、施術中を通じて発生し、かつ施術後も残存するため施術者と被施術者の両者に不快を与える施術反応臭である。これらの香料は、1種以上用いることができ、香料組成物中に合計で通常は0.1~70質量%配合され、より好ましくは1~70質量%配合され、さらに好ましくは5~60質量%配合される。
【0033】
(3)C群の化合物
本発明で用いるC群に係る香料は、アリル シクロヘキサンプロピオネート、ヤラヤラ、シス-ジャスモン、シトロネリルニトリル、ラウリルニトリル、エチルマルトール、ベルビオン、γ-デカラクトン、ジャスマサイクレン、ペオニル、バニリン、ラズベリーケトン、サンタリフ、オレンジリキッド、グロバノン、ヘルベットリド、ロマンロリド、ミュセノン、ガラクソリド、アンブレットリド、エチレン ブラッシレート、ムスコン、コスモン、ペンタリド、エキザルテノンから選ばれる。
【0034】
好ましくは、アリル シクロヘキサンプロピオネート、ヤラヤラ、シス-ジャスモン、シトロネリルニトリル、ラウリルニトリル、エチルマルトール、ベルビオン、γ-デカラクトン、ジャスマサイクレン、ペオニル、バニリン、ガラクソリド、アンブレットリド、エチレン ブラッシレート、ペンタリドから選ばれる。
【0035】
さらに好ましくは、アリル シクロヘキサンプロピオネート、ヤラヤラ、シス-ジャスモン、シトロネリルニトリル、ラウリルニトリル、エチルマルトール、ベルビオン、バニリン、ガラクソリド、アンブレットリド、エチレン ブラッシレート、ペンタリドから選ばれる。
【0036】
これらの香料は主として反応臭のベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールのマスキングに有効である。ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールは硫黄/ゴム様の香調を有し、施術後半から発生し、被施術者の毛髪に長く残存する反応臭である。これらの香料は、1種以上用いることができ、香料組成物中に合計で通常は0.01~30質量%配合され、より好ましくは0.1~30質量%配合され、さらに好ましくは1~20質量%配合される。
香料組成物中に合計で0.01~30質量%配合するのが好ましく、特に0.1~30質量%配合するのが好ましい。
【0037】
(4)付加的な香料成分
本発明のマスキング香料組成物には、本発明の効果を損なわない範疇において、賦香などの目的で、前記A群~C群から選ばれるマスキング香料以外の香料を使用することがで
きる。
【0038】
特に、限定されるものではないが、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、ターピノレン、オシメン、α-フェランドレン、γ-ターピネン、p-サイメンなどのテルペン・セスキテルペン炭化水素類、3-オクタノール、1-オクテン-3-オール、9-デセノール、10-ウンデセノールなどのアルコール類、ネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、L-メントール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペン・セスキテルペン系アルコール類、フェニルエチルアルコール、スチラリルアルコール、アニスアルコール、シンナムアルコール、チモールなどの芳香族アルコール類、2,2-ジメチル-3-(3-メチル-2,4-ペンタジエニル)オキシラン(フィルメニッヒ社の登録商標「ミロキサイド」)、1,8-シネオール、リナロールオキサイド、アニソール、アネトールなどのエーテル類、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル) -3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド(IFF社の登録商標「リラール」)、4(3)-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド)(IFF社の登録商標「マイラックアルデヒド」)などの脂環式アルデヒド類、ヘキシルアルデヒド、
【0039】
2,6-ノナジエナールなど脂肪族アルデヒド類、シトロネラール、ぺリラアルデヒドなどのテルペン系アルデヒド類、ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタールなどのアセタール類、アセトイン、アセチルジイソアミレン(IFF社の登録商標「コアボン」)などの脂肪族ケトン類、カンファー、カルボンなどのテルペン・セスキテルペン系ケトン類、6-エチリデンオクタヒドロ-5,8-メタノ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン(フィルメニッヒ社の登録商標「フロレックス」)などの環状ケトン類、アセトフェノン、ベンジルアセトンなどの芳香族ケトン類、ギ酸エチル、ギ酸リナリルなどのギ酸エステル類、酢酸ネリルなどの酢酸エステル類、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ゲラニルなどのプロピオン酸エステル類、酪酸ブチル、酪酸ゲラニルなどの酪酸エステル類、イソ吉草酸エチルなどの吉草酸エステル類、ピルビン酸エチルなどのケト酸エステル類、安息香酸メチルなどの安息香酸エステル類、フェニル酢酸メチルなどのフェニル酢酸エステル類、桂皮酸メチルなどの桂皮酸エステル類、サリチル酸メチルなどのサリチル酸エステル類、ゲラニル酸、安息香酸などのカルボン酸類、
【0040】
ガンマ-オクタラクトン、クマリンなどのラクトン類、3-メチルシクロペンタデカノンなどの大環状ムスク類、ムスクケトン、ムスクアンブレットなどのニトロムスク類、スカトール、ジメチルスルフィド、p-メンテン-8-チオールなどの含窒素・硫黄化合物類、ヒノキオイル、ゼラニウムオイルなどの天然精油が挙げられる。
【0041】
(5)香料組成物の製剤化
本発明によるチオグリコール酸等を含む毛髪変形剤の施術による反応臭のマスキング香料組成物に、例えば、下記に示すような化粧品類、ヘアケア製品類などで通常使用される基剤、添加剤等を併用することによって製剤化することができる。
【0042】
(a)各種油脂類:
アボカド油、アーモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、シア脂、液状シア脂、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂又はこれら油脂類の水素添加物(硬化油等)など。
【0043】
(b)鉱物油:
流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタリンワックスなど。
【0044】
(c)アルコール類:
エタノール、イソプロパノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの天然アルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノールなどの合成アルコール。
【0045】
(d)多価アルコール類:
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0046】
(e)ガム質、糖類又は水溶性高分子化合物:
アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、乳糖、果糖、ショ糖又はそのエステル、トレハロース又はその誘導体、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、ジェランガム、カルボキシメチルキチン又はキトサン、エチレンオキサイドなどのアルキレン(C2~C4)オキサイドが付加されたヒドロキシアルキル(C2~C4)キチン又はキトサン、低分子キチン又はキトサン、キトサン塩、硫酸化キチン又はキトサン、リン酸化キチン又はキトサン、アルギン酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヘパリン、エチルセルロース、メチ
ルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、
【0047】
カルボキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド又はその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミンなど。
【0048】
(f)界面活性剤:
アニオン界面活性剤(アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤〔カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤〕、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤)など。
【0049】
更にこの他にも、これまでに知られている各原料素材、例えば、α-ヒドロキシ酸類、無機顔料、紫外線吸収剤、美白剤、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン色素分解物質、細胞賦活物質、収れん剤、活性酸素消去剤、抗酸化剤、過酸化脂質生成抑制剤、抗炎症剤、抗菌剤、保湿剤、エラスターゼ活性阻害剤、抗アンドロゲン剤、温感剤、冷感剤、色素、
ホルモン類、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレート剤、防腐・防バイ剤、清涼剤、安定化剤、乳化剤、動・植物性蛋白質又はその分解物、動・植物性多糖類又はその分解物、動・植物性糖蛋白質又はその分解物、消炎剤・抗アレルギー剤、創傷治療剤、気泡・増泡剤、増粘剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、酵素などと併用することができる。
【0050】
〔2〕香料組成物の適用
本発明のマスキング香料組成物は、種々の毛髪変形剤や毛髪化粧料に配合することにより、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤の施術反応臭を効果的にマスキングすることができる。
香料組成物の毛髪変形剤や毛髪化粧料への配合量は、0.05~5質量%、特に0.07~4質量%、更に0.1~3質量%配合するのが好ましい。
また、毛髪化粧料としては、例えばチオグリコール等を含む毛髪変形剤の前処理剤、中間処理剤、後処理剤やダメージヘアケア用のシャンプー、リンスなどが挙げられる。
【実施例
【0051】
[試験例1]チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤の施術反応臭の原因物質の特定
表1に示す処方にて調製した、チオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤第1剤30gを毛束15g(株式会社マタイジャパン)に塗布した後、デシケーター内に毛束を置いた。
デシケーターの下部から活性炭を通して空気を送り込み、上部に吸着剤としてTenax-TA(商品名、ジーエルサイエンス株式会社)を充填したガラス管を設置した。
ポンプを用いて500ml/minの速度でチオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤施術反応臭を1時間吸引した。続いて、ヘキサン5mlを用いてTenax-TAを充填したガラス管内に吸着された施術反応臭を抽出した。
得られた施術反応臭抽出液はエバポレーターを用いて濃縮した。
次に、得られた施術反応臭濃縮溶液を、化学発光硫黄検出器(SCD)を備えたガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)と、ガスクロマトグラフィー・オルファクトメトリー分析装置(GC-O)を用いてそれぞれ分析した。
【0052】
GC/MS/SCD装置にて分析した結果、プロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールが検出された。
専門パネラーが上記の各4成分の香気を確認したところ、チオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤の施術反応臭への寄与度が非常に高いことが分かった。結果を表2に示した。
また、GC-Oにて分析した結果、施術反応臭濃縮溶液と上記の各4成分の標品は同じ保持時間に施術反応臭として確認された。
以上の結果より、上記の各4成分がチオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤施術反応臭の原因物質であると断定した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
前記の分析結果より確認されたプロパンチオールは不快な硫黄的キャベツ様香気を呈することが知られており、アリウム属植物や牛肉の香気成分としての報告されている。(Anal. Chem. 54 (1982) 1082; Kuwata et al.、J. Agric. Food Chem. 64 (2016) 4299-4311; D. Frank et al.)
チオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤の施術中に発生する施術臭の香気成分として、プロパンチオールが報告された例はなく、本発明者らが初めて確認した。
【0056】
前記の分析結果より確認された2,6-ジメチルピラジンは甘いロースト香とフライドポテト様香気を呈することが知られており、アスパラガスや牛肉の香気成分としての報告されている。(J. Agric. Food Chem. 25 (1977) 459-463; R. Tressl et al.、J. Agric. Food Chem. 64 (2016) 4299-4311; D. Frank et al.)
チオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤施術中に発生し施術後も1日程度残存する反応臭の香気成分として、2,6-ジメチルピラジンが報告された例はなく、本発明者らが初めて確認した。
【0057】
前記の分析結果より確認されたベンゾチアゾールはキノリン様香気を呈することが知られており、釜炒り緑茶において重要な香気成分としての報告されている。(J. Agric. Food Chem.,2002,50,5660-5663.Kenji Kumazawa and Hideki Masuda)
チオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤施術後も3日程度残存ずる反応臭の香気成分として、ベンゾチアゾールが報告された例はなく、本発明者らが初めて確認した。
【0058】
前記の分析結果より確認された2-メチルチオベンゾチアゾールは、ファッティ様、ウッディ様、スモーキー様の香気を呈することが知られており、釜炒り緑茶において重要な香気成分としての報告されている。(J. Agric. Food Chem.,2002,50,5660-5663.Kenji Kumazawa and Hideki Masuda)
チオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤施術後も3日程度残存ずる反応臭の香気成分として、2-メチルチオベンゾチアゾールが報告された例はなく、本発明者らが初めて確認した。
【0059】
実際に、チオグリコール酸アンモニウムを含む毛髪変形剤を毛髪に施術した後、施術直後、1日後、3日後に施術反応臭であるプロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールの強度を官能評価したところ、非常に強く、さらに施術後数日間残存するという特徴であった。
このため、施術反応臭であるプロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールのマスキング香料には香りの持続性及び強度が重要であることが分かった。
【0060】
[試験例2]
表3~表5に示す香料について、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤の施術反応臭のマスキング効果を評価した。
評価方法は、毛髪変形剤施術反応臭としてプロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、並びにベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールの等量混合物を、それぞれジプロピレングリコール(DPG)で希釈して、0.005%DPG溶液を調製した。
また、マスキング試験に供する香料は2%香料DPG溶液を調製した。評価方法としてはシャーレ内にろ紙を置き、毛髪変形剤施術反応臭それぞれのDPG溶液を0.05g、さらにその上から香料DPG溶液を0.05g添加した。
【0061】
上記の工程で作製したサンプルを専門パネラー5名が、施術反応臭のマスキング効果について、以下の4段階で判定した。結果を表3~表5に示した。
◎:完全にマスキングができている。
○:ほぼマスキングができている。
△:マスキングがやや不十分である。
×:マスキングが不十分である。
【0062】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0063】
【表8】
【表9】
【表10】
【0064】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0065】
表3~表5に示す官能評価の結果、賦香直後、1日後、3日後においてマスキング効果◎~○の香料は各反応臭に対して、マスキング効果が非常に高いと判断した。
◎~○の評価を得た香料は、以下のとおりである。
【0066】
プロパンチオールに対して有効な香料(A群)は、アリル アミルグリコレート、ジヒドロミルセノール、フロラゾン、シトロネロール、δ-ダマスコン、ジャバノール、トリデセン-2-ニトリル、トリフェルナール、アルデヒド C-8、シス-3-ヘキセノール、フロロパル、ネクタリル、バクダノール、インドール、アンブロセニド、アンバーマックス、フェニルエチル メチル エーテル、シス-6-ノネノール、シス-6-ノナナール、シス-6-ノネニル アセテート、シス-4-デセノール、シス-4-デセナール、p-クレジル メチル エーテル、マルトール、アルデヒドC-12 ラウリック、シクロガルバネート、アルデヒドC-6、フロルヒドラル、ダイナモール、メチル オクチンカーボネート、メロナール、カローン、エチルバニリン、ベチバーオイル、ベチコール アセテート、ベチベリル アセテート、シトロネラール、ゲラニアール、ネラール、
【0067】
フェンキルアルコール、トランス-2-ヘキセナール、トランス-2-ヘキセニル アセテート、メチル ベンゾエート、エチル ベンゾエート、n-アミル アセテート、イソアミル アセテート、アリル カプロエート、アリル カプレート、エチル プロピオネート、リナリル アセテート、イソブチル アセテート、ブチル アセテート、エチル アセテート、ヘキシル ブチレート、イソプロピル イソブチレート、イソアミル イソブチレート、イソアミル ブチレート、ベンジルアルコール、1,8-シネオール、アルデヒドC-9、メチル フェニルアセテート、フェニルエチル アセテート、フェンキル アセテート、フランビノン メチル エーテル、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、アンブロックス DL、アンブロキサン、セタロックス、スチラリル アセテート、ベチベロール、
【0068】
マグノラン、アルデヒドC-16(ストロベリー)、ジヒドロジャスモン、ゲラニオール、プレニル アセテート、オクチル アセテート、ヘプチル アセテート、ノピル アセテート、ジメチルベンジルカルビニル ブチレート、オクチル ブチレート、ベルドックス、ローズオキサイド、シス-3-ヘキセニル アセテート、パンプルローム、アリル ヘプタノエート、イソボルニル アセテート、ゲラニル アセテート、ベルテネックス、ジメチルベンジルカルビニル アセテート、
【0069】
ベルートン、リファローム、テザロン、フェニルアセトアルデヒド DMA、アセトフェノン、トリプラール、シトロネリル アセテート、エチル 2-メチルペンタノエート、テルピニル アセテート、ヘキシル アセテート、オレンジオイル、グレープフルーツオイル、レモンオイル、ライムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ラベンダーオイル、ローズオイルであった。
【0070】
2,6-ジメチルピラジンに対して有効な香料(B群)は、ステモン、トナリド、α-ダマスコン、アニスアルデヒド、ジフェニルオキサイド、フロロサイクレン、γ-メチルイオノン、カラナール、レモニール、オイゲノール、アルデヒドC-10、アルデヒドC-11〈ウンデシレニック〉、アルデヒドC-12 MNA、ダイナスコン、γ-ウンデカラクトン、インドフロール、パルマニール、パチュリーオイル、ルバフラン、イリソンα、イリソンβ、ジヒドロ-β-ヨノン、γ-オクタラクトン、メチル セドリル ケトン、カシュメラン、イロチル、フルーテート、ハーバネート、トリスアンバー、チンベロール、ベンジル アセテート、ロザリン、イソ-E スーパー、リリアール、ダマセノン、γ-ノナラクトン、β-イオノン、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロールであった。
【0071】
ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールに対して有効な香料(C群)は、アリル シクロヘキサンプロピオネート、ヤラヤラ、シス-ジャスモン、シトロネリルニトリル、ラウリルニトリル、エチルマルトール、ベルビオン、γ-デカラクトン、ジャスマサイクレン、ペオニル、バニリン、ラズベリーケトン、サンタリフ、オレンジリキ
ッド、グロバノン、ヘルベットリド、ロマンロリド、ミュセノン、ガラクソリド、アンブレットリド、エチレン ブラッシレート、ムスコン、コスモン、ペンタリド、エキザルテノンであった。
【0072】
表3~表5の官能評価の結果で示されるように、特定の反応臭に対してマスキング効果が高い香料であっても、他の反応臭に対しては十分なマスキング効果が得られない場合がある。前記の結果より、毛髪変形剤施術反応臭のマスキング香料には多様な反応臭に対する香り適性が求められる。
【0073】
[実施例1~5]
表6の処方にて、A群、B群およびC群の香料を含有する本発明のマスキング香料組成物を調製した。
【0074】
[比較例1~5]
表6の処方にて、A群、B群およびC群の香料のいずれか1種以上を含有しない比較例のマスキング香料組成物を調製した。
【0075】
【表15】
【0076】
【表16】
【0077】
[試験例3]
実施例1~5および比較例1~5のマスキング香料組成物について、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤の施術反応臭へのマスキング効果を評価した。具体的には、プロパンチオールを0.005%、2,6-ジメチルピラジンを1%、ベンゾチアゾールと2-メチルチオベンゾチアゾールの等量混合物を1%ジプロピレングリコール(DPG)に加え
て毛髪変形剤施術反応臭DPG溶液を調製した。
試験例2の評価方法と同様に、シャーレ内にろ紙を置き、毛髪変形剤施術反応臭DPG溶液を0.05g、さらにその上から2%マスキング香料組成物DPG溶液を0.05g添加した。
上記の工程で作製したサンプルを専門パネラー5名が賦香直後、1日後、3日後の状態を確認し、施術反応臭のマスキング効果について、試験例2と同様の4段階で判定した。結果を表6に示した。
【0078】
表6に示す官能評価の結果から、本発明のA群~C群の香料を必須とする香料組成物は、チオグリコール酸およびその塩並びにその誘導体を含む毛髪変形剤施術の反応臭に対して、施術直後から施術3日後まで、良好にマスキング効果を有することが示された。
【0079】
[実施例6~10]
表7の処方にて、本発明のマスキング香料組成物を含有するチオグリコール酸およびその塩並びにその誘導体を含む毛髪変形剤第1剤を調製した。
【0080】
[比較例6~10]
表7の処方にて、本発明のマスキング香料組成物を含有しないチオグリコール酸等を含む毛髪変形剤第1剤を調製した。
【0081】
【表17】
【0082】
【表18】
【0083】
[試験例4]
表7で調製した毛髪変形剤第1剤を、10cmの毛束(2.5g)に2.5g塗布、15分間静置した後、水洗した。
次に、表8で調製した香料組成物を含有しない毛髪変形剤第2剤を2.5g塗布、15
分間静置した後、水洗、ドライヤーにて乾燥させた。
上記の工程で作製したサンプルを専門パネラー5名が施術直後、1日後、3日後の状態を確認し、施術反応臭のマスキング効果について、試験例2と同様の4段階で判定した。結果を表9に示した。
【0084】
【表19】
【0085】
【表20】
【0086】
表9に示す官能評価の結果から、本発明の香料組成物を含有する毛髪変型剤1剤は、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤施術反応臭に対して、施術直後から施術3日後まで、良好にマスキング効果を有することが示された。
【0087】
[実施例11~15]
表10の処方にて、本発明のマスキング香料組成物を含有する毛髪変形剤第2剤を調製した。
【0088】
[比較例11~15]
表10の処方にて、本発明のマスキング香料組成物を含有しない毛髪変形剤第2剤を調製した。
【0089】
【表21】
【0090】
【表22】
【0091】
[試験例5]
表11で調製した香料組成物を含有しない毛髪変形剤第1剤を、10cmの毛束(2.5g)に2.5g塗布、15分間静置した後、水洗した。
次に、表10で調製した香料組成物を含有する毛髪変形剤第2剤を2.5g塗布、15分間静置した後、水洗、ドライヤーにて乾燥させた。
上記の工程で作製したサンプルを専門パネラー5名が施術直後、1日後、3日後の状態を確認し、施術反応臭のマスキング効果について、試験例2と同様の4段階で判定した。結果を表12に示した。
【0092】
【表23】
【0093】
【表24】
【0094】
表12に示す官能評価の結果から、本発明の香料組成物を含有する毛髪変型剤第2剤は、チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤施術反応臭に対して、施術直後から施術3日後まで、良好にマスキング効果を有することが示された。
【0095】
[実施例16]
表13の処方で毛髪変形剤用前処理剤を調製した。この毛髪変形剤用前処理剤は、使用に際し心地よい香りを発し、毛髪変形剤施術反応臭に対して十分なマスキング効果を示すものであった。
【0096】
【表25】
【0097】
[実施例17]
表14の処方で毛髪変形剤用中間処理剤を調製した。この髪変形剤用中間処理剤は、使用に際し心地よい香りを発し、毛髪変形剤施術反応臭に対して十分なマスキング効果を示すものであった。
【0098】
【表26】
【0099】
[実施例18]
表15の処方で本発明の毛髪変形剤用後処理剤を調製した。この毛髪変形剤用後処理剤は、使用に際し心地よい香りを発し、毛髪変形剤施術反応臭に対して十分なマスキング効果を示すものであった。
【0100】
【表27】
【0101】
[実施例19]
表16の処方でダメージヘアケア用シャンプーを調製した。このダメージヘアケア用シャンプーは、使用に際し心地よい香りを発し、毛髪変形剤施術反応臭に対して十分なマスキング効果を示すものであった。
【0102】
【表28】
【0103】
[実施例20]
表17の処方でダメージヘアケア用リンスを調製した。このダメージヘアケア用リンスは、使用に際し心地よい香りを発し、毛髪変形剤施術反応臭に対して十分なマスキング効果を示すものであった。
【0104】
【表29】
【0105】
表18の処方にて、A群の香料からなる香料組成物A1~A5を調製した。
【0106】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【0107】
表19の処方にて、B群の香料からなる香料組成物B1~B5を調製した。
【0108】
【表34】
【表35】
【0109】
表20の処方にて、C群の香料からなる香料組成物C1~C5を調製した。
【0110】
【表36】
【0111】
[実施例21~25]
の処方にて、A群、B群およびC群の香料からなる本発明のマスキング香料組成物を調製した。
【0112】
【表37】
【0113】
[試験例6]
実施例21~25のマスキング香料組成物について、試験例3と同様の方法にて、マスキング効果の評価を行った。その結果、いずれのマスキング香料組成物も、賦香直後から3日後まで、良好なマスキング効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0114】
チオグリコール酸等を含む毛髪変形剤の施術反応臭であるプロパンチオール、2,6-ジメチルピラジン、ベンゾチアゾールおよび2-メチルチオベンゾチアゾールを施術反応臭として利用することで、マスキングに優れた香料の選定方法が確立された。
さらに、前記の選定方法により得られたマスキング香料を用いて、調合したマスキング香料組成物は施術反応臭に対して優れたマスキング効果を示しており、種々の毛髪変形剤や毛髪化粧料に好適に使用できる。