(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、成形型装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20220810BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20220810BHJP
B29C 33/18 20060101ALI20220810BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20220810BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C33/12
B29C33/18
B29C43/18
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2018174666
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】花崎 昌則
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】谷口 翔一
(72)【発明者】
【氏名】花坂 周邦
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035433(JP,A)
【文献】特開2013-028087(JP,A)
【文献】特開2013-123849(JP,A)
【文献】特開2011-011426(JP,A)
【文献】特開2007-054972(JP,A)
【文献】特開2003-053791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/36
B29C 33/12
B29C 33/18
B29C 43/18
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が設けられた成形対象物の第1面を保持し、前記電子部品を収容する凹部を有する第1型と、
前記第1型に対向して設けられ、樹脂材料を収容するキャビティを有する第2型と、
前記凹部に収容された電子部品の高さに合わせて昇降可能に設けられた支持部材と、
前記電子部品の高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する固定機構とを備え
、
前記支持部材は、前記第1型における前記凹部内の底部に形成された貫通孔により昇降可能に設けられており、
前記固定機構は、前記支持部材の外面と前記貫通孔の内面との間に差し込まれる差し込み部を有する、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記支持部材の昇降移動をガイドするガイド部と、前記差し込み部が差し込まれる差し込み受け部とを有し、
前記固定機構は、前記差し込み部を有する位置決め部材と、前記差し込み受け部に前記差し込み部が差し込まれることにより前記支持部材の外面を押圧する押圧部材と、前記差し込み部が前記差し込み受け部に差し込まれて前記押圧部材が前記支持部材の外面を押圧する固定位置及び当該固定位置から退避して固定を解除する解除位置の間で前記位置決め部材を昇降させる昇降駆動部とを有する、請求項
1記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記第1型が上型であり、
前記位置決め部材は、固定が解除された前記支持部材を持ち上げ可能に構成されており、
前記昇降駆動部は、前記固定位置にある前記位置決め部材を上昇させて前記解除位置とし、前記解除位置から更に上昇させることにより前記支持部材を持ち上げる持ち上げ位置とする、請求項
2記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
電子部品が設けられた成形対象物の第1面を保持し、前記電子部品を収容する凹部を有する第1型と、
前記第1型に対向して設けられ、樹脂材料を収容するキャビティを有する第2型と、
前記凹部に収容された電子部品の高さに合わせて昇降可能に設けられた支持部材と、
前記電子部品の高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する固定機構とを備え、
前記支持部材は、前記電子部品に接触する前にその昇降速度が減速される、樹脂成形装置。
【請求項5】
前記第1型は、複数の凹部を有しており、
前記支持部材は、前記複数の凹部それぞれに設けられている、請求項
1乃至4の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記凹部は、複数の電子部品を収容するものであり、
前記支持部材は、前記凹部において前記複数の電子部品に対応して複数設けられている、請求項
1乃至5の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記固定機構は、複数の前記支持部材を一括して固定するものである、請求項1乃至
6の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記支持部材に対して前記電子部品側に圧力を加えることができる加圧機構を有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
電子部品が設けられた成形対象物の第1面を保持し、前記電子部品を収容する凹部を有する成形型と、
前記凹部に収容された電子部品の高さに合わせて昇降可能に設けられた支持部材と、
前記電子部品の高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する固定機構とを備え
、
前記支持部材は、前記成形型における前記凹部内の底部に形成された貫通孔により昇降可能に設けられており、
前記固定機構は、前記支持部材の外面と前記貫通孔の内面との間に差し込まれる差し込み部を有する、成形型装置。
【請求項10】
請求項1乃至
8の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記第1面の電子部品に接触してその高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する位置決め工程と、
前記支持部材が位置決めされた状態で、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め工程とを備える、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、樹脂成形用の成形型装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮成形時のリードフレームの変形を防止する技術として、特許文献1に示す半導体装置の製造方法が考えられている。
【0003】
この半導体装置の製造方法は、リードフレームを対向する2つの成形金型で挟持し、下型上の板状樹脂を載置した面に対向する面から、リードフレームの一部を上型に配置された位置決め可動ピンにより支持する。次に、成形金型内の空間に圧縮成形によりリードフレームに搭載された半導体素子を樹脂封止した後、樹脂が半硬化状態時に位置決め可動ピンを封止樹脂の表面まで移動させる。これにより位置決め可動ピンが成形金型内で占めていた空間に樹脂を充填させ、樹脂全体を硬化させて樹脂封止を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リードフレームの板状樹脂を載置した面に対向する面に電子部品が搭載されている場合、電子部品の高さのバラツキにより位置決め可動ピンが電子部品を支持できない場合がある。そうすると、位置決め可動ピンと電子部品との間に隙間が生じたり、位置決め可動ピンにより電子部品が押されてリードフレームが変形したりして、リードフレームが樹脂成形毎に変形する恐れがある。そして、この変形によって半導体装置が不良となる恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、成形圧による成形対象物の変形を抑制することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る樹脂成形装置は、成形対象物の電子部品が設けられた第1面を保持し、前記電子部品を収容する凹部を有する第1型と、前記第1型に対向して設けられ、樹脂材料を収容するキャビティを有する第2型と、前記凹部に収容された電子部品の高さに合わせて昇降可能に設けられた支持部材と、前記電子部品の高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する固定機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、成形圧による成形対象物の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る一実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態の樹脂成形モジュールの構成を模式的に示す図である。
【
図3】同実施形態の樹脂成形方法の第1段階(持ち上げ位置)を模式的に示す図である。
【
図4】同実施形態の樹脂成形方法の第2段階(解除位置)を模式的に示す図である。
【
図5】同実施形態の樹脂成形方法の第3段階(固定位置)を模式的に示す図である。
【
図6】同実施形態の樹脂成形方法の第4段階(型締め時)を示す模式図である。
【
図7】同実施形態の樹脂成形方法の第5段階(型開き時)を示す模式図である。
【
図8】同実施形態の樹脂成形方法の第6段階(解除位置)を示す模式図である。
【
図9】同実施形態の樹脂成形方法の第7段階(持ち上げ位置)を示す模式図である。
【
図10】本発明に係る変形実施形態の樹脂成形モジュールの構成を模式的に示す図である。
【
図11】本発明に係る変形実施形態の加圧機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、成形対象物の電子部品が設けられた第1面を保持し、前記電子部品を収容する凹部を有する第1型と、前記第1型に対向して設けられ、樹脂材料を収容するキャビティを有する第2型と、前記凹部に収容された電子部品の高さに合わせて昇降可能に設けられた支持部材と、前記電子部品の高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する固定機構とを備えることを特徴とする。
この樹脂成形装置であれば、第1面に設けられた電子部品の高さに合わせて昇降可能である支持部材を設け、電子部品の高さに合わせて昇降した状態の支持部材を固定機構により固定しているので、電子部品の高さのバラツキに関わらず、電子部品に接触して支持することができ、樹脂成形時における成形圧によって成形対象物が変形することを抑制できる。
【0012】
成形対象物の第1面に複数の電子部品が設けられている場合には、前記第1型に複数の凹部を形成することが考えられる。この構成の場合には、前記支持部材を、前記複数の凹部それぞれに設けることが考えられる。
この構成であれば、複数の凹部それぞれに支持部材を設けているので、電子部品が設けられた部分における変形を抑制することができる。また、第1型の凹部が形成されていない部分を成形対象物の電子部品が設けられていない部分に接触させることができるので、成形対象物全体における成形圧による変形をより一層抑制することができる。
【0013】
また、前記凹部の構成として、複数の電子部品を収容するものとすることが考えられる。この構成の場合には、前記支持部材は、前記凹部において前記複数の電子部品に対応して複数設けられていることが望ましい。
この構成であれば、電子部品毎に凹部を形成することが難しい場合であっても、複数の電子部品それぞれを支持部材により支持することができ、成形圧による変形を抑制することができる。
【0014】
前記固定機構は、複数の前記支持部材を一括して固定するものであることが望ましい。
この構成であれば、固定機構の駆動源を共通にする等のように固定機構の構成を簡単にすることができる。
【0015】
前記支持部材の具体的な実施の態様としては、前記第1型における前記凹部内の底部に形成された貫通孔により昇降可能に設けられることが考えられる。この構成の場合には、前記固定機構は、前記支持部材の外面と前記貫通孔の内面との間に差し込まれる差し込み部を有することが望ましい。
この構成であれば、差し込み部を昇降させるだけで支持部材を固定することができ、簡単な構成により支持部材を固定することができる。
【0016】
前記支持部材を固定する具体的な構造としては、前記貫通孔は、前記支持部材の昇降移動をガイドするガイド部と、前記差し込み部が差し込まれる差し込み受け部とを有し、前記固定機構は、前記差し込み部を有する位置決め部材と、前記差し込み受け部に前記差し込み部が差し込まれることにより前記支持部材の外面を押圧する押圧部材と、前記差し込み部が前記差し込み受け部に差し込まれて前記押圧部材が前記支持部材の外面を押圧する固定位置及び当該固定位置から退避して固定を解除する解除位置の間で前記位置決め部材を昇降させる昇降駆動部とを有することが望ましい。
この構成では、押圧部材が差し込み部から受ける力を支持部材の外面を押圧する力に変換するので、差し込み部の昇降移動により支持部材が電子部品側に移動してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
前記第1型が上型の場合において、前記位置決め部材は、固定が解除された前記支持部材を持ち上げ可能に構成されていることが望ましい。そして、前記昇降駆動部は、前記固定位置にある前記位置決め部材を上昇させて前記解除位置とし、前記解除位置から更に上昇させることにより前記支持部材を持ち上げる持ち上げ位置とすることが望ましい。
この構成であれば、昇降駆動部が位置決め部材を持ち上げ位置にした状態で第1型に第1面を保持させることにより、成形対象物を保持する際に支持部材が電子部品に当たらないようにできる。その結果、第1面を保持する際に支持部材が邪魔にならず、第1面の保持を確実に行うことができる。
【0018】
第1面を保持した状態において支持部材と電子部品との接触を確実にするためには、前記支持部材を前記電子部品側に圧力を加えることができる加圧機構を有することが望ましい。
【0019】
支持部材が電子部品に接触する際の衝撃を低減して電子部品の破損を防ぐためには、前記支持部材は、前記電子部品に接触する前にその昇降速度が減速されることが望ましい。
【0020】
また、本発明に係る成形型装置は、成形対象物の電子部品が設けられた第1面を保持し、前記電子部品を収容する凹部を有する成形型と、前記凹部に収容された電子部品の高さに合わせて昇降可能に設けられた支持部材と、前記電子部品の高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する固定機構とを備えることを特徴とする。
この成形型装置であれば、第1面に設けられた電子部品の高さに合わせて昇降可能である支持部材を設け、電子部品の高さに合わせて昇降した状態の支持部材を固定機構により固定しているので、電子部品の高さのバラツキに関わらず、電子部品に接触して支持することができ、樹脂成形時における成形圧によって成形対象物が変形することを抑制できる。
【0021】
さらに本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、上述した樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記第1面の電子部品に接触してその高さに合わせて昇降した状態の前記支持部材を固定する位置決め工程と、前記支持部材が位置決めされた状態で、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め工程とを備えることを特徴とする。
この樹脂成形品の製造方法であれば、第1面に設けられた電子部品の高さに合わせて昇降可能である支持部材を設け、電子部品の高さに合わせて昇降した状態の支持部材を固定機構により固定しているので、電子部品の高さのバラツキに関わらず、電子部品に接触して支持することができ、樹脂成形時における成形圧によって成形対象物が変形することを抑制できる。
【0022】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
<樹脂成形装置の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、両面に電子部品Wxが実装された成形対象物W1の一方の面に樹脂材料Jを用いた圧縮成形によって樹脂封止するものである。
【0024】
ここで、成形対象物W1としては、例えば金属基板、樹脂基板、ガラス基板、セラミックス基板、回路基板、半導体基板、配線基板、リードフレーム等であり、配線の有無は問わない。また、樹脂成形のための樹脂材料Jは、熱硬化性樹脂であり、樹脂材料Jの形態は顆粒状、粉末状、液状、シート状又はタブレット状等である。また、成形対象物W1の上面に実装される電子部品Wxとしては、例えば樹脂封止されたチップである。
【0025】
具体的に樹脂成形装置100は、
図1に示すように、樹脂材料Jを供給する樹脂供給モジュール100Aと、減圧下において圧縮成形する4つの樹脂成形モジュール100Bと、成形前の成形対象物W1を供給するとともに成形後の成形対象物W2(樹脂成形品)を収容する供給・収納モジュール100Cとを、それぞれ構成要素として備えている。なお、樹脂供給モジュール100Aと、4つの樹脂成形モジュール100Bと、供給・収納モジュール100Cとは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0026】
樹脂供給モジュール100Aには、移動機構301が設けられる。移動機構301は、レール401に支えられ、レール401に沿って移動する。樹脂供給モジュール100Aと樹脂成形モジュール100Bとが装着された状態において、移動機構301は、樹脂供給モジュール100Aと樹脂成形モジュール100Bとが並ぶ方向(X方向)に沿って移動する。
【0027】
移動機構301には、樹脂供給機構であるディスペンサ501が設けられる。ディスペンサ501は移動機構301に対してY方向に移動する。移動機構301をY方向にも移動するようにしてもよい。
図1の例では、ディスペンサ501の先端にノズル502が取り付けられている。ディスペンサ501およびノズル502により、樹脂成形モジュール100Bに樹脂材料Jを供給する。
【0028】
各樹脂成形モジュール100Bは、成形対象物W1を保持する第1型である上型2と、上型2に対向して設けられ、樹脂材料Jを収容する第2型である下型3と、上型2及び下型3を型締めする型締め機構4(
図2参照)とを有する。具体的な構成について後述する。
【0029】
供給・収納モジュール100Cには、成形対象物W1を供給する供給部601と成形対象物W2を収納する収納部701とが設けられる。供給・収納モジュール100Cには、ローダ602とアンローダ702とが設けられる。さらに、供給・収納モジュール100Cには、ローダ602とアンローダ702とを支えるレール401がX方向に沿って設けられる。ローダ602とアンローダ702とは、レール401に沿って移動する。
【0030】
レール401に支えられたローダ602及びアンローダ702は、供給・収納モジュール100Cと各樹脂成形モジュール100Bと樹脂供給モジュール100Aとの間を、X方向に移動する。供給・収納モジュール100Cと樹脂成形モジュール100Bとが装着された状態において、ローダ602及びアンローダ702は、供給・収納モジュール100Cと樹脂成形モジュール100Bとが並ぶ方向(X方向)に沿って移動する。
【0031】
加えて、ローダ602及びアンローダ702はY方向に移動する。すなわち、ローダ602及びアンローダ702は水平方向に移動する。
【0032】
供給部601の成形対象物W1を供給されたローダ602は、レール401に沿って移動して、樹脂成形モジュール100Bのいずれかに到達する。樹脂成形モジュール100Bのいずれかに到達したローダ602は、成形対象物W1を樹脂成形モジュール100Bに供給する。
【0033】
樹脂成形モジュール100Bによって樹脂成形された成形対象物W2は、アンローダ702に搭載される。成形対象物W2が搭載されたアンローダ702は、供給・収納モジュール100Cに移動し、成形対象物W2は供給・収納モジュール100Cの収納部701に収納される。
【0034】
<樹脂成形モジュール100Bの具体的な構成>
次に、本実施形態における樹脂成形モジュール100Bの具体的な構成について以下に説明する。
【0035】
樹脂成形モジュール100Bは、
図2に示すように、成形対象物W1を保持する上型2と、上型2に対向して設けられ、樹脂材料Jを収容する下型3と、上型2及び下型3が取り付けられるとともに上型2及び下型3を型締めする型締め機構4とを有する。
【0036】
型締め機構4は、上型2が取り付けられる上部固定盤41と、下型3が取り付けられる可動盤42と、可動盤42を昇降移動させるための駆動機構43とを有している。
【0037】
上部固定盤41は、その下面に上型2が取り付けられるものであり、下部固定盤44に設けられた複数の支柱部45の上端部に固定されている。本実施形態では、下部固定盤44の四隅に設けられた支柱部45により上部固定盤41が固定されている。
【0038】
可動盤42は、その上面に下型3が取り付けられるものであり、四隅に設けられた支柱部45により上部固定盤41と対向して昇降移動可能に支持されている。
【0039】
駆動機構43は、可動盤42及び下部固定盤44の間に設けられており、可動盤42を昇降移動させることによって下型3及び上型2を型締めするとともに所定の成形圧を加える動力発生機構である。本実施形態の駆動機構43は、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構431を用いて可動盤42に伝達する直動方式のものであるが、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて可動盤42に伝達するリンク方式のものであっても良い。なお、駆動機構43は、例えば支柱部45に設けられた例えば歪ゲージ等の型締め圧力計測部(不図示)により得られる型締め圧力の計測結果に基づいて制御装置により制御される。
【0040】
上型2と上部固定盤41との間には、上型保持部46が設けられている。この上型保持部46は、上部固定盤41に固定されるベースプレート461と、当該ベースプレート461の下面に設けられて、ベースプレート461から下方に離した状態で上型2を保持する保持部材462とを有している。また、ベースプレート461の下面又はその周囲には、上型2の周囲を取り囲む側壁部材463が設けられており、側壁部材463の下端にはシール部材464が設けられている。
【0041】
また、下型3と可動盤42との間には、下型保持部47が設けられている。この下型保持部47は、下型3を加熱するヒータプレート等のベースプレート471を有している。また、ベースプレート471の上面又はその周囲には、下型3の周囲を取り囲む側壁部材472が設けられており、側壁部材472の上端にはシール部材473が設けられている。そして、駆動機構43による型締め時において側壁部材463のシール部材464及び側壁部材472のシール部材473が密着して、上型2及び下型3を収容する空間が外気と遮断されて密閉空間が形成される。そして、図示しない減圧機構によって当該密閉空間を排気して樹脂成形する。これにより成形対象物内の気泡残りを低減することができる。なお、シール部材464又はシール部材473の一方を設けない構成としても良い。
【0042】
上型2は、成形対象物W1の第1面Waを吸着して保持するものである。上型2の下面(基板Wを保持する基板保持面)には吸着孔(不図示)が形成されており、上型2の内部には吸引流路(不図示)が形成されている。この内部流路は外部の吸引装置(不図示)に接続されている。
【0043】
この上型2は、第1面Waとの間で空間を形成する凹部2Mを有している。凹部2Mは、成形対象物W1の第1面Waに対向しており、当該第1面Waに実装された電子部品Wxを収容する。本実施形態では、第1面Waに複数の電子部品Wxが実装されており、それら複数の電子部品Wxを個別に収容するように複数の凹部2Mが形成されている。各凹部2Mは収容する電子部品Wxに対応した形状をなしている。
【0044】
下型3は、
図2に示すように、成形対象物W1の第2面Wbを樹脂封止するための樹脂材料Jを収容するキャビティ3Cを有している。具体的に下型3は、キャビティ3Cの底面を形成する底面部材31と、当該底面部材31を取り囲む側面部材32と、ベースプレート471及び側面部材32の間に設けられた弾性部材33とを有している。側面部材32は、弾性部材33により底面部材31に対して相対的に上下移動可能とされている。この底面部材31の上面と側面部材32の内周面によってキャビティ3Cが形成される。
【0045】
そして、本実施形態の樹脂成形モジュールBは、
図2に示すように、凹部2Mに収容された電子部品Wxの高さに合わせて昇降可能に設けられた支持部材5と、電子部品Wxの高さに合わせて昇降した状態の支持部材5を固定する固定機構6とを備えている。上型2は、これら支持部材5及び固定機構6とともに成形型モジュール20を構成する。
【0046】
支持部材5は、上型2に形成された複数の凹部2Mそれぞれに設けられている。本実施形態の複数の支持部材5は、互いに同一形状をなしており、例えば円柱形状である。そして、支持部材5は、上型2における凹部2Mの底壁部に形成された貫通孔2Hにより昇降可能とされている。この貫通孔2Hは、支持部材5の昇降移動をガイドするガイド部2H1と、後述する固定機構6の差し込み部611が差し込まれる差し込み受け部2H2とを有している。差し込み受け部2H2は、上型2の上面に開口するように形成されている。
【0047】
固定機構6は、複数の支持部材5を一括して固定する例えばメカニカルロック機構のものであり、本実施形態ではくさび形の摩擦締結要素を用いて構成されている。具体的に固定機構6は、支持部材5の外面と貫通孔2Hの内面との間に差し込まれる差し込み部611を有し、当該差し込み部611を貫通孔2Hの差し込み受け部2H2に抜き差しすることによって、支持部材5を位置決め固定する。
【0048】
具体的に固定機構6は、差し込み部611を有する位置決め部材61と、差し込み部611からの力を受けて支持部材5の外面を押圧する押圧部材62と、位置決め部材61を昇降させる昇降駆動部63とを有している。
【0049】
位置決め部材61は、その下面に複数の差し込み部611を有するものであり、上型2の上側に昇降可能に設けられている。本実施形態の位置決め部材61は、支持部材5が貫通して設けられており、差し込み部611は、支持部材5を取り囲む円筒形状をなすものである。そして、差し込み部611は、その内側周面が下側に行くに従って徐々に広がるテーパ状をなすものである。
【0050】
押圧部材62は、差し込み受け部2H2に差し込み部611が差し込まれることにより支持部材5の外面を押圧するものである。具体的に押圧部材62は、差し込み受け部2H2において支持部材5を取り囲むように設けられた円筒形状をなすものである。押圧部材62は、その下面が差し込み受け部2H2の下面に接触して設けられており、その外側周面が差し込み部611の内側周面に対応したテーパ形状をなすものである。この押圧部材62は、差し込み部611の力を受けて支持部材5側(径方向内側)に変形するものである。この構成により、差し込み部611が押圧部材62と差し込み受け部2H2の内側周面との間に差し込まれることにより、押圧部材62が支持部材5側(径方向内側)に変形して支持部材5を押圧する。
【0051】
昇降駆動部63は、上部固定盤41の上部に設けられており、接続部材631を介して位置決め部材61を昇降させる動力を発生させるものである。昇降駆動部63としては、例えばエアシリンダを用いることができる。その他、昇降駆動部63として例えばサーボモータなどの位置・速度を制御可能な構成を用いることによって、支持部材5が電子部品Wxに接触する前に位置決め部材61の下降速度を減速し、支持部材5が電子部品Wxに接触する際の衝撃を軽減するようにしても良い。
【0052】
具体的に昇降駆動部63は、位置決め部材61を以下に示す固定位置P(
図5~
図7参照)、解除位置Q(
図4、
図8参照)、持ち上げ位置R(
図3、
図9参照)の間で昇降させるものである。
【0053】
固定位置Pは、差し込み部611が差し込み受け部2H2に差し込まれて押圧部材62が支持部材5の外面を押圧して支持部材5を位置決め固定する位置である。解除位置Qは、固定位置Pの上方に設定されており、固定位置Pから退避して固定を解除する位置である。持ち上げ位置Rは、解除位置Qの上方に設定されており、位置決め部材61が支持部材5を持ち上げる位置である。なお、位置決め部材61が支持部材5を持ち上げることができるように支持部材5の上端部には位置決め部材61に引っかかる引っかかり部51が形成されている。
【0054】
<樹脂成形モジュール100Bにおける動作>
次に、樹脂成形モジュール100Bの動作について
図3~
図10を参照して説明する。
【0055】
まず、
図3に示すように、成形対象物W1を上型2の下面に吸着保持する。この状態において、位置決め部材61は、昇降駆動部63により持ち上げ位置Rとされており、吸着保持時に支持部材5が電子部品Wxに当たることがなく、吸着保持の邪魔にならないようにしている。なお、吸着保持時に昇降駆動部63により位置決め部材61を解除位置Qとしておき、電子部品Wxが支持部材5を押し上げる構成としても良い。
【0056】
また、下型3のキャビティ3Cに離型フィルムF及び樹脂材料Jを供給する。ここで、下型3はヒータプレートにより例えば170~200℃に予熱されているので、樹脂材料Jはキャビティ3C内で軟化又は溶融した状態となる。なお、上型2による成形対象物W1の吸着保持と、下型3への離型フィルムF及び樹脂材料Jの供給との順序は、上記の逆であってもよいし、同時であっても良い。
【0057】
そして、成形対象物W1を吸着保持した後に、昇降駆動部63が位置決め部材61を下降させる。これにより、
図4に示すように、支持部材5が下降して電子部品Wxに接触し、電子部品Wxの高さに応じた位置で止まる。さらに、昇降駆動部63が位置決め部材61を下降させると、
図5に示すように、位置決め部材61に設けられた差し込み部611が差し込み受け部2H2に差し込まれて、押圧部材62が支持部材5側に変形して支持部材5を押圧する(固定位置P)。これにより、支持部材5が電子部品Wxに接触した状態で位置決め固定される。
【0058】
支持部材5が固定された状態で、
図6に示すように、型締め機構4の駆動機構43によって可動盤42を上昇させると、下型3が上昇して、上型2及び下型3が型締めされて、駆動機構43は下型3の底面部材31に所定の成形圧を生じさせる。
【0059】
上記の通り所定の成形圧で樹脂成形した後に、駆動機構43は、可動盤42を下降させて、上型2と下型3とを離す。このとき、
図7に示すように、上型2には成形対象物W2が保持されたままである。その後、成形対象物W2は、アンローダ702に受け渡されて、供給・収納モジュール100Cの収納部701に収納される。
【0060】
その後、昇降駆動部63により位置決め部材61を上昇させると、
図8に示すように、支持部材5の位置決めが解除される(解除位置Q)。このとき、支持部材5は自重により下側に移動し、引っかかり部51が位置決め部材61に引っかかる。さらに昇降駆動部63が位置決め部材61を上昇させると、
図9に示すように、支持部材5が位置決め部材61により持ち上げられる(持ち上げ位置R)。これにより、支持部材5が上型2に設けられた凹部2Mから貫通孔2Hに引っ込む。この状態で、次の成形対象物W1の吸着保持がされる(
図3参照)。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、第1面Waに設けられた電子部品Wxの高さに応じて昇降可能である支持部材5を設け、電子部品Wxの高さに合わせて昇降した状態の支持部材5を固定機構6により固定しているので、電子部品Wxの高さのバラツキに関わらず、電子部品Wxに接触して支持することができ、樹脂成形時における成形圧によって成形対象物W1が変形することを抑制できる。
【0062】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0063】
例えば、前記実施形態では、各電子部品に対応して凹部が設けられているが、1つの凹部が複数の電子部品を収容するものであっても良い。この場合、支持部材は、凹部において複数の電子部品に対応して複数設けられることになる。
【0064】
また、前記実施形態の上型は、凹部が形成された一体のものであったが、
図10に示すように、上型2は、凹部2Mの底面を形成する上面部材21と、凹部2Mの側周面を形成する側面部材22と、上面部材21及び側面部材22の間に設けられた弾性部材23とを有するものであっても良い。側面部材22は、弾性部材23により上面部材21に対して相対的に上下移動可能とされている。この上面部材21の下面と側面部材22の内周面によって凹部2Mが形成される。この凹部2Mは、型締めによって弾性部材23が縮み、上面部材21と側面部材22とが接触することにより形成される。この構成の場合には、1つの凹部2Mに複数の電子部品Wxが収容されることになる。そのため、上面部材21には、複数の支持部材5を昇降可能に設けるための複数の貫通孔2Hが形成される。
【0065】
ここで、1つの凹部2Mに複数の支持部材5を設けた構成では、収容した電子部品Wxの数によっては、支持部材5が電子部品Wxに接触することなく、成形対象物W1において電子部品Wxが設けられていない部分に接触することになる。
【0066】
前記実施形態の構成に加えて、樹脂成形装置100は、
図11に示すように、支持部材5を電子部品Wx側に加圧する加圧機構7を有していても良い。この加圧機構7は、支持部材5の上部とベースプレート461との間に設けられて支持部材5を下側に加圧するものである。加圧機構7は、例えばスプリング等の弾性部材を用いて構成しても良いし、マイクロシリンダ等のエアシリンダを用いて構成しても良い。このように加圧機構7を設けることによって、確実に支持部材5を下降させることができ、上型2が第1面Waを保持した状態において支持部材5と電子部品Wxとの接触を確実にすることができる。
【0067】
前記実施形態の複数の支持部材は同一形状のものであったが、接触する電子部品に合わせてその形状を異ならせるようにしても良い。
【0068】
前記実施形態の固定機構は、差し込み部を支持部材及び貫通孔の間に差し込むことによって固定するものであったが、例えば、支持部材において上型の貫通孔から上部の延び出た部分を挟持することによって固定するものであっても良い。また、前記実施形態の固定機構は、複数の支持部材を一括して固定するものであったが、複数の支持部材を個別又は複数の組毎に固定するものであっても良い。
【0069】
前記実施形態の樹脂成形装置(樹脂成形モジュール)を、減圧下において圧縮成形する装置としたが、大気圧下において圧縮成形する装置など、これ以外の装置としてもよい。
【0070】
なお、上記においては、成形対象物の第2面のみを樹脂成形する例について説明したが、第2面を樹脂成形した後、同様に第1面を樹脂成形することにより、成形対象物の両面を樹脂成形してもよい。
【0071】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
100・・・樹脂成形装置
W1 ・・・成形前の成形対象物
W2 ・・・成形後の成形対象物
Wa ・・・第1面
Wx ・・・電子部品
Wb ・・・第2面
20 ・・・成形型装置
2 ・・・第1型(上型)
2M ・・・凹部
2H ・・・貫通孔
2H1・・・ガイド部
2H2・・・差し込み受け部
3 ・・・第2型(下型)
3C ・・・キャビティ
5 ・・・支持部材
6 ・・・固定機構
611・・・差し込み部
61 ・・・位置決め部材
62 ・・・押圧部材
63 ・・・昇降駆動部
P ・・・固定位置
Q ・・・解除位置
R ・・・持ち上げ位置
7 ・・・加圧機構