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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20220810BHJP
   B05C 5/00 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B05C5/00 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018184382
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049164
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 保次
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】▲配▼島 裕了
(72)【発明者】
【氏名】大野 智之
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳平
(72)【発明者】
【氏名】古水戸 順介
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-534(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002502(WO,A1)
【文献】特開2008-249432(JP,A)
【文献】特開2015-134410(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02641661(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第107063131(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤に基準マークを照射する照射部と、
前記照射部により前記錠剤に照射された前記基準マークを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記錠剤の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記姿勢検出部の検出結果に応じ、前記搬送部により搬送される前記錠剤に印刷を行う印刷部と、
を備える錠剤印刷装置。
【請求項2】
前記姿勢検出部は、前記撮像部によって撮像された前記画像に表われた前記基準マークの外形変化に基づいて、前記錠剤の姿勢を検出することを特徴とする請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記姿勢検出部により検出された前記錠剤の姿勢に基づいて前記印刷の可否を判定する判定部を備える請求項1又は請求項2に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
前記判定部により前記印刷が可であると判定された場合、前記姿勢検出部により検出された前記錠剤の姿勢に基づいて、前記錠剤に印刷を行うための印刷データを生成する生成部を備える請求項3に記載の錠剤印刷装置。
【請求項5】
前記基準マークの形状は、リング状、格子状又は放射状である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の錠剤印刷装置。
【請求項6】
搬送される錠剤に基準マークを照射する工程と、
前記錠剤に照射された前記基準マークを撮像する工程と、
前記撮像により撮像された画像に基づいて前記錠剤の姿勢を検出する工程と、
前記錠剤の姿勢検出の検出結果に応じ、搬送される前記錠剤に印刷を行う工程と、
を有する錠剤印刷方法。
【請求項7】
前記錠剤の姿勢を検出する工程において、前記画像に表われた前記基準マークの外形変化に基づいて、前記錠剤の姿勢を検出することを特徴とする請求項6に記載の錠剤印刷方法。
【請求項8】
前記錠剤に印刷を行う工程前に、前記錠剤の姿勢を検出する工程により検出された前記錠剤の姿勢に基づいて前記印刷の可否を判定する工程を有する請求項6又は請求項7に記載の錠剤印刷方法。
【請求項9】
前記印刷の可否を判定する工程により前記印刷が可であると判定された場合、前記錠剤に印刷を行う工程前に、前記錠剤の姿勢を検出する工程により検出された前記錠剤の姿勢に基づいて、前記錠剤に印刷を行うための印刷データを生成する工程を有する請求項8に記載の錠剤印刷方法。
【請求項10】
前記基準マークの形状は、リング状、格子状又は放射状である請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤に文字やマークなどの識別情報(情報の一例)を印刷するため、インクジェット方式の印刷ヘッドを用いて印刷を行う技術が知られている。この技術を用いる錠剤印刷装置は、コンベアなどの搬送装置により錠剤を搬送し、搬送装置の上方に配置されたインクジェット方式の印刷ヘッドのノズルから、印刷ヘッド下方を通過する錠剤に向けてインク(例えば、可食性インク)を吐出し、錠剤に識別情報を印刷する。
【0003】
このような錠剤印刷装置において、錠剤は、搬送装置が備える搬送ベルト上のポケット又は吸引孔などによって保持される場合があるが、水平な姿勢から傾いた姿勢(水平な状態から傾いた状態)で保持されることがある。通常、水平な姿勢(基準姿勢)の錠剤に対して印刷を行うことが前提とされ、印刷に係る印刷データなどが設定されている。このため、傾いた姿勢の錠剤に対して印刷を行うと、インクの着弾位置がずれるために識別情報は所望位置からずれたり、文字自体の形状が崩れるなどの印刷不良が生じたりすることになる。このため、印刷品質は低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-081050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、印刷品質を向上させることができる錠剤印刷装置及び錠剤印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷装置は、
錠剤を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記錠剤に基準マークを照射する照射部と、
前記照射部により前記錠剤に照射された前記基準マークを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像に基づいて前記錠剤の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記姿勢検出部の検出結果に応じ、前記搬送部により搬送される前記錠剤に印刷を行う印刷部と、
を備える。
【0007】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷方法は、
搬送される錠剤に基準マークを照射する工程と、
前記錠剤に照射された前記基準マークを撮像する工程と、
前記撮像により撮像された画像に基づいて前記錠剤の姿勢を検出する工程と、
前記錠剤の姿勢検出の検出結果に応じ、搬送される前記錠剤に印刷を行う工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、印刷品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の一形態に係る錠剤印刷装置を示す図である。
図2】実施の一形態に係る第1の印刷装置を示す平面図である。
図3】実施の一形態に係る照射部を示す図である。
図4】実施の一形態に係る第1の搬送状態の錠剤を示す図である。
図5】実施の一形態に係る第1の搬送状態の錠剤の上面画像を示す図である。
図6】実施の一形態に係る第2の搬送状態の錠剤を示す図である。
図7】実施の一形態に係る第2の搬送状態の錠剤の上面画像を示す図である。
図8】実施の一形態に係る第3の搬送状態の錠剤を示す図である。
図9】実施の一形態に係る第3の搬送状態の錠剤の上面画像を示す図である。
図10】他の実施形態に係る照射部を示す図である。
図11】他の実施形態に係る錠剤の姿勢検出を説明するための第1の図である。
図12】他の実施形態に係る錠剤の姿勢検出を説明するための第2の図である。
図13】他の実施形態に係る錠剤の姿勢検出を説明するための第3の図である。
図14】他の実施形態に係る錠剤の姿勢検出を説明するための第4の図である。
図15】他の実施形態に係る基準マーク形状の変形例1を示す平面図である。
図16】他の実施形態に係る基準マーク形状の変形例2を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の一形態>
実施の一形態について図1から図9を参照して説明する。
【0011】
(基本構成)
図1に示すように、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置(制御部)50とを備えている。
【0012】
なお、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30は基本的に同じ構造である。錠剤印刷装置1の各構成要素である供給装置10、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40はこの順で配置され、搬送路Pが形成されており、搬送路Pに沿って錠剤Tの供給、印刷、回収の一連の処理が行われる。つまり、搬送路Pとは、錠剤印刷装置1において錠剤Tが搬送される経路であり、搬送路Pの上流は供給装置10側であり、下流は回収装置40側である。
【0013】
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受渡フィーダ13を有している。この供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されており、第1の印刷装置20の一端側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列フィーダ12に錠剤Tを順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを二列に整列し、受渡フィーダ13に向けて搬送する。受渡フィーダ13は、整列フィーダ12上に二列に並ぶ各錠剤Tを錠剤Tの上側から順次吸引して保持し、保持した各錠剤Tを第1の印刷装置20まで二列で搬送して第1の印刷装置20に渡す。この供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。整列フィーダ12及び受渡フィーダ13としては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。
【0014】
第1の印刷装置20は、搬送装置(搬送部)21と、検出装置22と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置(印刷部)24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。
【0015】
搬送装置21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
【0016】
搬送ベルト21aの表面には、図2に示すように、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送路を形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された吸引路を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、その吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fには、ポンプなどの吸気装置が吸気管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気装置の作動によって吸引チャンバ21fの内部は減圧される。なお、吸気管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0017】
ここで、印刷対象の錠剤Tとしては、一例として、糖衣錠やフィルムコーティング錠などのコーティング錠が用いられる。この錠剤Tは、平面視で楕円形状であり、上下面が曲面となる形状を有している。この形状は、錠剤Tが傾いた姿勢(水平な状態から傾いた状態)で搬送ベルト21aに保持されやすい形状である。
【0018】
検出装置22は、複数の検出部22a(図2の例では、二つ)を有している。検出部22aは、供給装置10によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。検出部22aは、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(錠剤Tの搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部22aとしては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。各検出部22aは制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
【0019】
第1の撮像装置23は、複数の撮像部23a(図2の例では、二つ)を有している。撮像部23aは、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部23aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部23aとしては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部23aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
【0020】
図2及び図3に示すように、各撮像部23aの周りには、撮像部23aによって撮像される錠剤Tの周りを環状に照らす照射部23cがそれぞれ設けられている。照射部23cとしては、例えば、リング照明が用いられる。照射部23cは、そのリングの中心が撮像部23aの撮像視野の中心と同一になるように設けられる。つまり、検出部22aが錠剤Tの到来を検出することによって、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行うことにより、錠剤Tの中心と照射部23cのリングの中心とが略一致するように設定されている。すなわち、照射部23cによって錠剤Tには水平方向の全方位から光が照らされる。これにより、錠剤Tの表面にはリング状の明るい反射部分が生じる。すなわち、照射部23cによって錠剤T上にリングR(基準マーク)が照射されることになる。各照射部23cは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
【0021】
例えば、図4に示すように、錠剤Tが水平な状態で搬送されてきたとき(第1の搬送状態)、撮像部23aに撮像された画像は、図5に示すように、錠剤T上に均一な明るさのリングR(照射部23cの照射によるリング)が表われる。このとき、錠剤Tの中心と、撮像部23aの視野範囲の中心、照射部23cのリングRの中心は一致している。
【0022】
これに対し、図6に示すように、錠剤Tが搬送方向A1の上流側に傾いて搬送されてきた場合には(第2の搬送状態)、図7に示すように、リングRの上流側部分が暗く下流側部分が明るい状態の画像が得られる。これは、錠剤Tの搬送方向上流側端部(図6の左側)と照射部23cとの距離が離れ、搬送方向下流側端部(図6の右側)と照射部23cとの距離が近づいたためである。照射部23cとの距離が近づいた部分は明るく、離れた部分については暗く、照射されたリングが映ることになる。
【0023】
同様に、図8に示すように、錠剤Tが搬送方向A1の下流側に傾いて搬送されてきた場合には(第3の搬送状態)、図9に示すように、リングRの上流側部分が明るく下流側部分が暗い状態の画像が得られる。これは、錠剤Tの搬送方向上流側端部(図8の左側)と照射部23cとの距離が近づき、搬送方向下流側端部(図8の右側)と照射部23cとの距離が離れたためである。
【0024】
このように、画像に表われるリングRの明るさ(明るい部分と暗い部分)と錠剤Tの傾きには一定の関係がある。予めリングRの明るさと、錠剤Tの傾きの関係を制御部(後述する記憶部54)に記憶させておき、取得した画像に基づいて、錠剤Tの傾きを検出することができる。詳しくは後述する。
【0025】
なお、「照射部23cが基準マークであるリングRを照射する」というのは、照射部23cから照射された光が錠剤Tの表面において反射し、この反射部分がリング状に明るく光ることにより基準マークであるリングRが表われるということを意味する。
【0026】
図1及び図2に戻り、印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド24a(図2の例では、二つ)を有している。印刷ヘッド24aは、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。印刷ヘッド24aは、複数のノズル24b(図2参照:ただし、図示では四つだけ表示)を具備し、それらのノズル24bから個別にインクを吐出する。この印刷ヘッド24aは、ノズル24bが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド24aとしては、圧電素子、発熱素子または磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。各印刷ヘッド24aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
【0027】
第2の撮像装置25は、複数の撮像部25a(図2の例では、二つ)を有している。撮像部25aは、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部25aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部25aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部25aとしては、前述の撮像部23aと同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部25aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0028】
乾燥装置26は、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、二列の搬送路に共通の乾燥装置であり、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥装置26としては、エアーなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0029】
乾燥装置26の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
【0030】
第2の印刷装置30は、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備えている。搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリ31b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ31c、モータ31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ31fを有している。第1の撮像装置33は、撮像部33a及び照射部33cを有している。なお、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20に対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)である。
【0031】
回収装置40は、不良品回収装置41と、良品回収装置42とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に設けられており、不良品回収装置41により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収装置42により良品の錠剤Tを回収する。
【0032】
不良品回収装置41は、噴射ノズル41aと、収容装置41bとを有している。噴射ノズル41aは、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内に設けられており、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤T(不良品の錠剤T)に向けて気体(例えば、エアー)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容装置41bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
【0033】
良品回収装置42は、気体吹出部42aと、排出フィーダ(排出搬送装置)42bと、乾燥装置42cと、収容装置42dとを有している。この良品回収装置42は、不良品回収装置41が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に設けられている。
【0034】
気体吹出部42aは、第2の印刷装置30の搬送装置31内であってその搬送装置31の端部、すなわち搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部に設けられている。気体吹出部42aは、例えば、印刷処理中、常に搬送ベルト31aに向けて気体(例えば、エアー)を吹き出し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部42aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。気体吹出部42aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0035】
ここで、不良品回収装置41を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、気体吹出部42aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト31aから落下する。したがって、気体吹出部42aを設けることで、搬送ベルト31aから錠剤Tを確実に落下させて排出フィーダ42bに供給することができる。
【0036】
排出フィーダ42bは、搬送ベルト31aの下面から落下した錠剤Tを受け取り、受け取った錠剤Tを収容装置42dまで搬送する。なお、排出フィーダ42bとしては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。この排出フィーダ42bのベルトは、気体通過性を有する無端状のベルトである。気体通過性を有するベルトとしては、網状のベルトや複数の丸孔を有するベルトなど、複数の貫通孔を有する各種材質のベルトを用いることが可能である。排出フィーダ42bは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0037】
乾燥装置42cは、上乾燥部42c1及び下乾燥部42c2を有している。この乾燥装置42cは、乾燥気体(例えば、乾燥エアー)を用いて上乾燥部42c1及び下乾燥部42c2によって、排出フィーダ42bにより搬送される錠剤Tを乾燥させる。この乾燥装置42cは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。乾燥装置42cとしては、乾燥気体により乾燥を行う装置以外にも、エアーなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。
【0038】
上乾燥部42c1は、排出フィーダ42bの上方に設けられており、排出フィーダ42bの上方位置から下方に向けて乾燥気体を吹き出す。上乾燥部42c1の筐体は、下面が開口する箱形状に形成されており、その下面が下方に向けられて排出フィーダ42bのベルト上面の搬送面に覆いかぶさるように設けられている。この上乾燥部42c1の筐体の中には、乾燥気体を吹き出すノズル(図示せず)が配置されており、ノズルから乾燥気体が排出フィーダ42bのベルト上面に向けて吹き出される。この乾燥気体は、排出フィーダ42bの搬送路に沿って排出フィーダ42bの上流端や下流端に向かって流れる。これにより、上乾燥部42c1の筐体内の空間は常に乾燥雰囲気に維持される。
【0039】
下乾燥部42c2は、排出フィーダ42bの内部に設けられており、排出フィーダ42bの内部位置から上方に向けて乾燥気体を吹き出す。下乾燥部42c2の筐体は、上面が開口する箱形状に形成されており、その上面が上方に向けられて排出フィーダ42bの内部に設けられている。この下乾燥部42c2の筐体の中には、乾燥気体を吹き出すノズル(図示せず)が配置されており、ノズルから乾燥気体が排出フィーダ42bのベルト下面に向けて吹き出される。この乾燥気体は、上乾燥部42c1から吹き出された乾燥気体と共に、排出フィーダ42bの搬送路に沿って排出フィーダ42bの上流端や下流端に向かって流れる。これにより、下乾燥部42c2の筐体内の空間は常に乾燥雰囲気に維持される。
【0040】
収容装置42dは、排出フィーダ42bの下流端、すなわち排出フィーダ42bにおける第2の搬送装置31側と反対側の端に位置付けられ、錠剤印刷装置1の筐体の外に設けられている。この収容装置42dは、乾燥装置42cによりインクが乾燥した錠剤Tを排出フィーダ42bから受け取って収容する。
【0041】
制御装置50は、画像処理部(姿勢検出部)51と、印刷処理部(判定部及び生成部)52と、検査処理部53と、記憶部54とを備えている。画像処理部51は画像を処理し、印刷処理部52は印刷に係る処理を行う(いずれも詳しくは、後述する)。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像などを受信する。
【0042】
画像処理部51は、撮像装置23の撮像部23aごとに、撮像部23aにより得られた画像に基づいて錠剤Tの姿勢を検出し、また、撮像装置33の撮像部33aごとに、撮像部33aにより得られた画像に基づいて錠剤Tの姿勢を検出する。つまり、画像処理部51は、撮像部23a、33aごとに画像を処理し、基準マークのリングRの明るさの分布から、錠剤Tの傾き方向や傾き角度を求め、錠剤Tの姿勢を特定する。
【0043】
具体的には、画像に表われたリングRの最も明るい箇所(最も輝度が高い箇所)を検出し、この位置と、輝度値によって錠剤Tの傾いている向きと角度を検出することができる。錠剤Tが傾いて搬送されている場合には、先に述べたように、撮像部23a(33a)で撮像した画像に表われるリングRは場所によって明るさ(輝度)に差が現れる。すなわち、錠剤Tの照射部23cに近づいた箇所は、平坦で搬送されている場合と比べて、より明るく、照射部23cから離れた箇所は暗くなる。したがって、最も明るい箇所は最も照射部23cに近づいている箇所となり、最も搬送ベルト21a(31a)から離れた場所に位置する箇所となる。画像処理部51は、予め求めておいた最も明るい箇所の輝度と錠剤の角度との関係を参照して、撮像部23aが得た画像に表われたリングRの最も明るい箇所の輝度値により錠剤Tが何度傾いているかを算出できる。
【0044】
また、リングRの最も明るい箇所の輝度値と最も暗い箇所の輝度値との比によって角度を求めることもできる。予め比と錠剤Tの傾斜角度との関係を求めておき、画像処理部51はこれを用いて錠剤Tの角度を算出することができる。
【0045】
また、リングRは錠剤Tの傾きによって変形する(図4から図9参照)。このリングRの変形(外形変化)に基づいて錠剤Tの姿勢を検出するようにしても良い。なお、画像処理部51は姿勢検出部の一例である。
【0046】
印刷処理部52は、前述の錠剤Tの姿勢を検出するための画像ごとに、画像処理部51により検出された錠剤Tの姿勢に基づいて印刷の可否を判定する。例えば、錠剤Tの姿勢(傾き角度)が許容値を超えるか否かを判断し、錠剤Tの姿勢が許容値を超えたと判断した場合には(YES)、印刷が否であると判定する。一方、錠剤Tの姿勢が許容値を超えていないと判断した場合には(NO)、印刷が可であると判定する。そして、印刷処理部52は、印刷が可であると判定すると、画像処理部51により検出された錠剤Tの姿勢に基づいて印刷データを生成し、印刷が否であると判定すると、その錠剤Tに対する印刷を禁止する。許容値はあらかじめ設定されているが、その変更も可能である。なお、印刷処理部52は判定部及び生成部の一例である。
【0047】
ここで、画像処理部51により検出された錠剤Tの姿勢(錠剤Tの姿勢情報)に基づいて印刷データを生成する際、錠剤Tが水平な姿勢であれば、印刷データを所定の手順通りに生成することになるが、錠剤Tの姿勢が許容値を超えていないが、錠剤Tが傾いた姿勢である場合には、その錠剤Tの姿勢の傾き分だけ印刷データを補正しつつ生成することになる。
【0048】
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理及び検査処理について説明する。以下の印刷処理では、錠剤Tの両面に識別情報を印刷する両面印刷について説明する。
【0049】
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に記憶される。そして、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により二列に並べられて移動する。この二列で移動する錠剤Tは受渡フィーダ13により第1の印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによる駆動プーリ31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
【0050】
第1の印刷装置20では、錠剤Tが搬送ベルト21a上に吸引保持され、搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出装置22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部54に保存されて後処理で用いられる。次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第1の撮像装置23によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。
【0051】
制御装置50の画像処理部51では、第1の撮像装置23から送信された個々の画像ごとに、錠剤Tの姿勢が検出される。そして、検出された錠剤Tの姿勢(傾き角度)が許容値を超えるか否かが印刷処理部52により判断される。錠剤Tの姿勢が許容値を超えたと判断されると、印刷が否であると判定され、姿勢が許容値を超えた錠剤Tに対する印刷が禁止される。一方、錠剤Tの姿勢が許容値を超えていないと判断されると、印刷が可であると判定され、錠剤Tの姿勢情報(例えば、傾き方向や傾き角度)、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、図2におけるX方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)などの情報に基づく印刷データが印刷処理部52により生成されて記憶部54に保存される。この印刷データに基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出速度など)が印刷処理部52により設定されて記憶部54に保存される。
【0052】
ここで、前述のように錠剤Tの姿勢が許容値を超える場合には、その錠剤Tに対する印刷は制限されるが、錠剤Tの姿勢が許容値を超えていないが、錠剤Tが傾いた姿勢である場合には、印刷データが、傾いた姿勢の錠剤Tに対する印刷位置が水平な姿勢(基準姿勢)の錠剤Tに対する印刷位置と同じになるように調整される。
【0053】
例えば、錠剤Tが傾いた姿勢であることによって、水平な姿勢の場合と比較して印刷ヘッド24aのノズル24bに近づいた部分に対しては、インクの吐出量を減らし、印刷ヘッド24aのノズル24bから離れた部分へのインク滴の吐出量を増やすように印刷データが調整される。このような調整で、印刷ヘッド24aに近い位置へのインクの着弾は小さく、印刷ヘッド24aから遠い位置へのインクの着弾は大きくなるように調整され、錠剤T全体においての印刷状態が正確に保たれる。
【0054】
また、印刷ヘッド24aのノズル24bから吐出されて印刷面に着弾するインク滴のピッチも錠剤Tの傾き状態で変化する。錠剤Tが水平な姿勢の場合には、錠剤T表面に着弾するインク滴のピッチはノズル24bのピッチとほぼ同じになるが、傾いた姿勢の錠剤T表面に着弾したインク滴のピッチは、ノズル24bのピッチよりも広がってしまう。この点を考慮してインク滴を吐出するノズル24bを選択し、着弾するインク滴のピッチを調整すると、傾いた姿勢の錠剤Tに印刷したとしても、その錠剤Tを傾かない状態で視認して、傾かない状態で印刷したときと変わらない印刷状態にすることができる。
【0055】
次いで、搬送ベルト21a上の個々の錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方に到達したタイミングで、前述の印刷データや印刷条件に基づいて印刷ヘッド装置24により印刷が実行される。印刷ヘッド装置24の各印刷ヘッド24aにおいて、各ノズル24bからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。
【0056】
識別情報が印刷された錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第2の撮像装置25によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像装置25から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が記憶部54に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に印刷されているか否かが判断される。
【0057】
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥動作中の乾燥装置26の上方を通過する。このとき、錠剤Tに到達(着弾)したインクは、錠剤Tが乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥装置26によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていき、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aの下面に保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に渡される。
【0058】
第2の印刷装置30でも、錠剤Tが搬送ベルト31a上に吸引保持され、前述と同じように印刷処理及び検査処理が行われる。検査後の錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、乾燥動作中の乾燥装置36の上方を通過する。そして、インクが乾燥した錠剤Tは不良品回収装置41に到達する。この位置で不良品の錠剤Tは、噴射ノズル41aによる気体の噴射により搬送ベルト31aの下面から落下し、収容装置41bによって回収される。一方、良品の錠剤Tは不良品回収装置41を通過し、良品回収装置42に到達する。この位置で良品の錠剤Tは、吸引作用が錠剤Tに働かなくなるとともに、気体吹出部42aによる気体の吹出しによって搬送ベルト31aの下面から落下し、排出フィーダ42bに引き渡される。
【0059】
良品の錠剤Tは排出フィーダ42bによって搬送され、その搬送途中に錠剤Tが乾燥動作中の乾燥装置42cの上乾燥部42c1及び下乾燥部42c2の間を通過する。排出フィーダ42bのベルト上の錠剤Tには、上乾燥部42c1及び下乾燥部42c2から乾燥気体が吹き付けられるため、錠剤Tが乾燥し、錠剤Tの乾燥状態が維持される。また、錠剤Tが排出フィーダ42bより上流の搬送路で湿気により水分を含んでも、その錠剤Tを排出フィーダ42bによる搬送中に上乾燥部42c1及び下乾燥部42c2によって確実に乾燥させることができる。このとき、排出フィーダ42bの搬送速度は、印刷時の搬送速度に比べて非常に遅くなっているため、仕切空間内の錠剤Tは、十数分程度乾燥気体の空間内にとどまることから、錠剤Tが確実に乾燥することになる。なお、これらのことは錠剤Tに印刷されたインクにも言え、乾燥したインクの状態を維持できるとともに、インクの乾燥が不十分であっても確実にインクを乾燥させることができる。乾燥装置42cにより乾燥した錠剤Tは、排出フィーダ42bにより収容装置42dの上方まで搬送され、排出フィーダ42bの下流端から落下し、収容装置42dによって回収される。
【0060】
このような印刷処理工程によれば、第1の印刷装置20において、錠剤Tの上面が第1の撮像装置23の撮像部23aにより撮像される。このとき、錠剤Tの上面には、照射部23cにより基準マークが照射されている。これにより、基準マークがある錠剤Tの上面を含む画像が取得される。そして、その撮像部23aにより得られた画像に基づいて、錠剤Tの姿勢(錠剤Tの傾き方向及び傾き角度)が画像処理部51により検出される。この錠剤Tの姿勢の検出結果に応じ、搬送される錠剤Tに印刷ヘッド装置24により印刷が行われる。このとき、錠剤Tの姿勢に応じて、搬送される錠剤Tに対する印刷の実行の可否を切り替えることが可能である。これにより、姿勢が許容値を超えるほど傾いている錠剤Tに対して印刷を実行することを回避することができ、あるいは、錠剤Tの姿勢を把握してその姿勢に合せて錠剤Tに対して印刷を実行することもできる。その結果、印刷品質を向上させることができる。なお、第2の印刷装置30でも、前述と同様、錠剤Tの姿勢の検出及び錠剤Tへの印刷が行われる。
【0061】
また、照射部23c(33c)により基準マークを錠剤Tの上面に照射するだけで、搬送方向A1と平行な方向、これと直交する方向および鉛直方向における錠剤Tの姿勢を検出することが可能になる。つまり、照射部23cによる基準マークの照射を行わずに錠剤Tの平面画像を撮像する場合に比べ、錠剤Tの姿勢をより正確に把握することができ、その結果、印刷品質を確実に向上させることができる。また、錠剤Tの側面を数カ所から撮像する複数台の専用カメラを用いることにより三次元での錠剤Tの姿勢を検出することも可能であるが、装置構成が複雑になる。これに場合に比べ、上述した実施形態は照射部23c(33c)を設けるだけで良く、装置構成の簡略化も実現することができる。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、搬送される錠剤Tに基準マークが照射部23c(33c)により照射され、錠剤Tに照射された基準マークが撮像部23a(33a)により撮像され、撮像により得られた画像に基づいて錠剤Tの姿勢が画像処理部51により検出され、その検出結果に応じ、搬送される錠剤Tに印刷ヘッド装置24(34)によって印刷が行われる。これにより、錠剤Tの姿勢に応じて、搬送される錠剤Tに対する印刷の実行の可否を切り替えることが可能になるので、姿勢が許容値を超えるほど傾いている錠剤Tに対して印刷を実行することを回避することができる。また、錠剤Tの姿勢を把握し、その姿勢に合せて錠剤Tに対して印刷を実行することもできる。これらのことから、印刷品質を向上させることができる。また、錠剤Tの側面を数カ所から撮像する複数台の専用カメラなどは不要であり、装置構成の簡略化も実現することができる。
【0063】
<他の実施形態>
上記実施形態において、照射部23cは環状のリング照明であって、これにより基準マークであるリングRを錠剤Tに照射する例を説明したが、これに限らない。以下、照射部23cに代えてレーザ光によって基準マークを照射する照射部23bを用いる例を説明する。
【0064】
例えば、図10に示すように、照射部23bは、撮像部23aが設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この照射部23bは、鉛直な状態から上部が搬送方向A1の下流側に傾けられ、撮像部23aの直下に到達した錠剤Tの上面に基準マークを照射する。錠剤Tの上面での基準マーク形状は円となる。照射部23bとしては、例えば、レーザ光を出射するレーザ光源を用いることが可能である。各照射部23bは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
【0065】
ここで、照射部23bによる基準マークの照射位置は、撮像部23aの撮像領域(撮像範囲)の中心位置と同じ鉛直線上に位置している。撮像タイミングは、前述のように錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミング、すなわち、錠剤Tの搬送方向A1の位置が撮像部23aの撮像領域の搬送方向A1の中心位置に位置したときに撮像が行われるように設定されている。通常、錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で直交する方向の位置は大きくずれることがないため、撮像部23aの撮像領域の略中央に錠剤Tの上面の像が存在することになる。
【0066】
また、通常、搬送ベルト21a上の錠剤Tは水平な姿勢(基準姿勢)で吸引孔21gによる吸引によって保持されるが、図11に示すように、搬送ベルト21a上の錠剤Tが水平な姿勢から傾いた姿勢で吸引孔21gによる吸引によって保持されることがある。図12に示すように、搬送ベルト21a上の錠剤Tが水平な姿勢である場合には、基準マークのスポットSは略円形である。一方、図13に示すように、搬送ベルト21a上の錠剤Tが傾いた姿勢である場合には、基準マークのスポットSが楕円形となる。図12及び図13に示すように、スポットSは略円形から楕円形に延伸して変化するが、スポットSが延伸した方向やスポットSが延伸した長さから錠剤Tの傾き方向や傾き角度が求められ、錠剤Tの姿勢が特定される。なお、図13は錠剤Tが搬送方向A1の上流側と、搬送方向A1と平面内で交差する方向であって図11における紙面手前側とに傾斜した状態を示している。
【0067】
例えば、錠剤Tが水平な姿勢で撮像された画像内のスポットS(図12参照)の重心は、図14に示すように、二次元座標系の原点(X0、Y0)に設定されている。また、図13に示すような状態で錠剤Tが傾いた姿勢で撮像されると、その錠剤Tが傾いた姿勢で撮像された画像から、その画像内のスポットS(図13参照)の重心が求められる。この重心は、図14に示すように、二次元座標系の座標(X1、Y1)である。そして、図14に示すように、座標が(X0、Y0)である原点から、座標が(X1、Y1)である重心へ向かうベクトルが算出される。このとき、ベクトルの方向(向き)及び長さが求められる。錠剤Tは、ベクトルの方向側が低く、ベクトルの方向と反対側が高くなるように傾いており(図13参照)、ベクトルの方向から錠剤Tの傾き方向が特定される。また、錠剤Tはベクトルの長さ分だけ回転したと考えられ、ベクトルの長さから錠剤Tの傾き角度が算出される。このようにして、錠剤Tの傾き方向や傾き角度が錠剤Tの姿勢として求められる。
【0068】
画像処理部51は、撮像装置23の撮像部23aごとに、撮像部23aにより得られた画像に基づいて錠剤Tの姿勢を検出し、また、撮像装置33の撮像部33aごとに、撮像部33aにより得られた画像に基づいて錠剤Tの姿勢を検出する。つまり、画像処理部51は、撮像部23a、33aごとに画像を処理し、基準マークのスポットSが延伸した方向やスポットSが延伸した長さから、錠剤Tの傾き方向や傾き角度を求め、錠剤Tの姿勢を特定する。具体的には、錠剤Tが水平な姿勢で撮像された画像内のスポットS(図12参照)の重心から、錠剤Tが傾いた姿勢で撮像された画像内のスポットS(図13参照)の重心へ向かうベクトルを求め(図14参照)、そのベクトルの方向から錠剤Tの傾き方向を特定し、ベクトルの長さから錠剤Tの傾き角度を算出し、錠剤Tの姿勢を求める。なお、画像処理部51は姿勢検出部の一例である。
【0069】
前述の説明においては、錠剤Tの表面での基準マークの形状を円形にしているが、その形状は限定されるものではない。例えば、錠剤Tの表面での基準マークの形状をライン状やクロス状にしても良く、また、照射部23bとして照明及び光学部材(例えば、格子状又は放射状のスリットを有する部材)を用いて、図15に示すように、格子状にするようにしても良く、図16に示すように、放射状にするようにしても良い。これらの形状によれば、錠剤Tの表面での基準マークの形状を円形にした場合に比べ、錠剤Tの姿勢をより正確に検出することが可能になるので、印刷品質を確実に向上させることができる。なお、さらに錠剤Tの姿勢を正確に検出するためには、基準マークのサイズを錠剤Tの上面の面積の半分以上とすることが好ましい。
【0070】
また、撮像部23aにより錠剤Tを撮像するための照明を設けた場合には、その撮像部23aにより錠剤Tを撮像するための照明と、錠剤Tに基準マークを照射する照射部23bとを撮像部23aの撮像タイミングで切り替えて使用することが可能である。この切り替えに応じて、錠剤Tの上面は連続的に二度、撮像部23aによって撮像される。なお、基準マークのサイズや照射量を調整することで、撮像部23aにより錠剤Tを撮像するための照明を不要とすることも可能である。
【0071】
また、前述の説明においては、基準マークの重心の位置変化に基づいて錠剤Tの姿勢(傾き方向や傾き角度)を検出することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、基準マークの外形の変化(形状変化)に基づいて錠剤Tの姿勢を検出するようにしても良い。
【0072】
また、前述の説明においては、印刷対象の錠剤Tとして、平面視で楕円形状であり、上下面が曲面である紡錘形状の錠剤を用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、真円形状、円盤形状、レンズ形状、三角形状の錠剤を用いるようにしても良い。
【0073】
また、前述の説明においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列、又は、三列や四列以上であっても良く、搬送路の数や搬送ベルト21a、31aの数は特に限定されるものではない。また、搬送ベルト21a、31aの吸引孔21gの形状も特に限定されるものではない。
【0074】
また、前述の説明においては、錠剤Tの搬送路ごとに印刷ヘッド24aを設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つの印刷ヘッド24aによって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
【0075】
また、前述の説明においては、インクジェット方式の印刷ヘッド24aとして、ノズル24bが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24bが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、搬送方向A1に沿って印刷ヘッド24aを複数並べて用いるようにしても良い。
【0076】
また、前述の説明においては、乾燥装置26、36、42cを設けることを例示したが、その数は限定されるものではない。例えば、一つの乾燥装置26がなく二つの乾燥装置36、42cがあれば良く、また、二つの乾燥装置26、36がなく一つの乾燥装置42cがあれば良く、乾燥装置42cが無く乾燥装置26、36があれば良い。また、インク、錠剤Tの種類によっては乾燥装置を必要としないこともあるため、三つの乾燥装置26、36、42c全てが無くても良い。
【0077】
また、前述の説明においては、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30を上下に重ねて配置して、錠剤Tの両面または片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の印刷装置20だけを設け、錠剤Tの片面だけを印刷するようにしても良い。
【0078】
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 錠剤印刷装置
21 搬送装置(搬送部)
23a 撮像部
23b 照射部
23c 照射部
24 印刷ヘッド装置(印刷部)
31 搬送装置(搬送部)
33a 撮像部
33c 照射部
34 印刷ヘッド装置(印刷部)
50 制御装置(制御部)
51 画像処理部(姿勢検出部)
52 印刷処理部(判定部、生成部)
T 錠剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16