(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】タイヤ加硫用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20220810BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20220810BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2018220179
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋平
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-302558(JP,A)
【文献】特開平08-103911(JP,A)
【文献】特開2005-280330(JP,A)
【文献】特開2013-173305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤを加硫成形するタイヤ加硫用金型であって、
タイヤ周方向に沿って環状に配置されると共にタイヤ径方向に移動可能に構成される複数のセクタを備え、
前記複数のセクタのうち少なくとも1つのセクタに、前記セクタの合わせ面におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材が交換可能に取り付けら
れ、
前記合わせ面構成部材は、前記セクタのタイヤ径方向外側から挿入される締結部材を用いて前記セクタに取り付けられている
タイヤ加硫用金型。
【請求項2】
前記合わせ面構成部材は、前記セクタより弾性係数の高い材料から形成されている
請求項1に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項3】
前記合わせ面構成部材は、前記セクタと同一材料から形成されている
請求項1に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項4】
前記セクタのタイヤ径方向内側に配置されるサイドプレートを備え、
前記合わせ面構成部材は、前記サイドプレートとの合わせ面におけるタイヤ成形面側を構成する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項5】
前記セクタは、タイヤ成形面にタイヤ周方向に延びる主溝を形成する骨部を備え、
前記合わせ面構成部材は、タイヤ周方向に隣接するセクタとの合わせ面における前記骨部を含むタイヤ成形面側を構成する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のタイヤ加硫用金型。
【請求項6】
グリーンタイヤを加硫成形するタイヤ加硫用金型であって、
タイヤ周方向に沿って環状に配置されると共にタイヤ径方向に移動可能に構成される複数のセクタを備え、
前記複数のセクタのうち少なくとも1つのセクタに、前記セクタの合わせ面におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材が交換可能に取り付けられ、
前記セクタのタイヤ径方向内側に配置されるサイドプレートを備え、
前記合わせ面構成部材は、前記サイドプレートとの合わせ面におけるタイヤ成形面側を構成し、前記セクタのタイヤ周方向両側では前記セクタのタイヤ周方向中央側に比してタイヤ径方向の大きさが大きく形成されている
タイヤ加硫用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリーンタイヤを加硫成形して空気入りタイヤを製造するタイヤ加硫用金型として、タイヤ周方向に沿って環状に配置されてトレッド部及びショルダ部を成形する複数のセクタと、複数のセクタのタイヤ径方向内側に配置されてサイドウォール部を成形する上下一対のサイドプレートとを備えた分割式のタイヤ加硫用金型が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、タイヤ加硫用金型のセクタをアルミニウム材料とすると共にセクタのショルダ部成形面にアルミニウム材料より弾性限度の高い金属材料を配置して金型の摩耗を抑制するようにした分割式のタイヤ加硫用金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分割式のタイヤ加硫用金型は、複数のセクタがそれぞれ支持体に支持された状態で上下方向に移動されると共にタイヤ径方向に移動されるように加硫成形機に装着されている。加硫成形機に装着されたタイヤ加硫用金型の型閉じ時には、セクタはそれぞれ支持体に支持された状態で下側に移動された後にタイヤ径方向内側に移動されるが、支持体に支持されたセクタにガタが生じて隣接するセクタやサイドプレートに干渉して摩耗するおそれがある。
【0006】
タイヤ加硫用金型のセクタが、隣接するセクタやサイドプレートに干渉して摩耗するとき、隣接するセクタやサイドプレートとの合わせ面におけるタイヤ成形面側が干渉して摩耗すると、空気入りタイヤにセクタの合わせ面の摩耗による成形不良が発生し得る。
【0007】
このため、セクタの合わせ面が摩耗すると、セクタの合わせ面の摩耗による成形不良の発生を抑制するようにセクタの摩耗した部分を肉盛補修などによって修正する金型メンテナンスを行う必要があることから、金型メンテナンスの作業時間が長くなることとなる。
【0008】
そこで、本発明は、金型メンテナンスの作業性を向上させると共にセクタの合わせ面の摩耗による成形不良の発生を抑制することができるタイヤ加硫用金型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、グリーンタイヤを加硫成形するタイヤ加硫用金型であって、タイヤ周方向に沿って環状に配置されると共にタイヤ径方向に移動可能に構成される複数のセクタを備え、前記複数のセクタのうち少なくとも1つのセクタに、前記セクタの合わせ面におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材が交換可能に取り付けられ、前記合わせ面構成部材は、前記セクタのタイヤ径方向外側から挿入される締結部材を用いて前記セクタに取り付けられているタイヤ加硫用金型を提供する。
【0010】
本発明によれば、複数のセクタのうち少なくとも1つのセクタの合わせ面におけるタイヤ成形面側に摩耗が発生した場合においても容易に新しい合わせ面構成部材に交換することができるので、金型メンテナンスの作業性を向上させると共にセクタの合わせ面の摩耗による成形不良の発生を抑制することができる。
また、合わせ面側から締結部材が取り付けられる場合に比して、セクタの合わせ面を精度良く形成することができ、グリーンタイヤを精度良く加硫成形することができる。
【0011】
前記合わせ面構成部材は、セクタより弾性係数の高い材料から形成されていることが好ましい。
【0012】
本構成によれば、合わせ面構成部材がセクタと同一材料から形成される場合に比して、セクタの合わせ面におけるタイヤ成形面側に摩耗が発生することを抑制することができるので、合わせ面構成部材の交換頻度を低下させて生産性の向上を図ることができる。
【0013】
前記合わせ面構成部材は、セクタと同一材料から形成されていてもよい。
【0014】
本構成によれば、合わせ面構成部材がセクタと同一材料から形成されていない場合に比して、加硫成形時におけるセクタと合わせ面構成部材の熱膨張による寸法変化を等しくすることができるので、グリーンタイヤを精度良く加硫成形することができる。
【0015】
前記タイヤ加硫用金型は、セクタのタイヤ径方向内側に配置されるサイドプレートを備え、前記合わせ面構成部材は、サイドプレートとの合わせ面におけるタイヤ成形面側を構成することが好ましい。
【0016】
本構成によれば、セクタは、摩耗が発生し易いサイドプレートとの合わせ面におけるタイヤ成形面側が合わせ面構成部材によって構成されるので、金型メンテナンスの作業性向上と成形不良発生抑制とを有効に図ることができる。
【0017】
前記セクタは、タイヤ成形面にタイヤ周方向に延びる主溝を形成する骨部を備え、前記合わせ面構成部材は、タイヤ周方向に隣接するセクタとの合わせ面における骨部を含むタイヤ成形面側を構成することが好ましい。
【0018】
本構成によれば、セクタは、摩耗が発生し易い隣接するセクタとの合わせ面における骨部を含むタイヤ成形面側が合わせ面構成部材によって構成されるので、金型メンテナンスの作業性向上と成形不良発生抑制を有効に図ることができる。
【0019】
本発明はまた、グリーンタイヤを加硫成形するタイヤ加硫用金型であって、タイヤ周方向に沿って環状に配置されると共にタイヤ径方向に移動可能に構成される複数のセクタを備え、前記複数のセクタのうち少なくとも1つのセクタに、前記セクタの合わせ面におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材が交換可能に取り付けられ、前記セクタのタイヤ径方向内側に配置されるサイドプレートを備え、前記合わせ面構成部材は、前記サイドプレートとの合わせ面におけるタイヤ成形面側を構成し、前記セクタのタイヤ周方向両側では前記セクタのタイヤ周方向中央側に比してタイヤ径方向の大きさが大きく形成されているタイヤ加硫用金型を提供する。
【0020】
本発明によれば、複数のセクタのうち少なくとも1つのセクタの合わせ面におけるタイヤ成形面側に摩耗が発生した場合においても容易に新しい合わせ面構成部材に交換することができるので、金型メンテナンスの作業性を向上させると共にセクタの合わせ面の摩耗による成形不良の発生を抑制することができる。
また、セクタは、摩耗が発生し易いサイドプレートとの合わせ面におけるタイヤ成形面側が合わせ面構成部材によって構成されるので、金型メンテナンスの作業性向上と成形不良発生抑制とを有効に図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るタイヤ加硫用金型によれば、金型メンテナンスの作業性を向上させると共にセクタの合わせ面の摩耗による成形不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型を装着した加硫成形機を示す断面図である。
【
図2】タイヤ加硫用金型の型閉じ動作を示す概略説明図である。
【
図4】
図3におけるY4-Y4線に沿ったセクタの断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタの変形例の断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタの別の変形例の斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタの斜視図である。
【
図8】
図7におけるY8-Y8線に沿ったセクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型を装着した加硫成形機を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型2は、加硫成形機1に装着され、加硫成形機1の上プレート3及び上プラテン4と下プラテン5との間にコンテナ6を介して取り付けられている。
【0025】
上プレート3は、昇降シリンダ7の下端部に固定されている。昇降シリンダ7の中心には、昇降ロッド8が配置されている。昇降ロッド8の下端部には、上プレート3の下方に配置される上プラテン4が固定されている。昇降シリンダ7と昇降ロッド8とはそれぞれ、図示しない駆動機構によって昇降するようになっている。上プラテン4には、例えばオイルなどの熱交換媒体が流動する流路4aが形成され、熱交換媒体によって温調できるようになっている。
【0026】
下プラテン5には、上プラテン4と同様に、例えばオイルなどの熱交換媒体が流動する流路5aが形成され、熱交換媒体によって温調できるようになっている。タイヤ加硫用金型2は、熱交換媒体の温度を調整することにより上プラテン4及び下プラテン5を介して所望の加硫温度に加熱されるようになっている。
【0027】
下プラテン5の中心には、ブラダユニット9が配置されている。ブラダユニット9は、昇降可能な支軸10に固定した上クランプ11及び下クランプ12にブラダ13を取り付けたものである。上クランプ11、下クランプ12及びブラダ13によって囲まれた空間内には、図示しない給排気装置によって空気が供給及び排出されるようになっている。ブラダ13は、空気が供給されて外周側に膨らみ、グリーンタイヤGTを内側から支持する。
【0028】
コンテナ6は、セグメント14、ジャケットリング15、上コンテナプレート16及び下コンテナプレート17によって構成されている。
【0029】
セグメント14は、後述するタイヤ加硫用金型2の複数のセクタ30をそれぞれ図示しない締結ボルトによって固定するものであり、タイヤ周方向に沿って環状に配置される複数のセグメント14、本実施形態では7個のセグメント14によって構成されている。
【0030】
セグメント14のタイヤ径方向内面は、セクタ30のタイヤ径方向外面に沿って形成され、セグメント14のタイヤ径方向外面は、下側に向かうにつれてタイヤ径方向外側に徐々に傾斜する傾斜面である外周側円錐面14aによって構成されている。セグメント14はそれぞれ、上スライド18にタイヤ径方向に往復移動可能に支持されている。
【0031】
ジャケットリング15は、中空円筒状に形成され、上端部が上プレート3に固定されている。これにより、ジャケットリング15は、昇降シリンダ7の昇降動作に従って昇降する。ジャケットリング15の内面は、下側に向かうにつれてタイヤ径方向外側に徐々に傾斜する傾斜面である内周側円錐面15aによって構成されている。
【0032】
ジャケットリング15の内周側円錐面15aは、セグメント14の外周側円錐面14aに対応して形成されてセグメント14の外周側円錐面14aに沿って移動可能に形成されている。ジャケットリング15の内周側円錐面15aとセグメント14の外周側円錐面14aとは、例えばほぞと蟻溝のような構成によって互いに離れないように形成されている。
【0033】
これにより、ジャケットリング15が降下されると、内周側円錐面15aがセグメント14の外周側円錐面14aを押圧し、径方向外側に位置するセグメント14が径方向内側に環状に連なった状態に移動される。また、ジャケットリング15が上昇されると、径方向内側に位置するセグメント14が径方向外側に移動される。
【0034】
上コンテナプレート16は、外周側の下面に支持体としての上スライド18が固定されると共に内周側の下面に後述する上側のサイドプレート21が固定されている。上コンテナプレート16は、上プラテン4の下面に固定されている。これにより、昇降ロッド8が昇降すれば、上プラテン4及び上コンテナプレート16と共に、上側のサイドプレート21、セグメント14及びセクタ30が昇降される。
【0035】
下コンテナプレート17は、外周側の上面に下スライド19が固定されると共に内周側の上面に後述する下側のサイドプレート21が固定されている。下スライド19には、型閉じ時にセグメント14が載置され、下スライド19は、セグメント14をタイヤ径方向に移動可能に支持する。下コンテナプレート17は、下プラテン5の外周側の上面に固定されている。
【0036】
タイヤ加硫用金型2は、タイヤ周方向に沿って環状に配置されて空気入りタイヤのトレッド部及びショルダ部を成形するタイヤ成形面を有する複数のセクタ30と、複数のセクタ30のタイヤ径方向内側に配置されて空気入りタイヤのサイドウォール部を成形するタイヤ成形面を有する上下一対のサイドプレート21とを備えている。
【0037】
上下一対のサイドプレート21はそれぞれ、環状に形成されている。上下一対のサイドプレート21のタイヤ径方向内側にはそれぞれ、空気入りタイヤのビード部を成形するタイヤ成形面を有する上下一対のビードリング23が固定されている。
【0038】
上側のサイドプレート21は、上コンテナプレート16に固定されて昇降ロッド8の昇降動作に従って昇降される。上側のサイドプレート21は、降下される際にビードリング23によってグリーンタイヤGTのビード部を押さえるようになっている。上側のサイドプレート21のタイヤ成形面と上側のビードリング23のタイヤ成形面とによって、空気入りタイヤの一方のサイドウォール部とビード部とが成形される。
【0039】
下側のサイドプレート21は、下コンテナプレート17に固定されている。下側のサイドプレート21のタイヤ成形面と下側のビードリング23のタイヤ成形面とによって空気入りタイヤの他方のサイドウォール部とビード部とが成形される。
【0040】
図2は、タイヤ加硫用金型の型閉じ動作を示す概略説明図である。タイヤ加硫用金型20を装着した加硫成形機1によってグリーンタイヤGTを加硫成形して空気入りタイヤを製造する際には先ず、
図2(a)に示すように、タイヤ加硫用金型20の型開き状態において、グリーンタイヤGTの軸心方向が上下方向になるようにグリーンタイヤGTが下側のサイドプレート21に載置される。このとき、グリーンタイヤGTの下側に位置するビード部が下側のビードリング23に位置決めされる。
【0041】
次に、
図2(b)に示すように、ブラダ13内に空気が供給されてブラダ13が膨張され、ブラダ13の外面にグリーンタイヤGTの内面が保持される。これにより、グリーンタイヤGTは、下側のビードリング23とブラダ13とによって支持されて下側のサイドプレート21とは非接触状態にされる。
【0042】
そして、図示しない駆動装置を駆動することにより、昇降ロッド8及び昇降シリンダ7を降下させて型閉じ動作が開始される。昇降ロッド8及び昇降シリンダ7が降下されると、
図2(c)に示すように上側のビードリング23がグリーンタイヤGTの上側に位置するビード部に当接され、
図2(d)に示すように上側のビードリング23によってグリーンタイヤGTが変形された後に、上側のサイドプレート21がグリーンタイヤGTに当接される。
【0043】
図2(e)に示すように、上側のサイドプレート21がグリーンタイヤGTに当接してから型閉じを完了する所定の型閉じ完了位置で、昇降ロッド8の降下動作が停止されて上側のサイドプレート21の降下が停止される。上側のサイドプレート21が型閉じ完了位置まで降下されることによって、グリーンタイヤGTが上側のサイドプレート21と下側のサイドプレート22とによって挟持される。
【0044】
上側のサイドプレート21が型閉じ完了位置まで降下した後も昇降シリンダ7による降下が行われ、上プレート3と共にジャケットリング15が下側へ移動される。ジャケットリング15が下側へ移動されるとき、内周側円錐面15aがセグメント14の外周側円錐面14aを押圧してセグメント14に固定されたセクタ30が径方向内側に移動される。
【0045】
図2(f)に示すように、タイヤ周方向に配置される複数のセクタ30がそれぞれタイヤ周方向に隣接するセクタ30と合わせられて複数のセクタ30が環状に形成されると共に、複数のセクタ30がそれぞれ上下一対のサイドプレート21に合わせられると、昇降シリンダ7による降下が終了されて型閉じ動作が終了される。
【0046】
このとき、グリーンタイヤGTは、外面が上下のサイドプレート21及びセクタ30によって押圧されて内面がブラダ13によって押圧された状態となる。上プラテン4及び下プラテン5には常時、グリーンタイヤGTを所定の加硫温度で加硫できるように温調された熱交換媒体が流動されている。これにより、グリーンタイヤGTが加硫成形されて空気入りタイヤが製造される。
【0047】
次に、本実施形態に係るタイヤ加硫用金型についてさらに説明する。
図3は、タイヤ加硫用金型のセクタの斜視図、
図4は、
図3におけるY4-Y4線に沿ったセクタの断面図である。タイヤ加硫用金型2の複数のセクタ30はそれぞれ同様に形成されている。
図3及び
図4に示すように、セクタ30は、タイヤ周方向に直交する方向に延びるタイヤ周方向両側の端面31が隣接するセクタ30との合わせ面とされて型閉じ時に隣接するセクタ30に当接して合わせられる。
【0048】
セクタ30は、タイヤ径方向内側の端面32におけるタイヤ幅方向中央側に空気入りタイヤのトレッド部及びショルダ部を成形するタイヤ成形面33を有すると共に、タイヤ径方向内側の端面32におけるタイヤ幅方向外側にサイドプレート21との合わせ面34を有している。
【0049】
セクタ30のタイヤ成形面33は、タイヤ幅方向中央側がタイヤ幅方向外側に比してタイヤ径方向外側に膨出するように設けられ、タイヤ幅方向中央側及びタイヤ幅方向外側がそれぞれトレッド部及びショルダ部の形状に対応して形成されている。セクタ30のタイヤ成形面33には、空気入りタイヤのタイヤ周方向に延びる主溝を形成する複数の骨部33a、本実施形態では4つの骨部33aがタイヤ径方向内側に断面略矩形状に突出するように設けられている。
【0050】
セクタ30では、タイヤ径方向内側の端面32におけるタイヤ幅方向外側であるサイドプレート21との合わせ面34がタイヤ周方向に略円弧状に形成されている。セクタ30では、サイドプレート21との合わせ面34におけるタイヤ幅方向内側であるタイヤ成形面側の所定領域が合わせ面構成部材40によって構成されている。
【0051】
合わせ面構成部材40は、タイヤ周方向に円弧状に形成されると共にタイヤ周方向に直交する断面において略矩形状に形成されている。合わせ面構成部材40は、セクタ30に合わせ面構成部材40に対応して窪んで形成された取付凹部35に配置されている。
【0052】
図4に示すように、セクタ30には、締結部材としての締結ボルトB1をタイヤ径方向外側から挿入するボルト挿通穴36が設けられている。ボルト挿通穴36のタイヤ径方向外側には締結ボルトB1の頭部を収容するボルト収容穴37が設けられている。合わせ面構成部材40には、タイヤ径方向外面にセクタ30のボルト挿通穴36に対応してネジ孔41が設けられている。
【0053】
合わせ面構成部材40は、セクタ30のボルト挿通穴36を通じて締結ボルトB1をネジ孔41に螺合させることによりセクタ30に交換可能に取り付けられている。合わせ面構成部材40は、セクタ30に交換部品として取り外し可能に取り付けられている。本実施形態では、合わせ面構成部材40は、3つの締結ボルトB1を用いてセクタ30に取り付けられているが、1つ以上の締結ボルトを用いて、好ましくは2つ以上の締結ボルトを用いてセクタ30に交換可能に取り付けられる。
【0054】
セクタ30では、ボルト挿通穴36に雌ネジが形成され、該雌ネジに略円筒状に形成されたエンザート45が装着されている。エンザート45は、外周に雄ネジが設けられると共に内周に雌ネジが設けられ、セクタ30より硬度の高い材料から形成されている。
【0055】
エンザート45は、ボルト挿通穴36の雌ネジに螺合されてボルト挿通穴36に取り付けられている。締結ボルトB1は、エンザート45の雌ネジに螺合された状態でセクタ30のボルト挿通穴36を通じてネジ孔41に螺合される。
【0056】
図4では、セクタ30に取り付けられて上側のサイドプレート21との合わせ面34におけるタイヤ幅方向内側であるタイヤ成形面側を構成する合わせ面構成部材40について示しているが、下側のサイドプレート21との合わせ面34におけるタイヤ幅方向内側であるタイヤ成形面側を構成する合わせ面構成部材についても同様に構成されている。
【0057】
タイヤ加硫用金型2では、セクタ30に交換可能に取り付けられる合わせ面構成部材40は、タイヤ径方向の大きさD1が、例えば15~60mmに設定され、タイヤ幅方向の大きさH1が、例えば5~30mmに設定される。合わせ面構成部材40のタイヤ径方向の大きさD1を、例えばセクタ30のタイヤ径方向の大きさの15~60%に設定するようにしてもよい。
【0058】
セクタ30は、Al-Mg系アルミニウム合金やAl-Si-Mg系アルミニウム合金などのアルミニウム系材料から形成され、セクタ30の弾性係数は、例えば67~74GPa程度に設定されている。合わせ面構成部材40は、機械構造用炭素鋼(SC材)などの鉄系材料から形成され、合わせ面構成部材40の弾性係数は、例えば210GPa程度に設定されている。合わせ面構成部材40は、セクタ30より弾性係数の高い材料から形成されている。エンザート45は、ステンレス鋼などのセクタ30より硬度の高い材料から形成されている。
【0059】
本実施形態では、タイヤ加硫用金型2の複数のセクタ30がそれぞれ同様に形成されてセクタ30の合わせ面34におけるタイヤ成形面側が交換可能な合わせ面構成部材40によって構成されているが、少なくとも1つのセクタ30に、該セクタ30の合わせ面34におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材を交換可能に取り付けるようにすることも可能である。
【0060】
このように、本実施形態に係るタイヤ加硫用金型2は、タイヤ周方向に沿って環状に配置されると共にタイヤ径方向に移動可能に構成される複数のセクタ30を備え、複数のセクタ30のうち少なくとも1つのセクタ30に、セクタ30の合わせ面34におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材40が交換可能に取り付けられている。
【0061】
これにより、複数のセクタ30のうち少なくとも1つのセクタ30の合わせ面34におけるタイヤ成形面側に摩耗が発生した場合においても容易に新しい合わせ面構成部材40に交換することができるので、金型メンテナンスの作業性を向上させると共にセクタ30の合わせ面34の摩耗による成形不良の発生を抑制することができる。
【0062】
また、合わせ面構成部材40は、セクタ30より弾性係数の高い材料から形成されている。これにより、合わせ面構成部材40がセクタ30と同一材料から形成される場合に比して、セクタ30の合わせ面34におけるタイヤ成形面側に摩耗が発生することを抑制することができるので、合わせ面構成部材40の交換頻度を低下させて生産性の向上を図ることができる。
【0063】
セクタ30をアルミニウム系材料から形成し、合わせ面構成部材40を鉄系材料から形成する場合、セクタ30の合わせ面34におけるタイヤ成形面側を合わせ面構成部材40によって構成することで、重量の増加を抑制して作業性が低下することを抑制することができる。
【0064】
また、タイヤ加硫用金型2は、複数のセクタ30のタイヤ径方向内側に配置されるサイドプレート21を備え、合わせ面構成部材40は、サイドプレート21との合わせ面34におけるタイヤ成形面側を構成する。これにより、セクタ30は、摩耗が発生し易いサイドプレート21との合わせ面34におけるタイヤ成形面側が合わせ面構成部材40によって構成されるので、金型メンテナンスの作業性向上と成形不良発生抑制とを有効に図ることができる。
【0065】
また、合わせ面構成部材40は、セクタ30のタイヤ径方向外側から挿入される締結部材B1を用いてセクタ30に取り付けられている。これにより、合わせ面側から締結部材が取り付けられる場合に比して、セクタ30の合わせ面を精度良く形成することができ、グリーンタイヤGTを精度良く加硫成形することができる。
【0066】
本実施形態では、合わせ面構成部材40は、セクタ30より弾性係数の高い材料から形成されているが、セクタ30と同一材料から形成するようにしてもよい。
【0067】
かかる場合、合わせ面構成部材40がセクタ30と同一材料から形成されていない場合に比して、加硫成形時におけるセクタ30と合わせ面構成部材40の熱膨張による寸法変化を等しくすることができるので、グリーンタイヤGTを精度良く加硫成形することができる。
【0068】
図5は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタの変形例の断面図である。
図5では、セクタの変形例を、
図4に示すセクタ30の断面に対応する断面で示している。
図5に示すように、セクタ30´に交換可能に取り付けられる合わせ面構成部材50を、摩耗が発生し易い隣接するセクタ30´との合わせ面側であるセクタ30´のタイヤ周方向両側ではセクタ30´のタイヤ周方向中央側に比してタイヤ径方向の大きさを大きく形成することも可能である。かかる場合についても、セクタ30´に形成される取付凹部55は、合わせ面構成部材50に対応して形成される。
【0069】
図6は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタの別の変形例の斜視図である。
図6に示すように、セクタ30´´に交換可能に取り付けられる合わせ面構成部材60を、摩耗が発生し易い隣接するセクタ30´´との合わせ面側であるセクタ30´´のタイヤ周方向両側のみに設けて、タイヤ周方向中央側に設けないようにすることも可能である。
【0070】
かかる場合についても、セクタ30´´に形成される取付凹部65は、合わせ面構成部材60に対応して形成され、合わせ面構成部材60はそれぞれ、セクタ30´´に設けられたボルト挿通穴にタイヤ径方向外側から挿入された締結ボルトによってセクタ30´´に交換可能に取り付けられる。
【0071】
図7は、本発明の第2実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタの斜視図、
図8は、
図7におけるY8-Y8線に沿ったセクタの断面図である。第2実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタは、第1実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタと、隣接するセクタとの合わせ面を構成する合わせ面構成部材がさらに取り付けられること以外は同様であるので、同様の構成については説明を省略する。
【0072】
第2実施形態に係るタイヤ加硫用金型のセクタ70についても、サイドプレート21との合わせ面34におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材40が交換可能に取り付けられている。
【0073】
セクタ70ではまた、隣接するセクタ30との合わせ面31におけるタイヤ径方向内側であるタイヤ成形面側の所定領域が合わせ面構成部材80によって構成されている。合わせ面構成部材80は、タイヤ成形面33に設けられる骨部33aを含むタイヤ幅方向中央側におけるタイヤ成形面側を構成する。合わせ面構成部材80は、タイヤ幅方向に骨部33aより外側に延びると共にタイヤ幅方向に直交する断面において略矩形状に形成されている。
【0074】
合わせ面構成部材80は、タイヤ成形面33より径方向外側においてセクタ70の周方向中央側に略矩形状に突出して延びる延設部82を備え、タイヤ幅方向から見て断面略L字状に形成されている。合わせ面構成部材80は、セクタ70に合わせ面構成部材80に対応して窪んで形成された取付凹部75に配置されている。
【0075】
図8に示すように、セクタ70には、締結部材としての締結ボルトB2をタイヤ径方向外側から挿入するボルト挿通穴76が設けられている。ボルト挿通穴76のタイヤ径方向外側には、締結ボルトB2の頭部を収容するボルト収容穴77が設けられている。合わせ面構成部材80には、延設部82におけるタイヤ径方向外面にセクタ70のボルト挿通穴76に対応してネジ孔81が設けられている。
【0076】
合わせ面構成部材80は、セクタ70のボルト挿通穴76を通じて締結ボルトB2をネジ孔81に螺合させることによりセクタ70に交換可能に取り付けられている。合わせ面構成部材80は、1つ以上の締結ボルトを用いて、好ましくは2つ以上の締結ボルトを用いてセクタ70に交換可能に取り付けられる。
【0077】
セクタ70についても、ボルト挿通穴76に雌ネジが形成され、該雌ネジに略円筒状に形成されたエンザート85が装着されている。エンザート85は、外周に雄ネジが設けられると共に内周に雌ネジが設けられ、セクタ70より硬度の高い材料から形成されている。
【0078】
エンザート85は、ボルト挿通穴76の雌ネジに螺合されてセクタ70のボルト挿通穴76に取り付けられている。締結ボルトB2は、エンザート85の雌ネジに螺合された状態でセクタ70のボルト挿通穴76を通じてネジ孔81に螺合される。
【0079】
図8では、セクタ70に取り付けられてタイヤ周方向一方側に隣接するセクタ70との合わせ面31におけるタイヤ成形面側を構成する合わせ面構成部材80について示しているが、タイヤ周方向他方側に隣接するセクタとの合わせ面におけるタイヤ成形面側を構成する合わせ面構成部材80についても同様に構成されている。
【0080】
タイヤ加硫用金型2では、セクタ70に交換可能に取り付けられる合わせ面構成部材80は、タイヤ径方向の大きさD2が、例えば15~70mmに設定され、タイヤ周方向の大きさW2が、例えば5~20mmに設定される。合わせ面構成部材80のタイヤ径方向の大きさD2を、例えばセクタ30のタイヤ径方向の大きさの15~70%に設定するようにしてよい。
【0081】
セクタ70は、Al-Mg系アルミニウム合金やAl-Si-Mg系アルミニウム合金などのアルミニウム系材料から形成され、セクタ70の弾性係数は、例えば67~74GPa程度に設定されている。合わせ面構成部材80は、機械構造用炭素鋼(SC材)などの鉄系材料から形成され、合わせ面構成部材80の弾性係数は、例えば210GPa程度に設定されている。合わせ面構成部材80は、セクタ70より弾性係数の高い材料から形成されている。エンザート85は、ステンレス鋼などのセクタ70より硬度の高い材料から形成されている。なお、合わせ面構成部材80を、セクタ70と同一材料から形成するようにしてもよい。
【0082】
本実施形態では、タイヤ加硫用金型2の複数のセクタ70がそれぞれ同様に形成されてセクタ70の合わせ面31におけるタイヤ成形面側が交換可能な合わせ面構成部材80によって構成されているが、少なくとも1つのセクタ70に、該セクタ70の合わせ面31におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材を交換可能に取り付けるようにすることも可能である。
【0083】
本実施形態では、セクタ70に、サイドプレート21との合わせ面34を構成する合わせ面構成部材40と隣接するセクタ70との合わせ面31を構成する合わせ面構成部材80とが交換可能に取り付けられているが、隣接するセクタ70との合わせ面31を構成する合わせ面構成部材80のみが取り付けられるようにすることも可能である。
【0084】
本実施形態では、セクタ70に交換可能に取り付けられて隣接するセクタ70との合わせ面31を構成する合わせ面構成部材80は、タイヤ幅方向中央側にのみ設けられているが、
図7の二点鎖線L1で示すように、タイヤ幅方向中央側からタイヤ幅方向両側に亘ってタイヤ幅方向全体に設けるようにすることも可能である。
【0085】
このように、本実施形態に係るタイヤ加硫用金型2についても、タイヤ周方向に沿って環状に配置されると共にタイヤ径方向に移動可能に構成される複数のセクタ30、70を備え、複数のセクタ30、70のうち少なくとも1つのセクタ30、70に、セクタ30、70の合わせ面34、31におけるタイヤ成形面側の所定領域を構成する合わせ面構成部材40、80が交換可能に取り付けられている。
【0086】
これにより、複数のセクタ30、70のうち少なくとも1つのセクタ30、70の合わせ面34、31におけるタイヤ成形面側に摩耗が発生した場合においても容易に新しい合わせ面構成部材40、80に交換することができるので、金型メンテナンスの作業性を向上させると共にセクタ30、70の合わせ面34、31の摩耗による成形不良の発生を抑制することができる。
【0087】
セクタ70は、タイヤ成形面33にタイヤ周方向に延びる主溝を形成する骨部33aを備え、合わせ面構成部材80は、タイヤ周方向に隣接するセクタ70との合わせ面31における骨部33aを含むタイヤ成形面側を構成する。これにより、セクタ70は、摩耗が発生し易い隣接するセクタ70との合わせ面31における骨部33aを含むタイヤ成形面側が合わせ面構成部材80によって構成されるので、金型メンテナンスの作業性向上と成形不良発生抑制を有効に図ることができる。
【0088】
また、合わせ面構成部材80は、セクタ70のタイヤ径方向外側から挿入される締結部材B2を用いてセクタ70に取り付けられている。これにより、合わせ面側から締結部材が取り付けられる場合に比して、セクタ70の合わせ面を精度良く形成することができ、グリーンタイヤGTを精度良く加硫成形することができる。
【0089】
前述した実施形態では、セクタ30、70は、セクタ30、70の合わせ面34、31におけるタイヤ成形面側が合わせ面構成部材40、80によって交換可能に構成されてセクタ30、70の合わせ面34、31における反タイヤ成形面側がセクタ本体部によって構成されているが、セクタ30、70の合わせ面34、31全体を合わせ面構成部材によって交換可能に構成することも可能である。
【0090】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 加硫成形機
2 タイヤ加硫用金型
18 上スライド
21 サイドプレート
30,30´,30´´,70 セクタ
31 セクタとの合わせ面
33 タイヤ成形面
33a 骨部
34 サイドプレートとの合わせ面
40,80 合わせ面構成部材
B1、B2 締結ボルト
GT グリーンタイヤ