(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】防振構造体
(51)【国際特許分類】
F16F 1/38 20060101AFI20220810BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20220810BHJP
B62D 24/02 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
F16F1/38 S
F16B21/06 A
B62D24/02 A
(21)【出願番号】P 2018238810
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】八幡 祐樹
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0101360(US,A1)
【文献】実開平07-041090(JP,U)
【文献】実開平05-077637(JP,U)
【文献】特開2015-064012(JP,A)
【文献】実開昭63-113420(JP,U)
【文献】実開昭61-197336(JP,U)
【文献】特開平04-224329(JP,A)
【文献】特開平07-004458(JP,A)
【文献】特開2015-175400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/38- 1/393
F16B 21/06-21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、
前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、
該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、
該係止爪は該アウタ筒部材の該装着孔からの抜け出し方向に突出する返し部を有していると共に、該ホルダの該引掛部には該係止爪の該返し部へ入り込んで該係止爪の該引掛部からの径方向への外れを規制する規制突起が設けられており、
該規制突起が該返し部へ入り込むに際して該返し部が該規制突起を乗り越えるのに必要とされる該アウタ筒部材の該装着孔に対する嵌め入れ方向での押込移動を圧縮変形によって許容する規制ゴムが設けられている
と共に、
該規制ゴムが該アウタ筒部材と該ホルダの間に圧縮状態で設けられており、
該アウタ筒部材には、前記係止片が軸方向一方に向かって延びて形成されていると共に、軸方向他方の端部において外周へ広がるフランジ状部が設けられており、該フランジ状部が該規制ゴムを圧縮状態で挟んで該ホルダに軸方向で重ね合わされており、且つ、
該フランジ状部を該アウタ筒部材の軸方向に貫通する貫通孔が形成されていると共に、前記係止爪が該係止片において外周側へ突出しており、該係止爪が該貫通孔と軸方向で重なる位置に設けられている防振構造体。
【請求項2】
本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、
前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、
該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、
該係止爪は該アウタ筒部材の該装着孔からの抜け出し方向に突出する返し部を有していると共に、該ホルダの該引掛部には該係止爪の該返し部へ入り込んで該係止爪の該引掛部からの径方向への外れを規制する規制突起が設けられており、
該規制突起が該返し部へ入り込むに際して該返し部が該規制突起を乗り越えるのに必要とされる該アウタ筒部材の該装着孔に対する嵌め入れ方向での押込移動を圧縮変形によって許容する規制ゴムが設けられて
おり、且つ、
前記係止片において前記係止爪が内周へ向けて突出していると共に、前記本体ゴム弾性体には軸方向に貫通するすぐり孔が形成されており、該係止爪が該すぐり孔と軸方向で重なる位置に設けられている防振構造体。
【請求項3】
前記規制ゴムが前記アウタ筒部材と前記ホルダの間に圧縮状態で設けられている請求項
2に記載の防振構造体。
【請求項4】
前記アウタ筒部材には、前記係止片が軸方向一方に向かって延びて形成されていると共に、軸方向他方の端部において外周へ広がるフランジ状部が設けられており、該フランジ状部が前記規制ゴムを圧縮状態で挟んで前記ホルダに軸方向で重ね合わされている請求項
3に記載の防振構造体。
【請求項5】
前記ホルダが前記装着孔の開口部分において内周へ突出する内方突出部を備えており、該内方突出部を貫通する係止孔が設けられていると共に、前記係止爪を備える前記係止片の先端部分が軸方向に延びて該係止孔に差し入れられており、該係止爪と該ホルダの前記引掛部との係止部分が該係止孔内に位置している請求項1~
4の何れか一項に記載の防振構造体。
【請求項6】
前記内方突出部が前記装着孔の全周に亘って設けられている請求項
5に記載の防振構造体。
【請求項7】
前記係止片の先端部分が前記係止孔内に位置している請求項
5又は
6に記載の防振構造体。
【請求項8】
本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、
前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、
該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、
該ホルダが該装着孔の開口部分において内周へ突出する内方突出部を備えていると共に、該内方突出部を軸方向に貫通する係止孔が設けられて、該係止孔に該係止片が差し入れられており、該係止爪と該引掛部の係止部分が該係止孔内に位置している防振構造体。
【請求項9】
前記内方突出部が前記装着孔の全周に亘って設けられている請求項
8に記載の防振構造体。
【請求項10】
前記係止爪を備える前記係止片の先端部分が前記係止孔内に位置している請求項
8又は
9に記載の防振構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型防振装置がホルダの装着孔に取り付けられた防振構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンマウントなどに用いられる筒型防振装置が知られている。筒型防振装置としては、例えば、実開平7-41090号公報(特許文献1)に開示されたボディーマウントがある。このボディーマウントは、外筒体の内周に筒状の弾性部が設けられた構造を有している。
【0003】
ところで、特許文献1のボディーマウントは、外筒体がフレーム構造体の筒状部に圧入されることにより、フレーム構造体に取り付けられる。更に、特許文献1には、外筒体に設けられた係合部が筒状部の側壁に係合されることで、外筒体と筒状部の取り付け強度を確保することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が特許文献1の構造について更に検討を加えたところ、係合部への外力の作用に際して、係合部の筒状部に対する係合が解除される場合があると考えられ、外筒体の筒状部からの抜け出しが未だ十分に防止されないおそれもあるという、新規な課題が明らかとなった。
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、アウタ筒部材をホルダに対して安定した装着状態で保持することができる、新規な構造の防振構造体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、該係止爪は該アウタ筒部材の該装着孔からの抜け出し方向に突出する返し部を有していると共に、該ホルダの該引掛部には該係止爪の該返し部へ入り込んで該係止爪の該引掛部からの径方向への外れを規制する規制突起が設けられており、該規制突起が該返し部へ入り込むに際して該返し部が該規制突起を乗り越えるのに必要とされる該アウタ筒部材の該装着孔に対する嵌め入れ方向での押込移動を圧縮変形によって許容する規制ゴムが設けられていると共に、該規制ゴムが該アウタ筒部材と該ホルダの間に圧縮状態で設けられており、該アウタ筒部材には、前記係止片が軸方向一方に向かって延びて形成されていると共に、軸方向他方の端部において外周へ広がるフランジ状部が設けられており、該フランジ状部が該規制ゴムを圧縮状態で挟んで該ホルダに軸方向で重ね合わされており、且つ、該フランジ状部を該アウタ筒部材の軸方向に貫通する貫通孔が形成されていると共に、前記係止爪が該係止片において外周側へ突出しており、該係止爪が該貫通孔と軸方向で重なる位置に設けられているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、アウタ筒部材に設けられた係止片の係止爪が、ホルダに設けられた引掛部に係止されていることにより、アウタ筒部材がホルダに対して軸方向で抜け出し難い。
【0010】
さらに、係止爪の引掛部からの径方向への外れが、係止爪の返し部と引掛部の規制突起との径方向での係止によって規制されることから、係止爪と引掛部の係止によるアウタ筒部材のホルダからの抜けに対する抗力を、安定して得ることができる。
【0011】
更にまた、筒型防振装置のアウタ筒部材をホルダに装着する際に、規制ゴムを圧縮変形させることにより、アウタ筒部材のホルダに対する嵌め入れ方向での押込移動によって、返し部が規制突起を乗り越えることができる。これにより、規制突起を返し部に入り込ませて、係止爪の引掛部からの径方向への外れを規制することができる。
【0012】
しかも、係止爪の引掛部に対する径方向への移動に際して、返し部が規制突起を乗り越えようとすると、規制ゴムが圧縮変形することから、返し部の規制突起に対する乗り越えが規制ゴムの弾性によって規制される。これにより、係止爪の引掛部からの径方向への外れが生じ難くされて、係止爪と引掛部の係止状態が安定して保持される。
【0013】
加えて、本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、例えば、係止爪のフランジ状部との対向面を、貫通孔の形成部分に軸方向へ延びて配される金型によって成形することができる。これにより、アウタ筒部材を成形した後の金型の取外しに際して、係止爪のフランジ状部との対向面を成形した金型を、係止爪に対して軸方向で取り外すことができる。それ故、金型が係止爪の返し部に引っ掛かることなく、金型を係止爪から取外し可能とされる。
【0014】
第二の態様は、本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、該係止爪は該アウタ筒部材の該装着孔からの抜け出し方向に突出する返し部を有していると共に、該ホルダの該引掛部には該係止爪の該返し部へ入り込んで該係止爪の該引掛部からの径方向への外れを規制する規制突起が設けられており、該規制突起が該返し部へ入り込むに際して該返し部が該規制突起を乗り越えるのに必要とされる該アウタ筒部材の該装着孔に対する嵌め入れ方向での押込移動を圧縮変形によって許容する規制ゴムが設けられており、且つ、前記係止片において前記係止爪が内周へ向けて突出していると共に、前記本体ゴム弾性体には軸方向に貫通するすぐり孔が形成されており、該係止爪が該すぐり孔と軸方向で重なる位置に設けられているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、上記[0009]~[0012]に記載の効果に加えて、アウタ筒部材の係止爪とホルダの引掛部との係止状態が安定して保持されて、アウタ筒部材のホルダからの抜けが防止される。即ち、内周へ突出する係止爪と引掛部との係止は、外周側へ向けた軸直角方向の力が係止片に作用する場合に解除され得るが、筒型防振装置の内周部分には一般的に防振対象部材が取り付けられることから、他部材の干渉などに起因する力が、係止片に対して外周側へ向けて作用し難い。また、係止片において係止爪を内周へ突出するように形成しても、アウタ筒部材の内周に本体ゴム弾性体を形成する際に、本体ゴム弾性体と係止爪の軸方向間のスペースを、すぐり孔に挿通される金型によって形成することができる。それ故、係止片において係止爪が内周へ突出するように形成されていても、本体ゴム弾性体を簡単な金型構造によって成形することができる。
【0016】
第三の態様は、前記第二の態様に記載された防振構造体において、前記規制ゴムが前記アウタ筒部材と前記ホルダの間に圧縮状態で設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、圧縮状態とされた規制ゴムの弾性によって、アウタ筒部材がホルダに対して抜け出し方向に付勢されていることから、アウタ筒部材の係止爪とホルダの引掛部が相互に押し付けられて、それら係止爪と引掛部の係止による抜け抗力を効果的に得ることができる。
【0018】
第四の態様は、前記第三の態様に記載された防振構造体であって、前記アウタ筒部材には、前記係止片が軸方向一方に向かって延びて形成されていると共に、軸方向他方の端部において外周へ広がるフランジ状部が設けられており、該フランジ状部が前記規制ゴムを圧縮状態で挟んで前記ホルダに軸方向で重ね合わされているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、アウタ筒部材のフランジ状部とホルダとの軸方向の重ね合わせ面間に、規制ゴムを圧縮状態で設けることによって、係止爪と引掛部を押し付ける軸方向の付勢力を、アウタ筒部材とホルダの間に作用させることができる。
【0023】
第五の態様は、前記第一~第四の何れか1つの態様に記載された防振構造体において、前記ホルダが前記装着孔の開口部分において内周へ突出する内方突出部を備えており、該内方突出部を貫通する係止孔が設けられていると共に、前記係止爪を備える前記係止片の先端部分が軸方向に延びて該係止孔に差し入れられており、該係止爪と該ホルダの前記引掛部との係止部分が該係止孔内に位置しているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、ホルダの内方突出部に設けられた係止孔に係止片が差し入れられて、係止爪がホルダの引掛部に対して係止孔内で係止されていることから、係止爪と引掛部の係止部分に対する外力の作用が防止される。
【0025】
第六の態様は、前記第五の態様に記載された防振構造体において、前記内方突出部が前記装着孔の全周に亘って設けられているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、ホルダの装着孔の全周に亘って内方突出部を設けることによって、例えば、本体ゴム弾性体の弾性変形量を制限するストッパを、内方突出部を利用して構成することも可能である。その場合に、内方突出部が全周に設けられていることで、ストッパの受圧面積を大きく確保することができる。
【0027】
第七の態様は、前記第五又は第六の態様に記載された防振構造体において、前記係止片の軸方向先端部が前記係止孔内に位置しているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、係止爪と引掛部の係止部分だけでなく、係止片の先端部分が係止孔から突出せずに係止孔内に収容されている。これにより、係止片に対して外力がより作用し難くなって、係止爪とホルダの軸方向での係止が一層解除され難くなる。すなわち、係止片の先端部分は、周囲が内方突出部によって囲まれていることで外力が作用し難くなっている。係止片の基端部分に対する外力の作用も、先端側がホルダの内方突出部によって覆われていることで防止される。
【0029】
第八の態様は、本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、該ホルダが該装着孔の開口部分において内周へ突出する内方突出部を備えていると共に、該内方突出部を軸方向に貫通する係止孔が設けられて、該係止孔に該係止片が差し入れられており、該係止爪と該引掛部の係止部分が該係止孔内に位置しているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、係止片の係止爪とホルダの引掛部が係止されていることにより、アウタ筒部材がホルダに対して軸方向で抜け難い。
【0031】
さらに、ホルダの内方突出部に設けられた係止孔に係止片が差し入れられており、係止爪が引掛部に対して係止孔内で係止されていることから、係止爪と引掛部の係止を解除する径方向の外力が、係止爪と引掛部の係止部分に作用し難い。
【0032】
第九の態様は、前記第八の態様に記載された防振構造体において、前記内方突出部が前記装着孔の全周に亘って設けられているものである。
【0033】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、ホルダの装着孔の全周に亘って内方突出部を設けることによって、例えば、本体ゴム弾性体の弾性変形量を制限するストッパを、内方突出部を利用して構成することもでき、その場合に、ストッパの受圧面積を大きく確保することができる。
【0034】
第十の態様は、前記第八又は第九の態様に記載された防振構造体において、前記係止爪を備える前記係止片の先端部分が前記係止孔内に位置しているものである。
【0035】
本態様に従う構造とされた防振構造体によれば、係止爪と引掛部の係止部分だけでなく、係止片の先端部分が係止孔から突出せずに係止孔内に収容されている。これにより、係止片に対して外力がより作用し難くなって、係止爪と引掛部の係止が一層解除され難くなる。すなわち、係止片の先端部分は、周囲が内方突出部によって囲まれていることで外力が作用し難くなっている。係止片の基端部分は、先端側がホルダの内方突出部によって覆われていることで外力が作用し難い。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、アウタ筒部材をホルダに対して安定した装着状態で保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての防振構造体を示す断面図であって、
図3のI-I断面に相当する図。
【
図2】
図1に示す防振構造体を構成する筒型防振装置の斜視図。
【
図4】
図1に示す防振構造体の要部を拡大して示す斜視図。
【
図5】
図1に示す防振構造体の要部を拡大して示す断面図であって、(a)は係止爪が係止孔へ挿入される途中の状態を、(b)は係止爪が引掛部を乗り越えた状態を、それぞれ示す。
【
図6】本発明の第二の実施形態としての防振構造体を示す断面図。
【
図7】本発明の別の一実施形態としての防振構造体の要部を示す断面図。
【
図8】本発明の第三の実施形態としての防振構造体を示す断面図。
【
図9】
図8に示す防振構造体を構成する筒型防振装置の斜視図。
【
図10】
図9に示す筒型防振装置を構成するアウタ筒部材の断面図であって、
図11のX-X断面に相当する図。
【
図12】
図8に示す防振構造体の要部を拡大して示す斜視図。
【
図13】本発明の第四の実施形態としての防振構造体を示す断面図。
【
図14】本発明の別の一実施形態としての防振構造体の要部を示す断面図。
【
図15】本発明のまた別の一実施形態としての防振構造体の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0039】
図1には、本発明の第一の実施形態としての防振構造体10が示されている。防振構造体10は、筒型防振装置12がホルダ14に装着された構造を有している。以下の説明において、上下方向とは、原則として
図1中の上下方向を言う。
【0040】
筒型防振装置12は、
図1~3に示すように、インナ軸部材16とアウタ筒部材18が本体ゴム弾性体20によって弾性連結された構造を有している。
【0041】
インナ軸部材16は、金属や硬質の合成樹脂などで形成されている。インナ軸部材16は、略円筒形状とされており、上下方向に直線的に延びている。
【0042】
アウタ筒部材18は、合成樹脂材料で形成された硬質の部材とされている。アウタ筒部材18は、例えば、ガラス繊維(グラスファイバー)や炭素繊維などを強化材とする繊維強化プラスチックが好適に採用される。アウタ筒部材18は、インナ軸部材16よりも大径の筒状とされている。アウタ筒部材18は、インナ軸部材16に比して薄肉とされて、径方向で変形し易くなっている。
【0043】
また、アウタ筒部材18の軸方向一方側(
図1中の上側)には、係止片22が設けられている。係止片22は、アウタ筒部材18の軸方向に延びる略板状とされており、アウタ筒部材18の軸方向端部から軸方向外側である上側に向けて突出している。係止片22は、厚さ方向であるアウタ筒部材18の径方向において撓み変形を許容されている。係止片22は、先端部分の厚さがアウタ筒部材18の厚さに比して薄くされており、先端部分において撓み変形がより有利に許容されている。本実施形態では、係止片22の基端の厚さがアウタ筒部材18の径方向の厚さと同じとされていると共に、先端に向けて薄肉となっている。また、係止片22における基端部分よりも薄肉とされた先端部分は、アウタ筒部材18の内周側となる内面24が、基端部分の内面と略同じ径方向位置で軸方向に延びていると共に、アウタ筒部材18の外周側となる外面26が、基端部分の外面、即ちアウタ筒部材18の外周面に対して内周側に位置している。
【0044】
本実施形態では、
図2に示すように、係止片22が4つ設けられている。それら4つの係止片22,22,22,22は、後述する本体ゴム弾性体20において一対のすぐり孔38,38が位置する径方向の両側に2つずつ設けられており、径方向の同じ側に設けられた2つの係止片22,22が周方向で近い位置に配置されていると共に、径方向の反対側に設けられた係止片22,22の周方向の距離が長くされている。
【0045】
係止片22は、突出先端部分に係止爪28を備えている。係止爪28は、
図1に示すように、係止片22の先端部分において、アウタ筒部材18の内周側へ向けて径方向に突出している。係止爪28は、略三角形断面を有しており、上面が突出先端に向けて下傾するガイド面30とされている。更に、係止爪28の下面には、下方に向けて突出する返し部32が設けられている。本実施形態の返し部32は、係止爪28の突出先端側に向けて次第に突出高さが大きくなっており、これによって、係止爪28の下面は、突出先端に向けて下傾する係止面34とされている。従って、係止爪28は、突出先端に向けて次第に上下方向の厚さが小さくなっている。
【0046】
アウタ筒部材18の軸方向他方の端部(
図1中の下端部)には、フランジ状部36が一体形成されている。フランジ状部36は、略円環板状とされており、アウタ筒部材18から外周へ広がっている。フランジ状部36は、アウタ筒部材18の軸直角方向に対して傾斜して広がっていてもよいが、本実施形態では略軸直角方向に広がっている。
【0047】
インナ軸部材16とアウタ筒部材18の間には、本体ゴム弾性体20が設けられている。本体ゴム弾性体20は、略円筒形状を有しており、内周面にインナ軸部材16が加硫接着されていると共に、外周面にアウタ筒部材18が加硫接着されている。本体ゴム弾性体20には、インナ軸部材16とアウタ筒部材18の間を軸方向に貫通する一対のすぐり孔38,38が形成されている。すぐり孔38は、周方向に延びる孔断面形状で軸方向に延びている。
【0048】
本体ゴム弾性体20には、ストッパゴム40が一体形成されている。ストッパゴム40は、アウタ筒部材18のフランジ状部36の下面に加硫接着されており、アウタ筒部材18から軸方向外側へ突出して設けられている。
【0049】
さらに、フランジ状部36の外周部分の上面には、規制ゴム42が設けられている。規制ゴム42は、薄肉の円環板状とされており、フランジ状部36の外周側を回り込んでストッパゴム40と一体形成されている。規制ゴム42の厚さは、係止爪28の返し部32の突出高さよりも大きくされていることが望ましい。
【0050】
なお、係止爪28は、
図3に示すように、何れもすぐり孔38と軸方向で重なる位置に設けられている。本実施形態では、1つのすぐり孔38に対して2つの係止爪28,28が軸方向で重なる位置に設けられている。これにより、本体ゴム弾性体20の成形に際して、図示しない金型のすぐり孔38を成形する部分によって係止爪28の係止面34に本体ゴム弾性体20が固着されないようにしながら、軸方向に取外し可能な簡単な金型構造を採用することができる。本実施形態では、本体ゴム弾性体20が係止片22に固着されないように、金型の分割位置などが設定されている。
【0051】
このような構造とされた筒型防振装置12は、ホルダ14に装着される。ホルダ14は、例えば、アウタ筒部材18と防振対象部材との間に介装されるブラケット、サブフレームや車両ボデー等における筒型防振装置12の装着部分などであって、装着孔44を有している。装着孔44は、アウタ筒部材18の外形に対応する孔断面形状を有している。
【0052】
さらに、ホルダ14は、装着孔44の軸方向一方の開口部分に突出する内方突出部46を備えている。内方突出部46は、径方向で内周側へ向けて突出しており、本実施形態では全周に亘って連続する内フランジ状とされている。内方突出部46には、軸方向に貫通する係止孔48が形成されている。係止孔48は、内方突出部46の周方向に延びる略四角形の孔断面形状を有している。係止孔48は、アウタ筒部材18の係止片22に対応する位置に4つが設けられている。
【0053】
内方突出部46には、係止孔48内に突出する引掛部50が設けられている。引掛部50は、係止孔48の下側開口部分に設けられており、内方突出部46の内周側に位置する係止孔48の側面から外周へ向けて突出している。係止孔48は、引掛部50が設けられた下側部分が、引掛部50よりも上側部分に比して、内方突出部46の径方向で幅狭とされている。なお、内方突出部46の外周側に位置する係止孔48の孔内面は、装着孔44の孔内面の軸方向延長上に広がっており、それら係止孔48の孔内面と装着孔44の孔内面が段差なく連続している。
【0054】
ホルダ14の引掛部50には、規制突起52が形成されている。規制突起52は、
図1に拡大して示すように、引掛部50の上面に突出しており、本実施形態では、引掛部50の突出先端側である外周側に向けて上方への突出寸法が次第に大きくなっている。規制突起52を備えた引掛部50の上面は、引掛部50の突出先端側に向けて、
図1中に一点鎖線で示す軸線に対して直交する平面に対して上傾する係止面54とされている。
【0055】
筒型防振装置12は、アウタ筒部材18がホルダ14の装着孔44に軸方向で嵌め入れられることによって、ホルダ14の装着孔44に装着されている。ホルダ14における装着孔44の下側の開口周縁部分に対して、アウタ筒部材18のフランジ状部36が規制ゴム42を介して重ね合わされていることにより、アウタ筒部材18のホルダ14に対する嵌め入れ方向での位置が設定される。規制ゴム42は、アウタ筒部材18のフランジ状部36とホルダ14との間に、軸方向に圧縮された状態で配されている。
【0056】
図中には示されていないが、インナ軸部材16の上端部に第一のストッパ部材を装着しても良い。第一のストッパ部材は、例えば、インナ軸部材16に固定される第一のプレートと、第一のプレートから下方へ突出する緩衝ゴムとを含んで構成される。そして、第一のプレートがホルダ14の内方突出部46に対して上側に対向配置されて、それら第一のプレートと内方突出部46が緩衝ゴムを介して当接することで、インナ軸部材16のアウタ筒部材18に対する下側への相対変位量が制限される。本実施形態では、内方突出部46が全周に亘って連続して設けられていることから、第一のストッパ部材に対する当接面積を大きく確保することが可能である。
【0057】
さらに、インナ軸部材16の下端部に図示しない第二のストッパ部材を装着しても良い。第二のストッパ部材は、例えば、インナ軸部材16に固定される第二のプレートを備えている。そして、第二のプレートがアウタ筒部材18のフランジ状部36に対して下側に対向配置されて、それら第二のプレートとフランジ状部36がストッパゴム40を介して当接することで、インナ軸部材16のアウタ筒部材18に対する上側への相対変位量が制限される。
【0058】
また、アウタ筒部材18のホルダ14への装着状態において、
図1,4に示すように、アウタ筒部材18の係止片22の先端部分が、ホルダ14の係止孔48に差し入れられている。そして、係止片22の先端部分に設けられた係止爪28が、ホルダ14の引掛部50に対して、軸方向で係止されている。これにより、アウタ筒部材18のホルダ14に対する抜け出し方向である下方への相対変位が、アウタ筒部材18とホルダ14の嵌め合わせによる抵抗力だけでなく、係止爪28と引掛部50の係止によっても防止される。
【0059】
係止爪28と引掛部50の係止部分、即ち、相互に重ね合わされた係止面34,54は、ホルダ14の内方突出部46に形成された係止孔48内に位置している。それ故、係止爪28と引掛部50の係止部分に径方向の外力が作用し難く、係止爪28が引掛部50から径方向で外れ難い。
【0060】
本実施形態では、係止爪28を備える係止片22の先端部分の全体が、係止孔48から軸方向外側(上側)へ突出することなく、係止孔48内に収容されている。これにより、係止片22に対して径方向の外力が作用し難く、係止爪28が引掛部50から径方向で外れ難い。特に本実施形態の係止孔48は、内方突出部46の径方向において開口幅が狭くされていることから、係止孔48内に収容された係止片22に外力が作用し難い。更に、係止片22の先端は、係止孔48の上側開口に対して下側へ控えた位置に配されており、外力が係止片22に対して一層作用し難くなっている。
【0061】
また、規制ゴム42がアウタ筒部材18のフランジ状部36とホルダ14との軸方向間に圧縮状態で設けられている。それ故、アウタ筒部材18のホルダ14への装着状態において、アウタ筒部材18が規制ゴム42の弾性によってホルダ14からの抜け出し方向に付勢されており、係止爪28の係止面34と引掛部50の係止面54とが軸方向で相互に押し付けられている。これにより、係止爪28と引掛部50の係止による抜け抗力がより安定して発揮される。
【0062】
規制ゴム42は、係止片22と軸方向の反対側に設けられたフランジ状部36に固着されて、フランジ状部36とホルダ14の間に配されている。それ故、係止片22の構造や配置、数などに影響されることなく、規制ゴム42を設けることができる。従って、規制ゴム42の弾性に基づいてアウタ筒部材18に及ぼされる付勢力の大きさや、規制ゴム42の耐久性、規制ゴム42のアウタ筒部材18に対する固着強度などを、大きな自由度で設定することが可能とされる。
【0063】
アウタ筒部材18の係止爪28とホルダ14の引掛部50が係止された状態において、引掛部50に設けられた規制突起52は、係止爪28に設けられた返し部32に入り込んでいる。これにより、返し部32と規制突起52は、径方向の投影において、相互に重なり合う位置に配置されている。それ故、係止爪28がアウタ筒部材18の径方向で引掛部50から外れる外周側へ移動するに際して、係止爪28の返し部32と引掛部50の規制突起52とが径方向で当接係止されることにより、係止爪28の引掛部50に対する外周側への移動が制限される。このような返し部32と規制突起52による係止保持機構によって、係止爪28の引掛部50からの径方向への外れが規制されて、係止爪28と引掛部50の係止状態が安定して保持される。従って、アウタ筒部材18のホルダ14からの抜け出しに対する抗力を安定して得ることができる。
【0064】
さらに、係止爪28の係止面34と引掛部50の係止面54とが、規制ゴム42の弾性によって、軸方向で相互に押し付けられている。それ故、返し部32と規制突起52が、径方向の投影において相互に重なり合う位置に保持されて、それら返し部32と規制突起52の係止による係止爪28と引掛部50の係止状態の保持が、より確実に実現される。
【0065】
本実施形態では、アウタ筒部材18のホルダ14への装着状態において、係止爪28の返し部32と引掛部50の規制突起52とが、予め径方向で相互に当接した状態で重ね合わされている。しかしながら、例えば、返し部32と規制突起52が径方向で相互に離れており、係止爪28が引掛部50に対して外れる径方向に移動することで、それら返し部32と規制突起52が相互に当接して係止されるようにしても良い。
【0066】
ところで、規制突起52の返し部32への入り込みは、返し部32が規制突起52を乗り越えることで実現される。具体的には、アウタ筒部材18がホルダ14の装着孔44へ嵌め入れられる際に、先ず、
図5(a)に示すように、係止爪28のガイド面30が係止孔48の下側の開口周縁部に当接する。これにより、係止片22を係止孔48へ差し入れるに従って、係止片22の先端部分がホルダ14によって外周側へ押されて、係止片22が外周側へ曲がるように撓み変形する。そして、係止爪28が係止孔48へ差し入れられる。
【0067】
変形していない初期形状の係止片22は、先端部分の外面26が、装着孔44の孔内面と軸方向に滑らかに連続する係止孔48の外周側の孔内面に対して、内周へ離れた位置に設定されている。それ故、係止片22の外周側へ曲がるような撓み変形が、係止孔48の孔内面に干渉することなく許容される。
【0068】
次に、アウタ筒部材18をホルダ14の装着孔44に軸方向で所定の取付位置まで嵌め入れた後、アウタ筒部材18を嵌め入れ方向に押し込んで、規制ゴム42を圧縮変形させることで嵌め入れ方向へ更に移動させる。これにより、
図5(b)に示すように、係止爪28の返し部32と引掛部50の規制突起52とが軸方向で相互に離れた位置に配置される。具体的には、係止爪28の返し部32が、引掛部50の規制突起52に対して、軸方向の上側に離れて位置する。
【0069】
そして、
図5(b)に示す返し部32と規制突起52が軸方向で離れて位置する状態において、アウタ筒部材18を嵌め入れ方向に押し込む力を解除することにより、アウタ筒部材18が圧縮された規制ゴム42の弾性によってホルダ14に対する抜け出し方向に移動する。これにより、
図1に示すように、規制突起52が返し部32に入り込んで、返し部32と規制突起52による係止保持機構が構成される。
【0070】
このように、アウタ筒部材18の装着孔44に対する嵌め入れ方向での押込移動が、アウタ筒部材18のフランジ状部36とホルダ14の下面との間に介在する規制ゴム42の圧縮変形によって許容される。これにより、規制突起52が返し部32へ入り込むに際して、返し部32が規制突起52を乗り越えることが可能とされて、返し部32と規制突起52による係止保持機構を構成することができる。
【0071】
図6には、本発明の第二の実施形態としての防振構造体60が示されている。防振構造体60は、筒型防振装置62がホルダ14に装着された構造を有している。以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0072】
本実施形態の筒型防振装置62は、アウタ筒部材18の軸方向一方の端部(
図6中の上端部)において、係止片22を外れた部分に規制ゴム64が設けられている。規制ゴム64は、アウタ筒部材18の軸方向端面に加硫接着されて、軸方向外側へ突出している。この規制ゴム64は、アウタ筒部材18の軸方向他方側に設けられた規制ゴム42と同じか或いはより大きな軸方向の厚さ寸法で形成されている。なお、規制ゴム64は、アウタ筒部材18の内周側で本体ゴム弾性体20とつながっており、本体ゴム弾性体20と一体形成されている。
【0073】
そして、規制ゴム64は、筒型防振装置62のアウタ筒部材18がホルダ14の装着孔44に嵌め入れられた装着状態において、アウタ筒部材18と内方突出部46の軸方向間に圧縮状態で介在している。これにより、アウタ筒部材18が、下側の規制ゴム42だけでなく、上側の規制ゴム64によっても抜け出し方向へ付勢されている。従って、係止爪28と引掛部50が軸方向の係止状態に安定して保持されて、アウタ筒部材18の装着孔44に対する抜け抗力を大きく得ることができる。
【0074】
さらに、下側の規制ゴム42と上側の規制ゴム64との両方を圧縮変形させることによって、アウタ筒部材18のホルダ14に対する嵌め入れ方向の押込移動を許容して、返し部32を規制突起52に対して乗り越えさせることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、下側の規制ゴム42と上側の規制ゴム64との両方が設けられた構造を例示したが、例えば、上側の規制ゴム64だけが設けられて、下側の規制ゴム42がない構造も採用することができる。尤も、規制ゴムを設ける位置は、あくまでも例示であって特に限定されず、アウタ筒部材18の装着孔44に対する嵌め入れ方向での押込移動を圧縮変形によって許容することができれば良い。
【0076】
具体的には、例えば、
図7に示すように、係止片22の基端部分の外面に固着される規制ゴム70を採用することもできる。この場合には、ホルダ14における係止孔48が内方突出部46の径方向中間部分に形成されて、内方突出部46の外周端部によって規制ゴム70に当接する当接部72が構成される。そして、アウタ筒部材18が装着孔44に嵌め入れられることにより、規制ゴム70が係止片22の基端部分とホルダ14の当接部72との軸方向間に配される。これにより、アウタ筒部材18がホルダ14に対して嵌め入れ方向に移動しようとすると、係止片22の基端部分とホルダ14の当接部72との間で規制ゴム70が軸方向に圧縮されて、規制ゴム70の弾性によってアウタ筒部材18の移動が制限される。その結果、返し部32が規制突起52を乗り越え難く、係止爪28と引掛部50の係止状態が解除され難い。
【0077】
しかも、
図7に示す構造において、規制ゴム70は、係止片22と当接部72の軸方向間だけでなく、アウタ筒部材18がホルダ14に装着された状態で係止片22と当接部72の径方向間にも入り込んで設けられ得る。それ故、規制ゴム70の弾性に基づく付勢力が、係止片22に対してアウタ筒部材18の内周側へ作用して、係止片22の引掛部50に対する外周側への移動が、規制ゴム70の弾性によっても制限される。
【0078】
図8には、本発明の第三の実施形態としての防振構造体80が示されている。防振構造体80は、筒型防振装置82がホルダ84に装着された構造を有している。
【0079】
筒型防振装置82は、
図8,9に示すように、インナ軸部材16とアウタ筒部材86が本体ゴム弾性体88によって相互に弾性連結された構造を有している。
【0080】
アウタ筒部材86は、
図8~10に示すように、軸方向一方側へ突出する係止片90を備えている。係止片90は、先端部分が基端部分よりも薄肉となる板状とされている。係止片90の先端部分は、アウタ筒部材86の外周側に位置する外面92が、アウタ筒部材86の外周面と略同じ径方向位置で広がっていると共に、アウタ筒部材86の内周側に位置する内面94が、基端から先端に向けて外周に傾斜する部分を備えている。これにより、係止片90は、先端部分がアウタ筒部材86に比して薄肉とされて、アウタ筒部材86の径方向で撓み変形可能とされている。本実施形態では、係止片90が4つ設けられており、それら4つの係止片90,90,90,90が周方向で略等間隔に配置されている。
【0081】
さらに、係止片90は、係止爪96を備えている。係止爪96は、係止片90の先端部分からアウタ筒部材86の外周へ向けて突出している。係止爪96は、突出先端に向けて上下方向の寸法が小さくなる嘴形状とされており、上面が係止爪96の突出先端に向けて下傾するガイド面98とされている。更に、係止爪96は、下面に突出する返し部100を備えている。返し部100は、突出先端面である下面が、係止爪96の突出先端側に向けて下傾している。これにより、返し部100を備える係止爪96の下面は、係止爪96の突出先端に向けて下傾する係止面102とされている。
【0082】
アウタ筒部材86の軸方向他方側には、フランジ状部104が設けられている。フランジ状部104は、略円環板形状とされて、アウタ筒部材86の下端部において外周へ広がるように設けられている。フランジ状部104には、軸方向に貫通する貫通孔106が形成されている。貫通孔106は、フランジ状部104の内周端部に形成されており、
図11に示すように、係止爪96を備える係止片90と周方向で対応して配置されている。そして、係止爪96が貫通孔106と軸方向で重なる位置に設けられている。なお、本実施形態では、4つの貫通孔106,106,106,106が周方向で略等間隔に配置されており、4つの係止爪96,96,96,96が何れかの貫通孔106と軸方向で重なる位置に配置されている。貫通孔106は、軸方向視において係止爪96の外形よりも大きな孔断面形状を有しており、係止爪96の全体が貫通孔106と軸方向で重なっている。
【0083】
なお、アウタ筒部材86を形成する際に、成形用の金型においてフランジ状部104と対向する係止爪96の係止面102を成形する部分は、アウタ筒部材86の成形後に、フランジ状部104の貫通孔106を通じて軸方向で下側へ取り外される。これにより、係止爪96が係止片90から外周へ突出して、係止爪96とフランジ状部104が対向する構造であっても、返し部100を備える係止面102を成形することができる。
【0084】
そして、インナ軸部材16がアウタ筒部材86に挿通されて、それらインナ軸部材16とアウタ筒部材86が本体ゴム弾性体88によって弾性連結されることで、本実施形態の筒型防振装置82が構成される。本実施形態の本体ゴム弾性体88は、前記第一,第二の実施形態の本体ゴム弾性体88に比して、すぐり孔38,38が形成されていない。従って、インナ軸部材16とアウタ筒部材86は、全周に亘って本体ゴム弾性体88によって弾性連結されている。尤も、本実施形態において、本体ゴム弾性体にすぐり孔38,38がないことは必須ではなく、すぐり孔38,38を設けて径方向2方向で互いに異なる特性を得ることもできる。
【0085】
フランジ状部104の上面には、本体ゴム弾性体88と一体形成された規制ゴム42が固着されている。本実施形態では、フランジ状部104の上面の全体に規制ゴム42が固着されている。規制ゴム42は、フランジ状部104の外周側でストッパゴム40とつながっていると共に、フランジ状部104の貫通孔106を通じてストッパゴム40とつながっており、規制ゴム42のフランジ状部104への固着強度が大きく確保されている。
【0086】
筒型防振装置82は、ホルダ84に装着される。ホルダ84は、装着孔44の一方の開口部分に内方突出部46を備えており、内方突出部46の基端部分には軸方向に貫通する係止孔108が形成されている。係止孔108は、
図12に示すように、内方突出部46の周方向に延びる略四角形の孔断面形状を有している。係止孔108は、上部が下部よりも外周側へ広がって径方向で大きくなっており、上部と下部の径方向の幅の違いによる段差によって、係止孔108の下側部分に本実施形態の引掛部110が構成されている。引掛部110は、上面に突出する規制突起112を備えている。規制突起112は、突出高さが内周側に向けて次第に大きくなっている。これにより、引掛部110の上面は、内周側に向けて上傾する係止面114とされている。
【0087】
筒型防振装置82のアウタ筒部材86がホルダ84の装着孔44に嵌め入れられる際に、係止爪96を備える係止片90の先端部分が内方突出部46に形成された係止孔108に差し入れられる。そして、係止爪96が係止孔108内に設けられた引掛部110に軸方向で係止される。係止爪96と引掛部110の係止部分は、係止孔108内に位置している。
【0088】
アウタ筒部材86は、規制ゴム42を圧縮変形させることにより、装着孔44への所定の取付位置に対して、装着孔44への嵌め入れ方向へ押し込んで更に移動させる押込移動が許容される。これにより、係止爪96の返し部100が引掛部110の規制突起112を乗り越えて、規制突起112が返し部100の内周部分に入り込む。そして、返し部100と規制突起112の径方向での係止によって、係止爪96の引掛部110から外れる径方向への移動が制限される。その結果、係止爪96と引掛部110の係止状態が安定して維持されて、アウタ筒部材86の装着孔44からの抜けが有効に防止される。
【0089】
本実施形態に示すように、係止爪96は、係止片90から外周へ向けて突出していても良い。
【0090】
図13には、本発明の第四の実施形態としての防振構造体120が示されている。防振構造体120は、筒型防振装置82がホルダ122に装着された構造を有している。
【0091】
本実施形態のホルダ122は、前記第三の実施形態のホルダ84のような内方突出部46及び係止孔108が設けられていない。ホルダ122は、装着孔44の上側開口の周囲が引掛部124とされている。引掛部124には、上向きに突出する規制突起126が設けられている。規制突起126は、内周側に向けて突出高さが次第に大きくなっている。これにより、規制突起126を備える引掛部124の上面は、内周側に向けて上傾する係止面114とされている。
【0092】
このような構造のホルダ122を含む防振構造体120においても、アウタ筒部材86の係止爪96がホルダ122の引掛部124に係止されることにより、アウタ筒部材86の装着孔44からの抜け出しが防止されて、アウタ筒部材86の抜け出しに対する抗力を大きく得ることができる。更に、係止爪96の返し部100が引掛部124の規制突起126を乗り越えて配されており、それら返し部100と規制突起126の径方向での係止によって、係止爪96と引掛部124が係止状態に保持されている。
【0093】
本実施形態に示すように、係止爪と引掛部の係止部分は、必ずしも係止孔内に位置していなくてもよく、ホルダ122に対して軸方向外側に設けられていても良い。この場合には、係止爪96を備える係止片90の先端部分は、ホルダ122よりも軸方向外側に突出していても良い。尤も、例えば、
図14に示すように、ホルダ130における装着孔44の開口部分に切欠き132を形成して、切欠き132の形成部分に引掛部134を設定することにより、係止爪96と引掛部134の係止部分を装着孔44内に位置させることもできる。この場合には、係止爪96を備える係止片90の先端部分を、装着孔44から突出しないように装着孔44内に収容状態で配することもできる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、装着孔44の全周に亘って連続的に設けられる内方突出部46を例示したが、内方突出部は、例えば、係止片と対応する位置に周方向で部分的に設けることもできる。
【0095】
係止爪と引掛部の係止部分が係止孔内に位置している構造において、係止爪の返し部と引掛部の規制突起は、必須ではない。例えば、係止孔48内に位置する係止爪28の係止面34と引掛部50の係止面54は、それぞれ軸直角方向に広がる平面とされ得る。
【0096】
前記実施形態では、4つの係止片22,22,22,22を備える構造について説明したが、係止片22の数は特に限定されない。尤も、アウタ筒部材18の装着孔44からの抜け難さや、アウタ筒部材18に作用する抜け抗力の周方向でのバランスなどを考慮すれば、係止片22は複数であることが望ましい。
【0097】
係止爪の具体的な形状は限定されない。例えば、係止爪においてガイド面は必須ではない。係止爪にガイド面を設けない場合には、例えば、係止孔の下側開口部分にガイド面を設けることによっても、係止爪を係止孔へ挿入し易くすることもできる。
【0098】
係止爪に設けられる返し部と、引掛部に設けられる規制突起の形状は、何れも限定されない。例えば、
図15に示すように、係止爪28の突出先端部分において四角断面形状で突出する返し部140と、引掛部50の外周側の端部において四角断面形状で突出する規制突起142とを、採用することもできる。また、波型断面のように径方向で滑らかに連続する返し部及び規制突起なども採用され得る。更に、返し部と規制突起を各複数設けることもできる。
【0099】
さらに、返し部は、係止爪の突出方向の中間部分に設けられていても良い。同様に、規制突起を引掛部の径方向中間部分に設けることもできる。
【0100】
規制ゴムは、本体ゴム弾性体と一体であっても良いし、別体であっても良い。また、規制ゴムは、ホルダに固着されて設けられていても良いし、アウタ筒部材とホルダの何れからも独立した別部材として設けることもできる。
なお、本発明は、もともと以下(i)~(xi)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、該係止爪は該アウタ筒部材の該装着孔からの抜け出し方向に突出する返し部を有していると共に、該ホルダの該引掛部には該係止爪の該返し部へ入り込んで該係止爪の該引掛部からの径方向への外れを規制する規制突起が設けられており、該規制突起が該返し部へ入り込むに際して該返し部が該規制突起を乗り越えるのに必要とされる該アウタ筒部材の該装着孔に対する嵌め入れ方向での押込移動を圧縮変形によって許容する規制ゴムが設けられている防振構造体、
(ii) 前記規制ゴムが前記アウタ筒部材と前記ホルダの間に圧縮状態で設けられている請求項(i)に記載の防振構造体、
(iii) 前記アウタ筒部材には、前記係止片が軸方向一方に向かって延びて形成されていると共に、軸方向他方の端部において外周へ広がるフランジ状部が設けられており、該フランジ状部が前記規制ゴムを圧縮状態で挟んで前記ホルダに軸方向で重ね合わされている(ii)に記載の防振構造体、
(iv) 前記フランジ状部を前記アウタ筒部材の軸方向に貫通する貫通孔が形成されていると共に、前記係止爪が前記係止片において外周側へ突出しており、該係止爪が該貫通孔と軸方向で重なる位置に設けられている(iii)に記載の防振構造体、
(v) 前記係止片において前記係止爪が内周へ向けて突出していると共に、前記本体ゴム弾性体には軸方向に貫通するすぐり孔が形成されており、該係止爪が該すぐり孔と軸方向で重なる位置に設けられている(i)~(iii)の何れか一項に記載の防振構造体、
(vi) 前記ホルダが前記装着孔の開口部分において内周へ突出する内方突出部を備えており、該内方突出部を貫通する係止孔が設けられていると共に、前記係止爪を備える前記係止片の先端部分が軸方向に延びて該係止孔に差し入れられており、該係止爪と該ホルダの前記引掛部との係止部分が該係止孔内に位置している(i)~(v)の何れか一項に記載の防振構造体、
(vii) 前記内方突出部が前記装着孔の全周に亘って設けられている(vi)に記載の防振構造体、
(viii) 前記係止片の先端部分が前記係止孔内に位置している(vi)又は(vii)に記載の防振構造体、
(ix) 本体ゴム弾性体の外周にアウタ筒部材を備えた筒型防振装置と、該筒型防振装置の該アウタ筒部材が軸方向に嵌め入れられて装着される装着孔を有するホルダとを、含む防振構造体において、前記アウタ筒部材が合成樹脂材料で形成されており、該アウタ筒部材には径方向で撓み変形する係止片が設けられて、該係止片には径方向に突出して前記ホルダに設けられた引掛部への係止によって該アウタ筒部材の前記装着孔からの抜け出しを防止する係止爪が形成されており、該ホルダが該装着孔の開口部分において内周へ突出する内方突出部を備えていると共に、該内方突出部を軸方向に貫通する係止孔が設けられて、該係止孔に該係止片が差し入れられており、該係止爪と該引掛部の係止部分が該係止孔内に位置している防振構造体、
(x) 前記内方突出部が前記装着孔の全周に亘って設けられている(ix)に記載の防振構造体、
(xi) 前記係止爪を備える前記係止片の先端部分が前記係止孔内に位置している(ix)又は(x)に記載の防振構造体、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、アウタ筒部材に設けられた係止片の係止爪が、ホルダに設けられた引掛部に係止されていることにより、アウタ筒部材がホルダに対して軸方向で抜け出し難い。さらに、係止爪の引掛部からの径方向への外れが、係止爪の返し部と引掛部の規制突起との径方向での係止によって規制されることから、係止爪と引掛部の係止によるアウタ筒部材のホルダからの抜けに対する抗力を、安定して得ることができる。更にまた、筒型防振装置のアウタ筒部材をホルダに装着する際に、規制ゴムを圧縮変形させることにより、アウタ筒部材のホルダに対する嵌め入れ方向での押込移動によって、返し部が規制突起を乗り越えることができる。これにより、規制突起を返し部に入り込ませて、係止爪の引掛部からの径方向への外れを規制することができる。しかも、係止爪の引掛部に対する径方向への移動に際して、返し部が規制突起を乗り越えようとすると、規制ゴムが圧縮変形することから、返し部の規制突起に対する乗り越えが規制ゴムの弾性によって規制される。これにより、係止爪の引掛部からの径方向への外れが生じ難くされて、係止爪と引掛部の係止状態が安定して保持される。
上記(ii)に記載の発明では、圧縮状態とされた規制ゴムの弾性によって、アウタ筒部材がホルダに対して抜け出し方向に付勢されていることから、アウタ筒部材の係止爪とホルダの引掛部が相互に押し付けられて、それら係止爪と引掛部の係止による抜け抗力を効果的に得ることができる。
上記(iii)に記載の発明では、アウタ筒部材のフランジ状部とホルダとの軸方向の重ね合わせ面間に、規制ゴムを圧縮状態で設けることによって、係止爪と引掛部を押し付ける軸方向の付勢力を、アウタ筒部材とホルダの間に作用させることができる。フランジ状部は、アウタ筒部材において係止片と反対側に設けられることから、形状や大きさなどを大きな自由度で設定することができる。それ故、規制ゴムの弾性による付勢力の設定自由度などを大きく得ることができる。
上記(iv)に記載の発明では、例えば、係止爪のフランジ状部との対向面を、貫通孔の形成部分に軸方向へ延びて配される金型によって成形することができる。これにより、アウタ筒部材を成形した後の金型の取外しに際して、係止爪のフランジ状部との対向面を成形した金型を、係止爪に対して軸方向で取り外すことができる。それ故、金型が係止爪の返し部に引っ掛かることなく、金型を係止爪から取外し可能とされる。
上記(v)に記載の発明では、アウタ筒部材の係止爪とホルダの引掛部との係止状態が安定して保持されて、アウタ筒部材のホルダからの抜けが防止される。即ち、内周へ突出する係止爪と引掛部との係止は、外周側へ向けた軸直角方向の力が係止片に作用する場合に解除され得るが、筒型防振装置の内周部分には一般的に防振対象部材が取り付けられることから、他部材の干渉などに起因する力が、係止片に対して外周側へ向けて作用し難い。また、係止片において係止爪を内周へ突出するように形成しても、アウタ筒部材の内周に本体ゴム弾性体を形成する際に、本体ゴム弾性体と係止爪の軸方向間のスペースを、すぐり孔に挿通される金型によって形成することができる。それ故、係止片において係止爪が内周へ突出するように形成されていても、本体ゴム弾性体を簡単な金型構造によって成形することができる。
上記(vi)に記載の発明では、ホルダの内方突出部に設けられた係止孔に係止片が差し入れられて、係止爪がホルダの引掛部に対して係止孔内で係止されていることから、係止爪と引掛部の係止部分に対する外力の作用が防止される。
上記(vii)に記載の発明では、ホルダの装着孔の全周に亘って内方突出部を設けることによって、例えば、本体ゴム弾性体の弾性変形量を制限するストッパを、内方突出部を利用して構成することも可能である。その場合に、内方突出部が全周に設けられていることで、ストッパの受圧面積を大きく確保することができる。
上記(viii)に記載の発明では、係止爪と引掛部の係止部分だけでなく、係止片の先端部分が係止孔から突出せずに係止孔内に収容されている。これにより、係止片に対して外力がより作用し難くなって、係止爪とホルダの軸方向での係止が一層解除され難くなる。すなわち、係止片の先端部分は、周囲が内方突出部によって囲まれていることで外力が作用し難くなっている。係止片の基端部分に対する外力の作用も、先端側がホルダの内方突出部によって覆われていることで防止される。
上記(ix)に記載の発明では、係止片の係止爪とホルダの引掛部が係止されていることにより、アウタ筒部材がホルダに対して軸方向で抜け難い。さらに、ホルダの内方突出部に設けられた係止孔に係止片が差し入れられており、係止爪が引掛部に対して係止孔内で係止されていることから、係止爪と引掛部の係止を解除する径方向の外力が、係止爪と引掛部の係止部分に作用し難い。
上記(x)に記載の発明では、ホルダの装着孔の全周に亘って内方突出部を設けることによって、例えば、本体ゴム弾性体の弾性変形量を制限するストッパを、内方突出部を利用して構成することもでき、その場合に、ストッパの受圧面積を大きく確保することができる。
上記(xi)に記載の発明では、係止爪と引掛部の係止部分だけでなく、係止片の先端部分が係止孔から突出せずに係止孔内に収容されている。これにより、係止片に対して外力がより作用し難くなって、係止爪と引掛部の係止が一層解除され難くなる。すなわち、係止片の先端部分は、周囲が内方突出部によって囲まれていることで外力が作用し難くなっている。係止片の基端部分は、先端側がホルダの内方突出部によって覆われていることで外力が作用し難い。
【符号の説明】
【0101】
10,60,80,120:防振構造体、12,62,82:筒型防振装置、14,84,122,130:ホルダ、18,86:アウタ筒部材、20,88:本体ゴム弾性体、22,90:係止片、28,96:係止爪、32,100,140:返し部、36,104:フランジ状部、38 すぐり孔、42,64,70 規制ゴム、44 装着孔、46 内方突出部、48,108:係止孔、50,110,124,134:引掛部、52,112,126,142:規制突起、106:貫通孔