(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】複合材を補強するためのハイブリッド布地
(51)【国際特許分類】
D03D 1/00 20060101AFI20220810BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20220810BHJP
D03D 15/217 20210101ALI20220810BHJP
D03D 15/267 20210101ALI20220810BHJP
B29K 105/10 20060101ALN20220810BHJP
【FI】
D03D1/00 A
B29B11/16
D03D15/217
D03D15/267
B29K105:10
(21)【出願番号】P 2018568911
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(86)【国際出願番号】 FR2017000137
(87)【国際公開番号】W WO2018007692
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-04
(32)【優先日】2016-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507392897
【氏名又は名称】サン-ゴバン アドフォル
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】ジョナ ブーシャール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ガルシア
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3114341(JP,U)
【文献】特開2011-144477(JP,A)
【文献】特開平06-240533(JP,A)
【文献】特開2007-023463(JP,A)
【文献】特公昭58-024540(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3191433(JP,U)
【文献】特開昭48-033160(JP,A)
【文献】特開2007-138361(JP,A)
【文献】特表2016-505664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00
B29B 11/16
D03D 15/217
D03D 15/267
B29K 105/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊
維から選択される無機繊維で作られている糸、並びに亜麻繊
維から選択される天然有機繊維で作られている糸を具備しており、前記無機繊維で作られている糸及び前記天然有機繊維で作られている糸が、互いに、共に織られ、共に組まれ、又は共に編まれていることを特徴とする、ハイブリッド布地。
【請求項2】
5~95重量%の天然有機繊維及び5~95重量%の無機繊維を含有しており、これらの比率が、前記無機繊維及び天然有機繊維の全体に対して示した比率であることを特徴とする、請求項
1に記載のハイブリッド布地。
【請求項3】
50~90重量%の天然有機繊維、及び10~50重量%の無機繊維を含有しており、これらの比率は、前記無機繊維及び天然有機繊維の全体に対して表していることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のハイブリッド布地。
【請求項4】
金属繊維を含有していないことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
【請求項5】
前記無機繊維及び前記天然有機繊維が、互いに独立して、10~10000texの線重量及び5~24μmの直径を有することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
【請求項6】
以下を有することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のハイブリッド布地:
-30mm未満の厚さ;及び/又は
-30~3000g/m
2の単位面積当たりの重量。
【請求項7】
プリプレグであって、請求項1~
6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのハイブリッド布地、及び熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含有しており、かつ前記樹脂が、前記プリプレグの合計重量の20~45重量%を示す、プリプレグ。
【請求項8】
有機ポリマーマトリックス及び布地補強材を具備している複合材の製造のための、請求項1~
6のいずれか一項に記載のハイブリッド布地の使用又は請求項
7に記載のプリプレグの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、有機ポリマーマトリックス複合材料の分野、より特に、有機ポリマーマトリックス中に埋設することにより上記の複合材料の構成に含められる補強布地の分野に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、互いに、共に織られ、共に組まれ、又は共に編まれている、無機繊維及び天然の有機繊維を同時に具備している、ハイブリッド布地に関する。
【0003】
本発明はまた、複合材料のポリマーマトリックスを補強するための布地補強材としてのかかるハイブリッド布地の使用にも関する。
【0004】
本発明は、特に、輸送産業、スポーツ産業、エネルギー生産産業、建築産業、建設産業又は医療産業のための複合材の製造における用途を見出している。
【背景技術】
【0005】
現在、ポリマー材料を補強するために、ガラス繊維が用いられており、ガラス繊維は、それらの用途に応じた最適な耐性をもたらす。無機であるガラス繊維は、特に、鋼鉄と比較して、大きく構造の重量を低減することを可能とする。
【0006】
更には、天然繊維、例えば亜麻、麻、サイザル等を、ポリマー材料の補強材として用いることができる。これらの天然有機繊維の使用は、ガラス繊維の使用に対して更なる重量に関する利益をもたらすことができる。
【0007】
天然繊維から製造される補強布帛は、一方で経糸を、他方で緯糸を織り交ぜることにより作られる。対照的に、撚り、(布帛の織りの作用である)糸の経路、及び繊維の異方性は、繊維の劣悪な配向性、及びそれによる単向性の層の積重体に対する機械的性質の変化をもたらす可能性がある。更には、天然繊維から製造された補強材を有する複合材の製造の間、マトリックスによる繊維の含侵の際に、経糸内でのマトリックスの移動の問題が存在する可能性がある。その結果、天然の有機繊維の使用が、それらを含有している複合材の機械的特性の再現性をもたらさない点で、緊急な問題が存在している。
【0008】
本発明は、容易に再現可能な機械的特性を有する、低重量の複合補強材を提供するという目的を有する。
【0009】
従来、複合材料は、成形可能なプラスチックで作られており、かつ1又は複数の補強材が埋設されている、構造形成マトリックスを具備している。頻繁に、この補強材は、人工の補強繊維、特に無機繊維、例えばガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維で作られている構造体を具備している。
【0010】
織られているガラス繊維をベースとする種々の製品が、特に例えば米国特許第4,581,053号明細書及び仏国特許出願公開第3011255号明細書に記載されている。
【0011】
米国特許出願公開第2016/0047073号明細書においては、不織の有機材料(例えば天然繊維)のバンドと織り交ぜられている単向性の無機材料の繊維(例えば炭素繊維)の不織のバンドから製造される、複合材を補強するためのハイブリッド布地材料が提案されている。それによれば、天然繊維、例えば亜麻及び綿を、ポリマー材料の補強材として用いることができる。
【0012】
仏国特許出願第2949125号明細書においては、不織の布地の製造において用いる複合補強材を作るように、天然材料(亜麻及び綿)の糸をポリマー材料でコーティングすることによる、複合補強材を製造するための方法が提案されている。
【0013】
更には、プラスチックを強化することを意図している天然繊維のための処理を開示している仏国特許第1204132号明細書において教示されているように、複合材料のための補強材の構成において天然繊維を用いることは、比較的昔からの考えである。
【0014】
更には、仏国特許出願公開第2898140号明細書においては、連続的に駆動する一式のコームを用いて、天然亜麻繊維を他の材料と混紡し、それによって、これらの天然亜麻繊維が複合材を補強することができるようにすることが提案されている。天然亜麻繊維と混紡されるものは、特にポリプロピレン又は幾つかの他の合成プラスチックで作られた糸の形態であってもよい。しかしながら、それらの異なる性質に起因して、天然亜麻繊維及びポリプロピレンの糸は、同一の引張挙動を有さず、それによって、コームによってそれらを混紡することは、適切に一様な製品をもたらすことができない。
【0015】
国際公開第2016/042556号パンフレットにおいては、織られている布地の層、及び種々の方法により組み込まれる合成層から製造される、ハイブリッド布地材料が提案されている。
【0016】
米国特許第5538781号明細書は、ポリアラミド、炭素及びガラスの繊維をベースとする糸を具備している、複合材のための布地補強材を開示している。
【0017】
欧州特許出願公開第1584451号明細書は、金属ワイヤーが有機又は無機繊維と組み合わせられている、複合材のための布地補強構造を記載している。
【0018】
英国特許第1294867明細書は、少なくとも85重量%の非酸化性無機繊維、及び最大で15重量%の自己消火性を有する特定のタイプのナイロンを具備している、耐火性ハイブリッド布地を開示している。
【0019】
最後に、米国特許第5,326,628号公報は、瀝青質材料及び/又は合成樹脂で含侵した布地をベースとする摩擦材料を記載している。布地は、合成ポリマー製の有機被覆により包囲されているセラミック繊維又はガラス繊維をベースとするコアで構成されている糸から作られている。これらの糸は、金属ワイヤーと撚ることにより組み合わせられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、複合材の機械的性質の良好な再現性をもたらす、軽重量の複合材のための補強材を開発する必要性が未だ存在する。
【0021】
したがって、本発明の目的は、輸送産業、スポーツ産業、エネルギー生産産業、建築産業、建設産業及び医療産業で用いることができるように、軽重量で、経済的で、かつ向上しかつ再現性のある機械的性質を有する、複合補強製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
天然有機繊維及び無機繊維を具備している、ハイブリッドの織られている布帛が、優れた機械的性質、例えば優れた耐衝撃性を有する軽重量の複合材を製造するための補強材として作用することができることが見出された。
【0023】
それによれば、出願人は、複合材料の補強材として用いたときに、求められる機械的性質及び低重量を得ることを可能とする、天然有機繊維及び無機繊維を具備しているか又はこれらで構成されており、織られ、組まれ、又は編まれている、ハイブリッド布帛を開発した。
【0024】
それによれば、第一の態様に従い、本発明は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石英繊維又はシリカ繊維から選択される無機繊維、及び天然有機繊維を具備しており、前記無機繊維及び前記天然有機繊維が、互いに共に織られ、共に組まれ、又は共に編まれている、ハイブリッド布地製品を提案する。
【0025】
第二の態様においては、本発明は、少なくとも1つのかかるハイブリッド布地及び熱可塑性又は熱硬化性樹脂を含有している、プリプレグ、すなわち半製品であって、樹脂が、好ましくはプリプレグの5~30重量%、より優先的には10~25重量%を示す、プリプレグに関する。
【0026】
第三の態様においては、本発明は、上記の第一の態様による少なくとも1つのハイブリッド布地を具備しており、このハイブリッド布地が、複合材料のポリマーマトリックスに対して浸透性である、複合材料のポリマーマトリックスのための布地補強材に関する。
【0027】
第四の態様においては、本発明は、かかるハイブリッド布地、かかる補強材、又はかかるプリプレグの、複合材料のポリマーマトリックスを補強するための使用に関する。
【0028】
第五の態様においては、本発明は、かかるハイブリッド布地、かかる補強材、又はかかるプリプレグの、有機ポリマーマトリックス及び布地補強材を具備している複合材のための使用に関する。
【0029】
最後に、本発明は、第六の態様に従い、有機ポリマーマトリックス及び少なくとも1つの第一の態様によるハイブリッド布地又は上記の第三の側面による布地補強材で作られている、複合材に関する。
【0030】
以下に与える非限定的な記載を読むと、本発明がより良く理解でき、かつ本発明の他の特徴及び利点がより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下に与える非限定的な記載は、単に例示的なものであり、添付図面を参照して読むべきである。
【0032】
【
図1】
図1は、A、B、C及びDで示す、本発明による織られているハイブリッド布帛の4つの例を示している。布帛Aは、亜麻の経糸及びガラス繊維の緯糸を具備している平織である;布帛Bは、亜麻の経糸及びガラス繊維の緯糸を具備している2×2綾織である;布帛C及びDは、亜麻及びガラス繊維の経糸、並びに亜麻のみの緯糸を具備している平織である。
【
図2】
図2は、真空注入による複合材の製造方法の非常に概略的な図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第一の態様は、無機繊維及び天然有機繊維を具備している、織られ、編まれ、又は組まれているハイブリッド布地に関する。
【0034】
ハイブリッド布地は、好ましくは合成有機繊維を含有していない。
【0035】
ハイブリッド布地は、好ましくは金属繊維を含有していない。
【0036】
本発明によるハイブリッド布地は、好ましくは織られているハイブリッド布地である。
【0037】
好ましい実施態様において、このハイブリッド布地は、無機繊維をベースとする糸、有機繊維をベースとする糸、及び/又は有機繊維及び無機繊維をベースとする糸(ハイブリッド糸)を具備している、ハイブリッド布地である。
【0038】
換言すれば、本発明のハイブリッド布地は、糸の状態で組み合わせられている無機繊維及び天然有機繊維を具備していてよく、これらの糸が、今度は織ること、編むこと及び組むことにより共に組み合わせられている。本発明のハイブリッド布地の構造においては、織られているハイブリッド布帛を作る糸の組織において含まれる天然有機繊維及び無機繊維が存在していることに注目することが重要である。
【0039】
本発明の実施態様の本記載において、「布地製品」、「布地」及び「布帛」との用語は、無差別に用いられる。
【0040】
「布地製品」又は「布地」又は「布帛」は、織ること、編むこと、又は組むことにより製造でき、糸及び/又は繊維に分かれ、かつ繊維が不規則なままである不織布製品と対照的に、糸又は繊維の秩序ある織り交ぜを有する随意の材料を意味する。
【0041】
布地製品は、特に織ること、すなわち同一平面において、「経」方向に配置された糸(以降では経糸と称する)、及び別の方向、殆どの場合には経糸に対して垂直な、「緯」方向に配置された糸(以降では緯糸と称する)を織り交ぜることにより得ることができる。緯糸は、布地バンドの幅の方向に延びている糸である。経糸は、長さ方向に延びている。布帛を生み出すのは、これらの2つの糸を織り交ぜることである。緯糸が1又は複数の平行な糸により作られていること、及び経糸も1又は複数の平行な糸により作られていることが理解される。これらの経糸と緯糸との間に得られる結合は、織ることにより定められる。当然、織ることは、異なるタイプの織り(単純な織り又は平織、二重織、交織、綾織又はサージ、繻子織等)を与える多種多様な方法を含む。
【0042】
本発明によるハイブリッド布地の製造は、概して布帛の製造のために、特に無機繊維、例えばガラス繊維をベースとする糸を有する布帛の製造のために適した従来の設備において実施することができる。
【0043】
これらの糸を共に織る方法は、布帛の特性、特にその機械的特性への影響を及ぼす。
【0044】
パラメーターの変化は、布帛の性質を変化させる:緯糸及び経糸(それぞれ1又は複数の緯糸及び経糸)の方向において用いる単位長さ当たりの糸の数、ねじれ、織り、糸の間の(例えば緯糸と経糸との間の)角度等。想定される用途の特定の性質に応じ、当業者は、本発明の布地を用いるための最も適した製造法及びパラメーターを選択することとなる。
【0045】
織る方法を実施するときに、糸の間の張力を制御するため、及び2つのタイプの糸(天然有機繊維で構成されている糸及び無機繊維で構成されている糸)の間の一定の張力を維持するため、共に織ることを、以下の種々の方法で経糸を作製することにより実施することができる:
-織機上での直接整経による。ここで、経糸は、互いに平行に、クリール内に配置されているボビンからビーム上に配置される;又は
-織機上の二重ビームを用いた、例えば実験室レベルでのサンプリング整経による。
【0046】
整経は、経糸が整経シリンダー上の部分において平行に載置されるという意味で、部分的であってよい。次いで、設定操作により、経糸を整経機からビームへと移動することを可能としつつ、一定の張力を維持する。
【0047】
本発明の布地製品は、編むことにより製造することもできる。編むことは、1本の糸又は幾つかの糸から始まる結び目を作ることによる、布帛を製造するために用いられる方法である。種々の編み技術、例えば、中でも緯編又はジャージ編又は経編が当業者にとって利用可能であり、伝線に強い物品を作るために経編を用いることが可能である。
【0048】
有機繊維は、動物由来又は植物由来、好ましくは植物由来の天然有機繊維である。
【0049】
植物繊維は、亜麻繊維、麻繊維、綿繊維、ジュート繊維、イラクサ繊維、サイザル繊維、ココナッツ繊維、ラフィアヤシ繊維、アバカ繊維、エニシダ繊維、及びより一般的には随意の紡糸可能な植物繊維からなる群より選択することができる。
【0050】
動物繊維は、アンゴラ繊維、カシミヤ繊維、モヘア繊維、羊毛繊維、ラクダ繊維、アルパカ繊維又はビクーニャ繊維、絹繊維、蜘蛛フィラメント、例えば蜘蛛Nephila clavipesからのフィラメント、及び一般的には随意の紡糸可能な動物繊維からなる群より選択することができる。
【0051】
天然有機繊維は、天然材料、例えばミルクカゼイン(Lanital)、種々の植物、例えば松樹皮、竹、大豆、カバノキからのセルロース(レーヨン又はビスコース)の化学処理(例えば溶解、次いで沈殿)により得られる人工繊維をも包含する。
【0052】
人工繊維は、例えばセルロースアセテート(Rhodia)、アルギネート、Ardil、Arlan、Casenka、Coslan、Cupro、Fibrolane、Lanital、Merinova、Polynosique(Meryl又はZantrel)、Silcool、セルローストリアセテート(Rhonel)、Vicara、又はビスコースからなる群より選択することができる。これは、網羅的なリストではない。
【0053】
「無機繊維」は、玄武岩繊維、炭素、セラミック繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、石英繊維からなる群より選択される。
【0054】
有機繊維及び無機繊維は、糸の形態の長いアセンブリを作るために共に集められる。それによれば、本発明の布地製品において用いられる糸は、繊維間の結合を確実にするために、例えば撚ることより処理されている繊維の集合体を構成している、紡績業からの全ての製品に対応している。それによれば、本来の糸、紐、撚糸、二重撚糸、ケーブル糸等を、本発明のために用いることができる。
【0055】
複合材料のための補強布帛におけるそれらの使用を促進するため、天然有機繊維を処理することができる。
【0056】
それによれば、複合材料の補強材としての用途のため、植物繊維は、布地産業の一連の処理から得る。この産業の分野は、繊維を植物の残部から分離するための技術を開発している。繊維を分離及び作製するために用いる技術は、特に以下のものである:
-レッティング:繊維を結合させるペクトーゼの加水分解。この操作は、水(流水又はその他)中で、デュー・レッティング、又は化学物質若しくは酵素を工業的に用いることにより実施することができる。亜麻については、露浸漬が最も一般的な方法である;
-摩砕:木質の部分の破砕;
-スカッチング:植物の木からの木質の断片の分離;及び
-コーミング及びカージング:繊維をほぐすこと。
【0057】
高い性質の複合材料を得るため、追加の処理が必要となることがある:繊維の分離、それらの表面の清掃、ポリマーによる繊維の濡れ性の向上、繊維とマトリックスとの間の良質な結合を得ること、及び特定の場合には親水性を低減させること。濡れ性は、ポリマーマトリックスの布地補強材への良好な接着性を得るために必要な条件であるが、それで十分ではない。複合材料においては、繊維/マトリックスの接着は、繊維間の応力の伝達、及びエージングに対する耐性に非常に重要な役割を果たす。1又は複数の処理を、繊維の性質に応じて選択する。これらの処理は、種々の製品又は「添加剤」を用いる。
【0058】
処理の例は、以下である:
-繊維の表面組成を修正し、かつポリマーとの化学結合を生成する、例えば化合物、例えばシラン、イソシアネート及びカルボン酸を用いた化学的処理;
-物理化学的処理、例えばオゾン化、冷プラズマ及び電子ビーム照射;
-天然繊維の外表面を被覆しているリグニン、ペクチン、及び蝋を除去するための、ソーダによるアルカリ処理。このタイプの処理は、繊維の表面粗さの上昇、膨張、安定化、及び親水性の低減をもたらす;
-寸法安定性及び環境の悪化に対する耐性を上昇させるための、無水酢酸によるセルロース又はヘミセルロースのアセチル化処理;
-180℃超の温度での熱処理。不活性雰囲気化で実施されるこれらのタイプの処理は、寸法安定性及び耐久性の両方を向上させるヘミセルロース及びリグニンの性質に作用する;
-耐火性を向上させるための処理;及び
-適切な酵素の選択により、中間層を攻撃して、繊維の束の内部の密着を確実にし、その結果、繊維の抜き出しを促進し、かつそれらの表面を修正することを可能とする、酵素処理。
【0059】
サイジングと称される化学的表面処理により、有機繊維及び無機繊維を処理して、繊維/マトリックスの密着性を向上させてもよい。サイジングは、特に織機のダイを糸が通過する間の摩擦に対する保護を与え、フィラメントの剛性を向上させ、繊維/マトリックス界面を改善し、かつ(例えばガラス/樹脂の)結合を与え、実行中に樹脂による含侵を促進させ、かつ帯電を除去する少なくとも1つの薬剤を含有しているサイジング組成物を適用することからなる。
【0060】
幾つかの実施態様においては、本発明によるハイブリッド布帛の糸を作っている有機及び/又は無機繊維を、このようにしてサイジング組成物により処理する。
【0061】
本発明の織られているハイブリッド布地の有機及び/又は無機繊維上に堆積されているサイズ剤(乾燥抽出物)の量は、0.1~10重量%程度、好ましくは0.3~3重量%である。概して用いられるキャリア液は、水であり、サイジング組成物の85~95%を示す。
【0062】
ガラス繊維糸のためのサイジング組成物については、Techniques de l’ingenieurの論文「Plastiques et composites」の文献「Fibres de verre de renforcement」において記載されているサイジング剤を参照することができる。例として、本発明において用いるサイズ剤は、次の要素を含有している:
-フィラメントを共に結合させ、それによって、糸に完全性及び保護をもたらし、かつマトリックスによる含侵を可能とする、塗膜形成剤(3~10%)。塗膜形成剤は、ポリビニルアセテート、エポキシ又はポリエステル樹脂、澱粉等で主に構成されている;
-糸の加工の間の摩耗に対して保護する役割を有する潤滑剤(0.05~1%)。潤滑剤の主成分は、アンモニウム界面活性剤及びアミンである;
-帯電を除去する役割を有する帯電防止剤(0~0.3%)。帯電防止剤は、アルカリルスルホネート又は第4級アンモニウム塩である;及び
-一方ではマトリックスと、他方では繊維との結合を生み出すことを可能とするカップリング剤(0.2~0.7%)カップリング剤は、概してオルガノシラン、チタネート又はジルコネートである。
【0063】
本発明において用いるガラス繊維糸は、上記のタイプのサイジングを必然的に備えている。これは、フィラメントが後で説明するような1又は複数の糸へと集められる前の、延伸中におけるフィラメント上へのサイジング組成物の適用の必須の工程を含む、ガラス繊維糸の製造方法に起因する。
【0064】
それによれば、用語「添加剤」は、本記載においては、非限定的な方法で、上で言及した処理において添加される随意の製品、特に上で言及したサイジングのみならず、本発明の布帛に特定の性質を付与する官能性ポリマー、着色剤、UV吸収剤、柔軟剤、難燃剤等をも示すために用いる。
【0065】
添加剤は、好ましくはサイジング、官能性ポリマー、着色剤、UV吸収剤、柔軟剤、難燃剤から選択される。
【0066】
一実施態様においては、本発明によるハイブリッド布地は、有機繊維がサイジング組成物により処理されていることを特徴とし、上記で言及したように、無機繊維は、必然的にサイジング組成物により処理されている。
【0067】
本発明のハイブリッド布帛は、天然有機及び無機繊維に加え、0.1~20重量%の1又は複数の添加剤、好ましくはサイズ剤、特に0.2~10重量%の1又は複数の添加剤、好ましくはサイズ剤、特に0.1~5重量%1又は複数の添加剤、好ましくはサイジングを含有していてよい。
【0068】
本発明において用いる無機繊維の糸は、中でも以下である
a)撚ることなく平行な連続的なフィラメントで構成されている糸(又は原糸);これらの製品は、布地用ガラスマルチフィラメント製品と称される;又は
b)ロービングと称される幾つかの原糸のアセンブリ。
【0069】
上記の糸は、撚りのない糸である。それらは、より低い性能を有しているが、本発明の範囲は、少なくとも5回/m、少なくとも10回/m、少なくとも15回/m又は少なくとも20回/mの撚りを有する撚糸をも含む。
【0070】
本発明に従い用いることができるガラス繊維、及びその製造方法は、例えばTechniques de l’ingenieurの論文「Plastiques et composites」の文献「Fibres de verre de renforcement」、又は仏国特許出願公開第2910462号明細書に記載されている。ガラス繊維糸は、公知の方法で、ダイの複数のオリフィスから流れる溶融ガラスの流れを機械的に延伸させてフィラメントを作り、次いでフィラメントを1又は複数の糸へと組み合わせ、巻取機により支持されているスリーブ上に各々を集めることにより製造される。糸の構成に含まれるガラスは、随意のタイプのガラス、例えばE、C、E-CR、D、R、A、S、S2、AR(アルカリ耐性)タイプのガラスであってよい。ガラスEが好ましい。
【0071】
糸を構成するガラスフィラメントの直径は、広範に変化することができ、例えば5~24μm、好ましくは6~16μm、更に良いのは8~13μmである。同様に、糸の線重量の広範な変化もあってよく、この線重量は、10~10000tex、好ましくは100~2500texの範囲であることができる。
【0072】
好ましい実施態様において、無機糸は、50重量%超のガラス、好ましくは75%超、有利には100%のガラスで構成されている。
【0073】
異なるタイプの天然有機繊維を組み合わせて、糸、例えば亜麻繊維及び綿繊維で構成されている糸、絹繊維及び亜麻繊維で構成されている糸を作ってもよい。
【0074】
異なる無機繊維を組み合わせて、無機混紡糸、例えばガラス繊維及び炭素繊維で構成されている糸を作ってもよい。
【0075】
糸は、ハイブリッド糸であってよく、すなわち種々の比率の有機繊維及び無機繊維で同時に構成されていてよく、例えば亜麻繊維及びガラス繊維で構成されている糸等であってよい。
【0076】
特定の実施態様において、本発明の織られている混合布帛の少なくとも1本の糸又は経糸は、ハイブリッド糸である。
【0077】
特定の実施態様において、ハイブリッド糸は、5~95重量%の有機繊維、5~95重量%の無機繊維及び0~50重量%の上記の成分から選択される1又は複数の添加剤を含有している;特に10~40重量%の無機繊維、30~90重量%の有機繊維及び0.2~20%の1又は複数の添加剤、特に10~30重量%の無機繊維、70~90重量%の有機繊維及び0.2~20重量%の1又は複数の添加剤、特に15~25重量%の無機繊維、75~85%の有機繊維及び0.1~20重量%の1又は複数の添加剤;特に10~30重量%の有機繊維、70~90重量%の無機繊維及び0.2~20重量%の1又は複数の添加剤、特に15~25重量%の有機繊維、75~85重量%の無機繊維及び0~20重量%の1又は複数の添加剤;有機繊維、無機繊維及び/又は添加剤の合計は、100%に等しい。
【0078】
好ましい実施態様において、無機繊維はガラス繊維であり、有機繊維は亜麻繊維である。この場合、添加剤は、有機繊維又は糸に適用されているサイズ剤である。好ましくは、ハイブリッド布地は、35~45重量%のガラス繊維、40~55重量%の亜麻繊維、及び1~5重量%のサイズ剤を含有している。
【0079】
上で言及したように、本発明のハイブリッド布地の織構造においては、上記の布帛を作る糸の組織において、常に天然有機繊維及び無機繊維が存在していなければならない。本発明の織られているハイブリッド布帛の構造を作る糸における有機繊維及び無機繊維の性質及び比率は、本発明の布帛の用途及び織る方法に応じて選択されることとなる。
【0080】
特定の実施態様において、有機繊維は、本発明による織られているハイブリッド布帛の全重量の少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、特に少なくとも50重量%、特に少なくとも60重量%、特に少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%を示す。
【0081】
特定の実施態様において、無機繊維は、本発明による織られている混合布帛の全重量の少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、特に少なくとも50重量%、特に少なくとも60重量%、特に少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%を示す。
【0082】
特定の実施態様において、本発明のハイブリッド布地は、5~95重量%の有機繊維、5~95重量%の無機繊維、及び0~50重量%の上記の添加剤から選択される1又は複数の添加剤を含有している。
【0083】
好ましい実施態様において、ハイブリッド布地は、50~90重量%、好ましくは60~90重量%、より優先的には70~90重量%、より優先的には80~90重量%の天然有機繊維、及び10~50重量%、好ましくは10~30重量%、より優先的には10~20重量%の無機繊維を具備しており、これらの比率は、天然有機繊維及び無機繊維の全質量に対して表している。
【0084】
特定の実施態様によれば、本発明によるハイブリッド布地は、織ることにより得られる、織られている布地である。
【0085】
織ることは、1つの同一の平面において、「経」の方向にある第一の方向に配置されている糸、及び「緯」の方向にある、好ましくは経糸に対して垂直な別の方向に配置されている糸を織り交ぜることである。複数の組合せを想定することができるが、最終の布帛は、互いに共に織られている天然有機繊維及び無機繊維を常に有することとなる:
-100%の天然有機繊維で構成されている緯糸及び100%の無機繊維で構成されている経糸;
-100%の無機繊維で構成されている緯糸及び100%の天然有機繊維で構成されている経糸;
-少なくとも99重量%の有機繊維で構成されている緯糸及び少なくとも99重量%の無機繊維で構成されている経糸;
-少なくとも70重量%の有機繊維で構成されている緯糸及び少なくとも70重量%の無機繊維で構成されている経糸;
-ハイブリッドの緯糸及び100%の有機繊維で構成されている経糸;
-ハイブリッドの緯糸及び100%の無機繊維で構成されている経糸;
-ハイブリッドの経糸及び100%の有機繊維で構成されている緯糸;
-ハイブリッドの経糸及び100%の無機繊維で構成されている緯糸;又は
-ハイブリッドの緯糸及びハイブリッドの経糸。
【0086】
特定の実施態様において、本発明のハイブリッド布地は、織ることにより得られ、かつ経糸及び/又は緯糸が、単位長さ当たり1本超の糸、すなわち1cm当たり2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、11本、12本、13本、14本、15本、16本、17本、18本、19本、20本、20~30本、30~40本、40~50本、50~60本、60~70本、70~100本の糸を具備していることを特徴としている。
【0087】
紡績業が非常に様々な線重量(糸の単位グラム/1000メートルでの重量)(例えば34~10000tex)を有する糸を供給できることを考慮すれば、所望の重量を有する布帛を得ることが可能である。例えば、低減された線重量の糸を、経糸及び/又は緯糸の方向で組み合わせることにより、低重量の布帛を得ることが可能である。
【0088】
それによれば、好ましい実施態様においては、経糸は、有機繊維をベースとする1又は複数の糸及び/又は無機繊維をベースとする1又は複数の糸及び/又は1又は複数のハイブリッド糸を具備している;かつ緯糸は、有機繊維をベースとする1又は複数の糸及び/又は無機繊維をベースとする1又は複数の糸及び/又は1又は複数のハイブリッド糸を具備している。異なる糸(有機、無機及びハイブリッド糸)の種々の可能性及び組織は、上に記載している。
【0089】
好ましい実施態様においては、本発明のハイブリッド布帛は、織ることにより製造され、50~90重量%の天然有機繊維、好ましくは亜麻繊維、10~50重量%の無機繊維、好ましくはガラス繊維、及び0~50重量%の上記の添加剤、例えばサイズ剤から選択される1又は複数の添加剤を含有している;かつ、経糸が1cm当たり2本の天然有機糸、好ましくは亜麻糸、及び無機糸、好ましくはガラス板を具備しており、緯糸が1cm当たり1又は複数本の有機糸、好ましくは亜麻糸を具備している。
【0090】
概して、本発明において用いる糸は、10~10000tex、特に34~5000tex、特に100~1000tex、特に500~3000texの線重量を有する。好ましくは糸の線重量は、300~2500texである。有利には、有機糸の線重量は、無機糸の線重量よりも小さい。
【0091】
織られているハイブリッド布地は、有利には以下を有する:
-30mm未満、好ましくは0.2mm~5mm、特に1~4mm、特に1.5~3mm、好ましくは2~3.5mmの厚さ、及び/又は
-30~3000g/m2、好ましくは100~2000g/m2、好ましくは100~1200g/m2、好ましくは100~1000g/m2の単位面積当たりの重量。
【0092】
本発明の更なる目的は、本発明のハイブリッド布地により補強された複合材料の製造を可能とすることである。
【0093】
この目的のため、幾つかの本発明によるハイブリッド布地を、重ねること及び組み合わせることができる。各々のハイブリッド布地及びハイブリッド布地のアセンブリは、好ましくはポリマーマトリックスを作っているポリマーに対して浸透性である。この透過性は、糸の確実な可動性を可能とする比較的緩やかな構造、又はポリマー組成物の通過を可能とする孔若しくはオープンループにより確実にされている。
【0094】
更には、ポリマーマトリックスに対して浸透性とするため、本発明によるハイブリッド布地は、孔又はオープンループを塞ぎ得るバインダー又は上塗りを含まない。
【0095】
本発明によるハイブリッド布地又は本発明によるハイブリッド布地のアセンブリは、複合材を作る観点から、ポリマーマトリックスで直接含侵させてもよく、又はプリプレグと称される、ポリマーマトリックス中に埋設されることとなる半製品の製造のために用いてもよい。
【0096】
プリプレグは、好ましくは、ハイブリッド布地を、熱可塑性又は熱可塑性樹脂組成物、好ましくは熱硬化性樹脂で含侵することにより製造する。ハイブリッド布地の有機樹脂によるこの先立った含侵は、知られているように、ポリマーマトリックスを有する布地補強材の適合性を向上させることにより、複合材の製造を促進する。
【0097】
プリプレグにおける樹脂の量は、概してプリプレグの全重量に対して、5~30重量%、好ましくは10~25重量%である。
【0098】
特定の実施態様において、上記のように、複合材は、本発明による布帛の幾つかの層を具備していてよい。任意選択的に、本発明のハイブリッド布地の層は、不織の布地の層、又はハイブリッドではない他の布地の層と組み合わせて用いることができる。
【0099】
特定の実施態様によれば、本発明の補強材は、最大で50層、特に2~10層、特に5~20層、特に20~30層、好ましくは4~15層の本発明のハイブリッド布地を有する。層の数は、所望の用途及び複合材のタイプに応じて選択される。
【0100】
本発明の補強材の構成に含まれる、織られている本発明のハイブリッド布地は、30~3000g/m2、好ましくは100~2000g/m2、有利には100~1200g/m2、更に良いのは100~1000g/m2で変化する単位面積当たりの重量を有する。
【0101】
マトリックスは、熱可塑性、例えば以下であってよい:ポリエステル、ビニルエステル 樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ(ビスマレイミド)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)。
【0102】
植物繊維の劣化温度は、200℃~230℃であることに注意すべきである。
【0103】
マトリックスは、熱硬化性樹脂、例えば尿素-ホルムアルデヒド(UF)樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド(MF)樹脂又はフェノール-ホルムアルデヒド(PF)樹脂、ポリエポキシド又はエポキシド(EP)、ポリビスマレイミド(BMI)、熱硬化性ポリイミド(PIRP)、架橋ポリウレタン(PUR)、不飽和ポリエステル(UP)、ビニルエステル(VE)、加硫エラストマー、ポリイソシアヌレート及びポリシロキサンをベースとしていてもよい。
【0104】
上述の記載を通して、及び請求項において、反対の言及のない限り、表現「含んでいる」及び「含有している」は、それぞれ表現「少なくとも1つ含んでいる」及び「少なくとも1つ含有している」の同義語であると理解されなければならない。
【0105】
記載全体を通して、数値範囲は、反対の言及のない限り、境界値を含むものとして理解される。
【0106】
本発明の複合材を作るための方法
本発明の織られているハイブリッド布地を具備している本発明の複合材は、複合材を与え、かつ樹脂が本発明の補強材の織物に入り込み、そして織物を含侵する随意のタイプの複合材の製造方法により得ることができる。この製造方法は、例えば押出し、注入又は真空注入、液体樹脂の低圧射出成形(RTM)、「ハンドレイアップ」、SMC(シート成形化合物)、オートクレーブ及びバルク成形(BMC)による方法であってよい。
【0107】
最終の複合材は、概して考えられる最良の耐衝撃性、考えられる最も少ない制御されていない多孔性(非意図的に閉じ込められた気泡が存在しない)、及び考えられる最良の表面の外観、特に最終の部品の縁(狭い面)の外観を有する筈である。
【0108】
本発明の複合補強材の利点は、特に天然繊維に相当するその低重量に起因するが、この複合補強材は、天然繊維よりも良好な機械的特性、例えば良好な耐衝撃性を有する。
【0109】
本発明は、特に、中でも輸送産業、スポーツ産業、エネルギー産業、建築、建設、医療産業のための複合材の製造における用途を見出している。これらの用途においては、機械的強度に対する制約への適切な対応が存在しつつ、対象物を軽く維持する筈である。
【実施例】
【0110】
本発明による布帛、本発明による補強材、及び本発明による複合材によりもたらされる利点は、本発明を説明するが、それに限定しない次の例からより良好に認識されよう。
【0111】
図1は、共に織られている亜麻糸及びガラス繊維糸を有する、織られているハイブリッド布帛の4つの例を示している。これらの例においては、共に織る種々の方法(平織、2/2綾織)を用いて、繊維のこの組合せを得た。
【0112】
用いる糸は以下のとおりである:
-撚りのない亜麻糸-DEHONDTからのNattex、1300tex
-撚りのないガラス繊維糸-VetrotexからのZerotwist、2400tex(EC22 2400 T99C)(緯糸);及び/又は
-撚りのないガラス繊維糸-VetrotexからのZerotwist、2040tex(EC20 2040 T99C)(経糸)。
【0113】
亜麻糸は、サイジングされており、それによって、亜麻糸に機械的耐久性及び織機で織っている間の結合がもたらされる。このサイジングはまた、最終の複合材の作製の間に用いるポリマーマトリックスに適合する。
【0114】
以下の表1は、B1~B10を割り振った種々のサンプルを示している。この表は、種々の布帛、すなわちここで考慮している例の性質を示す:文字Fは、亜麻を示しており、文字Gは、ガラスを示しており、数字は、g/m2で示す重量を示している各々のサンプルの参照番号、経糸のタイプ、緯糸のタイプ、及び織りのタイプ(平織のついてのP及び綾織についてのT)。
【0115】
比較サンプルB1及びB4は、1300texの亜麻のみから構成されている、平織(P)の状態の布帛及び2/2綾織(T)の状態の布帛である。
【0116】
比較サンプルB7及びB8は、2400texのガラス繊維糸のみから構成されている、平織(P)の状態の布帛及び2/2綾織(T)の状態の布帛である。
【0117】
比較サンプルB9及びB10は、2つのタイプの重量、すなわちそれぞれ350g/m2及び600g/m2を有する、それぞれ亜麻及びガラスの不織布である。
【0118】
本発明によるサンプルB2、B3、B5及びB6は、亜麻及びガラスの織られているハイブリッド布地からのものである。
【0119】
サンプルB2は、850g/m2の重量を有し、かつ経糸の状態の亜麻糸(1300tex)及び緯糸の状態のガラス繊維糸(2400tex)で構成されている、平織の状態のハイブリッド布地である。
【0120】
サンプルB3は、850g/m2の重量を有し、かつ経糸の状態の亜麻糸(1300tex)及び緯糸の状態のガラス繊維糸(2400tex)で構成されている、2/2綾織の状態のハイブリッド布地である。
【0121】
サンプルB5は、575g/m2の重量を有し、かつ一方では、経糸の状態の1本のガラス繊維糸(2040tex)に対して2本の亜麻糸(1300tex)で構成されており、他方では、緯糸の状態の亜麻糸(1300tex)で構成されている、平織の状態のハイブリッド布地である。
【0122】
サンプルB6は、550g/m2の重量を有し、かつ一方では、経糸の状態の1本のガラス繊維糸(2040tex)に対する1本の亜麻糸(1300tex)で構成されており、他方では、緯糸の状態の亜麻糸(1300tex)で構成されている、平織の状態のハイブリッド布地である。
【0123】
【0124】
表1に記載した種々の布地(B1-B10)は、真空注入技術による10個の複合材R1~R10の製造のための補強材として用いる。示した例においては、樹脂は、オルトフタルポリエステル(POLYNT Compositesから得られるNORSODYNE I15284)である。この樹脂は、オルソ樹脂に分類され、約20℃の温度でキャストされる低温キャスト材料である。用いる触媒材料は、有機ペルオキシド(SF Compositesから得られるPMEC)であり、用いる促進剤は、FOURNIER Compositesから得られる、6%の活性酸素を有するコバルトオクタノエートである。
【0125】
このようにして、表1の布地により補強された複合材の構造を得る。表2は、得られた複合材(R1~R10)を、それらの特性、例えば(重量比率での)亜麻の量、(重量比率での)ガラスの量、布帛の層の数、(mmでの)補強材の厚さ、補強材の体積比率及び得られた複合材の密度とともに示している。
【0126】
【0127】
ここで、考慮している布地の性質を測定する方法を記載しよう。
【0128】
まず、種々の機械的試験を実施して、100%の亜麻又は100%のガラスを具備している布帛及び不織の布地と比較した、本発明の織られているハイブリッド布地により補強された複合材の性能を評価した。
【0129】
複合材の引張弾性率を評価するための試験を、標準規格NF EN ISO 527-4 July 97-Type 3の仕様に従って実施した。
【0130】
それによれば、引張試験のための関連した試験条件は以下のとおりである:
-標準規格NF EN ISO 527-4 July 1997-Type 3に従う引張試験条件;
-試験条件:21.6℃、51.3%RH;
-状態:乾燥;
-予圧:1MPa;
-試験速度:2mm/min;及び
-L0-標準進行:50mm。
【0131】
複合材の曲げ弾性率を評価するための試験を、標準規格NF EN ISO 14125の仕様に従って実施した。
【0132】
曲げ試験のための関連する基準及び試験条件は以下のとおりである:
-標準規格NF EN ISO 14125に従う3点曲げ試験の条件:
-試験条件:21.5℃、50.5%RH
-コンディショニング:乾燥
-予圧:10N
-試験速度:5mm/min
-支点間距離:81mm
-支持ローラーの半径:5mm
-曲げパンチの半径:5mm
-センサー間距離:96mm
【0133】
表3Aは、経糸方向及び緯糸方向での測定により各々得られる引張弾性率の値を示している。
【0134】
表3Bは、経糸方向及び緯糸方向での測定により各々得られる曲げ弾性率の値を示している。
【0135】
【0136】
織られている補強材(サンプルR1-R8)を有する複合材は、不織の補強材(サンプルR9及びR10)を有する複合材よりも高く、特に亜麻繊維をベースとする不織布(R9)についてよりも高い引張強度を有することが注目されよう。
【0137】
100%のガラスを有する(サンプルR7及びR8)か、又は高含有率のガラスを有する(サンプルR2及びR3)織られている補強材を有する複合材は、比較的類似する引張弾性率及び曲げ弾性率を有し、すなわち、ガラス繊維の一部をより軽い天然繊維に置き換えることは、機械的性質の有意な損失をもたらさない。
【0138】
本発明による補強材による複合材の利点を説明するため、種々の複合材の耐衝撃性を測定した。それによれば、本発明による補強材を具備している各々の布帛(R2、R3、R5及びR6)、並びに不織布の補強材を具備している複合材に対応する対照複合材(R9及びR10)、及び100%の亜麻(R1及びR4)及び100%のガラス(R7及びR8)で作られた、織られている補強材について試験を実施した。得られた結果を、以下の表4にまとめる。
【0139】
【0140】
各々の複合材についての最大衝撃力及び衝撃深さを与える表4からわかるように、本発明による補強材R2、R3、R4、R5、R6を具備している複合材は、非常に良好な耐衝撃性を有する。
【0141】
20%のガラス含有率を有する複合材R5及びR6が、100%のガラス繊維糸で構成されている、織られているサンプルの耐衝撃性に相当する優れた耐衝撃性を有することに注目すべきである。
【0142】
換言すれば、80%付近のガラス繊維をより軽い亜麻繊維に置き換えたにも関わらず、複合材の耐衝撃性が保持される。
【0143】
本発明による補強材を具備している複合材は、優れた機械的性質、例えば満足のいく曲げ弾性又は引張弾性、及び優れた耐衝撃性のいずれも有する。それらは、100%のガラス繊維で構成されている布地により補強されている同等の複合材よりも軽い。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1~12に記載する。
〈項目1〉ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石英繊維及びシリカ繊維から選択される無機繊維、並びに天然有機繊維を具備しており、前記無機繊維及び前記天然有機繊維が、互いに、共に織られ、共に組まれ、又は共に編まれていることを特徴とする、ハイブリッド布地。
〈項目2〉前記無機繊維が、ガラス繊維であることを特徴とする、項目1に記載のハイブリッド布地。
〈項目3〉5~95重量%の天然有機繊維及び5~95重量%の無機繊維を含有しており、これらの比率が、前記無機繊維及び天然有機繊維の全体に対して示した比率であることを特徴とする、項目1又は2に記載のハイブリッド布地。
〈項目4〉50~90重量%、好ましくは60~90重量%、より好ましくは70~90重量%、より好ましくは80~90重量%の天然有機繊維、及び10~50重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~20重量%の無機繊維を含有しており、これらの比率は、前記無機繊維及び天然有機繊維の全体に対して表していることを特徴とする、項目1~3のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
〈項目5〉金属繊維を含有していないことを特徴とする、項目1~4のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
〈項目6〉前記天然有機繊維が、植物由来又は動物由来の繊維、好ましくは植物由来の繊維であることを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
〈項目7〉植物由来の前記天然有機繊維が、亜麻繊維、麻繊維、綿繊維、ジュート繊維、イラクサ繊維、サイザル繊維、ココナッツ繊維、ラフィア繊維、アバカ繊維からなる群より選択されることを特徴とする、項目1~6のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
〈項目8〉前記有機天然繊維が、亜麻繊維であり、かつ前記無機繊維が、ガラス繊維であることを特徴とする、項目1~7のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
〈項目9〉前記無機繊維及び前記天然有機繊維が、互いに独立して、10~10000texの線重量及び5~24μmの直径を有することを特徴とする、項目1~8のいずれか一項に記載のハイブリッド布地。
〈項目10〉以下を有することを特徴とする、項目1~9のいずれか一項に記載のハイブリッド布地:
-30mm未満、好ましくは0.2mm~5mm、好ましくは1mm~4mm、より好ましくは1.5~3mmの厚さ;及び/又は
-30~3000g/m
2
、好ましくは100~2000g/m
2
、より好ましくは100~1200g/m
2
、より好ましくは100~1000g/m
2
の単位面積当たりの重量。
〈項目11〉プリプレグであって、項目1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのハイブリッド布地、及び熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含有しており、かつ前記樹脂が、前記プリプレグの合計重量の20~45重量%、好ましくは25~40重量%を示す、プリプレグ。
〈項目12〉有機ポリマーマトリックス及び布地補強材を具備している複合材の製造のための、項目1~10のいずれか一項に記載のハイブリッド布地又は項目11に記載のプリプレグの使用。