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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/40 20060101AFI20220810BHJP
   B41F 15/36 20060101ALI20220810BHJP
   B41F 15/12 20060101ALI20220810BHJP
   B41F 15/14 20060101ALI20220810BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20220810BHJP
   B41F 15/26 20060101ALI20220810BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20220810BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B41F15/40 B
B41F15/36 Z
B41F15/12 A
B41F15/14 C
B41F15/08 303E
B41F15/26 A
B41M1/12
H05K3/34 505D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019009918
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020116824
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】玉木 英一
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-256743(JP,A)
【文献】特開2011-161724(JP,A)
【文献】特開平6-71847(JP,A)
【文献】特開2008-307864(JP,A)
【文献】特開2015-189015(JP,A)
【文献】特開2016-129935(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0116871(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2015-0088550(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2009-0087191(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00-15/46
B41M 1/00-3/18
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業位置に位置する生産用マスクに対してスキージを摺動させて前記生産用マスクに設けられた開口部を介して前記生産用マスク上の塗布材を基板に印刷する印刷装置であって、
前記生産用マスクと前記塗布材のローリングに用いられるローリング用マスクとを収納可能な収納部を有し、前記生産用マスクおよび前記ローリング用マスクのうちの一方を前記作業位置から前記収納部に移動させるとともに他方を前記収納部から前記作業位置に移動させて前記作業位置に位置するマスク種を交換するマスク交換部と、
前記作業位置に位置するマスクに対し、前記マスク上からの塗布材の掬い上げと掬い上げた前記塗布材の前記マスク上への戻しとを実行する塗布材移載部と、
前記作業位置で前記スキージを移動させるスキージ駆動部と、
前記マスク交換部、前記塗布材移載部および前記スキージ駆動部を制御して前記塗布材のローリングを行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記作業位置に位置する前記生産用マスク上からの前記塗布材の掬い上げ、前記生産用マスクに代えて前記作業位置に前記ローリング用マスクに位置させるマスク交換、前記作業位置に位置する前記ローリング用マスク上への掬い上げた前記塗布材の取り降ろしを行った後で、前記作業位置での前記ローリング用マスクに対する前記スキージの摺動により前記ローリングを行うローリング制御機能部を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記基板への前記塗布材の印刷を行わない生産待機中に前記生産用マスク上の前記塗布材が前記印刷に不適合な粘度状態に変化するか否かを判定する粘度判定機能部を有し、
前記ローリング制御機能部は、前記粘度判定機能部により前記塗布材が前記印刷に不適合な粘度状態に変化すると判定された場合に、前記ローリングを実行する印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記粘度判定機能部は前記生産待機の経過時間に基づいて前記粘度状態を判定する印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記ローリングの実行指示を受け付ける入力部と、前記入力部により前記ローリングの実行指示を受けた時点で直ちに前記印刷を中断させる、あるいは実行中の前記印刷の完了後に次の印刷を中断させる生産制御機能部とを有し、
前記ローリング制御機能部は、前記生産制御機能部による印刷の中断後に、前記ローリングを実行する印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記収納部に前記ローリング用マスクが収納されているか否かを判定する収納判定機能部を有し、
前記ローリング制御機能部は、前記収納判定機能部により前記ローリング用マスクが未収納であると判定された場合に、前記ローリングの実行を規制する印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、
前記収納部に収納されているマスク種を検出するマスク種検出部を備え、
前記収納判定機能部は、前記マスク種検出部の検出結果に基づいて前記収納部での前記ローリング用マスクの収納を判定する印刷装置。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷装置であって、
前記生産用マスクおよび前記ローリング用マスクには、それぞれマスク種を特定するための識別情報が付与され、
前記マスク種検出部は前記識別情報を読み取って前記検出結果として前記収納判定機能部に与えるリーダーである印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記ローリング用マスクは前記生産用マスクよりも厚肉の平板形状を有する印刷装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記マスク交換部は、
前記生産用マスクを収納する別の収納部をさらに有して2枚の前記生産用マスクを収納可能に構成され、
前記2枚の生産用マスクのうちの一方を前記作業位置から前記収納部に移動させるとともに他方を前記収納部から前記作業位置に移動させて印刷に使用する生産用マスクを交換する印刷装置。
【請求項10】
作業位置に位置する生産用マスクに対してスキージを摺動させて前記生産用マスクに設けられた開口部を介して前記生産用マスク上の塗布材を基板に印刷する印刷工程を断続的に行う印刷方法であって、
前記印刷工程と並行して前記塗布材のローリングに用いられるローリング用マスクを前記作業位置から離れて配置された収納部に収納して待機させる待機工程と、
前記印刷工程の完了から次の前記印刷工程の開始までの間に前記塗布材のローリングを行うローリング工程と、を備え、
前記ローリング工程は、
前記作業位置に位置する前記生産用マスク上から前記塗布材を掬い上げる工程と、
前記塗布材が掬い上げられた前記生産用マスクを前記収納部に移動させるとともに前記収納部から前記作業位置に前記ローリング用マスクを移動させる工程と、
前記作業位置に位置する前記ローリング用マスク上に掬い上げた前記塗布材を取り降ろした後で前記ローリング用マスクに対して前記スキージを摺動させて前記塗布材をローリングさせる工程と
を有し、
前記次の印刷工程では、前記作業位置から前記ローリング用マスクを移動させるとともに前記生産用マスクを前記作業位置に移動させた後で、前記ローリング工程によりローリングされた前記塗布材を用いて印刷を行う
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業位置に位置する生産用マスクに対してスキージを摺動させて生産用マスクに設けられた開口部を介して生産用マスク上の塗布材を基板に印刷する印刷技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリームはんだなどの塗布材が供給されたマスクの下面に基板をセットした状態でスキージをマスク上で摺動させることで、マスクに設けられた開口部に対応するパターンで基板に塗布材を印刷する印刷装置が知られている。マスク上に供給された塗布材は空気に曝されることで徐々に乾燥する。そして、塗布材の乾燥が一定以上進行すると、塗布材の機能が失われる。例えば塗布材としてクレームはんだを塗布する主たる目的ははんだを介して基板に電子部品を良好に実装することであるが、乾燥の進行によってはんだ(塗布材)の粘度が増大し、はんだを基板に良好に印刷することができない場合があった。このような印刷不良を抱えたまま部品実装を行うと、基板に対する電子部品の接合が不十分となって実装不良が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、マスクの上面のうち開口部を避けたエリアでスキージによって塗布材を往復移動させて練り合わせる工程、いわゆるローリング工程を行って塗布材の粘度を低下させる技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-216376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の印刷装置では、所望のパターンで塗布材が印刷された基板を生産するために使用するマスク、いわゆる生産用マスクを用いて塗布材のローリングを行っている。このため、生産用マスクは、基板への塗布材の印刷時に加えてローリング工程においてもスキージと摺接し、摩耗する。このことが生産用マスクの寿命を縮める主要因のひとつとなっている。
【0006】
また、生産用マスクを用いてローリング工程を実行する場合、スキージの移動範囲は大きく制限される。つまり、ローリングを実行することができるのは生産用マスクのうち開口部を設けていない一部のエリア、より具体的にはマスクエッジに限定される。したがって、塗布材のローリングのためにスキージが移動できる距離はわずかであり、その限られたエリアでスキージの移動方向を頻繁に切り替えながら往復移動させる必要がある。その結果、2つの問題がさらに生じる。そのうちのひとつはマスクエッジでのスキージとの摺接回数の増加によって生産用マスクの短寿命化をさらに加速するという問題である。もうひとつは、スキージにより塗布材がスキージの移動方向においてローリングされる距離、つまりローリング距離をマスクエッジに相当する値に限定せざるを得ず、塗布材を良好な粘度に保つことが困難であるという問題である。すなわち、塗布材のローリング距離が短くなることで、塗布材の特性によっては塗布材の粘度を十分に低下させることが難しくなる。また、適切な低粘度状態を維持させることが難しくなることもある。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、生産用マスクを用いて塗布材を基板に印刷する印刷技術において、生産用マスクの寿命を短縮させることなく塗布材を良好な粘度に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1態様は、作業位置に位置する生産用マスクに対してスキージを摺動させて生産用マスクに設けられた開口部を介して生産用マスク上の塗布材を基板に印刷する印刷装置であって、生産用マスクと塗布材のローリングに用いられるローリング用マスクとを収納可能な収納部を有し、生産用マスクおよびローリング用マスクのうちの一方を作業位置から収納部に移動させるとともに他方を収納部から作業位置に移動させて作業位置に位置するマスク種を交換するマスク交換部と、作業位置に位置するマスクに対し、マスク上からの塗布材の掬い上げと掬い上げた塗布材のマスク上への戻しとを実行する塗布材移載部と、作業位置でスキージを移動させるスキージ駆動部と、マスク交換部、塗布材移載部およびスキージ駆動部を制御して塗布材のローリングを行う制御部と、を備え、制御部は、作業位置に位置する生産用マスク上からの塗布材の掬い上げ、作業位置に位置するマスク種のローリング用マスクへの交換、作業位置に位置するローリング用マスク上への掬い上げた塗布材の戻しを行った後で、作業位置でのローリング用マスクに対するスキージの摺動によりローリングを行うローリング制御部を有することを特徴としている。
【0009】
また、この発明の第2態様は、作業位置に位置する生産用マスクに対してスキージを摺動させて生産用マスクに設けられた開口部を介して生産用マスク上の塗布材を基板に印刷する印刷工程を断続的に行う印刷方法であって、印刷工程と並行して塗布材のローリングに用いられるローリング用マスクを作業位置から離れて配置された収納部に収納して待機させる待機工程と、印刷工程の完了から次の印刷工程の開始までの間に塗布材のローリングを行うローリング工程と、を備え、ローリング工程は、作業位置に位置する生産用マスク上から塗布材を掬い上げる工程と、塗布材が掬い上げられた生産用マスクを収納部に移動させるとともに収納部から作業位置にローリング用マスクを移動させる工程と、作業位置に位置するローリング用マスク上に掬い上げた塗布材を戻した後でローリング用マスクに対してスキージを摺動させて塗布材をローリングさせる工程とを有し、次の印刷工程では、作業位置からローリング用マスクを移動させるとともに生産用マスクを作業位置に移動させた後で、ローリング工程によりローリングされた塗布材を用いて印刷を行うことを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、塗布材のローリングは生産用マスクではなくローリング用マスクで行われる。つまり、作業位置に位置する生産用マスク上から塗布材が掬い上げられた後で、生産用マスクが収納部に移動させるとともに収納部から作業位置にローリング用マスクが移動されて作業位置でのマスク交換が行われる。そして、作業位置に位置するローリング用マスク上に塗布材が戻された後でローリング用マスクに対してスキージが摺動して塗布材を練り合わせて粘度を下げる。このように生産用マスクを用いることなく、ローリング専用のマスクを用いて塗布材のローリングが行われる。したがって、塗布材のローリングのために生産用マスクを使用することなく、塗布材が良好な粘度に保たれる。その結果、生産用マスクの長寿命化を図りつつ適正な粘度の塗布材を基板に印刷することが可能となっている。また、塗布材のローリング中に、収納部に収納されている生産用マスクを次の印刷に使用する別の生産用マスクと交換することも可能であり、いわゆる印刷の段取りを効率的に行うことができる。
【0011】
ここで、塗布材のローリングは基板への塗布材の印刷を行わない生産待機中に実行されるが、生産待機毎に実行してもよいし、一定条件下でローリングの実行と実行停止とを切り替えてもよい。例えば、基板への塗布材の印刷を行わない生産待機中に生産用マスク上の塗布材が印刷に不適合な粘度状態に変化するか否かを判定し、塗布材が印刷に不適合な粘度状態に変化すると判定された場合に、ローリングを実行してもよい。このような判定に基づいてローリングの実行および実行停止を切り替えることで過剰なローリング実行を回避してランニングコストの低減を図ることができる。
【0012】
また、上記粘度状態の判定については、例えば基板への塗布材の印刷を行わない生産待機時間に基づいて行ってもよく、これによってローリングの実行および実行停止を適切に切り替えることができる。
【0013】
また、ローリングの実行指示を受け付ける入力部を設け、当該入力部によりローリングの実行指示を受けた時点で直ちに印刷を中断し、ローリングを直ちに実行するように構成してもよい。これにより、入力部を介してローリングの実行指示を行ったオペレータの意図を確実に反映させることができる。また、ローリングの実行指示を受け付けた時点で印刷が行われている場合がある。そこで、実行中の印刷の完了後に次の印刷を中断させた後でローリングを実行するように構成してもよい。これにより仕掛中の基板への印刷を無駄にせず、効率的な印刷を行うことができる。
【0014】
また、本発明では、塗布材のローリングにはローリング用マスクが欠かせないため、収納部にローリング用マスクが収納されているか否かを判定し、ローリング用マスクが未収納であると判定された場合に、ローリングの実行を規制するように構成してもよい。
【0015】
また、上記のようにローリング用マスクの収納の有無を判定するために、収納部に収納されているマスク種を検出するマスク種検出部を設け、マスク種検出部の検出結果に基づいて収納部でのローリング用マスクの収納を判定するように構成してもよい。マスク種検出部によりローリング用マスクの収納の有無を確実に判定することができ、ローリングを適切に行うことができる。
【0016】
また、マスク種検出部によるローリング用マスクの収納判定をより確実に行うために、例えば生産用マスクおよびローリング用マスクにそれぞれマスク種を特定するための識別情報を付与しておき、リーダーにより識別情報を読み取って収納判定に用いてもよい。これにより、ローリング用マスクの収納有無をより確実に判定することができる。
【0017】
また、ローリング用マスクとしては、生産用マスクよりも厚肉の平板形状を有するものを使用するのが望ましい。このようなローリング用マスクを用いることで、マスク剛性が高まり、ローリング用マスクの下方に基板が配置されている場合はもちろんのこと、基板が配置されていない場合であっても、スキージの摺動によりローリング用マスクが変形するのを防止し、塗布材のローリングを安定して行うことができる。
【0018】
さらに、マスク交換部が、生産用マスクを収納する別の収納部をさらに有して2枚の生産用マスクを収納可能に構成され、しかも、2枚の生産用マスクのうちの一方を作業位置から収納部に移動させるとともに他方を収納部から作業位置に移動させて印刷に使用する生産用マスクを交換可能となるように構成してもよい。この場合、塗布材のローリング中での生産用マスクの交換だけではなく、生産用マスクを用いた印刷中に、収納部に収納されている生産用マスクを次の印刷に使用する別の生産用マスクと交換することも可能であり、印刷の段取りをさらに効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塗布材のローリングを生産用マスクではなくローリング用マスクで行うために、生産用マスクの寿命を短縮させることなく塗布材を良好な粘度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る印刷装置の第1実施形態の全体構成を示す模式的な平面図である。
図2図1のII-II線に沿った模式的な断面図である。
図3図1に示す印刷装置の模式的な側面図である。
図4図1ないし図3に示す印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図5図1に示す印刷装置において実行されるはんだのローリング処理を示すフローチャートである。
図6】はんだのローリング処理の主要動作を模式的に示す図である。
図7】はんだ掬い動作を模式的に示す図である。
図8】はんだ取り降ろし動作を模式的に示す図である。
図9】本発明に係る印刷装置の第2実施形態において実行されるはんだのローリング処理を示すフローチャートである。
図10】本発明に係る印刷装置の第3実施形態におけるマスク交換ユニットの電気的な構成を示すブロック図である。
図11】第3実施形態において実行されるはんだのローリング処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は本発明に係る印刷装置の第1実施形態の全体構成を示す模式的な平面図である。図2図1のII-II線に沿った模式的な断面図である。図3図1に示す印刷装置の模式的な側面図である。さらに、図4図1ないし図3に示す印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。図1に示すように、印刷装置1は、一対のコンベア12により基板B(図2参照)をX1方向に搬送し、印刷位置において基板Bにはんだ(図6中の符号S)を印刷する装置である。基板Bは、部品(電子部品)が実装されるプリント基板である。また、はんだは基板B上に部品を接合するための接合材である。また、以下の説明では、一対のコンベア12(ベルトコンベア)による基板Bの搬送方向(X1方向)およびその逆方向(X2方向)をX方向とし、水平面内においてX方向に略直交する方向をY方向とする。また、X方向およびY方向に略直交する方向をZ方向(上下方向)とする。
【0022】
印刷装置1は、搬入コンベア1aにより基板Bを搬入し、搬入した基板Bの表面に対してマスクMに形成された印刷パターンPaにより印刷処理を行った後、印刷処理が行われた基板Bを搬出コンベア1bにより搬出するように構成されている。なお、第1実施形態では、後で詳述するように、上記のように印刷に使用して基板Bを生産するマスクM以外にはんだのローリングに使用する専用のマスクが存在している。そこで、両者を区別して説明する際には、基板Bの生産に直接的に使用するマスクを「生産用マスクMp」と称し、はんだのローリングに使用する専用のマスクを「ローリング用マスクMr」と称する。一方、両者を区別することなく説明する際には、単に「マスクM」と称する。
【0023】
これら2種類のマスク種のうち生産用マスクMpは、図1に示すように、平面視において(Z1方向側から見て)矩形形状の平板形状を有する。生産用マスクMpは、印刷パターンPaを形成する複数の開口部P1と、複数の開口部P1以外の領域である非開口部P2とを有する。また、生産用マスクMpには、外周部にフレームFが取り付けられている。なお、図1図3では、生産用マスクMpによる印刷処理を行うための作業位置Wから後述するマスク交換ユニット7に生産用マスクMpを移動させた状態を図示している。一方、ローリング用マスクMrは生産用マスクMpと同一の平面サイズを有する平板形状を有している。ただし、ローリング用マスクMrは開口部を有さず、しかも生産用マスクMpよりも厚肉であり、その結果、比較的高い剛性を有している。なお、生産用マスクMpおよびローリング用マスクMrの使い分けについては後で詳述するが、厚肉のローリング用マスクMrを用いることで次のような作用効果が得られる。すなわち、後で説明するようにローリング用マスクMrの下方に基板Bが配置されている場合はもちろんのこと、基板Bが配置されていない場合であっても、スキージの摺動によりローリング用マスクMrが変形するのを防止し、はんだのローリングを安定して行うことができる。
【0024】
印刷装置1は、図2に示すように、基台2と、印刷テーブルユニット3と、カメラユニット4と、マスククランプ部材5と、スキージユニット6と、マスク交換ユニット7と、検知センサ81,82と、制御ユニット9(図4参照)と、を備える。
【0025】
印刷テーブルユニット3は、基台2上に設けられ、基板Bを保持するとともに、生産用マスクMpに対して位置合わせするように構成されている。具体的には、印刷テーブルユニット3は、X軸移動機構(図示せず)と、Y軸移動機構(図示せず)と、R軸移動機構(図示せず)と、Z軸移動機構(図示せず)と、印刷テーブル11と、一対のコンベア12(図1参照)と、を含む。
【0026】
X軸移動機構は、駆動源としてX軸駆動部13(図4参照)を有し、印刷テーブル11をX方向に移動させる。Y軸移動機構は、駆動源としてY軸駆動部14(図4参照)を有し、印刷テーブル11をY方向に移動させる。R軸移動機構は、駆動源としてR軸駆動部15(図4参照)を有し、印刷テーブル11をZ方向に延びる回転軸線周りに回転移動させる。Z軸移動機構は、駆動源としてZ軸駆動部16(図4参照)を有し、印刷テーブル11をZ方向に移動させる。
【0027】
印刷テーブル11は、テーブル本体21と、テーブル本体21上に設けられる一対のブラケット部材22と、複数のバックアップピン23aが配置された支持板23と、支持板23をZ方向に移動させる支持板駆動部24とを有する。一対のブラケット部材22の各上部には、コンベア12(図1参照)が設けられている。バックアップピン23aは、支持板駆動部24により支持板23がZ1方向(上方向)に移動されることによって、基板Bを下方から支持するように構成されている。
【0028】
図1に示すように、一対のコンベア12は、X方向に沿って延びるように設けられている。また、一対のコンベア12は、Y方向に所定距離を隔てて互いに平行に配置されている。また、一対のコンベア12は、搬送する基板Bの幅に対応させてY方向の間隔を調整可能に構成されている。具体的には、一対のコンベア12は、基板幅軸駆動部12a(図4参照)により、Y方向の間隔(幅)が調整されるように構成されている。
【0029】
カメラユニット4は、図2および図3に示すように、生産用マスクMpおよび基板Bを撮像するように構成されている。具体的には、カメラユニット4は、カメラX軸移動機構31と、カメラY軸移動機構32と、基板カメラ33aおよびマスクカメラ33bを有する撮像部33とを有する。カメラX軸移動機構31は、X軸モータ31aと、X方向に延びるボールねじ31bとを有する。カメラY軸移動機構32は、Y軸モータ32aと、Y方向に延びるボールねじ32bとを有する。基板カメラ33aは、基板Bを撮像して、基板Bの印刷テーブル11に対する相対位置を認識するように構成されている。マスクカメラ33bは、マスクMを撮像して、マスクMの位置を認識するように構成されている。
【0030】
このように、印刷装置1では、基板カメラ33aおよびマスクカメラ33bを用いて生産用マスクMpに対する基板Bの相対位置を認識させた後、印刷テーブルユニット3のX軸移動機構、Y軸移動機構およびR軸移動機構によって生産用マスクMpに対する基板Bの相対位置(水平面内の位置および傾き)が正確に位置決めされる。そして、印刷装置1では、生産用マスクMpに対する基板Bの相対位置を正確に位置決めした状態で、印刷テーブルユニット3のZ軸移動機構によって基板Bが上昇されて生産用マスクMpの下面に当接される。また、マスクカメラ33bを用いてローリング用マスクMrが作業位置Wに位置したことを確認した後で、ローリング処理が実行される。このローリング処理については後で詳述する。
【0031】
マスククランプ部材5は、図3に示すように、生産用マスクMpを用いて基板Bに印刷パターンPaによりはんだを印刷する際やローリング用マスクMrを用いてローリング処理を実行する際、マスクMを作業位置Wに保持するように構成されている。具体的には、マスククランプ部材5は、マスクMのX1方向側の端部を保持する第1マスク保持部41と、マスクMのX2方向側の端部を保持する第2マスク保持部42と、第1マスク保持部41に設けられ、マスクMをX2方向側に押圧する押圧部(図示せず)とを有する。
【0032】
スキージユニット6は、図2および図3に示すように、Y方向に往復移動することにより、マスクMの上面上に供給されたはんだ(図6中の(f)欄参照)をマスクMの上面に沿って掻きながら移動させるように構成されている。具体的には、スキージユニット6は、スキージ51と、スキージ51を印刷方向(Y方向)に移動させるスキージY軸駆動部52と、スキージ51を上下方向(Z方向)に移動させるスキージZ軸駆動部53と、スキージ51をX方向に延びる回転軸線周りに回転させるスキージR軸駆動部54(図4参照)とを含む。
【0033】
スキージ51は、X方向に延びるように形成されている。スキージ51は、マスクMに対して所定の印圧(荷重)をかけながら生産用マスクMpに供給されたはんだを印刷し、ローリング用マスクMrに供給されたはんだを練り合わせるように構成されている。スキージY軸駆動部52は、Y軸モータ52aと、Y方向に延びるボールねじ52bとを有する。スキージZ軸駆動部53は、Z軸モータ53aと、ベルト53bと、Z方向に延びるボールねじ53cとを有する。
【0034】
スキージユニット6は、図2に示すように、マスクMをY方向にスライド移動させて、マスクMを交換する交換動作を行うマスクスライダ55を含む。ここで、スキージユニット6には、単一のマスクスライダ55が配置されている。マスクスライダ55は、Z方向(上下方向)に移動可能なスライド部55aと、スライド部55aを収容する収容部55bとを有する。マスクスライダ55は、たとえばエアシリンダにより構成されており、スライド部55aはエアシリンダのロッドにより構成され、収容部55bはエアシリンダのシリンダにより構成されている。
【0035】
マスクスライダ55は、スキージY軸駆動部52によりスキージ51をY方向に移動させることによって、一体的にY方向に移動するように構成されている。また、マスクスライダ55では、作業位置WのマスクMのフレームFに水平方向(Y方向)にスライド部55aが当接可能な位置まで、スライド部55aが収容部55bから突出するようにZ2方向(下方向)に移動する。マスクスライダ55では、作業位置WのマスクMのフレームFに水平方向(Y方向)にスライド部55aが当接しない位置まで、スライド部55aが収容部55b内に収容されるようにZ1方向(上方向)に移動する。
【0036】
このように、スキージ51とマスクスライダ55とは、スキージユニット6に一体的に設けられている。また、スキージユニット6の移動により、スキージ51およびマスクスライダ55は一体的にY方向に移動するように構成されている。そして、マスクスライダ55のスライド部55aは、マスクMのフレームFにY1方向またはY2方向から当接してマスクMをY1方向またはY2方向に移動させる。
【0037】
スキージユニット6は、マスクM上のはんだ(図6中の(a)~(e)欄参照)を掬い上げるはんだ掬い上げユニット56を含む。はんだ掬い上げユニット56は、マスクM上のはんだを掬い上げて保持する掬い上げ部56aを有する。掬い上げ部56aは、マスクM上のはんだを掬い上げるかまたは掬い上げたはんだをマスクM上に降ろすための下降位置と、マスクM上のはんだを掬い上げない上昇位置との間で、Z方向(上下方向)に移動可能に構成されている。はんだ掬い上げユニット56は、スキージY軸駆動部52によりスキージ51をY方向に移動させることによって、一体的にY方向に移動するように構成されている。はんだ掬い上げユニット56は、掬い上げ部56aが下降位置に配置された状態で、Y2方向に移動されることにより、掬い上げ部56aにマスクM上のはんだを掬い上げて保持する。また、はんだ掬い上げユニット56は、掬い上げ部56aが下降位置に配置された状態で、Y1方向に移動されることにより、掬い上げたはんだを掬い上げ部56aからマスクM上に降ろす。
【0038】
マスク交換ユニット7は、複数(2つ)のマスクMを収納可能に構成されている。具体的には、マスク交換ユニット7は、第1収納部61と、第2収納部62と、昇降部63(図4)とを含む。第1収納部61および第2収納部62は、それぞれ、1枚のマスクMを収納可能に構成されている。第1収納部61および第2収納部62は、上下方向に並んで配置されている。第1収納部61は、第2収納部62に対して上方に配置された上段の収納部である。第2収納部62は、第1収納部61に対して下方に配置された下段の収納部である。昇降部63は、第1収納部61および第2収納部62を上下方向に移動させるように構成されている。マスク交換ユニット7では、昇降部63が基台2に取り付けられている。マスク交換ユニット7では、第2収納部62が昇降部63に取り付けられている。マスク交換ユニット7では、第1収納部61が第2収納部62に取り付けられている。これにより、第1収納部61および第2収納部62は、昇降部63による昇降に伴い一体的に昇降する。なお、第1実施形態では、装置構成および動作の理解を容易にするために、以下のようにマスク収納が設定されている。図1に示すように、第1収納部61および第2収納部62に生産用マスクMpおよびローリング用マスクMrがそれぞれ収納されている。そして、以下においては、生産用マスクMpを用いた印刷処理を断続的に行うとともに、印刷処理完了から次の印刷処理の開始までの生産待機の間で適宜ローリング用マスクMrを用いたローリング処理を行う場合を例示して説明する。
【0039】
第1収納部61および第2収納部62は、第1収納部61に生産用マスクMpを出し入れするための下降位置と、第2収納部62にローリング用マスクMrを出し入れするための上昇位置との間で、Z方向(上下方向)に移動可能に構成されている。
【0040】
検知センサ81は、図2に示すように、マスククランプ部材5とマスク交換ユニット7とに跨った状態の生産用マスクMpを検知するように構成されている。また、検知センサ82は、図2に示すように、マスククランプ部材5とマスク交換ユニット7とに跨った状態のローリング用マスクMrを検知するように構成されている。具体的には、第1収納部61に設けられた検知センサ81は、作業位置Wと第1収納部61との間で生産用マスクMpを移動させる際、マスククランプ部材5と第1収納部61とに跨った状態で停止した生産用マスクMpを検知するように構成されている。第2収納部62に設けられた検知センサ82は、作業位置Wと第2収納部62との間でローリング用マスクMrを移動させる際、マスククランプ部材5と第2収納部62とに跨った状態で停止したローリング用マスクMrを検知するように構成されている。検知センサ81、82は、たとえば、透過型のセンサであり、光を照射する投光部(図示せず)と、投光部から照射された光を受光する受光部(図示せず)とを有する。
【0041】
また、図1図3への図示を省略しているが、マスククランプ部材5により作業位置Wに固定された生産用マスクMpの下面をクリーニングするためのクリーニングユニット10(図4)を有している。このクリーニングユニット10は、クリーナー(図6の(b)欄中の符号101)と、クリーナーY軸移動機構102(図4)と、を含む。クリーナーは、生産用マスクMpの下面と当接可能な高さに配置されており、作業位置Wに固定された生産用マスクMpからY2方向に離れたクリーニング待機位置と生産用マスクMpの直下位置との間を往復移動自在に設けられている。このクリーナーにクリーナーY軸移動機構102が接続されており、制御ユニット9の駆動制御部93からの指令に応じてクリーナーY軸移動機構102のクリーナーY軸移動部(図示せず)が作動することでクリーナーをY方向に移動させる。クリーナーが作業位置Wに固定された生産用マスクMpの下面と接触しながらクリーナーY軸移動機構102により移動されることで生産用マスクMpの下面を清掃する。
【0042】
制御ユニット9は、図4に示すように、主制御部91と、記憶部92と、駆動制御部93と、IO制御部94と、カメラ制御部95とを有する。主制御部91は、CPU(Central Processing Unit)を含む。記憶部92は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含み、基板データ、マシンデータおよび印刷プログラムなどを記憶している。主制御部91は、記憶部92に記憶された印刷プログラムに基づいて印刷装置1の各部を制御する機能を有する。ここで、基板データは、基板Bの種類の情報、基板Bのサイズの情報、基板Bの種類に対応する情報、はんだのローリングに用いられるローリング用マスクMrの情報および基板Bの種類毎の印刷枚数の情報などを含む。マシンデータは、スキージユニット6のY方向の移動限界位置の情報、カメラユニット4のX方向およびY方向それぞれの移動限界位置の情報、ならびにクリーナーのY方向の移動限界位置の情報などを含む。
【0043】
主制御部91は、駆動制御部93により、スキージユニット6を制御するように構成されている。具体的には、駆動制御部93により、スキージY軸駆動部52、スキージZ軸駆動部53およびスキージR軸駆動部54の駆動が制御されて、スキージ51がY方向およびZ方向に移動されるとともに、スキージ51がX方向に延びる回転軸線回りに回転される。
【0044】
主制御部91は、駆動制御部93により、印刷テーブルユニット3を制御するように構成されている。具体的には、主制御部91は、駆動制御部93により、X軸駆動部13、Y軸駆動部14、R軸駆動部15およびZ軸駆動部16を駆動させて、X方向、Y方向およびZ方向に基板Bを移動させるとともに、Z方向に延びる回転軸線周りに基板Bを回転させる。また、主制御部91は、駆動制御部93により、支持板駆動部24を駆動させて、支持板23を移動させることにより、バックアップピン23aをZ方向(上下方向)に移動させる。また、主制御部91は、駆動制御部93により、基板幅軸駆動部12aを駆動させて、一対のコンベア12のY方向の間隔(幅)を調整させる。また、主制御部91は、駆動制御部93により、基板搬送軸駆動部17を駆動させて、基板BをX方向に搬送させる。
【0045】
主制御部91は、駆動制御部93により、カメラユニット4を制御するように構成されている。具体的には、主制御部91は、駆動制御部93により、カメラX軸移動機構31およびカメラY軸移動機構32を駆動させて、X方向およびY方向に撮像部33(基板カメラ33aおよびマスクカメラ33b)を移動させる。
【0046】
主制御部91は、駆動制御部93により、クリーニングユニット10を制御するように構成されている。具体的には、主制御部91は、駆動制御部93により、クリーナーY軸移動機構102のクリーナーY軸駆動部(図示せず)を駆動させて、Y方向にクリーナーを往復移動させる。
【0047】
主制御部91は、カメラ制御部95により、カメラユニット4を制御するように構成されている。具体的には、主制御部91は、カメラ制御部95により、基板カメラ33aによる基板Bの撮像動作を制御する。主制御部91は、カメラ制御部95により、マスクカメラ33bによるマスクMの撮像動作を制御する。
【0048】
また、主制御部91は、IO制御部94により、スキージユニット6を制御するように構成されている。具体的には、主制御部91は、IO制御部94により、マスクスライダ55のスライド部55aの昇降動作を制御する。
【0049】
また、主制御部91は、IO制御部94により、マスク交換ユニット7を制御するように構成されている。具体的には、主制御部91は、IO制御部94により、昇降部63によるマスク交換ユニット7の第1収納部61および第2収納部62の昇降動作を制御する。また、主制御部91は、IO制御部94により、マスククランプ部材5と第1収納部61とに跨った状態で停止した生産用マスクMpを検知した際の検知センサ81の検知信号を受信するように構成されている。主制御部91は、IO制御部94により、マスククランプ部材5と第2収納部62とに跨った状態で停止したローリング用マスクMrを検知した際の検知センサ82の検知信号を受信するように構成されている。
【0050】
このように主制御部91は装置各部を制御するように構成されており、後で図5および図6を参照しつつ説明するように、
・作業位置Wでのローリング用マスクMrに対するスキージ51の摺動によりローリングを行うローリング制御機能部、
・はんだ(塗布材)の粘度状態を判定する粘度判定機能部、
・第2収納部62でのローリング用マスクMrの収納を判定する収納判定機能部、
として機能する。
【0051】
さらに、図4中の符号96、97はそれぞれ入力部および表示部である。入力部96は各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、オペレータからローリングの実行指令などの各種の入力設定指示を受ける。表示部97は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、主制御部91による制御のもと各種の情報を表示する。
【0052】
図5図1に示す印刷装置において実行されるはんだのローリング処理を示すフローチャートである。また、図6ははんだのローリング処理の主要動作を模式的に示す図である。ここでは、上記したように第1収納部61および第2収納部62に対し、生産用マスクMpおよびローリング用マスクMrをそれぞれ収納している場合について説明する。つまり、印刷処理は、第1収納部61および第2収納部62を下降位置(第1収納部61に生産用マスクMpを出し入れするための位置)に位置させるとともに作業位置Wに生産用マスクMpを位置決めした状態で実行される。その印刷処理を実行している間、ローリング用マスクMrは第2収納部62で収納された状態で待機している(待機工程)。そして、当該印刷工程が完了した後、そのままはんだSを生産用マスクMpの上面に残した状態で次の印刷工程が開始されるまで待機する、つまり生産待機に移行する。しかしながら、生産待機の時間が長くなると、はんだSの乾燥が大幅に進行して粘度が著しく増大して生産用マスクMp上のはんだSが印刷に不適合な粘度状態に変化してしまうことがある。そこで、第1実施形態では、主制御部91は記憶部92に記憶された印刷プログラムに基づいて印刷装置1の各部を以下のように制御して図5に示すローリング処理を実行する。つまり、先の印刷工程の完了から次の印刷工程の開始までの間ではんだSのローリングを適宜実行する(ローリング工程)。
【0053】
主制御部91は印刷完了からの経過時間を計測する(ステップS101)。そして、次の印刷処理を開始するまでに、経過時間が予め設定したしきい値(次の印刷処理に不適合な粘度に達するまでの経過時間)以上となる(ステップS102で「YES」と判定)と、次のステップS103に進む。一方、経過時間が上記しきい値に達する前に次の基板Bに対して同一の生産用マスクMpを用いて印刷処理を開始する場合には、ローリング処理を終了し、次の印刷処理を継続する。
【0054】
ステップS103では、主制御部91は検知センサ82からの出力信号に基づいてローリング用マスクMrが第2収納部62に収納されている、いわゆるプリセットされているか否かを判定する。ここで、プリセットされておらず、ローリング用マスクMrが未収納である場合(ステップS103で「NO」と判定)には、ローリング処理を終了し、次の印刷処理を継続する。なお、この場合には、ローリング処理の終了時に、はんだSの乾燥が進行している旨を表示部97に表示してオペレータに報知するようにしてもよい。一方、ステップS103でローリング用マスクMrのプリセットを確認すると、主制御部91は以下のステップS104~S114を実行して次の基板Bへの印刷処理前にはんだSの粘度を次の印刷処理に適した値まで低下させた上で当該はんだSを生産用マスクMp上に戻す。
【0055】
ステップS104で、図6の(a)欄に示すように、主制御部91は印刷完了後の生産用マスクMp上のはんだS(はんだロール)を生産用マスクMpからはんだ掬い上げユニット56に一時的に回収する。このはんだ掬い動作は図7に示すようにして実行される。
【0056】
図7ははんだ掬い動作を模式的に示す図である。主制御部91は、図7の(a)欄に示すように、掬い上げユニット56をY方向に移動させ、作業位置Wに配置された生産用マスクMpのうちはんだSが位置するエッジ領域の上方に位置させる。そして、主制御部91は、同図の(b)欄に示すように、はんだ掬い上げユニット56の掬い上げ部56aを下降位置に下降させる。さらに、主制御部91は、同図の(c)欄に示すように、掬い上げ部56aが下降位置に配置された状態で、はんだ掬い上げユニット56をY2方向(はんだSを掬う方向)に移動させる。これにより、生産用マスクMp上のはんだSがはんだ掬い上げユニット56の掬い上げ部56a上に移動して保持される。その後で、主制御部91は、はんだSを保持したはんだ掬い上げユニット56の掬い上げ部56aを上昇位置に上昇させる(図6の(a)欄参照)。
【0057】
次のステップS105で、図6の(b)欄に示すように、主制御部91はクリーニング待機位置に位置していたクリーナー101をY方向に往復移動させる。これにより、作業位置Wに固定された生産用マスクMpの下面がクリーナー101で清掃される。
【0058】
次のステップS106で、主制御部91は作業位置Wに位置するマスクを生産用マスクMpからローリング用マスクMrに交換する。より具体的には、主制御部91は、図6の(c)欄に示すように、作業位置W(マスククランプ部材5)からマスク交換ユニット7の第1収納部61にクリーニング済の生産用マスクMpを移動させるように、マスクスライダ55を制御する。そして、生産用マスクMpが第1収納部61に収納されると、主制御部91は、図6の(d)欄に示すように、マスク交換ユニット7の第1収納部61および第2収納部62を上昇位置に上昇させるように、マスク交換ユニット7を制御する。これにより、第2収納部62は、ローリング用マスクMrの出し入れ可能な高さ位置に位置決めされる。その後で、主制御部91は、図6の(e)欄に示すように、マスク交換ユニット7の第2収納部62から作業位置W(マスククランプ部材5)にローリング用マスクMrを移動させるように、マスクスライダ55を制御する。こうして、生産用マスクMpからローリング用マスクMrへのマスク交換が実行される。
【0059】
次のステップS107で、主制御部91は一時的に回収したはんだSのローリング用マスクMrへの取り降ろし動作を実行する。このはんだ取り降ろしは図8に示すようにして実行される。
【0060】
図8ははんだ取り降ろし動作を模式的に示す図である。主制御部91は、図8の(a)欄に示すように、掬い上げユニット56をY方向に移動させ、作業位置Wに配置されたローリング用マスクMr上のうちはんだSを取り降ろすエッジ領域の上方に位置させる。そして、主制御部91は、同図の(b)欄に示すように、はんだ掬い上げユニット56の掬い上げ部56aを下降位置に下降させる。また、主制御部91は、同図の(c)欄に示すように、掬い上げ部56aが下降位置に配置された状態で、はんだ掬い上げユニット56をY1方向(はんだSを降ろす方向)に移動させる。これにより、はんだ掬い上げユニット56の掬い上げ部56a上のはんだSがローリング用マスクMr上に取り降ろされる。その後で、主制御部91は、同図の(d)欄に示すように、はんだSを取り降ろしたはんだ掬い上げユニット56の掬い上げ部56aを上昇位置に上昇させる。
【0061】
次のステップS108で、図6の(f)欄に示すように、主制御部91は印刷処理と同様にスキージ51をY方向においてマスク全体にわたって往復移動させる。つまり、フルストロークでスキージ51を移動させてローリング用マスクMr上ではんだSを練り合わせる(ローリング)。これによって、はんだSの粘度が低下して次の印刷処理に適したものとなる。なお、スキージ51の往復移動によるローリング動作については周知であるため、この動作の詳細説明については省略する。また、本実施形態では、ローリング動作におけるスキージ51の移動を印刷移動での移動と完全に一致させているが、スキージ51の移動速度や加減速パターンなどを一部変更してもよい。
【0062】
主制御部91は、印刷装置1の上流に位置する装置(図示せず)から次の基板Bを搬出する旨の信号、いわゆる基板搬出信号を受けるまで(ステップS109で「NO」と判定)の間、上記ローリング動作を実行する。そして、基板搬出信号を受け取る(ステップS109で「YES」と判定)と、主制御部91はスキージ51を待機位置に移動させてローリング用マスクMr上でのはんだSのローリングを終了する(ステップS110)。
【0063】
次のステップS111で、主制御部91は上記ステップS104と同様にしてローリング完了後のローリング用マスクMr上のはんだS(はんだロール)をローリング用マスクMrからはんだ掬い上げユニット56に一時的に回収する。そして、主制御部91は上記ステップS106と同様にして作業位置Wに位置するマスクをローリング用マスクMrから生産用マスクMpに交換する(ステップS112)。より具体的には、主制御部91は作業位置W(マスククランプ部材5)からマスク交換ユニット7の第2収納部62にローリング用マスクMrを移動させるように、マスクスライダ55を制御する。そして、ローリング用マスクMrが第2収納部62に収納されると、主制御部91はマスク交換ユニット7の第1収納部61および第2収納部62を下降位置に下降させるように、マスク交換ユニット7を制御する。これにより、第1収納部61は、生産用マスクMpの出し入れ可能な高さ位置に位置決めされる。その後で、主制御部91はマスク交換ユニット7の第1収納部61から作業位置W(マスククランプ部材5)に生産用マスクMpを移動させるように、マスクスライダ55を制御する。こうして、ローリング用マスクMrから生産用マスクMpへのマスク交換が実行される。
【0064】
次のステップS113で、主制御部91は上記ステップS107と同様にして一時的に回収したはんだSの生産用マスクMpへの取り降ろし動作を実行してはんだSを生産用マスクMp上に戻す。こうして、生産用マスクMpによるはんだSの印刷準備が完了すると、主制御部91は次の基板Bの搬入を許可して(ステップS114)、ローリング処理を終了する。
【0065】
以上のように、第1実施形態によれば、はんだSのローリングを生産用マスクMpではなくローリング用マスクMrで行っている。このため、はんだSのローリングのために生産用マスクMpを使用することなく、はんだSが良好な粘度に保たれる。また、スキージ51を印刷処理時と同様にY方向においてマスク全体にわたって移動させ、特許文献1に記載の発明よりも大きなローリング距離ではんだSのローリング処理を行うことができる。これにより、塗布材の粘度を十分に低下させるとともに、適切な低粘度状態を維持させることが可能となる。その結果、生産用マスクMpの長寿命化を図りつつ適正な粘度のはんだSを用いて基板BへのはんだSの印刷を良好に行うことができる。
【0066】
また、ローリング用マスクMrを予め第2収納部62に収納しておき、ローリング処理に必要な動作、つまり、はんだSの掬い上げおよび取り降ろし、生産用マスクMpとローリング用マスクMrとの交換、はんだSの練り合せ(ローリング)が自動的に行われる。したがって、オペレータの操作を介在させることなく、はんだSの粘度を常に適切な値に維持しながら生産用マスクMpを用いた印刷処理を断続的に実行することができ、基板Bの印刷効率を高めることができる。
【0067】
また、第1実施形態では、ローリング処理を実行するために生産用マスクMpを一時的に第1収納部61に収納する必要があり、ローリング用マスクMrとの交換に際し、印刷完了直後の生産用マスクMpをそのまま第1収納部61に収納すると、生産用マスクMpを介してはんだSが第1収納部61に持ち込まれて汚染してしまう。しかしながら、第1実施形態では、第1収納部61への収納前にクリーニングユニット10により生産用マスクMpの下面を清掃している。したがって、上記汚染を確実に防止し、印刷処理を良好に継続して行うことができる。
【0068】
また、2つのマスクMを収納可能に構成しているため、はんだSのローリング中に、第1収納部61に収納されている生産用マスクMpを次の印刷に使用する別の生産用マスクMpと交換することも可能であり、いわゆる印刷の段取りを効率的に行うことができる。
【0069】
また、第1実施形態では、ローリング用マスクMrは開口部を有さない平板形状を有しているため、ローリング処理中にはんだSがローリング用マスクMrの下方側に移動することはない。したがって、基板Bを固定したままマスク交換やローリングを行うことができる。もちろん、ローリング処理中に基板Bの固定を解除し、印刷位置から移動させてもよい。
【0070】
さらに、はんだSのローリングは印刷処理を行わない期間、つまり生産待機中に実行する必要があり、例えば生産待機毎に行ってもよい。しかしながら、第1実施形態では、ローリングを生産待機毎に行うのではなく、一定条件が満足された場合のみローリング処理を行っている。すなわち、印刷完了からの経過時間に基づいて生産用マスクMp上のはんだSが印刷に不適合な粘度状態に変化した場合(ステップS102)のみ、ローリングを行っている。つまり、はんだSの粘度状態に応じてローリングの実行および実行停止を切り替えている。その結果、過剰なローリング実行を回避してランニングコストを低減することができる。
【0071】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、ローリングの実行タイミングを最後の印刷完了からの経過時間に基づいて決定している(ステップS102)が、入力部96を介してオペレータから与えられるローリング指令に応じてローリングを実行するように構成してもよい。
【0072】
図9は本発明に係る印刷装置の第2実施形態において実行されるはんだのローリング処理を示すフローチャートである。第2実施形態では、主制御部91は入力部96を介してオペレータからローリング指令を受け取らない場合(ステップS201で「NO」)、ローリング処理を終了する。一方、主制御部91はローリング指令を受け取る(ステップS201で「YES」)と、ステップS202に進む。
【0073】
ステップS202で、主制御部91は検知センサ82からの出力信号に基づいてローリング用マスクMrのプリセットを判定する。ここで、プリセットされていない場合(ステップS202で「NO」と判定)には、例えば「ローリング用マスクを下段の収納部に入れ、ローリング指令を再度入力してください」とのメッセージを表示部97に表示してローリング処理を終了し、印刷処理を継続して行う。
【0074】
一方、主制御部91はローリング用マスクMrのプリセットを確認する(ステップS202で「YES」と判定)と、印刷処理中の基板Bが印刷位置で固定されているか否かを判定する(ステップS203)。そして、印刷処理中の基板Bが存在する場合(ステップS203で「YES」と判定)、主制御部91は上記印刷処理の完了を待った(ステップS204)後でステップS205に進む。一方、印刷処理中の基板Bが存在しない場合(ステップS203で「NO」と判定)、主制御部91はそのままステップS205に進む。
【0075】
ステップS205で、主制御部91は第1実施形態のステップS104と同様に印刷完了後の生産用マスクMp上のはんだS(はんだロール)を生産用マスクMpからはんだ掬い上げユニット56に一時的に回収する。そして、それ以降の動作(ステップS206~S215)については、それぞれ第1実施形態のステップS105~S114と同様であり、これら一連の処理によってはんだSのローリング処理を自動的に実行する。
【0076】
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、次のような作用効果も得られる。例えばオペレータの昼休憩や下流装置でのトラブル発生などにより印刷装置1での印刷処理を一時的に中断したい場合がある。このような場合、オペレータが入力部96を介してローリング指令を印刷装置1に与えることで、仕掛中の基板Bに対する印刷処理を完了した後でローリング処理を自動的に実行して次の印刷処理を円滑に、かつ良好に行うことができる。このように第2実施形態では、主制御部91は本発明の「生産制御機能部」として機能している。
【0077】
また、携帯端末を入力部96として用いることでオペレータは印刷装置1から離れた場所からローリング指令を印刷装置1に与えることができ、オペレータの利便性を高めることができる。
【0078】
<第3実施形態>
上記第1実施形態では、第2収納部62に収納されるマスクMはローリング用マスクMrであることを前提としてローリング処理が実行される。しかしながら、ローリング用マスクMr以外のマスクMがプリセットされる可能性がある。そこで、第3実施形態では、マスク交換ユニット7に対してマスクMが収納されているか否かを検知するだけでなく、収納されたマスクMの種類、つまりマスク種を主制御部91が判定可能に構成している。以下、図10および図11を参照しつつ本発明の第3実施形態について説明する。
【0079】
図10は本発明に係る印刷装置の第3実施形態におけるマスク交換ユニットの電気的な構成を示すブロック図である。また、図11は第3実施形態において実行されるはんだのローリング処理を示すフローチャートである。第3実施形態が第1実施形態と大きく相違点は、図10に示すように、マスク交換ユニット7にリーダー83、84を追加した点と、第2収納部62にプリセットされたマスクMがローリング用マスクMrであることを確認した上でローリングを実行する点とである。なお、その他の構成および動作は第1実施形態と同一であるため、以下においては相違点を中心に説明し、同一構成および動作に対して同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
マスク交換ユニット7では、図10に示すように、第1収納部61(図1および図2)には、上記検知センサ81以外に、マスクMの種類、つまりマスク種を特定するための識別情報(例えばバーコードやQRコード(登録商標)など)を読み取るリーダー83が設けられている。リーダー83は第1収納部61に収納されたマスクMに付された識別情報を読み取って制御ユニット9に与える。また、第2収納部62にも、第1収納部61と同様に、リーダー84(図4)が設けられ、第2収納部62に収納されたマスクMに付された識別情報を読み取って制御ユニット9に与える。そして、マスクMの識別情報を含め、種々の情報に基づいて主制御部91は図11に示すローリング処理を実行する。
【0081】
主制御部91は、第1実施形態と同様に、印刷完了からの経過時間を計測し(ステップS101)、次の印刷処理を開始するまでに上記経過時間が予め設定したしきい値以上となり、しかも検知センサ82からの出力信号に基づいてマスクMが第2収納部62にプリセットされていると判定すると、はんだSの掬い上げ(ステップS104)に先立って主制御部91はステップS115およびS116を実行する。
【0082】
ステップS115で、主制御部91はリーダー83から送られてくるマスクMの識別情報に基づいて第2収納部62にプリセットされているマスクMがローリング用マスクMrであるか否かを判定する。そして、主制御部91は、第2収納部62にプリセットされたマスクMがローリング用マスクMrではない場合(ステップS115で「NO」と判定)、例えば「ローリング用マスクを下段の収納部に入れてください」とのメッセージを表示部97に表示してオペレータにローリング用マスクMrのセット要求を行う(ステップS116)。一方、主制御部91は、第2収納部62にプリセットされたマスクMがローリング用マスクMrであることを確認する(ステップS115で「YES」と判定)と、主制御部91は第1実施形態と同様にステップS104~S114を実行して次の基板Bへの印刷処理前にはんだSの粘度を次の印刷処理に適した値まで低下させた上で当該はんだSを生産用マスクMp上に戻す。
【0083】
以上のように、第3実施形態においても、第1実施形態と同様にはんだSのローリングを生産用マスクMpではなくローリング用マスクMrで行っている。このため、第1実施形態と同じ作用効果が得られる。しかも、第2収納部62にローリング用マスクMrがプリセットされていることを確認した上でローリングを実行している。したがって、ローリング処理をより適正に行うことができる。このように第3実施形態では、主制御部91はリーダー84により読み取られた識別情報に基づいて第2収納部62に収納されているマスクMの種類、つまりマスク種を検出しており、本発明の「マスク種検出部」として機能している。
【0084】
<第4実施形態>
上記した第1実施形態ないし第3実施形態では、マスク交換ユニット7において2つの収納部61、62を設け、生産用マスクMpとローリング用マスクMrとを収納可能となっているが、マスクMの収納可能枚数はこれに限定されるものではない。例えば収納部をさらに1つ追加し、生産用マスクMpを2枚収納することができるように構成してもよい。この第4実施形態では、第1実施形態ないし第3実施形態と同様にローリング処理を自動的に実行できるだけでなく、作業位置Wに固定された生産用マスクMp(以下「先の生産用マスク」という)とは別の生産用マスクMp(以下「後の生産用マスク」という)による印刷処理を自動的に実行することができる。
【0085】
後の生産用マスクによる自動印刷処理では、主制御部91が装置各部を制御して以下の動作(1)~(5)を実行する。
・動作(1)…印刷を完了した先の生産用マスク上のはんだS(はんだロール)を先の生産用マスクからはんだ掬い上げユニット56に一時的に回収する。なお、この動作の詳細は第1実施形態のステップS104と基本的に同一である。
・動作(2)…クリーナー101をY方向に往復移動させることで作業位置Wに固定された先の生産用マスクの下面を清掃する。なお、この動作の詳細は第1実施形態のステップS105と基本的に同一である。
・動作(3)…作業位置Wに位置するマスクを先の生産用マスクから後の生産用マスクに交換する。なお、この動作の詳細は、交換対象がローリング用マスクMrから後の生産用マスクに変更されている点を除き、第1実施形態のステップS106と基本的に同一である。
・動作(4)…一時的に回収したはんだSを後の生産用マスク上に取り降ろす。なお、この動作の詳細は、取り降ろし先がローリング用マスクMrから後の生産用マスクに変更されている点を除き、第1実施形態のステップS107と基本的に同一である。
・動作(5)…スキージ51をY方向に往復移動させて後の生産用マスクに設けられた開口部に対応するパターンを基板Bに印刷する。
【0086】
このように第4実施形態によれば、2種類の生産用マスクを交換して行う自動印刷処理と、ローリング用マスクを用いたローリング処理とを組み合わせて実行することができる。そのため、ローリング処理によりはんだを適正な状態に保ちつつ2種類の生産用マスクを用いた効率的な印刷処理を行うことができる。また、ローリング処理中での生産用マスクの交換だけではなく、先の生産用マスクを用いた印刷中に後の生産用マスクを準備することができ、印刷の段取りをさらに効率的に行うことができる。
【0087】
上記したように、はんだSが本発明の「塗布材」の一例に相当している。また、マスク交換ユニット7が本発明の「マスク交換部」の一例に相当している。また、はんだ掬い上げユニット56が本発明の「塗布材移載部」の一例に相当している。また、スキージユニット6が本発明の「スキージ駆動部」の一例に相当している。制御ユニット9が本発明の「制御部」の一例に相当している。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、第2収納部62にローリング用マスクMrをプリセットしているが、プリセット先はこれに限定されるものではなく、第1収納部61にプリセットしてもよい。この場合、第2収納部62に生産用マスクMpが収納される。
【0089】
また、上記第1実施形態および第3実施形態では、印刷完了からの経過時間(生産待機の時間)に基づいて生産用マスクMp上のはんだSが印刷に不適合な粘度状態となっているか否かを判定しているが、はんだSの粘度状態をその他の方法で直接的あるいは間接的に検知してもよい。
【0090】
また、上記第2実施形態では、入力部96によりローリングの実行指示、つまりローリング指令を受けた時点で実行中の印刷処理を完了させた後に次の印刷を中断させているが、仕掛中の印刷処理を直ちに中断させるように構成してもよい。
【0091】
また、上記第3実施形態では、リーダー84により第2収納部62に収納されているマスクMのマスク種を検出しているが、マスク種の検出方法はこれに限定されるものではなく、例えばオペレータから与えられる識別情報に基づいてマスク種を特定してもよい。
【0092】
さらに、上記第4実施形態では、マスク交換ユニット7はローリング用マスクMr以外に2種類の生産用マスクMpを収納可能に構成されているが、3種類以上の生産用マスクMpを収納可能に構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明は、作業位置に位置する生産用マスクに対してスキージを摺動させて生産用マスクに設けられた開口部を介して生産用マスク上の塗布材を基板に印刷する印刷技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1…印刷装置
6…スキージユニット(スキージ駆動部)
7…マスク交換ユニット(マスク交換部)
9…制御ユニット(制御部)
51…スキージ
56…掬い上げユニット(塗布材移載部)
61…第1収納部
62…第2収納部
81,82…検知センサ
84…リーダー(マスク種検出部)
91…主制御部(ローリング制御機能部、粘度判定機能部、収納判定機能部、生産制御機能部)
96…入力部
B…基板
M…マスク
Mp…生産用マスク
Mr…ローリング用マスク
S…はんだ(塗布材)
W…作業位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11