(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】熱伝導性パテ組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート及び放熱構造体
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20220810BHJP
C08L 47/00 20060101ALI20220810BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220810BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20220810BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20220810BHJP
【FI】
C09K5/14 101E
C09K5/14 E
C08L47/00
C08K3/22
C08K3/28
H01M10/613
(21)【出願番号】P 2019056250
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦田 桂子
(72)【発明者】
【氏名】中原 悠
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-099003(JP,A)
【文献】特開2011-157428(JP,A)
【文献】特開2008-115356(JP,A)
【文献】特表2009-503236(JP,A)
【文献】特表2017-520633(JP,A)
【文献】特表2017-530220(JP,A)
【文献】特開2017-005166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/14
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
H05K7/20
C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基を有する液状ポリ
ブタジエンをベースポリマーと
し、熱伝導フィラ
ーを含有する熱伝導性パテ組成物であって、
前記熱伝導フィラーの含有量が、前記ベースポリマー100質量部に対して500質量部以上3000質量部以下であり、
前記熱伝導フィラーの粒度分布が、複数のピークを有することを特徴とする熱伝導性パテ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載された熱伝導性パテ組成物において、
前記熱伝導フィラーは、平均粒子径(d
50)が異なる複数種の熱伝導フィラーを含むことを特徴とする熱伝導性パテ組成物。
【請求項3】
請求項2に記載された熱伝導性パテ組成物において、
前記熱伝導フィラーは、平均粒子径(d
50)が異なる2種の熱伝導フィラーを含み、その粒度分布において、小径側のピークが0.3μm以上10μm以下の範囲にあり、且つ大径側のピークが20μm以上100μm以下の範囲にあることを特徴とする熱伝導性パテ組成物。
【請求項4】
請求項2に記載された熱伝導性パテ組成物において、
前記熱伝導フィラーは、平均粒子径(d
50)が異なる3種の熱伝導フィラーを含み、その粒度分布において、小径側のピークが
0.1μm以上1μm以下の範囲にあり、中間径のピークが1μm以上60μm以下の範囲にあり、且つ大径側のピークが10μm以上100μm以下の範囲にあることを特徴とする熱伝導性パテ組成物。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれかに記載された熱伝導性パテ組成物において、
前記熱伝導フィラーが、金属酸化物、金属水酸化物、及び金属窒化物のうちの1種又は2種以上を含むことを特徴とする熱伝導性パテ組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載された熱伝導性パテ組成物において、
前記熱伝導フィラーが酸化アルミニウムを含むことを特徴とする熱伝導性パテ組成物。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれかに記載された熱伝導性パテ組成物において、
前記熱伝導フィラーの形状が球状乃至円板状であることを特徴とする熱伝導性パテ組成物。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれかに記載された熱伝導性パテ性組成物をシート状に成形したことを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項9】
請求項
8に記載された熱伝導性シートが発熱物品の表面に貼設されたことを特徴とする放熱構造体。
【請求項10】
請求項
9に記載された放熱構造体において、
前記放熱構造体がリチウムイオン二次電池モジュールであることを特徴とする放熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性パテ組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート及び放熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池モジュールの高エネルギー化や電子・電気回路基板の素子の高密度化に伴い、それら二次電池モジュール、電子・電気回路基板等の発熱する物品から発生する熱量が多くなり、その熱を効率的に放熱させる手段として、熱伝導シートが用いられている。
【0003】
一方、寒冷地などで使用される二次電池モジュール、電子・電気回路基板等に対しては、二次電池モジュール、電子・電気回路基板を作動させる前に、一旦温めることが必要になり、その場合、外部(ヒータ等)から熱を効率よく二次電池モジュール、電子・電気回路基板に与える必要がある。
【0004】
そうした中、近年、二次電池モジュールや電子・電気回路基板の表面との接触面積を大きくして熱伝導性(放熱性、与熱性)を高めるため、熱伝導シートの柔軟性を向上させる開発が進められている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-141443号公報
【文献】特開2017-069341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、発熱物品の表面形状に追随して変形するとともに、高い熱伝導性(放熱性、与熱性)を得ることができる熱伝導性パテ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒドロキシ基を有する液状ポリブタジエンをベースポリマーとし、熱伝導フィラーを含有する熱伝導性パテ組成物であって、前記熱伝導フィラーの含有量が、前記ベースポリマー100質量部に対して500質量部以上3000質量部以下であり、前記熱伝導フィラーの粒度分布が、複数のピークを有することを特徴とする。
【0008】
本発明は、本発明の熱伝導性パテ性組成物をシート状に成形したことを特徴とする熱伝導性シートである。また、本発明は、本発明の熱伝導性シートが発熱物品の表面に貼設されたことを特徴とする放熱構造体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベースポリマーがヒドロキシ基を有する液状ポリマーを主成分として含むので、パテ性状を維持しつつ、熱伝導フィラーを多量に含有することができ、そして、熱伝導フィラーの含有量が、ベースポリマー100質量部に対して500質量部以上3000質量部以下であることにより、発熱物品の表面形状に追随して変形するとともに、高い熱伝導性(放熱性、与熱性)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図1AにおけるIII-III断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物は、ヒドロキシ基を有する液状ポリマー(以下「液状ポリマーA」という。)を主成分として含むマトリクスとなる非架橋のベースポリマーと、そのマトリクスのベースポリマーに分散した熱伝導フィラーとを含有する。そして、熱伝導フィラーの含有量が、ベースポリマー100質量部に対して500質量部以上3000質量部以下、好ましくは800質量部以上2700質量部以下、より好ましくは1000質量部以上2500質量部以下である。このような実施形態に係る熱伝導性パテ組成物によれば、ベースポリマーが液状ポリマーAを主成分として含むので、パテ性状を維持しつつ、熱伝導フィラーを多量に含有することができ、そして、熱伝導フィラーの含有量が、ベースポリマー100質量部に対して500質量部以上3000質量部以下であることにより、発熱物品の表面形状に追随して変形するとともに、高い熱伝導性(放熱性、与熱性)を得ることができる。ここで、本出願における「液状ポリマー」とは、常温・常圧(25℃、1気圧)で液状であるポリマーをいう。
【0013】
ベースポリマーは、液状ポリマーAを主成分として含む。したがって、ベースポリマーにおける液状ポリマーAの含有量は、50質量%以上であって、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。なお、ベースポリマーは、液状ポリマーA以外のヒドロキシ基を有さない液状ポリマー(以下「液状ポリマーB」という。)を副成分として含んでいてもよく、また、その他のポリマーを含んでいてもよい。
【0014】
液状ポリマーAは、ヒドロキシ基を有するが、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、炭化水素の基本骨格がヒドロキシ基で修飾されたものであることが好ましい。炭化水素の基本骨格としては特に限定はなく、例えば、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリブタジエン;ポリイソプレン;ポリエチレンやポリプロピレンやエチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン等が挙げられる。炭化水素の基本骨格は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0015】
液状ポリマーAにおけるヒドロキシ基含量は、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、好ましくは0.3mol/kg以上3mol/kg以下、より好ましくは0.5mol/kg以上2mol/kg以下である。液状ポリマーAにおけるヒドロキシ基含量は、JIS K1557-1:2007に基づいて測定された水酸基価数を元に次式(1)で算出したものである。
ヒドロキシ基含量(mol/kg)=水酸基価数(mgKOH/g)/A・・・(1)
(A:KOHの分子量)
【0016】
液状ポリマーAの30℃での粘度は、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、好ましくは0.5Pa・s以上100Pa・s以下、より好ましくは1.0Pa・s以上90Pa・s以下である。液状ポリマーAの粘度は、JIS K2283:2000に基づいて測定されるものである。
【0017】
液状ポリマーAの数平均分子量は、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、好ましくは800以上4000以下、より好ましくは1000以上3500以下である。液状ポリマーAの数平均分子量は、ASTM D2503に基づいて測定されるものである。
【0018】
ヒドロキシ基は、炭化水素の基本骨格の末端を修飾していてもよく、炭化水素の基本骨格の中間部を修飾していてもよく、炭化水素の基本骨格の末端及び中間部の両方を修飾していてもよい。ヒドロキシ基は、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、炭化水素の基本骨格の末端を修飾していることが好ましく、炭化水素の基本骨格の末端及び中間部の両方を修飾していることがより好ましい。
【0019】
炭化水素の基本骨格の末端がヒドロキシ基で修飾された市販の液状ポリマーAとしては、例えば、日本曹達社製NISSO-PBのGシリーズやGIシリーズ、三菱化学社製のポリテール等が挙げられる。炭化水素の基本骨格の末端及び中間部の両方がヒドロキシ基で修飾された市販の液状ポリマーAとしては、例えば、出光興産社製のPoly bd、Poly ip、EPOL等が挙げられる。
【0020】
液状ポリマーBとしては、炭化水素を基本骨格とするポリマーが好ましく、例えば、ナフテン系ポリマー、パラフィン系ポリマー、アロマティック系ポリマー等が挙げられる。液状ポリマーBは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、パラフィン系ポリマー及び/又はアロマ系ポリマーを含むことがより好ましい。市販のナフテン系ポリマーとしては、例えば、三共油化工業社のSNHシリーズ、日本サン石油社製SUNTHENEシリーズ等が挙げられる。市販のパラフィン系ポリマーとしては、例えば、日油社製NAソルベント、出光興産社製PWシリーズ、日本サン石油社製SUNPARシリーズ、日本曹達社製NISSO-PBのBシリーズやBIシリーズ、日油社製日油ポリブテンシリーズ、JXTGエネルギー社日石ポリブテンシリーズ等が挙げられる。市販のアロマティック系ポリマーとしては、例えば、JSO AROMA 790等が挙げられる。ベースポリマーにおける液状ポリマーBの含有量は、50質量%以下であって、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0021】
熱伝導フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの金属窒化物;金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、チタン、ニッケル、鉄などの金属及びこれらの2種以上の合金;黒鉛(グラファイト)、カーボンファイバー、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素化合物等が挙げられる。熱伝導フィラーは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、金属酸化物、金属水酸化物、及び金属窒化物のうちの1種又は2種以上を含むことがより好ましく、酸化アルミニウムを含むことが更に好ましい。熱伝導フィラーの形状は、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、球状乃至円板状であることが好ましい。球状の熱伝導フィラーは、シランカップリング剤等による表面処理により、表面にビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、イソシアネート基、メルカプト基等の有機官能基を有していてもよい。この有機官能基は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、ビニル基、アミノ基、及びメタクリル基のうちの1種又は2種以上を含むことがより好ましい。
【0022】
熱伝導フィラーの平均粒子径(d50)は、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、好ましくは0.5μm以上100μm以下、より好ましくは3μm以上80μm以下、更に好ましくは5μm以上60μm以下である。この平均粒子径(d50)は、コールターカウンター法で測定されるものである。熱伝導フィラーの粒度分布は、同様の観点から、複数のピークを有することが好ましい。したがって、熱伝導フィラーは、平均粒子径(d50)が異なる複数種を含むことが好ましい。熱伝導フィラーが、平均粒子径(d50)が異なる2種を含む場合、例えば、小径側のピークが0.3μm以上10μm以下の範囲にあり、大径側のピークが20μm以上100μm以下にあることが好ましい。熱伝導フィラーが、平均粒子径(d50)が異なる3種を含む場合、小径側のピークが0.1μm以上1μm以下の範囲にあり、中間径のピークが1μm以上60μm以下の範囲にあり、大径側のピークが10μm以上100μm以下にあることが好ましい(但し、大径のd50>中間径のd50)。
【0023】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物における熱伝導フィラーの含有量は、ベースポリマー100質量部に対して500質量部以上3000質量部以下であるが、熱伝導性パテ組成物の優れた形状追随性及び高い熱伝導性を得る観点から、好ましくは1000質量部以上2600質量部以下、より好ましくは1200質量部以上2400質量部以下である。
【0024】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物は、その他にベントナイトなどの粘度調整剤等を含有していてもよい。
【0025】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物のJIS H7903:2008に準じて測定される熱伝導率(一方向熱流定常比較法(SCHF) 測定温度:33℃)は、好ましくは2W/m・K以上、より好ましくは5W/m・K以上である。
【0026】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物の硬さの指標としてのJIS A5752:1994に準じて測定される軟度(測定温度:23±3℃)は、好ましくは40以上、より好ましくは50以上である。
【0027】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物について、圧縮荷重変化を15N/minとして、厚さ2.0mmの1cm角の片を、厚さ0.5mmまで圧縮(75%圧縮)するのに必要な荷重((以下「圧縮反力」という。)(測定温度:23±3℃)は、好ましくは90N以下、より好ましくは70N以下である。
【0028】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物における発熱物品の表面形状に追随して変形するとともに、高い熱伝導性(放熱性、与熱性)を有するというトータル的な放熱性能(与熱性能)は、上記した熱伝導率の値と、上記した軟度の値とを乗じた数値を指標として評価できる。その数値は、好ましくは350以上2000以下、より好ましくは1000以上1800以下である。
【0029】
このような実施形態に係る熱伝導性パテ組成物は、液状ポリマーAを含むベースポリマーに熱伝導フィラーを配合してバンバリー、ニーダー、プラネタリーミキサー、自転公転ミキサー等の混練機で混錬することにより作製することができる。
【0030】
実施形態に係る熱伝導性パテ組成物からは、これを押出機による押出し成形やプレス機によるプレス成形等の公知の成形方法でシート状に成形することにより熱伝導性シートを作製することができる。このような熱伝導性シートは、発熱物品に応じた適当な大きさに切り出され、所望する発熱物品の表面に貼設されるとともに適当な荷重が与えられると、発熱物品の表面形状に追随して変形し、広い面積で発熱物品の表面に接触して高い放熱性(又は与熱性)を示す。熱伝導性シートの厚さは、例えば0.1mm以上20mm以下である。
【0031】
図1A及びBは、放熱構造体の一例であるリチウムイオン二次電池モジュール10を示す。このリチウムイオン二次電池モジュール10は、モジュール本体(発熱物品)11と、実施形態に係る熱伝導性パテ組成物をシート状に成形した第1及び第2の熱伝導性シート12とを有する。モジュール本体11は、複数本のリチウムイオン二次電池111と、一対の電池ホルダー112とを有する。
【0032】
複数本のリチウムイオン二次電池111は、それぞれが円柱状に形成されており、相互に間隔をおいて並行に設けられている。一対の電池ホルダー112は、それぞれがプレート状に形成されており、一方が複数本のリチウムイオン二次電池111の一端側及び他方がそれらの他端側にそれぞれ設けられている。各電池ホルダー112は、複数本のリチウムイオン二次電池111のそれぞれに対応するように有底円筒孔状の電池保持部112aが形成されており、その電池保持部112aにリチウムイオン二次電池111の端部を嵌合保持するように構成されている。各電池保持部112aの底面部の中央には丸孔112bが形成されており、その丸孔112bを介してリチウムイオン二次電池111に電線が接続されるように構成されている。
【0033】
第1の熱伝導性シート12は、並行に設けられた複数本のリチウムイオン二次電池111の外側の凹凸表面を覆うように設けられている。第1の熱伝導性シート12は、その取付時に外側から押圧されることにより、
図2に示すように、複数本のリチウムイオン二次電池111の表面形状に追随して変形してモジュール内部の相互に隣接するリチウムイオン二次電池111間に流入し、それにより広い面積でリチウムイオン二次電池111に接触することとなって高い放熱性(又は与熱性)を得ることができる。
【0034】
第2の熱伝導性シート12は、一対の電池ホルダー112のそれぞれの外側の凹凸表面に貼設するように設けられている。第2熱伝導性シート12は、その取付時に外側から押圧されることにより、
図3に示すように、電池ホルダー112の表面形状に追随して変形して丸孔112bに流入し、それによりリチウムイオン二次電池111に接触することとなって高い放熱性(又は与熱性)を得ることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、放熱構造体としてリチウムイオン二次電池モジュール10を示したが、特にこれに限定されるものではなく、電子・電気回路基板等であってもよい。電子・電気回路基板の場合、例えば、抵抗、コンデンサー、半導体素子、LEDなどの素子や配線が高密度に設けられた素子側凹凸表面や多数のはんだ付跡が設けられた裏面側凹凸表面に上記熱伝導性シートを貼設することにより、高い放熱性(又は与熱性)を得ることができる。
【実施例】
【0036】
(熱伝導性パテ組成物)
以下の実施例1~6及び比較例1~2の熱伝導性パテ組成物を作製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0037】
<実施例1>
ポリブタジエンの末端及び中間部がヒドロキシ基で修飾された液状ポリマー(Poly bd R-45HT 出光興産社製、ヒドロキシ基含量:0.83mol/kg、粘度(30℃):5Pa・s、数平均分子量:2800)と、ヒドロキシ基で修飾されていないポリブタジエンの液状ポリマー(HV-300 JXTGエネルギー社製、粘度(30℃):23.3Pa・s、数平均分子量:1400)とを1:1の割合で混合した未架橋のブレンドポリマーをベースポリマーとし、そのベースポリマー100質量部に対して、熱伝導フィラーとして、球状の酸化アルミニウム(球状アルミナ:アルナビーズ CB-A70 昭和電工社製、平均粒子径(d50):71μm、粒度分布ピーク数:1)1540質量部、球状の酸化アルミニウム(球状アルミナ:アルミナビーズ CB-P40 昭和電工社製、平均粒子径(d50):40μm、粒度分布ピーク数:1)330質量部、及び球状の酸化アルミニウム(多面体球状アドバンストアルミナAA-04 住友化学社製、平均粒子径(d50):0.5μm、粒度分布ピーク数:1)330質量部を配合して混練機で混錬することにより調製した熱伝導性パテ組成物を実施例1とした。なお、熱伝導フィラーの合計配合量は、ベースポリマー100質量部に対して2200質量部である。
【0038】
<実施例2>
ポリブタジエンの末端及び中間部がヒドロキシ基で修飾された液状ポリマー(Poly bd R-45HT 出光興産社製、ヒドロキシ基含量:0.83mol/kg、粘度(30℃):5Pa・s、数平均分子量:2800)をベースポリマーとし、そのベースポリマー100質量部に対して、熱伝導フィラーとして、円板状の酸化アルミニウム(丸み状アルミナ:AS-40 昭和電工社製、平均粒子径(d50):12μm、粒度分布ピーク数:2)1400質量部及び酸化チタン(FR-22 古河ケミカルズ社製、平均粒子径(d50):12μm、粒度分布ピーク数:1)150質量部を配合して混練機で混錬することにより調製した熱伝導性パテ組成物を実施例2とした。なお、熱伝導フィラーの合計配合量は、ベースポリマー100質量部に対して1550質量部である。
【0039】
<実施例3>
ベースポリマー100質量部に対して、熱伝導フィラーとして球状の酸化アルミニウム1700質量部を配合したことを除いて実施例2と同様にして調製した熱伝導性パテ組成物を実施例3とした。
【0040】
<実施例4>
熱伝導フィラーの球状の酸化アルミニウムの配合量を、ベースポリマー100質量部に対して1300質量部としたことを除いて実施例3と同様にして調製した熱伝導性パテ組成物を実施例4とした。
【0041】
<実施例5>
ベースポリマーとして、ポリイソプレンの末端及び中間部がヒドロキシ基で修飾された液状ポリマー(Poly ip 出光興産社製、ヒドロキシ基含量:0.83mol/kg、粘度(30℃):7.5Pa・s、数平均分子量:2500)のみを用いたことを除いて、実施例1と同様にして調製した熱伝導性パテ組成物を実施例5とした。
【0042】
<実施例6>
ベースポリマーとして、ポリオレフィンの末端及び中間部がヒドロキシ基で修飾された液状ポリマー(EPОL 出光興産社製、ヒドロキシ基含量:0.9mol/kg、粘度(30℃):75Pa・s、数平均分子量:2500)のみを用いたことを除いて、実施例1と同様にして調製した熱伝導性パテ組成物を実施例6とした。
【0043】
<比較例1>
熱伝導フィラーとして、円板状の酸化アルミニウム(丸み状アルミナ:AS-40 昭和電工社製、平均粒子径(d50):12μm、粒度分布ピーク数:2)を用い、その配合量を、ベースポリマー100質量部に対して450質量部としたことを除いて実施例1と同様にして調製した熱伝導性パテ組成物を比較例1とした。
【0044】
<比較例2>
熱伝導フィラーとして、円板状の酸化アルミニウム(丸み状アルミナ:AS-40 昭和電工社製、平均粒子径(d50):12μm、粒度分布ピーク数:2)を用い、その配合量を、ベースポリマー100質量部に対して3100質量部としたことを除いて実施例1と同様にして調製した熱伝導性パテ組成物を比較例2とした。
【0045】
【0046】
(試験方法)
<熱伝導率>
実施例1~6及び比較例1~2のそれぞれについて、JIS H7903:2008に準じて、一方向熱流定常比較法(SCHF)により熱伝導率(測定温度:33℃)を測定した。
【0047】
<軟度>
実施例1~6及び比較例1~2のそれぞれについて、JIS A5752:1994に準じて、軟度の指標として軟度(測定温度:23±3℃)を測定した。
【0048】
<圧縮反力>
実施例1~6及び比較例1~2のそれぞれについて、厚さ2.0mmの1cm角の試験片を厚さ0.5mmまで圧縮(75%圧縮)するのに必要な荷重(測定温度:23±3℃)を測定した。
【0049】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。表2によれば、実施例1~6は、比較例1~2と比べて熱伝導性が高く、また、十分に軟らかいことから優れた形状追随性を有するので、トータル的な放熱性能が優れていることが分かる。
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、熱伝導性パテ組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート及び放熱構造体の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 リチウムイオン二次電池モジュール(放熱構造体)
11 モジュール本体(発熱物品)
111 リチウムイオン二次電池
112 電池ホルダー
112a 電池保持部
112b 丸孔
12 熱伝導性シート