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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】シート束排出装置と製本装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/30 20060101AFI20220810BHJP
   B42C 11/04 20060101ALI20220810BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20220810BHJP
   B65H 15/02 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B65H31/30
B42C11/04
B65H37/04 A
B65H15/02 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019138324
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2020037484
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2018162545
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】永沢 恵一
(72)【発明者】
【氏名】松原 大
(72)【発明者】
【氏名】板垣 勲
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-165044(JP,A)
【文献】特開2012-218935(JP,A)
【文献】特開2017-206391(JP,A)
【文献】特開2005-305822(JP,A)
【文献】特開2011-079650(JP,A)
【文献】特開昭56-002190(JP,A)
【文献】特開2007-062140(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00
B65H 5/00
B65H 15/00
B65H 29/00
B65H 37/00
B42C 11/00
B42C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背を含むシート束を排出するシート束排出装置であって、
シート束を所定の搬送方向に搬送する搬送ベルトと
ート束の背を受けることが可能な背受部材と、
前記背受部材を回動させることによって、背が前記背受部材に受けられているシート束を、前記搬送ベルトから離れている第1の姿勢から前記搬送ベルトに載置される第2の姿勢へ変更することが可能な姿勢変更手段と、
前記第2の姿勢に変更されたシート束の小口を受けることが可能で、シート束と前記搬送ベルトとの間の摩擦係数よりもシート束との間の摩擦係数が小さい受け部材と、を備え、
前記小口は、背が前記背受部材に受けられているシート束を前記姿勢変更手段が前記第1の姿勢から前記第2の姿勢へ変更することによって、前記搬送ベルトの前記搬送ベルトのベルト幅方向において、前記搬送ベルトが設けられた第1の領域を通過し、
前記受け部材は、シート束が前記姿勢変更手段によって前記第1の姿勢から前記第2の姿勢へ変更される場合に、前記ベルト幅方向において、前記小口が前記第1の領域を通過した後に到達する第2の領域に設けられ、
前記ベルト幅方向において、前記搬送ベルトの長さは、前記第2の姿勢のシート束の長さよりも短い、
ことを特徴とするシート束排出装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトの前記ベルト幅方向の長さは、前記第2の姿勢の前記シート束の前記ベルト幅方向の長さに対して1/2倍以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート束排出装置。
【請求項3】
前記受け部材は、板状の金属材料から構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート束排出装置。
【請求項4】
前記受け部材は、前記搬送ベルトとの境界部において、前記搬送ベルトに前記シート束が載置される場合に、前記シート束の厚さ方向の高さが前記搬送ベルトよりも低い位置に配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート束排出装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトは、前記受け部材に支持されて架け渡されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート束排出装置。
【請求項6】
シート束を綴じる綴じ手段と、
請求項1に記載のシート束排出装置と、を備え、
前記綴じ手段で綴じた前記シート束の姿勢を前記姿勢変更手段によって前記第1の姿勢から前記第2の姿勢へ変更し、前記第2の姿勢とされた前記シート束を前記搬送ベルトで搬送する、
ことを特徴とする製本装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート束を排出するシート束排出装置と、これを備えた製本装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を形成された複数枚のシートを綴じて形成されたシート束(冊子)を複数収納する収納部を備えた製本装置がある(特許文献1)。この製本装置は、収納部に収納するシート束の量が一定量になると、製本動作を停止して、ユーザによってシート束を取り出させる必要がある。そこで、本出願人は、製本動作を停止することなくシート束を機外へ排出できるシート束排出装置およびこれを備えた製本装置を発明した。このシート束排出装置は、シート束を受止排出手段に倒して、その受止排出手段でシート束を排出するので、製本動作を停止する必要が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-305822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のシート束排出装置は、シート束が湾曲した状態で排出手段に倒れることがある。このようなとき、湾曲して倒れた側の端部が排出手段に当接し、その後、シート束が自重によって平らになるとき、上記端部が排出手段上を滑って、傷を受けることがある。
【0005】
本発明の目的は、シート束に損傷を与えることを少なくして、シート束を機外へ排出できるシート束排出装置及び製本装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、背を含むシート束を排出するシート束排出装置であって、シート束を所定の搬送方向に搬送する搬送ベルトと、シート束の背を受けることが可能な背受部材と、前記背受部材を回動させることによって、背が前記背受部材に受けられているシート束を、前記搬送ベルトから離れている第1の姿勢から前記搬送ベルトに載置される第2の姿勢へ変更することが可能な姿勢変更手段と、前記第2の姿勢に変更されたシート束の小口を受けることが可能で、シート束と前記搬送ベルトとの間の摩擦係数よりもシート束との間の摩擦係数が小さい受け部材と、を備え、前記小口は、背が前記背受部材に受けられているシート束を前記姿勢変更手段が前記第1の姿勢から前記第2の姿勢へ変更することによって、前記搬送ベルトの前記搬送ベルトのベルト幅方向において、前記搬送ベルトが設けられた第1の領域を通過し、前記受け部材は、シート束が前記姿勢変更手段によって前記第1の姿勢から前記第2の姿勢へ変更される場合に、前記ベルト幅方向において、前記小口が前記第1の領域を通過した後に到達する第2の領域に設けられ、前記ベルト幅方向において、前記搬送ベルトの長さは、前記第2の姿勢のシート束の長さよりも短い、ことを特徴とするシート束排出装置により、課題を解決した。
【0007】
また、本発明は、シート束を綴じる綴じ手段と、上記のシート束排出装置と、を備え、前記綴じ手段で綴じた前記シート束の姿勢を前記姿勢変更手段によって前記第1の姿勢から前記第2の姿勢へ変更し、前記第2の姿勢とされた前記シート束を前記搬送ベルトで搬送する、ことを特徴とする製本装置により、課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート束排出装置は、シート束の姿勢を変更するときに摩擦係数の小さい受け部材でシート束の端部を受けることで、シート束に損傷を与えることを少なくして、シート束を機外へ排出することができる。
【0009】
また、本発明の製本装置は、シート束に損傷を与えることを少なくして、シート束を機外へ排出することができるシート束排出装置を備えているため、品質の良いシート束を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成システムのシート搬送方向に沿った断面概略図である。
図2】本発明の実施形態の製本装置のシート搬送方向に沿った断面概略図である。
図3図2の製本装置の接着剤塗布部の図である。(A)は、正面図である。(B)は、(A)のJ矢視図である。
図4】表紙綴じ部と、シート束回転部と、断裁部と、排出部との図である。
図5】シート束排出装置の概略図であり、背受が冊子と当接する位置に待機している図である。
図6図5のM矢視図である。
図7図5のシート束排出装置において、背受が待機位置で冊子と当接した状態の図である。
図8図7の背受の部分の拡大図である。
図9図7のシート束排出装置の背受が冊子を排出するため、左回転を開始した状態を示す図である。
図10図9の背受の周辺の拡大図である。
図11】背受が、図7の状態よりもさらに左回転するとともに、押し部材が背受と同調して冊子を搬送方向(矢印L方向)に押している状態の図である。
図12】背受が、図11の状態よりもさらに左回転し、かつ、押し部材が背受と同調して冊子を搬送方向にさらに押して、冊子を搬送ベルト上に載置した図である。
図13図12の背受の周辺の拡大図である。
図14図7のシート束排出装置において、背受の回転動作を行わない、或いは背受の回転動作と押し部材の押し動作とを同調させない場合において、搬送ベルト上で冊子が丸まる様子を示した図である。
図15図7のシート束排出装置において、冊子を搬送ベルト上に載置する前に押し部材によって、冊子を湾曲させる一例を示す図である。
図16】搬送ベルトが冊子を図12の状態から送り出す状態の斜視図である。
図17】本実施形態の製本装置の製本動作を表したフローチャートである。
図18】画像形成システムの制御ブロック図である。
図19】冊子の小口が搬送ベルトに引っ掛かった状態を示した図である。
図20】冊子の小口の表紙或いは中紙が冊子と搬送ベルトとに挟まれた状態を示した図である。
図21】本発明の実施形態のシート束排出装置の主要部分を搬送ベルト面と直交する方向から見た図である。
図22】本発明の他の実施形態のシート束排出装置の主要部分を搬送ベルト面と直交する方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態のシート束排出装置を有する製本装置を備えた画像形成システムを図に基づいて説明する。
【0012】
図1は、画像形成システムDのシート搬送方向に沿った断面概略図である。図2は、製本装置Bのシート搬送方向に沿った断面概略図である。
【0013】
画像形成システムDは、シートに順次トナー画像を形成する画像形成装置Aと、この画像形成装置Aの下流側に配置された製本装置Bと、画像形成装置Aの下流に配置された後処理装置Cと、で構成されている。画像形成システムDは、画像形成装置Aで画像形成したシートを製本装置Bで製本処理する。また、画像形成システムDは、製本処理をしないシートを、製本装置Bを通過させて後処理装置Cで後処理をして、排出する。
【0014】
(画像形成装置A)
画像形成装置Aは、シートに画像を形成する。画像形成装置Aには、複写機、プリンタ、印刷機など種々の構造のものがあるが、本実施形態の画像形成装置Aは、シートにトナー画像を形成する複写機である。画像形成装置Aは、装置本体1内にシート供給部2と、画像形成部3と、シート排出部4と、画像形成装置制御部101と、などを内蔵している。シート供給部2には、シートサイズに応じた複数のカセット5が上下方向に配置されている。シート供給部2は、画像形成装置制御部101から指示されたサイズのシートを給送経路6に繰り出す。この給送経路6にはレジストローラ対7が設けられている。レジストローラ対7は、シートの先端を揃えた後、そのシートを所定のタイミングで下流側の画像形成部3に給送する。
【0015】
画像形成部3には、静電ドラム10が設けられている。この静電ドラム10の周囲には、印字ヘッド9、現像器11、転写チャージャ12などが配置されている。印字ヘッド9は、例えば、レーザ発光器などで構成され、静電ドラム10上に静電潜像を形成する。静電潜像は、現像器11でトナー現像され、トナー画像となって、転写チャージャ12でシートに転写される。シートは、定着器13でトナー画像を定着されて、シート排出経路17に送られる。シート排出部4には、シート排出口14が形成されて、シート排出ローラ対15が配置されている。循環経路16は、シート排出経路17からのシートをスイッチバック経路で表裏反転した後、再びレジストローラ対7に案内する。シートは、画像形成部3で裏面にトナー画像を形成される。このように片面若しくは両面にトナー画像を形成されたシートは、シート排出ローラ対15によって、シート排出口14から製本装置Bに給送される。
【0016】
装置本体1の上部に設けられたスキャナユニット20は、原稿の画像を光学的に読み取る。スキャナユニット20は、ユーザによって原稿を載置されるプラテンガラス23と、プラテンガラス23に沿って原稿を光学的に読み取るキャリッジ21と、キャリッジ21からの光学像を光電変換する光学読取手段(例えばCCDディバイス)22と、を有している。また、スキャナユニット20は、上部に、原稿を自動的にプラテンガラス23に給送する原稿送り装置25を有している。
【0017】
(製本装置B)
図2は、製本装置Bのシート搬送方向に沿った断面概略図である。製本装置Bは、画像形成装置Aに接続して配置されている。
【0018】
なお、以下の説明において、シート束の表紙になるシートを「表紙」、表紙によって表装されるシートを「中シート」、中シートの束を「中シート束」、表紙によって表装された中シート束を「表紙付きシート束」、トリミングされた表紙付きシート束を「冊子」と称する。なお、これらのシート束を単にシート束と称する場合もある。
【0019】
製本装置Bは、ケーシング30と、ケーシング30内に設けられた、トナー画像形成済みの中シートを束状に集積して束揃えをする集積部40と、集積部40からの中シート束に接着剤を塗布する接着剤塗布部55と、接着剤を塗布された中シート束に表紙を綴じ合わせる表紙綴じ部60。表紙綴じされた表紙付きシート束の向きを変えるシート束回転部64と、向きを変えられたシート束の縁をトリミング断裁する断裁部65と、トリミング断裁されて形成された冊子を排出するシート束排出装置Kと、を備えている。
【0020】
(搬送経路の構成)
各シートの搬送経路について説明する。ケーシング30内には、画像形成装置Aのシート排出口14に連なる搬入経路31が設けられている。搬入経路31は、経路切換部材36を介して、中シート搬送経路32と表紙搬送経路34とに接続されている。中シート搬送経路32は、集積部40を介して製本経路33に接続されている。表紙搬送経路34は、後述する後処理装置C(図1)の後処理経路38に接続されている。製本経路33は、製本装置Bを略鉛直方向に縦断している。表紙搬送経路34は、製本装置Bを略水平方向に横断している。このため、製本経路33と表紙搬送経路34は、互いに交差(直交)し、その交差している場所に後述する表紙綴じ部60が配置されている。
【0021】
以上のような搬送経路の構成において、搬入経路31は、画像形成装置Aからトナー画像形成済みのシート(中シート)を受け入れる。この場合、画像形成装置Aから、中シートと、表紙カバーとして使用するタイトルなどを印刷された印刷シート(表紙)と、が給送されてくる。中シートと表紙とは、経路切換部材36によって、中シート搬送経路32と表紙搬送経路34とに振り分けられる。
【0022】
また、搬入経路31(図1)には、インサータ装置26が接続される。インサータ装置26は、画像形成装置Aで印刷処理しない表紙を給紙トレイ26aから1枚ずつ搬入経路31に給送する。このインサータ装置26は、1段又は複数段の給紙トレイ26aと、このトレイの先端に配置されて給紙トレイ26aに積載されたシートを1枚ずつ分離して給送する表紙給送部29と、表紙給送部29の下流側の表紙給送路27と、を有している。表紙給送路27は、経路切換部材28を介して搬入経路31に接続されている。搬入経路31には、搬送ローラ対31aが配設されている。中シート搬送経路32には、搬送ローラ対32aが配設されている。製本経路33には、グリップ搬送部47と、後述するシート束回転部64と、シート束排出ローラ対66と、が配設されている。表紙搬送経路34には、搬送ローラ対34aが配設され、後述する後処理装置C(図1)の後処理経路38には、搬送ローラ対38aが配設され、それぞれ、不図示の駆動モータによって回転して中シートや表紙を給送する。
【0023】
(後処理装置C)
図1に示すように、製本装置Bには、後処理装置Cが接続される。後処理装置Cは、表紙搬送経路34に連なる後処理経路38を備える。後処理装置Cは、後処理経路38に接続する後処理機器として、ステイプルユニット、パンチユニット、スタンプユニットのうちいずれかを備える。後処理経路38は、画像形成装置Aからの画像形成済みのシートを、表紙搬送経路34を介して受け取る。後処理装置Cは、その画像形成済みのシートに、ステイプル処理、パンチ処理、捺印処理などの後処理を施す。そして、後処理装置Cは、画像形成済みのシートを排紙トレイ37に搬出する。なお、後処理装置Cは、画像形成済みのシートに後処理を施すことなく、排紙トレイ37に排出することもある。
【0024】
(集積部40)
中シート搬送経路32の中シート排出口32bに配置された集積トレイ41は、中シート排出口32bから排出された中シートを束状に積載収納する。図2に示すように、集積トレイ41は、略水平に配置されたトレイ部材で構成され、その上方には正逆転ローラ42aと搬入ガイド42bとが配設されている。そして、中シート排出口32bから排出された中シートは、搬入ガイド42bによって集積トレイ41上に案内され、正逆転ローラ42aによって集積トレイ41に収納される。正逆転ローラ42aは、正回転で中シートを集積トレイ41の先端側に移送し、逆回転でトレイ後端(図2の右端)に配置された規制部材43に中シートの後端を突き当て規制する。集積トレイ41には、図示しないシートサイド整合板が1対設けられており、このシートサイド整合板が集積トレイ41上に収納された中シートの両側縁を整合する。また、集積トレイ41は、中シートが積載されるのに伴って、実線の位置から破線の位置へ下降する。このような構成によって、中シート搬送経路32からの中シートは集積トレイ41上に順次積み上げられ束状に揃えられる。
【0025】
(グリップ搬送部47)
製本経路33には、集積トレイ41からシートを下流側の接着剤塗布位置Eに移送するグリップ搬送部47が配設されている。集積トレイ41は、略水平な引き渡し位置に待機しているグリップ搬送部47に中シート束を引き渡す。グリップ搬送部47は、図2に示すように、集積トレイ41に集積した中シート束を、略水平な姿勢から鉛直な姿勢に向きを変える。そして、グリップ搬送部47は、中シート束を略鉛直方向に配設された製本経路33に沿わせて接着剤塗布位置Eにセットする。
【0026】
(接着剤塗布部55)
図3は、接着剤塗布部55を示す図である。図3(A)は、正面図である。図3(B)は、(A)のJ矢視図である。図2図3に示すように、接着剤塗布部55は、製本経路33の接着剤塗布位置Eに配設されている。接着剤塗布部55は、熱溶融性の接着剤を収容する接着剤容器56と、塗布ロール57と、ロール回転モータMRと、を有している。接着剤容器56は、液状接着剤収容室56aと固形接着剤収容室56bとを有している。液状接着剤収容室56aには、塗布ロール57が回転自在に組み込まれている。液状接着剤収容室56aには、接着剤の残量を検出する接着剤センサ56s(図2)が設けられている。接着剤センサ56sは、接着剤の温度センサを兼用している。すなわち、接着剤センサ56sは、液状接着剤収容室56a内の液化した接着剤の温度を検出するのと同時に、接着剤に浸された部位の温度差によって接着剤の残量を検出する。また、接着剤容器56には、電熱ヒータなどの加熱素子50が設けてある。接着剤センサ56sと加熱素子50は、製本装置制御部102(図1図18)に接続されている。製本装置制御部102は、液状接着剤収容室56a内の接着剤を加熱素子50の検知温度に基づいて所定の溶融温度に温度調整する。塗布ロール57は耐熱性の多孔質材で構成され、接着剤を含侵してロール周囲に接着剤の層が盛り上がるように構成されている。
【0027】
上述のように構成された接着剤容器56は、中シート束の背側に沿って往復駆動する。図3(B)に示すように、中シート束の下端縁(製本時の背表紙部)P1Bに対し接着剤容器56は短い長さ(寸法)に形成してあり、これに内蔵した塗布ロール57と伴に中シート束P1の下端縁P1Bに沿って移動するようにケーシング30(図2)のガイドレール52に支持されている。接着剤容器56は、タイミングベルト53に連結され、このタイミングベルト53には接着剤容器移動モータMSが連結してある。
【0028】
接着剤容器56は、図3(B)の左側のホームポジションHPと、シート束に沿って復動作を開始する図3(B)の右側のリターン位置RPとの間でガイドレール52に案内されて、接着剤容器移動モータMSによって往復移動する。リターン位置RPはシート幅のサイズ情報によって設定される。製本装置制御部102(図18参照)は、接着剤容器56がホームポジションHPにあることを、ホームポジションセンサSPによって検知する。接着剤容器56は、装置電源投入時(イニシャル時)にはホームポジションHPに待機している。そして、製本装置制御部102は、先行する例えばグリップ搬送部47に設けたグリップセンサSg(図2参照)のシートグリップ信号から所定時間後(シート束が接着剤塗布位置Eに到達する見込み時間)にホームポジションHPからリターン位置RPに向けて、接着剤容器56を移動させる。接着剤容器56の位置は、接着剤容器移動モータMSの駆動パルスをカウントすることにより検出することができる。なお、図3(B)に示すように、製本装置Bは、リターン位置RPにオーバランセンサOPを設け、製本装置制御部102がその検知結果によって、接着剤容器56のオーバランを防止するように構成してもよい。接着剤容器56のホームポジションHPからリターン位置RPへの移動と同時に、塗布ロール57は、ロール回転モータMRによって回転を開始する。このように構成された接着剤塗布部55は、接着剤容器移動モータMSの回転と、ガイドレール52の案内と、によって図3(B)の左側から右側に向けて移動を開始する。この往路では、塗布ロール57はシート束に圧接してシート束の端部をほぐす。また、リターン位置RPからホームポジションHPに戻る復路において、塗布ロール57とシート束の端部とが所定のギャップを形成するように、製本装置制御部102は、前述のグリップ搬送部47の送り量を図示しない昇降モータで調整する。そして、製本装置制御部102は、塗布ロール57の復路の移動でシート束の端部に接着剤を塗布する。
【0029】
(表紙綴じ部60)
図4は、表紙綴じ部60と、シート束回転部64と、断裁部65と、シート束排出装置Kと、を示す図である。製本経路33の表紙綴じ位置Fには、表紙綴じ部60が配設されている。綴じ手段としての表紙綴じ部60は、当てプレート61と、折りプレート62と、折りローラ対63と、を有している。表紙綴じ位置Fには、表紙搬送経路34が配置されており、画像形成装置A又はインサータ装置26から表紙が給送されてくる。当てプレート61は、表紙をバックアップする板状部材で構成され、製本経路33に進退自在に配置されている。当てプレート61に支持された表紙P2に表装される中シート束P1が逆T字状に接合される。折りプレート62は、左右1対のプレス部材で構成される。中シート束P1に接合された表紙の背部を折るために、折りプレート62は、図示しない駆動部によって互いに接近離間する。折りプレート62は、互いに接近して表紙P2の背部を折る。折りローラ対63は、表紙付きシート束P3を挟んで加圧して表装の仕上げをする。
【0030】
(シート束回転部64と断裁部65)
図4に示すように、折りローラ対63の下流側には、表紙付きシート束P3を回転させて方向を変更するシート束回転部64が配置されている。シート束回転部64より下流側に位置する断裁位置Gには、表紙付きシート束P3の周縁を断裁する断裁部65が配設されている。シート束回転部64は、表紙綴じ位置F(図2参照)から表紙付きシート束P3を所定の方向にして下流側の断裁部65又はシート束排出装置Kに給送する。断裁部65は、表紙付きシート束の被断裁部である周縁を切り揃える。このため、シート束回転部64は、折りローラ対63から送られた表紙付きシート束P3を把持して回転する回転テーブル64a,64bを備えている。回転テーブル64a,64bは、ケーシング30(図2参照)に昇降自在に取り付けられたユニットフレーム64xに設けられている。ユニットフレーム64xには、製本経路33を挟んで1対の回転テーブル64a,64bがそれぞれ回転自在に軸受支持されている。一方の回転テーブル64bは、表紙付きシート束P3の厚み方向(製本経路33に対して直交する方向)に移動自在にユニットフレーム64xに支持されている。各回転テーブル64a,64bには、製本経路33内で表紙付きシート束P3を回転する旋回モータMt1,Mt2が設けられている。また、可動側の回転テーブル64bには、図4の左右方向に移動するグリップモータMgが装備されている。ユニットフレーム64xは、昇降モータMAによって表紙付きシート束P3を製本経路33に沿って昇降させる。昇降モータMAは、不図示の固定部材に固定されている。昇降モータMAは、ユニットフレーム64xに連結されたベルト67を循環させて、ユニットフレーム64xを昇降させる。
【0031】
製本経路33内に導かれた表紙付きシート束P3は、左右1対の回転テーブル64a,64bでグリップ把持されて、旋回モータMt1,Mt2によって回転される。回転テーブル64a,64bは、背部を下側に搬入された表紙付きシート束P3を180度回転して小口部を下側にして下流側のシート束排出ローラ対66に送ることができる。また、回転テーブル64a,64bは、表紙付きシート束P3を順次90度ずつ回転できる。そして、表紙付きシート束P3の天部・地部・小口部が断裁位置Gを向くように表紙付きシート束P3を回転して、各端部のトリミングカットを行うことができる。可動側の回転テーブル64bには、グリップセンサ(図示せず)が設けられている。製本装置制御部102は、このグリップセンサによって左右の回転テーブル64a,64b間に表紙付きシート束P3が確実にグリップされたのを検知する。そして、この検知後、製本装置制御部102は、回転テーブル64a,64bを旋回駆動する。
【0032】
(断裁部65)
図4に示すように、シート束回転部64の下流側には、断裁部65が配置されている。この断裁部65は、刃受け部材65aと、表紙付きシート束P3の断裁縁を刃受け部材65aに押圧支持する断裁縁プレスユニット65bと、断裁縁を断裁する断裁刃ユニット65cと、を有している。断裁縁プレスユニット65bは、製本経路33に配置した刃受け部材65aと対向する位置に配置されている。断裁縁プレスユニット65bは、不図示の駆動部によって表紙付きシート束P3と直交する方向に移動する加圧部材65dを有している。断裁刃ユニット65cは、平刃状の断裁刃65eと、断裁刃65eを駆動するカッタモータMcと、を有している。このように構成された断裁部65は、表紙付きシート束P3の背部を除く周縁(被断裁縁)を所定量裁断して切り揃える動作であるトリミングカットを行う。
【0033】
(シート束排出装置K)
図4に示すように、シート束排出装置Kは、断裁位置Gの下方に配設されており、断裁屑回収部K1と、シート束排出部K2となどで構成されている。
【0034】
(断裁屑回収部K1)
図4に示すように、断裁屑回収部K1は、スイーパ部69と、断裁屑回収容器68と、満杯検出センサ68Sfと、ニアフル検出センサ68Snとなどで構成されて、断裁刃65eで切断された断裁屑を収納する。
【0035】
スイーパ部69は、断裁位置Gの直下に配設されている。スイーパ部69は、図示しない駆動モータによって図4の実線の位置と破線の位置とを回転する。スイーパ部69は、断裁部65が表紙付きシート束の被断裁縁を断裁するとき、断裁によって生じる断裁屑を受ける実線の位置に傾いて待機している。図2に示すように、スイーパ部69と後述する排出ガイド71は、スイーパ部69が回動したとき、互いに干渉しないように、各々櫛歯状に形成されている。
【0036】
図4に示すように、実線の位置に待機しているスイーパ部69は、断裁部65で生じて、シート束排出ローラ対66を経て落下してきた断裁屑を受けて、傾斜を利用して断裁屑回収容器68に案内する。このとき、表紙付きシート束P3は、回転テーブル64a,64bに保持されているため落下しない。スイーパ部69は、断裁部65による表紙付きシート束P3の断裁処理が終了すると、シート束排出ローラ対66の真下を避けた、断裁屑回収容器68に接近した破線の位置に回動する。この結果、スイーパ部69は、回転テーブル64a,64bによる保持を解放されて、シート束排出ローラ対66から排出される冊子の落下を阻害することがない。冊子は、シート束排出部K2に落下する。
【0037】
製本装置制御部102(図18参照)は、ニアフル検出センサ68Snによって、断裁屑回収容器68に満杯未満の所定量の断裁屑が回収されたことを検出する。ニアフル検出センサ68Snが断裁屑を検出すると、製本装置制御部102は、画像形成装置制御部101を介して、画像形成装置Aの操作パネル18(図1図18参照)に断裁屑の回収状態を表示する。また、製本装置制御部102は、満杯検出センサ68Sfによって、断裁屑回収容器68が回収した断裁屑で満杯になったことを検出する。満杯検出センサ68Sfが断裁屑を検出すると、製本装置制御部102は、画像形成装置制御部101を介して、画像形成装置Aの操作パネル18に断裁屑回収容器68が満杯になったことを表示する。
【0038】
(シート束排出部K2)
図5は、シート束排出装置Kの概略図であり、背受81が冊子と当接する待機位置で待機している状態を示す図である。図6は、図5のM矢視図である。図1図2図4に示すように、シート束排出部K2は、シート束排出ローラ対66と排出ガイド71とより下方(下流)に配置されている。図5図6に示すように、シート束排出部K2は、押し部材73、スロープ72、背受81、排出部90、背受ホームポジションセンサSHP(図6参照)、スロープセンサSS、押し部材ホームポジションセンサSTH(図5参照)及び押し位置検知センサSTTを有している。
【0039】
断裁屑回収容器68の上部には、押し部材73が設けられている。押し部材73は、押し部材駆動部74によって、シート束排出ローラ対66から冊子が落下する方向に対して交差する方向(矢印L,R方向)に往復移動自在に、断裁屑回収容器68の上部に設けられている。押し部材駆動部74は、断裁屑回収容器68の上部に設けられた押し部材モータMP、プーリ74a、押し部材モータMPとプーリ74aとに架け渡したベルト74b、プーリ74aと不図示の歯車機構を介して回転連動したピニオン74cと、押し部材73に押し部材73の長手方向に沿って設けられてピニオン74cと噛み合うラック74dとなどで構成されている。押し部材駆動部74は、押し部材モータMPの回転力を、ベルト74bとプーリ74aとを介して、ピニオン74cに伝達して、ラック74dと一体に押し部材73を矢印L,R方向に往復移動させる。押し部材73と押し部材駆動部74とによって冊子P4の姿勢を変更する。
【0040】
図7は、図5のシート束排出装置Kにおいて、背受81が冊子受取り位置(待機位置)で冊子P4と当接している状態を示す図である。図8は、図7の背受81の部分の拡大図である。図7図8に示すように、シート束排出部K2のフレーム80には、断面が樋形状の背受81が押し部材73の移動方向と同じ方向(矢印CCW方向、矢印CW方向)に往復回転するように設けられている。背受81は、搬送されてきた冊子P4の搬送方向下流側端部であり、第1の端部としての小口P4cと実質的に平行な第2の端部としての背部P4bを支持する支持部材である。そして、背受81が、回転し、冊子P4を搬送ベルト92上に載置する。搬送ベルト92は、循環する無端ベルトである。背受81は、図7に示す状態において、背受81の奥側端部に後述する支持軸83が突設され、手前側端部にガイド軸84が突設されている。背受81は、支持軸83がフレーム80に回転自在に支持されていることによって、矢印CCW,CW方向に回転する。背受81は、移動してくる冊子P4の背部P4bと当接する背受底板(底部)81cと、背受底板81cに隣接して互いに平行な背受上ガイド(側面)81a及び背受下ガイド81b(側面)と、から構成されている。背受81は、長尺の樋状の部材であるとともに、回転可能な部材として構成されている。なお、背受上ガイド81a及び背受下ガイド81bは互いに平行であり、背受底板81cに対して略直角である。
【0041】
図9は、図7のシート束排出装置Kの背受81が冊子P4を排出するためにCCW方向の回転を開始した状態を示す図である。このとき、背受81は、冊子P4の姿勢を変更する姿勢変更手段として機能する。すなわち、冊子P4の姿勢を、搬送ベルト92に載置されていない第1の姿勢の状態から、搬送ベルト92に載置された第2の姿勢の状態へと変更する。
【0042】
図10は、図9の背受81の周辺の拡大図である。図9図10に示すように、背受81には、1対のガイド軸84が設けられている。1対のガイド軸84は、フレーム80に設けられたガイド板82に形成されたガイド孔82aに係合している。ガイド孔82aは円弧状の長孔として形成され、その中心は、支持軸83と中心を合わせて構成されている。背受81は、支持軸83を中心にして回転し、1対のガイド軸84も同じ位置を中心にして回転する。背受81は、一部分不図示の回転力伝達機構85を介してパルスモータである排出モータMTからの回転力を受けて、背受ホームポジションセンサSHP(図6参照)に検出される冊子受取り位置(待機位置)から冊子を排出する排出位置まで回転する。
【0043】
背受81が排出位置まで回転すると、冊子P4は、図11に示す状態を経て、図12に示すように、搬送ベルト92に載置された姿勢となる。このとき、冊子P4は、小口P4cが搬送ベルト92の幅方向(冊子P4の搬送方向と直交する方向)において搬送ベルト92を通過してから、搬送ベルト92上に載置される。
【0044】
ガイド板82には、背受81の断面形状に類似した形状の切欠き82bが形成されている。図12図16に示すように、ガイド板82と背受81との相対位置関係において、ガイド板82と矢印CCW方向に回転した背受81の樋形状の開口の向きは略同じである。この場合、切欠き82b(図16参照)の奥縁82baは、背受81の背受底板81cが冊子P4の背部P4bと当接する樋形状の内面の冊子当接面(平面)81caより、シート束搬送方向(矢印L方向)の上流側に形成されていることが好ましい。
【0045】
仮に、切欠き82bが形成されていないと、冊子P4が搬送ベルト92上に載置された位置のまま搬送ベルト92を循環させた場合に、冊子P4がガイド板82と干渉してシート束排出装置Kの外に排出できない。そのため、冊子P4が排出部90上に載置された後、冊子P4を図12のシート束搬送方向(矢印L方向)に、ガイド板82を避ける位置まで移送させてから、搬送ベルト92を回転させなければならず、装置の構造や制御が複雑になる。
【0046】
しかし、本実施形態のシート束排出装置Kは、背受81の断面形状に類似した切欠き82bがガイド板82に形成されている。そのため、冊子P4が搬送ベルト92上に載置された位置のまま搬送ベルト92を回転させることによって、冊子P4ha,切欠き82bを通過して排出される。つまり、本実施形態のシート束排出装置Kは、簡単な構造で、速やかに冊子P4を排出できるという特徴を有する。
【0047】
なお、排出モータMTは、背受81を回転させる他に、搬送ベルト92を循環させる駆動源となっている。搬送ベルト92と背受81とは、それぞれ不図示のワンウェイクラッチを介して排出モータMTと接続されている。搬送ベルト92は排出モータMTの逆方向の回転により駆動され、背受81は排出モータMTの正方向への回転により図8のCCW方向とCW方向の揺動を繰り返す不図示のリンク機構に接続されている。なお、搬送ベルト92の詳細については、後述する。
【0048】
また、排出モータMTと背受81との間と、排出モータMTと搬送ベルト92との間との各々に不図示のクラッチを設けて、排出モータMTの回転を、背受81と搬送ベルト92との各々に選択的に伝達する構成としてもよい。
【0049】
図5図6に示すように、断裁屑回収容器68と背受81との間には、案内手段としてのスロープ72が配設されている。スロープ72は、背受81側が下り勾配に形成されている。スロープ72と、押し部材73は、押し部材73が移動するとき、互いに干渉しないように、櫛歯状に間隔を空けて形成されている。
【0050】
図16は、搬送ベルト92が冊子P4を製本装置から外部に送り出す状態の斜視図である。図5図16に示すように、背受81の左隣には、排出部90が設けられている。排出部90は、コンベヤステイ91と、搬送ベルト92と、を有している。コンベヤステイ91は、搬送ベルト92上に冊子P4を載置したときに小口P4cを受ける受け面191を含み、受け部材として機能する。本実施形態では、板状の金属材料を板金加工することで、コンベヤステイ91を構成している。排出部90の搬送ベルト92は、コンベヤステイ91に支持されて架け渡され、所定の搬送方向としての矢印Q方向に循環する。排出部90は、略水平に配設されているが、背受81側がやや低く配設されている。後述するが、搬送ベルト92は、背受81によって載置された冊子P4を機外に排出する。
【0051】
ガイド板82には、切欠き82bが形成されて、ガイド板82は背受81の断面形状と略同形状に形成されている。この構成により、図13に示すシート束排出位置まで背受81を回転させた後に、搬送ベルト92で冊子P4を排出するにあたって、背受81をガイドとしながら冊子P4を製本装置の外部に排出することができる。
【0052】
また、ガイド板82と背受81とは、冊子P4が矢印Q方向に通過できるように構成されている。すなわち、ガイド板82には冊子P4が通過する部分に切欠き82bが形成されているとともに、背受81のシート束搬送方向の下流側端部は端面を設けずに開放した形状に形成されている。この構成により、搬送ベルト92上に載置された冊子P4を図16の矢印Lの方向に移動させることなく、矢印Q方向に搬送し、排出することができる。
【0053】
図18は、本実施形態における画像形成システムの制御ブロック図である。図18に示すように、画像形成装置制御部101は、画像形成装置Aに設けられて、ユーザが操作パネル18に入力した画像形成情報に基づいて、シート供給部2、画像形成部3、原稿送り装置25及びスキャナユニット20などを制御して、画像形成装置Aに画像形成動作をさせる。製本装置制御部102は、製本装置Bに設けられて、各センサの検知動作によって各モータを回転制御して、集積部40、接着剤塗布部55、表紙綴じ部60、断裁部65及びシート束排出装置Kなどを制御し、製本装置Bに製本動作をさせる。後処理装置制御部103は、後処理装置Cに設けられて、画像形成済みのシートに、ステイプル処理、パンチ処理、捺印処理などの少なくとも1つの後処理を行えるように後処理装置Cを制御する。なお、画像形成装置制御部101、製本装置制御部102及び後処理装置制御部103は、一体化されて、画像形成システムDのどこに設けられていてもよい。
【0054】
(冊子の排出動作説明)
図17は、本実施形態の製本装置Bの製本動作を表したフローチャートである。フローチャートは、図1図18の製本装置制御部102の不図示の記憶部に記憶されている。製本装置制御部102は、このフローチャートに基づいて製本装置Bの動作制御を行う。このとき、製本装置制御部102は、製本に必要な情報の授受を画像形成装置制御部101と後処理装置制御部103と行う。
【0055】
図17の処理S101乃至処理S123の説明をする。図2図17に示すように、集積部40で集積された中シート束(図17、S101)は、接着剤塗布部55、表紙綴じ部60によって表紙付きシート束となり(S102,S103)、断裁部65でトリミング断裁されて冊子となる(S104)。シート束排出ローラ対66は、冊子をシート束排出装置Kのシート束排出部K2に排出する動作を開始する(S105)。図5に示すように、シート束排出部K2は、冊子を受入れる際、背受81を冊子受取り位置(待機位置)に回転させておく必要がある。このため、製本装置制御部102は、排出モータMTを回転させて、背受81を多少右回転(図8、CW方向)させる(S106)。製本装置制御部102は、背受81が背受ホームポジションセンサSHP(図6参照)に検知される待機位置で排出モータMTを停止させる(S107でYES)。
【0056】
そして、背受ホームポジションセンサSHPによって背受81がホームポジション(待機位置)にいることが確定すると、シート束排出ローラ対66からの冊子は、受入れ排出ガイド71(図5参照)、スロープ72を案内にして、背受81に滑り込む。図7図8に示すように、背受81に、冊子P4の背部P4bが当接する(S108)。製本装置制御部102は、背受81に冊子が受け渡されたかを、図6に示すスロープセンサSSの検知動作によって判断し、冊子が背受81に受け渡されたら(S109でYES)、排出モータMTを逆転させて、背受81を図8のCCW方向に左回転させる(S110)。製本装置制御部102は、排出モータMTの発するパルスに基づいて、背受81がホームポジションから回転を開始して所定時間経過したことを検知すると(或いは、背受81が所定の角度まで左回転したことを検知すると)(S111でYES)、押し部材モータMP(図5参照)を回転させて、押し部材73を図5の左方向(矢印L方向)に移動開始させる。すなわち、押し部材73は、背受81の回転開始より後から作動を開始する。押し部材73は、背受81よりも上流側に位置している。押し部材73は、背受81と同調して作動する。押し部材73は、冊子P4を搬送ベルト92上に載置するために、背受81よりも上流側の位置において、冊子P4を押す(作用する)(S112)。この状態を示したのが、図11である。図11は、背受81が、図7の状態よりもさらに左回転するとともに、押し部材73が背受81と同調して冊子P4を搬送方向(矢印L方向)に押している状態の図である。つまり、押し部材73も冊子P4の姿勢を変更する姿勢変更手段として機能する。
【0057】
図12は、背受81が、図11の状態よりもさらに左回転し、かつ、押し部材73が背受81と同調して冊子P4を搬送方向(矢印L方向)にさらに押して、冊子P4を搬送ベルト92上に載置した状態を示す図である。図13は、図12の背受81の周辺の拡大図である。図12図13図18に示すように、製本装置制御部102は、排出モータMTの発するパルスに基づいて、背受81が冊子を搬送ベルト92に対して排出位置まで左回転したことを検出し、押し部材73が押し位置検知センサSTTによって押し最終位置まで移動したことが検知されると(S113でYES)、排出モータMTと押し部材モータMPとの回転を停止させる(S114)。製本装置制御部102は、排出モータMTと押し部材モータMPとの回転停止後、冊子が搬送ベルト92に載置されていることが冊子載置検出センサ93S(図16参照)によって検出されると(S116でYES)、排出モータMTを回転させて搬送ベルト92を循環させる(S117)。冊子載置検出センサ93Sは、図16に示すように、搬送ベルト92近くのフレーム80に設けられている。処理S115で、冊子が冊子載置検出センサ93Sに検知されない場合(S116でNO)、製本装置制御部102は、検知されるまで(S116でYESになるまで)、背受81と押し部材73とを僅かに作動させて、停止させる動作を繰り返させる。
【0058】
なお、冊子載置検出センサ93Sを設けずに、押し部材モータMPの回転を停止してから所定の時間が経過したタイミングで、搬送ベルト92の循環を開始するようにしてもよい。
【0059】
押し部材73が冊子を押す位置、すなわち、押し部材73の冊子側に突出している位置は、冊子の高さ方向においては中央より下部を含み、冊子P4の幅方向においては中央から略等距離に振り分けられた複数の位置とすることが好ましい。この位置にすることで、冊子P4が搬送ベルト92上に載置される際の挙動を安定させ、搬送ベルト92上の冊子P4の位置のばらつきを軽減することができる。
【0060】
製本装置制御部102は、搬送ベルト92を循環させて、所定時間経過して、冊子排出検出センサ94S(図16参照)によって、冊子が検知されたとき、冊子が排出され始めたものと判断し(S118でYES)、さらに、所定時間経過して、冊子排出検出センサ94Sによって、冊子が検知されなくなると(S119でYES)、冊子が矢印Q方向に搬送されてシート束排出部K2外に排出されたものと判断する(S120)。冊子排出検出センサ94Sは、図16に示すように、搬送ベルト92の終端近くのフレーム80に設けられている。製本装置制御部102は、冊子が排出されると、搬送ベルト92を停止し、排出モータMTによって背受81を待機位置に戻し、押し部材モータMPによって押し部材73を押し部材ホームポジションセンサSTH(図5参照)に検知される待機位置に戻す。製本装置制御部102は、次の冊子がある場合には(S121でYES)、処理S106に戻り、冊子がなくなるまで同じ制御を繰り返し、冊子が無くなった時点で(S121でNO)、一連の冊子排出制御を終了する。
【0061】
なお、製本装置制御部102は、処理S118で冊子排出検出センサ94Sによって冊子が検出されないときや(S118でNO)、処理S119で冊子排出検出センサ94Sによって冊子が検出されたままであるとき(S119でNO)、冊子が搬送ベルト92で所定の位置に載置されていないものとして、冊子詰まりの防止のため、操作パネル18にエラー表示をし(S122)、搬送ベルト92を停止させる(S123)。
【0062】
(排紙動作の詳細説明)
以上、説明した図17の処理S101~処理S123の内、処理S106~処理S115,処理S108,処理S119~処理S123について、以下に詳細に説明する。
【0063】
処理S106~処理S108において、背受81が冊子を受け取った状態を示した図が、図7図8である。図7図8に示すように、背受81の背受下ガイド81bは、スロープ72のスロープ傾斜面72aと略平行に位置し、かつスロープ傾斜面72aより上方(冊子側)に突出しないよう位置している。これにより、搬送されてきた冊子P4は、背受81に引っ掛かることなく、背受81の背受底板81cと当接する。また、背受底板81cが、背受下ガイド81bに対して略直角に形成されているので、背受底板81cと冊子P4の背部P4bとが当接したときに、冊子P4の姿勢が安定する。
【0064】
処理S110,処理S111において、背受81と冊子P4とが当接した後、排出モータMT(図7参照)が背受81を反時計方向(矢印CCW方向)に回転させた状態を示したのが図9図10である。処理S110,処理S111において、背受81は、所定角度反時計方向(矢印CCW方向)に回転して、冊子を湾曲させた姿勢に変化させる。すなわち、背受下ガイド81bの先端が冊子を押すため、図10中符号Wで示すように、冊子P4の下半部が背受81の回転方向側に湾曲する。
【0065】
処理S111~処理S114における背受81と押し部材73との状態を示したのが図11である。冊子が図10に示すように下半部が湾曲すると、押し部材モータMP(図5参照)が回転して、押し部材73を図11の矢印L方向に移動させて冊子に当接させる。押し部材73の位置は押し部材ホームポジションセンサSTH(図5参照)と押し位置検知センサSTTにより判断される。押し部材73は、背受81が冊子を受入れる際には、押し部材ホームポジションセンサSTHに検知される図5図7に示す待機位置に待機している。そして、押し部材73は、冊子P4が図10に示すように下半部が湾曲すると、押し位置検知センサSTTに検知される図12に示す押し動作完了位置まで移動しながら、冊子に当接して(図11参照)、冊子P4を搬送ベルト92上に載置する。
【0066】
以上の説明において、シート束排出部K2は、図9図12に示すように、背受81の回転動作により冊子P4を湾曲させてから、押し部材73による冊子P4の押し動作を開始させて、冊子P4を搬送ベルト92上に載置している。これは、剛性が低い冊子や、トリミングカットされていない大きいサイズの冊子を載置するときに、冊子の姿勢を安定させるためである。
【0067】
そして、冊子P4の姿勢が図7に示す第1の姿勢から図12に示す第2の姿勢となるときに、冊子P4の小口P4cは、搬送ベルト92の搬送方向と直交するベルト幅方向において、搬送ベルト92が設けられた領域を通過した後、コンベヤステイ91の受け面191が設けられた領域に到達する。
【0068】
図14に示すように、背受81と押し部材73の動作が同調していない場合、冊子P4の姿勢を変更して搬送ベルト92上に載置する過程において、冊子P4の小口P4c側(背部P4bの対向側)が先行する。そして、冊子P4の小口P4cが先行して搬送ベルト92に当接すると、冊子P4が搬送ベルト92上で丸まり、冊子詰まりが発生したり、冊子表面に打痕やダメージが発生したりする恐れがある。しかし、冊子の剛性やサイズは、ユーザによって選択されるため、どのような冊子が排出部90に搬送されるか分からない。よって、本実施形態のシート束排出部K2は、どのような冊子が搬送されても搬送ベルト92に載置させるために、背受81の回動動作と押し部材73の押し動作を同調させて、冊子詰まりの発生や冊子表面への打痕やダメージの発生を抑制している。
【0069】
もし、背受81の回動動作と押し部材73の押し動作とを同調させず、同時に開始させる場合には、冊子を倒す前の姿勢が重要である。例えば、図15に示すように、押し部材173の一部に搬送ベルト92側に突出した突出部173bを形成し、この突出部173bで、冊子の形状を湾曲させる必要がある。なお、図15は、図7のシート束排出装置Kにおいて、冊子P4を搬送ベルト92に載置する前に押し部材173によって冊子P4を湾曲させる一例を示す図である。
【0070】
しかし、冊子には、剛性が高い冊子や、断裁部65によってトリミングカットされた小さいサイズの冊子などがある。このような冊子は、冊子の小口が搬送ベルト92上で丸まることが少ない。このため、シート束排出部K2は、背受81を回動させず、押し部材73の押し動作のみで冊子を搬送ベルト92上に載置してもよい。また、背受81の回転動作のみで冊子を搬送ベルト92上に載置してもよい。さらに、背受81の回動動作と押し部材73の押し動作を同調させず同時に駆動させたり、押し部材73の動作速度を変更したりしてもよい。例えば、背受81の回動動作と押し部材73の押し動作を同時に開始し、押し部材73の動作速度を遅く設定することによって、冊子を図9図10に示す姿勢とすることも可能である。すなわち、冊子の剛性やサイズに応じて、背受81の動作の内容、押し部材73の動作を開始するタイミング、押し部材73の動作速度を適宜選択することで、冊子P4を搬送ベルト92上に載置する際に、冊子P4に与えるダメージを軽減することができる。
【0071】
図12図13は、処理S114,処理S115に対応した、背受81の回動動作と押し部材73の押し動作とが終了した状態を示す図である。このとき、冊子P4は、搬送ベルト92上に載置されている。背受81が回転動作を終了し、冊子P4を搬送ベルト92上に載置した際、背受上ガイド81aは、コンベヤステイ91の角度と略平行になり、かつコンベヤステイ91より冊子側に突出しない位置に位置する。この結果、図16に示すように、搬送ベルト92が冊子P4を矢印Q方向に搬送して製本装置の手前側に排出するとき、冊子P4の表面が背受上ガイド81aを擦ることなく、表紙に傷が付くことを防止できる。
【0072】
なお、図12図16に示すように、排出部90は、搬送ベルト92に載置された冊子P4の背部P4bが小口P4cよりも低くなるにように傾いている。すなわち、排出部90は、水平方向に対してシート束の姿勢が変化する角度を減じる方向に傾斜して配置されている。これは、背受81の回転動作と押し部材73の押し動作によって、表紙が滑らかな冊子が搬送ベルト92上に載置される際の勢いを減じるためである。つまり、排出部90上で冊子が図12図16の矢印L方向に滑ることを防止するためである。
【0073】
図14を用いた説明で述べたように、排出部90では、冊子P4を搬送ベルト92上に載置するとき、冊子P4の小口P4c側(背部P4bの対向側)が先行することがある。この場合、冊子P4が搬送ベルト92上で丸まる(湾曲する)。図19に示すように、排出部90では、冊子P4の小口P4cが先行した状態で、冊子P4が搬送ベルト92上に載置されると、シートP4dが折れ曲がったり、傷ついたりする恐れがある。
【0074】
冊子P4の小口P4cが先行する場合について、図21を用いて説明を行う。本実施形態の排出部90では、冊子P4の小口P4cが先行した状態で、冊子P4が搬送ベルト92上に載置されても、小口P4cが折れ曲がったり傷ついたりするのを抑制できる構成としている。
【0075】
排出部90は、搬送ベルト92と受け面191を含むコンベヤステイ91とを有している。搬送ベルト92は、受け面191と姿勢変更手段としての背受81との間に配置されている。受け面191と搬送ベルト92との境界部において、受け面191は、搬送ベルト92上に載置された冊子P4の厚さ方向の高さが、搬送ベルト92よりも低い位置に配置されている。また、受け面191と冊子P4との間の摩擦係数は、搬送ベルト92と冊子P4との間の摩擦係数より小さく設定されている。
【0076】
搬送ベルト92の排出方向である矢印Q方向と直交する方向(ベルト幅方向)の長さである幅BWは、冊子P4を搬送するのに必要な摩擦抵抗が得られるように設定される。すなわち、搬送ベルト92の幅BWは、搬送ベルト92上に載置された、第2の姿勢の冊子P4の幅PW(矢印Q方向と直交するベルト幅方向における冊子P4の長さ)の半分以上で、冊子の幅PW未満に設定されている。つまり、搬送ベルト92のベルト幅方向の幅BWは、搬送ベルト92上に載置された冊子P4の幅PWに対して、1/2倍以上1倍未満(1/2×PW≦BW<PW)の関係を満たしている。このように搬送ベルト92の幅BWを設定することで、排出部90は、冊子P4を安定して搬送することが可能となる。なお、搬送ベルト92の幅BWは、製本装置Bが製本可能な種々の幅の冊子の内の、最大幅を基準にして設定するのが好ましい。
【0077】
冊子P4が背受81と押し部材73とによって搬送ベルト92上に載置されるとき、小口P4cは、図12及び図21の矢印CCW方向に移動する。コンベヤステイ91の受け面191は、冊子P4の小口P4cが搬送ベルト92が設けられた領域(幅BW)を通過した後に到達する領域に設けられており、矢印CCW方向に移動し搬送ベルト92上に載置される小口P4cを受ける。
【0078】
ただし、剛性の高い冊子P4が撓まずに搬送ベルト92上に載置される場合、冊子P4の小口P4cは、受け面191に接触しない。これは、受け面191が、搬送ベルト92との境界部における搬送ベルト92上に載置された冊子P4の厚さ方向の高さにおいて、搬送ベルト92よりも低い位置に位置しているためである。剛性の高い冊子P4が搬送ベルト92上に載置された場合、冊子P4の小口P4cは、受け面191から浮いた状態で搬送される。
【0079】
また、搬送ベルト92の幅BWよりも狭い幅PWの冊子P4が搬送ベルト92上に載置される場合、冊子P4の小口P4cは、受け面191が設けられている領域まで到達しない。そのため、冊子P4の小口P4cは、受け面191に接触せずに搬送される。
【0080】
このように構成された排出部90において、移動する冊子P4の小口P4cは、搬送ベルト92より摩擦係数の小さい受け面191と当接する。冊子P4の小口P4cは、受け面191の上を滑るため、小口P4cが折れ曲がったり傷ついたりすることを抑制することができる。また、搬送ベルト92の幅BWが、冊子P4の幅PWの半分(PW/2)以上、冊子の幅PW未満に設定されていれば、搬送ベルト92と冊子P4との接触面積は、受け面191と冊子P4との接触面積より広くなる。そのため、搬送ベルト92は、摩擦力により冊子P4を安定した姿勢で搬送し、排出することができる。さらに、受け面191の表面が搬送ベルト92の表面より低い位置に配置されているため、搬送ベルト92に載置された冊子P4が受け面191から受ける摩擦抵抗を低くできる。そのため、搬送ベルト92は、冊子P4を円滑に排出することができる。
【0081】
図22は、本実施形態の変形例として、冊子P4の排出方向と直交する幅BWとして、冊子P4の幅PWよりも長い幅BWを有する搬送ベルト290を示す図である。図22に示すように、搬送ベルト290は、図21に示す排出部90と同様に、背受81(図20参照)と押し部材73との少なくとも一方によって、図20の矢印CCW方向に姿勢が変更された冊子P4が載置される。そして、搬送ベルト290は、載置された冊子P4をCCW方向に対して交差する排出方向(図16図21の矢印Q方向)に排出する。
【0082】
搬送ベルト290は、搬送ベルト290上に載置される冊子P4の小口P4cが接触する部分290bの摩擦係数を、他の部分290aの摩擦係数より小さく設定してある。小口P4cが接触する部分290bは、他の部分290aより、冊子P4の搬送方向であるCCW(L)方向の下流側に位置している。そして、搬送ベルト290の排出方向である矢印Q方向の、搬送ベルト290の他の部分290aの幅BWaは、冊子P4の姿勢を変更するCCW方向の冊子P4の幅PWの半分(PW/2)以上で、冊子の幅PW未満に設定されている。このため、搬送ベルト290上に載置される冊子P4の小口P4cが接触し、摩擦係数が他の部分290aよりも小さい部分290bの幅BWbは、冊子P4の幅PWの半分以下となっている。なお、他の部分290aの幅BWaは、製本する種々の冊子の最大幅を基準にすることが好ましい。
【0083】
このように構成された搬送ベルト290は、搬送ベルト290上に載置される冊子P4の小口P4cが搬送ベルト290の摩擦係数の小さい部分290bに接触するため、小口P4cが摩擦係数の小さい部分290bの上を滑って、冊子が丸まるのを防止することができる。また、搬送ベルト290の他の部分290aの幅BWaが、冊子P4の幅PWの半分以上で、かつ冊子P4の幅PW未満に設定されているので、搬送ベルト290は、摩擦係数の大きい他の部分290aで冊子P4に接触している。このため、搬送ベルト290は、冊子P4を搬送ベルト290上で回転させて傾けることなく、搬送して、排出することができる。
【0084】
なお、搬送されてきた冊子P4の搬送方向の下流端部である背部P4bが背受81に当接した後に、背部P4bを中心に冊子P4の姿勢を変更する場合、シート束排出部K2は、背受81の回転のみで冊子P4の姿勢を変更してもよい。この場合、背受81が姿勢変更手段に対応する。また、背受81に背部P4bが当接した後に、背受81を回転させることなく、押し部材73の移動のみで冊子P4の姿勢を変更してもよい。この場合、押し部材73が姿勢変更手段に対応する。さらに、背受81に背部P4bが当接つぃた後に、回転する背受81と移動する押し部材73とで冊子P4の姿勢を変更してもよい。この場合、回転する背受81と移動する押し部材73とが姿勢変更手段に対応する。このように、搬送ベルト92に載置するために冊子P4の姿勢を変更する構成は、種々のものを適用することが可能である。
【0085】
(搬送ベルト92の循環開始タイミング)
処理S119~処理S123において、製本装置制御部102(図17参照)は、冊子P4が排出部90(図16参照)に載置されると、排出モータMTを作動させて、搬送ベルト92を冊子の排出方向(矢印Q方向)に循環させる。搬送ベルト92は、冊子を矢印Q方向に搬送して、製本装置Bの手前側の機外に排出する。すなわち、ユーザの前側に排出する。
【0086】
なお、搬送ベルト92は、図12図13に示すように、冊子P4を排出部90上に載置させてから、循環させる必要がある。すなわち、搬送ベルト92は、背受81による冊子P4の姿勢を変更する動作の終了後に排出動作を行う必要がある。これは、循環している搬送ベルト92に冊子P4を載置すると、冊子P4が搬送ベルト92に当接した瞬間に斜行することを防ぐためである。冊子P4が斜行し過ぎると、排出方向下流にある排出検知部93が冊子P4を検知できなくなる恐れがある。このため、搬送ベルト92の循環開始タイミングは、搬送ベルト92上に冊子P4が載置された以後に設定されている。冊子P4が機外に排出されたか否かは冊子排出検出センサ94Sによって検出される。冊子P4が機外に排出されると、製本装置制御部102(図18参照)は、排出モータMTを正転させるとともに、押し部材モータMPを逆転させて、背受81を冊子受取り位置(待機位置)に戻し、押し部材73を待機位置に戻す。これによって、製本装置Bによる一連の製本動作が終了する。そして、次に、搬送されてくる冊子がある場合には、製本装置Bは、以上の動作を繰り返して冊子を順次外部へ排出させる。
【0087】
なお、排出モータMTに対して、搬送ベルト92と背受81とを個別のクラッチで接続する構成をとる場合は、冊子が機外に排出された後、排出モータMTと搬送ベルト92との間に設けたクラッチをOFFにし、排出モータMTと背受81との間に設けたクラッチをONにし、排出モータMTを駆動して背受81を冊子受取り位置(待機位置)に戻す。
【0088】
以上の処理S119~処理S123における、図21の排出部90の動作説明は、図16の排出部90の動作説明と同様であるので省略する。また、図22の搬送ベルト290の動作説明も、図21の排出部90の搬送ベルト92と同様であるので省略する。
【符号の説明】
【0089】
60…表紙綴じ部(綴じ手段):73…押し部材(姿勢変更手段):81…背受(姿勢変更手段、支持部材):92,290…搬送ベルト:91…コンベヤステイ(受け部材):B…製本装置:K…シート束排出装置:P4…冊子(シート束):P4b…背部(第2の端部):P4c…小口(端部、第1の端部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
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図22