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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】樹脂モールド金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/12 20060101AFI20220810BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019138583
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021020383
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 謙二
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-181734(JP,A)
【文献】特開2018-192712(JP,A)
【文献】特開2017-024398(JP,A)
【文献】特開平10-284527(JP,A)
【文献】特開2002-187160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/12
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に電子部品が保持されたワークをモールド樹脂と共に搬入して樹脂モールドする樹脂モールド金型であって、
前記ワークを前記樹脂モールド金型にセットする際に、前記ワークの許容外縁位置を規定するワーク位置規定部を有し、
前記ワーク位置規定部は、型閉じ時に、前記ワークが変形する際の所定の作用力を受けて金型面に沿って外方に移動可能に設けられており、
前記ワーク位置規定部は、前記金型面から突出するように立設された突出部を有し、
前記所定の作用力は、前記ワークを前記樹脂モールド金型にセットする際に接触する力では移動不能であり、予熱によって反った状態で前記樹脂モールド金型にセットされた前記ワークが型閉じ時に反りが修正されて伸びるように変形する力で移動可能なように、作用力の値が設定されていること
を特徴とする樹脂モールド金型。
【請求項2】
前記突出部は、付勢部材を介して回転もしくはスライドにより前記金型面に沿って外方に移動可能に支持されていること
を特徴とする請求項記載の樹脂モールド金型。
【請求項3】
前記ワーク位置規定部は、型閉じ時に、前記金型面より金型内に進入する方向に移動可能に設けられていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の樹脂モールド金型。
【請求項4】
前記ワーク位置規定部は、下型に設けられており
前記下型は、前記ワークの下面を吸引して保持する吸引機構を有すること
を特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂モールド金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを樹脂モールドする樹脂モールド金型に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型薄型化に伴い、半導体装置の生産効率を向上させるため半導体チップ等をキャリアプレートに貼り付けて樹脂モールドした後、個片に切断する半導体装置の製造方法が提案されている。一例として、キャリアプレートには粘着テープを用いて半導体チップ等が貼り付けられ樹脂モールドされる。その後、キャリアプレートと粘着テープを剥離させた後、電極成形や研磨を行い個片化することで半導体装置が製造される(特許文献1:特開2006-287235号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-287235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に例示されるような半導体装置の製造方法において、キャリアプレート等の基材上に半導体チップ等の電子部品が保持されたワークを、昇温された樹脂モールド金型に搬入して樹脂モールドする際に、ワークの表裏の線膨張係数の相違等に起因して、当該金型からの受熱によって例えばワークの外縁部が金型面から離れるように反った状態となってしまう場合が少なからずある。
【0005】
そのような状態のまま、樹脂モールドを行うと、樹脂モールド金型を型閉じする際に金型でワークが挟み込まれることでワークの反りが修正されることによって外縁部が外方へ伸びるように変形する。この際に、ワークの変形に起因してワークの外縁部が位置決め用の部材に押し付けられることで発生するワークの破損が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、樹脂モールド金型からの受熱によって反った状態となったワークであっても、破損を生じさせることなく樹脂モールドを行うことが可能な樹脂モールド金型を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る樹脂モールド金型は、基材上に電子部品が保持されたワークをモールド樹脂と共に搬入して樹脂モールドする樹脂モールド金型であって、前記ワークを前記樹脂モールド金型にセットする際に、前記ワークの許容外縁位置を規定するワーク位置規定部を有し、前記ワーク位置規定部は、型閉じ時に、前記ワークが変形する際の所定の作用力を受けて金型面に沿って外方に移動可能に設けられており、前記ワーク位置規定部は、前記金型面から突出するように立設された突出部を有し、前記所定の作用力は、前記ワークを前記樹脂モールド金型にセットする際に接触する力では移動不能であり、予熱によって反った状態で前記樹脂モールド金型にセットされた前記ワークが型閉じ時に反りが修正されて伸びるように変形する力で移動可能なように、作用力の値が設定されていることを要件とする。
【0009】
これによれば、ワークをセットする際に、ワーク位置規定部を備えることでワークの許容外縁位置を規定することができる。さらに、型閉じ時にワークの反りが修正されることによって外縁部が外方へ伸びるように変形する力によってワーク位置規定部を金型面に沿って移動させることができる。したがって、ワーク位置規定部と当接した状態でワークの外縁部が外方へ伸びるように変形した場合であっても、ワーク位置規定部から反力を受けてワークが破損してしまうことを防止できる。
【0010】
また、ワークをセットする際に、突出部が外方へ移動することなく、所定領域内にワークを位置決めすることが可能となる。併せて、型閉じ時にワークの反りが修正されることによって外縁部が外方へ伸びるように変形した際に、突出部を外方へ移動させることができるため、ワークの破損を防止することができる。
【0011】
また、前記突出部は、付勢部材を介して回転もしくはスライドにより前記金型面に沿って外方に移動可能に支持されていることが好ましい。これによれば、型閉じ時にワークが変形する際の所定の作用力を受けて金型面に沿って外方に移動する突出部を実現することができる。
【0012】
また、前記ワーク位置規定部は、型閉じ時に、前記金型面より金型内に進入する方向に移動可能に設けられていることが好ましい。これによれば、型閉じ時に、ワーク位置規定部を金型内に退避させることができる。
【0013】
また、前記ワーク位置規定部は、下型に設けられており前記下型は、前記ワークの下面を吸引して保持する吸引機構を有することが好ましい。これによれば、型閉じ時に確実にワークを下型の所定位置に吸引保持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂モールド金型からの受熱によって反った状態となったワークであっても、破損を生じさせることなく樹脂モールドを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂モールド金型を備える樹脂モールド装置の例を示す装置構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る樹脂モールド金型の例を示す概略図(正面断面図)である。
図3図1の樹脂モールド金型の下型の例を示す概略図(平面図)である。
図4図1の樹脂モールド金型の下型の他の例を示す概略図(平面図)である。
図5図1の樹脂モールド金型のワーク位置規定部の例を示す拡大図である。
図6図1の樹脂モールド金型のワーク位置規定部の他の例を示す拡大図である。
図7】比較例に係る樹脂モールド金型の下型の例を示す概略図(平面図)であって本発明が解決しようとする課題を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明の実施形態に係る樹脂モールド金型10を備える樹脂モールド装置100の構成例を示す概略図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る樹脂モールド金型10の例を示す正面断面図(概略図)である。ここで、説明の便宜上、各図中に表示する矢印によって樹脂モールド装置100及び樹脂モールド金型10における上下左右前後方向を説明する場合がある。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
本実施形態に係る樹脂モールド金型10は、モールド樹脂(単に「樹脂」と称する場合がある)Rによりワーク(被成形品)Wの樹脂モールド成形を行う樹脂モールド装置(不図示)に用いられる金型である。ここでは、樹脂モールド装置として圧縮成形装置の場合を例に挙げて説明する。
【0018】
先ず、成形対象であるワークWの一例として、半導体チップ等の電子部品Wbがキャリアプレート等の基材Wa上に保持されたものが用いられる。このようなワークWは、例えばeWLB(embedded WaFer Level BGA)と呼ばれる樹脂封止方法等に用いられるものである。具体的には、例えば半導体ウエハと同じサイズの直径12インチ(約300mm)の丸型の金属製(SUS等)のキャリアプレートWa上に熱剥離性を有する粘着テープ(不図示)を用いて複数の半導体チップWbが行列状に貼り付けられたものが用いられる。なお、キャリアプレートWaは矩形状であってもよい。また、ワークWは上記の構成に限定されるものではなく、ガラス製等のキャリアプレートWaにその他の接着剤により半導体チップWbを貼り付けたものを用いてもよい。また、サイズは一辺が500mm以上の矩形状ワークWでもよい。
【0019】
ここで、粘着テープは熱発泡性を有する熱剥離テープであり、加熱により粘着性が低下する性質を有している。したがって、樹脂モールド後に加熱させることで電子部品Wbをモールドした樹脂成形体から基材Waのみの剥離が容易となる利点がある。
【0020】
一方、モールド樹脂Rは、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂)であり、その状態としては液状、粉状、シート状、顆粒状、場合によってはミニタブレットに代表される固形状であってもよい。
【0021】
続いて、本実施形態に係る樹脂モールド装置100の概要について説明する。図1に示すように、樹脂モールド装置100は、ワークW及びモールド樹脂Rを供給するワーク・樹脂供給部100A、ワークWを樹脂モールドするプレス部100B、樹脂モールド後の成形品Wpを収納する成形品収納部100C、及びワークW(モールド樹脂Rを含む)・成形品Wpを搬送する搬送部100Dを備えて構成される。なお、必要に応じて予熱部(不図示)等を併設する構成としてもよい。
【0022】
先ず、ワーク・樹脂供給部100Aは、ワークWを収納したマガジンを収容するストッカ102を備えている。ワークWは、各マガジンから取り出され、セット台104上に載置される。
【0023】
また、ワーク・樹脂供給部100Aは、セット台104上に載置されたワークWにモールド樹脂Rを供給するディスペンサ106を備えている。モールド樹脂Rが搭載されたワークWは、搬送部100Dのローダ122によってプレス部100Bへ移送される。
【0024】
次に、プレス部100Bは、昇温された樹脂モールド金型10を開閉駆動してワークWをクランプし、樹脂モールドするプレス装置110を備えている。プレス装置110は、樹脂モールド金型10を型開閉方向に押動する公知の型締め機構や、樹脂モールド金型10の金型面にリリースフィルムFを供給するフィルム供給機構112等を備えている。樹脂モールド後の成形品Wpは、搬送部100Dのローダ124によって成形品収納部100Cへ移送される。
【0025】
次に、成形品収納部100Cは、樹脂モールド後の成形品Wpが載置されるセット台114を備えている。ローダ124によってセット台114上に載置された成形品Wpは、収納用のマガジンに収納されたうえで、ストッカ118に順次収容される。
【0026】
前述の通り、搬送部100Dは、ワークWをプレス部100Bに搬入するローダ122及び成形品Wpをプレス部100Bから搬出するローダ124を備えている。
【0027】
ここで、ワーク・樹脂供給部100A、プレス部100B及び成形品収納部100Cは、ユニット化された架台同士が連結された構成となっている。各ユニットの奥側にはガイド部126が各々設けられ、ガイド部126同士を直線的に連結するように組み付けることでガイドレールが形成されている。ローダ122とローダ124は各々、ガイドレールに沿ってガイド部126上の所定位置からワーク・樹脂供給部100A、プレス部100B、成形品収納部100Cに向かって直線的に進退動可能に設けられている。
【0028】
したがって、ユニットの構成を変えることにより、ガイド部126同士を連結させた状態を維持しながら、樹脂モールド装置100の構成態様を変更することができる。なお、図1に示す例は、プレス部100Bを二組設けた例であるが、一組又は三組以上の構成とすることも可能である。また、ワーク・樹脂供給部100A、成形品収納部100C、搬送部100D等に関しても、必要に応じて増減させる等、構成態様を変更することができる。
【0029】
続いて、図2等を用いて樹脂モールド金型10の構成について説明する。
【0030】
樹脂モールド金型10は、キャビティを有して型開閉される一対の金型(例えば、合金工具鋼からなる複数の金型ブロックが組み付けられたもの)を備えている。本実施形態においては、一対の金型のうち、鉛直方向において下方側の一方の金型を下型12とし、上方側の他方の金型を上型14とする。この樹脂モールド金型10は、下型12と上型14とが相互に接近・離反することで型閉じ・型開きがなされる。このため、鉛直方向が型開閉方向でもある。
【0031】
また、樹脂モールド金型10は、公知の型開閉機構(不図示)によって型開閉が行われる。例えば、型開閉機構は、一対のプラテンと、一対のプラテンが架設される複数のタイバーと、プラテンを可動(昇降)させる駆動源(例えば、電動モータ)及び駆動伝達機構(例えば、トグルリンク)等を備えて構成されている(いずれも不図示)。ここで、樹脂モールド金型10は、当該型開閉機構の一対のプラテンの間に配設されている。本実施形態においては、固定型となる下型12が固定プラテン(タイバーに固定されるプラテン)に組み付けられ、可動型となる上型14が可動プラテン(タイバーに沿って昇降するプラテン)に組み付けられている。ただし、この構成に限定されるものではなく、下型12を可動型、上型14を固定型としてもよく、あるいは、下型12、上型14共に可動型としてもよい。
【0032】
先ず、樹脂モールド金型10の上型14について具体的に説明する。上型14は、上プレート24、キャビティ駒26、クランパ28等を備え、これらが組み付けられて構成されている。
【0033】
キャビティ駒26は、上プレート24の下面(下型12側の表面)に対して固定して組み付けられる。また、クランパ28は、キャビティ駒26を囲うように環状に構成され、キャビティ駒26と隣接して上プレート24の下面に対して離隔して組み付けられる。
【0034】
本実施形態においては、上型14が金型面(パーティング面)14aから凹むキャビティ16を有するが、キャビティ駒26がキャビティ16の奥部(底部)を構成し、クランパ28がキャビティ16の側部を構成する。具体的には、クランパ28の中央部にはパーティング面視(平面視)円形状の貫通孔28aが厚み方向(型開閉方向)に形成される。このクランパ28の貫通孔28aにキャビティ駒26が挿入されて組み付けられることで、凹部形状をしたキャビティ16の底面と側面が構成される。なお、キャビティ16の下面は下型12に搭載されるワークWによって囲まれる。
【0035】
ここで、キャビティ16は、上型14のクランパ28下面の金型面14aに形成されるエアベント溝(不図示)を介して減圧装置(不図示)に連通している。なお、樹脂モールド金型10全体を減圧チャンバー(不図示)に入れて減圧してもよいし、金型面14aのエアベント溝に通じる吸引孔(不図示)を設け、さらに金型面14aの吸引孔の外側に全周シール(不図示)を設ける構造としてもよい。この構成によれば、減圧装置を駆動させて減圧することにより、型閉じされた状態でキャビティ16内の脱気を行うことができる。なお、減圧装置の例として、公知の真空ポンプ等が用いられる。
【0036】
また、樹脂モールド金型10は、リリースフィルム(単に「フィルム」と称する場合がある)Fを上型14の金型面14a側から吸引するフィルム吸引機構を備える。このフィルム吸引機構は、クランパ28を貫通して配設された吸引路14b、14cを介して減圧装置(不図示)に連通している。具体的には、吸引路14b、14cの一端が上型14の金型面14aに通じ、他端が上型14外に配設される減圧装置と接続される。この構成によれば、減圧装置を駆動させて吸引路14b、14cからリリースフィルムFを吸引し、キャビティ16の内面を含む金型面14aにリリースフィルムFを吸着して保持する(張り付ける)ことができる。上記と同様に、減圧装置の例として、公知の真空ポンプ等が用いられる。
【0037】
このように、キャビティ16の内面を含む上型14の金型面14aを覆うリリースフィルムFを設けることで、成形品(ワークW)を樹脂と容易に剥離することができるため、樹脂モールド金型10から容易に取り出すことができる。一例として、リリースフィルムFは、樹脂モールド金型10の加熱温度に耐えられる耐熱性を有し、樹脂から容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材である。具体的には、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)などの樹脂フィルムを用いることができる。
【0038】
また、樹脂モールド金型10は、可動部材(弾性部材)として第一付勢部材(例えば、コイルスプリング等のバネ、ゴム等の弾性体)32を備える。この第一付勢部材32は、上プレート24とクランパ28との間に設けられる。この第一付勢部材32を介して上プレート24にクランパ28が可動に組み付けられる。すなわち、キャビティ駒26がクランパ28によって囲まれ、キャビティ駒26とクランパ28とが型開閉方向に相対的に往復動可能となっている。このとき、クランパ28の貫通孔28aの内周面とキャビティ駒26の外周面との隙間が所定の寸法で確保されることで、クランパ28が円滑に可動する。このように、樹脂モールド金型10では、上プレート24に対して、キャビティ駒26が固定して保持される一方、クランパ28が可動するよう第一付勢部材32を介して離隔して保持される。
【0039】
ところで、上記の隙間は、前述のフィルム吸引機構の吸引路14cに含まれ、キャビティ駒26とクランパ28との境界(キャビティ16のコーナー部)でリリースフィルムFを吸引する。このため、フィルム吸引機構は、シール部材34(例えば、Oリング)を備える。シール部材34は、上記の隙間が吸引路14cとして空気漏れがないようキャビティ駒26とクランパ28(の上部)との間に設けられてシールを行う。
【0040】
また、上型14は、ヒータ(例えば、電気ヒータ)、補助ヒータ(例えば、電気ヒータ)、温度センサ、制御部、電源等(いずれも不図示)を備えて加熱及びその制御が行われる。一例として、上型14のヒータは、上型14の上プレート24に内蔵され、主に上型14全体に熱を加える。また、補助ヒータは、クランパ28に内蔵され、上型14のヒータからの熱が伝わりにくいクランパ28に補助的に熱を加える。これら上型14のヒータ及び補助ヒータは、電源によって電力供給を受けて発熱する。一例として、上型14は、ヒータ、補助ヒータによって所定温度(例えば、180℃)に調整されて加熱される。他の例として、下型12の下に下モールドベースを設け、上型14の上に上モールドベースを設け、当該モールドベース内にヒータを設けて、上プレート24、キャビティ駒26、クランパ28にはヒータを設けない構成としてもよい(不図示)。
【0041】
次に、樹脂モールド金型10の下型12について具体的に説明する。下型12は、下プレート22、キャビティプレート36等を備え、これらが組み付けられて構成されている。ここで、図3は、ワークW(基材Wa)が円形状である場合に用いられる下型12の例を示す平面図(概略図)であり、図4は、ワークW(基材Wa)が矩形状である場合に用いられる下型12の例を示す平面図(概略図)である。このように、ワークW(特に基材Wa等)の大きさ、形状に応じて、下型12の構成、及びこれに対応する上型14の構成が適宜、設定される。
【0042】
この下型12では、前述した上型14の上プレート24に設けられる固定のキャビティ駒26及び可動のクランパ28の代わりに、キャビティプレート36が用いられる。このキャビティプレート36は、下プレート22の上面(上型14側の表面)に対して固定して組み付けられる。
【0043】
また、下型12は、ヒータ(例えば、電気ヒータ)、温度センサ、制御部、電源等(いずれも不図示)を備えて加熱及びその制御が行われる。一例として、下型12のヒータは、下型12の下プレート22に内蔵され、主に下型12全体に熱を加える。この下型12のヒータは、電源によって電力供給を受けて発熱する。一例として、下型12は、ヒータによって所定温度(例えば、180℃)に調整されて加熱される。なお、前述したように、下モールドベース内にヒータを設け、キャビティプレート36、下プレート22にヒータを設けない場合もある。この場合、樹脂モールド金型10にヒータを設けないため、品種交換時は容易に樹脂モールド金型10を交換することができる利点がある。
【0044】
ここで、図7図2のV部と同位置の図)に、比較例に係る樹脂モールド金型の下型12を示すと共に、同図を用いて本発明が解決しようとする課題について説明する。ワークWを下型12にセットする際には、前述のように加熱されている下型12(もしくは他の構成)からの受熱によって、ワークWの金型に対向する面(すなわち、ワークWの下面)が、金型と対向しない面(すなわち、ワークWの上面)よりも相対的に大きく伸長する。そのため、設計上はワークW(基材Wa)の下面と下型12の金型面12aとの面同士が相互に密着する配置状態となるが、実際には上記の受熱の影響(線膨張係数の相違等)によって、図7に示すようにワークW(基材Wa)の外縁部が金型面12aから離れるように反った状態(いわゆる、「スマイルカーブ」と称される状態)となる場合がある。このような現象を生じ得るワークWの伸長に起因して、基材Waが破損する課題(詳細は後述)が生じ得る。ここで、一辺が500mmを超えるような大判化したワークWにおいてはこの課題による影響が特に大きくなる。
【0045】
この課題の解決を可能とする本実施形態に係る下型12は、図5に示すように、ワークWをセットする際に、ワークWの許容外縁位置を規定するワーク位置規定部50と、ワークWの下面を吸引して保持する吸引機構40とを備えて構成されている。
【0046】
先ず、吸引機構40は、キャビティプレート36及び下プレート22を貫通して配設された吸引路46を備えて構成されている。この吸引路46は適宜の位置に複数個が配設されて、それぞれ減圧装置(不図示)に連通している。これによれば、減圧装置を駆動させて吸引路46から吸引力を作用させることによって、ワークWを下型12の金型面(パーティング面)12aに吸着させて保持することができる。なお、減圧装置の例として、公知の真空ポンプ等が用いられる。
【0047】
次に、ワーク位置規定部50は、下型12の金型面(パーティング面)12aから上方に突出するように立設された突出部52を備えて構成されている。本実施形態においては、突出部52は棒状のピンとして構成されているが、これに限定されるものではなく、プレートやブロック等の構成を用いてもよい(不図示)。当該ピン52は、ワークWの移動を規制できるように外縁を囲う配置で複数個が設けられており、それらの配置間隔はワークWにおける対応位置の寸法に所定公差を加えた寸法に設定されている。これによれば、その隙間によってワークWを円滑にセットすることができる。また、ワークWをセットする際に、ワークWの外縁を当接させることで、ワークWの許容外縁位置が規定され、ワークWが所定の領域内に配置される作用が得られる。
【0048】
ここで、ピン52は、付勢力を発生させる第二付勢部材(例えば、コイルスプリング等のバネ、ゴム等の弾性体)56により上方に付勢された状態で下型12に固定されている。これによれば、型閉じの際、ピン52の先端が上型14の金型面14aと当接して下方に押動されることによって、当該ピン52の全体が金型面12aよりも金型内(下型12内)に進入する(引込まれる)方向に退避(移動)可能となる。したがって、ピン52に対応した凹部等を設けることなく型閉じが可能となり、樹脂モールドを行うことが可能となる。この場合、例えばピン52が押し込まれることによるリリースフィルムFの歪みを生じさせることなく、成形も可能となる。
【0049】
また、ワーク位置規定部50は、ピン52をワークWの外縁に接近(当接)する方向に付勢する第三付勢部材(例えば、コイルスプリング等のバネ、ゴム等の弾性体)54を有している。これによれば、ピン52を、ワークWの許容外縁位置を規定する所定位置に保持することができる。一方、第三付勢部材54による付勢力(後述する「所定の作用力」に設定される)を超える力が作用した場合には、ピン52を、金型面12aに沿って外方に移動させることができる。
【0050】
このとき、第三付勢部材54がピン52を付勢する付勢力は、「所定の作用力」の値に設定されている。より具体的には、「所定の作用力」は、ワークWを樹脂モールド金型(ここでは、下型12)にセットする際に接触する力では移動不能であり、予熱によって反った状態で樹脂モールド金型(ここでは、下型12)にセットされたワークWが型閉じ時に反りが修正されることによって外縁部が外方へ伸びるように変形する力で移動可能なように、その値が設定されている。すなわち、ピン52の付勢力は、ローダ122により所定の遊びを持たせてワークWを保持しつつ搬送してモールド金型にセットする際にワークWを介してピン52に加えられる力よりも大きく、ワークWの線膨張により生じる逃げ場のない力よりも小さくなるように設定されることになる。
【0051】
仮に、ピン52が金型面に沿って外方に移動しない構成とした場合、ワークWの外縁がピン52に当接したところから逃げる部分がなくなり、外縁部にストレス(圧縮力)が作用する。そのため、ワークWを構成する基材Waの種類が、例えば、ガラスキャリアでは割れが発生し、ステンレスキャリアでは歪みが発生する課題が生じ得る。このような基材Waが破損する現象は、ワークWを下型12にセットする際に、吸引機構40を用いてワークW(ここでは基材Wa)の下面を吸引して保持する構成であることによって、一層顕著に発生する。
【0052】
これに対して、上記の本実施形態に係る構成によれば、型閉じ時に、反りが修正されて伸びるように変形することでワークWは「所定の作用力」を発生させる。その結果、ワークWの外縁部が当該「所定の作用力」でピン52を金型面に沿って外方に移動させる作用が得られる。したがって、上記の課題の解決を図ることができる。また、ピン52によってワークWの位置決めも可能である。
【0053】
一例として、図5図2のV部拡大図)に示すように、ピン52は、上記の第三付勢部材54によって付勢された状態で回転移動によって金型面に沿って外方に移動可能なように下型12において支持される構成としている。
【0054】
あるいは、変形例として、図6図2のV部と同位置の図)に示すように、ピン52は、上記の第三付勢部材54によって付勢された状態でスライド移動によって金型面に沿って外方に移動可能なように下型12において支持される構成としてもよい。
【0055】
ここまで、下型12にワークWをセットする構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、上型14にワークWをセットする構成にも適用できる。その場合は、上記の下型12と、上型14とを入れ換える構成とすればよく、さらに、ワークWの保持を確実化するために上型14にチャッキング爪等を併設すれば一層よい(不図示)。
【0056】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂モールド金型によれば、ワークを樹脂モールド金型にセットする際に、ワーク位置規定部を備えることで所定位置に位置決めすることができる。その一方で、樹脂モールド金型からの受熱によって反った状態となったワークに対しても、型閉じ時に反りが修正されて伸びるように変形したときに当該ワーク位置規定部からワークが反力を受けて破損してしまうことを防止できる。
【0057】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、ピンが外側に逃げることが可能な構成であれば、第二付勢部材は必ずしも設ける必要はない。この場合、ピンが挿入可能な凹部が上型側に設けられていればよい。この構成によってもワークの破損を防止できる。
【0058】
また、ワークとして基材に半導体チップが搭載された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、被搭載部材として基材に代えてその他基板等を用いたワーク、あるいは、搭載部材として半導体チップに代えてその他素子等を用いたワーク等であっても同様に樹脂モールドを行うことができる。また、ワークは大きいほど影響が大きいが、必ずしも一辺500mmのような大きなワークでなくてもワークの破損は生じ得るので、いわゆるストリップ基板のような通常の大きさのワークについても同様の構成を採用し得る。
【0059】
また、上型にキャビティを備える圧縮成形方式の樹脂モールド装置を例に挙げて説明したが、下型にキャビティを備える構成への適用や、トランスファー成形方式への適用等も可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 樹脂モールド金型
12 下型
14 上型
16 キャビティ
22 下プレート
24 上プレート
26 キャビティ駒
28 クランパ
32 第一付勢部材
36 キャビティプレート
40 吸引機構
46 吸引路
50 ワーク位置規定部
52 突出部(ピン)
54 第三付勢部材
56 第二付勢部材
100 樹脂モールド装置
F リリースフィルム
R モールド樹脂
W ワーク
Wa 基材
Wb 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7