IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンファインテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シート束排出装置 図1
  • 特許-シート束排出装置 図2
  • 特許-シート束排出装置 図3
  • 特許-シート束排出装置 図4
  • 特許-シート束排出装置 図5
  • 特許-シート束排出装置 図6
  • 特許-シート束排出装置 図7
  • 特許-シート束排出装置 図8
  • 特許-シート束排出装置 図9
  • 特許-シート束排出装置 図10
  • 特許-シート束排出装置 図11
  • 特許-シート束排出装置 図12
  • 特許-シート束排出装置 図13
  • 特許-シート束排出装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-09
(45)【発行日】2022-08-18
(54)【発明の名称】シート束排出装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/40 20060101AFI20220810BHJP
   B42C 19/08 20060101ALI20220810BHJP
【FI】
B65H29/40
B42C19/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019212368
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2020093928
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2018232583
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高野 忠仁
(72)【発明者】
【氏名】近藤 司
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079650(JP,A)
【文献】実開昭61-059251(JP,U)
【文献】特開昭60-026562(JP,A)
【文献】特開昭56-002190(JP,A)
【文献】特開2008-055673(JP,A)
【文献】特開2013-169798(JP,A)
【文献】実開昭62-186847(JP,U)
【文献】特開2014-019569(JP,A)
【文献】特開平05-319678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00
B65H 15/00
B65H 29/00
B65H 37/00
B42C 11/00
B42C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背を含むシート束を排出するシート束排出装置であって、
前記シート束を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記シート束を、前記背が先頭となるように案内するガイド手段と、
前記シート束を前記シート束排出装置の外部へ搬送する搬送ベルトと、
前記ガイド手段に案内される前記シート束の前記背を受ける受け手段であって、前記搬送ベルトから離れている前記シート束の前記背を受ける第1の位置と、前記シート束を前記搬送ベルトに載置させる第2の位置との間を回動可能受け手段と、
前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置に回動させる姿勢変更手段と、を有し、
前記シート束の小口は、前記姿勢変更手段が前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ回動することにより、前記搬送ベルトのベルト幅方向において、前記搬送ベルトの設けられた領域を通過するように移動し、
前記受け手段は、
前記第1の位置で前記シート束の前記背を受けたときに、前記背が当接する第1面と、
前記背が前記第1面と当接する前に前記シート束と摺動可能であり、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置へ回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束を押す第2面と、
前記第2面と対向して配置され、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置に回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束の移動を規制する第3面と、を含み、
前記第3面には、前記第1面に近づく方向に伸びる毛が植毛された植毛シートが設けられ、前記第1面から遠ざかる方向における、前記シート束と前記第3面との間の摩擦係数は、前記第1面と前記シート束との間の摩擦係数より大きい、
ことを特徴とするシート束排出装置。
【請求項2】
前記第2面と前記第3面とは、前記第1面に対して略垂直に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート束排出装置。
【請求項3】
前記第3面において、前記第1面から遠ざかる方向における、前記シート束と前記第3面との間の摩擦係数は、前記第3面において、前記第1面に近づく方向における、前記シート束と前記第3面との間の摩擦係数よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート束排出装置。
【請求項4】
前記第1面に近づく方向における、前記シート束と前記第3面との間の摩擦係数は、前記第1面と前記シート束との間の前記摩擦係数より大きい、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシート束排出装置。
【請求項5】
前記受け手段が前記第2の位置にあるとき、前記受け手段の前記第3面と、前記搬送ベルトに載置した前記シート束と、の間には、隙間が存在する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシート束排出装置。
【請求項6】
背を含むシート束を排出するシート束排出装置であって、
前記シート束を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記シート束を、前記背が先頭となるように案内するガイド手段と、
前記シート束を前記シート束排出装置の外部へ搬送する搬送ベルトと、
前記ガイド手段に案内される前記シート束の前記背を受ける受け手段であって、前記搬送ベルトから離れている前記シート束の前記背を受ける第1の位置と、前記シート束を前記搬送ベルトに載置させる第2の位置と、の間を回動可能な受け手段と、
前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置に回動させる姿勢変更手段と、を有し、
前記シート束の小口は、前記姿勢変更手段が前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ回動することにより、前記搬送ベルトのベルト幅方向において、前記搬送ベルトの設けられた領域を通過するように移動し、
前記受け手段は、
前記第1の位置で前記シート束の前記背を受けたときに、前記背が当接する第1面と、
前記背が前記第1面と当接する前に前記シート束と摺動可能であり、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置へ回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束を押す第2面と、
前記第2面と対向して配置され、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置に回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束の移動を規制する第3面と、を含み、
前記第3面には、前記第1面に近づく方向に伸びる毛が植毛された植毛シートが設けられ、前記第1面から遠ざかる方向における、前記シート束と前記第3面との間の摩擦係数は、前記第2面と前記シート束との間の摩擦係数より大きい、
ことを特徴とするシート束排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート束を排出するシート束排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を形成された複数枚のシートを綴じて形成されたシート束(冊子)を複数収納する収納部を備えた製本装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-305822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の収納部は、シート束の収容量が一定量となるたびにユーザがシート束を取り出す必要があった。ユーザがシート束を収納部から取り出している間、製本装置の動作を停止しなければならないため、連続的な製本動作を行うことができず、装置の生産性を上げることができなかった。また、連続的な製本動作を行い装置の生産性を向上させる場合においては、異常の発生によりシート束の連続的な生産が止まってしまうことを防ぐために、シート束を安定して排出できることが求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、シート束を安定して排出できるシート束排出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、背を含むシート束を排出するシート束排出装置であって、前記シート束を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される前記シート束を、前記背が先頭となるように案内するガイド手段と、前記シート束を前記シート束排出装置の外部へ搬送する搬送ベルトと、前記ガイド手段に案内される前記シート束の前記背を受ける受け手段であって、前記搬送ベルトから離れている前記シート束の前記背を受ける第1の位置と、前記シート束を前記搬送ベルトに載置させる第2の位置との間を回動可能受け手段と、前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置に回動させる姿勢変更手段と、を有し、前記シート束の小口は、前記姿勢変更手段が前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ回動することにより、前記搬送ベルトのベルト幅方向において、前記搬送ベルトの設けられた領域を通過するように移動し、前記受け手段は、前記第1の位置で前記シート束の前記背を受けたときに、前記背が当接する第1面と、前記背が前記第1面と当接する前に前記シート束と摺動可能であり、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置へ回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束を押す第2面と、前記第2面と対向して配置され、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置に回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束の移動を規制する第3面と、を含み、前記第3面には、前記第1面に近づく方向に伸びる毛が植毛された植毛シートが設けられ、前記第1面から遠ざかる方向における、前記シート束と前記第3面との間の摩擦係数は、前記第1面と前記シート束との間の摩擦係数より大きい、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、背を含むシート束を排出するシート束排出装置であって、前記シート束を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される前記シート束を、前記背が先頭となるように案内するガイド手段と、前記シート束を前記シート束排出装置の外部へ搬送する搬送ベルトと、前記ガイド手段に案内される前記シート束の前記背を受ける受け手段であって、前記搬送ベルトから離れている前記シート束の前記背を受ける第1の位置と、前記シート束を前記搬送ベルトに載置させる第2の位置との間を回動可能受け手段と、前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置に回動させる姿勢変更手段と、を有し、前記シート束の小口は、前記姿勢変更手段が前記受け手段を前記第1の位置から前記第2の位置へ回動することにより、前記搬送ベルトのベルト幅方向において、前記搬送ベルトの設けられた領域を通過するように移動し、前記受け手段は、前記第1の位置で前記シート束の前記背を受けたときに、前記背が当接する第1面と、前記背が前記第1面と当接する前に前記シート束と摺動可能であり、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置へ回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束を押す第2面と、前記第2面と対向して配置され、前記受け手段が前記第1の位置から前記第2の位置に回動する間に、前記受け手段の回動方向において、前記シート束の移動を規制する第3面と、を含み、前記第3面には、前記第1面に近づく方向に伸びる毛が植毛された植毛シートが設けられ、前記第1面から遠ざかる方向における、前記シート束と前記第3面との間の摩擦係数は、前記第2面と前記シート束との間の摩擦係数より大きい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート束を安定して排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の画像形成装置を示す概略図。
図2】本発明の実施形態の製本装置を示す断面概略図。
図3】(a)は、本発明の実施形態の接着剤塗布部を示す正面図、(b)は、(a)のJ矢視図である。
図4】本発明の実施形態の表紙綴じ部と、束姿勢偏向部と、断裁部と、排出部とを示す概略図。
図5】本発明の実施形態のシート束排出装置の概略図。
図6】本発明の実施形態の背受を含む領域の斜視図。
図7】本発明の実施形態の背受の概略図。
図8】本発明の実施形態の背受が冊子受取位置に位置する場合における側面図。
図9】(a)は、本発明の実施形態のシート束排出装置において背受ユニットが冊子を受け取った状態を示す図、(b)は、(a)の状態における背受ユニットの拡大図。
図10】(a)は、本発明の実施形態のシート束排出装置において背受ユニットが冊子を受け取り回動開始した状態を示す図、(b)は、(a)の状態における背受ユニットの拡大図。
図11】本発明の実施形態のシート束排出装置においてベルトコンベアに冊子が載置された状態を示す側面図。
図12】本発明の実施形態のシート束排出装置においてベルトコンベアに冊子が載置された状態を示す概略図。
図13】本発明の実施形態のシート束排出装置においてベルトコンベアに載置された冊子が機外搬送される状態を示す概略図。
図14】本発明の実施形態の画像形成装置の制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態のシート束排出装置を有する製本装置を備えた画像形成システムを図に基づいて説明する。
【0011】
図1は、画像形成システムDのシート搬送方向に沿った断面概略図である。図2は、製本装置Bのシート搬送方向に沿った断面概略図である。
【0012】
画像形成システムDは、シートに順次トナー画像を形成する画像形成装置Aと、画像形成装置Aの下流側に配置された製本装置Bと、製本装置Bの下流に配置された後処理装置Cと、で構成されている。画像形成システムDは、画像形成装置Aで画像形成したシートを製本装置Bで製本処理する。また、画像形成システムDは、製本処理をしないシートについて、製本装置Bを通過させて後処理装置Cで後処理をさせ、排出する。
【0013】
[画像形成装置A]
画像形成装置Aは、シートに画像を形成する。画像形成装置Aとしては、複写機、プリンタ、印刷機等、種々のものを採用可能であるが、本実施形態においては、シートにトナー画像を形成する複写機としての画像形成装置Aを採用している。画像形成装置Aは、装置本体1内にシート供給部2と、画像形成部3と、シート排出部4と、画像形成装置制御部101と、を内蔵している。シート供給部2には、シートサイズに応じた複数のカセット5が上下方向に配置されている。シート供給部2は、画像形成装置制御部101から指示されたサイズのシートを給送経路6に繰り出す。給送経路6には、レジストローラ対7が設けられている。レジストローラ対7は、シートの先端を揃えた後、先端を揃えたシートを所定のタイミングで下流側の画像形成部3に給送する。
【0014】
画像形成部3には、静電ドラム10が設けられている。静電ドラム10の周囲には、印字ヘッド9、現像器11、転写チャージャ12等が配置されている。印字ヘッド9は、例えば、レーザ発光器等で構成され、静電ドラム10上に静電潜像を形成する。静電潜像は、現像器11でトナー現像され、トナー画像となる。トナー画像は転写チャージャ12でシート上に転写される。シート上に転写されたトナー画像は、定着器13でシート上に定着される。その後、シートはシート排出経路17に送られる。シート排出部4には、シート排出口14が形成されるとともに、シート排出ローラ対15が配置されている。循環経路16は、シートの両面に画像を形成する場合に使用され、シート排出経路17からのシートをスイッチバック経路に送って表裏反転した後、シートを再びレジストローラ対7に案内する。シートは、画像形成部3で裏面にトナー画像を形成される。このように、片面もしくは両面にトナー画像を形成されたシートは、シート排出ローラ対15によって、シート排出口14から製本装置Bに給送される。
【0015】
装置本体1の上部に設けられたスキャナユニット20は、原稿の画像を光学的に読み取る。スキャナユニット20は、ユーザによって原稿を載置されるプラテンガラス23と、プラテンガラス23に沿って原稿を光学的に読み取るキャリッジ21と、キャリッジ21からの光学像を光電変換する光学読取手段22と、等で構成されている。光学読取手段22には、例えばCCDディバイスが用いられる。スキャナユニット20は、上部に、原稿を自動的にプラテンガラス23に給送する原稿送り装置25を有している。
【0016】
[製本装置B]
図2は、製本装置Bのシート搬送方向に沿った断面概略図である。製本装置Bは、画像形成装置Aに接続して配置されている。なお、以下の説明において、シート束の表紙になるシートを「表紙」、表紙によって表装されるシートを「中シート」、中シートの束を「中シート束」とも記載する。また、以下の説明において、表紙によって表装された中シート束を「表紙付きシート束」、トリミングされた表紙付きシート束を「冊子」とも記載する。また、これらのシート束を単にシート束とも記載する。
【0017】
製本装置Bは、ケーシング30と、ケーシング30内に設けられたトナー画像形成済みの中シートを束状に集積して束揃えをする集積部40と、集積部40からの中シート束に接着剤を塗布する接着剤塗布部55と、を有する。また、製本装置Bは、接着剤を塗布された中シート束に表紙を綴じ合わせる表紙綴じ部60と、表紙綴じされた表紙付きシート束の向きを変える束姿勢偏向部64と、向きを変えられたシート束の縁をトリミング断裁する断裁部65と、を有する。そして、製本装置Bは、トリミング断裁されて形成された冊子を排出するシート束排出装置Kを有する。
【0018】
[搬送経路の構成]
各シートの搬送経路について説明する。ケーシング30内には、画像形成装置Aのシート排出口14に連なる搬入経路31が設けられている。搬入経路31は、経路切換部材36を介して、中シート搬送経路32と表紙搬送経路34とに接続されている。中シート搬送経路32は、集積部40を介して製本経路33に接続されている。表紙搬送経路34は、後述する後処理装置C(図1参照)の後処理経路38に接続されている。製本経路33は、製本装置Bを略鉛直方向に縦断している。表紙搬送経路34は、製本装置Bを略水平方向に横断している。このため、製本経路33と表紙搬送経路34とは、互いに交差(直交)している。製本装置Bでは、製本経路33と表紙搬送経路34とが交差している場所に後述する表紙綴じ部60が配置されている。
【0019】
以上のような搬送経路の構成において、搬入経路31は、画像形成装置Aからトナー画像形成済みのシート(中シート)を受入れる。この場合、画像形成装置Aからは、中シートと、表紙カバーとして使用するタイトル等を印刷された印刷シート(表紙)とが給送されてくる。中シートと表紙とは、経路切換部材36によって、中シート搬送経路32と表紙搬送経路34とに仕分けられ、搬送される。
【0020】
また、搬入経路31(図1参照)には、インサータ装置26が接続されている。インサータ装置26は、画像形成装置Aで印刷処理しない表紙を給送トレイ26aから1枚ずつ搬入経路31に給送する。インサータ装置26は、1段又は複数段の給送トレイ26aと、給送トレイ26aの先端に配置されて給送トレイ26aに積載されたシートを1枚ずつ分離して給送する表紙給送部29と、表紙給送部29の下流側の表紙給送路27と、等を備えている。表紙給送路27は、経路切換部材28を介して搬入経路31に接続されている。搬入経路31には、搬送ローラ対31aが配設されている。中シート搬送経路32には、搬送ローラ対32aが配設されている。製本経路33には、グリップ搬送部47と、後述する束姿勢偏向部64と、シート束排出ローラ対66と、等が配設されている。表紙搬送経路34には、搬送ローラ対34aが配設されている。後述する後処理装置Cの後処理経路38には、搬送ローラ対38aが配設されている。中シートや表紙は、それぞれ不図示の駆動モータによって回転する各搬送ローラ対によって給送される。
【0021】
[後処理装置C]
図1に示すように、製本装置Bには、後処理装置Cが接続されている。後処理装置Cには、表紙搬送経路34に連なる後処理経路38が設けられている。後処理経路38には、ステイプルユニット、パンチユニット、スタンプユニット等の少なくとも1つの後処理機器が配置されている。後処理経路38は、画像形成装置Aからの画像形成済みのシートを、表紙搬送経路34を介して受け取る。後処理装置Cは、受け取った画像形成済みのシートに、ステイプル処理、パンチ処理、捺印処理等の少なくとも1つの後処理を施す。そして、後処理装置Cは、画像形成済みのシートを排出トレイ37に搬出する。なお、後処理装置Cは、画像形成済みのシートに後処理を施すことなく、排出トレイ37に排出することを可能に構成されている。
【0022】
[集積部40]
中シート搬送経路32の中シート排出口32bに配置された集積トレイ41は、中シート排出口32bからの中シートを束状に積載収納する。図2に示すように、集積トレイ41は、略水平に配置されたトレイ部材で構成され、上方に正逆転ローラ42aと搬入ガイド42bとが配設されている。中シート排出口32bから排出された中シートは、搬入ガイド42bによって集積トレイ41上に案内され、正逆転ローラ42aによって集積トレイ41に収納される。正逆転ローラ42aは、正回転で中シートを集積トレイ41の先端側に移送し、逆回転でトレイ後端(図2の右端)に配置された規制部材43に中シートの後端を突き当て規制する。集積トレイ41には、図示しないシートサイド整合板が1対設けられており、シートサイド整合板が集積トレイ41上に収納された中シートの両側縁を整合する。このような構成によって、中シート搬送経路32からの中シートは、集積トレイ41上に順次積み上げられ束状に部揃えされる。
【0023】
[グリップ搬送部47]
製本経路33には、集積トレイ41からシートを下流側の接着剤塗布位置Eに移送するグリップ搬送部47が配設されている。集積トレイ41は、略水平な引き渡し位置に待機しているグリップ搬送部47に中シート束を引き渡す。グリップ搬送部47は、図2に示すように、集積トレイ41に集積した中シート束を、略水平な姿勢から鉛直な姿勢に向きを変えて、略鉛直方向に配設された製本経路33に沿わせて接着剤塗布位置Eにセットする。
【0024】
[接着剤塗布部55]
図3は、接着剤塗布部55の図である。図3(a)は、正面図である。図3(b)は、(a)のJ矢視図である。図2図3において、製本経路33の接着剤塗布位置Eには、接着剤塗布部55が配置されている。接着剤塗布部55は、熱溶融性の接着剤を収容する接着剤容器56と、塗布ロール57と、ロール回転モータMRと、等で構成されている。接着剤容器56は、液状接着剤収容室56aと固形接着剤収容室56bとに区割されている。液状接着剤収容室56aには、塗布ロール57が回転自在に組み込まれている。液状接着剤収容室56aには、接着剤の残量を検出する接着剤センサ56s(図2参照)が設けられている。接着剤センサ56sは、接着剤の温度センサを兼用している。すなわち、接着剤センサ56sは、液状接着剤収容室56a内の液化した接着剤の温度を検出するのと同時に、接着剤に浸された部位の温度差によって接着剤の残量を検出する。また、接着剤容器56には、電熱ヒータ等の加熱素子50が設けてある。接着剤センサ56sと加熱素子50とは、製本装置制御部102(図1図14参照)に接続されている。製本装置制御部102は、液状接着剤収容室56a内の接着剤を加熱素子50の検知温度に基づいて所定の溶融温度に温度調整する。塗布ロール57は、耐熱性の多孔質材で構成され、接着剤を含侵してロール周囲に接着剤の層が盛り上がるように構成されている。
【0025】
上述のように構成された接着剤容器56は、中シート束の背側に沿って往復駆動する。図3(b)に示すように、接着剤容器56は、中シート束の下端縁(製本時の背表紙部)P1Bに対して短い長さ(寸法)に形成してある。接着剤容器56は、内蔵した塗布ロール57とともに中シート束P1の下端縁P1Bに沿って移動するようにケーシング30のガイドレール52に支持されている。接着剤容器56は、タイミングベルト53に連結されている。タイミングベルト53には、接着剤容器移動モータMSが連結してある。
【0026】
接着剤容器56は、図3(b)の左側のホームポジションHPと、シート束に沿って復動作を開始する図3(b)の右側のリターン位置RPと、の間でガイドレール52に案内されて、接着剤容器移動モータMSによって往復移動する。リターン位置RPは、シート幅のサイズ情報によって設定される。接着剤容器56のホームポジションHPは、ホームポジションセンサSPによって検知される。接着剤容器56は、装置電源投入時(イニシャル時)にはホームポジションHPに待機している。接着剤容器56は、例えばグリップ搬送部47に設けたグリップセンサSg(図2参照)のシートグリップ信号の出力から所定時間後(シート束が接着剤塗布位置Eに到達する見込み時間)にホームポジションHPからリターン位置RPに向けて移動する。接着剤容器56の位置は、接着剤容器移動モータMSの駆動パルスをカウントすることにより検出することができる。なお、図3(b)に示すように、接着剤容器56の位置は、リターン位置RPにオーバーランセンサOPを設け、オーバーランセンサOPの検知によって、オーバーランを防止するように構成してもよい。
【0027】
塗布ロール57は、接着剤容器56のホームポジションHPからリターン位置RPへの移動と同時にロール回転モータMRによって回転を開始する。このように構成された接着剤塗布部55は、接着剤容器移動モータMSの回転と、ガイドレール52の案内とによって、図3(b)の左側から右側に移動を開始する。塗布ロール57は、図3(b)の左側から右側への往路において、シート束に圧接してシート束の端部をバラけさせる。なお、塗布ロール57は、リターン位置RPからホームポジションHPに戻る復路において、シート束の端部と所定のギャップを形成して接着剤を塗布するように、前述のグリップ搬送部47の送り量を図示しない昇降モータで調整する。
【0028】
[表紙綴じ部60]
図4は、表紙綴じ部60と、束姿勢偏向部64と、断裁部65と、シート束排出装置Kと、を示す図である。製本経路33の表紙綴じ位置Fには、綴じ手段としての表紙綴じ部60が配設されている。表紙綴じ部60は、背当てプレート61と、背折りプレート62と、折りローラ対63と、等で構成されている。表紙綴じ位置Fには、表紙搬送経路34が配置されており、画像形成装置A又はインサータ装置26から表紙が給送されてくる。背当てプレート61は、表紙をバックアップする板状部材で構成され、製本経路33に進退自在に配置されている。背当てプレート61に支持された表紙P2に表装される中シート束P1が逆T字状に接合される。背折りプレート62は、左右1対のプレス部材で構成され、逆T字状に接合された表紙の背部を背折り成型するため、図示しない駆動部によって互いに接近離間する。背折りプレート62は、互いに接近して表紙P2の背部を背折り成型をする。折りローラ対63は、表紙P2を背折り成型されて形成された表紙付きシート束P3を挟圧して表装仕上げをする。
【0029】
[束姿勢偏向部64と断裁部65]
図4に示すように、折りローラ対63の下流側には、表紙付きシート束の天地方向を偏向する束姿勢偏向部64が配置されている。束姿勢偏向部64より下流側の断裁位置Gには、表紙付きシート束の周縁を断裁する断裁部65が配設されている。束姿勢偏向部64は、接着剤塗布位置E(図2参照)から表紙付きシート束P3を所定方向(姿勢)に偏向して下流側の断裁部65又はシート束排出装置Kに給送する。断裁部65は、表紙付きシート束の被断裁部である周縁を切り揃える。このため、束姿勢偏向部64は、折りローラ対63から送られた表紙付きシート束P3を把持して回転する回転テーブル64a,64bを備えている。回転テーブル64a,64bは、ケーシング30(図2参照)に昇降自在に取り付けられたユニットフレーム64xに設けられている。ユニットフレーム64xには、製本経路33を挟んで1対の回転テーブル64a,64bがそれぞれ回転自在に軸受支持されている。一方の回転テーブル64bは、表紙付きシート束P3の厚み方向(製本経路33に対して直交する方向)に移動自在にユニットフレーム64xに支持されている。各回転テーブル64a,64bには、製本経路33内で表紙付きシート束P3を姿勢偏向する旋回モータMt1,Mt2が設けられている。また、可動側の回転テーブル64bには、図4の左右方向に移動するグリップモータMgが装備されている。ユニットフレーム64xは、昇降モータMAによって表紙付きシート束P3を製本経路33に沿って昇降させる。昇降モータMAは、不図示の固定部材に固定されている。昇降モータMAは、ユニットフレーム64xに連結されたベルト67を循環させて、ユニットフレーム64xを昇降させる。
【0030】
製本経路33内に導かれた表紙付きシート束P3は、左右1対の回転テーブル64a,64bでグリップ把持されて、旋回モータMt1,Mt2によって姿勢方向を偏向される。回転テーブル64a,64bは、背部を下側に搬入された表紙付きシート束P3を180度旋回して小口部を下側にして下流側のシート束排出ローラ対66に送られる。また、回転テーブル64a,64bは、表紙付きシート束P3を順次90度ずつ回転して下流側の断裁位置Gに天部・地部・小口部をそれぞれ下側に偏向させて表紙付きシート束P3の3辺の周縁を断裁するトリミングカットができるようにすることもできる。可動側の回転テーブル64bには、不図示のグリップセンサが設けられている。回転テーブル64a,64bは、グリップセンサによって左右の回転テーブル64a,64b間に表紙付きシート束P3が確実にグリップされたのを検知された後に旋回駆動する。
【0031】
[断裁部65]
図4に示すように、束姿勢偏向部64の下流側には、断裁部65が配置されている。断裁部65は、刃受け部材65aと、表紙付きシート束P3の断裁縁を刃受け部材65aに押圧支持する断裁縁プレスユニット65bと、断裁縁を断裁する断裁刃ユニット65cと、等で構成されている。断裁縁プレスユニット65bは、製本経路33に配置した刃受け部材65aと対向する位置に配置されている。断裁縁プレスユニット65bは、不図示の駆動部によって表紙付きシート束P3と直交する方向に移動する加圧部材65dを有している。断裁刃ユニット65cは、平刃状の断裁刃65eと、断裁刃65eを駆動するカッタモータMCと、等で構成されている。このように構成された断裁部65は、表紙付きシート束P3の背部を除く周縁(被断裁縁)を所定量裁断して切り揃える。
【0032】
[シート束排出装置K]
図4に示すように、シート束排出装置Kは、断裁位置Gの下方に配設されて、断裁屑回収部K1と、シート束排出部K2と、等で構成されている。
【0033】
[断裁屑回収部K1]
図4において、断裁屑回収部K1は、スイーパ部69と、断裁屑回収容器68と、満杯検出センサ68Sfと、ニアフル検出センサ68Snと、等で構成され、断裁刃65eによって切断された断裁屑を収納する。
【0034】
スイーパ部69は、断裁位置Gの直下に配設されている。スイーパ部69は、図示しない駆動モータによって図4の実線の位置と破線の位置とを回転する。スイーパ部69は、断裁部65が表紙付きシート束の被断裁縁を断裁するとき、断裁によって生じる断裁屑を受け止められる実線の位置に傾いて待機している。図2に示すように、スイーパ部69と後述する排出ガイド71とは、スイーパ部69が回動したとき、互いに干渉しないように、各々櫛歯状に形成されている。
【0035】
実線の位置に待機しているスイーパ部69は、断裁部65で生じて、シート束排出ローラ対66を経て落下してきた断裁屑を、受け止めて傾斜を利用し、断裁屑回収容器68に案内する。このとき、表紙付きシート束P3は、断裁部65において回転テーブル64a,64bに保持されているため落下してこない。スイーパ部69は、断裁部65による表紙付きシート束の断裁処理が終了すると、シート束排出ローラ対66の真下を避けた、断裁屑回収容器68に接近した破線の位置に回動する。これにより、スイーパ部69は、回転テーブル64a,64bによる保持を解放されシート束排出ローラ対66から排出される冊子の落下に干渉することがない。断裁部65において背部を除く周縁が裁断された冊子P4(図5参照)は、シート束排出部K2に落下する。
【0036】
断裁屑は、断裁屑回収容器68にある程度の量が回収されると、ニアフル検出センサ68Snによって、断裁屑回収容器68に満杯になる直前であることを検知される。製本装置制御部102(図14参照)は、ニアフル検出センサ68Snが満杯直前の検知動作をすると、画像形成装置制御部101(図14参照)に断裁屑回収容器68が満杯直前であることを報せる。画像形成装置制御部101は、画像形成装置Aの操作パネル18(図1図14参照)に断裁屑が満杯直前であることを表示する。ニアフル検出センサ68Snは、表紙付きシート束の断裁中に、満杯とならないように、例えば、表紙付きシート束の周縁を断裁する1回分に相当する断裁屑を収容可能な状態で断裁屑回収容器68が満杯直前であることを検出するように配置されている。満杯検出センサ68Sfは、断裁屑回収容器68が断裁屑によって満杯になることを検出する。製本装置制御部102は、断裁屑回収容器68が満杯であることを満杯検出センサ68Sfによって検出された場合に、画像形成装置制御部101に断裁屑回収容器68が満杯であることを報せる。画像形成装置制御部101は、操作パネル18に断裁屑が満杯であることを表示するとともに、断裁屑の破棄を促す表示もする。
【0037】
[シート束排出部K2]
図5は、シート束排出装置Kの概略図であり、背受81が冊子P4を受け止める位置に待機している図である。図6は、背受81を含む領域の斜視図である。図5において、シート束排出部K2は、搬送手段としてのシート束排出ローラ対66とガイド手段としての排出ガイド71との下方(搬送方向下流側)に配置されている。シート束排出部K2には、シート束排出ローラ対66と排出ガイド71とから搬送される冊子P4が摺動するスロープ72と、排出ガイド71とスロープ72とを介して冊子P4が搬送される背受ユニット80と、が設けられている。冊子P4の背が先頭となるように排出ガイド71に案内され、搬送される冊子P4を受け止めて、回動し、冊子P4を倒す背受ユニット80は、本実施形態における受け手段(受止手段)を構成する。
【0038】
図5に示すように、背受ユニット80は、背受81が背受レール82の溝にそって回動可能に保持されており、背受81が冊子受取位置(待機位置)に位置している場合に、冊子P4を受け取り可能に構成されている。
【0039】
図6に示すように、背受ユニット80には、背受81が冊子受取位置に位置しているか否かを検出する背受ホームポジションセンサSHPが配設されている。また、背受ユニット80には、背受81に冊子P4を渡したことを検出可能なスロープセンサSSが配設されている。
【0040】
また、図6に示すように、シート束排出部K2には、突板73が設けられている。突板73は、突板駆動部74が駆動することで、背受81が受け取った冊子P4を押すことができる。突板73が冊子を押す位置は、背受ユニット80よりも搬送方向において上流側である。突板73の位置は、図5に示す突板ホームポジションセンサSTHと倒し位置検出センサSTTとによって判定される。突板ホームポジションセンサSTHは、突板73がホームポジション(退避位置)にあることを検出する。倒し位置検出センサSTTは、突板73が倒し位置にあることを検出する。倒し位置は、突板73が冊子P4を倒す動作を実行したときの位置である。突板73と突板駆動部74とは、本実施形態における倒し手段を構成する。
【0041】
[背受の詳細]
図7は、背受81を示す概略図である。図7に示すように、背受81は、背受ベース83と、背受ガイド84と、背受シート85と、で構成される。背受ベース83は、J1方向に延在する部材である。背受ガイド84は、背受ベース83の外周側を覆うように、J1方向に並べて配置される。背受シート85は、背受ベース83に張り付けられている。背受シート85のJ1方向における長さは、製本装置B(図1図2参照)で作成可能な最大サイズの冊子における天部から地部までの長さよりも長くなるように構成される。
【0042】
図8は、背受81が冊子受取位置にあるときの側面図である。図8には、後述する冊子P4の排出動作において、冊子P4が背受81に接近するときの移動方向である接近方向J2を図示している。また、図8には、後述する冊子P4の排出動作において、冊子P4が背受81から離隔するときの移動方向である離隔方向J3を図示している。
【0043】
背受81は、第1面、第2面、第3面、の3つの面を含むように構成される。背受ベース83は、背受上ガイド83aと、背受下ガイド83bと、背受底板83cと、を含んでいる。第1部分としての背受底板83cは、第1面を形成し、第2部分としての背受下ガイド83bは、第2面を形成し、第3部分としての背受上ガイド83aに貼り付けられた背受シート85の表面は、第3面を形成する。本実施形態では、背受ベース83を板金で構成しており、背受底板83cの両端から同方向に背受下ガイド83bと背受上ガイド83aとが突出している。
【0044】
背受底板83cは、第1面を形成する。第1面は、背受81が冊子受取位置にあるときに、背受底板83cに近づく方向である接近方向J2に移動する冊子P4の背部P4A(図9参照)と当接する部位である。
【0045】
背受下ガイド83bは、第2面を形成する。第2面は、背受底板83cと略垂直に形成される。背受下ガイド83bが形成する第2面は、背受81が冊子受取位置にあるときに、第1面に冊子が当接する前に、接近方向J2に移動する冊子P4と摺動可能な部位である。また、第2面の端部は、背受81が冊子受取位置(第1の位置)から冊子排出位置(第2の位置)へ回動する間に、背受81の回動方向において、冊子P4を押す。
【0046】
背受上ガイド83aは、背受下ガイド83bと対向するように、背受底板83cと略垂直に形成される。背受上ガイド83aに貼り付けられた背受シート85は、第3面を形成する。第3面は、背受81が冊子受取位置(第1の位置)から冊子排出位置(第2の位置)へ回動する間に、背受81の回動方向(回転方向)において、冊子P4の移動を規制する。
【0047】
摩擦部材としての背受シート85は、図8に示すように、内側カバー部85aと外側カバー部85bとで背受上ガイド83aを覆うように配置される。背受シート85は、内側カバー部85aを背受上ガイド83aに貼り付け、外側カバー部85bを背受上ガイド83aと背受ガイド84とで挟み込むことで固定される。背受シート85をこのように組みつけることで、背受シート85は背受上ガイド83aから剥がれにくくなる。シートとしての背受シート85を支持する背受上ガイド83aは、支持部材を構成する。
【0048】
冊子P4が背受シート85の内側カバー部85aと当接しながら移動する方向と摩擦係数とについて説明する。接近方向J2における、背受シート85と冊子P4との間の摩擦係数を摩擦係数μJ2とする。そして、背受底板83cから遠ざかる方向である離隔方向J3における、背受シート85と冊子P4との間の摩擦係数を摩擦係数μJ3とする。
【0049】
摩擦係数μJ2は、小さな値であることが望ましい。これは、背受81に入る冊子P4が内側カバー部85aと接触した場合であっても、冊子P4の挿入を阻害しないためである。一方、摩擦係数μJ3は、大きな値であることが望ましい。これは、冊子P4が背受81から離隔方向J3に移動するのを、摩擦力によって抑制するためである。シート束排出部K2は、後述する冊子P4の排出動作において、冊子P4が離隔方向J3に移動するのを抑制することにより、冊子P4を安定して排出することができる。摩擦係数μJ3は、少なくとも、背受底板83cと冊子P4の摩擦係数および背受下ガイド83bと冊子の背部P4A(図9(b)参照)との間の摩擦係数よりも大きいとよい。
【0050】
本実施形態においては、摩擦係数μJ2と摩擦係数μJ3とが異なるように、背受シート85を構成する。具体的には、背受シート85として植毛シートを用いる。植毛シートは、植毛方向に準じる順方向の摩擦係数が小さく、植毛方向の逆らう逆方向の摩擦係数が大きい。そのため、背受シート85では、植毛シートの毛が伸びる方向と接近方向J2とが一致するように、植毛シートを設置する。
【0051】
なお、内側カバー部85aにおいては、必ずしも摩擦係数μJ2と摩擦係数μJ3とが異なる必要はない。すなわち、摩擦係数μJ2と摩擦係数μJ3とは、同じ値でもよい。その理由は、接近方向J2に移動する冊子P4と内側カバー部85aとが接触する可能性が低ければ、影響が小さいためである。
【0052】
[冊子の排出動作の詳細]
図9(a)は、背受81によって冊子P4を受け止めた状態を示す概略図である。図9(b)は、図9(a)に示す背受81によって冊子P4を受け止めた状態における背受81の拡大図である。シート束排出部K2に搬送された冊子P4は、背受ホームポジションセンサSHPによって背受81が冊子受取位置に位置していることが検出された場合に、スロープ72のスロープ傾斜面72aを摺動して背受ユニット80へ搬送される。背受ユニット80に向けて搬送された冊子P4は、搬送方向下流側端部となる背部P4Aが背受81に当接して停止する。
【0053】
図9(b)に示すように、背受下ガイド83bは、冊子受取位置において、スロープ傾斜面72aと略平行でかつ冊子側に突出しない位置に配置される。この構成により、冊子P4は背受81にスムーズに挿入される。また、背受底板83cと背受下ガイド83bとが略垂直であることから、冊子P4の姿勢は、冊子P4の背部P4Aが背受底板83cと当接した状態で安定する。
【0054】
冊子P4は、背受81に挿入されるときに、背受下ガイド83bと接触する可能性がある。シート束排出部K2では、冊子P4が背受下ガイド83bと接触した場合、冊子P4と背受下ガイド83bとの間の摩擦係数が大きいと、冊子P4が背受81へ挿入されにくくなる。そのため、本実施形態では、板金で構成された背受ベース83の表面を露出させて、摩擦係数を小さくしている。
【0055】
背受底板83cは、背受下ガイド83bと同様に、背受ベース83の表面を露出させた構成としている。
【0056】
このように、本実施形態の背受81は、背受シート85の内側カバー部85aが貼り付けられた背受上ガイド83aと、背受下ガイド83b及び背受底板83cと、で異なる摩擦係数の面を有するように構成されている。
【0057】
また、背受上ガイド83aと背受下ガイド83bとの間隔は、製本装置Bが製本可能な冊子の最大厚さよりも広い。そのため最大厚さの冊子であっても、背受81に挿入することができる。
【0058】
[冊子の姿勢変更]
スロープセンサSS(図6参照)は冊子P4が背受81に挿入されたことを検出する。製本装置制御部102(図14参照)は、冊子P4が背受81に挿入された後に、背受81と不図示の駆動列で連結している排出モータMT(図14参照)を所定速度で正回転駆動し、背受81を反時計方向に回動する。製本装置制御部102は、排出モータMTをモータパルス制御により制御する。
【0059】
図10(a)は、排出モータMTによって背受81を反時計方向に所定角度回動させた状態を示す概略図である。図10(b)は、図10(a)に示す背受81を反時計方向に所定角度回動させた状態における背受81の拡大図である。図10(a)に示すように、背受81に挿入された冊子P4の姿勢は、背受81が所定角度回動することで湾曲する。このとき、図10(b)に示すように、背受81は、背受下ガイド83bの端部Wで冊子P4を押して冊子P4を湾曲させる。そして、背受上ガイド83aに貼り付けられた背受シート85と冊子P4とが当接する。そして、図10(b)に示すJ3方向への冊子P4の移動を妨げる摩擦力が発生する。上述した通り、背受シート85とJ3方向に移動する冊子P4との間に作用する摩擦力は、摩擦係数μJ3に応じた摩擦力が生じる。背受81の回動中、この摩擦力により、冊子P4は背受81から抜けにくくなる。
【0060】
製本装置制御部102は、背受81の回動に同調して突板駆動部74を駆動して、突板73を図10(a)におけるA1方向に移動する。突板73は、冊子P4に当接して押すことで、冊子P4を倒す。製本装置制御部102は、冊子P4を排出する位置まで背受81を回動しながら、冊子P4を倒す位置まで突板73を移動する。
【0061】
シート束排出部K2では、背受81を回動させたときに、冊子P4と背受シート85とが接触しやすいように、背受底板83cの表面は滑らかであることが望ましい。本実施形態では、板金の表面を露出させた構成としている。
【0062】
図11は、背受81の回動及び突板73の突き動作が完了しベルトコンベア90に冊子P4が載置された状態を示す図である。背受81の回動と突板73の移動とにより、冊子P4は、排出手段としてのベルトコンベア90に載置される。
【0063】
背受81は、図11に示す冊子排出位置まで回動した状態で停止する。冊子排出位置において、背受上ガイド83aは、搬送ベルト92の冊子P4を載置する載置面と略平行となる。また、このとき、背受シート85が張り付けられた背受上ガイド83aは、搬送ベルト92の載置面の表面側に突出しない位置にある。
【0064】
つまり、背受81が冊子排出位置まで回動した場合、背受上ガイド83aと、ベルトコンベア90に載置された冊子P4と、の間には、隙間が存在するように構成されている。そのため、冊子排出位置にある背受81の背受シート85は、ベルトコンベア90に載置された冊子P4と接触しない。そして、搬送ベルト92を駆動して冊子P4を排出するときに、冊子P4と背受シート85とは、接触しない。
【0065】
ベルトコンベア90は、コンベアステイ91に搬送ベルト92を架けて構成される。ベルトコンベア90は、載置した冊子P4の背部P4A側が下方となるように所定角度傾けて設置される。換言すると、ベルトコンベア90は、背受ユニット80側が下方となるように傾けて設置される。この傾きにより、シート束排出部K2では、冊子P4を倒してベルトコンベア90の上に載置したときに、冊子P4が倒した方向へずれることを抑制することできる。
【0066】
[冊子の機外搬出]
図12は、ベルトコンベア90に冊子P4を載置した状態を示す図である。前述のように、ベルトコンベア90は、コンベアステイ91と、載置された冊子P4を搬送する搬送ベルト92と、冊子P4が機外に搬出されたか否かを検出する排出検出部93と、から構成される。搬送ベルト92は、不図示の駆動列で排出モータMTに連結されており、排出モータMTが逆回転駆動することによって冊子P4をシート束排出装置Kの外部に排出する方向(排出方向)に回転される。
【0067】
ここで、搬送ベルト92を回転している状態で冊子P4を倒してベルトコンベア90に載置した場合、冊子P4は、移動している搬送ベルト92に当接することになる。すると、ベルトコンベア90上の冊子P4は、搬送ベルト92の進行方向に対して傾いた姿勢で載置されてしまう。冊子P4が過度に傾いて載置された場合、排出検出部93は、冊子P4の排出を検出できなくなる虞がある。そこで、製本装置制御部102は、図12に示すように、搬送ベルト92を停止した状態で冊子P4を倒す。そして、冊子P4がベルトコンベア90の上に載置された後に、製本装置制御部102は、図13に示すように搬送ベルト92を回転させ冊子P4を機外に排出する。
【0068】
製本装置制御部102は、排出検出部93によって冊子P4が機外に排出されたことを検出する。冊子P4が機外に排出されると、製本装置制御部102は、搬送ベルト92の回転を停止する。その後、製本装置制御部102は、背受81の位置を冊子受取位置に戻し、突板73を退避位置に移動させる。この時点で一連の冊子P4の機外搬出に係る動作が終了するとともに、後続冊子の受取準備が完了する。そして、次に搬送される冊子がある場合は、上述した各構成による動作を再度実行する。以上の説明ように、本実施形態の製本装置Bは、連続的に冊子を機外へ排出することができる。
【0069】
本実施形態における背受81の構成をまとめる。背受81は、背受底板83cが形成する第1面と、背受下ガイド83bが形成する第2面と、背受上ガイド83aに貼り付けられた摩擦部材としての背受シート85が形成する第3面と、を含んでいる。冊子P4を安定して排出するために、離隔方向J3における背受シート85と冊子P4の間の摩擦係数μJ3は、値が大きいほうが良い。また、冊子P4の背受81への移動に影響を与えないために、接近方向J2における背受シート85と冊子P4の間の摩擦係数μJ2は、値が小さいほうが良い。そして、背受底板83cと冊子P4との間の摩擦係数は、小さいほうが良い。これは、背受81を回転させたときに、冊子P4の背部P4Aを移動しやすくし、冊子P4と背受シート85とを当接させて、冊子P4を安定して倒すためである。
【0070】
このような構成により、本実施形態の製本装置B(図1図2参照)は、連続した製本及び機外搬出を実現することができる。これにより、製本装置Bは、同一条件の製本束を大量印刷する場合においても、製本システムを独立稼働させることができる。また、本実施形態の製本装置Bは、ベルトコンベア90で冊子P4を機外に搬出する前に、冊子P4を倒す。そのため、冊子P4を搬送しながら、冊子P4の姿勢を立てた状態から倒した状態とする構成と比べて、冊子P4の搬送経路を短くできるので、装置の小型化ができる。
【0071】
[制御ブロック図]
図14は、本実施形態における画像形成システムの制御ブロック図である。図14に示すように、画像形成装置制御部101は、画像形成装置Aに設けられている。画像形成装置制御部101は、ユーザが操作パネル18に入力した画像形成情報に基づいて、シート供給部2、画像形成部3、原稿送り装置25及びスキャナユニット20等を制御し、画像形成装置Aに画像形成動作をさせる。製本装置制御部102は、製本装置Bに設けられている。製本装置制御部102は、各センサの検知動作によって各モータを回転制御して、集積部40、接着剤塗布部55、表示綴じ部60、断裁部65及びシート束排出装置K等を制御し、製本装置Bに製本動作をさせる。後処理装置制御部103は、後処理装置Cに設けられて、画像形成済みのシートに、ステイプル処理、パンチ処理、捺印処理等の少なくとも1つの後処理を行えるように後処理装置Cを制御する。なお、画像形成装置制御部101、製本装置制御部102及び後処理装置制御部103は、一体化されて、画像形成システムDのどこに設けられていてもよい。また、操作パネル18は、製本装置制御部102に接続されていてもよく、製本装置B又はシート束排出装置Kが備えていてもよい。この、操作パネル18が、本実施形態における情報を表示可能な表示部を構成する。
【0072】
以上のように、本実施形態のシート束排出装置Kは、冊子P4と背受上ガイド83aの表面に貼り付けられた背受シート85との間の摩擦係数が、冊子P4と背受底板83cとの間の摩擦係数よりも高い。このため、シート束排出装置Kは、背受81から冊子P4をベルトコンベア90に向けて倒す際における動作の安定性を向上できる。
【0073】
[変形例]
なお、本実施形態において、背受81は、背受上ガイド83aの表面に背受シート85を貼り付けることで、背受下ガイド83bの表面の摩擦係数及び背受底板83cの表面の摩擦係数よりも高い摩擦係数を有しているが、これに限定されない。背受81は、背受上ガイド83aの表面に溝形状に加工する、薬品等で表面を梨地状に荒らす等により、背受上ガイド83aの表面の摩擦係数を背受下ガイド83bの表面の摩擦係数及び背受底板83cの表面の摩擦係数よりも高い摩擦係数にしてもよい。このように構成された場合、背受上ガイド83aの表面が、第3面を構成する。
【0074】
また、本実施形態において、背受81は、背受上ガイド83aと、背受下ガイド83bと、背受底板83cと、の3面を有しているが、これに限定されない。背受81は、例えば、背受下ガイド83bと、背受下ガイド83bと一端が略垂直に接続され、湾曲し他端側が背受下ガイド83bと略平行となる面と、の2面を有する構成であってもよい。
【0075】
また、本実施形態において、背受81は、背受上ガイド83aの表面に背受シート85を貼り付けているが、背受上ガイド83aと背受シート85との間に弾性変形可能な弾性部材を設置してもよい。シート束排出部K2では、背受上ガイド83aと背受シート85との間に弾性部材を設置した場合に、背受81を回転させて冊子P4を倒すときに、背受シート85の冊子P4が当接した部分が変形する。背受シート85が変形することで、背受シート85と冊子P4とは、密着しやすくなる。そして、背受81では、冊子P4を倒すときに冊子P4が背受81から抜けにくくなる。なお、背受シート85そのものを弾性変形する材質で構成してもよい。
【0076】
また、本実施形態において、シート束排出装置Kは、背受ユニット80の背受81と、突板73と、を同調して冊子P4を倒すように構成されているが、背受81のみによって冊子P4を倒すように構成されていてもよい。また、シート束排出装置Kは、グリッパ―によって冊子P4の小口側を把持して倒す構成であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
K…シート束排出装置:P4…冊子(シート束):P4A…背部(背):71…排出ガイド(ガイド手段):80…背受ユニット(受け手段):83a…背受上ガイド(第3面、支持部材):83b…背受下ガイド(第2面):83c…背受底板(第1面):85…背受シート(摩擦部材、シート、第3面):85a…内側カバー部(第3面):90…ベルトコンベア(排出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14